説明

情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法

【課題】特別なディスプレイの準備を必要とせずに、ディスプレイに表示された画像の色をプリンタで正確に印刷することができる情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法を提供する。
【解決手段】システム1のPC3は、所定の対象画像データで表される画像をプリンタ7に印刷させる際に、HDD23に保存された表示色プロファイルP1に基づいて、対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、HDD23に保存された印刷色プロファイルP2に基づいて、求められた上記色度値に対応する画像データを求め、求められたこの画像データをプリンタ7に送出する印刷制御部39を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、グラフィックデザインソフトでデザイナーが作成した画像をプリントアウトするのに利用される情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のグラフィックデザインでは、デザイナーがグラフィクデザインソフトを用いて、コンピュータに接続されたディスプレイモニタを見ながらデザイン作業を行うといった手法が多く用いられている。このような手法において、デザイナーがデザインに用いる画像の色を容易に選択できたり正確に指定できたりするように、例えば、特許文献1に示されたようなグラフィックデザイン支援用のシステムも多く存在する。
【特許文献1】特開2002−074380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなグラフィックデザインにおいては、デザインされた画像をプリンタで印刷したときに、印刷された色がディスプレイ上に表示された色と必ずしも一致しないという問題が存在している。従って、従来では、所望の画像印刷物を得ようとする際に、予め印刷された場合の色を推定しながら画像を編集するといったことが必要であった。
【0004】
上記問題の原因としては、ディスプレイ又はプリンタの一方或いは両方において、「測色的色再現(正確な色再現)」とは異なるいわゆる「好ましい色再現」を実現するような色処理が、内部で独自に設定されていることが挙げられる。しかも、そのような設定が機器ごとに独立に行われており、かつ機器メーカから公開されていない場合が多いので、上記の設定の影響を除去することは難しい。更に、そのような設定がなされていない場合でも、ディスプレイ及びプリンタの測色的色再現が完全でなければ同様の問題が発生し得る。しかしながら、ディスプレイを厳密に調整することは、多くの時間と経費を必要とする。また、この場合、デザイナーは、使い慣れたディスプレイや使い慣れたディスプレイ設定を使用できなくなる場合もあり、デザイナーの負荷が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、特別なディスプレイの準備を必要とせずに、ディスプレイに表示された画像の色をプリンタで正確に印刷することができる情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理装置は、画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを格納する表示色プロファイル格納部と、画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを格納する印刷色プロファイル格納部と、所定の対象画像データで表される画像をプリンタに印刷させる際に、表示色プロファイル格納部に格納された表示色プロファイルに基づいて、対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、印刷色プロファイル格納部に格納された印刷色プロファイルに基づいて、求められた色度値に対応する画像データを求め、求められた画像データをプリンタに送出する印刷制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この情報処理装置には、画像データに基づく画像が実際にディスプレイに画面表示されるときの表示画像の色度値を示す表示色プロファイル、及び実際にプリンタで印刷されたときの印刷画像の色度値を示す印刷色プロファイルが格納されている。そして、情報処理装置が、印刷対象の画像データをプリンタで印刷しようとする際には、印刷制御部によって以下のような処理が行われる。まず、印刷制御部では、表示色プロファイルに基づいて、上記対象画像データに対応する表示画像の色度値が求められる。すなわち、ここでは、対象画像データに基づいてディスプレイに表示されているはずの真の色度値が得られる。次に、印刷色プロファイルに基づいて、上記の真の色度値に対応する画像データが求められる。ここでは、上記の真の色度値を印刷画像で得るために、プリンタに送出すべき画像データが求められる。そして、求められたこの画像データが印刷制御部によりプリンタに送出されるので、プリンタでは、上記真の色度値を持つ印刷画像が印刷される。従って、この情報処理装置では、ディスプレイ上に画面表示された表示画像と同じ色度値の印刷画像を、プリンタで印刷させることができる。また、この情報処理装置では、ディスプレイの画面表示特性の影響及びプリンタの印刷特性の影響を打ち消すようにプリンタに送出すべき画像データが求められている。従って、特別なディスプレイの準備をしなくても、上記のような印刷を実現することができる。
【0008】
本発明の画像印刷システムは、画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを格納する表示色プロファイル格納部と、画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを格納する印刷色プロファイル格納部と、所定の対象画像データで表される画像をプリンタに印刷させる際に、表示色プロファイル格納部に格納された表示色プロファイルに基づいて、対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、印刷色プロファイル格納部に格納された印刷色プロファイルに基づいて、求められた色度値に対応する画像データを求め、求められた画像データをプリンタに送出する印刷制御部と、を有する情報処理装置と、情報処理装置からの画像データを受けて画像を画面表示するディスプレイと、情報処理装置からの画像データを受けて画像を印刷するプリンタと、ディスプレイに表示された表示画像の色度値を測定し情報処理装置に送出する測色計と、を備え、情報処理装置は、ディスプレイに送出している画像データと、測色計で測定された表示画像の色度値とを関連付けて表示色プロファイルを作成する表示色プロファイル作成手段を有することを特徴とする。
【0009】
このシステムの情報処理装置には、画像データに基づく画像が実際にディスプレイに画面表示されるときの表示画像の色度値を示す表示色プロファイル、及び実際にプリンタで印刷されたときの印刷画像の色度値を示す印刷色プロファイルが格納されている。そして、この情報処理装置が、印刷対象の画像データをプリンタで印刷しようとする際には、印刷制御部によって以下のような処理が行われる。まず、印刷制御部では、表示色プロファイルに基づいて、上記対象画像データに対応する表示画像の色度値が求められる。すなわち、ここでは、対象画像データに基づいてディスプレイに表示されているはずの真の色度値が得られる。次に、印刷色プロファイルに基づいて、上記の真の色度値に対応する画像データが求められる。ここでは、上記の真の色度値を印刷画像で得るために、プリンタに送出すべき画像データが求められる。そして、求められたこの画像データが印刷制御部によりプリンタに送出されるので、プリンタでは、上記真の色度値を持つ印刷画像が印刷される。従って、このシステムでは、ディスプレイ上に画面表示された表示画像と同じ色度値の印刷画像を、プリンタで印刷させることができる。また、このシステムの情報処理装置では、ディスプレイの画面表示特性の影響及びプリンタの印刷特性の影響を打ち消すようにプリンタに送出すべき画像データが求められている。従って、特別なディスプレイの準備をしなくても、上記のような印刷を実現することができる。
【0010】
更に、このシステムでは、情報処理装置からの画像データの送出によって表示画像をディスプレイに表示させ、測色計で表示画像の色度値を測定して、情報処理装置に測定した色度値を送出させることができる。そして、情報処理装置では、このとき送出した画像データと、測色計からの色度値を関連づけることで、表示色プロファイルを作成することができる。このような構成により、ディスプレイの経時的な変化や調整不調などで画面表示の色が変化した場合にも、その変化に合わせて表示色プロファイルをメンテナンスすることができる。
【0011】
本発明の画像印刷方法は、画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを、情報処理装置の表示色プロファイル格納部に格納させる表示色プロファイル格納ステップと、画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを、情報処理装置の印刷色プロファイル格納部に格納させる印刷色プロファイル格納ステップと、情報処理装置の印刷制御部が、所定の対象画像データで表される画像をプリンタに印刷させる際に、表示色プロファイル格納部に格納された表示色プロファイルに基づいて、対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、印刷色プロファイル格納部に格納された印刷色プロファイルに基づいて、求められた色度値に対応する画像データを求め、求められた画像データをプリンタに送出する印刷制御ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この画像印刷方法では、画像データに基づく画像が実際にディスプレイに画面表示されるときの表示画像の色度値を示す表示色プロファイル、及び実際にプリンタで印刷されたときの印刷画像の色度値を示す印刷色プロファイルが、情報処理装置に格納される。そして、情報処理装置が、印刷対象の画像データをプリンタで印刷しようとする際には、印刷制御部によって以下のような処理が行われる。まず、印刷制御部では、表示色プロファイルに基づいて、上記対象画像データに対応する表示画像の色度値が求められる。すなわち、ここでは、対象画像データに基づいてディスプレイに表示されているはずの真の色度値が得られる。次に、印刷色プロファイルに基づいて、上記の真の色度値に対応する画像データが求められる。ここでは、上記の真の色度値を印刷画像で得るために、プリンタに送出すべき画像データが求められる。そして、求められたこの画像データが印刷制御部によりプリンタに送出されるので、プリンタでは、上記真の色度値を持つ印刷画像が印刷される。従って、この画像印刷方法では、ディスプレイ上に画面表示された表示画像と同じ色度値の印刷画像を、プリンタで印刷させることができる。また、情報処理装置では、ディスプレイの画面表示特性の影響及びプリンタの印刷特性の影響を両方とも打ち消すようにプリンタに送出すべき画像データが求められている。従って、特別なディスプレイの準備をしなくても、上記のような印刷を実現することができる。
【0013】
本発明の画像印刷方法は、表示色プロファイルを作成する表示色プロファイル作成ステップを更に備え、表示色プロファイル作成ステップは、情報処理装置が、ディスプレイに画像データを送出して画像を表示させるステップと、測色計が、ディスプレイに表示された表示画像の色度値を測定し情報処理装置に送出させるステップと、情報処理装置が、ディスプレイに送出している画像データと、測色計で測定された表示画像の色度値とを関連付けて表示色プロファイルを作成するステップと、を有してもよい。
【0014】
この場合、この画像印刷方法の表示色プロファイル作成ステップでは、情報処理装置からの画像データの送出によって表示画像をディスプレイに表示させ、測色計で表示画像の色度値を測定して、情報処理装置に測定した色度値を送出させることができる。そして、情報処理装置では、このとき送出した画像データと、測色計からの色度値を関連づけることで、表示色プロファイルを作成することができる。このような構成により、ディスプレイの経時的な変化や調整不調などで画面表示の色が変化した場合にも、表示色プロファイル作成ステップを行い、上記変化に合わせて表示色プロファイルをメンテナンスすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法によれば、特別なディスプレイの準備を必要とせずに、ディスプレイに表示された画像の色をプリンタで正確に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る情報処理装置、画像印刷システム、及び画像印刷方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示すグラフィックデザイン支援システム(画像印刷システム)1は、デザイナーがグラフィックデザイン画像を作成する際に利用されるものである。このシステム1は、パーソナルコンピュータ(情報処理装置)3と、そのパーソナルコンピュータ(PC)3に接続されたディスプレイ5、プリンタ7、及び測色計9とを備えている。
【0018】
上記PC3には、画像を編集するためのグラフィックデザインソフトがインストールされている。このグラフィックデザインソフトは公知のものであり、このシステム1を使用するデザイナーは、PC3上でグラフィックデザインソフトを実行させることで、キーボード3a及びマウス3bを操作して、ディスプレイ5の画面表示を見ながらデザイン画像を作成する。また、デザイナーは、所定の操作によって、作成したデザイン画像をプリンタ7で印刷させることも可能である。なお、このプリンタ7としては、色域がディスプレイ5と同等のもの又はディスプレイ5よりも広いものが用いられる。
【0019】
このような画像の印刷の際、一般に、ディスプレイに表示される編集中の画像と、プリンタ用紙に印刷された画像とでは、画像の色が完全に一致しない場合が多い。ディスプレイ5の表示画像の色とプリンタ7の印刷画像の色とが異なると、デザイナーは、デザインの確認や伝達等を円滑に行うことができず、システム運用の利便性に欠ける。従って、ディスプレイ5の表示画像の色と、プリンタ7の印刷画像の色とは、完全に一致することが望まれる。
【0020】
そこで、このシステム1は、ディスプレイ5の表示画像の色と、プリンタ7の印刷画像の色とを一致させるべく構築されたものである。以下、このような印刷を実現するためのシステム1の構成について説明する。
【0021】
まず、PC3のハードディスク(HDD)23(図2,図4参照)には、プリンタ7の固有の特性を表す印刷色プロファイルP2が格納されている。この印刷色プロファイルP2は、PC3からプリンタ7に入力される画像データの階調値(入力階調値)と、入力された画像データに基づいてプリンタ用紙に印刷される実際の画像の色度値(印刷画像色信号値)との相関関係を表したものである。
【0022】
この印刷色プロファイルP2は、以下のようなプリンタ校正作業で作成される。まず、PC3から送出する画像データを変えながら、プリンタ7で多種類の色見本をプリンタ用紙上に印刷する。そして、各々の色見本の色度値を、PC3に接続された反射光用の測色計で測定し、測定したこの色度値を、プリンタ7に入力させた画像データの階調値に関連付けた印刷色プロファイルP2を作成していく。このような作業により、印刷色プロファイルP2が事前に準備され、データベースファイルとして予めHDD23に保存されている。
【0023】
続いて、システム1では、グラフィックデザインソフトを用いたデザイン作業に先だって、「表示色プロファイル」を作成するためのプロファイル作成支援ソフトが実行される。「表示色プロファイル」とは、システム1で使用するディスプレイ5の固有の画面表示特性を表すものであり、PC3からこのディスプレイ5に入力される画像データの階調値(入力階調値)と、入力された画像データに基づいてディスプレイ5に画面表示される実際の画像の色度値(出力画像色信号値)との相関関係を表したものである。
【0024】
このプロファイル作成支援ソフトの実行時において、図1〜図3に示すように、PC3のプロファイル処理部17は、画面表示制御部19を通じて階調値(RGB)の画像データを送出し、ディスプレイ5で1色からなる画像を表示させる(S302)。なお、詳細は後述するが、上記プロファイル処理部17及び画面表示制御部19は、一部又は全部がソフトウェア的に実現される機能的な構成要素である。上記画像が表示された状態で、システム1のユーザが、ディスプレイ5の画面に測色計9のプローブ9a(図1参照)を当てて、画面上に表示された画像のXYZ色度値(XYZ)を測定する(S304)。この測定値は、測色計9からPC3に入力される。また、このとき、画像の数カ所にプローブ9aを当てて測定値の平均を取れば、より正確な情報を収集することができる。
【0025】
次に、プロファイル処理部17は、階調値(RGB)と測色計9から得られた色度値(XYZ)とを関連付けてメモリ21に記憶させる(S306)。続いて、プロファイル処理部17は、送出する画像データを変えてS302からの処理を繰り返す。すなわち、プロファイル処理部17は、画面表示制御部19を通じて次の階調値(RGB)の画像データを送出し、ディスプレイ5で画像を表示させる(S302)。そして、上記同様の処理により、階調値(RGB)と測色計9から得られた色度値(XYZ)とを関連付けてメモリ21に記憶させる(S304,S306)。
【0026】
以上のような測定を、(RGB)〜(RGB)について所定回数n回繰り返せば(S308)、ディスプレイ5における入力階調値(RGB)iと、出力画像色信号値(XYZ)iとの相関関係を示すカーブ(Tone Reproduction Curve)が得られる。その後、プロファイル処理部17は、得られた上記n組の相関関係を、表示色プロファイルP1としてHDD23に書き込み、データベースファイルとして保存させる(S310)。
【0027】
なお、このような表示色プロファイルP1を、ディスプレイ5の導入直後に作成するだけでなく、定期的に更新してもよく、また、本システム1によるデザイン作業を開始する前に毎回更新してもよい。また、上記の手法では、階調値(RGB)〜(RGB)の1色の画像データを1つずつ順次ディスプレイ5に表示させているが、他の方法として、例えば、階調値(RGB)〜(RGB)の画像データを組み合わせたカラーチャートを1画面で表示させてもよい。また、測色計9としては、例えば、ディスプレイ測色計など光源用の測色計を好適に用いることができる。
【0028】
次に、図4及び図5を参照し、グラフィックデザインソフトの実行時におけるシステム1の動作について説明する。
【0029】
まず、このグラフィックデザインソフトの実行時におけるシステム1の機能的な構成について説明する。図4に示すように、PC3のグラフィック処理部35は、デザイナーによるキーボード3a及びマウス3bの操作に対応して、メモリ31上の画像データを編集する。また、グラフィック処理部35は、上記画像データを、画面表示制御部19を通じてディスプレイ5に送出し、画像を画面表示させる。また、グラフィック処理部35は、キーボード3a及びマウス3bの印刷操作に対応して、メモリ31上の画像データを、印刷制御部39を通じてプリンタ7に送出し、画像をプリンタ用紙に印刷させる。なお、詳細は後述するが、上記グラフィック処理部35、画面表示制御部19、及び印刷制御部39は、一部又は全部がソフトウェア的に実現される機能的な構成要素である。
【0030】
この印刷時においては、ディスプレイ5上に表示された画像と同じ色の画像を印刷すべく、上述の表示色プロファイルP1及び印刷色プロファイルP2を利用して以下のような処理を行っている。
【0031】
図4に示すように、デザイナーがデザイン画像を完成した時点では、メモリ31には、画像データαが格納されている(S502)。この画像データαの色は、RGB表色系の階調データとして表され、この画像データαの階調値を(RGB)dとする。ここで、デザイナーが所定の操作を行うと、グラフィック処理部35が、画像データαの印刷指示を印刷制御部39に送出する(S504)。
【0032】
次に、印刷制御部39では、HDD23に保存された表示色プロファイルP1が参照され、当該プロファイルP1上で入力階調値(RGB)dに関連付けられた出力画像色信号値が検索される(S506)。ここで検索された出力画像色信号値を(XYZ)cとする。次に、印刷制御部39は、XYZ色表系の出力画像色信号値(XYZ)cを、RGB色表系で表すためにXYZ−RGB変換し、出力画像色信号値(RGB)ccとする(S508)。ここで、出力画像色信号値(RGB)ccの意味を考えると、(RGB)ccは、階調値(RGB)dの画像データαが、PC3からディスプレイ5に送出された場合に、実際にディスプレイ5上に表示される表示画像のRGB色信号値を表している。
【0033】
続いて、印刷制御部39では、HDD23に保存された印刷色プロファイルP2が参照され、当該プロファイルP2上で印刷画像色信号値(RGB)ccに関連付けられた入力階調値が検索される(S510)。検索されたこの入力階調値を(RGB)pとする。ここで、入力階調値(RGB)pの意味を考えると、(RGB)pは、色信号値(RGB)ccの画像をプリンタ7で印刷させるために、プリンタ7に送出すべき画像データのRGB階調値を表している。
【0034】
次に、印刷制御部39が階調値(RGB)pの画像データβをプリンタ7に送出し(S512)、プリンタ7では、画像データβに基づいて、色信号値(XYZ)pcの画像がプリンタ用紙41上に印刷される(S514)。
【0035】
以上の通り、印刷制御部39は、S506〜S512の処理によって、グラフィック処理部35から入力された階調値(RGB)dの画像データαを、表示色プロファイルP1及び印刷色プロファイルP2に基づいて、階調値(RGB)pの画像データβに変換している。このとき、印刷制御部39では、まず、表示色プロファイルP1が参照され、画像データαに基づいてディスプレイ5に実際に表示されている画像の真の色信号値(XYZ)cが得られる。次に、印刷色プロファイルP2が参照されて、上記の真の色信号値(XYZ)cの画像を印刷するためにプリンタ7に送出すべき画像データβが求められる。そして、求められたこの画像データβがプリンタ7に送出されるので、プリンタでは、上記真の色信号値(XYZ)cを持つ印刷画像が印刷される。
【0036】
従って、上記処理S502〜S514が印刷制御部39で正常に行われると、最終的にプリンタ用紙41に印刷物として得られた画像の色信号値(XYZ)pcは、上述したディスプレイ5上の表示画像の色信号値(XYZ)cに等しくなる。以上の結果、デザイナーが、作成したデザイン画像を印刷した際には、ディスプレイ5上に表示されているデザイン画像の色と同じ色の画像がプリンタ用紙に印刷される。
【0037】
続いて、図2及び図4で示した機能的な各構成要素を実現するための、システム1のハードウェア構成について説明する。図6に示すように、システム1のPC3は、物理的には、CPU51、RAM53、HDD23、及びキーボード3a・マウス3bといった入力装置を備えている。更にPC3は、グラフィックコントローラ55と、プリンタ7や測色計9との外部バス経由の通信を制御する外部バスコントローラ57とを備えている。これら各装置は、内部バス59を介して相互に各種信号の入出力が可能な様に電気的に接続されている。
【0038】
そして、上述のプロファイル処理部17(図2参照)は、CPU51がプロファイル作成支援ソフトを実行することで実現され、画面表示制御部19はCPU51で実行されるOS(オペレーションシステム)のディスプレイ制御機能とグラフィックコントローラ55との協働で実現される。また、グラフィック処理部35(図4参照)は、CPU51がグラフィックデザインソフトを実行することで実現され、印刷制御部(図4参照)39は、CPU51で実行されるOSのプリンタ制御機能と外部バスコントローラ57との協働で実現される。メモリ21,31(図2,図4参照)は、RAM53により実現される。
【0039】
以上説明したようなグラフィックデザイン支援システム1によれば、ディスプレイ5上に画面表示された表示画像を、同一の色の印刷画像として再現すること(測色的色再現)ができる。また、このシステム1のPC3では、ディスプレイ5の画面表示特性の影響及びプリンタ7の印刷特性の影響を両方とも打ち消すようにプリンタ7に送出すべき画像データが求められている。従って、特別な特性をもつディスプレイや特別なディスプレイの設定を準備せずに、上記のような印刷を実現することができる。
【0040】
また、このシステム1は、PC3、ディスプレイ5、及びプリンタ7のそれぞれ固有の特性に影響されずに、上記作用効果を奏することができるので、高価な装置を準備する必要もなく、デザイナーが使い慣れた通常のPC、ディスプレイ、及びディスプレイ設定を、システム1に適用することができる。また、グラフィックデザインソフトの固有の特性にも影響されないので、デザイナーは、使い慣れたデザインソフトを選択することができる。従って、デザイナーにとっても当該システム1を導入する際の負担が小さい。また、このシステム1では、すでに蓄積されているデザイナーの作品をそのまま任意に使うことができる。
【0041】
また、このシステム1では、プロファイル作成支援ソフトにより、表示色プロファイルを作成することができる。従って、このシステム1のユーザが、ディスプレイ5の経時的な変化や調整不調などで画面表示の色が変化した場合にも、その変化に合わせて表示色プロファイルP1をメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るグラフィックデザイン支援システムの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】プロファイル作成支援ソフト実行時における図1のシステムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】プロファイル作成支援ソフト実行時における図1のシステムの処理を示すフローチャートである。
【図4】グラフィックデザインソフト実行時における図1のシステムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】画像印刷における図1のシステムの処理を示すフローチャートである。
【図6】図1のシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1…グラフィックデザイン支援システム(画像印刷システム)、3…パーソナルコンピュータ(情報処理装置)、5…ディスプレイ、7…プリンタ、9…測色計、23…HDD(表示色プロファイル格納部、印刷色プロファイル格納部)、39…印刷制御部、P1…表示色プロファイル、P2…印刷色プロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを格納する表示色プロファイル格納部と、
画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを格納する印刷色プロファイル格納部と、
所定の対象画像データで表される画像を前記プリンタに印刷させる際に、
前記表示色プロファイル格納部に格納された前記表示色プロファイルに基づいて、前記対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、
前記印刷色プロファイル格納部に格納された前記印刷色プロファイルに基づいて、求められた前記色度値に対応する画像データを求め、
求められた前記画像データを前記プリンタに送出する印刷制御部と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを格納する表示色プロファイル格納部と、
画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを格納する印刷色プロファイル格納部と、
所定の対象画像データで表される画像を前記プリンタに印刷させる際に、
前記表示色プロファイル格納部に格納された前記表示色プロファイルに基づいて、前記対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、
前記印刷色プロファイル格納部に格納された前記印刷色プロファイルに基づいて、求められた前記色度値に対応する画像データを求め、
求められた前記画像データを前記プリンタに送出する印刷制御部と、
を有する情報処理装置と、
前記情報処理装置からの画像データを受けて画像を画面表示するディスプレイと、
前記情報処理装置からの画像データを受けて画像を印刷するプリンタと、
前記ディスプレイに表示された表示画像の色度値を測定し前記情報処理装置に送出する測色計と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記ディスプレイに送出している画像データと、前記測色計で測定された表示画像の色度値とを関連付けて前記表示色プロファイルを作成する表示色プロファイル作成手段を有することを特徴とする画像印刷システム。
【請求項3】
画像データと、当該画像データをディスプレイに送出したときに当該ディスプレイで実際に表示される表示画像の色度値と、の相関関係を示す表示色プロファイルを、情報処理装置の表示色プロファイル格納部に格納させる表示色プロファイル格納ステップと、
画像データと、当該画像データをプリンタに送出したときに当該プリンタで実際に印刷される印刷画像の色度値と、の相関関係を示す印刷色プロファイルを、前記情報処理装置の印刷色プロファイル格納部に格納させる印刷色プロファイル格納ステップと、
前記情報処理装置の印刷制御部が、所定の対象画像データで表される画像を前記プリンタに印刷させる際に、
前記表示色プロファイル格納部に格納された前記表示色プロファイルに基づいて、前記対象画像データに対応する表示画像の色度値を求め、
前記印刷色プロファイル格納部に格納された前記印刷色プロファイルに基づいて、求められた前記色度値に対応する画像データを求め、
求められた前記画像データを前記プリンタに送出する印刷制御ステップと、
を備えたことを特徴とする画像印刷方法。
【請求項4】
前記表示色プロファイルを作成する表示色プロファイル作成ステップを更に備え、
前記表示色プロファイル作成ステップは、
前記情報処理装置が、前記ディスプレイに画像データを送出して画像を表示させるステップと、
測色計が、前記ディスプレイに表示された表示画像の色度値を測定し前記情報処理装置に送出させるステップと、
情報処理装置が、前記ディスプレイに送出している画像データと、前記測色計で測定された表示画像の色度値とを関連付けて前記表示色プロファイルを作成するステップと、を有することを特徴とする請求項3に記載の画像印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−234325(P2008−234325A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73167(P2007−73167)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】