説明

患者のコンタクトレス呼吸監視及びフォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサ

本発明は、フォトプレチスモグラフィ測定に関する光学センサに関する。このセンサは、患者8の組織へと光を放出する光エミッタ2及び/又は上記組織との交互作用後の上記放出光の一部を検出する光検出器3を備える光ユニット1を有し、上記光ユニットが、弾性材料4に埋め込まれる。本発明は更に、患者8のコンタクトレス呼吸監視のためのデバイスにも関し、このデバイスは、上記患者胸部12に対する時間的距離変動を、好ましくは電磁波に基づき連続的に検出する距離センサと、上記検出された時間的距離変動に基づき上記呼吸活動を決定する計算ユニットとを有する。本発明は、病院において患者の生命パラメータをスポットチェックするのに使用されることができるハンドヘルドデバイスを用いた呼吸動作、血圧及び心拍の同時監視に対して、信頼性が高く使い易い使用可能性を提供する点で特に有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のコンタクトレス呼吸監視及びフォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサの分野に関し、特に、好ましくは病院において患者の生命パラメータのスポットチェック(spot-checking)をするのに使用されることができる、呼吸動作、血圧及び心拍を同時に監視するためのハンドヘルドデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光学測定を用いて、患者の指におけるパルス波の到着を検出することが可能である。通常、赤外線LEDが光を指に照射し、フォトダイオードに達する光量が、ダイオードに流れる光電流をもたらす。パルス波の存在下では、大部分の光は血液により吸収される。即ち、フォトダイオードを通る電流はこれに従って変調される。この技術は、フォト・プレチスモグラフィ(PPG)として知られる。
【0003】
LED及びフォトダイオードが指の対向する側に設置される場合、それは「トランスミッティブ」PPGと呼ばれる。対向側に設置される結果、LED光が指を通り実際に輝く。斯かるセットアップは通常、指クリップとして実現される。他のオプションは、指の同じ側に設置されるLED及びフォトダイオードを持つことである。これは、「リフレクティブ」PPGと呼ばれ、指クリップが受け入れられることができない場合に役に立つ。リフレクティブモードでは、LED及びフォトダイオードが互いの隣に位置する。その結果、患者がしなければならないのは、例えば心拍測定又はパルス到着時間(PAT)測定のため、自分のパルス波が検出されるよう、2つの要素上で指を休ませることだけである。
【0004】
リフレクティブPPGセットアップは、多くの場合役立つ。このセットアップは、自分のパルス波が検出されるようにするため、LED/フォトダイオードの組合せ上に患者が自分の指を軽く置くことだけを必要とする。例えば、これは、心拍測定のために使用されることができる。PPGの別の用途は、パルス通過時間(PTT)又はパルス到着時間(PAT)の測定である。PTT測定の原理は、パルス波が体の1つの点から始まるとき、時間におけるこの瞬間を取り、体の別の点での到着時間を測定するものである。PTTは、この2つの間の時間差として計算され、パルス波速度に反比例する。PATは、ECGのRピークといくつかの周辺箇所でのPPGパルスの到着との間の時間遅延として規定される。PPG測定は通常、患者の耳たぶ又は指上で実行される。
【0005】
PTT及びPATは共に、興味深い尺度である。なぜなら、体上の2つの測定位置間の距離及び血管の弾性といった他のパラメータの中で、これらは患者の血圧に関する情報を提供するからである。従って、他のパラメータが知られる又は推定されることができる場合、血圧はPTT又はPAT測定から推定されることができる。
【0006】
実際に、ECG信号におけるRピークは、大動脈における圧力パルス伝搬の開始とは一致しない。これは、ECGのRピークが心臓の筋肉の電気励起であるからである。筋肉がこの励起に反応するにはいくらかの時間がかかる。すると、筋肉が心臓において充分な圧力を確立するにはもっと時間がかかる。その結果、大動脈弁が開き、パルス波が実際に動脈内の移動を開始する。しかしながら、Rピークと大動脈弁の開口との間の時間遅延は、動脈圧に関する重要な情報も伝達する。こうして、末梢でのパルス波到着時間を推論するための開始点としてRピークを捉えることは、多くの用途において受け入れられることができる。
【0007】
過去において、カフを必要とせずに血圧測定を提供するため、この原理を使用する多くの試みがなされた。典型的なPAT測定セットアップは、ECG測定及びPPG測定を有する。パルス波が指又は耳に到達するとき、PPGパルスの特徴点が、この時間における瞬間としてとられる。ECGのRピークの発生時間とPPG特徴点との間の差が計算され、これは血圧値へと変換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特にリフレクティブPPGセットアップにおいて発生する問題は、皮膚がLED/フォトダイオードの組合せ上へ押圧されるときの圧力が非常に高くなる可能性があり、血管が実際にクランプオフ(clamped off)される点にある。その結果、パルス波が、測定位置に達せず、従って検出されることができない。
【0009】
更に、病院のベッドにおいて患者の生命パラメータのスポットチェックをすることは、看護師の毎日のルーチンの部分である。心拍、呼吸周波数、血圧及び体温度は、すべての患者に関してチェックされるべきである最も重要なパラメータである。測定装置及び時間の観点から、これらのすべてのパラメータを適切に測定することは、かなりの労力を必要とする。しかしながら、病院における実際的な状況は看護師にできるだけ迅速なスポットチェック測定を行うことを強制する。なぜなら、看護師は、日常的なスポットチェックより多くの注意を必要とする他の多くの作業をこなさなくてはならないからである。
【0010】
特に、呼吸動作は、まだ従来のセットアップのスポットチェックでは測定されることができない。そのため、呼吸センサが必要とされる。一般に、斯かる呼吸センサは、患者の胸部に付けられなければならなかった。しかしながら、患者の胸部にセンサを付けることは、不便であり、時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の目的は、信頼性が高くフェールセーフなフォトプレチスモグラフィ測定に対する可能性を提供することである。
【0012】
この目的は、フォトプレチスモグラフィ測定に関する光学センサにより実現される。このセンサは、
患者の組織へと光を放出する光エミッタ及び/又は上記組織との交互作用後の上記放出光の一部を検出する光検出器を備える光ユニットを有し、
上記光ユニットが、弾性材料に埋め込まれる。
【0013】
従って、本発明の第1の側面の基本的なアイデアは、患者の指先により押圧されるとき弾力的であり、及び従って、患者組織において毛細管を固定することを回避する弾性材料を提供することである。これは、リフレクティブ指PPGセットアップの直観的な使用として複数の利点を有し、どのように指が適用されるべきかについての説明を患者に行う必要がない。更に、本発明は、光ユニット上へ押圧される皮膚にかかる圧力に関係なく、リフレクティブPPGセットアップにおける有効な測定を可能にする。こうして、このソリューションは、簡単で、受動的で、かつ安価である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記弾性材料が、上記患者の皮膚により、好ましくは患者の指により接触されるよう構成される。更に、上記弾性材料の弾性が、人間の指の上記組織の典型的な弾性の範囲にあることが好ましい。好ましくは、上記弾性材料としてシリコンが使用される。
【0015】
一般に、本発明は、異なるタイプのフォトプレチスモグラフィ測定に関して適用されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、上記光ユニットは、リフレクティブ・フォトプレチスモグラフィ測定に対して適合される。これに関して、本発明の好ましい実施形態によれば、上記光ユニットは、LED及びフォトダイオードを有する。更に、上記弾性材料が、上記光エミッタにより放出される光に関して透明でないことが好ましい。これは有利である。なぜなら、この態様で、上記光エミッタから上記光検出器への直接的な光経路が回避されるからである。好ましくは、上記弾性材料が上記光エミッタにより放出される光に関して透明でないという特徴は、上記弾性材料にカラー添加物を加えることにより実現される。
【0016】
本発明の第2の目的は、患者の呼吸動作の便利で使いやすいスポットチェックの可能性を提供することである。
【0017】
この目的は、患者のコンタクトレス呼吸監視に関するデバイスにより満たされ、このデバイスは、
上記患者の胸部に対する時間的距離変動を連続的に検出する距離センサと、
上記検出された時間的距離変動に基づき上記呼吸活動を決定する計算ユニットとを有する。
【0018】
この本発明の第2の側面によれば、体への接触なしに患者の呼吸動作を測定するソリューションが表される。それは、ハンドヘルドデバイスへの一体化に特に適している。これに関して、上記ハンドヘルドデバイスが、好ましくは上記患者自身により、上記患者の胸部の前で上記デバイスを保持するために適合される保持手段を有することが好ましい。更に、上記計算された呼吸活動が、上記患者の呼吸レートを有することが好ましい。
【0019】
この本発明の第2の側面は、以下の複数の利点を提供する。呼吸動作のコンタクトレス測定が、ハンドヘルドデバイスに一体化されることができる。更に、心拍、血圧及び呼吸周波数のスポットチェックを行うのに使いやすいハンドヘルドソリューションが、以下更に詳細に説明されるものとして提供されることができる。更に、例えば呼吸ガイダンスを含む、リラクゼーション運動を行うのに使いやすいハンドヘルドソリューションが、以下更に詳細に説明されるものとして提供されることができる。
【0020】
一般に、異なるタイプの距離センサ、例えば超音波センサ及び/又はレーザセンサが、使用されることができる。超音波の助けを借りて、距離が測定されることができる。ショート超音波バーストが、ターゲットの方へ送信され、このターゲットで反射され、及びこの反射されたバーストが到達するまでの時間が測定される。飛行時間は距離に正比例する。なぜなら、伝搬速度は、短時間の測定の間、一定だからである。更に、レーザー・インターフェロメトリの助けを借りて、相対的な運動を非常に正確に測定することが可能である。放出されたレーザビームと反射されたレーザビームとの間の位相差は、反射ターゲットへの距離に依存するので、反射されたビームが、放出されたビームと同相にあるビームと干渉するようもたらされる場合、干渉結果の強度は周期的に変化する。
【0021】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、距離センサは、放出及び受信電磁波に基づかれる。更に、距離センサが、ドップラーレーダセンサ、好ましくは2チャネル・ドップラーレーダセンサを有することが好ましい。2.4GHz又は24GHzのレーダー周波数が、良好な結果をもたらすことが示された。
【0022】
電磁波の使用は、それらが衣類で反射されず、皮膚表面で反射されるという利点を持つ。基本的に、電磁波の反射は、異なる電気伝導性の領域間の境界層で発生する。空気が電気絶縁体であり、衣類も通常は絶縁体であるので、皮膚の表面で実際に反射があることになる。これは、電磁波を使用する大きな利点である。
【0023】
反射ターゲットが、ここでは患者の胸部であるが、呼吸動作が原因で移動する場合、反射された電磁波は、放出された波に対して周波数においてシフトされる(ドップラーシフト)。この周波数差は、患者の胸部運動に関する尺度として検出及び利用されることができる。この測定の原理は例えば、トラフィック速度コントロールから知られる。レーダートランシーバのアンテナは、手にデバイスを保持する患者の胸部の方へ電磁波が向けられる態様で、ハンドヘルドデバイスに容易に一体化されることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記患者の両手で保持されるとき、上記保持手段が、上記患者の胸部の方へ上記距離センサを自動的に向けるよう構成される。こうして、ハンドヘルドデバイスは自動的に整列配置され、追加的な調整は必要ではない。
【0025】
更に、患者が両手でデバイスをつかむよう、保持手段が2つのハンドルを有することが好ましい。一般に、これらのハンドルは、デバイスを保持するためにのみ適合されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、これらのハンドルは、ECG測定のための電極を有する。これに関して、これらのハンドルは好ましくは金属で作られる。更に、ECG測定ユニットが、このデバイスに提供されることが好ましい。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、追加的に又は代替的に、フォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサ、好ましくは上述した光学センサが、上記デバイスに提供される。これに関して、リフレクティブモードセンサが提供されることが特に好ましい。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスを保持するとき、患者の指、好ましくは患者の親指が自動的にセンサに載るという態様で、光学センサがデバイス上に配置される。これは、このデバイスをフォトプレチスモグラフィ測定に関してより信頼性を高いものにする。更に、上記患者の血圧を決定するよう構成されるフォトプレチスモグラフィ測定ユニットが、上記デバイスに提供されることも好ましい。
【0027】
上記のデバイスは、異なる用途に、好ましくは病院におけるスポットチェック用途に使用されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、出力ユニットがこのデバイスに提供される。この出力ユニットは、決定された心拍と決定された呼吸活動との間のコヒーレンスに基づき、ストレス状態インジケータ信号を出力するよう構成される。このアイデアは、以下に記載の方法により一層明らかとなるであろう。
【0028】
好ましくは、上述したデバイスを用いて、ストレス状態インジケータ信号を患者に提供する方法を提供することも、本発明の基本的な側面である。この方法は、
上記患者の心拍を検出するステップと、
上記患者の呼吸活動を同時に検出するステップと、
上記心拍と上記呼吸活動との間のコヒーレンス度を計算するステップと、
上記計算されたコヒーレンス度に基づきストレス状態インジケータ信号を出力するステップとを有する。
【0029】
休息状態下において、健康な患者の心拍は周期的変化を示す。呼吸洞不整脈(RSA)として知られるこの周期的現象は、呼吸の位相と共に変動する。心拍は、吸気の間、増加し、呼気の間、減少する。こうして、心拍は、特定の状態下で患者の呼吸活動と同期化する傾向がある。患者がネガティブな又はストレス状態のムード(低いコヒーレンス)にある場合に見られる逆同期と比べると、患者がポジティブな又はリラックスしたムード(高いコヒーレンス)にある場合、心拍及び呼吸は同期化する。ポジティブなムードでは、心拍の変動は通常、正弦波態様で発生する。これは、心拍変動及び呼吸活動の測定を同時に行うことを可能にする。従って、両者の間のコヒーレンス度が、患者のリラクゼーションレベルを示す尺度として計算及び使用されることができる。
【0030】
この方法に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、患者がどのように呼吸するべきかを示すガイダンス信号が出力される。更に、上記ガイダンス信号が、上記患者の決定されたストレス状態に基づき自動的に適合されることが好ましい。
【0031】
本発明の好ましい用途は、以下の通りである。本発明は、ハンドヘルドデバイスにおける呼吸のコンタクトレス測定を可能にする。患者の心拍、血圧及び呼吸周波数を同時にスポットチェックするハンドヘルドデバイスにおいて、これは特に有益である。更に、これは、ストレスの多い状況から効果的にリラックスするための技術として、誘導された呼吸運動を与える非常に魅力的なハンドヘルドソリューションを構築するために使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】本発明の第1の好ましい実施形態によるリフレクティブPPGセットアップを概略的に示す図である。
【図1b】本発明の第1の好ましい実施形態によるリフレクティブPPGセットアップを概略的に示す図である。
【図2a】患者により保持される、本発明の第2の好ましい実施形態によるハンドヘルドデバイスを示す図である。
【図2b】患者により保持される、本発明の第2の好ましい実施形態によるハンドヘルドデバイスを示す図である。
【図2c】患者により保持される、本発明の第2の好ましい実施形態によるハンドヘルドデバイスを示す図である。
【図3】本発明の第2の好ましい実施形態によるシステムのブロックダイアグラムを表す図である。
【図4】患者がネガティブな又はストレス状態のムードにある場合に見られる脱同期と比較して、患者がポジティブな又はリラックスしたムードにある場合、心拍及び呼吸がどのように同期するかを示す図である。
【図5】本発明の第3の好ましい実施形態によるコヒーレンスの計算を説明する図である。
【図6】本発明の第4の好ましい実施形態によるシステムのブロックダイグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のこれらの及び他の態様が、以下に説明される実施形態より明らとなり、これらの実施形態を参照して説明されることになる。
【0034】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、光エミッタ2及び光検出器3、即ちLED/光ダイオードの組合せを備えるリフレクティブ・フォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサの光ユニット1を、指の圧力を解放する(give way to)することになる例えばシリコンといった弾性材料4へと埋め込むことが提案される。対応するリフレクティブPPGセットアップが、図1に見られることができる。図1では、患者の指5が、弾性材料4上に押圧されることが示される。この材料には、光エミッタ2及び光検出器3を持つ光ユニット1が提供される。その境界域上で、弾性材料4は剛性担体6により囲まれる。こうして、指の毛細管7を固定することが、広い範囲の指圧力にわたり回避される。
【0035】
図1から分かるように、弾性材料4は、印加される指圧力の量に基づき変形され、この変形のため、毛細管7を固定することが回避される。これにより、このリフレクティブPPGセットアップにおける有効なPPG測定が広い範囲の指圧力にわたり可能にされる。広い範囲の許容された指圧力を実現するよう、弾性材料4の弾性を選択することが好ましい。この弾性材料には、LED/フォトダイオードの組合せが埋め込まれる。その結果、弾性材料は、指組織の弾性と等しいか又は類似する。弾性材料4は、好ましくは、LEDからフォトダイオードへの直接的な光経路を回避するため、LEDにより放出される光に関して透明でない。これは好ましくは、必要であれば、シリコンに対するカラー添加物の助けを借りて実現される。
【0036】
図2a、b及びcから、本発明の第2の好ましい実施形態によるハンドヘルドデバイス9が見られることができる。このハンドヘルドデバイス9の一般的なアイデアは、患者8が両手10でハンドヘルドデバイスを持つ場合、ハンドヘルドデバイス9と、図2aに示される、より詳細には図2b及び2cに示される患者の胸部12との間に自由な視線11が存在するという洞察に基づかれる。更に、人間の腕及び手首の生体構造は、患者が自分の手10でつかむ側にデバイスが2つのハンドル13を持つ場合、ハンドヘルドデバイス9の蓋14が患者の胸部12を指すよう自動的に調整されるようなものである。図2b及び2cは、この状態を説明する。
【0037】
患者の胸部12の壁が呼吸動作により前方及び後方に移動するので、距離センサは、蓋14と胸部12との間の距離を測定するハンドヘルドデバイス9の蓋14に一体化される。更に上述されたように、この目的に対する異なるセンサモダリティが想定可能である。
【0038】
本書に表される本発明の好ましい実施形態によれば、距離センサとして、電磁波のトランシーバがハンドヘルドデバイス9に提供される。実験は、レーダー周波数が許容可能な結果を与えることを示す。周波数は、好ましくは2.4GHz又は24GHzの周波数である。手10にハンドヘルドデバイス9を保持しつつ、電磁波が患者8の胸部12の方へ向けられるという態様で、レーダートランシーバのアンテナが、ハンドヘルドデバイス9に容易に一体化されることができる。
【0039】
本発明の第2の好ましい実施形態によるシステムのブロック図が、図3に示される。ハンドヘルドデバイス9は、心拍、血圧及び呼吸活動という3つの異なる測定を提供する。このため、本発明の第2の好ましい実施形態によるハンドヘルドデバイスは、以下のように設計される。
【0040】
心拍測定に対して、ハンドヘルドデバイス9は、ハンドヘルドデバイスを保持するのにも役に立つ金属ハンドル13により形成される2つの電極を有する。ハンドル13は、ECG増幅器15及びピーク検出器16を有するECG測定ユニットに接続される。それから、心拍が、心拍計算器17において計算される。
【0041】
血圧測定に対して、ハンドヘルドデバイス9は、上述したように設計されることができるフォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサ18を更に有する。この光学センサ18は、光増幅器19及びパルス検出器20を有するフォトプレチスモグラフィ測定ユニットに接続される。すると、パルス検出器20により決定される信号は、PAT(パルス到着時間)計算器21に対して出力される。この計算器は、ECG測定ユニットのピーク検出器16により出力される信号も受信する。PAT計算器21において、血圧が、PAT値及びECG信号から推測される。
【0042】
呼吸活動の測定に対して、ハンドヘルドデバイス9は、患者の胸部12の方へ電磁波を放出し、患者の胸部12から反射される電磁波を受信するアンテナ22を有するドップラレーダー・ユニットを具備する。アンテナ22により受信される信号は、モーションセンサ24に接続されるRFフロント側23に供給される。モーションセンサ24により出力される信号は、患者8の呼吸レートを計算する呼吸レート計算器25に供給される。
【0043】
こうして、心拍、血圧及び呼吸周波数のスポットチェックをするための使いやすいハンドヘルドソリューションが作成される。このソリューションは、病院用途において、特にいわゆる「スポットチェックをする」際に非常に役立つ。スポットチェックでは、看護師が患者のベッドから患者のベッドへと歩き、心拍、血圧及び呼吸レートといった生命パラメータをできるだけ迅速に決定したいと願う。
【0044】
このとき、看護師は、患者の胸部に手を置いて、呼吸周期が何秒持続するかを見るために腕時計を見ることで、患者の呼吸レートを決める。この方法はかなり不正確で、看護師にとっても煩わしいので、予想の数字が書き込まれることがある。本発明のこの好ましい実施形態を用いれば、これらの問題が解決される。看護師は、患者に単にハンドヘルドデバイスを与えるだけでよい。彼は、数秒間デバイスを保持する。この間、それぞれ、ハンドル13における電極、親指の光学センサ18及びドップラレーダーを用いて、ECG、指におけるパルス到着時間及び胸部の動きが測定される。
【0045】
ECGから心拍を抽出することは、容易である。光学センサを用いて得られるパルス到着時間は、血圧読み出しに変換され、ドップラレーダー測定は、呼吸レートを決定することを可能にする。こうして、すべての関連パラメータが、一つの使いやすいハンドヘルドデバイスを用いてキャプチャされる。データは、ハンドヘルドデバイス9に直接格納されることができるか、又は図3において図示省略された無線リンクを介して送信されることができる。
【0046】
本発明の第3の好ましい実施形態によれば、心拍、血圧及び呼吸の測定は、ストレス状態に関するフィードバックを患者8に与えるために用いられる。呼吸指示と組み合わせれば、誘導的なリラクゼーション運動を行うためのハンドヘルドデバイス9が作成される。
【0047】
休息状態下において、健康な人の心拍は周期的変化を示す。呼吸洞不整脈(RSA)として知られるこの周期的現象は、呼吸の位相と共に変動する。心拍は、吸気の間増加し、呼気の間減少する。このように、心拍は、特定の状態下において、患者の呼吸活動と同期化する傾向がある。
【0048】
図4は、患者がネガティブな又はストレス状態のムード(低コヒーレンス)にあるときに見られる脱同期と比較しつつ、患者がポジティブな又はリラックスしたムード(高コヒーレンス)にあるとき心拍及び呼吸レートがどのように同期するかを示す。ポジティブなムードでは、心拍の変動は、正弦波態様で発生する。本発明の第3の好ましい実施形態は、心拍変動及び呼吸活動の測定の同時的な実行を可能にする。その結果、両者の間のコヒーレンス度は、患者のリラクゼーションレベルを示す尺度として計算及び使用されることができる。これは、以下のように実行されることができる。
【0049】
図5に示されるように、ステップ1において、共にNサンプルを有する、呼吸レート信号及び心拍信号からのセグメントが、それぞれ元の信号から切り出される。すると、ステップ2において、両方のセグメントからDC要素が取り除かれ、振幅が正規化される。最終的に、ステップ3において、2つのセグメントの間の相互相関として、コヒーレンスが計算され、

となる。
【0050】
図5に示されるように、呼吸信号における最大が心拍信号における最大と一致する場合、計算されたコヒーレンス度は高い。なぜなら、呼吸セグメントからの正の値が心拍セグメントからの正の値と乗算され、呼吸セグメントからの負の値が心拍セグメントからの負の値と乗算されるからである。従ってこの場合、和計算に貢献するすべての要素は正である。1つのセグメントにおける最大が、他のセグメントにおける最小と一致する場合、和算の結果はこの場合においてはより小さくなることが容易に想像されることができる。なぜなら、1つのセグメントからの正の値が他のセグメントからの負の値と乗算されるので、和計算に対して負の貢献を与えるからである。好ましくは、患者がどのように呼吸するべきかを示すガイダンス信号が、システムに加えられる。ガイダンス信号は、患者のリラクゼーション状態に基づき適合されることができる。
【0051】
図6において、第4の好ましい実施形態によるシステムを示すブロック図が表される。図3に示されるデバイスに加えて、本発明のこの好ましい実施形態によれば、心拍計算器17及び呼吸計算器25の出力により供給されるコヒーレンス計算器26が提供される。コヒーレンス計算器26の出力は、リラクゼーション評価ユニット27に供給される。このユニットも、PAT計算器21からの出力信号を受信する。最終的に、ディスプレイ、ラウドスピーカ、照明等といった出力デバイス28が、患者に呼吸指示を与えるため及び/又はストレス状態を示すために提供される。
【0052】
点線により囲まれる図6における領域29は、好ましくはマイクロプロセッサ上で実現されるデジタル信号処理ブロックを示す。図6で分かるように、患者のリラクゼーションレベルを評価するために、心拍変動と呼吸との間のコヒーレンス度が考慮されるだけでなく、この目的のため、指におけるパルス波のパルス到着時間を用いて決定される血圧値も使用することが提案される。
【0053】
本発明が図面及び前述の説明において詳細に図示され及び説明されたが、斯かる図示及び説明は、説明的又は例示的であると考えられ、本発明を限定するものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0054】
図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、開示された実施形態に対する他の変形が、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解され及び遂行されることができる。請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属項に述べられているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを意味するものではない。請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、患者は、人間又は動物であり、必ずしも病気又は病気にかかっている必要があるというわけではない点を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトプレチスモグラフィ測定に関する光学センサであって、
患者の組織へと光を放出する光エミッタ及び/又は前記組織との交互作用後の前記放出光の一部を検出する光検出器を備える光ユニットを有し、
前記光ユニットが、弾性材料に埋め込まれる、光学センサ。
【請求項2】
前記弾性材料が、前記患者の皮膚により、好ましくは患者の指により接触されるよう構成される、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記弾性材料の弾性が、人間の指の前記組織の典型的な弾性の範囲にある、請求項1又は2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記光ユニットが、LED及びフォトダイオードを有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学センサ。
【請求項5】
前記弾性材料が、前記光エミッタにより放出される光に関して透明でない、請求項1乃至4のいずれかに記載の光学センサ。
【請求項6】
患者のコンタクトレス呼吸監視に関するデバイスであって、
前記患者の胸部に対する時間的距離変動を連続的に検出する距離センサと、
前記検出された時間的距離変動に基づき前記呼吸活動を決定する計算ユニットとを有する、デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、好ましくは前記患者自身により、前記患者の胸部の前で前記デバイスを保持するために適合される保持手段を有するハンドヘルドデバイスである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記患者の両手で保持されるとき、前記保持手段が、前記患者の胸部の方へ前記距離センサを自動的に向けるよう構成される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記距離センサが、放出及び受信電磁波に基づかれ、好ましくは2チャネル・ドップラーレーダセンサであるドップラーレーダセンサを有する、請求項6又は8に記載のデバイス。
【請求項10】
ECG測定ユニットが、前記デバイスに提供される、請求項6乃至9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
フォトプレチスモグラフィ測定のための光学センサ、好ましくは請求項1乃至5のいずれかに記載の光学センサが、前記デバイスに提供される、請求項6乃至10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記患者の血圧を決定するよう構成されるフォトプレチスモグラフィ測定ユニットが、前記デバイスに提供される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
決定された心拍と決定された呼吸活動との間のコヒーレンスに基づき、ストレス状態インジケータ信号を出力するよう構成される出力ユニットが、前記デバイスに提供される、請求項6乃至12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
好ましくは、請求項6乃至13のいずれかに記載のデバイスを用いて、ストレス状態インジケータ信号を患者に提供する方法において、
前記患者の心拍を検出するステップと、
前記患者の呼吸活動を同時に検出するステップと、
前記心拍と前記呼吸活動との間のコヒーレンス度を計算するステップと、
前記計算されたコヒーレンス度に基づきストレス状態インジケータ信号を出力するステップとを有する、方法。
【請求項15】
前記患者がどのように呼吸するべきかを示すガイダンス信号が出力され、好ましくは、前記ガイダンス信号が、前記患者の決定されたストレス状態に基づき自動的に適合される、請求項14に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519657(P2011−519657A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508029(P2011−508029)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051806
【国際公開番号】WO2009/136341
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】