微細形状転写シートの製造方法
【課題】金型の加熱と冷却の1サイクルを短時間で行い、同時に金型表面の温度を均一化することができる、微細パターンが表面に賦形されたシートの製造方法と製造装置を提供すること。
【解決手段】微細形状パターンを備えかつ加熱された金型をシート材料に加圧しながら押しつけることにより該シート材料表面に微細形状パターンを転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法および製造装置において、金型を加熱および冷却する際、加熱用熱媒および冷却用冷媒を金型外部で循環してから、熱冷媒供給口を介して金型内部へ供給し、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる、微細形状転写シートの製造方法および製造装置。
【解決手段】微細形状パターンを備えかつ加熱された金型をシート材料に加圧しながら押しつけることにより該シート材料表面に微細形状パターンを転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法および製造装置において、金型を加熱および冷却する際、加熱用熱媒および冷却用冷媒を金型外部で循環してから、熱冷媒供給口を介して金型内部へ供給し、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる、微細形状転写シートの製造方法および製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンを有する金型を加熱、冷却しながら、金型をシート材料の表面に押し付けて、シート表面に微細パターンを賦形する微細形状転写シートの製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材料の表面への微細形状の賦形は、光学系電子機器等の発達によりその需要は増加すると共に、大判化、薄膜化、低コスト化、高精度化等の様々な要求がなされ、それらに対応するための多くの技術が開発されてきた。
【0003】
これらの要求に対して、熱インプリント技術を適用して、フィルムの表面に間欠的に微細凹凸パターンを形成する装置及び方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。これらの装置および方法では、熱可塑性樹脂からなるフィルムを、その構成材料のガラス転移点以上まで加熱した状態で、微細凹凸パターン付き金型にプレス転写し、その後、プレスを継続した状態でフィルムをガラス転移点以下まで冷却し、冷却完了後、プレス圧力を開放するとともに、フィルムに一定の張力を付加するだけで金型より離型するものである。このプロセスでは、フィルムあるいは金型の昇降温に長時間要するため、生産性低下、コスト増の要因になっていた。
【0004】
そこで、金型あるいはフィルムの高速昇降温技術として、金型内部に熱媒と冷媒を切り替えて流すことにより、加熱と冷却を短時間で繰り返すことが有効であり、種々の装置、方法が提案されている。(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
【0005】
特許文献3は冷却用の冷媒の循環路にベンチュリー機構を有する弁を備え、金型から流出してくる加熱用の熱媒を流し込み、当該弁のベンチュリー機構の吸い上げ作用を利用して加熱用の熱媒の排出を行うことを提案している。これにより加熱用の熱媒は循環路へ円滑に排出することができ、加熱工程時に金型の所定温度への昇温時間を短縮することができるとしている。しかしながら、この方法では金型を加熱させる際、蒸気を金型へ流し込むため、急激な圧力変動による熱媒の振動が発生し、熱媒である蒸気の流量がばらつき金型温度の不均一が問題となり、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0006】
また特許文献4は、金型の加熱用熱媒と冷却用冷媒をそれぞれ貯留するためのバッファ装置を有すること、当該バッファ装置に貯留される媒体量が金型内を流通する媒体量とほぼ同じ量であることを提案している。これにより、熱媒と冷媒が混合することなく、効率よく短時間で熱媒と冷媒の切り替えが可能となる。しかしながら、この装置では金型内の流体流通路が互いに平行に形成されているが、金型内の各流体流通路に同時に媒体を流すための機構を有していない。そのため、金型内に残留している媒体を押し出しながら媒体を切り替えることから、媒体の流入口に近い流体流通路と流入口から離れた流体流通路では温度差が生じ、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0007】
さらに特許文献5では、金型を加熱および冷却するための、加熱ユニットおよび冷却ユニットに、それぞれ加熱媒体タンクおよび冷却媒体タンクを有することで、それぞれの媒体の循環回路が独立している方式を提案している。そのため、金型の加熱と冷却を切り替える際、加熱媒体と冷却媒体が混ざることはなく、媒体を再加熱または再冷却する必要が少ないため、熱媒と冷媒の切り替えを短時間で行うことができる。しかしながら、特許文献4と同様に金型内の各媒体流路に同時に媒体を流すための機構を有しておらず、金型における媒体通路の入口に近い媒体流路と、媒体通路の入口から遠い媒体流路では温度差が生じ、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0008】
また、特許文献6は、金型温度調整用媒体のためのマニホールドと、そのマニホールドから複数の媒体流路を金型内に設けることで平面状金型の表面温度の調整方法を提案している。金型内の熱媒流路を規則的に複数設けることで、金型内を流れる熱媒および冷媒の単位時間あたりの流量を多くすることができ、金型表面全面を均一かつ短時間で温度調整することができる。しかしながら、本システムでは、冷却工程から加熱工程に移行する際、つまり冷却水から蒸気に切り替える際、圧縮空気供給装置から圧縮空気をマニホールドと媒体流路に供給し、金型内の媒体流路内の冷却水を排出する工程を必要としている。これは、1サイクルの時間をできるだけ短くし生産効率の向上を考えた場合、金型の冷却工程から加熱工程の間に金型内の冷却水除去の工程が追加され、1サイクルの時間を短くするには障害となる。また蒸気および冷却媒体は、導入側マニホールド部から供給され金型内の直線状の通路内を通り排出側マニホールドへ導かれる。この場合、導入側マニホールドの媒体供給位置付近から搬出側マニホールドの媒体排出口にかけて、金型表面に温度勾配が生じるため短時間で金型表面の温度を均一にすることは困難となる。
【0009】
さらには熱媒に蒸気を使用し、冷媒には冷却水を使用し、加熱時と冷却時に異なる媒体を使用しているため、それぞれの媒体の温度調整装置が必要なだけでなく、蒸気を生成するためにはボイラが必要であり、消費エネルギーも大きくメンテナンス時の負担も大きい。
【0010】
また蒸気は金型内部の媒体を冷却水から蒸気に切り替える際、その冷却水に含まれる酸素に起因して金型内部が腐食しやすくなるという問題も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−199455号公報
【特許文献2】特開2005−310286号公報
【特許文献3】特開2004−155099号公報
【特許文献4】特開2008−23841号公報
【特許文献5】特開2005−22186号公報
【特許文献6】特開2007−83402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は上述したような点を鑑み、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートを製造する方法及び装置において、金型の加熱と冷却に同一の媒体を用い、加熱から冷却と冷却から加熱の1サイクルを短時間で行うことが可能であり、同時に金型表面の温度を均一化することができる、微細パターンが表面に賦形されたシートの製造方法と製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明の微細形状転写シートの製造方法は以下の構成を有する。
【発明の効果】
【0014】
(i)前記(1)および(4)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法によれば、金型を加熱および冷却する際、加熱用熱媒および冷却用冷媒はマニホールドを含む金型外部で循環してから、金型側面の熱冷媒供給口を介して金型内部へ供給されるため、金型表面全面で均一な温度分布を得ることができ、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる。
【0015】
(ii)特に、前記(2)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法によれば、加熱用熱媒および冷却用冷媒はマニホールドを含む金型外部で循環する際、前記金型の熱冷媒供給口近くに設置した前記マニホールを介すことで、前記マニホールド端部に設けた循環口を閉じると前記金型の全ての熱冷媒供給口に同時かつ均一に熱冷媒が供給されるため、より短時間の加熱冷却で均一な温度分布が得られる。
【0016】
(iii)前記(3)および(5)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法および製造装置によれば、前記金型内の熱冷媒流れが逆向きに流れることで、熱冷媒流れ方向の前記金型表面の温度勾配を緩和することができるため、より均一な温度分布を得ることができる。
(iv)前記(6)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記供給マニホールドから前記排気マニホールまでの熱冷媒流路長さをそれぞれ等しくすることで、熱冷媒流れの流速が均一になり、金型表面全面で均一な温度分布を得られることから、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる。
【0017】
(v)特に、前記(7)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記熱冷媒流路が金型平面中心に対して点対称に配置されることにより、金型内の流路間の流速ばらつきをより小さくでき、金型表面でより均一な温度分布を得ることができる。
【0018】
(vi)前記(8)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記供給マニホールドの供給分岐口の出口に熱冷媒流量調整用ジグを設置することにより、前記金型内の各熱冷媒流路内を流れる熱冷媒流量を更に精度良く調整できるため、さらに均一な温度分布性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】微細形状転写シートの製造装置の概略断面図である。
【図2】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、金型の温度調整をするための熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図3】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図4】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図5】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図6】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図7】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、本発明の別の形態の金型の温度調整をするための熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図8】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図9】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図10】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図11】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図12】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、熱冷媒流量調整ジグを適用した熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図13】微細形状転写シートの製造装置に用いることのできる金型の平面図である。
【図14】微細形状転写シートの製造装置に用いることのできる金型の側面図である。
【図15】比較例1の説明図である。
【図16】比較例2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面などを参照しながら、更に詳しく本発明の微細形状転写シートの製造方法と製造装置について説明する。
【0021】
本発明の微細形状転写シートの製造装置は、シート状の樹脂基材および微細形状を備えた金型を加熱し、両者を接触、加圧させることによって前記樹脂基材表面に前記微細形状を賦形する微細形状転写シートの製造装置であって、1)表面に転写形状を備え、熱媒および冷媒の流路が内部に複数かつ平行に配された金型と、2)熱媒および冷媒が供給される導入口と、前記金型へ熱媒および冷媒を供給する複数の供給分岐口と、熱媒および冷媒を金型へ供給せず循環する際、熱媒および冷媒を排出する循環口を備えた、供給マニホールドと、3)熱媒および冷媒を排出する排出口を備え、前記金型からの熱媒および冷媒が流入する複数の流入分岐口を備えた、排出マニホールドと、4)熱媒および冷媒をそれぞれ温度制御しながら循環する温調機ユニットと、5)前記金型と前記供給マニホールドと前記排出マニホールドと前記温調機ユニットを、熱媒および冷媒の流路となる配管で接続された配管ユニットと、6)前記配管ユニット内の熱媒および冷媒の流れ方向を切り替え、前記熱媒循環工程と、前記熱媒供給工程と、前記冷媒工程と、前記冷媒循環工程を可能にするバルブユニットと、7)前記バルブユニットの切り替えを制御する制御装置と、からなる熱冷媒循環回路を有することを特徴とする、微細形状転写シートの製造装置である。
【0022】
図1は本発明の微細形状転写シートの製造装置の1実施態様例をシート材料の幅方向から見た概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の微細形状転写シートの製造装置1は、制御装置9と、プレスユニット10と、離型ユニット20と、金型温調ユニット30と、巻出ユニット50、巻取ユニット60から構成される。巻出ユニット50でロール状に巻き取られたフィルム2が、巻き出されて、プレスユニット10で金型3の微細凹凸形状が加工された表面3aに押しつけられて、フィルムの成形面2aに微細凹凸などの微細形状が転写成形され、巻取ユニット60によりロール状に巻き取られる。巻出ユニット50と巻取ユニット60は、シート材料たるフィルムの搬送装置であり、連続状のシート状物を加工するのでなく、枚葉状のシートなど1枚ずつ加工する場合には用いなくてもよい。搬送系は、巻出ユニット50、巻出ロール回転手段51、ガイドロール52a〜d、引出バッファ部53、フィルム固定部54、ボックス55、吸引排気手段56、センサー57a、b、巻取ユニット60、巻取ロール回転手段61、ガイドロール62a〜d、巻取バッファ部63、搬送駆動ロール64、フィルム固定部65、ボックス66、吸引排気手段67、センサー68a、bからなる。
【0024】
次に本発明の特徴である、熱冷媒循環回路について説明する。
【0025】
図2は、熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図であり、図3〜6は各熱冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【0026】
図2に示すように、本発明の微細形状転写シートの製造装置は、
金型3と、
金型3と熱冷媒流路5とが接続され、熱冷媒が供給される導入口6a1と、金型3へ熱冷媒を供給する複数の供給分岐口6a2と、熱冷媒を金型3へ供給せず循環する際、熱冷媒を排出する循環口6a3を有する供給マニホールド6aと、
金型3と熱冷媒流路5と接続され、熱冷媒を排出する排出口6b1と、金型3から熱冷媒が流入する複数の流入分岐口6b2を有する排出マニホールド6bと、
熱媒の温度を一定にするための加熱用温調機31と、
冷媒の温度を一定にするための冷却用温調機32と、
各構成部品間の熱媒流路を接続するための配管類と、
熱媒流路を変更するため配管の途中に設置されたバルブユニット(7a〜7d、8a〜8d)から構成される。
【0027】
バルブユニットは以下のバルブで構成される。
バルブ7aは、加熱用熱媒が加熱用温調機31のみで循環することを制御するバルブであり、
バルブ7bは、加熱用温調機31から供給マニホールド6aへ熱媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ7cは、排出マニホールド6bから加熱用温調機31へ熱媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ7dは、加熱用温調機31と供給マニホールド6a間で熱媒の循環を制御するバルブであり、
バルブ8aは、冷却用冷媒が冷却用温調機32のみで循環することを制御するバルブであり、
バルブ8bは、冷却用温調機32から供給マニホールド6aへ冷媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ8cは、排出マニホールド6bから冷却用温調機32へ冷媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ8dは、冷却用温調機32と供給マニホールド6a間で冷媒の循環を制御するバルブである。
【0028】
本発明に用いられる熱冷媒循環回路の各工程における動作について説明する。
図3は、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。熱媒循環工程とは、金型3を加熱する前に、加熱用熱媒を金型外部で循環させる工程であり、さらに好ましくは、金型内熱冷媒流路5に冷媒が残存している間に、熱媒が供給マニホールド6aから供給分岐口6a2へ排出されずに、供給マニホールド6a端部に設けた循環口6a3から排出することによって循環するものである。ここで、バルブ7cは閉、バルブ7dが開であるため、供給マニホールド6a内の熱媒は金型3へは供給されず、循環口6a3を介して加熱用温調機31へ供給され循環する。この時、冷媒はバルブ8aを開にして冷媒用温調機32のみで循環する。
【0029】
図4は、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。熱媒供給工程とは、熱媒循環工程で循環していた加熱用熱媒を、金型3に設けた複数の熱冷媒流路5に同時に供給して金型3を加熱する工程であり、さらに好ましくは、熱媒の流路を循環口6a3から、熱冷媒供給口へ変更することによって始まるものである。ここで、バルブ7cは開、バルブ7dは閉であるため、供給マニホールド6a内の熱媒は、循環口6a3へは供給されず、供給分岐口6a2を介して金型内熱冷媒流路5へ供給され金型3を加熱後、排出マニホールド6bを介して加熱用温調機31へ循環する。上述した熱媒循環工程を実施したことにより、熱媒供給工程直前の供給マニホールド6a内に残存していた冷媒が熱媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、熱媒供給工程が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、冷媒が混じることなく、均等に加熱温調された熱媒のみ供給される。その結果、金型3の表面を全面で均一に素早く昇温させることが可能となる。
【0030】
図5は、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。冷媒循環工程とは、金型3を冷却する前に、冷却用冷媒を金型外部で循環させる冷媒循環工程であり、さらに好ましくは、金型内熱冷媒流路5に熱媒が残存している間に、冷媒が供給マニホールド6aから供給分岐口6a2へ排出されずに、供給マニホールド6a端部に設けた循環口6a3から排出することによって循環するものである。ここで、バルブ8cは閉、バルブ8dが開であるため、供給マニホールド6a内の冷媒は金型3へは供給されず、循環口6a3を介して冷却用温調機32へ供給され循環する。この時、熱媒はバルブ7aを開にして熱媒用温調機31のみで循環する。
図6は、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。冷媒供給工程とは、循環していた冷却用冷媒を、金型3に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して金型3を冷却する工程であり、さらに好ましくは、冷媒の流路を循環口6a3から、供給分岐口6a2へ変更することによって始まるものである。ここで、バルブ8cは開、バルブ8dは閉であるため、供給マニホールド6a内の冷媒は、循環口6a3へは供給されず、供給分岐口6a2を介して金型内熱冷媒流路5へ供給され金型3を冷却後、排出マニホールド6bを介して冷却用温調機32へ循環する。上述した冷却循環工程を実施することにより、冷却供給工程直前の供給マニホールド6a内に残存していた熱媒が冷媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、冷媒供給工程が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、熱媒が混じることなく、均等に冷却温調された冷媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く降温させることが可能となる。
【0031】
次に、より好ましい熱冷媒循環回路の形態について図面を用いて説明する。
【0032】
図7は、熱冷媒循環回路の別の実施形態を、金型平面の上方から見た概略図であり、図8〜11は図7に示した熱冷媒循環回路を適用して熱冷媒の流す場合の各バルブの開閉を示した説明図である。
【0033】
図7に示す熱冷媒循環回路では供給マニホールド6aは金型3を挟んで対向に設けられ、排出マニホールド6bは金型3を挟んで対向に設けられている。このような回路を構成することにより、金型両側から熱冷媒を供給できることから、流路あたり1本の長さが短くできるため、熱冷媒流量を増やすことが可能となり、加熱冷却の高速化が図れる。また、金型の両端から熱冷媒が出入りするため、流路方向での温度差を小さくでき、金型表面の温度均一化に有利であり好ましい。
【0034】
また、供給マニホールド6aの導入口6a1から金型内熱冷媒流路5を介して排出マニホールド6bの排出口6b1までの熱冷媒流路長さがそれぞれ等しくなるように接続されている。熱冷媒流路長さが各流路で等しいため、流路間の流量差が少なくなり、金型表面温度均一化に有利でより好ましい。
【0035】
また、図12に示すように、供給マニホールド6aの供給分岐口6a2の出口に熱冷媒流量調整用ジグ7eが設置されていることにより、各金型内熱冷媒流路5に均一な量の熱冷媒を供給することができることから、金型表面温度均一化に有利でより好ましい。流量調整ジグの設置場所は、各金型内熱冷媒流路5の熱冷媒の流量を均一にできるのならば、図12の場所に限定されるものではない。
【0036】
本発明に用いられる金型3について説明する。金型の転写面は、微細な立体形状パターンを有するものであり、金型に該パターンを形成する方法としては、機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィ、電子線描画方法等がある。ここで、金型に形成される「微細凹凸形状」とは、高さ10nm〜1mm、周期10nm〜1mmで周期的に繰り返された凸形状が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。凸形状の高さはより好ましくは1μm〜100μmであり、周期はより好ましくは1μm〜100μmである。また、凸形状の例としては、三角錐、円錐、四角柱、レンズ形状等に代表される任意の形状の突起物が離散状、ドット状で配されたものや、断面が三角、四角、台形、半円、楕円等に代表される任意の形状の突起物がストライプ状に配されたもの等がある。金型の材質としては、所望のプレス時の強度、パターン加工精度、フィルムの離型性が得られるものであればよく、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等を含んだ金属材料、シリコーン、ガラス、セラミックス、樹脂、もしくは、これらの表面に離型性を向上させるための有機膜を被覆させたものが好ましく用いられる。該金型の微細なパターンは、フィルム表面に付与したい微細な凹凸パターンに対応して形成されているものである。
【0037】
本発明に用いられる該金型3の内部には、該金型の賦形面を昇温する昇温手段を有することが好ましい。ここで、昇温手段とは、単なる保温(温度維持、または温度低下の抑制)のための加熱手段ではなく、現実に金型の温度の上昇を伴う手段である。また、本発明でいう金型とは、少なくとも転写面を有していて、該転写面を含んで一体的に形成されているものをいう。
【0038】
金型3は、図13の平面図、図14の側面図を示したように、転写成形領域4を有しており、内部に熱冷媒流路5が設けられている。6aは供給マニホールド、6bは排出マニホールドであり、Pは熱冷媒流路5を設けている流路ピッチ、Tは金型の厚み、Sは熱冷媒流路と金型表面までの距離(最短部)、Dは熱冷媒流路の径を示したものであり、昇温効果を確実に得て、本発明の効果をより効果的に得る上で、これら値には好適な範囲がある。本発明者らの各種知見によれば、P/Sの好適範囲は1〜4であり、1未満では表面の昇温速度が遅いことから効果的でなく、また4よりも大きいときには金型表面での温度ムラが発生することがあり望ましくない。また、金型の厚みTは20mm〜50mmの範囲が好ましく、20mm未満では金型の平面度が悪くなる場合があり、被加工シート状物の寸法等によっては好ましくない。50mmよりも大きい場合には一般に昇温に時間がかかりすぎるようになり好ましくない。流路の径Dは、4mm〜8mmの範囲が好ましく、4mm未満では流路の加工が難しくなることや圧損が大きくなる場合があり好ましくない。8mmよりも大きい場合には、熱媒〜熱媒流路壁面の境膜伝熱係数が低下する方向であり、それに対応して昇温に要する時間が大きくなることになるので好ましくない。
【0039】
供給マニホールド6a、排出マニホールド6bの内部の流路径D1は金型内の流路径D2の3倍以上有することが好ましい。各流路間での流速のばらつきが小さくなり全面で均一な温度で加熱、冷却が可能となる。
【0040】
また、上述した転写成形領域4は、成形領域の温度分布の均一化を実現するために、端部に位置する熱冷媒流路よりも内側に該成形領域を設けることが好ましい。また、各熱冷媒流路における熱冷媒の流れ方向を、特に昇温中における温度ムラを小さくすることができることから、隣り合う流路で熱冷媒を逆向きに流すことも好ましい。ここで、「隣り合う流路」とは、1本1本で隣り合うことの他、2本ずつで隣り合うなどの複数本での隣り合い状態のものも含むものである。
【0041】
なお、熱媒・冷媒とも同じ媒体が良く、特に、以下の理由により加熱、冷却ともに液体状の水を適用するのが好ましい。媒体循環による温調方法で、より速く加熱または冷却するためには、媒体流路の壁面付近の境界層の伝熱係数(境膜伝熱係数)を向上させることが有効である。境膜伝熱係数の向上化は媒体の高流速化、低粘度化により達成され、媒体種としては水が最も適している。通常、高温の媒体加熱制御では油を用いた方式が一般的であるが、水は、高温時、特に100℃以上で加圧状態を保持すれば液体状態を保ち、油と比較すると粘度が圧倒的に低い。また、そのために低い圧力損失で高流速を実現できる。180℃以下の温度域であれば、媒体として油を用いるよりも水を乱流状態になるまで高流速で流す方がより高速かつ簡便なシステムでの温調が可能である。
そのような構成にすると、金型の冷却をより速く正確に行うことができる。熱媒と冷媒を切り替える際に金型内に残留している媒体を圧縮空気などで追い出す必要がないため1サイクルの時間短縮化につながる。特に、熱媒としては、100℃以上に加熱された水を使用することが好ましい。冷媒としては、シートのガラス転移点温度以下に温調された水を使用することが好ましい。更に、効率良く伝熱できるように、流路内部のレイノズル数が1.0×104〜50×104 の範囲になることが好ましい。
【0042】
また、金型非加熱中でも熱冷媒は金型部以外で循環温調される構成が適用されるが、金型加熱中、非加熱中ともに熱媒が流れる流路(以下、熱媒循環共通流路)の内容積は金型の賦形面積に対して十分に確保することが好ましい。ここで、十分に確保するとは、1回の金型加熱過程で必要な熱媒体積以上の容積を確保することを言う。金型加熱過程で熱媒が金型内を通過後、十分に再加熱されずに金型内に再導入されると、熱媒の初期温度が低いために途中から加熱速度が鈍化し、金型昇温時間が長くなる。熱媒循環共通流路の内容積を十分に確保すれば、熱媒の初期温度の低下による加熱速度鈍化を防止できる。なお、市販の金型温調機はせいぜいヒータータンク容量が10L程度で、ヒーター容量が20kW程度であるので、1辺が300mm以上の大きい賦形面積を持つ場合には、別途ヒーターを内装したバッファタンクを熱媒循環共通流路の途中に設けることが好ましい。
【0043】
金型冷却中、金型非冷却中ともに冷媒が流れる流路(以下、冷媒循環共通流路)の内部容積についても上記と同様のことが言え、冷却速度鈍化の防止のために冷媒循環共通流路の途中でバッファタンク等の内容積増量手段を設けることが好ましい。
【0044】
本発明の微細形状転写シートの製造装置に関して、熱冷媒循環回路以外の構成の例を図1を用いて説明する。下記の説明する機器の構成は一例であって、基材をプレス装置内に搬入、搬出できるものであれば、下記の構成に限られるものではない。
【0045】
プレスユニット10は、加圧プレート(上)14aが支柱11と昇降ガイド13をガイドにして昇降移動できるように、プレスシリンダー12に連結されている。支柱11はフレーム(上)16aとフレーム(下)16bに挟まれるように配設されている。加圧プレート(上)14aの下面には、フィルムにある程度の厚みムラがあっても、全面でムラなくパターンの転写成形ができるように、クッションシート17が配設されている。例えば、厚みが0.3mm〜1.0mmのエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等を好ましく用いることができる。
【0046】
一方、加圧プレート(下)14bの上面には金型3が取り付けられている。18は断熱材である。
【0047】
なお、金型3は加圧プレート(上)14aの下面に取り付けられてもよい。その場合は、クッションシート17は加圧プレート(下)14bの上面に配設される。
【0048】
なお、各プレートのフィルム押圧面側の平面度は10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下である。
【0049】
プレスシリンダーは、図示していない油圧ポンプとオイルタンクに接続されており、油圧ポンプにより加圧プレート(上)14aの昇降動作および、加圧力の制御を行う。また、本実施形態では油圧方式のプレスシリンダーを適用しているが、加圧力を制御できる機構であれば、サーボプレスなどの高速プレスなど、いかなるものでもよい。
【0050】
圧力範囲は0.1MPa〜20MPaの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、1MPaで〜10MPaの範囲で制御できることが好ましい。
【0051】
プレスシリンダーの昇圧速度は0.01MPa/s〜5MPa/sの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、0.05MPa/s〜0.5MPa/sの範囲で制御できることが好ましい。
【0052】
次に、微細形状を付与したフィルムを金型から剥がし、製品として取り出す離型ユニット20について説明する。
【0053】
図1に示したように、離型ユニットは剥離ロール21と補助ロール22から構成され、剥離ロール21には図示しないが剥離ロール回転手段が接続されて、指定の回転数で回転制御される。剥離ロール回転手段23は、回転数を制御できるものであればよいが、回転量を厳密に制御できるようにサーボモータがより好ましい。また、剥離ロール21が回転しながら、金型3の表面に略平行にスムーズに移動できるように、直動用の案内ガイド等が加圧プレート(下)14bの上面に取り付けられている。
【0054】
一方、補助ロール22は、剥離ロール21の外表面に沿うように旋回できるように、図示しない補助ロール旋回手段が接続されている。該補助ロール旋回手段24は電磁モータ、空圧を利用したアクチュエータ等、補助ロールを剥離ロールの周辺でその外周に沿って昇降移動させうるものであればいかなるものでもよい。そして、補助ロールの両端はロール軸心を中心に自在に回転できるように取り付けられている。
【0055】
次に、実際にフィルムを金型表面から離型し、さらに、次に成形加工に供されるフィルムの供給動作を説明する。
【0056】
離型動作前は、巻き取り側の端位置で、補助ロール22を剥離ロール21のほぼ上方まで旋回移動させる。その後、剥離ロール回転手段により剥離ロールを回転させる。剥離ロールは回転とともに、金型3の表面に沿ってフィルム巻出側へ直進移動し、同時に金型に貼り付いたフィルムを剥離ロールに抱きつかせながら離型していく。金型の全領域でフィルムの離型が完了すると、剥離ロールが回転しないようにブレーキをかけながら、下流側にある搬送駆動ロールを回転させてフィルムを引っ張る。すると、剥離ロールと補助ロールにフィルムが抱きついた状態で、剥離ロールと補助ロールのユニットがフィルム巻き取り側へ直進移動する。
【0057】
剥離ロールが巻き取り側の端位置まで戻ったら、補助ロール旋回手段により、補助ロールを剥離ロールのほぼ下方に旋回移動させて、フィルムを開放する。上記の剥離動作は剥離ロールの回転速度に依存し、剥離速度はロールの周速とほぼ同速度で行える。そのため、厳密に剥離動作を制御することが可能となり、あらゆる成形材料、条件に対してもスムーズな剥離条件を容易に作り出すことができる。
【0058】
上記のフィルム搬送装置たる巻出ユニット50、巻取ユニット60について説明する。巻出ユニット50は巻出ロール回転手段51と、搬送ロール52a〜52dと、引出バッファ部53と、フィルム固定部54から構成される。巻取ユニット60は巻取ロール回転手段61と、搬送ロール62a〜62dと、巻取バッファ部63と、搬送駆動ロール64と、フィルム固定部65から構成される。
【0059】
引出バッファ部53、巻取バッファ部63はそれぞれボックス55、66とこれらに接続された吸引排気手段56、67から構成される。吸引排気手段56、67は真空ポンプ等、エアーを吸引、排気できるものであれば良く、ボックス内のエアーを排気することにより、ボックス内に挿入されたフィルムの表裏面で圧力差を与えることにより、一定の張力を付与するとともにボックス内でフィルムを弛ませて保持する。ボックス内に挿入されるフィルムの長さは、フィルムを成形する前後で間欠的に搬送するフィルム長さ分が適当である。さらに、ボックス55、66内にはセンサー57a、57b、68a、68bが取り付けられている。センサーは所定位置でフィルムを検知できるものであれば良い。上記した離型ユニットによりフィルムが離型、搬送されて、ボックス内でセンサー検知位置からフィルムが外れたときに、上下流の巻出ロール回転手段51、あるいは巻取ロール回転手段61を駆動して、フィルムを巻き出し、あるいは巻き取り、常に、ボックス内で所定位置にフィルムを弛ましておくことができる。
【0060】
また、フィルム固定部54、65は表面に吸引孔が形成された平板であることが好ましいが、さらに、クリップでフィルムを挟む機構のもの、あるいは、これらを組み合わせたものでも良い。
【0061】
フィルム固定部54、65はプレス動作を行うときは両方とも作動させる。そして、フィルムを離型するときはフィルム固定部54を作動させてフィルムを固定し、フィルム固定部65が開放させることが好ましい。また、フィルムを供給するときは、フィルム固定部54、65を両方とも開放することが好ましい。
【0062】
搬送駆動ロール64は図示しないがモータ等の回転駆動手段に連結されて、フィルム搬送時にはニップロール64aが搬送駆動ロール64に近接し、フィルムを挟み、搬送駆動ロール64にてトルク制御を行いながらフィルムを一定張力のもとで搬送する。
【0063】
本装置に適用されるシート状物(フィルム)2は、ガラス転移点温度Tgが、好ましくは40〜180℃のものであり、より好ましくは50〜160℃であり、最も好ましくは50〜120℃である熱可塑性樹脂を主たる成分とするフィルムである。ガラス転移温度Tgがこの範囲を下回ると、成形品の耐熱性が低くなり形状が経時変化するため好ましくない。また、この範囲を上回ると、成形温度を高くせざるを得ないものとなりエネルギー的に非効率であり、またフィルムの加熱/冷却時の体積変動が大きくなりフィルムが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる場合がある等の理由により好ましくない。
【0064】
ここで、ガラス転移点温度Tgとは、JIS K7244に記載の方法に準じた方法により、試料動的振幅速さ(駆動周波数)は1Hz、引張りモード、チャック間距離5mm、昇温速度2℃/min.での温度依存性(温度分散)を策定したときに、tanδが極大となる温度のことである。
【0065】
本発明に適用される熱可塑性樹脂を主たる成分としたフィルム2は、好ましくは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などからなるものである。これらの中で共重合するモノマー種が多様であり、かつ、そのことによって材料物性の調整が容易であるなどの理由から、特にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂またはこれらの混合物から選ばれる熱可塑性樹脂から主として形成されていることが好ましく、上述の熱可塑性樹脂が50重量%以上からなることがさらに好ましい。
【0066】
本発明に適用されるシート材料は、熱可塑性樹脂からなる薄板状物であれば適用できるが、特にフィルムであることが好ましく、該フィルムは、上述の樹脂の単体からなるフィルムであってもかまわないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。この場合、単体シートと比べて、易滑性や、耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、耐熱性を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合は、シート全体が前述の要件を満たすことが好ましいが、フィルム全体としては前述要件を満たしていなくても、少なくとも前述の要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を成形することができる。
【0067】
また、本発明に適用されるシート材料(フィルム)の好ましい厚さ(厚み、膜厚)としては0.01〜3mmの範囲内にあることが好ましく、特に0.01〜1mmの範囲内にあることがより好ましい。0.01mm未満では成形するのに十分な厚みがなく、また、3mmよりも大きいものの場合ではフィルムの剛性により搬送が一般に難しい。ただし、枚葉状に処理するシートであれば、搬送たわみ等を抑制するため、0.3mm以上、より好ましくは1mm以上の厚みを有した板状体が好ましい。
【0068】
本発明に適用される微細形状転写シートの製造方法は、金型に同一の媒体からなる加熱用の熱媒と冷却用の冷媒を、金型内熱冷媒流路に切り替えて供給することにより前記金型の温度調整を行い、金型の表面に形成された微細形状を、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型を加熱する前に、前記加熱用熱媒を前記金型外部で循環させる熱媒循環工程と、
2)前記加熱用熱媒を、金型に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を加熱する熱媒供給工程と、
3)前記金型を冷却する前に、前記冷却用冷媒を前記金型外部で循環させる冷媒循環工程と、
4)前記冷却用冷媒を、金型に設けた複数の前記熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を冷却する冷媒供給工程と、
を有する。
【0069】
より好ましくは、
1)前記金型の前記熱冷媒供給口に複数かつ並列に配置された分岐口を有する供給マニホールドを連結してなり、
2)前記熱媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に冷媒が残存している間に、熱媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた循環口から供給されることによって循環するものであり、
3)前記熱媒供給工程は、前記熱媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによって始まるものであり、
4)前記冷媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に熱媒が残存している間に、冷媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた前記循環口から排出することによって循環するものであり、
5)前記冷媒供給工程は、前記冷媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものである。
【0070】
上記の発明の微細形状転写シートの製造方法の一例を、図1と図3〜6を用いて説明する。
(A)あらかじめ、金型3をプレスユニット10にセットした後、フィルム2を巻出ユニット50にセットし、フィルム2の巻出部を引き出し、ガイドロールを経由し、プレスユニット内の金型の表面に沿わせ、さらに、離型ユニット20を経由して、巻取ユニット60で巻き取る(図1)。この時、前述の熱媒循環工程(図3)を行い、金型外部で熱媒を循環させておく。これにより、熱媒供給工程(図4)直前の供給マニホールド6a内に残存していた冷媒が熱媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、熱媒供給工程(図4)が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、冷媒が混じることなく、均等に加熱温調された熱媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く昇温させることが可能となる。
【0071】
(B)次に、前述の熱媒供給工程(図4)を行い金型を成形温度まで上昇させる。金型表面温度が成形温度まで上昇したことを確認後、前述の冷媒循環工程(図5)を行い、金型外部で冷媒を循環させておく。これにより、冷媒供給工程(図6)直前の供給マニホールド6a内に残存していた熱媒が冷媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、冷媒供給工程(図6)が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、熱媒が混じることなく、均等に冷却温調された冷媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く降温させることが可能となる。
【0072】
(C)プレスユニット10を作動させて、加圧プレート(上)14aを下降させて、金型3の表面と加圧プレート(上)との間にフィルムを挟むようにプレスする。このとき、フィルム固定部54および65を作動させてフィルムを固定しておく。温度、プレス圧力、昇圧速度、加圧時間等の条件は、フィルムの材質、転写形状、特に凹凸のアスペクト比に依存する。概ね、成形温度は100〜180℃、プレス圧力は1〜10MPa、成形時間が1秒〜60秒、昇圧速度は0.05MPa/s〜1MPa/sの範囲で設定される。
【0073】
(D)成形時間経過後、前述の冷媒供給工程(図6)を行い金型内に冷媒が供給され金型の賦形面の温度が下がる。なお、冷却中もプレス加圧を継続していることが好ましい。冷却温度は金型表面の温度がフィルムを離型するのに十分に冷却されるように設定される。例えば、金型3の表面温度がフィルムのガラス転移点以下まで冷却を行うのが良い。
【0074】
(E)冷却完了後、プレス圧力を開放して、加圧プレート(上)14aを離型ユニット20がプレス装置内を水平移動させるのに十分なスペースを確保できる位置まで上昇させる。金型表面温度が冷却温度まで下がったことを確認後、前述の熱媒循環工程(図3)を行い、金型外部で熱媒を循環させておく。
【0075】
(F)加圧プレート(上)14aが上昇を完了した後、フィルム固定部65を開放して、離型ユニット20を駆動してフィルムの離型および次に成形するフィルムを金型表面に引き出してくる。フィルムの離型が完了すると同時に、またはその直前から前述の熱媒供給工程(図4)を行い金型の加熱を開始する。金型表面温度が成形温度まで上昇したことを確認後、前述の冷媒循環工程(図6)を行い、金型外部で冷媒を循環させておく。
【0076】
(G)フィルムの引き出しが終わると、フィルム固定部54でフィルムを固定した後、補助ロールがもとの位置まで旋回して戻り、フィルム固定部65でフィルムを固定する。新しいフィルムが供給されることにより、あらかじめ引出バッファ部53で弛ましてあったフィルムが巻き取り側に引き出されるが、センサー57bによりフィルムが検知する位置まで、巻出ロール回転手段を作動させて、巻出ロールから新たなフィルムが引出バッファ部に供給される。一方、成形が完了したフィルムが送り出されると、送り出された長さ相当のフィルムは、一時的に巻取バッファ部63で保留され、センサー68aでフィルムを検知しなくなるまで、すなわち、新たに溜まった分の長さ相当のフィルムを、巻取ロール回転手段を作動させて巻き取る。
【0077】
以降、上述した(C)からの動作を繰り返す。
【0078】
上記の(C)〜(G)の動作により、金型の加熱・冷却の温調サイクルを賦形面内で少ない温度ムラですばやくできるので、高い生産性で間欠的フィルム成形を実現できる。
【0079】
さらに好ましい他の例として、図7に示す構成の熱冷媒循環回路を用いて、上記(A)〜(G)の工程を行うことにより、金型側面両側から熱冷媒を供給でき、流路あたり1本の長さが短くできるため、熱冷媒流量を増やすことが可能となり、加熱冷却の高速化が図れる。また、金型側面両端から熱冷媒が出入りするため、流路方向での温度差を小さくでき、金型表面の温度均一化に有利であり好ましい。
【0080】
また、上記に説明した方法は、隣り合う金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが、逆向きになるように熱媒および冷媒が供給されているが、金型内熱冷媒流路の流れ方向が短い場合は、流路方向での温度差が金型表面の温度均一化へ与える影響が少ないため、金型の側面片側から熱冷媒を供給し、他端から熱冷媒を排出させ、隣り合う金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが同一方向の構成でもかまわない。
【0081】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
(1)金型サイズ:450mm(フィルム走行方向)×450mm(フィルム幅方向)×24mm(厚み)
(2)金型内熱冷媒流路:φ6×450mm×25mmピッチ、金型表面と配管との距離は9mm
(3)金型材質:銅
(4)熱媒温度:140℃(加圧温水)
(5)冷媒温度:60℃(加圧温水)
(6)熱冷媒流量:16L/min(φ6金型内熱冷媒流路1本あたり)
(7)熱冷媒供給方法:図2のように隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるよう、金型側面片側に供給マニホールドと排出マニホールドを1組配置した。また、熱媒供給工程前には熱媒循環工程を実施し、冷媒供給工程前には冷媒循環工程を実施した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は4.5秒であり、金型表面の温度差は3.0℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は4.5秒であり、金型表面の温度差は3.4℃であった。
【0083】
本実施例では、本発明の構成および方法により、金型に形成された複数の流路に冷媒(または熱媒)が混じること無く、同時かつ均等に温度調節された熱媒(または冷媒)が供給される。この点が従来技術では為し得なかった作用であり、そのために、極めて高速な加熱冷却と温度均一化が実現できた。
【0084】
実施例2
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図7のように隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるよう、金型側面両側に循環口を有した供給マニホールドと排出マニホールドをそれぞれ2組配置した。また、熱媒供給工程前には熱媒循環工程を実施し、冷媒供給工程前には冷媒循環工程を実施した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は3.3秒であり、金型表面の温度差は3.3℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は3.6秒であり、金型表面の温度差は3.6℃であった。
【0085】
本実施例では、本発明の構成および方法により、金型に形成された複数の流路に冷媒(または熱媒)が混じること無く、同時かつ均等に温度調節された熱媒(または冷媒)が供給される。さらに、金型両側から各流路に並列に熱冷媒を供給しているので、金型に対して多くの媒体量を供給でき、加熱冷却のさらなる高速化が図れる。これらの点が従来技術では為し得なかった作用であり、そのために、極めて高速な加熱冷却と温度均一化が実現できた。
【0086】
比較例1
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図15のように、金型側面の片側から供給マニホールドにより金型内熱冷媒流路へ熱冷媒を供給し、反対側金型側面には金型内熱冷媒流路からの熱冷媒をとなりの金型内熱冷媒流路へ折り返す配管を接続し、供給マニホールドと同じ金型側面の排出マニホールドへ金型内熱冷媒流路から熱冷媒を排出した。また、熱媒供給工程前に熱媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している冷媒を随時押し出しながら熱媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。同様に、冷媒供給工程前に冷媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している熱媒を随時押出ながら冷媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は6.5秒であり、金型表面の温度差は4.1℃であった。
(9)金型表面平均温度が120℃に到達後、5.0秒経過し確認した金型表面の温度差は3.8℃であり、金型表面温度差が大きく改善することはなかった。
(10)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は4.8秒であり、金型表面の温度差は5.3℃であった。
(11)金型表面平均温度が90℃に到達後、5.0秒経過し確認した金型表面の温度差は4.6℃であり、金型表面温度差が大きく改善することはなかった。
【0087】
比較例2
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図16のように、隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるように、金型側面両側に供給マニホールドと排出マニホールドをそれぞれ2組配置した。また、熱媒供給工程前に熱媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している冷媒を随時押し出しながら熱媒を金型内熱冷媒流路へ供給する。同様に、冷媒供給工程前に冷媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している熱媒を随時押出ながら冷媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は4.8秒であり、金型表面の温度差は4.5℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は3.8秒であり、金型表面の温度差は5.6℃であった。
【符号の説明】
【0088】
1:微細形状転写シートの製造装置
2:フィルム
3:金型
3a:金型表面
4:転写成形領域
5:熱冷媒流路
6a:供給マニホールド
6a1:導入口
6a2:供給分岐口
6a3:循環口
6b:排出マニホールド
6b1:排出口
6b2:流入分岐口
7a〜7d:熱媒制御バルブ
7e:熱冷媒流量調整ジグ
8a〜8d:冷媒制御バルブ
9:制御装置
10:プレスユニット
11:支柱
12:プレスシリンダー
13:昇降ガイド
14a:加圧プレート(上)
14b:加圧プレート(下)
16a:フレーム(上)
16b:フレーム(下)
17:クッションシート
18:断熱材
20:離型ユニット
21:剥離ロール
22:補助ロール
30:金型温調ユニット
31:加熱用温調装置
32:冷却用温調装置
50:巻出ユニット
51:巻出ロール回転手段
52a〜d:ガイドロール
53:引出バッファ部
54:フィルム固定部
55:ボックス
56:吸引排気手段
57a、b:センサー
60:巻取ユニット
61:巻取ロール回転手段
62a〜d:ガイドロール
63:巻取バッファ部
64:搬送駆動ロール
65:フィルム固定部
66:ボックス
67:吸引排気手段
68a、b:センサー
P:流路ピッチ
T:金型の厚み
S:流路と金型表面までの距離(最短部)
D1:マニホールド内部の流路径
D2:金型内の熱冷媒流路径
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンを有する金型を加熱、冷却しながら、金型をシート材料の表面に押し付けて、シート表面に微細パターンを賦形する微細形状転写シートの製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材料の表面への微細形状の賦形は、光学系電子機器等の発達によりその需要は増加すると共に、大判化、薄膜化、低コスト化、高精度化等の様々な要求がなされ、それらに対応するための多くの技術が開発されてきた。
【0003】
これらの要求に対して、熱インプリント技術を適用して、フィルムの表面に間欠的に微細凹凸パターンを形成する装置及び方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。これらの装置および方法では、熱可塑性樹脂からなるフィルムを、その構成材料のガラス転移点以上まで加熱した状態で、微細凹凸パターン付き金型にプレス転写し、その後、プレスを継続した状態でフィルムをガラス転移点以下まで冷却し、冷却完了後、プレス圧力を開放するとともに、フィルムに一定の張力を付加するだけで金型より離型するものである。このプロセスでは、フィルムあるいは金型の昇降温に長時間要するため、生産性低下、コスト増の要因になっていた。
【0004】
そこで、金型あるいはフィルムの高速昇降温技術として、金型内部に熱媒と冷媒を切り替えて流すことにより、加熱と冷却を短時間で繰り返すことが有効であり、種々の装置、方法が提案されている。(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
【0005】
特許文献3は冷却用の冷媒の循環路にベンチュリー機構を有する弁を備え、金型から流出してくる加熱用の熱媒を流し込み、当該弁のベンチュリー機構の吸い上げ作用を利用して加熱用の熱媒の排出を行うことを提案している。これにより加熱用の熱媒は循環路へ円滑に排出することができ、加熱工程時に金型の所定温度への昇温時間を短縮することができるとしている。しかしながら、この方法では金型を加熱させる際、蒸気を金型へ流し込むため、急激な圧力変動による熱媒の振動が発生し、熱媒である蒸気の流量がばらつき金型温度の不均一が問題となり、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0006】
また特許文献4は、金型の加熱用熱媒と冷却用冷媒をそれぞれ貯留するためのバッファ装置を有すること、当該バッファ装置に貯留される媒体量が金型内を流通する媒体量とほぼ同じ量であることを提案している。これにより、熱媒と冷媒が混合することなく、効率よく短時間で熱媒と冷媒の切り替えが可能となる。しかしながら、この装置では金型内の流体流通路が互いに平行に形成されているが、金型内の各流体流通路に同時に媒体を流すための機構を有していない。そのため、金型内に残留している媒体を押し出しながら媒体を切り替えることから、媒体の流入口に近い流体流通路と流入口から離れた流体流通路では温度差が生じ、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0007】
さらに特許文献5では、金型を加熱および冷却するための、加熱ユニットおよび冷却ユニットに、それぞれ加熱媒体タンクおよび冷却媒体タンクを有することで、それぞれの媒体の循環回路が独立している方式を提案している。そのため、金型の加熱と冷却を切り替える際、加熱媒体と冷却媒体が混ざることはなく、媒体を再加熱または再冷却する必要が少ないため、熱媒と冷媒の切り替えを短時間で行うことができる。しかしながら、特許文献4と同様に金型内の各媒体流路に同時に媒体を流すための機構を有しておらず、金型における媒体通路の入口に近い媒体流路と、媒体通路の入口から遠い媒体流路では温度差が生じ、成形面の温度均一性が低く、成形品質の低下を引き起こすことがあった。
【0008】
また、特許文献6は、金型温度調整用媒体のためのマニホールドと、そのマニホールドから複数の媒体流路を金型内に設けることで平面状金型の表面温度の調整方法を提案している。金型内の熱媒流路を規則的に複数設けることで、金型内を流れる熱媒および冷媒の単位時間あたりの流量を多くすることができ、金型表面全面を均一かつ短時間で温度調整することができる。しかしながら、本システムでは、冷却工程から加熱工程に移行する際、つまり冷却水から蒸気に切り替える際、圧縮空気供給装置から圧縮空気をマニホールドと媒体流路に供給し、金型内の媒体流路内の冷却水を排出する工程を必要としている。これは、1サイクルの時間をできるだけ短くし生産効率の向上を考えた場合、金型の冷却工程から加熱工程の間に金型内の冷却水除去の工程が追加され、1サイクルの時間を短くするには障害となる。また蒸気および冷却媒体は、導入側マニホールド部から供給され金型内の直線状の通路内を通り排出側マニホールドへ導かれる。この場合、導入側マニホールドの媒体供給位置付近から搬出側マニホールドの媒体排出口にかけて、金型表面に温度勾配が生じるため短時間で金型表面の温度を均一にすることは困難となる。
【0009】
さらには熱媒に蒸気を使用し、冷媒には冷却水を使用し、加熱時と冷却時に異なる媒体を使用しているため、それぞれの媒体の温度調整装置が必要なだけでなく、蒸気を生成するためにはボイラが必要であり、消費エネルギーも大きくメンテナンス時の負担も大きい。
【0010】
また蒸気は金型内部の媒体を冷却水から蒸気に切り替える際、その冷却水に含まれる酸素に起因して金型内部が腐食しやすくなるという問題も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−199455号公報
【特許文献2】特開2005−310286号公報
【特許文献3】特開2004−155099号公報
【特許文献4】特開2008−23841号公報
【特許文献5】特開2005−22186号公報
【特許文献6】特開2007−83402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は上述したような点を鑑み、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートを製造する方法及び装置において、金型の加熱と冷却に同一の媒体を用い、加熱から冷却と冷却から加熱の1サイクルを短時間で行うことが可能であり、同時に金型表面の温度を均一化することができる、微細パターンが表面に賦形されたシートの製造方法と製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明の微細形状転写シートの製造方法は以下の構成を有する。
【発明の効果】
【0014】
(i)前記(1)および(4)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法によれば、金型を加熱および冷却する際、加熱用熱媒および冷却用冷媒はマニホールドを含む金型外部で循環してから、金型側面の熱冷媒供給口を介して金型内部へ供給されるため、金型表面全面で均一な温度分布を得ることができ、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる。
【0015】
(ii)特に、前記(2)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法によれば、加熱用熱媒および冷却用冷媒はマニホールドを含む金型外部で循環する際、前記金型の熱冷媒供給口近くに設置した前記マニホールを介すことで、前記マニホールド端部に設けた循環口を閉じると前記金型の全ての熱冷媒供給口に同時かつ均一に熱冷媒が供給されるため、より短時間の加熱冷却で均一な温度分布が得られる。
【0016】
(iii)前記(3)および(5)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造方法および製造装置によれば、前記金型内の熱冷媒流れが逆向きに流れることで、熱冷媒流れ方向の前記金型表面の温度勾配を緩和することができるため、より均一な温度分布を得ることができる。
(iv)前記(6)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記供給マニホールドから前記排気マニホールまでの熱冷媒流路長さをそれぞれ等しくすることで、熱冷媒流れの流速が均一になり、金型表面全面で均一な温度分布を得られることから、所望したとおりの微細形状が精度良く転写されて賦形されたシート材料を短時間で製造することができる。
【0017】
(v)特に、前記(7)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記熱冷媒流路が金型平面中心に対して点対称に配置されることにより、金型内の流路間の流速ばらつきをより小さくでき、金型表面でより均一な温度分布を得ることができる。
【0018】
(vi)前記(8)に記載の本発明の微細形状転写シートの製造装置によれば、前記供給マニホールドの供給分岐口の出口に熱冷媒流量調整用ジグを設置することにより、前記金型内の各熱冷媒流路内を流れる熱冷媒流量を更に精度良く調整できるため、さらに均一な温度分布性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】微細形状転写シートの製造装置の概略断面図である。
【図2】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、金型の温度調整をするための熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図3】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図4】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図5】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図6】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図7】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、本発明の別の形態の金型の温度調整をするための熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図8】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図9】微細形状転写シートの製造方法における、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図10】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図11】微細形状転写シートの製造方法における、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【図12】微細形状転写シートの製造装置に用いる金型と、熱冷媒流量調整ジグを適用した熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図である。
【図13】微細形状転写シートの製造装置に用いることのできる金型の平面図である。
【図14】微細形状転写シートの製造装置に用いることのできる金型の側面図である。
【図15】比較例1の説明図である。
【図16】比較例2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面などを参照しながら、更に詳しく本発明の微細形状転写シートの製造方法と製造装置について説明する。
【0021】
本発明の微細形状転写シートの製造装置は、シート状の樹脂基材および微細形状を備えた金型を加熱し、両者を接触、加圧させることによって前記樹脂基材表面に前記微細形状を賦形する微細形状転写シートの製造装置であって、1)表面に転写形状を備え、熱媒および冷媒の流路が内部に複数かつ平行に配された金型と、2)熱媒および冷媒が供給される導入口と、前記金型へ熱媒および冷媒を供給する複数の供給分岐口と、熱媒および冷媒を金型へ供給せず循環する際、熱媒および冷媒を排出する循環口を備えた、供給マニホールドと、3)熱媒および冷媒を排出する排出口を備え、前記金型からの熱媒および冷媒が流入する複数の流入分岐口を備えた、排出マニホールドと、4)熱媒および冷媒をそれぞれ温度制御しながら循環する温調機ユニットと、5)前記金型と前記供給マニホールドと前記排出マニホールドと前記温調機ユニットを、熱媒および冷媒の流路となる配管で接続された配管ユニットと、6)前記配管ユニット内の熱媒および冷媒の流れ方向を切り替え、前記熱媒循環工程と、前記熱媒供給工程と、前記冷媒工程と、前記冷媒循環工程を可能にするバルブユニットと、7)前記バルブユニットの切り替えを制御する制御装置と、からなる熱冷媒循環回路を有することを特徴とする、微細形状転写シートの製造装置である。
【0022】
図1は本発明の微細形状転写シートの製造装置の1実施態様例をシート材料の幅方向から見た概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の微細形状転写シートの製造装置1は、制御装置9と、プレスユニット10と、離型ユニット20と、金型温調ユニット30と、巻出ユニット50、巻取ユニット60から構成される。巻出ユニット50でロール状に巻き取られたフィルム2が、巻き出されて、プレスユニット10で金型3の微細凹凸形状が加工された表面3aに押しつけられて、フィルムの成形面2aに微細凹凸などの微細形状が転写成形され、巻取ユニット60によりロール状に巻き取られる。巻出ユニット50と巻取ユニット60は、シート材料たるフィルムの搬送装置であり、連続状のシート状物を加工するのでなく、枚葉状のシートなど1枚ずつ加工する場合には用いなくてもよい。搬送系は、巻出ユニット50、巻出ロール回転手段51、ガイドロール52a〜d、引出バッファ部53、フィルム固定部54、ボックス55、吸引排気手段56、センサー57a、b、巻取ユニット60、巻取ロール回転手段61、ガイドロール62a〜d、巻取バッファ部63、搬送駆動ロール64、フィルム固定部65、ボックス66、吸引排気手段67、センサー68a、bからなる。
【0024】
次に本発明の特徴である、熱冷媒循環回路について説明する。
【0025】
図2は、熱冷媒循環回路を、金型平面の上方から見た概略図であり、図3〜6は各熱冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。
【0026】
図2に示すように、本発明の微細形状転写シートの製造装置は、
金型3と、
金型3と熱冷媒流路5とが接続され、熱冷媒が供給される導入口6a1と、金型3へ熱冷媒を供給する複数の供給分岐口6a2と、熱冷媒を金型3へ供給せず循環する際、熱冷媒を排出する循環口6a3を有する供給マニホールド6aと、
金型3と熱冷媒流路5と接続され、熱冷媒を排出する排出口6b1と、金型3から熱冷媒が流入する複数の流入分岐口6b2を有する排出マニホールド6bと、
熱媒の温度を一定にするための加熱用温調機31と、
冷媒の温度を一定にするための冷却用温調機32と、
各構成部品間の熱媒流路を接続するための配管類と、
熱媒流路を変更するため配管の途中に設置されたバルブユニット(7a〜7d、8a〜8d)から構成される。
【0027】
バルブユニットは以下のバルブで構成される。
バルブ7aは、加熱用熱媒が加熱用温調機31のみで循環することを制御するバルブであり、
バルブ7bは、加熱用温調機31から供給マニホールド6aへ熱媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ7cは、排出マニホールド6bから加熱用温調機31へ熱媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ7dは、加熱用温調機31と供給マニホールド6a間で熱媒の循環を制御するバルブであり、
バルブ8aは、冷却用冷媒が冷却用温調機32のみで循環することを制御するバルブであり、
バルブ8bは、冷却用温調機32から供給マニホールド6aへ冷媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ8cは、排出マニホールド6bから冷却用温調機32へ冷媒の供給を制御するバルブであり、
バルブ8dは、冷却用温調機32と供給マニホールド6a間で冷媒の循環を制御するバルブである。
【0028】
本発明に用いられる熱冷媒循環回路の各工程における動作について説明する。
図3は、熱媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。熱媒循環工程とは、金型3を加熱する前に、加熱用熱媒を金型外部で循環させる工程であり、さらに好ましくは、金型内熱冷媒流路5に冷媒が残存している間に、熱媒が供給マニホールド6aから供給分岐口6a2へ排出されずに、供給マニホールド6a端部に設けた循環口6a3から排出することによって循環するものである。ここで、バルブ7cは閉、バルブ7dが開であるため、供給マニホールド6a内の熱媒は金型3へは供給されず、循環口6a3を介して加熱用温調機31へ供給され循環する。この時、冷媒はバルブ8aを開にして冷媒用温調機32のみで循環する。
【0029】
図4は、熱媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。熱媒供給工程とは、熱媒循環工程で循環していた加熱用熱媒を、金型3に設けた複数の熱冷媒流路5に同時に供給して金型3を加熱する工程であり、さらに好ましくは、熱媒の流路を循環口6a3から、熱冷媒供給口へ変更することによって始まるものである。ここで、バルブ7cは開、バルブ7dは閉であるため、供給マニホールド6a内の熱媒は、循環口6a3へは供給されず、供給分岐口6a2を介して金型内熱冷媒流路5へ供給され金型3を加熱後、排出マニホールド6bを介して加熱用温調機31へ循環する。上述した熱媒循環工程を実施したことにより、熱媒供給工程直前の供給マニホールド6a内に残存していた冷媒が熱媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、熱媒供給工程が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、冷媒が混じることなく、均等に加熱温調された熱媒のみ供給される。その結果、金型3の表面を全面で均一に素早く昇温させることが可能となる。
【0030】
図5は、冷媒循環工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。冷媒循環工程とは、金型3を冷却する前に、冷却用冷媒を金型外部で循環させる冷媒循環工程であり、さらに好ましくは、金型内熱冷媒流路5に熱媒が残存している間に、冷媒が供給マニホールド6aから供給分岐口6a2へ排出されずに、供給マニホールド6a端部に設けた循環口6a3から排出することによって循環するものである。ここで、バルブ8cは閉、バルブ8dが開であるため、供給マニホールド6a内の冷媒は金型3へは供給されず、循環口6a3を介して冷却用温調機32へ供給され循環する。この時、熱媒はバルブ7aを開にして熱媒用温調機31のみで循環する。
図6は、冷媒供給工程時の熱冷媒の流れ方向と各バルブの開閉を示した説明図である。冷媒供給工程とは、循環していた冷却用冷媒を、金型3に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して金型3を冷却する工程であり、さらに好ましくは、冷媒の流路を循環口6a3から、供給分岐口6a2へ変更することによって始まるものである。ここで、バルブ8cは開、バルブ8dは閉であるため、供給マニホールド6a内の冷媒は、循環口6a3へは供給されず、供給分岐口6a2を介して金型内熱冷媒流路5へ供給され金型3を冷却後、排出マニホールド6bを介して冷却用温調機32へ循環する。上述した冷却循環工程を実施することにより、冷却供給工程直前の供給マニホールド6a内に残存していた熱媒が冷媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、冷媒供給工程が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、熱媒が混じることなく、均等に冷却温調された冷媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く降温させることが可能となる。
【0031】
次に、より好ましい熱冷媒循環回路の形態について図面を用いて説明する。
【0032】
図7は、熱冷媒循環回路の別の実施形態を、金型平面の上方から見た概略図であり、図8〜11は図7に示した熱冷媒循環回路を適用して熱冷媒の流す場合の各バルブの開閉を示した説明図である。
【0033】
図7に示す熱冷媒循環回路では供給マニホールド6aは金型3を挟んで対向に設けられ、排出マニホールド6bは金型3を挟んで対向に設けられている。このような回路を構成することにより、金型両側から熱冷媒を供給できることから、流路あたり1本の長さが短くできるため、熱冷媒流量を増やすことが可能となり、加熱冷却の高速化が図れる。また、金型の両端から熱冷媒が出入りするため、流路方向での温度差を小さくでき、金型表面の温度均一化に有利であり好ましい。
【0034】
また、供給マニホールド6aの導入口6a1から金型内熱冷媒流路5を介して排出マニホールド6bの排出口6b1までの熱冷媒流路長さがそれぞれ等しくなるように接続されている。熱冷媒流路長さが各流路で等しいため、流路間の流量差が少なくなり、金型表面温度均一化に有利でより好ましい。
【0035】
また、図12に示すように、供給マニホールド6aの供給分岐口6a2の出口に熱冷媒流量調整用ジグ7eが設置されていることにより、各金型内熱冷媒流路5に均一な量の熱冷媒を供給することができることから、金型表面温度均一化に有利でより好ましい。流量調整ジグの設置場所は、各金型内熱冷媒流路5の熱冷媒の流量を均一にできるのならば、図12の場所に限定されるものではない。
【0036】
本発明に用いられる金型3について説明する。金型の転写面は、微細な立体形状パターンを有するものであり、金型に該パターンを形成する方法としては、機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィ、電子線描画方法等がある。ここで、金型に形成される「微細凹凸形状」とは、高さ10nm〜1mm、周期10nm〜1mmで周期的に繰り返された凸形状が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。凸形状の高さはより好ましくは1μm〜100μmであり、周期はより好ましくは1μm〜100μmである。また、凸形状の例としては、三角錐、円錐、四角柱、レンズ形状等に代表される任意の形状の突起物が離散状、ドット状で配されたものや、断面が三角、四角、台形、半円、楕円等に代表される任意の形状の突起物がストライプ状に配されたもの等がある。金型の材質としては、所望のプレス時の強度、パターン加工精度、フィルムの離型性が得られるものであればよく、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等を含んだ金属材料、シリコーン、ガラス、セラミックス、樹脂、もしくは、これらの表面に離型性を向上させるための有機膜を被覆させたものが好ましく用いられる。該金型の微細なパターンは、フィルム表面に付与したい微細な凹凸パターンに対応して形成されているものである。
【0037】
本発明に用いられる該金型3の内部には、該金型の賦形面を昇温する昇温手段を有することが好ましい。ここで、昇温手段とは、単なる保温(温度維持、または温度低下の抑制)のための加熱手段ではなく、現実に金型の温度の上昇を伴う手段である。また、本発明でいう金型とは、少なくとも転写面を有していて、該転写面を含んで一体的に形成されているものをいう。
【0038】
金型3は、図13の平面図、図14の側面図を示したように、転写成形領域4を有しており、内部に熱冷媒流路5が設けられている。6aは供給マニホールド、6bは排出マニホールドであり、Pは熱冷媒流路5を設けている流路ピッチ、Tは金型の厚み、Sは熱冷媒流路と金型表面までの距離(最短部)、Dは熱冷媒流路の径を示したものであり、昇温効果を確実に得て、本発明の効果をより効果的に得る上で、これら値には好適な範囲がある。本発明者らの各種知見によれば、P/Sの好適範囲は1〜4であり、1未満では表面の昇温速度が遅いことから効果的でなく、また4よりも大きいときには金型表面での温度ムラが発生することがあり望ましくない。また、金型の厚みTは20mm〜50mmの範囲が好ましく、20mm未満では金型の平面度が悪くなる場合があり、被加工シート状物の寸法等によっては好ましくない。50mmよりも大きい場合には一般に昇温に時間がかかりすぎるようになり好ましくない。流路の径Dは、4mm〜8mmの範囲が好ましく、4mm未満では流路の加工が難しくなることや圧損が大きくなる場合があり好ましくない。8mmよりも大きい場合には、熱媒〜熱媒流路壁面の境膜伝熱係数が低下する方向であり、それに対応して昇温に要する時間が大きくなることになるので好ましくない。
【0039】
供給マニホールド6a、排出マニホールド6bの内部の流路径D1は金型内の流路径D2の3倍以上有することが好ましい。各流路間での流速のばらつきが小さくなり全面で均一な温度で加熱、冷却が可能となる。
【0040】
また、上述した転写成形領域4は、成形領域の温度分布の均一化を実現するために、端部に位置する熱冷媒流路よりも内側に該成形領域を設けることが好ましい。また、各熱冷媒流路における熱冷媒の流れ方向を、特に昇温中における温度ムラを小さくすることができることから、隣り合う流路で熱冷媒を逆向きに流すことも好ましい。ここで、「隣り合う流路」とは、1本1本で隣り合うことの他、2本ずつで隣り合うなどの複数本での隣り合い状態のものも含むものである。
【0041】
なお、熱媒・冷媒とも同じ媒体が良く、特に、以下の理由により加熱、冷却ともに液体状の水を適用するのが好ましい。媒体循環による温調方法で、より速く加熱または冷却するためには、媒体流路の壁面付近の境界層の伝熱係数(境膜伝熱係数)を向上させることが有効である。境膜伝熱係数の向上化は媒体の高流速化、低粘度化により達成され、媒体種としては水が最も適している。通常、高温の媒体加熱制御では油を用いた方式が一般的であるが、水は、高温時、特に100℃以上で加圧状態を保持すれば液体状態を保ち、油と比較すると粘度が圧倒的に低い。また、そのために低い圧力損失で高流速を実現できる。180℃以下の温度域であれば、媒体として油を用いるよりも水を乱流状態になるまで高流速で流す方がより高速かつ簡便なシステムでの温調が可能である。
そのような構成にすると、金型の冷却をより速く正確に行うことができる。熱媒と冷媒を切り替える際に金型内に残留している媒体を圧縮空気などで追い出す必要がないため1サイクルの時間短縮化につながる。特に、熱媒としては、100℃以上に加熱された水を使用することが好ましい。冷媒としては、シートのガラス転移点温度以下に温調された水を使用することが好ましい。更に、効率良く伝熱できるように、流路内部のレイノズル数が1.0×104〜50×104 の範囲になることが好ましい。
【0042】
また、金型非加熱中でも熱冷媒は金型部以外で循環温調される構成が適用されるが、金型加熱中、非加熱中ともに熱媒が流れる流路(以下、熱媒循環共通流路)の内容積は金型の賦形面積に対して十分に確保することが好ましい。ここで、十分に確保するとは、1回の金型加熱過程で必要な熱媒体積以上の容積を確保することを言う。金型加熱過程で熱媒が金型内を通過後、十分に再加熱されずに金型内に再導入されると、熱媒の初期温度が低いために途中から加熱速度が鈍化し、金型昇温時間が長くなる。熱媒循環共通流路の内容積を十分に確保すれば、熱媒の初期温度の低下による加熱速度鈍化を防止できる。なお、市販の金型温調機はせいぜいヒータータンク容量が10L程度で、ヒーター容量が20kW程度であるので、1辺が300mm以上の大きい賦形面積を持つ場合には、別途ヒーターを内装したバッファタンクを熱媒循環共通流路の途中に設けることが好ましい。
【0043】
金型冷却中、金型非冷却中ともに冷媒が流れる流路(以下、冷媒循環共通流路)の内部容積についても上記と同様のことが言え、冷却速度鈍化の防止のために冷媒循環共通流路の途中でバッファタンク等の内容積増量手段を設けることが好ましい。
【0044】
本発明の微細形状転写シートの製造装置に関して、熱冷媒循環回路以外の構成の例を図1を用いて説明する。下記の説明する機器の構成は一例であって、基材をプレス装置内に搬入、搬出できるものであれば、下記の構成に限られるものではない。
【0045】
プレスユニット10は、加圧プレート(上)14aが支柱11と昇降ガイド13をガイドにして昇降移動できるように、プレスシリンダー12に連結されている。支柱11はフレーム(上)16aとフレーム(下)16bに挟まれるように配設されている。加圧プレート(上)14aの下面には、フィルムにある程度の厚みムラがあっても、全面でムラなくパターンの転写成形ができるように、クッションシート17が配設されている。例えば、厚みが0.3mm〜1.0mmのエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等を好ましく用いることができる。
【0046】
一方、加圧プレート(下)14bの上面には金型3が取り付けられている。18は断熱材である。
【0047】
なお、金型3は加圧プレート(上)14aの下面に取り付けられてもよい。その場合は、クッションシート17は加圧プレート(下)14bの上面に配設される。
【0048】
なお、各プレートのフィルム押圧面側の平面度は10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下である。
【0049】
プレスシリンダーは、図示していない油圧ポンプとオイルタンクに接続されており、油圧ポンプにより加圧プレート(上)14aの昇降動作および、加圧力の制御を行う。また、本実施形態では油圧方式のプレスシリンダーを適用しているが、加圧力を制御できる機構であれば、サーボプレスなどの高速プレスなど、いかなるものでもよい。
【0050】
圧力範囲は0.1MPa〜20MPaの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、1MPaで〜10MPaの範囲で制御できることが好ましい。
【0051】
プレスシリンダーの昇圧速度は0.01MPa/s〜5MPa/sの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、0.05MPa/s〜0.5MPa/sの範囲で制御できることが好ましい。
【0052】
次に、微細形状を付与したフィルムを金型から剥がし、製品として取り出す離型ユニット20について説明する。
【0053】
図1に示したように、離型ユニットは剥離ロール21と補助ロール22から構成され、剥離ロール21には図示しないが剥離ロール回転手段が接続されて、指定の回転数で回転制御される。剥離ロール回転手段23は、回転数を制御できるものであればよいが、回転量を厳密に制御できるようにサーボモータがより好ましい。また、剥離ロール21が回転しながら、金型3の表面に略平行にスムーズに移動できるように、直動用の案内ガイド等が加圧プレート(下)14bの上面に取り付けられている。
【0054】
一方、補助ロール22は、剥離ロール21の外表面に沿うように旋回できるように、図示しない補助ロール旋回手段が接続されている。該補助ロール旋回手段24は電磁モータ、空圧を利用したアクチュエータ等、補助ロールを剥離ロールの周辺でその外周に沿って昇降移動させうるものであればいかなるものでもよい。そして、補助ロールの両端はロール軸心を中心に自在に回転できるように取り付けられている。
【0055】
次に、実際にフィルムを金型表面から離型し、さらに、次に成形加工に供されるフィルムの供給動作を説明する。
【0056】
離型動作前は、巻き取り側の端位置で、補助ロール22を剥離ロール21のほぼ上方まで旋回移動させる。その後、剥離ロール回転手段により剥離ロールを回転させる。剥離ロールは回転とともに、金型3の表面に沿ってフィルム巻出側へ直進移動し、同時に金型に貼り付いたフィルムを剥離ロールに抱きつかせながら離型していく。金型の全領域でフィルムの離型が完了すると、剥離ロールが回転しないようにブレーキをかけながら、下流側にある搬送駆動ロールを回転させてフィルムを引っ張る。すると、剥離ロールと補助ロールにフィルムが抱きついた状態で、剥離ロールと補助ロールのユニットがフィルム巻き取り側へ直進移動する。
【0057】
剥離ロールが巻き取り側の端位置まで戻ったら、補助ロール旋回手段により、補助ロールを剥離ロールのほぼ下方に旋回移動させて、フィルムを開放する。上記の剥離動作は剥離ロールの回転速度に依存し、剥離速度はロールの周速とほぼ同速度で行える。そのため、厳密に剥離動作を制御することが可能となり、あらゆる成形材料、条件に対してもスムーズな剥離条件を容易に作り出すことができる。
【0058】
上記のフィルム搬送装置たる巻出ユニット50、巻取ユニット60について説明する。巻出ユニット50は巻出ロール回転手段51と、搬送ロール52a〜52dと、引出バッファ部53と、フィルム固定部54から構成される。巻取ユニット60は巻取ロール回転手段61と、搬送ロール62a〜62dと、巻取バッファ部63と、搬送駆動ロール64と、フィルム固定部65から構成される。
【0059】
引出バッファ部53、巻取バッファ部63はそれぞれボックス55、66とこれらに接続された吸引排気手段56、67から構成される。吸引排気手段56、67は真空ポンプ等、エアーを吸引、排気できるものであれば良く、ボックス内のエアーを排気することにより、ボックス内に挿入されたフィルムの表裏面で圧力差を与えることにより、一定の張力を付与するとともにボックス内でフィルムを弛ませて保持する。ボックス内に挿入されるフィルムの長さは、フィルムを成形する前後で間欠的に搬送するフィルム長さ分が適当である。さらに、ボックス55、66内にはセンサー57a、57b、68a、68bが取り付けられている。センサーは所定位置でフィルムを検知できるものであれば良い。上記した離型ユニットによりフィルムが離型、搬送されて、ボックス内でセンサー検知位置からフィルムが外れたときに、上下流の巻出ロール回転手段51、あるいは巻取ロール回転手段61を駆動して、フィルムを巻き出し、あるいは巻き取り、常に、ボックス内で所定位置にフィルムを弛ましておくことができる。
【0060】
また、フィルム固定部54、65は表面に吸引孔が形成された平板であることが好ましいが、さらに、クリップでフィルムを挟む機構のもの、あるいは、これらを組み合わせたものでも良い。
【0061】
フィルム固定部54、65はプレス動作を行うときは両方とも作動させる。そして、フィルムを離型するときはフィルム固定部54を作動させてフィルムを固定し、フィルム固定部65が開放させることが好ましい。また、フィルムを供給するときは、フィルム固定部54、65を両方とも開放することが好ましい。
【0062】
搬送駆動ロール64は図示しないがモータ等の回転駆動手段に連結されて、フィルム搬送時にはニップロール64aが搬送駆動ロール64に近接し、フィルムを挟み、搬送駆動ロール64にてトルク制御を行いながらフィルムを一定張力のもとで搬送する。
【0063】
本装置に適用されるシート状物(フィルム)2は、ガラス転移点温度Tgが、好ましくは40〜180℃のものであり、より好ましくは50〜160℃であり、最も好ましくは50〜120℃である熱可塑性樹脂を主たる成分とするフィルムである。ガラス転移温度Tgがこの範囲を下回ると、成形品の耐熱性が低くなり形状が経時変化するため好ましくない。また、この範囲を上回ると、成形温度を高くせざるを得ないものとなりエネルギー的に非効率であり、またフィルムの加熱/冷却時の体積変動が大きくなりフィルムが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる場合がある等の理由により好ましくない。
【0064】
ここで、ガラス転移点温度Tgとは、JIS K7244に記載の方法に準じた方法により、試料動的振幅速さ(駆動周波数)は1Hz、引張りモード、チャック間距離5mm、昇温速度2℃/min.での温度依存性(温度分散)を策定したときに、tanδが極大となる温度のことである。
【0065】
本発明に適用される熱可塑性樹脂を主たる成分としたフィルム2は、好ましくは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などからなるものである。これらの中で共重合するモノマー種が多様であり、かつ、そのことによって材料物性の調整が容易であるなどの理由から、特にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂またはこれらの混合物から選ばれる熱可塑性樹脂から主として形成されていることが好ましく、上述の熱可塑性樹脂が50重量%以上からなることがさらに好ましい。
【0066】
本発明に適用されるシート材料は、熱可塑性樹脂からなる薄板状物であれば適用できるが、特にフィルムであることが好ましく、該フィルムは、上述の樹脂の単体からなるフィルムであってもかまわないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。この場合、単体シートと比べて、易滑性や、耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、耐熱性を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合は、シート全体が前述の要件を満たすことが好ましいが、フィルム全体としては前述要件を満たしていなくても、少なくとも前述の要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を成形することができる。
【0067】
また、本発明に適用されるシート材料(フィルム)の好ましい厚さ(厚み、膜厚)としては0.01〜3mmの範囲内にあることが好ましく、特に0.01〜1mmの範囲内にあることがより好ましい。0.01mm未満では成形するのに十分な厚みがなく、また、3mmよりも大きいものの場合ではフィルムの剛性により搬送が一般に難しい。ただし、枚葉状に処理するシートであれば、搬送たわみ等を抑制するため、0.3mm以上、より好ましくは1mm以上の厚みを有した板状体が好ましい。
【0068】
本発明に適用される微細形状転写シートの製造方法は、金型に同一の媒体からなる加熱用の熱媒と冷却用の冷媒を、金型内熱冷媒流路に切り替えて供給することにより前記金型の温度調整を行い、金型の表面に形成された微細形状を、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型を加熱する前に、前記加熱用熱媒を前記金型外部で循環させる熱媒循環工程と、
2)前記加熱用熱媒を、金型に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を加熱する熱媒供給工程と、
3)前記金型を冷却する前に、前記冷却用冷媒を前記金型外部で循環させる冷媒循環工程と、
4)前記冷却用冷媒を、金型に設けた複数の前記熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を冷却する冷媒供給工程と、
を有する。
【0069】
より好ましくは、
1)前記金型の前記熱冷媒供給口に複数かつ並列に配置された分岐口を有する供給マニホールドを連結してなり、
2)前記熱媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に冷媒が残存している間に、熱媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた循環口から供給されることによって循環するものであり、
3)前記熱媒供給工程は、前記熱媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによって始まるものであり、
4)前記冷媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に熱媒が残存している間に、冷媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた前記循環口から排出することによって循環するものであり、
5)前記冷媒供給工程は、前記冷媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものである。
【0070】
上記の発明の微細形状転写シートの製造方法の一例を、図1と図3〜6を用いて説明する。
(A)あらかじめ、金型3をプレスユニット10にセットした後、フィルム2を巻出ユニット50にセットし、フィルム2の巻出部を引き出し、ガイドロールを経由し、プレスユニット内の金型の表面に沿わせ、さらに、離型ユニット20を経由して、巻取ユニット60で巻き取る(図1)。この時、前述の熱媒循環工程(図3)を行い、金型外部で熱媒を循環させておく。これにより、熱媒供給工程(図4)直前の供給マニホールド6a内に残存していた冷媒が熱媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、熱媒供給工程(図4)が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、冷媒が混じることなく、均等に加熱温調された熱媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く昇温させることが可能となる。
【0071】
(B)次に、前述の熱媒供給工程(図4)を行い金型を成形温度まで上昇させる。金型表面温度が成形温度まで上昇したことを確認後、前述の冷媒循環工程(図5)を行い、金型外部で冷媒を循環させておく。これにより、冷媒供給工程(図6)直前の供給マニホールド6a内に残存していた熱媒が冷媒供給工程前に循環口6a3から排出されるために、冷媒供給工程(図6)が開始された時に、供給分岐口6a2を介してすべての流路に、熱媒が混じることなく、均等に冷却温調された冷媒のみ供給される。その結果、金型3の表面が全面で均一に素早く降温させることが可能となる。
【0072】
(C)プレスユニット10を作動させて、加圧プレート(上)14aを下降させて、金型3の表面と加圧プレート(上)との間にフィルムを挟むようにプレスする。このとき、フィルム固定部54および65を作動させてフィルムを固定しておく。温度、プレス圧力、昇圧速度、加圧時間等の条件は、フィルムの材質、転写形状、特に凹凸のアスペクト比に依存する。概ね、成形温度は100〜180℃、プレス圧力は1〜10MPa、成形時間が1秒〜60秒、昇圧速度は0.05MPa/s〜1MPa/sの範囲で設定される。
【0073】
(D)成形時間経過後、前述の冷媒供給工程(図6)を行い金型内に冷媒が供給され金型の賦形面の温度が下がる。なお、冷却中もプレス加圧を継続していることが好ましい。冷却温度は金型表面の温度がフィルムを離型するのに十分に冷却されるように設定される。例えば、金型3の表面温度がフィルムのガラス転移点以下まで冷却を行うのが良い。
【0074】
(E)冷却完了後、プレス圧力を開放して、加圧プレート(上)14aを離型ユニット20がプレス装置内を水平移動させるのに十分なスペースを確保できる位置まで上昇させる。金型表面温度が冷却温度まで下がったことを確認後、前述の熱媒循環工程(図3)を行い、金型外部で熱媒を循環させておく。
【0075】
(F)加圧プレート(上)14aが上昇を完了した後、フィルム固定部65を開放して、離型ユニット20を駆動してフィルムの離型および次に成形するフィルムを金型表面に引き出してくる。フィルムの離型が完了すると同時に、またはその直前から前述の熱媒供給工程(図4)を行い金型の加熱を開始する。金型表面温度が成形温度まで上昇したことを確認後、前述の冷媒循環工程(図6)を行い、金型外部で冷媒を循環させておく。
【0076】
(G)フィルムの引き出しが終わると、フィルム固定部54でフィルムを固定した後、補助ロールがもとの位置まで旋回して戻り、フィルム固定部65でフィルムを固定する。新しいフィルムが供給されることにより、あらかじめ引出バッファ部53で弛ましてあったフィルムが巻き取り側に引き出されるが、センサー57bによりフィルムが検知する位置まで、巻出ロール回転手段を作動させて、巻出ロールから新たなフィルムが引出バッファ部に供給される。一方、成形が完了したフィルムが送り出されると、送り出された長さ相当のフィルムは、一時的に巻取バッファ部63で保留され、センサー68aでフィルムを検知しなくなるまで、すなわち、新たに溜まった分の長さ相当のフィルムを、巻取ロール回転手段を作動させて巻き取る。
【0077】
以降、上述した(C)からの動作を繰り返す。
【0078】
上記の(C)〜(G)の動作により、金型の加熱・冷却の温調サイクルを賦形面内で少ない温度ムラですばやくできるので、高い生産性で間欠的フィルム成形を実現できる。
【0079】
さらに好ましい他の例として、図7に示す構成の熱冷媒循環回路を用いて、上記(A)〜(G)の工程を行うことにより、金型側面両側から熱冷媒を供給でき、流路あたり1本の長さが短くできるため、熱冷媒流量を増やすことが可能となり、加熱冷却の高速化が図れる。また、金型側面両端から熱冷媒が出入りするため、流路方向での温度差を小さくでき、金型表面の温度均一化に有利であり好ましい。
【0080】
また、上記に説明した方法は、隣り合う金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが、逆向きになるように熱媒および冷媒が供給されているが、金型内熱冷媒流路の流れ方向が短い場合は、流路方向での温度差が金型表面の温度均一化へ与える影響が少ないため、金型の側面片側から熱冷媒を供給し、他端から熱冷媒を排出させ、隣り合う金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが同一方向の構成でもかまわない。
【0081】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
(1)金型サイズ:450mm(フィルム走行方向)×450mm(フィルム幅方向)×24mm(厚み)
(2)金型内熱冷媒流路:φ6×450mm×25mmピッチ、金型表面と配管との距離は9mm
(3)金型材質:銅
(4)熱媒温度:140℃(加圧温水)
(5)冷媒温度:60℃(加圧温水)
(6)熱冷媒流量:16L/min(φ6金型内熱冷媒流路1本あたり)
(7)熱冷媒供給方法:図2のように隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるよう、金型側面片側に供給マニホールドと排出マニホールドを1組配置した。また、熱媒供給工程前には熱媒循環工程を実施し、冷媒供給工程前には冷媒循環工程を実施した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は4.5秒であり、金型表面の温度差は3.0℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は4.5秒であり、金型表面の温度差は3.4℃であった。
【0083】
本実施例では、本発明の構成および方法により、金型に形成された複数の流路に冷媒(または熱媒)が混じること無く、同時かつ均等に温度調節された熱媒(または冷媒)が供給される。この点が従来技術では為し得なかった作用であり、そのために、極めて高速な加熱冷却と温度均一化が実現できた。
【0084】
実施例2
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図7のように隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるよう、金型側面両側に循環口を有した供給マニホールドと排出マニホールドをそれぞれ2組配置した。また、熱媒供給工程前には熱媒循環工程を実施し、冷媒供給工程前には冷媒循環工程を実施した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は3.3秒であり、金型表面の温度差は3.3℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は3.6秒であり、金型表面の温度差は3.6℃であった。
【0085】
本実施例では、本発明の構成および方法により、金型に形成された複数の流路に冷媒(または熱媒)が混じること無く、同時かつ均等に温度調節された熱媒(または冷媒)が供給される。さらに、金型両側から各流路に並列に熱冷媒を供給しているので、金型に対して多くの媒体量を供給でき、加熱冷却のさらなる高速化が図れる。これらの点が従来技術では為し得なかった作用であり、そのために、極めて高速な加熱冷却と温度均一化が実現できた。
【0086】
比較例1
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図15のように、金型側面の片側から供給マニホールドにより金型内熱冷媒流路へ熱冷媒を供給し、反対側金型側面には金型内熱冷媒流路からの熱冷媒をとなりの金型内熱冷媒流路へ折り返す配管を接続し、供給マニホールドと同じ金型側面の排出マニホールドへ金型内熱冷媒流路から熱冷媒を排出した。また、熱媒供給工程前に熱媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している冷媒を随時押し出しながら熱媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。同様に、冷媒供給工程前に冷媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している熱媒を随時押出ながら冷媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は6.5秒であり、金型表面の温度差は4.1℃であった。
(9)金型表面平均温度が120℃に到達後、5.0秒経過し確認した金型表面の温度差は3.8℃であり、金型表面温度差が大きく改善することはなかった。
(10)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面平均温度が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は4.8秒であり、金型表面の温度差は5.3℃であった。
(11)金型表面平均温度が90℃に到達後、5.0秒経過し確認した金型表面の温度差は4.6℃であり、金型表面温度差が大きく改善することはなかった。
【0087】
比較例2
(1)金型サイズ:実施例1と同じ
(2)金型内熱冷媒流路:実施例1と同じ
(3)金型材質:実施例1と同じ
(4)熱媒温度:実施例1と同じ
(5)冷媒温度:実施例1と同じ
(6)熱冷媒流量:実施例1と同じ
(7)熱冷媒供給方法:図16のように、隣り合う金型内熱冷媒流路の流れが反対方向になるように、金型側面両側に供給マニホールドと排出マニホールドをそれぞれ2組配置した。また、熱媒供給工程前に熱媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している冷媒を随時押し出しながら熱媒を金型内熱冷媒流路へ供給する。同様に、冷媒供給工程前に冷媒循環工程を実施せず、供給マニホールド内に残留している熱媒を随時押出ながら冷媒を金型内熱冷媒流路へ供給した。
(8)金型表面温度が冷却時の設定温度90℃になっていることを確認後、熱媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、冷却時の設定温度90℃から加熱時の120℃になるまでの加熱時間と、金型表面平均温度が120℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、加熱に要する時間は4.8秒であり、金型表面の温度差は4.5℃であった。
(9)金型表面温度が加熱時の設定温度120℃になっていることを確認後、冷媒を金型内に供給し、金型表面をサーモグラフィーで撮影することにより、加熱時の設定温度120℃から冷却時の90℃になるまでの冷却時間と、金型表面が90℃になった直後の金型表面の最高温度と最低温度の温度差を測定した。その結果、冷却に要する時間は3.8秒であり、金型表面の温度差は5.6℃であった。
【符号の説明】
【0088】
1:微細形状転写シートの製造装置
2:フィルム
3:金型
3a:金型表面
4:転写成形領域
5:熱冷媒流路
6a:供給マニホールド
6a1:導入口
6a2:供給分岐口
6a3:循環口
6b:排出マニホールド
6b1:排出口
6b2:流入分岐口
7a〜7d:熱媒制御バルブ
7e:熱冷媒流量調整ジグ
8a〜8d:冷媒制御バルブ
9:制御装置
10:プレスユニット
11:支柱
12:プレスシリンダー
13:昇降ガイド
14a:加圧プレート(上)
14b:加圧プレート(下)
16a:フレーム(上)
16b:フレーム(下)
17:クッションシート
18:断熱材
20:離型ユニット
21:剥離ロール
22:補助ロール
30:金型温調ユニット
31:加熱用温調装置
32:冷却用温調装置
50:巻出ユニット
51:巻出ロール回転手段
52a〜d:ガイドロール
53:引出バッファ部
54:フィルム固定部
55:ボックス
56:吸引排気手段
57a、b:センサー
60:巻取ユニット
61:巻取ロール回転手段
62a〜d:ガイドロール
63:巻取バッファ部
64:搬送駆動ロール
65:フィルム固定部
66:ボックス
67:吸引排気手段
68a、b:センサー
P:流路ピッチ
T:金型の厚み
S:流路と金型表面までの距離(最短部)
D1:マニホールド内部の流路径
D2:金型内の熱冷媒流路径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に同一の媒体からなる加熱用の熱媒と冷却用の冷媒を、金型内熱冷媒流路に切り替えて供給することにより前記金型の温度調整を行い、金型の表面に形成された微細形状を、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型を加熱する前に、前記加熱用熱媒を前記金型外部で循環させる熱媒循環工程と、
2)前記加熱用熱媒を、金型に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を加熱する熱媒供給工程と、
3)前記金型を冷却する前に、前記冷却用冷媒を前記金型外部で循環させる冷媒循環工程と、
4)前記冷却用冷媒を、金型に設けた複数の前記熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を冷却する冷媒供給工程と、
を有する微細形状転写シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1の微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型の前記熱冷媒供給口に複数かつ並列に配置された分岐口を有する供給マニホールドを連結してなり、
2)前記熱媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に冷媒が残存している間に、熱媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた循環口から供給されることによって循環するものであり、
3)前記熱媒供給工程は、前記熱媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものであり、
4)前記冷媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に熱媒が残存している間に、冷媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた前記循環口から供給することによって循環するものであり、
5)前記冷媒供給工程は、前記冷媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものである
微細形状転写シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱冷媒供給口が金型の側面両側に設けられ、隣り合う前記金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが逆向きになるように、熱媒および冷媒を供給する請求項1または2に記載の微細形状転写シートの製造方法。
【請求項4】
シート状の樹脂基材を、微細形状を備えた金型に付して加熱し、加圧することによって前記樹脂基材表面に微細形状を賦形する微細形状転写シートの製造装置であって、
1)表面に転写形状を備え、熱媒および冷媒の流路が内部に複数かつ平行に配された金型と、
2)熱媒および冷媒が供給される導入口と、前記金型へ熱媒および冷媒を供給する複数の供給分岐口と、熱媒および冷媒を金型へ供給せず循環させる際、熱媒および冷媒を排出する循環口を備えた、供給マニホールドと、
3)熱媒および冷媒を排出する排出口を備え、前記金型からの熱媒および冷媒が流入する複数の流入分岐口を備えた、排出マニホールドと、
4)熱媒および冷媒をそれぞれ温度制御しながら循環する温調機ユニットと、
5)前記金型と前記供給マニホールドと前記排出マニホールドと前記温調機ユニットを、熱媒および冷媒の流路となる配管で接続し配管ユニットと、
6)前記配管ユニット内の熱媒および冷媒の流れ方向を切り替え、熱媒循環工程と、熱媒供給工程と冷媒工程と、冷媒循環工程を可能にするバルブユニットと、
7)前記バルブユニットの切り替えを制御する制御装置と、
からなる熱冷媒循環回路を有する微細形状転写シートの製造装置。
【請求項5】
前記供給マニホールドは前記金型を挟んで対向に設けられ、前記排出マニホールドが前記金型を挟んで対向に設けられた請求項4に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項6】
前記供給マニホールドの前記導入口から前記金型内熱冷媒流路を介して前記排出マニホールドの排出口までの熱冷媒流路長さがそれぞれ等しくなるように接続されている請求項4または5に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項7】
金型を間に挟み連結された前記供給マニホールドの前記導入口と前記排出マニホールドの前記排出口とが、前記金型の表面において対角に配置されている請求項6に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項8】
前記供給マニホールドの供給分岐口の出口に熱冷媒流量調整用のジグが設置されている請求項4〜7のいずれかに記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項1】
金型に同一の媒体からなる加熱用の熱媒と冷却用の冷媒を、金型内熱冷媒流路に切り替えて供給することにより前記金型の温度調整を行い、金型の表面に形成された微細形状を、シート材料の表面に転写し賦形させる微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型を加熱する前に、前記加熱用熱媒を前記金型外部で循環させる熱媒循環工程と、
2)前記加熱用熱媒を、金型に設けた複数の熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を加熱する熱媒供給工程と、
3)前記金型を冷却する前に、前記冷却用冷媒を前記金型外部で循環させる冷媒循環工程と、
4)前記冷却用冷媒を、金型に設けた複数の前記熱冷媒供給口に同時に供給して前記金型を冷却する冷媒供給工程と、
を有する微細形状転写シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1の微細形状転写シートの製造方法であって、
1)前記金型の前記熱冷媒供給口に複数かつ並列に配置された分岐口を有する供給マニホールドを連結してなり、
2)前記熱媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に冷媒が残存している間に、熱媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた循環口から供給されることによって循環するものであり、
3)前記熱媒供給工程は、前記熱媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものであり、
4)前記冷媒循環工程は、前記金型内熱冷媒流路に熱媒が残存している間に、冷媒が前記供給マニホールドから前記熱冷媒供給口側へ供給されずに、前記供給マニホールド端部に設けた前記循環口から供給することによって循環するものであり、
5)前記冷媒供給工程は、前記冷媒の流路を前記循環口から、前記熱冷媒供給口へ変更することによってなされるものである
微細形状転写シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱冷媒供給口が金型の側面両側に設けられ、隣り合う前記金型内熱冷媒流路内の熱冷媒の流れが逆向きになるように、熱媒および冷媒を供給する請求項1または2に記載の微細形状転写シートの製造方法。
【請求項4】
シート状の樹脂基材を、微細形状を備えた金型に付して加熱し、加圧することによって前記樹脂基材表面に微細形状を賦形する微細形状転写シートの製造装置であって、
1)表面に転写形状を備え、熱媒および冷媒の流路が内部に複数かつ平行に配された金型と、
2)熱媒および冷媒が供給される導入口と、前記金型へ熱媒および冷媒を供給する複数の供給分岐口と、熱媒および冷媒を金型へ供給せず循環させる際、熱媒および冷媒を排出する循環口を備えた、供給マニホールドと、
3)熱媒および冷媒を排出する排出口を備え、前記金型からの熱媒および冷媒が流入する複数の流入分岐口を備えた、排出マニホールドと、
4)熱媒および冷媒をそれぞれ温度制御しながら循環する温調機ユニットと、
5)前記金型と前記供給マニホールドと前記排出マニホールドと前記温調機ユニットを、熱媒および冷媒の流路となる配管で接続し配管ユニットと、
6)前記配管ユニット内の熱媒および冷媒の流れ方向を切り替え、熱媒循環工程と、熱媒供給工程と冷媒工程と、冷媒循環工程を可能にするバルブユニットと、
7)前記バルブユニットの切り替えを制御する制御装置と、
からなる熱冷媒循環回路を有する微細形状転写シートの製造装置。
【請求項5】
前記供給マニホールドは前記金型を挟んで対向に設けられ、前記排出マニホールドが前記金型を挟んで対向に設けられた請求項4に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項6】
前記供給マニホールドの前記導入口から前記金型内熱冷媒流路を介して前記排出マニホールドの排出口までの熱冷媒流路長さがそれぞれ等しくなるように接続されている請求項4または5に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項7】
金型を間に挟み連結された前記供給マニホールドの前記導入口と前記排出マニホールドの前記排出口とが、前記金型の表面において対角に配置されている請求項6に記載の微細形状転写シートの製造装置。
【請求項8】
前記供給マニホールドの供給分岐口の出口に熱冷媒流量調整用のジグが設置されている請求項4〜7のいずれかに記載の微細形状転写シートの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−201188(P2011−201188A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71528(P2010−71528)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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