説明

復調装置

【課題】フルディジタル化による回路規模の増大を抑える。
【解決手段】フィルタ部3に入力する信号の同期点(ベースバンド信号波形の振幅が最大となる点)がタイミング同期部5で決定するシンボル同期タイミングによって予め判っているから、そのシンボル同期タイミングに同期したサンプル点のみを選択してフィルタ部3でフィルタ処理することができる。故に、フィルタ部3のダウンサンプラ31におけるダウンサンプリング数を源信号のビットレートと同程度まで下げることができ、その結果、フィルタ部3の演算量を減少させることができてフルディジタル化による回路規模の増大を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタル変復調方式を採用した通信システムが増加してきている。このような通信システムに用いられる復調装置として、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載されている従来装置は、PSK変調された受信信号を直交検波回路で直交検波して直交信号の同相成分と直交成分に分離し、A/D変換回路で各々オーバーサンプリングして直交データを出力し、遅延検波回路で1シンボル前の直交データとの位相差分を取り、データ判定回路でシンボル同期回路からの同期タイミングに従って位相差分をデータ判定し復調データを出力するもので、この時シンボル同期回路が、直交データを入力し、1シンボル内の各オーバーサンプルタイミングに対して、オーバーサンプリング数より十分小さいnサンプル数分を遅延した直交データとの差分ベクトルの同相成分を求め、差分ベクトルの同相成分が最小になるオーバーサンプルタイミングを同期タイミングとしてデータ判定回路に出力するものである。
【特許文献1】特開2003−218969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載されている従来装置は無線通信システムに用いられるものであって、アナログの受信信号を直交検波回路で直交検波した直交信号の同相成分と直交成分を各々A/D変換回路でディジタル信号に変換し、そのディジタル信号に対して遅延検波、データ判定(復号)等の復調処理を行っている。
【0004】
これに対して信号線を介した有線通信を行う通信システムにおいては、無線通信と比較して数キロヘルツから数百メガヘルツ程度の低い周波数帯域で通信できるため、上述の従来例における直交検波回路を含めてすべての構成要素をディジタル化することが可能である。しかしながら、復調装置をフルディジタル化した場合、受信した信号を帯域制限するフィルタ(ローパスフィルタ)の演算量が多くなると回路規模が増大してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、フルディジタル化による回路規模の増大を抑えることができる復調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、搬送波と同一の周期信号を発振する発振部と、A/D変換されたディジタルの変調信号に発振部の出力信号を乗算する乗算部と、デシメーションフィルタとダウンサンプラからなるデシメータで構成され乗算部から出力する出力信号を帯域制限するフィルタ部と、フィルタ部で帯域制限された出力信号を復号する復号部と、フィルタ部に入力するまでのディジタル信号に基づいて復号部におけるシンボル同期タイミングを決定するタイミング同期部とを備え、フィルタ部は、タイミング同期部で決定するシンボル同期タイミングに応じたタイミングでダウンサンプリングを開始することを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、乗算部から出力する出力信号を帯域制限するフィルタ部がデシメーションフィルタとダウンサンプラからなるデシメータで構成されており、さらに、フィルタ部がタイミング同期部で決定するシンボル同期タイミングに応じたタイミングでダウンサンプリングを開始するので、フィルタの特性を落とさずにダウンサンプリングによってフィルタ部の演算量を減少させることができ、その結果、フルディジタル化による回路規模の増大を抑えることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、タイミング同期部は、乗算部から出力する出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、タイミング同期部が乗算部から出力する出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定することにより、シンボル同期タイミングをより確実に決定することができ、その結果、ダウンサンプリングの比率を高くすることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、タイミング同期部への入力信号を帯域制限する第2のフィルタ部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、タイミング同期部への入力信号を帯域制限する第2のフィルタ部を備えたので、シンボル同期タイミングをより確実に決定することができ、その結果、ダウンサンプリングの比率を高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタの特性を落とさずにダウンサンプリングによってフィルタ部の演算量を減少させることができるから、フルディジタル化による回路規模の増大を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、変復調方式としてバイナリ位相シフトキーイング(BPSK)を用いた実施形態について図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明に係る復調装置の技術思想が適用可能な方式はBPSKに限定されるものではなく、例えば、QPSKやQAMなどの他の方式であっても構わない。
(実施形態1)
本実施形態の復調装置は、図1(a)に示すように搬送波(キャリア)と同一の周期的なディジタル信号(正弦波信号)を発振する発振部1と、発振部1から出力される正弦波信号をディジタル変調信号に乗算する乗算部2と、ローパスフィルタからなり乗算部2から出力されるディジタルの出力信号(ベースバンド信号に搬送波周波数の2倍の周波数の正弦波成分が重畳した信号)の帯域を制限するフィルタ部3と、フィルタ部3で帯域制限されたベースバンド信号を復号する復号部4と、発振部1への入力信号(ディジタル変調信号)に基づいて復号部4におけるシンボル同期タイミングを決定するタイミング同期部5とを備えている。
【0014】
本実施形態の復調装置が用いられる通信システムでは、情報をフレーム単位で送信しており、フレームの先頭には所定パターンの参照信号(プリアンブル)が挿入されている。そして、本実施形態におけるタイミング同期部5は、予め記憶されているプリアンブルの波形パターン(参照信号)とディジタル変調信号の波形パターンとの相関を求めることでシンボル同期タイミングを決定している。
【0015】
また、本実施形態におけるフィルタ部3は、図1(b)に示すようにデシメーションフィルタ30とダウンサンプラ31からなるデシメータで構成されている。デシメーションフィルタ30は、FIRフィルタをポリフェーズ分解したポリフェーズフィルタであって、サンプリング数Mに等しい個数のフィルタE0(z)〜EM-1(z)と、1サンプル毎にフィルタEM-1(z)からフィルタE0(z)へ出力を順番に切り替える切替部30aと、各フィルタE0(z)〜EM-1(z)の出力を順番に加算する加算部30bとを具備している。そして、ダウンサンプラ30では、フィルタE0(z)の計算が終わったときに各フィルタE0(z)〜EM-1(z)の出力の総和を求める処理を行っている。但し、このような構成のデシメータは従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0016】
ここで、デシメーションフィルタ30の切替部30aは、タイミング同期部5から出力するシンボル同期タイミング信号に同期して各フィルタE0(z)〜EM-1(z)への出力を切り替えている。すなわち、フィルタ部3に入力する信号の同期点(ベースバンド信号波形の振幅が最大となる点)がタイミング同期部5で決定するシンボル同期タイミングによって予め判っているから、そのシンボル同期タイミングに同期したサンプル点のみを選択してフィルタ部3でフィルタ処理することができる。故に、フィルタ部3のダウンサンプラ31におけるダウンサンプリング数を源信号のビットレートと同程度まで下げることができ、その結果、フィルタ部3の演算量を減少させることができてフルディジタル化による回路規模の増大を抑えることができる。例えば、源信号のビットレートが40kbps、発振部1の発振周波数が400kHz、A/D変換のサンプリング周波数が2MHzとすると、通常はフィルタ部3のサンプリング周波数として200kHz程度必要であり、ダウンサンプリングの比率は2MHz/200kHz=10となるのに対し、本実施形態ではフィルタ部3のサンプリング周波数が源信号のビットレートに等しい40kHzまで落とすことができるから、ダウンサンプリングの比率は2MHz/40kHz=50となってフィルタ部3の演算量を大幅に削減することができる。
【0017】
(実施形態2)
本実施形態は、図2に示すようにタイミング同期部5が乗算部2から出力する出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定する点に特徴があり、その他の構成については実施形態1と共通である。よって、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
既に説明したように、乗算部2の出力信号はベースバンド信号に搬送波周波数の2倍の周波数の正弦波成分が重畳した信号となるから、タイミング同期部5では、例えば、予め記憶されている参照信号(プリアンブルの波形パターン)と乗算部2の出力信号の波形パターンとの相関を求めることでシンボル同期タイミングを決定することができる。
【0019】
而して、実施形態1のようにタイミング同期部5が変調信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定する場合と比較して、ベースバンド信号に搬送波周波数の2倍の周波数の正弦波成分が重畳した信号となる乗算部2の出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定する本実施形態のタイミング同期部5の方が、シンボル同期タイミングをより確実に決定することができ、その結果、ダウンサンプリングの比率をさらに高くすることができる。
【0020】
(実施形態3)
本実施形態は、タイミング同期部5が乗算部2から出力する出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定する点は実施形態2と共通であるが、図3に示すようにタイミング同期部への入力信号を帯域制限する第2のフィルタ部5を備えた点が実施形態2と異なっている。但し、その他の構成については実施形態2と共通であるから、実施形態2と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
上述のように、乗算部2の出力信号はベースバンド信号に搬送波周波数の2倍の周波数の正弦波成分が重畳した信号となるから、搬送波周波数の2倍の周波数の正弦波成分をローパスフィルタからなる第2のフィルタ部6で除去すれば、タイミング同期部5にはベースバンド信号のみが入力されることになる。尚、第2のフィルタ部6としては、フィルタ部3よりも簡易なFIRフィルタ若しくはIIRフィルタで構成すればよい。
【0022】
而して、タイミング同期部5では、例えば、ゼロクロス点でのPLL(フェーズロックループ)によってシンボル同期タイミングを比較的簡単に決定することができ、しかも、実施形態2と比較してシンボル同期タイミングをさらに確実に決定することができるから、ダウンサンプリングの比率をさらに一層高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1を示し、(a)は全体のブロック図、(b)はフィルタ部の詳細なブロック図である。
【図2】本発明の実施形態2を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態3を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1 発振部
2 乗算部
3 フィルタ部
4 復号部
5 タイミング同期部
30 デシメーションフィルタ
31 ダウンサンプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波と同一の周期信号を発振する発振部と、A/D変換されたディジタルの変調信号に発振部の出力信号を乗算する乗算部と、デシメーションフィルタとダウンサンプラからなるデシメータで構成され乗算部から出力する出力信号を帯域制限するフィルタ部と、フィルタ部で帯域制限された出力信号を復号する復号部と、フィルタ部に入力するまでのディジタル信号に基づいて復号部におけるシンボル同期タイミングを決定するタイミング同期部とを備え、フィルタ部は、タイミング同期部で決定するシンボル同期タイミングに応じたタイミングでダウンサンプリングを開始することを特徴とする復調装置。
【請求項2】
タイミング同期部は、乗算部から出力する出力信号に基づいてシンボル同期タイミングを決定することを特徴とする請求項1記載の復調装置。
【請求項3】
タイミング同期部への入力信号を帯域制限する第2のフィルタ部を備えたことを特徴とする請求項2記載の復調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−88991(P2009−88991A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255867(P2007−255867)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】