説明

情報処理装置、外部装置、ホスト装置、及び通信方法

【課題】現行のメモリカード及びホストデバイスと互換性を保ちつつ一対多の通信を行う。
【解決手段】 複数のメモリカード20がデータ伝送のための信号線CLK,BS,DIOを共有してホストデバイス10に接続されており、ホストデバイス10はメモリカード20に対して識別子を割り当てる。ホストデバイス10は、メモリカード20にコマンドを送信するとき、コマンドの先頭部分にダミーデータを挿入し、コマンドの終端部分に識別子を挿入する。また、メモリカード20とホストデバイス10との間でデータ伝送を行う場合、データの先頭部分にダミーデータを挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、外部装置、ホスト装置、及び通信方法に関し、特に、ホスト装置のデータ伝送用の信号線を共有して装着される複数のメモリカード等の外部装置とを備える情報処理装置、このような情報処理装置に用いられる外部装置、ホスト装置、及び外部装置とホスト装置との間の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホスト装置に接続される外部装置として、いわゆるメモリカードと呼ばれるリムーバブルなカード型のメモリが知られている。メモリカードの一つであるメモリスティック(登録商標)は、内蔵するフラッシュメモリに静止画像データ、動画像データ、音声データ、音楽データ等の各種デジタルデータを格納することができる。このメモリスティック等のメモリカードは、ホスト装置としての例えば情報携帯端末、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、携帯電話機、オーディオ装置、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、その他の家電装置などの電子機器に装着される外部装置である外部記憶メディアとして機能する。
【0003】
ホストデバイスはメモリカードに記録されたデータの読み書きを行う。従来のメモリカード60とホストデバイス70を図16に示す。ホストデバイス70は、ホスト側インターフェース74を介してメモリカード60と接続される。この場合、具体的には、ホストデバイス70側に設けられたメモリカードスロットにメモリカード60が装着されることにより端子や接続ピン等が電気的及び機械的に接続されるものである。レジスタ75は、メモリカード60の内部状態、メモリカード60のコマンド動作のパラメータ、メモリカード60の管理情報などを記録する。ホストコントローラ73は、レジスタ75に記録された情報を元にメモリカード60を制御する。データ処理部76は、ホストコントローラ73の指示に従ってデータに所定の処理を施す。挿抜検出回路72は、ホストデバイス70にメモリカード60が装着されたことを信号線XINSの電圧の変化により検出する。ホストデバイス70側の信号線XINSにはプルアップ抵抗R1が設けられており、メモリカードが挿入されていないときには信号線XINSは“Highレベル”になっている。一方、信号線XINSに接続されるメモリカード60側の端子は接地されている。従って、メモリカード60を挿入すると、信号線XINSは“Lowレベル”になることにより、挿抜検出回路72は、信号線XINSのレベルの変化によってメモリカード60の挿入及び抜去を検出することができる。
【0004】
ホストデバイス70は、メモリカード60に対してコマンドを発行する。カードコントローラ62は、ホストデバイス70から受けたコマンドのパラメータやメモリカード60の内部状態、メモリカード60の管理情報などをレジスタ64に記録する。カードコントローラ62は、レジスタ64に記録した情報を参照しながらメモリ65の読み書き及びホストデバイス70との通信制御を行う。
【0005】
ホストデバイス70とメモリカード60とは、3本の信号線CLK,BS,DIOを用いて通信をしている。信号線CLKはクロックを供給し、信号線BSはバスの状態を示し、信号線DIOをデータの送受信に用いられる。信号線BSの状態には、状態0〜状態3の4つの状態が存在し、ライトプロトコルの場合、状態0では通信をせず、状態1ではプロトコル上のコマンドに相当するコードを送信し、状態2ではデータステートと呼ばれホストデバイス70がメモリカード60にデータを送信し、状態3ではメモリカード60のプロトコル処理状態を受信する。また、リードプロトコルでは、状態2でメモリカード60のプロトコル処理状態を受信し、状態3でメモリカード60からホストデバイス70にデータを送信する。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−53306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メモリカードとホストデバイスは以上のようなプロトコル(通信規格)に従ってデータの読み書きを行うが、このプロトコルはメモリカードとホストデバイスの一対一の通信を前提としたものであり、メモリカードを複数使用する場合にはメモリカードの枚数分のホストデバイスを用意する必要がある。
【0007】
従来、メモリカードの枚数分のホストデバイスを用意することなくとも、一対多の通信を行うシステムが考えられている。このようなデバイスを開発するとき、一対多の通信に対応したデバイスは、従来の一対一の通信に対応したデバイスとの互換性を確保する必要がある。
【0008】
本発明は、現行のメモリカード及びホストデバイスと互換性を保ちつつ一対多の通信を行うホストデバイス及びメモリカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる情報処理装置は、ホスト装置と、第1の通信規格に準拠してホスト装置と通信を行う第1の外部装置と、第1の通信規格を拡張した第2の規格に準拠してホスト装置と通信を行う第2の外部装置とを備える情報処理装置であって、ホスト装置は、該ホスト装置に装着された複数の外部装置が共有するデータ伝送用の信号線と、第2の外部装置に対して識別子を割り当て、割り当てた識別子を挿入したデータをデータ伝送用の信号線に出力するホスト側制御手段とを有し、第2の外部装置は、識別子を基にデータが自身宛てのデータであるかを判別する外部装置側制御手段を有する。
【0010】
本発明にかかる外部装置は、ホスト装置のデータ伝送用の信号線を共有して装着される外部装置であって、ホスト装置に装着されたとき、識別子の割り当てを該ホスト装置に要求し、ホスト装置から伝送されたデータに挿入された識別子と自身に割り当てられた識別子とを比較して、該データが自身宛てのデータであるかを判別する制御手段を有する。
【0011】
本発明にかかるホスト装置は、データ伝送用の信号線を共有する複数の外部装置が装着されるホスト装置であって、装着された外部装置からの識別子の割当要求を受信すると、外部装置に対して識別子を割り当て、識別子を挿入したデータをデータ伝送用の信号線に出力する制御手段を備える。
【0012】
本発明にかかる通信方法は、ホスト装置と、ホスト装置のデータ伝送用の信号線を共有して装着される複数の外部装置との通信方法であって、外部装置が該外部装置を識別するための識別子の割り当てをホスト装置に要求する割当要求工程と、ホスト装置が外部装置に対して識別子を割り当てる割当工程と、ホスト装置が識別子をデータに挿入してデータ伝送用の信号線に出力する出力工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の通信規格に準拠して通信を行う第1の外部装置と、第1の通信規格を拡張した第2の規格に準拠して通信を行う第2の外部装置が同一のホスト装置に装着される。ホスト装置は、データに識別子を挿入する。第2の外部装置は、識別子により自身宛てのデータであるかを判別する。また、ホスト装置は、第1の外部装置がエラー信号と誤認識するダミーデータをデータに挿入する。第1の外部装置は、このダミーデータにより自身宛てでないデータを受信することがない。
【0014】
また、第2の外部装置は、第1の外部装置がエラー信号と誤認識するダミーデータをデータに挿入する。このダミーデータにより、第1の外部装置が第2の外部装置からホスト装置に出力されたデータを誤って受信することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ホスト装置としてのホストデバイスと、ホストデバイスに制御される外部装置としてのメモリカードと、メモリカード制御システムとしての情報処理装置とに適用される。
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る情報処理装置、外部装置、ホスト装置、及び通信方法を適用した実施の形態としてのメモリカード及びメモリカードのホストデバイスについて説明する。本発明を適用したホストデバイスとメモリカードとは、一対多の通信を行う。この通信では、複数のメモリカードがホストデバイスから出力された一組の信号線を共有する。ホストデバイスは、どのメモリカードと通信をしているかを識別するために夫々のメモリカードに識別子を割り当てる。識別子の割り当ては、メモリカードの挿抜を検出する信号線上で行われる。
【0017】
識別子の割り当て処理は、メモリカードの挿入時に実行される。識別子が割り当てられたメモリカードとホストデバイスとは一対多の通信が可能となる。この状態を接続状態と記す。
【0018】
接続状態では、データやコマンドのほかにINT信号と呼ばれるメモリカードの状態を示す信号をやり取りする。INT信号は、メモリカードが自己の状態をホストデバイスに通知する信号である。従来、INT信号の送受信にはデータを送受信する信号線DIOを使用していた。一対一の通信ではホストデバイスの通信相手は特定されていたが、一対多の通信ではメモリカード制御システムでは、どのメモリカードからのINT信号であるかを識別するための機構が必要である。本実施の形態では、一対多の通信に対応したINT信号の送信プロトコルを規定する。
【0019】
なお、メモリカードには、一対多の通信に対応したメモリカード(以下、マルチ通信カードと記す)と、一対多の通信に対応しない従来のメモリカード(以下、シングル通信カードと記す)とが存在する。一対一の通信は既存の通信規格であり、一対多の通信は一対一の通信を拡張した通信規格である。既存の通信規格に対応したシングル通信カードは、一対多の通信に必要な機能、すなわち、識別子を取得する機能やINT信号を識別させる機能を備えていない。本発明を適用したメモリカード制御システムでは、マルチ通信カードとシングル通信カードとの互換性を保ちつつ通信を行う。
【0020】
図1は、ホストデバイス10及びメモリカード20の外観を示す。ホストデバイス10は、メモリカード20を装着する複数の装着部(いわゆるメモリカードスロット)11を備えている。図1の例では、ホストデバイス10側に4つの装着部11a,11b,11c,11dが設けられ、これらの装着部11a〜11dに同時に4つまでのメモリカード20a〜20dを装着することができる。メモリカード20にはホストデバイス10との電気的接続を行うための接続端子(図示せず)が設けられ、ホストデバイス10の装着部(メモリカードスロット)11には、メモリカード20の各接続端子と電気的接続を行うためのコネクタ(図示せず)が設けられている。装着部11にメモリカード20を挿入すると、装着部10内の上記コネクタの接点とメモリカード20の上記接続端子とが電気的に接続され、ホストデバイス10の各信号線とメモリカード20の各端子とが接続状態となる。装着部10からメモリカード20を抜き出すとホストデバイス10からメモリカード20との電気的接続が遮断される。
【0021】
ホストデバイス10にメモリカード20を装着することにより接続状態となる信号線としては、図2に示すように、データ伝送のための信号線CLK(クロック),BS(バスステート),DIO(データ入出力)と、メモリカード20の装着あるいは挿抜を検出するための信号線XINSが挙げられる。なお、メモリカードとしては、この他にも接続端子として例えば電源端子を有しカード装着時に電源供給線が接続されるようになっていてもよいが、本発明の要旨には関係しないため図示せず説明を省略する。
【0022】
ここで、複数のメモリカード20の間では、データ伝送のための信号線CLK,BS,DIOを共有しており、ホストデバイス10から出力された信号CLK,BS,DIOは全てのメモリカード20に出力される。また、本発明の第1の実施の形態では、メモリカードの挿抜を検出するための信号線XINSは、各メモリカード毎に独立に設けられている。すなわち、図2のN個のメモリカード20−1,20−2,・・・,20−Nは、それぞれ独立のカード挿抜検出用の信号線XINS1,XINS2,...,XINSNを介してホストデバイス10に接続されるようになっている。
【0023】
図3は、ホストデバイス10及びメモリカード20の具体的な構成例を示すブロック回路図である。この図3において、ホストデバイス10のホスト側送受信回路12には、複数、例えばN個のメモリカード20−1,・・・,20−Nの挿抜をそれぞれ独立に検出するための信号線XINS1,...,XINSNが接続され、各メモリカード20−1,・・・,20−Nのメモリ側送受信回路21−1,・・・,21−Nには、カード装着時にそれぞれ対応する信号線XINS1,...,XINSNが接続されるようになっている。ホスト側送受信回路12は、メモリカード20−1,・・・,20−Nの挿抜検出をそれぞれ独立に行うことができる。すなわち、各信号線XINS1,...,XINSNにはそれぞれプルアップ抵抗R1が設けられており、メモリカード20が挿入されていない信号線XINSは“Highレベル”になっている。
【0024】
一方、メモリカード20には、信号線XINSの接続端子にプルダウン抵抗R2が設けられている。メモリカード20を挿入すると、信号線XINSは、プルダウン抵抗R2によって“Lowレベル”になる。ホスト側送受信回路12は、N個の各信号線XINS1,...,XINSNの内の“Lowレベル”になった信号線XINSにメモリカード20が装着されたことを検出する。ホストデバイス10のホスト側送受信回路12は、このような信号線XINS1,...,XINSNのレベルの変化によってメモリカード20−1,・・・,20−Nの挿入及び抜去状態を検出する。
【0025】
本実施の形態におけるホストデバイス10のホスト側送受信回路12は、信号線XINSを用いて複数のメモリカードを識別するための識別子を割り当てるようにしている。信号線XINSを用いて識別子の割り当てが完了すると、信号線CLK,BS,DIOを用いたデータの送受信を開始することができる。
【0026】
図4を参照して、識別子の割当処理を説明する。この図4の例では、ホストデバイス10側の1つの装着部(メモリカードスロット)に対して装着されたメモリカードに着目して動作を説明しているが、複数の装着部のいずれについてもメモリカードの装着時には同様な処理が行われることは勿論である。まず、メモリカード20がホストデバイス10に装着されると(ステップS11)、メモリカード20のプルダウン抵抗により、対応する信号線XINSが“Lowレベル”に変化する(ステップS12)。ホストコントローラ13は、複数の信号線XINS1,...,XINSNの内の“Lowレベル”に変化した信号線XINSに対応するスロット(装着部)へのメモリカード20の挿入を検出し(ステップS13)、ホスト側インターフェース14の信号線CLKにカード装着確認信号としてのクロック信号を出力させる(ステップS14)。
【0027】
メモリカード20は、メモリ側インターフェース23によって信号線CLKから出力されるクロック信号を検出し識別子要求状態に遷移する。識別子要求状態において、メモリ側送受信回路21は、信号線XINSを使用して識別子の要求信号をホストデバイス10に送信する(ステップS15)。
【0028】
ホストデバイス10は、ホスト側送受信回路12によって識別子の要求信号を受信すると、メモリカード20に識別子を割り当てるための割当信号を生成して(ステップS16)、信号線XINSを使用して識別子の割当信号をメモリ側送受信回路21に出力する(ステップS17)。ホストデバイス10及びメモリカード20は、識別子の割当処理が完了すると、接続状態に遷移する。接続状態では、信号線CLK(クロック),BS(バスステート),DIO(データ入出力)を用いてデータの送受信を含む通信処理を行うことができる。
【0029】
一方、識別子の要求信号に対しホストデバイス10からの応答がない場合、メモリカード20は、ホストデバイス10が一対多の通信に対応していないと判定し、マルチ通信カードであってもシングル通信カードとして動作して一対一の通信を行う。なお、識別子の要求信号をホストデバイス10が正しく受信できない場面を想定し、識別子の要求信号を一定回数繰り返し、それでも応答がない場合にホストデバイス10が一対多の通信に対応していないと判定する機能を備えてもよい。また、信号線のノイズ等による送信エラーを防止するため、信号線XINSでやり取りされる信号にデータのエラー検出符号、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)を付加してもよい。
【0030】
図5は、識別子の割り当て処理において信号線XINSでやり取りされるデータの内容を示す。マルチ通信カードは、まず、識別の要求信号をホストデバイス10に出力する。ホストデバイス10は、識別子の割当信号をマルチ通信カードに出力する。
【0031】
図6を参照して従来の通信規格に従ったデータリード(ホストデバイス10がメモリカード20に記録された情報の読み出すこと)及びデータライト(ホストデバイス10がメモリカード20にデータを記録すること)の手順を説明する。メモリカード20の通信は、信号線DIOによってデータを送受信し、信号線BSが示すバスステートによって信号線DIOで伝送されるデータを識別している。バスステートは、図6に示すように、状態0,状態1,状態2,状態3の順に信号線BSが反転するごとに変化する。状態0の期間はアイドリング状態、状態1の期間はホストデバイス10がコマンドを発行するコマンド発行状態である。
【0032】
状態2と状態3は、データのリード時とライト時とで異なる。データのリード時は、図6(b)に示すように、状態2はハンドシェイク期間であり、メモリカード20がデータを出力できないときはビジー信号を返し、データが出力できるようになるとレディー信号を返す。そして、レディー信号を受信すると状態3でメモリカード20からホストデバイス10へのデータ転送を行う。
【0033】
一方、データのライト時は、図6(a)に示すように、状態2がデータ転送期間となる。このときデータ線DIOの駆動権はホストデバイス10に与えられる。状態3は、ハンドシェイク期間である。メモリカード20は、通信を正常終了できるか判断する。判断中は、ビジー信号を返し、判断結果が得られるとレディー信号を返す。
【0034】
本発明を適用したホストデバイス10は、状態0から状態1に移行したとき図7に示すようなコマンドをメモリカード20に発行する。このコマンドは、先頭部分にダミーデータが付加され、終端部分に識別子が付加されている。コマンドを受信したメモリカード20は、自己に割り当てられた識別子とデータに付加された識別子とを比較して自身宛てに発行されたコマンドを判断する。メモリカード20は、自身宛てのコマンドを受信するとそのコマンドに沿った動作を行う。
【0035】
ダミーデータは、シングル通信カードが意図的に通信エラーを発生させるようなデータである。メモリカード20は、通信エラーが発生すると2ステートアクセスモードに移行し、状態0と状態1を繰り返す。シングル通信カードは、ダミーデータが付加されたコマンドを受信すると通信エラーと判断して状態0のアイドリング状態に移行する。本発明を適用したホストデバイス10では、ダミーデータを付加することによって一対多の通信に対応していないシングル通信カードであっても他のメモリカードに出力されたデータを誤って受信することはない。
【0036】
ダミーデータの一例を紹介する。従来、ホストデバイス10は、「コマンド+コマンドの反転信号」というようにコマンドの後ろにコマンドの反転信号を付加している。メモリカード20は、コマンドを受信すると、コマンドとコマンドの反転信号の排他的論理和をとり、論理和が全て1となったときに、コマンドが正常に転送されたと判断している。排他的論理和が全て1とならないようなダミーデータを生成して、「ダミーデータ+コマンド」というようにコマンドの反転信号の代わりにダミーデータを付加すると意図的な転送エラーを発生させることができる。なお、このダミーデータは、システムに存在するシングル通信カードが誤ってコマンドを正常に受け付けないようなデータであればよい。
【0037】
また、図8に示すように、シングル通信カードが2ステートアクセスモードに移行すると、状態0,状態1,状態0,状態1を繰り返す。一方、マルチ通信カードとホストデバイス10との通信が正常に進んでいると、バスの状態は、状態0,状態1,状態2,状態3の順に変化する。マルチ通信カードがデータを出力する状態(状態3)と、シングル通信カードがコマンドを受信する状態(状態1)が重なり、マルチ通信カードが出力したデータをシングル通信カードがコマンドと誤認識するおそれがある。この誤認識を防止するために、マルチ通信カードが出力するデータにもダミーデータを付加する。マルチ通信カードから出力されるデータは、図9に示すように、先頭部分にダミーデータが付加され、終端部分にCRCが付加される。ダミーデータは、コマンドの反転信号を使用すればよい。
【0038】
次いで、データの通信終了後の割り込み信号(INT信号)について説明する。INT信号には、データの書き込み終了、読み出し終了、処理エラーの発生などメモリカード20の状態を示す信号である。メモリカード20の通信では、一連の通信が終了した後、各メモリカード20がINT信号をホストデバイス10に出力する。ホストデバイス10は、INT信号の内容を元にトラフィックの制御を行う。
【0039】
本発明を適用したホストデバイス10は、データ線を共有しているため、あるメモリカード20が通信している間は、他のメモリカード20がINT信号を出力することができない。また、信号線DIOを共有しているため、どのメモリカード20がINT信号の通知したかというメモリカード20を識別する情報が必要となる。
【0040】
この問題を解消するために、図2に示すように信号線XINSが各メモリカード20も独立して設けられているときには、信号線XINSを用いてINT信号の送受信を行う。これにより、信号線DIOが使用中であってもINT信号を出力することができ、信号線XINSの接続先を特定することでINT信号の通知元を識別することができる。
【0041】
図10に示すように複数のメモリカード40が信号線XINSを共有している場合には、ホストデバイス30が信号線XINSの駆動権を時分割で割り当てる。メモリカード40は、駆動権が割り当てられたタイミングでINT信号を出力する。図11は、この様子を模式的に示している。図11では、時刻t1でメモリカード40Aに駆動権を割り当て、時刻t2でメモリカード40Bに駆動権を割り当て、時刻t3でメモリカード40Cに駆動権を割り当て、時刻t4でメモリカード40Dに駆動権を割り当てている。各メモリカード40は、自身に駆動権が割り当てられた時刻にINT信号を通知する。INT信号の割り当て方法及び割り当て時間は、ホストデバイス30が決定することができる。ホストデバイス30は、例えば、メモリカード40の挿入した順、ホストデバイス30に対するアクセス頻度が高い順、仮想識別情報の決め打ちなどの要素をもとに決定することができる。
【0042】
次いで、ホストデバイスとメモリカードとがパラレル接続を行う方法及びパラレルに接続したときのINT信号の送信方法について説明する。図12は、メモリカードとホストデバイスとの接続関係を示す図である。ホストデバイス50には、複数、例えば、4つのメモリカード60A,60B,60C,60Dが接続できるようになっており、4つのメモリカード60A,60B,60C,60Dはデータを伝送するための4本の信号線DIO0,DIO1,DIO2,DIO3を共有している。
【0043】
まず、上述した構成のホストデバイス50とメモリカード60A,60B,60C,60Dとをパラレル接続させる手順について説明する。従来のメモリカードには、シリアル通信を行うメモリカードとパラレル通信を行うメモリカードとの2種類が存在する。また、ホストデバイスにもシリアル通信を行うホストデバイスとパラレル通信を行うホストデバイスとが存在する。メモリカード60は、ホストデバイス側がパラレル通信に対応していない場合を考慮してメモリカードを挿入した時点ではシリアル通信モードで起動する。
【0044】
ホストデバイス50は、メモリカード60が挿入されると、現在の通信を正常に完了させた後、全てのメモリカード60に対して通信モードを問い合わせる信号を出力する。この問い合わせ信号をバス状態初期化信号と呼ぶ。バス状態初期化信号は、従来のメモリカードの通信では利用されていない信号である。このような信号の一例として、信号線BSを規定のクロック数以下で変化させる方法がある。信号線BSを規定のクロック数以下で変化させると従来のメモリカードでは、通信エラーが生じたと誤認識する。従来のメモリカードは、通信エラーを検出すると2ステートアクセスモードに移行する。すなわち、バスステートが状態0に初期化される。
【0045】
メモリカード60は、バス状態初期化信号を受信すると、図13に示すようにホストデバイス50に対して自己の通信モードを出力する。ホストデバイス50は、全てのメモリカードがパラレル通信に対応している場合、パラレル通信を開始する。
【0046】
また、ホストデバイス50は、メモリカードがマルチ通信カードかシングル通信カードかの確認を行う。全てのメモリカードがパラレル通信に対応したマルチ通信カードである場合、ホストデバイス50は、図14(b)に示すようにデータやコマンドにダミーデータを挿入しない。マルチ通信カードとシングル通信カードが共存している場合には図14(a)に示すようにデータやコマンドにダミーデータを挿入する。図14(b)の状態では、ダミーデータを挿入しない分だけ一度の通信で送信するデータの容量を上げることができる。
【0047】
また、メモリカード60は、バス状態初期化信号を受信すると、バスステートを状態0に初期化する機能を備える。これにより、全てのメモリカード60のバスステートが一致する。
【0048】
次いで、信号線の場合とメモリカードとを対応付けてINT信号を通知する方法について説明する。この例では、図12に示した4つのメモリカード60A,60B,60C,60Dと4本の信号線DIO0,DIO1,DIO2,DIO3が一対一で対応付けられている。
【0049】
ホストデバイス50は、メモリカード60A,60B,60C,60Dの接続時に信号線の割り当てを行う。メモリカード60A,60B,60C,60Dは、割り当てられた信号線でINT信号を出力する。
【0050】
ホストデバイス50は、一連の通信が完了したとき、全てのメモリカード60A,60B,60C,60Dに対してINT信号の送信を要求する。INT信号の送信を要求する信号は、従来のメモリカードの通信では利用されていない信号である。このような信号の一例として、上述した信号線BSを規定のクロック数以下で変化させる信号がある。ここでは、信号線BSのクロック数を2回変化させる。
【0051】
マルチ通信カードは、信号線BSの変化を検出すると、図15に示すように、自身に割り当てられた信号線にINT信号を出力する。ホストデバイスは、マルチ通信カードのINT信号を一度に収集することができる。また、シングル通信カードは、信号線BSの変化を通信エラーであると誤認識し、バスステータスが状態1となる。状態1は、コマンド受信モードであり、データを出力することはない。そのため、シングル通信カードから出力される信号がINT信号にまぎれることはない。
【0052】
これまでは、ホストデバイス50に接続された全てのメモリカード60からホストデバイス50に一度に信号(INT信号)を送信する例を説明したが、反対にホストデバイス50からメモリカード60に一度に信号を送信することもできる。このような信号線の活用方法の一例として、メモリカード60に対する識別子の再割当がある。ホストコントローラ50は、まず、全てのメモリカード60に対して識別子の再割当を開始することを示す信号を出力する。このような信号の一例として、信号線BSを規定のクロック数以下で変化させる方法がある。
【0053】
メモリカード60は、信号線BSの変化を検出すると、識別子の再割当の受付状態に遷移する。ホストデバイス50は、信号線BSを変化させた後、メモリカード60Aの識別子を信号線DIO0、メモリカード60Bの識別子を信号線DIO1、メモリカード60Cの識別子を信号線DIO2、メモリカード60Dの識別子を信号線DIO3にのせて出力する。このようにして、複数のメモリカード60A,60B.60C,60Dに一度に情報を送信することができる。
【0054】
なお、信号線BSを規定のクロック数以下で変化させると、従来のメモリカードでは、通信エラーが生じたと誤認識する。従来のメモリカードは、通信エラーを検出すると2ステートアクセスモードに移行する。このようなメモリカードは、識別子が出力されているときに状態1、すなわち、ホストデバイスからのコマンドを待機する状態にある。ホストデバイスは、識別子の再割当データにダミーデータを挿入して、従来のメモリカードが識別子をコマンドと誤認識することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ホストデバイス及びメモリカードの外観を示す図である。
【図2】ホストデバイスとメモリカードとの接続関係を示す図である。
【図3】ホストデバイスとメモリカードの具体的な構成を示すブロック回路図である。
【図4】識別子の割当処理を説明する図である。
【図5】識別子の割当処理においてXINSで伝送される信号を示す図である。
【図6】従来の通信規格に従ったデータリード及びデータライトの手順を説明する図である。
【図7】一対多の通信でコマンドを送信するときの信号線の状態を示す図である。
【図8】正常な通信時と2ステートアクセスモードの通信時におけるバスステートの変化を示す図である。
【図9】一対多の通信でデータを送信するときの信号線の状態を示す図である。
【図10】メモリカードとホストデバイスの信号線の接続関係を示す図である。
【図11】信号線XINSの駆動権を時分割で割り当てる様子を模式的に示した図である。
【図12】パラレル接続可能なメモリカードとホストデバイスの信号線の接続関係を示す図である。
【図13】複数のメモリカードが夫々異なる信号線に自己の通信モードを出力する様子を模式的に示した図である。
【図14】ダミーデータを挿入したデータとダミーデータを挿入しないデータとを伝送するときの信号線の状態を示す図である。
【図15】ホストデバイスがメモリカードの識別子を一度に割り当てる様子を模式的に示した図である。
【図16】従来のホストデバイス及びメモリカードの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 ホストデバイス、11 装着部、12 ホスト側送受信回路、13 ホストコントローラ、14 ホスト側インターフェース、15 レジスタ、20 メモリカード、21メモリ側送受信回路、22 メモリコントローラ、23 メモリ側インターフェース、24 レジスタ、25 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と、
第1の通信規格に準拠して上記ホスト装置と通信を行う第1の外部装置と、
上記第1の通信規格を拡張した第2の規格に準拠して上記ホスト装置と通信を行う第2の外部装置とを備える情報処理装置であって、
上記ホスト装置は、該ホスト装置に装着された複数の外部装置が共有するデータ伝送用の信号線と、
上記第2の外部装置に対して識別子を割り当て、上記割り当てた識別子を挿入したデータを上記データ伝送用の信号線に出力するホスト側制御手段と
を有し、
上記第2の外部装置は、上記識別子を基に上記データが自身宛てのデータであるかを判別する外部装置側制御手段を有すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
上記ホスト側制御手段は、上記第1の外部装置がエラー信号と誤認識するダミーデータを上記データに挿入することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記外部装置側制御手段は、上記ホスト装置に装着された第1の外部装置がエラー信号と誤認識するダミーデータをデータに挿入し、上記ダミーデータが挿入されたデータを上記ホスト装置に出力することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記ホスト装置は、各外部装置に独立に接続される該外部装置の装着検出用の信号線を備え、
上記外部装置側制御手段は、上記装着検出用の信号線を用いて自己の動作状態を上記ホスト装置に出力すること
を特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
上記ホスト側制御手段は、上記第1の外部装置がエラー信号と認識する信号を上記信号線に出力し、
上記外部装置側制御手段は、上記エラー信号を入力すると自己の動作状態を上記ホスト装置に出力する動作状態出力手段を有する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
上記ホスト装置は、上記外部装置が共有する外部装置の装着検出用の信号線を備え、
上記ホスト側制御手段は、上記装着検出用の信号線の駆動権を時分割で外部装置に割り当て、
上記第2の外部装置は、上記駆動権が割り当てられたときに、上記装着検出用の信号線を使用して上記ホストに自己の状態を出力する動作状態出力手段を有する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
上記ホスト側制御手段は、上記第1の外部装置がエラー信号と認識する信号を出力し、
上記外部装置制御手段は、上記エラー信号を入力すると自身がシリアル通信に対応するかパラレル通信に対応するかを上記ホスト装置に通知する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項8】
上記外部装置が共有するデータ伝送用の信号線が複数存在し、
上記ホスト側制御手段は、上記複数の信号線の夫々に送信先となる外部装置を割り当て、
上記外部装置側制御手段は、自身に割り当てられた信号線で伝送されるデータを取得すること
を特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項9】
上記ホスト側制御手段は、新たな外部装置が装着されたとき、現在装着されている全ての外部機器に対して新たな識別子を割り当てることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項10】
上記外部装置は、メモリカードであることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項11】
ホスト装置のデータ伝送用の信号線を共有して装着される外部装置であって、
上記ホスト装置に装着されたとき、識別子の割り当てを該ホスト装置に要求し、
上記ホスト装置から伝送されたデータに挿入された識別子と自身に割り当てられた識別子とを比較して、該データが自身宛てのデータであるかを判別する制御手段
を有することを特徴とする外部装置。
【請求項12】
データ伝送用の信号線を共有する複数の外部装置が装着されるホスト装置であって、
装着された外部装置からの識別子の割当要求を受信すると、上記外部装置に対して識別子を割り当て、上記識別子を挿入したデータを上記データ伝送用の信号線に出力する制御手段を備えることを特徴とするホスト装置。
【請求項13】
ホスト装置と、上記ホスト装置のデータ伝送用の信号線を共有して装着される複数の外部装置との通信方法であって、
上記外部装置が該外部装置を識別するための識別子の割り当てを上記ホスト装置に要求する割当要求工程と、
上記ホスト装置が上記外部装置に対して識別子を割り当てる割当工程と、
上記ホスト装置が上記識別子をデータに挿入して上記データ伝送用の信号線に出力する出力工程と
を有することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−31234(P2006−31234A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207027(P2004−207027)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】