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微細パターン複製物の作製方法及び複製物
説明

微細パターン複製物の作製方法及び複製物

【課題】コントラストのある分子レベルの微細な複製物を簡単に作製する。
【解決手段】表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に疎水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子を分散させてなる親水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物を作製する。その場合において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを水中に浸漬し、微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて疎水性分子同士を集合せしめてから、水中で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクによる化学修飾を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機能デバイス、DNAチップなどの製造工程での分子レベルのパターン拓成を可能とする微細パターン複製物の作製方法及び複製物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子化学の分野において、1982年にF. L. Carterによって分子素子という概念が提案され、それ以来、企業、大学、研究機関等においてこの分野の研究開発が活発に行われている。例えば、有機分子の1個1個に機能を与え、それらの有機分子の集合体を形成すれば、これまでの集積度とは比べものにならない程の超高密度の半導体素子の形成が可能となる。また、近年、DNAのゲノム解析等が盛んに研究されており、いわゆるバイオチップが注目を集めているが、これの開発にも応用が考えられる。
【0003】
一方、微細パターンの複製方法として従来より行われているフォトリソグラフィーは、1枚毎に数工程を踏んで所望パターンの基板を複製する関係上、大量の複製品を単時間に製造するという面では限界があった。また、フォトリソグラフィーでは、露光、現像、エッチング等の複雑な工程を行うことから、細胞、DNA、酵素等の、耐熱性、機械耐性等に弱い材料を扱うには適していなかった。また、印刷法は大量の複製物の作製を可能とするが、これまで数百μm 程度のパターンの複製が限界であり、微細パターン複製物の作製には向いていなかった。
【0004】
本発明者は、如上の問題を鑑みて、先に、所定極性の分子を分散させてなる分子インクを基板上にパターニングして第一の転写層を形成し、前記極性と一致又は不一致の分子を分散させてなる分子インクで第二の転写層を形成することからなる微細パターンの複製方法を発明した(特願2000−151157)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の方法においては解像力を上げるために使用するインクの濃度を薄くしており、濃度の薄いインクで転写するため、第一の転写層の膜が欠陥を有し、第一の転写層の領域を完全に被覆していないため第二の転写層形成時に第二の転写層用のインクが既に形成した第一の転写層に入り込み汚染し、その結果第一層と第二層のコントラストが低下するという問題があった。
【0006】
また第一の転写層形成時に欠陥を無くすようにインク濃度を高くすると、インクのにじみ、拡散がおこり解像力が低下するという問題があった。
【0007】
本発明の目的はコントラストのある分子レベルの微細な複製物を簡単に作製することができる微細パターン複製物の作製方法及び複製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に疎水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子を分散させてなる親水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを水中に浸漬し、微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて疎水性分子同士を集合せしめてから、水中で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクによる化学修飾を施すことを特徴とする。この発明に係る微細パターンの複写物の作製方法によれば、疎水性の分子を分散させてなる分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる疎水性分子の層からなる微細パターンの形成後、水溶液中で疎水性分子どおし疎水結合させた状態で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクで化学修飾を行うので疎水性分子の層内に親水性分子が入り込む確率は低く、結果として微細パターン部分の疎水性は損なわれることはなく、親水性分子により化学修飾された微細パターンの周囲の基板面領域との高いコントラストが得られる。
【0009】
請求項1に記載の発明において、微細パターンの周囲の基板面に水中で親水性分子インクによる化学修飾を施したアルコール溶液中で微細パターン上に疎水性分子インクによりさらに高密度に化学修飾してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に親水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを有機溶液中に浸漬し、微細パターンを構成する親水性分子同士を水素結合させて親水性分子同士を集合せしめてから、有機溶液中で微細パターンの周囲の基板面に前記疎水性分子インクによる化学修飾を施すことを特徴とする。この発明に係る微細パターン複製物の作製方法によれば、親水性の分子を分散させてなる分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる親水性分子の層からなる微細パターンの形成後に、有機溶液中で微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子インクの塗布を行うので親水性分子の層内に疎水性分子が入り込む確率は低く、結果として微細パターンの周囲の基板面領域との高いコントラストが得られる。
【0011】
請求項3に記載の発明において、微細パターンの周囲の基板面に有機溶液中で疎水性分子インクによる化学修飾を施した後アルコール溶液中で微細パターン上に親水性分子インクによりさらに高密度に化学修飾してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0012】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、版として、シリコン、石英或いはそれらの上に金属或いは金属酸化物を積層してなる積層体の表面にフォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー等の電離放射線リソグラフィーまたはAFMリソグラフィーにより凸状パターンを形成した版を適用できる。
【0013】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、判子となる樹脂にポリジメチルシロキサンを用いるのが望ましい。
【0014】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクとして、末端にSH基を有する分子、シランカップリング剤またはカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、燐酸あるいはこれらの酸塩化物の何れかを分散させたインクを用いることができる。
【0015】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクとして下記の構造式の何れかで表される部分を有するX1 −(CH2)n −(下記の構造式の何れかで表される部分)−(CH2)m −Y(前記式中m,n≧0)で表される構造式を有し、その一方の端に位置するX1 は疎水性基であり、もう一方の端に位置するYは基板と結合できる−SH,−COOH,−SO3 H,−PO3 H,−PO3 2 , −COCl,−SO2 Cl,−PO2 Cl,−PO2 Cl等の基を有する分子をエタノール、トルエン、塩化メチレン等の有機溶媒中に分散させたインクを使用することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクとして、基板結合基と反対側に燐酸基を有する分子、ホスホン酸基を有する分子、カルボン酸基を有する分子、アミノ基を有する分子、水酸基を有する分子の何れかを分散させたインクを用いることができる。
【0024】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクとして下記の構造式の何れかで表される部分を有するX2 −(CH2)n −(下記の構造式の何れかで表される部分)−(CH2)m −Y(前記式中m,n≧0)で表される構造式を有し、その一方の端に位置するX2 は親水性基であり、もう一方の端に位置するYは基板と結合できる−SH,−COOH,−SO3 H,−PO3 H,−PO3 2 , −COCl,−SO2 Cl,−PO2 Cl,−PO2 Cl等の基である分子をエタノール、トルエン、塩化メチレン等の有機溶媒中に分散させたインクを使用することことができる。
【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
【化14】

【0032】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクの分子が末端にSH基を有する分子であるとき、微細パターンが形成される基板の表面に金、銀、又は銅を製膜した基板を用いるのが望ましい。金銀又は銅を表面にコートした基板を用いると、自己組織化作用により解像力が向上する。
【0033】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクの分子が末端にSH基を有する分子であるとき、微細パターンが形成される基板の表面に金、銀、又は銅を製膜した基板を用いるのが望ましい。金銀又は銅を表面にコートした基板を用いると、自己組織化作用により解像力が向上する。
【0034】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクの疎水性分子がシランカップリング剤、またはカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、燐酸あるいはこれらの酸の酸塩化物を含むときは、微細パターンが形成される基板の表面にシリコン酸化物又は金属酸化物をコートした基板を用いるのが望ましい。この場合、同様に自己組織化作用により解像度が向上する。
【0035】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクの親水性分子がシランカップリング剤、またはカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、燐酸あるいはこれらの酸の酸塩化物を含むときは、微細パターンが形成される基板の表面に、シリコン酸化物又は金属酸化物をコートした基板を用いるのが望ましい。この場合、同様に自己組織化作用により解像度が向上する。
【0036】
請求項1乃至の何れか一項に記載の発明において、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクの親水性分子が基板結合基と反対側に、燐酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基、水酸基の何れかを有する分子のとき、微細パターンが形成される基板の表面にシリコン酸化物又は金属酸化物をコートした基板を用いるのが望ましい。同様に自己組織化作用により解像度が向上する。
【0037】
請求項1乃至の何れか一項に記載の発明において、ウエットインキング法で判子に分子インクを付着させるのが望ましい。
【0038】
請求項1乃至の何れか一項に記載の発明において、コンタクトインキング法で判子に分子インクを付着させるのが望ましい
【0039】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、微細パターンを異なる分子を含む分子インクを用いて2種類以上の転写層の積層で構成してもよい。
【0040】
請求項1又は2に記載の方法により作製される微細パターン複製物は、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる疎水性分子の層からなる微細パターンを備え、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子の層を備えており、微細パターンの疎水性分子が水中で疎水結合により凝集した状態になっていることを特徴とする
【0041】
請求項3又は4に記載の方法により作製される微細パターン複製物は、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる親水性分子の層からなる微細パターンを備え、前記微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子の層を備えており、微細パターンの親水性分子が有機溶液中で水素結合により凝集した状態になっていることを特徴とする
【0042】
これらの複製物は、微細パターンを異なる分子を含む分子インクを用いて2回以上転写することにより形成したものでもよい
【発明の効果】
【0043】
以上詳細に説明したように、請求項1に記載の発明に係る微細パターン複製物の作製方法によれば、疎水性の分子を分散させてなる分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる疎水性分子の層からなる微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを水中に浸漬し、微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて疎水性分子同士を集合せしめてから、水溶液中で疎水性分子同士を疎水結合させた状態で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクで化学修飾を行うので疎水性分子の層内に親水性分子が入り込む確率は低く、結果として微細パターン部分の疎水性は損なわれることなく、親水性分子により化学修飾された微細パターンの周囲の基板面領域とのコントラストが得られた。
【0044】
また請求項3に記載の発明に係る微細パターン複製物の作製方法によれば、親水性の分子を分散させてなる分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる親水性分子の層からなる微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを有機溶液中に浸漬し、微細パターンを構成する親水性分子同士を水素結合させて親水性分子同士を集合せしめてから、有機溶液中で親水性分子同士を水素結合させた状態で微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子インクで化学修飾を行うので親水性分子の層内に疎水性分子が入り込む確率は低く、結果として微細パターン部分の親水性は損なわれることなく、疎水性分子により化学修飾された微細パターンの周囲の基板面領域との高いコントラストが得られた。
【0045】
本発明の複製物はその表面性質の異なる組み合わせを利用して、特定の分子を結合させたり、酵素、細胞、DNAの固定化等の用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】請求項1に記載の発明により、基板上に疎水性分子からなる微細パターン及びその周囲の基板面に親水性分子により化学修飾を施す過程を示す工程図である。
【図2】図1に示す工程に続く基板上に疎水性分子からなる微細パターン及びその周囲の基板面に親水性分子により化学修飾を施す過程を示す工程図である。
【図3】判子に対する分子インクの付着法の説明図である。
【図4】疎水結合を利用した本発明の微細パターン複製物の作製方法の効果を説明する図である。
【図5】請求項に記載の発明により、基板上に親水性分子からなる微細パターン及びその周囲の基板面に疎水性分子により化学修飾を施す過程を示す工程図である。
【図6】図5に示す工程に続く基板上に疎水性分子からなる微細パターン及びその周囲の基板面に親水性分子により化学修飾を施す過程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
図1請求項1に記載の微細パターン複製物の作製方法の工程図である。
【0049】
先ず、図1(a)に示すように、表面に所望の段差のある凸状パターン1aを有する版1を作製する。版1の材料としては、シリコン、石英、或いはそれらの上に金属或いは金属酸化物を積層したものが用いられる。そして、その上にリソグラフィーによりパターニングしたシリコン、石英、金属またはそれらの酸化物により凸状パターン1aを形成する。この凸状パターン1aの形成する段差は0.1から5μm 程度が望ましい。
【0050】
次に、図1(b)に示したように、版1の凸状パターン1aのある表面に樹脂2をコーティングした後、その樹脂2を剥がすことにより、図1(c)に示すように樹脂製判子3を作製する。判子3となる樹脂としては、ポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)を用いるのが好ましく、このPDMS樹脂をスピンコートし、加熱処理して型を取ることで判子3を作製する。
【0051】
次いで、図1(d)に示すように、疎水性分子を分散させてなる分子インク4を判子3に付着させ、その判子3を用いて、図1(e)に示すように、ガラス板等の表面に金をコートしてなる基板5の上に疎水性分子からなる微細パターン6を形成する。
【0052】
疎水性分子インクとしては、末端にSH基を有する分子、シランカップリング剤またはカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、燐酸あるいはこれらの酸塩化物の何れかを分散させたインクを用いることができる。ここで基として金を表面にコートした基板を用いると、インク中に含まれる自己組織化作用により解像度が向上する。
【0053】
判子3に対する分子インク4の付着法としては、図3に示すように2種類の方法がある。図3(a)に示す方法は、判子3の上にインクを載せて全面にインク4を付けるウエットインキング法であり、図3(b)に示す方法は、インクを化学修飾させたフラットなPDMS樹脂8を判子3に押し付けて判子3の先だけインク4を付けるコンタクトインキング法である。ウエットインキング法よりもコンタクトインキング法のほうがインクの拡散を低減できるので解像力に関して優れている。
【0054】
次に図2(a)に示すように、基板5上に微細パターン6を形成したものを水9中に浸漬する。微細パターン6を構成する疎水性分子同士が疎水結合して疎水性分子同士が集合せしめられ、それによって欠陥部分の少ない微細パターンが形成される。
【0055】
次いで前記疎水結合処理をした微細パターン6を形成した基板5の微細パターンで被覆されていない基板面に水中にHS(CH2)Y −COOHを分散させた溶液又はKOHを含む水溶液中にHS(CH2)Y −COOHを分散させた溶液を使用して前記基板面に化学修飾を施す。これによって疎水性の微細パターン形成領域の疎水性を損なうことなくその周囲に親水性領域を形成し、パターンの周囲に対しコントラストの高い微細パターンを形成することができる。
【0056】
図4は疎水結合を利用した本発明の微細パターン複製物の作製方法の効果を説明する図である。図4(a)は形成した微細パターン6を水中に浸漬して微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて集合させた状態を模式的に示す。これから分かるように疎水結合処理によって微細パターン6の領域は集合した疎水性分子で被覆され、欠陥の少ない微細パターン6′が形成される。即ち、金属下地表面を露出させていない微細パターンの膜が形成される。
【0057】
次いで微細パターン6′の周囲の基板面に水中にHS(CH2)Y −COOHを分散させた溶液又はKOHを含む水溶液中にHS(CH2)Y −COOHを分散させた溶液に浸漬することによる化学修飾を施すと図4(b)に示すように微細パターンの疎水性を損なうことなく微細パターン6′の周囲に親水性分子の領域を形成し、周囲の領域に対して高いコントラストを有する微細パターン6′が形成される。
【0058】
更に上記の発明において、微細パターンの周囲の基板面に親水性分子の化学修飾を行った後、疎水性インキアルコール溶液中で微細パターン上に疎水性分子さらに高密度に化学修飾するか、再度疎水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に疎水性分子を転写してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0059】
上記のようにして形成された微細パターン複製物の微細パターンは、化学修飾されたAFM(原子間力顕微鏡)チップ(金コートしたAFMチップの表面に1mKの1−エイコサンチオールで化学修飾したもの)を用いて化学力顕微鏡により観察することができる。
【0060】
次に図5を用いて請求項3に記載の発明に係る微細パターン複製物の作製方法について説明する。先ず、図5(a)に示すように、表面に所望の段差のある凸状パターン1aを有する版1を作製する。版1の材料としては、シリコン、石英、或いはそれらの上に金属或いは金属酸化物を積層したものが用いられる。そして、その上にリソグラフィーによりパターニングしたシリコン、石英、金属またはそれらの酸化物により凸状パターン1aを形成する。この凸状パターン1aの形成する段差は0.1〜5μm 程度が望ましい。
【0061】
次に、図5(b)に示すように、樹脂2を凸状パターン1aのある版1の表面にコーティングした後、その樹脂2を剥がすことにより、図5(c)に示すように樹脂製判子3を作製する。判子3となる樹脂としては、ポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)を用いるのが好ましく、このPDMS樹脂をスピンコートし、加熱処理して型を取ることで判子3を作製する。
【0062】
次いで、図5(d)に示すように、親水性分子を分散させてなる分子インク14を判子3に付着させ、その判子3を用いて、図5(e)に示すように、ガラス板等の表面に金をコートしてなる基板5の上に親水性分子からなる微細パターン16を形成する。
【0063】
親水性分子インクとしては、基板結合基と反対側に燐酸基を有する分子、ホスホン酸基を有する分子、カルボン酸基を有する分子、アミノ基を有する分子、水酸基を有する分子の何れかを分散させたインクの何れかを分散させたインクを用いることができる。ここで基板としてシリコン酸化物又は金属酸化物を表面にコートした基板を用いると、自己組織化作用により解像度が向上する。
【0064】
判子3に対する分子インク14の付着法としては、先に図3により説明したようにウエットインキング法とコンタクトインキング法がある。ウエットインキング法によりコンタクトインキング法のほうがインクの拡散を低減できるので解像力に関して優れている。
【0065】
次に図6(a)に示すように、基板5上に微細パターン16を形成したものを有機溶液17中に浸漬する。有機溶液17内では微細パターン16を構成する親水性分子には有機溶液は混合しにくく親水性分子同士が水素結合により凝集しているため、微細パターン16の周囲の基板面に疎水性分子を含む溶液で化学修飾を施す過程で疎水性分子が微細パターン中に付着する確率は低い。これによって図6(b)に示すように、親水性の微細パターン形成領域の親水性を損なうことなくその周囲に疎水性分子で化学修飾された領域を形成し、パターンの周囲に対してコントラストの高い微細パターンを形成することができる。
【0066】
上記の発明において、微細パターンの周囲の基板面に有機溶剤中で疎水性分子インクの化学修飾を行った後、親水性分子インキのアルコール溶液中で微細パターン上に親水性分子をさらに高密度に化学修飾するか、再度親水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に親水性分子を転写してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0067】
上記のようにして形成された微細パターン複製物の微細パターンは、化学修飾されたAFM(原子間力顕微鏡)チップ(金コートしたAFMチップの表面に1mMの1−エイコサンチオールで化学修飾したもの)を用いて化学力顕微鏡により観察することができる。
【0068】
上記の発明においては、表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に疎水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子を分散させてなる親水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを水中に浸漬し、微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて疎水性分子同士を集合せしめてから、水中で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクで化学修飾を施している。その場合において、微細パターンの周囲の基板面に水中で親水性分子インクによる化学修飾を施した後、アルコール溶液中で微細パターン上に疎水性分子インクによりさらに高密度に化学修飾するか、再度親水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に親水性分子を転写してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0069】
このようにする代わりに表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に親水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを有機溶液中に浸漬し、微細パターンを構成する親水性分子同士を水素結合させて親水性分子同士を集合せしめてから、有機溶液中で微細パターンの周囲の基板面に前記疎水性分子インクによる化学修飾を施すことによっても微細パターン複製物を作製することができる。その場合において、微細パターンの周囲の基板面に有機溶液中で疎水性分子インクによる化学修飾を施した後アルコール溶液中で微細パターン上に親水性分子インクによりさらに高密度に化学修飾するか、再度親水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に親水性分子を転写してもよい。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復される。
【0070】
疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクとして上記しもの以外に段落0015に記載の疎水性分子インクを使用することができる。
【0071】
また、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクとして上記したもの以外に段落0024に記載の親水性インクを使用することができる。
【0072】
(実施例1)
先ず、石英板の表面にスパッタリングでクロムの薄膜を形成し、その石英板に被着したクロム薄膜の上に厚さ4000Åのレジストパターンを形成し、表面に段差のある版を作製した。そしてこの版のレジストパターンを設けた面にPDMS樹脂をスピンコートし、65℃で4時間加熱処理を行った後、硬化したPDMS樹脂から版を引き剥がして判子を作った。次いでその判子にCH3(CH2)19SHのエタノール溶液からなるインクをコンタクトインキング法で付着させた。
【0073】
一方、ガラス板に蒸着により金の蒸着層を形成してなる基板を準備し、この基板の表面層に分子インクの付着した判子を押し当てることにより分子インクを基板上に移行させることで微細パターンを形成した。
【0074】
次に、微小パターンを有する基板を水中に浸漬しCH3(CH2)19SHを疎水結合させ凝集させた。そしてこの状態で微細パターンの周囲の基板面にHOOC(CH2)10SHの水溶液を用いて化学修飾を施し、微細パターンとその周囲の基板面のコントラストの高い複製物を作製した。
【0075】
(実施例2)
実施例1によって複製物を作製した後に、再度疎水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に疎水性分子の化学修飾を施した。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復され、更にコントラストの高い複製物を得ることができた。
【0076】
(実施例3)
実施例2によって、微細パターンの周囲の基板面に水中で親水性分子の化学修飾後、再度アルコール溶液中で微細パターン上に疎水性分子をさらに高密度に化学修飾した。この過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復され、更にコントラストの高い複製物を得ることができた。
【0077】
(実施例4)
実施例1と同様にして但し基材として表面にシリコン酸化物を被着した基板を用い、又、分子インクとしてOH(CH2)10COOHのエタノール溶液を用いて基板上に親水性分子からなる微細パターンを形成した。
【0078】
次に、微細パターンを有する基板をCH3(CH2)10COOHのベンゼン溶液中に浸漬し、その状態で微小パターンの周囲の基板面にCH3(CH2)19COOHの化学修飾を施し、微細パターンとその周囲の基板面領域のコントラストの高い複製物を作製した。
【0079】
(実施例5)
実施例3によって複製作製後に、再度親水性インキを付着させた判子を用いて微細パターン上に親水性分子の化学修飾を施した。この第二の過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復され、更にコントラストの高い複製物を得ることができた。
【0080】
(実施例6)
実施例4によって、微細パターンの周囲の基板面に水中で親水性分子の化学修飾後、再度アルコール溶液中で微細パターン上に親水性分子をさらに高密度に化学修飾した。この過程で微細パターンの欠陥部分が完全に修復され、更にコントラストの高い複製物を得ることができた。
【符号の説明】
【0081】
1 版
1a 凸状パターン
2 樹脂
3 判子
4 分子インク
5 基板
6 微細パター
6′ 微細パター

8 PDMS樹脂
9 水
14 分子インク
16 微細パターン
17 有機溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に疎水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子を分散させてなる親水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを水中に浸漬し、微細パターンを構成する疎水性分子同士を疎水結合させて疎水性分子同士を集合せしめてから、水中で微細パターンの周囲の基板面に前記親水性分子インクによる化学修飾を施すことを特徴とする微細パターン複製物の作製方法。
【請求項2】
微細パターンの周囲の基板面に水中で親水性分子インクによる化学修飾を施したアルコール溶液中で微細パターン上に疎水性分子インクをさらに高密度に化学修飾することを特徴とする請求項1に記載の微細パターン複製物の作製方法。
【請求項3】
表面に凸状パターンを有する版に樹脂をコーティングし、その樹脂を前記版から剥離することにより前記樹脂からなる判子を作製し、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクを前記判子に付着させ、その分子インクの付着した判子を用いて基板上に親水性分子の層からなる微細パターンを形成し、前記微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクに浸漬することにより化学修飾を施す微細パターン複製物の作製方法において、前記微細パターンの形成後に、基板上に微細パターンを形成したものを有機溶液中に浸漬し、微細パターンを構成する親水性分子同士を水素結合させて親水性分子同士を集合せしめてから、有機溶液中で微細パターンの周囲の基板面に前記疎水性分子インクによる化学修飾を施すことを特徴とする微細パターン複製物の作製方法。
【請求項4】
微細パターンの周囲の基板面に有機溶液中で疎水性分子インクによる化学修飾を施した後アルコール溶液中で微細パターン上に親水性分子インクによりさらに高密度に化学修飾することを特徴とする請求項3に記載の微細パターン複製物の作成方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法により作製される微細パターン複製物であって、疎水性分子を分散させてなる疎水性分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる疎水性分子の層からなる微細パターンを備え、前記微細パターンの周囲の基板面に親水性分子の層を備えており、微細パターンの疎水性分子が水中で疎水結合により凝集した状態になっていることを特徴とする微細パターン複製物。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の方法により作製される微細パターン複製物であって、親水性分子を分散させてなる親水性分子インクを用いて基板上にパターニングしてなる親水性分子の層からなる微細パターンを備え、前記微細パターンの周囲の基板面に疎水性分子の層を備えており、微細パターンの親水性分子が有機溶液中で水素結合により凝集した状態になっていることを特徴とする微細パターン複製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84068(P2011−84068A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249403(P2010−249403)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2001−116468(P2001−116468)の分割
【原出願日】平成13年4月16日(2001.4.16)
【出願人】(000224606)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】