説明

情報表示面の保護シート及び保護シートの製造方法

【課題】携帯電話等の携帯用端末機器の情報表示面を保護する保護シートを提供する。
【解決手段】アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に,酸素が遮断された状態で紫外線を照射して架橋させて得た,厚み200〜1500μm,光透過率80%以上の粘着弾性体組成物と,厚み10〜300μm,光透過率90%以上のポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとが重合接着されて成る,情報表示面に貼着して使用される保護シートであり,前記粘着弾性体組成物が持つ粘弾性により,情報表示面のガラス板等に直接貼着することができると共に,応力緩和性によって情報表示面を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,携帯電話などの主として携帯用端末機器の情報表示面の保護に用いて好適な粘着弾性体組成物から成る情報表示面の保護シート及びその製造方法に関する。
【0002】
なお,本願における「シート」という用語は,「フィルム」を含むものとして使用する。
【背景技術】
【0003】
各種携帯用端末機器の情報表示面,例えば,携帯電話の情報表示面は,液晶表示パネルの透明基板にガラス板が積層されているが,このガラス板が傷付くと情報表示面に表示された情報を読み取ることが困難となる一方,このガラス板は傷等が付いても容易には交換することができないことから,このような情報表示面のガラス板を保護部材で覆い,傷や汚れ等から保護することが行われている。
【0004】
このようなガラス板の保護部材の一例として,裏面周縁に接着剤が塗布された透明の硬質保護板を,情報表示面のガラス板に貼着して保護することが行われている(特許文献1参照)。
【0005】
なお,このような保護板としては,表面に擦傷防止のためアクリル系,ウレタン系などハードコート膜を塗布形成したものや,前記ハードコート層に反射防止層として酸化錫,酸化亜鉛,などの酸化金属,ITO(酸化インジウムと酸化スズの混合物)の膜を形成したものがある。
【0006】
さらに,前記保護板の一方の面,例えばガラス板との接合面側に前記情報表示面を縁取りするように,宣伝,装飾,隠蔽用の印刷を施したものも提案されている。
【0007】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】実用新案登録第3025389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の保護板は,厚み1〜2mmに形成されたアクリル系樹脂等の硬質板より削り出して製造されているが,この原料である硬質板はある程度撓めることができたとしても,連続したロール状に巻き取れる程の柔軟性を有していない。
【0009】
そのため,前記光反射防止剤の塗布,傷防止のためのハードコート材の塗布等の処理は,ロール状に巻き取ることが可能なフィルムやシートであれば長尺のままコート装置を使用したウエット法等で連続して行うことができるのに対し,前記硬質板では予め所定サイズに切断された板単位で個々に行う必要があり,効率的な連続工程による作業を行うことはできない。
【0010】
また,この保護板は,板状であるためウエット法による光反射防止剤やハードコート剤の塗布はスプレー式,スピン塗布,転写式塗布等に制限され,又乾燥工程の搬送システムも吊り下げ式である必要があり,さらに塗布膜厚の均一化が難しい等の問題などもあり,また,板状のものを個々別々に間欠移送する処理工程は歩留まり,生産性からも非効率的であり,ロール状での処理工程が望まれている。
【0011】
また,アクリル系樹脂等で形成された硬質板を,保護対象とする情報表示面の形状に対応した所定の形状に加工する際には,その硬さ故に複数のドリルなどによる切削工程によって行う必要があり,生産性が低い。
【0012】
また,切削時には大量の切屑粉が発生し,作業環境を悪化させると共に,この切削粉の一部が,この保護板を出荷時に仮に保護するために前記保護板に貼着している感圧性接着剤層を有するフィルムの切断端面に食い込む等して,異物混入検査は煩雑を極めることとなる。
【0013】
さらに従来の保護板は,前述のように硬質のアクリル板等で構成されているため柔軟性に欠け,打ち抜き加工によって切断しようとしても刃厚の逃げ場が無く,生産性の高い刃型での多数同時の抜き断裁を行うことは不可能又は困難である。
【0014】
また,携帯用端末機器の筐体への組み付け時の,ガラス製の情報表示面と前記保護板との間には,前記情報表示面との干渉を避けるため空間を設けてあるが(特許文献1),硬質板である保護板に加わった衝撃が情報表示面のガラス板に伝わることを防止しようとすれば,この空間域にはウレタン系発泡体等の緩衝材を介装する必要があるが,このような緩衝材を前記空間の形状,例えば保護板の周縁に塗布された接着剤の内周形状に対応して型抜きする必要があると共に,この緩衝材を前記情報表示面及び保護板裏面に接着するための粘着テープが必要となり,多数の部品と工程を要することとなる。
【0015】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,前記情報表示面を,硬質板である保護板によって保護するのではなく,粘弾性層を備えたフィルムの応力緩和性によって保護することにより,緩衝材等を別途設けることなく,従って部品点数を減少させることができると共に,連続した工程での生産を可能とし,かつ,通常の携帯端末機器等の情報表示面の保護という用途において十分な強度を確保し得る,情報表示面の保護シート及び前記保護シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために,本発明の情報表示面の保護シートは,
情報表示面を被覆する保護部材であって,
アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に,酸素を遮断した状態で紫外線を照射して架橋させて得た,厚み200〜1500μm,光透過率80%以上の粘着弾性体組成物と,
厚み10〜300μm,光透過率90%以上のポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとが重合接着されて成ることを特徴とする(請求項1)。
【0017】
前記構成の保護フィルムにおいて,前記粘着弾性体組成物は,厚み6mmに対してゴム硬度20〜90度,好ましくは,30〜70度の硬度を有し,縦,横方向に2〜15倍,好ましくは,2〜11倍,より好ましくは3〜8倍の伸び率を有することが好ましい(請求項2)。
【0018】
さらに,前記粘着弾性体組成物の粘着力は,厚みが200〜1500μmで,100〜3000g(1〜30N)/25mm幅〜4000g(40N)/25mm幅以下であることが好ましい(請求項3)。
【0019】
前記保護フィルムにおいて,前記カバーフィルムには,その片面に剥離層を積層することができ,この粘着シートをロール状にして提供することもできる(請求項4)。
【0020】
さらに,前記粘着弾性体組成物を複数層積層して厚みを増しても良く(請求項5),
前記カバーフィルムに,酸化金属による光反射防止層を設けると共に,2〜8Hのハードコート層を設けても良い(請求項6)。
【0021】
また,本発明の保護シートの製造方法は,情報表示面を被覆する保護部材であって,
アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に,酸素を遮断した状態で紫外線を照射して架橋させて得た,厚み200〜1500μm,光透過率80%以上の粘着弾性体組成物と,
厚み10〜300μm,光透過率90%以上のポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとを重合接着したことを特徴とする(請求項7)。
【0022】
前記保護シートの製造方法において,酸素の遮断を実現するために,前記紫外線の照射を窒素雰囲気下で行うものとしても良く(請求項8),又は,
前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を,ガスバリヤー性のフィルム間に積層して前記紫外線の照射を行うものとしても良い(請求項9)。
【0023】
前記粘着弾性体組成物と前記カバーフィルムとが重合接着された粘着フィルムを得るために,前記カバーフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層して積層フィルムを得,得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を窒素雰囲気下における紫外線の照射により架橋させることができる(請求項10)。
【0024】
別の方法としては,前記カバーフィルムをガスバリヤー性と成すと共に,該カバーフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層し,次いで,前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料の前記カバーフィルムとの積層面とは反対側の面にガスバリヤー性を有するフィルムを積層して積層フィルムを得,得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を,紫外線の照射により架橋させても良い(請求項11)。
【0025】
さらに,別の方法としては,ガスバリヤー性を有するフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層し,次いで,前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料の前記ガスバリヤー性を有するフィルムとの積層面とは反対側の面に,ガスバリヤー性を持たせた前記カバーフィルムを積層して積層フィルムを得,得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を,紫外線の照射により架橋させても良い(請求項12)。
【発明の効果】
【0026】
本発明の情報表示面の保護シート及びその製造方法によれば,従来の硬質アクリル製保護板と変わらない80%以上の透明性を有するものでありながら,容易にビク刃型(トムソン刃型)等の打ち抜き機で鋭利に打ち抜け,切断バリの発生も見られず,しかも,ロール状に巻き取りが可能なことにより長尺の状態で連続して製造工程にかけることができ,易加工性と高い生産性が得られた。
【0027】
一方,粘着弾性体組成物が持つ応力緩和性によって保護対象である情報表示面のガラス板等を好適に保護することができた。
【0028】
所定の厚みに形成された粘着弾性組成物の層は,刃物の厚みを受け入れて変形することで刃厚の逃げ場を作るため,少ないバリの発生でビク刃型等による打ち抜き加工により断裁が可能となった。
【0029】
一方,保護シートの寸法安定性,表面平滑性等は,PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルムであるカバーフィルムの持つ硬さによって補完することができた。
【0030】
本発明の保護シートにおいて,粘着弾性組成物の片面又は両面に寸法安定性に優れたフィルム(カバーフィルム,ガスバリヤーフィルム等)を重合接着することにより,面平滑性を安定させることができるだけでなく,硬質アクリル板などの無垢板では得られない打ち抜き加工性を得ることができた。
【0031】
粘着弾性体組成物は粘着性を有するため,携帯電話等の筐体,ガラス表示板に直接貼り付けることができ,これを貼着するための両面テープ等を別途設ける必要がない。
【0032】
また,情報表示面のガラス板等に直接粘着可能であることから,従来技術において説明したような,ガラス表示板と保護部材(保護板)との間に防塵材としての役割を兼ねる樹脂発泡体等の緩衝材を介装する必要がなく,また,このような緩衝材を貼り付けるための両面粘着テープ等が不要であると共に,緩衝材を所定の形状に打ち抜き加工する工程が不要となる等,部品点数の減少,材料の削減,工程数の減少が可能となり,比較的安価に製造することができる情報表示画面の保護シートを提供することができた。
【0033】
紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に対する紫外線の照射を,窒素ガス雰囲気下で,又はガスバリヤー性フィルムで覆った状態で行う等,架橋を阻害する酸素の遮断された状態で行うことで,酸素により阻害されることなく好適に架橋を行わせることができた。
【0034】
カバーフィルムに対して紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を塗布することにより,又はカバーフィルムで前述のガスバリヤー性フィルムを兼ねることにより,紫外線照射の際に酸素の遮断された状態を容易に作り出すことができると共に,粘着弾性体組成物とカバーフィルムとの重合接着工程を別途設けることなく保護フィルムを得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に,本発明の情報表示面の保護シートの実施形態を以下説明する。
【0036】
本発明の情報表示面の保護シートは,光透過率80%以上有する紫外線架橋型アクリル系樹脂材料から成る厚み200〜1500μmの粘着弾性体組成物と,この粘着弾性体組成物と重合接着されて成る光透過率90%以上,厚み10〜300μmのポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとを積層した構造を備えている(図1参照)。
【0037】
〔粘着弾性体組成物〕
本発明の保護シートを構成する粘着弾性体組成物は,アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に紫外線を照射して架橋させることにより得た,粘着性と弾性とを備えた組成物である。
【0038】
このようにして得た粘着弾性体組成物は,高い粘弾性を有し,従来の保護板などに使用されていたアクリル板がその硬さによって情報表示面を保護していたのとは異なり,この粘弾性によって情報表示画面を衝撃等から保護すると共に,それ自体,情報表示面に対する貼着性を有し,かつ,その柔軟性からロール状に巻き取ることが可能で,長尺の状態で連続して加工等を行うことが可能であり,高生産性,高歩留まりが得られる。
【0039】
1.組成
(1)主剤
主剤である前述のアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーとしては,一例として以下のものを使用することができる。
【0040】
アクリル酸,アクリル酸エチル,アクリル酸メチル,アクリル酸2エチルヘキシル,アクリル酸ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソノニル,アクリル酸ジメチルアミノエチル,アクリル酸メトキシエチル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸イソオクチル,アクリル酸N-オクチル,アクリル酸2ヒドロキシエチル,アクリル酸ヒドロキシプロピル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2ヒドロキシエチル,メタクリル酸2ヒドロキシプロピル,メタクリル酸シクロヘキシル,トリメチロールプロパントリメタクリレート,メタクリル酸ターシャリーブチルなどである。
【0041】
これらの主剤は,これを2種以上組合せて使用しても良い。
【0042】
(2)補助材料
紫外線の照射によって前述の粘着弾性体組成物と成る紫外線架橋型アクリル系樹脂材料には,主剤である上述のアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーの他,紫外線架橋開始剤,紫外線架橋促進剤(増感剤)などが配合されている。
【0043】
補助材料としては,他に,フィラーを含めるものとしても良く,このようなフィラーとしては,光反射防止剤としての無機金属系フィラー,硬度,接着性の改質を目的とした酢酸ビニール,スチレン,タッキファイヤー(粘着付与剤)類を配合することも支障はない。但し,粘着弾性体組成物の厚みを200〜1500μmに形成する本発明では,Z方向(厚み方向)で光複屈折が生じ,光反射特性が変化して透視性が低下する点で好ましくない。無機金属系フィラー,酢酸ビニール,スチレン,タッキファイヤーについても,好ましいとは言えない。
【0044】
一方,寸法安定性と硬度調整のために,有機系フィラーなどを添加することもでき,紫外線架橋型アクリル系樹脂材料との親和性,透明性の点から,このようなフィラーとしてアクリル系樹脂フィラーなどの使用がより好適である。
【0045】
2.製造方法
(1)フィルムへの塗布
上述のアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤として紫外線架橋開始剤,紫外線架橋促進剤及び前述したフィラー等を配合したアクリル系樹脂材料を,押出機,ダイコーターなどで押し出してPETフィルム等のフィルム上に積層する。
【0046】
アクリル系樹脂材料を積層する前述のフィルムとしては,後述するカバーフィルム上に直接行っても良く,又は,工程紙(工程フィルム)に塗布したアクリル系樹脂材料に,紫外線照射前に,又は紫外線照射後に後述するカバーフィルムを貼り合わせる等しても良い。
【0047】
押し出されたアクリル系樹脂材料の厚み調整は,押出機の押し出しダイによって行っても良く,又は,コンマコーター,リーバースコーター,ナイフコーターなどによって行っても良いが,気泡の発生を阻止し,異物の付着や巻き込み防止の観点から,押出しダイによる調整が好ましい。
【0048】
アクリル系樹脂材料を塗布する前述のフィルムは特に限定されないが,得られる粘着弾性体組成物の品質を一定とするために,平滑性と寸法安定性を有するものを使用することが好ましい。
【0049】
また,ここで使用するフィルムで後述する紫外線照射工程において説明するガスバリヤーフィルムを兼ねる場合には,ガスバリヤー性を有するフィルムで,好ましくは紫外線透過性を有するものを使用する。
【0050】
一例として,ガスバリヤー性と面平滑性,寸法安定性から二軸延伸PETフィルムの使用が好ましいが,ポリプロピレンなどオレフィン系フィルムを使用しても良い。
【0051】
このフィルムの厚みは,一例として10〜250μmで,耐工程張力,面状耐歪性から厚みで50〜120μmが好適である。
【0052】
アクリル系樹脂材料の塗布に使用した工程フィルムを,後に除去する場合には,片面又は両面に剥離性が付与されていることが望ましく,このような剥離性を付与するために,シリコーン系剥離剤が塗布されたフィルムを使用することが好ましい。
【0053】
剥離性の付与は片面のみでも良いが,ロール状に巻き取る場合を考慮して,両面にシリコーンなどで剥離処理を行うことが好ましい。
【0054】
(2)紫外線照射工程
前述のようにしてフィルム上に塗布されたアクリル系樹脂材料に対し,紫外線を照射して架橋させ,粘着性と弾性を備えた粘着弾性体組成物を得る。
【0055】
紫外線照射工程は,雰囲気の酸素が架橋を阻害するので,酸化防止のため,窒素ガス等によって空気が置換された空間で行うか,又は,ガスバリヤー性を有するフィルムでアクリル系樹脂材料の両面を被覆した状態で行う。
【0056】
前述のアクリル系樹脂材料の積層を行ったフィルムとして,ガスバリヤー性を有するフィルムを使用した場合には,このフィルムとの接合面とは反対側の前記アクリル系樹脂材料の表面に対しても,紫外線照射前に予めガスバリヤー性フィルムを貼着しておく。
【0057】
このガスバリヤー性フィルムとしては,酸素透過度が10000cc/cm2.24h20℃.90%RH「JIS-K-7126」以下であればPE,PPなどのオレフィン系フィルム,PETフィルム,紙−樹脂ラミネート又はコーテッド紙など,いずれを使用しても良く,その材質は問わないが,紫外線ランプの熱線対応,ガスバリヤー性,仕上がり面の平滑性から延伸PETフィルムの使用が好適である。
【0058】
また,紫外線の照射をこのガスバリヤー性フィルム側より行う場合には,ガスバリヤー性フィルムとして紫外線透過性のあるものを使用する。
【0059】
後述するカバーフィルムでこのガスバリヤー性フィルムを兼ねる場合には,ここで貼着するフィルムはガスバリヤー性の他に,カバーフィルムとして要求される性能を満たすものを使用する。
【0060】
ガスバリヤー性フィルムの厚みは5μmでも適応できるが耐裂け性から12μm以上が好ましい。
【0061】
前述の工程フィルム又はガスバリヤー性フィルムの一方が,後述するカバーフィルムを兼ねるものである場合には,紫外線架橋後,得られた粘着弾性体組成物を前記2枚のフィルムと共に打ち抜き加工等によって保護対象とする情報表示面の形状に裁断しても良い。
【0062】
この場合,カバーフィルムとならない方のフィルムに,予め紫外線架橋型アクリル系樹脂材料との接合面にシリコーン系剥離剤を塗布する等して剥離層を形成しておくことで,これを得られた保護シートの粘着弾性体組成物を保護する剥離紙として使用することもできる。
【0063】
紫外線照射後,得られた粘着弾性体組成物をロール状に巻き取る場合には,前述した工程フィルムとガスバリヤーフィルムの双方共に貼着した状態でこれをロール状に巻き取ると,両フィルムの周径差によってギャリング(皺)が生じることから,紫外線照射後,工程フィルム又はガスバリヤーフィルムのいずれか(いずれか一方が後述のカバーフィルムを兼ねる場合には,他方)を剥離することが好ましく,このようにして剥離することを考慮して,工程フィルム又はガスバリヤーフィルムのうち,ここで剥離されるものには,アクリル系樹脂材料の塗布面にシリコーン系などの剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
【0064】
この場合,剥離せずに残す側のフィルムの,粘着弾性体組成物との接合面とは反対側の面にも同様に剥離剤を塗布しておくことで,ロール状に巻き取った後,再度展開する際に,粘着弾性体組成物との剥離性を良好なものとすることかできる。
【0065】
なお,紫外線の照射を前述のように空気を窒素で置換した空間内で行う場合には,前述したガスバリヤー性フィルムの貼着は不要である。
【0066】
〔カバーフィルム〕
カバーフィルムは,前述のようにして得られた粘着弾性組成物と共に本発明の保護シートを構成するもので,ポリエステル系樹脂フィルムによって構成される。
【0067】
カバーフィルムとして使用されるポリエステル系樹脂フィルムとして,寸法安定性,透明性,硬さの点で,二軸延伸ポリエステル系フィルムの使用が好ましく,本実施形態にあっては,一例として二軸延伸PETを使用した。
【0068】
カバーフィルムと成るポリエステル系フィルムの厚みは10〜300μmの範囲で,硬さと断裁加工性から50〜200μm,より好適には100〜200μmである。
【0069】
カバーフィルムには,光反射防止層を設けることができ,この場合には,ポリエステルフィルムの片面に光反射防止剤としてITO,SiO2,TiO2,ZnO2等の膜を形成する。
【0070】
このような膜の形成は,例えばITOなどをスパッタリングすることにより行っても良く,この方法によって光反射防止層を形成する場合には,透明性など信頼性が高いものが得られる。
【0071】
一方,スパッタリングによる金属膜の形成は,償却コスト,プライマー処理及び生産性に難があることから,コストの点で好ましい方法として,例えばITO ,SiO2,TiO2,ZnO2にアクリル系又はアクリル系樹脂のバインダーを加え溶液化又はエマルジョン化し,これをグラビアコーター,スピンコーターなどでポリエステル系フィルムに塗布するウエット法で,前記金属膜を形成してこれを光反射防止層としても良い。
【0072】
ウエット法における反射防止剤として使用するITO ,SiO2,TiO2,ZnO2等の粒径は,透視性の点から微細である程好ましく,10〜500nmとすることが好ましいが,この粒径とする場合には,分散性の悪さと二次凝集によって歩留まりが悪くなることから,粒径1μm程度のもの迄使用しても良い。
【0073】
上述の光反射防止層の形成は,ポリエステル系フィルムのいずれの面に対して行っても良く[図2(A),図3(A),図4(A)],ポリエステル系フィルムの表面側に設ける場合には,後述するハードコート層の上面,ハードコート層と二軸延伸ポリエステル系フィルム間のいずれに設けても良い[図2(A),図3(A)]。もっとも,光反射効率の点,また,前述したようにウエット法により光反射防止膜を形成する場合にはハードコート層が光反射防止層に対するプライマーとしても機能する点から,ハードコート層の上面に形成することが好ましい[図2(A)]。なお,図中下側が粘着弾性体組成物との重合側である(以下同じ。)。
【0074】
反対に,光反射防止層を保護する観点からは,光反射防止層を粘着弾性体組成物に重合される面に形成することが好ましく[図4(A)],保護対象とする情報表示面の種類,保護シートを貼着する目的等に応じて形成位置を選択するものとしても良い。
【0075】
ハードコート層と成るハードコート剤としては,耐擦傷性を考慮して,硬度4H以上のものを使用する。ハードコートの仕上がりはPETフィルムなどの支持体硬さに依存するので,仕上がりで2H以上の要求では上述の範囲を加算して選定する。一例として,公知のウレタン系,アクリル系などのハードコート剤をグラビアコーター,キスコーター(メイヤバー)などにて固形分厚みが0.1〜4μm,屈折歪防止から0.5〜2μmの範囲で塗布することが好ましい。薄いと保護効果が弱く,厚すぎると屈折歪などが生じて視認性低下の原因となる。
【0076】
装飾用,縁取り印刷については,インキ顔料のコンタミ防止からハードコート形成後,又は,光反射防止層の塗布後が好ましく,この上面に印刷するか[図2(B),図3(B),図4(B)],又はポリエステル系フィルムの裏面に印刷する[図2(C),図3(C),図4(C)]。
【0077】
なお,前述のハードコートの上面(ハードコート上に反射防止膜及び/又は印刷層が形成されている場合には反射防止膜又は印刷層上)には,更に剥離剤であるシリコーンを塗布しておくことが好ましく[図2(D)〜(F),図3(D)〜(F),図4(D)〜(F)],このような剥離剤を塗布しておくことで,発明の保護シートをロール状に巻き取った際,後の剥離性が良く便利である。
【0078】
〔粘着弾性体組成物とカバーフィルムの積層〕
以上のようにして得られたカバーフィルムは,前述のようにして得られた粘着弾性体組成物と打ち抜き加工等を行う際に貼り合わせて,本発明の保護シートを得ても良いが,前述のように,予め前述したカバーフィルムを製造しておき,このカバーフィルムを前述の粘着弾性体組成物の製造方法で説明した工程フィルム又はガスバリヤー性フィルムとして使用することで,カバーフィルムと粘着弾性体組成物との重合接着工程を別途設ける必要がなく,製造工程数の減少の点から好ましい。
【0079】
〔作用等〕
以上のようにして得られた本発明の保護シートは,これを打ち抜き加工等によって裁断して,保護対象とする情報表示面の形状に形成する。
【0080】
粘着弾性体組成物は粘接着性を有するため,情報表示面のガラス板等に直接貼ることができ,両面粘着テープが不要で,工程数低減となり省資源化にもつながる。
【0081】
本発明の保護シートは,粘性体である粘着弾性体組成物を主体とした構造であることから,保護対象とする情報表示面の形状に加工する際に打ち抜き加工を採用することができ,従来のアクリル板等からなる保護板を成形する場合に生じていた粉塵の発生は皆無であり,低償却,高生産性での成形が可能である。
【0082】
また,本発明の保護シートの主体を成す粘着弾性体組成物は,柔らかい粘性体なので,情報表示面の表示板の表面に対する追従性が良好で,表示板との間に,防塵及び応力緩和のための発泡体等を別途設ける必要もなく,また,このような発泡体等を貼着するための両面テープ等も不要で,部品点数の更なる減少が可能である。
【実施例】
【0083】
次に,本発明の保護シートの製造実施例を以下に示す。
【0084】
〔粘着弾性体組成物の製造実施例〕
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
目視観察評価方法
ビク刃型打ち抜き機による打ち抜き性の評価(形状が再現され粘着弾性体組成物の流動が無いこと)
○:良い, △:やや変形, ×:変形
バリ異物の発生(断裁された断面にバリがなく又発生が無いこと。)
○:発生なし,△:少し発生, ×バリが多い
なお,PETフィルム188μm/アクリル弾性体/保護用PET厚み25μmフィルムの構成による。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明した本発明の保護シートは,携帯電話,PDA,パーソナルコンピュータの液晶画面,タッチパネル等,各種機器に設けられた情報表示面に簡単に貼着して,これらの保護,装飾に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の保護シートの概略説明図。
【図2】本発明の保護シートに使用するカバーフィルムの概略説明図であり,(A)〜(F)はそれぞれ層構成の変更例を示す。
【図3】本発明の保護シートに使用する別のカバーフィルムの概略説明図であり,(A)〜(F)はそれぞれ層構成の変更例を示す。
【図4】本発明の保護シートに使用する更に別のカバーフィルムの概略説明図であり,(A)〜(F)はそれぞれ層構成の変更例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示面を被覆する保護部材であって,
アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に,ガスバリヤーフィルムにて酸素を遮断した状態で紫外線を照射して架橋させて得た,厚み200〜1500μm,伸び率50〜350%で光透過率80%以上の粘着弾性体組成物と,
厚み10〜300μm,光透過率90%以上のポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとが重合接着されて成る情報表示面の保護シート。
【請求項2】
前記粘着弾性体組成物は,厚み6mmに対してゴム硬度20〜90度の硬度を有し,縦,横方向に2〜15倍の伸び率を有する請求項1記載の情報表示面の保護シート。
【請求項3】
前記粘着弾性体組成物の粘着力は,厚みが200〜1500μmで,100〜3000g(1〜30N)/25mm幅〜4000g(40N)/25mm幅以下である請求項1又は2記載の情報表示面の保護シート。
【請求項4】
前記カバーフィルム片面に剥離層を有し,ロール状に巻き取られて成る請求項1〜3いずれか1項記載の情報表示面の保護シート。
【請求項5】
前記粘着弾性体組成物を複数層積層して成る請求項1〜4いずれか1項記載の情報表示面の保護シート。
【請求項6】
前記カバーフィルムが,酸化金属による光反射防止層を備えると共に,2〜8Hのハードコート層を備えることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の情報表示面の保護シート。
【請求項7】
情報表示面を被覆する保護部材であって,
アクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に,酸素を遮断した状態で紫外線を照射して架橋させて得た,厚み200〜1500μm,光透過率80%以上の粘着弾性体組成物と,
厚み10〜300μm,光透過率90%以上のポリエステル系樹脂フィルムから成るカバーフィルムとを重合接着したことを特徴とする保護シートの製造方法。
【請求項8】
前記紫外線の照射を窒素雰囲気下で行うことを特徴とする請求項7記載の保護シートの製造方法。
【請求項9】
前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を,ガスバリヤー性のフィルム間に積層して前記紫外線の照射を行うことを特徴とする請求項7記載の保護シートの製造方法。
【請求項10】
前記カバーフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層して積層フィルムを得,
得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を窒素雰囲気下における紫外線の照射により架橋させたことを特徴とする請求項7記載の保護シートの製造方法。
【請求項11】
前記カバーフィルムをガスバリヤー性と成すと共に,該カバーフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層し,
次いで,前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料の前記カバーフィルムとの積層面とは反対側の面にガスバリヤー性を有するフィルムを積層して積層フィルムを得,
得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を,紫外線の照射により架橋させたことを特徴とする請求項7記載の保護シートの製造方法。
【請求項12】
ガスバリヤー性を有するフィルムに前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料を積層し,
次いで,前記紫外線架橋型アクリル系樹脂材料の前記ガスバリヤー性を有するフィルムとの積層面とは反対側の面に,ガスバリヤー性を持たせた前記カバーフィルムを積層して積層フィルムを得,
得られた前記積層フィルムの前記アクリル系樹脂材料を,紫外線の照射により架橋させたことを特徴とする請求項7記載の保護シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−238754(P2007−238754A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62632(P2006−62632)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(591015784)共同技研化学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】