説明

感光体カートリッジおよび画像形成装置

【課題】感光ドラムの回転速度を安定させることができながら、そのためのコストの増大を抑制することができる、感光体カートリッジおよびこれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】2次クリーニングギヤ41は、ドラムギヤ29および1次クリーニングギヤ40と噛合している。ドラムギヤ29の回転が2次クリーニングギヤ41を介して1次クリーニングギヤ40に伝達されるので、1次クリーニングローラ10は、感光ドラム7との接触部分において、その表面が感光ドラム7の表面と逆方向に移動するように、感光ドラム7の回転方向と同方向に回転(アゲンスト回転)する。そのため、感光ドラム7の表面には、1次クリーニングローラ10から摩擦力が付与される。また、2次クリーニングギヤ41の回転軸線の位置は、ドラムギヤ29の回転軸線に対する距離が一定となるように固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置およびこれに備えられる感光体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタなどの画像形成装置の一例では、感光ドラムを保持したドラムユニットが装置本体に着脱可能に設けられている。
【0003】
感光ドラムは、中空円筒状のドラム本体と、ドラム本体の中心軸線に沿って延びるドラム軸とを備えている。ドラム軸は、ドラムユニットのフレームに回転不能に保持されている。ドラム本体は、ドラム軸に回転可能に支持されている。ドラム本体の一端部には、フランジが嵌合され、その反対側の他端部には、ドラムギヤが結合されている。ドラムギヤにモータの駆動力が入力されることにより、感光ドラム(ドラム本体)は、一定の方向に回転される。
【0004】
フレームには、現像ローラを保持した現像ユニットが装着される。この現像ユニットがフレームに装着されると、ドラム本体に現像ローラが圧接される。現像ローラは、ドラム本体に圧接された状態で、そのドラム本体に圧接された部分がドラム本体の表面と同じ方向に移動するように、感光ドラムの回転方向と逆方向に回転される。感光ドラムおよび現像ローラの回転に伴って、現像ローラからドラム本体の表面にトナーが供給され、ドラム本体の表面に形成されている静電潜像がトナー像に現像される。また、転写ローラがドラム本体と対向して配置されており、ドラム本体の表面に担持されるトナー像は、転写ローラと対向したときに、その転写ローラとドラム本体との間に進入した用紙に転写される。
【0005】
画像形成動作中、ドラム本体の回転速度は一定に保持されなければならない。なぜなら、ドラム本体の回転速度が変動すると、その変動に応じてドラム本体の表面に形成される静電潜像が伸縮し、用紙に形成される画像(トナー像)が伸縮するなど、用紙に形成される画像の品質の低下を招くからである。
【0006】
ところが、ドラム本体の回転速度は、画像形成動作中に、ドラム本体に入力される外乱により変動する可能性がある。たとえば、ドラム本体と転写ローラとの間に進入する用紙の先端がドラム本体の表面に当接して、ドラム本体の表面が用紙の先端により押され、ドラム本体の回転が助長されると、ドラム本体の回転速度が変動(上昇)する。
【0007】
ドラム本体の回転速度の変動を抑制するため、たとえば、ドラム本体に嵌合されたフランジに対して、ドラム軸に沿う方向から制動部材が押しつけられる。具体的には、フランジに対してドラム軸に沿う方向と対向する位置に、制動部材が設けられ、制動部材とドラムユニットのフレームとの間に、制動部材をフランジに向けて付勢するための付勢部材が設けられる。付勢部材の付勢力により、制動部材がフランジに圧接され、制動部材からフランジに摩擦力が付与されることにより、ドラム本体の回転速度の変動が抑制される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−316631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この構成では、制動部材および付勢部材が追加して必要となるため、部品点数の増加によるコストの増大を招く。
【0010】
本発明の目的は、感光ドラムの回転速度を安定させることができながら、そのためのコストの増大を抑制することができる、感光体カートリッジおよびこれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、第1の発明は、感光体カートリッジにおいて、感光ドラムと、前記感光ドラムの表面に接触し、当該表面に付着している付着物を当該表面上から除去するための1次クリーニングローラと、前記感光ドラムとともに回転する第1ギヤ(ドラムギヤ)と、前記1次クリーニングローラとともに回転する第2ギヤ(クリーニングローラギヤ)と、前記第1ギヤの回転軸線に対する距離が一定となるように回転軸線の位置が固定され、前記第1ギヤおよび第2ギヤと噛合する第3ギヤ(シャフトギヤ)とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、第2の発明は、画像形成装置において、装置本体と、前記装置本体に装着される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光体カートリッジとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感光ドラムの表面には、1次クリーニングローラが接触している。
【0014】
感光体カートリッジには、第1ギヤ、第2ギヤおよび第3ギヤが備えられている。第1ギヤおよび第2ギヤは、それぞれ感光ドラムおよび1次クリーニングローラとともに回転する。第3ギヤは、第1ギヤおよび第2ギヤと噛合している。そのため、第1ギヤに駆動力が入力されて、第1ギヤおよび感光ドラムが回転すると、第1ギヤの回転が第3ギヤを介して第2ギヤに伝達され、第2ギヤおよび1次クリーニングローラが回転する。
【0015】
第1ギヤの回転が第3ギヤを介して第2ギヤに伝達されるので、1次クリーニングローラは、感光ドラムとの接触部分において、その表面が感光ドラムの表面と逆方向に移動するように、感光ドラムの回転方向と同方向に回転(アゲンスト回転)する。そのため、感光ドラムの表面には、1次クリーニングローラから摩擦力が付与され、この摩擦力が感光ドラムの回転に対する抵抗となる。したがって、感光ドラムは、弱い制動力が常に加えられた状態(ブレーキが常に緩く掛けられた状態)で回転される。その結果、感光ドラムの回転速度を安定させることができる。しかも、その回転速度の安定のために、制動部材および付勢部材などを追加して設ける必要がないので、コストの増大を抑制することができる。
【0016】
また、第3ギヤの回転軸線の位置は、第1ギヤの回転軸線に対する距離が一定となるように固定されている。そのため、たとえば、1次クリーニングローラの硬度や外径のばらつきや、使用による1次クリーニングの磨耗による外径の変化や、1次クリーニングローラおよび感光ドラムの回転の振動によって感光ドラムと1次クリーニングとの接触状態の変化などがあったとしても、第1ギヤと第3ギヤとの噛合状態は変化しない。よって、第1ギヤにかかる負荷が変動しないので、第1ギヤおよび感光ドラムを一層安定して回転させることができる。また、第1ギヤの回転を第3ギヤを介して第2ギヤに良好に伝達することができるので、第2ギヤおよび1次クリーニングローラを安定して回転させることができる。
【0017】
さらに、感光ドラムと1次クリーニングローラとの接触部分において、それらの表面が互いに逆方向に移動するので、感光ドラムの表面に付着している付着物は、1次クリーニングローラにより物理的に掻き取られる。そのため、感光ドラムの表面上から付着物を良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタの断面図である。
【図2】図2は、図1に示されるブラックのドラムカートリッジの斜視図である。
【図3】図3は、図1に示される感光ドラム、1次クリーニングローラ、2次クリーニングローラ、軸間距離固定部材、ドラムギヤ、1次クリーニングギヤおよび2次クリーニングギヤの斜視図である。
【図4】図4は、図3に示される構造体の平面図である。
【図5】図5は、図3に示される構造体の左側面図である。
【図6】図6は、図3に示される構造体の右側面図である。
【図7】図7は、ドラムギヤ、1次クリーニングギヤおよび2次クリーニングギヤの左側面図である。
【図8】図8は、感光ドラム、1次クリーニングローラおよび2次クリーニングローラの左側面図である。
【図9】図9は、図3に示される構造体に代えて採用することができる他の構造体の斜視図であり、感光ドラム、1次クリーニングローラ、2次クリーニングローラ、軸間距離固定部材、ドラムギヤ、1次クリーニングギヤ、2次クリーニングギヤおよび軸連結部材を示す。
【図10】図10は、図9に示される構造体の平面図である。
【図11】図11は、図9に示される構造体の左側面図である。
【図12】図12は、図9に示される構造体の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
1.カラープリンタの構成
図1に示されるように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、タンデム型のカラープリンタである。カラープリンタ1は、装置本体の一例としての本体ケーシング2を備えている。本体ケーシング2内には、4つのプロセスカートリッジ3が所定方向に並列に配置されている。4つのプロセスカートリッジ3は、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色用として設けられ、所定方向の一方側からブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの順に配置されている。各プロセスカートリッジ3は、本体ケーシング2の上面のトップカバー4が開放された状態で、本体ケーシング2内に対して装着および離脱可能である。
【0020】
なお、ブラックのプロセスカートリッジ3が配置されている側(図1における左側)をカラープリンタ1の前側(正面側)とする。また、カラープリンタ1の上下左右に関しては、カラープリンタ1を前側から見たときを基準とする。プロセスカートリッジ3については、特に言及がない限り、本体ケーシング2に装着された状態での方向を基準として説明する。
【0021】
各プロセスカートリッジ3は、感光体カートリッジの一例としてのドラムカートリッジ5と、ドラムカートリッジ5に対して着脱可能な現像カートリッジ6とを備えている。
【0022】
ドラムカートリッジ5には、感光ドラム7、帯電器8およびクリーナ9が備えられている。
【0023】
帯電器8は、たとえば、ワイヤおよびグリッドを備えるスコロトロン型帯電器である。帯電器8は、感光ドラム7の後上方に配置されている。
【0024】
クリーナ9は、感光ドラム7の後方であって、帯電器8の後下方に配置されている。クリーナ9は、感光ドラム7の表面に付着している紙粉などの付着物を除去する。
【0025】
最前方に配置されるブラックのプロセスカートリッジ3(ドラムカートリッジ5)に備えられるクリーナ9は、感光ドラム7の表面に接触し、当該表面上から付着物を除去するための1次クリーニングローラ10と、1次クリーニングローラ10の表面に接触し、感光ドラ7ムの表面から1次クリーニングローラ10の表面に転移した付着物を当該表面上から除去するための2次クリーニングローラ11と、2次クリーニングローラ11の表面に接触し、1次クリーニングローラ10の表面から2次クリーニングローラ11の表面に転移した付着物を掻き落とすための接触部材12とを備えている。
【0026】
1次クリーニングローラ10および2次クリーニングローラ11は、左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。2次クリーニングローラ11は、1次クリーニングローラ10に対して少し後寄りの下方から接触している。接触部材12は、2次クリーニングローラ11の回転軸線を含む水平面よりも下方に配置され、2次クリーニングローラ11に対して後下方から接触している。
【0027】
現像カートリッジ6には、現像ローラ13が備えられている。現像カートリッジ6がドラムカートリッジ5に装着された状態において、現像ローラ13は、感光ドラム7の表面に対して前上方から接触する。
【0028】
また、本体ケーシング2内には、各感光ドラム7に対応して、LEDユニット14が設けられている。LEDユニット14の先端部は、そのLEDユニット14と対応する感光ドラム7の周面に対向している。
【0029】
感光ドラム7の表面は、帯電器8からの放電によって一様に帯電された後、LEDユニット14に設けられたLEDによって選択的に露光される。この露光によって、感光ドラム7の表面から電荷が選択的に除去され、感光ドラム7の表面に静電潜像が形成される。静電潜像が現像ローラ13に対向すると、現像ローラ13から静電潜像にトナーが供給される。これによって、感光ドラム7の表面にトナー像が形成される。
【0030】
本体ケーシング2の底部には、用紙Pを収容する給紙カセット15が配置されている。給紙カセット15に収容されている用紙Pは、各種ローラにより、搬送ベルト16上に搬送される。搬送ベルト16は、4つの感光ドラム7に下方から対向して配置されている。感光ドラム7に対して搬送ベルト16の上側部分を挟んで対向する各位置には、転写ローラ17が配置されている。搬送ベルト16上に搬送された用紙Pは、搬送ベルト16の走行により、搬送ベルト16と各感光ドラム7との間を順次に通過する。そして、感光ドラム7の表面上のトナー像は、用紙Pと対向したときに、用紙Pに転写される。
【0031】
搬送ベルト16に対して用紙Pの搬送方向における下流側には、定着器18が設けられている。トナー像が転写された用紙Pは、定着器18に搬送される。定着器18では、加熱および加圧により、トナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着した用紙Pは、各種ローラにより、本体ケーシング2の上面の排紙トレイ19に排出される。
2.ドラムカートリッジ
図2に示されるように、ブラックのドラムカートリッジ5は、フレーム21を備えている。フレーム21は、左右方向に間隔を空けて対向する1対の側板22,23と、1対の側板22,23間に架設され、水平方向に延びる下面板24と、1対の側板22,23間に架設され、前上がりに傾斜する傾斜板25と、下面板24の前端縁から前上方に延びる現像カートリッジ装着部26とを一体的に有している。現像カートリッジ6(図1参照)は、現像カートリッジ装着部26に装着される。
【0032】
側板22,23は、側面視で後下方に向けて窄まる略三角形状をなしている。この側板22,23の略三角形状の1辺間に下面板24が架設され、別の1辺間に傾斜板25が架設されている。側板22,23、下面板24および傾斜板25で囲まれる空間は、現像カートリッジ装着部26に向かって開放されている。そして、その空間に、感光ドラム7、帯電器8、1次クリーニングローラ10、2次クリーニングローラ11および接触部材12が収容されている。感光ドラム7、1次クリーニングローラ10および2次クリーニングローラ11は、1対の側板22,23間に回転可能に設けられている。帯電器8は、傾斜板25に保持されている。接触部材12は、下面板24に保持されている。
【0033】
感光ドラム7は、側板22,23における現像カートリッジ装着部26側の端部に支持され、その表面の一部が現像カートリッジ装着部26に向かって露出している。これにより、現像カートリッジ装着部26に現像カートリッジ6が装着されると、現像ローラ13は、感光ドラム7の表面における現像カートリッジ装着部26に向かって露出する部分に接触する。
【0034】
感光ドラム7は、図3,4に示されるように、円筒状のドラム本体27と、このドラム本体27の中心軸線に沿って延びるドラム軸28とを備えている。ドラム本体27は、ドラム軸28に回転可能に支持されている。ドラム本体27の左端部には、周面にギヤ歯を有する第1ギヤの一例としてのドラムギヤ29が相対回転不能に結合されている。ドラムギヤ29の左端面には、本体ケーシング2内に設けられたモータ(図示せず)からの駆動力が入力されるドラムカップリング30が設けられている。ドラムカップリング30は、左側の側板22から外側に露出している。ドラムカップリング30に駆動力が入力されると、ドラム本体27がドラムギヤ29と一体となって回転する。
【0035】
また、感光ドラム7のドラム本体27を左右から挟むように、1対の軸間距離固定部材31,32が設けられている。軸間距離固定部材31,32は、摺動性に優れたPOM(ポリアセタール)などの樹脂材料からなり、図5,6に示されるように、同じ外形をなしている。具体的には、軸間距離固定部材31,32は、感光ドラム7に対向する側面視円形状のドラム対向部33と、ドラム対向部33から後方に延びる軸支持部34とを一体的に有している。
【0036】
左側の軸間距離固定部材31のドラム対向部33には、図3,5に示されるように、ドラムカップリング30が回転可能に挿通されている。そして、ドラム対向部33の左側面には、ドラムカップリング30の周囲を取り囲むように、円筒状のカップリング収容部35が一体的に形成されている。
【0037】
右側の軸間距離固定部材32のドラム対向部33には、図6に示されるように、ドラム軸28の右端部が挿通されている。
【0038】
1次クリーニングローラ10は、図3,4に示されるように、円柱状のローラ本体36と、ローラ本体36の中心軸線に沿って延び、ローラ本体36の両端面から突出するローラ軸37とを備えている。ローラ本体36の周面には、多数のブラシ毛が植立されている。すなわち、1次クリーニングローラ10は、ブラシローラである。
【0039】
2次クリーニングローラ11は、図3,4に示されるように、円柱状のローラ本体38と、ローラ本体38の中心軸線に沿って延び、ローラ本体38の両端面から突出するローラ軸39とを備えている。ローラ本体38は、たとえば、スポンジ材からなる。
【0040】
1次クリーニングローラ10のローラ軸37および2次クリーニングローラ11のローラ軸39は、図3,4に示されるように、軸間距離固定部材31,32の軸支持部34に回転可能に支持されている。すなわち、1次クリーニングローラ10のローラ軸37および2次クリーニングローラ11のローラ軸39の各左端部は、左側の軸間距離固定部材31の軸支持部34に回転可能に挿通されている。また、1次クリーニングローラ10のローラ軸37および2次クリーニングローラ11のローラ軸39の各右端部は、右側の軸間距離固定部材32の軸支持部34に回転可能に挿通されている。
【0041】
これにより、1次クリーニングローラ10および2次クリーニングローラ11の回転軸線間の距離が一定に固定されるとともに、それらの回転軸線と感光ドラム7の回転軸線との間の距離がそれぞれ一定に固定されている。
【0042】
軸間距離固定部材31,32は、1次クリーニングローラ10が感光ドラム7の後方に配置され、2次クリーニングローラ11が1次クリーニングローラ10の後下方に配置されるように、それぞれ側板22,23に固定されている。
【0043】
1次クリーニングローラ10のローラ軸37には、ローラ本体36と左側の軸間距離固定部材31との間において、周面にギヤ歯を有する第2ギヤの一例としての1次クリーニングギヤ40が相対回転不能に設けられている。1次クリーニングギヤ40は、ドラムギヤ29の右方に配置され、ドラムギヤ29と接触していない。
【0044】
2次クリーニングローラ11のローラ軸39には、ローラ本体38と左側の軸間距離固定部材31との間において、周面にギヤ歯を有する第3ギヤの一例としての2次クリーニングギヤ41が相対回転不能に設けられている。2次クリーニングギヤ41は、2段ギヤとして構成され、ドラムギヤ29と噛合するドラムギヤ噛合部42と、1次クリーニングギヤ40と噛合するクリーニングギヤ噛合部43とを一体的に備えている。
【0045】
ドラムカップリング30に駆動力が入力されて、図7に示されるように、ドラムギヤ29が左側から見て時計回りに回転されると、このドラムギヤ29の回転が2次クリーニングギヤ41に伝達され、2次クリーニングギヤ41が左側から見て反時計回りに回転する。そして、2次クリーニングギヤ41の回転は、1次クリーニングギヤ40に伝達され、1次クリーニングギヤ40が左側から見て時計回りに回転する。このように、ドラムカップリング30に入力される駆動力は、ドラムギヤ29、2次クリーニングギヤ41および1次クリーニングギヤ40の順に伝達される。
【0046】
その一方、ドラムギヤ29、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41の回転により、ドラムギヤ29、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41と一体的に、それぞれ感光ドラム7、1次クリーニングローラ10および2次クリーニングローラ11が回転する。感光ドラム7は、図8に示されるように、左側から見て時計回りに回転する。1次クリーニングローラ10は、感光ドラム7の表面に接触した状態で、その接触部分が感光ドラム7の表面と逆方向に移動する方向、つまり左側から見て時計回りに回転する。2次クリーニングローラ11は、1次クリーニングローラ10の表面に接触した状態で、その接触部分が1次クリーニングローラ10の表面と同方向に移動する方向、つまり左側から見て反時計回りに回転する。
【0047】
このとき、1次クリーニングローラ10が感光ドラム7の周速とほぼ同じ周速で回転するように、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41が設計されている。1次クリーニングローラ10は、感光ドラム7との接触部分において、その表面が感光ドラム7の表面と逆方向に移動するように回転するので、1次クリーニングローラ10と感光ドラム7との間に周速差がなくても、1次クリーニングローラ10が感光ドラム7の表面に対して強く摺擦するので、1次クリーニングローラ10により感光ドラム7の表面上から付着物を良好に除去することができる。
3.作用効果
(1)作用効果1
以上のように、感光ドラム7の表面には、1次クリーニングローラ10が接触している。
【0048】
ドラムカートリッジ5には、ドラムギヤ29、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41が備えられている。ドラムギヤ29および1次クリーニングギヤ40は、それぞれ感光ドラム7および1次クリーニングローラ10とともに回転する。2次クリーニングギヤ41は、ドラムギヤ29および1次クリーニングギヤ40と噛合している。そのため、ドラムギヤ29に駆動力が入力されて、ドラムギヤ29および感光ドラム7が回転すると、ドラムギヤ29の回転が2次クリーニングギヤ41を介して1次クリーニングギヤ40に伝達され、1次クリーニングギヤ40および1次クリーニングローラ10が回転する。
【0049】
ドラムギヤ29の回転が2次クリーニングギヤ41を介して1次クリーニングギヤ40に伝達されるので、1次クリーニングローラ10は、感光ドラム7との接触部分において、その表面が感光ドラム7の表面と逆方向に移動するように、感光ドラム7の回転方向と同方向に回転(アゲンスト回転)する。そのため、感光ドラム7の表面には、1次クリーニングローラ10から摩擦力が付与され、この摩擦力が感光ドラム7の回転に対する抵抗となる。したがって、感光ドラム7は、弱い制動力が常に加えられた状態(ブレーキが常に緩く掛けられた状態)で回転される。その結果、感光ドラム7の回転速度を安定させることができる。しかも、その回転速度の安定のために、制動部材および付勢部材などを追加して設ける必要がないので、コストの増大を抑制することができる。
【0050】
また、2次クリーニングギヤ41の回転軸線の位置は、ドラムギヤ29の回転軸線に対する距離が一定となるように固定されている。そのため、たとえば、1次クリーニングローラ10のローラ本体36の硬度や外径ばらつきや、1次クリーニングローラ10の使用によるローラ本体36の磨耗による外径の変化や、1次クリーニングローラ10および感光ドラム7の回転の振動によって感光ドラム7とローラ本体36との接触状態の変化などがあったとしても、ドラムギヤ29と2次クリーニングギヤ41との噛合状態は変化しない。よって、ドラムギヤ29にかかる負荷が変動しないので、ドラムギヤ29および感光ドラム7を一層安定して回転させることができる。また、ドラムギヤ29の回転を2次クリーニングギヤ41を介して1次クリーニングギヤ40に良好に伝達することができるので、1次クリーニングギヤ40および1次クリーニングローラ10を安定して回転させることができる。
【0051】
さらに、感光ドラム7と1次クリーニングローラ10との接触部分において、それらの表面が互いに逆方向に移動するので、感光ドラム7の表面に付着している付着物は、1次クリーニングローラ10により物理的に掻き取られる。そのため、感光ドラム7の表面上から付着物を良好に除去することができる。
(2)作用効果2
また、1次クリーニングギヤ40の回転軸線の位置は、ドラムギヤ29の回転軸線に対する距離が一定となるように固定されている。言い換えれば、1次クリーニングギヤ40は、その回転軸線とドラムギヤ29の回転軸線との間の距離が一定となるように、その位置が固定されている。そのため、1次クリーニングローラ10および感光ドラム7の回転の振動によって感光ドラム7とローラ本体36との接触状態の変化が起こらない。よって、感光ドラム7とローラ本体36との接触状態の変化によるクリーニング不良、つまり感光ドラム7の表面に付着物が回転軸線に沿う方向に延びる筋状に残ることを防止することができる。
(3)作用効果3
さらに、1次クリーニングギヤ40の回転軸線および2次クリーニングギヤ41の回転軸線の位置は、それらの回転軸線間の距離が一定となるように固定されている。言い換えれば、1次クリーニングギヤ40の回転軸線と2次クリーニングギヤ41の回転軸線との間の距離が一定となるように、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41の位置が固定されている。これにより、ドラムギヤ29と2次クリーニングギヤ41との噛合状態だけでなく、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41の噛合状態も一定に保持される。よって、ドラムギヤ29の回転を2次クリーニングギヤ41を介して1次クリーニングギヤ40に良好に伝達することができるので、1次クリーニングギヤ40および1次クリーニングローラ10をより安定して回転させることができる。
【0052】
そして、ドラムギヤ29、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41の各回転軸線の位置の固定は、軸間距離固定部材31,32により達成される。これにより、その固定のためにコストが増大することを回避できる。
(4)作用効果4
1次クリーニングローラ10の表面には、2次クリーニングローラ11が接触している。2次クリーニングローラ11により、感光ドラム7の表面から1次クリーニングローラ10の表面に転移した付着物が当該表面上から除去される。そのため、1次クリーニングローラ10の表面を清浄に保つことができる。
(5)作用効果5
2次クリーニングローラ11は、感光ドラム7の表面に非接触である。したがって、2次クリーニングローラ11の表面から感光ドラム7の表面に付着物が再付着することを防止できる。
(6)作用効果6
2次クリーニングローラ11の表面には、接触部材12が接触している。1次クリーニングローラ10の表面から2次クリーニングローラ11の表面に転移した付着物は、接触部材12により、2次クリーニングローラ11の表面から除去される。
【0053】
2次クリーニングローラ11とともに回転する2次クリーニングギヤ41の回転軸線は、1次クリーニングローラ10とともに回転する1次クリーニングギヤ40の回転軸線を含む水平面よりも下方に配置されている。そして、接触部材12は、2次クリーニングギヤ41の回転軸線を含む水平面よりも下方に配置されている。これにより、2次クリーニングローラ11の表面から除去された付着物が1次クリーニングローラ10上に落下して再付着することを防止できる。
(7)作用効果7
1次クリーニングローラ10は、ブラシローラである。1次クリーニングローラ10として、スポンジローラが採用されてもよいが、ブラシローラが採用されることが好ましい。
【0054】
1次クリーニングローラ10は、良好なクリーニング性能を発揮するため、感光ドラム7の表面に適当な力で圧接されなければならず、そのためには、感光ドラム7の表面への圧接による1次クリーニングローラ10の一定の潰し量を確保しなければならない。1次クリーニングローラ10が比較的弾性が大きいスポンジローラである場合、各部の寸法公差にかかわらず、1次クリーニングローラ10の一定の潰し量を確保するためには、ドラムギヤ29および1次クリーニングギヤ40の各位置を相対的に固定することが困難であり、1次クリーニングローラ10をばねなどの付勢部材により感光ドラム7に向けて付勢された状態で設ける必要がある。1次クリーニングローラ10がブラシローラであれば、スポンジローラよりも弾性が小さいので、ドラムギヤ29および1次クリーニングギヤ40の各位置を相対的に固定しても、各部の寸法公差にかかわらず、1次クリーニングローラ10を感光ドラム7の表面に適当な力で圧接させることができる。
4.第2実施形態
ドラムギヤ29の回転軸線と2次クリーニングギヤ41の回転軸線との間の距離を一定に保持するための構成は、図3,4に示される構成に限らない。図3,4に示される構成に代えて、たとえば、図9,10に示される構成が採用されてもよい。
【0055】
図9,10において、図3,4に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。そして、以下では、図9,10に示される構成について、図3,4に示される構成との相違点のみを説明し、同一の参照符号が付された各部の説明を省略する。
【0056】
図9,10に示されるように、感光ドラム7のドラム本体27を左右から挟むように、1対の軸間距離固定部材91,92が設けられている。軸間距離固定部材91,92は、摺動性に優れたPOMなどの樹脂材料からなり、図11,12に示されるように、同じ外形をなしている。具体的には、軸間距離固定部材91,92は、感光ドラム7に対向する側面視円形状のドラム対向部93と、ドラム対向部93から後方に延びる軸支持部94とを一体的に有している。
【0057】
左側の軸間距離固定部材91のドラム対向部93には、図9,11に示されるように、ドラムカップリング30が回転可能に挿通されている。そして、ドラム対向部93の左側面には、ドラムカップリング30の周囲を取り囲むように、円筒状のカップリング収容部95が一体的に形成されている。
【0058】
右側の軸間距離固定部材92のドラム対向部93には、図12に示されるように、ドラム軸28の右端部が挿通されている。
【0059】
1次クリーニングローラ10は、スポンジローラである。
【0060】
1次クリーニングローラ10のローラ軸37は、図9,10に示されるように、軸間距離固定部材91,92の軸支持部94に回転可能に支持されている。すなわち、1次クリーニングローラ10のローラ軸37の左端部は、左側の軸間距離固定部材91の軸支持部94に回転可能に挿通されている。また、1次クリーニングローラ10のローラ軸37の右端部は、右側の軸間距離固定部材92の軸支持部94に回転可能に挿通されている。
【0061】
1次クリーニングローラ10のローラ軸37と2次クリーニングローラ11のローラ軸39とは、それらの両端部において、軸連結部材96により連結されている。軸連結部材96は、図9に示されるように、ローラ軸37を回転可能に挿通する円筒状の第1挿通部97と、ローラ軸39を回転可能に挿通する円筒状の第2挿通部98と、第1挿通部97と第2挿通部98とを連結する連結部99とを一体的に有している。第1挿通部97には、ローラ軸37におけるローラ本体36と1次クリーニングギヤ40との間の部分が挿通されている。第2挿通部98には、ローラ軸39におけるローラ本体38と2次クリーニングギヤ41との間の部分が挿通されている。
【0062】
そして、第1挿通部97には、コイルばね100の一端が接続されている。コイルばね100の他端は、ドラムカートリッジ5のフレーム21(図2参照)に接続されている。コイルばね100は、フレーム21と第1挿通部97との間に圧縮状態で介在されている。そのため、コイルばね100が第1挿通部97を感光ドラム7に向けて付勢し、これにより、1次クリーニングローラ10は、感光ドラム7の表面に適度な接触圧で弾性的に接触している。
【0063】
この構成においても、2次クリーニングギヤ41の回転軸線の位置は、ドラムギヤ29の回転軸線に対する距離が一定となるように固定される。そのため、たとえば、1次クリーニングローラ10のローラ本体36の硬度や外径ばらつきや、1次クリーニングローラ10の使用によるローラ本体36の磨耗による外径の変化や、1次クリーニングローラ10および感光ドラム7の回転の振動によって感光ドラム7とローラ本体36との接触状態の変化などがあったとしても、ドラムギヤ29と2次クリーニングギヤ41との噛合状態は変化しない。よって、ドラムギヤ29にかかる負荷が変動しないので、ドラムギヤ29および感光ドラム7を一層安定して回転させることができる。しかも、その回転速度の安定のために、制動部材および付勢部材などを追加して設ける必要がないので、コストの増大を抑制することができる。
【0064】
また、軸間距離固定部材91、92は、1次クリーニングギヤ40の回転軸線と2次クリーニングギヤ41の回転軸線との間の距離が一定となるように、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41を固定している。これにより、1次クリーニングギヤ40および2次クリーニングギヤ41の噛合状態が安定する。
5.変形例
本発明は、ブラックのドラムカートリッジ(感光体カートリッジ)に限らず、イエロー、マゼンタおよびシアンのドラムカートリッジに適用されてもよい。
【0065】
また、本発明は、カラープリンタに限らず、モノクロプリンタに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 カラープリンタ
2 本体ケーシング
5 ドラムカートリッジ
7 感光ドラム
10 1次クリーニングローラ
11 2次クリーニングローラ
12 接触部材
29 ドラムギヤ
31 軸間距離固定部材
32 軸間距離固定部材
40 1次クリーニングギヤ
41 2次クリーニングギヤ
91 軸間距離固定部材
92 軸間距離固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムの表面に接触し、当該表面に付着している付着物を当該表面上から除去するための1次クリーニングローラと、
前記感光ドラムとともに回転する第1ギヤと、
前記1次クリーニングローラとともに回転する第2ギヤと
前記第1ギヤの回転軸線に対する距離が一定となるように回転軸線の位置が固定され、前記第1ギヤおよび第2ギヤと噛合する第3ギヤとを備える、感光体カートリッジ。
【請求項2】
前記第2ギヤの回転軸線の位置は、前記第1ギヤの回転軸線に対する距離が一定となるように固定されている、請求項1に記載の感光体カートリッジ。
【請求項3】
前記第1ギヤの回転軸線と前記第2ギヤの回転軸線との間の距離、前記第2ギヤの回転軸線と前記第3ギヤの回転軸線との間の距離、および前記第3ギヤの回転軸線と前記第1ギヤの回転軸線との間の距離がそれぞれ一定となるように、前記第1ギヤ、前記第2ギヤおよび前記第3ギヤの回転軸線の各位置を固定する軸間距離固定部材を備える、請求項2に記載の感光体カートリッジ。
【請求項4】
前記1次クリーニングローラの表面に接触し、前記感光ドラムの表面から前記1次クリーニングローラの表面に転移した付着物を当該表面上から除去するための2次クリーニングローラを備え、
前記第3ギヤは、前記2次クリーニングローラとともに回転する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光体カートリッジ。
【請求項5】
前記2次クリーニングローラは、前記感光ドラムの表面に非接触である、請求項4に記載の感光体カートリッジ。
【請求項6】
前記2次クリーニングローラの表面に接触する接触部材を備え、
前記第3ギヤの回転軸線は、前記第2ギヤの回転軸線を含む水平面よりも下方に配置され、
前記接触部材は、前記第3ギヤの回転軸線を含む水平面よりも下方に配置されている、請求項4または5に記載の感光体カートリッジ。
【請求項7】
前記1次クリーニングローラは、ブラシローラである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光体カートリッジ。
【請求項8】
装置本体と、
前記装置本体に装着される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光体カートリッジとを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−8402(P2012−8402A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145371(P2010−145371)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】