説明

情報通信システムとそれを用いたコミュニケーション方法

【課題】騒音の大きな移動体内部において確実でストレスの無い会話を実現、乗客はヘッドホンを着脱する煩わしさからも開放され、客室乗務員は機内サービスの質の向上が図れる旅客航空機などの機内エンターテイメントシステムの実現。
【解決手段】映画や音楽を配信する映像・音楽データ配信手段1、各種データを受信・蓄積および送信するデータ蓄積手段2、機内の情報通信を一括管理する通信管理手段3、天井に設置され座席や通路に所定の通信領域を設定する中継手段4、乗客用の座席に設置され配信された映画や音楽を受信、視聴できる乗客用データ送受信手段5、音楽鑑賞や会話の音声入出力もできる乗客用音声データ送受信手段6、客室乗務員が携帯しデータ通信を行う乗務員用データ送受信手段7、客室乗務員が会話の音声入出力ができる乗務員用音声データ送受信手段8により構成され、乗客および客室乗務員が情報通信システムを利用して会話ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機内などで映画や音楽を視聴できる機内エンターテイメントシステムに使用される情報通信システムとそれを利用したコミュニケーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機などの旅客移動体において、乗客は機内に搭載されている機内エンターテイメントシステムあるいは客室乗務員により、様々な機内サービスを提供されている。
【0003】
例えば、機内エンターテイメントシステムによる機内サービスとして、乗客は配信される映画や音楽などを各乗客用の座席に備えられている画像表示部やヘッドホンを使用して視聴することができる。その他にも同様に座席に備え付けられている操作用端末などを用いてゲームを楽しんだり、航空機外部への電話やインターネットへの接続サービスが可能なシステムも提供されている。これらは全て機内に配備されている情報通信システムにより実現されている。
【0004】
以下に従来の情報通信システムについて説明する。
【0005】
従来、情報通信システムは特許文献1に記載されたものが知られている。図4は従来の情報通信システムの概略構成を示す図である。図4のシステムは航空機の内部に配備されており、21はあらかじめ用意された映画や音楽などのコンテンツを配信する映像・音楽データ配信手段、22は機内の情報通信を一括して管理する通信管理手段、23は機内の各所の天井に設置され、下方に位置する座席や通路に対して所定の範囲の通信領域を設定して空中伝播する信号により通信を行う中継手段、24は機内の乗客用の各座席に設置され、通信管理手段22の管理の元に映像・音楽データ配信手段21から配信された映画や音楽などを中継手段23を介して受信して視聴することができる乗客用データ送受信手段、25は同様に機内の乗客用の各座席に設置され、音楽鑑賞などをすることができる乗客用音声データ受信手段としてのヘッドホン、26は機内で勤務する客室乗務員が携帯し、中継手段23を介してデータ通信を行う乗務員用データ送受信手段である。
【0006】
上記のような構成により従来の情報通信システムでは、乗客は機内に配信されている映画などを乗客用データ送受信手段24により受信して付属の画像表示部に表示してその映像を視聴し、その音声などはヘッドホン25により受信して聞くことができる。
【0007】
一方、客室乗務員による機内サービスとしては、例えば機内食サービスが挙げられる。料理の種類としてはあらかじめ魚料理と肉料理などいくつかの選択肢の中から選択することができる。また飲み物についてもビール、ワイン、ウーロン茶やオレンジジュースなどを各乗客が好みにより選択することができる。
【特許文献1】特開平11−234208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来の情報通信システムでは、例えば乗客がヘッドホンを装着して両耳が塞がっている状態で映画を楽しんだり、音楽鑑賞をしている場合には、客室乗務員が機内食サービスの案内のために自分に話し掛けていることに気付かない場合がある。特に音楽鑑賞をしている時には乗客は目を閉じている場合もあり、乗客は客室乗務員に気付かない可能性が高く、逆に客室乗務員側も乗客が眠っているものと考え、睡眠の邪魔をしないようにするためにその乗客へのサービスを後回しにする場合もある。
【0009】
また仮に乗客が客室乗務員に気付いて機内食サービスを受けようとする場合には、乗客は自らが装着しているヘッドホンを取り外してからでないと客室乗務員との会話を行うことはできない。
【0010】
さらに言えば、ヘッドホンを装着していない乗客であったとしても、航空機内は常に騒音が大きく、客室乗務員や他の乗客との会話の際にお互いの声が聞き取り辛い場合も多々ある。特に会話の相手が少し離れている場合には非常に大きな声で会話をする必要があり、周囲の乗客にも迷惑がかかることになる。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、乗客がヘッドホンを装着していても客室乗務員などからの問い掛けに気付くことができ、ヘッドホンを装着したままでも客室乗務員や他の乗客と会話をすることができ、さらには騒音の大きな航空機内においてもストレス無く会話をすることができる情報通信システムとそれを用いたコミュニケーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、旅客航空機などの移動体の内部において客室乗務員と乗客、または乗客同士、または客室乗務員同士がコミュニケーションをとる際に、前記移動体内部に備えた情報通信システムを介した対話により行うことを特徴とするコミュニケーション方法であり、客室乗務員と乗客、または乗客同士、または客室乗務員同士の間で情報通信システムを利用してコミュニケーションを図ることができるため、航空機内の騒音などに影響されずにストレスの無いコミュニケーションを実現できるという作用を有する。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記情報通信システムを介した対話は、前記客室乗務員と前記乗客または前記乗客同士または客室乗務員同士の双方向通信手段による音声での会話であることを特徴とするコミュニケーション方法であり、客室乗務員と乗客、または乗客同士、または客室乗務員同士の間で情報通信システムを利用して音声での会話によりコミュニケーションを図ることができるため、航空機内の騒音などに影響されずにストレスの無いコミュニケーションを実現できるという作用を有する。
【0014】
本発明の請求項3に記載の情報通信システムは、請求項1から2記載のコミュニケーション方法を実現する情報通信システムであって、
旅客航空機などの移動体の内部において情報通信網に接続された映像・音楽データ配信手段と、前記情報通信網に接続されたデータ蓄積手段と、前記情報通信網に接続された通信管理手段と、前記情報通信網に接続された中継手段と、前記情報通信網に接続された乗客用データ送受信手段と、前記情報通信網に直接または乗客用データ送受信手段を介して接続された乗客用音声データ送受信手段と、前記情報通信網に接続された乗務員用データ送受信手段と、前記情報通信網に直接または前記乗務員用データ送受信手段を介して接続された乗務員用音声データ送受信手段と、を備え、前記映像・音楽データ配信手段は前記情報通信網に音楽および映像とそれに付随する音声データを配信し、前記データ蓄積手段は機内の各種データを受信して蓄積するとともに、要求に応じて蓄積しているデータを送信し、前記通信管理手段は前記映像・音楽データ配信手段や前記データ蓄積手段および前記中継手段との間のデータ通信の制御を行い、前記中継手段は所定の通信領域を設定して前記所定の通信領域内への前記音楽および映像とそれに付随する音声データの送信および前記所定の通信領域内の前記中継手段自身と前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段との間のデータ通信の制御を行うことを特徴とし、
客室乗務員と乗客、または乗客同士、または客室乗務員同士が乗客用データ送受信手段と乗客用音声データ送受信手段および乗務員用データ送受信手段と乗務員用音声データ送受信手段を利用して、機内に配備された情報通信網を介してコミュニケーションをとることができるため、航空機内の騒音などに影響されずにストレスの無いコミュニケーションを実現できるという作用を有する。
【0015】
本発明の請求項4に記載の情報通信システムは、前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段の間で有線または無線のいずれかにより双方向に音声データを送受信可能としたことを特徴とする請求項3記載の情報通信システムであり、
乗客用データ送受信手段と乗客用音声データ送受信手段の間の送受信が有線で行われる場合には、その他の通信のために機内で使用されている無線の通信帯域を消費することなく両者の間で音声データの送受信を行うことができ、乗客用データ送受信手段と乗客用音声データ送受信手段の間の送受信が無線で行われる場合には、乗客用音声データ送受信手段の装着時に接続ケーブルが邪魔になることもなく、また装着したままの状態で移動できるという作用を有する。
【0016】
本発明の請求項5に記載の情報通信システムは、前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段の間で有線または無線のいずれかにより双方向に音声データを送受信可能としたことを特徴とする請求項3から4記載の情報通信システムであり、
乗務員用データ送受信手段と乗務員用音声データ送受信手段の間の送受信が有線で行われる場合には、その他の通信のために機内で使用されている無線の通信帯域を消費することなく両者の間で音声データの送受信を行うことができ、乗務員用データ送受信手段と乗務員用音声データ送受信手段の間の送受信が無線で行われる場合には、乗務員用音声データ送受信手段の装着時に接続ケーブルが邪魔になることもなく、また装着したままの状態で移動できるという作用を有する。
【0017】
本発明の請求項6に記載の情報通信システムは、前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と乗務員用データ送受信手段と乗務員用音声データ送受信手段の情報通信網への接続は有線または無線のいずれかであることを特徴とする請求項3から5記載の情報通信システムであり、
各手段の情報通信網への接続およびデータの送受信が有線で行われる場合には、その他の通信のために機内で使用されている無線の通信帯域を消費することなく音声データの送受信を行うことができ、乗客用データ送受信手段や乗客用音声データ送受信手段の情報通信網への接続およびデータの送受信が無線で行われる場合には、機体ごとに乗客用の座席のシートアレンジを変える場合にも接続ケーブルの長さや引き回しなどを気にする必要が無く配置することができ、乗務員用データ送受信手段や乗務員用音声データ送受信手段の情報通信網への接続およびデータの送受信が無線で行われる場合には、客室乗務員は乗務員用データ送受信手段や乗務員用音声データ送受信手段を携帯したままで機内を自由に動き回ることができるという作用を有する。
【0018】
本発明の請求項7に記載の情報通信システムは、前記中継手段は複数備えられ、前記複数の中継手段が設定する複数の所定の通信領域により移動体の内部空間に必要な通信領域全体をカバーすることを特徴とする請求項3から6記載の情報通信システムであり、
これにより機内のどの場所においても情報通信網への接続ができるという作用を有する。
【0019】
本発明の請求項8に記載の情報通信システムは、前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段は、移動体の内部空間を移動して前記複数の所定の通信領域のいずれにおいても情報通信網への接続が可能であることを特徴とする請求項3から7記載の情報通信システムであり、
これにより客室乗務員は乗務員用データ送受信手段や乗務員用音声データ送受信手段を携帯したままで機内を自由に動き回り、その場で情報通信網へ接続することができるという作用を有する。
【0020】
本発明の請求項9に記載の情報通信システムは、前記乗客用音声データ送受信手段は、前記移動体の内部空間を移動して前記複数の所定の通信領域のいずれにおいても情報通信網への接続が可能であることを特徴とする請求項3から8記載の情報通信システムであり、これにより乗客は乗客用音声データ送受信手段を装着したまま自分の座席を離れた場合にも、情報通信システムを介して音楽鑑賞をしたり、乗務員や他の乗客とも会話を行うことができるという作用を有する。
【0021】
本発明の請求項10に記載の情報通信システムは前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段は各々複数備えられたことを特徴とする請求項3から9記載の情報通信システムであり、
これにより複数の乗客と複数の乗務員の間で情報通信システムを介した各種データの送受信を行うことができるという作用を有する。
【0022】
本発明の請求項11に記載の情報通信システムは、
前記乗客用音声データ送受信手段は音声の入力および出力が可能であると共に、前記入力される音声を音声データとして直接前記情報通信網に送信、または前記乗客用データ送受信手段を介して前記情報通信網に送信し、前記出力される音声は音声データとして直接情報通信網から受信、または前記乗客用データ送受信手段を介して情報通信網から受信して出力することを可能とし、前記乗務員用音声データ送受信手段は音声の入力および出力が可能であると共に、前記入力される音声を音声データとして直接前記情報通信網に送信、または乗務員用データ送受信手段を介して前記情報通信網に送信し、前記出力される音声は音声データとして直接前記情報通信網から受信、または乗務員用データ送受信手段を介して情報通信網から受信して出力することを可能とすることにより、前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段、または前記乗客用音声データ送受信手段と他の前記乗客用音声データ送受信手段、または前記乗務員用音声データ送受信手段と他の前記乗務員用音声データ送受信手段との間で音声による会話を可能としたことを特徴とする請求項3から10記載の情報通信システムであり、
これにより乗客は乗客用音声データ送受信手段から入力した音声が音声データとして直接または乗客用データ送受信手段を介して情報通信網に送信され、その音声データを他の乗客は情報通信網から他の乗客用データ送受信手段を介してまたは直接他の乗客用音声データ送受信手段により受信して変換された音声を聞くことができ、客室乗務員は情報通信網から乗務員用データ送受信手段を介してまたは直接乗務員用音声データ送受信手段により受信して変換された音声を聞くことができ、客室乗務員は乗務員用音声データ送受信手段から入力した音声が音声データとして直接または乗務員用データ送受信手段を介して情報通信網に送信され、その音声データを他の客室乗務員は情報通信網から他の乗務員用データ送受信手段を介してまたは直接他の乗務員用音声データ送受信手段により受信して変換された音声を聞くことができ、乗客は情報通信網から乗客用データ送受信手段を介してまたは直接乗客用音声データ送受信手段により受信して変換された音声を聞くことができるため、情報通信網を介した音声による会話ができるという作用を有する。
【0023】
本発明の請求項12に記載の情報通信システムは、乗客用音声データ送受信手段は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部と、音声を入力することができる音声入力部を備えたヘッドセットであることを特徴とする請求項3から11記載の情報通信システムであり、
これにより乗客は装着したヘッドセットの音声出力部を通して映画の音声や音楽を聴いたり、また客室乗務員や他の乗客が話し掛けた音声を聞くことができ、乗客が装着したヘッドセットの音声入力部を通して話し掛けた音声を情報通信網を介して客室乗務員や他の乗客に伝えることができるという作用を有する。
【0024】
本発明の請求項13に記載の情報通信システムは、乗務員用音声データ送受信手段は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部と、音声を入力することができる音声入力部を備えたヘッドセットであることを特徴とする請求項3から12記載の情報通信システムであり、
これにより客室乗務員は装着したヘッドセットの音声出力部を通して乗客や他の客室乗務員が話し掛けた音声を聞くことができ、客室乗務員が装着したヘッドセットの音声入力部を通して話し掛けた音声を情報通信網を介して乗客や他の客室乗務員に伝えることができるという作用を有する。
【0025】
本発明の請求項14に記載の情報通信システムは、ヘッドセットは、装着した場合に少なくとも片方の耳は塞がらないことを特徴とする請求項13記載の情報通信システムであり、
これにより客室乗務員はヘッドセットを装着している場合にも塞がっていない方の耳を通して、乗客や他の客室乗務員が直接話し掛ける声を聞くことができ、また機内の異常音など周囲の音に気付くことができるという作用を有する。
【0026】
本発明の請求項15に記載の情報通信システムは、乗客用データ送受信手段は、情報通信網に配信された音楽および映像とそれに付随する音声データを受信して前記映像を表示すると共に前記音楽または前記映像に付随する音声データを乗客用音声データ送受信手段に送信可能とし、乗客が前記乗客用データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段により前記音楽または前記映像とそれに付随する音声データを視聴している際に、客室乗務員および他の乗客は前記乗客用データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段に対して、乗務員用音声データ送受信手段および他の乗客用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて、音声による会話を可能としたことを特徴とする請求項3から14記載の情報通信システムであり、
これにより乗客は乗客用データ送受信手段および乗客用音声データ送受信手段により映画や音楽などを楽しむことができ、そのように乗客が映画や音楽を鑑賞している時に、客室乗務員や他の乗客は乗務員用音声データ送受信手段および他の乗客用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて話し掛けることができるという作用を有する。
【0027】
本発明の請求項16に記載の情報通信システムは、
前記乗客用データ送受信手段は客室乗務員および他の乗客からの割り込みによる会話により、受信した映像とそれに付随する音声データの視聴に中断が発生した際もしくはそれ以前より、前記受信した映像とそれに付随する音声データを記録すると同時に所望の時間が経過した後に前記記録した映像とそれに付随する音声データを再生する記録再生部を備え、会話が終了した後に前記視聴していた映像とそれに付随する音声データの続きを再生して視聴が可能であることを特徴とする請求項3から15記載の情報通信システムであり、
これにより乗客は乗客用データ送受信手段および乗客用音声データ送受信手段により映画や音楽を楽しんでいる時に、客室乗務員や他の乗客から割り込みを受けて話し掛けられた場合にも、その会話が終わった後に、割り込みが入った時点の映画や音楽のシーンまで遡って続きを鑑賞することができるという作用を有する。
【0028】
本発明の請求項17に記載の情報通信システムは、前記乗客用データ送受信手段はデータ入出力可能であり、乗客があらかじめ前記乗客用データ送受信手段より入力した食事の嗜好やコミュニケーション言語の種類などの個人情報は前記データ蓄積手段に送信され、前記データ蓄積手段は受信した前記個人情報を蓄積および管理するとともに前記乗務員用データ送受信手段からの要求に応じて前記個人情報を送信し、前記乗務員用データ送受信手段は前記データ蓄積手段に対して前記個人情報の送信要求を行うと共に受信した前記個人情報を確認可能であることを特徴とする請求項3から16記載の情報通信システムであり、
乗客があらかじめ機内食サービスの料理の種類の希望や会話をする時に使用する言語などを入力しておくことにより、客室乗務員は携帯している乗務員用データ送受信手段を使用して乗客の個人情報を確認することができ、機内サービスをスムーズに進めることができる。
【0029】
本発明の請求項18に記載の情報通信システムは、
前記乗務員用データ送受信手段または前記乗務員用音声データ送受信手段が前記乗客用データ送受信手段または前記乗客用音声データ送受信手段にアクセスした場合に、前記アクセスの履歴を自動的もしくは前記乗務員用データ送受信手段から入力して情報通信網を介してデータ蓄積手段に送信し、前記データ蓄積手段は受信した前記アクセスの履歴を蓄積および管理するとともに前記乗務員用データ送受信手段からの要求に応じて前記アクセスの履歴を送信し、前記乗務員用データ送受信手段は前記データ蓄積手段に対して前記アクセスの履歴の送信要求を行うと共に受信した前記アクセスの履歴を確認可能であることを特徴とする請求項3から17記載の情報通信システムであり、
客室乗務員は携帯している乗務員用データ送受信手段を使用して、例えば各乗客に対して機内食サービスを行ったか否かなどのアクセス履歴を確認することができ、乗客に対する機内サービスの実施漏れなどを防ぐことができるという作用を有する。
【0030】
本発明の請求項19に記載の情報通信システムは、
客室乗務員が前記乗務員用データ送受信手段により個人情報およびアクセス履歴などを確認している際に、乗客および他の客室乗務員は前記乗務員用データ送受信手段および前記乗務員用音声データ送受信手段に対して、他の前記乗務員用音声データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて、音声による会話をすることを可能としたことを特徴とする請求項3から18記載の情報通信システムであり、
これにより乗務員が乗務員用データ送受信手段により乗客の個人情報および乗客へのアクセス履歴などを確認している時に、乗客や他の客室乗務員は乗客用音声データ送受信手段および他の乗務員用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて話し掛けることができるという作用を有する。
【0031】
本発明の請求項20に記載の情報通信システムは、
前記乗客用音声データ送受信手段および前記乗務員用音声データ送受信手段は受信した音声データを振動に変換して音声を伝導する骨伝導機能を備え、割り込み音声受信時や緊急放送受信時に確実にコミュニケーションがとれるようにしたことを特徴とする請求項3から19記載の情報通信システムであり、
これにより乗客および客室乗務員が乗客用音声データ送受信手段および乗務員用音声データ送受信手段を装着して映画や音楽鑑賞または他の乗客や客室乗務員と会話をしている時や、機内の騒音が大きい場合などにも、割り込みによる問い掛けや緊急放送などにより確実に気付かせることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0032】
以上のように本発明によれば、乗客は機内エンターテイメントシステム利用時に客室乗務員と会話を行う際のヘッドホンの着脱などの煩わしさからの開放や、騒音の大きな航空機内でのストレスの無い会話の実現、客室乗務員は機内サービスの質の向上などを可能とする情報通信システムと、それを用いたコミュニケーション方法を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0034】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態の情報通信システムを説明する図である。図1において1はあらかじめ用意された映画や音楽などのコンテンツを配信する映像・音楽データ配信手段、2は機内の各種データを受信して蓄積するとともに要求に応じて蓄積しているデータを送信するデータ蓄積手段、3は機内の情報通信を一括して管理する通信管理手段、4は機内の各所の天井に設置され、下方に位置する座席や通路に対して所定の範囲の通信領域を設定して空中伝播する信号により通信を行う複数の中継手段、5は機内の乗客用の各座席に設置され、通信管理手段3の管理の元に映像・音楽データ配信手段1から配信された映画や音楽などを中継手段4を介して受信して視聴することができる複数の乗客用データ送受信手段、6は同様に機内の乗客用の各座席に設置され、乗客が音楽鑑賞などをすることができるとともに会話の際の音声入出力もできる複数の乗客用音声データ送受信手段としてのヘッドセット、7は機内で勤務する客室乗務員が携帯し、中継手段4を介してデータ通信を行う複数の乗務員用データ送受信手段、8は客室乗務員が会話の際の音声入出力ができる複数の乗務員用音声データ送受信手段としてのヘッドセットである。
【0035】
以下、本発明の実施の形態の情報通信システムについて図1を用いて説明する。
【0036】
本発明の実施の形態の情報通信システムでは、映像・音楽データ配信手段1、データ蓄積手段2、通信管理手段3および中継手段4は双方向にデータを伝送できるケーブルで接続されている。また乗客用データ送受信手段5、乗客用音声データ送受信手段6、乗務員用データ送受信手段7および乗務員用音声データ送受信手段8は中継手段4が設定する無線の通信領域内においてデータの送受信を行うことができる。
【0037】
ここで使用される乗客用データ送受信手段5および乗客用音声データ送受信手段6は例えば図2に示すような構成となっている。図2において(b)は乗客用データ送受信手段5の構成を示している。10はデータ送受信部であり、情報通信網に配信されている映像や音声などのデータを受信したり、データを入力して情報通信網に送信することができる。9は画像を表示する画像表示部であり、受信した映画などの映像を画像表示部9に表示して見ることができる。また(a)は乗客用音声データ送受信手段6の構成を示している。13は音声データ送受信部であり、情報通信網を介して音声データを送受信することができる。11は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部(スピーカー)である。12は声による音声を入力して音声データに変換することができる音声入力部(マイク)である。
【0038】
乗客用データ送受信手段5および乗客用音声データ送受信手段6としては図2の(d)および(c)のような構成でもよい。図2(d)は乗客用データ送受信手段5、(c)は乗客用音声データ送受信手段6であり、両者の間はケーブル14により接続されており、ケーブル14を介して双方向に音声データの送受信を行うことができる。これにより両者の間での音声データの送受信に関しては無線の通信帯域を消費することなく行うことができる。その他の部分については図2(b)および(a)と同じである。
【0039】
これらの乗客用データ送受信手段5および乗客用音声データ送受信手段6を用いて、例えば乗客が映画を視聴したい場合には、自分の座席に設置されている乗客用データ送受信手段5により視聴したい映画のコンテンツ配信要求を送信する。このコンテンツ配信要求は中継手段4を介して通信管理手段3により制御されて映像・音楽データ配信手段1に受信され、映像・音楽データ配信手段1はこのコンテンツ配信要求に応じて映画を配信し、配信された映画は通信管理手段3により制御されて中継手段4を介して乗客用データ送受信手段5に送られる。乗客用データ送受信手段5は受信した映画を付属の画像表示部9に表示する。また乗客用音声データ送受信手段6は、この映画に付随する音声データを乗客用データ送受信手段5を介して受信、もしくは中継手段4から直接受信して音声に変換して音声出力部11から出力する。このようにして乗客は映画の映像を乗客用データ送受信手段5で見ながら、その音声を乗客用音声データ送受信手段6により聴くことができる。
【0040】
一方、乗客用音声データ送受信手段6には音声を入力することができる音声入力部12も備えられているため、これを使用した音声による会話も実現することができる。例えば乗客Aが乗客Bに対して話し掛ける場合には、乗客Aが乗客A用の乗客用音声データ送受信手段6の音声入力部12から入力した声は音声データに変換された後、乗客A用の乗客用データ送受信手段5、中継手段4、または両方を介して、もしくは直接情報通信網に送信される。この音声データは中継手段4、乗客B用の乗客用データ送受信手段5、または両方を介して、もしくは直接情報通信網から乗客B用の乗客用音声データ送受信手段6により受信された後、音声に変換されて音声出力部11から出力され、乗客Bは乗客Aの声を聞くことができる。乗客Bが乗客Aに対して話し掛ける場合も同様であり、双方向に音声データを送受信することにより会話をすることができる。
【0041】
この例の場合、乗客用データ送受信手段5が無線により情報通信網に接続されるため、機体ごとに乗客用の座席のシートアレンジを変える場合にも接続ケーブルの長さや引き回しなどを気にする必要が無く配置することができる。また乗客用音声データ送受信手段6が図2(c)のような場合は無線により情報通信網に接続されるため、乗客は乗客用音声データ送受信手段6を装着したままの状態で座席を離れて移動することができ、さらには複数の中継手段4が天井に配置されて、これにより機内の内部空間すべての通信領域がカバーされているため、移動しても情報通信網に対して音声データの送受信が可能となる。
【0042】
なお図2(b)(d)いずれの場合も乗客用データ送受信手段5の情報通信網への接続はデータ送受信部10による中継手段4を介した無線での接続としているが、この部分をケーブルによる有線での接続とすればさらに無線の通信帯域の消費を抑えることができる。
【0043】
一方、客室乗務員については乗務員用データ送受信手段7、乗務員用音声データ送受信手段8を携帯して機内で乗客に対して機内サービスを行う。
【0044】
ここで使用される乗務員用データ送受信手段7および乗務員用音声データ送受信手段8は例えば図3に示すような構成となっている。図3において(b)は乗務員用データ送受信手段7の構成を示している。16はデータ送受信部であり、データ蓄積手段2に蓄積されている各種データを情報通信網を介して受信したり、データを入力して情報通信網に送信することができる。15は画像を表示する画像表示部であり、受信した各種データを画像表示部15に表示して確認することができる。また(a)は乗務員用音声データ送受信手段8の構成を示している。19は音声データ送受信部であり、情報通信網を介して音声データを送受信することができる。17は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部(スピーカー)である。18は声による音声を入力して音声データに変換することができる音声入力部(マイク)である。
【0045】
乗務員用データ送受信手段7および乗務員用音声データ送受信手段8としては図3の(d)および(c)のような構成でもよい。図3(d)は乗客用データ送受信手段7、(c)は乗務員用音声データ送受信手段8であり、両者の間はケーブル20により接続されており、ケーブル20を介して双方向に音声データの送受信を行うことができる。これにより両者の間での音声データの送受信に関しては無線の通信帯域を消費することなく行うことができる。その他の部分については図3(b)および(a)と同じである。
【0046】
乗務員用音声データ送受信手段8には音声を入力することができる音声入力部18も備えられているため、これを使用した音声による会話も実現することができる。例えば客室乗務員Aが客室乗務員Bに対して話し掛ける場合には、客室乗務員Aが客室乗務員A用の乗務員用音声データ送受信手段8の音声入力部18から入力した声は音声データに変換された後、客室乗務員A用の乗務員用データ送受信手段7、中継手段4、または両方を介して、もしくは直接情報通信網に送信される。この音声データは中継手段4、客室乗務員B用の乗務員用データ送受信手段7、または両方を介して、もしくは直接情報通信網から客室乗務員B用の乗務員用音声データ送受信手段8により受信された後、音声に変換されて音声出力部17から出力され、客室乗務員Bは客室乗務員Aの声を聞くことができる。客室乗務員Bが客室乗務員Aに対して話し掛ける場合も同様であり、双方向に音声データを送受信することにより会話をすることができる。勿論、この乗務員用データ送受信手段7および乗務員用音声データ送受信手段8と前述の乗客用データ送受信手段5および乗客用音声データ送受信手段6との間でも同様にして音声による会話を実現することができる。
【0047】
ここで説明した乗務員用音声データ送受信手段8としては前述した図2(a)または(c)に示すような乗客用音声データ送受信手段6と同様な構成としてもよいが、図3(a)または(c)に示すように音声出力部17が片方の耳用しかない構成とした。これは客室乗務員が乗務員用音声データ送受信手段8を装着している場合にも塞がっていない方の耳を通して、乗客や他の客室乗務員が直接話し掛ける声を聞くことができ、また機内の異常音など周囲の音に気付くことができるようにするためである。
【0048】
この例の場合、乗務員用データ送受信手段7および乗務員用音声データ送受信手段8が無線により情報通信網に接続されるため、客室乗務員はこれらを携帯したまま機内を自由に移動することができ、さらには複数の中継手段4が天井に配置されて、これにより機内の内部空間すべての通信領域がカバーされているため、移動しても情報通信網に対して各種データや音声データの送受信が可能となる。
【0049】
なお図3(b)(d)いずれの場合も乗務員用データ送受信手段7の情報通信網への接続はデータ送受信部16による中継手段4を介した無線での接続としているが、この部分をケーブルによる有線での接続とするため、例えば機内の内部空間の複数箇所にケーブルを接続するためのコネクタを設け、このコネクタを介して情報通信網に接続可能とすればさらに無線の通信帯域の消費を抑えることができる。
【0050】
本情報通信システムでは、乗客は乗客用データ送受信手段5から個人情報を入力することができるものとする。図2において画像表示部9は(b)に示すように映像を鑑賞する場合にも使用するが、(d)に示すように個人情報を入力する場合にも使用できるものとし、あらかじめ用意されている項目の中から乗客自身に該当する項目を選択する。例えば座席16Eの乗客が客室乗務員と会話をする際に使用したい言語(ENGLISH)や機内食サービスの時に好みの料理(FISH)などをあらかじめ選択して入力しておく。これらの情報は中継手段4を介して、通信管理手段3の制御の元にデータ蓄積手段2に蓄積される。そして客室乗務員は携帯している乗務員用データ送受信手段7によりこの蓄積された乗客の個人情報を確認することができる。客室乗務員が乗務員用データ送受信手段7により個人情報配信要求を送信すると、この個人情報配信要求は中継手段4を介して通信管理手段3により制御されてデータ蓄積手段2に受信され、データ蓄積手段2はこの個人情報配信要求に応じて個人情報を配信し、配信された個人情報は通信管理手段3により制御されて中継手段4を介して乗務員用データ送受信手段7に送られる。乗務員用データ送受信手段7は受信した個人情報を付属の画像表示部に表示することにより、図3(b)に示すように客室乗務員は座席16Eの乗客の個人情報を確認できる。これにより客室乗務員は乗客への機内サービスをスムーズに行うことができる。
【0051】
また客室乗務員は乗客へのアクセス履歴を乗務員用データ送受信手段7により確認することもできる。例えば機内食サービスを行う際には眠っている乗客に対しては睡眠を妨げないようにするため、その乗客への機内食サービスの提供は後回しにする場合がある。この場合、既にサービスを提供したか否かの情報を記憶しておかなければならない。本情報通信システムでは既にサービスを提供した乗客に対してはそのアクセス履歴を自動的に、もしくは乗務員用データ送受信手段7から入力する。これらの情報は中継手段4を介して、通信管理手段3の制御の元にデータ蓄積手段2に蓄積される。そして客室乗務員は携帯している乗務員用データ送受信手段7によりこの蓄積された乗客へのアクセス履歴を確認することができる。客室乗務員が乗務員用データ送受信手段7によりアクセス履歴配信要求を送信すると、このアクセス履歴配信要求は中継手段4を介して通信管理手段3により制御されてデータ蓄積手段2に受信され、データ蓄積手段2はこのアクセス履歴配信要求に応じてアクセス履歴を配信し、配信されたアクセス履歴は通信管理手段3により制御されて中継手段4を介して乗務員用データ送受信手段7に送られる。乗務員用データ送受信手段7は受信したアクセス履歴を付属の画像表示部に表示することにより、図3(d)に示すように客室乗務員は乗客のアクセス履歴、例えば座席17Hの乗客は白抜きとなっているので機内食サービスは未提供であることを確認できる。
【0052】
本情報通信システムでは、前述した乗客用音声データ送受信手段6と乗務員用音声データ送受信手段8、乗客用音声データ送受信手段6同士、および乗務員用音声データ送受信手段8同士を用いた音声による会話は各乗客および客室乗務員が別の事を行っている際には割り込みを掛けて話し掛けることができるようにしている。例えば前述のように乗客が乗客用音声データ送受信手段6を装着して両耳が塞がっている状態で映画を楽しんでいたり、音楽鑑賞をしている場合には、客室乗務員が機内食サービスの案内のために自分に話し掛けていることに気付かない場合があるが、この場合には客室乗務員が乗務員用音声データ送受信手段8によりこの乗客の乗客用音声データ送受信手段6に対して割り込みを掛けて話し掛けることにより、機内食サービスの提供を行うことを知らせることができる。そしてその後の会話は乗客用音声データ送受信手段6と乗務員用音声データ送受信手段8を介して行うことにより、乗客は自らが装着している乗客用音声データ送受信手段6を取り外すことなく客室乗務員との会話を行うことができる。乗客および客室乗務員がそれぞれ乗客用音声データ送受信手段6と乗務員用音声データ送受信手段8を装着して会話することにより、騒音が大きな航空機内においても、お互いの声を容易に聞き取ることができる。また仮に会話の相手が少し離れている場合にも大きな声で会話をする必要がないため、周囲の乗客にも迷惑が掛かることがなくなる。
【0053】
ところでこの映画鑑賞をしている乗客に対して割り込みを掛けて会話を行うという行為は、乗客の映画鑑賞を妨げることにもなる。そこで本情報通信システムでは乗客用データ送受信手段5は例えばハードディスクなどのようなデータを記録すると同時に所定の時間経過後に追い掛けて再生できる機能を持ったデータ記録再生部(図示しない)を備えている。これにより乗客用データ送受信手段5が受信した映画の視聴に中断が発生した際もしくはその少し前のシーンから、受信した映画を記録し始め、会話が終了した後にこの記録していた映画を再生して視聴していた映画の続きを視聴することができるようになる。
【0054】
なお映画の記録開始タイミングは割り込みが掛かったことを検知して自動で開始してもよいし、手動で開始してもよい。
【0055】
一方、前述のように客室乗務員が乗務員用音声データ送受信手段8により乗客の個人情報や乗客へのアクセス履歴を確認している場合にも、乗客や他の客室乗務員は乗客用音声データ送受信手段6や乗務員用音声データ送受信手段8を使用して割り込みを掛けて話し掛けることができる。
【0056】
このように乗客や客室乗務員が別の作業を行っている際に、他の乗客や客室乗務員が割り込みを掛けて話し掛ける場合や緊急放送など優先的に知らせたい場合のため、乗客用音声データ送受信手段6と乗務員用音声データ送受信手段8には受信した音声データを振動に変換して音声を伝導する骨伝導機能を備える。これにより確実に割り込みの音声を伝えることが可能となる。
【0057】
以上のように本実施の形態によれば、機内エンターテイメントシステムを実現する情報通信システムを利用して乗客と客室乗務員、乗客同士または客室乗務員同士が音声による会話を行うことができるように構成したので、乗客がヘッドホンを装着して両耳が塞がっている状態で機内エンターテイメントシステムを利用している場合であっても客室乗務員が機内サービスの案内のために自分に話し掛けていることに気付くことができ、また乗客が客室乗務員に気付いて会話をしようとする場合にも乗客は自らが装着しているヘッドホンを取り外すことなく客室乗務員との会話を行うことはでき、騒音の大きな航空機内でも客室乗務員や他の乗客との会話の際にお互いの声を容易に聞き取ることができ、会話の相手が離れている場合にも大きな声で会話をする必要がないため周囲の乗客にも迷惑が掛かることのないコミュニケーション方法を実現することができる。
【0058】
なお、以上の説明では航空機で使用される機内エンターテイメントシステムでの使用について説明したが、他の乗物や野球、サッカーなどの競技場における売り子と観客の間でのコミュニケーション実現などに利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる情報通信システムとそれを用いたコミュニケーション方法は、騒音の大きな移動体内部においてもより確実でストレスの無い会話を実現することができ、乗客は会話の度にヘッドホンを着脱する煩わしさからも開放され、客室乗務員は機内サービスの質の向上を図ることができるので、旅客航空機などの機内エンターテイメントシステムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態における情報通信システムの概略構成を説明する図
【図2】本発明の実施の形態における情報通信システムにおいて使用される乗客用データ送受信手段および乗客用音声データ送受信手段の概略構成を説明する図
【図3】本発明の実施の形態における情報通信システムにおいて使用される乗務員用データ送受信手段および乗務員音声データ送受信手段の概略構成を説明する図
【図4】従来の情報通信システムの概略構成を説明する図
【符号の説明】
【0061】
1、21 映像・音楽データ配信手段
2 データ蓄積手段
3、22 通信管理手段
4、23 中継手段
5、24 乗客用データ送受信手段
6 乗客用音声データ送受信手段
7、26 乗務員用データ送受信手段
8 乗務員用音声データ送受信手段
9、15 画像表示部
10、16 データ送受信部
11、17 音声出力部(スピーカー)
12、18 音声入力部(マイク)
13、19 音声データ送受信部
14、20 ケーブル
25 乗客用音声データ受信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の内部において客室乗務員と乗客、または乗客同士、または客室乗務員同士がコミュニケーションをとる際に、前記移動体内部に備えた情報通信システムを介した対話により行うことを特徴とするコミュニケーション方法。
【請求項2】
前記情報通信システムを介した対話は、前記客室乗務員と前記乗客または前記乗客同士または客室乗務員同士の双方向通信手段による音声での会話であることを特徴とするコミュニケーション方法。
【請求項3】
旅客航空機などの移動体の内部において情報通信網に接続された映像・音楽データ配信手段と、
前記情報通信網に接続されたデータ蓄積手段と、
前記情報通信網に接続された通信管理手段と、
前記情報通信網に接続された中継手段と、
前記情報通信網に接続された乗客用データ送受信手段と、
前記情報通信網に直接または乗客用データ送受信手段を介して接続された乗客用音声データ送受信手段と、
前記情報通信網に接続された乗務員用データ送受信手段と、
前記情報通信網に直接または前記乗務員用データ送受信手段を介して接続された乗務員用音声データ送受信手段と、
を備え、
前記映像・音楽データ配信手段は前記情報通信網に音楽および映像とそれに付随する音声データを配信し、前記データ蓄積手段は機内の各種データを受信して蓄積するとともに、要求に応じて蓄積しているデータを送信し、前記通信管理手段は前記映像・音楽データ配信手段や前記データ蓄積手段および前記中継手段との間のデータ通信の制御を行い、前記中継手段は所定の通信領域を設定して前記所定の通信領域内への前記音楽および映像とそれに付随する音声データの送信および前記所定の通信領域内の前記中継手段自身と前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段との間のデータ通信の制御を行うことを特徴とする情報通信システム。
【請求項4】
前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段の間で有線または無線のいずれかにより双方向に音声データを送受信可能としたことを特徴とする請求項3記載の情報通信システム。
【請求項5】
前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段の間で有線または無線のいずれかにより双方向に音声データを送受信可能としたことを特徴とする請求項3から4記載の情報通信システム。
【請求項6】
前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と乗務員用データ送受信手段と乗務員用音声データ送受信手段の情報通信網への接続は有線または無線のいずれかであることを特徴とする請求項3から5記載の情報通信システム。
【請求項7】
前記中継手段は複数備えられ、前記複数の中継手段が設定する複数の所定の通信領域により移動体の内部空間に必要な通信領域全体をカバーすることを特徴とする請求項3から6記載の情報通信システム。
【請求項8】
前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段は、移動体の内部空間を移動して前記複数の所定の通信領域のいずれにおいても情報通信網への接続が可能であることを特徴とする請求項3から7記載の情報通信システム。
【請求項9】
前記乗客用音声データ送受信手段は、前記移動体の内部空間を移動して前記複数の所定の通信領域のいずれにおいても情報通信網への接続が可能であることを特徴とする請求項3から8記載の情報通信システム。
【請求項10】
前記乗客用データ送受信手段と前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段は各々複数備えられたことを特徴とする請求項3から9記載の情報通信システム。
【請求項11】
前記乗客用音声データ送受信手段は音声の入力および出力が可能であると共に、前記入力される音声を音声データとして直接前記情報通信網に送信、または前記乗客用データ送受信手段を介して前記情報通信網に送信し、前記出力される音声は音声データとして直接情報通信網から受信、または前記乗客用データ送受信手段を介して情報通信網から受信して出力することを可能とし、前記乗務員用音声データ送受信手段は音声の入力および出力が可能であると共に、前記入力される音声を音声データとして直接前記情報通信網に送信、または乗務員用データ送受信手段を介して前記情報通信網に送信し、前記出力される音声は音声データとして直接前記情報通信網から受信、または乗務員用データ送受信手段を介して情報通信網から受信して出力することを可能とすることにより、前記乗客用音声データ送受信手段と前記乗務員用音声データ送受信手段、または前記乗客用音声データ送受信手段と他の前記乗客用音声データ送受信手段、または前記乗務員用音声データ送受信手段と他の前記乗務員用音声データ送受信手段との間で音声による会話を可能としたことを特徴とする請求項3から10記載の情報通信システム。
【請求項12】
乗客用音声データ送受信手段は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部と、音声を入力することができる音声入力部を備えたヘッドセットであることを特徴とする請求項3から11記載の情報通信システム。
【請求項13】
乗務員用音声データ送受信手段は受信した音声データを音声に変換して出力する音声出力部と、音声を入力することができる音声入力部を備えたヘッドセットであることを特徴とする請求項3から12記載の情報通信システム。
【請求項14】
ヘッドセットは、装着した場合に少なくとも片方の耳は塞がらないことを特徴とする請求項13記載の情報通信システム。
【請求項15】
乗客用データ送受信手段は、情報通信網に配信された音楽および映像とそれに付随する音声データを受信して前記映像を表示すると共に前記音楽または前記映像に付随する音声データを乗客用音声データ送受信手段に送信可能とし、乗客が前記乗客用データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段により前記音楽または前記映像とそれに付随する音声データを視聴している際に、客室乗務員および他の乗客は前記乗客用データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段に対して、乗務員用音声データ送受信手段および他の乗客用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて、音声による会話を可能としたことを特徴とする請求項3から14記載の情報通信システム。
【請求項16】
前記乗客用データ送受信手段は客室乗務員および他の乗客からの割り込みによる会話により、受信した映像とそれに付随する音声データの視聴に中断が発生した際もしくはそれ以前より、前記受信した映像とそれに付随する音声データを記録すると同時に所望の時間が経過した後に前記記録した映像とそれに付随する音声データを再生する記録再生部を備え、会話が終了した後に前記視聴していた映像とそれに付随する音声データの続きを再生して視聴が可能であることを特徴とする請求項3から15記載の情報通信システム。
【請求項17】
前記乗客用データ送受信手段はデータ入出力可能であり、乗客があらかじめ前記乗客用データ送受信手段より入力した食事の嗜好やコミュニケーション言語の種類などの個人情報は前記データ蓄積手段に送信され、前記データ蓄積手段は受信した前記個人情報を蓄積および管理するとともに前記乗務員用データ送受信手段からの要求に応じて前記個人情報を送信し、前記乗務員用データ送受信手段は前記データ蓄積手段に対して前記個人情報の送信要求を行うと共に受信した前記個人情報を確認可能であることを特徴とする請求項3から16記載の情報通信システム。
【請求項18】
前記乗務員用データ送受信手段または前記乗務員用音声データ送受信手段が前記乗客用データ送受信手段または前記乗客用音声データ送受信手段にアクセスした場合に、前記アクセスの履歴を自動的もしくは前記乗務員用データ送受信手段から入力して情報通信網を介してデータ蓄積手段に送信し、前記データ蓄積手段は受信した前記アクセスの履歴を蓄積および管理するとともに前記乗務員用データ送受信手段からの要求に応じて前記アクセスの履歴を送信し、前記乗務員用データ送受信手段は前記データ蓄積手段に対して前記アクセスの履歴の送信要求を行うと共に受信した前記アクセスの履歴を確認可能であることを特徴とする請求項3から17記載の情報通信システム。
【請求項19】
客室乗務員が前記乗務員用データ送受信手段により個人情報およびアクセス履歴などを確認している際に、乗客および他の客室乗務員は前記乗務員用データ送受信手段および前記乗務員用音声データ送受信手段に対して、他の前記乗務員用音声データ送受信手段および前記乗客用音声データ送受信手段を介して割り込みをかけて、音声による会話をすることを可能としたことを特徴とする請求項3から18記載の情報通信システム。
【請求項20】
前記乗客用音声データ送受信手段および前記乗務員用音声データ送受信手段は受信した音声データを振動に変換して音声を伝導する骨伝導機能を備え、割り込み音声受信時や緊急放送受信時に確実にコミュニケーションがとれるようにしたことを特徴とする請求項3から19記載の情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−246297(P2006−246297A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61964(P2005−61964)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】