説明

心肺蘇生中に圧迫パラメータを測定するためのCPR補助装置

場発生器、場検出器、およびプロセッサを備える、患者に対して心肺蘇生法(CPR)を適用する間に、少なくとも1つの圧迫パラメータを特定する装置。位置情報および圧迫パラメータは、場検出器によって検出される場から特定される。場発生器および場検出器の一方は、位置センサであり、他方は基準センサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心肺蘇生法(CPR)の適用中の圧迫パラメータの測定に関する。特に、本開示は、位置センサおよび基準センサの使用による圧迫パラメータの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本開示は、それらの開示が参照により本明細書にその全文が組み込まれている、2008年7月23日に出願した米国特許仮出願第61/082878号明細書、および2008年10月6日に出願した米国特許仮出願第61/103132号明細書の優先権を主張するものである。本開示は、2008年8月13日に出願した米国特許出願第12/190881号明細書の一部継続出願である。
【0003】
現在、カナダにおいては毎年、推定40,000件の心肺停止の発生があり、そのほとんどが、病院施設外で起きている。病院外心拍停止の確率(odds)は、現在、約5%である。米国においては、毎年、約164,600件のそのような発生があり、これは人口1000人当たり約0.55件である。このような病院外での心拍停止発生による死亡数を低減することが望まれている。スポーツ競技施設などの特定の場所、および高齢者などの特定の個人は、特にリスクが高く、これらの場所およびこれらの人々においては、簡便な解決策の有無が生死を分けることになる。
【0004】
心肺蘇生法(CPR)は、医療の専門家および非専門家が、心不全を起こしている患者の生存機会を向上させるのに有効であることが証明されている技法である。CPRは、専門の医療救護が到着するまで、循環系を通して血液を送り、それによって患者の体全体にわたっての酸素分布を維持するものである。しかしながら、CPRの質は不満足になることが多い。適正なCPRの技術と手順を維持することは、ほとんどの個人において不十分であり、また緊急状況による不安によって、適正な処置を遂行するのに際して、個人が混乱し、妨げられることがある。
【0005】
非特許文献1によれば、心肺蘇生法(CPR)は、一貫性のない不効率な方法で実施されることが多く、防止可能な死を生じている。標準的なCPR訓練および試験の完了後、数か月で、有効な胸部圧迫を実施する個人の能力は、大幅に低下することが多い。この知見は、訓練を受けていない実施者だけでなく、準医療従事者、看護婦、さらには医師などの訓練を受けた専門家に対しても当てはまることがわかった。
【0006】
2005年の国際蘇生法連絡委員会(The International Liaison Committee on Resuscitation)は、CPRを適用する有効な方法と、有効な技法に関連するパラメータについて記述している。パラメータとしては、胸部圧迫率や胸部圧迫深さなどがある。胸部圧迫率は、一分間当たり遂行される圧迫回数として定義される。胸部圧迫深さは、各圧迫によって、患者の胸骨がどこまで変位したかで定義される。有効な圧迫率は、約4〜5cmの圧迫深さにおいて、一分間に100回の胸部圧迫であるといえる。ノルウェーのUlleval大学病院における、実際のCPR適用についての2005年の調査によれば、平均で、圧迫率は一分間に90回未満であり、37%の圧迫に対して圧迫深さは浅すぎであった。
【0007】
同調査によれば、CPRは、必要がないときに適用されたり、または必要なときに適用されないことが多かった。この調査によって、心臓血管循環が途絶えた時間の48%において、圧迫が遂行されなかったことがわかった。
【0008】
他の調査においても、CPRの遂行において、同様な欠点が見いだされている。シカゴ大学における2005年の調査によると、36.9%の時間、一分間に80回未満の圧迫が与えられ、21.7%の時間、一分間に70回未満の圧迫が与えられたことがわかった。胸部圧迫率は、心拍停止後の循環の自発的な復帰と直接的な相関があることがわかった。
【0009】
浅すぎる圧迫に加えて、強すぎる圧迫も問題となることがある。CPRに関係する一部の傷害は、肋骨の亀裂または軟骨分離(cartilage separation)の形態での患者に対する傷害である。そのような結果は、過剰な力または圧迫深さによるものである可能性がある。ここでも、練習不足がこれらの傷害の原因である可能性がある。
【0010】
手の位置決めは、CPRを遂行するときに考慮されることのある別のパラメータである。圧迫中の手の有効な位置は、胸骨の基部の約2インチ(5.08cm)上方であることがわかっている。有効なCPRのための手の位置決めは、患者によって異なる可能性がある。例えば、幼児に対してCPRを実施するためには、有効な位置は、おそらく胸骨上で2本の指を使用することである。
【0011】
したがって、緊急事態においてCPRの適正な遂行を容易にする装置が役に立つ筈である。さらに、個人を客観的に訓練、試験するのにも使用することのできる装置が、CPRの訓練過程および手順維持に有用であるといえる。
【0012】
現在、病院施設内で使用することのできるCPR遂行用の機械システムがある。機械的運動(例えば、ピストン運動またはモータ運動)を含む機構を通して胸部圧迫を遂行することができる。そのような装置の1つが、Revivant社製のAutoPulse(登録商標)であり、この装置は、心臓が拍動を停止したときに患者の胸部を圧迫して脳に血液を送る、幅の広い胸部バンドに取り付けられた、コンピュータ制御式のモータを有する。このような装置は、扱い難く、また移送するのに重く、設置して起動するのに時間を要するとともに、高価である。このような装置は、心拍停止からの生存率を向上させる上での有効性を判定しようとする調査において、はっきりとしない結果を示した。
【0013】
特許文献1は、患者の胸部インピーダンスとともに能動的な胸部圧迫の力を測定する装置が開示している。これらの計算から、この装置は、有効な圧迫が完了したことをユーザに対して指示する。しかしながら、この技術は、患者の胸部の全体にわたって配置される除細動器(defibrillator)パッドを必要とし、その結果として起動に比較的時間がかかる。市販の装置、Phillips Medical社製のQ−CPR(登録商標)は、高価な病院等級の除細動器に取り付けなくてはならず、そのために高価で、重量が大きく、一般人は使用できない。さらにこの技術は、加速度計から収集されるデータに大きく依拠している。現在の多くの技術が、加速度計技術に基づいている。
【0014】
圧迫深さを特定するために加速度計技術を使用する別の装置が特許文献2に開示されている。CPR中の胸部圧迫の深さを測定するのに使用される、加速度計からの加速度データは、いずれも、累積誤差およびドリフト誤差を生じやすい。その結果、これらのセンサは、CPRパラメータに関する高精度または詳細なデータ収集には適当ではなく、近似的な深さ値に対してのみ信頼することができる。さらに、外部の基準なしに、CPR監視装置内で加速度計を使用すると、患者または救急員が可動である場合には、誤差を生じやすい。例えば、患者が救急車、ヘリコプタまたは車付き担架で医療目的で移送されている場合には、加速度計では、患者の外部的な運動と胸部の圧迫とを区別することができない。いかなる種類の非静止環境においても、加速度計に基づく装置は、信頼性がなく、効果的でない場合がある。圧迫深さを計算するために加速度計を使用することも、測定装置の角度および傾斜を補償するために、複雑で誤差を生じやすい計算に依拠している。加速度計が、患者の胸部の上で、完全に水平でなく、その運動が完全に垂直でない場合には、誤差が蓄積して、2つの水平軸の角度によって説明しなくてはならない。さらに、外部基準がないことによって、装置が、任意の時刻におけるそれ自体の空間内の位置を知ることが困難になる。すべての距離測定値は相対的であり、測定の過程中に運動の原点を、確かめて維持することは困難である。これによって、圧迫の開始または開始点の時間軸でのドリフトが生じて、深さ測定値における誤差につながる可能性がある。Zoll Medical社のAED Plus(登録商標)D−Pads(登録商標)などの、いくつかの市販製品は、現在、加速度計技術を使用しており、この場合には加速度計は、除細動器のパッド中に埋め込まれている。追加の回路およびセンサ系をその中に追加するために、これらの除細動器パッドは、実質的により高価であり、使用する毎に廃棄しなくてはならない。
したがって、製品の設計の理由で、比較的高価なセンサ系を、定常的に廃却しなくてはならない。
【0015】
Kenneth F.Olsonらへの特許文献3は、圧迫深さを計算するのに超音波透過を使用する装置を開示している。音響信号が、患者の胸部上の装置から、別の場所にある受信器へ伝送される。この装置はいくつかの欠点がある。第1に、超音波信号は、動作するためには送信器から受信器までの妨げのない見通し線(line of sight)を持たなくてはならない。信号の通路にある、いかなる干渉、物体、人または救助員の手さえも、信号損失または劣化につながる可能性がある。送信器は、受信器の方向に向けられていなくてはならず、送信器と受信器の間の相対方位が重要である。第2に、超音波は比較的に低速であり、超音波信号の飛行時間(time−of−flight)測定は、遅れまたは待ち時間(latency)が大きいという問題がある。第3に、超音波信号は、空気温度などの大気条件に大きく依存する。空気温度が変動する場合には、音の速度も変動し、これによって不正確さが生じる可能性がある。最後に、胸部圧迫の面が最初に未知である場合には、圧迫深さの計算は、大幅に損なわれる可能性がある。飛行時間による超音波距離内挿は、6自由度において受信器の位置を解像することができず、患者、受信器または送信器が水平でない場合には、下方への並進運動(translational movement)の特定は難しいことがある。超音波三角測量が用いられたとしても、待ち時間は大きく、解像度は低く、異なる場所に、複数の送信器および受信器が必要となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6351671号明細書
【特許文献2】米国特許第7074199号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0276300号明細書
【特許文献4】米国特許出願第11/936184号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/171755号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】米国医師会誌(Journal of the American Medical Association)(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述した技術における問題を生じることがなく、圧迫深さや圧迫率などの関連するCPRパラメータを正確に測定するのに使用が容易で安価な装置を提供することが望ましいといえる。さらに、装置にとって、訓練、試験、および/または緊急状況のためのCPR処置手順を実行するための指導をすることが有用であるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示は、CPRを適用中の圧迫パラメータを特定するための方法および装置を目的とする。装置は、CPR補助装置とも呼ばれる。この装置は、送信器センサおよび受信器センサを含み、これらは、具体的には、それぞれ場発生器(field generator)および場検出器(field detector)とすることができる。発生器および検出器は、基準センサおよび位置センサとして使用してもよい。基準センサは、相対的に静止しているのに対して、位置センサは、胸部圧迫の度に動く。
【0020】
固定基準センサおよび位置センサを使用することは、CPRの適用中に胸部圧迫深さを特定するために現在、使用されている既存技術よりも有利であるといえる。加速度計を使用して圧迫深さ特定する現行の方法は、信号ドリフトに起因する誤差を生じることがある。さらに、加速度計に基づくシステムは、通常、胸部圧迫の外界の運動に対して敏感である。加速度計は、アースをその基準として使用し、したがって患者が、例えば、車輪付き担架、救急車またはヘリコプタに載せて移送されている場合には、これらの外部運動が、胸部圧迫深さの測定値に影響を与えるか、またはそれを破損させることがある。さらに、加速度計は、通常、様々なノイズ源の影響を受け、加速度から変位を得るために二重積分を使用すると、測定値に様々な誤差が導入される。本発明の装置および方法におけるように、基準センサおよび位置センサを使用すると、これらの問題が解消される。電磁コイルなどの様々な技術によって、信号中のドリフトがわずかであるか、または存在しない実質的に高い精度の測定が可能になる。
【0021】
いくつかの態様において、患者に心肺蘇生法(CPR)を適用する間に少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するための装置であって、場を発生するように適合された場発生器と、前記場発生器により発生された前記場を検出して応答信号を発生するように適合された場検出器と、前記応答信号から、前記場発生器に対する前記場検出器の位置情報を特定するとともに、前記場検出器の前記特定された位置情報を使用して前記少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するように適合されたプロセッサとを備え、前記場発生器および前記場検出器の一方が、患者の胸部と一致して動くように適合された位置センサであり、前記場発生器および前記場検出器の他方が、前記患者に対して静止するように適合された基準センサである装置が提供される。
【0022】
いくつかの態様においては、心肺蘇生法(CPR)を適用する間に少なくとも1つの圧迫パラメータを特定する方法であって、上記の装置を設けるステップと、前記基準センサに対する前記位置センサの位置を特定するステップと、前記位置センサの前記特定された位置に基づいて、前記少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するステップとを含む方法が提供される。
【0023】
本開示の態様を、以下の図面を参照して以下に詳細に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本開示の一実施形態によるCPR補助装置の説明図である。
【図2】患者の胸部上のパッド内部のCPR補助装置の場検出器を示す上平面図である。
【図3】本開示の一実施形態によるCPR補助装置の説明図である。
【図4】場発生器により発生されて、CPR補助装置の一実施形態に好適な場検出器により検出可能な場の説明図である。
【図5】CPR補助装置の一実施形態に好適な場発生器または場検出器の説明図である。
【図6】CPR補助装置の一実施形態に好適な場発生器におけるコイルによって生成される場の説明図である。
【図7】CPR補助装置の一実施形態における場発生および場検出を説明するブロック図である。
【図8】CPR補助装置の一実施形態における場発生器からの発生された場を変調するのに使用された正弦信号、および場検出器のコイルによって検出された正弦信号を説明する図である。
【図9】CPR補助装置の一実施形態における、ディジタル信号プロセッサ内部の信号調整プロセスを説明するブロック図である。
【図10】CPR補助装置の一実施形態における、検出された場からの情報を含むマトリックスの例を説明する図である。
【図11】CPR補助装置の一実施形態に好適な3軸の場の発生器および検出器、ならびに対応する電磁ベクトルの説明図である。
【図12】本開示の一実施形態による、3座標軸により表わした、ベースユニットと位置センサの間の距離を示す図である。
【図13】本開示の一実施形態による、除細動器内部に埋め込まれた場発生器、および除細動器パッド内部に埋め込まれた場検出器を示す上平面図である。
【図14】患者の胸部上に配置されるCPR補助装置の一実施形態の内部の、場検出器に隣接する圧力センサを示す説明図である。
【図15】場発生器が上方の除細動器電極パッドの静止部分に一体化されており、場検出器が下方の電極パッド中に埋め込まれている、CPR補助装置の一実施形態を示す上平面図である。
【図16】本開示の一実施形態による、CPR補助装置の一実施形態に好適な金属薄膜下面を備える位置センサを示す説明図である。
【図17】場検出器を含む固定された基準点に場発生器がつながれていない、CPR補助装置の無線実施形態を示す上面図である。
【図18】患者の胸部の上に配置されるパッドまたはブロックの形態であって、CPR補助装置に給電するバッテリまたは電源が、パッドまたはブロック中に一体化されている、CPR補助装置の一実施形態の説明図である。
【図19】外部基準点から容易に接続、切断が可能である、パッドまたはブロックの形態のCPR補助装置の使い捨て可能な実施形態の説明図である。
【図20】CPR補助装置の一実施形態のための基準点が壁に設置されている、病室の説明図である。
【図21】CPR手順において人工呼吸の有効性を監視および測定するのに使用されている、CPR補助装置の一実施形態を示す説明図である。
【図22】幼児に対するCPR手順中に胸部圧迫パラメータの測定に使用されている、CPR補助装置の一実施形態を示す説明図である。
【図23】CPR訓練での使用に好適なベースユニットディスプレイを示す説明図である。
【図24】自動体外式除細動器(AED)訓練での使用に好適なベースユニットディスプレイを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、心肺蘇生法(CPR)を適用する間に胸部圧迫パラメータの特定および計算を行うための方法および装置を目的とする。この装置は、CPR補助装置とも呼ばれる。
【0026】
この装置は、送信器センサおよび受信器センサを含み、これらはより具体的には、それぞれ場発生器および場検出器である。一般的な送信器センサおよび受信器センサと異なり、場発生器および場検出器は、単純な有向信号を送受信するだけではなく、電磁場などの場を特別に発生し、検出する。単純な信号送信(例えば、赤外光、超音波)と異なり、発生された場は、場発生器のまわりの球形ゾーンを占有し、この場はゾーン内の物体によって遮断または閉塞されることがない。送信された信号の場合のような、有向単一ビームまたは経路よりも、場は、所与の半径内での場発生器のまわりのすべての点において同時に存在している。ある種の送信された信号は、送信器と受信器との間で、直接の見通しを必要とする(すなわち、送信器とセンサの間に遮断がないことが必要である)が、本明細書において記述した、場発生器によって発生される場は、このような制限がない。さらに、単純な送信信号を使用する際には、送信器とセンサとの間の距離は、信号の飛行時間などの、信頼性のないデータに基づいて計算しなくてはならない。例えば、超音波飛行時間測定は、空気温度などの送信媒体の性質に敏感である。本明細書において説明したように発生された場においては、そのような限定に遭遇することがない。
【0027】
いくつかの実施形態においては、場検出器は位置センサであり、場発生器は基準センサである。位置センサは、患者の胸部の運動に対応する場所に配置されるのに対して、基準センサは相対的に静止した場所に配置してもよい。信号、例えば電磁場は、基準センサによって発生され、位置センサによって検出される。その他の実施形態においては、場検出器は基準センサであり、場発生器は位置センサであり、この場合には、信号は、場であってもよく、位置センサによって発生されて、基準センサによって検出される。位置センサと基準センサが、交換可能であることは、当業者には明白であろう。装置内のプロセッサは、信号に基づいて基準センサに対する位置センサの位置を特定する。特定された位置に基づいて、プロセッサは、CPR適用中の胸部圧迫深さを特定する。
【0028】
次に図1および2を参照する。この例においては、CPR補助装置には、緊急事態の環境において基準センサ4を収納する相対的に静止したベースユニット1と、基準センサ4に対して、患者の胸部の運動に応じて動き、それによってCPR中の患者3の胸部の運動を追跡する位置センサ2とを含めてもよい。この例においては、基準センサ4は場発生器であり、位置センサ2は場検出器である。基準センサ4は、位置センサ2によって検出される場5のような信号を発生することが可能である。この例においては、位置センサ2は、ブロック、パッド6またはその他の好適な構造などの、患者の胸部の上に配置された構造内に設けられる。CPR適用者または救急員9は、その手7を直接、パッド6の上に置くことによって、患者の胸部を圧迫してもよい。ここで、ベースユニット1は、患者に対して相対的に静止している、グラウンド10上に配置されている。パッド6をベースユニット1に接続するケーブル39は、ベースユニット1内の電源から位置センサ2に電力を供給する。
【0029】
次に、CPR補助装置の別の例を示す、図3を参照する。この例においては、位置センサ2は救急員9の手首8の位置にある。例えば、位置センサ2は、救急員が身に着けるリストバンド38内に設けてもよい。図示されていないが、救急員の手、手首または腕の運動は、通常、胸部圧迫中の患者の胸部の運動と対応するので、位置センサ2は、代替的に、救急員の手7または腕などの、救急員の別の位置にあってもよい。
【0030】
図示されていないが、基準センサ4は、ベースユニット1なしで使用してもよい。基準センサ4は、相対的に静止している、首または額などの、患者の人体構造の一側面上に配置してもよい。基準センサ4は、除細動器などの、別の1個の相対的に静止している医療機器、または患者に対して外部にある医療モニタ内部に収納してもよい。
【0031】
位置センサは、圧迫の間に位置センサが胸部の全距離を動くように、胸部圧迫の部位付近で患者の胸部と接触しているか、または救急員の手の上にあってもよい。位置センサが、圧迫と共に動くにつれて、基準センサに対する位置センサの相対距離も変化し、圧迫深さ、圧迫率および圧迫角などの圧迫パラメータを特定することが可能になる。
【0032】
図4で示すように、場検出器(例えば、上記の例における位置センサ)は、場発生器(例えば、上記の例では基準センサ)からの発生された場を検知するように構成されている。次いで、場検出器は、応答信号を生成してもよい。プロセッサが、応答信号に基づいて、基準センサに対しての、位置センサの位置、例えばその3次元位置座標を特定する。プロセッサは、基準センサと一緒にベースユニット内に設けるか、位置センサ上に設けるか、または別個の構成要素としてもよい。プロセッサは、有線通信または無線通信を介して位置センサからの情報を受信してもよい。位置センサの座標の特定は、場発生器から検出される場の強度を測定することによって達成してもよい。より一般的には、信号が基準センサと位置センサとの間で伝送されている場合に、位置センサの座標の特定も、応答信号強度または送信器センサから受信器センサへの送信信号の飛行時間を測定することによって達成してもよい。プロセッサは、その他の計算、例えば、特定された位置情報から圧迫深さを特定する計算を行ってもよい。プロセッサはまた、位置情報を記憶するためのメモリを内蔵してもよく、この位置情報は、訓練または報告の目的でも有用となる。
【0033】
先述のように、位置センサまたは基準センサのいずれかを、場検出器として使用し、この対の他方を場発生器として使用することができる。複数の基準センサおよび/または位置センサを使用してもよく、これによって、位置および方位の情報の精度がさらに向上する。例えば、実質的なノイズ源または干渉源のある環境において(例えば、装置が、電磁場を信号として使用し、その一方が実質的な金属源を包含する場合において)、第2の場検出器を第1の場検出器の環境に配置してもよく、この場合に、第1の場検出器は位置センサとして使用され、基準センサは場発生器である。第2の場検出器は、位置を固定して、環境における周囲干渉を特定することによって装置の測定値を較正するのに使用してもよい。別の例において、第2の場検出器を、第1の場検出器に隣接して配置して、両者が患者の胸部と一致して動く、2つの場検出器からの生データの相関をとって、より正確な位置情報を取得してもよい。追加的または代替的に、複数の場発生器を使用し、それらを別の場所に配置し、場検出器によって検知された信号の相関をとることによって、位置情報の精度を向上させてもよい。また、複数の場発生器は、位置データにおける曖昧さを除去するのを補助してもよい。例えば、それぞれが電磁信号用の直交コイルを有する、1つの場発生器および1つの場検出器が使用される場合に、場発生器および場検出器のそれぞれのコイルを、それらの軸上に整列させてもよい。整列される場合には、いくつかの電磁ベクトルが無効となり、利用可能な有用なデータ量は減少することになる。互いに軸のずれた、2つの場発生器を使用することによって、場検出器のコイルは、少なくとも1つの場発生器のコイルとは整列しないことが保証される。この構成においては、場発生器および場検出器の相対方位に関係なく、位置情報を特定するために利用可能な有用なデータが常にある。
【0034】
センサから特定される位置および/または方位の情報は、とりわけ圧迫深さ、圧迫率、または圧迫角などのCPRパラメータを計算するのに使用することができる。このようなパラメータは、CPRの有効性を判定することができる。例えば、毎分100回の圧迫率、圧迫毎に4〜5cmの圧迫深さ、および救急員の前腕と患者の胸部の間の約90度の圧迫角が有効であることがわかっている。パラメータの特定の範囲を促すために、CPR補助装置上のフィードバック構成要素を通して、救助員にフィードバックを提供してもよい。例えば、所望の圧迫率において鳴る、ビープ音などの音響合図(cue)であってもよい。救助員には、計算されたCPRパラメータに基づくフィードバックを提供してもよい。例えば、圧迫率が事前設定された所望の率よりも低い場合には、「もっと速く圧迫する」ように救助員に対する音響合図または視覚合図があってもよい。類似の音響合図および/または視覚合図によって、他のパラメータの中でも例えば所望の圧迫深さまたは圧迫角度を維持する際に、救助員に教示することができる。
【0035】
CPR補助装置は、埋め込み型のLED、ディスプレイおよび/またはスピーカなどの、フィードバック構成要素を内蔵して、可聴型および/または可視型のプロンプトおよび/またはフィードバックを提供してもよい。プロンプトは、「911に連絡(“CALL 9−1−1”)」または「もっと速く圧迫」または「もっと強く圧迫」または「圧迫良好」のようなメッセージで構成してもよい。救助員を適正な技法に導くために、画像も表示してもよい。LEDまたはその他の光源を使用して、救助員を整調し、視覚フィードバックを提供してもよい。メトロノームを使用して、救助員に適正な圧迫率を聴覚的に指示してもよい。そのようなフィードバック構成要素を、位置センサ上もしくは基準センサ上、ベースユニットを使用する場合にはベースユニット内、または別個のディスプレイユニットなどの別個のユニット内に設けてもよい。
【0036】
CPR補助装置は、電源によって給電してもよい。単一の電源を使用して、装置のすべての構成要素に給電してもよく、この場合には、1つまたは複数のセンサを電源に電線で接続してもよい。代替的に、各センサがそれ自体の電源、例えば各センサに設けた別個のバッテリを有してもよい。電源は別個のベースユニットに位置してもよく、このベースユニットはまたプロセッサを内蔵してもよい。次いでセンサを、ベースユニットに電線で接続することができる。
【0037】
次に、センサの例を示す図5を参照する。この例においては、センサは、場発生器または場検出器である。この例における場発生器および場検出器は、電磁コイルまたは磁気センサである。
【0038】
センサは、位置情報において望ましい自由度数に応じて、単一軸上に単一コイルを有しても、複数軸上に複数のコイルを有してもよい。この場合に、プラスチック、またはフェライトなどの金属などの好適な材料で構成されたソリッドコア(solid core)14のまわりに、3本の互いに直交するコイル11、12、13が巻かれている。より少ない自由度の情報が必要な場合には、2本または1本だけのコイルを使用してもよい。図6は、センサ内に内蔵された1軸コイルによって発生させることのできる場を示す。また、場発生器および/または場検出器は、3本を超えるコイルを内蔵してもよく、またそれぞれが異なる数のコイルを内蔵してもよい。例えば、場発生器が9本のコイルを内蔵し、場検出器が1本のコイルを内蔵してもよい。場発生器により多くのコイルを配置することによって、場検出器内に配置する必要のあるコイルの数を少なくし、それによって場検出器の寸法、重量および厚さを低減することができる。このアプローチを用いると、患者の胸部上に配置される場検出器を非常に小型で薄くすることができ、これによって患者の快適性を向上させ、CPRの適用に対する障害を回避することができる。
【0039】
センサおよびコイルに対するその他の設計も、当該技術分野において一般に知られているように、好適であることがある。一実施形態においては、センサはそれぞれ3本の互いに直交するコイルを内蔵する。電磁場のような信号が、場発生器内の3本のコイルのそれぞれによって発生されて、場検出器内の3本のコイルのそれぞれによって検出されて、応答信号を生成する。この応答信号は、6自由度において、固定された基準センサに対する位置センサの位置を演算するのに使用することができる。3つの並進軸と3つの回転軸を表わす6つのベクトルを特定することにより、圧迫深さおよび/または圧迫角の測定が可能になる。
【0040】
6自由度すべてにおける位置および方位の情報を与えることによって、センサは、救助員の圧迫の形態の全位置追跡を行うことができる。例えば、位置センサが救助員の手首に配置されている場合には、6自由度の情報は、手首の回転角を提供することができ、この回転角は、救助員が患者の胸部に対して有効な角度、または所望の角度でCPRを適用しているかどうかを判定するのに有用である。6自由度によって、CPR適用の3次元表現を、報告、訓練、分析またはその他の目的で後で再生成することもできる。センサは、6自由度の位置および方位の情報を与えるものとして説明したが、センサは、より少ない情報を提供するように簡略化することもできる。例えば、圧迫が主としてz軸(すなわち、上下)方向であると仮定されるような場合には、センサは、2自由度または3自由度の情報を提供するのが好適、または十分であるといえる。
【0041】
場発生器は、電磁エネルギーなどの場を生成し、この場合にセンサは電磁コイルであり、その場は場検出器によって検出または検知される。場検出器における多軸コイルの各軸上で検出された電磁信号の強度によって、位置情報および方位情報を特定することが可能となる。発生された電磁場は、パルスDC場またはAC正弦場とすることができる。この発生された場は、場検出器内に電圧および電流応答信号を誘導し、この信号は、場発生器内のコイルと場検出器のコイルとの間の距離を示している。
【0042】
コイルは、短い距離にわたる小さい場を発生するには小さくし、長い距離にわって動作するためのより大きい場を発生するのに使用される場合には、大きくしてもよい。コイルの設計およびコイルパラメータの決定は、CPR補助装置に適するように個々に設計してもよい。各コイルは、できる限り小さく設計する一方で、同一の誘導値を有する、正確な幾何学形状としてもよい。例えば、場発生器コイルを形成する電線は、芯のまわりに約150〜200の輪を作る24〜30アメリカ線番号(AWG)の銅線とすることができる。場を発生する場発生器の寸法は、意図する場の半径の寸法に依存するが、一般に、場を検出する場検出器の寸法よりも大きい。場検出器は、例えば、幼児などの小柄な患者の胸部に適合するように、比較的小型にすることができる。場検出器は、場発生器よりもずっと小さな寸法にすることができる。場検出器コイルの面積が小さいことから、場発生器と比較して、より小さいゲージの電線をより多くの巻数、例えば500〜600巻きの37AWGの電線を内蔵することができる。場検出器は、代替的に、その他の種類のセンサ、例えば、磁気抵抗センサ、ホール効果センサまたはフラックスゲート磁力計などの異なる磁気センサを含んでもよい。
【0043】
CPR補助装置の一例ではコイル式センサを使用しているが、これは本発明の方法および装置の必要条件ではないことを、当業者は理解するであろう。基準/位置センサを使用して、好ましくは3次元空間において、物体の位置を検出することのできるその他のセンサを使用してもよい。例えば、電磁場を使用するコイル式センサの代わりに、センサは、特に、無線周波数場、音響場、光場、超広帯域場(ultra−wideband fields)、または無線周波数同定場(radiofrequency identification fields)を使用してもよい。使用する場は、場発生器と場検出器の見通しが不要となるように選択して、両者の間に物体があってもそれを通過して場を検出できるようにしてもよい。これによって、場発生器と場検出器を簡便に配置するとともに、CPRの適用中に、場が検出できない、それゆえにCPRフィードバック情報が検出できなくなるリスクを最小化することができる。
【0044】
実施形態によっては、加速度計、傾斜センサまたはその他の方位センサを基準センサに追加するのが有用である。この追加のセンサによって、基準センサがそれ自体の方位またはそれが位置している面を検出することが可能になる。このことは、基準センサが傾斜面上に位置している場合に特に有用である。位置センサの位置および/または方位は基準センサに対して計算されるので、センサが6自由度より少ない位置情報を与えるように設計されている場合に、基準センサの方位がわかると有用であることがある。6自由度すべてが検知される場合には、基準センサの方位を知ることは、それほど重要ではない。
【0045】
基準センサは、患者から離れてグラウンド上の固定点にある必要はない。基準センサは、胸部の運動が検出できるように、車輪付き担架の上、壁の上、天井、病室内の簡便な場所、救急車の内部、または患者に対して固定されるか、または静止しているその他任意の適当な場所などの、患者の付近の相対的に静止した任意の場所に位置してもよい。特に、基準センサは、絶対的に静止している必要はなく、患者に対してのみ静止していればよい。例えば、基準センサは、患者を搬送する移動中の救急車内に固定してもよく、これは、基準センサは救急車内の患者に対しては静止しているので許容される。さらに、基準センサは、患者または救急員の人体構造の静止部分に装着してもよい。例えば、基準センサを患者の額または首に配置してもよい。別の例においては、位置センサが、患者の胸部に一致する第2の電極パッド内に位置するのに対して、基準センサは患者の肩の上に配置された電極パッドに一体化してもよい。基準センサは、代替的に、相対的に静止している点、例えば、救急員の脚において、救急員の膝の下(例えば、ニーパッド内)、救急員の腰部のまわり、または救急員のその他任意好適な静止側面において、救急員が身に着けるか、その上に配置してもよい。
【0046】
一実施形態において、基準センサは、相対的に静止している、手動除細動器または自動体外式除細動器(AED)などの別の医療機器に組み込むか、または取り付けてもよい。位置センサは、患者の胸部、救急員の手、手首または腕に接触させて装着するか、または配置してもよい。除細動器またはAEDと共にCPR補助装置が使用される一実施形態においては、位置センサは、除細動器電極パッドの一方または両方の内部に位置してもよく、この一方または両方のパッドは、胸部圧迫が行われる胸部領域中に延びるように構成されている。
【0047】
場の発生と検出された場の処理のための例示的回路のブロック図を示す、図7を次に参照する。この例において、場の発生および検出された場の処理は、両方とも同一のプロセッサによって実行される。別個のプロセッサを、場の発生および検出された場の処理のそれぞれに使用してもよく、この場合には、その回路に対するブロック図は別個になるが、それでも類似のブロックを含めることができる。簡単にするために、回路は、単一のプロセッサが使用される例についてのみ記述してあるが、当業者であれば、この回路は、2つ以上の別個プロセッサを使用するように修正できることがわかるであろう。
【0048】
図示された回路は、発生された場が電磁場であり、センサ(例えば、場発生器および場検出器)が、場を発生および検出するコイルを内蔵する場合に、好適であるといえる。この実施形態において、正弦場などの場5は、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)15、マイクロコントローラ、またはその他好適な波形発生器などの、波形発生器によって生成される。DSP15の場合には、正弦基準信号を、ソフトウエアルックアップテーブル16を使用して生成してもよい。正弦波信号が、特定の周波数、例えば、12kHzにおいて生成される。ディジタルアナログコンバータ(DAC)17が、あるサンプリング速度でトリガーをかけられて、ソフトウエアルックアップテーブルのポイントを、正弦電圧に変換する。代替的に、正弦信号は、ルックアップテーブルからのポイントを使用して、変調されたパルス幅変調(PWM)波を出力することによって、DSP15によって生成してもよい。次いで、PWM信号は、例えば2次RCフィルタ(図示せず)を使用して、ローパスフィルタにかけられる。ローパスフィルタは、PWM信号から正弦波を作成し、次いで、この正弦波が電力増幅器18に送給される。電力増幅器18は、時間変化する場を発生するために正弦信号が、コイル、例えば場発生器内のコイルに送り出される前に、正弦信号の強度を増大させる。電力増幅器18は、D種定格の高電力、低ノイズ音響増幅器、または当該技術分野において知られているその他の任意好適な増幅器とすることができる。D種定格増幅器の場合には、出力はPWM変調されており、正弦波がPWMフォーマットに逆変換されていることを意味する。別のローパスフィルタ(図示せず)、例えばLC無損失フィルタ、を使用して、D種定格電力増幅器のPWM出力から正弦波を作成してもよい。マルチプレクサ(図示せず)を使用して、3本の直交座標軸の1つに対して場が生成されるように、場発生器内部に内蔵されている3本のコイルの1本を選択してもよい。次いで、増幅された場は、例えば、場が電磁エネルギーの形態である場合には、場検出器によって検出される。
【0049】
図8は、場5バーストが、場発生器内の3本のコイルのそれぞれに、逐次的に送り出される様子を説明している。この図は、3本の場発生コイルおよび3本の場検出コイルがある例を表わす。この3本の場発生コイルは、例えば、基準センサ内のそれらは、場検出コイルがそうであるように、互いに直交している。各場発生コイルは、逐次的励磁段階において、逐次的に場検出コイルによって検出される、正弦場を発生する。各励磁段階は、それぞれのコイルの励磁により、そのコイルにより場がその間に発生される持続時間の間、行われる。各励磁段階の持続時間は、サンプリング速度を減少させることのある過剰な遅れを回避するために、比較的短くしてもよい。励磁時間を短縮することによる遅れの低減は、励磁時間の延長による誤差の低減と均衡させてもよい。各励磁段階の持続時間は可変にして、装置の特定の実施形態、使用目的または用途に基づいて決定してもよい。記述のように、持続時間は、所望の誤差率および所望のサンプリング速度に基づいて均衡させてもよい。例えば、誤差が主たる関心である用途においては(例えば、ノイズの発生しやすい環境においては)、励磁段階は長くしてもよい。場検出コイルは、それぞれの場発生コイルに対するそれらの方位および距離に応じて、発生された場によって励磁されて、応答信号を生じる。次いで、場検出コイルからのこの応答信号を、アナログディジタルコンバータによってサンプリングして、各場検出コイルにおける場強度を特定してもよい。CPRの間は、相対的に低速のデータ率を許容できる。例えば、毎秒40の位置点が計算される場合には、正弦波がその間に電力増幅器から出力される実際の時間は、全動作時間の10分の1未満となる。例えば、空間内の位置を特定するには、3つの場検出器のそれぞれについて9つの周期を出力すれば十分である。したがって、各位置あたり合計27の周期が出力されることになる。12kHzにおいて、27周期は2.25msとなる。毎秒40位置において、コイルは、0.09s、または合計動作時間の9%の間、作動状態であり、大量の電力がシステムによって消費されないことを確実にする。各検出器当たり2つの周期だけが使用される場合には、コイルが作動状態である合計時間は、0.02秒、または合計動作時間の2%となる。
【0050】
この例は、各場発生コイルを介して発生された場を時間分割多重化することを要するが、これらの場は、周波数多重化してもよい。周波数分割多重化される場合には、場を、逐次的に励磁する必要はなく、異なる周波数で励磁してもよい。次いで、場検出器は、検出された場のそれぞれを帯域通過させて、いずれの場発生コイルから、それぞれの場が由来しているかを判定してもよい。
【0051】
発生された場は、例えば、場検出器のコイル内に誘導される電気ポテンシャルによって、応答信号を生じる。この応答信号は、プロセッサに送り、当該技術分野において一般に行われるように、そのプロセッサによって増幅、フィルタリングおよび/または調整を行ってもよい。場検出器からの応答信号の増幅およびフィルタリングは、帯域通過フィルタ20、ローパスフィルタ、差分フィルタおよびエイリアス補正フィルタ21などのフィルタで、複数の計装増幅器19が継続接続される、多段手法を使用して達成することができる。例えば、低ノイズの、調整可能ゲインの計装増幅器を使用して、コイルから差分信号を受信してもよい。増幅された信号は、帯域通過フィルタにかけて、特定の正弦変調信号の周波数(例えば、12kHz)外のノイズを除去してもよい。第2の低ノイズで調整可能な計装増幅器を使用して、フィルタリングされた信号をさらに増幅してもよい。最後に、エイリアス補正フィルタおよびローパスフィルタを使用して、応答信号内に残留ノイズがあればそれを除去してもよい。その他のフィルタおよび/または増幅器も好適であることもあり、本明細書に記述したのと異なる順序で使用してもよい。増幅されフィルタリングされた信号は、ディジタル化とさらなる処理のために、DSP上のアナログディジタル変換器(ADC)22に送られる。高速サンプリング速度を有する高解像度ADCを使用してもよい。次いで、ディジタル化された信号は、信号調整に送ってもよい。
【0052】
プロセッサは、場発生器と場検出器の間の距離を、初期の信号強度を測定することによって特定してもよい。初期の信号強度が低すぎる場合には、プロセッサは、増幅器システムのゲインを変更してもよい。入力信号が、適当な情報(例えば、8ビットのデータ)を提供するのに必要であるよりも低い場合には、ゲインを増加させてもよい。入力信号強度が低すぎる場合には、信号対ノイズ比が、所望の情報を取得するには高くなりすぎる可能性がある。信号強度が低すぎるので、ゲインを増大させる必要がある。しかしながら、場合によっては、システムゲインを増大させると、ノイズレベルも増大し、信号とノイズの差が、正確なデータを測定するには小さくなりすぎることがある。例えば、Analog Devices社製のAD8253などの、高速のプログラマブルゲイン計装増幅器を使用する場合には、ゲインは、1からゲイン係数1000まで変化させることができる。計装増幅器上の2つのピンは、それらがハイまたはローであるのに応じてゲインを設定する。例えば、両方のピンがロー(すなわち、0,0)である場合には、ゲインは最小値1である。ピンが(1,1)である場合には、ゲインは最大値1000となる。その他の組合せによって、10または100のゲインが生じる。したがって、ゲインは、増幅器上のゲイン設定ピンを適当に切り換えるDSP内のソフトウエアによって制御することができる。ゲイン係数は、最初に1から10に増大させてもよい。新しく増幅された信号が低いままである場合には、増幅器上のゲイン設定ピンのハイ−ロー状態を変更することによって、ゲインをもう一度、係数100まで切り上げることができる。この過程は、信号レベルが十分になるか、またはゲイン係数がその最大レベルになるまで繰り返すことができる。さらに、装置は、場検出器が所与の動作半径の範囲外になると、それを検出することができる。応答信号が所望のデータビット数(例えば、8ビット)よりも小さく、かつ増幅器がすでに最大ゲイン(例えば、1000)であるときには、装置は、場検出器が装置の動作範囲を超えていると判定し、このことを、例えば視覚表示または聴覚信号を介してユーザに示してもよい。場発生器に(例えば、電力ケーブルによって)つながれている場検出器の動作範囲は、ケーブルの長さで制限されていることがあるので、このことは、そのような装置にとっては特に重要な問題ではない。
【0053】
場発生器のコイルを通過する電流を変化させることによって、ダイナミックゲインを実現することもできる。近傍範囲において、場発生コイルを通過する電流は、増幅器ゲインの減少に代わって、かつ/またはそれと共に減少することがある。場発生コイルを通過する電流を調整することは、少なくとも2つの目的で役割を果たす。第1に、調整可能なゲイン増幅器との組合せにおいて、調整可能な電流によって、信号強度のより大きなダイナミックレンジが得られ、それによって装置のより大きな動作範囲を可能にする。第2に、調整可能な電流によって、装置は、近距離において電力を節約して、その動作範囲の外側限界で動作しているときに電力を増大させることができる。これによって電力の節約を促進することができ、このことは、装置がバッテリ電力で動作しているとき、例えば、装置が可搬型に設計されているときに、特に重要となる。
【0054】
ディジタル化の後に、図9に示すように、信号を、さらなる調整および/またはフィルタリングに供してもよい。ADC22から信号を受け取ると、オフセット除去アルゴリズム23を信号に適用してもよい。このアルゴリズムは、応答信号上に存在して復調器の適正な動作を妨害することのある、DCオフセット成分があればそれを除去する。このアルゴリズムにおいては、入力信号の移動平均が維持されて、各入力値から減算される。真の正弦信号の平均値はゼロであり、ある完全数のサイクルを過ぎると、DCオフセット成分だけが残留する。このオフセットは、ポイントバイポイント式にアナログディジタル変換された信号から減算される。
【0055】
調整の第2の段階には、基準発振器25に同期して応答信号の位相シフトを特定して、適当な極性の全波整流正弦波を生じる、復調器24を含めてもよい。基準発振器を製作するのにディジタル技術を使用することによって、基準信号が容易に利用可能となり、位相シフトには影響されない簡潔な復調技法を使用することができる。応答信号は、複素ベクトルと考えてもよく、その実数部分および虚数部分は、2つの直角成分を乗算することによって独立に計算することができる。ベクトルの絶対値は、これらの成分の平方和の根から演算することができる。位相の特定は、基準発振器の符号と応答信号の符号との「排他的OR」の結果に基づいており、これらの信号が同相の場合には、符号は同じであり、結果は偽となる。信号が反対位相である場合には、符号は逆であり、結果は真となる。位相は、1回の完結した発振器サイクルでの先行結果に基づいて、「多数決」を使用して特定することができる。検出された信号の位相は、センサがその中で動作している、空間の象限を示している。
【0056】
信号調整の第3の段階は、整流された信号絶対値を安定なディジタル結果に平滑化するのに使用される平滑化フィルタ26である。平滑化は、システムのまわりの空気中の磁場歪の存在などの、周囲ノイズを除去するために使用することができる。単純移動平均フィルタを、励磁ステップ全体にわたるウィンドウを使用して、構築することができる。そのようなフィルタは、ポイントバイポイント式で作動し、復号器の出力からの各データポイントを循環バッファに加え、移動合計から最も古い値を減算し、最新の値を加算してスケーリングすることによって、平均を演算することができる。この平滑化は、上述の平滑化フィルタ26に加えて、基準発振器25からの基準信号を使用して信号を復号することによっても行うことができる。信号調整のための基準信号は、以下に説明するように、位置センサによって得ることもできる。DCオフセット除去、復号および平滑化は、アナログディジタル変換器によってデータが利用可能になるときに、プロセッサによって、応答信号に対してリアルタイムに実行することもできる。代替的に、これらの動作は、それぞれの場発生器−検出器の組合せから9つの値のすべてが受け取られるときに実行してもよい。
【0057】
信号調整の第4の段階は、生の位置データを補正するための、センサ形状補正27を提供することができる。一定のオフセット調節およびゲイン調節を適用し、その結果を使用して補正マップ中に索引をつけて、読取り値に追加されるビット単位での補正値を検索することができる。補正マップは、較正ステップにおいて作成してもよく、このことは、装置が相対的に固定されている、一定の環境または制御された環境において使用される場合に、特に好適である。例えば、訓練センターまたは家庭などの一定の環境において、金属物体などの信号ノイズの源を説明するために、装置の使用の以前に、周囲環境をマップ化することができる。この較正は、制御された状況においてCPR研究のために装置を使用する研究者に対して有用である。共通の較正方法を、補正マップを作成するのに使用してもよく、そのような較正は、ミリメートル未満の範囲まで十分な精度がある。設定時間の少ない緊急環境においては、較正ステップの好適性はより低くなる。さらに、使用されている特定のコイルに関係する較正情報(例えば、インダクタンス、寸法、形状、ゲイン)を、プロセッサが検索するために、そのコイルと共にEEPROM、またはその他の同様のメモリデバイスに記憶させてもよい。次いで、プロセッサは、このコイル固有較正情報を位置計算に適用することができる。その他の信号調整アルゴリズムも、当該技術分野において一般に知られているように、上述のものの代わりに、またはそれに加えて使用することもできる。
【0058】
適当なフィルタリングと調整の後に、位置センサのコイル内に誘導された電圧を表わすマトリックスY29を、図10に示すように構成することができる。この例においては、マトリックスY29は、位置センサのコイルから取得される、9つの測定電圧28およびそれらの符号を含む。マトリックスY29から、一般に知られているアルゴリズムを使用して、位置および方位を推定することができる。
【0059】
位置および方位の情報は、当該技術分野において一般に知られている、様々な数学的技法を用いて求めてもよい。その他任意好適なアルゴリズムを使用することもできるが、使用することのできるアルゴリズムの1つとして後述のものがある。このアルゴリズムは、6自由度について位置情報を特定する場合に好適である。このアルゴリズムは、より少ない自由度に対して、変更および/または簡略化してもよい。
【0060】
位置センサ内のコイルのような、円形ループアンテナによって生じる近傍磁場は、図11に示すように、半径成分および接線成分によって記述することができる。ループは、電流i(t)=Icosωtによって励磁され、ここでIは電流の振幅、ωは位相、tは時間である。距離ρおよび軸外(off axis)角δの点において生じる磁場は、半径成分および接線成分によって、以下のように完全に記述される。
【0061】
ρ=(M/2πρ)cosδ、およびH=(M/4πρ)sinδ
【0062】
ここで、M=NIAは、ループのスケーリングされた磁気モーメントであり、AおよびNは、それぞれループの面積および巻き数を表わす。センサループアンテナは、ループ方位ベクトルと整列した(すなわち、ループの面に直角の)場成分にだけ応答する。3つの直交する場検出アンテナの組によって検出される、グラウンドアンテナから発生された3つの直交する場の測定値は、6つの位置および方位のパラメータを特定するのに十分な情報を生成する。これは、方位および位置のパラメータが独立して求められると仮定している。位置−方位アルゴリズムを合成するために、センサ出力を源励磁に関係づける座標およびベクトル−マトリックス定式を、3軸源および3軸センサの幾何学的関係を使用して定義しなくてはならない。
【0063】
位置は、センサ方位と独立して計算してもよく、これによって図12に示すように3自由度の位置情報が得られる。代替的に、6自由度(位置および回転)のすべてを得てもよい。CPRの場合には、圧迫深さを測定するために、3自由度、主としてx30、y31およびz32の座標を使用するのが適当であるといえる。x、y、およびzの値を計算するために、様々なアプローチがとられる。好適なアルゴリズムには、9つの誘導電圧からのベクトル絶対値および内積(dot product)の計算が含まれる。当業者にはよく理解されているように、様々なマトリックス演算を使用して、x、y、zの位置に加えて3つの方位角のすべてを求めてもよい。
【0064】
幾何学的関係および前述の方程式から、以下のステップを含む、推定アルゴリズムを実装することができる。
【0065】
1.場発生器および場検出器の間の結合を測定し、マトリックスY29を取得するとともに、それをフィルタリングする。
【0066】
2.方位不変マトリックスD=1/CYを演算する、ただし、ここでCは信号の既知の増幅に基づく、ゲイン定数である。
【0067】
3.Dから位置x、yおよびzの位置を推定する。
【0068】
4.D−1=(D1/2を演算する。
【0069】
5.方位マトリックスA=1/CYD−1を推定する、ただしTは補償回転マトリックスである。
【0070】
6.マトリックスAから方位角ψ、θ、φを推定する。
【0071】
このアルゴリズムの出力において、6つの位置座標および方位座標のすべてが利用可能である。当該技術分野において一般に知られている、その他の推定アルゴリズムを使用してもよい。
【0072】
計算された位置および方位の情報から、CPRパラメータを計算してもよい。例えば、圧迫深さ、圧迫率および圧迫角を、当業者に知られているように、位置および方位の情報に基づいて計算してもよい。いくつかの例示アルゴリズムについて説明するが、当業者であれば、その他のアルゴリズムが好適である場合も理解するであろう。圧迫深さの場合には、x30、y31およびz32の位置を、圧迫軸上で移動した距離を特定するのに使用してもよい。また圧迫深さは、コイルのすべての運動が、胸部圧迫による運動であると仮定することによって計算してもよい。この仮定は、犠牲者の胸部に装着されて、圧迫によってのみ動くパッドなどの、特定の実施形態において、特に妥当であるといえる。この仮定を設定すると、圧迫深さは、各時点の位置ベクトルの絶対値の変化を計算することによって測定することができる。位置ベクトルの絶対値は、どの時点においても、x、yおよびzの位置の平方和の二乗根と等価である。回転角は、圧迫の軌跡および角度をさらに定義するのに使用することができる。回転角は、正確な圧迫深さ推定に対して救急員の前腕と犠牲者の胸部の間の角度が重要であるグローブなどの、特定の実施形態において、特に重要となる場合がある。
【0073】
圧迫率などのパラメータは、真の圧迫事象の発生を判定することのできるピーク検出アルゴリズムを使用して計算してもよい。ピークはまた、真の圧迫であるとみなされるために圧迫が達成しなくてはならない、固有の閾値を設定することによって検出してもよい。例えば、圧迫が、深さ3cmを通過し、かつ深さ2cmリコイル(recoil)すると、適当な圧迫であるとみなすことができる。圧迫を数えることは、圧迫深さの計算を可能にするだけでなく、CPRの1サイクルを構成する30回の圧迫のそれぞれがカウントダウンされる、圧迫カウントダウンも可能にする。そのような情報をユーザに提供することによって、CPR過程においてユーザが圧迫の状況を把握するか、またはその数を数える必要をなくしてもよい。
【0074】
これらの計算されたパラメータは、視覚、聴覚および/または触覚のフィードバックとして、救急員に提供してもよい。計算されたパラメータは、事前設定された目標パラメータと比較して、それに応じてフィードバックを与えてもよい。この情報はまた、訓練目的など、後の解析のためにプロセッサ内に記憶させてもよい。
【0075】
深さ測定システムをさらに改良することを可能にする、胸部圧迫のある特質がある。胸部圧迫は、比較的短く、一貫性のある周期的運動である。胸部圧迫の下方ストロークの全体は、通常、2cmから6cmの間であり、主としてz軸上で発生する(すなわち、上下の)並進運動である。胸部圧迫解析は、通常、広い領域にわたる広範囲の運動を説明する、複雑な運動解析を必要とはしない。胸部圧迫は、通常、より単純であり、圧迫の特質を使用して、装置の基本構造および寸法を簡略化し、装置の電力消費を低減し、装置のコストを低減し、かつ/または装置の精度を向上させることができる。
【0076】
例えば、場発生器と場検出器の間の距離を最小として、それによって装置の電力要求量を低減することができる。図13に示す一実施形態においては、基準センサが、緊急場面に置かれた除細動器ユニット33内に設けられている。位置センサ2は、除細動器電極パッド34の一方の中(例えば、パッド34の延長部分38の中)、あるいは患者の胸部または救急員の手、手首もしくは腕に配置されたその他の構造物の中に設けられている。除細動器と患者の胸部の間の通常の距離は短く、通常は、概して約0.3mから約1.1mの範囲である。通常、除細動器電極パッドは、それらを除細動器ユニット33に接続するケーブル35を有する。これらのケーブルは、通常、約0.8mから1.1mの長さであり、したがって、除細動器ユニット33は、通常、患者から1m未満離れて配置される。結果的に、場発生器は、通常、場検出器によって検出可能である、広がりが半径で約1m以下の場を発生する必要がある。電磁エネルギーは、発生器と検出器の間の間隔に3次比例して強度が減少するので、この短い発生距離は、生成される場が電磁場の場合に、場発生器への電力要求量が減少することを意味する。
【0077】
さらに、装置の動作範囲を制限することによって、装置基本構造を簡略化することができる。短い距離では、応答信号を増幅するのに、ダイナミックゲイン増幅ではなく一定のゲイン増幅で十分であることがある。一定のゲイン増幅によって、より簡略な装置構成要素をより低いコストで統合化することが可能となる。また、場の寸法が小さくなると、ノイズの可能性を低減することによって精度の向上が可能となる。場の寸法が小さいことによって、動作範囲にわたって性能を最適化するように、増幅器のゲインを正確に固定することが可能となる。最大の場の寸法を得ることを別にして、その他の設計要件もある。例えば、最小の場の寸法が重要となることがある。広いダイナミックゲイン範囲の必要性を低下させるために、場発生器と場検出器が互いに非常に近接しているときには、応答信号の飽和を防止するように、場発生の最小半径を限定してもよい。このことは、例えば、場発生器のコイルを場発生器の封入容器の外側面から離して配置するか、または場発生器を(例えば、場発生器がベースユニット内に設けられている場合には)ベースユニットの外側面から離して設置して、場発生器のコイルが場検出器のコイルと物理的に隣接できないようにすることによって達成することができる。フィルタリング、信号調整および信号増幅を、胸部圧迫が行われる短い距離にわたって、効果的に機能するように調整してもよい。
【0078】
また、圧力スイッチまたは圧力センサ36を、図14に示すようにCPR補助装置に含めて、精度をさらに向上させてもよい。この例においては、圧力センサ36は、位置センサ2を収納しており、両者は、患者の胸部の配置されることになるパッド6上に設けられている。パッド6はまた、位置センサ2用の電源44を収納している。圧力センサ36または圧力スイッチは、位置センサ2を設けて、圧迫が始まったときに装置に指示するための指示器として作動させてもよい。例えば、圧力センサ36を、救急員の手と患者の胸部の間に設置して、圧力センサ36が、胸部圧迫の開始を圧力の急激な上昇として検出できるようにしてもよい。次いで、装置内のプロセッサは、圧迫の開始が指示されると、圧迫によって位置センサ2が動いた相対距離の測定を始めることができる。同様に、胸部圧迫の終了を、圧力センサ36によって圧力の解放として検出してもよい。1回の胸部圧迫の始動と停止の間での相対距離を測定することによって、起こり得る誤差の絶対値を低減してもよい。相対位置変化を測定することは、より誤差の生じやすい、基準センサと位置センサの間の絶対距離を連続的に計算するよりも、より有効で正確である。圧力センサ36は圧迫の開始と終了を検出するのに使用できるので、圧力センサ36からの圧力信号および/または力信号を追加で使用して、圧迫の持続期間、圧迫の速度、または圧迫の頻度についての情報を提供してもよい。
【0079】
圧力センサまたは圧力スイッチはまた、胸部圧迫の間にかけられている力を特定し、それを場検出器の応答信号から計算された位置情報と相関させるのに使用してもよい。圧力センサからの力信号は、圧迫の特性(例えば、圧迫の持続期間)を指示し、応答信号をフィルタリングするのに有用である。電磁場が発生されて検出される実施形態に対して、力は、そのような場を検出するときと同じ誤差源によって影響されないので、力信号および/または圧力信号は、環境内の金属物体による誤差を低減するのに有用であることがある。犠牲者の身体の型、胸部のコンプライアンスおよびその他の変数が、ある圧迫深さを得るのに必要な圧力量に影響を与えるので、CPR中にかかる力は、圧迫深さを直接的に計算するのには有用ではないことがある。しかしながら、力および圧力信号は、例えば圧迫の開始および終了の指示を提供することによって、図9について上述したように、応答信号を処理するための基準信号として使用することのできる波形を提供する。力信号を応答信号に対する基準として使用することによって、それらを合わせて、より正確な胸部圧迫位置情報を提供することができる。
【0080】
図15に示す別の例においては、基準センサ4および位置センサ2は、単一ユニット中に組み込むか、または両方を患者の人体構造上に配置してもよい。例えば、細動除去過程の間に、通常、2つの電極パッド34、37が、2つの特定の場所で患者の胸部に適用される。1つのパッド37は、患者の右肩の真下に位置させ、これに対して他のパッド34を患者の左側下部に配置してもよい。これらの電極パッドは延長して、CPRが実施されている胸部の中央まで一方のパッドが延びるようにしてもよい。パッドの延長部分38内部には、位置センサを埋め込んで、CPRの適用中に救助員の手の下に位置センサ2が位置するようにしてもよい。基準センサ2は、向かい合うパッド37内に配置してもよい。電極パッド34、37は、基準センサ4を内蔵するパッド34が、胸部圧迫が適用されるときに動かない部分39を有するように、設計してもよい。次いで、基準センサ4は、患者に対して静止したままとなり、患者の人体構造の静止構成要素に装着される。基準センサおよび位置センサ4、2の両方を患者の体の上に置くことによって、生成される場の寸法を低減することができる。通常、場の寸法を低減すると、上述のように、装置の複雑さ、電力要求量に加えて装置の寸法が低減される。さらに、基準センサおよび位置センサ4、2が、互いに固定された場所、またはほぼ固定された場所に配置される場合には、その装置によって実施される測定をより正確にすることができる。最初に、センサ間のおよその相対的な開始距離40を知ることによって、胸部圧迫の全持続期間を適正に増幅することに可能にする、応答信号に対する適当な増幅ゲインを選択することができる。場の寸法が既知であること、および圧縮中の全体運動が6cm以下と短いことによって、より高価で複雑なダイナミックゲインよりも、簡単な固定ゲインで装置を動作させることが可能になる。第2には、患者の体の近傍およびその上にセンサを有することによって、外部のノイズ源の除去および/または補償をより容易に行うことができる。
【0081】
主要なノイズ源、主として電磁場に対する大きな金属物体は、患者の胸部の近傍には、ほとんどの場合には存在しない。金属の2つの特質によって、その金属が電磁場を歪ませる範囲が決まる。第1の特質は、金属の導電率である。AC正弦電磁場は、導電性物質中で渦電流を発生させる。渦電流が生成される範囲は、その物質の寸法および導電率に依存する。銅などの導電性の高い物質は、鋼などの導電率の低い物質よりも場に対して大きな影響を与える。第2の特質は、金属の透磁率である。発生された場の周波数(例えば、12kHz)において透磁性の高い物質は、検出された場をゆがめる可能性がある。CPR環境に置ける主要なノイズ源は、患者または救急員が身に着けている指輪、時計、ピアスなどの物品であり、これらは、通常、場を大きく乱すには小さすぎるものである。除細動器パッドの導電性物質または患者内のインプラントなどの、その他のノイズ源も、重大な干渉を生じるとは考えられない。除細動器電極パッドおよびインプラントは、通常、それぞれスズやチタンなどの、腐食に耐性のある導電率の低い金属を使用している。これらの金属源からのノイズの効果は、場発生器と場検出器の間の距離と共に指数関数的に大きくなるので、場発生器および場検出器を、患者の体の上で互いに近接して維持することによって、これらの金属性のノイズ源を低減させることができる。さらに、センサを既知の構成に配置することによって、2つのセンサの間の開始距離を近似することができる。この近似は、装置が圧迫深さを計算し始める前に、装置を較正するのに使用することができる。較正方法は、センサ間の近似的な既知の距離を、測定距離と比較することによって、誤差を補償することができる。計算された誤差は、環境内での金属による歪の近似的効果を特定するのに使用することができる。
【0082】
CPRの場合には、主たる金属干渉源は、通常、金属製の車輪付き担架または金属床などの、患者の下にあるものである。患者の下の金属表面47から発生する2次磁場46により誘導される渦電流45の影響を抑制するためには、例えば、図16で説明する実施形態に示すように、場検出器コイルもしくは場発生器コイル、または両コイルの直下に、導電性箔48またはシートを配置すればよい。この実施形態において、金属箔またはプレートは、コイルの大きさとして、コイルに取り付けて配置してもよい。場検出器が犠牲者の胸部上に配置されたパッドである場合には、患者の下方の金属表面によって発生する場を偏向させるか、または吸収するように、金属箔をパッドの底表面に取り付ければよい。コイルの下に配置される箔の性質は、装置に対して既知であり、したがってプロセッサは、装置に対するその箔の追加を補償することができる。本質的に、患者の下方の大きな金属表面の効果は、コイルと金属表面の間に既知の導電性層を使用することによって緩和することができる。
【0083】
歪および干渉を克服するその他の方法も可能である。例えば、カルマンフィルタを使用して、位置センサの動的運動を反復的に推定してもよい。これらのアルゴリズムは、システムの以前の状態および誤差を使用して、将来の動きを推定する。また、バーンスタイン(Bernstein)多項式法は、重大なノイズおよび干渉の存在において、距離を内挿するのに有効であることが証明されている。その他の補正方法も好適であることがあり、当業者には知られている。
【0084】
温度の大きなばらつきは、コイルの性質を変えて、あるレベルの誤差を生じる可能性がある。したがって、温度センサを、場発生コイルおよび場検出コイルの内部、またはそれらに隣接して配置して、周囲温度に基づく熱補正係数を提供してもよい。装置に温度センサを追加することによって、温度変動に伴う信号ドリフトを除去することができる。
【0085】
実施形態によっては、基準センサまたは位置センサは、救急員の手または手首の上、そのまわり、またはその付近に位置してもよい。センサは、グローブ、リストバンド41(図3)、リストサポート装置または類似の物品の内側に埋め込んでもよい。位置センサが救急員の手または手首に着けられている例においては、救急員の手が胸部圧迫と共に動くので、位置センサは救急員の手と共に動くことになる。したがって、救急員の手の位置情報が、患者の胸部の位置情報に変換される。患者の胸部の位置は、このように、圧迫深さおよびその他のパラメータを特定するのに使用することができる。さらに、装置は、6自由度の位置情報を検出するように構成してもよい。したがって、回転角も計算される。救急員の手首上に着けられているか、または置かれているセンサを使用して、この回転情報を用いて、患者の胸部に対する救急員の腕の角度である、胸部圧迫角を計算してもよい。この角度は、通常、直角が最大の力の伝達、およびより良好なCPRの適用を得ることができるので重要である。救急員がCPRを適正な技法と角度で確実に実施できるようにすることで、救急員の疲労、不快感、傷害を低減するのを助けることができる。救急員の手首の回転角度は、上述の数学的な方法を用いて容易に計算することができる。
【0086】
先に述べたように、実施形態によっては、位置センサは場発生器(または、より一般的には送信器センサ)であり、基準センサは場検出器(または、より一般的には受信器センサ)である。例えば、位置センサは、胸部上のパッド内に配置されて、患者に隣接する除細動器内の基準センサによって検出される、場を発生してもよい。実施形態によっては、患者または救急員の上のセンサは、ケーブル42(図1)によって基準センサにつながれている。
【0087】
他の実施形態においては、センサは基準点に接続されておらず、装置は、図17の例に示すように、無線技術を使用する。この例において、場検出器は位置センサ2であり、場発生器は基準センサ4である。位置センサ2は、患者3の胸部上で、例えばパッド6内に配置してもよく、基準センサ4は、除細動器としてもよい、ベースユニット1内に位置してもよい。基準センサ4は、位置センサ2によって検出される場5を発生する。次いで、位置センサ2は、応答信号を無線43でプロセッサに送り、ベースユニット1内部のこのプロセッサによって信号処理のすべてを実施することができる。患者の胸部上の位置センサ2は、場検出器ではなく、場発生器とすることができる。この場合には、位置センサには、波形発生器、適当な場合には増幅器、および場発生コイルなどの、場を発生させるのに必要な回路を含めてもよい。位置センサには、同期信号を基準センサ(この場合には、場検出器)およびベースユニットに送るための無線送信器を含めてもよい。同期信号は、異なるコイルの励磁を調和させるために使用してもよく、この場合に、センサは、上述のように、異なる軸に沿ったコイルを含む。同期信号はまた、応答信号を処理するときに、基準信号として使用してもよい。同期信号によって、プロセッサが、発生器−検出器のどの組合せが所与の信号の原因であるかを特定することを可能になる。位置センサからの無線信号は、基準センサにおける無線信号送信器を必要とすることなしに、基準センサによって検出してもよい。
【0088】
実施形態によっては、CPR補助装置は、基準センサ内のバッテリから完全に給電されるようにしてもよい。基準センサがベースユニット、例えば、除細動器内に設けられる場合には、位置センサがベースユニットに接続されていれば、装置全体を、ベースユニットのバッテリによって給電してもよい。装置が無線である場合には、場発生器は、それに一体化されたそれ自体の電源を有してもよい。センサがベースユニットに接続されていても、補助電源を、やはりセンサに含めてもよい。例えば、図18に示すように、補助バッテリ源44をパッド6の内部に配置するか、または患者の胸部の付近に別個に配置してもよい。バッテリライト50を、残留バッテリ寿命を指示するために設けてもよい。バッテリライト50に加えて、その他のフィードバック構成要素を、パッド6に設けてもよい。
【0089】
図19に示す例においては、コネクタ49によって、パッド6をベースユニット1から容易に切り離して、廃棄または清浄化することが可能になる。
【0090】
装置が除細動器と一体化されている場合に、位置センサは除細動器パッド中に一体化してもよい。パッド上の任意のフィードバック構成要素に給電するバッテリも、除細動器パッド中に一体化して、使用後毎にパッドと共に廃棄できるようにしてもよい。これによって、フィードバック構成要素が、除細動器の主電源から電力をまったく消費しないことが確実となり、同時に、パッドおよびフィードバック構成要素用の電源を一括して交換することが可能になる。
【0091】
本開示は、主としてAC正弦電磁場の発生に注目したが、その他の実施形態では、その他の場の種類またはその他の信号の種類を発生させてもよい。一実施形態においては、正弦信号の代わりに、パルスDC信号を使用して場を変調してもよい。パルスDC場は、パルス電磁場を生成するように、各場発生コイルをオン、オフ切り換えすることからなる。マルチプレクサを使用して、場発生器内部に内蔵された、3つのコイルの1つを選択し、各コイルを逐次的に起動してもよい。代替的に、発生された場を、上述のように、周波数分割多重化してもよい。正弦変調信号ではなくDC変調信号を利用することによって、金属による歪を低減することができる。具体的には、環境における導電性金属の効果を、渦電流発生を抑制または除去することによって、弱めることができる。コイルのオン、オフを切り換えることによって、持続的な渦電流発生を防止することができ、DCパルスの立上り縁において小さな渦電流だけが生成される。この効果は、パルスの周波数を低減することによってさらに緩和することができる。導電性金属歪が低減されているにもかかわらず、パルスDC法は、可能なサンプリング速度が低いことと、鋼などの鉄系金属への帯磁率(susceptibility)が高いという欠点がある。さらに、パルスDC場は、地球の電磁場などの、その他のDC電磁場によって悪影響を受けることがある。上記で考察したように、発生させることのできるその他の場としては、無線周波数場、音場、放射線場、光場、様々な変調電磁場、または発生させて検出できる任意の種類の場が挙げられる。これらの場は、当業者には知られているように、様々な方法で同様に変調してもよい。
【0092】
基準センサは、複数の簡便な場所に設置することができる。図20は病室において使用される装置の例を示しており、この例では、基準センサは病室の壁51、床、または天井に配置してもよい。基準センサは、救急車の内部では壁または天井に設置してもよい。基準センサはまた、移動する車輪付き担架または病院ベッドの上に設置して、基準センサが、車輪付き担架である基準位置と共に確実に動くようにしてもよい。さらに、基準センサは、空港、アリーナまたはその他の公共場所における壁に吊るされたAEDケースの内側に収容してもよい。基準センサが、ある場所に永久的に設置されている場合には、センサがその環境を知るように、さらなる較正技法を適用してもよい。これによって、周囲ノイズや金属性の干渉の影響を低減するのを助けることができる。またこれによって、発生された場の有効範囲および精度の向上を助長することができる。
【0093】
本願に開示される装置は、胸部圧迫深さ以外に、CPRに関するその他のパラメータを測定することもできる。胸部圧迫位置情報から、胸部圧迫率を計算することができる。胸部圧迫がその最大位置および最小位置に到達すると、胸部圧迫を一事象として登録してもよい。単位時間当たりのこれらの事象の数を計算して、圧迫率を特定することができる。有効なCPRは、毎分100回の圧迫率で実施することができる。さらに、各圧迫の後に患者の胸部が完全に解放されたのを確認して、胸部リコイルを計算してもよい。この位置情報は、胸部が圧迫される距離が、胸部が解放される間に胸部が移動する距離に等しいかどうかを判定するのに使用してもよい。ドリフトの欠点があり、固定された基準のない加速度計だけを使用する、この種の測定と比較して、固定された基準センサを使用すると、この測定がより正確になる。CPR中の適正な手位置の情報を、本装置を使用して求めてもよい。基準センサが既知の固定された位置、例えば患者の人体構造に配置される場合には、位置センサの位置を、固定された基準センサに対して特定することができる。したがって、本発明の装置は、センサ間の距離が適当かどうかを計算することができる。例えば、有効なCPRを、患者の胸骨の上方およそ2インチ(5.08cm)で実施することができる。基準センサが患者の肩部に配置され、患者の寸法がおよそわかっている場合には、手位置は、基準センサからの位置センサの所望の距離および方位として計算することができる。
【0094】
図21に示す実施形態において説明するように、位置センサおよび基準センサはまた、CPRの間の有効な人工呼吸を判定し、測定するのに使用してもよい。適正なCPRには、犠牲者に人工呼吸52を適用して血液中の適正な酸素レベルを持続させることが必要となることが多い。CPRの間、呼吸の適正な適用は、目に見える胸部上昇53によって判定される。犠牲者の胸部に装着された位置センサを使用して、人工呼吸の間の胸部の位置を特定してもよい。呼吸が適正に適用されているときに、犠牲者の胸部は上昇し、この上昇を位置センサの位置によって特定することができる。さらに、細動除去の間の適正な電極配置は、プロセスの成功に不可欠である。除細動器電極パッド中に埋め込まれた位置センサを使用して、パッドの相互に対する相対位置に加えて、ベースユニット(例えば、除細動器)に対するパッドの絶対位置を特定してもよい。この情報は、除細動器パッドが犠牲者の上に適正に配置されているかどうかを判定するのに使用することができる。
【0095】
本発明の装置はまた、幼児、例えば、図22に示す実施形態に示すように、子供および/または成人へのCPRの適用を補助するために使用してもよい。例えば、位置センサ2は、小型で薄型とするか、または別の形態で小柄な幼児54の胸部に配置するのに適していればよい。同じ位置センサを成人患者に使用するか、または位置センサを幼児CPRに適するように特別に適合させてもよい。例えば、有効な幼児CPRは、手全体ではなく救急員の指55だけを使用して実施することができるので、位置センサを収容するパッドは、手ではなく救急員の指に一致するように適合させてもよい。位置センサは、様々な体寸法に対して実施されるCPRの様々な種類に適するように、軽量かつ薄型に設計してもよい。
【0096】
本開示において提示した技術および装置は、多数の実施形態および構成に組み入れることができる。例えば、この装置は除細動器中に組み入れてもよく、除細動器では、CPRプロンプトおよび/またはフィードバックが、除細動器に設けられたディスプレイやスピーカなどのフィードバック構成要素を使用して、聴覚的、視覚的および/または触覚的に提示される。本発明の装置には、可搬型としてもよいベースユニットを含めてもよく、ベースユニット内に基準センサを置いて、ベースユニットを患者の付近の静止場所に置いてもよい。ベースユニットは、除細動器中に組み入れてもよい。ベースユニットは、ディスプレイおよびスピーカなどのフィードバック構成要素を内蔵して、救急員にプロンプトおよび/またはフィードバックを提供してもよい。ベースユニット自体は、使用していないときの装置の保管装置として、例えば、その他の救急用消耗品を収容する救急キット箱として機能してもよい。本発明の装置はまた、全体として患者の胸部に適合する装置の中に組み入れてもよく、この装置では、基準センサを収納する装置の一断面が患者の人体構造の静止側面に取り付けられる。上述のCPR補助装置はまた、着用可能なCPR装置に一体化してもよい(例えば、特許文献4参照)。上述の装置はまた、CPR支援装置に一体化してもよい(例えば、特許文献5参照)。
【0097】
CPRの適用中に上記のCPR補助装置を使用して、胸部圧迫変数を測定する方法も提供される。位置センサの位置は、基準センサに対して特定される。この位置情報に基づいて、圧迫深さ、圧迫率、および圧迫角などの胸部圧迫変数を特定することができる。この方法には、求められた圧迫変数に基づいて、救急員にフィードバックを提供することを含めてもよい。
【0098】
図23において説明する実施形態に示すように、この装置はまた、所定の位置情報および計算されたパラメータを記憶し、この情報を解析することによって、CPR訓練方法においても使用することもできる。装置上に設けられたメニュー56およびボタン57によって、生徒または訓練者は、緊急装置を訓練道具に変換することができる。さらに、生徒または訓練者は、装置内に内蔵された、特定の訓練シナリオを選択することができる。同じ装置は、訓練と実際の緊急使用の両方に使用することができる。代替的に、装置は、緊急使用専用、または訓練使用専用に設計してもよい。詳細には説明しないが、この装置からの情報を、ワークステーションなどの別個のコンピュータ装置に、さらなる解析のためにアップロードしてもよいことは当業者には明白であろう。この情報を、訓練セッション中にリアルタイムでアップロードして、装置上のフィードバック構成要素が、訓練セッション中に生徒に対してリアルタイムフィードバックを提供することができる。さらに、位置センサは、CPR訓練マネキンの胸部上に配置することのできる、外部の薄型粘着パッド内に収容してもよい。そのようなパッドによって、煩わしいブロックまたはその他の装置を使用しない、訓練用の現実的なシナリオを維持することができる。訓練において、位置センサは、それをマネキンの胸部に埋め込むか、またはマネキンの胸部に装着することによって、永久的または一時的な方法でマネキン中に直接、組み込んでもよい。さらに、基準センサもまた、頭部、首部または脚部などのマネキンの静止部分の中に永久的または一時的に埋め込んでもよい。そのようなシステムを使用して、既存の訓練マネキンを、迅速かつ安価に後付けし、それによってマネキンがCPR成績の情報を収集し、かつ/または訓練過程における、客観的なCPRフィードバックおよび/または解析を出力できるようにしてもよい。
【0099】
この装置はまた、例えば、図24に説明する実施形態において示すような、AED訓練ユニットとしても好適である。ベースステーションは、AEDユニットとしての役割を果たし、ベースユニットに一体化されたディスプレイ58が、AEDの使用に関する指導59および授業を提供することができる。ディスプレイは、AED上で見られるのと類似のショックボタン60を表示して、生徒を複数のAEDシミュレーションおよびシナリオに誘導することができる。この装置は、組合せAED/CPR訓練ユニットとして使用してもよい。
【0100】
本開示において、いくつかの実施形態および実施例を提示したが、それらは例示だけを目的とするものであり、限定を意図するものではない。当業者は、変形形態が可能であることを理解するであろう。言及したすべての参考文献は、参照によりその全文を本明細書に組み入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に心肺蘇生法(CPR)を適用する間に少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するための装置であって、
場を発生するように適合された場発生器と、
前記場発生器により発生された場を検出して応答信号を発生するように適合された場検出器と、
前記応答信号から、前記場発生器に対する前記場検出器の位置情報を特定するとともに、前記場検出器の特定された前記位置情報を使用して前記少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するように適合されたプロセッサと
を備え、
前記場発生器および前記場検出器の一方は、患者の胸部と一致して動くように適合された位置センサであり、前記場発生器および前記場検出器の他方は、前記患者に対して静止するように適合された基準センサであることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記場発生器は、少なくとも1本の場発生コイルを備え、
前記場検出器は、少なくとも1本の場検出コイルを備え、
前記発生された場は、電磁場であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記場発生器および前記場検出器の少なくとも一方は、最大3本までの直交して巻かれた場発生コイルを備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記場発生器および前記場検出器の少なくとも一方は、4本以上のコイルを備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも2本の場発生コイルがあり、
各場発生コイルは、前記少なくとも1本の場検出コイルによって検出可能な場を逐次的に発生させることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも2本の場発生コイルと少なくとも2本の場検出コイルとがあり、
各場発生コイルは異なる周波数で場を発生させ、
前記場検出器は、異なる周波数における場を分離するための少なくとも1つの帯域通過フィルタを有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記位置情報に基づいてCPR適用者にフィードバックを提供するフィードバック構成要素を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記フィードバックは、視覚プロンプト、聴覚プロンプト、および触覚プロンプトのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記基準センサおよび前記プロセッサはベースユニット内に設けられ、
前記位置センサは前記ベースユニットと通信状態にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
電源が前記ベースユニット内に設けられ、補助電源が前記位置センサに設けられていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ベースユニットは、前記位置情報に基づいてCPR適用者にフィードバックを提供するためのフィードバック構成要素を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記フィードバックは、視覚プロンプト、聴覚プロンプト、および触覚プロンプトのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは除細動器ユニットまたは自動体外式除細動器(AED)内に設けられ、
前記基準センサと前記位置センサの少なくとも一方は、少なくとも1つの除細動器パッド内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
電源が、前記位置センサと前記基準センサの少なくとも一方を内蔵する、前記除細動器パッドのうちの少なくとも1つの内部に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記位置情報は、3次元位置情報および方位情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記位置情報は、最大6自由度までの位置情報を含むことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記6自由度は、x軸位置、y軸位置、z軸位置、ロール、ピッチおよびヨーを含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記発生された場は、前記場発生器と前記場検出器との間の障害物を通過して検出可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記発生された場は、正弦変調場またはパルスDC信号変調場であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記位置情報は、前記応答信号の強度に基づいて求められることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記位置情報は、前記応答信号を基準信号を用いて復調し、その結果を平滑化することによって求められることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの圧迫パラメータは、胸部圧迫の角度、胸部圧迫深さ、胸部圧迫率、および胸部リコイルの範囲のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記検出された場および対応する応答信号に対してフィルタリングおよび信号調整を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記信号調整は、前記応答信号における金属による歪を低減することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
信号フィルタリングは、前記応答信号における外部ノイズを低減することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記基準センサの方位を測定するために方位センサが前記基準センサに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記位置センサと前記基準センサは、電線またはケーブルによって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記位置センサおよび前記基準センサの少なくとも一方は無線であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記位置センサは前記場発生器であり、前記基準センサは前記場検出器であって、
前記場検出器は前記発生された場を無線式に検出可能であり、
前記場検出器は無線信号送信器を備えないことを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記位置センサは、同期信号および前記応答信号の少なくとも一方を前記ベースユニットへ送る無線信号送信器を内蔵することを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記同期信号は、前記位置情報を特定するための基準信号として有用であることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記位置センサおよび前記基準センサは、前記患者上に配置するように適合された単一ユニット内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記基準センサは、壁、天井、床、車輪付き担架、救急車、ヘリコプタ、移動車両、または外部医療機器に設けるように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記位置センサは、圧迫の開始、圧迫の終了、圧迫の力、圧迫の圧力、圧迫の持続期間、圧迫の速度および圧迫の周波数のうちの少なくとも1つを測定する、圧力スイッチを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項35】
圧迫の圧力、圧迫の力および圧迫の速度の内の少なくとも1つを使用して、前記求められた位置情報を検証すること、および改善することの少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記位置センサは、様々に異なる患者身体の型で使用するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項37】
前記位置センサは、幼児に対してCPRを適用するのに使用するように適合されていることを特徴とする請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記位置センサは、呼吸の有効な吹き込みを判定するために、人工呼吸の間に患者の胸部の位置を測定するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項39】
前記位置センサは、前記患者の胸部上のCPR適用者の手の配置を測定するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項40】
前記位置センサは、前記除細動器パッドのうちの少なくとも1つの中に埋め込まれており、
前記位置センサは、少なくとも1つの他の除細動器パッドに対する、および前記基準センサに対する、前記除細動器パッドのうちの前記少なくとも1つの位置を測定することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項41】
心肺蘇生法(CPR)を適用する間に少なくとも1つの圧迫パラメータを特定する方法であって、
請求項1の装置を設けるステップと、
前記基準センサに対する前記位置センサの位置を特定するステップと、
前記位置センサの前記特定された位置に基づいて、前記少なくとも1つの圧迫パラメータを特定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
CPR適用者にフィードバック情報を提供するステップをさらに含み、
前記フィードバック情報は、前記特定された圧迫パラメータについての情報を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記特定された圧迫パラメータを電子メモリ内に格納するステップをさらに含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
環境ノイズに適応するために前記装置を較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
CPRの適用においてCPR適用者を訓練するためのものであることを特徴とする請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2011−528584(P2011−528584A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518989(P2011−518989)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000045
【国際公開番号】WO2010/009531
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(511019535)アトレオ メディカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】