説明

微小流体デバイスおよび微小流体デバイスの使用方法

【課題】既存のデバイスの現在の制限を除く、微小流体デバイスを用いて達成され得る前出の利点の観点から、種々の化学的分析および生化学的分析を行う際の使用のために設計された微小流体デバイスを提供すること。
【解決手段】微小流体デバイスであって、(a)弾性材料内で形成されたフローチャネル;(b)当該フローチャネルと流体連絡している複数のブラインドフローチャネルであって、各ブラインドフローチャネルの領域は、反応部位を規定する、ブラインドフローチャネル、を備える、微小流体デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2002年6月24日に出願された米国仮出願番号60/391,529、および2001年11月30日に出願された米国仮出願番号60/335,292の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
近年、調製用途および分析用途の両方について、種々の化学的および生化学的な分析および合成を行うための微小流体システムを開発および製造する協力がなされている。このようなデバイスを製造する目的は、マクロスケールで行われる分析および合成に対して小型化から理解され得る有意な利点に起因して起きる。このような利点としては、分析または合成を行うために使用されるデバイスについての、時間、コストおよび空間要件の実質的な低下が挙げられる。さらに、微小流体デバイスは、自動化システムとの使用に適合される可能性を有しており、それによって、ヒトの介入の減少に起因した、さらなるコスト低下およびオペレータエラーの低減というさらなる利点を提供する。微小流体デバイスは、種々の用途(例えば、キャピラリー電気泳動、ガスクロマトグラフィーおよび細胞分離が挙げられる)における使用のために提唱されている。
【0003】
しかし、これらの利点の実現は、今まで製造されてきた微小流体デバイスに関連する種々の複雑性に起因して、しばしば妨げられる。例えば、現在の微小流体デバイスの多くは、シリカベースの物質から製造されており、これらの材料は、機械加工するのが困難かつ複雑であり、このような材料から製造されるデバイスは、もろい。さらに、多くの既存の微小流体デバイスを通した流体の輸送は、制御された様式でこのデバイスを通して流体を輸送するために、複雑な電場の調節を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、既存のデバイスの現在の制限を除く、微小流体デバイスを用いて達成され得る前出の利点の観点から、種々の化学的分析および生化学的分析を行う際の使用のために設計された微小流体デバイスについての必要性が依然として残ったままである。近代生化学におけるこのデバイスの重要性に起因して、種々の核酸増幅反応を行うために利用され得る一方で、同様に他の分析型における使用のために十分な多能性(versatility)を備えたデバイスについての特定の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
核酸増幅を行う性能を備えたデバイスは、多様な用途を有する。例えば、このようなデバイスは、分析用ツールとして使用され、目的の特定の標的核酸がサンプル中に存在するか存在しないかを決定し得る。従って、このデバイスは、特定の病原体(例えば、ウイルス、細菌または真菌)の存在について試験するため、および同定目的(例えば、父系および法医学的用途)のために利用され得る。このようなデバイスはまた、特定の疾患または遺伝子障害と関連することが以前に示されている特定の核酸を検出または特徴付けするために利用され得る。分析用ツールとして使用される場合、このデバイスはまた、遺伝子型分析および遺伝子発現分析(例えば、差次的遺伝子発現研究)を行うために利用され得る。あるいは、このデバイスは、さらなる分析(例えば、増幅産物の配列決定、細胞型別、DNAフィンガープリントなど)のために十分な核酸を増幅するために、調製様式で使用され得る。増幅産物はまた、種々の遺伝子操作用途(例えば、ベクターへの挿入(次いで、これを使用して、所望のタンパク質産物の産生のために細胞を形質転換する))において使用され得る。
【0006】
(要旨)
微小流体分析を行うための種々のデバイスおよび方法が、本明細書中で提供される。これらのデバイスとしては、熱サイクリング反応(例えば、核酸増幅反応)を行うために利用され得るデバイスが挙げられる。これらのデバイスは、弾性部品を備えている点で、従来型の微小流体デバイスと異なっている。いくつかの例において、デバイスのほとんどまたは全てが、弾性材料から構成される。
【0007】
特定のデバイスは、熱サイクリング反応(例えば、PCR)を行うように設計される。これらのデバイスは、これらのデバイスを通る溶液の流れを調節するための1個以上の弾性バルブを備えている。従って、この設計のデバイスを用いて増幅反応を行うための方法もまた、提供される。
【0008】
これらのデバイスのいくつかは、反応部位として機能する領域を含むブラインドフローチャネルを備える。特定のこのようなデバイスは、弾性材料内に形成されるフローチャネル、およびこのフローチャネルと流体連絡した複数のブラインドフローチャネルを備え、各ブラインドフローチャネルの領域が、反応部位を規定している。これらのデバイスはまた、そのブラインドフローチャネルの各々に重層しかつ交差する1個以上のコントロールチャネルを備え得、ここで、弾性膜が、各交差点にて1つ以上のコントロールチャネルをブラインドフローチャネルから隔てている。このようなデバイスにおける弾性膜は、衝撃力に応答してブラインドフローチャネル中に湾曲するかまたはブラインドフローチャネルから引き出されるように配置されている。このデバイスは、弾性材料内に形成され、かつフローチャネルに重層し、そして/または反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルを必要に応じてさらに備え得る。このガードチャネルは、それを通じて流体が流れ、このデバイスのフローチャネルおよび反応部位からのエバポレーションを低減するように設計されている。さらに、このデバイスは、その各反応部位内に配置された1種以上の試薬を必要に応じて備え得る。
【0009】
特定のデバイスにおいて、そのフローチャネルは、複数のフローチャネルのうちの1つであり、これらのフローチャネルの各々は、そこから枝分かれした複数のブラインドフローチャネルと流体連絡している。この設計のデバイスのうち、いくつかの例において、複数のフローチャネルは、1つの入口を介して反応部位の各々に流体が導入され得るように、互いに相互接続されている。しかし、他のデバイスにおいて、複数のフローチャネルは、1つのフローチャネルに導入される流体が、別のフローチャネルに流れることができないように、互いに隔てられており、各フローチャネルは、流体が導入され得る入口を、一方端または両端に備える。
【0010】
他のデバイスは、1cm当たり少なくとも50部位の密度を有する反応部位のアレイを備える。この反応部位は、代表的に、弾性材料内に形成される。他のデバイスは、なおより高密度(例えば、1cm当たり少なくとも250部位、1cm当たり500部位または1cm当たり1000部位)を有する。
【0011】
なお他のデバイスは、弾性基材内に形成された反応部位を備えており、この反応部位にて、反応を行うための試薬が、非共有的に固定されている。この試薬は、任意の型の反応を本質的に行うための1種以上の試薬であり得る。いくつかのデバイスにおける試薬としては、核酸増幅反応を行うための1種の試薬が挙げられる。従って、いくつかのデバイスにおいて、この試薬は、プライマー、ポリメラーゼおよび1つ以上のヌクレオチドを含む。他のデバイスにおいて、この試薬は、核酸テンプレートである。
【0012】
種々のマトリクスまたはアレイベースのデバイスもまた、提供される。特定のこれらのデバイスは、以下を備える:(i)弾性基材に形成される第一の複数のフローチャネル、(ii)反応部位のアレイを規定するためにこの第一の複数のフローチャネルに交差する、弾性基材に形成される第二の複数のフローチャネル、(iii)各反応部位内の溶液を他の部位における溶液から分離するように作動され得る、第一の複数のフローチャネルおよび第二の複数のフローチャネル内に配置される、複数の分離バルブ、ならびに(iv)1つ以上のフローチャネルおよび/または1つ以上の反応部位に重層し、そこからの溶液のエバポレーションを防止する、複数のガードチャネル。
【0013】
前出のデバイスは、多くの異なる型の反応(温度調節(例えば、核酸分析の熱サイクリング)を含む反応が挙げられる)を行うために利用され得る。特定のブラインドチャネル型デバイスを用いて行われる方法は、弾性材料内に形成されるフローチャネル;およびこのフローチャネルと流体連絡した複数のブラインドフローチャネル(各ブラインドチャネルの末端領域は、反応部位を規定する)を備える微小流体デバイスを提供する工程を包含する。少なくとも1種の試薬が、これらの反応部位の各々に導入され、次いで、反応が、それらの反応部位のうちの1つ以上にて検出される。この方法は、必要に応じて、これらの反応部位内で少なくとも1種の試薬を加熱する工程を包含し得る。従って、例えば、この方法は、核酸増幅反応のための成分を導入し、次いで、この成分を熱サイクリングして増幅産物を形成する工程を包含し得る。
【0014】
他の方法は、1つ以上の反応部位を備える微小流体デバイスを提供する工程を包含し、各反応部位は、弾性基材上に必要に応じて非共有的に配置された、分析を行うための第一の試薬を含む。次いで、第二の試薬が、1つ以上の反応部位に導入され、それによって、この第一の試薬と第二の試薬とが混合されて、反応混合物を形成する。これらの反応部位の1つ以上での、この第一の試薬と第二の試薬との間の反応は、連続的に検出される。
【0015】
なお他の方法は、基材内に形成されかつ1cm当たり少なくとも50部位の密度を有する反応部位のアレイを備える微小流体デバイスを提供する工程を包含する。少なくとも1種の試薬が、これらの反応部位のうちの1つ以上に導入される。次いで、これらの反応部位のうちの1つ以上での反応が、検出される。
【0016】
なお別の方法は、弾性基材内に形成される少なくとも1つの反応部位、およびこの弾性基材内にまた形成される複数のガードチャネルを備える微小流体デバイスを提供する工程を包含する。少なくとも1種の試薬が、反応部位の各々に導入され、次いで、これらの反応部位内で加熱される。流体は、加熱前または加熱の間、ガードチャネルを通って流れ、少なくとも1つの反応部位からのエバポレーションを減少させる。少なくとも1つの反応部位内の反応は、連続的に検出される。
【0017】
デバイスからの流体のエバポレーションを減少させるように設計されたさらなるデバイスもまた、提供される。一般に、このようなデバイスは、弾性基材に形成される微小流体ネットワークの一部であるキャビティ;およびこのキャビティに重複しかつ弾性膜によってこのキャビティから隔てられる複数のガードチャネルを備える。このようなデバイスにおけるガードチャネルは、(i)このガードチャネルを通る溶液流れを可能にし、かつ(ii)このガードチャネルに衝撃力が付与された際の膜の湾曲に起因した、キャビティ内、キャビティ外またはキャビティを通る溶液流れの実質的な減少が存在しないように、サイズ決定される。他のこのようなデバイスは、(i)1つ以上のフローチャネルおよび/または1つ以上の反応部位;ならびに(ii)微小流体システムに重複しかつエラストマーによってそれから隔てられている複数のガードチャネルを備える。ここで、ガードチャネル間の間隔は、1μmと1mmとの間である。他のデバイスにおいて、この間隔は、5μmと500μmとの間であり、他のデバイスにおいては、10μmと100μmとの間であり、そしてなお他のデバイスにおいては、40μmと75μmとの間である。
【0018】
特定の微小流体デバイスの反応部位において核酸分析を行うための組成物もまた、提供される。特定のこのような組成物は、以下のうちの1つ以上を含有する:弾性材料上のタンパク質結合部位をブロックする薬剤および界面活性剤。このブロッキング剤は、代表的に、タンパク質(例えば、ゼラチンまたはアルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)))からなる群より選択される。界面活性剤は、例えば、SDSまたはTritonであり得る。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
微小流体デバイスであって、
(a)弾性材料内で形成されたフローチャネル;
(b)当該フローチャネルと流体連絡している複数のブラインドフローチャネルであって、各ブラインドフローチャネルの領域は、反応部位を規定する、ブラインドフローチャネル、
を備える、微小流体デバイス。
・(項目2)
項目1に記載の微小流体デバイスであって、上記ブラインドフローチャネルの各々に重層しかつ交差する1つ以上のコントロールチャネルをさらに備え、弾性膜が、各交差点にて当該1つ以上のコントロールチャネルを当該ブラインドフローチャネルから隔て、当該弾性膜は、衝撃力に応答して当該ブラインドフローチャネル中に湾曲するかまたは当該ブラインドフローチャネルから引き出されるように配置されている、微小流体デバイス。
・(項目3)
項目1に記載の微小流体デバイスであって、上記弾性材料内に形成され、かつ上記フローチャネルに重層し、そして/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルをさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目4)
項目1に記載の微小流体デバイスであって、上記反応部位の各々内に配置された1つ以上の試薬をさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目5)
項目4に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が非共有結合配置されている、微小流体デバイス。
・(項目6)
項目2に記載の微小流体デバイスであって、
上記弾性材料内に形成され、かつ上記フローチャネルに重層し、そして/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルと;
上記反応部位の各々内に配置された1つ以上の試薬と;
をさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目7)
項目1に記載の微小流体デバイスであって、上記フローチャネルが、複数のフローチャネルのうちの1つであり、当該フローチャネルの各々が、当該フローチャネルから枝分かれする複数のブラインドフローチャネルと流体連絡している、微小流体デバイス。
・(項目8)
項目7に記載の微小流体デバイスであって、
上記複数のフローチャネルは、当該フローチャネルが互いに実質的に平行であるように整列されており、そして
隣接するフローチャネルから枝分かれする上記ブラインドフローチャネルは、互いに対して交互配置されている、
微小流体デバイス。
・(項目9)
項目7に記載の微小流体デバイスであって、上記複数のフローチャネルが、1つの入口を介して上記反応部位の各々へと流体が導入され得るように、互いに相互接続されている、微小流体デバイス。
・(項目10)
項目9に記載の微小流体デバイスであって、
上記複数のフローチャネルが、
(i)複数の垂直フローチャネルと;
(ii)複数の水平フローチャネルと、
を備え、各水平フローチャネルの一端は、当該垂直フローチャネルの1つと流体連絡しており、各水平フローチャネルのもう一端は、当該垂直フローチャネルの別の1つと流体連絡しており、それにより、流体が、1つの水平フローチャネルから当該垂直フローチャネルを介して別の水平フローチャネルへと流動し得、
上記枝分かれフローチャネルが、当該水平フローチャネルと実質的に垂直である、
微小流体デバイス。
・(項目11)
項目9に記載の微小流体デバイスであって、隣接するフローチャネルから枝分かれする上記ブラインドフローチャネルが、互いに対して交互配置されている、微小流体デバイス。
・(項目12)
項目9に記載の微小流体デバイスであって、上記弾性材料内に形成され、かつ上記フローチャネルもしくは枝分かれチャネルのうちの1つ以上に重層し、そして/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルをさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目13)
項目9に記載の微小流体デバイスであって、上記反応部位の各々内に配置された1つ以上の試薬をさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目14)
項目7に記載の微小流体デバイスであって、上記複数のフローチャネルが、1つのフローチャネルに導入された流体が別のフローチャネルへと流動し得ないように互いから隔離されており、そして各フローチャネルが、流体が導入され得る1つの入口を一端に備える、微小流体デバイス。
・(項目15)
項目14に記載の微小流体デバイスであって、上記弾性材料内に形成され、かつ上記フローチャネルもしくは枝分かれチャネルのうちの1つ以上に重層し、そして/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルをさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目16)
項目14に記載の微小流体デバイスであって、上記反応部位の各々内に配置された1つ以上の試薬をさらに含む、微小流体デバイス。
・(項目17)
項目7に記載の微小流体デバイスであって、上記複数のフローチャネルの各々が2つの端部を有し、当該複数のフローチャネルは、1つのフローチャネルに導入された流体が別のフローチャネルへと流動し得ないように互いから隔離されており、そして各フローチャネルが、各端部に位置する入口を備える、微小流体デバイス。
・(項目18)
項目17に記載の微小流体デバイスであって、上記弾性材料内に形成され、かつ上記フローチャネルもしくは枝分かれチャネルのうちの1つ以上に重層し、そして/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層する、複数のガードチャネルをさらに備える、微小流体デバイス。
・(項目19)
項目17に記載の微小流体デバイスであって、上記反応部位の各々内に配置された1つ以上の試薬をさらに含む、微小流体デバイス。
・(項目20)
1cm当たり少なくとも50部位である密度を有する反応部位のアレイを含む、微小流体デバイス。
・(項目21)
項目20に記載の微小流体デバイスであって、上記反応部位のアレイが、弾性材料内に形成されている、微小流体デバイス。
・(項目22)
項目20に記載の微小流体デバイスであって、上記密度が、1cm当たり少なくとも250部位である、微小流体デバイス。
・(項目23)
項目22に記載の微小流体デバイスであって、上記密度が、1cm当たり少なくとも500部位である、微小流体デバイス。
・(項目24)
項目23に記載の微小流体デバイスであって、上記密度が、1cm当たり少なくとも1000部位である、微小流体デバイス。
・(項目25)
弾性基材内に形成された反応部位を含む微小流体デバイスであって、当該反応部位において、反応を行うための試薬が固定されている、微小流体デバイス。
・(項目26)
項目25に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が、核酸増幅反応を行うための1種以上の試薬を含む、微小流体デバイス。
・(項目27)
項目26に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が、プライマー、ポリメラーゼ、および/または1種以上のヌクレオチドを含む、微小流体デバイス。
・(項目28)
項目26に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が、核酸テンプレートを含む、微小流体デバイス。
・(項目29)
微小流体デバイスであって、
(a)弾性基材において形成された第1の複数のフローチャネル;
(b)当該弾性基材において形成された第2の複数のフローチャネルであって、反応部位のアレイを規定するように当該第1の複数のフローチャネルと交差する、第2の複数のフローチャネル;
(c)当該第1の複数のフローチャネルおよび当該第2の複数のフローチャネル内に配置された複数の隔離バルブであって、当該隔離バルブは、当該反応部位の各々の中にある溶液を他の反応部位にある溶液から隔離するように作動され得る、隔離バルブ;
を備える、微小流体デバイス。
・(項目30)
項目29に記載の微小流体デバイスであって、1つ以上のコントロールチャネルをさらに備え、当該コントロールチャネルは各々、上記フローチャネルのうちの1つ以上に重層しかつ当該フローチャネルのうちの1つ以上と交差する、微小流体デバイス。
・(項目31)
項目29に記載の微小流体デバイスであって、
上記第1の複数のフローチャネルが互いに対して実質的に平行であり、
上記第2の複数のフローチャネルが、互いに対して実質的に平行であり、かつ当該第1の複数のフローチャネルに対して直交する、
微小流体デバイス。
・(項目32)
項目29に記載の微小流体デバイスであって、上記第1の複数のフローチャネルの各々および上記第2の複数のフローチャネルの各々が、別個の入口を備える、微小流体デバイス。
・(項目33)
項目29に記載の微小流体デバイスであって、上記第1の複数のフローチャネルのうちの少なくともいくつかが、第1の共有された入口と流体連絡しており、そして/または
上記第2の複数のフローチャネルのうちの少なくともいくつかが、第2の共有された入口と流体連絡している、微小流体デバイス。
・(項目34)
分析を行うための方法であって、
(a)微小流体デバイスを提供する工程であって、当該微小流体デバイスは、
(i)弾性材料内に形成されたフローチャネル;および
(ii)当該フローチャネルと流体連絡している複数のブラインドフローチャネルであって、各ブラインドフローチャネルの端部領域は、反応部位を規定する、ブラインドフローチャネル;
を備える工程;
(b)当該反応部位の各々中に少なくとも1種の試薬を導入する工程;ならびに
(c)当該反応部位のうちの1つ以上にて反応を検出する工程;
を包含する、方法。
・(項目35)
項目34に記載の方法であって、上記反応部位内にある少なくとも1種の試薬を加熱する工程をさらに包含する、方法。
・(項目36)
項目34に記載の方法であって、上記少なくとも1種の試薬が、反応混合物を含む、方法。
・(項目37)
項目36に記載の方法であって、上記反応混合物が、核酸増幅反応のための構成成分を含み、当該方法は、当該反応混合物を熱サイクリングする工程をさらに包含する、方法。
・(項目38)
項目36に記載の方法であって、上記反応混合物が、酵素アッセイのための構成成分を含む、方法。
・(項目39)
項目34に記載の方法であって、上記少なくとも1種の試薬が、上記反応部位の各々に配置された試薬と混合して反応混合物を形成する、方法。
・(項目40)
項目39に記載の方法であって、上記少なくとも1種の試薬が核酸テンプレートを含み、上記配置された試薬が、核酸増幅反応の1種以上の構成成分を含み、そして当該方法は、上記反応混合物を熱サイクリングする工程をさらに包含する、方法。
・(項目41)
項目39に記載の方法であって、上記少なくとも1種の試薬が核酸増幅反応の1種以上の構成成分を含み、上記配置された試薬が、核酸テンプレートを含み、そして当該方法は、上記反応混合物を熱サイクリングする工程をさらに包含する、方法。
・(項目42)
項目34に記載の方法であって、
上記フローチャネルが、複数のフローチャネルのうちの1つであり、当該フローチャネルの各々は、複数のブラインドフローチャネルと流体連絡しており、
当該複数のフローチャネルは、上記反応部位の各々中に単一の入口を介して流体が導入され得るように、互いに交互接続されており、
上記少なくとも1種の試薬が、当該単一の入口を介して導入される、
方法。
・(項目43)
項目42に記載の方法であって、少なくとも100個の反応部位が存在する、方法。
・(項目44)
項目43に記載の方法であって、少なくとも1,000個の反応部位が存在する、方法。
・(項目45)
項目44に記載の方法であって、少なくとも10,000個の反応部位が存在する、方法。
・(項目46)
項目45に記載の方法であって、少なくとも100,000個の反応部位が存在する、方法。
・(項目47)
項目42に記載の方法であって、第1の試薬が、上記反応部位の各々中に上記単一の入口を介して導入され、第2の試薬が、上記反応部位の各々に配置されており、異なる反応部位は異なる第2の試薬を有し、それにより、当該異なる反応部位の各々にて当該第1の試薬を含む異なる反応が生じる、方法。
・(項目48)
項目47に記載の方法であって、上記異なる第2の試薬が、異なる核酸プライマーを含み、そして上記少なくとも1種の試薬が、核酸テンプレートを含む、方法。
・(項目49)
項目34に記載の方法であって、
上記フローチャネルが、複数のフローチャネルのうちの1つであり、当該フローチャネルの各々は、複数のブラインドフローチャネルと流体連絡しており、
上記複数のフローチャネルが、1つのフローチャネル中に導入された流体が別のフローチャネルに流動し得ないように、互いから隔離されており;そして
導入する工程が、当該複数のフローチャネルの各々に少なくとも1種の試薬を別個に導入する工程を包含する、
方法。
・(項目50)
項目49に記載の方法であって、
第1の試薬が各フローチャネルに導入され;
各フローチャネルと流体連絡している反応部位が、第2の試薬を含み、当該第2の試薬は、異なるフローチャネルと流体連絡している反応部位間で異なり;
導入する工程が、当該フローチャネルの各々に第1の試薬を導入する工程を包含する、
方法。
・(項目51)
項目50に記載の方法であって、上記異なる第2の試薬が、異なる核酸プライマーを含み、そして上記第1の試薬が、核酸テンプレートを含む、方法。
・(項目52)
分析を行うための方法であって、
(a)1つ以上の反応部位を含む微小流体デバイスを提供する工程であって、各反応部位は、弾性基材上に非共有結合により配置された、分析を行うための第1の試薬を含む、工程;
(b)当該1つ以上の反応部位中に第2の試薬を導入することによって、当該第1の試薬および第2の試薬が混合して反応混合物を形成する、工程;ならびに
(c)当該反応部位のうちの1つ以上における当該第1の試薬と第2の試薬との間の反応を検出する工程;
を包含する、方法。
・(項目53)
項目52に記載の方法であって、上記反応混合物を加熱する工程をさらに包含する、方法。
・(項目54)
項目52に記載の方法であって、上記第2の試薬の導入が、上記第1の試薬が上記反応部位にて懸濁されることを引き起こす、方法。
・(項目55)
項目52に記載の方法であって、上記1つ以上の反応部位が、反応部位のアレイである、方法。
・(項目56)
項目52に記載の方法であって、上記分析が核酸分析であり、上記第1の試薬が、核酸と相互反応する試薬であり、そして上記第2の試薬が、試験核酸である、方法。
・(項目57)
項目56に記載の方法であって、上記分析が核酸増幅反応であり、上記第1の試薬が、当該核酸増幅反応を行うための1種以上の試薬を含み、そして上記第2の試薬が核酸テンプレートであり、そして当該方法は、当該第1の試薬および当該第2の試薬を熱サイクリングする工程をさらに包含する、方法。
・(項目58)
項目52に記載の方法であって、
上記1種以上の反応部位が、反応部位のアレイであり:
異なる核酸増幅試薬が、異なる反応部位に存在し;そして
同じ核酸テンプレートが、当該反応部位の各々に導入される、
方法。
・(項目59)
項目52に記載の方法であって、上記分析がタンパク質分析であり、上記第1の試薬が潜在的タンパク質リガンドであり、そして上記第2の試薬が試験タンパク質である、方法。
・(項目60)
項目59に記載の方法であって、上記潜在的タンパク質リガンドが、タンパク質、抗体、酵素基質、酵素補因子、および酵素インヒビターからなる群より選択される、方法。
・(項目61)
項目52に記載の方法であって、上記分析が細胞分析であり、上記第1の試薬が、当該細胞と潜在的に反応する試薬であり、そして上記第2の試薬が試験細胞である、方法。
・(項目62)
分析を行うための方法であって、
(a)反応部位のアレイを含む微小流体デバイスを提供する工程であって、当該反応部位のアレイは、基材内に形成されかつ1cm当たり少なくとも50部位である密度を有する、工程;
(b)当該反応部位の各々に少なくとも1種の試薬を導入する工程;および
(c)当該反応部位のうちの1つ以上で反応を検出する工程;
を包含する、方法。
・(項目63)
項目62に記載の方法であって、上記アレイが、1cm当たり少なくとも250部位である密度を有する、方法。
・(項目64)
項目62に記載の方法であって、上記アレイが、1cm当たり少なくとも500部位である密度を有する、方法。
・(項目65)
項目64に記載の方法であって、上記アレイが、1cm当たり少なくとも1,000部位である密度を有する、方法。
・(項目66)
分析を行うための方法であって、
(a)少なくとも1つの反応部位と、複数のガードチャネルとを含む微小流体デバイスを提供する工程であって、当該反応部位は、弾性基材内に形成されており、当該ガードチャネルもまた、当該弾性基材内に形成されている、工程;
(b)当該反応部位の各々に少なくとも1種の試薬を導入する工程;
(c)当該反応部位の少なくとも1つの内にある少なくとも1種の試薬を加熱する工程;
(d)当該少なくとも1つの反応部位からの蒸発を減少するために、加熱前または加熱の間に、当該ガードチャネルに流体を流す工程;および
(e)当該少なくとも1つの反応部位内における反応を検出する工程;
を包含する、方法。
・(項目67)
項目66に記載の方法であって、
導入する工程が、上記少なくとも1つの反応部位に核酸テンプレートを導入することによって、当該核酸テンプレートが、当該少なくとも1つの反応部位にて1種以上の核酸増幅試薬と混合する工程を包含し;
加熱する工程が、当該核酸テンプレートおよび増幅試薬を熱サイクリングして増幅産物を形成する工程を包含し;
検出する工程が、当該増幅産物を検出する工程を包含する、
方法。
・(項目68)
項目67に記載の方法であって、上記流体が水溶液である、方法。
・(項目69)
項目67に記載の方法であって、上記流体が疎水性化合物である、方法。
・(項目70)
項目69に記載の方法であって、上記疎水性化合物が油である、方法。
・(項目71)
微小流体デバイスであって、
(a)弾性基材中に形成された微量流体ネットワークの一部である、空洞;ならびに
(b)当該空洞に重層しかつ当該空洞から弾性膜により隔てられている複数のガードチャネルであって、各ガードチャネルは、(i)当該ガードチャネルを通る溶液流れを可能にしかつ(ii)当該ガードチャネルへの衝撃力の適用に際して当該膜の湾曲に起因する、当該空洞中、当該空洞外または当該空洞を通る溶液流れの実質的減少が存在しないような、大きさである、ガードチャネル;
を備える、デバイス。
・(項目72)
項目71に記載のデバイスであって、上記空洞がフローチャネルである、デバイス。
・(項目73)
項目71に記載のデバイスであって、上記空洞が反応チャンバである、デバイス。
・(項目74)
項目71に記載のデバイスであって、上記ガードチャネルの各々が、50,000μm未満の断面積を有する、デバイス。
・(項目75)
項目74に記載のデバイスであって、上記断面積が、10,000μm未満である、デバイス。
・(項目76)
項目75に記載のデバイスであって、上記断面積が、1,000μm未満である、デバイス。
・(項目77)
項目76に記載のデバイスであって、上記断面積が、100μm未満である、デバイス。
・(項目78)
微小流体デバイスであって、
(a)1つ以上のフローチャネルおよび/または1つ以上の反応部位を含む、微量流体システム;ならびに
(b)当該微小流体システムに重層しかつエラストマーにより当該微小流体システムから隔てられている、複数のガードチャネルであって、ガードチャネル間の端部間隔は、1μm〜1mmの間である、ガードチャネル;
を備える、微小流体デバイス。
・(項目79)
項目78に記載の微小流体デバイスであって、上記間隔が、5μmと500μmとの間である、微小流体デバイス。
・(項目80)
項目79に記載の微小流体デバイスであって、上記間隔が、10μmと100μmとの間である、微小流体デバイス。
・(項目81)
項目80に記載の微小流体デバイスであって、上記間隔が、40μmと75μmとの間である、微小流体デバイス。
・(項目82)
項目27に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が、ゼラチン、グリセロールおよび界面活性剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む、微小流体デバイス。
・(項目83)
項目57に記載の微小流体デバイスであって、上記第1の試薬が、ゼラチン、グリセロールおよび界面活性剤からなる群より選択される1種以上の添加剤を含む、微小流体デバイス。
・(項目84)
微小流体デバイスにおける増幅反応を増強するための組成物であって、弾性基材上のタンパク質結合部位をブロックする薬剤、核酸中の二次構造を減少する薬剤、プライマーと相補的テンプレートとの間のミスプライミングを減少する薬剤、および界面活性剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を含む、組成物。
・(項目85)
項目84に記載の組成物であって、当該組成物は、上記薬剤のうちの少なくとも2種を含む、組成物。
・(項目86)
項目25に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が非共有結合により固定されている、微小流体デバイス。
・(項目87)
項目25に記載の微小流体デバイスであって、上記試薬が、リンカーを介して上記基質に結合されている、微小流体デバイス。
・(項目88)
項目87に記載の微小流体デバイスであって、上記リンカーが、光不安定性リンカーである、微小流体デバイス。
・(項目89)
項目87に記載の微小流体デバイスであって、上記リンカーが、熱不安定性リンカーである、微小流体デバイス。
・(項目90)
項目29に記載の微小流体デバイスであって、上記フローチャネルのうちの1つ以上および/または上記反応部位のうちの1つ以上に重層してそれらからの溶液の蒸発を防ぐ、複数のガードチャネルをさらに含む、微小流体デバイス。
・(項目91)
項目30に記載の微小流体デバイスであって、上記隔離バルブのうちの少なくともいくつかが、当該隔離バルブが作動する際に上記コントロールチャネルのうちの1つを上記フローチャネルから隔てる弾性膜を含む、微小流体デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、交差する垂直フローチャネルおよび水平フローチャネルのマトリックス設計を有する例示的なデバイスの模式図である。
【図1B】図1B〜1Eは、図1Aに示されるデバイスの一部の拡大図を示し、その操作を示す。
【図1C】図1B〜1Eは、図1Aに示されるデバイスの一部の拡大図を示し、その操作を示す。
【図1D】図1B〜1Eは、図1Aに示されるデバイスの一部の拡大図を示し、その操作を示す。
【図1E】図1B〜1Eは、図1Aに示されるデバイスの一部の拡大図を示し、その操作を示す。
【図1F】図1Fは、サンプル蒸発を低減するためのガードチャネルを利用する、別の例示的なマトリックス設計のデバイスの概略図である。
【図2】図2は、例示的なブラインドチャネルデバイスの平面図である。
【図3A】図3Aは、別の例示的なブラインドチャネルデバイスの平面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示される全体的な設計単位に基づいたより複雑なブラインドチャネルデバイスの概略図である。
【図3C】図3Cは、図3Bに示されるデバイスの領域の拡大図であり、この特定の設計におけるガードフローチャネルの方向を示す。
【図4】図4は、ハイブリッド設計を利用するデバイスの平面図である。
【図5】図5は、熱サイクル反応を行うための急上昇(ramp up)および急降下(ramp down)の時間を示すチャートである。
【図6】図6は、ブラインドチャネル型デバイスにおける反応部位内にスポッティングされた試薬の位置を示し、デバイスの角における反応部位内の試薬の適切なアラインメントを図示する。
【図7A】図7Aは、別のハイブリッド型微小流体デバイスの断面図および概略図であり、実施例1〜4に記載される実験を実施するために使用される型のデバイスを表す。
【図7B】図7Bは、別のハイブリッド型微小流体デバイスの模式図であり、実施例1〜4に記載される実験を実施するために使用される型のデバイスを表す。
【図8】図8は、6つの異なるβ−アクチンTaqMan反応について、平均FAM/PR1/コントロール比をプロットした棒グラフである。反応を、図7Bで示される微小流体デバイス(チップ)(ベタの棒)およびMacro TaqMan反応(斜線の棒)において熱サイクルした。コントロールは、第1の棒セットと第4の棒セットであり、これらはDNAを有さない。誤差棒は、比の標準偏差である。
【図9】図9は、例示的なピンスポッティングプロセスを示す図である。試薬を、供給源(例えば、マイクロタイタープレート)からピックアップし、次いでこの負荷したピンを基材に接触させることによりプリントする。洗浄工程は、脱イオン水中での攪拌、次いで真空乾燥からなる。
【図10】図10は、実施例2に記載される実験に基づいた、実施例1に記載される微小流体デバイス(チップ)(図7Bを参照のこと)についてのFAMシグナル強度を示す棒グラフである。データは、参照レーンについてFAM/PR1比により拡大された(FAMシグナル/PR1シグナル)の形態である。誤差棒は、レーンに沿った標準偏差である。「1.3×」および「1×」の表示は、その正規化値に対する、スポッティングされたプライマーおよびプローブの濃度を指す。
【図11】図11は、Macro TaqMan(斜線の棒)、および微小流体デバイスにおけるTaqMan反応(ベタの棒)についての9〜10ウェルの平均VIC/PF1/コントロール比を示す棒グラフである。2つのネガティブコントロール(コントロール)および100pg/nlのゲノムDNAを含む2つのサンプルを、4×標準量のプライマー/プローブと共に上記のような反応成分を用いて熱サイクルした。誤差棒は、平均比の標準偏差を示す。
【図12】図12は、微小流体デバイス(図7Bを参照のこと)の単一フローチャネルから分岐する10〜1nlのウェルの各々についてのFAM/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。ゲノムDNAの量は、0.25pg/nlであった。これは、ウェルあたり1標的コピーという平均を生じる。
【図13】図13は、図7Bにおいて示される微小流体デバイスを使用する、CYP2D6 SNP反応についての平均VIC/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。対立遺伝子1(Al−1)は、参照または野生型の対立遺伝子CYP2D61に対するVICプローブについてのポジティブコントロールである。対立遺伝子2(Al−2)は、改変体または変異対立遺伝子CYP2D63に対するFAMプローブについてのポジティブコントロールである。このコントロールは、DNAテンプレートを有さない。ゲノムDNAを、100pg/nlまたは20pg/nlのいずれかで使用した。誤差棒は、比の標準偏差である。
【図14】図14は、図7Bに示される微小流体デバイスにおけるCYP2D6 SNP反応についての平均FAM/PR1/コントロール比を示す房グラフである。サンプルは、図13および実施例3に関して記載されるサンプルと同じである。
【図15】図15は、実施例4における実験に使用される微小流体デバイスの概略図である。
【図16】図16は、Macro PCRおよび図7Bに示される微小流体デバイスにおけるPCR反応由来のPCR産物を含有するポリアクリルアミドゲルである。左側の結果は、異なるDNA塩基対長のおよその移動を示す。散在したバンドを含むレーンは、分子量マーカーである。「Macro」と標識されたレーンは、異なる希釈でのMacro反応由来のPCR産物である。「In chip」と標識されたレーンは、チップ中で生成されたPCR産物である。ゲル全体にわたって多くのバンドを含むレーンは、非特異的バックグラウンドシグナルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
1.定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を提供する:Singletonら,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker編,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,第5版,R.Riegerら(編),Springer Verlag(1991);およびHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、他に特定されない限り、割り当てられた意味を有する。
【0021】
「フローチャネル」とは、一般的に、溶液がそこを通って流れ得る流路をいう。
【0022】
用語「バルブ」は、示されていない限り、フローチャネルおよびコントロールチャネルが交差し、衝撃力に応じてフローチャネルに中に湾曲され得るかまたはフローチャネルから引っ込められ得る弾性膜により隔てられる、構成をいう。
【0023】
「ブラインドチャネル」または「行き止まりチャネル」とは、入口を有するが、別個の出口を有さないフローチャネルをいう。従って、このブラインドチャネルを出入りする溶液の流れは、同じ位置において起こる。1つ以上のブラインドチャネルを満たすプロセスは、時々、単純に「ブラインドフィル」と呼ばれる。
【0024】
「隔離された反応部位」とは、一般的に、そのデバイスに存在するほかの反応部位と流体連通していない反応部位をいう。ブラインドチャネルに関して使用される場合、隔離された反応部位は、そのブラインドチャネルに付随したバルブにより遮断され得るブラインドチャネルの末端における領域である。
【0025】
「を介する(介して)(via)」とは、デバイスの外部ポートと1つ以上のフローチャネルとの間に流体アクセスを提供するための、弾性デバイスに形成されるチャネルをいう。従って、介する(via)は、例えば、サンプル入口またはサンプル出口として作用する。
【0026】
用語「エラストマー」および「弾性」は、当該分野で使用されるとおりのその一般的な意味を有する。従って、例えば、Allcockら(Contemporary Polymer Chemistry,第2版)は、エラストマーを、概して、そのガラス転移温度と液化温度との間の温度で存在するポリマーとして記載する。弾性材料は、弾性特性を示す。なぜなら、ポリマー鎖は、力に応じて容易にねじれ運動を受けて骨格鎖が解けるのを可能にし、この骨格鎖が反動して力の非存在下での以前の形状をとるからである。一般的に、エラストマーは、力が加えられた場合に変形するが、その後、力が除かれるとそれらの元の形状に戻る。弾性材料により示される弾性は、ヤング率により特徴付けられ得る。本明細書中に開示される微小流体デバイスにおいて利用される弾性材料は、代表的に、約1Pa〜1TPaの間、他の例において約10Pa〜100GPaの間、なお他の例において約20Pa〜1GPaの間、さらに他の例において、約50Pa〜100GPaの間、そして特定の例において約100Pa〜1MPaの間のヤング率を有する。これらの範囲外のヤング率を有する弾性材料もまた、特定の適用の必要性に依存して利用され得る。
【0027】
本明細書中に記載される微小流体デバイスのいくつかは、エラストマーポリマー(例えば、GE RTV615(配合)、ビニル−シラン架橋(型)シリコーンエラストマー(ファミリー))から製造される。しかし、本発明の微小流体システムは、ポリマーのこの1種の配合、型またはこのポリマーのファミリーにさえ限定されず;むしろ、ほとんど任意のエラストマーポリマーが、適切である。ポリマー化学、前駆体、合成方法、反応条件、および可能な添加剤の途方も無い多様性を考慮すると、モノリシックエラストマーミクロバルブおよびポンプを作製するために使用され得る、多数の可能なエラストマー系が存在する。材料の選択は、実施される適用に必要な特定の材料特性(例えば、溶媒耐性、剛性、気体透過性、および/または温度安定性)に代表的に依存する。本明細書中に開示される微小流体デバイスの構成要素の製造において使用され得る弾性材料の型に関するさらなる詳細は、Ungerら(2000)Science 288:113−116ならびにPCT公開 WO02/43615、および同WO01/01025(これらは、全ての目的のために、その全体が参考として本明細書中に援用される)に示される。
【0028】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書において、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むように使用され、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。これらの用語間で長さにおいて意図された区別はない。さらに、これらの用語は、その分子の一次構造のみを指す。従って、特定の実施形態において、これらの用語は、三本鎖、二本鎖、および一本鎖のDNA、ならびに三本鎖、二本鎖、および一本鎖のRNAを含み得る。これらはまた、例えば、メチル化および/またはキャッピングによる改変、ならびにポリヌクレオチドの未改変形態を含む。より詳細には、用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリン塩基またはピリミジン塩基のN−グリコシドまたはC−グリコシドである任意の他の型のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含む他のポリマー(例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))、およびポリモルホリノ(Anti−Virals,Inc.,Corvallis,Oregonから、Neugeneとして市販される)ポリマー)、ならびに他の合成の配列特異的核酸ポリマー(ただし、このポリマーは、DNAおよびRNAで見出される場合のように、塩基対合および塩基スタッキングを可能にする配置で核酸塩基を含む。
【0029】
「プローブ」は、1つ以上のタイプの化学結合を介して、通常、相補塩基対合を介して、通常、水素結合形成を介して、相補的配列の標的核酸に結合して、二重鎖構造を形成し得る核酸である。プローブは、「プローブ結合部位」に結合またはハイブリダイズする。プローブは、特に、プローブがその相補的標的にハイブリダイズした場合、プローブの容易な検出を可能にするために、検出可能標識で標識され得る。プローブに付着された標識としては、例えば、化学的手段または物理的手段によって検出され得る、当該分野で公知の種々の異なる標識のいずれかが挙げられ得る。プローブに付着され得る適切な標識としては、放射性同位体、発蛍光団、発色団、質量標識、電子稠密粒子(electron dense particles)、磁性粒子、スピン標識、化学発光を放射する分子、電気化学活性分子、酵素、補因子、および酵素基質が挙げられるが、これらに限定されない。プローブは、その大きさにおいて顕著に変動し得る。いくつかのプローブは比較的短い。一般に、プローブは、少なくとも7〜15ヌクレオチドの長さである。他のプローブは、少なくとも20、30または40ヌクレオチド長を有する。さらに他のプローブは、幾分長く、少なくとも50、60、70、80、90ヌクレオチド長である。なお他のプローブは、さらに長く、少なくとも100、150、200またはそれ以上のヌクレオチド長である。プローブは、また前述の範囲内にあるいずれの特定の長さでもあり得る。
【0030】
「プライマー」は、適切な緩衝液中の適切な条件下で(すなわち、4つの異なるヌクレオシド三リン酸および重合用因子(例えば、DNAもしくはRNAのポリメラーゼまたは逆転写酵素)の存在下で)、かつ適切な温度でテンプレート指向DNA合成の開始点として作用し得る一本鎖ポリヌクレオチドである。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図された使用に依存するが、代表的には、少なくとも7ヌクレオチド長であり、より代表的には、10〜30ヌクレオチド長の範囲である。他のプライマーは、幾分より長いものであり得、例えば、30〜50ヌクレオチド長である。短いプライマー分子は、一般に、テンプレートを用いて十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度を必要とする。プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならない。用語「プライマー部位」または「プライマー結合部位」は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAのセグメントをいう。用語「プライマー対」は、5’「上流プライマー」(これは、増幅されるべきDNA配列の5’末端の相補体とハイブリダイズする)および3’「下流プライマー」(これは、増幅されるべき配列の3’末端とハイブリダイズする)を含むプライマーセットを意味する。
【0031】
「完全に相補的」であるプライマーは、プライマーの全長にわたって完全に相補的である配列を有し、ミスマッチのない配列を有する。プライマーは、代表的には、標的配列の一部(サブ配列)に完全に相補的である。「ミスマッチ」は、プライマー中のヌクレオチドと、プライマーと整列される標的核酸中のヌクレオチドとが相補的でない部位をいう。プライマーに関して使用される場合、用語「実質的に相補的」は、プライマーがその標的配列に対して完全に相補的ではなく、その代わりにこのプライマーは、所望のプライマー結合部位でそのそれぞれの鎖に選択的にハイブリダイズするのに十分なだけ相補的であることを意味する。
【0032】
用語「相補的」は、ある核酸が、別の核酸分子に同一であるか、または選択的にハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイゼーションの選択性は、総じて特異性を欠くよりも選択的であるハイブリダイゼーションが生じる場合に存在する。代表的には、選択的なハイブリダイゼーションは、少なくとも14〜25ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%同一性、好ましくは少なくとも65%同一性、より好ましくは少なくとも75%同一性、および最も好ましくは少なくとも90%同一性がある場合に生じる。好ましくは、ある核酸は、他の核酸に特異的にハイブリダイズする。M.Kanehisa、Nucleic Acids Res.12:203(1984)を参照のこと。
【0033】
用語「標識」は、物理的、化学的、電磁的、および他の関連分析技術によって検出され得る分子または分子の局面をいう。使用され得る検出可能な標識の例としては、放射性同位体、発蛍光団、発色団、質量標識、電子稠密粒子、磁性粒子、スピン標識、化学発光を放射する分子、電気化学活性分子、酵素、補因子、核酸プローブに連結された酵素、および酵素基質が挙げられるが、これらに限定されない。用語「検出可能に標識された」は、因子が標識と結合体化されていること、または因子が、別個の標識に結合体化される必要なく検出されることを可能にするいくらかの固有の特徴(例えば、大きさ、形状、または色)を有することを意味する。
【0034】
「多型マーカー」または「多型部位」は、分岐が生じる遺伝子座である。好ましいマーカーは、少なくとも2つの対立遺伝子を有し、この各々は、選択された集団の1%より多くの、そしてより好ましくは10%または20%より多くの頻度で生じる。多型遺伝子座は、1塩基対程度の少なさであり得る。多型マーカーとしては、制限酵素断片長多型、可変数のタンデム反復(VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復、および挿入エレメント(例えば、Alu)が挙げられる。第一の同定された対立遺伝子形態は、参照形態として任意に指定され、他の対立遺伝子形態は、交互対立遺伝子または改変対立遺伝子と称される。対選択された集団で最も頻繁に生じる対立遺伝子形態は、時に、野生型形態と呼ばれる。二倍体生物は、対立遺伝子形態についてホモ接合性またはヘテロ接合性であり得る。二対立遺伝子(diallelic)多型は2つの形態を有する。三対立遺伝子(triallelic)多型は、3つの形態を有する。
【0035】
「一ヌクレオチド多型」(SNP)は、一ヌクレオチドで占められる多型部位(これは、対立遺伝子配列間の変化部位である)で生じる。この部位は、通常、対立遺伝子の高度に保存された配列(例えば、集団の1/100または1/1000メンバー未満で変動する配列)の前後にある。一ヌクレオチド多型は、通常、多型部位においてヌクレオチドを別のヌクレオチドに対して置換することに起因する。トランジションは、あるプリンを別のプリンに、またはあるピリミジンを別のピリミジンに置換することである。トランスバージョンは、プリンをピリミジンに、またはその逆に置換することである。一ヌクレオチド多型はまた、参照対立遺伝子に対するヌクレオチドの欠失またはヌクレオチドの挿入から生じ得る。
【0036】
「試薬」は、広範に、反応において使用される任意の因子をいう。試薬は、それ自体がモニタリングされ得る単一の因子(例えば、それが加熱されるにつれてモニタリングされる物質)または2つ以上の因子の混合物を含み得る。試薬は、生存(例えば、細胞)または非生存であり得る。核酸増幅反応のための例示の試薬としては、緩衝液、金属イオン、ポリメラーゼ、プライマー、テンプレート核酸、ヌクレオチド、標識、色素、ヌクレアーゼなどが挙げられるが、これらに限定されない。酵素反応のための試薬としては、例えば、基質、補因子、カップリング酵素、緩衝液、金属イオン、インヒビターおよびアクチベーターが挙げられる。細胞ベースの反応のための試薬としては、細胞、細胞特異的色素、および細胞レセプターに結合するリガンド(例えば、アゴニストおよびアンタゴニスト)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「リガンド」は、それに対する別の分子(すなわち、「抗リガンド」)が存在する任意の分子であり、この別の分子は、抗リガンドによるリガンドのいくらかの部分の認識によって、リガンドに特異的または非特異的に結合する。
(II.概説)
独自のフローチャネルアーキテクチャーを有する多数の異なる微小流体デバイス(時に、チップとも呼ばれる)、ならびに種々の高スループット分析を実施するためにこのようなデバイスを使用する方法が、本明細書中において提供される。このデバイスは、温度制御を必要とする分析、特に、熱サイクリングを必要とする分析(例えば、核酸増幅反応)において使用するために設計される。微小流体デバイスは、以下の特定の設計特徴を組み込む:デバイスに、多くの従来の微小流体デバイスよりも有意に小さいフットプリントを与え、このデバイスが、他の器具と容易に組み込まれるようにし、そして自動分析を提供する。
【0038】
微小流体デバイスのいくつかは、代表的に、本明細書中で「ブラインドチャネル」または「ブラインドフィル」と呼ばれる設計を使用し、複数のブラインドチャネルを有することにより一部特徴付けられ、これは、定義の節に示されるように、溶液が一方の端部でのみ出入りできるように、デッドエンドまたは隔離された端部を有するフローチャネルである(すなわちブラインドチャネルについて別の入り口および出口が存在しない)。これらのデバイスは、ブラインドチャネルの領域を隔離し、隔離された反応部位を形成するために、各ブラインドチャネルにつき1つのバルブのみを必要とする。このタイプのデバイスの製造の間に、分析を行うための1つ以上の試薬は、反応部位に配置され、それにより、入り口および出口の数において有意な減少を生じる。さらに、ブラインドチャネルは、全ての反応部位が、1つのまたは限定された数のサンプル入り口から充填され得るように、相互に連結したチャネル網に連結される。入り口および出口の複雑度を減少し、そして各反応部位を隔離するためにたった1つのバルブを使用したことにより、反応部位に利用可能な間隙が増大される。従って、これらのデバイスの特徴は、各デバイスが、多数の(例えば、数万までの)反応部位を含み得、そして高い反応部位密度(例えば、1cm当たり1,000〜4,000反応部位を超える)を達成し得ることを意味する。個々に、そして集合的に、これらの特徴はまた、直接的に、従来の微小流体デバイスに比較して、これらのデバイスのサイズを有意に減少させる。
【0039】
本明細書中で開示される他の微小流体デバイスは、マトリックス設計を使用する。一般に、このタイプの微小流体デバイスは、交差点での反応部位のアレイを規定するために、複数の交差した水平方向および垂直方向のフローチャネルを使用する。従って、この設計のデバイスはまた、アレイまたは反応部位を有する。しかし、より多くの数のサンプルをこの設計に適応させるために、より多くの数のサンプル入り口および対応する出口が存在する。切り替え可能なフローアレイアーキテクチャと呼ばれるバルブシステムは、溶液が、単に、ちょうど水平チャネルまたはフローチャネルを通って選択的に流れるようにし、従って、マトリックスにおける種々のフローチャネルの切り替え可能な隔離を可能にする。従って、ブラインドチャネルデバイスが、限定された数のサンプルを用いて異なる条件下で多数の分析を実施するために設計される一方、マトリックスデバイスが、限定された数の条件下で多数のサンプルを分析するために構築される。なお他のデバイスは、これらの2つの一般の設計タイプのハイブリッドである。
【0040】
記載される微小流体デバイスは、さらに、弾性材料製のフローチャネル、コントロールチャネル、バルブおよび/またはポンプのような種々の構成要素を使用することにより、一部特徴付けられる。いくらかの場合、本質的にデバイス全体が、弾性材料で製造されている。結果として、このようなデバイスは、シリコンベースの材料から形成される従来の微小流体デバイスの大部分とは形態および機能が有意に異なる。
【0041】
デバイスの設計は、それらを、多数の異なる加熱システムと組み合わせて使用されることを可能にする。従って、このデバイスは、温度制御を必要とする種々の分析を実施する際に有用である。さらに、加熱適用において使用するためのそれらの微小流体デバイスは、反応部位からのサンプルのエバポレーションを最小にするために、さらなる設計特徴を取り込み得る。このタイプのデバイスは、一般に、弾性デバイス内で形成される多数のガードチャネルを含む。このチャネルを、水が、デバイスが形成される弾性材料内の水蒸気圧を増大させるように流れ、それにより、反応部位からのサンプルのエバポレーションを減少させる。
【0042】
特定のデバイスのアレイフォーマットは、デバイスが、高スループットを達成し得ることを意味する。集合的に、高スループットおよび温度制御能は、デバイスを、多数の核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応−PCR)を実施するために有用とする。このような反応は、デバイス(特に温度制御を必要とする反応におけるそれらの使用)の有用性の例示として、本明細書中の至るところで議論する。しかし、デバイスは、これらの特定の適用に制限されないことが理解されるべきである。これらのデバイスは、広範な種々の他のタイプの分析または反応において使用され得る。例としては、タンパク質−リガンド相互作用、および細胞と種々の化合物との間の相互作用の分析が挙げられる。さらなる例を以下に提供する。
【0043】
(III.微小流体デバイスの一般構造)
(A.ポンプおよびバルブ)
本明細書中で開示される微小流体デバイスは、代表的には、少なくとも一部が弾性材料から構築され、そして単一の多層ソフトリソグラフィー(MSL)技術および/または犠牲層カプセル化法(例えば、Ungerら、(2000) Science 288:113−116、およびPCT公報WO01/01025(これらは共に、あらゆる目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)によって構築される。このような方法を用いて、溶液がデバイスのフローチャネルを流れる微小流体デバイスは、少なくとも一部、弾性膜またはセグメントによってフローチャネルから分離される1つ以上のコントロールチャネルを用いて、制御される。この膜またはセグメントは、コントロールチャネルに衝撃力を適用することにより、コントロールチャネルが関連するフローチャネルに向けたり、フローチャネルから引っ込められたりし得る。膜がフローチャネルに向けられたり、引っ込められたりする程度を制御することにより、溶液の流れは、フローチャネルで遅らせられ得るか、または完全に遮断され得る。このタイプのコントロールチャネルおよびフローチャネルの組み合わせを使用して、Ungerら、(2000) Science 288:113−116、およびPCT公報WO/02/43615およびWO01/01025において十分詳細に記載されるように、溶液流れを調節するための種々の異なるタイプのバルブおよびポンプを調製し得る。
【0044】
本明細書中に提供されるデバイスは、試薬が反応させられる反応部位を選択的に隔離するために、このようなポンプおよびバルブを取り込む。反応部位は、デバイス内の多数の異なる位置のいずれかに位置され得る。例えば、いくつかのマトリクスタイプデバイスにおいては、反応部位は、フローチャネルセットの交差に位置する。ブラインドチャネルデバイスにおいては、反応部位は、ブラインドチャネルの端部に位置する。デバイスが温度制御反応において使用される場合(例えば、熱サイクリング反応)、以下により詳細に記載されるように、弾性デバイスは、代表的には、支持体(例えばスライドガラス)に固定化される。得られた構造は、次いで、例えば、種々の反応部位で温度を制御するために、温度制御プレート上に配置され得る。熱サイクリング反応の場合、デバイスは、多数の熱サイクリングプレートのいずれかの上に配置され得る。
【0045】
デバイスが比較的光学的に透明な弾性材料で作製されているので、反応は、微小流体デバイス上の本質的に任意の位置の種々の異なる検出システムを用いて、容易にモニタリングされ得る。しかし、最も代表的には、検出は、反応部位それ自体で(例えば、フローチャネルの交差を含む領域内またはフローチャネルのブラインド端部で)生じる。デバイスが実質的に透明な材料から製造されるという事実はまた、特定の検出システムが、この特定のデバイスシステムが、従来のシリコンベース微小流体デバイスと共に使用可能ではない現在のデバイスと共に使用され得ることを意味する。検出は、デバイスに取り込まれたか、またはデバイスとは別個であるが、検出されるべきデバイス領域と整列された検出器を用いて達成され得る。
【0046】
(B.ガードチャネル)
本明細書中で提供される弾性微小流体デバイスからのサンプルおよび試薬の蒸発を減らすために、複数のガードチャネルがこのデバイス中に形成され得る。これらのガードチャネルは、これらが、フローチャネルおよび/または反応部位と重層するエラストマーの層中に代表的に形成されるという点で、コントロールチャネルと類似する。それゆえ、コントロールチャネルと同様に、これらのガードチャネルは、弾性材料の膜またはセグメントによって、下層のフローチャネルおよび/または反応部位から隔てられる。しかし、コントロールチャネルとは異なり、これらのガードチャネルは、断面積が相当小さい。一般に、より小さい面積を有する膜は、同じ与圧下で、より大きな面積を有する膜よりもゆがむ。これらのガードチャネルは、溶液(代表的には水)がこれらのガードチャネル中に流動するのを可能にするように加圧されるように設計される。このガードチャネルから生じた水蒸気は、フローチャネルまたは反応部位に隣接したこのエラストマーの孔に拡散し得、従って、このフローチャネルまたは反応部位に隣接した水蒸気濃度を増大させ得、そしてそこからの溶液の蒸発を減少させ得る。
【0047】
一般に、これらのガードチャネルは、加圧した場合に、このガードチャネルを下層のフローチャネルまたは反応部位から隔てる膜が、ガードチャネルが重層するフローチャネルまたは反応部位の中、外、またはそれらを通しての溶液の流動を実質的に制限しないに充分に小さい。この状況で使用される場合、用語「実質的に制限する」または他の類似の用語は、このガードチャネルがそれを通った溶液の流動を達成するための加圧がされない場合の同じ条件下でのこのフローチャネルまたは反応部位溶液の中、これらへの、またはこれらを通った流動と比較して、このフローチャネルまたは反応部位の中、外またはこれらを通しての溶液の流動が、40%を超えて、代表的には30%未満、通常20%未満、そしていくつかの例では10%未満、減少しないことを意味する。通常、これは、これらのガードチャネルが、100μmと50,000μmとの間の断面積またはそれらの間の任意の積分断面積もしくは非積分断面積を有することを意味する。従って、例えば、いくつかの例では、この断面積は50,000μm未満であり、他の例では10,000μm未満であり、なお他の例では10,00μm未満であり、そしてなお他の例では100μm未満である。これらのガードチャネルは、円形形状、楕円形状、四角形状、矩形形状、六角形形状および八面体形状を含むがこれらに限定されない、種々の形状のうちのいずれかを有し得る。
【0048】
これらのガードチャネルは、サーモサイクリング反応を行うためにかかる時間の間およびその条件下での、このデバイスからのサンプルおよび試薬の蒸発を、50%未満に、他の例では45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満または1%未満まで減少させるように設計される。従って、例えば、40サイクルを含む代表的なPCR反応は、120分間以内に行われ得る。このガードチャネルシステムは、上記のセットの限界まで、ほぼこの時間枠の間の蒸発を減少させるように設計される。このレベルの蒸発の減少を達成するために、これらのガードチャネルは代表的に、少なくとも10ライン/cm〜1000ライン/cmの密度、またはこれらの間の任意の積分密度レベルで存在する。より詳細には、これらのガードチャネルは一般に、少なくとも25ライン/cmであり、他の例では少なくとも50ライン/cmであり、なお他の例では少なくとも100ライン/cmであり、そしてなお他の例では少なくとも500ライン/cmである。このレベルの蒸発減少を達成するために、これらのガードチャネルは代表的に、1本のラインの外縁から隣のラインの最も近い外縁までで測定した場合に、1mm〜1μmの間の間隔で、またはそれらの間の任意の積分密度レベルで存在する。より詳細には、これらのガードチャネルは一般に、500μum〜5μmの間、他の例では100μm〜10μmの間、なお他の例では75μm〜40μmの間の間隔が空けられている。従って、この間隔は代表的に、少なくとも1μmであるが、1mm未満であり、他の例では500μm未満であり、なお他の例では400μm未満であり、なお他の例では300μmであり、他の例では200μm未満であり、そしてなお他の例では100μm未満、50μm未満または25μm未満である。
【0049】
これらのガードチャネルは、チャネルの別個のネットワークとして形成されてもよく、またはコントロールチャネルから枝分かれする、より小さいチャネルであってもよい。これらのガードチャネルは、このデバイスまたはこのデバイスの特定の領域のみを横切って延び得る。代表的に、このガードチャネルは、フローチャネルおよび反応部位に隣接してそれらの上に配置される。なぜなら、ここが、蒸発が主に問題である、主な位置であるからである。特定のマトリクスデバイス上でのガードチャネルの例示的な位置を、図1Cに図示し、そして特定のブラインドチャネルデバイス上でのガードチャネルの例示的な位置を、図3Bおよび図3Cに図示し、そして以下でより詳細に考察する。
【0050】
このガードチャネルを通って流動した溶液は、水の蒸発を減少させ得る任意の物質を備える。この物質は、フローラインおよび/もしくは反応部位に隣接した水蒸気濃度を増大させる物質、または水蒸気濃度を増大させないが、それにもかかわらず、フローラインおよび/もしくは反応部位からの水の蒸発をブロックする物質(ブロッキング剤)であり得る。従って、1つの選択肢は、本質的に任意の水溶液を利用することであり、この場合、適切な溶液としては、水および緩衝溶液(例えば、TaqMan緩衝溶液、およびリン酸緩衝化生理食塩水)が挙げられるがこれらに限定されない。適切なブロッキング剤としては、例えば、鉱油が挙げられる。
【0051】
ガードチャネルは代表的に、上記のMSL技術および/または犠牲層カプセル化法を利用してエラストマー中に形成される。
【0052】
以下の節は、温度制御を必要とする分析(例えば、核酸増幅反応)を含め、種々の分析を行うために利用され得る多数の特定の構成をより詳細に記載する。しかし、これらの構成が例示であって、これらの系の改変が当業者に明らかであることが理解されるべきである。
【0053】
(IV.マトリクスの設計)
(A.概論)
マトリクスの設計を利用するデバイスは一般に、交差して連結部のアレイを形成する、複数の垂直フローチャネルおよび水平フローチャネルを有する。異なるサンプルおよび試薬(または試薬セット)がこれらのフローチャネルの各々の中に導入され得るので、多数のサンプルが、ハイスループット形式で、比較的多数の反応条件に対して試験され得る。従って、例えば、異なるサンプルが、M個の異なる垂直フローチャネルの各々の中に導入され、そして異なる試薬(または試薬セット)がN個の水平フローチャネルの各々の中に導入される場合、M×N個の異なる反応が同時に行われ得る。代表的に、マトリクスデバイスは、垂直フローチャネルと水平フローチャネルとの切り替え可能な隔離を可能にするバルブを備える。別の言い方をすると、これらのバルブは、垂直フローチャネルをちょうど通るかまたは水平フローチャネルをちょうど通る選択的流動を可能にするように配置される。この種のデバイスは、サンプルの種類および数、ならびに試薬の数および種類の選択に関する融通性を可能にするので、これらのデバイスは、比較的大きな数の反応条件に対して多数のサンプルをスクリーニングしようとする分析を行うためによく適している。これらのマトリクスデバイスは、サンプルおよび反応物の蒸発を予防するために、ガードチャネルを必要に応じて組み込み得る。
【0054】
(B.例示的な設計および用途)
図1Aは、1つの例示的なマトリクスデバイスの図示を提供する。このデバイス100は、交差して49個の異なる交差点または反応部位106のアレイを形成する、7個の垂直フローチャネル102および7個の水平フローチャネル104を備える。従って、この特定のデバイスは、7個のサンプルが、7個の異なる試薬または試薬セットと反応することを可能にする。垂直方向における溶液の流動を調節するカラムバルブ110は、コントロールチャネル118によって制御され得、コントロールチャネル118は、単一の入口114にて、全て起動され得る。
【0055】
同様に、列に並んだ(row)バルブ108は、水平方向における溶液の流動を調節する;これらは、コントロールチャネル116によって制御され、コントロールチャネル116は、単一の制御入口112によって起動される。図1Aに示されるように、列に並んだバルブ108を調節するコントロールチャネル116は、位置に依存して幅が変化する。コントロールチャネル116が垂直フローチャネル102と交差する場合、コントロールチャネル116は、起動された場合に、これが垂直フローチャネル102に向かってゆがんで、そこを通る溶液の流動を実質的に減少させないに充分に狭い。しかし、コントロールチャネル116の幅は、水平フローチャネル104のうちの1つと重層する場合、増大する;このことにより、コントロールチャネルの膜は、水平フローチャネル104を通る溶液の流動をブロックするに充分に大きくなる。
【0056】
操作の際に、試薬R1〜R7は、それらのそれぞれの水平フローチャネル104に導入され、そしてサンプルS1〜S7は、それらのそれぞれの垂直フローチャネル102に注射される。従って、各水平フローチャネル104中の試薬は、垂直フローチャネル102の各々において、交差点106にて、サンプルと混合され、これは、この特定のデバイスにおいて、ウェルまたはチャンバの形状である。従って、核酸増幅反応の特定の場合、例えば、増幅反応に必要な試薬は、水平フローチャネル104の各々に導入される。異なる核酸テンプレートは、垂直フローチャネル102中に導入される。特定の分析では、水平フローチャネル104の各々に導入される試薬混合物の一部として導入されたプライマーは、フローチャネル間で異なり得る。これは、各核酸テンプレートが多数の異なるプライマーと反応するのを可能にする。
【0057】
図1B〜図1Eは、このデバイスが分析の間にどのように作動するかをより詳細に図示するために、図1Aにおいて示したデバイス中の隣接した反応部位の拡大平面図を示す。明確さの目的のために、交差点106は、反応ウェルの形態では示されず、コントロールチャネル116および118は省略されており、カラムおよび列に並んだバルブ110、108(矩形ボックス)のみが示される。図1Bに示されるように、分析は、カラムバルブ110を閉じ、そして列に並んだバルブ108を開けて、垂直フローチャネル102を通る流動をブロックしながら、水平フローチャネル104を通る溶液の流動を可能にすることによって開始される。次いで、試薬R1は、水平フローチャネル104中に導入され、そして水平フローチャネル104の長さ全体を通って完全に流動され、その結果、全ての反応部位106が充填される。水平チャネル104を通る溶液の流動は、外部ポンプによって達成され得るが、より代表的には、例えば、Ungerら(2000)Science 288:113−116およびPCT公開WO 01/01025に詳細に記載されるように、蠕動ポンプを弾性デバイス自体に組み込むことによって達成される。
【0058】
一旦R1が導入されたら、列に並んだバルブ108が閉じられ、そしてカラムバルブ102が開けられる(図1Cを参照のこと)。このことは、サンプルS1およびサンプルS2が垂直フローチャネル102中に導入されて、それらのそれぞれのフローチャネルを通って流動することを可能にする。サンプルが垂直フローチャネル102を流動するにつれて、これらはR1を反応部位106から吐出し、従って、サンプルを反応部位106に残す。次いで、図1Dに示されるように、列に並んだバルブ108が開けられて、S1およびS2がR1と拡散して混合することを可能にする。従って、サンプルおよび反応物の混合物(R1S1およびR1S2)は、各々の交差点または反応部位106の領域において得られる。S1およびS2がR1と拡散するに充分な時間を可能にした後、全ての列に並んだバルブ108およびカラムバルブ110は閉じられて、それらのそれぞれの反応部位106の領域にS1およびS2が隔離され、そしてS1およびS2の混合が防止される(図1Eを参照のこと)。次いで、この混合物は反応させられ、そして反応物が、交差点106または交差点106を含む交差形状の領域をモニタリングすることによって検出される。加熱(例えば、増幅反応の間のサーモサイクリング)を必要とする分析に関して、このデバイスは、ヒーター上に配置され、そしてサンプルが隔離されたままで加熱される。
【0059】
図1Aに示される改変版のデバイスを図1Fに示す。一般構造は、図1Aに示される構造と多くの類似性を保有し、そして両方の図において共通の要素は、同じ参照番号を共有する。図1Fに図示されるデバイス150は、対の水平フローチャネル104が、共通の入口124に接続されているという点で異なる。このことは、二連のセットの試薬が、入口124へのまさに1回の注入によって、2つの隣接したフローチャネルに導入されることを本質的に可能にする。共通の入口の使用は、垂直フローチャネル102に関してさらに拡大される。この特定の例では、各サンプルは、サンプル入口120への1回の注射によって、5個の垂直フローチャネル102中に導入される。従って、この特定のデバイスを用いて、サンプルと試薬との各特定の組み合わせについて本質的に10個の重複した反応物が存在する。もちろん、重複した反応の数は、共通の入口120、124に接続される、垂直フローチャネル102および/または水平フローチャネル104の数を変更することによって、所望により変化させられ得る。
【0060】
図1Fに示されるデバイスはまた、別個のコントロールチャネル入口128を備え、このコントロールチャネル入口128は、コントロールチャネル130を調節し、このコントロールチャネル130は、出口132および別のコントロールチャネル入口132に向かう溶液の流動を支配するために用いられ、このコントロールチャネル入口132は、コントロールチャネル134を調節し、このコントロールチャネル134は、出口136への溶液の流動を調節する。さらに、デバイス150は、ガードチャネル138を組み込む。この特定の設計では、このガードチャネル138は、コントロールチャネル116の一部として形成される。上記のように、このガードチャネル138は、列に並んだバルブ108よりも小さい;その結果、ガードチャネル138の膜は、下層の水平フローチャネル104に向かってゆがまず、その結果、溶液の流動が中断される。
【0061】
最後に、図1Fに示される設計は、反応が、水平フローラインと垂直フローラインとの交差点でのウェルにおいて生じないが、それら自体の交差点で生じるという点で異なる。
【0062】
(V.ブラインドチャネル設計)
(A.一般)
ブラインドチャネル設計を利用するデバイスは、特定の特徴を有する。第一に、このデバイスは、1つ以上のフローチャネルを備え、このフローチャネルから、1つ以上のブラインドチャネルが枝分かれする。上に示されるように、このようなチャネルの端部領域は、反応部位として働き得る。上に重なるフローチャネルによって形成されるバルブは、ブラインドチャネルの端部において、この反応部位を隔離するように作動され得る。これらのバルブは、反応部位を切り換え可能に隔離するための機構を提供する。
【0063】
第二に、ブラインドチャネルと連絡するフローチャネルネットワークは、反応部位の全てまたは大部分が、単一または制限された数の入口(例えば、5未満または10未満)で充填され得るように構成される。ブラインドフローチャネルを充填する能力は、可能にされる。なぜなら、このデバイスは、弾性材料から作製されるからである。この弾性材料は、フローチャネル内およびブラインドチャネル内の空気が、溶液がこれらのチャネルに導入されるにつれて、これらの細孔を通って逃れ得るために十分に多孔性である。他の微小流体デバイスにおいて利用される、材料の孔隙率の欠乏は、ブラインドチャネル設計の使用を妨げる。なぜなら、ブラインドチャネル内の空気が、溶液が注入されるにつれて逃れる通路を有さないからである。
【0064】
第三の特徴は、1つ以上の試薬が、製造の間(製造プロセスについてのさらなる詳細については、下記を参照のこと)、反応部位内で、エラストマーの基部層に非共有結合的に堆積することである。試薬は、非共有結合する。なぜなら、これらの試薬は、サンプルが反応部位に導入される場合に溶解するように設計されるからである。分析物の数を最大にするために、異なる反応物または反応物のセットが、異なる反応部位の各々に堆積される。
【0065】
特定のブラインドチャネルデバイスは、反応部位がアレイの形態で配置されるように設計される。
【0066】
従って、核酸増幅反応を実施するために設計されたブラインドチャネルデバイスにおいて、例えば、伸長反応を実施するために必要とされる1つ以上の試薬が、このデバイスの製造の間に、反応部位の各々に堆積される。このような試薬としては、例えば、以下のうちの全てまたはいくつかが挙げられる:プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、補因子、金属イオン、緩衝剤、インターカレーション色素など。ハイスループット分析を最大にするために、DNAの異なる領域を増幅するように選択された異なるプライマーが、各反応部位に堆積される。その結果、核酸テンプレートが反応部位に入口を介して導入される場合、多数の伸長反応が、テンプレートの異なるセグメントにおいて実施され得る。増幅反応のために必要な熱サイクリングは、このデバイスを熱サイクリングプレート上に置き、そしてこのデバイスを、種々の必要とされる温度の間でサイクリングすることによって、達成され得る。
【0067】
試薬は、種々の様式で固定され得る。例えば、いくつかの例において、1つ以上の試薬が、反応部位において非共有結合的に堆積され、一方で他の例においては、1つ以上の試薬が、反応部位において、基材に共有結合される。共有結合される場合、これらの試薬は、リンカーを介して基材に結合され得る。種々のリンカー型(例えば、光化学的リンカー/光不安定リンカー、熱不安定リンカーおよび酵素的に切断され得るリンカー)が使用され得る。いくつかのリンカーは、二官能性(すなわち、このリンカーは、このリンカーが結合するエレメント上に位置する基と反応性の各末端において、官能基を含む)である;各末端にある官能基は、同じであるかまたは異なり得る。いくつかのアッセイにおいて使用され得る適切なリンカーの例としては、直鎖または分枝鎖の炭素リンカー、複素環式リンカーおよびペプチドリンカーが挙げられる。種々の型のリンカーが、Pierce Chemical Company,Rookfork,Illinoisから入手可能であり、そしてEPA 188,256;米国特許第4,671,958号;同第4,659,839号;同第4,414,148号;同第4,669,784号;同第4,680,338号、同第4,569,789号および同第4,589,071号、ならびにEggenweiler,H.M.,Pharmaceutical Agent Discovovery Today 1998、3、552に記載されている。NVOC(6ニトロベラトリルオキシカルボニル)リンカーおよび他のNVOC関連リンカーは、適切な光化学的リンカーの例である(例えば、WO90/15070およびWO92/10092を参照のこと)。プロテアーゼ切断部位を有するペプチドは、例えば、米国特許第5,382,513号において議論されている。
【0068】
(B.例示的な設計および使用)
図2は、ブラインドチャネル設計を利用する1つの例示的なデバイスの、単純化平面図である。デバイス200は、フローチャネル204およびそこから枝分かれする枝分かれフローチャネル206のセットを備え、これらは、弾性基材202に形成されている。各枝分かれフローチャネル206は、反応部位208で終結し、これによって、反応部位のアレイを形成する。コントロールチャネル210が、枝分かれフローチャネル206の上に重なり、このコントロールチャネルは、膜212によって、枝分かれフローチャネル206から隔離される。コントロールチャネル210の作動は、膜212を枝分かれフローチャネル206内へと偏向させ(すなわち、バルブとして機能させ)、従って、反応部位208の各々が、他の反応部位から隔離され得る。
【0069】
このようなデバイスの作動は、試験サンプルを、フローチャネル204に溶液で注入する工程、引き続いて、各枝分かれチャネル206の各々に流し込む工程を包含する。一旦、サンプルが各枝分かれチャネル206を満たすと、コントロールチャネル210が作動されて、バルブ/膜212の活性化を引き起こして枝分かれチャネル206に偏向し、これによって、各反応部位208を密封する。サンプルが反応部位208に流入し、そして反応部位208に残る場合、このサンプルは、この反応部位208の各々で予めスポットした試薬に溶解する。一旦溶解すると、これらの試薬は、サンプルと反応し得る。バルブ212は、各反応部位208において溶解した試薬が、拡散によって混合することを防止する。次いで、サンプルと試薬との間の反応が、代表的には反応部位208において、検出される。以下の温度制御の節に記載されるように、反応物は、必要に応じて、加熱され得る。
【0070】
図3Aは、いくらかより複雑なブラインドフローチャネル設計の例を示す。この特定の設計300において、水平フローチャネル304のセットの各々は、その端部において、2つの垂直フローチャネル302に接続される。複数の枝分かれフローチャネル306が、水平フローチャネル304の各々から延びる。この特定の設計における枝分かれフローチャネル304は、任意の所定の水平フローチャネル304に接続された枝分かれチャネル306が、すぐ隣接する水平フローチャネル304に接合された2つの枝分かれチャネル306の間に位置するように、またはすぐ隣接するフローチャネル304および1つの垂直フローチャネル302に接合された枝分かれフローチャネル306の間に位置するように、挟まれる。図3Aに示される設計と同様に、各枝分かれフローチャネル306は、反応部位308で終結する。図3Aに示される設計はまた、コントロールチャネル310から構成され、このコントロールチャネル310は、枝分かれチャネルの各々の上に重なり、そして膜312によって、下に重なる枝分かれチャネルから隔離される。コントロールチャネルは、ポート316において作動される。垂直フローチャネル302および水平フローチャネル304は、入口314へのサンプルの注入が、水平フローチャネルおよび垂直フローチャネルのネットワーク全体にわたって、そして最終的に、枝分かれフローチャネル306を介して反応部位308の各々へと、溶液が流れることを可能にするように、相互接続される。
【0071】
従って、操作の際に、サンプルは、溶液を反応部位の各々に導入するための入口に注入される。一旦、反応部位が充填されると、バルブ/膜が作動されて、コントロールチャネルをポートにおいて加圧することによって、溶液を反応部位内にトラップする。反応部位に先に堆積していた試薬が、反応部位において再懸濁され、これによって、堆積された試薬とサンプルとの間の、各反応部位においての反応を可能にする。反応部位における反応は、検出器によってモニタリングされる。再度、反応は、必要に応じて、以下の温度制御の節に記載される方法に従って、制御可能に加熱され得る。
【0072】
図3Aに示される一般的な設計の、なおより複雑なバージョンが、図3Bに示される。図3Bに示されるデバイスは、図3Aに示される水平フローチャネルおよび枝分かれフローチャネル302のユニット組織化が、複数回繰り返されるデバイスである。図3Bに示されるデバイスは、加熱が関与する適用(例えば、熱サイクリング)において利用されるように、ガードチャネル320を、これらのデバイスに含めることをさらに示す。ガードチャネル320の、フローチャネル304および枝分かれチャネル306に対する例示的な配向は、図3Cに示される拡大図において示される。ガードチャネル320は、枝分かれフローチャネル306および反応部位308の上に重なる。上で議論されるように、デバイス300の加熱の間、水が、ガードチャネル320を通して流されて、このデバイスにおける水の局所濃度を増加させ、これによって、フローチャネル306および反応部位308における溶液からの水の蒸発を減少させる。
【0073】
この節の最初で議論された、ブラインドチャネルデバイスの特徴は、デバイスのフットプリントを最小にし、そして多数の反応部位がこのデバイス上に形成されること、および高い密度が得られることを可能にする。例えば、2500個の反応部位を有するこの型のデバイスは、標準的な顕微鏡スライドガラス(25mm×75mm)上に適合するように、容易に製造され得る。上記特徴はまた、ブラインドチャネル設計を利用するデバイスを用いて、非常に高密度の反応部位が得られることを可能にする。例えば、1cmあたり少なくとも50、60、70、80、90または100の反応部位、あるいはこれらの間の任意の密度値が、容易に得られ得る。しかし、特定のデバイスは、例えば、100〜4000反応部位/cm、またはこれらの間の任意の整数の密度値の範囲の、なおより高い密度を有する。例えば、いくつかのデバイスは、1cmあたり少なくとも100部位、150部位、200部位、250部位、300部位、400部位、500部位、600部位、700部位、800部位、900部位または1000部位の密度を有する。1cmあたり少なくとも2000部位、3000部位、または4000部位の非常に高い密度を有するデバイスもまた、得られ得る。このような高い密度は、デバイス上の非常に多数の反応部位に直接変形される。ブラインドチャネル構築物を利用するデバイスは、代表的に、少なくとも10〜100の反応部位、またはこの間の任意の整数の部位を有する。より代表的には、このデバイスは、100〜1,000の反応部位、またはこの間の任意の整数の部位を有する。より高い密度のデバイスは、なおさらに多くの反応部位(例えば、少なくとも1,000〜100,000の反応部位、またはこれらの間の任意の整数の部位)を有し得る。従って、特定のデバイスは、そのデバイスの全体の大きさに依存して、少なくとも100;500;1,000;2,000;3,000;4,000;5,000;6,000;7,000;8,000;9,000;10,000;20,000;30,000;40,000;50,000;または100,000の反応部位を有する。
【0074】
得られ得る多数の反応部位および密度はまた、非常に小さいウェルまたは空洞を製造する能力の結果であり得る。例えば、空洞またはウェルは、代表的に、50nL未満;他の例においては、40nL未満、30nL未満、20nL未満、または10nL未満;およびなお他の例においては、5nL未満または1nL未満の体積を有する。具体的な例として、特定のデバイスは、300ミクロン長、300ミクロン幅、および10ミクロン深さのウェルを有する。
【0075】
本明細書中に提供されるブラインドチャネルデバイスは、PCT出願PCT/US01/44549(WO02/43615として公開された)およびPCT出願PCT/US02/10875(WO02/082047として公開された)に議論される、特定の設計特徴および方法論を利用し得、これには、例えば、デッドエンドチャネルを充填するため、液体プライミング、加圧外部ガス(outgas)プライミングのストラテジー、および微小流体チャネルの充填の間にガスを交換するための種々のストラテジーが挙げられる。これらのPCT公開公報の両方は、すべての目的で、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0076】
(VI.ハイブリッド設計)
なお他のデバイスは、マトリックスおよびブラインド充填設計のハイブリッドである。この型のデバイスの設計は、図3Aに示されるブラインドチャネルデバイスに類似するが、各水平フローチャネルは、その独自のサンプル入口ポートに接続されており、そしてこれらの水平フローチャネルは、垂直フローチャネルを介して相互接続されていない。その結果、任意の所定の水平フローチャネルに導入されるサンプルは、その水平フローチャネルおよびそれに付着した反応部位のみを充填する。一方で、図3Aに示されるブラインドフローチャネルデバイスにおいて、サンプルは、垂直フローチャネル302を介して、水平フローチャネル304間で流れ得る。
【0077】
この一般的なデバイスの例は、図4に示される。デバイス400は、複数の水平フローチャネル404を備え、これらの各々が、そのチャネルから、そしてその独自のサンプル入口414から延びる、複数の枝分かれフローチャネル406を有する。コントロールチャネル410は、枝分かれフローチャネル406の各々の上に重なり、そして膜(バルブ)412が、コントロールチャネル410を、下に重なる枝分かれフローチャネル406から隔離する。ブラインドフローチャネルの設計と同様に、入口416におけるコントロールチャネルの作動は、膜412の枝分かれフローチャネル406への変形および反応部位408の隔離を引き起こす。この設計のバリエーションにおいて、各水平フローチャネル404は、各端部において入口414を備え得、従って、サンプルが両端から導入されることを可能にする。
【0078】
いくつかの例において、試薬が、このデバイスの製造の間に、反応部位に堆積される。これは、多数のサンプルが、比較的多数の反応条件下で、短時間で、時間を消費する試薬添加(マトリックスデバイスを用いる場合に必要とされるような)を必要とせずに、試験されることを可能にする。あるいは、反応混合物が、チップ上への注入の前に調製され得る。一旦、この混合物が注入されると、これらは、分析され得るか、またはさらに処理され得る(例えば、加熱され得る)。
【0079】
異なるサンプルを水平フローチャネルの各々に注入することによって、多数のサンプルが、迅速に分析され得る。試薬が、反応部位において予め堆積されたと仮定すると、任意の所定の水平フローチャネルに付随する各反応部位における同じ試薬の存在は、多数の複製反応を、各サンプルを用いて実施するためのたやすい方法を提供する。そうではなく、反応部位における試薬が任意の所定のフローチャネルについて異なる場合、各サンプルは、種々の異なる反応条件に、本質的に同時に曝露される。
【0080】
従って、本明細書中で提供されるデバイスは、異なる型の調査のためにあつらえられる。調査が、比較的多数の異なるサンプルの、ユーザに制御された条件下でのスクリーニングを包含する場合(例えば、使用者が選択した100の試薬に対して100のサンプル)、マトリックスデバイスは、有用な解決を提供する。しかし、この調査が1つまたは制限された数のサンプルを、広範な種々の反応条件下で分析することを包含する場合(例えば、10,000の反応条件に対して1のサンプル)、ブラインドチャネル設計が有用である。最後に、比較的多数のサンプルを、既定された反応条件に対して、試薬を注入する必要なしに試験することを望む場合(例えば、100の予め規定された試薬に対して100のサンプル)、ハイブリッドデバイスが有用である。
【0081】
(VII.温度制御)
(A.デバイスおよび構成要素)
様々な洗練された多数の異なる選択肢が、微小流体デバイスの選択された領域またはデバイス全体において、温度を制御するために利用可能である。従って、本明細書中において使用される場合、用語温度制御器とは、微小流体デバイスの全体または微小流体デバイスの一部(例えば、特定の温度範囲内またはブラインドチャネル型の微小流体デバイスのマトリクスにおける1つ以上の接合部)において、温度を調節し得るデバイスまたは要素をいうように、広く意味される。
【0082】
一般に、これらのデバイスは、そのデバイスを熱サイクルするための、熱サイクリングプレート上に配置される。種々のこのようなプレートは、商業的供給源(例えば、The
rmoHybaid Px2(Franklin,MA),MJ Research PTC−200(South San Francisco,CA),Eppendorf Part# E5331(Westbury,NY),Techne Part# 205330(Princeton,NJ)が挙げられる)から容易に入手可能である。
【0083】
熱サイクリング工程の精度を確実にするために、特定のデバイスにおいては、このデバイスの種々の領域において温度を検出するセンサを組み込むことが、有用である。温度を検出するための1つの構造体は、熱電対である。このような熱電対は、下に重なる基材材料上にパターン化された薄膜ワイヤとして、または微小作製された弾性材料自体に直接組み込まれたワイヤとして、作製され得る。
【0084】
温度はまた、電気抵抗の変化を介して感知され得る。例えば、従来の技術を利用して、下にある半導体基材上に作製された温度計の抵抗の変化は、所定の温度変化に対して較正され得る。あるいは、温度計は、微小作製された弾性材料に直接挿入され得る。抵抗によって温度を検出するためのなお別のアプローチは、Wuら、「MEMS Flow Sensors for Nano−fluidic Applications」、Sensors and Actuators A89 152−158(2001)(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されている。この論文は、ドープされたポリシリコン構造体の、温度の制御と感知との両方のための使用を記載する。ポリシリコンおよび他の半導体材料について、抵抗の温度係数は、ドーパントの正体および量によって正確に制御され得、これによって、所定の適用についてセンサの性能を最適化する。
【0085】
熱染色材料は、増幅デバイスの領域において温度を検出するために利用可能な、別の型の構造体である。具体的には、特定の材料は、それらが異なる温度を受ける場合、色を劇的かつ再現性よく変化させる。このような材料は、溶液が異なる温度を受ける場合、その溶液に添加され得る。熱染色材料は、下に重なる基材上に形成され得るか、または弾性材料内に組み込まれ得る。あるいは、熱染色材料は、粒子の形態で、サンプル溶液に添加され得る。
【0086】
温度を検出するための別のアプローチは、赤外線カメラの使用を介してである。赤外線カメラは、顕微鏡と組み合わさって、増幅構造体全体の温度プロフィールを決定するために使用され得る。弾性材料の、放射線に対する透過性は、この分析を容易にする。
【0087】
温度検出のためのなお別のアプローチは、焦電センサの使用を介してである。具体的には、いくらかの結晶材料(特に、圧電挙動もまた示す材料)は、焦電効果を示す。この効果は、材料の結晶格子の極性、および従って、この材料にわたる電圧が温度に非常に依存する現象を説明する。このような材料は、基材上またはエラストマー上に組み込まれ得、そして温度を検出するために利用され得る。
【0088】
他の電気的現象(例えば、キャパシタンスおよびインダクタンス)が、本発明の実施形態に従って、温度を検出するために利用され得る。
【0089】
(B.正確な熱サイクリングの確認)
以下の製造の節においてより詳細に記載されるように、ブラインドチャネルデバイスは、基部層を有し、この上に、試薬が配置される。フローチャネルおよびコントロールチャネルを収容する2つの層を備える構造体は、基部層の上に重ねられ、その結果、このフローチャネルは、堆積された試薬と整列する。次いで、基部層の他方の面は、基材(例えば、ガラス)上に配置される。通常、反応が起こる反応部位は、基材/ガラス界面の約100〜150ミクロン上方である。熱の拡散性についての公知の等式、ならびにこのデバイスにおいて利用されるエラストマーおよびガラスについての適切な値を使用して、反応部位における温度が、制御器が維持しようとする温度に達するために必要とされる時間を計算し得る。表1に示される計算値は、反応部位が約100〜150ミクロン(すなわち、本明細書中に記載されるデバイスについて代表的な距離)であるデバイスにおいて利用されるよりかなり厚いエラストマー層およびガラス層を使用してさえも、温度が迅速に達成され得ることを実証する。
【0090】
【表1】


図5は、ブラインドチャネルデバイスを使用して、所望の温度が達成される迅速性を示す。
【0091】
(VIII.検出)
(A.一般)
多数の異なる検出ストラテジーが、本明細書中に提供される微小流体デバイスとともに利用され得る。適切なシステムの選択は、事象の型および/または検出される薬剤について、部分的に特徴付けられる。検出器は、多数の異なる信号型(放射性同位体、発蛍光団、発色団、電子密度粒子、磁気粒子、スピン標識、化学発光を発する分子、電気化学的に活性な分子、酵素、補因子、核酸プローブに結合した酵素、および酵素基質からの信号が挙げられるが、これらに限定されない)を検出するように、設計され得る。
【0092】
本発明の微小流体デバイスとともに使用するために適した、例示的な検出方法論としては、光散乱、マルチチャネル蛍光検出、UVおよび可視波長の吸収、ルミネッセンス、差示的反射率、および共焦点レーザー走査が挙げられるが、これらに限定されない。特定の適用において使用され得る更なる検出方法としては、シンチレーション近位アッセイ技術、放射線化学検出、蛍光分極、蛍光相関分光法(FCS)、時間分解エネルギー移動(TRET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)のようなバリエーションが挙げられる。更なる検出の選択肢としては、電気抵抗、抵抗率、インピーダンス、および電圧の感知が挙げられる。
【0093】
検出は、「検出セクション」または「検出領域」において起こる。これらおよび他の関連する用語は、検出が起こる微小流体デバイスの部分を言う。上に示されたように、ブラインドチャネル設計を利用するデバイスを用いて、検出セクションは、一般に、各反応部位に付随するバルブによって隔離されるような、反応部位である。マトリックスに基づくデバイスのための検出セクションは、通常、フローチャネルの、交差点に隣接する領域、交差点自体、または交差点および周囲の領域を含む領域内にある。
【0094】
検出セクションは、1つ以上の顕微鏡、ダイオード、光刺激デバイス(例えば、レーザー)、光電子増倍管、プロセッサおよび上記のものの組み合わせと通信し得、これらは共同して、特定の事象および/または薬剤に関連する信号を検出する。しばしば、検出される信号は、光学検出器によって検出セクションにおいて検出される、光学信号である。光学検出器は、1つ以上のフォトダイオード(例えば、アバランシェフォトダイオード)、例えば、光電子増倍管に導く、光ファイバー光ガイド、顕微鏡、および/またはビデオカメラ(例えば、CCDカメラ)を備え得る。
【0095】
検出器は、微小流体デバイス内に微小作製され得るか、または別個の要素であり得る。検出器が別個の要素として存在し、そして微小流体デバイスが複数の検出セクションを備える場合、検出は、任意の所定の瞬間において、単一の検出セクションにおいて起こり得る。あるいは、走査システムが使用され得る。例えば、特定の自動化システムは、微小流体デバイスに対して光源を走査する;他のシステムは、検出器にわたって放射された光を走査するか、またはマルチチャネル検出器を備える。具体的に示される例として、微小流体デバイスは、併進可能なステージに取り付けられ得、そして顕微鏡観察下で走査され得る。次いで、このように獲得された信号は、信号の解釈および処理のためのプロセッサに経路付けられる。光電子増倍管のアレイもまた、利用され得る。さらに、すべての異なる検出セクションから同時に信号を収集し、一方で各セクションからの信号を決定する能力を有する光学系が、利用され得る。
【0096】
外部検出器は、使用可能である。なぜなら、提供されるデバイスは、モニタリングされる波長において光学的に透明な材料から、完全にかまたは大部分が作製されるからである。この特徴は、本明細書中に記載されるデバイスが、従来のシリコンベースの微小流体デバイスを用いては不可能な、多数の光学検出システムを利用することを可能にする。
【0097】
検出器は、検出可能な信号を発生させるレポーターを刺激するための、光源を備え得る。利用される光源の型は、部分的には、活性化されるレポーターの性質に依存する。適切な光源としては、レーザー、レーザーダイオードおよび高強度ランプが挙げられるが、これらに限定されない。レーザーが利用される場合、このレーザーは、検出セクションのセットまたは単一の検出セクションを走査するために利用され得る。レーザーダイオードは、微小流体デバイス自体に微小作製され得る。あるいは、レーザーダイオードは、別のデバイスに製造され得、このデバイスは、熱サイクリング反応を実施するために利用される微小流体デバイスに隣接して配置され、その結果、このダイオードからのレーザー光は、検出セクションに指向される。
【0098】
検出は、多数の非光学アプローチを同様に包含し得る。例えば、検出器はまた、例えば、温度センサ、導電性センサ、電位測定センサ(例えば、pH電極)および/または大気センサ(例えば、酸化反応および還元反応をモニタリングするため)を備え得る。
【0099】
多数の市販の外部検出器が、利用され得る。これらの多くは、蛍光標識された試薬を調製する際に容易であることに起因して、蛍光検出器である。利用可能な検出器の特定の例としては、Applied Precision Array WoRx(Applied Precision,Issaquah,WA)が挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
(B.増幅された核酸の検出)
(1.インターカレーション色素)
二本鎖DNAへの結合の際にのみ蛍光を発する特定のインターカレーション色素が、二本鎖の増幅されたDNAを検出するために使用され得る。適切な色素の例としては、SYBRTMおよびPico Green(Molecular Probes,Inc.、Eugene、OR)、エチジウムブロマイド、ヨウ化プロピジウム、クロモマイシン、アクリジンオレンジ、Hoechst 33258、Toto−1、Yoyo−1およびDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール塩酸塩)が挙げられるが、これらに限定されない。インターカレーション色素の使用に関するさらなる考察は、Zhuら、Anal.Chem.66:1941−1948(1994)(これは、その全体が参考として援用される)によって提供される。
【0101】
(2.FRETベースの検出方法)
この型の検出方法は、ドナー/アクセプター発蛍光団対中のドナー(レポーター)および/またはアクセプター(クエンチャー)発蛍光団からの蛍光における変化を検出する工程を包含する。ドナーおよびアクセプター発蛍光団対は、ドナーの発光スペクトルが、放射アクセプターの励起スペクトルと重複するように、選択される。従って、発蛍光団の対が、互いに十分近接すると、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動が生じ得る。このエネルギー移動は、検出され得る。
【0102】
(FRETおよびテンプレート伸長反応)
これらの方法は、一般に、ドナー/アクセプター対の1つのメンバーで標識されたプライマー、およびドナー/アクセプター対の他方のメンバーで標識されたヌクレオチドを利用する。テンプレート依存的な伸長反応の間の、プライマーへの標識ヌクレオチドの取り込みの前に、ドナーおよびアクセプターは、エネルギー移動が生じ得ないように、互いに十分間隔を空けられる。しかし、標識ヌクレオチドがプライマーに取り込まれ、そしてこの間隔が十分近くなると、エネルギー移動が生じ、そして検出され得る。これらの方法は、単一ヌクレオチド多型の検出において単一塩基対伸長反応を実施する際に特に有用であり(以下を参照のこと)、そして米国特許第5,945,283号およびPCT公開WO 97/22719に記載されている。
【0103】
(定量的RT−PCR)
種々のいわゆる「リアルタイム増幅」方法または「リアルタイム定量的PCR」方法もまた、増幅プロセス自体の間またはその後に形成される増幅産物の量を測定することによって、サンプル中に存在する標的核酸の量を決定するために利用され得る。発蛍光ヌクレアーゼアッセイは、本明細書中に記載されるデバイスを用いて首尾よく使用され得る、リアルタイム定量方法の1つの特定の例である。増幅産物の形成をモニタリングするこの方法は、二重標識発蛍光オリゴヌクレオチドプローブを使用する、PCR産物の蓄積の継続的測定(「TaqMan」方法として文献中で頻繁に言及されるアプローチ)を含む。
【0104】
このようなアッセイにおいて使用されるプローブは、代表的に短い(約20〜25塩基)のポリヌクレオチドであり、このポリヌクレオチドは、2種の異なる蛍光色素で標識されている。このプローブの5’末端は、代表的に、レポーター色素に結合され、そして3’末端は、クエンチング色素に結合されているが、これらの色素は、プローブ上の他の位置にも同様に結合され得る。このプローブは、標的核酸上のプローブ結合部位との、少なくとも相当な配列相補性を有するように設計される。プローブ結合部位に隣接する領域に結合するPCRプライマーの上流および下流もまた、この反応混合物中に含まれる。
【0105】
プローブがインタクトな場合、2つの発蛍光団間のエネルギー移動が生じ、そしてクエンチャーが、レポーターからの発光をクエンチする。PCRの伸長期の間、プローブは、核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)の5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、それによって、ポリヌクレオチド−クエンチャーからレポーターを放出させ、そして適切な検出器によって測定され得るレポーター発光強度の増加を生じる。
【0106】
発蛍光アッセイの間に生じる蛍光発光を測定するために特に適合された1つの検出器は、Applied Biosystems,Inc.、Foster City、CAにより製造されるABI 7700である。この機器に備えられたコンピュータソフトウェアは、増幅過程全体にわたって、レポーターおよびクエンチャーの蛍光強度を記録し得る。次いで、これらの記録された値は、連続的な基準に対して正規化されたレポーター発光強度の増大を計算し、そして最終的に、増幅されているmRNAの量を定量するために使用され得る。
【0107】
増幅産物の濃度のリアルタイム検出を行うための発蛍光方法の理論および操作に関するさらなる詳細は、例えば、以下に記載される:米国特許第5,210,015号(Gelfand)、同第5,538,848号(Livakら)、および同第5,863,736号(Haaland)、ならびにHeid,C.A.ら、Genome Research,6:986−994(1996);Gibson,U.E.Mら、Genome Research 6:995−1001(1996);Holland,P.M.、ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280,(1991);およびLivak,K.J.、ら、PCR Methods and Applications 357−362(1995)(これらの各々は、その全体が参考として援用される)。
【0108】
従って、増幅反応が進行すると、漸増量の色素が結合し、そして付随するシグナルの増加がこれに伴う。
【0109】
上記のようなインターカレーション色素はまた、定量的PCR方法への異なるアプローチにおいて利用され得る。上記のように、これらの色素は、二本鎖DNAに優先的に結合し(例えば、SYBR GREEN)、そして結合した場合にのみシグナルを生じる。従って、増幅反応が進行すると、漸増量の色素が結合し、そして検出され得る、付随するシグナルの増加がこれに伴う。
【0110】
(分子ビーコン)
分子ビーコンを用いて、この分子ビーコンが増幅産物の相補的な領域にハイブリダイズする際のプローブのコンフォメーション変化は、検出可能なシグナルの形成を生じる。プローブ自体は、2つのセクションを含む:5’末端の一方のセクションおよび3’末端の他方のセクション。これらのセクションは、プローブ結合部位にアニールするプローブのセクションに隣接し、そして互いに相補的である。一方の端のセクションは、代表的に、レポーター色素に結合され、そして他方の端のセクションは、通常、クエンチャー色素に結合される。
【0111】
溶液中で、2つの端セクションは、互いにハイブリダイズして、ヘアピン構造を形成し得る。このコンフォメーションにおいて、レポーター色素およびクエンチャー色素は、レポーター色素からの蛍光が、クエンチャー色素によって効果的にクエンチされるのに十分接近している。対照的に、ハイブリダイズしたプローブは、クエンチの程度が低減される、直線状のコンフォメーションを生じる。従って、2つの色素についての発光の変化をモニタリングすることによって、増幅産物の形成を間接的にモニタリングすることが可能である。この型のプローブおよびこれらの使用方法は、例えば、以下にさらに記載される:Piatek,A.S.ら、Nat.Biotechnol.16:359−63(1998);Tyagi,S.およびKramer,F.R.,Nature Biotechnology 14:303−308(1996);ならびにTyagi,S.ら、Nat.Biotechnol.16:49−53(1998)(これらの各々は、全ての目的のために、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0112】
(インベーダー)
インベーダーアッセイ(Third Wave Technologies、(Madison、WI))は、SNP遺伝子型決定のために使用され、そしてシグナルプローブ(これは、標的核酸(DNAもしくはRNA)または多型部位に相補的である)と称されるオリゴヌクレオチドを利用する。第二のオリゴヌクレオチド(インベーダーオリゴと称される)は、同じ5’ヌクレオチド配列を含むが、その3’ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド多型を含む。インベーダーオリゴは、標的核酸へのシグナルプローブの結合を妨害し、その結果、このシグナルプローブの5’末端は、多型を含むヌクレオチドにて「フラップ(flap)」を形成する。この複合体は、構造特異的エンドヌクレアーゼ(切断酵素(Cleavase enzyme)と称される)によって認識される。切断酵素(Cleavase)は、ヌクレオチドの5’フラップを切断する。放出されたフラップは、FRET標識を有する第三のプローブと結合し、それによって、切断酵素によって認識される別の二重鎖構造を形成する。この時点で、切断酵素は、クエンチャーから発蛍光団を切り離し、蛍光シグナルを発生させる。SNP遺伝子型決定について、シグナルプローブは、参照(野生型)対立遺伝子または改変体(変異体)対立遺伝子のいずれかとハイブリダイズするように設計される。PCRとは異なり、核酸の増幅が存在せずに、シグナルの直線的増幅が存在する。当業者を導くのに十分なさらなる詳細は、例えば、Neri,B.P.ら、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826:117−125、2000)によって提供される。
【0113】
(Nasba)
核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA))は、テンプレートとしてRNAを使用する検出方法である。RNAに相補的なプライマーは、T7プロモーター部位の配列を含む。このプライマーは、テンプレートRNAに結合し、そして逆転写酵素(RT)が添加されて、3’から5’へと、相補鎖を生成させる。RNase Hが、RNAを消化するために引き続いて添加され、一本鎖cDNAを生じる。次いで、プライマーの第二のコピーが、一本鎖cDNAに結合し得、そして二本鎖cDNAを生成し得る。T7 RNAポリメラーゼが、第一のプライマーによってcDNA配列に取り込まれたT7プロモーター部位由来の多コピーのRNAを生じるために、添加される。言及される全ての酵素が、41℃で機能し得る(例えば、Compton,J. Nucleic Acid Sequence−based Amplification,Nature 350:91−91,1991を参照のこと)。
【0114】
(スコーピオン)
この方法は、例えば、Thelwell N.、ら、Nucleic Acids Research,28:3752−3761,2000によって記載されている。
【0115】
(3.容量性DNA検出)
DNA濃度と、1kHzの電場を横切る核酸の通過によって引き起こされるキャパシタンスの変化との間に、直線的な関係が存在する。この関係は、種に依存しないことが見出されている(例えば、Sohnら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:10687−10690を参照のこと)。従って、特定のデバイスにおいて、フローチャネル(例えば、図1の実質的に環状のフローチャネルまたは図2の反応チャンバ)内の核酸は、増幅産物の濃度を決定するために、このような場に供される。あるいは、増幅産物を含む溶液が引き出され、次いで電場に供される。
【0116】
(IX.反応を実施するための混合物の組成)
本明細書中に開示される微小流体デバイスを用いて実施される反応は、この反応を増強するための特定の添加剤を用いて、代表的に実施される。従って、例えば、試薬が沈着されるデバイスの場合、これらの添加剤は、例えば、1つの反応部位における1つ以上の反応物でスポットされ得る。ある添加剤セットは、弾性基材上のタンパク質結合部位をブロックする、ブロッキング試薬である。多数の異なるタンパク質(例えば、ゼラチンおよび種々のアルブミンタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン))およびグリセロールを含む、広範な種々のこのような化合物が、利用され得る。
【0117】
界面活性添加剤もまた、有用であり得る。多数の異なる界面活性剤のいずれかが、利用され得る。例としては、SDSおよび種々のTriton界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
核酸増幅反応の特定の場合において、多数の異なる型の添加剤が含まれ得る。1つのカテゴリーは、増幅反応を促進するエンハンサーである。このような添加剤としては、核酸の二次構造を減じる試薬(例えば、ベタイン)およびミスプライム事象を減じる薬剤(例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかのポリメラーゼが増強された結果を生じることがまた、特定の増幅反応を実施する際に見出された。例えば、Thermus aquaticus由来のAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて良好な結果が得られたが、いくつかの例において、改善された反応が、DyNAzymeポリメラーゼ(Finnzyme,Espoo,Finland)を使用して得られた。このポリメラーゼは、好熱細菌Thermus brockianusに由来する。利用され得る他の例示的ポリメラーゼとしては、rTHポリメラーゼXL(これは、Thermus thermophilus(Tth)およびThermococcus litoralis(Tli)の組み合わせである)、超好熱古細菌Pyrosoccus woesei(Pwo)ポリメラーゼおよびTgo DNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書中に開示される特定のデバイスを用いて、核酸増幅反応を含む反応を実施する際に有用な添加剤についてのさらなる詳細は、以下の実施例1に提供される。
【0121】
(X. 例示的適用)
本明細書で提供される微小流体デバイスは、多数の反応部位を備えるように製造され得、このデバイスは、種々の広範なスクリーニングおよび分析方法において有用である。一般的に、このデバイスを利用して、検出可能なシグナル、または別の種との相互作用の際に、検出可能なシグナルを生成する産物を形成するように反応する種間の反応を検出し得る。種々の型の温度制御システムを用いるそれらの使用の観点において、このデバイスはまた、温度制御を必要とする多数の異なる型の分析物または反応において利用され得る。
【0122】
(A. 核酸増幅反応)
本明細書に開示されるデバイスを利用して、本質的に任意の型の核酸増幅反応を実施し得る。従って、例えば、増幅反応は、線形増幅、(単一のプライマーを用いる増幅)、ならびに指数関数的増幅(すなわち、順方向プライマーセットおよび逆方向プライマーセットを用いて実施される増幅)であり得る。
【0123】
ブラインドチャネル型デバイスを利用して、核酸増幅反応を実施する場合、反応部位に代表的に配置される試薬は、所望の型の増幅反応を実施するのに必要な試薬である。通常、このことは、以下の幾つかまたは全てが、配置されたことを意味する;例えば、プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、金属イオン、緩衝液、および補因子。このような場合に反応部位に導入されるサンプルは、核酸テンプレートである。あるいは、しかし、このテンプレートは、配置され得、そして増幅試薬が、反応部位へ流される。前出での議論のように、マトリックスデバイスを利用して、増幅反応を実施する場合、核酸テンプレートを含むサンプルは、垂直フローチャネルを通って流れ、そして増幅試薬は水平フローチャネルを通って流れ、またその逆もある。
【0124】
恐らく、PCRが、最も知られた増幅技術である。このデバイスは、PCR増幅を実施することに限定されない。実施され得る他の型の増幅反応としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics 4:560(1989)ならびにLandegrenら,Science 241:1077(1988)を参照のこと);(ii)転写増幅(Kwohら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173(1989)を参照のこと);(iii)自己持続型配列複製(Guatelliら,Proc.Nat. Acad.Sci.USA, 87:1874(1990)を参照のこと);ならびに(iv)核酸ベースの配列増幅(NASBA)(Sooknanan,R.およびMalek,L.,BioTechnology 13:563−65(1995)を参照のこと)。前述の参考文献の各々は、全ての目的について、本明細書で参考として援用される。
【0125】
得られた増幅産物の検出は、増幅されたDNAの検出について、前出の任意の検出方法を用いて達成され得る。
【0126】
(B. SNP分析および遺伝子型決定)
(1. 全般)
宿主生物または感染性生物のいずれかの、ゲノム改変と関連する多くの疾患は、少数のヌクレオチドの変化の結果であり、頻繁に、単一ヌクレオチドの変化を含む。このような単一ヌクレオチド変化は、単一ヌクレオチド多型または単にSNPといわれ、SNPが生じる部位は、代表的に、多型部位といわれる。本明細書に記載されるデバイスを利用して、このような多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定し得る。この能力の拡張として、デバイスは、遺伝子型決定分析において利用され得る。遺伝子型決定は、二倍体生物(すなわち、各遺伝子の2つのコピーを有する生物)が、参照対立遺伝子の2つのコピーを含むか(参照型ホモ接合体)、参照対立遺伝子および変異体対立遺伝子の各々の1つのコピーを含むか(すなわち、ヘテロ接合体)、または変異体対立遺伝子の2つのコピーを含むか(すなわち、変異型ホモ接合体)の決定に関与する。遺伝子型決定分析の実施の際に、本発明の方法を利用して、単一変異部位に問合わせ可能である。しかし、多重化についての節において以下にさらに記載されるように、この方法を使用して、同じ遺伝子、異なる遺伝子またはその組み合わせにおける、多くの異なるDNA座における個々の遺伝子型も決定し得る。
【0127】
遺伝子型決定分析の実施に利用されるデバイスは、適切なサイズの反応部位を利用するように設計され、統計学的な観点から、二倍体被験体についての2つの対立遺伝子の各々のコピーが、作動可能なDNA濃度で反応部位に存在することを保証する。そうでなければ、分析は、ヘテロ接合体が、単にホモ接合体であることを示唆する結果をもたらし得る。なぜなら、第2の対立遺伝子のコピーは、反応部位に存在しないからである。以下の表2は、本明細書に記載のデバイスとともに利用され得る種々の例示的なDNA濃度での、1nl反応用量に存在する多数のゲノムのコピーを示す。
【0128】
(表2:示されたDNA濃度での1nL容量に存在するゲノムコピーの数)
【0129】
【表2】


一般的な問題として、サンプルの確率的比例に起因して、増幅反応が開始される前に存在するコピー数は、測定における可能な誤差を決定する。特定のデバイスを使用する遺伝子型決定分析は、代表的に、約0.10ug/uLのDNA濃度を有するサンプルを用いて実施されるが、本発明者らは、反応部位1つに対して単一のゲノムが存在する濃度でのTaqMan反応を首尾よく行った。
【0130】
(2. 方法)
遺伝子型決定分析は、種々の異なるアプローチを用いて実施され得る。これらの方法において、「はい」または「いいえ」の結果を得ること(すなわち、検出は、所定の対立遺伝子が、存在するか否かについての質問に答え得ることのみが必要である)で、一般的に十分である。従って、分析は、多型部位に潜在的に存在する1つの対立遺伝子を検出するのに必要なプライマーまたはヌクレオチドを用いることでのみ、実施され得る。しかし、より代表的には、多型部位に潜在的に存在する各対立遺伝子の存在を検出するためのプライマーおよびヌクレオチドが、含まれる。適切なアプローチの例は、以下の通りである。
【0131】
(単一塩基対伸長(SBPE)反応)
SBPE反応は、遺伝子型決定分析を実施するために特に開発された1つの技術である。多数のSPBEアッセイが開発されているが、一般的なアプローチは、極めて類似している。代表的に、これらのアッセイは、標的核酸に相補的なプライマーをハイブリダイズさせる工程を包含し、その結果、このプライマーの3’末端は、変異部位のすぐ5’側にあるか、またはそれに隣接する。伸長は、変異部位を占有するヌクレオチドに相補的な1つ以上の標識された伸長不可能なヌクレオチドおよびポリメラーゼの存在下で実施される。伸長不可能なヌクレオチドは、プライマーに一旦組み込まれると、ポリメラーゼによるさらなる伸長を防止するヌクレオチドアナログである。さらなる伸長不可能なヌクレオチドが、変異部位におけるヌクレオチドに相補的である場合、標識された伸長不可能なヌクレオチドは、プライマーの3’末端に組み込まれ、標識された伸長産物を生成する。従って、伸長されたプライマーは、標的核酸の変異部位にどのヌクレオチドが存在するかの指標を提供する。このような方法および関連する方法は、例えば、米国特許第5,846,710号;同第6,004,744号;同第5,888,819号;同第5,856,092号;および同第5,710,028号;およびWO92/16657において議論される。
【0132】
伸長された産物の検出は、前出の検出節における伸長反応について記載されたFRET検出アプローチを利用して検出され得る。従って、例えば、本明細書に記載されるデバイスを使用して、ドナー/アクセプター発蛍光団のうちの1つのメンバーにより標識されたプライマー、1〜4個の標識された伸長不可能なヌクレオチド(1つより多くの伸長不可能なヌクレオチドが含まれる場合に差次的に標識される)、ならびにポリメラーゼを含む試薬混合物が、反応部位に導入される(または以前では配置される)。テンプレートDNAを含むサンプルは、次いで、反応部位へと導入され、テンプレート伸長の発生を可能にする。形成された任意の伸長産物は、FRETシグナルの形成によって検出される(例えば、米国特許第5,945,283号およびPCT公開WO97/22719を参照のこと)。この反応は、必要に応じて熱サイクルされ、上記の温度制御方法および装置を用いてシグナルを増大させ得る。
【0133】
(定量的PCR)
遺伝子型決定分析はまた、先に記載された定量的PCR方法を用いて実施され得る。この場合、対立遺伝子形態の各々に相補的な差次的に標識されたプローブは、プライマー、ヌクレオチドおよびポリメラーゼと一緒に試薬として含まれる。しかし、反応は、単一のプローブのみを用いて実施され得るが、このことは、シグナルの欠損が、特定の対立遺伝子の非存在または単なる反応の失敗のいずれに起因するかについて、あいまいさを生じ得る。2つの対立遺伝子が、多型部位について可能である代表的な二対立遺伝子の場合について、対立遺伝子の1つに各々完全に相補的な2つの差次的に標識されたプローブは、増幅プライマー、ヌクレオチドおよびポリメラーゼと一緒に試薬混合物に通常含まれる。標的DNAを含むサンプルは、反応部位に導入される。プローブが相補的である対立遺伝子が、標的DNA中に存在する場合、増幅が生じ、それによって、上記の検出において記載されるような検出可能なシグナルを生じる。いずれの差次的シグナルが得られるかに基づいて、多型部位におけるヌクレオチドの同一性は、決定され得る。両方のシグナルが検出される場合、両方の対立遺伝子が、存在する。反応の間の熱サイクルは、前出の温度制御節において記載されるように実施される。
【0134】
(B. 遺伝子発現分析)
(1.全般)
遺伝子発現分析は、特定の細胞中で1つ以上の遺伝子が発現されるレベルを決定する工程を包含する。この決定は、定性的であり得るが、一般的に、定量的である。差次的遺伝子発現分析において、1つの細胞(例えば、試験細胞)における遺伝子のレベルは、別の細胞(コントロール細胞)における同じ遺伝子のレベルと比較される。種々の広範なこのような比較が、なされ得る。例としては、健常細胞と疾患細胞との間の比較、1つの薬物により処置された個体由来の細胞と別の未処置の個体由来の細胞との間の比較、特定の毒物に曝された細胞と曝されていない細胞との間の比較などが挙げられるが、これらに限定されない。発現のレベルが、試験細胞とコントロール細胞との間で変化する遺伝子は、治療についてのマーカーおよび/または標的として機能し得る。例えば、遺伝子の特定のグループが、健常細胞ではなく疾患細胞においてアップレギュレートされていることが見出される場合、このような遺伝子は、疾患のマーカーとして機能し得、そして診断試験についてのベースとして潜在的に利用され得る。これらの遺伝子はまた、標的であり得る。疾患を標的化するストラテジーは、アップレギュレートされた遺伝子の発現の減少を生じる手順を含み得る。
【0135】
本明細書に開示されるデバイスの設計は、種々の遺伝子発現分析の容易化において有用である。このデバイスは、多数の反応部位を含むので、多数の遺伝子および/またはサンプルが、同時に試験され得る。ブラインドフローチャネルデバイスを使用して、例えば、数百または数千もの遺伝子の発現レベルが、同時に決定され得る。このデバイスはまた、差次的遺伝子発現分析を容易にする。マトリックス設計に関して、例えば、健常細胞から得られるサンプルは、1つのフローチャネルにおいて試験され得、そして疾患細胞由来のサンプルは、すぐ隣接するチャネルに流される。この特徴は、検出の容易性および結果の正確性を増大する。なぜなら、2つのサンプルは、同時に、同条件下で同じデバイス上に流されるからである。
【0136】
(2.サンプルの調製および濃度)
遺伝子の転写レベル(およびこれにより発現レベル)を測定するために、遺伝子または遺伝子フラグメントのmRNA転写物を含む核酸サンプル、またはこのmRNA転写物由来の核酸を得る。mRNA転写物に由来する核酸とは、その合成のために、mRNA転写物またはその部分配列が、最終的にテンプレートとして供される核酸をいう。従って、mRNAから逆転写されたcDNA、そのcDNAから転写されたRNA、そのcDNAから増幅されたDNA、その増幅DNAから転写されたRNAは、全てmRNA転写物に由来し、このように得られた産物の検出は、サンプル中の元々の転写物の存在および/または非存在の指標である。従って、適切なサンプルとしては、遺伝子のmRNA転写物、このmRNAから逆転写されたcDNA、そのcDNAから転写されたcRNA、この遺伝子から増幅されたDNA、この増幅DNAから転写されたRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
いくつかの方法において、核酸サンプルは、生物学的サンプルから単離された総mRNAであり;他の場合においては、その核酸サンプルは、生物学的サンプルからの総RNAである。用語「生物学的サンプル」とは、本明細書中で使用される場合、生物または生物の成分(例えば、細胞、生物学的組織および流体)から得られるサンプルをいう。いくつかの方法において、このサンプルは、ヒト患者由来である。このようなサンプルとしては、痰、血液、血球(例えば、白血球)、組織または細針生検サンプル、尿、腹水、および胸水(fleural fluid)、またはこれらに由来する細胞が挙げられる。生物学的サンプルとしてはまた、組織学的目的で採取された凍結切片のような組織切片が挙げられ得る。しばしば、2つのサンプルが、比較目的で提供される。サンプルは、例えば、異なる細胞型もしくは組織型由来、または異なる個体由来、または2つの異なる処理(例えば、薬物処置およびコントロール)に供された同じ起源のサンプル由来であり得る。
【0138】
mRNAの単離を排除するように選択しない任意のRNA単離技術は、このようなRNAサンプルの精製に利用され得る。例えば、核酸の単離および精製の方法は、WO97/10365、WO97/27317、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biologyの第3章:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I.Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen編)Elsevier,N.Y.(1993);Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biologyの第3章:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part 1.Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen編)Elsevier,N.Y.(1993);およびSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.,(1989);Current Protocols i
n Molecular Biology,(Ausubel,F.M.ら,編)John Wiley&Sons,Inc.,New York(1987−1993)において詳細に記載される。多数の組織サンプルは、当該分野で公知の技術(例えば、米国特許第4,843,155号に記載されるChomczynski,P.の1工程RNA単離プロセスが挙げられる)を使用して容易に処理され得る。
【0139】
記載されるデバイスを利用する遺伝子発現分析において、結果に影響を与える重要な要因は、サンプル中の核酸の濃度である。低コピー数では、ノイズがコピー数の平方根に関連する。従って、許容可能と考えられる誤差のレベルは、必要なコピー数を支配する。特定のサンプル容積中の必要なコピー数は、必要なDNA濃度を与える。必ずしも最適ではないが、50%までの誤差レベルで定量的反応が行われ得るが、好ましくは、より低い。容積1nlとすると、特定の誤差レベルを達成するために必要なDNA濃度は、表3に示される。認められ得るように、特定のデバイスで使用され得るような1nlの容積は、微小流体デバイスで作業可能な濃度で遺伝子発現産物の十分なコピーを有する。
【0140】
【表3】


さらなる計算により、1nl反応部位を利用する本明細書中で提供される特定のデバイスが、正確な発現結果を達成するに十分なDNAを含むことが実証される。具体的には、代表的なmRNA調製手順により、約10μgのmRNAが得られる。代表的には、1細胞あたり1〜10,000コピーの各mRNAが存在することが実証された。任意の所定の細胞内で発現されるmRNAのうち、約4つの最も一般的なメッセージは、約13%の総mRNAレベルを含む。従って、このような高度に発現されたメッセージは、1.3μgのmRNA(各々、4×10−12モルまたは約2.4×1012コピーである)を含む。前述の発現範囲を考慮すると、稀なメッセージは、約2×10−8コピーのレベルで存在すると推定される。標準的な分析において、mRNAサンプルが10μl中に溶解されると、稀なメッセージの濃度は、約2×10コピー/μlであり;この濃度は、1nl ウェルあたり20,000コピー(または4×1011M)に対応する。
【0141】
(3.方法)
発現分析は、代表的には、定量的分析を含むので、検出は、代表的には、上記の定量的リアルタイムPCR法の1つを使用して達成される。従って、TaqManアプローチが利用される場合、反応部位に導入される(または予めスポットされた)試薬は、以下のうちの1つまたは全てを含み得る:プライマー、標識プローブ、ヌクレオチドおよびポリメラーゼ。インターカレーション色素が利用される場合、この試薬混合物は、代表的には、以下のうちの1つまたは全てを含む:プライマー、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、およびインターカレーション色素。
【0142】
(D.多重化)
本明細書中で記載されるアレイベースのデバイス(例えば、図1A、1F、2、3Aおよび3B、ならびに付随する本文を参照のこと)は、本質的に、多数の増幅反応を同時に行うように設計されている。しかし、この特徴は、各反応部位内で多重分析(例えば、遺伝子型決定および発現分析)を行うことによって容易に、さらに拡大され得る。
【0143】
多重増幅は、サーマルサイクリングプロセスの間に、例えば、複数のプライマー(各々、目的の特定の標的核酸に特異的)を利用することによって、単一の反応部位内でさえ行われ得る。異なる増幅産物の存在は、異なって標識されたプローブを使用して、定量的RT−PCR反応を行うか、または異なって標識された分子ビーコン(前出を参照のこと)を使用することによって、検出され得る。このようなアプローチにおいて、各異なって標識されたプローブは、特定の増幅された標的にのみハイブリダイズするように設計される。利用される異なる標識を慎重に選択することによって、異なる標識が単一の反応において異なる波長で励起および/または検出される分析が行われ得る。このようなアプローチにおいて適切な蛍光標識の選択に関するさらなるガイダンスとしては、以下が挙げられる:Fluorescence Spectroscopy(Pesceら,編)Marcel Dekker,New York,(1971);Whiteら,Fluorescence Analysis:A Practical Approach,Marc
el Dekker,New York,(1970);Berlman,Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,第2版,Academic Press,New York,(1971);Griffiths,Colour and Constitution of Organic Molecules,Academic Press,New York,(1976);Indicators(Bishop,編).Pergamon Press,Oxford,19723;およびHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Eugene(1992)。
【0144】
複数の遺伝子型決定および発現分析は、必要に応じて、各反応部位において行われ得る。定量的PCR法(例えば、TaqMan)が利用される場合、目的の標的DNAの異なる領域を増幅するためのプライマーは、単一の反応部位内に含まれる。各領域について異なって標識されるプローブは、形成される産物を区別するために利用される。
【0145】
(E.非核酸分析)
種々の広範な核酸分析を行うために有用である一方で、このデバイスはまた、多くの他の適用においても利用され得る。先に示されるように、このデバイスは、検出シグナル、または反応産物と相互作用するとシグナルを生成する検出試薬と反応し得る反応産物を生成する2以上の種間の本質的に任意の相互作用を分析するために利用され得る。
【0146】
従って、例えば、デバイスは、特定の所望の活性を有する試験薬剤を同定するために多くのスクリーニング適用において利用され得る。特定の例として、このデバイスは、1以上の酵素の基質またはインヒビターとして、活性について化合物をスクリーニングするために利用され得る。このような分析において、(予め入れられていなければ)試験化合物および他の必要な酵素アッセイ試薬(例えば、緩衝液、金属イオン、補因子および基質)が反応部位に導入される。次いで、この酵素サンプルが導入され、反応(試験化合物が基質である場合)または反応の阻害(試験化合物がインヒビターである場合)が検出される。このような反応または阻害は、標準的な技術(例えば、基質の喪失および/または生成物の出現を直接的または間接的にモニタリングすること)によって達成され得る。
【0147】
十分に大きなフローチャネルおよび反応部位を有するデバイスはまた、細胞と1以上の試薬との間の相互作用を検出する細胞アッセイを行うために利用され得る。例えば、特定の分析は、サンプル中に特定の細胞型が存在するか否かの決定を含む。これを達成するための1つの例は、特定の細胞型と優先的に反応する細胞特異的色素を利用することである。従って、このような色素が反応部位に導入され得、次いで、細胞が添加され得る。細胞の染色は、標準的な顕微鏡技術を使用して検出され得る。別の例示として、試験化合物は、細胞応答(例えば、シグナル伝達経路)を誘発または阻害する能力についてスクリーニングされ得る。このような分析において、試験化合物が部位に導入され、次いで、細胞が添加される。この反応部位は、次いで、細胞応答の形成を検出するためにチェックされる。
【0148】
関連するデバイスおよびこのようなデバイスの適用のさらなる議論は、全ての目的のために、その全体が本明細書中に参考として援用される、同時係属中の共有に係る米国仮出願第60/335,292号(2001年11月30日出願)に記載される。
【0149】
(XI.製造)
(A.一般的な局面)
先に示したように、提供される微小流体デバイスは、一般的に、単一の多層ソフトリソグラフィー(MSL)技術および/または犠牲層カプセル化法を使用して構築される。基本的なMSLアプローチは、マイクロマシン鋳型で一連のエラストマー層を成型する工程、鋳型から層を除去する工程、次いで、層をともに融合させる工程を包含する。犠牲層カプセル化アプローチにおいて、フォトレジストのパターンは、チャネルが所望される場所に配置される。これらの技術および微小流体デバイスの製造におけるそれらの使用は、例えば、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、Chouらによる(2000)「Integrated Elastomer Fluidic Lab−on−a−chip−Surface Patterning and DNA Diagnostics,in Proceedings of the Solid State Actuator and Sensor Workshop,Hilton Head,S.C.;およびPCT公報WO 01/01025(これらの各々が、全ての目的について、本明細書中においてその全体が参考として援用される)に、詳細に考察される。
【0150】
簡単に述べると、上記製造技術法は、最初に、フォトレジスト(Shipley SJR 5740)を用いるフォトリソグラフィーによって、シリコンウェハ上にトップ層(例えば、コントロールチャネルを有するエラストマー層)およびボトム層(例えば、フローチャネルを有するエラストマー層)のための母鋳型(mother mold)を製造する工程を包含する。チャネル高さは、スピンコーティング速度によって正確に制御され得る。フォトレジストチャネルは、フォトレジストにUV光を曝露し、続いて、現像することによって形成される。熱再流プロセスおよび保護処理は、代表的に、M.A.Unger,H.−P.Chou,T.Throsen,A.SchererおよびS.R.Quake,Science(2000)288:113(これは、本明細書中においてその全体が参考として援用される)によって記載されるように、達成される。次いで、混合された2部分シリコーンエラストマー(GE RTV 615)を、それぞれ、ボトム鋳型内に回転させて入れ、そしてトップ鋳型上に注ぐ。ここで、ボトムポリマー流体層の厚みを制御するためにスピンコーティングを使用し得る。部分的に硬化されたトップ層は、25分間、80℃でオーブンにおいて焼いた後、その鋳型から剥がされ、ボトム層と整列され、組み立てられる。80℃での1.5時間の最終の焼きは、これらの2つの層を不可逆的に結合させるために使用される。一旦、ボトムシリコン母鋳型から剥がされると、このRTVデバイスは、代表的に、HCLで処理される(0.1N、80℃で30分)。この処理は、いくらかのSi−O−Si結合を切断するように作用し、それによって、チャネルをより親水性にするヒドロキシル基を露出する。
【0151】
次いで、デバイスは、必要に応じて、支持体に気密的にシールされ得る。支持体は、本質的に任意の材料から製造され得るが、表面は、良好なシールを保証するように平坦であるべきである。なぜなら、形成されるシールが、主に、接着力に起因するからである。適切な支持体の例としては、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。
【0152】
上記方法に従って形成されるデバイスは、フローチャネルの1つの壁を形成する基材(例えば、ガラススライド)を生じる。あるいは、一旦、母鋳型から取り出されたデバイスは、薄い弾性膜にシールされ、その結果、フローチャネルが、全体的に、弾性材料内に封入される。次いで、得られる弾性デバイスは、必要に応じて、基材支持体に結合され得る

【0153】
(B.ブラインドチャネル設計を利用するデバイス)
(1.層形成)
製造の間に、試薬が反応部位に配置されるブラインドチャネル設計に基づく微小流体デバイスは、代表的に、3層で形成される。ボトム層は、試薬が配置される層である。ボトム層は、MLS法について上で引用される参考文献に記載されるように、種々の弾性材料から形成され得る。代表的に、この材料は、ポリジメチルシロキサン(PMDS)エラストマーである。特定のデバイスについて所望される反応部位の配置および位置に基づいて、適切な試薬がスポットされるべきボトム層上の位置が決定され得る。PMDSが疎水性であるので、配置される水性スポットは、縮んで非常に小さなスポットを形成する。配置される試薬は、試薬とエラストマーの表面との間に共有結合が形成されないように配置される。なぜなら、先に記載されるように、試薬は、一旦、反応部位に導入されると、サンプル溶液内に溶解することが意図されるからである。
【0154】
デバイスの他の2つの層は、フローチャネルが形成される層、およびコントロールチャネルおよび必要に応じてガードチャネルが形成される層である。これら2つの層は、このセクションにおいて先に記載される一般的な方法に従って、調製される。次いで、得られる2つの層構造は、試薬が配置された第1層の上に配置される。3つの層の組成物の特定の例は、以下の通りである(成分A対成分Bの比):第1層(サンプル層)30:1(重量による);第2層(フローチャネル層)30:1;および第3層(コントロール層)4:1。しかし、弾性成分の他の組成および比が、同様に利用され得ることが理解される。
【0155】
このプロセスの間、反応部位は、配置された試薬と整列され、その結果、試薬は、適切な反応部位内に位置付けられる。図6は、デバイスの4つのコーナーから取られた写真のセットである;これらの写真は、配置される試薬が、先のアプローチを利用して、反応部位内に正確に整列され得ることを示す。これらの写真は、枝分かれフローチャネルの端部に配置されるガードチャネルおよび反応部位を示す。白丸は、反応部位に対する、配置された試薬の位置を示す。示されるように、各試薬スポットは、十分に反応部位の範囲の中にある。
【0156】
(2.スポッティング)
試薬は、多くの市販の試薬スポッターのいずれかを利用し、そして種々の確立されたスポッティング技術を使用して、配置され得る。デバイスの調製に使用され得る適切なスポッターの例としては、ピンスポッター、音響スポッター、自動マイクロピペッター、電気泳動ポンプ、インクジェットプリンターデバイス、インクドロッププリンター、および特定の浸透圧ポンプが挙げられる。市販のスポッターの例としては、以下が挙げられる:Cartesian Technologies MicroSys 5100(Irvine,CA),Hitach SPBIO(Alameda,CA),Genetix Q−Array(United Kingdom),Affymetrix 417(Santa Clara,CA)およびPackard Bioscience SpotArray(Meriden,CT)。一般的に、試薬の非常に小さなスポットが、配置される;通常、10nl未満のスポットが配置され、他の例において、5nl、2nlまたは1nl未満が配置され、なお他の例において、0.5nl、0.25nl、または0.1nl未満が配置される。
【0157】
以下の実施例は、本明細書中に開示されるデバイスおよび方法の特定の局面をさらに示すために提示される。実施例は、本発明を制限するとは解釈されるべきでない。
【実施例】
【0158】
(実施例1)
(シグナル強度評価)
(I.序論)
このセットの実験の目的は、首尾良いPCR反応が、本明細書中に記載される設計の微小流体デバイスを用いて、Macro TaqMan反応の50%より多くのシグナル強度で、実施され得ることを実証するためであった。
【0159】
(II.微小流体デバイス)
3層の微小流体デバイス(MSLプロセスを使用して作製される)は、以下の実施例に記載される実験を実施するために設計および製造された。図7Aは、デバイスの断面図を示す。示されるように、デバイス700は、流体チャネルが形成される層722を含む。この流体層722は、重層層720(コントロール層およびガード層を含む)と下にあるシーリング層724との間に挟まれる。シーリング層724は、フローチャネルの1つの側面を形成する。得られた3層構造は、基材726(この実施例において、スライドまたはカバースリップ)に付けられ、この基材は、構造的堅さを提供し、熱伝導性を増加し、そして微小流体デバイス700の底からのエバポレーションを妨げるのを助ける。
【0160】
図7Bは、フロー層722のフローチャネル、およびコントロール/ガード層720のコントロールチャネルおよびガードチャネルの設計の概略図を示す。デバイス700は、10個の独立したフローチャネル702(各々が、それら独自の入口708を備える)および枝分かれブラインドチャネル704(各ブラインドチャネル704が、1nlの反応部位706を有する)から構成される。デバイス700は、コントロールライン712のネットワーク(十分な圧力が適用される場合、反応部位706を隔離する)を含む。一連のガードチャネル716もまた、反応部位706から液体がエバポレートすることを妨げ
るために含まれる;流体は、入口718を介して導入される。
【0161】
(II.実験セットアップ)
ヒト男性ゲノムDNA(Promega,Madison WI)由来のβ−アクチン遺伝子のエキソン3を増幅するためにβ−アクチンプライマーおよびTaqManプローブを使用するPCR反応を、デバイス700で実施した。TaqMan反応は、以下の成分からなる:1×TaqMan Buffer A(50 mM KCl,10 mM Tris−HCl,0.01M EDTA,60nM Passive Referencel(PR1),pH 8.3);3.5〜4.0 mM MgCl;200 nM dATP,dCTP,dGTP,400 nM dUTP;300 nM(β−アクチン順方向プライマーおよび逆方向プライマー;200 nM FAM−標識β−アクチンプローブ;0.01U/ul AmpEraseUNG(Applied Biosystems,Foster City,CA);0.1〜0.2U/ul DyNAzyme(Finnzyme,Espoo,Finland);0.5% Triton−x−100(Sigma,St.Louis,MO);0.8ug/ulゼラチン(Calbiochem,San Diego CA);5.0%グリセロール(Sigma,St.Louis,MO);脱イオンHOおよび男性ゲノムDNA。反応成分を添加して、25μlの合計反応容量を生じる。ネガティブコントロール(コントロール)を、標的DNAが各セットのPCR反応に含まれたことを除いて、TaqMan反応成分の全てから構成された。
【0162】
一旦、TaqMan反応サンプルおよびコントロールが調製されると、これらを、1mlシリンジに取り付けられたゲル装填ピペットチップを使用することによって、微小流体デバイス700内に注入した。ピペットチップを、反応サンプルで満たし、次いで、708によって流体内に挿入した。フローチャネル702を、ブラインドチャネル704全体および反応部位706の全てが満たされるまで、シリンジに背圧を手動で適用することによって満たした。コントロールライン712を、脱イオン水で満たし、そして全てのサンプルがフローライン702、704内に装填された後に、15〜20psiに加圧した。加圧されたコントロールライン712をバルブに近付くように作動させ、そして1nlウェル706中にサンプルを隔離した。次いで、ガードチャネル716を脱イオン水で満たし、そして5〜7psiに加圧した。鉱油(15ul)(Sigma)を、熱サイクラーのフラットプレート上に配置し、次いで、微小流体デバイス/カバーガラス700を、熱サイクラー上に配置した。次いで、微小流体デバイス700を、開始傾斜(ramp)および3工程または2工程のいずれかの熱サイクルプロフィールを使用して、熱サイクルした。
【0163】
1. 95℃まで開始傾斜および1分間維持(1.0℃/秒、75℃まで、0.1℃/秒、95℃まで)
2. 40サイクルの3工程熱サイクル(92℃30秒間、54℃30秒間、および72℃1分間)または
3. 40サイクルの2工程熱サイクル(92℃30秒間、および60℃60秒間)。
【0164】
残りの反応混合物を含むMicroAmpチューブ(Applied Biosystems,Foster City,CA)(これらを微小流体デバイスにおいて実施された反応と区別するためにMacro TaqMan反応と称した)を、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems,Foster City,CA)中に配置し、そして9600モードで熱サイクルした。Macro TaqMan反応は、微小流体デバイスにおいて実施される反応に対する巨視的なコントロールとして役立った。熱サイクルプロトコルを、最初の傾斜速度をMacro TaqMan反応について制御しなかったことを除いて、微小流体デバイスの熱サイクルプロトコルと一致するように設定した。
【0165】
一旦、熱サイクルが完了すると、コントロールラインおよびガードラインの圧を下げ、チップをガラススライド(VWR,West Chester,PA)上に移した。次いで、チップを改変キャリアとともに、Array WoRx Scanner(Applied Precision,Issaquah,WA)内に配置した。蛍光強度を、3つの異なる励起/発光波長について測定した:475/510 nm(FAM),510/560 nm(VIC),および580/640nm(Passive Referencel(PR1))。Array Works Softwareを使用して、微小流体デバイスで蛍光を画像化し、そして各1nlウェルのシグナル強度およびバックグラウンド強度を測定した。次いで、β−アクチン TaqMan反応について、FAM/PR1比を計算するために、Microsoft Excelファイルを使用して、結果を分析した。通常のMacro TaqManについて、標的DNAに対するポジティブなサンプルを、製造業者によって提供されるプロトコル(TaqMan PCR Reagent Kit Protocol)に記載される計算を使用して決定した。サンプルのFAM/PR1比を、コントロールのFAM/PR1比によって除算することによって、シグナル強度を、計算した。首尾良い反応を、99%信頼閾値レベルより上のサンプル比として規定した。
【0166】
(III.結果)
まず、AmpliTaq Gold(Applied Biosystems,Foster City,CA)をTaqMan反応において使用し、1.5〜2.0のFAM/PR1/コントロール比を生成し、5.0〜14.0のMacro TaqMan反応比と比較した。結果は、ポジティブであったが、シグナル強度の増加が所望された。従って、AmpliTaq Goldポリメラーゼを、その増加した熱安定性、校正および不純物に対する耐性に起因してDyNAzymeポリメラーゼで置換した。0.025U/μlの標準的Macro TaqMan DyNAzyme濃度を、微量流体実験において使用した。DyNAzymeへのポリメラーゼ交換は、3.5〜5.8のFAM/ROX/コントロール比を生じた。シグナル強度を改善したが、矛盾のない結果に到達することは困難であった。いくらかのタンパク質がPDMSに固着するは、公知であるので、ポリメラーゼの濃度を増加し、表面改変添加物を含有した。2つの増加した濃度(8×(0.2U/μl)および4×(0.1U/μl)のMacro TaqMan用の標準濃度(1nl当たり100pgまたは10pgのゲノムDNA))のDyNAzymeを、微小流体デバイス中で試験した。ゼラチン、グリセロール、および0.5% Triton−x−100を、添加し、ポリメラーゼがPDMSに結合することを防止した。微小流体デバイス(チップ)中の反応の結果およびMacro TaqManコントロールを、図8に示す。
【0167】
微小流体TaqMan反応比は、4.9〜8.3の範囲である一方、Macro TaqMan反応は、7.7〜9.7の範囲である。従って、チップ中のTaqMan反応のシグナル強度は、Macro TaqMan反応の87%までである。4×DyNAzymeまたは8×DyNAzymeの間に有意な差はなかった。この結果は、微小流体デバイス中で、Macro TaqMan反応と比較した場合、PCR反応が、50%より強いシグナル強度で実施され得ることを示す。結果は、少なくとも4回の試行を通して一致する。
【0168】
(実施例2)
(スポットされた試薬)
(I.導入)
この実験の目的は、微小流体デバイスにおける首尾良いスポットされたPCR反応を示すことであった。この文脈において用語「スポットされた(spotted)」は、基材上の試薬の小さな液滴(スポット)の配置をいい、微小流体デバイスの一部となるようにアセンブリされる。スポットされた試薬は、一般的に、PCRを実施するために必要とされる反応混合物の部分集団である。
【0169】
(II.手順)
(A.試薬のスポッティング)
慣用的な試薬のスポッティングを、接触プリンティングプロセスによって実施した。試薬を、金属ピン上に1セットの供給源ウェルから選び取り、このピンを標的基材と接触させることによって配置した。このプリンティングプロセスを、図9にさらに概説する。示されるように、試薬を、供給源(例えば、マイクロタイタープレート)から選び取り、次いで、この装填されたピンを基材と接触させることによってプリントした。洗浄工程は、脱イオン水中で攪拌した後、真空乾燥する工程からなる。試薬スポットをプリントするために使用されるシステムは、Cartesian Technologies MicroSys5100(Irvine,CA)であり、Telechem 「ChipMaker」ブランドのピンを使用するが、他のシステムを、上記されるように使用し得る。
【0170】
使用されるピンは、Telechem ChipMaker 4ピンであり、これは、電気ミルスロットを組込み(図9を参照のこと)、取り込み体積を増加する(従って、プリント可能なスポットの数が増える)。使用される操作条件(代表的には、75%の相対湿度および約25℃の温度)下で、100を越えるスポットが、1つのピン当たり、1回の装填サイクル当たり、プリントされた。上記条件下で、PDMS基材上にスポットされる試薬の体積は、0.1nLのオーダーにある。
【0171】
ピンチップの大きさは、125×125μmである。乾燥試薬の最終スポットは、実質的にこれより小さく(直径が7μm程度に小さい)、さらに、ピンの大きさは、下限を容易に達成可能なスポット間隔に規定する。達成可能な間隔は、最終デバイスにおいて最小のウェル間ピッチを決定する。このようなデバイスおよび前述の方法を使用して、180μmの間隔を有するアレイが、達成される。作動チップに組み入れられるアレイは、600〜1300ミクロンの間隔を有する傾向がある。
【0172】
スポッティングを、同時に1つのピンのみを使用して実施した。しかし、使用中のシステムは、32ピンまでに適応され得るピンヘッドを有する。標準的サイズのチップ(20×25mmのオーダーのアレイの大きさ)をプリントすることは、5分未満かかる。
【0173】
(B.スポッティッドチップのアセンブリ)
PCRデバイスの流れ層およびコントロール層は、上記される正常なMSLプロセスに従って、アセンブリされる。微小流動デバイス設計は、実施例1に記載される設計と同一である。同時に、基質層は、150μm厚のPDMSから構成され、A:Bの30:1の成分比が、ブランクシリコンウェハーをスピンコーティングすることによって形成され、次いで、80℃で90分間硬化する。
【0174】
PDMSの硬化されたブランク基質層(図7Aの密封層/基材層724)は、試薬スポッティングのための標的として働く。スポットのパターンを、ブランクウェハー上にさらに存在する基材上にプリントする。PCR反応のためにスポットされた試薬は、プライマーおよびプローブであり、増幅される特定の遺伝子に対して特異的である。スポットされた試薬は、1:1:1の体積比の300nM β−アクチン順方向プライマー(FP)、300nM β−アクチン逆方向プライマー(RP)、および200nM β−アクチンプローブ(Prb)を含んだ。いくつかの場合において、スポットされた混合物を濃縮することによって化学的性質をさらに調整することが有用である。プライマー濃度およびプローブ濃度が、正常な巨視的配合値と等しいかまたはその値よりわずかにより高くなるような濃度を調整することが、一貫して良好な結果を生じることが見出された。従って、スポットされた試薬は、大量反応の3倍濃度および4倍濃度まで濃縮される。試薬の濃縮を、Centrivap(加熱され真空にされたそして相対的FP:RP:Prb比を変更しない遠心分離器)中で実施する。スポット濃度の増加は、試薬を1nLの反応容量中に再懸濁する場合、正しい最終濃度を生じる。スポットされた試薬は、プライマーおよびプローブに限定される必要はなく;3つ全て(FP、RPおよびPrb)がスポットされなければならない。プローブのみまたはプライマーの1つですらスポットされる適用を、実施し得る。スポットされたサンプルプライマー/プローブセットが、TaqMan β−アクチンおよびTaqMan RNAse−Pである実験が、実施された。
【0175】
基材上へのスポッティングプロセスの後、合わせた流れ層およびコントロール層(すなわち、図7Aの層720および722)を、スポットパターンを用いて配列し、接触させた。80℃で60〜90分間のさらなるベイクを、基質をチップの残りに結合するために使用した。チップがアセンブリされた後、PCR反応の残りの成分(実施例1に記載される)を、チップのフローチャネルに注入し、このチップを、実施例1に記載のように熱サイクルする。
【0176】
(III.結果)
PCR反応は、プライマー(順方向プライマーおよび逆方向プライマー)およびプローブ分子をスポットしたデバイスを使用して、首尾よくそして繰り返し実施した。反応が首尾よく実施されたチップからのデータの例を、図10に示す。スポットされた試薬は、実施例1に規定されるような首尾よいPCR反応を生じる。首尾良い反応は、2段階熱サイクリングプロトコルおよび3段階熱サイクリングプロトコルを使用して実施する。
【0177】
(実施例3)
(遺伝子型決定)
(I.導入)
以下の実施例の目的は、遺伝子型決定実験が、本明細書中に記載されるような微小流体デバイスまたはチップを使用して実施され得ることを示すことであった。具体的には、これらの実験は、デバイス中で実施される反応が、十分な感度を有するかどうかを決定するように、そしてβーアクチン以外の他のプライマー/プローブセットを、微小流体デバイス中で実施し得ることを保証するように設計された。
【0178】
(II.方法/結果)
(A.RNase P実験)
RNase P TaqMan反応(Applied Biosystems;Foster City,CA)を、実施例1に記載されるように微小流体デバイスにおいて実施し、他のプライマー/プローブセットが、検出可能な結果を生じることを示した。RNaseP反応はまた、より高いレベルの感度を必要とする。なぜなら、RNasePプライマー/プローブセットは、β−アクチンプライマー/プローブセットと対照的に単一コピーの遺伝子(2コピー/ゲノム)を検出するからである。β−アクチンセットは、単一コピーのβ−アクチン遺伝子およびいくつかの偽遺伝子を検出し、1ゲノム当たり約17コピーを集合的に合計する。RNase P反応を、β−アクチンプライマー/プローブセットを、RNase Pプライマー/プローブセットと置換したことを除いて、実施例1に記載される同じ成分を用いて実施した。さらに、RNase Pプライマー/プローブセットを、4×製造業者推奨値で使用して、蛍光シグナルを増強した。VIC色素を、RNase Pに対するプローブに結合し、分析は、VIC/PR1比に対して集中した。4つの実験のうち1つの結果を、図11に示す。
【0179】
Macro TaqMan反応についてのVIC/PRl/コントロール比は、1.23である。微小流体デバイスにおけるTaqMan反応について対応する比は、1.11および1.21である。微小流体デバイスにおけるゲノムDNAサンプルの比は、約99%以上の確かな閾値レベルである。さらに、微小流体デバイスにおけるTaqMan反応のシグナル強度は、Macro TaqMan反応の50%および93.7%である。微小流体デバイスにおけるTaqMan反応のコントロールは、0.006および0.012の標準偏差を有し、これは、微小流体デバイスを横切る反応における一貫性を証明する。従って、チップにおけるTaqMan反応は、1ゲノムあたり2コピーを検出するのに十分な感度である。
【0180】
(B.DNA希釈実験)
微小流体デバイスにおけるTaqMan反応の感度をさらに測定するために、ゲノムDNAの希釈を、β−アクチンプライマー/プローブセットを使用して試験した。反応組成物を、一般的に、4×DyNAzymeおよびゲノムDNAの希釈を使用して、実施例1に記載される通りに作製した。ゲノムDNAを、0.25pg/nl以下まで希釈した(これは、1nlあたり約1コピーに一致する)。1回希釈シリーズの結果を、図12に示す。
【0181】
ポアソン分布に従って、平均標的数が1である場合、ウェルの全数の37%が、ネガティブであるはずである。ウェル番号5、6および7は、計算された闘値以下であり、従ってネガティブである。これは、微小流体チップ中のβ−アクチンTaqMan反応が、1nlあたり1コピーの平均を検出し得ることを示唆する。従って、微小流体デバイスにおける反応の感度は、遺伝子型実験を行うのに十分である。
【0182】
(C.遺伝子型実験)
微小流体デバイスにおけるTaqManは、低い標的数を決定し得るので、SNP(単一塩基多型)遺伝子型の予備的な試験を、Predetermined Allelic Discriminationキット(Applied Biosystems;Foster City,CA)を使用して、CYP2D6 P450シトクロム遺伝子に対して実施した。キットは、1つのプライマーセットおよび2つのプローブ;野生型または参照対立遺伝子、CYP2D61に対して標識されたFAMおよびCYP2D63変異体対立遺伝子または改変体対立遺伝子に対して標的されたVICを備える。ゲノムDNAと共に各対立遺伝子についてのポジティブコントロール、PCR産物を、実施例1に記載されるのと同じ条件を使用して、デバイスで試験した。1つの実験からの結果を、図13および図14に示す。この実験は、少なくとも3回繰り返し、結果を確認し、そして信頼性を証明した。
【0183】
図13に示されるように、Al−1(対立遺伝子1、CYP2D61野生型対立遺伝子)およびゲノムDNA(100pg/nl)が、それぞれ、3.5および2.2の平均VIC/PRl/コントロール比を生じ、このことは、ゲノムDNAがCYP2D61、野生型対立遺伝子についてポジティブであったことを示した。これらの値は、反応の闘値限界を上回る。微小流体デバイスにおけるTaqMan反応のシグナル強度は、それぞれ、Macro TaqManコントロールの59%および40%である。Al−2(対立遺伝子2、CYP2D63変異体対立遺伝子または改変体対立遺伝子)(これは、VICチャネルにおいてネガティブであるはずである)は、おそらく検出器のVICチャネルへのFAM蛍光の漏出に起因して、コントロール(1.5)を超えるいくつかのシグナルを示した。この漏出は、改善された検出プロセスで最小化され得る。
【0184】
Al−2ポジティブコントロールは、3.0の平均FAM/PRl/コントロール比を与え、これはMacro TaqManシグナルの37%であり、そして計算された闘値限界を上回った(図14を参照のこと)。ゲノムサンプルは、CYP2D63変異体対立遺伝子についてネガティブであった(CYP2D63対立遺伝子の周波数の予測された結果は低い)。さらに、検出器のFAMチャネルへのAl−1、VICプローブのいくらかの漏出が存在することが明らかである。全体として、SNP検出反応は、微小流体デバイスにおいて成功であった。
【0185】
(実施例4)
(ゲル電気泳動によるPCRの検証)
(I.導入)
DNAの増幅を改善するための代替の方法を、微小流体デバイスにおいて行うのに、ゲル電気泳動によってPCR産物を検出するための実験を実施した。TaqManプローブを除外し、そしてβ−アクチン順方向プライマーを、FAMに結合体化したことを除いて、PCR反応組成は、実施例1に記載される通りであった。
【0186】
(II.手順)
(A.微小流体デバイス)
3層の微小流体デバイス(MSLプロセスを使用して製造した)を設計し、そして本実施例に記載される実験を実施するために製造した;図15は、設計の概略図を示す。デバイス1500は、一般的に、サンプル領域1502およびコントロール領域1504からなる。サンプル領域1502は、フローチャネル1506に沿って整列された長方形によって示される341個の1nlの反応部位1508備え、入口1510および出口1512を備える。コントロール領域1504は、3つのコントロールフローチャネル1514を備え、各コントロールチャネルは、また長方形によって示される10個の1nlの反応部位1518および入口1516を備える。十分な圧力が入口1524に適用される場合、コントロールライン1522のネットワークは、各反応部位1508、1518を隔離する。一連のガードチャネル1520は、液体が反応部位1508、1518からエバポレートするのを防ぐように備えられる。このデバイスは、実施例1に記載されるような3層デバイスである(図7Aを参照のこと)。全体のチップは、カバースリップ上に配置される。
【0187】
(B.実験設定)
微小流体デバイス1500を、実施例1に記載される3つの温度プロフィールを使用して、ロードし、そして熱サイクルした。残りの反応サンプルを、流体微小デバイス1500についてと同じ熱サイクルで、GeneAmp 9700中で熱サイクルした。熱サイクルが完了した後、反応産物を回収した。増幅したDNAの回収のために、3μlの水を、サンプル入口1506へと注入し、そして3〜4μlの産物を、出口1512から取り除いた。デバイス1500からの反応産物およびMacro反応物を、2μlのExoSAP−IT(USB,Cleveland,OH)(これは、DNAエクソヌクレアーゼIおよびShrimp Alkaline Phosphataseからなる)で処理し、過剰のヌクレオチドおよびプライマーを除去した。Macro産物を、1:10〜1:106まで希釈した。このデバイス1500からの産物を、脱水し、そして4μlのホルムアミドに再懸濁した。
【0188】
(III.結果)
ネガティブコントロールと共に両方の産物を、ポリアクリルアミドゲルで分析した。図15は、ゲル電気泳動の結果を示す。294塩基対長の適切なサイズのDNAバンドが、図16において観察される。
【0189】
Macro反応からの産物をゲルの左側に示し、そしてこれは、約294塩基対(β−アクチンPCR産物の予測されたサイズ)に対応する。ネガティブコントロールは、PCR産物を欠損する。同様に、デバイス由来の産物は、予測されたβーアクチンPCR産物を与えた。従って、標的DNAは、微小流体デバイス中で増幅された。
【0190】
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示の目的のみであり、それを考慮した種々の改変または変更が、当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書中に引用される全ての出版物、特許および特許出願は、個々の出版物、特許または特許出願の各々が、そのように参考として援用されることが特にかつ独立して意図されるのと、同じ程度まで全ての目的のためにその内容が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−178167(P2009−178167A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117077(P2009−117077)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【分割の表示】特願2003−549475(P2003−549475)の分割
【原出願日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願人】(503367169)フルイディグム コーポレイション (14)
【Fターム(参考)】