説明

微生物の保存方法及び微生物保存部材、並びに微生物保存用多孔質シート状物の製造方法

【課題】連通多孔質体を用いることにより微生物の安価かつ簡便に保存と共に迅速かつ大量の培養も可能とする微生物の保存方法と、これに微生物を付着した微生物保存部材、さらに微生物保存用多孔質シート状物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂基材の内部に空洞部12同士が連通した連通多孔質体13を形成すると共に該樹脂基材の表面に空洞部が開口している多孔質シート状物10Aを多層化して多孔質多層構造体を形成し、多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して多孔質多層構造体の空洞部内に微生物を付着させる微生物保存用多孔質シート状物であり、事後的に溶解可能な粒状被溶解物を樹脂材料に混入して所定のシート状物に成形し、この後に粒状被溶解物を溶解することによりシート状物の内部に空洞部を有する多孔質体を形成することによって製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の保存方法及び微生物保存部材、並びに微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に関し、特に多孔質体の内部に備わる空洞部を利用して微生物を保持することに特徴を備える。
【背景技術】
【0002】
微生物を保存する方法として、主に凍結法、継代培養法、凍結乾燥法・乾燥法等が挙げられる。安定的に微生物を保存する場合は凍結法が最良である。ただし、液体窒素をはじめ、専用の冷凍設備、保存用の薬品等を必要とし、保存自体に要する経費もかさむ。また、低温耐性の低い菌種には向かない場合もある。
【0003】
継代培養法は生存もしくは休眠状態の微生物をそのまま新しい培地に移すため、凍結や乾燥に弱い菌種の他、ほぼ全種類の菌種の保存に適する。しかしながら、継代作業の多くは人手に依存する。移植する菌種が増えるほど手間を要する。また、継代を繰り返す内に微生物の形質転換が生じ保存中の菌種の性質が変化して、保存微生物の正確な形質を再現できなくなるおそれもある。凍結乾燥法は、微生物を休止状態にして保存できるため、比較的安価かつ簡便な保存方法として広く利用されている。多種類の微生物を多量に保存する用途に向く。乾燥法についても同様である。ただし、乾燥耐性の低い菌種には向かない場合がある。
【0004】
比較的簡単に微生物を保存するため、次のような器具、装置等が提案されている。例えば、ゲル化した吸水性樹脂粒子の表面に微生物が保持されると、吸水性樹脂粒子は吸水によりゲル化して膨潤し互いに密着状態となる。微生物はゲル化して膨潤した吸水性樹脂粒子により取り囲まれ、空気中の酸素から遮断されると共に乾燥から保護される微生物保存剤が提案されている(特許文献1参照)。マルチウェルプレートにメンブレンシートを介在させ、ここに微生物等を含んだ培養液を滴下し、メンブレンシートの両面をマルチウェルプレートに貼り付けたフィルムで同シートを密封し保護可能とする容器が提案されている(特許文献2参照)。粘着テープの粘着面を外側とするように巻き付けたテープ状物により微生物を付着、採取し、その付着部分に培養シート、保護シートを重ねて手軽に保存用サンプルを作成する装置も提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1の微生物保存剤にあっては、その性質上乾燥は厳禁である。特許文献3の装置は採取が主目的であるため、保存性能は必ずしも十分ではない。特許文献2の微生物保存に供する器具は多品種少量の微生物の保存に適しており、取り扱いも容易である。その一方、特定(少品種)の微生物を大量かつ安価に保存することができる方法、器材、所定の保存を終えて再び微生物を速やかにしかも大量に培養することが可能な方法、器材等について、必ずしも満足できる手法、装置等は見出されてはいない。
【0006】
このようなことから、特定種類の微生物に関して安価かつ簡便に保存が可能であること、保存後の培養に際し、迅速かつ大量の菌数を容易に得ることの両面を併せ持つ方法等が探求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−111887号公報
【特許文献2】特開2007−325536号公報
【特許文献3】特開平5−292997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その後、発明者は以前より開発を進めていた樹脂製の連通多孔質体に着目し、その微生物保存用途への応用について鋭意検討を重ねた。その結果、発明者が提案した連通多孔質体は微生物保存においても有効であることを見出した。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、連通多孔質体を用いることにより微生物の安価かつ簡便に保存すると共に迅速かつ大量の培養も可能とする微生物の保存方法と、これに微生物を付着した微生物保存部材、さらに微生物保存用多孔質シート状物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させることを特徴とする微生物の保存方法に係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬した後に該多孔質多層構造体を乾燥して乾燥多孔質多層構造体とする請求項1に記載の微生物の保存方法に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記乾燥多孔質多層構造体の表面をろう、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかにより被覆する請求項2に記載の微生物の保存方法に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬する前に、前記多孔質多層構造体を保護剤溶液中に浸漬して該保護剤溶液を乾燥する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の微生物の保存方法に係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記多孔質多層構造体が巻き取りロール形状である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の微生物の保存方法に係る。
【0015】
請求項6の発明は、前記多孔質シート状物の内部に中空管路が形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物の保存方法に係る。
【0016】
請求項7の発明は、前記樹脂基材が生分解性樹脂よりなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の微生物の保存方法に係る。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の微生物の保存方法により、前記多孔質多層構造体の多孔質内に微生物を付着させたことを特徴とする微生物保存部材に係る。
【0018】
請求項9の発明は、樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させるための微生物保存用多孔質シート状物の製造方法であって、事後的に溶解可能な粒状被溶解物を樹脂材料に混入して所定のシート状物に成形し、この後に前記粒状被溶解物を溶解することにより前記シート状物の内部に空洞部を有する多孔質体を形成することを特徴とする微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0019】
請求項10の発明は、前記シート状物に占める前記空洞部の体積割合を、少なくとも50%以上とする請求項9に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0020】
請求項11の発明は、前記粒状被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項9又は10に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0021】
請求項12の発明は、前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形するに際し、事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を混入し、所定のシート状物に成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記シート状物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0022】
請求項13の発明は、前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形し、前記シート状物同士を貼り合わせる際の接合面に事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を載置して前記シート状物同士からなる接合物を成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記接合物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0023】
請求項14の発明は、前記管路予定被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項12又は13に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【0024】
請求項15の発明は、前記樹脂材料が生分解性樹脂よりなる請求項9ないし14のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明に係る微生物の保存方法によると、樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させるため、微生物の安価かつ簡便な保存を可能とし、しかも、保存後に迅速かつ大量の培養も可能とすることができる。
【0026】
請求項2の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項1の発明において、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬した後に該多孔質多層構造体を乾燥して乾燥多孔質多層構造体とするため、乾燥により水分含量を減らすことができ、保存中の微生物の懸濁液の腐敗を避けることができる。また、保存時の汚染要因を除去することができる。
【0027】
請求項3の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項2の発明において、前記乾燥多孔質多層構造体の表面をろう、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかにより被覆するため、乾燥多孔質多層構造体の内外の酸素の流通を抑えることができ、保存期間を延ばすことができる。
【0028】
請求項4の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬する前に、前記多孔質多層構造体を保護剤溶液中に浸漬して該保護剤溶液を乾燥するため、保護剤により微生物の極度の乾燥が防止され、適度な水分及び栄養の維持、浸透圧の変化の緩和に都合がよい。
【0029】
請求項5の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記多孔質多層構造体が巻き取りロール形状であるため、多孔質シート状物は巻き取られて容易に多層化でき、しかも十分な巻き取り長さを確保することができ、微生物の保存量を多くすることができる。また、巻き取りロール形状となることにより省スペース化を図ることができ、ロール単位による管理がしやすくなる。
【0030】
請求項6の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発明において、前記多孔質シート状物の内部に中空管路が形成されているため、多孔質シート状物自体の吸液、浸透性能が向上する。
【0031】
請求項7の発明に係る微生物の保存方法によると、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂基材が生分解性樹脂よりなるため、使用後に回収の必要性が無くなり、環境への負荷を低減することができる。
【0032】
請求項8の発明に係る微生物保存部材によると、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の微生物の保存方法により、前記多孔質多層構造体の多孔質内に微生物を付着させたため、微生物の保存のみに留まらず、その後の培養や使用時の利便性を図ることができる。
【0033】
請求項9の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させるための微生物保存用多孔質シート状物の製造方法であって、事後的に溶解可能な粒状被溶解物を樹脂材料に混入して所定のシート状物に成形し、この後に前記粒状被溶解物を溶解することにより前記シート状物の内部に空洞部を有する多孔質体を形成するため、微生物保存用多孔質シート状物を容易に製造することができる。
【0034】
請求項10の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項9の発明において、前記シート状物に占める前記空洞部の体積割合を、少なくとも50%以上とするため、空洞部同士が連通した連通多孔質体を容易に形成することができる。
【0035】
請求項11の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項9又は10の発明において、前記粒状被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去されるため、除去の効率が良く、多孔質シート状物製造の量産性に優れる。
【0036】
請求項12の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の発明において、前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形するに際し、事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を混入し、所定のシート状物に成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記シート状物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成するため、中空管路を有する多孔質体の製造工程を簡略化することができる。
【0037】
請求項13の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の発明において、前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形し、前記シート状物同士を貼り合わせる際の接合面に事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を載置して前記シート状物同士からなる接合物を成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記接合物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成するため、製造工程を簡略化することができる。また、正確な形状の中空管路を微生物保存用の多孔質シート状物の内部に形成することができる。
【0038】
請求項14の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項12又は13の発明において、前記管路予定被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去されるため、除去の効率が良く、中空管路を備えた多孔質シート状物製造の量産性に優れる。
【0039】
請求項15の発明に係る微生物保存用多孔質シート状物の製造方法によると、請求項9ないし14のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂材料が生分解性樹脂よりなるため、使用後に回収の必要性が無くなり、環境への負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態の連通多孔質体の断面模式図である。
【図2】第2実施形態の連通多孔質体の断面模式図である。
【図3】多孔質多層化構造体の例示図である。
【図4】微生物の保存方法の第1工程図である。
【図5】微生物の保存方法の第2工程図である。
【図6】微生物保存部材の断面模式図である。
【図7】微生物保存部材の使用状態を示す第1の模式図である。
【図8】微生物保存部材の使用状態を示す第2の模式図である。
【図9】微生物保存用多孔質シート状物の第1製造方法の概略図である。
【図10】微生物保存用多孔質シート状物の第2製造方法の概略図である。
【図11】微生物保存用多孔質シート状物の第3製造方法の概略図である。
【図12】実施例1の微生物保存用多孔質シート状物内部の電子顕微鏡写真である。
【図13】図12の保護剤溶液を含浸した後の電子顕微鏡写真である。
【図14】図13の酵母を保存した後の電子顕微鏡写真である。
【図15】図14を拡大した電子顕微鏡写真である。
【図16】図15を拡大した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の微生物の保存方法とは、多孔質を内部構造として備えたシート状物(多孔質シート状物)が用意され、これを多層化して多孔質多層構造体に形成される。その後、多孔質シート状物の多孔質に由来する空洞部内に微生物が付着、保持され、当該微生物が保存される方法である。はじめに図1、図2を用い微生物保存部材の一部となる多孔質シート状物10A(第1実施形態),10B(第2実施形態)の構造から説明する。多孔質の構造体は、多層化しやすくする便宜からシート状あるいはフィルム状等の薄肉形状の部材として形成される。図1、図2はシート状物の1枚の断面形状を開示する。
【0042】
図1の断面模式図に開示の第1実施形態の多孔質シート状物10Aは、その樹脂基材11の内部に空洞部12同士を連通して有し、連通多孔質体13として形成される(詳細は後出の電子顕微鏡写真参照)。当該多孔質シート状物10Aの表面14には開口部15が形成される。開口部15を通じて連通多孔質体内部の空洞部12に微生物の懸濁液等が浸透する。なお、開口部を拡張するため、連通多孔質体の表面を研磨等により削除することもできる。
【0043】
基材11内部の空洞部12の形状は、特段限定されることはなく、球形状、楕円体、紡錘体、多角形状体等の適宜である。空洞が略球形状の場合には、大きさSzは直径であり、楕円体、紡錘体等であれば、大きさはそれらの最大長となる。空洞部12の形状、大きさは、保持する微生物の菌種、形態、保持量等により適宜である。後述する製造方法から把握されるように、空洞部は粒状被溶解物の大きさに依存する。微生物の懸濁液等は毛細管現象を通じて空洞部に浸透すること、及び微生物が空洞部内に存在する必要上微生物の体長よりも大きいことが求められる。そのため、空洞部12の大きさSzは、約1μm〜5mmの範囲内となる。
【0044】
図示の多孔質シート状物10Aにおいて、連通多孔質体13内の空洞部12同士は連通口16によって互いに接触した連通構造として形成されている。空洞部同士を互いに連通させた多孔質体を得る最も単純な方法は、空洞部自体の数を増やすことである。これは、空洞部形成の元となる粒状被溶解物(後述の製造方法を参照)の添加量自体を増やすことにより実現できる。そのため、多孔質シート状物10Aに占める空洞部12の体積割合は、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上となる。ただし、強度確保の点から空洞部の体積割合の上限は約85%となる。空洞部同士の連通が進むことにより連通多孔質体内部の表面積が広がる。このため、内表面に保持できる微生物の量も増加する。
【0045】
図2の模式図に開示する多孔質シート状物10Bにおいては、図2(a)参照のとおり、連通多孔質体13はその内部に空洞部12に加え、さらに中空管路17が形成されている構造である。空洞部等の大きさ、構造は第1実施形態とほぼ同様である。中空管路17が備えられているため、中空管路17と空洞部12との連通(中空管路同士も含む)による管路連通口18、表面14における中空管路17の管路開口部19も新たに生じる。中空管路17は、長さ、形状、太さ、断面形状等は適宜である。ただし、極端に太くなると多孔質シート状物を構成できなくなるため、断面径は概ね約10μm〜3mmの範囲内である。中空管路17は後述の製造方法における管路予定被溶解物の溶解に起因する。
【0046】
多孔質シート状物10Bに占める空洞部12の体積割合も、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上となる。同様に強度確保の点から空洞部の体積割合の上限は約85%となる。なお、中空管路の占める体積割合も影響するため、多孔質シート状物10Aよりは空洞部の割合は抑えられる。
【0047】
多孔質シート状物内の中空管路は図2(b)に開示の不規則な配置(いわゆるランダムな管路の配置)とするほか、当該多孔質シート状物の面方向に中空管路を揃えた配置や分岐した管路(ともに図示せず)に形成することも可能である。多孔質シート状物10Bのように空洞部と中空管路を併せ持つことにより、多孔質シート状物自体の吸液、浸透性能は向上する。
【0048】
図1及び図2にて開示の多孔質シート状物10A,10Bの構造は、微生物保存用多孔質シート状物の一例であり、シート状物自体の大きさ、形状、シートの肉厚の他、空洞部や中空管路の大きさ、形状、種類にも変更、改良が加えられる。そこで、図3に多孔質シート状物を多層化した多孔質多層構造体20の例を示す。適用する多孔質シート状物は第1実施形態の10Aまたは第2実施形態の10Bのいずれでもよく、その他の形態とすることもできる。
【0049】
図3(a)は多孔質シート状物10A,10Bを幾重にも巻き取ることにより多層化した多孔質多層構造体20であって、巻き取りロール形状21(巻きロール体)である。多孔質シート状物を長く形成すれば巻き取りは簡単である。図示では巻き芯22の周りに多孔質シート状物は巻き取られる。この巻き芯の使用は任意である。図3(b)は巻き取りロール形状の多孔質多層構造体の断面の部分拡大図である。各々の多孔質シート状物は巻き取られて容易に多層化し、ひとつの塊となる。巻き取りロール形状とする利点は必要時に必要量を切り分けて使用することができる。十分な巻き取り長さを確保することにより、微生物を保存した後、大量培養を所望する際に都合がよい。特にロール形状となることによって、保存時の省スペース化が可能となる。また、ロール単位で微生物の保存等の管理を行うため、作業性においても優れる。
【0050】
図3(c)は多孔質シート状物10A,10Bを1枚ずつ重ねて多層化した多孔質多層構造体であって枚葉多層形状23(枚葉多層体)である。各多孔質シート状物は結束バンド24によりひとつの枚葉多層形状にまとめられる。図3(d)は多孔質シート状物10A,10Bを一定の長さで折り返しながら多層化した多孔質多層構造体であって蛇腹形状25(蛇腹多層体)である。これは巻き取りロール形状21の変形である。一度にまとまった量が必要となる場合やすぐにシート状物を広げたい場合に適する。図3(e)は多孔質シート状物10A,10Bの一枚をいったんV字状に折り曲げ、広がった部分同士を互いに噛み合わせることにより何重にも重ねて多層化した多孔質多層構造体であって折り曲げ重ね形状26(曲げ重ね体)である。これは多孔質シート状物を1枚ずつ取り出して使用したい場合に都合がよい。
【0051】
図示のように多孔質シート状物を重ねて多層化して多孔質多層構造体を構成する場合、多孔質シート状物が単層であるときよりも、外気(主に空気)に触れる面積は総じて少なくなる。このため、保存期間中、保持されている微生物が被る酸素ストレスの影響は緩和される。なお、多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体に加工する際の折り曲げ方、折り畳み方は所望の用途に応じて適宜であり、図示の例に拘束されない。
【0052】
図4ないし図6に基づいて多孔質多層構造体を用いて行う微生物の保存方法を説明する。図4の第1工程図においては、はじめに多孔質多層構造体が用意され(S1)、これに対して滅菌が行われる(S11)。滅菌は、薬品添加、ガス薫蒸、乾熱、水蒸気加熱、放射線照射等の適宜である。これと並行して保存目的の微生物の懸濁液が調製される(S2)。懸濁液中の微生物濃度は当該微生物に応じて適宜である。
【0053】
多孔質多層構造体の滅菌後、当該多孔質多層構造体は微生物の懸濁液中に浸漬される(S12)。多孔質多層構造体内の全ての空洞部が微生物の懸濁液中に浸るように、多孔質多層構造体の全体が微生物の懸濁液中に沈められる。
【0054】
浸漬に伴い必要に応じて減圧が行われる(S13)。微生物の懸濁液は減圧可能な密閉容器に入れられており、多孔質多層構造体の浸漬後、真空ポンプ等を用いて密封容器内の空気が抜かれる(脱気)。多孔質多層構造体内の空洞部内の空気、多孔質多層構造体の撥水効果、微生物の懸濁液の表面張力等の影響から、単に浸漬のみでは多孔質多層構造体内部へ懸濁液は浸透しないことが多い。また、多層化構造であることも浸透が容易でない要因である。そのため、減圧下で多孔質多層構造体内の空洞部内の空気を脱気することが必要となる場合がある。減圧時の真空度は装置の大きさ、処理量、時間に応じて適宜である。こうして、多孔質多層構造体の空洞部内に微生物が付着される。
【0055】
減圧により多孔質多層構造体内の空洞部内部に微生物の懸濁液が満たされた後、減圧は終了し、密閉容器より多孔質多層構造体は懸濁液から引き上げられ、続いて乾燥が行われて乾燥多孔質多層構造体となる(S14)。乾燥条件は保存の対象となる微生物の乾燥耐性、処理時間等が考慮される。乾燥により水分含量を減らすことができ、以降の保存に際し微生物の懸濁液の腐敗を避けることができる。保存時における微生物の増殖要因を除去する必要があるためである。
【0056】
前記の乾燥多孔質多層構造体に至る工程によって微生物保存部材(P1)の完成とすることができる。微生物の保存期間等をさらに伸ばすことに加え、嫌気性等の空気環境下では生存が困難な微生物の場合、乾燥多孔質多層構造体表面からの酸素の流通、通気を抑制ないし阻止する必要がある。その場合、多孔質多層構造体の空洞部内に微生物が付着後乾燥されてなる乾燥多孔質多層構造体の表面は、ろう(蝋)、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかにより被覆され(S15)、微生物保存部材として完成する。
【0057】
ろう(蝋)、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかよりなる被覆剤(コート剤)により乾燥多孔質多層構造体の表面全体がまんべんなく被覆(コート)されることにより、乾燥多孔質多層構造体の内外の酸素の流通、通気を抑えることができる。空気環境下、常温、常圧での微生物保存部材の保存が容易となる。微生物保存部材を真空容器に封入して不活性ガスを充填する手間が必要なく、保存に要する負担が大きく低減される。
【0058】
被覆に用いるろう(蝋)は高級脂肪酸と高級1価アルコールのエステルであり、パラフィンはアルカン系炭化水素(Cn2n+2として表される。)である。ホットメルト樹脂は、ホットメルト接着剤として利用される樹脂であり、例えば、エチレン・酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂等であり、樹脂の融点が80℃〜120℃ほどの比較的低融点の樹脂である。
【0059】
図4の第1工程図に基づいて得た微生物保存部材(P1)は、図6(a)の断面模式図として示すことができる。同図は、前出の多孔質シート状物10Aから形成した微生物保存部材(P1)である。各部位の符号は前記同様である。連通多孔質体13内の空洞部12同士は連通口16によって互いに接触している。微生物の懸濁液は、連通口16を通じて個々の空洞部12内に流入する。乾燥の後、懸濁液中の微生物Moは空洞部12の内壁12wに貼り付いて取り残される。そして、当該図示の状態のまま、保存に供される。なお、被覆剤については図示を省略している。
【0060】
図5の第2工程図においても、はじめに多孔質多層構造体が用意され(S1)、これに対して滅菌が行われる(S21)。次に、保護剤溶液が調製され、加熱もしくは濾過により滅菌される。
【0061】
滅菌後の多孔質多層構造体は、微生物の懸濁液中への浸漬(S25)の前に保護剤溶液中に浸漬される(S22)。多孔質多層構造体内の全ての空洞部が保護剤溶液中に浸るように、多孔質多層構造体の全体が保護剤中に沈められる。そして、減圧(S23)、乾燥(S24)が行われる。保護剤溶液の浸漬後に行われる減圧(S23)の理由は、前記の第1工程図における減圧(S13)と同様に多孔質多層構造体内への浸透性を高めるためである。その後の乾燥(S24)は保護剤溶液中の余分な水分を蒸発させるためである。なお、樹脂の種類によっては減圧が省略される場合があり、保護剤溶液や微生物の種類により乾燥が省略される場合もある。
【0062】
保護剤は微生物の極度の乾燥の防止、適度な水分及び栄養の維持、浸透圧の変化の緩和、目的外の微生物の増殖抑制等の目的で用いられる。例えば、保護剤はグルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース等の糖類、ポリビニルアルコール、グリセリン、スキムミルク、ポリペプトン、さらに各種塩類、目的外微生物の成育を阻害する抗生物質等のいずれかあるいはそれらを混合した溶液である。保護剤は保存対象となる微生物の種類に応じた組成となり、例示以外の成分も当然に含められる。
【0063】
図5の第2工程図における乾燥(S24)以降の微生物の懸濁液中への浸漬(S25)、減圧(S26)、乾燥(S27)、被覆(S28)の各工程は、図4の第1工程図における(S12)ないし(S15)の各工程と共通するため、詳細を省略する。
【0064】
この第2工程図に基づく微生物の保存方法においても、前記同様、乾燥多孔質多層構造体に至るまで工程によって微生物保存部材(P2)の完成とすることができる。また、多孔質多層構造体の空洞部内に微生物が付着後乾燥されてなる乾燥多孔質多層構造体の表面の全体にろう(蝋)、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかによって被覆した微生物保存部材(P2)とすることもできる。いずれを選択するべきかについては、内部に保存される微生物、保護剤の選択等の条件による。
【0065】
図5の第2工程図に基づいて得た微生物保存部材(P2)は、図6(b)の断面模式図として示すことができる。同図は、前出の多孔質シート状物10Aから形成した微生物保存部材(P2)である。各部位の符号は前記同様である。連通多孔質体13内の空洞部12同士は連通口16によって互いに接触している。まず、保護剤溶液は、連通口16を通じて個々の空洞部12内に流入する。乾燥により適度に水分が蒸発して保護剤溶液の被膜Praが空洞部12の内壁12wに形成される。続いて、微生物の懸濁液も連通口16を通じて個々の空洞部12内に流入する。乾燥の後、懸濁液中の微生物Moは、空洞部12の内壁12wに形成された保護剤溶液の被膜Praに貼り付いて取り残される。そして、当該図示の状態のまま、保存に供される。なお、被覆剤については図示を省略している。
【0066】
図示並びに説明のとおり多孔質多層構造体の多孔質内に微生物が付着されてなる微生物保存部材について、図7、図8を用い代表的な使用例を説明する。図7(a)は、前出の図3(a),(b)と同様の巻き取りロール形状21の多孔質多層構造体20であり、微生物保存部材の一例である。巻き取りロール形状自体の大きさは任意である。これより、必要量の微生物保持シート27が切り取られる。図7(b)のように、切り取られた微生物保持シート27はシャーレ31内の培地上に載置される。すると、微生物保持シート内の空洞部に保持されている微生物が培地側に移動し、増殖し始める。図7(c)の例では、切り取られた微生物保持シート27はマイヤー32(例えば図示の坂口フラスコ等の培養容器)の液体培地中に投入される。同様に、微生物保持シート内の空洞部に保持されている微生物が培地側に移動し、増殖し始める。
【0067】
このように、比較的簡便な部材によって微生物の保存及び培養に用いられる。図示の巻き取りロール形状の多孔質多層構造体については、表面へのろう、パラフィン、ホットメルト樹脂による被覆は適宜である。ただし、いったん切り出して微生物保持シートを使用した後、保持されている微生物が被る損傷を避けるため、再び、多孔質多層構造体の表面にろう、パラフィン、またはホットメルト樹脂を被覆することもある。
【0068】
図8(a)は、前出の図3(c)と同様の枚葉多層形状23の多孔質多層構造体20であり、微生物保存部材の一例である。枚葉多層形状の一枚当たりの大きさや束の厚さは適宜である。図8(b)は、家庭、飲食店、工場、各種商業施設等に設置されている汚水浄化槽33(グリーストラップ、曝気槽等でもよい)に枚葉多層形状の中から何枚かの微生物保持シート28が投入された様子を示す。この場合の微生物保持シートには、汚物34等の分解効率の良い菌種が保持される。さらに、図8(c)は、河川、湖沼、海洋等の油濁汚染が生じた際の油濁の分解除去に供される例である。図示では、海洋35において船舶等から流出した重油等の油濁36がオイルフェンス37により囲まれている。そこで、何枚もの微生物保持シート28が油濁海域内に散布される。この場合の微生物保持シートには、油濁36等の分解効率の良い菌種が保持される。
【0069】
図7の例は、微生物保持シートを適量ずつ複数回にわたり切り分けて用いるため、小規模での使用が想定される。対照的に、図8の例は、一度に大量の微生物保持シートの使用が想定される大規模での使用が想定される。このように、微生物保存部材は目的、用途等を勘案して多様な形態で製造、提供される。むろん、図7、図8の例示以外にも各種の好適な用途に用いられる。例えば、鉱山等における鉱物の回収、浄化等のバクテリアルリーチングに用いられる。さらに、空洞部を有する多孔質シート状物の構造特性を生かして直接バイオリアクターとして用いることも可能である。従って、所望の微生物を保持し保存する部材であると共に、これを使用する際の利便性も高めることができる。
【0070】
開示の実施形態の微生物保持シートを形成する樹脂基材、及び後出の樹脂材料としては、広義に有機高分子化合物が用いられる。有機高分子化合物は、微生物保持シートとしての安定性、加工容易性、価格等が重視される場合に選択されることが多い。後記する製造方法からも明らかなように、シート状とする場合に都合が良く、用途も広いためである。有機高分子化合物として、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、あるいはポリエステル樹脂等が用いられる。また、有機高分子化合物においても生分解性能を考慮した動植物、微生物由来の天然有機高分子化合物、合成の生分解性樹脂も用いられる。
【0071】
ポリオレフィン樹脂を例示すると、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチルとの1種または2種以上のランダムまたはブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらに前記したこれら重合体の混合物等のポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂等の炭化水素系樹脂である。
【0072】
ポリアミド樹脂を例示すると、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610及びナイロンMXD等のポリアミド系樹脂である。
【0073】
ポリエステル樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0074】
その他に利用可能な樹脂として、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン−アクリロニトリル系樹脂、PTFE等のフッ素樹脂、ポリイソプレン系樹脂、SBR等のブタジエン系のゴム、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリケトン樹脂等を挙げることができる。
【0075】
生分解性樹脂は、動物、植物からの産生物をほぼそのまま利用した化合物と、この化合物を出発原料として適宜調製した樹脂素材の両方が含まれる。前者の天然物には、コラーゲン、デンプン、アルギン酸(架橋物等)、キチン、キトサン、天然ゴム、アラビアゴム、ダンマル、コパール、ロジン、グッタベルカ等である。後者の樹脂素材には、羊毛等のケラチン由来のタンパク質樹脂、例えばバチルス属等の細菌から産生されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸、あるいはポリ−3−ヒドロキシ吉草酸、並びに両分子からなる共重合体、カゼインプラスチック、大豆タンパクプラスチック、セルロースアセテート(アセチルブチルセルロース)、セルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、加えてセルロース由来のビスコースより調製される再生セルロース、デンプンから調製されるポリ乳酸等、種々の樹脂が該当する。さらに、これら以外にも、微生物的生分解性能に優れたポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等も含めることができる。
【0076】
列記の生分解性樹脂を微生物保存部材の樹脂基材、樹脂材料とすることにより、前出の図8に開示の使用環境下で事後分解消滅すると考えられる。このため、使用後に回収の必要性が無くなり、環境への負荷を低減することができる。
【0077】
これまでに述べた微生物保持シートに関し、そのもととなる微生物保存用の多孔質シート状物を第1ないし第3製造方法例に従って説明する。図9の工程断面模式図(第1製造方法例)に開示のように、はじめに、事後的に溶解可能な粒状被溶解物が樹脂材料中に混入され、所定のシート状物に成形される(混合・成形工程)。図9(a)のとおり、成形体101において、樹脂材料からなる基材110中に粒状被溶解物120は適度に分散されている。むろん、この成形段階では、粒状被溶解物の溶解は始まっておらず、ほぼ混入時の形状を維持している。
【0078】
混合・成形工程の後、成形体101内の粒状被溶解物120を溶解することによって、当該成形体内に空洞部を形成した多孔質体が得られる(多孔質形成工程)。図9(b)では、成形体101内の粒状被溶解物120の溶解に伴い粒状被溶解物は徐々に縮小する。最終的に図9(c)のように、成形体101内の粒状被溶解物120は完全に消失し、その空間は空洞部12となる。こうして基材110が取り残され多孔質体13を得ることができる。第1製造方法例に基づく多孔質シート状物10Aの完成である。粒状被溶解物120の溶解についての詳細は後述する。
【0079】
図10の工程断面模式図(第2製造方法例)は、微生物保存用の多孔質シート状物10Bの製造方法例を開示する。はじめに図10(a)のとおり、事後的に溶解可能な粒状被溶解物205と樹脂材料201が混入され、樹脂混合物210が得られる。図10(b)のように、樹脂混合物210から所定のシート状物を成形するに際し、事後的に溶解可能な管路予定被溶解物220が混入される。図10(c)においては、樹脂材料が固化して成形体240が生じた後、当該成形体の内部に含まれている粒状被溶解物205及び管路予定被溶解物220が溶解、除去される。図10(d)のとおり、シート状物の内部に空洞部と共に中空管路を有した多孔質体250(管路形成多孔質体)が生じる。管路予定被溶解物220を樹脂混合物210と合わせる際には、図示のように適当に並べて樹脂混合物210内に埋没させてもよく、あるいは双方を一緒に混練して均一に分散させてもよく、双方の混練は適宜である。このように、簡単に中空管路を有した多孔質体を形成することができる。粒状被溶解物205及び管路予定被溶解物220の溶解についての詳細も後述する。
【0080】
図11の工程断面模式図(第3製造方法例)は、微生物保存用の多孔質シート状物10Bの別の製造方法例を開示する。まず、図11(a)のとおり、事後的に溶解可能な粒状被溶解物205と樹脂材料201が混入され、樹脂混合物210が得られる。図10(b)では、いったん樹脂混合物210から所定の混合樹脂シート状物が成形される。図11(c)のように、成形後に生じた混合樹脂シート状物215の一面側に管路予定被溶解物220が載置される。続いて図11(d)のように、混合樹脂シート状物215上に管路予定被溶解物220が載置されている接合面(貼り合わせ面213)上に再度混合樹脂シート状物215が重ね合わされ、接合物216が得られる。管路予定被溶解物220は両混合樹脂シート状物215の間に挟まれて存在する。
【0081】
図11(e)では、接合物216の樹脂材料が固化した後、当該成形体の内部に含まれている粒状被溶解物205及び管路予定被溶解物220が溶解される。そして、シート状の接合物の内部全体に空洞部を有すると共に、接合物の内部、つまり接合面(貼り合わせ面)に中空管路を有した多孔質体260(管路形成多孔質体)が生じる。図11の第3製造方法例にあっては、混合樹脂シート状物215の内部に別途管路予定被溶解物220を適量添加、混練して、空洞部のみの場合よりも多孔質シート状物内部の空間を拡張することも可能である。混合樹脂シート状物上の接合面(貼り合わせ面)への管路予定被溶解物の載置は、図示の並べ置く他に、管路予定被溶解物のもととなる樹脂状物を接合面(貼り合わせ面)に塗布もしくは描画することもできる。従って、当該図11の製造方法の場合、正確な形状の中空管路を微生物保存用の多孔質シート状物の内部に形成することができる。
【0082】
管路予定被溶解物の形状について、図2の第2実施形態等の短い中空管路を所望するのであれば、後出の繊維状の管路予定被溶解物を適当な長さに砕いて細かくしてから用いられる。図10,図11の第2実施形態等の中空管路を所望するのであれば、繊維状の管路予定被溶解物は適当な長さに裁断してから用いられる。
【0083】
事後的に溶解可能な粒状被溶解物と樹脂材料との混練、あるいは事後的に溶解可能な管路予定被溶解物と樹脂材料との混練は、互いにほぼ均一に混ぜ合わせる必要がある。このため、製造規模に応じて公知のブレンダーやニーダー等が用いられる。樹脂の種類に応じて、硬化しないように加温しながら混練される。
【0084】
以上列記した樹脂材料と粒状被溶解物(管路予定被溶解物を含む場合もある)を含んでなるシート状物について、これらの成形には、押出成形、ブロー成形、プレス成形等の適宜樹脂加工分野の公知成形手法が用いられる。この結果、所望の成形形状が得られる。これらの他に、冷間静水圧プレス(CIP)、テープキャスティング法等を用いても良い。
【0085】
または、溶液キャスト法、Tダイ法、チューブラー法、カレンダー法等の公知の方法が使用される。樹脂材料を熱可塑性樹脂とするフィルムは、無延伸とする他、機械的物性等から、延伸フィルムとしてもよい。延伸フィルムを製造する際の延伸方法には、ロール−一軸延伸、圧延、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、チューブラー延伸等の公知の方法が使用できる。特に、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が、厚薄精度、機械的物性等の点で優れているため好ましい。
【0086】
延伸フィルムとする場合にあっては、前出の粒状被溶解含有物を温水中等で適度に加温しながら、管路予定被溶解物を引き延ばすようにすると、成形が容易になる。管路予定被溶解物も形状によっては粒状被溶解含有物と共に一緒に押し出され薄く広げることもでき、成形方法は自由である。
【0087】
前出の図9に示しているように、粒状被溶解物同士は互いに接触した構造として形成されている。空洞部同士を互いに連通させた多孔質シート状物を得ることは、空洞部形成の元となる粒状被溶解物の添加量自体を増やすことにより実現できる。図示の第1ないし第3製造方法例に基づいて微生物保存用多孔質シート状物を形成するに際し、シート状物に占める空洞部の体積割合を少なくとも50%以上、好ましくは70%以上としている。つまり、樹脂材料に添加、混合される粒状被溶解物の体積割合を少なくとも50%以上、好ましくは70%以上に制御することで、前記の空洞部の体積割合とすることができる。ただし、単位体積あたりの樹脂材料に占める粒状被溶解物の量(体積割合)が増えすぎると、微生物保存用多孔質シート状物としての強度が低下し、脆弱化するため、ほぼ85%が上限となる。なお、管路予定被溶解物を添加して中空管路を形成する場合、その量は適宜調整される。
【0088】
図示の微生物保存多孔質シート状物の第1ないし第3製造方法例に用いられる事後的に溶解可能な粒状被溶解物は、将来的にシート状の多孔質体として形成されたときに空洞部に置換される。つまり、空洞部の大きさはそのもととなる粒状被溶解物の大きさに近似する。空洞部の大きさは、約1μm〜5mmの範囲内であることから、粒状被溶解物の大きさも約1μm〜5mmの範囲内に合致する程度の大きさとなる。粒状被溶解物の形状には特段の制約は無く、球状、紡錘状、角形状等の適宜である。
【0089】
図示の第2,第3製造方法例に用いられる事後的に溶解可能な管路予定被溶解物は、将来的にシート状の多孔質体として形成されたとき、当該多孔質体の内部に中空管路に置換される。中空管路は、微生物の懸濁液を前出の多孔質多層構造体内部に浸透しやすくするために形成される。そのため、中空管路自体の管径、管路長等は必ずしも厳密ではなく、既述の説明、さらには用途、目的、耐久性、樹脂基材の組成に応じて適宜となる。
【0090】
粒状被溶解物の事後的な溶解可能性を満たすため、粒状被溶解物は水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって溶解、除去される組成物からなる。また、管路予定被溶解物の事後的な溶解可能性を満たすため、管路予定被溶解物も水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって溶解、除去される組成物である。粒状被溶解物、管路予定被溶解物の溶解、除去に当たり、同一の溶媒あるいは異なる溶媒を用いてもよい。
【0091】
粒状被溶解物、管路予定被溶解物の溶解に際し、水を溶媒として前記のシート状物(成形体や接合物)は水中に浸漬、あるいは散水等が行われる。前記のシート状物(成形体や接合物)内部の粒状被溶解物、管路予定被溶解物のいずれかもしくは両方は溶解される。水には、温水、熱水、亜臨界水も含まれる。また、酸・アルカリのpH値の調整や適宜の塩類の溶解液も含まれる。これらは総称して水系の溶剤である。
【0092】
具体的に水溶性の粒状被溶解物とは、グルコースの結晶、氷砂糖、あるいは粉糖(糖の凝固物)等の糖類の結晶である。塩類の結晶の場合、例えば、塩化ナトリウムの結晶、みょうばんの結晶、硝酸カリウムの結晶等である。石灰岩や炭酸カルシウム結晶を水溶性の被溶解物とすることも可能である。この場合、水系の溶媒として希塩酸を用い溶解が行われる。それぞれは所定の粒子径に粉砕、分級される。微生物保存用の多孔質シート状物は、前出の水系の溶媒に不溶、もしくは難溶な性質の樹脂材料から選択される。水溶性の管路予定被溶解物とは、ゼラチン繊維をはじめ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)等から調製される繊維状物である。
【0093】
水系の溶剤の別形態として、粒状被溶解物、管路予定被溶解物は酵素により分解され溶解可能となる物質から選択される。すなわち当該酵素の基質が用いられる。使用する酵素は、アミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ(ペプチダーゼ)等の加水分解酵素から適切に選択され、基質に応じて単一種の酵素、あるいは複数種の酵素が使用される。酵素と被溶解物との対応は両者間の基質特異性に依存する。アミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ等による場合、基質となる被除去物は糖鎖化合物となる。リパーゼは直鎖カルボン酸、トリグリセリド、パラフィン等の油脂類の分解に用いられる。プロテアーゼ(ペプチダーゼ)はタンパク質、あるいはペプチド結合、アミド結合を有する高分子化合物、ポリ乳酸等の加水分解に用いられる。
【0094】
具体例を明示すると、基質となる粒状被溶解物がデンプンの粒子であり、管路予定被溶解物がゼラチン繊維、デンプン繊維、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂等の繊維である場合、酵素にはα,β−アミラーゼ、加えてプルラナーゼ等が選択される。同時に、多孔質体を形成するシート状物は、前記のアミラーゼ等の加水分解を受けない、あるいは受けにくい組成とする必要がある。例えば、基材はポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂素材となる。他に管路予定被溶解物には植物の繊維である木綿糸、麻糸、または絹糸やポリグルタミンの繊維等を用いることもできる。
【0095】
デンプン粒子の形態や粒径は植物種によって異なり、粒径は約1〜100μmである。例えば、馬鈴薯デンプンの粒子は平均粒径約30〜40μmの楕円形であり、コーンスターチ粒子は平均粒径13〜15μm程度でその形状はやや角張っている。他に、タピオカデンプンの粒子は約5〜15μm、食用カンナのデンプン粒子は約30〜40μmの粒径である。出来上がるシート状物の厚さに応じてこれらのデンプン粒子が粒状被溶解物として選択される。さらに、前記のデンプンの粒子径を上回る大きさの空洞部を形成する場合には、米や麦等の粒をそのまま使用してもよく、あるいはデンプン粉を練って粒状とした粒子体を使用してもよい。なお、酵素分解を容易にするため、成形体は分解するデンプンの糊化温度以上の温水浴中にて加温され、デンプンの糊化(アルファ化)が促進される場合もある。
【0096】
酵素処理に供する酵素溶液は、当該酵素の活性が最適に反映される至適温度、至適pHに維持される。粒状被溶解物、管路予定被溶解物(つまり基質)の酵素加水分解物により、酵素溶液自体のpH等が変化することもあり得るため、適宜の緩衝液が添加されることもある。また、酵素加水分解物が反応阻害剤としても作用する懸念もあり得ることから、連続処理、回分処理を適式に組み合わせて行われる。併せて、用途に応じ、必要により残存する酵素の失活を行う場合もある。例えば、アルコール、高塩溶液、酸や塩基の溶液へ浸す他、加熱することもある。なお、樹脂材料の性質によるものの、速度反応論を加味して、至適温度を高めとする酵素の選択が好ましい。酵素処理を利用する利点は、水に不溶、難溶、あるいは含水に伴ってゲル化や粘調化する溶解物を用い、より速い処理速度により空洞部、中空管路の形成が可能となることである。
【0097】
水系の溶剤(酵素を含む)に加えて有機溶剤も粒状被溶解物、管路予定被溶解物の溶解、除去のために加えられる。有機溶剤の種類は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールをはじめとする各種アルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、他にアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、他にアセトニトリル等、また、へキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、シリコーンオイル、テルペン類、リモネン等のいずれであっても良い。これらは、単独種で用いることもできるが、シート状物を形成する樹脂基材及び各被溶解物の溶解性に鑑み複数種の有機溶剤を混合調整して用いることができる。シート状物を形成する樹脂基材と各被溶解物が共に油溶性成分である場合であっても、被溶解物側のみ特に有機溶剤に溶解しやすい樹脂種を選択し、シート状物を形成する樹脂基材の溶解が進行する以前に溶剤を除去することも考えられる。各被溶解物を有機溶剤に溶出させた後、多孔質体は適宜乾燥される。
【0098】
有機溶剤により溶解、除去される粒状被溶解物、管路予定被溶解物には、例えば、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の樹脂が挙げられる。
【0099】
シート状物(成形体や接合物)からの粒状被溶解物、管路予定被溶解物の溶解(分解)、除去は、簡単に調達できる水、酵素、または有機溶剤のいずれかとなるため、製造経費を軽減することができる。同時に、これらにより溶解、除去される組成であるため、多孔質構造体を製造する際の量産性に優れる。
【0100】
これまでの説明から明らかであるように、本発明の微生物の保存方法及び微生物保存部材に供する微生物保存用多孔質シート状物は樹脂材料を構造骨格として形成されていることから、軽量であり、取り扱いが便利である。とりわけ、シート状であるため、折り曲げや積層等が容易である。微生物の保存期間、使用目的に応じてシート状物の厚さや大きさを自由に設定できるため、保持可能な微生物量の調節も容易である。また、多孔質のシート状物を採用したことにより、微生物が付着可能な内部空間を広げることができ、単位体積当たりの微生物の保持量が高められる。
【実施例】
【0101】
[使用材料]
発明者らは、実施例1ないし4の微生物保存用多孔質シート状物を構成する樹脂材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:ユメリット ZM033)(以下同樹脂を「LLDPE樹脂」と略記する。)、エチレンビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業株式会社製:ソノアール4412)(以下同樹脂を「EVOH樹脂」と略記する。)、生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂(和光純薬工業株式会社製:PLA−0020)(以下同樹脂を「PLA樹脂」と略記する。)の3種類の樹脂を用いた。
【0102】
連通多孔質体を形成する空洞部の基となる事後的に溶解可能な粒状被溶解物として馬鈴薯デンプン(東海澱粉株式会社製:丸特士幌(平均粒径約30μm))を用い、また、管路予定被溶解物としてポリビニルピロリドン(BASF社製:Luvitec K90)を用いた。粒状被溶解物の溶解に際し、耐熱α−アミラーゼ(大和化成株式会社製:クライスターゼT10S)を用いた。
【0103】
保護剤溶液は、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製:ゴーセノールNM−11Q)の10%水溶液と、トレハロース(株式会社林原製:トレハ)の10%水溶液とを等量ずつ混合し調製した。
【0104】
[使用微生物]
保存耐性の評価に際し、酵母(Saccharomyces cerevisiae);財団法人日本醸造協会が供給する清酒用酵母(きょうかい7号)を用いた。また、大腸菌(Escherichia coli);NBRC3301株を用いた。
【0105】
[実施例1の微生物保存用多孔質シート状物の作成]
粒状被溶解物(馬鈴薯デンプン)70重量部をLLDPE樹脂30重量部に混入し、170℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬してLLDPE樹脂混練物を得た。LLDPE樹脂混練物をステンレス鏡面板内に注入し、150℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断してLLDPE樹脂シート状物(縦5cm×横30cm,厚さ500μm)を得た。
【0106】
耐熱α−アミラーゼを1重量%含み、80℃に加温した熱水浴中にLLDPE樹脂シート状物を2時間浸漬した後、40℃の超音波浴中に5分間浸漬した。続いて、吸引びんにブフナー漏斗を接続すると共にこの漏斗上に載置し、吸引しながら蒸留水を通水した。ブフナー漏斗を通過した通過液が糖類の呈色反応を示さなくなるまで蒸留水の通水洗浄を続けた。洗浄後、80℃の乾燥機内で24時間乾燥した。こうして、LLDPE樹脂シート状物から粒状被溶解物を溶解して除去し、シート状物の内部に空洞部を有する微生物保存用多孔質シート状物(実施例1)を作成した。
【0107】
図12は実施例1の微生物保存用多孔質シート状物内部を500倍に拡大して示す電子顕微鏡写真である。写真から自明なとおり、微生物保存用多孔質シート状物は内部に無数の空洞部を有している。空洞部の形状は、粒状被溶解物(実施例では馬鈴薯デンプン)の粒形状に依存する。そして、それぞれの空洞部同士は互いに連通している。従って、微生物の懸濁液や保護剤溶液の浸透、流入が可能であることがわかる。
【0108】
[実施例2の微生物保存用多孔質シート状物の作成]
粒状被溶解物(馬鈴薯デンプン)70重量部をEVOH樹脂30重量部に混入し、170℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬してEVOH樹脂混練物を得た。EVOH樹脂混練物をステンレス鏡面板内に注入し、170℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断してEVOH樹脂シート状物(縦5cm×横30cm,厚さ500μm)を得た。
【0109】
EVOH樹脂シート状物からの粒状被溶解物の溶解、除去は、実施例1と同様とした。そして、シート状物の内部に空洞部を有する微生物保存用多孔質シート状物(実施例2)を作成した。
【0110】
[実施例3の微生物保存用多孔質シート状物の作成]
粒状被溶解物(馬鈴薯デンプン)70重量部をPLA樹脂30重量部に混入し、170℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬してPLA樹脂混練物を得た。PLA樹脂混練物をステンレス鏡面板内に注入し、170℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断してPLA樹脂シート状物(縦5cm×横30cm,厚さ500μm)を得た。
【0111】
PLA樹脂シート状物からの粒状被溶解物の溶解、除去は、実施例1と同様とした。そして、シート状物の内部に空洞部を有する微生物保存用多孔質シート状物(実施例3)を作成した。
【0112】
[実施例4の微生物保存用多孔質シート状物の作成]
メタノールにポリビニルピロリドン(PVP)を溶解してPVPの10%(w/v)溶液とした。同PVP溶液を卓上用塗布装置(武蔵エンジニアリング株式会社製:商品名「SHOT mini 100S」)に装着した内径0.2mmのニードル付きシリンジ内に充填した。実施例1にて作成した厚さ300μmのLLDPE樹脂シート状物の表面に対し、卓上用塗布装置からPVP溶液を直線上に、1cmずつ互いの直線の間隔を空けて吐出した。適当な本数のPVP溶液の直線が並んだところで、オーブンにより80℃で乾燥した。こうして、LLDPE樹脂シート状物の接合面(貼り合わせ面)に管路予定被溶解物を載置した。
【0113】
続いて、管路予定被溶解物を載置したLLDPE樹脂シート状物の接合面(貼り合わせ面)に、実施例1にて作成した厚さ300μmのLLDPE樹脂シート状物を被せ、150℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断してLLDPE樹脂接合物(縦5cm×横30cm,厚さ500μm)を得た。
【0114】
LLDPE樹脂接合物からの粒状被溶解物及び管路予定被溶解物の溶解、除去は、実施例1と同様とした。そして、シート状物の内部に空洞部と共に中空管路を有する微生物保存用多孔質シート状物(実施例4)を作成した(厚さ約500μm)。
【0115】
[多孔質多層構造体の作成と保護剤溶液の含浸]
前記の実施例の中から、実施例1及び実施例4の微生物保存用多孔質シート状物を直径約1cmのガラス管により巻き取り端をテープにより接着して、巻き取りロール形状の多孔質多層構造体に仕上げた。実施例1の微生物保存用多孔質シート状物から形成した巻き取りロール形状の多孔質多層構造体をPS1とし、同様に実施例4由来の多孔質多層構造体をPS4とする。前出の保護剤溶液の入ったビーカー内に多孔質多層構造体(PS1,PS4)を沈め、浮き上がらないようにステンレスメッシュで重しをした。保護剤溶液の入ったビーカーごと真空デシケーターに移し真空ポンプを用いて真空デシケーター内を脱気し、各実施例に由来する多孔質多層構造体内部に保護剤溶液を浸透させた。その後、保護剤溶液のビーカーから多孔質多層構造体を取り出し、余分な保護剤溶液をふき取り、オーブンにより80℃で乾燥した。
【0116】
図13は、前掲図12の実施例1の微生物保存用多孔質シート状物に対し保護剤溶液を浸透させ、500倍に拡大して示す電子顕微鏡写真である。微生物保存用多孔質シート状物内部の空洞部が保護剤により覆われている様子がわかる。
【0117】
[微生物懸濁液の調製及びその含浸]
〈大腸菌の培養、懸濁液の調製〉
前出の大腸菌を寒天培地(Difco社製:NAAgar(スラント用))に接種し培養した。寒天培地にて培養した大腸菌から白金耳2回分の画線を分取し、1/500の濃度に希釈した液体培地(Difco社製:NB培地)9mLの中に懸濁した。液体培地の大腸菌懸濁液の吸光度を吸光光度計により測定した(波長:660nm)。吸光度と大腸菌数の相関から、同懸濁液中の大腸菌の濃度を1mL当たり107〜108個と推定した。これをさらに前記の液体培地により希釈して105個/mLの大腸菌濃度の懸濁液とした。
【0118】
〈酵母の培養、懸濁液の調製〉
前出の酵母を寒天培地(Difco社製:YMAgar)に接種し培養した。寒天培地にて培養した酵母から白金耳2回分の画線を分取し、液体培地(酵母エキス3g、麦芽エキス3g、ポリペプトン5g、グルコース10g、クロラムフェニコール0.05g、及び蒸留水1Lからなる。)9mL内に懸濁した。液体培地の酵母懸濁液の吸光度を吸光光度計により測定した(波長:660nm)。吸光度と酵母数の相関から、同懸濁液中の酵母の濃度を1mL当たり107〜108個と推定した。これをさらに液体培地により希釈して105個/mLの酵母濃度の懸濁液とした。
【0119】
[多孔質多層構造体内への微生物の付着]
実施例1、実施例4の各微生物保存用多孔質シート状物からなる保護剤付きの多孔質多層構造体(PS1,PS4)のそれぞれについて、50%エタノール溶液中に沈めて当該多孔質多層構造体の空洞部内にエタノール溶液を浸透させた。滅菌シャーレに取り出し蓋をして、減圧乾燥後、オーブンにより80℃で乾燥した。
【0120】
前出の大腸菌懸濁液100mLを200mLのビーカーに入れ、このビーカーに多孔質多層構造体(PS1,PS4)のそれぞれを沈め、浮き上がらないようにステンレスメッシュで重しをした。懸濁液の入ったビーカーごと真空デシケーターに移し真空ポンプを用いて真空デシケーター内を脱気し、多孔質多層構造体(PS1,PS4)のそれぞれの内部に懸濁液を浸透させた。懸濁液のビーカーから多孔質多層構造体を取り出し、減圧乾燥機により25℃、2時間乾燥した。こうしてPS1,PS4の各多孔質多層構造体の空洞部内に大腸菌を付着させた。酵母についても前記大腸菌の付着と同様の手順、条件で処理を行い、PS1の多孔質多層構造体の空洞部内に酵母を付着させた。以下、PS1の大腸菌付着物を「PS1E」、PS4の大腸菌付着物を「PS4E」、PS1の酵母付着物を「PS1S」と表記する。
【0121】
[多孔質多層構造体内への微生物の付着、パラフィンによる表面被覆]
保存時の多孔質多層構造体表面からの酸素の流通、通気の抑制ないし阻止の効果も併せて評価するため、パラフィンによる被覆を試みた。100mLのビーカーに融点42〜44℃のパラフィン(米山薬品工業株式会社製)を50g入れ、オートクレーブを用いてパラフィンを滅菌し液温を50℃に冷ました。その後、PS1及びPS4の空洞部内に大腸菌を付着した多孔質多層構造体(PS1E及びPS4E)をビーカー内のパラフィン中に投入して表面全体をパラフィンにより覆い、直ちに取り出した。取り出した後、滅菌シャーレに収容して封止し当該滅菌シャーレごと以下の条件で保存した。PS1Eのパラフィン被覆物を「PS1EC」、PS4Eのパラフィン被覆物を「PS4EC」と表記する。
【0122】
[保存期間、保存条件]
大腸菌を付着した多孔質多層構造体(PS1E,PS4E)について、−60℃、4℃にて、4日間、14日間、一部1ヶ月間密封容器内で保存した。同大腸菌を付着した多孔質多層構造体(PS1EC,PS4EC)について、4℃にて、4日間、14日間密封容器内で保存した。また、酵母を付着した多孔質多層構造体(PS1S)について、−60℃、4℃にて、4日間、14日間密封容器内で保存した。
【0123】
酵母を付着した多孔質多層構造体(PS1S)の4℃、4日間経過後の内部の様子を観察した。図14は酵母付着のPS1Sの500倍に拡大して示す電子顕微鏡写真である。前出の図12,13の写真(同倍率)との比較からわかるように、微生物保存用多孔質シート状物のどの空洞部にも付着物(すなわち酵母)が存在していることがわかる。図15は同じ多孔質多層構造体(PS1S)の1000倍に拡大した電子顕微鏡写真である。多孔質多層構造体の空洞部の内部に細かな粒状物が付着している。さらに、図16は空洞部を5000倍に拡大した電子顕微鏡写真である。多孔質多層構造体の空洞部の内表面に隙間なく酵母が付着している様子がわかる。このように、多孔質多層構造体の空洞部に微生物が付着可能であることが確認できた。
【0124】
[微生物の生存確認]
各温度で保存した多孔質多層構造体(PS1E,PS4E,PS1EC,PS4EC,PS1S)について、前記の期間を経た後、多孔質多層構造体の巻き取りをほどいてもとのシート状とし、長さ方向の中間部分を1cmの幅で切り取った(縦5cm×横1cmのサンプル切片となる。)。PS1EC,PS4ECについては表面を覆うパラフィンを剥がし、同様に多孔質多層構造体の巻き取りをほどいてもとのシート状とし、サンプル切片を得た。
【0125】
大腸菌の生存確認では、試験管に前出の大腸菌の培養に用いた液体培地(Difco社製:NB培地)を15mL入れ、ここにPS1E,PS4E,PS1EC,PS4ECに由来するそれぞれのサンプル切片を投入し、モルトン栓で蓋をした。続いて、試験管ごと真空デシケーターに移し真空ポンプを用いて真空デシケーター内を脱気し、サンプル切片の内部に液体培地を浸透させた。そして、インキュベーターにて35℃で24時間培養した。
【0126】
酵母の生存確認では、試験管に前出の酵母の培養に用いた液体培地を15mL入れ、ここにPS1Sに由来するそれぞれのサンプル切片を投入し、モルトン栓で蓋をした。続いて、試験管ごと真空デシケーターに移し真空ポンプを用いて真空デシケーター内を脱気し、サンプル切片の内部に液体培地を浸透させた。そして、インキュベーターにて25℃で24時間培養した。
【0127】
[培養液の吸光度の測定]
各温度、各経時日数のサンプル切片を投入して培養した培養液を1mLずつ分取し、吸光光度計により660nmの吸光度を測定し、培養液の濁りの程度を調べた。培養液のみの吸光度よりも吸光度が上昇した培養液については、微生物が生存しているものとして評価した。
【0128】
[シャーレによる培養の評価]
大腸菌の場合、デソキシコレート寒天培地を20mL注入したシャーレに、各温度、各経時日数のサンプル切片を投入して培養した培養液を1mLずつ分注し、35℃で24時間インキュベートした。酵母の場合、前出の寒天培地(Difco社製:YMAgar)のシャーレに、各温度、各経時日数のサンプル切片を投入して培養した培養液を1mLずつ分注し、25℃で5日間インキュベートした。
【0129】
各温度で保存した多孔質多層構造体(PS1E,PS4E,PS1EC,PS4EC,PS1S)の所定期間経過後の生存評価は、表1ないし表3のとおりである。表1は大腸菌を付着した多孔質多層構造体(PS1E及びPS1EC)、表2は大腸菌を付着した多孔質多層構造体(PS4E及びPS4EC)、表3は酵母を付着した多孔質多層構造体(PS1S)の保存結果である。表中“○”は生存が確認できたサンプルであり、“×”は生存が確認できなかったサンプルである。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
[結果と考察]
−60℃の冷凍状態の保存では長期保存が可能であることが確認できた。これは冷凍休眠状態となったためと考える。しかし、4℃における大腸菌の付着、保存の場合、生存日数は、酵母と比較して短いことが判明した。おそらく、大腸菌は酵母よりも体長が小さく、細胞膜の構造が酵母より脆弱であるため保存時の酸素の影響等により死滅したことが予想される。なお、多孔質多層構造体のPS1EとPS4Eとの比較では性能の差は生じなかった。また、多孔質多層構造体のPS2,PS3については、PS1とほぼ同様の構造であることから、PS1と同様の結果を示すことが予想できる。
【0134】
実施例における多孔質多層構造体への微生物の付着、保存の試験、評価によると、保存性能の差異は微生物種に大きく依存するものと考える。そこで、広汎な種類の微生物の保存に対応できるようにするためには、多孔質多層構造体内部の空洞部の大きさの調整、保存時の酸素流通の抑制等の課題も明らかとなった。
【0135】
上記の点を踏まえ、大腸菌を付着し、その後表面をパラフィンで被覆した多孔質多層構造体(PS1EC,PS4EC)によると、4℃の温度下におけるPS1E及びPS4Eと比較して保存効率の向上を確認することができた。すなわち、多孔質多層構造体に微生物を付着させた後、その表面をパラフィンで被覆することは、保存時の酸素流通に伴う微生物への影響を軽減していることを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の微生物の保存方法は多孔質多層構造体内部の空洞部に特徴を有し、これを利用して微生物を保存する用途に都合がよい。本発明の微生物保存部材は多孔質多層構造体を用いるため、微生物の担持、保存し、そのまま微生物を利用する用途に好適である。本発明の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法は多孔質多層構造体の製造を容易に可能とすることができ、量産の足がかりとなる。
【符号の説明】
【0137】
10A,10B 多孔質シート状物
11 樹脂基材
12 空洞部
12w 空洞部の内壁
13 連通多孔質体
16 連通口
17 中空管路
20 多孔質多層構造体
21 巻き取りロール形状(巻きロール体)
101,240 成形体
110 樹脂材料からなる基材
120,205 粒状被溶解物
220 管路予定被溶解物
P1,P2 微生物保存部材
Mo 微生物
Pra 保護剤溶液の被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させることを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項2】
前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬した後に該多孔質多層構造体を乾燥して乾燥多孔質多層構造体とする請求項1に記載の微生物の保存方法。
【請求項3】
前記乾燥多孔質多層構造体の表面をろう、パラフィン、またはホットメルト樹脂のいずれかにより被覆する請求項2に記載の微生物の保存方法。
【請求項4】
前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬する前に、前記多孔質多層構造体を保護剤溶液中に浸漬して該保護剤溶液を乾燥する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の微生物の保存方法。
【請求項5】
前記多孔質多層構造体が巻き取りロール形状である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の微生物の保存方法。
【請求項6】
前記多孔質シート状物の内部に中空管路が形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物の保存方法。
【請求項7】
前記樹脂基材が生分解性樹脂よりなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の微生物の保存方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の微生物の保存方法により、前記多孔質多層構造体の多孔質内に微生物を付着させたことを特徴とする微生物保存部材。
【請求項9】
樹脂基材の内部に空洞部同士が連通した連通多孔質体を形成すると共に該樹脂基材の表面に前記空洞部が開口している多孔質シート状物を多層化して多孔質多層構造体を形成し、前記多孔質多層構造体を微生物の懸濁液中に浸漬して前記多孔質多層構造体の前記空洞部内に微生物を付着させるための微生物保存用多孔質シート状物の製造方法であって、
事後的に溶解可能な粒状被溶解物を樹脂材料に混入して所定のシート状物に成形し、この後に前記粒状被溶解物を溶解することにより前記シート状物の内部に空洞部を有する多孔質体を形成することを特徴とする微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項10】
前記シート状物に占める前記空洞部の体積割合を、少なくとも50%以上とする請求項9に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項11】
前記粒状被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項9又は10に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項12】
前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形するに際し、事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を混入し、所定のシート状物に成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記シート状物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項13】
前記粒状被溶解物を前記樹脂材料に混入して所定のシート状物を成形し、前記シート状物同士を貼り合わせる際の接合面に事後的に溶解可能な管路予定被溶解物を載置して前記シート状物同士からなる接合物を成形した後に前記粒状被溶解物及び前記管路予定被溶解物を溶解して、前記接合物の内部に空洞部と共に中空管路を有する多孔質体を形成する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項14】
前記管路予定被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項12又は13に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂材料が生分解性樹脂よりなる請求項9ないし14のいずれか1項に記載の微生物保存用多孔質シート状物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−50320(P2011−50320A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202613(P2009−202613)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(592184876)フタムラ化学株式会社 (60)
【Fターム(参考)】