説明

微生物の増殖及びバイオフィルム形成に抵抗性のある移植し得る又は挿入可能な医療装置

装置の上及び環境中の微生物の増殖に対する抵抗、並びに装置上の微生物の付着及びバイオフィルム形成に対する抵抗を提供する、移植し得る又は挿入可能な医療装置が開示される。特に本発明は、少なくとも1個の生体適合性マトリックスポリマー領域、微生物の成長に対する抵抗を提供するための抗微生物薬、及び/又は医療装置の表面上への微生物の付着並びにバイオフィルムの合成及び蓄積を阻害するための微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含む、移植し得る又は挿入可能な医療装置を開示する。生体適合性マトリックスポリマーの表面に該生物活性物質のいずれかを優先的に分配することを実質的に防止し、並びに該生物活性物質の化学修飾を実質的に防止する条件下での、そのような装置の製造法も明らかにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する陳述)
本出願は、2002年2月8日に出願された、名称「微生物増殖及びバイオフィルム形成に抵抗性のある移植し得る又は挿入可能な医療装置(Implantable Or Insertable Medical Device Resistant To Microbial Growth And BiofilmFormation)」の米国特許出願第10/071,840号の同時係属の一部継続出願であり、この出願は全体が本願明細書に引用により組入れられている。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、装置上及び装置の環境中での微生物増殖に対する抵抗性並びに装置上への微生物の接着及びバイオフィルム形成に対する抵抗性を提供する、移植し得る又は挿入可能な医療装置に関する。別の態様において、本発明は、そのような移植し得る又は挿入可能な医療装置の製造法、特に少なくとも1個のマトリックスポリマー領域、微生物の増殖への抵抗性を提供するための抗微生物薬、並びに/又は医療装置の表面への微生物の付着及び表面上でのバイオフィルムの合成及び蓄積を阻害するための微生物の付着/バイオフィルム合成阻害薬を備えるそのような装置の製造法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
金属、ポリマー又は金属及びポリマー材料の複合材料で製造されたステントのような、移植し得る又は挿入可能な医療装置は、微生物のコロニー形成及び付着のために閉塞することが多い。この問題点は、比較的長期間、すなわち、約30日間から約12ヶ月間又はそれよりも長く移植され続けるように適合された医療装置において、特に蔓延している。細菌などの微生物は、医療装置の上及び周囲に頻繁にコロニー形成し、並びに装置の表面への付着時には、増殖し及び細胞外ポマー物質、典型的には多糖からなる複合マトリックス内に凝集塊を形成する。付着した微生物及び会合した細胞外ポリマー物質の塊は、一般にバイオフィルム又はスライムと称される。抗微生物薬は、バイオフィルムに浸透すること、並びにバイオフィルム内の微生物を殺傷し及び/又は増殖を阻害することが困難である。装置の上及び周囲の微生物のコロニー形成、並びにバイオフィルム障壁の合成は、最終的には装置に外被形成(encrustation)、閉塞及び故障を生じる。
【0004】
この問題点を最小化する先行する方法は、移植し得る医療装置へのTeflon(登録商標)のような表面エネルギーが低い材料の使用、及びそのような医療装置上の表面塗装の使用を含む。表面塗装は、典型的には1種の抗微生物薬又は1〜2種の抗生物質を含む。
【0005】
例えば米国特許第5,853,745号は、抗微生物の塗装層の上に耐久性のある保護塗装層を有する移植し得る医療装置を開示している。この塗装層は、医療装置の表面の少なくとも一部へ抗微生物性塗装層を塗布すること、抗微生物性塗装層の上に耐久性のある塗装を塗布すること、並びに耐久性塗装層の上に弾性塗装層を塗布することにより形成される。
【0006】
米国特許第5,902,283号は、非-金属性の抗微生物薬を含浸した移植し得る医療装置を開示しており、ここで抗微生物薬組成物は、抗微生物薬組成物が装置の材料へ浸透する条件下で装置に塗布される。
【0007】
米国特許第5,772,640号は、医療装置をクロルヘキシジン及びトリクロサンを含有する疎水性又は親水性ポリマーの溶液中に浸漬又は液浸することにより、クロルヘキシジン及びトリクロサンにより含浸及び/又は被覆されたポリマー医療装置を開示している。
【0008】
国際公開公報第99/47595号は、ゴム状コポリマーを5〜50%含むアクリル系ポリマー及び生物殺傷性化合物を含有する、ある医療用途で使用することができるプラスチック材料を開示している。この特許は、液体噴射システムによりポリマー溶融物へ抗微生物薬を添加することも開示している。
【0009】
米国特許第5,679,399号は、殺生物剤のような物質を含有する1個又は複数の透過性又は半透過性の層を含むことができるメンブレンを開示している。これらの層は、周囲の液体の内側への伝達(transmission)及び殺生物剤の外側への分散は可能である。これらのメンブレンは、殺生物剤のような物質をその中に閉じ込めるために密封又は塗装を含むこともある。
【0010】
先行する方法の塗装は、細菌環境へのそれらの近接性、並びにその結果細菌のコロニー形成及び付着を妨害するそれらの能動的アプローチのために、最大の成功を納めている。しかしこのアプローチは、単独の狭いスペクトルの活性物質に対する細菌の可能性のある抵抗性のため、そのようなコーティングへ混入することができる活性物質の量は典型的には低いため、及び/又は外側が塗装された円筒状装置は、活性物質を、装置の外側環境には放出するが、管腔内には放出しないために、不適切であることが証明されている。
【0011】
先行技術の前述の欠点及びその他の欠点を解決するために、本出願人らは、装置の上及び周囲の微生物の増殖並びに/又は装置上のバイオフィルム形成に対する抵抗性を提供する、長期植込みに適している移植し得る又は挿入可能な医療装置、及びそのような装置の製造法を開発した。従って本発明の装置は、先に説明された塗装の使用に関連した欠点を克服し、並びに最終的には装置に外被形成し、閉塞及び故障を生じるような、バイオフィルム汚染のリスクの低下を提供する。
【発明の開示】
【0012】
(発明の概要)
本発明のひとつの態様は、少なくとも1種の生体適合性マトリックスポリマー領域、及び抗微生物薬、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬又は両方を含む生物活性物質を備える、移植し得る医療装置に関する。一部の好ましい態様において、医療装置は複数の区別できるマトリックスポリマー領域を備える。マトリックスポリマー領域を少なくとも部分的に被覆する1個又は複数のバリア層が、本発明のある好ましい態様において提供されてもよい。好ましい抗微生物薬は、トリクロサン、クロルヘキシジン及びそれらの塩又は組合せを含む。その他の抗微生物薬は、ニトロフラゾン、塩化ベンザルコニウム、銀塩、並びにリファンピン、ゲンタマイシン及びミノサイクリンなどの抗生物質を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は、サリチル酸及びそれらの塩及び誘導体を含む。放射線不透過剤が、マトリックスポリマー領域内に任意に含まれてもよく、及び1種以上の治療薬が存在してもよい。マトリックスポリマー及び任意のバリア層は好ましくは、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマー;メタロセン触媒ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、アイオノマー、エラストマー系材料、例えばポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー、シリコーン及びそれらの混合物などの、生分解性の又は実質的に非-生分解性の材料を含んでよい。本発明の医療装置の中には、胆管、尿管、尿道及び膵管のステント、ステントカバー、カテーテル、静脈投与装置並びに無菌及び有菌生体環境の間又はふたつの無菌生体環境間に橋かけするか又はドレナージを提供する装置がある。緩衝剤を放出する膵管ステントは、中でも好ましい膵管ステントである。
【0013】
別の態様において、本発明は、1種以上の生体適合性マトリックスポリマー並びに抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含む1種以上の生物活性物質を提供すること;任意の生物活性物質の生体適合性マトリックスポリマー表面への優先的分配を実質的に防止し、及び1種以上の生物活性物質の化学修飾を実質的に防止する条件下で、1種以上の生体適合性マトリックスポリマー及び1種以上の生物活性物質を加工すること;を含む、移植し得る又は挿入可能な医療装置の製造法に関する。加工は、マトリックスポリマー及びいずれかの生物活性物質並びに任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬の均質混合物の形成、並びに均質混合物の移植し得る又は挿入可能な医療装置の少なくとも一部への造形を含むことが好ましい。中でも好ましい造形プロセスは、複数の層構造のための、又は医療装置の異なるポリマーマトリックス区画(例えば、異なるデュロメーターバルブの区画)への分配のための押出及び同時押出を含む。
【0014】
(発明の詳細な説明)
ひとつの態様において、本発明は、少なくとも1個の生体適合性マトリックスポリマー領域に加え、抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含有する1種以上の生体活性成分を備える、移植し得る又は挿入可能な医療装置に関する。
【0015】
本願明細書において使用される用語「生体適合性の」とは、実質的に人体に無毒である材料、及び生体組織において炎症又は他の有害反応を著しく誘導しない材料を説明する。
【0016】
本願明細書において使用される用語「マトリックスポリマー」は、本発明の移植し得る又は挿入可能な医療装置の少なくとも一部又は領域を形成するポリマー材料を意味する。このマトリックスポリマーは、生体適合性であるように選択され、並びに移植し得る又は挿入可能な医療装置の意図された機能及び操作と一致する力学的特性を提供する。マトリックスポリマーは、その中に、抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の少なくとも一方及び、一部の好ましい態様においてはこれら両方が分散及び/又は溶解されている貯蔵庫としても利用される。マトリックスポリマーは、更に任意の成分として、放射線不透過剤及び/又は1種以上の治療薬も含有することができる。
【0017】
本願明細書において使用される用語「抗微生物薬」は、微生物、特に細菌、真菌、及び酵母を殺傷し並びに/又はその増殖及び/もしくは成長を阻害する物質を意味する。従って抗微生物薬は、殺生物物質及び静生物物質に加え、殺生物性及び静生物性の両方を有する物質を含む。本発明の状況において、抗微生物薬は、移植された医療装置の表面の上及び周囲の微生物を殺傷し並びに/又はその増殖及び/もしくは成長を阻害する。
【0018】
本願明細書において使用される用語「微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬」は、表面への微生物の付着を阻害する物質、並びにそのような微生物の表面にバイオフィルムを合成及び/又は蓄積する能力を阻害する物質を意味する。本発明の状況において、そのような表面は、医療装置の表面上へのバイオフィルムの形成及び蓄積を行い得る生理的液体などの、生理的環境に露出された移植し得る医療装置の表面を含む。微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は、本願明細書に説明されたように、実質的抗微生物活性も有することができる。同様に、抗微生物薬は、微生物付着/バイオフィルム合成を阻害する実質的能力も有することができる。
【0019】
「バイオフィルム」は、医療装置の表面などの表面に付着した微生物の塊、及び1種以上の付着した微生物により生成された関連した細胞外物質を意味する。細胞外物質は、典型的には高分子物質であり、通常多糖、タンパク質性物質及び糖ペプチドの複合マトリックスを含む。このマトリックス又はバイオフィルムは一般に、「グリコカリックス」とも称される。
【0020】
例えば、約30日間から12ヶ月間又はそれよりも長いような長期間の移植に適合された移植し得る又は挿入可能な医療装置の表面上のバイオフィルム形成は、最終的に装置の外被形成及び故障を引き起こすことがある。更にバイオフィルム内の微生物の増殖は、局所的感染症につながり、更には全身性感染症の治療が困難となり得る。バイオフィルムマトリックスを含有する細胞外物質は、抗体及び食細胞などの正常な免疫学的防御機構から、更には界面活性剤、殺生物剤及び抗生物質を含む抗微生物薬から、バイオフィルム内に収容された微生物を保護しかつ隔離する障壁として作用することができる。バイオフィルムは、バイオフィルム内に収容された微生物の成長及び増殖も促進する。
【0021】
本発明は、長期移植に適合された医療装置の表面上へのバイオフィルム蓄積のリスクを実質的に低下し、及びそのようなバイオフィルムによる外被形成に起因した装置の早期故障の可能性を結果的に低下する。本発明の一部の好ましい態様において、医療装置は、約30日間から約12ヶ月間又はそれよりも長い比較的長い期間移植を続けることが意図される。しかしこの装置は、30日間又はそれよりも短い期間移植されてもよいことも理解される。
【0022】
本発明の装置の生体適合性マトリックスポリマーは、その中に抗微生物薬、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬、又はこれら両方が分散及び/又は溶解された貯蔵庫として役立つように提供される。本発明の医療装置は好ましくは、医療装置の少なくとも単独の区別できる部分又は領域を形成する少なくとも1種のマトリックスポリマーを含む。単独の区別できるマトリックスポリマー領域のみが医療装置内に提供される場合、マトリックスポリマーは、抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の一方又は両方を含むことが好ましいであろう。しかし他の好ましい態様において、医療装置は、2個又はそれよりも多い区別できるマトリックスポリマー領域を含むであろう。これらの区別できる領域は、同軸層として又は装置の長軸に沿った縦方向の区別できる区画として存在することができる(例えば、間に移行型の(transitional)同時押出された領域を伴い異なるデュロメーター値の区別できる末端領域を有するステント)。2個又はそれよりも多い区別できるマトリックスポリマー領域が、抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の両方を含む医療装置に存在する場合、両方の生物活性物質が、そのような複数のマトリックスポリマー領域のいずれか単独に存在することは必要ではない。従って抗微生物薬は第一のマトリックスポリマー領域に存在し、及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は第一のマトリックスポリマー領域から区別できる第二のマトリックスポリマー領域に存在してもよい。しかし一方又は両方の生物活性物質は、区別できるマトリックスポリマー領域のひとつ又は全てに存在することができることが理解される。更に以下により完全に考察されるように、複数の区別できるマトリックスポリマー領域が存在する場合、これらの領域は、マトリックスポリマー領域の表面を少なくとも部分的に被覆するバリア層により分離されてもよい。
【0023】
マトリックスポリマー内に存在する抗微生物薬の量は、移植された医療装置の上及び周囲の微生物を殺傷及び/又はその増殖を阻害するのに有効な量であることが好ましい。マトリックスポリマー内に存在する抗微生物薬の好ましい量は、マトリックスポリマーの約0.1%〜約25質量%の範囲である。マトリックスポリマーの約10%〜約25質量%の量が、特に好ましい。
【0024】
マトリックスポリマー内に存在する微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の量は、移植された医療装置の表面上への微生物の付着並びに付着した微生物によるバイオフィルムの合成及び/又は蓄積を阻害するのに有効な量が好ましい。マトリックスポリマー内に存在する微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の好ましい量は、マトリックスポリマーの約0.1%〜約25質量%の範囲である。マトリックスポリマーの約10%〜約25質量%の量が、特に好ましい。
【0025】
マトリックスポリマー内に存在する抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の量は、とりわけ使用される生物活性物質の有効性、医療装置が植込まれ続けることが意図される期間の長さ、更にはマトリックスポリマー又はバリア層が生物活性物質を移植された医療装置の環境に放出する速度に左右されるであろう。従って、長期間移植され続けることが意図される装置は一般に、より高い割合の抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が必要であろう。同様に、より迅速な生物活性物質の放出を提供するマトリックスポリマーは、より多量の生物活性物質を必要とすることがある。マトリックスポリマー内の生物活性物質の量は、当然、そのような生物活性物質の望ましくない局所的又は全身の毒性反応を引き起こす性向により、並びに医療装置の適切な機能に必要な力学的特性の欠如の可能性により、限定され得る。
【0026】
多くの場合において、生物活性物質は、少なくとも一部、マトリックスポリマーが生理的液体を吸収する又はこれと接触する機構により、非-生分解性のマトリックスポリマー領域から放出されると考えられる。生理的液体は、マトリックス内に貯められた(repose)生物活性物質を溶解又は分散し、その後溶解又は分散された生物活性物質は、マトリックスポリマーから、装置が移植された生理的環境へと外向きに拡散する。マトリックスポリマーは、生物活性物質の放出を提供するために、生理的液体のような水性液へ透過性である必要はない。水性液に対する透過性が低いマトリックスポリマーは、ポリマーの表面にそのような液体を吸着することができる。そのようなマトリックスポリマーにおいては、濃度勾配が、ポリマーの表面に設定されると考えられ、生物活性物質は、液相もしくは水相へのその溶解度よりも、固形ポリマーへのその親和性を基にした拡散を介して放出される。マトリックスポリマーが生分解性である場合、同様の拡散プロセスも生じることがある。生分解性のマトリックスポリマーにおいて、貯められた生物活性物質を含有する生分解性のマトリックスポリマーは、装置が移植された生理的環境との接触時に生分解するので、生物活性物質が放出される。従って生分解性ポリマーにおいて、生物活性物質は、拡散プロセスにより及びポリマーマトリックスの生分解時に、放出されることができる。
【0027】
マトリックスポリマー内に存在する抗微生物薬は、医薬として許容できる抗微生物薬のいずれかであることができる。本願明細書において使用される「医薬として許容できる」とは、米国食品医薬品局(FDA)又は農務省(DA)により、移植し得る又は挿入可能な医療装置の中又は上に組込まれた場合に、ヒト及び動物での使用において安全かつ有効であるとして承認された又は承認されることが可能である物質を意味する。好ましい抗微生物薬は、トリクロサン、クロルヘキシジン、ニトロフラゾン、塩化ベンザルコニウム、銀塩、並びにリファンピン、ゲンタマイシン及びミノサイクリンなどの抗生物質、並びにそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は、移植し得る又は挿入可能な医療装置の表面上への微生物の付着並びに表面上のバイオフィルムの合成及び/又は蓄積を阻害する任意の医薬として許容できる物質であることができる。とりわけ好ましい微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は、非-ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸)などのキレート剤並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。中でも好ましいNSAIDは、サリチル酸並びにそれらの塩及び誘導体である。サリチル酸の好ましい塩は、サリチル酸ナトリウム及びサリチル酸カリウムを含むが、これらに限定されるものではない。サリチル酸ナトリウムは、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬として使用するために特に好ましい塩である。サリチル酸は、特に好ましい微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬である。
【0029】
本発明の医療装置内に存在する抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬のいくつかの好ましい組合せは、サリチル酸又はサリチル酸ナトリウムのようなそれらの塩と組合せたトリクロサン及び/又はクロルヘキシジンを含む。特に好ましい組合せは、トリクロサン及びサリチル酸又はそれらの塩を含む。
【0030】
本発明の医療装置内の抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の両方の存在は、一部の態様において例えば、抗微生物薬単独の使用に勝る明確な利点を提供することができる。このような微生物付着及びコロニー形成の防止に関する二重機構の使用は、相乗作用を有すると考えられる。この相乗は、各生物活性物質の異なる作用機構に関連している。抗微生物薬は、単に装置の表面に接近する微生物の多くの割合を殺傷するのみではなく、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が作用するはずの時点の微生物の負担(burden)も低下する。更に表面へ付着した微生物は、付着後に、保護的バイオフィルム障壁を作製する。このバイオフィルム障壁は、抗微生物薬の微生物に到達する能力を妨害又は低下する。これにより抗微生物薬は、バイオフィルム障壁の形成時に実質的に有効性が下がる。従って微生物付着が妨害される場合、バイオフィルム合成は阻害され、及び抗微生物薬はより有効となる。
【0031】
本発明の移植し得る又は挿入可能な医療装置において使用されるマトリックスポリマーは、移植し得る又は挿入可能な医療装置における使用に適した任意の生体適合性のポリマーであることができる。マトリックスポリマーは、実質的に非-生分解性又は生分解性であってよい。
【0032】
好ましい実質的に非-生分解性の生体適合性マトリックスポリマーは、熱可塑性及び弾性ポリマー材料を含む。メタロセン触媒ポリエチレン、ポリプロピレン、並びにポリブチレン及びそれらのコポリマーなどのポリオレフィン;ポリスチレンなどの芳香族ビニルポリマー;スチレン-イソブチレンコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーなどの、芳香族ビニルコポリマー;エチレン酢酸ビニル(EVA)、酸基の一部は亜鉛イオン又はナトリウムイオンのいずれかにより中和されている(通常アイオノマーとして公知)、エチレン-メタクリル酸及びエチレン-アクリル酸コポリマーなどの、エチレン系コポリマー;ポリアセタール;塩化ポリビニル(PVC)のような、クロロポリマー;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの、フルオロポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)などの、ポリエステル;ポリエステル-エーテル;ナイロン6及びナイロン6,6などの、ポリアミド;ポリアミドエーテル;ポリエーテル;ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマーなどの、エラストマー;シリコーン;ポリカーボネート;並びに、前述のいずれかの混合物並びにブロックコポリマー及びランダムコポリマーは、本発明の医療装置の製造に有用な非-生分解性の生体適合性マトリックスポリマーの限定的でない例である。
【0033】
中でも特に好ましい非-生分解性ポリマー材料は、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーを含むエチレン系コポリマー;ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー;メタロセン触媒ポリエチレン(mPE)及びmPEコポリマー、アイオノマー、並びにそれらの混合物及びコポリマー;並びに、芳香族ビニルポリマー及びコポリマーである。中でも好ましい芳香族ビニルコポリマーは、ポリイソブチレンのポリスチレン又はポリメチルスチレンとのコポリマー、更により好ましくはポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレントリブロックコポリマーである。これらのポリマーは、例えば米国特許第5,741,331号、米国特許第4,946,899号及び米国特許出願第09/734,639号に開示されており、それらの各々は全体が本願明細書に参照として組入れられている。酢酸ビニル含量が約19%〜約28%であるエチレン酢酸ビニルは、特に好ましい非-生分解性の材料である。約3%〜約15%の低い酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーも、酢酸ビニル含量が約40%と高いEVAコポリマーのように、本発明の特定の態様において有用である。これらの比較的高い酢酸ビニル含量のコポリマーは、同時押出されたバリア層からの剛性の相殺において有益である。中でも好ましいポリウレタンエラストマーは、ポリエーテルベース、ポリエステルベース、ポリカーボネートベース、脂肪族ベース、芳香族ベースのブロック及びランダムコポリマー並びにそれらの混合物である。市販のポリウレタンコポリマーは、Carbothane(登録商標)、Tecoflex(登録商標)、Tecothane(登録商標)、Tecophilic(登録商標)、Tecoplast(登録商標)、Pellethane(登録商標)、Chronothane(登録商標)及びChronoflex(登録商標)を含むが、これらに限定されるものではない。他の好ましいエラストマーは、ポリエステル-エーテル、ポリアミド-エーテル及びシリコーンを含む。
【0034】
中でも好ましい生分解性のマトリックスポリマーは、とりわけポリ乳酸、ポリグリコール酸並びにそれらのコポリマー及び混合物、例えばポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA);ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド-コ-カプロラクトン)(PGA/PCL);ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(グルタミン酸エチル-コ-グルタミン酸)、ポリ(tert-ブチルオキシ-グルタミン酸カルボニルメチル)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトンコ-アクリル酸ブチル、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)及びポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファザン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)及びポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸コポリマー、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル-トリメチレンカーボネート)-コ-(2.5%トリメチレンカーボネート)]、シアノアクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、化学修飾されたセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及び再生セルロース、多糖、例えばヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸及び改質デンプン、例えばペンタスターチ及びヒドロキシエチルデンプン、タンパク質、例えばゼラチン及びコラーゲン、並びにそれらの混合物及びコポリマーなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0035】
特に好ましい生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸並びにそれらのコポリマー及び混合物を含む。
本発明の医療装置は、その構造内に放射線不透過剤も含有することができる。例えば、放射線不透過剤は、いずれかのマトリックスポリマー領域の中もしくは上に、又はマトリックスポリマー領域の表面を少なくとも部分的に被覆する任意のバリア層の中もしくは上に存在することができる。バリア層は、以下により詳細に説明される。放射線不透過剤は、装置の挿入時、及び装置が移植されている間の任意の時点での、医療装置の視認を促進する。放射線不透過剤は典型的には、x-線の散乱により機能する。x-線を散乱する医療装置の区域は、レントゲン写真上で検出可能である。中でも本発明の医療装置において有用な放射線不透過剤は、次炭酸ビスマス、ビスマスオキシクロリド、ビスマストリオキシド、硫酸バリウム、タングステン及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。放射線不透過剤が存在する場合、これらは、マトリックスポリマーの約0.5%〜約90%、より好ましくは約10%〜約90質量%の量で存在することが好ましい。特に好ましい放射線不透過剤の量は、マトリックスポリマーの約10〜約40質量%である。
【0036】
本発明の医療装置は、その構造内に、1種以上の治療薬も含有することができる。例えば任意の治療薬は、いずれかのマトリックスポリマー領域の中もしくは上に、又はマトリックスポリマー領域の表面を少なくとも部分的に被覆する任意のバリア層の中もしくは上に存在することができる。治療薬は、医薬として許容できる合成又は非-合成の物質であることができる。治療薬は、遺伝子治療薬、非-遺伝子治療薬及び細胞であることができる。
【0037】
例として挙げる非−遺伝子治療薬には、下記のものがある:(a)抗-血栓薬、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン);(b)ステロイド性及び非-ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばデキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン及びブデソニドエストロゲン、スルファサラジン及びメサラミン、サリチル酸並びにそれらの塩及び誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ジクロフェナック、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサール、ナブメトン、エトドラック、オキサプロジン及びインドメタシン;(c)化学療法薬、例えば抗-新生物形成薬/抗-増殖薬/抗-有糸分裂薬で、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、ドキソルビシン、メトトレキセート、アンギオペプチン(angiopeptin)、平滑筋細胞増殖をブロックすることが可能であるモノクローナル抗体、及びチミジンキナーゼインヒビターを含むもの;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン及びロピバカイン;(e)抗-凝固薬、例えばD-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド-含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗-トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗-トロンビン抗体、抗-血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジンインヒビター、血小板インヒビター及びtick抗-血小板ペプチド;(f)血管細胞増殖促進剤、例えば増殖因子、転写アクチベーター、及び翻訳プロモーター;(g)血管細胞増殖阻害剤、例えば増殖因子阻害剤、増殖因子受容体アンタゴニスト、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子及び細胞毒からなる二機能性分子、抗体及び細胞毒からなる二機能性分子;(h)タンパク質キナーゼ及びチロシンキナーゼインヒビター(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリンアナログ;(j)コレステロール-低下薬;(k)アンギオポイエチン;(l)抗微生物薬、例えばトリクロサン、セファロスポリン、β-ラクタム、アミノグリコシド、及びニトロフラントイン;(m)化学療法薬、例えば細胞毒素物質、細胞静止薬、及び細胞増殖作用薬;(n)血管拡張薬;(o)内因性血管作用機構を妨害する物質;(p)白血球動員の阻害薬、例えばモノクローナル抗体;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)鎮痛薬;(t)局所麻酔薬;並びに、(u)抗-痙攣薬である。
【0038】
非-ステロイド性抗炎症薬の例を挙げると、先に列記したものを必ずしも除外せず、アミノアリールカルボン酸誘導体、例えばエンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミック酸、タルニフルマート、テロフェナマート及びトルフェナム酸;アリール酢酸誘導体、例えばアセメタシン、アルクロフェナック、アンフェナック、ブフェキサマック、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナックナトリウム、エトドラック、フェルビナック、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンクロズ酸、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラック、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダック、チアラミド、トルメチン及びゾメピラック;アリール酪酸誘導体、例えばブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン及びキセンブシン;アリールカルボン酸類、例えばクリダナック、ケトロラック(商品名Toradol(登録商標)で市販されているそれらのトロメタミン塩)及びチノリジン;アリールプロピオン酸誘導体、例えばアミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン及びチアプロフェン酸;ピラゾール類、例えばジフェナミゾール及びエピリゾール;ピラゾロン類、例えばアパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、スキシブゾン及びチアゾリノブタゾン;サリチル酸及びその誘導体、例えばアセタミノサロール、アスピリン、ベノリラート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニサール、エテルサラート、フェンドサール、ゲンチジン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1-ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリシラミンo-酢酸、サリチル硫酸、サルサレート及びスルファサラジン;チアジンカルボキシアミド類、例えばドロキシカム、イソキシカム、ピロキシカム及びテノキシカム;その他のもの、例えばε-アセトアミドカプロン酸、s-アデノシルメチオニン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン、オキサセプロール、パラニリン、ペリソキサール、ピフォキシム(pifoxime)、プロキアゾン、プロキサゾール及びテニダップ;並びに、それらの医薬として許容できる塩がある。
【0039】
ステロイド性抗炎症薬(糖質コルチコイド)の例を挙げると、先に列記したものを必ずしも除外せず、21-アセトキシプレフェノロン、アルクロメタソン(aalclometasone)、アルゲストン、アミシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニソン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラソン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオメトロン、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、酢酸フルプレドニジン(fluprednidene acetate)、フルプレドインソロン(fluprednisolone)、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、フォルモコルタール、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリソン、メプレドニソン、メチルプレドニソロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルバート、プレドニソロン、プレドニソロン25-ジエチルアミノアセテート、プレドニソンリン酸ナトリウム、プレドニソン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン(prednylidene)、リメキソロン、チクソコルタール(tixocortal)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベントニド、トリアヌシノロンヘキサアセトニド、並びにそれらの医薬として許容できる塩がある。
【0040】
鎮痛薬は、麻薬性鎮痛薬と非-麻薬性鎮痛薬を含む。麻薬性鎮痛薬に含まれるものには、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド(bezitramide)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、コデインメチルブロミド、リン酸コデイン、硫酸コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノン酢酸エノール、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアブテン、ジオキサフェチルブチレート、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメサドン、ケトベミドン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン塩酸塩、メトポン、モルフィン、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタゾン、ノルモルフィン、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェオペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、ルミフェンタニル、スルフェンタニル、ウフェンタニル、チリジン、及びそれらの医薬として許容できる塩がある。非-麻薬性鎮痛薬には、アセクロフェナック、アセトアミノフェン、アセトアミノサロール、アセトアニリド、アセチルサリチル酸、アルクロフェナック、アルミノプロフェン、アロキシプリン、ビス(アセチルサリチル酸)アルミニウム、アミノクロロテノキサジン、2-アミノ-4ピコリン、アミノプロピロン、アミノピリン、サリチル酸アンモニウム、アムトルメチングアシル(amtolmetin guacil)、アンチピリン、サリチル酸アンチピリン、アントラフェニン、アパゾン、アスピリン、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、ベルモプロフェン、ブロフェナク、p-ブロモアセトアニリド、5-ブロモサリチル酸アセテート、ブセチン、ブフェキサマック、ブマジゾン、ブタセチン、アセチルサリチル酸カルシウム、カルバマゼピン、カルビフェン、カルサラム、クロラルアンチピリン、クロルテノキサジン、サリチル酸コリン、シンコフェン、シラマドール、クロメタシン、クロプロパミド、クロテタミド、デキソキサドロール、ジフェナミゾール、ジフルインサール、アセチルサリチル酸ジヒドロオキサアルミニウム、ジピロセチル、ジピロン、エモルファゾン、エンフェナム酸、エピリゾール、エテルサラート、エテンザミド、エトキサゼン、エトドラック、フェルビナック、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、フルオレソン、フルピルチン、フルプロクアゾン、フルルビプロフェン、フォスフォサール、ゲンチジン酸、グラフェニン、イブフェナック、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、インドプロフェン、イソフェゾラック、イソラドール(isoladol)、イソニキシン、ケトプロフェン、ケトロラック、p-ラクトフェネチド、レフェタミン、ロキソプロフェン、アセチルサリチル酸リシン、アセチルサリチル酸マグネシウム、メトトリメプラジン、メトホリン、ミロプロフェン、モラゾン、サリチル酸モルホリン、ナプロキセン、ネフォパム、ニフェナゾン、5'-ニトロ-2'-プロポキシアセトアニリド、パルサルミド、ペリソキサール、フェナセチン、塩酸フェナゾピリジン、フェンコール、フェノピラゾン、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、フェニラミドール、ピペブゾン、ピペリロン、プロジリジン、プロパセタモール、プロピフェナゾン、プロキサゾール、サリチル酸キニン、ラミフェナゾン、メチル硫酸リマゾリウム、サラアセトアミド、サルシン、サリチルアミド、o-酢酸サリチルアミド、サリチル硫酸、サルサルテ(salsalte)、サルベリン、シメトリド、サリチル酸ナトリウム、スルファピリン、タルニフルマート、テノキシカム、テロフェナマート、テトラドリン、チノリジン、トルフェナム酸、トルプロニン、トラマドール、ビミノール、キセンブシン、ゾメピラック、及びそれらの医薬として許容できる塩がある。
【0041】
局所麻酔薬に含まれるのは、アムカイン(amucaine)、アモラノン、塩酸アミロカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタベン、ブタニリカイン、ブテサミン、ブトキシカイン、カルチカイン、塩酸クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、塩酸ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、塩酸ジペラドン、ダイクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、エチルクロリド、β-ユーカイン、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン、フォモカイン、塩酸ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカインメシレート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、メチルクロリド、ミルテカイン、ナエパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタザイン、パレトキシカイン、塩酸フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピオカイン、塩酸プロポキシカイン、偽コカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、塩酸テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、及びそれらの医薬として許容できる塩がある。
【0042】
鎮痙薬に含まれるものには、アリベンドール、アンブセタミド、アミノプロマジン、アポアトロピン、メチル硫酸ベボニウム、ビエタミベリン、ブタベリン、臭化ブトロピウム、n-ブチルスコポールアンモニウムブロミド、カロベリン、臭化シメトロピウム、シンナメドリン、クレボプリド、臭化水素酸コニイン、塩酸コニイン、ヨウ化シクロニウム、ジフェメリン、ジイソプロミン、ジオキサフェチルブチレート、臭化ジポニウム、ドロフェニン、臭化エメプロニウム、エタベリン、フェクレミン、フェナラミド、フェノベリン、フェンピプラン、臭化フェンピベリニウム、臭化フェントニウム、フラボキサート、プロプロピオン、グルコン酸、グアイアクタミン、ヒドラミトラジン、ヒメクロモン、レイオピロール、メベベリン、モキサベリン、ナフィベリン、オクタミルアミン、オクタベリン、4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレート(例えば、4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレート塩酸塩、Ditropan(登録商標)の商品名で販売されている塩酸オキシブチニンとしても公知)、ペンタピペリド、塩酸フェナマシド、フロログルシノール、臭化ピナベリウム、ピペリラート、塩酸ピポキソラン、プラミベリン、臭化プリフィニウム、プロペリジン、プロピバン、プロピロマジン、プロザピン、ラセフェミン、ロシベリン、スパスモライトール、ヨウ化スチロニウム、スルトロポニウム、ヨウ化チエモニウム、臭化チキジウム、チロプラミド、トレピブトン、トリクロミル、トリフォリウム、トリメブチン、n,n-1トリメチル-3,3-ジフェニル-プロピルアミン、トロペンジル(tropenzile)、塩化トロスピウム、臭化キセニトロピウム、及びそれらの医薬として許容できる塩がある。
【0043】
遺伝子治療薬の例を挙げると、アンチセンスDNA及びRNAに加え、以下をコードしているDNAがある:(a)アンチセンスRNA、(b)欠損又は欠失している内因性分子を複製するためのtRNA又はrRNA、(c)酸性及び塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、内皮細胞分裂促進増殖因子、表皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子α及びβ、血小板-由来内皮細胞増殖因子、血小板-由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子及びインスリン-様増殖因子などの増殖因子を含む、血管新生因子及び他の因子、(d)CDインヒビターを含む、細胞周期阻害薬、並びに(e)チミジンキナーゼ("TK")及び細胞増殖を妨害するのに有用な他の物質。BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6(Vgr-1)、BMP-7(OP-1)、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、及びBMP-16を含む、骨形成タンパク質("BMP")ファミリーをコードしているDNAも、興味深い。現在好ましいBMPは、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6及びBMP-7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、単独で又は他の分子と共に、ホモ二量体、ヘテロ二量体、又はそれらの組合せで提供することができる。あるいは、又は加えて、BMPの上流又は下流の作用を含むことが可能な分子を提供することができる。このような分子は、「ヘッジホッグ」タンパク質、又はそれらをコードしているDNAを含む。
【0044】
遺伝子治療薬の送達のための興味深いベクターは、アデノウイルス、腸管アデノウイルス、アデノ-随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキフォレスト、シンドビスなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、複製コンピテントウイルス(例えば、ONYX-015)などのウイルスベクター及びハイブリッドベクター;並びに、タンパク透過ドメイン(PTD)のような標的化配列を含む及び含まない、人工染色体及びミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えば、ポリエーテル-PEI及びポリエチレンオキシド-PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びSP1017(SUPRATEK)などの中性ポリマー、カチオン性脂質などの脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、又はミクロ粒子などの、非-ウイルスベクターを含む。
【0045】
細胞は、ヒト起源の細胞(自家又は同種)で、全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間充織細胞、造血細胞、神経細胞)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、サテライト細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞もしくはマクロファージを含むもの、又は動物、細菌もしくは真菌給源の細胞(異種)を含み、これらは関心のあるタンパク質を送達するために望ましいならば遺伝子操作することができる。
【0046】
中でも任意に本発明の医療装置内に存在することができる好ましい治療薬は、ステロイド性及び非-ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、及び抗-新生物形成薬/抗-増殖薬/抗-有糸分裂薬などの化学療法薬、細胞毒性物質、細胞静止薬、及び細胞増殖作用薬を含むが、これらに限定されるものではない。化学療法薬の例は、シスプラチン、メトトレキセート、ドキソルビシン、パクリタキセル、及びドセタキセルを含む。ステロイド性抗炎症薬の例は、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン及びプレドニソロンを含む。
【0047】
装置又はそれらの一部を、治療薬の溶液又は懸濁液と、例えば噴霧、浸漬などにより接触させ、引き続き溶剤又は液体担体を蒸発することにより、該治療薬を、装置又はそれらの一部(例えばマトリックスポリマー領域又は任意のバリア層)の上もしくはそれに塗布することができる。薬物が、そのような加工及び/又は造形時に必要な条件(例えば、温度及び圧力)下で安定しているならば、この薬物は、本発明の医療装置の製造に使用されるマトリックスポリマー及び/又は任意のポリマーバリア層の加工及び/又は造形の間に、混入することもできる。
【0048】
治療薬の量は、治療有効量とする。抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬と同様に、医療装置中に存在する治療薬の量は、とりわけ具体的治療薬、医療装置が移植され続けることが意図される時間の長さ、並びに治療薬がマトリックスポリマー及び/又はバリア層から放出される速度に応じて変動する。治療薬の量は、そのような物質が、望ましくない局所的又は全身の毒性反応を引き起こす性向により、並びに装置の適切な機能に必要な力学的特性の欠如により、制限されることがある。
【0049】
本発明の医療装置は、より詳細に以下に説明される同時押出により形成される、2〜約50個の区別できる層、より好ましくは約2〜約20個の層を含む多層構造を備えてもよい。好ましい多層構造は、約2〜約7個の区別できる層を有してもよい。特に好ましい多層構造は、約3〜約7個の層を有し、3層構造が特に好ましい。前述のように、この医療装置は、1個以上のマトリックスポリマー領域を含む。この医療装置は、更に1個又は複数の障壁領域を含むことができる。このように多層構造において、1個又は複数の区別できる層は、1以上のマトリックスポリマー層を少なくとも部分的に被覆するバリア層であってよい。従って本発明の医療装置は、1個以上の区別できるマトリックスポリマー層、及び望ましいならば1個以上のバリア層を含む1個以上の複数の層を備えてよい。
【0050】
本発明の多層構造は、バリア層を含むことは必要ではない。例えば本発明に従う医療装置は、1種以上の生物活性物質及び更に任意の放射線不透過剤を含有する第一のマトリックスポリマー層、並びに第二層が潤滑性を提供する第一のマトリックスポリマー層の外面上の第二の層を備える、2-層構造を含んでもよい。このような潤滑性の層は、例えば、医療装置の挿入及び移植を促進することが望ましい(例えば、Hydroplus(商標)塗装(Union Carbide)のような、親水性塗装層)。
【0051】
本発明の医療装置は、多層構造に限定されず、実際にマトリックスポリマーもしくは異なるマトリックスポリマーの縦方向の区画(section)、抗微生物薬及び/又は微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬及び任意の放射線不透過剤を含む環状チューブのような単層構造が本発明の範囲内であることは理解される。
【0052】
しかし多層構造を有する本発明の医療装置は、単層装置に比べある種の利点を提供することができる。例えばバリア層を、マトリックスポリマー層のような隣接層からの生体活性材料又は治療薬の放出速度を制御するために提供することができる。以下により詳細に説明されるバリア層は、加工時にマトリックスポリマー層の表面への生物活性物質の分配を実質的に低下するという利点もある。区別できるマトリックスポリマー層のような、多層は、異なる生物活性物質及び/又は生物活性物質、放射線不透過剤及び治療薬の組合せの貯蔵庫として作用することもできる。従って多層の使用は、異なる生物活性物質及び/又は治療薬の異なる放出プロファイルを提供するという利点がある。例えば、特定の生体活性物質及び/又は治療薬の放出の特徴は、特定のマトリックスポリマーから拡散するその能力に応じて左右され得る。従ってマトリックスポリマー及び生体活性物質及び/又は治療薬の異なる組成物は、そこからの異なる放出の特徴を提供することができる。一部の組成物は、比較的迅速な放出を生じるが、他のものは比較的遅い放出プロファイルを生じることができる。生体活性物質及び/又は治療薬を含有するマトリックスポリマーの区別できる層の適当な選択及び配置により、装置からの異なる生体活性物質及び/又は治療薬の放出プロファイルは、特定の適用のために最適化することができる。
【0053】
例えば、生体活性物質及び任意の治療薬の制御された放出を提供するように適合された本発明のひとつの態様において、生体適合性マトリックスポリマー、抗微生物薬、、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬、並びに任意に治療薬を含有する第一の環状層を備える多層構造が提供される。第一及び第二のバリア層(同じく環状の形)は各々、第一の環状層の外側及び内側に配置される。第一の環状層を取り囲む第一及び第二のバリア層は典型的には、生体適合性マトリックスポリマーよりも透過性が低く、これにより生体活性物質及び任意の治療薬の装置から外部環境への拡散速度が制御される。
【0054】
本発明のこの態様の単純化された概略図を、図1に示した。本発明のこの態様の移植し得る又は挿入可能な医療装置100は、環状の第一のマトリックスポリマー領域101;第一のマトリックスポリマー領域101の内面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第一のポリマーバリア層111、及び第一のマトリックスポリマー領域101の外面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第二のポリマーバリア層112を備える。環状の第一及び第二のポリマーバリア層111及び112は各々、同じ又は異なる組成を有することができる。
【0055】
バリア層は好ましくは、ポリマー材料を含有する。マトリックスポリマーに関連し先に説明された非-生分解性及び生分解性ポリマーのいずれも、バリア層を形成することもできる。好ましいバリア層ポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)及びエチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーを含むエチレン系コポリマー、ポリウレタンエラストマー並びにそれらのブロック及びランダムコポリマーを含むエラストマー、メタロセン触媒ポリエチレン(mPE)及びmPEコポリマー、アイオノマー、シリコーン並びにそれらの混合物である。メタロセン触媒ポリエチレン及びmPEコポリマー、例えばエチレンのオクテンとのコポリマー、及びアイオノマーは、加工時のサリチル酸又はサリチル酸ナトリウムのような生物活性物質のマトリックスポリマーの表面への分配を制御し、並びに活性物質のマトリックスポリマーからの制御された放出を提供するための、特に好ましいポリマーバリア層材料である。
【0056】
バリア層及び接触しているマトリックスポリマー層又は領域は、異なるポリマー材料を含有することが好ましい。異なるポリマー材料は一般に、生物活性物質の拡散又は放出の異なる速度を提供するであろう。従ってより透過性の低いバリア層を、生物活性物質の拡散に対しより透過性であることができる接触するマトリックスポリマー領域からの生物活性物質の放出速度を制御するように提供することができる。例えば酢酸ビニル含量約19%〜約28%を有するEVAコポリマーをマトリックスポリマーとして使用する場合、より低い酢酸ビニル含量約3%〜約15%を有するEVAコポリマーが、接触するバリア層を形成するために有用であり、その逆の場合も同じである。比較的硬質又は剛性であるより低い酢酸ビニル含量のバリア層の使用は、より高い酢酸ビニル含量のマトリックスポリマー層又は領域の使用により、若干相殺され、その逆の場合も同じである。(具体例としてトリクロサンの使用は、トリクロサンの放出速度を、より剛性又はより高いデュロメーターのEVAを使用することでより迅速となり、及びより低いデュロメーターEVAによりより遅くなる。)2個のバリア層が図1に示された医療装置100内に提供されるとしても、本発明の医療装置は、バリア層を伴わずに、又は環状マトリックスポリマー領域の外面又は内面を少なくとも部分的に被覆する単独のバリア層を伴い提供された環状マトリックスポリマー領域を備えることができることは理解される。環状マトリックスポリマー領域及び環状バリア層が本発明の一部の態様において好ましいとしても、マトリックスポリマー領域もバリア層も環状である必要はないことも理解される。
【0057】
図1に示された医療装置、並びに本発明の前記及び他のそれらの修飾において、第一のマトリックスポリマー領域は、本願明細書に説明されたような生体適合性マトリックスポリマー、抗微生物薬、微生物付着バイオフィルム合成阻害薬、並びに更には任意の構成部品として、1種以上の放射線不透過剤及び治療薬を含むことが好ましい。
【0058】
多層構造を含む本発明の別の態様が、ここで説明される。この態様において、この装置は、第二のマトリックスポリマー組成物からの生体活性物質及び/又は治療薬の放出に比べ第一のマトリックスポリマー組成物からの生体活性物質及び/又は治療薬の比較的遅い放出を提供するようにデザインされる。この態様において、第二のマトリックスポリマー組成物の区別できる環状層の間の第一のマトリックスポリマー組成物の環状層が提供される。このような多層配置において、そうでなければ外部環境に露出される第二のマトリックスポリマー組成物の各表面は、バリア層を伴い提供される。同様に、バリア層は、第一のマトリックスポリマー組成物の環状層と第二のマトリックスポリマー組成物の環状層の間に提供される。得られる構造は、7個の層を含み、その中の3個は、区別できるマトリックスポリマー領域を形成し、及びその中の4個は、マトリックスポリマー領域のひとつ又は複数の表面の少なくとも一部を被覆するバリア層を形成する。この配置において、第一のマトリックスポリマー組成物を含む環状層からの生体活性物質及び/又は治療薬は、それ自身のバリア層を通じ、第二のマトリックスポリマー組成物を含む環状層へ及びそれを通り、並びに外部環境に達する前に別のバリア層を通り拡散する。この多層配置は、第二のマトリックスポリマー組成物の環状層からの、生体活性物質及び/又は治療薬の放出速度と比べ、第一のマトリックスポリマー組成物の環状層からの生体活性物質及び/又は治療薬の比較的遅い放出を提供する。
【0059】
本発明のこの態様の簡略化した概要を、図2に示した。本発明のこの態様の移植し得る又は挿入可能な医療装置200は、環状の第一のマトリックスポリマー領域201;第一のマトリックスポリマー領域201の内面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第一のポリマーバリア層211;第一のマトリックスポリマー領域201の外面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第二のポリマーバリア層212;環状の第二のポリマーバリア層212の外面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第二のマトリックスポリマー領域202;環状の第二のマトリックスポリマー領域202の外面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第三のポリマーバリア層213;環状の第一のポリマーバリア層211の内面に配置された、環状の第三のマトリックスポリマー領域203;並びに、環状の第三のマトリックスポリマー領域203の内面を少なくとも部分的に被覆する、環状の第四のポリマーバリア層214を備える。
【0060】
環状の第一、第二、及び第三のマトリックスポリマー領域201、202及び203は各々、同じ又は異なる組成物を有することができる。好ましい態様において、環状の第二及び第三のマトリックスポリマー領域202及び203は各々、環状の第一のマトリックスポリマー領域201の組成とは異なる同じ組成物を有する。この好ましい態様において、環状の第一及び第二のポリマーバリア層211及び212は各々、同じ組成物を有し、並びに環状の第三及び第四のポリマーバリア層213及び214は各々、同じ組成物を有することも好ましい。この態様において、環状の第一及び第二のポリマーバリア層211及び212は各々、環状の第三及び第四のポリマーバリア層213及び214の各々とは異なる組成物を有することが特に好ましい。しかしより広範には、環状の第一、第二、第三及び第四のポリマーバリア層211、212、213及び214は各々、同じ又は異なる組成物を有することができる。同様に、環状の第一、第二及び第三のマトリックスポリマー領域201、202及び203は各々、同じ又は異なる組成物を有してもよい。
【0061】
本発明の別の態様も、図2を参照し説明される。この態様において、医療装置は、2個のマトリックスポリマー領域及び3個のポリマーバリア層を有する。本発明のこの態様は、図2に記された医療装置から、環状の第三のマトリックスポリマー領域203及び環状の第四のポリマーバリア層214を取り除くことにより描かれ、これにより、2個の区別できるマトリックスポリマー領域(201、202)、及び区別できるマトリックスポリマー領域の1個又は複数の表面を少なくとも部分的に被覆する3個のポリマーバリア層(211、212、213)を有する5層構造を生じる。
【0062】
バリア層及びマトリックスポリマー領域の他の配置が、本発明の範囲内であることが理解される。例えば同じく図2を参照し、本発明の範囲内の5層構造は、環状の第三及び第四のポリマーバリア層213及び214を各々取り除くことができる。この態様において、得られる5層構造は、環状の第一のマトリックスポリマー領域201の内側及び外側表面上に配置された2個のバリア層(211、212)により互いに分離された、3個の区別できるマトリックスポリマー領域(201、202、203)を備える。
【0063】
図2に示された医療装置、並びに本発明の先に説明された及び他のそれらの修飾において、第一、第二及び任意に第三のマトリックスポリマー領域は、本願明細書に説明されたような生体適合性マトリックスポリマー、並びに抗微生物薬及び/又は微生物付着バイオフィルム合成阻害薬のいずれか又は両方、並びに更には任意の構成部品として、1種以上の放射線不透過剤及び治療薬を含むことが好ましい。
【0064】
本発明は、図1又は2に示されたような、本発明の態様の単純化された概略図により限定されるように構成されるものではない。従って本発明の医療装置は、単層又は多層構築物であることができ;1個以上のマトリックスポリマー領域を有することがあり、並びに1以上のバリア層を有するか、又は有さないことができる。更に、マトリックスポリマー領域及びバリア層のいずれも、これらの図に示されたような環状であることを必要としない。更にマトリックスポリマー層に加えバリア層又は他の層が提供される場合、生物活性物質、放射線不透過剤及び治療薬のいずれかは、そのようなバリア層又は他の層中に提供されてもよい。
【0065】
放出プロファイルの更なる最適化は、生分解性及び実質的に非-生分解性の層の両方を有する多層構造を提供することにより得ることができる。異なる生分解速度を有するマトリックスポリマー層は、例えば生体活性物質及び/又は治療薬の異なる放出プロファイルを提供することができる。そのような生分解性層の適当な選択及び配置により、放出プロファイルは、そのような生体活性物質及び/又は治療薬の放出に関する所望の時間依存型の必要要件を基に、最適化することができる。
【0066】
多層は同じく、そうでなければ非相溶性であるポリマー、生物活性物質、治療薬及び放射線不透過剤を少なくとも一時的に分離するために、バリア層として作用するように提供される。例えばそのような材料又は物質は、医療装置の製造に使用される加工条件下で、他のそのような材料又は物質と相溶性ではない。具体例として、クロルヘキシジンのような抗微生物薬は、二軸スクリュ押出機中のある条件下でEVAコポリマーと混合される場合に、サリチル酸などの微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬と反応することがある。得られる化合物の化学修飾は、それらの意図された目的を無効にすることがある。別の例として、次炭酸ビスマスなどの放射線不透過剤は、特定のマトリックスポリマーに必要なある加工条件下でサリチル酸などの抗微生物薬と反応することがある。
【0067】
バリア層の使用も、加工時又はそれに引き続き、生物活性物質の医療装置の表面への優先的分配を実質的に低下又は防止する際に有利である。例えば、サリチル酸などの微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬は、医療装置の形成に関連した加工工程の一部の間又はそれに引き続き、EVAコポリマーのようなマトリックスポリマー表面へ優先的に分配することができる。この優先的分配は、「ブルーミング」とも称される。ブルーミングは、生物活性物質のポリマー中の溶解度が限定される場合、特に加工後に冷却される時に、少なくとも一部生じると考えられる。同じく水中にマトリックスポリマー中よりもより大きい溶解度を有する生物活性物質は、マトリックスポリマー及び生物活性物質の加工時にブルーミングをより受け易い。従って生物活性物質のブルーミングを防止するために、加工時に生物活性物質及びマトリックスポリマーの含水量を制御することは望ましい。任意の事象において、ブルーミングは、加工後数時間以内に装置の表面上にサリチル酸のような生物活性物質の結晶の出現を生じることがある。
【0068】
ブルーミングを実質的に低下又は防止するように適合された本発明のひとつの態様において、生体適合性マトリックスポリマー、抗微生物薬、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含有する第一の環状層;並びに、各々、第一の環状層の外面及び内面上の環状の第一及び第二のバリア層を備える、多層構造が提供される(任意の構成成分として、放射線不透過剤及び/又は治療薬も、1個以上の層へ添加することができる)。装置の表面への生物活性物質のブルーミング又は分配は、この態様において第一及び第二の環状バリア層を提供することにより、効果的に制御することができる。ブルーミングを実質的に低下するように適合された3層構造を備えるこの態様の医療装置は、先に説明されたような、図1に示されたものに似た構造を有することができる。
【0069】
別の態様において、本発明は、(a)1種以上の生体適合性マトリックスポリマー、1種以上の抗微生物薬及び/又は1種以上の微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬、並びに任意に1種以上の放射線不透過剤及び/又は治療薬を提供する工程;(b) 1種以上の生体適合性マトリックスポリマー及び1種以上の生物活性物質を、任意の生物活性物質の生体適合性マトリックスポリマーの表面への優先的分配を実質的に防止し、並びに1種以上の生物活性物質の化学修飾を実質的に防止するような好ましい条件下で加工する工程;を含む、移植し得る又は挿入可能な医療装置を製造する方法に関する。
【0070】
加工は典型的には、それらのより均質な混合物を形成するための、マトリックスポリマー、1種以上の生物活性物質、並びに更に任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬のドライブレンド、混合又は配合、並びにその均質混合物の移植し得る又は挿入可能な医療装置のマトリックスポリマー領域への造形を含む。以下により詳細に説明される混合及び造形の操作は、そのような目的に関して当該技術分野において公知の通常の装置を用いて行うことができる。以下の説明において、1種以上の生物活性物質並びに更に任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬は、時には集合的に「添加剤」又は「物質」と称される。
【0071】
加工時に、1種以上のポリマー マトリックス材料、1種以上の生物活性物質、並びに更に任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬が、互いの架橋反応により化学的に修飾され始める可能性が存在する。これらの望ましくない架橋反応は、典型的には加工時に関連した、高温でのこれらの物質の非相溶性又は不安定性により生じ得る。加工時の過剰な含水量は、これらの物質の化学修飾を促進するとも考えられる。
【0072】
過剰な含水量は、生物活性物質のマトリックスポリマー表面へのブルーミングも促進することができる。他の加工条件は、先に説明されたように、加工時及び/又はそれに引き続き、マトリックスポリマーの表面上に1種以上の生物活性物質のブルーミングを生じる。
【0073】
このように、加工は、物質のいずれかの優先的分配を実質的に防止し及び物質の化学修飾を実質的に防止する条件下で、行われることが好ましい。一部の分配及び化学修飾は、加工時に避けることができないことが理解される。従って「実質的に防止する」とは、生物活性物質の約25質量%を超えない、好ましくは約10質量%未満(マトリックスポリマー組成物の質量を基に)が、加工時にマトリックスポリマーの表面へ優先的に分配され及び/又は化学修飾されることを意味する。
【0074】
中でも分配及び/又は化学修飾のリスクを実質的に低下するための加工時に制御される加工条件は、加工装置中のマトリックスポリマー、1種以上の生物活性物質、並びに更には任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬の混合物の、温度、含水量、適用された剪断速度及び滞留時間である。
【0075】
マトリックスポリマーの1種以上の生物活性物質並びに更には任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬の均質混合物を形成するためのそれらの混合又は配合は、当該技術分野において公知であり及びポリマー材料の添加剤との混合に通常使用される任意の装置において行うことができる。熱可塑性材料が使用される場合、様々な物質の加熱により、ポリマー溶融体が形成され、これはその後混合され、より均質な混合物を形成する。そのように行う一般的方法は、マトリックスポリマー及び添加剤の混合物への機械的剪断の適用である。その中でマトリックスポリマー及び添加剤がこの様式で混合される装置は、単軸スクリュ押出機、二軸スクリュ押出機、バンバリーミキサ、高速ミキサ、及びロスケトル(ross kettle)などの装置を含むが、これらに限定されるものではない。
【0076】
混合は、溶剤系中への1種以上の生物活性物質、並びに更には任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬と一緒の、マトリックスポリマーの溶解によるか、又はこれらの分散液の形成により実現することもできる。
任意のマトリックスポリマー及び/又は添加剤は、引き続きの加工を促進するために、予備配合又は個別に予備混合することができる。例えば、放射線不透過剤は、マトリックスポリマーと予備配合し、その後生物活性物質と混合することができる。あるいは、次炭酸ビスマスのような、放射線不透過剤は、マトリックスポリマーと混合される前に、増圧バー(intensifier bar)を備えるv-ミキサのような装置内で生物活性物質と予備配合されてよい。
【0077】
一部の好ましい態様において、マトリックスポリマー及び添加剤のより均質な混合物は、二軸スクリュ押出機、例えば低-剪断プロファイルデザインを伴う二軸スクリュ押出機を使用し、作製される。バレル温度、スクリュ速度及び処理量は、先に考察したように、典型的には分配及び化学修飾を防止するように制御される。
【0078】
配合時のマトリックスポリマー及び添加剤のより均質な混合物の実現に必要な条件は、ある程度は、具体的マトリックスポリマーに加え、使用される混合装置の種類により左右されるであろう。例えば、異なるマトリックスポリマーは、様々な温度での混合を促進するために、典型的には溶融体へ軟化される。一部の態様において、マトリックスポリマー及び添加剤を、温度約60℃〜約140℃、より好ましくは約70℃〜約100℃、最も好ましくは約80℃〜約90℃で混合することが一般に好ましい。これらの温度範囲は、マトリックスポリマー及び添加剤のより均質な混合物の形成を生じる一方で、分配及び化学修飾を実質的に防止することが認められる。マトリックスポリマー及び添加剤の一部の組合せは、別の方法で均質な混合を生じることが予想されるものよりも低温で加工することができる。例えば70℃はEVAコポリマー及び添加剤の加工には比較的低温であるが、温度約50℃で溶融するトリクロサンなどの抗微生物薬は、EVAの可塑剤として作用し、約70℃の低温での使用を促進する。可塑剤として作用する添加剤により、EVAを低温で加工する能力は都合の良いことに、そうでなければ高温が必要である添加剤の化学修飾のリスクを低下する。しかし本願明細書に説明されたような均質混合物の医療装置の一部への引き続きの造形時に、高温を使用してもよい。例えば、バリア層をマトリックスポリマーの1個又は複数の表面に塗布するために使用される同時押出装置の局所的部分には、高温が必要である。しかしその混合物が高温に遭遇する時間は、一般に最短に維持される。
【0079】
マトリックスポリマー及び添加剤の混合物は、熱可塑性材料及び弾性材料などのポリマー材料の造形に通常使用されるプロセスにより、本発明の医療装置の少なくとも一部に造形することができる。中でも同時押出を含む押出、成形、圧延、流延及び塗装のような造形プロセスが含まれるが、これらに限定されるものではない。とりわけ好ましい造形プロセスは、押出及び同時押出プロセスである。
【0080】
同時押出は、特に好ましい造形プロセスであり、ここでは本発明の医療装置の少なくとも一部が、例えば1種以上の区別できるマトリックスポリマー領域及びマトリックスポリマー領域の表面を少なくとも部分的に被覆する1個又は複数のバリア層を含む、多層構造である。中でも好ましい同時押出された多層構造は、先に説明されたような3〜7個の区別できる層を有するものである。特に好ましい同時押出された構造は、マトリックスポリマー領域及び接触するバリア層が各々環状の形を有するものである。例えば3層構造を、環状マトリックスポリマー領域を伴う環状ポリマーバリア層の同時押出により形成することができ、その結果ポリマーバリア層は、少なくとも部分的にマトリックスポリマー領域の内面及び外面を被覆する。任意の多層構築物は2〜約50層を有することができるので、本願明細書に説明されたような2、5及び7層の構築物は、同様に同時押出により形成することができる。本発明の医療装置は、1種以上の生物活性物質、任意の放射線不透過剤及び任意の治療薬を含有する単独の環状マトリックスポリマーの押出によって形成されることも理解される。多層構造は、積層射出成形(LIM)技術などのその他の加工及び造形技術によって形成することもできる。あるいは同時押出は、添加剤を伴う又は伴わない、異なるポリマーマトリックスの 2種の混合物を含むことができ、ここで例えば混合物は、得られる医療装置が、0〜100%の範囲の異なる割合の混合物を伴う区画を有するような勾配に従い押出される。例えば、異なるデュロメーター値を伴うポリマーマトリックスを有する混合物は、0%〜100%の勾配で押出され、反対側の端の領域は、各混合物の100%を有し、ふたつの混合物が同時押出される、その間の移行(transition)領域は移行領域の片端での一方の混合物の100%から、移行領域の他端での他方の混合物の100%までなるような、ステントなどの装置を形成する。他の縦方向の同時押出は、異なるポリマーマトリックス及び/又は異なる生物活性物質を有する医療装置の長手方向に沿った区画を形成することが企図されている。
【0081】
マトリックスポリマー及び任意のバリア層の造形に使用される温度は、当然、使用される具体的材料及び利用される造形装置により決まるであろう。混合又は配合プロセス条件のように、造形プロセス条件も同じく、望ましくない分配及び/又は架橋反応を生じることがある。従って温度、含水量、剪断速度及び滞留時間などの造形プロセス条件の制御は、分配及び/又は架橋反応を避けるために望ましいことがある。
【0082】
例えば、環状マトリックスポリマー領域並びに各々マトリックスポリマー領域の内面及び外面を被覆するふたつのバリア層の3層構造は、1種以上の生物活性物質並びに更には任意の放射線不透過剤及び/又は治療薬を含有するマトリックスポリマーの同時押出により形成することができる。このような同時押出プロセスにおいて、バレル及びフォーミングダイの温度、スクリュ速度及び圧縮比は、1種以上の生物活性物質の望ましくない分配及び化学修飾を防止するように制御することができる。例えば、10質量%トリクロサン、10質量%サリチル酸及び30質量%次炭酸ビスマスと配合されたマトリックスポリマーとしての19%酢酸ビニルEVAコポリマーの同時押出は、バリア層として役立つエチレン-オクテンコポリマー(24%オクテンコ-モノマーの)のような、メタロセン触媒ポリエチレン("mPE")コポリマーの2層と共に、同時押出することができる。このような同時押出プロセスにおいて、混合区画を備えない1"スクリュ直径及びバレル温度約110℃を使用する、3:1圧縮比上で、スクリュ速度35rpmは、架橋反応及び生物活性物質の分配を実質的に防止するのに十分であることがわかった。先に述べたように、バリア層材料は、造形時に、マトリックスポリマー及び添加剤の配合に使用される温度よりも、より高い加工温度が必要である。結果的に、押出装置の一部を、配合時に使用されるよりもより高い温度に維持することが必要である。この態様において、バレル温度約110℃及び造形ヘッド温度約150℃が、mPEコポリマーバリア層の形成を促進するために使用される。これらの温度は、EVAマトリックスポリマー及び添加剤の配合に使用される温度(約70℃)よりも高いが、生物活性物質の実質的分配及び化学修飾は、これらの温度での短い滞留時間のために一部避けることができる。
【0083】
前述のような他の造形プロセスは、押出被覆及び溶剤塗装を含む。例えば、バリア層ポリマーは、予備成形されたマトリックスポリマー領域上に押出すことができる。このプロセスはマトリックスポリマー層及びバリア層が実質的に同時に造形される同時押出プロセスとは区別される。あるいはバリア層は、障壁ポリマーの溶剤液又は分散液のマトリックスポリマー表面への塗布、それに続く溶剤又は液体分散剤の例えば蒸発による除去により、マトリックスポリマーの表面に塗布することができる。このような障壁ポリマーの溶液又は分散体は、例えば浸漬又は噴霧による、マトリックスポリマー表面の溶液又は分散液との接触により塗布することができる。これらの他の造形プロセスの使用は、バリア層のマトリックスポリマー領域への塗布に限定されない。従ってマトリックスポリマー領域は、同様の方法により予備成形された支持体上に形成することもできる。
【0084】
本発明の医療装置は、任意の移植し得る又は挿入可能な医療装置、特に医療装置の表面上への微生物の付着及びバイオフィルムの付着した微生物による合成を含む、装置の表面上及び周囲への微生物の増殖が容易なものである。好ましい移植し得る医療装置は、比較的長期間、すなわち、約30日〜約12ヶ月の期間又はそれよりも長く移植され続けるように適合されたものを含む。しかし約30日間又はそれよりも短く移植され続けることが意図された装置も、本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
移植し得る医療装置の例は、ステント、ステントグラフト、ステントカバー、カテーテル、人工心臓弁及び心臓弁の足場、静脈投与装置、大静脈フィルター、腹腔内投与装置、及び経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastronomy)において使用される経腸栄養装置、人工関節並びに人工靱帯及び腱を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい医療装置は、体内のふたつの無菌領域の間に、又は体内の無菌及び有菌領域の間に橋かけ又はドレナージを提供するように適合されたものを含む。体内の無菌及び有菌領域の間に橋かけ又はドレナージを提供するように適合された装置は、有菌領域に通常存在する微生物による無菌領域の汚染により、特に微生物の増殖、付着及びバイオフィルム形成を受け易い。無菌の体環境中に移植されるか又は橋かけされることが意図された医療装置は、例えば、通常有菌領域に存在する微生物(すなわち非病原性生物)から、疾患に起因して存在する微生物(すなわち病原性生物)から、及び医療装置の挿入又は植込み時に導入される微生物から、微生物の増殖、付着及びバイオフィルム形成を受け易い。
【0086】
ステントは、胆管、尿道、尿管、気管支、冠状動脈、胃腸管及び食道のステントを含む。好ましいステントは、胆管ステント、尿管ステント及び膵管ステントである。このステントは、任意の形状又は配置であってよい。ステントは、胆管及び尿管の管腔を通る流れ又はドレナージを提供するために特に有用である中空の円筒状構造を含むことができる。ステントは、コイル状であるか、又は繊維もしくはフィラメントの組物又は織物の目の粗いネットワークのようにパターン化されても、又は関節をなすことができるセグメントの内部連結している目の粗いネットワークであってもよい。このようなステントデザインは、環状大動脈のような体内管腔の開存性を維持するために、更に特に適したものであることができる。従って主にドレナージを提供するように適合されたステントは、主に体内管腔を維持するよう適合されたステントとは対照的に、目の粗いネットワーク壁構造とは対照的に、連続壁構造を有することが好ましい。
【0087】
ステントカバーも、本発明の好ましい医療装置である。例えば、ステントカバーは、編物、織物又は組物のデザインの目の粗いメッシュステントを含むステント上に配置されるように適合された、薄壁の円筒状又は鞘様構造を備えることができる。好ましいステントカバーは、胆管ステントの上に配置されるように適合される。胆管ステントは、金属及び非金属材料、更には形状記憶材料を含む、そのような目的に有用な任意の材料であってよい。中でも有用な金属材料は、形状記憶合金、例えばNitinol(登録商標)など、並びにステンレス鋼、タンタル、ニッケル-クロム又はコバルト-クロム、すなわちElgiloy(登録商標)を含むが、これらに限定されるものではない他の金属材料を含むが、これらに限定されるものではない。胆管ステントは、そのような材料のいずれかの1本のストランド又は複数のストランドから製造することができ、及び自己膨張性であることができる。ステントカバーは、例えば、本願明細書に説明されたような、トリクロサンのような抗微生物薬、サリチル酸のような微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬、及び次炭酸ビスマスのような放射線不透過剤を含むマトリックスポリマーを備えることができる。特に好ましいステントカバーは、先に説明されたようなポリウレタンエラストマー又はポリウレタンコポリマーを含む。ステントカバーは、目の粗いメッシュステントを通り組織成長を低下すると同時に、ステントの表面上及び周囲の微生物の増殖を低下し、ステントの上への微生物の付着を低下し、及びステント表面上のバイオフィルムの合成を低下する点で利点がある。
【0088】
本発明の別の好ましい医療装置は、膵臓から十二指腸へのドレナージを提供する膵管ステントである。通常、膵臓は、膵管により十二指腸へ排液される。時には移植し得る膵ドレナージ装置は、狭窄、括約筋狭窄、結石閉塞のような問題点を緩和し、並びに管の破壊を封鎖することが望ましい。しかし膵管が開放されている場合、又は移植し得る医療装置が膵臓内に配置されている場合、形態学的変化が生じ、これは膵炎につながる。
【0089】
移植し得る医療装置の挿入時の膵臓の形態学的変化は、正常膵臓と膵臓が排液する十二指腸の間のpH差に関連していることが考えられる。膵臓は十二指腸よりも高いpHを有し、十二指腸を緩衝するために水性炭酸水素塩を排泄する。医療装置の膵臓への植込みは、緩衝作用を提供する膵臓の能力又は有効性を実質的に低下し、これは膵臓の望ましくない形態学的変化につながり得る。
【0090】
移植された医療装置の環境における膵臓pHレベルを作り出すために、緩衝剤を放出する膵管ステントを提供することにより、膵臓の望ましくない形態学的変化は、実質的に低下又は予防されもすると考えられる。これは、膵管ステント内又は表面上に物質を提供することにより達成することができ、その結果膵管ステントが生理的液体に曝される場合、緩衝剤はステントから放出され、装置の周囲に局所的に高pH環境を作り出す。中でも緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムのような炭酸水素塩を含むが、これらに限定されるものではない。このような緩衝剤は、例えば、生物活性物質に関して先に説明された様式で、マトリックスポリマーに混入されてよいか、又はこれらはマトリックスポリマーの表面上に塗装として塗布することができるか、又はこれらは先に説明された方法のいずれかにより、任意のバリア層内に又は上のコーティングとして塗布されてよい。
【実施例】
【0091】
本発明は、更に以下の限定的でない実施例を参照し説明される。当業者には、このような実施例に説明された態様において、本発明の範囲から逸脱することのない、先の説明に一致する、多くの変更を行うことができることは明らかであろう。
【0092】
(実施例1)
単-層マトリックスポリマー構造を、19%酢酸ビニル含量を有するエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、抗微生物薬として混合物の10質量%のトリクロサン、微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬として混合物の10質量%のサリチル酸、及び放射線不透過剤として混合物の30質量%の次炭酸ビスマスを含有する混合物から形成した。次炭酸ビスマスは、EVAコポリマーと予備配合し(62.5% EVA/37.5%次炭酸ビスマス)、並びにトリクロサン及びサリチル酸生物活性物質に添加した。あるいは、次炭酸ビスマスを、ポリマーに添加する前に、増圧バーを伴うv-ミキサ中で、トリクロサン及びサリチル酸と予備配合した。約13rpmシェルスピード及びピン-型増圧バーを伴うv-ブレンダーは、約120rpm、約15分間で、一貫して均質な粉末配合物を生成した。トリクロサン、サリチル酸及び次炭酸ビスマスを、低-剪断プロファイルスクリュデザインの、18mmスクリュ直径の二軸スクリュ押出機中のEVAコポリマーと配合した。スクリュのバレル温度は約70℃であり、スクリュ速度は約200rpmであり、処理量は約3.5kg/時であった。70℃はEVAにとって比較的低い加工温度であるので、トリクロサンは配合及び引き続きの押出を促進するための可塑剤として作用した。配合後、混合物を24:1 L/D、圧縮比3:1の低剪断スクリュを伴う、標準直径1"のスクリュの押出機中で、チューブに押出した。最高バレル温度は、次炭酸ビスマスとサリチル酸の間の反応を防止するために、約100℃であった。スクリュ速度は、剪断速度を低く維持し、過剰な粘性の熱損失を防ぐために、比較的低く、約20rpmに維持した。
【0093】
(実施例2)
実施例1に説明されたものと同じ組成及び配合を伴うマトリックスポリマー領域を有し、並びにマトリックスポリマー領域の内面及び外面を被覆するバリア層と同時押出された、3-層構造を形成した。このバリア層は、オクテンコ-モノマー含量が約24%であるエチレン-オクテンコポリマーで形成した。各バリア層は、3-層構造の総壁厚の約5%を形成する。マトリックスポリマーからの生物活性物質の放出速度を遅延又は速めるために、より厚い又はより薄いバリア層を提供することができる。配合されたマトリックスポリマー及びバリア層は、同時押出されると同時に、スクリュ速度及び温度は、生物活性物質及び/又は放射線不透過剤の過熱及び望ましくない架橋反応並びに結果的な化学修飾を避けるように制御される。同時押出は、混合区画を伴わない、圧縮比3:1の直径1"のスクリュ上でスクリュ速度約35rpmを用い行われた。バレル温度約110℃は、架橋反応を実質的に防ぐことがわかった。コポリマーバリア層は、押出機のヘッドのフォーミングダイにより高い加工温度が必要である。フォーミングダイ温度約150℃は、適当なヘッド圧、層の品質及びフォーミングダイでの架橋反応を提供することがわかった。
【0094】
(実施例3)
変動量のトリクロサン(TCN)、サリチル酸(SA)及び次炭酸ビスマス(BsC)を含有する、長さ約2cmの押出された19%酢酸ビニルEVAコポリマーチューブを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、37℃で0("未処理")、3、8及び28日間、インキュベーションした。PBS中でのインキュベーションの目的は、曝露後の細菌の付着に対するSA阻害の寿命、及び押出されたチューブからのSAの放出を示すためである。チューブは、PBS中でのインキュベーション後、10-4〜10-5cfu/mlの大腸菌を含有する溶液に、約100rpmで回転しながら37℃で約4時間曝した。この曝露に続けて、この試料を生理食塩水で洗浄し、標準Mueller-Hinton寒天プレート上に確立されたパターンに従い「ローリング(rolled)」した。これらのプレートは、コロニーを形成させるために約18〜24時間インキュベーションした。コロニーを計測し、チューブ1インチ当たりのcfuとして表した。
【0095】
図3は、チューブの標準化された阻害反応を示している。チューブ内のTCN、SA及びBsCの量を、%TCN/%SA/%BsC(酢酸ビニルEVAコポリマーの質量をベースにした質量%)として表した。従って、10%TCN、0%SA及び30%BsCを有するチューブは、図3において「10/0/30」と記した。図3は、阻害反応値1とされた10/0/30チューブに対し標準化された、変動する質量百分率のTCN及びSA及び30%BsCを有する5本のチューブの阻害反応を示している。図3は、10%TCN及び変動する量(1%、3%及び10%SA)を含むチューブは、TCNのみを含有するチューブ(「10/0/30」)及びよりもより効率的に細菌付着を阻害し、並びにTCNもSAも含まないチューブ(「0/0/30」)よりもより効率的に細菌付着を阻害したことを示している。図3は同じく、TCNは10%で一定であるが、SA量が、0%から10%まで増加した場合、チューブは一般により効果的に細菌付着を阻害し、これはSAは相乗作用を提供することを示している。図3は更に、大腸菌曝露前のPBS中のチューブのインキュベーションは、細菌阻害に有意に作用しないことを示し、これは有効量のTCN及びSAは、PBS中での延長されたインキュベーション後押出されたチューブ中に残存している、すなわちこれらの生物活性物質は押出されたチューブから過剰に又は早期に浸出されることはないことを示唆している。図4は、大腸菌に曝露する前に、PBS中で3及び8日間インキュベーションに類似したチューブに関する結果を示している(標準化せず)。
【0096】
(実施例4)
トリクロサン(TCN)、サリチル酸(SA)及び次炭酸ビスマス(BsC)の変動量を含有する、長さ約2cmの押出された19%酢酸ビニルEVAコポリマーチューブを、大腸菌(図5)又はブドウ球菌(図6)のいずれかの寒天菌叢に挿入した。チューブは、寒天菌叢の表面から垂直上向きに伸びるように配置した(誕生ケーキのロウソクに類似)。寒天菌叢中で24時間放置後、チューブの周りの細菌増殖阻害のゾーン(直径)を測定した。このチューブを、24時間毎に新鮮な寒天プレートに移し、細菌増殖阻害のゾーンを再度測定した。図5は、大腸菌の寒天菌叢中に配置されたチューブに関する測定結果を示し、及び図6は、ブドウ球菌の寒天菌叢中に配置されたチューブに関する測定結果を示している。図5及び6は、TCNの割合が0%から最大10%まで増加するにつれて、細菌増殖阻害のゾーンが大きくなったことを示している。TCNを含まないが変動量のSAを含むチューブは、細菌増殖を効果的に阻害せず、このことは、細菌増殖阻害(細菌付着の阻害に対抗して)は、主にTCNにより提供されることを示唆している。図5及び6は、所定の割合のTCNに関して、測定された細菌増殖阻害のゾーンは、約40日又はそれよりも長い期間にわたり同様であることも示し、このことは、押出されたチューブ内のTCN成分は、その活性を長期間にわたり効果的に維持することを示唆している。
【0097】
(実施例5)
例えば泌尿器内視鏡手技後の、その手技に随伴する尿管閉塞事象における足場として作用するために、尿管ステントを使用した。ステントは、尿管閉塞を引き起こす先天性欠陥、狭窄又は悪性疾患の存在下で開存性を提供するための姑息的(palliative)装置としても使用される。本実施例の尿管ステントは、Boston Scientific(Natick, MA, USA)から市販されているPercuflex(登録商標)尿管ステントのデザインを基に形成した。そのようなステント10の概略図を、図12に例示している。ステント10は、腎側ピッグテール12、シャフト14及び膀胱側ピッグテール16を備える、円筒状ポリマー押出品である。ステント10を、尿管に挿入し、尿管の剛性を提供し、尿を通過させた。ピッグテール12、16は、ステント10を医師が一旦配置した位置に維持するために役立つ。ステント10は更に、以下と共に提供した:当該技術分野において公知であるような、(a)挿入を助けるための、先細チップ11、(b)排液を促進するために、本体の長手方向に下がるらせんパターンに配置された、複数の側孔18(1個に番号を付けている)、(c)医師が尿管に挿入されたステントのおおよその長さを知るために目視するために使用する、目盛り20(1個を図示した)、及び(d)ステントの位置期目及び抜去を補助する、ナイロン糸22。位置決め時には、そのような尿管ステント10は、典型的には膀胱鏡により、泌尿器用ガイドワイヤ上に配置され、ポジッショナーにより位置に進められる。一旦ステント近端が、腎/腎杯へと進行すると、ガイドワイヤは取り外され、ピッグテール12、16が腎と膀胱内に形成される。
【0098】
しかし前記Percuflex(登録商標)尿管ステントとは異なり、本実施例において使用されるステントは、トリクロサンを含有する。非イオン性の広範なスペクトルの抗微生物薬であるトリクロサンは、シャワーゲル、セッケン、含嗽剤及び練り歯磨き、洗剤、ローション、クリーム及び香粧品などの様々な衛生(personal care)製品の分野で、20年間以上使用されている。これは、プラスチック製玩具、ポリマー、及び布地にも混入されている。最近トリクロサンは、Ethicon, Inc.、Johnson & Johnson Companyの生分解性のコートされたVICRYL Plus抗微生物縫合糸中に、抗微生物薬として混入されている。トリクロサンの抗微生物有効性は、良く証明されており、ほとんどのグラム陽性及びグラム陰性の嫌気性及び好気性の細菌、一部の酵母及び真菌に対し、ほとんどの被験生物について例え低濃度(MIC<0.3ppm)であっても、即効性、持続性のある広いスペクトルであることが説明されている。Bhargava, H.N. PhD;Leonard, Patricia A.BS:Triclosan: Application and safety. AJIC American Journal of Infection Control, vol. 24(3) June 1996, pp 209-218;Jones RD, Jampani HB, Newman JL, Lee AS:Triclosan: a review of effectiveness and safety in health care settings. Am J Infect Control、2000 Apr;28(2):184-96;Regos J, Zak O, Solf R., Vischer WA, Weirich EG:Antimicrobial spectrum of triclosan, a broad-spectrum antimicrobial agent for topical application. II. Comparison with some other antimicrobial agent、Dermatologia 1979; 158(1): 72-9を参照のこと。
【0099】
トリクロサン-含有尿管ステントは、以下の成分を下記量で含有する:(a)トリクロサン(Ciba Specialty Chemicalsから商品名Irgacare(商標)MPで入手可能)を12質量%又は18質量%のいずれか、(b)次炭酸ビスマス(Mallinckrodt)を23質量%、(c)着色剤を0.45質量%、及び(d)エチレン酢酸ビニルコポリマー(DuPontのElvax 460)を差引き量。最初に、トリクロサン、次炭酸ビスマス及び着色剤を、増圧バーを備えたv-ミキサー内で予備配合し、その後ポリマーを添加した。約13rpmシェル速度及びピン型増圧バー-を有するv-ブレンダーは、約120rpm、約15分間で、一貫した均質な粉末配合物を生成した。この配合されたトリクロサン、次炭酸ビスマス及び着色剤を、次に、低-剪断プロファイルのスクリュデザインを備える18mmスクリュ直径の二軸スクリュ押出機内で、EVAコポリマーと配合した。スクリュ内のバレル温度は、スクリュ速度約200rpm及び処理量約3.5kg/時で、約70℃であった。配合後、ペレットを、24:1 L/D、圧縮比3:1、低剪断スクリュを伴う、標準1"スクリュ直径の押出機内で、スクリュ速度20〜35rpmで、適当な直径のチューブへ押出した。バレル温度は100〜125℃であった。配合物は、100%均質ではなかったが、配合されたペレットを再度混合し、その後押出すと、より均質なTCN負荷につながった。
【0100】
押出された材料を次に切断し、当該技術分野において公知のように、先細チップを付け、155℃で2時間アニーリングし、インク(Formulab CFX-00)で印を付け、及びHydroplus(商標)(Union Carbide, Dow Chemical)コーティングで被覆し、その後側孔を形成し、熱風処理によりピッグテールを形成し、更に縫合糸を付けた。
【0101】
(実施例6)
トリクロサン放出試験を、ステント(すなわち、6 French, 長さ39cmステント、1X酸化エチレン(EtO)中滅菌)による、模擬/人工尿処方に関して英工業規格(British Standard)に詳述されているような人工尿(AU)への、流量0.5ml/分でのフロー-スルー放出を測定することにより行った。(同様の放出結果を、10mM PBSについて得た。)この目的のために、ステントは、AU培地へ送達するための蠕動ポンプを連結したタイゴンチューブ片の内側に配置した。チューブ及びステントを、体温に近づけるために、37℃の水浴に含浸した。放出は、120日間にわたり測定し、以下を示した:図7において、トリクロサン放出量、対、尿曝露日数、図8において、トリクロサン濃度、対、尿曝露日数、並びに図9において、放出された総トリクロサン割合(%)、対、尿曝露日数。これらの図を参照しわかるように、これらのステントは、放出第一日目に一日放出速度675μg/日(流出尿濃度0.94μg/ml)であり、30日間の曝露後の放出速度200μg/日(0.27μg/ml)であった。30日以降、放出速度は、90日後の約32μg/日(0.04μg/ml)まで低下した。90日間に放出されたトリクロサンの総量は約16mgであるか、又はステントの総トリクロサン含量の14%であった。(ステントサイズ、例えば5-8FR、20〜30cmに応じ、及び推定トリクロサン濃度11±3質量%で、ステント内の総トリクロサン含量は一般に、約100〜240mgの範囲である。)これらのデータは、このステントは、長期間(>90日間)の尿曝露後に、著しい量のトリクロサンを連続して放出することを示している。
【0102】
図7に見られるように、総トリクロサン負荷の12%から18%への増加は、第一日目の放出速度を975μg/日(流出尿濃度1.4μg/ml)に増加し、90日後の放出速度は約36μg/日(0.05μg/ml)まで低下した。18%TCNに関して、総TCN負荷は175.9mgであり、放出された量は25.29mg(放出率14.38%)であった。12%TCN負荷に関して、TCN負荷は115.5mgであり、放出された量は、16.66mg(放出率14.42%)であった。従って、12%及び18%負荷で放出されたトリクロサンの絶対量には差異があったが、両方の負荷に関して任意の時点で放出された総トリクロサンの割合は、図9に認められるように、同じであった。このことは、トリクロサン放出率(%)は、ステントの最初の負荷総量とは無関係であることを示している。しかし一般には、薬物-対-ポリマー比が増大するにつれ、TCN放出の速度(又は%)も同じく増加すると予想される。この作用は、本実施例においては認められず、その理由は、薬物-ポリマー比は十分に異ならず、放出されたTCN量と総量の差異(例えば、μg対mg)が非常に大きいためであると考えられる。
【0103】
(実施例7)
尿管ステント及び他の尿管用医療装置の使用に関連した最も一般的な問題点は、感染及び外被形成である。尿路感染症の微生物の病因は、よく確立されかつ理論的に一貫しているとみなされる。尿管感染症に関与するほとんどの病原体は、腸内細菌(enterobacteriaceae)であり、その中で大腸菌(Escherichia coli)が最も有力な尿路病原体(80%)である。他のより一般的でない菌株は、プロテウス属(すなわちプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabillis))、クレブシエラ属(すなわちクレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae))、エンテロバクター属(すなわちエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter Cloacae))、エンテロコッカス属(すなわちエンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis))、シュードモナス属(すなわち、P.アエルギノーサ(P. aeruginosa))及びカンジダ属(すなわちカンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、更にはグラム陽性菌、例えば表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び腐生ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)がある。泌尿器カテーテル又はステントの外被形成の問題は、プロテウス・ミラビリス又は他のウレアーゼ-産生菌による乾癬が原因である。これらの微生物は、装置表面にコロニー形成し、多糖マトリックス中に包埋されたバイオフィルム集団を形成する。ウレアーゼは、アンモニアを生成し、尿pHを上昇させる。これらの条件下で、リン酸マグネシウム及びリン酸カルシウムの結晶が形成され、装置の外被形成につながる。従って、本実施例及び以下の実施例のために選択された被験生物は、尿管ステントの臨床使用に関する最も重要な病原体の2種を代表する、大腸菌及びプロテウス・ミラビリスであった。
【0104】
この実施例は、流量0.5ml/分の合成尿流れに90日以上曝露された、12%及び18%トリクロサンを含有する尿管ステント(6Fr x 39cm, 1x EtO滅菌)のin vitro抗微生物活性を評価する。尿に曝露されない被験ステントを、陽性対照として使用した。トリクロサンを含有しないステントを、陰性対照として使用した。ステントの抗微生物活性は、試験した試料区画は、90日以上のフロー-スルー試験以降であり、及びそれらは24時間で1回のみ試験したことを除き、先に実施例4において説明したような阻害試験の標準ゾーンを用いて評価した。プロテウス・ミラビリス及び大腸菌の臨床単離体を、被験生物として使用した。
【0105】
12質量%及び18質量%TCN負荷を伴うステントに関して、寒天培地へ放出されたトリクロサン濃度の関数として、阻害ゾーンデータを図10に示した。陽性対照として仕上げたステントは、>20mmの阻害ゾーンを示したことを観察することができる。ステントを尿に曝露し、トリクロサンがステントから放出されたので、この阻害ゾーンは減少し、依然人工尿への連続曝露の117日以降であっても、ステントについて>3.5mmであることが維持された。阻害ゾーンデータも、トリクロサン放出濃度の関数として、図11に示した。
【0106】
(実施例8)
本実施例において、いくつかの異なるステント配置について、相対外被形成能を評価した。人工尿中の動的外被形成試験(すなわち、臨床条件を模倣)を行い、外被形成の速度及び程度を決定した。プロテウス・ミラビリス(ATCC, #25933)の臨床単離体を、被験生物として使用した。全てのトリクロサン-非含有ステント型は、接種した及び接種していないAUへの6日間の曝露後、外被形成が認められた(1x EtO滅菌)。視覚により評価した場合並びにマグネシウム及びカルシウムについて元素分析を施した場合、トリクロサン-含有ステントは、曝露期間を通じて(15日間)外被形成が認められなかった。従って、ステント中へのトリクロサンの混入は、外被形成を強力に低下し、その結果ステントの開存性を維持する。
【0107】
本発明は、その適切な範囲から逸脱しない限りは、他の具体的形で具体化することができる。説明された態様及び実施例は、全ての観点において単に例証であり、制限するものではないとみなされる。従って本発明の範囲は、前記説明よりもむしろ、「特許請求の範囲」により示される。添付された「特許請求の範囲」と同等である意味及び範囲に収まるあらゆる変更が、それらの範囲内に包括される。
【0108】
典型的には、このような図面の場合、図1、2及び12は、単に例示する目的で提示された簡略化された概略的表示であり、実際の構造は、構成部品の相対スケールを含む、多くの点で異なってよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の態様に従う移植し得る又は挿入可能な医療装置の一部の簡略化された概略図である(透視図)。
【0110】
【図2】図2は、本発明の態様に従う移植し得る又は挿入可能な医療装置の一部の簡略化された概略図である(透視図)。
【0111】
【図3】図3は、変動量のトリクロサン(TCN)及びサリチル酸(SA)を含有する押出されたチューブ上の細菌の付着阻害を示すグラフである。
【0112】
【図4】図4は、変動量のトリクロサン(TCN)及びサリチル酸(SA)を含有する押出されたチューブ上の細菌の付着阻害を示すグラフである。
【0113】
【図5】図5は、変動量のトリクロサン(TCN)及びサリチル酸(SA)を含有する押出されたチューブの周囲の細菌(大腸菌ATCC 25922)増殖阻害のゾーンを示すグラフである。
【0114】
【図6】図6は、変動量のトリクロサン(TCN)及びサリチル酸(SA)を含有する押出されたチューブの周囲の細菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌#99)増殖阻害のゾーンを示すグラフである。
【0115】
【図7】図7は、尿への曝露日数の関数としての、放出されたトリクロサンの量を示すグラフである。
【0116】
【図8】図8は、尿への曝露日数の関数としての、放出されたトリクロサンの濃度を示すグラフである。
【0117】
【図9】図9は、尿への曝露日数の関数としての、放出されたステント内の総トリクロサンの割合(%)を示すグラフである。
【0118】
【図10】図10は、トリクロサン放出濃度の関数としての阻害ゾーンサイズを示すグラフである。
【0119】
【図11】図11は、図11のトリクロサン放出濃度の関数としての阻害ゾーンサイズを示すグラフである。
【0120】
【図12】図12は、本発明に関連して使用するための尿管ステントである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1個の生体適合性マトリックスポリマー領域、並びに(b)抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含有する生物活性物質を含む、移植し得る医療装置。
【請求項2】
抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の両方が、単独の区別できるマトリックスポリマー領域に存在する、請求項1記載の医療装置。
【請求項3】
抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、区別できるマトリックスポリマー領域に存在する、請求項1記載の医療装置。
【請求項4】
前記抗微生物薬が、該装置の上及び周囲の微生物の増殖を阻害するのに有効量で存在し、並びに微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、該装置の表面上への微生物の付着並びに表面上に付着した微生物からのバイオフィルムの合成及び蓄積を阻害する有効量で存在する、請求項1記載の医療装置。
【請求項5】
前記装置が、約30日間よりも長い期間移植され続けるように適合されている、請求項1記載の医療装置。
【請求項6】
前記マトリックスポリマーが、生体適合性の生分解性ポリマーを含む、請求項1記載の医療装置。
【請求項7】
前記マトリックスポリマーが、生体適合性の非-生分解性ポリマーを含む、請求項1記載の医療装置。
【請求項8】
前記非-生分解性ポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマー、ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー、メタロセン触媒ポリエチレン、アイオノマー及び芳香族ビニルコポリマーからなる群より選択される、請求項7記載の医療装置。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、それらのコポリマー及び混合物からなる群より選択される、請求項6記載の医療装置。
【請求項10】
前記非-生分解性ポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマーである、請求項8記載の医療装置。
【請求項11】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマーが、約19%〜約28%の酢酸ビニル含量を有する、請求項10記載の医療装置。
【請求項12】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマーが、約3%〜約15%の酢酸ビニル含量を有する、請求項10記載の医療装置。
【請求項13】
前記抗微生物薬が、トリクロサン及びクロルヘキシジン及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の医療装置。
【請求項14】
前記抗微生物薬が、トリクロサンである、請求項13記載の医療装置。
【請求項15】
前記微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、NSAID、EDTA及びEGTAからなる群より選択される、請求項14記載の医療装置。
【請求項16】
前記微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、サリチル酸又はそれらの塩もしくは誘導体である、請求項15記載の医療装置。
【請求項17】
前記微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、サリチル酸である、請求項16記載の医療装置。
【請求項18】
前記マトリックスポリマー中に存在する該抗微生物薬の量が、マトリックスポリマーの約0.5%〜約25質量%である、請求項4記載の医療装置。
【請求項19】
前記マトリックスポリマー中に存在する該微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬の量が、マトリックスポリマーの約0.5%〜約25質量%である、請求項4記載の医療装置。
【請求項20】
前記マトリックスポリマーが、放射線不透過剤を含有する、請求項1記載の医療装置。
【請求項21】
前記放射線不透過剤が、次炭酸ビスマスを含む、請求項20記載の医療装置。
【請求項22】
前記マトリックスポリマー中に存在する該放射線不透過剤の量が、マトリックスポリマーの約0.5%〜約45重量%である、請求項20記載の医療装置。
【請求項23】
前記マトリックスポリマーが、少なくとも1種の治療薬を更に含有する、請求項1記載の医療装置。
【請求項24】
前記治療薬が、化学療法薬、NSAID、ステロイド性抗炎症薬及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項23記載の医療装置。
【請求項25】
前記治療薬が、シスプラチン、メトトレキセート、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン及びプレドニソロンからなる群より選択される、請求項23記載の医療装置。
【請求項26】
前述の少なくとも1個のマトリックスポリマー領域を少なくとも部分的に被覆する1以上のバリア層を更に備える、請求項1記載の医療装置。
【請求項27】
第一のマトリックスポリマー領域;該第一のマトリックスポリマー領域の内面を少なくとも部分的に被覆する第一のポリマーバリア層;及び、該第一のマトリックスポリマー領域の外面を少なくとも部分的に被覆する第二のポリマーバリア層を備える、請求項26記載の医療装置。
【請求項28】
前記第一のマトリックスポリマー領域、並びに該第一及び第二のポリマーバリア層が、環状形である、請求項27記載の医療装置。
【請求項29】
第一及び第二のポリマーバリア層が、同じポリマー材料を含有する、請求項28記載の医療装置。
【請求項30】
第一及び第二のポリマーバリア層が、異なるポリマー材料を含有する、請求項28記載の医療装置。
【請求項31】
第二、及び任意に第三のマトリックスポリマー領域、並びに第三、及び任意に第四のポリマーバリア層を更に備え;ここで、第二のマトリックスポリマー領域が、第二のポリマーバリア層の外面上に配置され、及び第三のポリマーバリア層が、該第二のマトリックスポリマー領域の外面を少なくとも部分的に被覆し;並びに、ここで、第三のマトリックスポリマー領域が存在する場合、これは該第一のポリマーバリア層の内面上に配置され、及び第四のポリマーバリア層が、該第三のマトリックスポリマー領域の内面を少なくとも部分的に被覆する、請求項27記載の医療装置。
【請求項32】
第一のマトリックスポリマー領域が、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項27記載の医療装置。
【請求項33】
第一及び第二のポリマーバリア層の各々が、メタロセン触媒ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、アイオノマー、ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー及びエチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーからなる群より選択される材料を含有する、請求項32記載の医療装置。
【請求項34】
前記抗微生物薬が、トリクロサン、クロルヘキシジン及びそれらの組合せからなる群より選択され、並びに微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、サリチル酸又はそれらの塩である、請求項33記載の医療装置。
【請求項35】
前記医療装置が、ステントカバー、胆管ステント、尿管ステント、膵管ステント、泌尿器カテーテル、静脈内投与装置、腹腔内投与装置、ふたつの無菌体内環境間を連結するか又は間にドレナージを提供する装置、並びに有菌及び無菌の体内環境間を連結するか又は間にドレナージを提供する装置からなる群より選択される、請求項1記載の医療装置。
【請求項36】
前記装置が、有菌及び無菌の体内環境間を連結するか又は間にドレナージを提供する装置を含む、請求項35記載の医療装置。
【請求項37】
前記装置が、中空の円筒状構造を備える、請求項36記載の医療装置。
【請求項38】
前記装置が、ステントカバーを含む、請求項35記載の医療装置。
【請求項39】
前記生体適合性のポリマーマトリックスが、ポリウレタンを含み、該抗微生物薬が、トリクロサンを含み、該微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬が、サリチル酸又はサリチル酸誘導体を含み、更に次炭酸ビスマス放射線不透過剤を含む、請求項38記載の医療装置。
【請求項40】
前記ステントカバーが、生体適合性材料を含有する織物、編物、又は組物の目の粗いメッシュデザインを含むステント上に配置されるように適合された中空の円筒状構造を含む、請求項38記載の医療装置。
【請求項41】
前記ステントカバーが、胆管ステント上に配置される、請求項40記載の医療装置。
【請求項42】
前記生体適合性の材料が、ステンレス鋼又は形状記憶材からなる群より選択される、請求項40記載の医療装置。
【請求項43】
前記医療装置が、膵臓から十二指腸へのドレナージを提供する膵管ステントを含む、請求項35記載の医療装置。
【請求項44】
前記膵管ステントが、緩衝剤を含有する、請求項43記載の医療装置。
【請求項45】
前記緩衝剤が、生理的液体に曝された時に、膵管ステントが移植された環境内で膵臓-適合したpHレベルを生じる、請求項44記載の医療装置。
【請求項46】
前記緩衝剤が、炭酸水素塩である、請求項45記載の医療装置。
【請求項47】
前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムからなる群より選択される、請求項46記載の医療装置。
【請求項48】
移植し得る又は挿入可能な医療装置の製造法であって:(a)1種以上の生体適合性マトリックスポリマー、並びに(b)抗微生物薬及び微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含有する生物活性物質の組合せを提供する工程;任意の該生体適合性マトリックスポリマーの表面へ任意の該生物活性物質を優先的に分配することを実質的に防止する条件及び該生物活性物質の化学修飾を実質的に防止する条件の下で、該組合せを加工する工程;を含む、前記方法。
【請求項49】
前記加工の間に温度及び含水量のいずれか又は両方を制御する工程を更に含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記加工が、該1種以上の生体適合性マトリックスポリマーを、該1種以上の生物活性物質と混合し、該1種以上のマトリックスポリマー及び該1種以上の生物活性物質の均質混合物を形成する工程を含む、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記均質混合物が、両方の生物活性物質を含有する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記混合が、一軸スクリュ押出機、二軸スクリュ押出機、バンバリーミキサ、高速ミキサ及びロスケトルからなる群より選択される装置による、該1種以上の生体適合性マトリックスポリマー及び該1種以上の生物活性物質への機械的剪断の適用を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記混合が、該1種以上の生物活性物質及び該1種以上の生体適合性マトリックスポリマーの溶剤液又は分散液を形成することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記均質混合物を、移植し得る又は挿入可能な医療装置のマトリックスポリマー領域に造形することを更に含む、請求項50記載の方法。
【請求項55】
前記造形が、成形、圧延、流延及び溶剤塗装から選択されたプロセスを含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記造形が、押出を含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
前記押出が、少なくとも1個の環状マトリックスポリマー領域を形成すること含む、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記環状マトリックスポリマー領域の表面を少なくとも部分的に被覆する、少なくとも1個のポリマーバリア層を形成することを更に含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記方法が、該環状マトリックスポリマー領域上への該ポリマーバリア層の押出被覆、及び該ポリマーバリア層の該環状マトリックスポリマー領域上への溶剤塗装から選択されたプロセスを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記被覆が、該ポリマーバリア層及び該環状マトリックスポリマー領域の同時押出を含む、請求項58記載の方法。
【請求項61】
前記環状マトリックスポリマー領域の内面を少なくとも部分的に被覆する第一のポリマーバリア層を形成し、及び該環状マトリックスポリマー領域の外面を少なくとも部分的に被覆する第二のポリマーバリア層を形成する、請求項58記載の方法。
【請求項62】
前記被覆が、該第一及び第二のポリマーバリア層の該環状マトリックスポリマー領域との同時押出を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記加工が、第一及び第二の生体適合性マトリックスポリマー並びに1種以上の該生物活性物質の第一及び第二の均質混合物を形成すること、並びに任意に、第三の生体適合性マトリックスポリマー及び1種以上の該生物活性物質の第三の均質混合物を形成することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項64】
前記第一及び第二の均質混合物を同時押出し、第一及び第二の環状マトリックスポリマー領域を形成すること、並びに任意に、それと共に該第三の均質混合物を同時押出し、第三の環状マトリックスポリマー領域を形成することを含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記第一の環状マトリックスポリマー領域の内面及び外面を少なくとも部分的に被覆する、少なくとも第一及び第二のポリマーバリア層を形成すること;該第二の環状マトリックスポリマー領域の外面を少なくとも部分的に被覆する第三のポリマーバリア層を形成すること、並びに任意に、第三の環状マトリックスポリマー領域の内面を少なくとも部分的に被覆する第四のポリマーバリア層を形成することを更に含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記被覆が、該第一、第二及び第三のポリマーバリア層を、該第一及び第二の環状マトリックスポリマー領域と同時押出すること、並びに任意に、それらと該第四のポリマーバリア層及び該第三の環状マトリックスポリマー領域を同時押出することを含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記第一の環状マトリックスポリマー領域並びに該第一及び第二のバリア層が、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマー、ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー、メタロセン触媒ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、アイオノマー、芳香族ビニルコポリマー、シリコーン及びそれらの混合物からなる群より選択される材料を含有する、請求項62記載の方法。
【請求項68】
前記第一の環状マトリックスポリマー領域が、約19%〜約28%の酢酸ビニル含量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーを含有し、並びに該第一及び第二のポリマーバリア層が、メタロセン触媒ポリエチレンもしくはポリエチレンコポリマー、又はアイオノマーを含有する、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記第一の環状マトリックスポリマー領域が、該微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬としてサリチル酸又はそれらの塩、該抗微生物薬としてトリクロサン、及び放射線不透過剤として次炭酸ビスマスを含有し;並びに、該同時押出が、該サリチル酸又はそれらの塩が、該第一の環状マトリックスポリマー領域の表面又は該第一もしくは第二のポリマーバリア層の表面に優先的に分配しないような条件下で行われる、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記1個又は複数のバリア層の少なくとも1個が、生分解性ポリマーを含有する、請求項26記載の医療装置。
【請求項71】
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー並びにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項70記載の医療装置。
【請求項72】
エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンのアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマー、メタロセン触媒ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、アイオノマー、芳香族ビニルコポリマー、ポリウレタンエラストマー及びポリウレタンコポリマー、シリコーン及びそれらの混合物からなる群より選択される材料を含有する、少なくとも1個の生体適合性マトリックスポリマー領域;トリクロサン、クロルヘキシジン及びそれらの混合物からなる群より選択される抗微生物薬;サリチル酸並びにそれらの塩及び誘導体からなる群より選択される微生物付着/バイオフィルム合成阻害薬を含有する、生物活性物質;並びに、次炭酸ビスマス、ビスマスオキシクロリド、ビスマストリオキシド、硫酸バリウム、タングステン及びそれらの混合物からなる群より選択される、放射線不透過剤を含む、移植し得る又は挿入可能な医療装置。
【請求項73】
ポリマー円筒状シャフトを備えるステントであり、該ポリマー円筒状シャフトが、トリクロサン及びマトリックスポリマーを含む、ステント。
【請求項74】
前記ステントが、尿管ステントである、請求項73記載のステント。
【請求項75】
前記ポリマー円筒状シャフトが、5〜20質量%のトリクロサンを含有する、請求項73記載のステント。
【請求項76】
前記マトリックスポリマーが、エチレン系コポリマーである、請求項73記載のステント。
【請求項77】
前記マトリックスポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマーである、請求項73記載のステント。
【請求項78】
前記ポリマー円筒状シャフトが、該エチレン酢酸ビニルコポリマーを60〜80質量%含有する、請求項77記載のステント。
【請求項79】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマーが、19質量%〜約28質量%の酢酸ビニル含量を有する、請求項77記載のステント。
【請求項80】
前記ステントが、該ポリマー円筒状シャフトの外面上に潤滑性の親水性塗装を更に含む、請求項73記載のステント。
【請求項81】
前記ポリマー円筒状シャフトが、その壁内に形成された複数のアパーチャを備える、請求項73記載のステント。
【請求項82】
前記ポリマー円筒状シャフトが、放射線不透過剤を更に含む、請求項73記載のステント。
【請求項83】
前記放射線不透過剤が、次炭酸ビスマスである、請求項82記載のステント。
【請求項84】
前記ポリマー円筒状シャフトが、溶融-押出された円筒状シャフトである、請求項73記載のステント。
【請求項85】
前記ポリマー円筒状シャフトが、0.2mm〜0.8mmの範囲の壁厚を有する、請求項73記載のステント。
【請求項86】
前記ポリマー円筒状シャフトが、異なるデュロメーターバルブの末端領域を備える、請求項73記載のステント。
【請求項87】
壁厚0.2mm〜0.8mmであるポリマー円筒状シャフトを備える、尿管ステントであり、該ポリマー円筒状シャフトが、(a)本質的にエチレン酢酸ビニルコポリマーからなるポリマー種、及び(b)本質的にトリクロサンからなる抗微生物薬種を含む、尿管ステント。
【請求項88】
放射線不透過剤を更に含有する、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項89】
前記ポリマー円筒状シャフトの外面上に潤滑性の親水性塗装を更に含む、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項90】
前記ポリマー円筒状シャフトが、溶融-押出されたポリマー円筒状シャフトである、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項91】
ステント中の総トリクロサンの5〜15%が、流量0.5ml/分で合成尿へ30日間曝露された後に放出され、及びステント中の総トリクロサンの10〜20%が、流量0.5ml/分で合成尿へ90日間曝露された後に放出される、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項92】
トリクロサン20μg〜50μg/日が、流量0.5ml/分で合成尿へ90日間曝露された後に放出される、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項93】
トリクロサン100μg〜500μg/日が、流量0.5ml/分で合成尿へ30日間曝露された後に放出される、請求項87記載の尿管ステント。
【請求項94】
前記ポリマー円筒状シャフトが、異なるデュロメーターバルブの末端領域を備える、請求項87記載の尿管ステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−525287(P2007−525287A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500937(P2007−500937)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/005685
【国際公開番号】WO2005/087135
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500345685)ボストン サイエンティフィック サイムド, インコーポレイテッド (41)
【Fターム(参考)】