説明

情報処理装置および方法、およびプログラム

【課題】データの消失を防止するとともに、異常温度から装置を保護することができるようにする。
【解決手段】電源スイッチ14Bは、電力を供給または停止するときオンまたはオフされる。電力供給部11は、電源スイッチ14Bを介して、各部に電力を供給する。動作制御部16には、電源スイッチ14Bのオン、オフに拘わらず、電力供給部11からの電力が供給されており、動作制御部16はソフトウェアに基づいて各部の動作を制御する。測定部17により異常温度が検出されたとき、動作制御部16は、異常温度が検出されてから、ハードディスクドライブ20の内部のキャッシュメモリに保持されている全てのデータの書き込みに必要な時間が経過した後、電力制御部18を制御し、ハードディスクドライブ20への電力の供給を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置および方法、およびプログラムに関し、特にデータの消失を防止するとともに、異常温度から装置を保護することができるようにした情報処理装置および方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータの動作が終了される場合、電源がオフされるが、ハードディスクへのデータの記録の途中で電源がオフされると、ハードディスクには不完全なデータしか記録されず、故障の原因となる。例えば、ハードディスクドライブに記録するデータを一時的に保持するキャッシュメモリ内にデータが保存されている状態で電源がオフされると、キャッシュメモリ内のデータがハードディスクに記録されずに消失してしまう。
【0003】
そこで特許文献1においては、次のような技術が提案されている。すなわち、特許文献1の発明においては、電源スイッチがオフされた場合、ハードディスクドライブへの電力の供給は直ちには遮断されない。抵抗とコンデンサよりなる遅延回路が設けられ、電源スイッチがオフされたとき発生された電源オフ信号が、遅延回路により一定の時間だけ遅延される。そして一定の時間が経過してからハードディスクドライブへの電力の供給が停止される。
【0004】
このようにしてキャッシュメモリ内のデータをハードディスクに記録する時間的余裕ができ、データの消失が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−333748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように電源スイッチがオフされたとき電源遮断を遅延させるだけでは、例えば装置の温度が異常に上昇した場合などに、緊急に動作を終了させ、装置を保護することが困難になる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、データの消失を防止するとともに、異常温度から装置を保護することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、電力を供給または停止するときオンまたはオフする電源スイッチと、前記電源スイッチを介して、各部に電力を供給する電力供給部と、前記電源スイッチのオン、オフに拘わらず、前記電力供給部からの電力が供給されており、ソフトウェアに基づいてキャッシュメモリを内蔵する主記憶装置への電力の供給を制御する動作制御部と、測定対象の温度を測定する測定部と、前記動作制御部により制御され、前記主記憶装置への前記電力供給部からの電力の供給を制御する電力制御部とを備え、前記動作制御部は、前記測定部により異常温度が検出されたとき、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させる情報処理装置である。
【0009】
前記動作制御部は、さらに前記測定部により異常温度が検出されたとき、直ちに前記電源スイッチをオフして、前記電源スイッチからの電力の供給を停止させることができる。
【0010】
前記電力制御部は、前記電力供給部からの電力を前記主記憶装置に供給する第1のFETと、前記動作制御部により制御され、前記第1のFETをスイッチングさせる第2のFETとを備えることができる。
【0011】
前記測定対象は、前記動作制御部であることができる。
【0012】
さらに前記動作制御部は、電源ボタンが一定の時間以上連続して操作されたとき、直ちに前記電源スイッチをオフして、前記電源スイッチからの電力の供給を停止させるとともに、前記電源ボタンが一定の時間以上連続して操作されたことが検出されてから、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させることができる。
【0013】
正常時に電力を供給する正常時用のバッテリと、非常時に電力を供給する非常時用のバッテリと、正常時用の前記バッテリと非常用の前記バッテリのいずれか一方を前記電源スイッチに接続する切り替えスイッチとをさらに備え、前記動作制御部は、前記切り替えスイッチを、正常時においては、正常時用の前記バッテリが前記電源スイッチに接続されるように切り替え、非常時においては、非常時用の前記バッテリが前記電源スイッチに接続されるように切り替えることができる。
【0014】
前記動作制御部は、常時電力の供給が停止したとき、非常時と判定することができる。
【0015】
本発明の一側面においては、動作制御部は、測定部により異常温度が検出されたとき、直ちに電源スイッチをオフして、電源スイッチからの電力の供給を停止させるとともに、主記憶装置に記録するために一時的に保持されているキャッシュメモリの全てのデータを、主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、電力制御部を制御し、電力供給部から主記憶装置への電力の供給を停止させる。
【0016】
本発明の一側面の情報処理方法、およびプログラムは、上述した本発明の一側面の情報処理装置に対応する情報処理方法、およびプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の一側面によれば、データの消失を防止するとともに、異常温度から装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の情報処理装置の一実施の形態の構成を示す回路図である。
【図2】ハードディスクドライブの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図3】動作制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】終了処理を説明するフローチャートである。
【図5】動作のタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図6】動作のタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図7】動作のタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図8】遅延時間設定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について、以下の順序で説明する。
[情報処理装置の構成]
[ハードディスクドライブの構成]
[動作制御部の機能的構成]
[情報処理装置の正常時の動作]
[情報処理装置の終了時の動作]
[異常温度検出時の動作のタイミング]
[電源ボタンの操作時の動作のタイミング]
[電力の供給がなくなった時の動作のタイミング]
[遅延時間の設定処理]
【0020】
[情報処理装置の構成]
図1は、本発明の情報処理装置の一実施の形態の構成を示す回路図である。情報処理装置1は、例えばパーソナルコンピュータにより構成される。この情報処理装置1は、電力供給部11、電源IC12、常時電源13、電源ボタン14A、電源スイッチ14B、端子15、動作制御部16、測定部17、電力制御部18、記憶部19、ハードディスクドライブ20、測定対象21、および操作部22により構成されている。
【0021】
電力供給部11は、AC電源31、バッテリ32,33、切り替えスイッチ34、検出部35、および切り替えスイッチ36を有している。AC電源31は、図示せぬコンセントなどに接続され、交流電流を整流して、直流電流を出力する。バッテリ32は、AC電源31が接続されているとき、AC電源31により充電され、AC電源31が接続されていないとき、AC電源31に代わって各部に電力を供給する。例えば携帯型のパーソナルコンピュータの場合、コンセントが存在しない場所で使用されることもある。バッテリ32は、このような場合に、AC電源31が接続されている場合と同様に、情報処理装置1を、例えば数時間程度、動作可能にする容量を有している。AC電源31が接続されないで使用されることは通常の使用状態であるので、バッテリ32は正常時用のバッテリである。
【0022】
一方、バッテリ33も、AC電源31が接続されているとき、AC電源31により充電され、AC電源31が接続されていないとき、AC電源31に代わって各部に電力を供給する。バッテリ33は、例えばバッテリ32を有しないデスクトップ型のパーソナルコンピュータにおいて、動作中、AC電源31が急に抜かれてしまったような非常時に、必要最低限の電力を供給する。あるいは、ノート型のパーソナルコンピュータがAC電源31が接続されていない状態で使用されている場合に、急にバッテリ32が取り外されてしまったような非常時に、必要最低限の電力を供給する。つまり、バッテリ33は、AC電源31とバッテリ32のいずれからも電力が供給されない状態になった非常時に機能する非常時用のバッテリである。この実施の形態の場合、非常時の必要最低限の電力とは、後述するハードディスクドライブ20において、キャッシュメモリ71に保持されているデータをハードディスク72に記憶させるのに必要な電力である。したがって、バッテリ33の容量はバッテリ32の容量より小さい。
【0023】
切り替えスイッチ34は、後述する動作制御部16により制御され、接点aまたは接点bのいずれかに切り替えられる。正常時、切り替えスイッチ34は、接点a側に切り替えられ、AC電源31またはバッテリ32の電力を各部に出力する。非常時、切り替えスイッチ34は、接点b側に切り替えられ、バッテリ33の電力を各部に出力する。
【0024】
検出部35はAC電源31がコンセントに接続されているか、つまり、電力を供給しているかを検出し、検出結果を動作制御部16に出力する。切り替えスイッチ36は動作制御部16により制御され、AC電源31がコンセントに接続されているとき、すなわち、電力を供給しているときオンされ、コンセントに接続されていないとき、すなわち、電力を供給していないときオフされる。
【0025】
電源IC12は、切り替えスイッチ34から供給された電圧が一定になるように調整する。常時電源13は電源IC12から供給される電力を電源スイッチ14B、動作制御部16、および電力制御部18に出力する。電源スイッチ14Bはオンされたとき、常時電源13から供給される電力を端子15から、図示せぬ各部(すなわち、情報処理装置1の各構成要素)に供給し、電力の供給を停止するときオフされる。動作制御部16と電力制御部18は、電源スイッチ14Bの入力端に接続されているので、電源スイッチ14Bのオン、オフに拘わらず、電力が常時供給されている。電源ボタン14Aは電源スイッチ14Bを強制的にオフするときユーザにより操作される。
【0026】
動作制御部16は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部19あるいはハードディスクドライブ20のハードディスク72(図2を参照して後述する)に記憶されているプログラムにしたがって、各部の動作を制御する。この動作制御部16には、電源スイッチ14Bのオン、オフに拘わらず、常時電源13から電力が常に供給されている。したがって、動作制御部16は常時動作可能である。この実施の形態の場合、動作制御部16は、ハードディスクドライブ20への電力の供給を制御する機能だけでなく、情報処理装置1の各部の動作を制御する機能を有しているが、後者の機能は図示せぬ他の動作制御部に分担させることもできる。
【0027】
操作部22は、スイッチ、ボタン、マウスなどにより構成され、ユーザにより操作されたとき、その操作に対応する制御指令信号を動作制御部16に出力する。測定部17は測定対象21の温度を検出し、その検出結果を動作制御部16に出力する。情報処理装置1の構成要素の何を測定対象21とするかは任意である。動作制御部16を測定対象21とすることもできるし、他のCPU(Central Processing Unit)を測定対象21としてもよい。構成要素の中で、動作制御部16が最も発熱量が大きく、高温となる場合、動作制御部16の温度を測定しておけば、その他の構成要素も高温状態の弊害から保護することができる。
【0028】
電力制御部18は動作制御部16により制御され、常時電源13からのハードディスクドライブ20への電力の供給を制御する。電力制御部18は、ダイオード51、抵抗52、nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)53、およびpチャネル型のFET54から構成されている。FET53,54は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FETにより構成することができる。
【0029】
ダイオード51のアノードは動作制御部16に接続され、カソードはFET53のゲートに接続されている。FET53の一方の信号電極であるソースは接地され、他方の信号電極であるドレインには抵抗52の一端とFET54のゲートが接続されている。FET54のソースは常時電源13と抵抗52の他端との接続点に接続され、ドレインはハードディスクドライブ20に接続されている。
【0030】
[ハードディスクドライブの構成]
図2は、ハードディスクドライブ20の一実施の形態の構成を示すブロック図である。主記憶装置であるハードディスクドライブ20は、キャッシュメモリ71とハードディスク72を内蔵している。キャッシュメモリ71は、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)の規格に基づき供給される、ハードディスク72に記録されるデータを一時的に保持する。キャッシュメモリ71は例えばRAM(Random Access Memory)などにより構成され、電源がオフされると、保持するデータを消失する。ハードディスク72にはキャッシュメモリ71に記憶されたデータが記録される。
【0031】
[動作制御部の機能的構成]
図3は、動作制御部16の機能的構成を示すブロック図である。動作制御部16は、判定部91、終了部92、指令部93、切り替え部94、取得部95、および設定部96を有している。これらは、ソフトウェアの各機能により構成され、必要に応じて各部同士でデータを授受することができる。
【0032】
判定部91は、各種の判定処理を行う。終了部92は、ソフトウエアの終了処理を実行する。指令部93は、各部に指令を出力する。切り替え部94はスイッチ、FETの切り換えを制御する。取得部95はユーザにより指定された遅延時間を取得する。設定部96は遅延時間を設定する。
【0033】
[情報処理装置の正常時の動作]
次に、情報処理装置1の正常時の動作について説明する。正常時、切り替えスイッチ34は動作制御部16により接点a側に切り替えられている。したがって、AC電源31からの電力が、切り替えスイッチ34の接点a、電源IC12、常時電源13を介して動作制御部16に供給されている。これにより動作制御部16は常に動作可能状態になっている。
【0034】
このとき、電源スイッチ14Bはオフされている。したがって端子15から各部には電力が供給されない。また動作制御部16は、FET53に対して論理Lの信号を出力しているので、FET53はオフしている。その結果、FET54のゲートには、常時電源13から抵抗52を介して論理Hの電圧が供給されるので、FET54はオフしている。したがってハードディスクドライブ20には電力が供給されない。
【0035】
AC電源31が図示せぬコンセントに接続され、電力を供給しているとき、検出部35によりそれが検出される。このとき動作制御部16は切り替えスイッチ36をオンする。従って、バッテリ32とバッテリ33は、AC電源31の負荷となり、AC電源31からの電力によりバッテリ32とバッテリ33は充電される。
【0036】
AC電源31がコンセントに接続されていない場合、動作制御部16は切り替えスイッチ36をオフする。従ってこのときは、バッテリ32からの電力のみが消費され、バッテリ33の電力は消費されない。これにより、非常時用のバッテリ33の電力が無駄に消費され、非常時に機能できなくなるようなことが防止される。
【0037】
所定のタイミング(例えば、後述する図5の時刻t11、図6の時刻t21、または図7の時刻t31)において、起動が指示されると、動作制御部16は電源スイッチ14Bをオンする。その結果、常時電源13が出力する電力が、端子15から測定対象21の他、各部に供給される。またこのとき動作制御部16はダイオード51を介してFET53のゲートに、論理Hの信号を出力する。これによりFET53がオンする。その結果、FET54のゲートはFET53を介して接地されるので、FET54はオンする。したがって常時電源13からの電力がFET54を介してハードディスクドライブ20に供給され、ハードディスクドライブ20は動作可能状態になる。
【0038】
この状態において、ハードディスク72へのデータ記録が指示されると、データがキャッシュメモリ71に供給され、一時的に保持される。保持されたデータは読み出され、ハードディスク72に記録される。
【0039】
[情報処理装置の終了時の動作]
次に終了時の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、終了処理を説明するフローチャートである。
【0040】
ステップS11において、動作制御部16の判定部91は異常温度が検出されたかを判定する。すなわち、測定部17は測定対象21の温度を常に測定し、その測定結果を出力している。判定部91はこの温度が、予め設定されている基準の温度より高い異常温度になったかを判定する。
【0041】
異常温度が検出されていない場合、ステップS12において判定部91は、電源ボタン14Aが予め設定されている一定時間以上操作されたかを判定する。すなわちユーザは、アプリケーションがフリーズするなどして情報処理装置1の動作を強制的に終了させたいとき、電源ボタン14Aを例えば4秒以上、連続して操作する。
【0042】
電源ボタン14Aが一定時間以上操作されていないとき、ステップS13において判定部91は、常時電力の供給が停止したかを判定する。すなわち、AC電源31およびバッテリ32が急に抜かれたり、取り外されると、常時電源13が出力する電圧が急激に低下する。判定部91は常時電源13の出力電圧が、予め定められている所定の基準電圧より低くなったかを判定する。
【0043】
常時電源13からの電力の供給が停止していないとき、ステップS14において判定部91は、その他の終了であるかを判定する。その他の終了とは、例えば、スタートボタン、シャットダウンボタン(いずれも図示せず)などが操作されて行われる、正常な終了である。
【0044】
ステップS11乃至S14においていずれもNOと判定された場合、すなわち、終了が指示されていない場合、処理はステップS11に戻り、ステップS11乃至S14の判定処理が繰り返される。
【0045】
ステップS14においてその他の終了が指示されたと判定された場合、すなわち、正常な終了が指示された場合、ステップS15において終了部92は、そのとき動作しているアプリケーションを正常に終了する。正常な終了であるので、後述するステップS22における強制的な終了の場合と異なり、パラメータ等は保存され、終了直前の状態は後に完全に復元することがでる。そしてステップS16において指令部93は、ハードディスクドライブ20に終了を指示する。このときハードディスクドライブ20においては、キャッシュメモリ71にデータが保持されているかを判定し、保持されていればそれを読み出し、ハードディスク72に全てのデータを記録させる。したがって、データの損失が防止される。
【0046】
ハードディスクドライブ20は、キャッシュメモリ71に未記録のデータが存在しない状態になったとき、終了処理完了の応答を動作制御部16に返す。そこで、ステップS17において判定部91はハードディスクドライブ20から完了の応答があったかを判定する。この処理は、応答があるまで繰り返される。
【0047】
ステップS17において完了の応答があったと判定されたとき、ステップS18において切り替え部94は、電源スイッチ14Bをオフする。これにより端子15から各部への電力の供給が停止される。また、ステップS19において切り替え部94は、FET54をオフする。すなわち、切り替え部94はいままでFET53のゲートにダイオード51を介して出力していた論理Hの信号を、論理Lの信号に切り替える。その結果、FET53がオフし、抵抗52を介してゲートに論理Hの信号が常時電源13から供給されるので、FET54はオフする。これによりハードディスクドライブ20への電力の供給が停止される。
【0048】
一方、ステップS11において、異常温度が検出されたと判定された場合、ステップS21において切り替え部94は、電源スイッチ14Bを直ちにオフする。すなわち、後述するように、ハードディスクドライブ20への電力の供給の遮断は遅延されるが、端子15から各部への電力の供給は、遅延されることなく、直ちに停止される。その結果、情報処理装置1の構成要素が熱により損傷を受けることが防止される。
【0049】
ステップS22において終了部92は、そのとき動作しているアプリケーションを強制的に終了する。強制的な終了であるために、ステップS15における正常な終了の場合と異なり、パラメータ等は保存されず、終了直前の状態は後に完全には復元することができない。アプリケーションが強制的に終了されるため、動作制御部16の負荷は小さくなる。その結果、動作制御部16の消費電力、したがって発熱量は少なくなり、温度は低下する。これにより動作制御部16の熱による損傷を防止することができる。
【0050】
次にステップS23において指令部93は、ハードディスクドライブ20に終了を指示する。この指示に基づいて、ハードディスクドライブ20は、そのときキャッシュメモリ71に記憶されている全てのデータをハードディスク72に記録させる。
【0051】
ステップS24において判定部91は、異常温度が検出されてから遅延時間が経過したかを判定する。予め設定されているこの遅延時間は、キャッシュメモリ71に容量一杯に記憶されている全てのデータをハードディスク72に記録するのに必要な時間に対応されている。
【0052】
例えば、SATAの転送速度を150MByte/sec、キャッシュメモリ71の容量を32MByteとすると、キャッシュメモリ71にフルにデータが記憶されているものとすると、全てのデータの転送にかかる時間は213.3msecとなる。そこで、この213.3msecが遅延時間として設定される。あるいは、シーク動作が入ることで記録時間が長くなることを考慮して、この遅延時間は400msにすることもできる。この遅延時間は、ユーザが設定することができる。この設定処理については、図8を参照して後述する。
【0053】
異常温度が検出されてから遅延時間が経過した後、ステップS25において、切り替え部94は、FET54をオフする。すなわち、動作制御部16は、いままでFET53のゲートにダイオード51を介して出力していた論理Hの信号を、論理Lの信号に切り替える。その結果、FET53がオフし、抵抗52を介してゲートに論理Hの信号が常時電源13から供給されるので、FET54はオフする。これによりハードディスクドライブ20への電力の供給が停止される。
【0054】
このように、ハードディスクドライブ20への電力の供給の停止は、異常温度が検出されてから、キャッシュメモリ71に最大限記憶されている全てのデータをハードディスク72に記録するのに必要な時間に対応する時間だけ遅延される。その結果、異常温度検出により動作が終了されても、キャッシュメモリ71に保持されているデータが消失してしまうようなことが防止される。
【0055】
また、ハードディスクドライブ20への終了指示後、ハードディスクドライブ20からの終了処理完了の応答を待たずに、一定の時間が経過したとき、直ちにハードディスクドライブ20への電力の供給は停止される。したがって、応答を待つ場合に較べて、より迅速に動作制御部16を保護することができる。
【0056】
また、ステップS12において、電源ボタン14Aが一定時間以上操作されたと判定された場合にも、ステップS11において異常温度が検出されたと判定された場合と同様の処理が実行される。したがって、この場合にも異常温度が検出された場合と同様の効果を実現することができる。
【0057】
さらにステップS13において常時電力の供給が停止したと判定された場合、ステップS20において切り替え部94は、切り替えスイッチ34を接点aから接点bに切り替える。これにより、バッテリ33からの電力が、切り替えスイッチ34、電源IC12、常時電源13を介して動作制御部16とハードディスクドライブ20に供給される。そして、その後、上述した場合と同様に、ステップS21乃至S25の処理が実行される。
【0058】
これにより、動作途中で、AC電源31が抜かれたり、バッテリ32が取り外されてしまった場合でも、データの消失を防止することができる。
【0059】
[異常温度検出時の動作のタイミング]
図5は、異常温度検出時の動作のタイミングを表すタイミングチャートである。以下この図5を参照して、異常温度検出時の動作についてさらに説明する。
【0060】
処理の開始が指示されると切り替え部94は、時刻t11において、電源スイッチ14Bをオンする(図5A)。その結果、端子15から各部に電力が供給される。
【0061】
また切り替え部94は、時刻t11において、ダイオード51を介してFET53をオンする(図5B)。その結果、FET54がオンする(図5C)。これによりハードディスクドライブ20に常時電源13からの電力が、FET54を介して供給される。
【0062】
例えば時刻t12において測定部17が異常温度を検出すると、測定部17は時刻t12から時刻t13の間、異常温度検出信号を出力する(図5D)。動作制御部16の切り替え部94は、異常温度検出信号を受信すると、直ちに電源スイッチ14Bをオフする。その結果、端子15からの電力の供給が時刻t12から停止される(図5A)。
【0063】
切り替え部94は異常温度検出の時刻t12から所定の時間T(上述したように、例えば400ms)が経過した時刻t14において、ダイオード51を介してFET53をオフする(図5B)。これにより、FET54がオフする(図5C)。この時刻t14においては、キャッシュメモリ71内の全てのデータのハードディスク72への記録処理が完了しているので、記録処理完了後に、ハードディスクドライブ20への電力の供給が停止されることになる。
【0064】
[電源ボタンの操作時の動作のタイミング]
図6は、電源ボタン14Aの操作時の動作のタイミングを表すタイミングチャートである。以下この図6を参照して、電源ボタン14Aの操作時の動作についてさらに説明する。
【0065】
処理の開始が指示されると切り替え部94は、時刻t21において、電源スイッチ14Bをオンする(図6B)。その結果、端子15から各部に電力が供給される。
【0066】
また切り替え部94は、時刻t21において、ダイオード51を介してFET53をオンする(図6C)。その結果、FET54がオンする(図6D)。これによりハードディスクドライブ20に常時電源13からの電力が、FET54を介して供給される。
【0067】
例えば時刻t22から時刻t23まで、4秒以上、電源ボタン14Aが操作されると、動作制御部16の切り替え部94は、直ちにハードディスクドライブ20に終了を指示するとともに、電源スイッチ14Bをオフする(図6B)。その結果、端子15からの電力の供給が時刻t23から停止される。
【0068】
切り替え部94は終了指示の時刻t23から所定の時間T(上述したように、例えば400ms)が経過した時刻t24において、ダイオード51を介してFET53をオフする(図6C)。その結果、FET54がオフする(図6D)。これにより、キャッシュメモリ71内の全てのデータのハードディスク72への記録処理が完了した後、ハードディスクドライブ20への電力の供給が停止される。
【0069】
[電力の供給がなくなった時の動作のタイミング]
図7は、動作途中で、AC電源31とバッテリ32からの電力の供給がなくなった時の動作のタイミングを表すタイミングチャートである。以下この図7を参照して、動作途中で、AC電源31とバッテリ32からの電力の供給がなくなった時の動作についてさらに説明する。
【0070】
処理の開始が指示されると切り替え部94は、時刻t31において、電源スイッチ14Bをオンする(図7B)。その結果、端子15から各部に電力が供給される。
【0071】
また切り替え部94は、時刻t31において、ダイオード51を介してFET53をオンする(図7C)。その結果、FET54がオンする(図7D)。これによりハードディスクドライブ20に常時電源13からの電力が、FET54を介して供給される。
【0072】
例えば時刻t32において、AC電源31とバッテリ32からの電力の供給がなくなった時、動作制御部16の切り替え部94は、直ちにハードディスクドライブ20に終了を指示するとともに、電源スイッチ14Bをオフする(図7B)。その結果、端子15からの電力の供給が時刻t32から停止される。
【0073】
切り替え部94は時刻t32において、切り替えスイッチ34を接点aから接点bに切り替える(図7A)。これにより、以後、バッテリ33から動作制御部16とハードディスクドライブ20に電力が供給される。
【0074】
さらに切り替え部94は、AC電源31とバッテリ32からの電力の供給がなくなった時刻t32から所定の時間T(上述したように、例えば400ms)が経過した時刻t33において、ダイオード51を介してFET53をオフする(図7C)。その結果、FET54がオフする(図7D)。これにより、キャッシュメモリ71内の全てのデータのハードディスク72への記録処理が完了した後、ハードディスクドライブ20への電力の供給が停止される。
【0075】
さらに切り替え部94は時刻t33において、切り替えスイッチ34を非常時の接点bから元の正常時の接点aに切り替える。
【0076】
[遅延時間の設定処理]
本実施の形態においては、図4のステップS24における遅延時間はユーザが任意に設定することができる。この遅延時間の設定処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
図8は、遅延時間設定処理を説明するフローチャートである。この処理は、情報処理装置1を初めて使用するとき実行されるか、あるいは、情報処理装置1の製造時において、メーカにより予め実行される。
【0078】
ステップS41において取得部95は、遅延時間を取得する。すなわち、ユーザは、操作部22を操作して、異常温度が検出された場合に付与する遅延時間を入力する。取得部95は入力された遅延時間の値を取得する。
【0079】
ステップS42において設定部96は、遅延時間を設定する。すなわち、ステップS41で取得された遅延時間が記憶部19に記憶される。上述したように、図4のステップS24において判定される遅延時間としては、このようにして設定された遅延時間が使用される。
【0080】
以上のように、この実施の形態においては、遅延時間をソフトウェアにより設定するようにした。遅延回路を、例えば抵抗とコンデンサよりなるハードウェアにより構成することも理論的には可能である。しかしながら、適切な遅延時間はハードディスクドライブ20の種類により変化するため、遅延回路をハードウェアにより構成すると、ハードディスクドライブ20毎に異なる遅延回路を用意する必要が生じ、コスト高となる。遅延時間をソフトウェアにより設定する場合には、設定時間をハードディスクドライブ20に対応して設定するだけでよいので、設計の自由度が向上する。つまり、ハードディスクドライブ20の設計変更にも対応が容易となり、低コスト化することができる。また遅延時間をより正確な値に設定することができるので、考慮する余裕を短くすることができ、結果的に、遅延時間を短くすることができる。
【0081】
また、以上においては、ハードディスクドライブ20を主記憶装置としたが、内蔵するキャッシュメモリに一時的に保持したデータを記憶媒体に記憶させる構成の他の主記憶装置にも本発明は適用することができる。キャッシュメモリからデータを転送する記憶媒体も、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなど任意である。
【0082】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 情報処理装置, 11 電力供給部, 14A 電源ボタン, 14B 電源スイッチ, 16 動作制御部, 17 測定部, 18 電力制御部, 20 ハードディスクドライブ, 71 キャッシュメモリ, 72 ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給または停止するときオンまたはオフする電源スイッチと、
前記電源スイッチを介して、各部に電力を供給する電力供給部と、
前記電源スイッチのオン、オフに拘わらず、前記電力供給部からの電力が供給されており、ソフトウェアに基づいてキャッシュメモリを内蔵する主記憶装置への電力の供給を制御する動作制御部と、
測定対象の温度を測定する測定部と、
前記動作制御部により制御され、前記主記憶装置への前記電力供給部からの電力の供給を制御する電力制御部と
を備え、
前記動作制御部は、前記測定部により異常温度が検出されたとき、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させる
情報処理装置。
【請求項2】
前記動作制御部は、さらに前記測定部により異常温度が検出されたとき、直ちに前記電源スイッチをオフして、前記電源スイッチからの電力の供給を停止させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記電力制御部は、
前記電力供給部からの電力を前記主記憶装置に供給する第1のFETと、
前記動作制御部により制御され、前記第1のFETをスイッチングさせる第2のFETと
を備える請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記測定対象は、前記動作制御部である
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
さらに前記動作制御部は、電源ボタンが一定の時間以上連続して操作されたとき、直ちに前記電源スイッチをオフして、前記電源スイッチからの電力の供給を停止させるとともに、前記電源ボタンが一定の時間以上連続して操作されたことが検出されてから、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させる
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
正常時に電力を供給する正常時用のバッテリと、
非常時に電力を供給する非常時用のバッテリと、
正常時用の前記バッテリと非常用の前記バッテリのいずれか一方を前記電源スイッチに接続する切り替えスイッチと
をさらに備え、
前記動作制御部は、前記切り替えスイッチを、正常時においては、正常時用の前記バッテリが前記電源スイッチに接続されるように切り替え、非常時においては、非常時用の前記バッテリが前記電源スイッチに接続されるように切り替える
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、常時電力の供給が停止したとき、非常時と判定する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
電力を供給または停止するときオンまたはオフする電源スイッチと、
前記電源スイッチを介して、各部に電力を供給する電力供給部と、
前記電源スイッチのオン、オフに拘わらず、前記電力供給部からの電力が供給されており、ソフトウェアに基づいてキャッシュメモリを内蔵する主記憶装置への電力の供給を制御する動作制御部と、
測定対象の温度を測定する測定部と、
前記動作制御部により制御され、前記主記憶装置への前記電力供給部からの電力の供給を制御する電力制御部と
を備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記動作制御部は、前記測定部により異常温度が検出されたとき、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させる
情報処理方法。
【請求項9】
電力を供給または停止するときオンまたはオフする電源スイッチと、
前記電源スイッチを介して、各部に電力を供給する電力供給部と、
前記電源スイッチのオン、オフに拘わらず、前記電力供給部からの電力が供給されており、ソフトウェアに基づいてキャッシュメモリを内蔵する主記憶装置への電力の供給を制御する動作制御部と、
測定対象の温度を測定する測定部と、
前記動作制御部により制御され、前記主記憶装置への前記電力供給部からの電力の供給を制御する電力制御部と
を備える情報処理装置の動作の制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記動作制御部に、前記測定部により異常温度が検出されたとき、前記主記憶装置に記録するために一時的に保持されている前記キャッシュメモリの全てのデータを、前記主記憶装置に記録するのに必要な時間が経過した後、前記電力制御部を制御し、前記電力供給部から前記主記憶装置への電力の供給を停止させる
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99058(P2012−99058A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248429(P2010−248429)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】