説明

微量定量噴霧用の水性懸濁剤

【課題】分散性が良好で、使用感も良好であり、長期保存による活性成分の沈降もなく、物理的にも安定で、良好な分散性を保つ水性懸濁剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)難水溶性の活性成分、(b)多価アルコール、(c)カルボキシビニルポリマーを含有する水性懸濁剤である。好適には、(a)が0.01〜1.5重量%、(b)が3〜25重量%、(c)が0.1〜1.5重量%であり、界面活性剤を含まず、その粘度は10〜400cpsである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内への微量定量噴霧に適した水性懸濁剤に関し、より詳しくは、噴霧による口中不快感や違和感がなく、長期保存による活性成分の沈降もない物理的に安定な水性懸濁剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水性懸濁剤の調製においては、活性成分の水溶液中における分散が長期間安定であることが重要である。つまり、活性成分が微細化され、水性懸濁粒子に凝集、結晶成長、沈降等の物理的変化が生じないことが求められている。この安定性については、特に静電斥力、粉体のぬれ、粒度分布等が関与しているため、水性懸濁剤を長期間安定させるには、特定の安定剤が必要とされている。
【0003】
活性成分の安定性において、活性成分に生じる物理的変化の中で最も注目すべきものは、懸濁粒子の凝集であり、これを防止するには(1)粒子が互いに引力を及ぼし得るような距離にまで接近させないこと、(2)接近しても斥力ポテンシャルの障壁を充分大きくしてそれを超えないようにすることが考えられる。即ち、(1)では、イオンの吸着に伴う水和層や吸着質自身による立体障害的保護作用によるものであり、(2)では、電解質の添加によってイオンを吸着させ、粒子表面の電位を高める電気的保護作用によるものである。
【0004】
これまで水性懸濁剤の分散剤として、一般に使用されているものには、無機および有機酸の塩類、界面活性剤、高分子化合物等があり、具体的には、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート60、ポリソルベート80、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、フェニルエチルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等が挙げられる。また、これら分散剤を使用した水性懸濁剤も多く見られる。
【0005】
しかしながら、これらの分散剤、特にポリソルベート類には、鼻腔内に噴霧した場合、口中に不快感や違和感が生じることから使用感の面での問題を含んでいるものもある。さらに、その粘度が低すぎると鼻腔内からの液だれや長期保存時の活性成分の沈降といった問題が生じ、逆に粘度が高すぎると長期保存時のノズル先の固化、噴射量のばらつきといった問題もある。
【0006】
以上の問題点を踏まえて、難水溶性の活性成分を含有する水性懸濁剤に対してこれまで様々な取り組みがなされてきた。
【0007】
例えば、(1)インスリン様成長因子Iとカルボキシビニルポリマーを含有する点鼻用液剤(特許文献1参照)、(2)カルボキシビニルポリマー水溶液を水溶性塩基物質で増粘してなる噴霧用ゲル基剤(特許文献2参照)、(3)ニュートン型粘性を示すカルボキシビニルポリマーを含有する点眼液用基剤(特許文献3参照)、(4)イオン性高分子および金属陽イオンを配合した水性懸濁型点眼剤(特許文献4参照)および(5)鎮痛成分とカルボキシビニルポリマーを含有した点鼻用ゲル剤またはゾル剤(特許文献5参照)が知られている。
【0008】
上記(1)においては、高分子のポリペプチドであるインスリン様成長因子Iの点鼻用液剤を開示しており、難水溶性の活性成分に関する記載は見られず、その目的として液だれの防止および吸収促進効果を開示しているが、活性成分の沈降改善に関する記載は見られない。
【0009】
上記(2)においては、カルボキシビニルポリマーを含有する噴霧用ゲル基剤を開示しているが、その粘度は500〜5000cpsと非常に高く、点鼻における非常に微少量の定量噴霧に適するものではない。
【0010】
上記(3)および(4)においては、カルボキシビニルポリマーを含有する点眼剤が開示されているが、前者は従来のカルボキシビニルポリマーを使用せず、ニュートン型粘性を示すカルボキシビニルポリマーの使用を開示している。一方、後者は、カルボキシビニルポリマーだけでなく、金属陽イオンを配合した点鼻剤を開示している。
【0011】
上記(5)においては、上記(1)と同様に、難水溶性の活性成分に関する記載は見られず、その目的として液だれの防止および吸収促進効果を開示しているが、活性成分の沈降改善および口中不快感の改善といった使用感に関する記載は見られない。
【0012】
以上のように、カルボキシビニルポリマーを特定の粘度を有するように配合することで難水溶性の活性成分の長期保存下における沈降の防止および界面活性剤を含まないことによる使用感の向上に関する先行技術はこれまで見られていない。
【特許文献1】特許第2734554公報
【特許文献2】特公平6−23094号公報
【特許文献3】特許第2873530号公報
【特許文献4】特開平8−295622号公報
【特許文献5】特開2001−89359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、使用感も良好であり、長期保存による活性成分の沈降もなく、物理的にも安定な水性懸濁剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、上記の課題に対し鋭意検討した結果、カルボキシビニルポリマーを配合し、その粘度を10〜400cpsに調整することで、良好な分散性が維持され、界面活性剤を含まないことで噴霧しても口中不快感や違和感がなく使用感が良好で、また、長期保存による活性成分の沈降もなく、物理的にも安定であることから、鼻腔内への微量定量噴霧に適した水性懸濁剤を提供できることを見出し、発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性懸濁剤は、カルボキシビニルポリマーを特定の粘度を有するように配合し、さらに界面活性剤を含まないことにより噴霧時の口中不快感や違和感がなく、さらに、水性懸濁液中の活性成分の沈殿を防止することから、本製剤使用前の混合の手間を省ける点から、患者のコンプライアンスの良い、安定性の高い水性懸濁剤を提供するという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、
(1)
(a)難水溶性の活性成分、
(b)多価アルコール、および
(c)カルボキシビニルポリマー
を含有してなり、その粘度が10〜400cpsであることを特徴とする、界面活性剤を含まない水性懸濁剤;
(2)難水溶性の活性成分が、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、塩酸レボカバスチン、エバスチン、ラマトロバンおよびアンレキサノクスから選択される、上記(1)記載の水性懸濁剤;
(3)多価アルコールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびソルビトールから選択され、かつ少なくとも1種がグリセリンおよび/またはプロピレングリコールである、上記(1)記載の水性懸濁剤;
(4)
(a)難水溶性の活性成分が0.01〜1.5重量%、
(b)多価アルコールが3〜25重量%、および
(c)カルボキシビニルポリマーが0.1〜1.5重量%
をそれぞれ含有される、上記(1)記載の水性懸濁剤;
(5)清涼化剤を含有してなる上記(1)〜(4)記載の水性懸濁剤;
(6)清涼化剤が、リモネン、メントールおよびその誘導体、ハッカ油、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油、ウイキョウ油、サリチル酸メチル、クロロブタノールおよびミント類から選択される、上記(5)記載の水性懸濁剤である、上記(1)〜(6)記載の水性懸濁剤を提供している。
【0017】
本発明の水性懸濁剤で配合される難水溶性の活性成分としては、難水溶性の抗炎症薬や抗アレルギー薬が使用可能である。例えば、難水溶性の副腎皮質ホルモンが好適に使用でき、具体的には、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、フルニソリド等が例示される。また、塩酸レボカバスチン、エバスチン、ラマトロバン、アンレキサノクスも好適な例として挙げることができる。
【0018】
この活性成分の配合量は、薬効を有効に発揮できる量であればよく、好ましくは、水性懸濁剤中、0.01〜1.5重量%の範囲である。
【0019】
本発明の水性懸濁剤に配合される多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ソルビトールが好ましい。ポリエチレングリコールは、分子量が300〜6000のものが好適に使用できる。これらの中でも、それ自体の味が殆どしないという点で、グリセリンおよび/またはプロピレングリコールの配合が特に好ましい。これらの多価アルコールは少なくとも1種が配合されるが、その中で、グリセリンおよび/またはプロピレングリコールを必須として、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトールと併用することが特に好ましい。この多価アルコールの配合量は、多すぎると懸濁粒子の凝集を招くおそれがあり、逆に、少なすぎると分散性が劣るおそれがあるので、活性成分の種類や配合量、カルボキシビニルポリマーの配合量にもよるが、水性懸濁剤中、3〜25重量%の範囲が好ましい。
【0020】
本発明の水性懸濁剤に配合されるカルボキシビニルポリマーとしては、アクリル酸系の親水性架橋ポリマーであり、医薬品添加物規格2003、(株)薬事日報社(2003)に適合する規格のものであればよく、分子量等は特に限定されるものではないが、例えば、カーボポール980(0.2%,20℃,14,000〜32,000cps)、カーボポール981(0.2%,20℃,1,500〜7,500cps)、カーボポール2984(0.2%,20℃,1,500〜9,000cps)、カーボポール5984(0.2%,20℃,6,000〜22,000cps)、カーボポールUltrez10(0.2%,20℃,10,000〜36,000cps)、カーボポール971P NF(0.5%,25℃,4,000〜11,000cps)、カーボポール71G NF(0.5%,25℃,4,000〜11,000cps)、カーボポール974P NF(0.5%,25℃,29,400〜39,400cps)、カーボポール980 NF(0.5%,25℃,40,000〜60,000cps)、カーボポール981 NF(0.5%,25℃,4,000〜10,000cps)、カーボポールUltrez10 NF(0.5%,25℃,45,000〜65,000cps)、ハイビスワコー103、ハイビスワコー104、ハイビスワコー105、ハイビスワコー304、ハイビスワコー204等が好ましい。
【0021】
本発明の水性懸濁剤は、界面活性剤を含有していないことを特徴とする。一般的に医薬品添加物として使用される界面活性剤としては、イオン性/非イオン性界面活性剤があり、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール、スルビタン脂肪酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート60、ポリソルベート80、マクロゴールド400、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴール等が挙げられるが、このような界面活性剤を水性懸濁剤に配合した場合、鼻腔内への噴霧により、口中不快感や違和感を生じ、良好な使用感を得ることは極めて困難である。一方、本発明の水性懸濁剤は、このような使用感に悪影響を及ぼす界面活性剤を含有しておらず、良好な使用感を与えるものである。
【0022】
本発明の水性懸濁剤の粘度は、カルボキシビニルポリマーの配合量により調整されることを特徴とするが、このカルボキシビニルポリマーの配合量は、多すぎると水性懸濁剤の粘度が高くなって、噴霧すると違和感があり、さらに、使用後長期間放置すると、ノズルの先が固化して詰まったり、噴霧異常が生じたりする。逆に、少なすぎると水性懸濁剤のチキソトロピー性が維持できず、主成分の沈降といった物理的な安定性に劣る。従って、これら問題を解決する配合量として、本発明の水性懸濁剤の粘度を10〜400cps、好ましくは20〜100cpsの範囲に調整するような配合量であればよく、具体的な配合量としては、0.1〜1.5重量%の範囲が好ましい。
【0023】
本発明の水性懸濁剤に配合される清涼化剤としては、鼻腔内投与に適した清涼性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、単環テルペン類が好適に使用でき、具体的には、リモネン(特にd−体)、メントール(特にl−体)およびその誘導体(O−エチルメントール等)、ボルネオール(特にd−体)、カンフル(特にdl−体)、ユーカリ油等が例示される。ここで、メントールには、それが含まれているハッカ油やハッカ水も包含される。また、ウイキョウ油、サリチル酸メチル、クロロブタノール等も好適に使用できる。さらに、ミント類も好適に使用され、具体的にはスペアミントおよびペパーミント等が好ましく使用される。この清涼化剤の配合量は、水性懸濁液を鼻腔内に噴霧した際に清涼感を付与できる量であればよく、活性成分や多価アルコールの種類や配合量にもよるが、水性懸濁剤中、0.001〜0.5重量%の範囲が好ましい。
【0024】
以上述べたような構成を有する本発明製剤の主な特徴としては、従来の水性懸濁剤においては、配合された界面活性剤に起因する口中不快感・違和感等が見られていたところ、本発明では、これら界面活性剤を含まず、界面活性剤と同様の効果を有する成分として多価アルコールおよびカルボキシビニルポリマーを用いることにより、このような問題点を解消したため、その使用感が特に良好となる。
【0025】
従来の水性懸濁剤は、鼻腔内投与に適し、粘膜に適用可能な賦形剤をさらに配合してもよく、例えば、等張化剤、防腐剤、安定剤、緩衝剤、粘膜刺激緩和剤等の従来より公知のものが挙げられる。
【0026】
本発明の水性懸濁剤は、鼻腔内投与用の微量定量噴霧剤だけでなく、滴剤、一般の外用液剤としても利用できる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を試験例および実施例をもってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】
実施例1(プロピオン酸フルチカゾン配合処方)
適量の精製水中にクエン酸およびクエン酸ナトリウムを添加、高速攪拌材(ウルトラタラックス、7400rpm)で攪拌溶解させ、次いでカルボキシビニルポリマー(ハイビスワコー105)を攪拌しながら徐々に加え、ゾル様の溶液を得た。これにハッカ油とプロピオン酸フルチカゾンをプロピレングリコールとグリセリンに懸濁分散された液を徐々に加えて均一攪拌した。その後、適量の水酸化ナトリウムを加えてpH6.5付近に調整し、精製水を加えて全量とし、均一混和してゾル状溶液を得た。これを1噴射100μl用の点鼻液用噴霧容器に充填した。配合処方は表1に示す。
【0029】
以下、実施例1に準じた方法により実施例2(プロピオン酸フルチカゾン配合処方)、実施例3(プロピオン酸フルチカゾン配合処方)、実施例4(フランカルボン酸モメタゾン配合処方)および実施例5(塩酸レボカバスチン配合処方)に示す水性懸濁剤を得た。配合処方は表1に示す。


[表1]

【0030】
さらに、比較例として実施例1に準じた方法を用い、表2に示す配合処方にて、水性懸濁剤(比較例1〜5)を得た。
[表2]

【0031】
試験例1 水性懸濁剤の物性試験(沈降の有無)
<試験方法>
実施例および比較例で得られた水性懸濁液について、懸濁液製造後1日放置後の沈殿の有無を目視にて観察し、比較した。その結果を表3に示す。

[表3]

【0032】
<結果>
表3より、カルボキシビニルポリマーを使用した実施例1、4および5の懸濁剤は、1日放置後も活性成分の沈降が見られず、噴霧状態も良好なのに対し、比較例1(PVPK−90を使用)および比較例2(CMCNaを使用)は白い沈殿が見られ、毎噴射時に沈殿物を混合する処置が必要であった。
【0033】
試験例2 水性懸濁剤の物性試験(粘度)
<試験方法>
実施例および比較例で得られた水性懸濁液について、日本薬局方ウベローゼ型粘度計を用いて水中(25℃)で測定し、比較した。その結果を表4に示す。
[表4]

【0034】
<結果>
表4より、実施例1〜3は活性成分の沈降もなく、噴霧状態も良好なのに対し、粘度が低い比較例3は沈殿が見られ、かつ噴霧状態も使用時に混合が必要であった。さらに粘度が高い比較例4および5においては、沈殿はないものの、噴霧ができない状態、もしくは噴霧量のばらつきが生じていた。
【0035】
試験例3 水性懸濁剤の物性試験(使用感)
<試験方法>
実施例1〜5で得られた水性懸濁液と以下に示す比較点鼻剤1および2とについて、試料を10ml容量のポリプロピレン製ボトル(50μlの定量噴霧用ポンプ付き)に充填し、健常人3名が片方の鼻腔に1回噴霧して、評価した。
比較点鼻剤1:市販のプロピオン酸フルチカゾン点鼻剤
(ポリソルベート80、フェニルエチルアルコール含有)
比較点鼻剤2:市販のプロピオン酸ベクロメタゾン含有水性製剤、および
市販の塩酸レボカバスチン含有水性懸濁剤
(ポリソルベート80含有)
【0036】
<結果>
実施例1〜5は、比較点鼻剤1および2と比較して、不快臭および口中不快感は見られず、その使用感において良好であった。
【0037】
試験例4 水性懸濁剤の物性試験(噴射量)
<試験方法>
実施例1、2、4および比較例4で得られた水性懸濁液について、これらを1回噴射量が100μlの容器に充填し、容器を上に向けて10回連続噴射した場合の1回噴射量のばらつきを測定、比較した。
【0038】
<結果>
高い粘度を有する比較例4(粘度:565cst)は1回噴射量のばらつきが大きいのに対して、実施例1(粘度:20.81cst)、実施例2(粘度:72.89cst)および実施例4(粘度:163cst)は、1回噴射量のばらつきも小さく、活性成分の沈降もなく、噴霧状態も良好であった。
【0039】
以上のように、本発明の水性懸濁剤は、口中不快感・不快臭や違和感もないことから使用感において良好であることから患者コンプライアンスの更なる向上に対して有用な製剤である。さらに、本発明の水性懸濁剤は、界面活性剤、特にポリソルベート類を含んでおらず、市販の塩酸レボカバスチン含有水性懸濁剤(ポリソルベート80含有)で見られるような活性成分の沈降もなく、さらには試験例3で示すような使用感の問題も解消された有用な製剤である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上の説明で明らかなように、本発明の水性懸濁剤においては、カルボキシビニルポリマーを配合し、その粘度を10〜400cpsに調整することで、良好な分散性が維持され、さらに界面活性剤を含まないことで噴霧しても口中不快感や違和感がなく使用感が良好で、また、長期保存による主成分の沈降もなく、物理的にも安定であり、患者のコンプライアンスの良い、安定性の高い水性懸濁剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)難水溶性の活性成分、
(b)多価アルコール、および
(c)カルボキシビニルポリマー
を含有してなり、その粘度が10〜400cpsであることを特徴とする、界面活性剤を含まない水性懸濁剤。
【請求項2】
難水溶性の活性成分が、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、塩酸レボカバスチン、エバスチン、ラマトロバンおよびアンレキサノクスから選択される、請求項1記載の水性懸濁剤。
【請求項3】
多価アルコールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオールおよびソルビトールから選択され、かつ少なくとも1種がグリセリンおよび/またはプロピレングリコールである、請求項1記載の水性懸濁剤。
【請求項4】
(a)難水溶性の活性成分が0.01〜1.5重量%、
(b)多価アルコールが3〜25重量%、および
(c)カルボキシビニルポリマーが0.1〜1.5重量%
をそれぞれ含有してなる、請求項1記載の水性懸濁剤。
【請求項5】
清涼化剤を含有してなる請求項1〜4記載の水性懸濁剤。
【請求項6】
清涼化剤が、リモネン、メントールおよびその誘導体、ハッカ油、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油、ウイキョウ油、サリチル酸メチル、クロロブタノールおよびミント類、から選択される、請求項5記載の水性懸濁剤。

【公開番号】特開2006−69946(P2006−69946A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254226(P2004−254226)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】