説明

情報処理装置、情報処理方法、および、プログラム

【課題】肌のつやに加えて肌の滑らかさを評価する。
【解決手段】本発明は、情報処理装置、情報処理方法、および、プログラムに関する。無反射モード画像取得部51は、無反射モード画像を取得し、反射モード画像取得部52は、反射モード画像を取得する。色補正処理部53は、無反射モード画像および反射モード画像の輝度レベルを補正する。減算処理部54は、色補正処理部53から供給された2つの画像の差分画像を生成する。演算処理部55は、差分画像の平均と、正規分布との乖離度(歪度または尖度)とを計算する。演算結果解析処理部56は、差分画像の平均と、歪度または尖度とから、被験者の肌のつやの質感および滑らかさを評価する情報を生成する。出力制御部57は、被験者の肌の状態の診断結果の、ディスプレイ、または、スピーカへの表示または音声出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源部とレンズ部にそれぞれ偏光フィルタを装着したデジタルカメラを用い、光源部に対するレンズ部の偏光フィルタの角度を平行させて撮影した皮膚画像と直交させて撮影した皮膚画像の2種類の皮膚画像を画像演算処理することにより得られる皮膚画像の拡散反射光の輝度値若しくは表面反射光の輝度値を指標として、皮膚のつや感の測定を行う技術があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212189号公報
【0004】
その結果、表面反射画像の平均輝度値とつや感の目視スコアとの相関係数rは、r=0.388であり、有意確率1%未満(p<0.01)の有意な相関関係を確認することができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、平均的なつや強さの他に、肌の滑らかさを評価するための技術は存在しなかった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、肌のつやに加えて肌の滑らかさを評価することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得手段と、画像取得手段により取得された無反射モード画像および反射モード画像に色補正を行う色補正手段と、色補正手段により色補正された反射モード画像の画素値から、色補正手段により色補正された無反射モード画像の画素値を減算する減算手段と、減算手段による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算手段と、乖離度演算手段により演算された平均値および乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
乖離度演算手段は、減算手段による減算結果のB成分の平均値、および、減算結果のB成分の分布の正規分布との乖離度を演算することができる。
【0009】
色補正手段は、画像取得手段により取得された無反射モード画像および反射モード画像のそれぞれのB成分のみに色補正を実行するようにすることができ、減算手段は、色補正手段により色補正された反射モード画像のB成分の画素値から、色補正手段により色補正された無反射モード画像のB成分の画素値を減算することができる。
【0010】
乖離度演算手段は、正規分布との乖離度として、分布の歪度を演算することができる。
【0011】
乖離度演算手段は、正規分布との乖離度として、分布の尖度を演算することができる。
【0012】
本発明の一側面は、制御部を有する情報処理装置において、制御部は、無反射モード画像および反射モード画像を取得し、取得された無反射モード画像および反射モード画像に色補正を行い、色補正された反射モード画像の画素値から、色補正された無反射モード画像の画素値を減算し、減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算し、演算された平均値および乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成することを特徴とする。
【0013】
本発明の一側面は、無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップの処理により取得された無反射モード画像および反射モード画像に色補正を行う色補正ステップと、色補正ステップの処理により色補正された反射モード画像の画素値から、色補正ステップの処理により色補正された無反射モード画像の画素値を減算する減算ステップと、減算ステップの処理による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算ステップと、乖離度演算ステップの処理により演算された平均値および乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一側面は、被験者の肌状態を評価するための処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップの処理により取得された無反射モード画像および反射モード画像に色補正を行う色補正ステップと、色補正ステップの処理により色補正された反射モード画像の画素値から、色補正ステップの処理により色補正された無反射モード画像の画素値を減算する減算ステップと、減算ステップの処理による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算ステップと、乖離度演算ステップの処理により演算された平均値および乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成ステップとを含む処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の一側面によれば、肌のつやに加えて肌の滑らかさを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した肌診断システムの構成例を示す図である。
【図2】図1のユーザ端末の構成例を示す図である。
【図3】目視のつや強度順位と各特徴量との相関について説明するための図である。
【図4】目視のつや強度順位と各特徴量との相関係数について説明するための図である。
【図5】正規分布との乖離度と肌の滑らかさとの関係について説明するための図である。
【図6】正規分布との乖離度と肌の滑らかさとの関係について説明するための図である。
【図7】差分平均および正規分布との乖離度を特徴量とした肌の評価の方法について説明するための図である。
【図8】肌診断処理を図1のユーザ端末において実行するための機能的構成例を示すブロック図である。
【図9】無反射モードと反射モードのそれぞれのR,G,B値と、チャートに対応するL*値の関係について説明するための図である。
【図10】反射モード画像と無反射モード画像との差分画像について説明するための図である。
【図11】減算処理部の処理について説明するための図である。
【図12】肌状態を示すための指標を得るためのグラフの一例について説明するための図である。
【図13】肌診断処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[肌診断システムの構成]
図1は、本発明を適用した肌診断システムの構成例を示す図である。
【0018】
肌状態測定装置11は、被験者としての顧客、または、カウンセラーとしての化粧品売り場の店員など(以下、個々に区別する必要がない場合、単に、ユーザと称する)が片手で把持し易い形態を有し、個体撮像素子(CCDまたはCMOS)からなる撮像部を有している。例えば被験者が肌状態測定装置11を持って、肌状態測定装置11の所定の部分(例えば顔の頬部分)に当てて所定の操作を行うことにより、その部分の、光源部に対するレンズ部の偏光フィルタの角度を直交させて撮影した皮膚画像(以下、無反射モード画像、PL(polarized light)画像と称する)、および光源部に対するレンズ部の偏光フィルタの角度を平行させて撮影した皮膚画像(以下、反射モード画像、NPL(Non-polarized light)画像と称する)が撮像され、その結果得られた撮像画像が取り込まれる。すなわち、肌状態測定装置11の撮像部は、例えば、2つの光学系を有し、一方のレンズには、偏光フィルタを用いて無反射モード画像を撮像し、他方のレンズには偏光フィルタを用いることなく反射モード画像を撮像するようにしたり、または、1つの光学系を有し、偏光フィルタの有無を変更することにより、反射モード画像、および、無反射モード画像を連写することができるものである。このように得られた2枚は、肌の同じ範囲を撮影したものであるが、反射モード画像は拡散反射光と鏡面反射光の双方を含んだ画像、無反射モード画像は鏡面反射光成分が除かれた拡散反射光のみの画像となる。
【0019】
肌状態測定装置11は、例えば有線で、ユーザ端末12と接続されており、取り込んだ撮像画像をユーザ端末12に送信する。
【0020】
ユーザ端末12は、例えばパーソナルコンピュータであり、肌状態測定装置11から送信されてきた被験者の皮膚部分の撮像画像に基づいて、所定の肌状診断処理を実行し、その結果を出力(表示または音声出力)する。この肌診断処理の詳細は後述する。
【0021】
[ユーザ端末12の構成]
図2は、ユーザ端末12の構成例を示すブロック図である。このユーザ端末12において、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、およびRAM(Random Access Memory)23は、バス24により相互に接続されている。
【0022】
バス24には、さらに、入出力インタフェース25が接続されている。入出力インタフェース25には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部26、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部27、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部28、肌状態測定装置11との通信を実現する通信部29、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア31を駆動するドライブ30が接続されている。
【0023】
以上のように構成されるユーザ端末12では、CPU21が、例えば、記憶部28に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース25及びバス24を介して、RAM23にロードして実行することにより、所定の処理(例えば、肌診断処理)が行われる。
【0024】
なおCPU21が実行するプログラムは、例えば、リムーバブルメディア31に記録されて、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0025】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア31をドライブ30に装着することにより、入出力インタフェース25を介して、記憶部28にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部29で受信し、記憶部28にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM22や記憶部28に、予めインストールしておくことができる。
【0026】
[肌診断処理を実行するための特徴量]
「肌のつや」という言葉には感覚的な要素も含まれており、どのような物理量を示しているのか曖昧な点もあるが、文献などでは、例えば、「物理的な光沢度」、「脂っぽくなく、みずみずしい感じが強く、はねかえるような光」などとして定義されている。これらを参考に、つやを鏡面反射光成分に由来するものとして捉えて、異なる偏光条件で撮像された肌の画像から得られる鏡面反射光成分の分布に基づいて、目視のつや評価と相関の高い特徴量を決定することを試みた。
【0027】
上述したように、肌状態測定装置11が取得する反射モード画像、および、無反射モード画像は、肌の同じ範囲を撮影したものであるが、反射モード画像は拡散反射光と鏡面反射光の双方を含んだ画像、無反射モード画像は鏡面反射光成分が除かれた拡散反射光のみの画像となる。すなわち、反射モード画像の画素値から無反射モード画像の画素値を引いた値が鏡面反射光成分であると考える。
【0028】
ここでは、目視のつや評価と相関の高い特徴量を決定するための一例として、専門家による肌のつやの強度の目視による評価と、肌の画像の鏡面反射光成分の分布から得られる各特徴量との相関を求めた。専門家による肌のつやの強度の評価は、20歳代乃至60歳代の女性の被験者40名の頬を撮影した40枚の画像について、肌診断の専門家3名の合議により、つやの強い順に1位乃至40位の順位をつけたものとした。また、肌の画像の鏡面反射光成分の分布は、異なる偏光条件で撮像された上述の被験者40名の肌の画像の鏡面反射光成分、すなわち、反射モード画像の画素値から無反射モード画像の画素値を引いた差分値の分布である。
【0029】
差分値の分布により得られる特徴量には、さまざまなものがあるが、ここでは、特に、平均値、標準偏差、歪度、尖度が、専門家による肌のつやの評価と相関が高いという結果を得ることができた。
【0030】
図3に、縦軸を目視のつや強度順位、横軸を特徴量とし、被験者40人の結果をプロットしたグラフの一例を示す。図3においては、グラフの縦軸で下側ほど、つやが強いことを示す。また、ここでは、一般的に目視の肌の美しさと高い相関を得る場合が多いと考えられる被験者の「年齢」を、差分値の分布により得られる各特徴量と比較するための特徴量としてあげている。図3の上段は、縦軸を目視のつや強度順位、横軸を年齢としたグラフ、図3中段は、縦軸を目視のつや強度順位、横軸を差分平均(差分値の分布の平均値)としたグラフ、図3下段は、縦軸を目視のつや強度順位、横軸を差分歪度(差分値の分布の歪度)としたグラフである。
【0031】
図3上段に示されるように、被験者の「年齢」は、目視のつや強度順位と非常に高い相関を有している。また、図3中段に示されるように、反射モード画像の画素値から無反射モード画像の画素値を引いた差分値の分布の平均も、目視のつや強度順位とある程度高い相関を有している。そして、また、図3下段に示されるように、反射モード画像の画素値から無反射モード画像の画素値を引いた差分値の分布の歪度も、目視のつや強度順位とある程度高い相関を有している。
【0032】
図4に、目視のつや強度順位、年齢、差分平均(差分値の分布の平均値)、差分標準偏差(差分値の分布の標準偏差)、差分歪度(差分値の分布の歪度)、および、差分尖度(差分値の分布の尖度)のそれぞれの相関係数を示す。ここで、注目するべきは、目視のつや強度順位に対する、年齢、差分平均、差分標準偏差、差分歪度、および、差分尖度の相関係数である。目視のつや強度順位と差分平均との相関係数は−0.45、目視のつや強度順位と標準偏差との相関係数は−0.37、目視のつや強度順位と歪度との相関係数は−0.31、目視のつや強度順位と尖度との相関係数は−0.35であった。
【0033】
図4に示されるように、目視のつや強度順位との相関が高いものは、差分平均と差分標準偏差である。しかしながら、差分標準偏差は、差分平均との相関が0.49と高めであり、評価としては重複する。また、歪度と尖度とは、いずれも、正規分布との乖離度に対応する特徴量であり、詳細は以下に説明するが、それらが現す肌の特徴はほぼ同様のものである。したがって、ここでは、評価には差分平均と、歪度または尖度を用いることとした。また、差分平均は肌のつやの強度、歪度と尖度は肌のつやのむら、すなわち、肌の滑らかさを表すと考えられる。
【0034】
次に、図5および図6を参照して、正規分布との乖離度が肌のつやのむら、すなわち、肌の滑らかさを表すことについて説明する。ここでは、正規分布との乖離度として、歪度を用いて説明する。
【0035】
目視でつやが強いとされる画像のうち、例えば、図5の上段のように、特に局所的な「てかり」がみられる肌の画像では、差分画像のヒストグラム、すなわち、鏡面反射光成分の分布に二つの山がある。図5の中段のように、ヒストグラムにおいて、分布の二つの山が一見して分かりにくい場合もあるが、この山は、図5の下段のように、ヒストグラムを波形分離すると非常に顕著に現れる。すなわち、分離された波形には、肌全体が持つつやを表す波形と、局所的なてかりによる波形との、性質の異なる二つの波形が現れる。これら性質の異なる二つの波形の二つの山の中心が離れている(すなわち、明るさが異なる)場合には、片方の山の高さが低いことが多く、全体としては裾をひく形となり、図5の中段のように、ヒストグラムの歪度が大きくなる。
【0036】
これに対して、例えば、図6上段のように、局所的な「てかり」がない、滑らかな肌の画像では、図6の中段のように、差分画像のヒストグラム、すなわち、鏡面反射光成分の分布が比較的正規分布に近く、歪度が小さい。この場合、図6の下段に示されるように、ヒストグラムを波形分離しても、それぞれの山の中心が大きく離れていない、すなわち、分離された波形のそれぞれにおいて、あまり明るさが異ならない。
【0037】
このように、歪度の大小は、肌のつやのムラ、すなわち、肌の滑らかさを表す。歪度が大きい場合、肌のつやにムラがある、すなわち、肌は滑らかではない。これに対して、歪度が小さい場合、肌のつやにムラが少ない、すなわち、肌は滑らかである。なお、ここでは、歪度と肌の滑らかさの関係について説明したが、上述したように、歪度と尖度とは、いずれも、正規分布との乖離度に対応する特徴量であるので、尖度と肌の滑らかさの関係は、歪度と肌の滑らかさの関係と同様であるので、その説明は省略する。
【0038】
次に、図7を参照して、差分平均と正規分布との乖離度を特徴量とした、肌の評価の方法について説明する。
【0039】
図7に、上述した40人の被験者の肌の撮像画像の鏡面反射光成分の分布の歪度を縦軸に、平均を横軸にプロットした場合の、グラフの各位置に対応する一部の被験者の肌の撮像画像を示す。グラフ右側(差分平均が大)に位置するものは全体的に鏡面反射光成分が強いが、上側(歪度が大)になるとつやのムラが多くなり、右上の領域は、肌が理想よりもてかり気味といえる。つやの場合は強ければよいものではなく、好ましい肌状態としては、グラフの右上端を除く右よりの位置が最適といえる。これより、つやの有無として平均の大きさを評価し、同時に歪度が閾値を超えないことも評価することで、歪度が大きすぎる場合は過剰な好ましくないつや、換言すれば、質感がオイリーな肌である、等の診断を行うことができる。
【0040】
[肌診断処理を実行するための機能的構成]
図8は、ユーザ端末12において肌診断処理を実行するための機能的構成例を示すブロック図である。換言すれば、図2のCPU21において所定のプログラムが実行されることにより、図8に示される機能が実現される。
【0041】
無反射モード画像取得部51は、肌状態測定装置11からユーザ端末12へ供給された、無反射モードの診断対象画像を取得し、色補正処理部53に供給する。
【0042】
反射モード画像取得部52は、肌状態測定装置11からユーザ端末12へ供給された、反射モードの診断対象画像を取得し、色補正処理部53に供給する。
【0043】
色補正処理部53は、無反射モード画像取得部51により取得された無反射モードの診断対象画像と、反射モード画像取得部52により取得された反射モードの診断対象画像とを色補正する。
【0044】
無反射モードの診断対象画像と、反射モードの診断対象画像とは、肌の同じ範囲を撮影したものであるが、反射モード画像は拡散反射光と鏡面反射光の双方を含んだ画像、無反射モード画像は鏡面反射光成分が除かれた拡散反射光のみの画像となる。すなわち、反射モード画像の画素値から無反射モード画像の画素値を引いた値が鏡面反射光成分であるが、無反射モードの撮影モードと反射モード撮影モードでは、照明条件やカメラの色バランスが変わる(モードによって独立に決める)場合が考えられるため、減算処理を行う前に、無反射モードの診断対象画像と反射モードの診断対象画像との明るさや色を合わせる必要がある。
【0045】
色補正処理部53における色補正においては、無反射モードと反射モードのそれぞれの撮影モードで、マクベスチャートのNo.19乃至24(白から灰を経由し黒にいたる部分)を撮影したものを補正の基準として用いた。図9に、無反射モードと反射モードのそれぞれのR,G,B値(撮影画像中央部での平均)と、チャートに対応するL*値の関係をグラフに示す。図9上段は、反射モードの場合のグラフであり、図9下段は、無反射モードの場合のグラフである。それぞれ、横軸のRGBについては、0乃至255の範囲を0.0乃至1.0にスケーリングしている。なお、チャート19乃至24に対応するL*は、順に96,81.35,66.67,51.57,35.99,および、20.54である。図9に示されるように、反射モードであっても無反射モードであっても、RGB値とL*の関係は非線形となる。これらは、通常Y=Xγの関係で表されることが多いが、色補正処理部53においては、計算の簡単化のため、二次式で近似したものを用いるものとする。
【0046】
反射モード画像についての補正式は、次の式(1)、式(2)、および、式(3)であらわされる。
【0047】
【数1】

・・・(1)
【0048】
【数2】

・・・(2)
【0049】
【数3】

・・・(3)
【0050】
無反射モード画像についての補正式は、次の式(4)、式(5)、および、式(6)であらわされる。
【0051】
【数4】

・・・(4)
【0052】
【数5】

・・・(5)
【0053】
【数6】

・・・(6)
【0054】
なお、通常のRGB画像の画素値の範囲0乃至255に対して、上の式では補正後のR’、G’、B’の最大値が96となる。補正後の値を画像として保存する場合は、画素値の範囲が整数の0乃至255である必要があるため、上述した式(1)乃至式(6)で変換して補正した後、さらに、2.3倍したものを補正後画像の画素値とする必要がある。
【0055】
図8に戻り、減算処理部54は、色補正処理部53により色補正が行われた反射モード画像の画素値から、色補正が行われた無反射モード画像の画素値を減算して、鏡面反射光成分を取得し、その輝度レベルのヒストグラムを生成する。
【0056】
図10を参照して、減算処理部54によって減算されて生成される、ある画像での反射モード画像と無反射モード画像との差分画像について説明する。図10の上段左側に差分画像のR成分の輝度レベルのヒストグラム、図10の上段右側に差分画像のG成分の輝度レベルのヒストグラム、図10の下段左側に差分画像のB成分の輝度レベルのヒストグラム、図10の下段右側にそれぞれの分布の平均と標準偏差の値を示す。それぞれの輝度レベルのヒストグラムにおいて、図の横軸の輝度レベルは、差分を計算した後に、輝度の高い方にオフセットしている。ただし、図10の下段右側の表においては、オフセット前の数値を示している。
【0057】
差分画像のRGBそれぞれの分布を調べると、B成分は、R成分およびG成分より標準偏差が大きく、比較的広い画素レベルにわたっており、分布の平均も、R成分およびG成分より、B成分のほうが高めの値となっていることが確認できた。これは、鏡面反射光を含む反射モード画像には、例えば、照明の色(白色光)などとしてRGBが比較的均等に含まれるのに対して、肌色を示す無反射モード画像では、B成分が少なく、差分をとるとRやGよりBのほうが高めの値になるためと思われる。
【0058】
すなわち、得られる差分画像において、RGBのそれぞれの成分のうち、分布の広いB成分が最も情報量が多い。したがって、減算処理部54におけるヒストグラムの生成処理においては、その演算処理を簡略化するために、RGB成分のうちB成分を取り出してヒストグラムを生成し、演算処理部55に供給し、鏡面反射光成分を示すものとして特徴量の計算を行わせても良い。または、さらに全体の演算量を減少させるために、色補正処理部53および減算処理部54において、B成分のみを色補正し減算処理するものとしても良い。
【0059】
例えば、図11に示されるように、減算処理部54に色補正後の反射モード画像と、色補正後の無反射モード画像が入力されたとき、減算処理部54は、その差分画像を生成し、そのうちのB成分のヒストグラムを生成し、演算処理部55に出力する。これにより、演算処理部55以降の処理も、B成分のみで行われるため、演算が簡略化され、処理速度が速くなる。
【0060】
図8に戻り、演算処理部55は、減算処理部54によって減算されて生成された差分画像から、肌のツヤと滑らかさの評価と相関の高い特徴量である、差分画像の画素値の平均、および、正規分布との乖離度を演算し、演算結果を演算結果解析処理部56に供給する。
【0061】
演算結果解析処理部56は、演算処理部55から供給された差分画像の画素値の平均、および、正規分布との乖離度に基づいて、被験者の肌の状態を示すための指標として、肌のつや感の評価を示す情報を生成し、出力制御部57に供給する。
【0062】
演算結果解析処理部56は、例えば、図12に示されるグラフ上に、演算処理部55から供給された差分画像の画素値の平均、および、正規分布との乖離度の値をプロットする。図12に示されるグラフは、図7を用いて説明した場合と同様にして、グラフ右側(差分平均が大)に位置するエリアは全体的に鏡面反射が強いが、上側(正規分布との乖離度が大)のエリアになるとつやのムラが多いことを示すため、右上のエリアにプロットされた場合、その被験者の肌は、てかり気味といえる。つやの場合は強ければよいものではなく、好ましい肌状態としては、グラフの右上端を除く右よりのエリアが最適といえる。演算結果解析処理部56は、図12に示されるような、肌状態を示すエリアが設けられたグラフに被験者の肌の撮像画像により得られた値をプロットすることにより、被験者の肌の状態を示すための指標、すなわち、肌の診断結果を生成し、出力制御部57に出力する。
【0063】
なお、図12のグラフは、肌状態を示すための指標を得るためのグラフの一例に過ぎず、エリアの設け方は、この限りではないことは言うまでもない。肌状態の評価は、例えば、被験者の年齢や流行などによっても異なり、肌状態を評価するに当たり、このグラフにおいて、例えば、エリアを異なる数だけ設けたり、曲線で区切ったりしてもよいことは言うまでもない。
【0064】
出力制御部57は、演算結果解析処理部56から供給された被験者の肌の状態の診断結果を、図1および図2を用いて説明したユーザ端末12の出力部27のディスプレイへ表示させるために、所定のフォーマット等を用いて、表示画像を生成し、その表示を制御する。または、出力制御部57は、演算結果解析処理部56から供給された被験者の肌の状態の診断結果を、図1および図2を用いて説明したユーザ端末12の出力部27のスピーカから音声出力させるために、ユーザに診断結果を通知するための音声データを生成し、その音声出力を制御する。
【0065】
このようにして、ユーザ端末12において、肌のつやに加えて肌の滑らかさを評価可能な肌診断処理が実行される。
【0066】
次に、図13のフローチャートを参照して、肌状態測定装置11およびユーザ端末12が実行する肌診断処理について説明する。
【0067】
ステップS1において、肌状態測定装置11は、被験者の肌の同じ部位の無反射モード画像および反射モード画像を撮像し、ユーザ端末12に出力する。ユーザ端末12は、通信部29から被験者の肌の同じ部位の無反射モード画像および反射モード画像の供給を受け、入出力インタフェース25およびバス24を介して、CPU21に供給する。図8を用いて説明した無反射モード画像取得部51は、無反射モード画像を取得して、色補正処理部53に供給する。反射モード画像取得部52は、反射モード画像を取得して、色補正処理部53に供給する。
【0068】
ステップS2において、色補正処理部53は、例えば、上述した式(1)乃至式(6)を用いて、無反射モード画像および反射モード画像の輝度レベルを補正し、補正された画像を減算処理部54に供給する。
【0069】
ステップS3において、減算処理部54は、色補正処理部53から供給された2つの画像のB成分の差分画像を生成し、演算処理部55に供給する。
【0070】
ステップS4において、演算処理部55は、差分画像の平均と、正規分布との乖離度(歪度または尖度)とを計算し、演算結果解析処理部56に供給する。
【0071】
ステップS5において、演算結果解析処理部56は、演算処理部55によって演算された、差分画像の平均と、歪度または尖度とを、例えば、図12を用いて説明したような、肌評価を行うためのエリアが設けられたグラフ上にプロットすることなどにより、被験者の肌のつやの質感および滑らかさを評価するための指標となる情報を生成し、被験者の肌の診断結果として、出力制御部57に供給する。
【0072】
ステップS6において、出力制御部57は、演算結果解析処理部56から供給された被験者の肌の状態の診断結果を、ユーザ端末12の出力部27のディスプレイへ表示させるために、所定のフォーマット等を用いて、表示画像を生成するか、または、ユーザ端末12の出力部27のスピーカから音声出力するために、ユーザに診断結果を通知するための音声データを生成する。そして、出力制御部57は、バス24および入出力インタフェース25を介して、出力部27のディスプレイ、または、出力部27のスピーカに、表示画像、または、音声データを出力して、その表示または音声出力を制御する。出力部27のディスプレイは、所定の表示方法で、評価結果を表示出力し、出力部27のスピーカは、評価結果を示す音声データを音声出力して、処理が終了される。
【0073】
このような処理により、肌状態測定装置11において、被験者の肌の同じ部位の無反射モード画像および反射モード画像が撮像され、ユーザ端末12において、肌のつやに加えて肌の滑らかさを評価可能な肌診断処理が実行され、その診断結果が表示されてユーザに提示される。
【0074】
なお、以上の処理においては、肌状態測定装置11とユーザ端末12が直接接続されているものとして説明したが、肌状態測定装置11とユーザ端末12とは、それぞれ離れたところに設置されていてもよく、例えば、所定のネットワークやリムーバブルメディアを介して、肌状態測定装置11により撮像された被験者の肌の同じ部位の無反射モード画像および反射モード画像をユーザ端末12に供給するものとしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
11 肌状態測定装置
12 ユーザ端末(情報処理装置)
21 CPU(制御部)
22 ROM
23 RAM
24 バス
25 入出力インタフェース
26 入力部
27 出力部
28 記憶部
29 通信部
30 ドライブ
31 リムーバブルメディア
51 無反射モード画像取得部(画像取得手段)
52 反射モード画像取得部(画像取得手段)
53 色補正処理部(色補正手段)
54 減算処理部(減算手段)
55 演算処理部(乖離度演算手段)
56 演算結果解析処理部(指標生成手段)
57 出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得手段と、
上記画像取得手段により取得された上記無反射モード画像および上記反射モード画像に色補正を行う色補正手段と、
上記色補正手段により色補正された上記反射モード画像の画素値から、上記色補正手段により色補正された上記無反射モード画像の画素値を減算する減算手段と、
上記減算手段による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算手段と、
上記乖離度演算手段により演算された上記平均値および上記乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記乖離度演算手段は、前記減算手段による減算結果のB成分の平均値、および、減算結果のB成分の分布の正規分布との乖離度を演算する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記色補正手段は、前記画像取得手段により取得された前記無反射モード画像および前記反射モード画像のそれぞれのB成分のみに色補正を実行し、
前記減算手段は、上記色補正手段により色補正された上記反射モード画像のB成分の画素値から、上記色補正手段により色補正された上記無反射モード画像のB成分の画素値を減算する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置において、
前記乖離度演算手段は、正規分布との乖離度として、分布の歪度を演算する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置において、
前記乖離度演算手段は、正規分布との乖離度として、分布の尖度を演算する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得ステップと、
上記画像取得ステップの処理により取得された上記無反射モード画像および上記反射モード画像に色補正を行う色補正ステップと、
上記色補正ステップの処理により色補正された上記反射モード画像の画素値から、上記色補正ステップの処理により色補正された上記無反射モード画像の画素値を減算する減算ステップと、
上記減算ステップの処理による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算ステップと、
上記乖離度演算ステップの処理により演算された上記平均値および上記乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成ステップと
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
被験者の肌状態を評価するための処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
無反射モード画像および反射モード画像を取得する画像取得ステップと、
上記画像取得ステップの処理により取得された上記無反射モード画像および上記反射モード画像に色補正を行う色補正ステップと、
上記色補正ステップの処理により色補正された上記反射モード画像の画素値から、上記色補正ステップの処理により色補正された上記無反射モード画像の画素値を減算する減算ステップと、
上記減算ステップの処理による減算結果の平均値および減算結果の分布の正規分布との乖離度を演算する乖離度演算ステップと、
上記乖離度演算ステップの処理により演算された上記平均値および上記乖離度を特徴量として、肌状態を評価するための指標を生成する指標生成ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−130808(P2011−130808A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290365(P2009−290365)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】