説明

悪性末梢神経鞘腫瘍の処置

【課題】悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)に対して有効な組合わせ剤の提供。
【解決手段】(a)少なくとも1種のc−Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤と(b)4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(国際一般名:イマチニブ)または式Iで表されるピリミジニルアミノベンズアミド


〔式中、Pyは3−ピリジル、R1は水素、低級アルキルなど、R2は水素、低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基など、R4は水素、低級アルキルまたはハロゲンを意味する。〕のピリミジルアミノベンズアミドまたはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性末梢神経鞘腫瘍の処置用医薬組成物の製造のための、(a)少なくとも1種のc−Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤と(b)4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(「イマチニブ」[国際一般名]とも知られる;以後「イマチニブ」)または下記定義の式Iのピリミジルアミノベンズアミド、またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤の使用、ならびに悪性末梢神経鞘腫瘍を有するヒトを含む温血動物を処置する方法であって、かかる処置を必要とする前記動物に、有効量の(a)少なくとも1種のJNK阻害剤と(b)イマチニブまたは式Iのピリミジルアミノベンズアミド、またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤を投与することによる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NF1腫瘍抑制遺伝子における変異は、米国、欧州および日本だけでも約250,000人の患者が罹患している一般の汎発性ヒト遺伝子障害である神経線維腫症タイプ1(NF1)を引き起こす。フォン・レックリングハウゼン病とも知られるNF1は、カフェオレ斑(皮膚変色)、皮膚神経線維腫および虹彩小結節の3つによって特徴付けられる。該障害の他の特徴は、骨格異形成、血管異形成、学習障害、発作および神経堤起源の他の腫瘍、例えば褐色細胞腫を含んでいてもよい。さらに、NF1患者の約10〜15%は低悪性度星細胞腫を有し、あまり一般的ではないが、上衣腫(ependymoa)または髄膜腫を有する。
【0003】
D. Wade Clappのグループは、Cell 135, 437-448, October 31, 2008において、生理的に関連したNF1マウスモデルでのイマチニブの効果についての研究を報告した。著者らは同論文で、叢状神経線維腫を有するヒト患者でのイマチニブの効果についての研究も記載している。
【0004】
WO2007/065898は非がん様良性脳腫瘍の処置、特に神経線維腫(NF)の治療的および予防的処置における式Iのピリミジルアミノベンズアミド誘導体(本明細書においてさらに定義する)の使用を開示している。
【0005】
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は不良な予後を伴う極めて侵襲性の腫瘍である。NF1の状況において、約半分がMPNSTを発症する。NF1患者のMPNSTは、MPNSTの診断後5年以上生存するNF1患者がわずか21%であるという低い生存予測の主な原因である(D.G. Evans, M.E. Baser, et al, Malignant peripheral nerve sheath tumors in neurofibromatosis 1; J. Med. Genet. 2002, 39, 311-314)。
【0006】
MPNSTにおける血小板由来増殖因子受容体タイプA(PDGFRA)およびKITの変異および発現の役割、そしてそのイマチニブ感受性についての推測は、N. Holtkamp, A. Okuducu, et al in Carcinogenesis 2006, 27(3), 664-671で議論されている。これらの知見に基づき、著者らはMPNST患者はイマチニブによる処置によって利益を受け得ると結論した。
【0007】
Jun N末端キナーゼ(JNK)はc−JunおよびATF2のリン酸化および活性化に関与する細胞質性セリン指向プロテインキナーゼであり、代謝、増殖、細胞分化、アポトーシスにおける重要な役割を有し、ハイポキシン(hypoxin)、寒冷ショックおよび高浸透圧によって誘導されるもののようなストレス応答の下流シグナル伝達成分として参加する。JNK1、2および3として知られるJNKの3種のアイソフォームは、3つの独立した遺伝子によってコードされる。JNKは炎症、内毒素および環境ストレスに応答して活性化される。その活性化は前炎症性遺伝子発現、細胞増殖およびアポトーシスを仲介し得る。JNKの阻害剤はそれ自体既知であり、神経変性疾患から代謝障害、炎症、心臓血管疾患およびがんまでの、広範な障害における治療上有用性を有し得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、MPNSTの処置における改善された治療アプローチの必要に応じるものである。本発明において、驚くべきことに、MPNSTが(a)少なくとも1種のJNK阻害剤と(b)イマチニブまたは式Iのピリミジルアミノベンズアミド、またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤によって成功裏に処置され得ることが示された。
【0009】
イマチニブによる処置によってある程度の臨床的応答が示されたレックリングハウゼン病を有する7歳の女性患者から得たサンプルにおいて、免疫組織学的染色によってPDGFRが存在するが、KITまたはEGFR(上皮増殖因子)は発現していないことが示された。特に、本発明において、イマチニブが濃度依存的にMPNST細胞系YST−1の増殖を抑制することを見出した。さらに、JNK阻害剤SP600125もまた濃度依存的にYST−1の増殖を抑制することを見出した。さらにまた、SP600125がイマチニブによる細胞増殖抑制効果を強化することを見出した。したがって、これらの結果は、PDGFRシグナル伝達経路がMPNSTの増殖および進行に関与し得ることを示している。さらに、JNKがPDGFRの下流シグナル伝達成分であり、MPNSTの増殖および進行に関与し得ることを見出した。得られた結果は、JNK阻害剤とイマチニブまたはニロチニブまたは他の好適なPDGFR阻害剤の組合せによるMPNSTの処置における相加効果が示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】イマチニブメシレートおよびSP600125を単独または組合せで、YST−1細胞に2日間投与した。コントロール、SP600125、イマチニブメシレートおよびSP600125とイマチニブメシレートの組合せについて、40倍と100倍で写真を撮影した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明は、(a)少なくとも1種のJNK阻害剤と(b)イマチニブまたは式Iのピリミジルアミノベンズアミド、またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤に関する。
【0012】
さらに本発明は、悪性末梢神経鞘腫瘍の処置用医薬組成物の製造のための、(a)少なくとも1種のJNK阻害剤と(b)式
【化1】

を有するイマチニブまたは式I
【化2】

〔式中、
Pyは3−ピリジルを意味し、
は水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルキルを意味し;
は水素、所望により1個以上の同一または異なる基Rで置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;そして
はヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;
あるいはRとRが一体となって、4、5または6個の炭素原子を有し、所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、モノもしくはジ置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルでモノもしくはジ置換されていてもよいアルキレン;4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素原子と3または4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;または1個の窒素と3または4個の炭素原子を有し、該窒素が非置換であるか、あるいは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルで置換されたアザアルキレンを意味し;
は水素、低級アルキルまたはハロゲンを意味する〕
を有するピリミジルアミノベンズアミド、またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤の使用に関する。
【0013】
イマチニブの製造および特に抗腫瘍剤としてのその使用は、1993年10月6日に公開された欧州特許出願EP-A-0 564 409(ここに参照により本明細書に引用する)の実施例21ならびに他国の対応出願および特許、例えば米国特許5,521,184に記載されている。
【0014】
イマチニブの薬学的に許容される塩は、例えば塩酸、硫酸もしくはリン酸のような無機酸または好適な有機カルボン酸もしくはスルホン酸、例えばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはオキサル酸のような脂肪族モノもしくはジカルボン酸、またはアルギニンもしくはリシンのようなアミノ酸、安息香酸、2−フェノキシ−安息香酸、2−アセトキシ−安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸のような芳香族性カルボン酸、マンデル酸もしくは桂皮酸のような芳香族性−脂肪族カルボン酸、ニコチン酸もしくはイソニコチン酸のようなヘテロ芳香族性カルボン酸、メタン−、エタン−もしくは2−ヒドロキシエタン−スルホン酸のような脂肪族スルホン酸、または芳香族性スルホン酸、例えばベンゼン−、p−トルエン−もしくはナフタレン−2−スルホン酸との薬学的に許容される酸付加塩である。
【0015】
イマチニブのモノメタンスルホン酸付加塩(以後、「イマチニブメシレート」または「イマチニブモノメタンスルホネート」)およびその好ましい結晶形、特にβ結晶形は、1999年1月28日に公開されたPCT特許出願WO99/03854に記載されている。
【0016】
有効量のイマチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む可能な医薬組成物もWO99/03854(ここに参照により本明細書に引用する)に記載されている。
【0017】
本発明によると、好ましくはイマチニブはモノメタンスルホン酸塩形で、例えばモノメタンスルホン酸塩のβ結晶形で使用する。
【0018】
Pyが3−ピリジルであり、基がそれぞれ互いに独立して、次の意味を有する式Iのピリミジルアミノベンズアミドが好ましい:
・Rが水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルキル;より好ましくは水素を意味し;
・Rが水素、所望により1個以上の同一または異なる基Rで置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;そして
・Rがヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;
・Rが低級アルキル、特にメチルを意味する。
【0019】
好ましいピリミジルアミノベンズアミドは、「ニロチニブ」としても知られている4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。
【0020】
本明細書において使用する一般用語は、特に定めのない限り、本開示の文脈内で、好ましくは次の意味を有する:
接頭語「低級」は、最大7個まで、特に最大4個までの炭素原子を有する基を意味し、当該基は直鎖または1回もしくは複数回分岐した分枝鎖状である。
【0021】
化合物、塩等に複数表現が用いられているとき、これは1個の化合物、塩等も意味すると理解される。
【0022】
低級アルキルは、好ましくは1〜7個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルであり;好ましくは、低級アルキルはブチル、例えばn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、例えばn−プロピルもしくはイソプロピル、エチルまたはメチルである。好ましくは低級アルキルは、メチル、プロピルまたはtert−ブチルである。
【0023】
低級アシルは好ましくは、ホルミルまたは低級アルキルカルボニル、特にアセチルである。
【0024】
アリール基は、当該基の芳香環炭素原子での結合を介して分子と結合している芳香族性基である。好ましい態様において、アリールは6〜14個の炭素原子を有する芳香族性基、特にフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルまたはフェナントレニルであり、これは非置換であるか、あるいは特にアミノ、モノもしくはジ置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル、例えば特にトリフルオロメタンスルホニル、ジヒドロキシホウ素(−B(OH))、ヘテロシクリル、単環もしくは二環式ヘテロアリール基および当該環の隣接するC原子で結合した低級アルキレンジオキシ、例えばメチレンジオキシから選択される1個以上、好ましくは3個まで、特に1または2個の置換基で置換されている。アリールは、より好ましくはフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチルであり、これらはそれぞれの場合において、非置換であるか、あるいは独立して、ハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素;ヒドロキシ;低級アルキル、例えばメチル、ハロゲン−低級アルキル、例えばトリフルオロメチルまたはフェニルでエーテル化したヒドロキシ;2個の隣接するC原子と結合した低級アルキレンジオキシ、例えばメチレンジオキシ、低級アルキル、例えばメチルまたはプロピル;ハロゲン−低級アルキル、例えばトリフルオロメチル;ヒドロキシ−低級アルキル、例えばヒドロキシメチルまたは2−ヒドロキシ−2−プロピル;低級アルコキシ−低級アルキル;例えばメトキシメチルまたは2−メトキシエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、例えばメトキシカルボニルメチル;低級アルキニル、例えば1−プロピニル;エステル化カルボキシ、特に低級アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルまたはイソプロポキシカルボニル;N−モノ−置換カルバモイル、特に低級アルキル、例えばメチル、n−プロピルまたはイソプロピルでモノ置換されたカルバモイル;アミノ;低級アルキルアミノ、例えばメチルアミノ;ジ低級アルキルアミノ、例えばジメチルアミノまたはジエチルアミノ;低級アルキレン−アミノ、例えばピロリジノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えばモルホリノ、低級アザアルキレン−アミノ、例えばピペラジノ、アシルアミノ、例えばアセチルアミノまたはベンゾイルアミノ;低級アルキルスルホニル、例えばメチルスルホニル;スルファモイル;またはフェニルスルホニルを含む群から選択される1または2個の置換基で置換されている。
【0025】
シクロアルキル基は、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、これは非置換であるか、あるいはアリールの置換基として上記定義の基から選択される1個以上、特に1または2個の置換基、最も好ましくはメチルのような低級アルキル、メトキシもしくはエトキシのような低級アルコキシまたはヒドロキシ、およびさらにオキソで置換されているか、あるいはベンゾ環、例えばベンゾシクロペンチルまたはベンゾシクロヘキシルと縮合していてもよい。
【0026】
置換アルキルは、末尾に定義のアルキル、特に低級アルキル、好ましくはメチルであり;ハロゲン、特にフッ素、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルから一次的に選択される1個以上、特に3個までの置換基が存在していてもよい。トリフルオロメチルが特に好ましい。
【0027】
モノもしくはジ置換アミノは、互いに独立して低級アルキル、例えばメチル;ヒドロキシ−低級アルキル、例えば2−ヒドロキシエチル;低級アルコキシ低級アルキル、例えばメトキシエチル;フェニル−低級アルキル、例えばベンジルまたは2−フェニルエチル;低級アルカノイル、例えばアセチル;ベンゾイル;置換ベンゾイル(ここで該フェニル基は特に、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される1個以上、好ましくは1または2個の置換基で置換されている);およびフェニル−低級アルコキシカルボニル(ここで該フェニル基は非置換であるか、あるいは特に、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される1個以上、好ましくは1または2個の置換基で置換されている)から選択される1または2個の基で置換されたアミノであり;そして好ましくはN−低級アルキルアミノ、例えばN−メチルアミノ、ヒドロキシ−低級アルキルアミノ、例えば2−ヒドロキシエチルアミノまたは2−ヒドロキシプロピル、低級アルコキシ低級アルキル、例えばメトキシエチル、フェニル−低級アルキルアミノ、例えばベンジルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルフェニルアミノ、低級アルカノイルアミノ、例えばアセチルアミノ、またはベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノを含む群から選択される置換基であり、ここで、該フェニル基は、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは特に、ニトロまたはアミノ、またはハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルまたはアミノカルボニルアミノでも置換されている。ジ置換アミノはまた、低級アルキレン−アミノ、例えばピロリジノ、2−オキソピロリジノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えばモルホリノまたは低級アザアルキレン−アミノ、例えばピペラジノまたはN−置換ピペラジノ、例えばN−メチルピペラジノまたはN−メトキシカルボニルピペラジノである。
【0028】
ハロゲンは、特にフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素、塩素または臭素である。
【0029】
エーテル化ヒドロキシは、特にC−C20アルキルオキシ、例えばn−デシルオキシ、低級アルコキシ(好ましい)、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシまたはtert−ブチルオキシ、フェニル−低級アルコキシ、例えばベンジルオキシ、フェニルオキシ、ハロゲン−低級アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシまたは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ、または1または2個の窒素原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリールで置換された低級アルコキシ、好ましくはイミダゾリル、例えば1H−イミダゾール−1−イル、ピロリル、ベンゾイミダゾリル、例えば1−ベンゾイミダゾリル、ピリジル、特に2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、特に2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、特に3−イソキノリニル、キノリニル、インドリルまたはチアゾリルで置換された低級アルコキシである。
【0030】
エステル化ヒドロキシは特に低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、低級アルコキシカルボニルオキシ、例えばtert−ブトキシカルボニルオキシまたはフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシ、例えばベンジルオキシカルボニルオキシである。
【0031】
エステル化カルボキシは特に低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニル、フェニル−低級アルコキシカルボニルまたはフェニルオキシカルボニルである。
【0032】
アルカノイルは、一次的にアルキルカルボニル、特に低級アルカノイル、例えばアセチルである。
【0033】
N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイルは、特に低級アルキル、フェニル−低級アルキルおよびヒドロキシ−低級アルキル、または低級アルキレン、オキサ低級アルキレンまたは所望により末端窒素原子で置換されていてもよいアザ低級アルキレンから独立して選択される1または2個の置換基で置換されている。
【0034】
0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基は、該ヘテロアリール基が式Iの残りの分子と結合している環において不飽和であるヘテロ環式基を意味し、好ましくは結合環、所望により何れかの縮合環において、少なくとも1個の炭素原子が窒素、酸素および硫黄から成る群から選択されるヘテロ原子と置き換わっており;該結合環が好ましくは5〜12個、より好ましくは5または6個の環原子を有している環を意味し;そしてこれは、非置換であるか、あるいはアリールの置換基として上記定義の基から選択される1個以上、特に1または2個の置換基、最も好ましくは低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシもしくはエトキシまたはヒドロキシで置換されていてもよい。好ましくは、該単環もしくは二環式ヘテロアリール基は、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。より好ましくは該単環もしくは二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル、例えば1H−イミダゾール−1−イル、ベンゾイミダゾリル、例えば1−ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、特に5−インダゾリル、ピリジル、特に2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、特に2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、特に3−イソキノリニル、キノリニル、特に4−もしくは8−キノリニル、インドリル、特に3−インドリル、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。本発明の好ましい態様において、ピリジル基は窒素原子に対してオルト位でヒドロキシによって置換されており、したがってピリジン−(1H)2−オンである対応する互変異性体の形態で少なくとも部分的に存在する。他の好ましい態様において、ピリミジニル基は2位と4位の両方でヒドロキシで置換されており、したがって多様な互変異性型、例えばピリミジン−(1H,3H)2,4−ジオンとして存在する。
【0035】
ヘテロシクリルは、特に窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される1または2個のヘテロ原子を有する5、6または7員ヘテロ環式系であり、これは不飽和または完全もしくは部分飽和であってよく、そして非置換であるか、あるいは特に低級アルキル、例えばメチル、フェニル−低級アルキル、例えばベンジル、オキソまたはヘテロアリール、例えば2−ピペラジニルで置換されていてもよく;ヘテロシクリルは、特に2−もしくは3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル、例えば2−もしくは3−モルホリニル、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニルまたは2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
【0036】
pyが3−ピリジルである式Iのピリミジルアミノベンズアミドおよびその製造方法は、2004年1月15日に公開されたWO 04/005281(ここに参照により本明細書に引用する)に記載されている。
【0037】
pyが3−ピリジルである式Iのピリミジルアミノベンズアミドの薬学的に許容される塩は、特にWO2007/015871に記載のものである。好ましい態様において、ニロチニブは塩酸塩一水和物形で使用する。WO2007/015870は、本発明に有用なニロチニブまたはその薬学的に許容される塩の多型を開示する。
【0038】
pyが3−ピリジルである式Iのピリミジルアミノベンズアミドは、経口、非経腸、例えば腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内もしくは直腸、または経腸を含む何れかの経路で投与することができる。好ましくは、pyが3−ピリジルである式Iのピリミジルアミノベンズアミドは、好ましくは1日用量50〜2000mgで経口的に投与する。ニロチニブの好ましい経口1日用量は、200〜1200mg、例えば800mgであり、単剤用量または複数回用量、例えば1日2回投与で投与する。
【0039】
本発明に有用なc−Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤は、Mini Rev. Med. Chem. 2008, 8(8), 755-66および本明細書で言及した文献に記載されている。本発明の好ましい態様において、JNK阻害剤は化学式
【化3】

を有するSP600125である。
【0040】
より広範な意味において、本発明は、(a)少なくとも1種のJNK阻害剤と(b)少なくとも1種PDGFR阻害剤またはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤に関する。
【0041】
用語「処置」は、本明細書において使用するとき、治療的処置および予防的処置を意味する。
【0042】
本発明は特に、MPNSTの処置用医薬組成物であって、本明細書に記載の組合せ剤を含む医薬組成物に関する。
【0043】
種、年齢、個体状態、投与形態および問題の臨床像に基づいて、有効用量、例えば約100〜1000mg、好ましくは200〜600mg、特に400mgの1日用量のイマチニブを、体重約70kgの温血動物に投与する。成人患者について、イマチニブ遊離塩基400mgに対応する1日出発用量が推奨され得る。イマチニブ遊離塩基400mgに対応する1日用量での治療に対する応答の評価の後、不十分な応答であった患者について、用量漸増が安全に考慮され、処置から利益を受け、制限的毒性が存在しない限り、患者を処置することができる。
【0044】
本発明はまた、MPNSTを有するヒト患者に薬学的有効量の本明細書に記載の組合せ剤をヒト患者に投与する方法に関する。好ましくは、イマチニブまたは式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはそれらの薬学的に許容される塩は1日1回投与する。本発明は特に、100〜1000mg、例えば200〜800mg、特に400−600mg、好ましくは400mgのイマチニブ遊離塩基に対応する1日用量のイマチニブメシレートを投与する当該方法に関する。
【0045】
コード番号、一般名または商品名で同定した活性剤の構造は、標準的概要書“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から入手することができる。その対応する内容を、ここに参照により本明細書に引用する。
【0046】
本明細書に記載の組合せ剤において使用する組合せ成分が単剤として市販されている形態で適用されるとき、その用量および投与形態は、特に記載のない限り、本明細書に記載の有利な効果を得るために、それぞれの市販の薬剤の添付文書において提供される情報に従って行うことができる。
【0047】
当業者は、上記有利な効果を得るためのさらに関連した試験モデルを選択することが十分に可能である。薬理活性は例えば、臨床試験で示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のc−Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤と(b)の4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミドまたは式I
【化1】

〔式中、
Pyは3−ピリジルを意味し、
は水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルキルを意味し;
は水素、所望により1個以上の同一または異なる基Rで置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;そして
はヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基または0、1、2または3個の環窒素原子と0または1個の酸素原子と0または1個の硫黄原子を含み、それぞれの場合において非置換であるか、あるいは一もしくは多置換された単環もしくは二環式ヘテロアリール基を意味し;
あるいはRとRが一体となって、4、5または6個の炭素原子を有し、所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、モノもしくはジ置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルでモノもしくはジ置換されていてもよいアルキレン;4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素原子と3または4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;または1個の窒素と3または4個の炭素原子を有し、該窒素が非置換であるか、あるいは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルで置換されたアザアルキレンを意味し;
は水素、低級アルキルまたはハロゲンを意味する〕
のピリミジルアミノベンズアミドまたはそれらそれぞれの薬学的に許容される塩を含む組合せ剤。
【請求項2】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
モノメタンスルホン酸塩形の4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミドを含む、請求項2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
基および記号が請求項1に定義の意味を有する式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項5】
ピリミジルアミノベンズアミドが4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである、請求項4に記載の組合せ剤。
【請求項6】
4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドがその塩酸一水和物形で使用される、請求項5に記載の組合せ剤。
【請求項7】
悪性末梢神経鞘腫瘍の処置用医薬組成物の製造のための、請求項1〜6の何れかに記載の組合せ剤の使用。
【請求項8】
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)を有するヒトを処置する方法であって、かかる処置を必要とするヒトにMPNSTに対して有効量の請求項1〜6の何れかに記載の組合せ剤を投与することを含む方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150238(P2010−150238A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−257674(P2009−257674)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【Fターム(参考)】