説明

情報保存方法

【課題】 情報保存デバイスに入りきらず、溢れて保持出来ない情報が存在し、基板交換などで引き継がれない。
【解決手段】 メインの不揮発メモリと、バックアップ用の不揮発メモリを備え、加えて、外部に存在する他の機器と通信を行うための外部インタフェースを備え、メインの不揮発メモリの情報のうちバックアップ用の不揮発メモリに格納されないあふれ情報については外部インタフェースを経由して他の機器に保存するように機器を構成し、メインの不揮発メモリを搭載した部材を交換した後に、あふれ情報を保持する他の機器を外部インタフェース経由で検索し、発見されたあふれ情報とバックアップ用の不揮発メモリの情報とを合わせて、交換された部材のメイン前記第一の不揮発メモリに書き込むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報保存方法に係り、特に機器故障時の情報継承に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組込み機器では、デバイスの動作に必要なパラメタやヒストリ情報など(以下、パラメタ等情報という)を機器内部に永続記憶しているので、故障により基板交換した場合に、前記パラメタ等情報を引き継ぎたいという要望がある。これに対して、特許文献1では、機器のパラメタ等情報を不揮発メモリに記録すると同時に外部記憶装置にもバックアップ記録しておき、機器の交換時には外部記憶装置のバックアップデータから不揮発メモリに戻す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−019729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保持しているパラメタ等情報を全てバックアップしようとすれば外部記憶装置の記憶容量は同じだけ必要である。しかし、外部記憶装置の容量には自ずと制限がある。従って、特許文献1の発明では、パラメタ等情報のうちでバックアップ可能サイズから溢れ出る情報は引き継ぐことができない。
【0005】
本発明は、バックアップ用メモリから溢れる情報をネットワークに存在する他の機器に退避し、基板交換時には、ネットワークを検索して、故障前の自らの情報を保持している機器を発見し、交換後の基板に書き戻すことで問題を解決しようとするものである。
【0006】
本発明は、前述の問題点に鑑み、切り離しにかかる画像汚損の可能性を少なくし、ユーザの利便性を向上させる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第一の情報保存方法は、機器の動作に関連した情報を保持する第一の不揮発メモリと、前記第一の不揮発メモリの情報の少なくとも一部を複写保持する第二の不揮発メモリとを備え、前記第一の不揮発メモリと前記第二の不揮発メモリは物理的に分離可能に構成された機器であって;前記機器の外部に存在する他の機器と通信を行うための外部インタフェースを備え、前記第一の不揮発メモリの情報のうち第二の不揮発メモリに格納されないあふれ情報については前記外部インタフェースを経由して他の機器に保存するように構成された機器において;前記第一の不揮発メモリを搭載した部材を交換した後に、前記あふれ情報を保持する前記他の機器を前記外部インタフェース経由で検索し、発見された前記あふれ情報と前記第二の不揮発メモリの情報とを合わせて前記第一の不揮発メモリに書き込むことを特徴とする情報保存方法である。本発明による第二の情報保存方法は、前記第一の情報保存方法において、自らの機能を他の機器が利用した際に、該機器に対してあふれ情報の保存を依頼し、その際には時刻情報を同時に保存する情報保存方法であって、前記あふれ情報が複数の機器で発見された場合には時刻情報を比較して最新の情報を選択使用することを特徴とする情報保存方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明の請求項1に対応する情報保存方法によれば、複写保持する第二の不揮発メモリに、保存すべき情報全てを保存する事が出来ない場合でも、第二の不揮発メモリに保存した情報と、他の機器に保存した情報を合わせて情報を復元する事で、コストの増加を伴わない、確実な情報復元が可能となる。請求項2に対応する情報保存方法によれば、多数の他の機器との接続で、複数の保存情報が発見された場合でも、確実に最新の情報を選択し、復元する事が可能なので、複数機器の中で利用される環境でも正確な情報の復元が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る印刷装置のブロック図。
【図2】本発明に係るホストコンピュータの内部構成を説明する図。
【図3】本発明に係る印刷装置のプリントエンジンの構成を説明する図。
【図4】本発明に係る保存される情報を保存場所に対応させて表記した図。
【図5】本発明に係る基板交換に備えたデバイス情報をバックアップする機構を、時系列に情報の流れを追いながら説明した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る印刷装置のブロック図である。同図において記号1は画像データを生成するホストコンピュータ、記号11は外部に存在する他の機器と通信を行う為の外部インターフェース、記号12は機器の動作に関連した情報を保持する、本体EEPROM、記号13は前記本体EEPROM12の情報の少なくとも一部を保持する、バックアップEEPROM、記号3はインクジェットプリントエンジン、記号14は、本体EEPROMの情報を読み書きする、操作パネルである。以下にそれぞれ内部を詳細に説明する。
【0011】
ホストコンピュータ1でユーザが印刷ジョブを生成すると、印刷データが生成され印刷装置に送信される。
【0012】
印刷装置では、操作パネル14によって設定された印刷設定情報が、本体EEPROM12に保存される。
【0013】
印刷装置は印刷データを受信すると、本体EEPROM12に保持されている印刷設定情報に従って、インクジェットプリントエンジン3を制御し、印刷物を生成する。
【0014】
バックアップEEPROM13は、本体EEPROM12とは物理的に分離可能に構成されている。本体EEPROM12が故障した場合には、バックアップEEPROM13との接続は外され、故障部品が交換された後、再び接続される。
【0015】
図2は本発明に係わるホストコンピュータの構成を説明する図である。
【0016】
同図において記号21はプリンタドライバ、記号22はバックアップユーティリティ、記号23はバックアップ情報ストレージ、記号24は外部インターフェースである。
【0017】
プリンタドライバ21は印刷ジョブを生成し、外部インターフェース24を介して印刷装置に印刷ジョブを送信する。
【0018】
バックアップユーティリティ22は印刷装置から受信した印刷装置の本体記憶情報を、バックアップ情報ストレージ23に記憶しておく。
【0019】
図3は本発明に係る印刷装置のプリントエンジンの構成を説明する図である。同図において記号31はキャリッジ、記号32はキャリッジをガイドするキャリッジシャフトである。キャリッジ31には不図示のインクジェットヘッドが搭載されており、不図示のキャリッジモータによって往復駆動される。記号33は被記録媒体、記号34は被記録媒体34を平面保持するためのプラテンである。被記録媒体33は不図示のLFローラによって把持され、キャリッジシャフト32と直交する方向に搬送される。記号35は該インクジェットヘッドの状態を維持するためのヘッドステーション、記号36は印刷中にヘッドの状態を維持するための予備吐出を行う予備吐ステーションである。ヘッドステーション35はインクジェットヘッドを吸引回復する機能、ヘッド表面を拭き取る機能、キャップする機能などを有している。印刷中にはキャリッジ31がヘッドステーション35の真上すなわち記号31Rの位置と、予備吐ステーション36の真上すなわち記号31Lの位置とで予備吐出動作を行う。これは、環境中に露出したインクに対する乾燥の影響を取り除くためである。従って、キャリッジ31の印刷中における移動範囲は予備吐出動作のために被記録媒体33の幅よりも広くなり、スループットを低下させる一因となっている。
【0020】
図4は本発明に係わる、保存される情報を保存場所に対応させて表記した図である。同図に置いて記号41は本体に記憶される全本体記憶情報。記号42はバックアップEEPROMに保存が可能なバックアップ可能情報。記号43は本体記憶情報の内、バックアップEEPROMには保存出来ない、あふれ情報。記号44は、バックアップEEPROMに保存出来なかったあふれ情報を含めて、外部にバックアップする為の外部バックアップ情報である。
【0021】
保存される情報には、情報の保有者である印刷装置を特定する為の、IPアドレスと装置のシリアル番号が保存されている。
【0022】
また、外部バックアップ情報には、最も新しい情報を特定する為に、IPアドレスと装置のシリアル番号に加えて、保存時刻が保存されている。
【0023】
図5は本発明に係わる、基板交換に備えたデバイス情報をバックアップする機構を、時系列に情報の流れを追いながら説明した図である。同図において
記号50は印刷ジョブを生成してプリンタにデータを送信する、ホストコンピュータの1つである。
【0024】
記号501はホストコンピュータ50に搭載されるプリンタドライバ、記号502はバックアップユーティリティ、記号503はデータを保存する為のHDDである。
【0025】
バックアップユーティリティ502は、プリンタから受信した本体記憶情報を、HDD503に保存する。
【0026】
また、プリンタから保存データの送信要求があった場合には、保存している情報をプリンタに送信する。
【0027】
他にも、この構成と同様な、記号51で表されるホストコンピュータ2、記号52で表されるホストコンピュータ3がある。
【0028】
記号53は印刷装置であるプリンタである。記号530はプリンタ53に内包される本体EEPROMである。記号531は、本体EEPROM53に保存されている、本体記憶情報である。
【0029】
記号532はプリンタ53に内包され接続されているが、着脱可能なバックアップEEPROMである。記号533はバックアップEEPROM532に保存されている、バックアップ保存情報である。
【0030】
図中の記号S501からS508は、上記図5で説明した構成要素が、時系列にどのように関連し、本発明を構成するのかを表すシーケンス番号である。
【0031】
まず、情報の保存フェーズについて説明する。この時の情報の流れを、図中の実線で示した矢印で示す。
【0032】
ホストコンピュータ50からプリンタ53に印刷ジョブが投入されると(ステップS501)、プリンタ53は印刷ジョブを元に印刷を行う。
【0033】
プリンタ53はジョブを印刷する際に、本体EEPROM530を更新する。
【0034】
印刷ジョブが終了すると、本体EEPROMに保存されている情報を、バックアップEEPROM532に保存する(ステップS502)。
【0035】
この時、本体EEPROMに保存されている全ての情報531を、バックアップEEPROMに保存する事は出来ないので、保存出来る情報だけを抽出し、バックアップ保存情報533としてバックアップEEPROM532に保存する。
【0036】
プリンタ53は、バックアップEEPROM532に、情報を保存した後、ジョブ送信元のホストコンピュータ50に内包されるバックアップユーティリティ502に対して、プリンタ本体記憶情報を送信する(ステップS503)。
【0037】
ホストコンピュータ50は、バックアップユーティリティ502によって受信したバックアップデータに、受信日時を付加して、HDD503に保存する。
【0038】
次に、基板交換後の情報の復元フェーズについて説明する。
【0039】
基板交換とは、対象となる電気基板が、破損・劣化などによって使用出来ない状態になった時に、別の動作可能な基板と交換する事を指す。
【0040】
この時、破損した電気基板に搭載され、取り外しが不可能な本体EEPROM530は、破損した基板と共に破棄される。
【0041】
もちろん保存されていた情報も破棄されてしまう。
【0042】
取りはずす時可能なバックアップEEPROMEPROM532は、基板交換前に一旦外され、交換後、再度接続する。
【0043】
このバックアップEEPROMについては、交換されていないので、基板交換前と同じ情報を保持している。
【0044】
基板交換された後、基板と共に破棄されてしまった本体EEPROM530の情報を、復元しなければならない。
【0045】
プリンタ53は、交換された基板で最初にブートする際に、自動的にバックアップEEPROM532に保持している情報を、交換後の基板に搭載されている本体EEPROM532にコピーし復元する。(ステップS504)
ただし、ステップS504では、バックアップEEPROMの容量が、全保存容量に対して少ない為に、必要な情報全てを復元する事が出来ない。あふれ出た情報についてはデフォルト値で初期化する。
【0046】
その後、プリンタ53はネットワーク上のホストコンピュータに対して,IPアドレスとシリアル番号をキーにしてブロードキャストによる保存情報の問い合わせをおこなう。
【0047】
各ホストコンピュータに内包されている、バックアップユーティリティ(例502)は問い合わせに呼応して自HDD(例503)上に該当する情報が保存されていればこれを問い合わせ元のプリンタに送付する(ステップS505)。
【0048】
プリンタ53は複数の応答があればその中で最も時刻情報が新しい情報を選択肢(ステップS506)し、本体EEPROM530に対して、復元する(ステップS507)。
【符号の説明】
【0049】
1 ホストコンピュータ
11 外部インターフェース
12 本体EEPROM
13 バックアップEEPROM
14 操作パネル
21 プリンタドライバ
22 バックアップユーティリティ
23 バックアップ情報ストレージ
24 外部インターフェース
3 インクジェットプリントエンジン
31 キャリッジ
32 キャリッジシャフト
33 被記録媒体
34 プラテン
35 ヘッドステーション
36 予備吐ステーション
37 シャーシ
41 本体記憶情報
42 バックアップ可能情報
43 あふれ情報
44 外部バックアップ情報
50 ホストコンピュータ1
501 プリンタドライバ
502 バックアップユーティリティ
503 HDD
51 ホストコンピュータ2
52 ホストコンピュータ3
53 プリンタ
530 本体EEPROM
531 本体記憶情報
532 バックアップEEPROM
533 バックアップ保存情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の動作に関連した情報を保持する第一の不揮発メモリと、前記第一の不揮発メモリの情報の少なくとも一部を複写保持する第二の不揮発メモリとを備え、前記第一の不揮発メモリと前記第二の不揮発メモリは物理的に分離可能に構成された機器であって;前記機器の外部に存在する他の機器と通信を行うための外部インタフェースを備え、前記第一の不揮発メモリの情報のうち第二の不揮発メモリに格納されないあふれ情報については前記外部インタフェースを経由して他の機器に保存するように構成された機器において、前記第一の不揮発メモリを搭載した部材を交換した後に、前記あふれ情報を保持する前記他の機器を前記外部インタフェース経由で検索し、発見された前記あふれ情報と前記第二の不揮発メモリの情報とを合わせて前記第一の不揮発メモリに書き込むことを特徴とする情報保存方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の情報保存方法において、自らの機能を他の機器が利用した際に、該機器に対してあふれ情報の保存を依頼し、その際には時刻情報を同時に保存する情報保存方法であって、前記あふれ情報が複数の機器で発見された場合には時刻情報を比較して最新の情報を選択使用することを特徴とする情報保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−123790(P2011−123790A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282635(P2009−282635)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】