説明

感光体を外部から加熱する方法

【課題】高湿環境における画像のぼやけの原因となる感光体表面の水分を制御するための、安価で低消費電力、かつ感光体の寿命に有害でない方法を提供する。
【解決手段】非接触の厚膜フィルムデバイス200は、自由スペースに、すなわち放熱体には囲まれずに感光体の表面にごく近接して配置され、感光体の一様な帯電および一様な加熱を達成する。導電層206および208に電圧を加えると、比較的高い、実質的に一様な電位に感光体の表面を帯電するとともに、同時に感光体の表面の温度を高くする。薄いセラミック基板201をスペース内で自由に配置することが可能となり、オゾンの発生を最小化する臨界温度が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電写真印刷装置に関し、さらに詳細にはこのような機器に用いられる感光体を外部から加熱することに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、プリンタの静電写真印刷プロセスにおいて、光導電性メンバまたは感光体メンバは、メンバの表面に感光性を与えるために、帯電デバイスによって実質的に一様な電位に帯電される。感光体メンバの帯電部分は露光されて、メンバ上の照射領域内の電荷を選択的に消散させる。これにより、感光体メンバ上に静電潜像が記録される。静電潜像が感光体メンバ上に記録された後、現像剤部材をメンバと接触させることによって、潜像が現像される。一般に、現像剤部材は、キャリア粒体に摩擦電気的に付着するトナー粒子を含む。トナー粒子は、キャリア粒体から、ドナーロールかそれとも感光体メンバ上の潜像かへ引き付けられる。次いでドナーロールへ引き付けられたトナーは、通例は感光体である電荷保持表面の静電潜像上に堆積される。次いでトナー粉像は、感光体メンバからコピー基板へ転写される。
【0003】
トナー部材を支持メンバ上へ加熱によって恒久的に固定定着するまたは溶融定着するために、トナー部材の構成物質が合体してべとつくようになる点まで、トナー部材の温度を高める必要がある。この動作が原因で、トナーは、支持メンバの繊維もしくは小孔に、またはそうでない場合は支持メンバの表面に、ある程度まで流れる。その後、トナー部材が冷却するにつれて凝固することにより、トナー部材は、支持メンバに堅固に接合されるようになる。
【0004】
転写は、典型的には、印刷シートが感光体メンバと接触している状態またはそうでない場合は感光体メンバに近接した状態となるための交流および直流バイアスを、「転写−分離ゾーン」(しばしばちょうど「転写ゾーン」と略記される)が作り出すことによって実行される。転写ゾーン内で用紙または他の基板の背面に(すなわち感光体メンバから離れた面に)加えられた直流バイアスは、感光体メンバから、用紙または転写ゾーンに提供される他の基板へ、トナーを静電気的に転写する。トナー粒子は加熱されて、コピー基板に粉像を恒久的に付着する。バイアス転写ロール、例えば米国特許第3,847,478号明細書に開示された分割バイアスロールもまた、感光体メンバから媒体へ画像を転写するのに用いられる。
【0005】
相対湿度が70%を上回るような高湿度環境において、ときどき一部のマシンでは、コロナ放電によって発生した一部のイオン種が、感光体表面上の水分と結合して導電経路を形成するとき、問題に直面する。静電潜像に対応する表面電荷は、移動する。これにより、潜像の完全な状態は歪むことになる。その結果は、画像のぼやけとして観察される。感光体表面を積極的にリフレッシュすること(典型的には20〜100nm/キロサイクルの範囲内にある高摩耗レート)は、この問題を回避するのに用いられる通常の方法である。当技術分野で十分に周知のことは、例えば米国特許第4,161,357号明細書、米国特許第5,019,682号明細書、および米国特許第7,599,642 B2号明細書に示されるように、表面水分を低減するために、通例は感光体ドラムの内部に備わっているドラム加熱器を用いることである。感光体上の水分を制御する別の技術は、感光体組成物内に、この影響を低減する部材添加物を加えることに関連している。さらに加えて、帯電デバイスの周りの空気を循環させたり、帯電デバイス上に高価なコーティングを用いたりする試みが、なされてきた。これらの従来の解決策は、費用の加算、消費電力の追加、感光体寿命の低下、または動作環境上の制限などの関連した不利益を有していた。
【0006】
それゆえに、感光体の表面の水分を制御する、安価な、低消費電力の、および感光体の寿命に有害でない方法の必要性が、依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性に答えて、高湿度状態にある感光体に関連した画像品質不良を軽減するために、感光体を同時に帯電するとともに加熱する厚膜フィルム帯電デバイスを設けることを含めて、消費電力を追加せずにまたはスペース/ハードウェア要件を追加せずに、電子写真光導電体を外部から加熱する方法が、以下に提供される。
【0008】
主題の装置または方法の特定のコンポーネントに関しては、通常の場合、このようなコンポーネントは、それ自体が他の装置または用途において周知のことであり、本明細書で引用される技術からのものを含めて、本明細書で追加してまたは代替として用いることができることが理解されるだろう。例えば、本明細書で説明される特定のコンポーネント装着、コンポーネント動作、またはコンポーネント駆動システムのうちの多くは、単に典型的なものにすぎず、同一の新規性のある動作および機能が、周知のまたは容易に入手可能な、他の多くの代替策によって提供することができることが、各エンジニアなどによって理解されることになる。追加のまたは代わり詳細、特徴、および/または技術的背景を教示するのに適切なすべての引用文献およびそれらの参考文献は、本明細書で参照することによって援用される。当業者に周知のことは、本明細書で説明する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の2重目的の厚膜フィルム帯電デバイスを含む典型的なモジュール式電子写真プリンタの部分的な正面図である。
【図2】図1の印刷装置に用いられる、本開示に従う厚膜フィルム帯電デバイスの斜視図である。
【図3】図2に示される電極のイオン生成を制御する電気的概略図である。
【図4】厚膜フィルム帯電デバイスの動作を示す描写である。
【図5】特定の時間にわたる感光体の周りの空気の加熱状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図1を参照すると、本開示に従って、感光体の表面上の水分を制御するために、感光体の表面を外部から加熱する改善された方法を含む、電子写真印刷システムが示される。用語「印刷システム」は、本明細書では、任意の関連周辺機器またはモジュール式デバイスを含むプリンタ装置を包含し、用語「プリンタ」は、本明細書では、任意の目的用に印刷出力機能を実行する、デジタルコピー機、書籍制作マシン、ファックス、複合機などの任意の装置を包含する。
【0011】
図1に、矢印8の方向に、クリーニングデバイス120、現像剤140、転写デバイス150、分離デバイス160、厚膜フィルム帯電デバイス200、露光デバイス170およびコントローラ180などの処理ステーションを通して進む感光体110を含むマーキングデバイス100が示される。コントローラ180は、厚膜フィルム帯電デバイス200によって感光体110に加えられる電荷を制御し、次いで露光デバイス170からの画像通りの光パターンが、感光体110を露光して光放電する。続いて、帯電されたトナー粒子が、感光体110の放電領域に付着するように提供され、次いでコントローラが、感光体110に加えられた電荷とは逆符号の電荷を、転写デバイス150に位置する受け入れ基板へ加える動作を制御して、画像通りのパターンを保持しながら、現像されたトナーを移動させ、分離デバイス160を経由して基板へ電荷がいくらか追加されて、感光体110から基板をはぎ取ることを容易にする。次いで残留トナーは、クリーニング部120によって感光体110からクリーニングされる。
【0012】
本開示に従って、グリッド無し2重機能のスコロトロン(コロナ帯電器)すなわち厚膜フィルム帯電デバイス200によって生成された熱は、図2〜図4に示されるように感光体110上の水分を制御することによって、画像のぼやけを防止するのに用いられる。図2のグリッド無しスコロトロンは、感光体110の表面にごく近接するが接しないで位置決めされて、感光体を帯電するとともに同時に温める。厚膜フィルム帯電デバイス200は、2つの導電層206および208との間に位置を定められた誘電体層202を支持するセラミック基板201を含む。導電層206は、その中にスロット210および212を含み、一方で導体208は、2つの導電細片の形をして、これらが上側電極のスロット210および212の下にある状態になっている。コロナ放電は、スロット210および212の内部で作り出される。非接触の厚膜フィルムデバイス200は、自由スペースに、すなわち放熱体には囲まれずに感光体110の表面にごく近接して、配置される。非接触のグリッド無しスコロトロンは、図1に示されるように感光体110にまっすぐに平行に整列して、感光体の一様な帯電および一様な加熱を達成する。導電層206および208に電圧を加えると、比較的高い、実質的に一様な電位に感光体の表面を帯電するとともに、同時に感光体の表面の温度を高くする。グリッド無しスコロトロンの動作の本質性により、薄いセラミック基板がスペース内で自由に浮遊することが可能となり、オゾンの発生を最小化する臨界温度が達成される。
【0013】
図3の電気的概略図は、2ライン動作モードにおけるグリッド無しスコロトロンデバイス200を描写する。各ラインは1つの電極(下側導体)を有し、すべての電極は共通の上側導体(図2)を有する。電極の数は、帯電デバイスの用途、ならびにその用途に必要なセラミック基板の物理的寸法および電力量に依存する。
【0014】
帯電デバイスの部材を選ぶことによって、厚膜フィルム回路が、ピーク・トゥ・ピークで3000ボルトの高さの交流および直流電圧を取り扱うことが可能となる。セラミックの剛性により、感光体110に隣接して、デバイスをその端部で支持しながらつるすことが可能となる。
【0015】
スイッチS−Aは、第1電極へ供給される交流高電圧を制御し、一方スイッチS−Bは、第2電極へ交流高電圧を供給する。コロナ放電を打ち出すために、帯電デバイスの動作には、ピーク・トゥ・ピークで1800ボルトを上回る交流電圧が必要であった。上側導体は、可変直流電圧源に接続される
【0016】
コロナ放電は、電極が交流高電圧を受けると発生する。電極を囲む電場は、スロット210および212(図2)における上側導体の指状突起部間の誘電体表面上で、空気分子をイオン化させる。上側導体は、感光体表面上で帯電を確立し制御する直流電圧まで、さらに電圧を加えられる。グリッド無しスコロトロンは、直流電荷が上端の導電層から感光体表面上へ流れることを可能にするとともにセラミック基板を高温度に加熱する、プラズマ場を発生させる。
【0017】
図4に示されるグリッド無しスコロトロン200の動作を示す描写において、ここではボックス260として表されるグリッド無しスコロトロンに電圧を加えるボックス250で表されるような電圧制御部によってプラズマ場が発生して、直流電荷がそのデバイスの上端の導電層から感光体110表面上へ流れることが可能となるとともに、セラミック基板が高温度に加熱される。グリッド無しスコロトロンによって発生した熱は、サーミスタ270によって測定される。グリッド無しスコロトロンと感光体110表面との間の空気を、感光体表面上の任意の水分を排除するのにちょうど足りる程度まで加熱しながら、同時に感光体の表面を帯電するためには、感光体110に対するグリッド無しスコロトロンの配置は決定的に重要である。
【0018】
図5に図示されるように、ラインLによって表されるグリッド無しスコロトロンは、10秒の動作以内で71.5°Cの温度を達成する。グリッド無しスコロトロンから1.5mmのところにある周囲空気は、ラインMによって表されるように約29°Cとなり、周囲から7°Cの増加量となる。感光体は、回転しながら一様に温まり始める。ラインNによって表されるように、ドラムは、他のどんな加熱エレメントも必要とせずに、60秒以内に24°Cとなることになる。これらの温度は、クリーニングブレードを使用せずに、開放系で達成された。
【0019】
これまで説明された感光体の表面から水分を除去する方法の利点は、感光体表面に接するバイアス帯電ロール(BCR:Bias Charge Roll)の帯電システムが典型的には感光体に振動を伝えるが、固体帯電デバイス200が感光体に振動を伝えないので、感光体表面厚を低減することができて、より速く加熱することが可能となることである。BCR帯電システムは、感光体に交流電流周波数で「歌わせる」とともに、振動を弱めるために感光体基板に追加の質量を必要とさせる。より厚いアルミニウムまたは追加の樹脂消音器として存在することができるこの追加の質量を低減すると、追加のコストを節約することになる。
【0020】
要約すると、本開示のグリッド無し固体帯電スコロトロンの実施の形態は、高湿度状態にある感光体に関連した画像品質不良を軽減するために、感光体を帯電しながら同時に感光体を加熱するように構成される。固体帯電は、直流オフセットされた交流電圧波形に基づいて、基板上に位置を定められた一式の誘電体支持電極において、交流コロナ放電を発生させる。交流の周波数および振幅の組み合わせにより、誘電体が基板を加熱することになる。帯電デバイスが感光体に近接していると、感光体が穏やかに加熱されることになり、順繰りに湿度で引き起こされる横方向への電荷移動および高湿度における画像のぼやけが低減されることになる。それゆえに、帯電デバイスそれ自体によって発生する熱を用いて、高湿度でときどき発生する画像品質不良を軽減することの利益が理解される。加熱は、交流ピーク・トゥ・ピーク電圧の大きさでオン/オフ制御することができるようにもくろまれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真デバイス内の感光体から水分を除去する方法であって、
ドラム上に感光体表面を設けるステップと、
前記感光体表面を帯電する厚膜フィルム帯電デバイスを設けるステップと、
前記厚膜フィルム帯電デバイスを用いて同時に前記感光体表面を加熱して、前記感光体表面から水分を除去し、それによって画像のぼやけを排除するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記感光体表面への正確な熱伝達を達成し、かつ周囲領域への放熱伝達を最小化するように、厚膜フィルム帯電デバイスの周りの自由空気スペースが最適化され、前記スペースが最適化されるように前記厚膜フィルム帯電デバイスを支持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記感光体の一様な帯電および一様な加熱を達成するように、前記厚膜フィルム帯電デバイスの位置を定めるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記感光体表面から約1.5mm離れて、前記厚膜フィルム帯電デバイスの位置を定めるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記感光体表面から少なくとも1.5mm離れて、前記厚膜フィルム帯電デバイスの位置を定めるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
感光体の表面を外部から加熱する方法であって、
ドラムを設けるステップと、
前記ドラム上に、表面部分を含む感光体基板を取り付けるステップと、
2重機能の厚膜フィルム帯電デバイスを設けるステップと、
前記2重機能の厚膜フィルム帯電デバイスを用いて、同時に、前記感光体基板を帯電するとともに前記感光体基板の前記表面部分を加熱し、それによって高湿度環境における前記感光体基板の前記表面部分上の画像のぼやけを排除するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記感光体基板の前記表面部分に、一様な帯電および一様な加熱をもたらすステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シート上の画像のぼやけを防止する方法であって、
画像を処理して前記シート上へ記録する画像装置を設けるステップと、
前記画像を現像する画像現像装置を設けるステップと、
前記シート上へ前記画像を転写する転写デバイスを設けるステップと、
前記シート上に前記画像を定着する定着器を設けるステップと、
前記画像装置に、ドラム感光体および2重利用のグリッド無しスコロトロン帯電デバイスを設けるステップであって、前記2重利用のグリッド無し厚膜フィルム帯電デバイスは、前記ドラム感光体の表面を帯電するとともに同時に前記感光体の前記表面を加熱して、高湿度環境における前記感光体表面上の画像のぼやけを排除するステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記2重利用のグリッド無しスコロトロン帯電デバイスを電子写真デバイスへ組み込むステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ドラム感光体の前記表面から少なくとも1.5mm離れて、前記2重利用のグリッド無しスコロトロン帯電デバイスの位置を定めるステップを含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−3576(P2013−3576A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114920(P2012−114920)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】