心房心筋層の機能低下を検出するためのP波の監視
埋め込み可能医療デバイス(IMD)(10)は、電位図信号内のP波の少なくとも1つの特性を監視する。所定期間にわたって特性の変化を監視することによって、IMDは、心房心筋層の機能低下を検出する。一部の実施形態では、IMDは、所定期間にわたる特性の変化に基づいて、虚血、狭心症発生の可能性の増加、又は、将来の心房細動のリスクを検出する。IMDは、臨床医が取り出し、且つ評価するための検出に関する情報及び他の診断情報を記憶するメモリ、及び/又は、検出を患者に警告する警報を含むことができる。一部の実施形態では、IMDは、心房追従心室ペーシングモードから出るように切り換え、心房追従心室ペーシングモードについて最大追従レートを減少させ、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させ、且つ/又は、識別に応答して、薬剤又は神経刺激などの治療の送出を始動するか、又は、修正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓監視に関し、より詳細には、心臓の電気活動を監視する埋め込み可能医療デバイスに関する。
虚血性心疾患及び僧房弁疾患は、心房心筋層を機能低下させる状態の例である。虚血性心疾患は、心房心筋層内に梗塞性組織をもたらし、僧房弁疾患は、拡張及び心房心筋層の弱化をもたらす。これらの及び他の疾患メカニズムによる心房心筋層の機能低下は、患者の不快及び心機能の低下をもたらす可能性がある。
【0002】
たとえば、虚血性心疾患と僧房弁疾患は共に、発作性心房細動の発症をもたらす場合がある。細動エピソード中の心房の無秩序な収縮は、適切な心室充満にとって不十分であり、心房細動は、その結果、めまい及び息切れなどの患者の症状をもたらす可能性がある。心房細動はまた、生命にかかわる可能性がある塞栓の形成を促す。さらに、心室の虚血性心疾患は、自然発生的に、運動期間中に、又は、強い感情の間に起こる場合がある、狭心症をもたらす可能性がある。
【0003】
包括的に、本発明は、電位図信号内のP波の少なくとも1つの特性を監視する埋め込み可能医療デバイス(IMD)を対象とする。所定期間にわたる特性の変化を監視することによって、IMDは、心房心筋層の機能低下を検出する。一部の実施形態では、IMDは、虚血を検出するか、狭心症の発生についての可能性を識別するか、又は、所定期間にわたる特性の変化に基づいて心房細動の発生の前に将来の心房細動のリスクを識別する。
【0004】
例示的な実施形態では、IMDは、信号内のP波の振幅及び/又は幅を測定する。一部の実施形態では、IMDは、所定期間の間の、平均P波振幅、P波幅変動性、及び/又は、P波幅分散を計算し、現在の期間についての計算された値を、以前の期間についての計算された値と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0005】
一部の実施形態では、IMDは、臨床医が取り出し、且つ評価するために、検出に関する情報及び他の診断情報を記憶するメモリを含む。さらに、IMDは、検出を患者に警告する警報を含むことができる。一部の実施形態では、IMDは、心房追従心室ペーシングモードから出るように切り換え、心房追従心室ペーシングモードについて最大追従レートを減少させ、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させ、且つ/又は、識別に応答して、薬剤又は神経刺激などの治療の送出を始動するか、又は、修正する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、患者の心臓内の電気活動を表す信号が、患者内に埋め込まれた電極を介して受け取られる方法を対象とする。信号は、信号内のP波の特性を監視するために処理される。心臓の心房心筋層の機能低下は、特性に基づいて検出される。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、電極及びプロセッサを備える埋め込み可能医療デバイスを対象とする。電極は、患者内に埋め込み可能であり、患者の心臓内の電気活動を表す信号を検出する。プロセッサは、信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心臓の心房心筋層の機能低下を検出する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を対象とする。命令は、プログラム可能プロセッサが、患者の心臓内での電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、患者に治療を送出する治療送出デバイスと、監視デバイスとを備えるシステムを対象とする。監視デバイスは、患者の心臓内の電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心臓の心房心筋層の機能低下を検出し、検出に基づいて治療送出デバイスによる治療の送出を制御する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、患者内に埋め込まれた電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取る方法を対象とする。信号は、信号内のP波の特性を監視するために処理され、特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクが識別される。
【0011】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面及び以下の説明において述べられる。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0012】
図1は、患者12内に埋め込まれた、心房心筋層の機能低下を検出する例としての埋め込み式医療デバイス(IMD)10を示す概念図である。例示的な実施形態では、IMD10は、多腔心臓ペースメーカの形をとる。図1に示す例示的な実施形態では、IMD10は、患者12の心臓16内に延びるリード線14A及び14B(ひとまとめに「リード線14」)に結合される。より詳細には、右心室(RV)リード線14Aは、1本又は複数本の静脈(図示せず)、上大静脈(図示せず)、及び右心房24を通り、右心室18内に延び、右心房(RA)リード線14Aは、静脈及び大静脈を通り、心臓16の右心房24内に延びる。
【0013】
IMD10は、リード線14上に配置された電極(図示せず)を介して心臓16の脱分極及び再分極に付随する電気信号を検知する。一部の実施形態では、IMD10はまた、リード線14上に配置された電極を介してペーシングパルスを提供する。リード線14上に配置された電極は、当該技術分野でよく知られているように、単極又は2極である。
【0014】
以下でより詳細に述べるように、IMD10は、心房22及び24の心筋層の機能低下を検出するために、心房電位図信号を処理する。より詳細には、IMD10は、信号内のP波の少なくとも1つの特性を測定し、所定期間にわたる特性の変化に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する。IMD10によって測定されるP波の例示的な特性は、振幅、幅の変動性、及び幅の分散を含む。一部の実施形態では、IMD10は、所定の期間にわたるP波の形態の変化を識別するために、当該技術分野で知られているテンプレートマッチング技法を使用する。一部の実施形態では、IMD10は、心房22及び24内の虚血を検出し、心室18及び20内の虚血事象から生じる狭心症のリスクを識別し、且つ/又は、測定される1つ又は複数のP波特性に対する変化に基づいて、将来の心房細動のリスクを識別する。
【0015】
一部の実施形態では、IMD10は、テレメトリデバイスを介して、プログラミングデバイス(図示せず)を使用して臨床医が取り出すために、メモリ(図示せず)内に、検出又は識別された状態の指示を記憶する。一部の実施形態では、IMD10は、警報(図示せず)を始動することによって、心筋層の機能低下の検出によって提起される危険の可能性を患者12に警告する。一部の実施形態では、IMD10は、心房心筋層の機能低下が、臨床状況以外で、発症間際に検出されることを可能にし、それによって、臨床医による迅速な診断及び状態の処置がもたらされる。たとえば、心筋層の機能低下の検出は、将来の心房細動エピソードの可能性を予想した抗不整脈及び/又は抗凝血性投薬の処方を臨床医に促す。
【0016】
例示的な実施形態では、IMD10はまた、心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、患者12に対する治療の送出を制御する、たとえば、治療を始動するか、又は、修正する。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、心筋層の機能低下による将来の心房細動のリスクを識別することに応答して、リード線14Bを介してレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。こうした実施形態では、IMD10は、たとえば、活動に基づいて心房補充間隔を確定するために、IMD10によって使用される関数の傾きを増加することによって、レート応答ペーシングの攻撃性を増加させることができる。傾きの増加によって、より大きなパーセンテージの心房脱分極がペーシングされ、心房細動の発生の可能性を減少させることができる。IMD10が、心房レートに追従することによって、心室18及び20の一方又は両方をペーシングする時、IMD10の一部の実施形態はまた、心房細動に関連する高くて不規則な心房レートに追従することを回避するために、心筋層の機能低下による将来の心房細動のリスクを識別することに応答して、心室ペーシングレートを心房レートから「分離する」。
【0017】
一部の実施形態では、IMD10は、心房心筋層の機能低下の検出に応答して、薬剤送達デバイス(図示せず)による薬剤の送達、又は、神経刺激器による神経刺激治療の送出を制御する。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、所定期間にわたるP波の変化に基づいて、狭心症を生むリスクの増加を検出することに応答して、狭心症を処置するのに使用されるニトログリセリン又は他の薬剤の送達、又は狭心症を処置するのに使用される脊髄刺激の送出を制御する。さらに、IMD10が、心房レートに基づいて心室18及び20の一方又は両方をペーシングする場合、IMD10の一部の実施形態は、狭心症を生むリスクの増加を検出することに応答して、心室についての最大追従レートを減少させる。狭心症エピソード中の高いペーシングレートは、こうしたエピソードを長引かせるか、エピソードの深刻さを増加させる可能性がある。一部の実施形態では、IMD10は、P波の変化に基づいて虚血を検出し、心臓16への血栓溶解性薬剤の送達を制御する。
【0018】
図1に示すIMD10及びリード線14の構成は、例示に過ぎない。種々の実施形態において、IMD10は、心臓16内の、又は、心臓16外の種々の位置に延びる任意の数のリード線14に結合される。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、左心室検知及び/又はペーシングのための、左心室22に近い冠状静脈洞26内の位置に延びるリード線14に結合される。一部の実施形態では、少なくともいくつかのリード線14は心外膜リード線である。
【0019】
さらに、一部の実施形態では、IMD10は、リード線14を全く含まないが、代わりに、IMD10のハウジングと一体になった電極(図示せず)を介して心臓16内の電気活動を表す信号を受け取る。こうした実施形態では、IMD10は、たとえば、埋め込み可能ループレコーダの形をとる。さらに、一部の実施形態では、IMD10は、患者12内に埋め込まれるのではなく、代わりに、心臓16内の、又は、心臓16外の種々の位置に、患者12の皮膚を通して延びる皮下リード線14、又は、患者の表面、たとえば、皮膚上の位置から心臓内の電気活動を検出する経皮的リード線に結合する。
【0020】
図2は、IMD10及び患者12の心臓16をさらに示す概念図である。例示的な実施形態では、リード線14はそれぞれ、管状絶縁シースによって互いから分離された複数の同心のコイル状導体を保持する細長い絶縁リード線本体を含む。リード線14A及び14Bの遠位端に隣接して、それぞれ、2極電極30と32及び34と36が配置される。例示的な実施形態では、電極30及び34は、リング電極の形をとり、電極32及び36は、絶縁電極ヘッド38及び40内にそれぞれ伸縮可能に取り付けられた伸張可能らせん先端電極の形をとる。電極30〜36のそれぞれは、その関連するリード線14のリード線本体内のコイル状導体のうちの1つに結合する。
【0021】
センス/ペース電極30〜36は、心臓16の脱分極及び再分極に付随する電気信号を検知する。電気信号は、リード線14を介してIMD10に伝導される。例示的な実施形態では、センス/ペース電極30〜36の少なくともいくつかは、さらに、電極の近傍の心臓組織の脱分極を引き起こすためにペーシングを送出する。一部の実施形態では、IMD10はまた、IMD10の密封されたハウジング44の外表面と一体に形成されたハウジング電極42などの、1つ又は複数の不関ハウジング電極を含む。こうした実施形態では、電極30〜36のうちの任意の電極は、ハウジング電極42と共に単極検知又はペーシングに使用されることが可能である。
【0022】
図3は、IMD10の機能ブロック図である。図示された実施形態では、IMD10は、マイクロプロセッサベースのアーキテクチャを有する多腔ペースメーカの形をとる。しかしながら、この図は、本発明の種々の実施形態をその中で具体化することができるデバイスのタイプの例示であると考えられるべきであり、制限として考えられるべきではない。たとえば、本発明の一部の実施形態は、ペーシング治療も、どんな治療も提供しない。こうした実施形態の例は、埋め込み可能ループレコーダである。
【0023】
IMD10はマイクロプロセッサ50を含む。マイクロプロセッサ50は、ROM(図示せず)、EEPROM(図示せず)、及び/又は、RAM52などのメモリ内に記憶されたプログラム命令を実行し、命令は、本明細書において、マイクロプロセッサ50が持っているとみなされる機能を実施するようにマイクロプロセッサ50を制御する。マイクロプロセッサ50は、たとえば、アドレス/データバス54を介してIMD10の種々の他の構成部品と通信する、且つ/又は、制御するために結合される。
【0024】
電極30及び32は、増幅器56に結合し、増幅器56は、測定されるR波振幅の関数として調整可能な検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器の形をとる。電極30と32の間で検知される信号が、現在の検知閾値を越える時はいつでも、RV OUTライン58上に信号が生成される。電極34及び36は、増幅器60に結合し、増幅器60は、同様に、測定されるP波振幅の関数として調整可能な検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器の形をとる。電極34と36の間で検知される信号が、現在の検知閾値を越える時はいつでも、RA OUTライン62上に信号が生成される。
【0025】
一部の実施形態では、IMD10は心臓16をペーシングする。ペーサタイミング/制御回路要素64は、ペーシングモードに関連する基本時間間隔を制御するプログラム可能デジタルカウンタを含む。回路要素64はまた、ペーシングに関連する補充間隔を制御する。例示的な2腔ペーシング環境では、ペーサタイミング/制御回路要素64は、右心房18及び右心室20に送出されるペーシングパルスのタイミングを調整するのに使用される、心房及び心室補充間隔を制御する。
【0026】
ペーサタイミング/制御回路要素64によって規定される間隔はまた、検知されたR波及びP波が、補充間隔の再開タイミング並びにペーシングパルスのパルス幅に影響しない不応期を含む。これらの間隔の継続時間は、RAM52に記憶されたデータに応答して、マイクロプロセッサ50によって確定され、アドレス/データバス54を介して回路要素64に伝達される。ペーサタイミング/制御回路要素64はまた、マイクロプロセッサ50の制御下で心臓ペーシングパルスの振幅を確定する。
【0027】
マイクロプロセッサ50は、割り込み駆動式デバイスとして動作し、検知されるP波及びR波の発生並びに心臓ペーシングパルスの生成に対応する、ペーサタイミング/制御回路要素64からの割り込みに応答する。これらの割り込みはデータ/アドレスバス54を介して提供される。マイクロプロセッサ50によって実施される任意の必要な数学的計算、及び、ペーサタイミング/制御回路要素64によって制御される値又は間隔の任意の更新は、こうした割り込みに続いて起こる。
【0028】
選択されたペーシングモードによれば、ペーサタイミング/制御回路要素64は、それぞれ、電極30と32及び34と36に結合される、ペーサ出力回路66及び68の一方又は両方によって、ペーシングパルスの生成をトリガする。出力回路66及び68は、当該技術分野で知られているパルス発生回路であり、パルス発生回路は、エネルギーの貯蔵及びパルスとしてのエネルギーの送出のためのコンデンサ及びスイッチを含む。ペーサタイミング/制御回路要素64は、R波又はP波の検出、或いは、ペーシングパルスの生成によって、補充間隔カウンタをリセットし、それによって、心臓ペーシング機能の基本タイミングを制御する。
【0029】
先に示したように、一部の実施形態では、IMD10は、患者12に対してレート応答ペーシング治療を提供する。IMD10は、活動センサ70を含むものとして、図3に示される。活動センサ70は、通常(必ずしもそうであるわけではないが)、患者12の代謝要求に関連する被測定パラメータの関数として変わるセンサ出力を提供する。例示的な実施形態では、活動センサ70は、ハウジング44(図2)内部に配置されたハイブリッド回路に接合された圧電セラミック加速度計、又は、患者12の胸部インピーダンスの周期的な変動によって、患者12の呼吸数を検出するための電極である。
【0030】
活動センサ86によって提供される出力信号は、活動検出回路72に結合され、活動検出回路72は、出力に基づいて、患者12の活動レベル、たとえば、カウントを確定する。活動レベルすなわちカウントは、ペーサタイミング/制御回路要素64に提供され、ペーサタイミング/制御回路要素64は、レート応答ペーシングを提供するために、活動レベルすなわちカウントに基づいて1つ又は複数の補充間隔を調整する。一部の実施形態では、IMD10は、複数の活動センサ70を含み、種々のセンサの出力の組み合わせ、又は、混合に基づいてレート応答ペーシングを提供する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、電極30〜36及び42の組み合わせから受け取る電気信号内で、検出されるQT間隔の長さに基づいて活動を測定し、電気信号は、活動に基づいて変わり、事実上、活動センサの役を果たす。こうした実施形態では、マイクロプロセッサ50は、1つ又は複数の補充間隔の調整のために、活動レベルの指示を回路要素64に提供する。
【0031】
先に示したように、一部の実施形態では、IMD10は、たとえば、心房追従ペーシングモードに従って、ペーシングされた心房脱分極又は内因性の心房脱分極の発生に基づいて、電極30及び32を介した右心室20に対するペーシングパルスの送出のタイミングを調整する。こうした実施形態では、ペーサタイミング/制御回路要素64は、RA OUTライン62上で信号を受け取ると、心室補充間隔を設定する。一部の実施形態では、心室補充間隔、たとえば、心房追従レートは、マイクロプロセッサ50によって回路要素64に提供される最大値及び最小値によって制約される。
【0032】
先に述べたように、IMD10は、心臓16内での電気活動を表す心房電位図信号を受け取り、信号内のP波の少なくとも1つの特性を測定するために信号を処理し、所定期間にわたる、測定された特性の変化に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する。例示的な実施形態では、信号は、信号の特性を測定するために、デジタル信号プロセッサ(DSP)74によってデジタル処理される。こうした実施形態では、デジタル信号解析で使用するために電極30〜32及び42のうちのどれが広帯域(0.5〜200Hz)増幅器78に結合されるかを選択するために、スイッチマトリクス76が使用される。電極の選択は、データ/アドレスバス66を介してマイクロプロセッサ60によって制御され、選択は、望まれるように変わってもよい。
【0033】
選択された電極から導出され、増幅器78によって増幅されたアナログ心房電位図信号は、マルチプレクサ80に供給され、その後、A/D変換器82によってマルチビットデジタル信号に変換される。例示的な実施形態では、DSP74は、以下でさらに詳細に述べるように、P波振幅及び/又は幅を測定するために、マルチビットデジタル信号を処理する。一部の実施形態では、デジタル信号は、DSP74による後の解析のために、ダイレクトメモリアクセス回路84の制御下でRAM52に記憶される。DSP74によって測定されたP波振幅及び/又は幅は、RAM52に記憶され、解析のためにマイクロプロセッサ60によって取り出される。以下でさらに詳細に述べることになる、振幅、幅の変動性、及び/又は、幅の分散の解析に基づいて、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0034】
IMD10は、本明細書では、別個のプロセッサを有するものとして述べられるが、マイクロプロセッサ50は、本明細書でマイクロプロセッサ50が持っているとみなされる機能と、本明細書でDSP74が持っているとみなされるデジタル信号解析機能との両方を実施してもよい。さらに、マイクロプロセッサベースのペースメーカ実施形態のIMD10の状況で、本明細書で述べられるが、本発明は、マイクロプロセッサ、DSP、FPGA、又は他のデジタルロジック回路であってもよい、1つ又は複数のプロセッサを含む種々の埋め込み可能医療デバイスで具体化されてもよい。
【0035】
さらに、一部の実施形態では、IMD10は、P波の振幅及び/又は幅を測定するために、デジタル信号解析を利用しない。こうした実施形態では、IMD10は、当該技術分野で知られているように、P波のピーク及び/又は開始点と終了点を識別するための、アナログピーク、傾斜、又は閾値検出増幅器回路を含む。さらに、こうした実施形態では、ペーサタイミング/制御回路64は、これらの増幅器回路の出力を受け取り、これらの事象の発生の指示を、マイクロプロセッサ50がP波の振幅及び/又は幅を確定することができるように、マイクロプロセッサ50に提供する。
【0036】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下の検出の指示を患者12に提供する。例示的な実施形態では、IMD10は、IMD10が埋め込まれる患者12に可聴信号を提供する警報86を含む。警報86を始動することによって、マイクロプロセッサ50は、臨床医との相談を必要とする可能性のある問題を患者12に警告する。
【0037】
一部の実施形態では、IMD10は、外部プログラミングユニット(図示せず)によってプログラム可能であり、IMD10の或る機構は、患者作動器(patient activator)(図示せず)によって制御される。プログラミングユニットと患者作動器は共に、当該技術分野で知られているRFテレメトリ技法を使用して、テレメトリ回路88を介してIMD10と通信する。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下の検出の指示をRAM52に記憶し、テレメトリ回路88を介して患者作動器又はプログラマが呼び掛けると、患者12または臨床医のいずれかに指示を提供する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50はまた、P波の振幅、幅、幅の変動性、幅の分散、及び心房電位図信号のサンプルなどの診断データを記憶する。こうした情報は、テレメトリ回路88及びプログラマを介して臨床医に提供され、チャート、グラフ、ヒストグラム、マーカチャネル情報を有するEGMストリップなどの種々のグラフィック形態でプログラマによって表示されることができる。
【0038】
例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、P波の振幅、P波の幅の変動性、及び/又は、P波の幅の分散に基づいて、患者12に対する治療の送出を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、ペーシングされる心房脱分極のパーセンテージを増加させるよう、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。こうした実施形態では、マイクロプロセッサ50は、回路要素64に新しいレート応答パラメータ又は機能を提供する、たとえば、1つ又は複数のレート応答関数の傾きを増加させてレート応答ペーシングの攻撃性を増加させる。
【0039】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心室ペーシングレートを心房レートから分離するように回路要素74に指示する、たとえば、心室ペーシングのために、より低い最大心房追従レートを回路要素74に提供する。さらに、一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、それぞれ薬剤送達デバイス又は神経刺激器による1つ又は複数の薬剤又は神経刺激治療の送出を制御する。
【0040】
図4は、心房心筋層の機能低下を検出するためにIMD10によって処理された、例としての心房電位図信号90を示すタイミング図である。信号90は、2極構成でのRAリード線14Bの電極34及び36、又は、単極構成での電極34と36の一方及びハウジング電極42を使用して検出される。一部の実施形態では、電位図信号は、2つ以上のハウジング電極42を使用して検出され、IMD10の埋め込み可能ループレコーダの実施形態などの、リード線を含まないIMD10の実施形態を使用可能にする。
【0041】
信号90はP波92を含む。一部の実施形態では、IMD10は、P波92の振幅94及び/又はP波92の幅100を測定するために信号90を処理する。例示的な実施形態では、IMD10のDSP74は、振幅94及び/又は幅100を測定するために信号90をデジタル処理する。一部の実施形態では、IMD10は、P波92の複数の特徴部を、RAM52などのメモリに記憶したテンプレートと比較する。
【0042】
説明を容易にするために、心臓16の単一の心周期を表す信号90の一部のみが図4に示される。しかしながら、DSP74は、信号90内の複数の振幅94及び/又は幅100を測定するか、又は、所定期間にわたって、複数のP波92をテンプレートと比較することが理解される。DSP74は、上述したように、マイクロプロセッサ50に測定された値を提供する、且つ/又は、テンプレートに対するP波92の不適切な類似をマイクロプロセッサに指示する。
【0043】
当該技術分野で知られているように、心房EGMは、表面ECGのQRS波と時間的に同期する心室脱分極を表す波(図示せず)を含む。電極34、36、及び42の組み合わせを介して検知されると、この波は、「遠方場」R波と呼ばれる。遠方場R波の振幅は、電極間の距離及び心室質量に対するリード線14Bの軸の向きによって決まる。
【0044】
P波92の振幅94及び/又は幅100を測定するか、又は、P波92をテンプレートと比較するために、DSP74は、最初に、信号90内のP波92を識別する。DSP74は、当該技術分野で知られている任意の方法によって、信号90内のP波92を識別する。一部の実施形態では、DSP74は、ペーサタイミング/制御回路64からP波92の発生の指示を受け取る。他の実施形態では、DSP74は、或る時間窓内で起こる、いくつかの、信号90の閾値交差又は信号90の1次微分のゼロ交差を検出することによって、P波92を識別する。一部の実施形態では、DSP74は、Wohlgemuthに対する、「Cardiac Pacing System With Improved Physiological Event Classification Based on DSP」という名称の同一譲受人に譲渡された米国特許第6,029,087号に記載される技法を使用してP波92を検出する。
【0045】
DSP74は、信号90の極性に依存して正又は負である、ピーク96におけるデジタル信号の値として振幅94を測定する。DSP74は、P波92の開始点98から終了点102までの期間として幅100を測定する。例示的な実施形態では、DSP100は、デジタル信号の閾値交差又はデジタル信号の1次微分のゼロ交差として開始点98及び終了点102を識別する。
【0046】
図5は、所定期間にわたってDSP74によって測定されたP波振幅94を表す曲線110を示す。P波振幅94の減少は、心房心筋層の機能低下を指示する。P波振幅94の医学的に重要な変化、たとえば、心房心筋層の機能低下を指示する変化は、数ヶ月の期間にわたって起こり、且つ目立つ可能性があるが、重要性の小さい変化は、拍動ごとに起こるであろう。その結果、例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、所定期間にわたるP波振幅の平均値、たとえば、所定日数、所定週数、又は所定月数についての平均を求め、現在の平均値を以前の平均値と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0047】
さらに、一部の実施形態では、曲線110の領域112に示す減少などのP波振幅における比較的小さな長期間の減少は、重要であるとは考えられないが、領域114に示す減少などの大きな長期間の減少は、重要であると考えられる。その結果、マイクロプロセッサ50が現在の平均P波振幅と比較する以前の平均P波振幅は、直前の期間にわたる平均である必要はない。現在の平均P波値をより離れた以前の平均と比較することによって、マイクロプロセッサ50は、P波振幅の長期の変化の大きさをよりよく識別することができる。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の平均P波値と過去の平均P波値の差、又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0048】
図6は、所定期間にわたるP波振幅に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(120)、信号90内のP波92の振幅94を測定する(122)。一部の実施形態では、DSP74は、振幅94を連続して測定するのではなく、代わりに、振幅を周期的にサンプリングする。
【0049】
マイクロプロセッサ50は、DSP74から振幅94を受け取り、現在の期間について振幅の平均値を計算する(124)。マイクロプロセッサ50は、現在の平均値を、一部の実施形態では直前の平均値ではない、以前の平均値と比較する(126)。マイクロプロセッサ50は、比較に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する(128)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の平均値と過去の平均値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。
【0050】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(130)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(132)。たとえば、一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、上述したように、ペーサタイミング/制御回路64に新しいレート応答関数を提供する。図6に示したように、DSP74は、P波振幅を測定し続け、マイクロプロセッサは、心房心筋層の機能低下が検出された後、また、検出されなかった後に、所定期間にわたって、測定された振幅の平均を計算する。
【0051】
図7は、所定期間にわたってDSP74によって測定されたP波幅100の変動性を示す曲線140を示す。特に、心房18及び24(図1)の拡張によって引き起こされる、心房心筋層の機能低下は、曲線140の領域142で指示される変動性などの、P波92の幅100の変動性の増加をもたらす。平均P波振幅を求める時にはよくあることであるが、マイクロプロセッサ50は、比較的長い期間にわたって測定されたP波幅100の変動性、たとえば、所定日数、所定週数、又は所定月数についての平均を求め、現在の期間についての変動性を、前の期間についての変動性と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。さらに、一部の実施形態では、現在の期間についてのP波幅100の変動性を、以前のいくつかの期間にわたって測定したP波幅100の変動性と比較して、P波幅変動性の長期の変化の大きさをよりよく認識する。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間についての変動性と過去の期間についての変動性の差、又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0052】
図8は、所定期間にわたるP波幅100の変動性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(150)、信号90内のP波92の幅100を測定する(152)。一部の実施形態では、DSP74は、幅100を連続して測定するのではなく、代わりに、P波幅100を周期的にサンプリングする。P波92の幅100を周期的に測定することによって、IMD10は、DSP74の処理資源及びDSP74に電力を供給するのに使用されるIMD10の電池を節約する。
【0053】
マイクロプロセッサ50は、DSP74から、測定された幅100を受け取り、現在の期間にわたる幅の変動性を計算する(154)。マイクロプロセッサ50は、現在の変動性を、一部の実施形態では直前の期間についてのP波変動性ではない、以前の変動性と比較する(156)。マイクロプロセッサ50は、比較に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する(158)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の変動性の値と過去の変動性の値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(160)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(162)。
【0054】
図9は、所定期間にわたりDSP74によって測定されたP波幅100の分散を示す曲線170を示す。所定期間にわたるP波幅100の分散は、その期間の間に測定された最大と最小のP波幅100の差として規定される。P波幅100の分散の長期の増加、たとえば、数ヶ月にわたる増加は、心房心筋層の機能低下を指示するが、短期の増加、たとえば、数分にわたる増加は、狭心症が起こる可能性の増加を指示する。そのため、曲線170の領域172は、図9の水平軸の時間スケールに応じて、心房心筋層の機能低下か、切迫した狭心症エピソードのいずれかを表していると言うことができるであろう。
【0055】
種々の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間について計算されたP波幅分散を、以前の期間について計算されたP波幅分散と比較することによって、心房心筋層の機能低下及び切迫した狭心症のいずれか、又は、両方を検出する。しかしながら、期間の長さ、及び現在のP波分散と比較されるP波分散の新しさ(recentness)は、どの状態が検出されるかに応じて変わる。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間と過去の期間についての分散の差又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0056】
図10は、所定期間にわたってDSP74によって測定されるP波幅100の分散に基づいて心房心筋層の機能低下又は切迫した狭心症を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(180)、信号90内のP波92の幅100を測定する(182)。上述したように、一部の実施形態では、DSP74は、幅100を連続して測定するのではなく、代わりに、P波幅100を周期的にサンプリングする。
【0057】
マイクロプロセッサ50は、DSP74からの測定された幅100を受け取り、現在の期間にわたる、幅の分散、たとえば、DSP74によって測定された最大と最小の幅100の差を計算する(184)。マイクロプロセッサ50は、現在の分散を以前の分散と比較し(186)、比較に基づいて心房心筋層の機能低下又は切迫した狭心症を検出する(188)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の分散値と過去の分散値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。
【0058】
マイクロプロセッサ50が、比較に基づいて切迫した狭心症を検出する実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心室電位図信号内のQT間隔が短縮したかどうか、及び/又は、活動モニタ72によって指示された活動レベルが、同じ期間の間に増加したかどうかを判定することによって検出を確認する。短縮したQT間隔は、身体的ストレス又は情緒的ストレスのいずれかによってもたらされ、活動センサ70によって検出される活動の増加は、身体的ストレスよってもたらされる。患者がストレス下にあると、狭心症エピソードが発生する可能性が増加する。QT間隔が測定される実施形態では、DSP74は、サンプリングされた心室電位図信号を受け取り、当該技術分野で知られている技法を使用してQT間隔を測定する。
【0059】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下又は狭心症を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(190)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(192)。たとえば、マイクロプロセッサ50が心房心筋層の機能低下を検出する一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、上述したように、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させ、且つ/又は、心室ペーシングレートを心房レートから分離する。マイクロプロセッサ50が狭心症を検出する一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、以下でさらに詳細に述べるように、心室ペーシングについて最大心房追従レートを減少させ、且つ/又は、薬剤又は神経刺激の送出を制御する。
【0060】
図11は、心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、治療を修正するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。より詳細には、図11は、心房心筋層の機能低下によってもたらされる心房細動のリスクの識別に応答して、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるIMD10の動作モードを示す。レート応答心房ペーシングの攻撃性の増加は、心房細動エピソードが発生するのを防止する可能性がある。
【0061】
マイクロプロセッサ50は、心房電位図90内のP波92の1つ又は複数の特性を監視し(200)、上述した技法の任意の技法を使用して、心房心筋層の機能低下から生じる将来の心房細動の可能性を識別する(202)。マイクロプロセッサ50は、たとえば、ペーサタイミング/制御回路要素64(図3)に、より大きな傾きを有する新しいレート応答関数を提供することによって、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる(204)。たとえば、例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、Medtronic, Inc.から市販されているKappa(商標)ペースメーカで具体化されるプロファイルなどの、センサレートプロファイルを調整する。
【0062】
マイクロプロセッサ50は、1分などの或る期間にわたってペーシングされる心房拍動のパーセンテージを確定し、この実際のパーセンテージ(AP)を、RAM72などのメモリに記憶された目標心房ペーシング(TAP)パーセンテージ値と比較する(206)。マイクロプロセッサ50は、ペーサタイミング/制御回路要素64から、拍動がペーシングされるか、内因性であるかの指示を受け取る。図11に示すように、マイクロプロセッサ50は、目標が満たされるまで、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。
【0063】
図12及び図13は、IMD10を含む例示的なシステム210及び220を示すブロック図である。図12に示すシステム210は、例示的な実施形態では埋め込み式薬剤ポンプである薬剤送達デバイス212を含む。薬剤送達デバイス212は、患者12に送達される、生物学的物質、遺伝学的物質、又は薬理学的物質のうちの少なくとも1つを保持することが可能なリザーバ、及び、カテーテル218などを介して選択されたロケーションに物質を送達するポンプ(図示せず)を含む。デバイス212はまた、リザーバ214を補充する充填ポート216を含み、充填ポート216は、例示的な実施形態では、シリンジなどによるリザーバ214への経皮的アクセスを可能にする再密封可能な膜の形をとる。例示的な薬剤送達デバイス212は、Medtronic, Inc.から市販されているSynchromed(商標)ポンプで具体化される。
【0064】
IMD10、より具体的には、マイクロプロセッサ50は、送達デバイス212によって、リザーバ214に貯蔵した1つ又は複数の物質の送達を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、デバイス12のポンプを直接に制御し、一方、他の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、デバイス212のプロセッサが物質の送達を始動するか、又は、修正するようにさせる指示をプロセッサに提供する。一部の実施形態では、IMD10及びデバイス212は、共通ハウジング内で単一デバイスを形成する。
【0065】
例示的な実施形態では、IMD10のマイクロプロセッサ50は、切迫した狭心症の検出によって狭心症を処置するのに使用されるニトログリセリン又は他の薬剤、又は、虚血又は切迫した狭心症の検出によって血塊を溶かすのに使用される血栓溶解性薬剤の送達を始動するために、送達デバイス212を制御する。こうした実施形態では、カテーテル218は、デバイス212が心臓16に物質を送達するように位置決めされる。
【0066】
図13に示すシステム220は、IMD10に加えて神経刺激器222を含む。神経刺激器222は、1つ又は複数の電極226を搭載し、電極226を介して患者12の神経組織に神経刺激を送出する1つ又は複数のリード線224を含む。例示的な実施形態では、神経刺激は、電気パルスの形態で送出される。示す実施形態では、リード線224は、患者12の脊髄に神経刺激を送出するのに適した構成で、4つの電極226A〜Dを搭載する。例示的な神経刺激器222及びリード線の組み合わせは、Medtronic, Inc.から市販されているItrel(商標)神経刺激器及びPieces Quad(商標)リード線で具体化される。
【0067】
IMD10、より具体的には、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222による神経刺激の送出を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222による刺激の生成を直接に制御し、一方、他の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222のプロセッサが神経刺激の送出を始動するか、又は、修正するようにさせる指示をプロセッサに提供する。一部の実施形態では、IMD10及び神経刺激器は、共通ハウジング内で単一デバイスを形成する。
【0068】
例示的な実施形態では、IMD10のマイクロプロセッサ50は、切迫した狭心症の検出に応答して、患者12の脊髄への刺激の送出を始動するために、神経刺激器222を制御する。脊髄刺激は、心臓16への血流を増加させ、狭心症に伴う痛みを低減することができる。狭心症に応答して脊髄刺激を送出する例示的な技法に関するさらなる詳細は、Riseに対する、1998年10月20日に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許第5,824,021号に記載される。
【0069】
本発明の種々の実施形態が述べられた。しかしながら、特許請求項の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して、種々の変更を行うことができることを、当業者は認識するであろう。たとえば、P波の特性の測定は、本明細書では、主に、P波振幅、P波幅、及びP波幅の変動性又は分散の測定として述べられたが、本発明は、そのように限定されない。特性の測定は、現在のP波をメモリに記憶した以前のP波又はテンプレートと比較するために、たとえば、Medtronic, Inc.から市販されているMarquis(商標)埋め込み可能カーディオバータ−ディブリレータにおいて実施されるようなテンプレートマッチング、ウェーブレット解析、又は、フーリエ解析技法を使用した測定を含む。
【0070】
別の例として、レート応答ペーシングの攻撃性を増加させる代わりに、又は、それに加えて、本発明の一部の実施形態は、Medtronic, Inc.から市販されているAT500(商標)ペースメーカで実施されるアルゴリズムなどの心房細動防止アルゴリズムの攻撃性を増加させる。これらの、また、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】患者内に埋め込まれた、心房心筋層の機能低下を検出する、例としての埋め込み式医療デバイスを示す概念図である。
【図2】図1の埋め込み可能医療デバイス及び患者の心臓をさらに詳細に示す概念図である。
【図3】図1の埋め込み可能医療デバイスをさらに詳細に示す機能ブロック図である。
【図4】心房心筋層の機能低下を検出するために、図1の埋め込み可能医療デバイスによって処理された例としての心房電位図信号を示すタイミング図である。
【図5】所定期間にわたるP波振幅を示すグラフである。
【図6】所定期間にわたるP波振幅に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図7】所定期間にわたるP波幅の変動性を示すグラフである。
【図8】所定期間にわたるP波幅の変動性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図9】所定期間にわたるP波幅の分散を示すグラフである。
【図10】所定期間にわたるP波幅の分散に基づいて心房心筋層の機能低下又は狭心症を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図11】心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、治療を修正する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図12】図1の埋め込み可能医療デバイスを含む例示的なシステムを示すブロック図である。
【図13】図1の埋め込み可能医療デバイスを含む例示的なシステムを示すブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓監視に関し、より詳細には、心臓の電気活動を監視する埋め込み可能医療デバイスに関する。
虚血性心疾患及び僧房弁疾患は、心房心筋層を機能低下させる状態の例である。虚血性心疾患は、心房心筋層内に梗塞性組織をもたらし、僧房弁疾患は、拡張及び心房心筋層の弱化をもたらす。これらの及び他の疾患メカニズムによる心房心筋層の機能低下は、患者の不快及び心機能の低下をもたらす可能性がある。
【0002】
たとえば、虚血性心疾患と僧房弁疾患は共に、発作性心房細動の発症をもたらす場合がある。細動エピソード中の心房の無秩序な収縮は、適切な心室充満にとって不十分であり、心房細動は、その結果、めまい及び息切れなどの患者の症状をもたらす可能性がある。心房細動はまた、生命にかかわる可能性がある塞栓の形成を促す。さらに、心室の虚血性心疾患は、自然発生的に、運動期間中に、又は、強い感情の間に起こる場合がある、狭心症をもたらす可能性がある。
【0003】
包括的に、本発明は、電位図信号内のP波の少なくとも1つの特性を監視する埋め込み可能医療デバイス(IMD)を対象とする。所定期間にわたる特性の変化を監視することによって、IMDは、心房心筋層の機能低下を検出する。一部の実施形態では、IMDは、虚血を検出するか、狭心症の発生についての可能性を識別するか、又は、所定期間にわたる特性の変化に基づいて心房細動の発生の前に将来の心房細動のリスクを識別する。
【0004】
例示的な実施形態では、IMDは、信号内のP波の振幅及び/又は幅を測定する。一部の実施形態では、IMDは、所定期間の間の、平均P波振幅、P波幅変動性、及び/又は、P波幅分散を計算し、現在の期間についての計算された値を、以前の期間についての計算された値と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0005】
一部の実施形態では、IMDは、臨床医が取り出し、且つ評価するために、検出に関する情報及び他の診断情報を記憶するメモリを含む。さらに、IMDは、検出を患者に警告する警報を含むことができる。一部の実施形態では、IMDは、心房追従心室ペーシングモードから出るように切り換え、心房追従心室ペーシングモードについて最大追従レートを減少させ、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させ、且つ/又は、識別に応答して、薬剤又は神経刺激などの治療の送出を始動するか、又は、修正する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、患者の心臓内の電気活動を表す信号が、患者内に埋め込まれた電極を介して受け取られる方法を対象とする。信号は、信号内のP波の特性を監視するために処理される。心臓の心房心筋層の機能低下は、特性に基づいて検出される。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、電極及びプロセッサを備える埋め込み可能医療デバイスを対象とする。電極は、患者内に埋め込み可能であり、患者の心臓内の電気活動を表す信号を検出する。プロセッサは、信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心臓の心房心筋層の機能低下を検出する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を対象とする。命令は、プログラム可能プロセッサが、患者の心臓内での電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、患者に治療を送出する治療送出デバイスと、監視デバイスとを備えるシステムを対象とする。監視デバイスは、患者の心臓内の電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、特性に基づいて心臓の心房心筋層の機能低下を検出し、検出に基づいて治療送出デバイスによる治療の送出を制御する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、患者内に埋め込まれた電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取る方法を対象とする。信号は、信号内のP波の特性を監視するために処理され、特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクが識別される。
【0011】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面及び以下の説明において述べられる。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0012】
図1は、患者12内に埋め込まれた、心房心筋層の機能低下を検出する例としての埋め込み式医療デバイス(IMD)10を示す概念図である。例示的な実施形態では、IMD10は、多腔心臓ペースメーカの形をとる。図1に示す例示的な実施形態では、IMD10は、患者12の心臓16内に延びるリード線14A及び14B(ひとまとめに「リード線14」)に結合される。より詳細には、右心室(RV)リード線14Aは、1本又は複数本の静脈(図示せず)、上大静脈(図示せず)、及び右心房24を通り、右心室18内に延び、右心房(RA)リード線14Aは、静脈及び大静脈を通り、心臓16の右心房24内に延びる。
【0013】
IMD10は、リード線14上に配置された電極(図示せず)を介して心臓16の脱分極及び再分極に付随する電気信号を検知する。一部の実施形態では、IMD10はまた、リード線14上に配置された電極を介してペーシングパルスを提供する。リード線14上に配置された電極は、当該技術分野でよく知られているように、単極又は2極である。
【0014】
以下でより詳細に述べるように、IMD10は、心房22及び24の心筋層の機能低下を検出するために、心房電位図信号を処理する。より詳細には、IMD10は、信号内のP波の少なくとも1つの特性を測定し、所定期間にわたる特性の変化に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する。IMD10によって測定されるP波の例示的な特性は、振幅、幅の変動性、及び幅の分散を含む。一部の実施形態では、IMD10は、所定の期間にわたるP波の形態の変化を識別するために、当該技術分野で知られているテンプレートマッチング技法を使用する。一部の実施形態では、IMD10は、心房22及び24内の虚血を検出し、心室18及び20内の虚血事象から生じる狭心症のリスクを識別し、且つ/又は、測定される1つ又は複数のP波特性に対する変化に基づいて、将来の心房細動のリスクを識別する。
【0015】
一部の実施形態では、IMD10は、テレメトリデバイスを介して、プログラミングデバイス(図示せず)を使用して臨床医が取り出すために、メモリ(図示せず)内に、検出又は識別された状態の指示を記憶する。一部の実施形態では、IMD10は、警報(図示せず)を始動することによって、心筋層の機能低下の検出によって提起される危険の可能性を患者12に警告する。一部の実施形態では、IMD10は、心房心筋層の機能低下が、臨床状況以外で、発症間際に検出されることを可能にし、それによって、臨床医による迅速な診断及び状態の処置がもたらされる。たとえば、心筋層の機能低下の検出は、将来の心房細動エピソードの可能性を予想した抗不整脈及び/又は抗凝血性投薬の処方を臨床医に促す。
【0016】
例示的な実施形態では、IMD10はまた、心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、患者12に対する治療の送出を制御する、たとえば、治療を始動するか、又は、修正する。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、心筋層の機能低下による将来の心房細動のリスクを識別することに応答して、リード線14Bを介してレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。こうした実施形態では、IMD10は、たとえば、活動に基づいて心房補充間隔を確定するために、IMD10によって使用される関数の傾きを増加することによって、レート応答ペーシングの攻撃性を増加させることができる。傾きの増加によって、より大きなパーセンテージの心房脱分極がペーシングされ、心房細動の発生の可能性を減少させることができる。IMD10が、心房レートに追従することによって、心室18及び20の一方又は両方をペーシングする時、IMD10の一部の実施形態はまた、心房細動に関連する高くて不規則な心房レートに追従することを回避するために、心筋層の機能低下による将来の心房細動のリスクを識別することに応答して、心室ペーシングレートを心房レートから「分離する」。
【0017】
一部の実施形態では、IMD10は、心房心筋層の機能低下の検出に応答して、薬剤送達デバイス(図示せず)による薬剤の送達、又は、神経刺激器による神経刺激治療の送出を制御する。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、所定期間にわたるP波の変化に基づいて、狭心症を生むリスクの増加を検出することに応答して、狭心症を処置するのに使用されるニトログリセリン又は他の薬剤の送達、又は狭心症を処置するのに使用される脊髄刺激の送出を制御する。さらに、IMD10が、心房レートに基づいて心室18及び20の一方又は両方をペーシングする場合、IMD10の一部の実施形態は、狭心症を生むリスクの増加を検出することに応答して、心室についての最大追従レートを減少させる。狭心症エピソード中の高いペーシングレートは、こうしたエピソードを長引かせるか、エピソードの深刻さを増加させる可能性がある。一部の実施形態では、IMD10は、P波の変化に基づいて虚血を検出し、心臓16への血栓溶解性薬剤の送達を制御する。
【0018】
図1に示すIMD10及びリード線14の構成は、例示に過ぎない。種々の実施形態において、IMD10は、心臓16内の、又は、心臓16外の種々の位置に延びる任意の数のリード線14に結合される。たとえば、一部の実施形態では、IMD10は、左心室検知及び/又はペーシングのための、左心室22に近い冠状静脈洞26内の位置に延びるリード線14に結合される。一部の実施形態では、少なくともいくつかのリード線14は心外膜リード線である。
【0019】
さらに、一部の実施形態では、IMD10は、リード線14を全く含まないが、代わりに、IMD10のハウジングと一体になった電極(図示せず)を介して心臓16内の電気活動を表す信号を受け取る。こうした実施形態では、IMD10は、たとえば、埋め込み可能ループレコーダの形をとる。さらに、一部の実施形態では、IMD10は、患者12内に埋め込まれるのではなく、代わりに、心臓16内の、又は、心臓16外の種々の位置に、患者12の皮膚を通して延びる皮下リード線14、又は、患者の表面、たとえば、皮膚上の位置から心臓内の電気活動を検出する経皮的リード線に結合する。
【0020】
図2は、IMD10及び患者12の心臓16をさらに示す概念図である。例示的な実施形態では、リード線14はそれぞれ、管状絶縁シースによって互いから分離された複数の同心のコイル状導体を保持する細長い絶縁リード線本体を含む。リード線14A及び14Bの遠位端に隣接して、それぞれ、2極電極30と32及び34と36が配置される。例示的な実施形態では、電極30及び34は、リング電極の形をとり、電極32及び36は、絶縁電極ヘッド38及び40内にそれぞれ伸縮可能に取り付けられた伸張可能らせん先端電極の形をとる。電極30〜36のそれぞれは、その関連するリード線14のリード線本体内のコイル状導体のうちの1つに結合する。
【0021】
センス/ペース電極30〜36は、心臓16の脱分極及び再分極に付随する電気信号を検知する。電気信号は、リード線14を介してIMD10に伝導される。例示的な実施形態では、センス/ペース電極30〜36の少なくともいくつかは、さらに、電極の近傍の心臓組織の脱分極を引き起こすためにペーシングを送出する。一部の実施形態では、IMD10はまた、IMD10の密封されたハウジング44の外表面と一体に形成されたハウジング電極42などの、1つ又は複数の不関ハウジング電極を含む。こうした実施形態では、電極30〜36のうちの任意の電極は、ハウジング電極42と共に単極検知又はペーシングに使用されることが可能である。
【0022】
図3は、IMD10の機能ブロック図である。図示された実施形態では、IMD10は、マイクロプロセッサベースのアーキテクチャを有する多腔ペースメーカの形をとる。しかしながら、この図は、本発明の種々の実施形態をその中で具体化することができるデバイスのタイプの例示であると考えられるべきであり、制限として考えられるべきではない。たとえば、本発明の一部の実施形態は、ペーシング治療も、どんな治療も提供しない。こうした実施形態の例は、埋め込み可能ループレコーダである。
【0023】
IMD10はマイクロプロセッサ50を含む。マイクロプロセッサ50は、ROM(図示せず)、EEPROM(図示せず)、及び/又は、RAM52などのメモリ内に記憶されたプログラム命令を実行し、命令は、本明細書において、マイクロプロセッサ50が持っているとみなされる機能を実施するようにマイクロプロセッサ50を制御する。マイクロプロセッサ50は、たとえば、アドレス/データバス54を介してIMD10の種々の他の構成部品と通信する、且つ/又は、制御するために結合される。
【0024】
電極30及び32は、増幅器56に結合し、増幅器56は、測定されるR波振幅の関数として調整可能な検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器の形をとる。電極30と32の間で検知される信号が、現在の検知閾値を越える時はいつでも、RV OUTライン58上に信号が生成される。電極34及び36は、増幅器60に結合し、増幅器60は、同様に、測定されるP波振幅の関数として調整可能な検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器の形をとる。電極34と36の間で検知される信号が、現在の検知閾値を越える時はいつでも、RA OUTライン62上に信号が生成される。
【0025】
一部の実施形態では、IMD10は心臓16をペーシングする。ペーサタイミング/制御回路要素64は、ペーシングモードに関連する基本時間間隔を制御するプログラム可能デジタルカウンタを含む。回路要素64はまた、ペーシングに関連する補充間隔を制御する。例示的な2腔ペーシング環境では、ペーサタイミング/制御回路要素64は、右心房18及び右心室20に送出されるペーシングパルスのタイミングを調整するのに使用される、心房及び心室補充間隔を制御する。
【0026】
ペーサタイミング/制御回路要素64によって規定される間隔はまた、検知されたR波及びP波が、補充間隔の再開タイミング並びにペーシングパルスのパルス幅に影響しない不応期を含む。これらの間隔の継続時間は、RAM52に記憶されたデータに応答して、マイクロプロセッサ50によって確定され、アドレス/データバス54を介して回路要素64に伝達される。ペーサタイミング/制御回路要素64はまた、マイクロプロセッサ50の制御下で心臓ペーシングパルスの振幅を確定する。
【0027】
マイクロプロセッサ50は、割り込み駆動式デバイスとして動作し、検知されるP波及びR波の発生並びに心臓ペーシングパルスの生成に対応する、ペーサタイミング/制御回路要素64からの割り込みに応答する。これらの割り込みはデータ/アドレスバス54を介して提供される。マイクロプロセッサ50によって実施される任意の必要な数学的計算、及び、ペーサタイミング/制御回路要素64によって制御される値又は間隔の任意の更新は、こうした割り込みに続いて起こる。
【0028】
選択されたペーシングモードによれば、ペーサタイミング/制御回路要素64は、それぞれ、電極30と32及び34と36に結合される、ペーサ出力回路66及び68の一方又は両方によって、ペーシングパルスの生成をトリガする。出力回路66及び68は、当該技術分野で知られているパルス発生回路であり、パルス発生回路は、エネルギーの貯蔵及びパルスとしてのエネルギーの送出のためのコンデンサ及びスイッチを含む。ペーサタイミング/制御回路要素64は、R波又はP波の検出、或いは、ペーシングパルスの生成によって、補充間隔カウンタをリセットし、それによって、心臓ペーシング機能の基本タイミングを制御する。
【0029】
先に示したように、一部の実施形態では、IMD10は、患者12に対してレート応答ペーシング治療を提供する。IMD10は、活動センサ70を含むものとして、図3に示される。活動センサ70は、通常(必ずしもそうであるわけではないが)、患者12の代謝要求に関連する被測定パラメータの関数として変わるセンサ出力を提供する。例示的な実施形態では、活動センサ70は、ハウジング44(図2)内部に配置されたハイブリッド回路に接合された圧電セラミック加速度計、又は、患者12の胸部インピーダンスの周期的な変動によって、患者12の呼吸数を検出するための電極である。
【0030】
活動センサ86によって提供される出力信号は、活動検出回路72に結合され、活動検出回路72は、出力に基づいて、患者12の活動レベル、たとえば、カウントを確定する。活動レベルすなわちカウントは、ペーサタイミング/制御回路要素64に提供され、ペーサタイミング/制御回路要素64は、レート応答ペーシングを提供するために、活動レベルすなわちカウントに基づいて1つ又は複数の補充間隔を調整する。一部の実施形態では、IMD10は、複数の活動センサ70を含み、種々のセンサの出力の組み合わせ、又は、混合に基づいてレート応答ペーシングを提供する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、電極30〜36及び42の組み合わせから受け取る電気信号内で、検出されるQT間隔の長さに基づいて活動を測定し、電気信号は、活動に基づいて変わり、事実上、活動センサの役を果たす。こうした実施形態では、マイクロプロセッサ50は、1つ又は複数の補充間隔の調整のために、活動レベルの指示を回路要素64に提供する。
【0031】
先に示したように、一部の実施形態では、IMD10は、たとえば、心房追従ペーシングモードに従って、ペーシングされた心房脱分極又は内因性の心房脱分極の発生に基づいて、電極30及び32を介した右心室20に対するペーシングパルスの送出のタイミングを調整する。こうした実施形態では、ペーサタイミング/制御回路要素64は、RA OUTライン62上で信号を受け取ると、心室補充間隔を設定する。一部の実施形態では、心室補充間隔、たとえば、心房追従レートは、マイクロプロセッサ50によって回路要素64に提供される最大値及び最小値によって制約される。
【0032】
先に述べたように、IMD10は、心臓16内での電気活動を表す心房電位図信号を受け取り、信号内のP波の少なくとも1つの特性を測定するために信号を処理し、所定期間にわたる、測定された特性の変化に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する。例示的な実施形態では、信号は、信号の特性を測定するために、デジタル信号プロセッサ(DSP)74によってデジタル処理される。こうした実施形態では、デジタル信号解析で使用するために電極30〜32及び42のうちのどれが広帯域(0.5〜200Hz)増幅器78に結合されるかを選択するために、スイッチマトリクス76が使用される。電極の選択は、データ/アドレスバス66を介してマイクロプロセッサ60によって制御され、選択は、望まれるように変わってもよい。
【0033】
選択された電極から導出され、増幅器78によって増幅されたアナログ心房電位図信号は、マルチプレクサ80に供給され、その後、A/D変換器82によってマルチビットデジタル信号に変換される。例示的な実施形態では、DSP74は、以下でさらに詳細に述べるように、P波振幅及び/又は幅を測定するために、マルチビットデジタル信号を処理する。一部の実施形態では、デジタル信号は、DSP74による後の解析のために、ダイレクトメモリアクセス回路84の制御下でRAM52に記憶される。DSP74によって測定されたP波振幅及び/又は幅は、RAM52に記憶され、解析のためにマイクロプロセッサ60によって取り出される。以下でさらに詳細に述べることになる、振幅、幅の変動性、及び/又は、幅の分散の解析に基づいて、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0034】
IMD10は、本明細書では、別個のプロセッサを有するものとして述べられるが、マイクロプロセッサ50は、本明細書でマイクロプロセッサ50が持っているとみなされる機能と、本明細書でDSP74が持っているとみなされるデジタル信号解析機能との両方を実施してもよい。さらに、マイクロプロセッサベースのペースメーカ実施形態のIMD10の状況で、本明細書で述べられるが、本発明は、マイクロプロセッサ、DSP、FPGA、又は他のデジタルロジック回路であってもよい、1つ又は複数のプロセッサを含む種々の埋め込み可能医療デバイスで具体化されてもよい。
【0035】
さらに、一部の実施形態では、IMD10は、P波の振幅及び/又は幅を測定するために、デジタル信号解析を利用しない。こうした実施形態では、IMD10は、当該技術分野で知られているように、P波のピーク及び/又は開始点と終了点を識別するための、アナログピーク、傾斜、又は閾値検出増幅器回路を含む。さらに、こうした実施形態では、ペーサタイミング/制御回路64は、これらの増幅器回路の出力を受け取り、これらの事象の発生の指示を、マイクロプロセッサ50がP波の振幅及び/又は幅を確定することができるように、マイクロプロセッサ50に提供する。
【0036】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下の検出の指示を患者12に提供する。例示的な実施形態では、IMD10は、IMD10が埋め込まれる患者12に可聴信号を提供する警報86を含む。警報86を始動することによって、マイクロプロセッサ50は、臨床医との相談を必要とする可能性のある問題を患者12に警告する。
【0037】
一部の実施形態では、IMD10は、外部プログラミングユニット(図示せず)によってプログラム可能であり、IMD10の或る機構は、患者作動器(patient activator)(図示せず)によって制御される。プログラミングユニットと患者作動器は共に、当該技術分野で知られているRFテレメトリ技法を使用して、テレメトリ回路88を介してIMD10と通信する。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下の検出の指示をRAM52に記憶し、テレメトリ回路88を介して患者作動器又はプログラマが呼び掛けると、患者12または臨床医のいずれかに指示を提供する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50はまた、P波の振幅、幅、幅の変動性、幅の分散、及び心房電位図信号のサンプルなどの診断データを記憶する。こうした情報は、テレメトリ回路88及びプログラマを介して臨床医に提供され、チャート、グラフ、ヒストグラム、マーカチャネル情報を有するEGMストリップなどの種々のグラフィック形態でプログラマによって表示されることができる。
【0038】
例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、P波の振幅、P波の幅の変動性、及び/又は、P波の幅の分散に基づいて、患者12に対する治療の送出を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、ペーシングされる心房脱分極のパーセンテージを増加させるよう、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。こうした実施形態では、マイクロプロセッサ50は、回路要素64に新しいレート応答パラメータ又は機能を提供する、たとえば、1つ又は複数のレート応答関数の傾きを増加させてレート応答ペーシングの攻撃性を増加させる。
【0039】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心室ペーシングレートを心房レートから分離するように回路要素74に指示する、たとえば、心室ペーシングのために、より低い最大心房追従レートを回路要素74に提供する。さらに、一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、それぞれ薬剤送達デバイス又は神経刺激器による1つ又は複数の薬剤又は神経刺激治療の送出を制御する。
【0040】
図4は、心房心筋層の機能低下を検出するためにIMD10によって処理された、例としての心房電位図信号90を示すタイミング図である。信号90は、2極構成でのRAリード線14Bの電極34及び36、又は、単極構成での電極34と36の一方及びハウジング電極42を使用して検出される。一部の実施形態では、電位図信号は、2つ以上のハウジング電極42を使用して検出され、IMD10の埋め込み可能ループレコーダの実施形態などの、リード線を含まないIMD10の実施形態を使用可能にする。
【0041】
信号90はP波92を含む。一部の実施形態では、IMD10は、P波92の振幅94及び/又はP波92の幅100を測定するために信号90を処理する。例示的な実施形態では、IMD10のDSP74は、振幅94及び/又は幅100を測定するために信号90をデジタル処理する。一部の実施形態では、IMD10は、P波92の複数の特徴部を、RAM52などのメモリに記憶したテンプレートと比較する。
【0042】
説明を容易にするために、心臓16の単一の心周期を表す信号90の一部のみが図4に示される。しかしながら、DSP74は、信号90内の複数の振幅94及び/又は幅100を測定するか、又は、所定期間にわたって、複数のP波92をテンプレートと比較することが理解される。DSP74は、上述したように、マイクロプロセッサ50に測定された値を提供する、且つ/又は、テンプレートに対するP波92の不適切な類似をマイクロプロセッサに指示する。
【0043】
当該技術分野で知られているように、心房EGMは、表面ECGのQRS波と時間的に同期する心室脱分極を表す波(図示せず)を含む。電極34、36、及び42の組み合わせを介して検知されると、この波は、「遠方場」R波と呼ばれる。遠方場R波の振幅は、電極間の距離及び心室質量に対するリード線14Bの軸の向きによって決まる。
【0044】
P波92の振幅94及び/又は幅100を測定するか、又は、P波92をテンプレートと比較するために、DSP74は、最初に、信号90内のP波92を識別する。DSP74は、当該技術分野で知られている任意の方法によって、信号90内のP波92を識別する。一部の実施形態では、DSP74は、ペーサタイミング/制御回路64からP波92の発生の指示を受け取る。他の実施形態では、DSP74は、或る時間窓内で起こる、いくつかの、信号90の閾値交差又は信号90の1次微分のゼロ交差を検出することによって、P波92を識別する。一部の実施形態では、DSP74は、Wohlgemuthに対する、「Cardiac Pacing System With Improved Physiological Event Classification Based on DSP」という名称の同一譲受人に譲渡された米国特許第6,029,087号に記載される技法を使用してP波92を検出する。
【0045】
DSP74は、信号90の極性に依存して正又は負である、ピーク96におけるデジタル信号の値として振幅94を測定する。DSP74は、P波92の開始点98から終了点102までの期間として幅100を測定する。例示的な実施形態では、DSP100は、デジタル信号の閾値交差又はデジタル信号の1次微分のゼロ交差として開始点98及び終了点102を識別する。
【0046】
図5は、所定期間にわたってDSP74によって測定されたP波振幅94を表す曲線110を示す。P波振幅94の減少は、心房心筋層の機能低下を指示する。P波振幅94の医学的に重要な変化、たとえば、心房心筋層の機能低下を指示する変化は、数ヶ月の期間にわたって起こり、且つ目立つ可能性があるが、重要性の小さい変化は、拍動ごとに起こるであろう。その結果、例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、所定期間にわたるP波振幅の平均値、たとえば、所定日数、所定週数、又は所定月数についての平均を求め、現在の平均値を以前の平均値と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。
【0047】
さらに、一部の実施形態では、曲線110の領域112に示す減少などのP波振幅における比較的小さな長期間の減少は、重要であるとは考えられないが、領域114に示す減少などの大きな長期間の減少は、重要であると考えられる。その結果、マイクロプロセッサ50が現在の平均P波振幅と比較する以前の平均P波振幅は、直前の期間にわたる平均である必要はない。現在の平均P波値をより離れた以前の平均と比較することによって、マイクロプロセッサ50は、P波振幅の長期の変化の大きさをよりよく識別することができる。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の平均P波値と過去の平均P波値の差、又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0048】
図6は、所定期間にわたるP波振幅に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(120)、信号90内のP波92の振幅94を測定する(122)。一部の実施形態では、DSP74は、振幅94を連続して測定するのではなく、代わりに、振幅を周期的にサンプリングする。
【0049】
マイクロプロセッサ50は、DSP74から振幅94を受け取り、現在の期間について振幅の平均値を計算する(124)。マイクロプロセッサ50は、現在の平均値を、一部の実施形態では直前の平均値ではない、以前の平均値と比較する(126)。マイクロプロセッサ50は、比較に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する(128)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の平均値と過去の平均値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。
【0050】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(130)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(132)。たとえば、一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、上述したように、ペーサタイミング/制御回路64に新しいレート応答関数を提供する。図6に示したように、DSP74は、P波振幅を測定し続け、マイクロプロセッサは、心房心筋層の機能低下が検出された後、また、検出されなかった後に、所定期間にわたって、測定された振幅の平均を計算する。
【0051】
図7は、所定期間にわたってDSP74によって測定されたP波幅100の変動性を示す曲線140を示す。特に、心房18及び24(図1)の拡張によって引き起こされる、心房心筋層の機能低下は、曲線140の領域142で指示される変動性などの、P波92の幅100の変動性の増加をもたらす。平均P波振幅を求める時にはよくあることであるが、マイクロプロセッサ50は、比較的長い期間にわたって測定されたP波幅100の変動性、たとえば、所定日数、所定週数、又は所定月数についての平均を求め、現在の期間についての変動性を、前の期間についての変動性と比較して、心房心筋層の機能低下を検出する。さらに、一部の実施形態では、現在の期間についてのP波幅100の変動性を、以前のいくつかの期間にわたって測定したP波幅100の変動性と比較して、P波幅変動性の長期の変化の大きさをよりよく認識する。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間についての変動性と過去の期間についての変動性の差、又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0052】
図8は、所定期間にわたるP波幅100の変動性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(150)、信号90内のP波92の幅100を測定する(152)。一部の実施形態では、DSP74は、幅100を連続して測定するのではなく、代わりに、P波幅100を周期的にサンプリングする。P波92の幅100を周期的に測定することによって、IMD10は、DSP74の処理資源及びDSP74に電力を供給するのに使用されるIMD10の電池を節約する。
【0053】
マイクロプロセッサ50は、DSP74から、測定された幅100を受け取り、現在の期間にわたる幅の変動性を計算する(154)。マイクロプロセッサ50は、現在の変動性を、一部の実施形態では直前の期間についてのP波変動性ではない、以前の変動性と比較する(156)。マイクロプロセッサ50は、比較に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する(158)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の変動性の値と過去の変動性の値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(160)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(162)。
【0054】
図9は、所定期間にわたりDSP74によって測定されたP波幅100の分散を示す曲線170を示す。所定期間にわたるP波幅100の分散は、その期間の間に測定された最大と最小のP波幅100の差として規定される。P波幅100の分散の長期の増加、たとえば、数ヶ月にわたる増加は、心房心筋層の機能低下を指示するが、短期の増加、たとえば、数分にわたる増加は、狭心症が起こる可能性の増加を指示する。そのため、曲線170の領域172は、図9の水平軸の時間スケールに応じて、心房心筋層の機能低下か、切迫した狭心症エピソードのいずれかを表していると言うことができるであろう。
【0055】
種々の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間について計算されたP波幅分散を、以前の期間について計算されたP波幅分散と比較することによって、心房心筋層の機能低下及び切迫した狭心症のいずれか、又は、両方を検出する。しかしながら、期間の長さ、及び現在のP波分散と比較されるP波分散の新しさ(recentness)は、どの状態が検出されるかに応じて変わる。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の期間と過去の期間についての分散の差又は比を、RAM52などのメモリに記憶した閾値と比較する。
【0056】
図10は、所定期間にわたってDSP74によって測定されるP波幅100の分散に基づいて心房心筋層の機能低下又は切迫した狭心症を検出するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。DSP74は、A/D変換器82を介して心房電位図信号90を受け取り(180)、信号90内のP波92の幅100を測定する(182)。上述したように、一部の実施形態では、DSP74は、幅100を連続して測定するのではなく、代わりに、P波幅100を周期的にサンプリングする。
【0057】
マイクロプロセッサ50は、DSP74からの測定された幅100を受け取り、現在の期間にわたる、幅の分散、たとえば、DSP74によって測定された最大と最小の幅100の差を計算する(184)。マイクロプロセッサ50は、現在の分散を以前の分散と比較し(186)、比較に基づいて心房心筋層の機能低下又は切迫した狭心症を検出する(188)。例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、現在の分散値と過去の分散値の差、又は比を、RAM52に記憶した閾値と比較する。
【0058】
マイクロプロセッサ50が、比較に基づいて切迫した狭心症を検出する実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心室電位図信号内のQT間隔が短縮したかどうか、及び/又は、活動モニタ72によって指示された活動レベルが、同じ期間の間に増加したかどうかを判定することによって検出を確認する。短縮したQT間隔は、身体的ストレス又は情緒的ストレスのいずれかによってもたらされ、活動センサ70によって検出される活動の増加は、身体的ストレスよってもたらされる。患者がストレス下にあると、狭心症エピソードが発生する可能性が増加する。QT間隔が測定される実施形態では、DSP74は、サンプリングされた心室電位図信号を受け取り、当該技術分野で知られている技法を使用してQT間隔を測定する。
【0059】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、心房心筋層の機能低下又は狭心症を検出する場合、上述したように、メモリ内に検出の指示を記憶し(190)、警報を始動し、且つ/又は、治療の送出を始動するか、又は、修正する(192)。たとえば、マイクロプロセッサ50が心房心筋層の機能低下を検出する一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、上述したように、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させ、且つ/又は、心室ペーシングレートを心房レートから分離する。マイクロプロセッサ50が狭心症を検出する一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、以下でさらに詳細に述べるように、心室ペーシングについて最大心房追従レートを減少させ、且つ/又は、薬剤又は神経刺激の送出を制御する。
【0060】
図11は、心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、治療を修正するIMD10の例示的な動作モードを示すフロー図である。より詳細には、図11は、心房心筋層の機能低下によってもたらされる心房細動のリスクの識別に応答して、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるIMD10の動作モードを示す。レート応答心房ペーシングの攻撃性の増加は、心房細動エピソードが発生するのを防止する可能性がある。
【0061】
マイクロプロセッサ50は、心房電位図90内のP波92の1つ又は複数の特性を監視し(200)、上述した技法の任意の技法を使用して、心房心筋層の機能低下から生じる将来の心房細動の可能性を識別する(202)。マイクロプロセッサ50は、たとえば、ペーサタイミング/制御回路要素64(図3)に、より大きな傾きを有する新しいレート応答関数を提供することによって、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる(204)。たとえば、例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ50は、Medtronic, Inc.から市販されているKappa(商標)ペースメーカで具体化されるプロファイルなどの、センサレートプロファイルを調整する。
【0062】
マイクロプロセッサ50は、1分などの或る期間にわたってペーシングされる心房拍動のパーセンテージを確定し、この実際のパーセンテージ(AP)を、RAM72などのメモリに記憶された目標心房ペーシング(TAP)パーセンテージ値と比較する(206)。マイクロプロセッサ50は、ペーサタイミング/制御回路要素64から、拍動がペーシングされるか、内因性であるかの指示を受け取る。図11に示すように、マイクロプロセッサ50は、目標が満たされるまで、レート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させる。
【0063】
図12及び図13は、IMD10を含む例示的なシステム210及び220を示すブロック図である。図12に示すシステム210は、例示的な実施形態では埋め込み式薬剤ポンプである薬剤送達デバイス212を含む。薬剤送達デバイス212は、患者12に送達される、生物学的物質、遺伝学的物質、又は薬理学的物質のうちの少なくとも1つを保持することが可能なリザーバ、及び、カテーテル218などを介して選択されたロケーションに物質を送達するポンプ(図示せず)を含む。デバイス212はまた、リザーバ214を補充する充填ポート216を含み、充填ポート216は、例示的な実施形態では、シリンジなどによるリザーバ214への経皮的アクセスを可能にする再密封可能な膜の形をとる。例示的な薬剤送達デバイス212は、Medtronic, Inc.から市販されているSynchromed(商標)ポンプで具体化される。
【0064】
IMD10、より具体的には、マイクロプロセッサ50は、送達デバイス212によって、リザーバ214に貯蔵した1つ又は複数の物質の送達を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、デバイス12のポンプを直接に制御し、一方、他の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、デバイス212のプロセッサが物質の送達を始動するか、又は、修正するようにさせる指示をプロセッサに提供する。一部の実施形態では、IMD10及びデバイス212は、共通ハウジング内で単一デバイスを形成する。
【0065】
例示的な実施形態では、IMD10のマイクロプロセッサ50は、切迫した狭心症の検出によって狭心症を処置するのに使用されるニトログリセリン又は他の薬剤、又は、虚血又は切迫した狭心症の検出によって血塊を溶かすのに使用される血栓溶解性薬剤の送達を始動するために、送達デバイス212を制御する。こうした実施形態では、カテーテル218は、デバイス212が心臓16に物質を送達するように位置決めされる。
【0066】
図13に示すシステム220は、IMD10に加えて神経刺激器222を含む。神経刺激器222は、1つ又は複数の電極226を搭載し、電極226を介して患者12の神経組織に神経刺激を送出する1つ又は複数のリード線224を含む。例示的な実施形態では、神経刺激は、電気パルスの形態で送出される。示す実施形態では、リード線224は、患者12の脊髄に神経刺激を送出するのに適した構成で、4つの電極226A〜Dを搭載する。例示的な神経刺激器222及びリード線の組み合わせは、Medtronic, Inc.から市販されているItrel(商標)神経刺激器及びPieces Quad(商標)リード線で具体化される。
【0067】
IMD10、より具体的には、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222による神経刺激の送出を制御する。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222による刺激の生成を直接に制御し、一方、他の実施形態では、マイクロプロセッサ50は、神経刺激器222のプロセッサが神経刺激の送出を始動するか、又は、修正するようにさせる指示をプロセッサに提供する。一部の実施形態では、IMD10及び神経刺激器は、共通ハウジング内で単一デバイスを形成する。
【0068】
例示的な実施形態では、IMD10のマイクロプロセッサ50は、切迫した狭心症の検出に応答して、患者12の脊髄への刺激の送出を始動するために、神経刺激器222を制御する。脊髄刺激は、心臓16への血流を増加させ、狭心症に伴う痛みを低減することができる。狭心症に応答して脊髄刺激を送出する例示的な技法に関するさらなる詳細は、Riseに対する、1998年10月20日に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許第5,824,021号に記載される。
【0069】
本発明の種々の実施形態が述べられた。しかしながら、特許請求項の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して、種々の変更を行うことができることを、当業者は認識するであろう。たとえば、P波の特性の測定は、本明細書では、主に、P波振幅、P波幅、及びP波幅の変動性又は分散の測定として述べられたが、本発明は、そのように限定されない。特性の測定は、現在のP波をメモリに記憶した以前のP波又はテンプレートと比較するために、たとえば、Medtronic, Inc.から市販されているMarquis(商標)埋め込み可能カーディオバータ−ディブリレータにおいて実施されるようなテンプレートマッチング、ウェーブレット解析、又は、フーリエ解析技法を使用した測定を含む。
【0070】
別の例として、レート応答ペーシングの攻撃性を増加させる代わりに、又は、それに加えて、本発明の一部の実施形態は、Medtronic, Inc.から市販されているAT500(商標)ペースメーカで実施されるアルゴリズムなどの心房細動防止アルゴリズムの攻撃性を増加させる。これらの、また、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】患者内に埋め込まれた、心房心筋層の機能低下を検出する、例としての埋め込み式医療デバイスを示す概念図である。
【図2】図1の埋め込み可能医療デバイス及び患者の心臓をさらに詳細に示す概念図である。
【図3】図1の埋め込み可能医療デバイスをさらに詳細に示す機能ブロック図である。
【図4】心房心筋層の機能低下を検出するために、図1の埋め込み可能医療デバイスによって処理された例としての心房電位図信号を示すタイミング図である。
【図5】所定期間にわたるP波振幅を示すグラフである。
【図6】所定期間にわたるP波振幅に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図7】所定期間にわたるP波幅の変動性を示すグラフである。
【図8】所定期間にわたるP波幅の変動性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図9】所定期間にわたるP波幅の分散を示すグラフである。
【図10】所定期間にわたるP波幅の分散に基づいて心房心筋層の機能低下又は狭心症を検出する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図11】心房心筋層の機能低下の検出に基づいて、治療を修正する、図1の埋め込み可能医療デバイスの例示的な動作モードを示すフロー図である。
【図12】図1の埋め込み可能医療デバイスを含む例示的なシステムを示すブロック図である。
【図13】図1の埋め込み可能医療デバイスを含む例示的なシステムを示すブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の電気活動を監視する方法であって、
電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取るステップと、
前記信号内のP波の特性を監視するために前記信号を処理するステップと、
前記特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視するために前記信号を処理するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットについて前記特性の第2平均値を求めるステップと、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップと、
を含み、心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップは、
前記第1平均値から前記第2平均値へのパーセント変化を求めるステップと、
前記パーセント変化を閾値と比較するステップと、
を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定するステップと、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するステップと、
を含み、心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記特性に基づいて心房虚血を検出するステップと、前記特性に基づいて切迫した狭心症を識別するステップと、前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するステップとのうちの1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メモリ内に前記検出の指示を記憶するステップと、
プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、該プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出に基づいて警報を始動するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療の送出を制御するステップは、前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるステップ、前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させるステップ、前記検出に基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるステップ、前記識別に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するステップ、及び、前記識別に基づいて神経刺激の送出を制御するステップのうちの1つを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
埋め込み可能医療デバイスであって、
前記患者の心臓内の電気活動を表す信号を検出する電極と、
前記信号内のP波の特性を監視し、該特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出するプロセッサと、
を備えるデバイス。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視する請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットの第2平均値を求め、前記第1平均値及び前記第2平均値を比較し、該比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記第1平均値から前記第2平均値へのパーセント変化を求め、該パーセント変化を閾値と比較する請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定し、前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較し、該比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記特性に基づく心房虚血、前記特性に基づく切迫した狭心症、及び、前記特性に基づく心房細動の発生の前における心房細動のリスクのうちの1つを検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
メモリと、
テレメトリ回路とをさらに備え、前記プロセッサは、前記メモリ内に前記検出の指示を記憶し、プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、前記テレメトリ回路と前記プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供する請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
警報をさらに備え、前記プロセッサは、前記検出に基づいて前記警報を始動する請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記検出された機能低下に基づいて前記患者への治療の送出を制御すること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心室へのペーシングパルスの送出を制御し心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心室へのペーシングパルスの送出を制御し心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心房へのペーシングパルスの送出を制御しレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させること、前記検出した機能低下に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御すること、及び、前記検出した機能低下に基づいて神経刺激の送出を制御することのうちの1つを実施する請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
コンピュータ読み取り可能媒体であって、プログラム可能プロセッサが、
患者の心臓内での電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、
前記特性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項21】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項22】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットの第2平均値を求め、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するようにさせる命令を含み、
プログラム可能プロセッサが、前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項23】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定し、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するようにさせる命令を含み、
プログラム可能プロセッサが前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項24】
プログラム可能プロセッサが心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて心房虚血を検出するようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて狭心症の発生の可能性の増加を識別するようにさせる命令、及び、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するようにさせる命令のうちの1つを含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項25】
プログラム可能プロセッサが、前記検出に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するようにさせる命令をさらに含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項26】
プログラム可能プロセッサが治療の送出を制御するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させるようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加するようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するようにさせる命令、及び、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて神経刺激の送出を制御するようにさせる命令のうちの1つを含む請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項27】
埋め込み可能医療デバイスシステムであって、
患者に治療を送出する治療送出デバイスと、
前記患者の心臓内の電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、該特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出し、該検出に基づいて前記治療送出デバイスによる治療の送出を制御する監視デバイスと、
を備える埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項28】
前記治療送出デバイスは薬剤送達デバイスであり、前記監視デバイスは、前記検出に基づいて前記薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御する請求項27に記載の埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項29】
前記治療送出デバイスは神経刺激器であり、前記監視デバイスは、前記検出に基づいて前記神経刺激器による神経刺激の送出を制御する請求項28に記載の埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項30】
心臓の電気活動を監視する方法であって、
前記患者内に埋め込まれた電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取るステップと、
前記信号内のP波の特性を監視するために、前記信号を処理するステップと、
前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するステップと、
を含む方法。
【請求項31】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、前記P波の振幅の1つを監視するために前記信号を処理するステップ、前記P波の振幅の変動性を監視するために前記信号を処理するステップ、及び、前記P波の幅の分散を監視するために前記信号を処理するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットについて前記特性の第2平均値を求めるステップと、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップと、
を含み、心房細動のリスクを識別するステップは、前記比較に基づいて心房細動のリスクを識別するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項33】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定するステップと、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するステップと、
を含み、心房細動のリスクを識別するステップは、前記比較に基づいて心房細動のリスクを識別するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】
メモリ内に前記識別の指示を記憶するステップと、
プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、前記プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供するステップとをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記識別に基づいて警報を始動するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記識別に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項37】
治療の送出を制御するステップは、前記識別されたリスクに基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるステップ、前記識別されたリスクに基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるステップ、及び、前記識別に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するステップのうちの1つを含む請求項36に記載の方法。
【請求項1】
心臓の電気活動を監視する方法であって、
電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取るステップと、
前記信号内のP波の特性を監視するために前記信号を処理するステップと、
前記特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視するために前記信号を処理するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットについて前記特性の第2平均値を求めるステップと、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップと、
を含み、心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップは、
前記第1平均値から前記第2平均値へのパーセント変化を求めるステップと、
前記パーセント変化を閾値と比較するステップと、
を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定するステップと、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するステップと、
を含み、心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
心房心筋層の機能低下を検出するステップは、前記特性に基づいて心房虚血を検出するステップと、前記特性に基づいて切迫した狭心症を識別するステップと、前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するステップとのうちの1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メモリ内に前記検出の指示を記憶するステップと、
プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、該プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出に基づいて警報を始動するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療の送出を制御するステップは、前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるステップ、前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させるステップ、前記検出に基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるステップ、前記識別に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するステップ、及び、前記識別に基づいて神経刺激の送出を制御するステップのうちの1つを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
埋め込み可能医療デバイスであって、
前記患者の心臓内の電気活動を表す信号を検出する電極と、
前記信号内のP波の特性を監視し、該特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出するプロセッサと、
を備えるデバイス。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視する請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットの第2平均値を求め、前記第1平均値及び前記第2平均値を比較し、該比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記第1平均値から前記第2平均値へのパーセント変化を求め、該パーセント変化を閾値と比較する請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定し、前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較し、該比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記特性に基づく心房虚血、前記特性に基づく切迫した狭心症、及び、前記特性に基づく心房細動の発生の前における心房細動のリスクのうちの1つを検出する請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
メモリと、
テレメトリ回路とをさらに備え、前記プロセッサは、前記メモリ内に前記検出の指示を記憶し、プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、前記テレメトリ回路と前記プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供する請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
警報をさらに備え、前記プロセッサは、前記検出に基づいて前記警報を始動する請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記検出された機能低下に基づいて前記患者への治療の送出を制御すること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心室へのペーシングパルスの送出を制御し心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心室へのペーシングパルスの送出を制御し心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させること、前記検出した機能低下に基づいて前記心臓の心房へのペーシングパルスの送出を制御しレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させること、前記検出した機能低下に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御すること、及び、前記検出した機能低下に基づいて神経刺激の送出を制御することのうちの1つを実施する請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
コンピュータ読み取り可能媒体であって、プログラム可能プロセッサが、
患者の心臓内での電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、
前記特性に基づいて心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項21】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記P波の振幅、該P波の振幅の変動性、及び該P波の幅の分散のうちの1つを監視するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項22】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットの第2平均値を求め、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するようにさせる命令を含み、
プログラム可能プロセッサが、前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項23】
プログラム可能プロセッサが特性を監視するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定し、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するようにさせる命令を含み、
プログラム可能プロセッサが前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記比較に基づいて前記心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる命令を含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項24】
プログラム可能プロセッサが心房心筋層の機能低下を検出するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて心房虚血を検出するようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて狭心症の発生の可能性の増加を識別するようにさせる命令、及び、プログラム可能プロセッサが前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するようにさせる命令のうちの1つを含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項25】
プログラム可能プロセッサが、前記検出に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するようにさせる命令をさらに含む請求項20に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項26】
プログラム可能プロセッサが治療の送出を制御するようにさせる前記命令は、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて心房追従ペーシングモードについて最大追従レートを減少させるようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加するようにさせる命令、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するようにさせる命令、及び、プログラム可能プロセッサが前記検出に基づいて神経刺激の送出を制御するようにさせる命令のうちの1つを含む請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項27】
埋め込み可能医療デバイスシステムであって、
患者に治療を送出する治療送出デバイスと、
前記患者の心臓内の電気活動を表す信号内のP波の特性を監視し、該特性に基づいて前記心臓の心房心筋層の機能低下を検出し、該検出に基づいて前記治療送出デバイスによる治療の送出を制御する監視デバイスと、
を備える埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項28】
前記治療送出デバイスは薬剤送達デバイスであり、前記監視デバイスは、前記検出に基づいて前記薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御する請求項27に記載の埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項29】
前記治療送出デバイスは神経刺激器であり、前記監視デバイスは、前記検出に基づいて前記神経刺激器による神経刺激の送出を制御する請求項28に記載の埋め込み可能医療デバイスシステム。
【請求項30】
心臓の電気活動を監視する方法であって、
前記患者内に埋め込まれた電極を介して、患者の心臓内の電気活動を表す信号を受け取るステップと、
前記信号内のP波の特性を監視するために、前記信号を処理するステップと、
前記特性に基づいて心房細動の発生の前に心房細動のリスクを識別するステップと、
を含む方法。
【請求項31】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、前記P波の振幅の1つを監視するために前記信号を処理するステップ、前記P波の振幅の変動性を監視するために前記信号を処理するステップ、及び、前記P波の幅の分散を監視するために前記信号を処理するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波の第1サブセットについて前記特性の第1平均値を、前記P波の第2サブセットについて前記特性の第2平均値を求めるステップと、
前記第1平均値及び前記第2平均値を比較するステップと、
を含み、心房細動のリスクを識別するステップは、前記比較に基づいて心房細動のリスクを識別するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項33】
特性を監視するために前記信号を処理するステップは、
前記P波のそれぞれの複数の特徴部を測定するステップと、
前記P波のそれぞれの前記特徴部についての測定された値を、メモリに記憶されたテンプレートと比較するステップと、
を含み、心房細動のリスクを識別するステップは、前記比較に基づいて心房細動のリスクを識別するステップを含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】
メモリ内に前記識別の指示を記憶するステップと、
プログラミングデバイスによる呼び掛け時に、前記プログラミングデバイスを介して前記指示をユーザに提供するステップとをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記識別に基づいて警報を始動するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記識別に基づいて前記患者に対する治療の送出を制御するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項37】
治療の送出を制御するステップは、前記識別されたリスクに基づいて心房追従ペーシングモードからVVIペーシングモードへ切り換えるステップ、前記識別されたリスクに基づいてレート応答心房ペーシングの攻撃性を増加させるステップ、及び、前記識別に基づいて薬剤送達デバイスによる薬剤の送達を制御するステップのうちの1つを含む請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−500533(P2007−500533A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521843(P2006−521843)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020627
【国際公開番号】WO2005/013818
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020627
【国際公開番号】WO2005/013818
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【Fターム(参考)】
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