説明

患者の体内に存在する物質の質量又は濃度を表す値を評価するための方法及び装置

本発明は、患者の組織又は体液からなる物質の質量又は濃度を表す値を評価するための方法に関し、a)質量又は濃度、及び患者の分布空間、又はその近似を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値の間の関係を決定するステップと、b)関係が基準を満たしているかどうかを判定するステップとを含む。本発明は、本発明を実施するためのコントローラ、装置、及びデバイスにさらに関し、デジタル記憶手段、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータプログラムにさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野及び発明の概要】
【0001】
本発明は、患者の組織、又は体液からなる物質の質量又は濃度を表す値を評価するための方法に関し、本方法は、a)質量又は濃度、及び患者の分布空間、若しくはその近似を反映する1つ又は複数の計算された、若しくは測定された値(複数可)の間の関係を決定するステップと、b)関係が基準を満たすかどうかを判定するステップとを含む。本発明は、本発明を実施するためのコントローラ、装置、及びデバイスにさらに関し、さらにデジタル記憶手段、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータプログラムに関する。
【0002】
いくつかの状況では、患者の体内に存在する物質の質量又は濃度を、例えば、診断のためだけであっても、或いは患者の状態を、物質の濃度又は質量を修正することによって積極的に制御する必要があるため、担当の医師により検査又は監視する必要がある。ヘモグロビン(Hb)は、特にこのような物質である。
【0003】
実務では、ヘモグロビン(Hb、赤血球中の鉄を含有し酸素を運搬する金属タンパク質であるHgbとしても知られている)の濃度は、患者の貧血状態を判定するための血液サンプルにより測定される。所与の閾値に満たない値は、赤血球(RBC)の正常数の減少として、又は血液中のヘモグロビンの正常な量に満たないものとして定義される「貧血」の発現の徴候であると通常見なされる。
【0004】
本発明によれば、物質の質量、又は濃度、又は容積を反映する値を評価する方法が提案される。さらに、本発明による方法を実施するためのコントローラが提供され、同様に、装置、コントローラを備えるデバイス、デジタル記憶手段、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータが提供される。
【0005】
本発明による方法は、請求項1の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の一態様では、患者の組織又は体液からなる物質の質量、又は濃度、又は容積、或いはその変化をそれぞれ表す値の評価、又は評価するための方法は、一方で、組織又は体液からなる物質の質量、又は濃度、又は容積を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値(複数可)と、他方で、患者の分布空間(又はその変化)、又はその近似を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値(複数可)との間の関係を決定するステップと、関係が、少なくとも1つの基準を満たすかどうかを評価するステップとを含む。
【0006】
患者は、ヒト又は動物とすることができる。患者は、健康であるか病気でありうる。患者は、医療を必要としているか否かでありうる。
【0007】
本発明によるコントローラは、請求項17の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、コントローラは、本発明による方法を実施するように構成される。
【0008】
本発明による装置は、請求項18の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、装置は、物質の容積、質量、又は濃度を表す値を取得するための手段、及び/又は分布空間、又はその変化をそれぞれ表す値を取得するための手段、及び本発明による少なくとも1つのコントローラを備える。
【0009】
本発明によるデバイスは、患者の血液を治療するための請求項22の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、デバイスは、本発明による少なくとも1つのコントローラ、又は本発明による少なくとも1つの装置を備える。
【0010】
本発明によるデジタル記憶手段は、請求項25の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、デジタル記憶手段、特にディスク、CD、又はDVDは、本発明による方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと相互に作用することのできる電気的に読取り可能な制御信号を有する。
【0011】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、請求項26の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ上で実行されたときに本発明による方法を実行するための、マシン可読のデータ媒体上に記憶させたプログラムコードを有する。
【0012】
本発明によるコンピュータプログラムは、請求項27の特徴の組合せにより定義される。したがって、本発明の他の態様では、コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されたときに本発明による方法を実行するためのプログラムコードを有する。
【0013】
本明細書で、物質の質量、又は濃度、又は容積に言及する場合は常に、明示的に述べているか否かにかかわらず、その変化もまた企図されていることに留意されたい。
【0014】
実施形態は、以下の特徴のうち1つ又は複数のものを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、物質の質量、又は濃度と、患者の分布空間とを共に反映する計算された、若しくは測定された状態は、「(x;y)」のタイプの1対の値であり、xは、質量、又は濃度、又はその変化を表し、またyは、分布空間を表している。好ましくは、x及びyは共に、同時に(例えば、同じ分、同じ時間、同日、同じ週、同月、同じ入院、又は外来などで)行われた測定により、或いはこのような測定結果に基づく計算により得られたものである。
【0016】
ある実施形態では、本方法は、少なくとも1つの尿サンプルから得られた質量又は濃度を反映した値を用いることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの血液サンプルから得られた質量又は濃度を反映した値を用いることを含む。
【0018】
ある実施形態では、血液サンプルは、体外循環血液回路から採取され、他の実施形態では、患者の血管から採取されたものである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの組織サンプル、又は少なくとも1つの唾液サンプルから得られた質量又は濃度を反映した値を用いることを含む。
【0020】
ある実施形態では、値はまた、体の含量を直接的に(且つ尿検査などの間接的な方法によることなく)測定するように、全身測定から、又は部分的な体の測定から取得したものでありうる。
【0021】
いくつかの実施形態では、全身測定は、従来技術で知られた全身計測器による放射性物質(例えば、カリウムなど)の測定を対象とする。このような全身測定に当たっては、外部の放射能からチャンバ内に置かれた患者をシールドするチャンバなど、適切な手段により、患者は、背景の放射能から隔離される。測定すべき放射性物質の放射能を知ることにより、また放射性物質と、患者の体に含まれる非放射性物質との間の不変の、若しくは一定の比を知ることにより、問題の物質の全身含量を求めることが可能になる。
【0022】
いくつかの実施形態では、関係が少なくとも1つの基準を満たすかどうかを判定するということは、その関係が、事前に決定された、又は本発明による方法の実行中に決定された、いくつかの要望若しくは要求(「要望(demand)」及び「要求(request)」は、本発明の文脈では、「基準」に対する代替、例、又は同義語である)を、満たすかどうかを判定することを意味する。
【0023】
例えば、関係が数で示される場合、基準は、1つ又は複数の閾値とすることができ、したがって、関係は、関係を表す数が閾値よりも高い(又は低い)場合、或いは2つ以上の閾値の間にある場合、基準を満たすことになる。同様に、関係が、図形的な記号で、又は範囲で、或いは曲線として示される場合、基準は、図形的な範囲で表現することができ、したがって、その基準を満たすためには、関係は、図形的な所定の範囲の上又は下などにあるはずである。これらの例は、当然ではあるが、本発明をこれらの実施形態に限定するものと理解されるべきではない。
【0024】
ある実施形態では、関係は、値の比とすることができる。例えば、関係は、「濃度(又は質量、又は濃度の変化、又は質量の変化)」を「分布空間(又は分布空間の近似)」で除することにより表すことができる。一実施形態では、関係は、「Hbの濃度を相対的な水分過剰で除する」ことにより表され、相対的な水分過剰は、分布空間に関係している。
【0025】
いくつかの実施形態では、分布空間は体液である。ある実施形態では、分布空間は、体組織、又は体重、又は合計の体質量である。他の実施形態では、分布空間は、体重ではなく、或いは合計の体質量でもない。いくつかの実施形態では、分布空間は、体液と体組織の組合せである。いくつかの実施形態では、分布空間は、問題の物質を含む空間である。ある実施形態では、分布空間は、問題の物質の主要な部分が、患者の体内で見出される空間である。いくつかの実施形態では、分布空間は、問題の物質が見出される患者の体の空間に限られている。
【0026】
ある実施形態では、分布空間は、血液容積(BV)として定義される。分布空間はまた、ECW(細胞外水分量)、体の細胞外容積若しくは液若しくは質量、ICW(細胞内水分量)、体の細胞内容積若しくは液若しくは質量、血漿量、TBW(体内総水分量)、体液、水腫の容積、リンパ液、尿、総細胞質量、又は任意の他の体液若しくはその容積、及びさらにそれらの組合せとして定義することができる。さらに、本発明の意味に含まれる分布空間は、前に述べた容積のいずれかの比、例えば、ECW/ICWなどとすることもできる。
【0027】
いくつかの実施形態では、分布空間は、筋肉の質量、又は容積として定義される。分布空間はまた、脂肪の質量又は容積、骨の質量又は容積などとして定義することができる。
【0028】
ある実施形態では、物質の質量又は濃度は、患者の貧血状態の指標である。
【0029】
いくつかの実施形態では、貧血状態の指標は、ヘモグロビン(Hb)の総質量又は濃度であり、或いは経時的なその変化などのことである。
【0030】
ある実施形態では、濃度又は質量は、例えば、血液サンプルから直接測定されるが、或いは、例えば、当技術分野で知られているように、血管から血液を引き抜くことなく、光学的方法により測定される。さらに、又は代替的に、問題の値は、ヘモグロビン(Hb)又はヘモグロビン(Hb)の状態など、物質の正しい計算、又は少なくとも十分な近似を可能にする他の値、パラメータなどから導くことも可能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、貧血状態の指標は、ヘマトクリット値(Hct)であり、ヘマトクリット値(Hct)はまた、本発明に含まれる濃度として理解される。
【0032】
ある実施形態では、患者の貧血状態は、Hb濃度、又はHctなど、1つだけの値により表される。
【0033】
ある実施形態では、物質は、患者の体内で自然に生成される少なくともいずれかのタンパク質、特に、ヘモグロビン、アルブミン、インスリン、グルコース、CRP、ホルモン、総タンパク、細胞(例えば、白血球)、電解液、及び非内因性の物質、特に、細胞増殖抑制剤などの薬学的に有効な物質、重水素などの非生理学的マーカなどを含むグループから構成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、分布空間は、患者の水和状態の測定に基づいて近似される。
【0035】
ある実施形態では、分布空間は、患者の水分過剰(OH)、又は相対的な水分過剰(relOH:水分過剰(OH)を細胞外水分量(ECW)で除したもの)などを反映する測定値、及び/又は計算に基づいて近似され、計算され、又は定義される。水分過剰(OH)の定義に関しては、国際公開第2006/002685A1号パンフレットで述べられており、OHは、a*ECW+b*ICW+c*体重に等しい。国際公開第2006/002685A1号パンフレットの各開示は、参照により本明細書に組み込まれる。OHは、当業者にはそのすべてが知られている様々な方法で求めうることを理解されたい。これらの方法のうちの1つは、希釈を測定することを含み、それに基づいてOHを計算する。
【0036】
濃度、経時的な変化、値、計算、近似などに関して、ヘモグロビン(Hb)を参照して述べてきたものは、ヘマトクリット値(Hct)、血液容積(BV)、水分過剰(OH)、及び相対的な水分過剰(relOH)にも同様に適用されることを意味する。
【0037】
いくつかの実施形態では、患者の分布空間は、年齢補正された水分過剰、又は相対的な水分過剰(relAEOH)により表すことができる。そのようにすると、例えば、年齢に起因するいくつかの影響を除外して、より適切な値を得ることができる。
【0038】
ある実施形態では、患者の分布空間を、水分過剰(OH)を細胞外水分量(ECW)で除したものとして求める、又は定義することができるか、或いはこのような方法で図形的に表示することもできる。
【0039】
いくつかの実施形態では、患者の分布空間は、1つの値だけで、特に、リットルの次元を有する値で表される。
【0040】
ある実施形態では、分布空間は、透析の前に測定又は近似される、或いは患者の事前透析値に基づいている。
【0041】
いくつかの実施形態では、事前透析(pre−Dx)値又は計算は、次の透析治療を開始する直前に、すなわち、瞬間又は分に、取得されたデータとすることができる。しかし、本発明はこれだけに限定されない。データはまた、任意の他の時点に取得することもできる。pre−Dxデータは、他のデータよりもより安定していると思われる。したがって、そのデータを用いることには利点がありうる。
【0042】
ある実施形態では、目標範囲は、物質の質量、又は濃度、又は容積、或いはその変化と、患者の分布空間又はその近似とを共に表す図で規定される。目標範囲は、代替的には目標領域とすることもできる。図は、代替的に、プロットでありうる。図は、「直角座標系」とも呼ばれる直交座標系とすることができる。図のグラフィックな表示では、物質の質量、又は濃度、又は容積、或いはその変化を、分布空間に対して示すことができ、その反対も同様である。
【0043】
いくつかの実施形態では、基準は、閾値、又は複数の閾値の組合せである。
【0044】
ある実施形態では、少なくとも1つの基準が事前に設定され、又は事前に決定される。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基準は可変のものである。
【0046】
ある実施形態では、本方法は、基準を決定することをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、基準は、本発明による方法の実行中に決定される。
【0048】
ある実施形態では、回帰線は、質量(又は、それぞれ、濃度、又は容積、或いはその変化)と、分布空間とをそれぞれ反映している測定値又は計算結果に基づいて計算され、互いに対する回帰線と目標範囲の間の位置を評価する。互いに対するとは、「上に」、「下に」、「そばに並んで」、「内に」、「横切る」などと理解することができる。相対的な位置は、特定の程度、又は数値に帰属させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、基準は分類に、特に、ベイズの分類に基づくことができる。さらに、ファジ論理に基づいて基準を定義することも企図される。分類はまた、最隣接法により、またニューラルネットワークなどにより達成することができる。
【0050】
ある実施形態では、回帰線は、測定値、又は計算結果に基づいて計算される、回帰線は、任意の適切な関数を表現することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、質量若しくは濃度に対する値、及び分布空間に対する値は、1つの機会で取得される。「1つの機会」とは、例えば、数分、又は数時間の範囲など、特定の時間として理解することができる。それはまた、1日、又は1つの治療、特に、1つの透析治療の持続期間とすることもできる。「1つの機会」とはまた、患者が治療のために診療所で過ごす時間として理解することもできる。
【0052】
ある実施形態では、本方法は、評価結果を分類することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、必要に応じて、回帰線及び/又は目標範囲をプロットする、又は図示することを含む。
【0054】
ある実施形態では、本方法は、基準が満たされているか(否か)を、テーブル、スプレッドシート、又はチャートなどで表示することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、基準が満たされているがどうかは、2つの値だけで、すなわち、物質の質量又は濃度を反映する1つの値と、分布空間を反映する1つの値に基づいて判定される。
【0056】
ある実施形態では、2つの値は、適切な図形中の1点だけで表される。
【0057】
いくつかの実施形態では、判定は、その1点、又はこれらの2つの値だけで行うことができる。
【0058】
ある実施形態では、関係を決定するために考慮される1つ又はすべての値は、絶対的な方法で、対応する質量、容積、濃度を反映する。すなわち、経時的な変化は、考慮されないままである。したがって、質量、濃度、又は容積を反映するいずれの値も、静的なものでありうる。
【0059】
さらに、いくつかの実施形態では、物質の質量、濃度、又は容積を反映する値は、値を減算することにより、例えば、第1の濃度値を第2の濃度値から減算するなどにより得られることはない。
【0060】
ある実施形態では、関係を求めるために、時定数、又は時間変数、又はパラメータは考慮されない、又は含まれない。特に、質量、濃度、又は容積値は、時間値で乗算されない。
【0061】
いくつかの実施形態では、回帰線の傾斜が、判定するステップでさらに考慮される。傾斜を推定することができるか、或いは同じ患者、又は対応する患者、又は(健康又は病気の)患者の集合体からの以前の測定から(近似的に)知ることもできる。
【0062】
ある実施形態では、回帰線のyオフセットがまた、判定するステップで考慮される。「y」は、例えば、直交座標系で、図で表示したとき、物質の質量、濃度、又は容積に関係し、或いは、例えば、relOHなどの水和値に関係することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、分布空間を反映する値は、リットル(l)で測定される。
【0064】
ある実施形態では、質量又は濃度(又はその変化)、及び患者の分布空間が、計算及び/又は測定される。測定及び計算は、適切な任意のデバイスを用いて、当技術分野で知られた任意の方法により実施することができる。特に、いくつかの実施形態では、各データは、血液サンプルからのHb、及び/又は適切なモニタによる体外血液管路に含まれる血液からのHbを測定することにより取得することができる。測定は、光学的センサによる血液の光学的特性を測定すること、及び/又は超音波センサによる超音波パルスの遷移時間及び/又は伝播速度などの音響特性を評価することにより行うことができる。
【0065】
水和状態を求めるためにはまた、生体インピーダンス又は希釈技法に基づくモニタなど、任意の適切なモニタを使用することもできる。
【0066】
水和状態に関係するデータを取得するためのモニタは、国際公開第2006/002685A1号パンフレットに記載されているモニタとすることができる。国際公開第2006/002685A1号パンフレットの各開示を、参照により本出願に組み込む。当然ではあるが、本発明を、国際公開第2006/002685A1号パンフレットに記載の生態インピーダンス測定により患者の水和状態を求めるモニタに限定するものと理解すべきではない。希釈測定、及びさらに当業者に知られた任意の他の方法など、当技術分野で知られた他の方法も同様に、本発明により企図され、且つ包含される。
【0067】
いくつかの実施形態では、患者の貧血状態を改善するために、患者に投与される薬剤の用量は、基準が満たされているかどうかを判定した結果に基づいて決定され、又は調整される。
【0068】
ある実施形態では、分布容積を調整すべきである。これは、利尿剤などの物質の投与、及び/又は透析、例えば、限界濾過法により達成することができる。いくつかの実施形態では、薬学的に有効な物質が投与される。ある実施形態では、基準に関する評価結果は、患者をどのように治療するかに関する助言の形で出力される。
【0069】
いくつかの実施形態では、基準は、設定される、又は決定される、又は事前に決定される。
【0070】
ある実施形態では、装置は、分布空間又はその近似、例えば、水和状態に関する情報を取得するためのモニタである。このようなモニタの例は上記で述べられている。不要な繰り返しを回避するために、モニタとは、生体インピーダンス信号、希釈法、又は当技術分野で知られた任意の他の方法に基づく水和状態を反映する結果を生ずる水和モニタを概して指す。
【0071】
いくつかの実施形態では、装置は、コントローラにより提供された結果を出力するための出力デバイスをさらに備える。出力デバイスは、ディスプレイ、プロッタ、プリンタ、又は出力を供給するための任意の他の手段を有するモニタとすることができる。
【0072】
ある実施形態では、装置は、各開示を参照により本明細書に組み込む、Drukker、Parson、及びMaherによる「Replacement of Renal Function by Dialysis」、Kluwer Academic Publisher、第5巻、2004年、オランダ国ドルドレヒト、397〜401頁(「Hemodialysis machines and monitors」)に記載された任意のモニタにより、Hb濃度を測定すること(例えば、g/dlで)、及び/又は血液容積を求めることのためのモニタを備える。
【0073】
いくつかの実施形態では、モニタは、導電率を測定することにより、物質、特にHbの血液容積及び/又は濃度を測定するように構成される。
【0074】
ある実施形態では、モニタは、光学密度を測定することにより、物質、特にHbの血液容積及び/又は濃度を測定するように構成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、モニタは、粘度を測定することにより、物質、特にHbの血液容積及び/又は濃度を測定するように構成される。
【0076】
ある実施形態では、モニタは、密度を測定することにより、物質、特にHbの血液容積及び/又は濃度を測定するように構成される。
【0077】
いくつかの実施形態では、モニタは、1つ又は複数の対応するプローブ、及び/又は導電率センサ、光センサ、粘度センサ、密度センサ、及び同様のものなど、測定を実施するための1つ又は複数のセンサを備える。
【0078】
ある実施形態では、デバイスは、透析により患者を治療するために使用することができる。
【0079】
他の実施形態では、デバイスは、血液濾過法、限外濾過法、血液透析などにより、患者(又は患者の血液)を治療するために使用することができる。
【0080】
諸実施形態は、1つ又は複数の以下の利点を提供することができる。
【0081】
本発明によれば、物質の質量若しくは濃度を反映する特定の値により生ずる、又は伴う患者の特定の状態(貧血状態など)を表すパラメータ又は値の得失を、容易に決定することができる。ただし、パラメータは、分布空間の容積、又は実際の水和状態により悪化する可能性がある。
【0082】
例えば、現在の実務では、患者(例えば、心臓障害又は腎臓障害を有する)における物質の非生理学的濃度(例えば、8g/dl未満の非常に低いヘモグロビンレベル)を、代謝を変更することにより(例えば、赤血球生成促進剤を投与することにより)、又はその分布容積若しくは空間を補正することにより(例えば、限外濾過治療により、又は利尿薬を投与することにより)、又はその両方を組み合わせて補正すべきかどうかは明確になっていない。言い換えると、測定されたHb濃度は、水分過剰(過水症(hyperhydration))、又は水分欠乏(脱水症(hypohydration))の程度に応じて、様々な程度へと「人工的に」変更又は希釈されうるように見える可能性がある。
【0083】
重篤な水分過剰の場合、血液容積は、正常なレベルを超えて拡大される可能性があり、それにより、絶対的な赤血球の質量が正常な水和状況では適切であったとしても、Hb濃度が減少することになる。一例として、3リットル(l)の水分過剰は、血液容積(BV)中で1リットル(l)増加させることになり、したがって、間質腔(interstitial space)に2リットル存在する。BV及びOHにおける相対的な変化は、この典型的な2:1の関係のため同じであるので、基準に基づいた評価を行うために、血液容積に代えて(血液容積よりも容易に測定可能な)水分過剰を表す値を使用することが可能である。5リットルの典型的な血液容積(BV)を仮定すると、これは20%の増加を表すことになる。Hb濃度における20%の減少は、例えば、11.5〜9.2g/dlになるはずである。このような低いHbレベルは、エリスロポイエチン(EPO)の投薬を増加させることになる。したがって、患者は、薬剤によるHbの補正からよりも、患者の水分過剰(OH)の補正からの方がより利益が得られる可能性がある。
【0084】
上記で述べた利点のすべて、又はいくつかはまた、本発明が、本明細書で例として使用されているに過ぎないHb以外の他の物質に適用されたときに見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】Hb−水分過剰図で、患者の貧血状態と水和状態を共に反映する状態をプロットした図である。
【図2】他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図3】他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図4】より概略的な説明における図1のプロットに対応する図である。
【図5】さらに他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図6】さらに他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図7】さらに他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図8】図5の患者のデータを示す図1のプロットに対応する図である。
【図9】さらに他の患者のデータを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図10】1つだけの測定データを示す、図1のプロットに対応する図である。
【図11】本発明による方法を実施するためのコントローラを備える第1の装置を示す図である。
【図12】本発明による方法を実施するためのコントローラを備える第2の装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
他の態様、特徴、及び利点は、説明、図、及び特許請求の範囲から明らかとなろう。以下の例は、問題の物質としてはHbに関しており、また分布空間は、測定された患者の相対的な水分過剰により近似される。しかし、本発明を、この例に限定されるものと理解すべきではない。
【0087】
図1は、図にプロットされた患者の貧血状態と水和状態を共に反映する19個の測定結果を示す。図は、relAEOH(相対的な水分過剰、年齢で補正されている)に対するHbを示す直交座標系である。問題の患者(ここでは「被検者15」として匿名化している)から取得された19個の測定結果が、小円1で示されている。
【0088】
回帰分析が19個の測定結果に基づいて行われた。得られた結果は、回帰線3として、図1に追加されている。
【0089】
図1では、目標範囲5がさらに示される。目標範囲5の形状及び位置は、例として、個人の経験及びデータに基づいて選択され、又は決定されている。しかし、本発明を、これだけに限定されるものと理解すべきではない。目標範囲5の形状及び位置は共に、必要がある場合、別の形に決めることもできる。特に、目標範囲は、同じ患者の前の測定からの知見を反映することができる。さらに、目標範囲は、例えば、同じ病気を患っているなど、問題の患者と比較可能な状況である患者の測定に基づいた知見を反映することができる。
【0090】
図1の例において満たすべき基準は、回帰線3が目標範囲5を横切るかどうかである。図1から分かるように、回帰線3は明らかに目標範囲5を横切っているので、図1では基準が満たされていることが明らかであり、回帰線3の部分3’を参照のこと。
【0091】
図1の例では、貧血状態は、上記でも述べたように、例えば、Drukker、Parson、及びMaherによる「Replacement of Renal Function by Dialysis」、Kluwer Academic Publisher、第5巻、2004年、オランダ国ドルドレヒト、397〜401頁(「Hemodialysis machines and monitors」)に記載された任意のモニタにより取得されたHb濃度(g/dlで)により反映される。再度、397〜401頁の各開示を、参照により本明細書に組み込む。最初の値は、透析治療が開始した後に取得されたものである。ここで論ずるモニタは、血液容積(又はその変化)をモニタする、又は検出するために使用することができ、血液容積は、本発明の意味に含まれる他の分布空間と見なされることに留意されたい。
【0092】
さらに、図1の例では、水和状態は、国際公開第2006/002685A1号パンフレットを参照して上記で述べたように、モニタにより測定された相対的な水分過剰(水分過剰(OH)を細胞外水分量(ECW)で除したもの)により反映される。これらの値は、透析治療を開始する前に(「pre−Dx」)取得されている。
【0093】
本明細書で述べられるいずれの値に関しても、時間平均値(Hbに関して)を使用することができる。さらに、分析によれば、治療中の最初の値が、重量変化及びOH変化に対して最もよい相関を有することが示されている。その理由は、治療の終りに向けて、多くの乱れが、微小循環及び大循環で存在することによる可能性がある。したがって、それは、(再充填が停止したことを確認するために)限外濾過法を行わない30分後に、より信頼性のある値を測定できる可能性がある。
【0094】
目標範囲5は、Hb及びrelOHの両方に対する可能なpre−Dx目標範囲として理解することができる。
【0095】
図1から分かるように、患者の水和状態が減少すると、Hb濃度は、(逆の)希釈効果のため増加しているが、赤血球質量は一定のままであり、合計のHb質量(濃度ではなく)も一定である。
【0096】
HbとrelOHの間で有意な相関を示す回帰線3は、目標範囲5を通って移動するので、液管理による水和の正常化は、同様に、自動的にHbを正常化することになる。EPOの投与、又はその使用など、患者の貧血状態を管理するためのさらなる介入は必要ではないように思われる。
【0097】
図2は、他の患者(「被検者22」)のデータを示す、図1のものと同様のプロットを示している。図2では、回帰線3’’が、目標範囲5の下を通る。ここで適用される基準(すなわち、回帰線3は目標範囲5を横切る、又は交差する必要がある)が満たされていない。したがって、患者の貧血状態を表す値は、水和状態が正常に戻された後、正常に戻らないと思われる。したがって、患者は、患者のHb濃度を増加させて正常に戻す物質を投与することにより、又は患者がすでに投薬を受けている/薬剤を服用している場合、このような物質の用量を増加させることにより、利益が得られる可能性が高い。
【0098】
図3は、さらに他の患者(「被検者69」)のデータを示す、図1又は図2のものと同様のプロットを示す。図3では、回帰線3’’’が目標範囲5の上を通っている。再度、ここで適用される基準は満たされていない。さらに、患者の貧血状態を表す値は、(過剰の)水和状態が正常に戻された後、正常に戻らないと思われる。したがって、患者が、EPOなどの患者のHb濃度を増加させる物質が投与されている場合、患者は、これらの物質の用量を減らすことにより、ほぼ確実に利益が得られることになる。
【0099】
図3から分かるように、本発明による患者の貧血状態の評価結果は、どのように基準が(事前に)決定されるかに非常に依存している。例えば、基準を、図の例のように回帰線が目標範囲を交差する必要があると決定することに代えて、1つだけ、2つ、又はそれを超える数の結果が目標範囲内にあることが見出された場合に満たされていると定義する場合、基準は、図3で示す例の場合にも満たされている。
【0100】
図1から図3を参照して上記で説明してきたものが、EPOを投与されている任意の患者に関して図4で概略的に示されている。図4は、プロット中の回帰線の位置(相対的な位置)から、EPOの用量をどのようにして導出できるかの概略的な概念を示している。回帰線3’’’が見出された場合、EPOの用量を減少させることが助言される。EPO用量を適応させた(減少させた)後に行われた測定結果に基づいて計算された回帰線は、矢印7’で示される低い線になるはずである。回帰線3’’が見出された場合、患者は、高いEPO用量から利益が得られるように思われる。EPO用量を適応させた(増加させた)後に行われた測定結果に基づいて計算された回帰線は、矢印7’’で示される高い線になるはずである。
【0101】
回帰線を決定するためには、少数回の初期測定が必要であるに過ぎない、すなわち、すでに1つの結果若しくは点で十分でありうることに留意されたい。例えば、2〜4週間の時間期間にわたって行われた測定から得られた結果で十分なはずである。
【0102】
図5の形状は図1から図4のものとは異なっているが、目標範囲5の形状により図5で示されているように、EPOなどの薬剤の用量に対する「目標通路(corridor)5’」を規定することも可能である。目標通路5’は、図1から図4で知られた目標範囲5のさらに特有な例である。それは、問題の患者の(ここでは、「被検者141」の)個々の回帰線傾斜に適合されている点で異なっている。図5で示されるように形成された場合、目標通路5’は、正常な水和状態がまだ達成されていないときであっても、早期にEPOの調整を可能にするのを助けることができる。これは、EPOの投与と、赤血球の生成(造血)との間が長時間一定であることに関して特に利益がありうる。図5から分かるように、水分が減少する段階の開始時に、EPOの用量をすでに増加させることができる。
【0103】
図5から分かるように、本発明により満たされるべき、患者の貧血状態を評価するための基準はまた、回帰線の傾斜若しくは傾きが、目標範囲の、特に長方形のものの範囲、若しくは主要な範囲に平行であるかどうかとすることもできる。さらに、基準は、回帰線が、目標範囲内に完全に含まれるかどうか、或いは回帰線が目標範囲の特定の所定の部分、又は目標範囲の辺を横切るかどうかなどとすることができる。
【0104】
図6から図9は、さらに他の患者(「被検者73、86、及び94」)、及び図5の患者から取得されたHb及び水和測定結果から描かれたプロットのさらなる例を示している。事前に設定された基準(すなわち、回帰線3は、目標範囲5を横切るか、交差する必要がある)は、図8及び図9の患者では満たされていないが、図6及び図7の患者では満たされている。
【0105】
図から、患者の参照線若しくは回帰線が、参照範囲を横切る場合、水和状態だけを調整すべきであること、また参照線若しくは回帰線が、上方若しくは下方を通る場合、代謝過程を(例えば、EPOを用いて)対処すべきであることが理解できる。
【0106】
図10は、円1で示されている1つだけの測定データを示す、水分過剰(L又はl)に対するHbの濃度(g/dl)を表示する図1又は図2のものと同様のプロットを示している。図10から分かるように、回帰線3を、1つの測定だけに基づいて決定することはできない。図10から、ある状況では、基準(ここでは、円1により表された測定が、範囲5の中に含まれるかどうかである)が満たされているかどうかを判定するために、回帰線は必要のないことがさらに理解される。いずれにせよ、図10の例では、事前に設定された基準が満たされていない。
【0107】
上記で論じた図のどれからも分かるように、基準が、各患者の特定の貧血状態、及び水和状態により満たされるかどうかは、基準を、事前にどのように設定するか、又は決定するかに依存している。
【0108】
図11は、本発明による方法を実施するためのコントローラ11を備える装置9を示す。装置9は、本発明による方法に必要な測定結果及びデータを含む外部のデータベース13に接続される。データベース13はまた、内部の手段とすることもできる。装置9は、任意選択で、コントローラ11に、又は装置9にデータを入力するための手段14を有することができる。このようなデータは、上記で述べたように、物質の質量、容積、濃度に関する情報とすることができる。装置9に入力されるこのようなデータはまた、さらに、又はそれに代えて、患者の分布空間又はその近似に関する情報とすることができる。さらに、基準は、入力手段14により入力することができる。しかし、基準は、代替的に、データベース13、又は任意の他のストレージ中に記憶することもできる。基準は、コントローラ11により、又は装置9により構成若しくは相互接続された任意の他の製品により計算され、又は決定することができる。コントローラ11及び/又は装置9により行われる評価、計算、比較、判定などの結果は、モニタ15上に表示されうるか、又は図示されていないが、任意選択で含まれるプロッタによりプロットされうる、又はデータベース13若しくは任意の他の記憶手段により記憶することができる。データベース13はさらに、実行されたとき、本発明による方法を開始するコンピュータプログラムを含むことができる。
【0109】
特に、コントローラ11は、組織又は体液からなる物質の質量、又は濃度、又は容積、及び患者の分布空間又はその近似を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値(複数可)の間の関係を決定するように、且つ関係が少なくとも1つの事前に決定された基準を満たすように構成することができる。
【0110】
図12から分かるように、対応する測定のために、装置9は、水和状態又は水分過剰状態を測定又は計算するための手段の一例として、生体インピーダンス測定手段17と(有線又は無線により)接続することができる。概して、水和状態又は水分過剰状態を測定又は計算するための手段は、本発明による方法に必要な測定結果及びデータを含む外部のデータベース13に加えて、或いは外部のデータベース13の代わりに(すなわち、代替として)設けることができる。
【0111】
生体インピーダンス測定手段17は、接触抵抗などインピーダンスデータに対する影響を自動的に補償できるものとすることができる。
【0112】
このような生体インピーダンス測定手段17に対する例は、国際公開第92/19153号パンフレットでさらに記載されている商標Hydra(商標)の下で販売されるザイトロンテクノロジーズ(Xitron Technologies)からのデバイスであり、その開示を、参照により本出願に明示的に組み込む。
【0113】
生体インピーダンス測定手段17は、様々な電極を備えることができる。図12では、生体インピーダンス測定手段17に取り付けられた2つの電極17a及び17bだけが示されている。当然ではあるが、さらなる電極も企図される。
【0114】
示唆された各電極は、2つ以上の(「副」)電極を同様に備えることができる。電極は、電流注入(「副」)電極、及び電圧測定(「副」)電極を含むことができる。すなわち、図12で示された電極17a及び17bは、2つの注入電極及び2つの電圧測定電極(すなわち、合計で4つの電極)を備えることができる。
【0115】
一般的に言って、水和状態、又は水分過剰状態を測定又は計算するための手段は、必要なデータを入力するための秤量手段、キーボード、タッチスクリーンなどにより、またセンサ、検査室との相互接続若しくは通信リンク、任意の他の入力手段などにより提供されうる。
【0116】
同様に、装置9は、測定結果、及び本発明による方法に必要なデータをすでに含む外部のデータベース13に加えて、或いは外部データベース13に代えて(すなわち、代替として)再度提供されうる、物質の質量、容積、又は濃度を反映する値を取得するための測定手段若しくは計算手段のための手段19を有することができる。
【0117】
手段19は、必要なデータを入力するための秤量手段、キーボード、タッチスクリーンなどとして、またセンサ、検査室との相互接続若しくは通信リンク、Hb濃度プローブ、任意の他の入力手段などとして提供されうる。
【0118】
再度、諸図は、本発明の一実施形態をどのようにして実施できるかを示す例を用いたHb/貧血状態及びrelOH/水和状態に関係していることに留意されたい。諸図を、限定的なものとして理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織又は体液からなる物質の質量、又は濃度、又は容積を表す値を評価するための方法であって、
前記組織又は前記体液からなる前記物質の前記質量、又は前記濃度、又は前記容積を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値(複数可)と、前記患者の分布空間又はその近似を反映する1つ又は複数の計算された、又は測定された値(複数可)との間の関係を決定するステップと、
前記関係が、少なくとも1つの基準を満たすかどうかを判定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記物質の前記質量、前記容積、又は前記濃度を反映する前記少なくとも1つの値が、血液サンプルから取得されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質の前記質量、前記容積、又は前記濃度を反映する前記少なくとも1つの値が、尿サンプルから取得されたものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記物質の前記質量、前記容積、又は前記濃度を反映する前記少なくとも1つの値が、組織サンプルから取得されたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記物質が、前記患者の体内で自然に生成される少なくともいずれかのタンパク質、特に、ヘモグロビン、アルブミン、インスリン、グルコース、CRPと、非内因性の物質、特に、薬学的に有効な物質とを含むグループから構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物質の前記質量、又は前記濃度、或いはその変化が、前記患者の貧血状態の指標である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の前記貧血状態の前記指標が、ヘモグロビン(Hb)の濃度、その合計質量、又はその経時的な変化である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記貧血状態の前記指標が、ヘマトクリット値(Hct)、又はその経時的な変化である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者の前記分布空間が、血液容積(BV)の測定された、又は計算された値である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の前記分布空間が、前記患者の相対的な水分過剰(relOH)を反映している測定された、又は計算された値に基づく近似である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分布空間が、透析の前に測定若しくは近似された、又は前記患者の事前透析の値に基づく、又は透析治療中、若しくは透析治療後に測定若しくは近似されたものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記物質の前記質量、又は前記濃度、及び前記分布空間若しくはその近似を反映する目標範囲を図中で規定するステップを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
組織又は体液からなる前記物質の前記質量又は前記濃度と、前記患者の分布空間、又はその近似とを共に反映する測定された、又は計算された値に基づいて回帰線を計算するステップと、前記回帰線と前記目標範囲の間の何らかの重なりを決定するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記物質の前記質量若しくは前記濃度、及び/又は前記患者の前記分布空間、若しくはその近似を反映するパラメータを計算及び/又は測定するステップを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
計算された、又は測定された値(複数可)と前記基準の間の前記取得された関係に基づいて、患者の貧血状態を改善するために、前記患者に投与すべき薬剤の用量を決定又は調整するステップを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基準を決定するステップを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されたコントローラ。
【請求項18】
患者の組織又は体液からなる物質の前記質量又は前記濃度を表す値を評価するための装置であって、
前記患者の体の前記分布空間、又はその近似若しくは変化を反映する値を取得するための手段、及び/又は前記物質の前記質量、容積、若しくは前記濃度、若しくはその変化を反映する値を取得するための手段と、
少なくとも1つの請求項17に記載のコントローラと、
を備える装置。
【請求項19】
前記分布空間、又はその近似若しくは変化を反映する値を取得するための前記手段が、前記分布空間、又はその近似若しくは変化を測定又は計算するための手段、特に、水和状態又は水分過剰を測定又は計算するための手段を備えており、或いは値を取得するための前記手段が、測定又は計算するためのこのような手段からなる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記物質の前記質量、前記容積、又は前記濃度を反映する値を取得するための前記手段が、秤量手段、患者の血液容積を求めるための手段、キーボード、タッチスクリーン、並びに前記物質、特に、血液中のヘモグロビン(Hb)の前記濃度、前記容積、及び/又は前記質量、又はその変化を測定又は計算するための手段のうちの少なくとも1つを備えており、或いは値を取得するための前記手段が、測定又は計算するためのこのような手段からなる、請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラにより提供される結果を出力するための出力デバイスをさらに備える、請求項18〜20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの請求項17に記載のコントローラ、又は少なくとも1つの請求項18〜21のいずれか一項に記載の装置を備える、患者の血液を治療するためのデバイス。
【請求項23】
透析により患者を治療する、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
血液濾過法、限外濾過法、及び/又は血液透析により患者を治療する、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと相互に作用することのできる電気的に読取り可能な制御信号を備えた、特にディスク、CD、又はDVDであるデジタル記憶手段。
【請求項26】
コンピュータ上で実行されたときに請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法を実行するための、マシン可読のデータ媒体上に記憶させたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
コンピュータ上で実行されたときに請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−503727(P2013−503727A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528262(P2012−528262)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005480
【国際公開番号】WO2011/029569
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(597075904)フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【Fターム(参考)】