説明

情報処理装置の生産システム

【課題】RFID(Radio Frequency Identification)を情報処理装置におけるキーボード入力作業を容易かつ正確に実施できるシステムの提供及び構成情報を元に情報処理装置の構成情報に対応したTMP(生産ライン用テストプログラム)や出荷用OSを自動選択しインストールを行なうネットワークインストールシステムを提供する。
【解決手段】組立工程においてキーボード入力作業に必要な文字列情報を構成情報を元に顧客構成情報管理端末1が自動的に選択しRFID2に登録する。調整、検査工程においてソフトウェア管理端末8はRFID2の情報を読み取ることで、ソフトウェア管理端末8から必要なTMPや出荷OSを自動選択し、ネットワークを介して情報処理装置3へインストールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タグを利用した情報処理装置の生産システムに関わり、特に情報処理装置の操作方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって情報をやりとりする(Radio Frequency Identification)と呼ばれる電子タグによるシステムがある。RFIDは、既存のバーコードと対比して語られることが多いが、RFIDの主な特徴として、読み取り範囲が広く遮蔽物があっても読込める、一度にたくさんのタグが読める、書込みが可能、耐久性がある、といった利点がある。
【0003】
RFIDの上記特徴を利用したものとして、RFIDをバーコードの代わりに各商品に付与して商品識別、管理技術として用いたトレーサビリティシステム等が実現されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−233556
【特許文献2】特開2007−47952
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2007−47952においてはRFIDに登録された情報をOS上で動作する文字列入力支援ソフトウェアとデータ処理装置を使用し、文字列情報をキーボード装置の出力データとして情報処理装置に送出するシステムであるが、操作対象装置に予め前記ソフトウェアが動作するOSと前記ソフトウェアをインストールしておく必要がある。
【0006】
また、前記ソフトウェアはOSがインストールされた環境でのみ動作するシステムである為、情報処理装置の設定作業において、OSを使用しない環境での文字列入力支援はできないという問題がある。
【0007】
本発明の第1の目的は、OS等の環境に捉われることなく必要な文字列をRFIDを利用することによって複数の文字列をキー入力せず容易、かつ確実に入力可能とする文字列入力装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、本発明の文字列入力支援装置をキーボード装置として利用することによって利用範囲の広い文字列入力支援装置を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の第3の目的は、RFIDを用いた生産システムを利用して生産現場においてTMPおよびOS、アプリケーションソフトウェア等の管理が必要とされる外部記憶メディアを廃止し、ネットワークから構成情報を元に必要ソフトウェアを対象装置へ自動インストールするシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為に本発明は、トレーサビリティ登録作業工程にRFIDリーダライタ機能を有する顧客構成情報管理端末を配備して登録された構成情報を元に自動で入力文字列情報を選択し、構成情報と共にRFIDへ書込む手段と、調整、検査工程に文字列情報入力キーボード装置を配備してRFIDに登録された情報を元に作業者のキーボード入力作業を補助する手段と、RFIDに登録された構成情報を元に対象装置に必要となるソフトウェアをソフトウェア管理端末より自動選択し、ネットワークから自動インストールする手段を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャラクタユーザインタフェースにおいて、顧客構成情報登録時に登録した情報をRFIDへ書込み、書込んだRFID情報を後工程で読込み作業者からのキーボード文字列入力情報として実行することにより、以下の様に問題点を改善する。
【0012】
作業者による文字列入力の労力を低減する。また、作業者による文字列の誤入力を排除する。
【0013】
また、作業者に代わって操作文字列を自動入力するプログラムが存在したとしても、そのプログラムを使用する事なく、情報処理装置を操作出来る。
【0014】
また、作業者に代わって操作文字列を自動入力するプログラムを読込めない環境、例えば前述した自動入力プログラムを格納した携帯メモリやコンパクトディスクを読込むインタフェースを有さない、セキュリティに対応したパソコンにおいても、操作出来る。
【0015】
また、作業者に代わって操作文字列を自動入力するプログラムを持ち込めない環境、例えば持ち込みが出来る部材に制限があり、前述した自動入力プログラムを格納した携帯メモリやコンパクトディスクを持ち込めないセキユリティに対応したコンピュータルームにおいても、操作できる。
【0016】
また、保守作業を行なう場合においても、必要となる情報をRFIDに持たせることで、ラックに搭載されている装置を取り出したり、装置の蓋を取り外したりすることなく対象装置の構成情報や、割当てられた文字列入力情報を参照し、作業することが出来る。
【0017】
また、RFIDを利用したソフトウェア自動インストールシステムにより、生産ラインにて組立前のHDDへの生産用TMPおよび出荷用OSの書込み工程が不要となり、生産ライン工程および作業工数の削減、マスタHDDや外部記憶メディアの管理削減に貢献することが可能となる。また、人的な作業間違いポテンシャルが排除される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例のシステム構成である。組立工程において作業対象となる情報処理装置3のトレーサビリティ情報を顧客構成情報管理端末1に登録する。顧客構成情報管理端末1は登録された顧客構成情報を元に情報処理装置3に対して必要となるキーボード入力文字列情報を割り当てられたRFID2に書き込む。RFID2に書き込まれた情報を組立後工程となる調整、検査工程において情報処理装置3に対してキーボード入力操作が必要な際、治具キーボード端末5の有するRFIDリーダ6を使用し読み取る。RFIDリーダ6が読み取った対象RFID2の情報は治具キーボード端末5が備える液晶ディスプレイ7に表示される。作業者は液晶ディスプレイ7よりキーボード入力操作に必要となる文字列情報を選択することで、治具キーボード端末5は選択された文字列情報を自動で情報処理装置3に対して入力処理を実行可能とする。また、ソフトウェア管理端末8と情報処理装置3をネットワーク接続し、ソフトウェア管理端末8はRFID2の情報を読み取ることで、ソフトウェア管理端末8から必要なソフトウェアを自動選択し、情報処理装置3へインストールすることを可能とする。実際の運用方式は図2以降で説明する。
【0020】
図2は顧客構成情報管理端末の構成図である。顧客構成情報管理端末100はRFIDリードライトを実施するためのRFIDリード/ライト部120、トレーサビリティ情報や文字列情報等のRFIDに登録する情報を一時的に記憶する領域である仮想端末情報130、顧客注文情報を管理する顧客注文情報DB140、登録された情報を纏めて管理する顧客構成情報DB150、顧客構成情報DB150と関連付けられた文字列情報管理DB160、RFIDリード/ライト部120と各情報DB間の連携処理を行なうシステムコントローラ110を有する。
【0021】
図3では情報処理装置の操作に必要となるキーボード入力文字列情報を文字列情報管理DBから抽出する仕組みの例を説明する。構成情報リスト200は必要なトレーサビリティ情報が登録された状態をイメージしたものである。構成情報管理DB220は必要なトレーサビリティ情報が登録された構成情報リスト200の情報を基に文字列情報管理DB230を参照する。文字列情報管理DB230には予め対象装置の操作に必要な文字列情報を全て登録しておく。文字列情報管理DB230に文字列情報を登録する際、項目250〜280の様に品目コード、REV、製番、員数等の情報を条件項目としてシステムに併せて設定登録しておくことで、構成情報を元に必要となる文字列情報290を自動で選択することが可能である。選択された文字列情報290は構成情報リスト200と共にRFID登録内容として追加する。
【0022】
図4の300〜380は組立工程にて実施する作業をイメージしたフローチャート図である。ここでは図4のフローチャートの内容を図2と共に説明する。まずトレーサビリティ登録作業では対象装置の親端末IDを顧客構成情報管理端末100に登録する。親端末ID情報を受け付けた顧客構成情報管理端末100は顧客構成情報DB150に登録された顧客注文情報DB140の情報を自動で参照し仮想端末情報130を作成する。次に受注構成リストからIDを抽出し顧客注文情報DB140に予め登録されている内容と一致していることを確認し、仮想端末情報130に登録する。情報処理装置の子端末ID情報を顧客構成情報管理端末100に登録する。顧客構成情報管理端末100は登録された情報を仮想端末情報130に記憶し、構成情報リストに必要なトレーサビリティ情報が全て登録され次第、顧客構成情報DB150に構成情報変更登録(抽出ID登録)を実施する。未抽出IDが存在した場合は作業手順330からやり直すことで確実にトレーサビリティ情報を登録することを可能である。構成情報変更登録(抽出ID)を受け付けた顧客構成情報管理端末100は登録された構成情報を基に文字列情報管理DB160から必要な文字列情報を自動で抽出して構成情報と共に情報処理装置に割り当てられたRFIDに書き込むことが可能である。
【0023】
図5は図1で説明した治具キーボード端末5の構成図である。キーボードシステム装置400は通常のキー入力操作を行なうキー操作部470と、USB I/F440、RFIDリード/ライトを可能とする420と、読込んだRFID情報を表示選択可能とする420、音声出力を可能とするスピーカ450、記憶領域としてEEPROM460、これらを一つのシステムとして纏めることを可能とするシステムコントローラ410を有することを特徴とする文字列入力支援装置であり、本装置を調整/検査工程に配備することで、RFIDに書き込まれた情報を読込み、液晶ディスプレイに表示された文字列情報を作業者が選択することでキーボード入力情報として対象の情報処理装置に出力することが可能であるし、作業に不必要なキーボードの入力情報を出力しない様に自動で制御することも可能である。
【0024】
図6は組立工程後の調整/検査工程にて実施する図5記載の文字列情報入力支援装置を使用する作業をイメージしたフローチャート図であり、500から本作業が始まる。まず作業者は500で読み取ったRFID情報が文字列入力支援装置の液晶モニタに自動で表示されるので、作業対象となる情報処理装置の装置製番と読み取ったRFIDの中の情報が一致していることを確認する。情報の一致が確認出来次第、作業者は液晶モニタの表示内容を文字列情報に切替え、液晶ディスプレイに表示された情報の中から作業に必要となる文字列情報を選択することで文字列情報を情報処理装置に出力することを可能とする。
【0025】
図7は図1で説明したソフトウェア管理端末8の構成図である。ソフトウェア管理端末600には作業に必要となるTMPが全て格納されており、それぞれのTMPは予め構成情報を元にした条件項目を設定可能とする。ソフトウェア管理端末を調整/検査工程に配備することにより、組立工程でRFIDに登録された構成情報を読込むことで、読込んだ構成情報から対象の情報処理装置が必要とするTMPを自動選択しネットワークインストールすることが可能である。
【0026】
図8は調整/検査工程において必要となるTMPをソフトウェア管理端末600からインストールする作業手順をイメージしたフローチャート図で、まず作業対象の情報処理装置に表示モニタおよびキーボード、上位ネットワーク環境に繋がったLANケーブルを接続する。情報処理装置の電源をONしBIOSの設定画面に移行する。BIOS設定画面のBoot OrderからPXEを優先起動デバイスに設定しBIOS設定を保存しPCを再起動させる。PXEによりソフトウェア管理端末600に接続し起動イメージファイルを情報処理装置内のRAMドライブに展開する。RAMドライブに展開した起動イメージファイルにて情報処理装置を起動させ、情報処理装置のM/Bに搭載されているMACアドレスが書き込まれているROM内のMACアドレスデータを取得する。ソフトウェア管理端末が有するRFIDリーダで情報処理装置に割り当てられたRFID情報を読み取る。ソフトウェア管理端末はRFIDより抽出した構成情報を元に対象装置に必要となるTMPを自動選択し自動選択したTMPを自動インストール実行することが可能である。ただし、ソフトウェア管理端末は作業対象となる情報処理装置と直接接続して処理を行なうことも可能であるが、作業性・運用の容易さ等からHUB等を使用したネットワークシステムを構築して運用することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例のシステム構成図である。
【図2】顧客構成情報管理端末の構成図である。
【図3】キーボード入力文字列情報を文字列情報管理DBから抽出する仕組みを説明する構成図である。
【図4】組立工程にて実施する作業のフローチャート図である。
【図5】治具キーボード端末5の構成図である。
【図6】調整/検査工程にて実施する作業のフローチャート図である。
【図7】ソフトウェア管理端末8の構成図である。
【図8】TMPをインストールする作業のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0028】
1:顧客構成情報管理端末 2:RFID(無線ICタグ) 3:情報処理装置
4:治具ディスプレイ 5:治具キーボード端末 6:RFIDリーダ
7:液晶ディスプレイ 8:ソフトウェア管理端末
100:顧客構成情報管理端末 110:システムコントローラ
120:RFIDリード/ライト部 130:仮想端末情報 140:顧客注文情報DB
150:顧客構成情報DB 160:文字列情報管理DB 200:構成情報リスト
210:文字列情報 220:顧客構成情報DB 230:文字列情報管理DB
300〜380:フローチャート図各工程
400:キーボードシステム装置 410:システムコントローラ
420:RFIDリード/ライト部 430:液晶モニタ 440:USB I/F
450:スピーカ 460:EEPROM 470:キー操作部
500〜550:フローチャート図各工程
600:ソフトウェア管理端末 610:サーバ起動OS 620〜624:条件項目
630:起動イメージ 640〜670:TMPイメージ
700〜740:フローチャート図各工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客毎に異なるハードウェア構成に応じた生産ライン用テストプログラム(以下TMP)、顧客毎に異なる出荷用オペレーティングシステム(以下OS)およびアプリケーションソフトウェア、キーボード入力文字列情報を顧客注文情報および顧客注文情報に登録される各ハードウェアの形式に関連付けられた構成情報を元に、作業に必要となる情報を自動選択し無線ICタグ(以下RFID)に書き込むことが可能なシステムであって、RFIDの情報を読込むことと、読込んだ文字列情報を表示選択でき、出力することが可能なシステムであり、読込んだRFIDの情報を元にデータベース(以下DB)に予め登録してある生産用TMP又は出荷用OSの中から構成情報を元に最適なものを自動選択し対象装置へネットワークを介し自動インストールすることを特徴とする情報処理装置の生産システム。
【請求項2】
前記構成情報登録作業時にトレースした情報を変更登録する情報処理装置はRFIDリーダライタ機能を有しており、文字列情報が格納してあるDBから対象の受注構成情報を元に必要となる文字列情報を自動で選択し、RFIDに書込むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置の生産システム。
【請求項3】
前記構成情報登録装置は装置構成情報をRFIDに書込むことで、出荷後の保守作業時においてもラックに搭載されている装置を取り出したり、装置の蓋を取外したりすることなく対象装置の構成情報および割当てられた文字列入力情報を参照し、作業することが出来ることを特徴とする請求項2記載の情報処理装置の生産システム。
【請求項4】
前記自動インストール装置はRFIDリーダライタ機能を有しており、読込んだRFID情報を元に最適なものを自動選択することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置の生産システム。
【請求項5】
前記構成情報登録作業時に文字列情報を書込む対象はRFIDであり、情報処理装置を操作する端末にRFIDリーダライト機能及び、読み取った情報を表示選択する液晶モニタ、キー入出力制御機能を持たせることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−49440(P2010−49440A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212372(P2008−212372)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】