説明

情報表示媒体

【課題】可逆性感熱記録層を有する情報表示カードにおいて、温度加熱による反りが極めて小さく、記録画像の印字品位が良好に保持されるようにする。
【解決手段】プラスチックシートを積層一体化して形成される可逆性感熱記録層を備えた情報表示カードを、カードの表裏両面の最外層に配するシート同士の厚み(T1、T2)と平均線膨張係数(α1、α2)を以下の関係式を満たすように選定して加熱プレスし、さらにその後可逆性感熱記録層側のシート表面を加熱処理して形成する。
(関係式1)シート同士が同材質の場合:0.3<T1/T2≦0.5
(関係式2)シート同士が異材質の場合:0.3<(T1×α1)/(T2×α2)≦0.5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱による画像の可視表示と表示画像の書き換え機能を備えた、カード、ラベル、タグ、札、看板等の情報表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報表示媒体の一つとして、クレジットカードやキャッシュカード、ポイントカード等、日常生活の様々なシーンでプラスチック製のカードが使用されている。これらのカードは、複数枚のプラスチックシートを積層し、シートが溶融する温度まで加熱し加圧プレスして一体に貼り合わせて作製されるが、積層するシートの材質の選択や厚みの設定が適切でないと、積層一体化されたカードに反りが発生し、カードの外観や形状が損なわれることがある。
【0003】
そこで、加圧プレス成形時に積層したシートが平滑に一体化されるように、所定の厚みに設定した熱膨張率の異なるシート同士を積層一体化してカードの反りを防止するカード作製手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−67706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層するプラスチックシートの材質や厚みの設定を適切に行ない、或いは前記手法によって、成形されたカードの反りを極めて小さなものに抑えることが可能である。
しかしながら、温度加熱によって可視画像を可逆的に表示し消去する可逆性感熱記録層を設けたカードにあっては、前記手法によって成形時にカードを平滑にできたとしても、画像の表示又は書き換えのためにプリンタにカードを通した際に、サーマルヘッド、ヒーターバー、加熱スタンプ等からの温度加熱によって、カード全体が熱が加えられた方向に沿って凹形に反り返ってしまい、前記記録層への印字品質が低下するという問題があった。
前記公知のカード作製手法は、カードが加熱・加圧されながら繰り返し使用された時の反り防止を考慮したものではなく、可逆性感熱記録層を装備したカードでは、繰り返しの温度加熱によっても印字品位が劣化することのないカード構造が要請されているのが実状である。
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、可逆性感熱記録層を有するカードやタグ等の情報表示媒体において、情報を可視表示させるために情報表示媒体を温度加熱しても、生じる反りが極めて小さく平滑性を維持し、画像の書き換えを繰り返し行なっても印字品位が良好に保持されるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来のカードの反りを防止する作製手法は、積層したシートを加熱プレスする際にシートがカールすることを防止して平滑なカードを成形するものである。この手法では、加熱プレス時の反りの発生を抑えることには効果があるが、成形後に平滑なカードを加熱することは想定されてはおらず、温度加熱を繰り返して使用される画像の可視表示及び書き換え機能を備えた情報表示カードには適用できない。
【0008】
ところで、初期状態で平滑な情報表示カードを画像の表示・書き換え用のプリンタに通して加熱した場合、一回の加熱で生じるカードの反りの量は、カードを構成するシートの材質やシート毎の厚み等によって大きく異なるが、加熱をする毎に新たに生じる反りの量は少なくなり、何回か加熱を繰り返すと反りの発生量が収束することを、本発明者が試験を行って確認している。
【0009】
そこで、本発明では、加熱の繰り返しにより情報表示カードの反りの量が収束することに着眼し、情報表示カードを平滑に成形するのではなく、設計した量で反りを与えてカードを成形し、その後の加熱によって所定の方向にカードを反らせることでカードを平滑に変形せしめ、可逆性感熱記録層に表示される画像の印字品位が良好に保たれるように構成した。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するため本発明は、プラスチックシートを積層一体化して形成される情報表示媒体であって一側の面に温度変化により可視画像を表示し又は消去する可逆性感熱記録層を備えた情報表示媒体が、表裏両面の最外層に同じ材質のプラスチックシートが貼り合わさっているとともに、可逆性感熱記録層を配した側の最外層のプラスチックシートの厚みT1と、他側の最外層のプラスチックシートの厚みT2とが、次の(関係式1)を満たす構成を有するものであることを特徴とする。
(関係式1) 0.3 < T1/T2 ≦ 0.5
【0011】
また、本発明は、プラスチックシートを積層一体化して形成される情報表示媒体であって一側の面に温度変化により可視画像を表示し又は消去する可逆性感熱記録層を備えた情報表示媒体が、表裏両面の最外層に貼り合わせたプラスチックシートの材質が互いに異なっているとともに、可逆性感熱記録層を配した側の最外層のプラスチックシートの厚みT1及びその20〜100℃の平均線膨張係数α1と、他側の最外層のプラスチックシートの厚みT2及びその20〜100℃の平均線膨張係数α2とが、次の(関係式2)を満たす構成を有するものであることを特徴とする。
(関係式2) 0.3 < (T1×α1)/(T2×α2) ≦ 0.5
【0012】
また、本発明は、前記両構成の情報表示媒体が、加熱プレスにより積層一体化された後、可逆性感熱記録層を配している側のみを選択的に加熱する平滑化処理がされたものであることを特徴とする。
【0013】
情報表示媒体は、ICチップとアンテナコイルを有する非接触式ICモジュールを設けて、情報の記憶と書き換え機能を併せ持つように構成することができる。
【0014】
前記構成において、可逆性感熱記録層は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る構成のものを用いることができる。
【0015】
また、可逆性感熱記録層として、高分子樹脂母材と高分子樹脂母材に分散された有機低分子化合物を主成分として温度により透明状態と不透明状態とに可逆的に変化する構成のものを用いることができる。
【0016】
また、可逆性感熱記録層の可視画像を10〜100mm/secの速度で、80〜180℃の温度の熱源に接触させながら消去することも特徴とする。
【0017】
なお、本発明の情報表示媒体は、カード、ラベル、タグ、札、看板等を含むものであるが、ここでは代表的な情報表示媒体であるカード(以下、「情報表示カード」ともいう)を用いて発明内容の説明を行う。
【0018】
本発明の情報表示カードは、支持シート上に可逆性感熱記録層を積層してなるシート(以下、これを「リライタブルシート」という)と、コアシートと、オーバーシートとを重ね合わせ、これを加熱プレスにより一体化して形成することができる。ICモジュールを一体に設ける場合、ICチップとアンテナコイルを電気的に接続して一体に配したインレットシートをコアシートとコアシートの間に挟み入れ、両コアシートの他側表面にリライタブルシートとオーバーシートをそれぞれ重ね合わせ、これを加熱プレスにより一体化して形成することができる。
【0019】
支持シート上に積層してリライタブルシートを構成する可逆性感熱記録層としては、(1)加熱後の冷却速度を調節することにより、第一の所定温度で発色し、第二の所定温度で消色して情報を可視化するもの、或いは(2)加熱温度を調節することにより、第一の所定温度で透明状態、第二の所定温度で白濁状態となって情報を可視化するものの何れかを用いることができる。
【0020】
前記(1)の例としては、電子供与性呈色性化合物(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)を含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る構成のものが挙げられる。
電子供与性呈色性化合物(発色剤)としては、分子構造中にラクトン環部分を有するロイコ染料が好適に使用される。ラクトン環が開環したり閉環したりすることにより、発色と消色をする。ロイコ染料は単独又は混合して用いることもできる。
例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、
【0021】
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメトルアミノフルオラン、
【0022】
3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド。
【0023】
また、前記のフルオラン化合物、アザフタリド化合物の他に、従来公知のロイコ染料を単独又は混合して使用することができる。その例を以下に示す。
2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、
【0024】
2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロロアニリノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオラン、その他。
【0025】
他の電子供与性呈色性化合物の具体例を示すと以下の通りである。
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−2−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロロアニリノ)−6−(N−n−オクチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロロアニリノ)−6−(N−n−パルミチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロロアニリノ)−6−(ジ−n−オクチルアミノ)フルオラン、2−ベンゾイルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(o−メトキシベンゾイルアミノ)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メトキシ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(p−トルイジノ)−3−(t−ブチル)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(o−メトキシカルボニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アセチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、4−メトキシ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−クロロ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−ベンジル−p−トリフロロメチルアニリノ)−4−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ピロリジノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)フルオラン、2−メシジノ−4’,5’−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、2−(α−ナフチルアミノ)−3,4ベンゾ−4’−ブロモ−6−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−ピペリジノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−n−プロピル−p−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、2−(ジ−N−p−クロロフェニル−メチルアミノ)−6−ピロリジノフルオラン、2−(N−n−プロピル−m−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−n−オクチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジアリルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エトキシエチル−N−エチルアミノ)フルオラン、
【0026】
ベンゾロイコメチレンブルー、2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、2−[3,6−ジエチルアミノ)−9−(o−クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3、3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、3,3−ビス−(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フタリド、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4−クロロ−5−メトキシフェニル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6’−ブロモ−2’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、その他。
【0027】
電子受容性化合物(顕色剤)としては、特開平5−124360号公報に長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物又はフェノール化合物の代表例と共に開示されているように、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と分子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。顕色能をもつ構造としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基等の酸性の基が用いられるが、これらに限らず、チオ尿素基、カルボン酸金属基等の発色剤を発色できる基を持てばよい。
【0028】
分子間の凝集力をコントロールする構造の代表例としては長鎖アルキル基等の炭化水素基等がある。この炭化水素基の炭素数は8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれても良く、また分枝状の炭化水素基も包含される。この場合も主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。上記のように顕色剤は、顕色能をもつ構造と炭化水素基のような分子間の凝集力をコントロールする構造が連結した構造を持つ。この連結部分にはヘテロ原子を含む2価の基、又はこれらの基が複数個組み合わせた基をはさんで結合していてもよい。
【0029】
以下、本発明に用いられる電子受容性化合物について具体的に例示する。なお、これらは単独で用いてもよいし2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
【化1】

【0031】
式中、X1はヘテロ原子を含む2価の基または直接結合手を示し、X2はヘテロ原子を含む2価の基を示す。R1は2価の炭化水素基を表わし、R2は炭素数1〜22の炭化水素基を表わす。また、pは0〜4の整数を表わし、pが2〜4のとき繰り返されるR1及びX2は同一でも異なっていてもよい。また、qは1〜3を表わす。具体的には、R1及びR2は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。なお、R1は直接結合手でもよい。
またR1及びR2の炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。X1及びX2はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは式2で表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。
【0032】
【化2】

その具体例としては、下記式のものが挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
本発明におけるフェノール化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、フェノール化合物を単独または混合して用いることもできる。
【0035】
【化4】

【0036】
有機リン酸系の顕色剤としては以下のような化合物を例示できる。ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、リン酸ジテトラデシルエステル、リン酸ジヘキサデシルエステル、リン酸ジオクタデシルエステル、リン酸ジエイコシルエステル、リン酸ジベヘニルエステル等。
脂肪族カルボン化合物としては以下のような化合物を例示できる。2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモドコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等。
【0037】
脂肪族ジカルボン酸及びトリカルボン酸化合物としては以下のような化合物を例示できる。
2−ドデシルオキシこはく酸、2−テトラデシルオキシこはく酸、2−ヘキサデシルオキシこはく酸、2−オクタデシルオキシこはく酸、2−エイコシルオキシこはく酸、2−ドデシルオキシこはく酸、2−ドテシルチオこはく酸、2−テトラデシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルチオこはく酸、2−オクタデシルチオこはく酸、2−エイコシルチオこはく酸、2−ドコシルチオこはく酸、2−テトラコシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルジチオこはく酸、2−オクタデシルジチオこはく酸、2−エイコシルジチオこはく酸、ドデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、ヘキサデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−オクタデシルこはく酸、2−オクタデシル−3−ヘキサデシルこはく酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、ドコシルグルタル酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸、2−ヘキサデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−オクタデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸等。
【0038】
電子供与性呈色性化合物(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で電子供与性呈色性化合物(発色剤)1に対し電子受容性化合物(顕色剤)が0.1〜20の範囲であり、好ましくは0.2〜10の範囲である。この範囲より電子受容性化合物(顕色剤)が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。また、消色促進剤の割合は電子受容性化合物(顕色剤)に対し0.1〜300重量%が好ましく、より好ましくは3〜100重量%が好ましい。また、電子供与性呈色性化合物(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。記録層中の発色成分と樹脂の割合は、発色成分1に対して0.1〜10が好ましく、これより少ないと記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。
【0039】
また、可逆性感熱記録層には、通常樹脂を含有させる。
可逆性感熱記録層に含有させる樹脂の具体例としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂等が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
さらに、これらの樹脂に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収骨格やシロキサン結合骨格をブロック共重合やグラフト共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、必要に応じて可逆性感熱記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり制御したりするための添加剤を用いることができる。
これらの添加剤には、例えば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤等がある。消色促進剤として好ましくは、ヘテロ原子を含む2価の基と炭素数8以上のアルキル鎖を有する化合物であったり、N,N’−2置換基を有する化合物であったりするが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0041】
さらに、可逆性感熱記録層に硬化剤を含有させてもよい。ここで用いられる硬化剤としては、公知のイソシアネート単量体のウレタン変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ブロックドイソシアネート等の変性体から選択される。また、変性体を形成するイソシアネート単量体としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
さらに、可逆性感熱記録層に架橋促進剤、硬化剤を含有させてもよい。
架橋促進剤としては、例えば1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、有機すず化合物等の金属化合物等が挙げられる。また、硬化剤は添加した全量が架橋反応をしていても、していなくてもよい。すなわち、未反応硬化剤が存在していてもよい。
【0043】
前記(2)の例としては、高分子樹脂母材と高分子樹脂母材に分散された有機低分子化合物を主成分として温度により透明状態と不透明状態とに可逆的に変化する構成のものが挙げられる。
【0044】
可逆性記録層に用いられる高分子樹脂母材としては、透明で製膜性のよい合成樹脂が好ましく、具体的には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、その他の酢酸ビニル化合物、塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、透明なアモルファス樹脂等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。可逆性記録層に、電子線又は紫外線等の放射線硬化性樹脂を混合すると、高温領域での弾性率が高くなり、繰り返し書き換えの耐久性を向上させることができる。かかる樹脂としては、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の硬化性に優れた多官能アクリレートモノマーが良好に使用できる。紫外線硬化の場合は、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサンソン系、パーオキシド系等の光重合開始剤を適量添加して硬化重合させる。
【0045】
有機低分子化合物としては、高分子樹脂母材内に0.1〜2.0μm程度の直径の集合体となって、熱処理によって融解又は結晶化するものであり、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪族二塩基酸、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族エーテル、脂肪族アルコール及びその誘導体からなる結晶性低分子化合物が挙げられ、これらを単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。有機低分子化合物としては、融点が50〜150℃の範囲内のものが好ましく用いられる。
【0046】
とりわけ、炭素数12以上の脂肪酸エステルと炭素数10以上の脂肪族二塩基酸とを併用した組み合わせで使用することが好ましい。炭素数12以上の脂肪酸エステルの具体例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチル、リグノセリン酸ステアリル、リグノセリン酸ベヘニル等が挙げられる。炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の具体例としては、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。
【0047】
本発明において、リライタブルシートを構成する支持シートとオーバーシートは、成形条件に応じ、同じ材質のものを用い、又は異なる材質のものを用いることができる。
その構成材料としては、コアシートとの一体化性(接着性或いは熱融着性)を考慮し、非晶質ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物が用いられ、具体的には、一種類の非晶質ポリエステル樹脂組成物を含むものの他に、例えば複数の非晶質ポリエステル樹脂のポリマーアロイ樹脂組成物や非晶質ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂のポリマーアロイ樹脂組成物等を用いることができる。
なお、ここでは非晶質ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分との脱水縮合体から得られるものであって、かつ、カード製造においてプレス融着等の実用上行なわれる熱加工を行なっても結晶化による白濁化や融着不良等の実害を起こさないものをいい、分子構造上結晶性の低いものの他、例えば結晶化処理前のPBT(ポリブチレンテレフタレート)等も含む広い概念のものを意味する。
【0048】
非晶質ポリエステル系樹脂の原材料となる芳香族ジカルボン酸成分として好ましく用いられる代表的なものとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるが、テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸で置換してもよい。
他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等が挙げられる。なお、これらの他のジカルボン酸成分は、一種でも二種以上の混合物であってもよく、また、置換される他のジカルボン酸の量も適宜選択することができる。
【0049】
また、非晶質ポリエステル系樹脂の原材料となるジオール成分として好ましく用いられる代表的なものとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、エチレングリコールの一部を他のジオール成分で置換してもよい。
他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。
なお、これらの他のジオール成分は、一種でも二種以上の混合物であってもよく、また、置換される他のジオールの量も適宜選択することができる。
【0050】
また、非晶質ポリエステル系樹脂のうち、テレフタル酸とエチレングリコールとを縮合重合させて形成されたポリエチレンテレフタレートがコストの点から好ましいが、テレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分及び/又はエチレングリコール以外の他のジオール成分を含んだ共重合ポリエステルを使用することも有効である。
【0051】
共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分の60モル%以上がテレフタル酸であり、残りのジカルボン酸成分が他のジカルボン酸成分で置換されたジカルボン酸成分と、ジオール成分の60モル%以上がエチレングリコールで、残りのジオール成分が他のジオール成分で置換されたジオール成分とを縮合重合させた共重合ポリエステルが挙げられる。さらに芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートと上記の共重合ポリエステルとの混合物であってもよい。
このような混合物の場合に、特に好適に使用できる共重合ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコールの約30モル%を、1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換して作製された、実質的に非晶質性の芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、例えばイーストマンケミカル社製の商品名が「PETG」のものを用いることができる。
【0052】
前記非晶質ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂のポリマーアロイ樹脂組成物における、該ポリカーボネート樹脂とは、主鎖にカーボネート結合(−O−CO−O−)を有する重合体を広く意味する。
ポリカーボネート系樹脂としては、フェノールとアセトンとから合成されるビスフェノールAから界面重合法、エステル交換法、ピリジン法等によって製造されるもの、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体(例えばテレ(イソ)フタル酸ジクロリド等)との共重合体により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体(例えばテトラメチルビスフェノールA等)の重合により得られるものを例示することができる。
また、支持シート及びオーバーシートとして、単層フィルムだけではなく、例えば、非晶質ポリエステル樹脂フィルムと他の種類の異なるフィルムとの2層以上の積層体であってもよい。
各シートの20〜100℃の線膨張係数を制御するためにフィラーを添加してもよい。フィラーとしては酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、マイカ等が挙げられるが、これら以外のものでもよい。
さらに、必要に応じて、着色剤、滑剤、衝撃改良剤等の添加剤を含有させたフィルムを用いることもできる。
【0053】
支持シートとオーバーシートの厚みは、作製する情報表示カードの厚さによって選定されるが、一般的には50〜250μm、さらには75〜200μmであることがより好ましく、両シートの厚みは前記関係式により特定される範囲に設定される。
【0054】
コアシートの構成材料としては、加熱加圧によって変形する熱可塑性樹脂のシート状のものが好ましく、さらに加熱加圧によってリライタブルシートの支持シート及びオーバーシート(以下、オーバーシート等という)と融着性があるものであることが重要であり、オーバーシート等との間に高い接着力を持たせるために用いるコアシートとして、オーバーシート等と接触する少なくとも表層部の材料が、オーバーシート等と同種類の樹脂を用いることが好ましく、例えば非晶質ポリエステル樹脂同士、ポリカーボネート樹脂同士にする等して作製することができる。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、非晶質ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂・非晶質ポリエステル系樹脂アロイを好ましく用いることができるが、これらに限らず、ポリオレフィン系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、生分解性樹脂等の汎用のものを用いることができる。
また、コアシートの材料として、耐熱性が良好なエンジニアリングプラスチックを使用することができる。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、これらの1種類または2種類以上を主成分とするフィルムやシートが好ましく使用される。
【0056】
また、接着性だけでなく、耐熱性等の複数の機能を持たせるには、コアシートを2層以上とすることが好ましい。この場合、2層以上からなるコアシートを予め作製しておいて、それを用いてオーバーシート等と重ねてプレスにかけてもよいし、複数のコアシートを用意し、熱プレス時にオーバーシート等と重ねて融着させることができる。
コアシートを3層構成にする例を挙げれば、非晶質ポリエステル系樹脂/ポリカーボネート樹脂/非晶質ポリエステル系樹脂或いは非晶質ポリエステル系樹脂/ポリカーボネート樹脂・非晶質ポリエステル系樹脂アロイ/非晶質ポリエステル系樹脂とすることができ、外層の非晶質ポリエステル系樹脂によって低温における接着性を、中層のポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂・非晶質ポリエステル系樹脂アロイによって耐熱性をそれぞれ持たせることができる。
ここで外層に用いる非晶質ポリエステル系樹脂とは、非晶質ポリエステル系樹脂単体或いは非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とするアロイ物を、また、中層のポリカーボネート樹脂とは、ポリカーボネート樹脂単体或いはポリカーボネート樹脂を主成分とするアロイ物をそれぞれ意味している。外層及び中層は、目的とする用途によって層厚を自由に設定することができる。
【0057】
また、コアシートは透明、半透明又は不透明の何れでもよく、白色や有彩色に着色されてもよく、使用用途に応じて、適宜設計されることが好ましい。半透明フィルム及び不透明なフィルムとする場合には、樹脂の中に無機顔料や有機顔料を配合することができる。透明フィルムとする場合にも透明性を損なわない量の顔料を配合することができる。また、コアシートの中には、上記顔料以外にも可塑剤、耐電防止剤等、各種添加剤を配合することができる。コアシートの表面は、接合加工の脱気のためにエンボス加工等が施されていることが好ましい。
【0058】
コアシートの厚みは、50μm〜5mmであることが好ましく、さらには200〜600μmがより好ましい。
なお、前記支持シート、オーバーシート及びコアシートの製造方法は特に限定されず、各々公知の方法により製造することができる。ICモジュールを搭載したインレットシートも、公知の方法により製造することができる。
【0059】
本発明の情報表示カードは、リライタブルシート、コアシート、オーバーシート、さらにはインレットシートを重ね合わせ、一体に貼り合わせて形成される。シートの貼り合わせは、シート同士が一体に貼合するのであれば、接着剤で接着しても、加熱加圧により熱融着させてもよく、一体化した積層シートを所定のサイズのカード輪郭形状に沿って打ち抜き、情報表示カードが作製される。加熱加圧方式にはプレス方式やラミネート方式があるが、使用されるシートの材質等で適宜に使い分けが可能である。
【0060】
情報表示カードの作製にあたり、可逆性感熱記録層側の最外層のシートと他側の最外層のシートを、同じ材質のものを用い且つ前記(関係式1)の範囲に設定し、又は異なる材質のものを用い且つ前記(関係式2)の範囲に設定してシートを積層し、これを加熱プレスした場合、一体化したカード(シート)は全体が可逆性感熱記録層側へ凸型に大きく突出した湾曲形状に反る。この反ったカードに対して、カードを逆側へ反り戻す平滑化処理、具体的には可逆性感熱記録層を配している側のみを選択的に加熱する処理を施すことにより、カードの凸型の反りはプリンタに挿入することができる程度の小さなものとなる。そして、この小さく反った状態のカードでは、プリンタに挿入して可視画像の消去と印字を繰り返し行なったときに、プリンタ内での加熱によって生じるカードの反りは極めて小さなものに抑えられ、カードを平滑に維持することができる。従って、以降、カードに可視画像の消去と印字を繰り返しても、可逆性感熱記録層に表示される画像の印字ムラや印字抜けが発生することはなく、カードに画像を鮮明に表示して印字品位は良好な状態に保持されることとなる。
【0061】
前記(関係式1)の設定範囲で情報表示カードを形成する場合、同じ材質の両最外層のシートの厚みの比(T1/T2)が0.3以下であると、カード作製直後の反りが大きくなりすぎて、カードを手に持ったときに明らかに変形していると認識され、いびつな外観となり、かつ、プリンタに挿入することができず印字もできない。一方、0.5を越えるものであると、初期の印字品位は良好なものの、印字を繰り返す毎に加熱によって反りが大きくなりすぎることがあり、その場合は消去と印字を5、6回以上繰り返すと印字ムラや印字抜けが生じて印字品位が劣化する。
【0062】
また、前記(関係式2)の設定範囲で情報表示カードを形成する場合も、材質の異なる両最外層のシートの厚みとその20〜100℃の平均線膨張係数の積の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕が0.3以下であると、前記と同様に、カード作製直後の反りが大きくなりすぎて、カードを手に持ったときに明らかに変形していると認識され、いびつな外観となり、かつ、プリンタに挿入することがでず印字もできない。同様に、0.5を越えるものであると、初期の印字品位は良好なものの、印字を繰り返す毎に加熱によって反りが大きくなりすぎることがあり、この場合も前記と同様に、消去と印字を5、6回以上繰り返すと印字ムラや印字抜けが生じて印字品位が劣化する。
【0063】
反ったカードを平滑化する処理として、カード可逆性感熱記録層を配している側のみを選択的に加熱する方法としては、加熱ロール、加熱スタンプ、ヒーターバー、サーマルヘッド等の熱源を、可逆性感熱記録層を配している側の表面に接触、或いは近接配置させる方法が挙げられるが、当該熱源を配した側の面のみをできるだけ短時間で加熱するように熱処理することが好ましく、短時間の加熱であれば、加熱された部分のみが熱収縮して凸型の反りを緩和してカードを平滑化することが可能である。加熱処理方法として、熱容量の大きな加熱ロールや加熱スタンプを用いる場合は、できるだけ熱源を接触し或いは近接させる時間を短くして、加熱する面の表層のみを加熱することが好ましい。
なお、加熱時間が長くなると、カード全体に熱が加わって、全体が均等に熱収縮するため、凸型の反りは解消されず、従って、局所的な加熱ができず、カード全体を加熱するオーブンや乾燥器は本発明のカードの加熱手段には適さない。
【0064】
可逆性感熱記録層が積層された面に対して、サーマルヘッド、ヒーターバー、加熱スタンプ等の熱源が接すると、カード全体が熱が加えられた方向、すなわち可逆性感熱記録層側に反りが生じてくる。ここで、可逆性感熱記録層側が凹型に反ってしまった場合には、サーマルヘッドや、ヒーターバー等の熱源が記録面に対して均一に接触し難い(カードの端部ほど密着性が高い状態の)ため、記録層への印字品質の低下や消去不良という問題が生じる。逆に、初期時点で可逆性感熱記録層側が凸型に反っていても、サーマルヘッドやヒーターバーは、カードの中心付近ほど密着性が高い状態であるので、凹型に反っている場合と比べて印字・消去適性に問題はなく、さらに数回繰り返して使用することで平滑になっていくため、むしろ好ましい。
【0065】
プリンタには画像を表示又は書き換えるためにサーマルヘッド、ヒーターバー、加熱スタンプ等の熱源が搭載され、一般に画像はサーマルヘッドで任意の文字、絵等を表示し、消去はサーマルヘッド、ヒーターバー、加熱スタンプで行う。
一般に消去用のヒーターバーは通電発熱体からなり、処理速度10〜100mm/sec,温度80〜180℃,接触圧力30〜600g/cmの条件で、情報表示媒体の可逆性感熱記録層側を接触させながら消去を行う。処理速度、温度、接触圧力は情報表示カードの処理時間やカードへの加熱や剪断力による負担等を考慮し、任意に設定可能であるが、処理速度20〜80mm/sec、温度100〜170℃、接触圧力50〜350g/cmが好ましい。
表示はサーマルヘッドで行われ、使用する可逆性感熱記録材料で異なるが、0.2〜0.7mJ/dotのエネルギーを印加して行う。これも消去と同様に情報表示カードの処理時間やカードへの加熱や剪断力による負担等を考慮し、任意に設定可能である。
画像の表示又は書き換えは、画像をヒーターバー等で消去した後、サーマルヘッドで表示する方法や、ヒーターバーとサーマルヘッドを並列に設置し、ヒーターバーで消去した直後にサーマルヘッドで表示する方法、サーマルヘッドのみで消去しながら表示する方法(オーバーライト方式)等がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、実施例と比較例に基づいて本発明の情報表示カードについて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
図1に示されるように、リライタブルシート1、コアシート2及びオーバーシート3を一体に貼り合せて情報表示カードを作製し、可視画像の表示及び消去のための加熱操作を実施したときのカードの反り量を測定した。各シートの構成材料と厚みは初期の成形状態でカードに反りが生じるように設定されている。
【0068】
(実施例1−1)
リライタブルシート1として、100μm厚のポリエステル系フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ディアフィクス PA−C」)を支持シートとし、その上にロイコ染料系の可逆性感熱記録層を積層したシート(株式会社リコー製、商品名「リコーRECO−View CRフィルム530RE」)を用意し、これを300mm×300mmのサイズに裁断した。
コアシート2として、200μm厚のポリエステル系フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ディアフィクス PG−WHT」)、また、オーバーシート3として、250μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)を用意し、それぞれ300mm×300mmのサイズに裁断した。
各シートを上からリライタブルシート1、コアシート2、オーバーシート3の順に重ね合わせ、これを、プレス温度:150℃、シート面圧:20kgf/cm、加熱時間:20分間の加工条件で加熱プレスを行なってプラスチックカード用シートを一体成形した。
次に、成形されたシートを打ち抜き刃でカードの輪郭形状に切断し、表面に可逆性感熱記録層を有する情報表示カードを作製した。
そして、得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を加熱ロール(温度:180℃、速度:5m/min、接触圧力:1kg/cm)で熱処理した。
カードを構成する可逆性感熱記録層側の最外層シートであるリライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)と、逆側の最外層シートであるオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.4である。
【0069】
(実施例1−2)
リライタブルシート1として、50μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」、平均線膨張係数:α1=7×10−5)を支持シートとし、その上にロイコ染料系の可逆性感熱記録層を積層したシート(前記「リコーRECO−View CRフィルム530RE」)を用意し、これを300mm×300mmのサイズに裁断した。
コアシート2として、200μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WHT」)、また、オーバーシート3として、200μm厚のポリエステル系フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ディアフィクス PG−WET」、平均線膨張係数:α2=4.3×10−5)を用意し、それぞれ300mm×300mmのサイズに裁断した。
各シートを上からリライタブルシート1、コアシート2、オーバーシート3の順に重ね合わせ、前記実施例と同じ加工条件で加熱プレスを行なってプラスチックカード用シートを一体成形した。
次に、成形されたシートを打ち抜き刃でカードの輪郭形状に切断し、表面に可逆性感熱記録層を有する情報表示カードを作製した。
そして、得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を、前記実施例と同じ加熱条件で熱処理した。
カードを構成する可逆性感熱記録層側の最外層シートであるリライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、逆側の最外層シートであるオーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.41である。
【0070】
両実施例により作製された情報表示カードの作製直後のカードの反り量と、可視画像を書き換えるためのプリンタに情報表示カードを通し、書き換え操作を1回、3回、5回、10回、20回、30回行なったときのカードの反り量を各々測定した。その結果を表1と図2に示す。カードの反りは、JIS X6301,6305に規定されている方法で測定し、図1(B)に示されるように、可逆性感熱記録層側に凸向きの場合を正数、凹向きの場合を負数で表した。
なお、プリンタは、パナソニックコミュニケーションズ株式会社製の「KU−R28112KFL」(サーマルヘッド印字条件:0.50mJ/dots、ヒーターバー消去条件:128℃(速度:28mm/sec))を使用した。
また、書き換え操作の度に目視により可逆性感熱記録層に印字された画像の表示状態を確認したところ、両実施例の情報表示カードはともに画像が鮮明に表示されて、印字ムラや印字抜けがなく、印字が高品位に行なわれていることを確認できた。
この結果、10回の繰り返しで、反りの量はほぼ収束していると判断できることがわかった。
【0071】
【表1】

【実施例2】
【0072】
図1に示される、リライタブルシート1、コアシート2及びオーバーシート3を一体に貼り合せた情報表示カードを、シートの厚みを変えて実施例1−1と同様にして複数作製し、前記(関係式1)の設定範囲も含む、カードについての評価を行った。
【0073】
(実施例2−1)
オーバーシート3を200μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)に変更した以外は実施例1−1と同様にして情報表示カードを作製した。
支持シートの厚み(T1)とオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.5である。
【0074】
(実施例2−2)
オーバーシート3を300μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)に変更した以外は実施例1−1と同様にして情報表示カードを作製した。
支持シートの厚み(T1)とオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.33である。
【0075】
(比較例2−1)
オーバーシート3を400μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)に変更した以外は実施例1−1と同様にして情報表示カードを作製した。
支持シートの厚み(T1)とオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.25である。
【0076】
(比較例2−2)
オーバーシート3を150μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)に変更した以外は実施例1−1と同様にして情報表示カードを作製した。
支持シートの厚み(T1)とオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.67である。
【0077】
各実施例と前記実施例1−1及び両比較例において、加熱プレス直後のカードの反り量(Li)と、加熱ロールによる加熱処理がされた情報表示カードの作製直後のカードの反り量(Le)と、可視画像を書き換えるためのプリンタに情報表示カードを通し、書き換え操作を繰り返し10回行なったときのカードの反り量(L10)とをそれぞれ測定するとともに、各例のカードについて印字品位と併せて以下の基準により評価を行なった。なお、10回とした理由は、実施例1の結果から10回でほぼカードの反りの量が収束するとの判断による。
その結果を表2に示す。カードの反りの測定方法、反り量の表示は実施例1と同様である。
プリンタは表2に示したものを使用した。なお、実施例1−1と同一条件で作製した情報表示カードを、CLEARJET社製のプリンタ「CX−ONE」(サーマルヘッド印字条件:0.5mJ/dots、ヒーターバー消去条件:160℃(速度:60mm/sec))で印字と消去を行って評価した結果を実施例2−3として、同様に、パナソニックコミュニケーションズ株式会社製のプリンタ「KU−R28112KFL」(サーマルヘッド印字条件:0.5mJ/dots、ヒーターバー消去条件:140℃(速度:56mm/sec))で印字と消去を行って評価した結果を実施例2−4として、それぞれ同表に示す。
【0078】
〈反り量の評価〉
加熱ロールで熱処理後(初期状態)のカードの反り量(Le)は0mm≦Le<1.0mmを良好な状態として「○」、Le<0mm又はLe≦1.0mmは使用不可として「×」をつけた。
10回の書き換え操作を行なった後のカードの反り量(L10)は0mm≦L10<1.0mmを良好な状態として「○」、L10<0mm、又は1.0mm≦L10は使用不可として「×」をつけた。
〈印字品位の評価〉
印字品位の評価は目視で行い、印字ムラや印字抜けが無く、画像が鮮明に表示されているものは「○」、印字ムラや印字抜けがあるものやプリンタに挿入できないものは「×」をつけた。
〈総合評価〉
総合評価として、前記両評価結果が何れも良好なものは「○」、両評価の何れかが劣り使用に問題のあるものは「×」をつけた。
【0079】
【表2】

【実施例3】
【0080】
図1に示される、リライタブルシート1、コアシート2及びオーバーシート3を一体に貼り合せた情報表示カードを、シートの厚みを変えて実施例1−2と同様にして複数作製し、前記(関係式2)の設定範囲も含む、カードについての評価を行った。
【0081】
(実施例3−1)
リライタブルシート1として、60μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)を支持シートに変更した以外は実施例1−2と同様にして情報表示カードを作製した。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、オーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.49である。
【0082】
(実施例3−2)
オーバーシート3を250μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WET」)に変更したこと以外は実施例1−2と同様にして情報表示カードを作製した。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、オーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.33である。
【0083】
(比較例3−1)
オーバーシート3を300μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WET」)に変更した以外は実施例1−2と同様にして情報表示カードを作製した。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、オーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.27である。
【0084】
(比較例3−2)
リライタブルシート1の支持シートを70μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)、オーバーシート3を175μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WET」)に変更した以外は実施例1−2と同様にして情報表示カードを作製した。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、オーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.65である。
【0085】
各実施例と前記実施例1−2及び両比較例において、実施例2と同様に情報表示カードの反り量を測定し、同様な評価基準で各カードを評価した。その結果を表3に示す。なお、実施例1−2と同一条件で作製した情報表示カードについて、CLEARJET社製とパナソニックコミュニケーションズ株式会社製のプリンタを用い、前記実施例と同じ条件で印字と消去を行って評価した結果を実施例3−3、3−4として同表に示す。
【0086】
【表3】

【実施例4】
【0087】
(実施例4−1)
T1=100μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」、平均線膨張係数:α1=7×10−5)を支持シートとし、その上に以下に示すバリア層用塗布液をバーコーターを用いて塗布した。その後、160W/cm×10m/minで紫外線を照射し硬化させて、厚み2μmのバリア層とした。
(バリア層用塗布液)
紫外線硬化樹脂:5官能アクリレートモノマー 50質量部
(日本化薬製、商品名「KAYARAD D−310」)
光重合開始剤:3質量部
(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名「イルガキュア184」)
塗工溶剤:2−プロパノール 50質量部
【0088】
さらにその上に、以下に示す可逆性記録層用分散液をバーコーターで塗布し乾燥して、厚み10μmの可逆性感熱記録層とした。
(可逆性感熱記録層用分散液)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:100質量部
(日信化学工業株式会社製、商品名「ソルバインC」)
ベヘン酸ステアリル:40質量部
ドデカン2酸:8質量部
テトラヒドロフラン:500質量部
【0089】
次に、前記の如く形成した可逆性記録層の上に、以下に示す保護層形成用塗布液を、厚みが2μmとなるように塗布し、その後、紫外線を160W/cm×10m/分の条件で照射し硬化させて保護層を形成した。
(保護層形成用塗布液)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂:15質量部
(大日本インキ社製、商品名「C 7−157」)
フィラー:5質量部
(水澤化学社製、商品名「P527」)
酢酸エチル:85質量部
【0090】
以上のように、作製したシートをリライタブルシート1として用意した以外、前記実施例1−1と同様にして情報表示カードを作製した。
得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を加熱ロール(温度:180℃、速度:5m/min、接触圧力:1kg/cm)で熱処理した後、室温まで冷却した。その後、加熱ロール(温度:90℃、速度:5m/min、接触圧力:0.5kg/cm)で熱処理して透明の情報表示カードを得た。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)と、オーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.4である。
【0091】
(実施例4−2)
T1=50μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」、平均線膨張係数:α1=7×10−5)を支持シートとし、このシート上に、前記実施例4−1と同様の工程で、バリア層、可逆性感熱記録層及び保護層を形成してシートを作製した。作製したシートをリライタブルシート1として用意した以外、前記実施例1−2と同様にして情報表示カードを作製した。
【0092】
得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を加熱ロール(温度:180℃、速度:5m/min、接触圧力:1kg/cm)で熱処理した後、室温まで冷却した。その後、加熱ロール(温度:90℃、速度:5m/min、接触圧力:0.5kg/cm)で熱処理して透明の情報表示カードを得た。
リライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、オーバーシート3の厚み(T2)平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.41である。
【0093】
作製された情報表示カードの作製直後のカードの反り量と、可視画像を書き換えるためのプリンタに情報表示カードを通し、書き換え操作を繰り返し10回行なったときのカードの反り量を測定するとともに、印字品位と併せて以下の基準により評価を行なった。なお、10回とした理由は、前記実施例1−1、1−2の結果から10回でほぼ反りの量は収束しているとの判断による。
その結果を表4に示す。カードの反りの測定方法、反り量の表示、印字品位、総合評価の判断基準は実施例2と同様である。
なお、プリンタは、パナソニックコミュニケーションズ株式会社製の「KU−R3000」(サーマルヘッド印字条件:0.2mJ/dots、ヒーターバー消去条件:100℃(速度:28mm/sec))を使用した。
【0094】
【表4】

【実施例5】
【0095】
図3に示される、リライタブルシート1、コアシート2、2、オーバーシート3及びインレットシート4を一体に貼り合せた情報表示カードを作製して評価した。
【0096】
(実施例5−1)
リライタブルシート1として、100μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)を支持シートとし、その上にロイコ染料系の可逆性感熱記録層を積層したシート(前記「リコーRECO−View CRフィルム530RE」)を用意し、これを300mm×300mmのサイズに裁断した。
また、100μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WET」)からなるコアシート2と、250μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)からなるオーバーシート3と、38μm厚の延伸PETフィルムにICチップとアンテナコイルからなるICモジュール(図示せず)を搭載したインレットシート4とを用意し、それぞれ300mm×300mmのサイズに裁断した。
各シートを上からリライタブルシート1、コアシート2、インレットシート4、コアシート2、オーバーシート3の順に重ね合わせ、これを、プレス温度:150℃、シート面圧:20kgf/cm、加熱時間:20分間の加工条件で加熱プレスを行ってプラスチックカード用シートを一体成形した。
次に、成形されたシートを打ち抜き刃でカードの輪郭形状に切断し、表面に可逆性感熱記録層を有する情報表示カードを作製した。
そして、得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を加熱ロール(温度:180℃,速度:5m/min,接触圧力:1kg/cm)で熱処理した。
支持シートの厚み(T1)とオーバーシート3の厚み(T2)の比(T1/T2)は0.4である。
【0097】
(実施例5−2)
リライタブルシート1として、50μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PA−C」)を支持シートとし、その上にロイコ染料系の可逆性感熱記録層を積層したシート(前記「リコーRECO−View CRフィルム530RE」)を用意し、これを300mm×300mmのサイズに裁断した。
また、100μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WHT」)からなるコアシート2と、200μm厚のポリエステル系フィルム(前記「ディアフィクス PG−WET」)からなるオーバーシート3と、38μm厚の延伸PETフィルムにICチップとアンテナコイルからなるICモジュール(図示せず)を搭載したインレットシート4とを用意し、それぞれ300mm×300mmのサイズに裁断した。
各シートを上からリライタブルシート1、コアシート2、インレットシート4、コアシート2、オーバーシート3の順に重ね合わせ、実施例4−1と同じ加工条件で加熱プレスを行なってプラスチックカード用シートを一体成形した。
次に、成形されたシートを打ち抜き刃でカードの輪郭形状に切断し、表面に可逆性感熱記録層を有する情報表示カードを作製した。
そして、得られた情報表示カードの可逆性感熱記録層を配している側を、実施例4−1と同じ加熱条件で熱処理した。
カードを構成する可逆性感熱記録層側の最外層シートであるリライタブルシート1の支持シートの厚み(T1)、平均線膨張係数(α1)と、逆側の最外層シートであるオーバーシート3の厚み(T2)、平均線膨張係数(α2)の比〔(T1×α1)/(T2×α2)〕は0.41である。
【0098】
両実施例により作製された情報表示カードの評価を実施例2及び実施例3と同様に行なった。その結果を表5に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
以上、各実施例の評価結果から明らかな通り、積層シート一体化するシートのうち、最外層である支持シートとオーバーシートを、同じ材質のものを用いるとともにその厚み比であるT1/T2が0.3よりも大きくかつ0.5以下を満足する実施例と、異なる材質のものを用いるとともにその厚みと平均線膨張係数の積の比である(T1×α1)/(T2×α2)が0.3よりも大きくかつ0.5以下を満足する実施例では、加熱プレス後、反ったカードに対して加熱ロールで可逆性感熱記録層を配している側のみを選択的に加熱処理することによって、カード作製直後及び10回書き換え後ともに印字品位において全く問題がないものであった。
一方、比較例2−1(T1/T2=0.25)と、比較例3−1((T1×α1)×(T2×α2)=0.27)は、初期(加熱処理後)の反りが大きいため、プリンタに挿入することができなかった。また比較例2−2(同=0.67)と、比較例3−2(同=0.65)は、10回書き換え後、凹型に反ってしまい、良好な印字品位を得ることができなかった。
【0101】
以上の説明から明らかなように、本発明の情報表示媒体によれば、カード作製直後の反りは小さく、また、可視画像の書き換えを繰り返し行なっても変形することはなく、カードは平滑に維持され、可逆性感熱記録層に表示する画像の印字品位を良好に保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】(A)は本発明の一実施例における情報表示カード用シートの断面図、(B)はシートを打ち抜いて形成される情報表示カードの反り具合を示す端面図である。
【図2】図1の情報表示カードを所定の関係式の条件で成形した場合に可視画像の書き換えを繰り返し行なったときの書き換え回数とカードの反り量の関係をグラフで表した図である。
【図3】本発明の他の実施例におけるプラスチックカード用シートの断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 リライタブルシート(支持シート)、2 コアシート、3 オーバーシート、4 インレットシート




【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシートを積層一体化して形成される情報表示媒体であって一側の面に温度変化により可視画像を表示し又は消去する可逆性感熱記録層を備えた情報表示媒体において、
情報表示媒体は、表裏両面の最外層に同じ材質のプラスチックシートが貼り合わさっているとともに、可逆性感熱記録層を配した側の最外層のプラスチックシートの厚みT1と、他側の最外層のプラスチックシートの厚みT2とが、次の関係式1を満たす構成を有するものであることを特徴とする情報表示媒体。
(関係式1) 0.3 < T1/T2 ≦ 0.5
【請求項2】
プラスチックシートを積層一体化して形成される情報表示媒体であって一側の面に温度変化により可視画像を表示し又は消去する可逆性感熱記録層を備えた情報表示媒体において、
情報表示媒体は、表裏両面の最外層に貼り合わせたプラスチックシートの材質が互いに異なっているとともに、可逆性感熱記録層を配した側の最外層のプラスチックシートの厚みT1及びその20〜100℃の平均線膨張係数α1と、他側の最外層のプラスチックシートの厚みT2及びその20〜100℃の平均線膨張係数α2とが、次の関係式2を満たす構成を有するものであることを特徴とする情報表示媒体。
(関係式2) 0.3 < (T1×α1)/(T2×α2) ≦ 0.5
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報表示媒体は、加熱プレスにより積層一体化された後、可逆性感熱記録層を配している側のみを選択的に加熱する平滑化処理がされたものであることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項4】
ICチップとアンテナコイルを有する非接触式ICモジュールを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の情報表示媒体。
【請求項5】
可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得る構成のものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の情報表示媒体。
【請求項6】
可逆性感熱記録層が、高分子樹脂母材と高分子樹脂母材に分散された有機低分子化合物を主成分として温度により透明状態と不透明状態とに可逆的に変化する構成のものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の情報表示媒体。
【請求項7】
可逆性感熱記録層の可視画像を10〜100mm/secの速度で、80〜180℃の温度の熱源に接触させながら消去することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の情報表示媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−90834(P2007−90834A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286853(P2005−286853)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】