説明

感光体リサイクルシステム

【課題】感光体表面に形成された静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、静電潜像の電荷の動きを表面電位の変動として感光体表面の表面抵抗および経過時間をパラメータとするモデル式の数値計算で算出する手段とを組み合わせて、該感光体の表面抵抗を特定する装置において、該測定における露光書込から測定開始までに要する時間を数値計算における書込からの経過時間として使用し、潜像の形の測定結果と感光体表面抵抗をパラメータとした潜像の形の数値計算結果から感光体表面抵抗値を決定し、該表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間を使用し、該条件下の潜像の形を計算することで、画像形成装置での画像品質を精度よく予測すること。
【解決手段】感光体表面に感光体移動方向に1mm幅以内のサイズで形成した静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、該手段にて測定された電位データを保存し、少なくとも感光体表面抵抗および潜像形成からの経過時間をパラメータとする潜像電位のモデル式の計算を実行し、計算結果と該測定データを照合して感光体表面抵抗値を決定するプログラムを組み込んだ計算手段とから構成された装置において、該決定した表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間から、該時間における潜像電位を計算し、感光体の画像品質を画像出しせずに予測することを特徴とする装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用感光体上の潜像のくずれ、ひいては画像のくずれを予測する装置に関する。また本発明は該潜像のくずれ予測技術を用いた感光体のリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
初めに、本発明と係わる微小領域の潜像計測技術に関することについて説明する。
複写機やレーザプリンタで用いられる電子写真方式は、感光体の表面を均一に帯電する工程と、帯電した感光体表面を露光して感光体表面に静電潜像を形成する工程と、形成された静電潜像を現像剤中のトナーで現像する工程と、トナー像を紙、あるいは中間転写ベルトに転写する工程と、転写されたトナー像を定着する工程と、転写後の感光体上の残トナーを除去するクリーニング工程と、感光体上の静電潜像を除去する除電工程とからなる。
【0003】
最終画像のアウトプット品質には各工程が作用しているため、最終画像から露光工程での潜像品質を知ることは従来容易ではなく、一定の帯電条件に対する帯電電位と一定の露光条件に対する露光後電位を測定し、これら特性値が温度、湿度の環境下でどのように変わるか、あるいは帯電、露光の繰り返しサイクルの後、どのように変わるかをみて、形成される潜像の品質を推測するしかなかった。
しかしながら、この方法では潜像の劣化である、いわゆる地汚れといわれる背景の汚れ、画像ボケ(あるいは画像流れ)という異常画像の評価は、表面電位計が感光体上の広い領域(感光体表面と表面電位計プローブの距離2mmに対し10〜15mmφの領域)の帯電電位を平均して測定するため、潜像の異常を知ることはできなかった。
【0004】
また、次のような社会の要請もある。
すなわち、環境問題に係わり、電子写真方式を採用する画像形成装置では、感光体、現像剤を一体化したカートリッジ、あるいはマガジンと呼ばれるユニットを使用後回収することが広く行なわれている。回収されたユニットは分解され、再生できるものは再生にまわすことになるが、回収された感光体が画像出しに使えない程劣化しているかどうかを判定するのは、現状では画像出しをするしかない。しかし、機種は他品種に渡り、すべての機種を用意するのは負担が大きくなる。そのためリサイクル分野では、画像出しをせずに、出力画像の予測ができる装置が強く求められているが、そのような判定装置はなかった。
【0005】
資源の有効活用の観点から、さまざまな材料のリサイクルが行なわれている。画像形成装置の分野でも、感光体のリサイクルが注目されている。
一般に感光体は、アルミドラム上に感光層を積層して作製され、プロセスカートリッジや、感光体ユニットに組み込まれて用いられている。
【0006】
プロセスカートリッジを用いて画像形成を行なう場合、プロセスカートリッジに予め搭載している現像剤がなくなった時点で、プロセスカートリッジ全体が寿命に達したと判断して、プロセスカートリッジは破棄されてきた。これは感光体の寿命が充分でなかった時代の流れを引きずったものであり、特に、表面保護層を有する感光体や、潤滑剤を感光体に塗布しながら画像形成を行なうプロセスカートリッジでは、プロセスカートリッジ交換時の感光体は、充分な性能を維持している場合が多い。そのため、プロセスカートリッジにトナーを供給しながら長期に渡り用いる画像形成装置が現在は主流となっている。
【0007】
しかし、プロセスカートリッジの寿命は有限であり、一定の画像形成を行なう毎、あるいは異常画像が発生した時点で、プロセスカートリッジは交換されることとなる。
例え異常画像が発生した場合においても、感光体以外のパーツ(例えば、帯電ローラ、クリーニングブレード、クリーニングブラシ、潤滑剤等)の原因で交換される場合が非常に多く、プロセスカートリッジ交換時の感光体は、充分な性能を維持している場合が多い。
また、例え感光体に原因があったとしても、感光体を清掃することで、性能上全く問題のない感光体として用いることができる場合も多々あった。
【0008】
そのため、市場から回収されたプロセスカートリッジ、あるいは感光体ユニットから感光体を取り出し、清掃の後検査し、感光体を再使用する取り組みを行なっている企業も多い。
回収した感光体の検査では、目視、機械による外観検査で、感光体に欠陥がないかどうか調べ、リサイクルする場合が多い。
しかしながら、外観上は問題のない感光体であっても、感光体そのものの静電特性が劣化しているために、異常画像を発生してしまうことも多い。そのため、外観検査で良品と判断された感光体を、プロセスカートリッジ、あるいは感光体ユニットに組み込んで画像形成を行ない、異常画像が生じないことを確認して、感光体を再利用することが最終的には行なわれている。
【0009】
しかしながら、一般に、画像形成を行ない、異常画像が生じないことを確認する画像形成装置は、ユーザーの画像形成装置ではないため、画像形成装置から、感光体を取り出し、感光体に付着したトナー等を除去するため、再度清掃する必要がある。
画像形成を行なったプロセスカートリッジをそのままリサイクルすることも考えられるが、現像剤の密封を完全に行なっていないと、プロセスカートリッジの移動の際の振動により現像剤の流出が生じ、プロセスカートリッジを汚染してしまう。
また、現像剤がキャリアを含む二成分系の場合には、キャリアが感光体に付着し、感光体を傷つけ、異常画像に到るとともに、現像剤の量が少なくなるため、高画質の画像形成を行なうことができなくなってしまう。そのため、回収してきた感光体の良否を、画像形成せずに判定し、感光体をリサイクルするシステムが強く求められていた。
【0010】
また、静電特性が劣化した感光体でも、長期間冷暗所に放置することで一時的に静電特性を回復することもあり、画像評価試験での数枚の画像形成ならば問題なく行なわれる場合もある。
しかし、そのような一時的に静電特性が回復した感光体は、画像形成を繰り返すと、早期に静電特性が劣化してしまい、良好な画像形成が行なわれなくなるため、一時的に静電特性が回復したものかどうかを簡便に評価し、感光体をリサイクルするシステムが求められていた。
【0011】
本発明の感光体の微小領域の潜像計測技術に関することについて説明する。以下の説明から、そのような電子写真用感光体上の微小領域の潜像計測技術が、例えば、感光体のリサイクルシステムに特に有効に用い得るものであることは明らかであろう。
複写機やレーザプリンタで用いられる電子写真方式は、感光体の表面を均一に帯電する工程と、帯電した感光体表面を露光して感光体表面に静電潜像を形成する工程と、形成された静電潜像を現像剤中のトナーで現像する工程と、トナー像を紙、あるいは中間転写ベルトに転写する工程と、転写されたトナー像を定着する工程と、転写後の感光体上の残トナーを除去するクリーニング工程と、感光体上の静電潜像を除去する除電工程とからなる。
【0012】
最終画像のアウトプット品質には各工程が作用しているため、最終画像から露光工程での潜像品質を知ることは従来容易ではなく、一定の帯電条件に対する帯電電位と一定の露光条件に対する露光後電位を測定し、これら特性値が温度、湿度の環境下でどのように変わるか、あるいは帯電、露光の繰り返しサイクルの後、どのように変わるかをみて、形成される潜像の品質を推測するしかなかった。
しかしながら、この方法では潜像の劣化である、いわゆる地汚れといわれる背景の汚れ、画像ボケ(あるいは画像流れ)という異常画像の評価は、表面電位計が感光体上の広い領域(感光体表面と表面電位計プローブの距離2mmに対し10〜15mmφの領域)の帯電電位を平均して測定するため、潜像の異常を知ることはできなかった。
【0013】
高画質化の流れのなかで、微小な領域の静電潜像を直接測定し、潜像の状態を評価する方法・装置が求められている。またリサイクル分野では画像出しをせずに出力画像の品質を予測する方法・装置が必要とされている。
以下に、微小領域ではないが、静電潜像の分解能を出力する方法および装置について説明し、続いて、最近提案されている微小領域の静電潜像を直接評価する方法について説明する。
【0014】
[静電潜像の解像度を出力する方法・装置]
特許文献10の特許第3245887号公報開示の技術は、感光体の表面を帯電し、露光により光を照射する露光部と光を照射しない非露光部とが隣接するように感光体の表面に静電潜像を形成して前記露光部と前記非露光部との間の電位が変化する境界領域の幅または、その時間的変化率を静電潜像の分解能として出力することを内容とする静電潜像の分解能出力方法(同公報の請求項1、2)に係るものであるが、この分解能出力法は、敢えて類似事項を探せば、広義の意味での概念上、本発明のそれと最も近い先行技術にあたる。
この従来技術を示す文献では、感光体上に非露光部と露光部が隣あうステップ状の潜像パターンをつくり、この潜像パターンを潜像測定装置(本文では特定されていないので、市販の表面電位計と推定される)で測定し、文献が定義する感光体の解像度特性を評価する。
【0015】
しかし、市販表面電位計では、空間分解能の性能の点で、定義した感光体の解像度特性を評価できないため、潜像が電荷の自然放電でくずれるのを待つことになる。ここで「くずれる」とは非露光部と露光部の境界領域の幅が最初はほぼ0であったものが、経時に伴って、電荷が水平方向(表面方向)、垂直方向(層方向)に移動し、境界領域が広がり、非露光部と露光部の境界が一定の幅Wとして電位計で測定可能になること(即ち非露光部と露光部の境界において、最初垂直に立っていた表面電位曲線は、経時に伴い傾斜してくる)である(本件添付図面の図17中の番号4参照)。当該特許文献に、測定に当り、露光部と非露光部との境界領域の幅が電位計の解像度より充分大きい状態、すなわち充分測定可能であるとき、露光部と非露光部との境界領域の幅を測定でき、露光からの経過時間を測定することにより数3(境界領域の間=A(t/C・R)1/2;式中、Aは比例定数、tは露光後の経過時間、Cは感光体の容量、Rは感光体の表面抵抗、で表される式)を用いて低分解能な潜像測定装置でも現像位置における静電潜像の解像度を算出することができる旨記載(同公報[0016])されるとおりである。この特許文献では、非露光部と露光部の境界の幅(W)の変化は時間の関数として定義されており(下記式(A))、潜像形成後から、電位計で測定するまでの時間を計測しておき、式(A)に代入し、1/RC(Rは感光体の表面抵抗、Cは感光体の静電容量)を算出する。
そして、この結果と、画像形成装置の露光から現像までの時間を式(A)に代入し、傾きの幅(W)を算出し、このWを用い、感光体の現像位置での解像度(K/W)を評価する。
【0016】
【数1】

【0017】
しかし、この従来発明では、電位計が低分解能であること、そのために潜像がくずれて、幅(W)が測定可能になるまで待つことを前提にしているため、感光体がひどく劣化している場合には、短時間での測定も可能と思われるが、劣化がそれほど進行していない場合は、測定にひどく時間を要することになる。
具体的な実施例が提示されていないため詳細は不明であるが、市販の表面電位計を例にすると、トレック社製・モデル344の表面電位計では、感光体と電位計プローブ2mmのギャップで電位計の検出範囲が12mmφ前後である。ギャップを0.5mmにしても、検出範囲は2mmφ程度あり、この分解能でWを検出するためには、3倍から10倍以上の幅(6〜20mmの幅)であることが必要であり、測定の待ち時間は数分から数十分は要すると思われる。
この間に、雰囲気温湿度の変動による影響も無視できなくなる。
また、時間経過で潜像がくずれてゆくとき、非露光部(高電位)と露光部(低電位)の電位がフラット化する方向でくずれてゆくので電位差は小さくなり、境界領域の幅を測定するのは測定誤差を伴い易い。
さらには上記式(A)は実験式と思われ、感光体の種類毎に上記式(A)中の比例定数Aを決める必要があり、使い勝手に難がある。
【0018】
本発明では、測定対象とする潜像は1mm幅以内であり、画像のボケ、流れ等が生じ始める部分のサイズと対応している。
さらに、潜像測定の分解能は1本/mm以上であるため、潜像がくずれるのを待つ必要がなく、潜像形成後、装置の制約による時間以後であれば即測定を開始できる。
また、画像形成装置の現像位置での解像度特性(→画像品質)の予測においても、本発明の装置では感光体が劣化している、していないに係わらず、潜像形成から数秒後には測定が開始できることから、露光から0.1s前後の解像度特性(→画像品質)を数式により予測することにおいても、測定時の潜像形成からの経過時間と画像形成装置の潜像形成から現像までの時間の差は小さく、誤差は生じにくいといえる。
【0019】
[微小領域静電潜像を評価する方法について]
微小領域静電潜像の評価方法については、既に相当数の提案がされているので、これら従来例を挙げると、
(1)カンチレバー方式:感光体表面と探針の間に働く力F(静電引力など)による片持ち梁の機械的変位、あるいは振動状態の変化を片持ち梁の背面にレーザ光を照射し、反射した光を光検出し、その変位量の値から表面電位を知る方法(特許文献1:特開平5−119093号公報、特許文献2:特開平5−149988号公報参照);
(2)エレクトロメータ方式:感光体表面に近接して、ある面積を持つ電極を配置し、電極に誘導された電荷がグランドに対して持つ電位を測定する方法(特許文献3:特開平11−184188号公報、特許文献4:特開平11−184189号公報、非特許文献1:W. Hillen et al, SPIE Vol.914 Medical Imaging II(1988) p253、非特許文献2:Enrique Garcia et al, IEEE Transaction Devices 38(5)(1991) p1077参照);
(3)光減衰による変位電流方式(誘導電流方式):感光体表面に近接して設置された電極で、帯電した感光体表面に極小の光スポットを照射し、光減衰による表面電荷の消失によって電極に誘導される電荷量(誘導電流)を測定し、表面電位を知る方法(特許文献11:特開2005−346014号公報、非特許文献3:竹嶋基治他、Japan Hardcopy 2001論文集,B-32,第281頁、非特許文献4:J.A.Rowlands et al, Med. Phys. 18(3), May/Jun 1991,p421参照);、等がある。
【0020】
前記(1)の方式では感光体のような数百Vの帯電電位ではカンチレバーと感光体が静電気力で接触してしまう。
また、接触しない程度に距離をとると、空間分解能の低下が生じ、距離はそのままに接触しない程度の撓み力の材料を片持ち梁に使うと感度の劣化が避けられない、という問題がある。
【0021】
前記(2)の方式は、電極には感光体表面の所定領域の電荷量に対応した電荷量が誘起される必要があり、感光体と電極のギャップを狭くする必要がある。
この方式では一般的に、測定の空間分解能としてA(μm)が必要なとき、ギャップはA(μm)以内、かつ電極のサイズはA(μm)以内×A(μm)以内とする必要があるといわれている(非特許文献2参照)。
従って、10μmの空間分解能実現のためには10×10μm以下の小さな電極で10μm以下のギャップにする必要がある。
また、この方式では帯電した感光体が移動し、感光体表面の電荷が電極を横切るときに誘起される変位電流を測定する方法をとるため、この極小のギャップを常に維持する必要があり、これはきわめて困難である。この方式をとる特許文献3、特許文献4では感光体表面と電位センサの検出部の間隔は一定に保たれる手段が設けられているとの記載があり、具体的な手段として、コロ、スペーサーを用いて、メカ的に一定間隔を保つ機構を設けたり、レーザ隙間センサや渦電流式変位センサを用いて、間隔をモニターし、常に一定間隔を保つようにモーター等で制御を行なう方法等が挙げられている。ただし、スペーサーを感光体表面と電極とのギャップに挟むと、感光体表面の移動に伴い表面にキズがつくことになり、好ましくないことは明らかである。
また、距離をモニターするための渦電流式は距離計測の応答性の問題があり、レーザ式は感光体で光が吸収され反射光が小さくなり誤差が生じやすくなり、強い光にすると感光体を不要に光劣化させることになるため感光体を相手に使用するのは好ましくないといえる。
【0022】
また、非特許文献1では1つのサイズが0.2×0.2mmのマイクロエレクトロメータ(電極)32個が12mmピッチでドラム軸方向に並び、感光体とのギャップは平均0.1mm±0.02mmを実現している。誤差は一つ一つの電極の配置誤差、感光体ドラムの回転偏差によるとし、ギャップを高精度に保つための具体的な機構について記述はない。
非特許文献2では電極としてCCDアレイ(5×5μm)を利用しているが、ギャップ5μmの目標に対し、空圧軸受けのベアリングを利用して20μm程度にしか制御維持できなかったと記載されている。機構について詳細は不明である。
いずれにしても、空間分解能を高めるためには電極を小さくせざるを得ず、小さいがために得られる信号がきわめて小さくなり、かつ、μmオーダの極小のギャップを維持する機構を用意するという、本質的な困難さがあり、測定は容易ではない。
【0023】
前記(3)の方式は透明ガラスに透明導電膜が成膜された電極が使用され、背面より光照射を行なう方式であり、原理的に空間分解能は照射するスポット光のサイズのみに依存するので、電極サイズは任意である。
感光体表面とプローブ間距離(ギャップ)も最大2mm程度まで任意である(ただし、当然であるが、ギャップが大きくなれば、検出信号は小さくなる)。
【0024】
ところで、上記特許文献11には、検知レーザ光照射したときに感光体の表面電位の変化量に応じて透明電極に流れる誘導電流を増幅、A/D変換して主走査方向の相対的な電位プロファイルを測定し、また、電位センサを用いて感光体上の絶対的な表面電位を測定する際、この電位センサは透明電極と異なった位置に配置すると感光体の暗減衰特性による表面電位変化があるので、電位センサと透明電極は近接して配置することが好ましく、また近接配置が構成上困難なときには、暗減衰による電位の変化を補正する旨の記載はあるが、非露光部−露光部の境界における表面電位の「経時によるくずれ」には全く留意するところがない。また、上記非特許文献3は本願と測定原理が同じであり、透明ガラス電極の背面より10μmサイズのビームスポットを照射し、10μm領域で生じる光減衰電位変化による誘導電流(変位電流)を検出し、その信号の大きさからスポット光照射前の電位を知り、順次測定位置を変え、潜像プロファイル(副走査方向の1次元プロファイル)を得ているが、80μm幅(副走査方向)のビームで1ライン(主走査方向)の潜像書き込みしたときの副走査方向潜像幅が80μm幅の約2倍強の幅(μm)に測定されており、技術的に優れた方式であるが、この方式は更なる改善が望まれる方式であることがわかる。
【0025】
なお、非特許文献4も(3)の方式に関係し、感光体の光減衰特性を利用した測定の原理について言及しているが、測定装置ではなく、人体のX線透視画像を銀塩フィルムではなく、帯電した無機感光体(Se)へ投射し、感光体表面に形成された2次元静電潜像を電子データとしてコンピュータに読み取る装置のX線と関係する技術課題について記載している。
【0026】
非特許文献5(D.S.Weiss, 他 「Analysis of Electrostatic Latent Image Blurring Caused by Photoreceptor Surface Treatments」J of IS&T 40,No.4,1996)は、感光体表面抵抗をパラメータとした拡散のモデル式で、潜像の時間変化について記載されている。
本発明と密接に関係するが、潜像の実測データとモデル式を組み合わせ、画像出しをせずに画像のくずれを予測することについては言及していない。
また、オーバーコート層の有無による繰返し使用後の画像幅変化を見るため、キセノンランプ光(非ガウス分布)をモノクロフィルタを介して0.25cm幅の幅広スリットから露光したときのアナログ電圧信号から露光域と非露光域の境界を見るマクロ的なものであり、微小領域の潜像計測に適したものとはいい難い。
【0027】
また、これ以外にも電子線による微小領域の潜像計測関係(特許文献5〜8)のものがある。
特許文献5:特開2006−84434号公報には、耐絶縁性をμmオーダの精度で評価することが記載されており、特許文献6:特開2006−10430号公報には、検出手段の引き込み電圧の影響に起因する測定誤差を防止することが記載されており、特許文献7:特開2005−166542号公報には、表面電位分布を2次電子によらずにきわめて高精度に測定することが記載され、特許文献8:特開2004−251800号公報には、荷電粒子ビームの照射電流を、表面電荷分布を消失させない大きさに設定し、表面電荷分布を精度よく測定する方法が記載されている。
【0028】
しかし、サンプルを真空中においての測定となり、劣化したサンプル上につくられた静電潜像を評価したいときには、測定までに時間が経過することと、真空に引くことで、表面に何かがついていた場合には、それが除かれてしまい、劣化状態が変わってしまうことは充分あり得る。
したがって、本発明とは構成、技術課題、および目的が異なる。特許文献9は本発明者に係る既発明の公開公報であり、本発明は特許文献9の改良された発明に当たる。
特許文献9:特開2006−38666号公報には、光減衰電位変化による変位電流測定において、副走査方向の空間分解能を確保しながら検出信号のS/N比を向上させることが記載されている。
【0029】
本発明者らは従来技術の(3)に属する方式の新規技術を既に提案(特許文献12の特願2007−184847号)している。この方式は大気中の測定であるので、感光体の初期状態、および負荷による劣化状態を損なうことがなく、感光体上の静電潜像を直接評価し、負荷に対する感光体の耐性を知ることができる潜像計測装置に関するものであり、具体的には、円筒状感光体の周囲に、帯電器、露光器(1)(潜像書込手段)、透明導電電極と、その背面に配置される露光器(2)(検知光露光手段)、除電器がこの順序に配置されており、露光器(1)で感光体表面上に潜像パターンを形成し、該パターンが透明導電電極部に来たとき、感光体の回転移動を停止し、露光器(2)で1ショットパルス露光を行ない、感光体上の電荷の光減衰に伴い透明導電電極に誘起される信号を採取し、次に感光体を露光器(2)の周方向のビーム幅(厚み)以上にステップで移動し、同等にして信号採取を繰り返す測定装置にあって、露光器(1)により形成される潜像パターンが、感光体回転方向に少なくとも2本/mm以上のラインパターンであるように露光器(1)を制御することを内容とする微小領域潜像計測装置に係るものであった。しかしながら、この潜像計測装置で潜像の「くずれ」が計測された感光体が、画像形成装置にて画像を出力させたとき、画像の「くずれ」が認められない場合のあることが分かった。すなわち、微小領域潜像計測の結果と画像出力の結果が対応しない場合があった。原因を追及した結果、潜像計測において、帯電した感光体に露光により潜像パターンを形成し、このパターンが透明電極部に到達し、測定を開始するまでの時間が1秒以上要していたことと、一方、画像形成装置においては露光書込から現像までの時間が0.1秒前後であり、この点が異なることがわかった。このことは、感光体の表面抵抗が負荷により劣化したとき、ある抵抗レベルでは、潜像形成から0.1秒後と1秒以上経過後では潜像のくずれ方に大きなちがいが生じることを示唆しているが、発明者らの微小領域の潜像計測では測定装置の制約から、潜像形成から測定開始まで0.1秒前後で行なうことは困難であり、一方、一般的な電子写真方式の画像形成装置は潜像形成から1秒以上後に現像し画像出力をすることも困難であり、劣化した感光体の潜像計測結果と画像出力結果とを時間を同じにして対応させることは困難であった。このことは潜像に対する時間の影響を直接確認することが難しいことを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上記に鑑み、感光体上の潜像計測結果と潜像電位に関するモデル式の数値計算結果を組み合わせ、この感光体を使用したときの画像形成装置における画像出力結果を精度よく予想できる装置を提供しようとするものである。
すなわち、感光体表面に形成された静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、静電潜像の電荷の動きを表面電位の変動として感光体表面の表面抵抗および経過時間をパラメータとするモデル式の数値計算で算出する手段とを組み合わせて、該感光体の表面抵抗を特定する装置において、該測定における露光書込から測定開始までに要する時間を数値計算における書込からの経過時間として使用し、潜像の形の測定結果と感光体表面抵抗をパラメータとした潜像の形の数値計算結果から感光体表面抵抗値を決定し、該表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間を使用し、該条件下の潜像の形を計算することで、画像形成装置での画像品質を精度よく予測することを目的とする。
また、前記潜像の形を測定する手段が、大気中にて1本/mm以上の解像性を評価できる手段とすることで、感光体表面が負荷を受け劣化しても、その状態が損なわれることなく測定可能であり、測定の解像性が1本/mm以上であることから、潜像の形について、測定精度が高く、数値計算結果との対応について信頼性の高い判断を可能とする。
さらに、前記潜像の形を測定する手段が、感光体の光減衰機能を利用した測定方法とすることで、前記目的を具体的に達成できる手段を提供する。
更にまた、本発明は、光減衰法を利用した感光体上の潜像電位計測結果と潜像電位に関するモデル式の数値計算結果を組み合わせ、この感光体を使用したときの画像形成装置における画像出力結果を画像出しをすることなく、リサイクルシステムで回収されたカートリッジ内の感光体の劣化の良否を精度よく予想できる方法・装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題は本発明の下記(1)〜(8)によって解決される。
(1)「感光体表面に感光体移動方向に1mm幅以内のサイズで形成した静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、該手段にて測定された電位データを保存し、少なくとも感光体表面抵抗および潜像形成からの経過時間をパラメータとする潜像電位のモデル式の計算を実行し、計算結果と該測定データを照合して感光体表面抵抗値を決定するプログラムを組み込んだ計算手段とから構成された装置において、該決定した表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間から、該時間における潜像電位を計算し、感光体の画像品質を画像出しせずに予測することを特徴とする装置」、
(2)「前記潜像の形を測定する手段が、大気中にて1本/mm以上の解像性を評価できる手段であることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像品質を予測する装置」、
(3)「前記潜像の形を測定する手段が、感光体の光減衰機能を利用した測定方法であることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像のくずれを予測する装置」、
(4)「前記潜像の形を測定する手段が、感光体の周辺に帯電器、潜像パターン形成のための第1の露光装置、電位検出のための第2の露光装置、除電器が配置され、第2の露光装置の位置には感光体とのギャップを一定に維持する機構をもつ透明電極が配置され、該透明電極の背後には第2の露光装置であるレーザ光源が配置され、該光源のビームは感光体移動方向(=副走査方向)のサイズが第1の露光装置で形成された潜像の幅(感光体移動方向)未満であるように構成されたことを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の装置」、
(5)「市場から回収した感光体を再利用するリサイクルシステムにおいて、回収した感光体表面に感光体移動方向に1mm幅以内のサイズで形成した静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、該手段にて測定された電位データを保存し、少なくとも感光体表面抵抗および潜像形成からの経過時間をパラメータとする潜像電位のモデル式の計算を実行し、計算結果と該測定データを照合して感光体表面抵抗値を決定するプログラムを組み込んだ計算手段とから構成された装置において、該決定した表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間から、該時間における潜像電位を計算し、感光体の画像品質を画像出しせずに予測し、画像品質が良好と予測された感光体を再利用する感光体リサイクルシステム」、
(6)「前記潜像の形を測定する手段が、大気中にて1本/mm以上の解像性を評価できる手段であることを特徴とする前記第(5)項に記載の感光体リサイクルシステム」、
(7)「前記潜像の形を測定する手段が、感光体の光減衰機能を利用した測定方法であることを特徴とする前記第(5)項又は第(6)項に記載の感光体リサイクルシステム」、(8)「前記潜像の形を測定する手段が、感光体の周辺に帯電器、潜像パターン形成のための第1の露光装置、電位検出のための第2の露光装置、除電器が配置され、第2の露光装置の位置には感光体とのギャップを一定に維持する機構をもつ透明電極が配置され、該透明電極の背後には第2の露光装置であるレーザ光源が配置され、該光源のビームは感光体移動方向(=副走査方向)のサイズが第1の露光装置で形成された潜像の幅(感光体移動方向)未満であるように構成されたことを特徴とする前記第(5)項乃至第(7)項のいずれかに記載の感光体リサイクルシステム」。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、潜像測定の結果と電荷拡散のモデル式による数値計算結果との組み合わせから、画像形成装置における画像品質を精度よく予測でき、また、潜像測定の精度が上がり、種々の画像形成装置を用意する必要なく、画像出しをせずに出力画像品質の予測が可能になる。
また、本発明によれば、光減衰法を利用した感光体上の潜像電位計測結果と潜像電位に関するモデル式の数値計算結果を組み合わせ、この感光体を使用したときの画像形成装置における画像出力結果を画像出しをすることなく、リサイクルシステムで回収されたカートリッジ内の感光体の劣化の良否を精度よく予想できる方法・装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における測定方法のフローを示す図である。
【図2】本発明で使用される微小領域潜像計測装置の構成図である。
【図3】本発明で使用される潜像計測装置のタイミングを説明する図である。
【図4】本発明で使用される潜像測定装置で得られる信号の例を示す図である。
【図5】本発明で使用される潜像測定装置で使用する検量線データの例を示す図である。
【図6−1】本発明で使用される潜像測定装置の潜像パターン形成用ラインビームの光パワー制御電圧の例を示す図である。(横軸は時間軸)
【図6−2】本発明で使用される潜像測定装置の潜像パターン形成用ラインビームの光パワー制御電圧の例を示す図である。(横軸は感光体上の「位置」に置き換えた軸となっている)
【図7−1】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗1×1016Ω/□)
【図7−2】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗1×1015Ω/□)
【図7−3】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗1×1014Ω/□)
【図7−4】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗3×1013Ω/□)
【図8】本発明で使用される潜像測定装置で得られる潜像の形を示す図である。(露光から測定開始まで5秒経過後の測定データ)
【図9】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の露光後5秒経過後の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗をパラメータとする)
【図10】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位の露光後1秒経過後の計算結果を示す図である。
【図11】本発明で使用される潜像測定装置で得られる潜像の形を示す図である。露光から測定開始まで2秒経過後の測定データである。(オゾンバクロ前)
【図12】本発明で使用される潜像測定装置で得られる潜像の形を示す図である。露光から測定開始まで2秒経過後の測定データである。(オゾンバクロ後)
【図13】本発明におけるモデル式により得られる潜像電位データの露光後2秒経過後の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗をパラメータとする)
【図14】本発明で使用されるモデル式により得られる潜像電位の露光後0.11秒経過後の計算結果を示す図である。(感光体表面抵抗は1×1014Ω/□)
【図15】本発明で使用される潜像計測装置の潜像パターン形成用ラインビームの光パワープロフィール(厚み方向)の例を示す図である。
【図16−1】本発明の実施例2で使用された感光体のオゾンバクロ前の画像出力結果を示す図である。
【図16−2】本発明の実施例2で使用された感光体のオゾンバクロ後の画像出力結果を示す図である。
【図17】従来技術(特許文献10)における解像度の説明を示す図である。
【図18】静電特性評価装置の装置概略を示す図である。
【図19】感光体静電特性評価シーケンスを示す図である。
【図20】感光体静電特性測定出力例を示す図である。
【図21】感光体静電疲労試験シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、帯電した感光体に露光を行ない、1mm幅内の微小領域に矩形の潜像パターンを形成し、この潜像へラインビームレーザをワンショット露光し、光減衰による表面電位の変化を生じさせ、その電位変化により感光体に近接して設置された電極に誘導される電荷量の変化、すなわち誘導電流(変位電流)を測定し、その信号の大きさから露光前の表面電位のレベルを知る方式の応用に関するものであり、感光体上の電荷、すなわち代用特性として潜像電位であるが、この潜像電位の形を測定したときの結果と潜像電位のモデル式に基づく拡散・移動の数値計算結果を組み合わせ、画像形成装置で画像出力したときの画像の状態を精度よく予測する方法および装置である。
【0035】
[予測の基本理念]
理解を容易にするため、本発明の特徴点を概念的に簡略化し説明すると、感光体に矩形パターンを書込み露光すると、前記のように、経時に伴って潜像電位パターンは矩形からV型にくずれていく(図17参照)。実際の画像形成装置では書込み露光から現像までは例えば約0.1秒であり得る(0.1秒は画像形成装置に応じケースバイケースであるので、単なる1例)が、この電位パターンの崩れを実測しようとすると測定器の制約から例えば1秒以上(同様に、単なる1例)掛かってしまう。つまり、感光体評価に必要な書込み露光0.1秒は実測できないことになる。1秒以上後の崩れをみて画像品質を予測する場合、1秒以上後と0.1秒後の崩れが同じであれば、予測は当るが、そうでない場合予測は当らない。実際、潜像電位パターンの経時による崩れ態様は、経過時間に直線的に比例してない。そこで、本発明においては、実測可能な電位パターン(1秒以降の値)から、この0.1秒後の電位パターンを予測するのに特に適した予測技術を用いている。この予測プロセスの基本理念は、
(1)帯電された感光体の表面電位と、ビーム露光における光減衰による誘導電流(信号強度)との関係との検量線関係化する(例えば図4、図5参照)段階;
(2)測定可能な時間(例えば5S)で誘導電流(信号強度)を実測し、それを検量線を利用して電位に変換する(例えば図8参照)段階;
(3)例えば図8にて示されるようなデータを式(2)に当てはめて表面抵抗を求める段階;
(4)前記(3)で得られた表面抵抗と画像形成装置での露光から現像までの時間(例えば0.11秒)を用いて式(2)から0.11秒後の電位パターンを推定する段階;を含むものであり、本発明の予測方法及び装置は、当該基本理念を満足裡に遂行・実現することができるものである。
【0036】
これまで、感光体の表面電位を測定する測定器は振動容量型といわれる方式のもので行なわれてきた。この表面電位測定器の市販製品にはトレック社製 モデル344がある。
感光体と表面電位計プローブ間のギャップは通常1mm〜3mmで使用されることが多いが、このとき、表面電位計のプローブが検出する領域は5mmφ〜20mmφになり、ギャップが0.5mmであっても検出領域は2mmφであり、空間分解能の点から、精度のよい潜像計測は不可能であった。そこで先述した種々の技術が検討されているが、それぞれ実用化する上で困難な問題があり、鋭意開発努力が続けられている。
本発明では潜像計測は感光体の光減衰を利用した方式をベースにしているため、この方式で感光体上の1mm幅以下の領域における潜像電位のくずれを空間分解能の観点で精度よく評価でき、また、コロナ帯電を受けることで感光体表面がコロナ放電生成物で汚染され、表面抵抗が劣化したときも、大気中での測定が可能であること、測定の準備に多くの時間を要しないことから、劣化状態を損なうことなく、その条件下の潜像形成の状態を測定可能となる。
【0037】
次に、潜像計測における書込のパターンであるが、1mm幅内にV字型の電位パターンが2つ以上並ぶように形成することが、潜像電位のくずれを判別しやすいことが分かっている。
しかしながら、本発明は感光体上の潜像電位の測定結果がくずれていたとき、画像出力もくずれるのか、を判断するために、モデル式に基づき潜像電位の拡散・移動の数値計算も行なう。このモデル式については後述するが、モデル式の出発点は偏微分方程式であり、これを簡単に解くために、潜像電位のパターンは矩形のパターン(=井戸型ポテンシャル)であることが好ましい。そのため、潜像計測における書込パターンも矩形のパターンとすることになる。
【0038】
線速vで移動(回転)している帯電した感光体に矩形のパターンを露光する方法は、幅Aの矩形パターンを極短時間露光する(i)。
例えば、Aが0.5mm幅、感光体の線速vが50mm/sの場合、形成される幅Aが誤差1%以下であるためには、少なくとも0.5×0.01÷50=0.0001s(=100μs)以下で露光する。
また、この場合、露光パターンは幅A内で照度が極力均一であることが必要である。
別の方法は、幅Aの1/10以下の露光幅のパターンをA÷v=0.5/50=0.01sの時間だけ照射する(ii)。
形成される潜像が矩形の幅Aであるためには露光幅パターンは極力狭く、その幅内で均一の照度であることが好ましい。
本発明で利用する微小領域測定では(ii)の方式で線状ビームを用いるが、その幅(厚み)は45μmである。また、その幅方向での照度分布はガウシアン分布をしており、裾切れの影響があり、理想的な露光ができている訳ではない。
しかし、(i)の方法も、均一な照度分布で露光することがきわめて難しい方法である。
【0039】
ここで、感光体表面上の静電荷の移動・拡散、したがって潜像電位の移動・拡散のモデル式について説明する。電位をVとすると、位置(x)と時間(t)の関数として1次元では次の偏微分方程式で表わされる。
【0040】
【数2】

ここに、Dは拡散係数であり、次式で表わすことができる。
【0041】
【数3】

(Rsqは表面抵抗、Cは単位面積当たりの静電容量である。)
矩形の潜像電位パターン(=井戸型ポテンシャル)は、その中央をx=0、幅を2aとすると、初期条件はt=0のとき、x=0ではV=Vexp(露光直後の電位)、x=a or −aではV=V(初期帯電電位)となり、これを解いて下記(2)式が得られる。
【0042】
【数4】

ここに、△V=V−Vexp、erfは「誤差関数」であり、次式(3)のように表わされる。
【0043】
【数5】

上式(1)〜(3)は非特許文献5より引用している。
【0044】
(2)式からわかるように、Vは、表面抵抗(Rsq)、静電容量(C)をパラメータとする関数である。
この式を使い、次の条件で数値計算した結果を図7−1,図7−2,図7−3,図7−4に示す。
a=200μm(幅:400μm)
=800V
△V=400V
露光後の時間:0.1s,1s,10s
表面抵抗:1×1016Ω/□,1×1015Ω/□,1×1014Ω/□,3×1013Ω/□
静電容量:100pF/cm
計算は表計算ソフト(Microsoft社製、Excel2000)を使用した。
表面抵抗:1×1016Ω/□のとき、0.1sのデータがプロットされていないのは、計算ができなかったためである。
【0045】
数値計算からは、感光体の表面抵抗が3×1013Ω/□程度になると、露光0.1s後と1s後では潜像パターンに大きなちがいがあることが分かる。
1s後のデータからは潜像がくずれているので、これでは画像出力もくずれてしまうと、容易に想像されるが、画像形成装置が露光から0.1s後に現像されるものであるなら、画像のくずれはほとんど気にならない程度になることが0.1sのデータから読み取れる。すなわち、潜像の測定結果からだけでは、画像の状態について、どのような結果になるか判断がつけられないことがわかる。
画像出しをせずに画像の出力結果を予測するには、潜像の時間に依存する拡散を考慮する必要がある。
【0046】
そこで、劣化した感光体表面の矩形の静電潜像の形を測定し、この測定に要した時間で、式(2)の表面抵抗を種々変更して、潜像の形(くずれ)が概略一致する表面抵抗値をこの感光体の表面抵抗とし、次にこの表面抵抗値と、この感光体を搭載予定の画像形成装置における、露光から現像までの時間を使い、式(2)から潜像電位を計算し、その潜像電位の形から画像出力がくずれるかどうかを予測することが有効となる。
【0047】
ここまで、静電潜像の測定結果と、表面抵抗を種々かえて数値計算した結果の一致を潜像の形で判断するとして説明したが、判断基準はこれに限るわけではなく、矩形の電位パターンの露光前の電位(未露光部)、露光後の電位(露光部−最小値−)レベル、露光幅、未露光部と露光部の差、等の具体的な値、その変化量等を考慮し、判断することが好ましい。これについては後述する。
【0048】
潜像計測には市販の表面電位計が使われることもあるが、これは空間分解能の性能の点で好ましくない。劣化した感光体を画像出力せずに、画像のくずれを出すか否かを予測しようとする目的において、画像のくずれは、画像のエッジ部分の「太り」あるいは、「ボケ」、あるいは「流れ」等で表現される異常であって、これらは1mm幅内に現れる現象である。従って、潜像計測では1mm幅内の潜像を測定できる空間分解能を持つ測定器で行なうことが好ましい。
【0049】
また、本発明の感光体リサイクルにおいては、市場から回収してきたプロセスカートリッジ、あるいは感光体ユニットから感光体を取り出し、エアーあるいは布等により感光体に付着している現像剤や、付着物を取り除き清掃する。付着物を取り除く際には、水やエタノール等の感光体を溶解、膨順させない溶剤を用いてもよい。
清掃した感光体は、目視、あるいは機械により外観検査を行ない、感光体上にキズがあるものはマテリアルリサイクルに回し、キズがない感光体のみを後述する静電特性評価を行なう。
静電特性評価で、合格と判断された感光体は、プロセスカートリッジ、あるいは感光体ユニットに組み込み、リサイクル品として再使用される。
本発明の感光体リサイクルされる感光体としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、アゾ系、フタロシアニン系等の有機感光体、などが挙げられる。
特に有機感光体は、製造コストが無機感光体よりも安く、プロセスカートリッジや感光体ユニットに広く用いられている。
【0050】
[感光体]
本発明の予測システムに用いる感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記感光層としては、電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、又は電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、前記感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層上に最表面層を設けることもできる。
また、前記感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0051】
前記導電性支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mmが好ましく、24〜100mmがより好ましく、28〜70mmが更に好ましい。前記ドラム状の支持体の直径が20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
また、特開昭52−36016号公報に開示されているようなエンドレスニッケルベルト、又はエンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0052】
前記感光体の下引き層は、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。
前記白色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。
前記樹脂としては、例えばポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0053】
前記感光層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記感光層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。
該結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
【0057】
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
【0058】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0059】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0060】
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
【0061】
前記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0062】
前記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
【0063】
また、前記感光層中にはレベリング剤を添加しても構わない。
該レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。前記レベリング剤の使用量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、0〜1質量部が好ましい。
【0064】
前記感光体の最表面層は、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。
該最表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが好適である。
また、前記最表面層に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、該熱硬化性樹脂は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力がきわめて高いため特に好ましい。
前記表面層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、表面層に用いる高分子として電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。
【0065】
前記感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、最表面層を設ける場合には、最表面層は充分な厚みとすることが重要であり、0.1〜12μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜8μmが更に好ましい。
前記厚みが0.1μm未満であると、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうことがあり、12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうことがある。
【0066】
前記最表面層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの高分子は熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、最表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0067】
前記最表面層は、電荷輸送能力を有していることが好ましく、最表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、最表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を最表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0068】
前記電荷輸送層能力を有する高分子としては、高分子中に電荷輸送能力を有する基として、下記構造式(i)で表わされる基を有するものが好適に挙げられる。
【0069】
【化1】

ただし、前記構造式(i)中、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表わす。
このような電荷輸送能力を有する基は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い高分子の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0070】
このような電荷輸送能力を有するアクリル樹脂は、上記構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い表面層を形成することができる。
また、単官能の上記構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性高分子となり、表面層の機械的強度はきわめて高いものとなる。前記多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(i)の基を付加してもよいが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(i)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0071】
前記構造式(i)で表わされる基を有する単官能不飽和カルボン酸としては、下記構造式(ii)、又は構造式(iii)を例示することができる。
【0072】
【化2】

【0073】
【化3】

前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR(ただし、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす)、ハロゲン化カルボニル基、CONR(ただし、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす)を表わす。
【0074】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar及びArは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。
【0075】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表わす。
【0076】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。
【0077】
m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表わす。
【0078】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rの置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。これらRの置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0079】
前記Ar及びArのアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が挙げられる。
【0080】
前記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
【0081】
前記非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
【0082】
前記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
【0083】
前記多官能の不飽和カルボン酸の含有量は、前記最表面層全体の5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。前記含有量が5質量%未満であると、最表面層の機械的強度が不充分であり、75質量%を超えると、最表面層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすくなることがある。
【0084】
前記最表面層にアクリル樹脂を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、表面層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行なう場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
【0085】
前記最表面層中には該最表面層の機械的強度を高めるために金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子など含有することが好ましい。
前記金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
【0086】
[予測装置及び予測方法]
本発明の潜像計測を行なう装置について、より具体的に技術的背景とともに説明する。
潜像計測装置では、潜像パターンの形成に使用する露光器は結像光学系、ビームスキャン方式の書込み光学系、等で実現できる。
しかしながら本発明で使用する方式においては、ラインパターンは感光体移動方向には1mm幅以内(ただし、移動方向のビーム径の少なくとも3倍以上)、感光体軸方向には検知光(ラインビーム)の長さ(20mm)以上が必要であり、このサイズで軸方向に均一な照度の露光が必要となるが、光学系の設計に工夫が必要となり、実現は困難である。
また、ビームスキャン方式の露光器では軸方向に一定な照度の露光は容易であるが、感光体の線速、書込みの副走査方向の解像度(dpi)、ポリゴンのミラー面数等から、ポリゴンの回転数(rpm)を決め、主走査方向の露光開始のビームのタイミングをとる必要があり、また、主走査方向のライン毎にビーム強度を設定する必要があり、光学系の制御はレーザプリンタの書込み光学系の制御と同じ精度で行なう必要があるなど、測定装置への組み込みは使いこなしに難がある。このため、潜像パターンの形成に使用する露光器としては、検知光として使用する露光器と同様にラインビームレーザを別に用意し、使用するのが好ましい。この場合は感光体軸方向(主走査方向)には既に長さが確保されており、回転方向(副走査方向)には感光体線速に合わせて露光幅が1mmになるように露光器の点灯時間を決め、この時間内で光パワーを制御することで、容易に潜像パターンを形成する。
【0087】
なお、本発明で感光体移動方向において潜像幅を1mm以内としているのは、画像のボケは画像部と非画像部のエッジ部分の狭い領域のボケを問題としていることから、1mm以内と規定することで、潜像の未露光部と露光部の境界部分(エッジ部分)で電位がほぼ垂直に変化したパターンを形成することになり、劣化した感光体ではその形成されたパターンのエッジ部分がわずかな時間の間にくずれて傾斜電位となり、「くずれ」が評価しやすくなることを目的としている。
【0088】
測定装置で検知光にラインビームを使う理由であるが、光減衰を利用した方式のこれまでの技術では、測定の位置を感光体回転方向に微小ステップで変え、ビームスポットの露光を行なっていた。
位置を変え測定を繰り返し、最終的に潜像の1次元プロファイルを得るものであるが、測定の空間分解能を確保するため電位検出用に使用するビームを小さくする必要があり、その結果、電位変化が生じる領域が小さく、得られる信号が小さくなり、測定が不可能になるという問題があった。この問題の解決方法としては、(1)信号処理回路(増幅回路)の改良、(2)電極を感光体に近づけ、S/N比を改善する、等が考えられる。
(1)では、微小信号に対し、同じ信号を繰り返し取り込み、重ね合わせてS/N比を確保して増幅する手段が知られているが、ワンショットの信号(単発信号の意味)では適用できず、この手法は測定の原理から困難である。
(2)の手法は有効であるが、仮に電極−感光体間の距離1mmを0.5mmにしても2倍程度のアップにしかならず、信号がノイズに埋もれているときには効果が小さい。測定方式が潜像の感光体回転方向(副走査方向)の1次元プロファイルを測定するものであることから、感光体の軸方向(主走査方向)の検知光露光サイズを大きくし、すなわち電位変化が生じる領域を大きくすることで、副走査方向の空間分解能を確保し(主走査方向の分解能は無視)、かつ信号のS/N比改善を計るようにしている。
【0089】
全ての測定は図2に示す装置構成のもので行なった。
導電性電極部材は透明ガラスに透明導電性薄膜を成膜したものがよく、これはガラス電極を感光体サンプルに対向させたとき、電極を通して光を照射することが可能であり、露光装置の配置等で使い勝手が向上する。
透明ガラスとしては一般のガラスでもよいが、BK−7、石英ガラス等が通過波長域も広く測定用には好ましい。
また、透明導電薄膜としてはITOが一般的であるが、これ以外でも問題はない。
透明導電膜の成膜は、ガラスの片側全面に成膜するのも、パターンマスクを使い、細線(≦1mm)でメッシュ状に成膜するのもかまわない。
また、通過させる光がレーザである場合、レーザ入射側のガラスには反射防止膜をつけるのが好ましい。これはレーザ入射側のガラス表面で反射したレーザが発光部に戻り、複合共振器を形成して、レーザ光に揺らぎが生じる、いわゆる戻り光ノイズを防ぐためである。この透明電極をサンプルに対向して設置する場合、サンプルとの距離は近いほど信号が大きくなり好ましいが、感光体表面の反射光がガラス電極表面で反射し、再入射することが予想され、電極の感光体に対向する面にも反射防止膜をつけるのが望ましい。光の拡がりを小さくする効果が期待できる。
【0090】
[計測結果についての判断]
本発明の潜像電位計測による感光体の良否判定方法について説明する。
良否判定に至るまでの手順については前述したとおりである。
画像出し機の「露光−現像」時間経過後の潜像の形を計算で求め、画像品質を予測するには、潜像書込みした直後の矩形の電位パターン(於:時間0)と「露光−現像」時間経過後の電位パターンの比較によるが、比較する対象部位は1.矩形の電位パターンの露光前の電位(未露光部)の差、2.露光後の電位(露光部−電位最小値−)の差、3.露光幅(形成した露光幅そのもの)の差、露光幅は時間経過で幅が拡がる、4.△V=[未露光部−露光部]の値、あるいは△Vの差、等が考えられる。これらを組み合わせて判定することも考えられる。良否判定方法としてどれも有効であり、本発明では4.△Vの値で判定している。劣化した感光体では、△Vが小さくなる。
【0091】
回収されたカートリッジ内の感光体は、長く暗中に置かれていると、一時的に静電特性が回復し、使用可能に見えることがある。
しかし、そのような感光体もしばらく連続使用すると、急激に特性が劣化状態に戻ってしまう。このため、リサイクルシステムでは劣化していない感光体と一時的に回復した感光体とを見分ける手段が必要であり、感光体に数分間静電疲労を与えてから、感光体の良否判定を行なうことが好ましい。
静電疲労は、感光体ドラムを回転させた状態で、感光体周囲に配置された除電ランプ、帯電器をこの順にOnし、帯電−露光を繰り返すことで行なう(図21参照)。
帯電電位は500V〜1500V(数値は極性符号を省略している)、除電ランプ露光後電位は100V〜1000Vで行なう。感光体の回転速度は10rpmから100rpmでは画像形成装置と同程度の速度であり、疲労に時間がかかることになる。
回転速度を500rpmから1000rpm程度にすると、感光体上の1点が帯電・露光を受ける回数/時間が大きくなり、疲労試験が短時間(数分)で済むことになり効率化の点から好ましい。
【0092】
また、静電疲労を与える装置としては、良否判定の評価装置で行なってもよく、別の専用装置で行なってもよい。
良否判定の装置で静電疲労を行なうのは、感光体を移し替える必要がなく、測定作業の効率化が図れる。
その一方、微小領域の潜像計測のために、感光体回転モータは精密回転ステップモータを使う必要があり、このようなモータは高速回転はできないため、別途高速回転用モータを設置し、クラッチ切換えで回転駆動を切り替える機構が必要になる。
また、各感光体ドラム毎に静電疲労を行なうことが長期にわたると、帯電器で発生するオゾン、NOx等のガスで、感光体周りに配置されている透明電極が汚染されるリスクが高まることになる。本発明では、静電疲労は静電特性測定装置を使い行なった。
【0093】
なお、静電特性の評価は感光体のマクロな特性をみており(大きな測定エリアの平均的値という意味)、この特性が劣化しているときは、本発明における微小領域電位計測においても概ねくずれた電位が測定されるが、その逆に、くずれた電位が測定されても、静電特性が酷く劣化した状態として測定されるわけではない。その理由は、静電特性の評価項目が感光体のマクロな特性であることと、感光体の表面抵抗の影響が充分に反映していないためである。
静電特性の測定は、あくまで、使用済みで回収された感光体の、層方向の基本特性である静電特性が劣化していないかどうかを見るために実施し、この測定で劣化していると判定されたものは、異常画像を出す、出さないなどの微小領域電位測定評価には供さなかった。
【実施例】
【0094】
以下に更に実施例をまじえ具体的に説明する。
<潜像測定装置の構成について>
測定装置は図2に示す構成であり、動作は感光体ドラムを回転させ、帯電(スコロトロン帯電器による)、露光器(1)による書き込み(露光時間=狙いの書込幅/感光体線速)、形成された潜像が電極部に来たところで帯電・回転を停止、露光器(2)(ラインビームレーザ(主走査方向)20mm×(副走査方向)24μm−655nm−)を検出光として照射する。
電位減衰による誘導電流(変位電流)を測定すると、感光体ドラムを次の測定位置まで回転・移動(=表面50μm移動)させて次の検出光を照射し、誘導電流(変位電流)を測定する。この測定を潜像幅全体を測定するまで繰り返す(図2、図3)。
あらかじめ、帯電電位とそのときの誘導電流(変位電流)の大きさの関係を調べておき、測定した誘導電流(変位電流)の大きさからそのときの帯電電位を求め、これを潜像幅に対してプロットすることで、潜像の1次元プロファイルを知ることができる。
【実施例1】
【0095】
図2に示す実験装置は以下の機器で構成した。
・帯電器
メイン用高圧電源:トレック社製 610C
グリッドバイアス用電源:松定プレシジョン(株)製 HJPM−1.5
・表面電位計:トレック社製 モデル344
・露光器(1):Global Laser社製 Lyte−MV レーザラインジェネレーターモジュール
放射角:30°
波長:635nm、
焦点距離:モジュールのレーザ出射端より83mmの位置になるよう、モジュール内の光学系を調整
露光パワー制御:リニア変調DC0〜1V(at DC〜200kHz)
出力される光パワーは減光フィルター1/125で減光した上で、DC0〜0.5Vの範囲で点灯する(図15参照)。
露光時間制御:(形成したい潜像パターン幅/感光体線速)+調整露光時間、露光パワーの制御は任意波形発生装置(アジレント・テクノロジー社製 HP33220A)による
取り付け位置:水平に対し斜め45°で取り付け
【0096】
・露光器(2):リコー光学(株)製 ラインビームレーザ
波長:655nm
ラインの厚み:24μm
ラインの長さ:20mm
焦点距離:レーザ出射端と感光体の距離74mm−本露光器の固有な値(固定)
露光エネルギー:レーザパワー×レーザ点灯時間で設定する。
レーザパワーはLD駆動電流による。ここでは表面電位800(−V)を100(−V)に減衰させる前記定義の「必要露光エネルギー」を露光することにし、レーザ点灯時間2μsに固定し、レーザパワーを感光体の感度特性に合わせ設定した。すべてこの条件で露光する。
・透明導電電極
基板:石英ガラス:10mm×30mm×1mmt
感光体に対向する面:反射防止膜付き導電電極:ITO(102.8)/SiO(103.15)
裏面:(レーザ入射側)反射防止膜:Ta(25.49)/SiO(38.15)/Ta(86.74)/SiO(111.65)
( )の数値は膜厚で単位はnm
感光体とのギャップは全て0.1mmとした。
・露光器(2)のトリガー:任意波形発生装置(アジレント・テクノロジー社製 HP33120A)
One shot pulseを発生させトリガーとした。
発生パルス幅は2μsにした。
取り付け位置:水平位置
・信号処理系:電流増幅器(KEITHLEY 428)+オシロスコープ(横河電機(株)社製 DL708)
・コントローラ:PC(自作ソフト)、測定装置の制御、データ処理
・ドラム回転装置:駿河精機(株)製 精密回転ステージ KS432−75
ドライバー:D220
分解能:0.0025°/パルス
位置決め精度:0.03°
回転速度:50°/sに設定した。
・感光体ドラム:当社製造の積層OPC(有機光半導体)ドラム60mmφ×334mm長、帯電電位800(−V)から100(−V)への電位減衰に必要な露光エネルギーは655nmにおいて概ね0.3μJ/cm前後である。
【0097】
この装置を使い、
(1)まず、測定対象の感光体ドラム(未使用品)について、検量線データを測定した。
帯電器のスコロトロングリッドバイアス、ワイヤに印加の高電圧を順次かえ、帯電部が電極部に来たところで、回転を止め、検知光を照射した。
検知光は6回照射し、最初の2回のデータは破棄し、残りの4つのデータの平均値をその帯電電位で得られる信号強度とした。狙いの帯電電位は以下のとおり。
測定される信号データの例は図4に、得られた検量線データの例は図5に示した。
測定時のタイミングは図3に示したタイミングにおいて、露光器(1)「潜像書込」を無効にして行なった。
下記は狙いの帯電電位である。
900(−V)、800(−V)、700(−V)、600(−V)、500(−V)、400(−V)、300(−V)、200(−V)、100(−V)
【0098】
(2)露光器(1)の光パワーを制御する電圧データを図6−1,図6−2に示す。
図6−1は横軸が時間軸となっている。
図6−2はこれを感光体線速のデータを使い感光体表面の位置のデータに変換している。露光時間はおよそ3.75ms、露光面上の制御幅は98μmとした。これは45μm厚(=幅)の線上ビームで矩形の露光幅を形成するので、線上ビームの厚み、裾切れの影響等を考慮し、目標300μmの露光幅よりビーム露光制御幅を小さくした。
【0099】
帯電を開始し、帯電部の先頭が270°回転したところで、露光器(1)を図6−1のデータで制御し、露光する。
露光開始位置が電極のある水平位置に来たところで回転を停止し、透明電極の背面より露光器(2)で2μsで露光し、透明電極に誘起される電流を検出する。露光から測定開始までは5sとした。
電流増幅器を通った信号はデジタルオシロスコープに集録される。
50μmステップ(60φドラムでは0.0955°の回転)で測定位置を移動させ、測定を繰り返した。露光器(2)の露光回数は21回行なった。
最初の2回分は破棄し、19回の測定データを図5の検量線データにあてはめ、対応する表面電位を読み取った。結果を図8に示す。
潜像の矩形パターンの幅は300μm狙いであった。図8では約300μmで測定されている。50μmステップで測定位置を変えているので、300μm±50μmの範囲で測定されれば、概ね正確といえる。
ただし、45μm厚(=幅)の線状ライン(図15参照)のパワーを変え、矩形パターンの露光をしているため、形成された潜像は完全な矩形とはなっていないと思われる。したがって、測定結果とモデル式に基づく数値計算結果の潜像とを比較するときは、全体的な形の他に、未露光部と露光部の電位差△Vを考慮した。
【0100】
なお、検量線データ測定時、および潜像パターンデータ測定時に最初の2つの照射データを破棄している理由は、露光器(2)のラインビームの周方向のサイズは24μmであるがガウシアン分布で裾切れが完全ではなく、一回の検知光照射が100μm先まで影響を及ぼしていることがわかっているためである。
【0101】
使用した実験装置では回転速度を50°/sにしており、この矩形の潜像パターンの書込みから測定開始までは平均1.5sを要すことが実験の準備段階でわかっていた。この時間が本実験装置の制約条件である。
本実験装置では計測制御ソフトで測定開始までの待ち時間を指定できるようにし、書込みから測定開始まで5sとなるようにし、測定結果を得た。
【0102】
次にこの測定結果に合うように、(2)式において、時間t=5sとし、表面抵抗Rsqの値を種々変えて数値計算を行なった。次の条件で数値計算した結果を図9に示す。
a=150μm(幅2a=300μm)
=800V
△V=400V
図9に示すように、図8の測定結果に近いのは表面抵抗2×1016Ω/□と判断した。
【0103】
次に、この表面抵抗値と、用意した画像形成装置の露光から現像までの時間0.11sを使い、(2)式を計算したが、計算はできなかったので、時間1sを使用して計算した結果を代わりに示す(図10参照)。
5sの計算結果と大きくは変わらない結果が得られた。書込から1s後、したがって0.11s後も、5s後も、潜像の形は大差なく、この表面抵抗では画像にくずれは生じないことが分かる。
【実施例2】
【0104】
(実施例2は比較例を含む)
画像形成装置で画像出しを10000回ほど繰り返した感光体をオゾンバクロ試験機(濃度5ppm)に入れ、5日間のオゾンバクロを行なった。この感光体の潜像計測を実施例1と同様に行なった。ただし、書込から測定開始までの時間は2sにした。オゾンバクロ前の結果とバクロ後の結果を図11、図12に示す。
次に、オゾンバクロ後の測定結果(図12)と一致するように、(2)式において、時間t=2とし、表面抵抗Rsqの値を変えて数値計算を行なった。図13に示すように、図12に近いのは表面抵抗1×1014Ω/□であった。
次に、この表面抵抗値と、用意した画像形成装置の露光から現像までの時間0.11sを使い、(2)式で計算すると、図14に示す結果が得られた。露光から2s経過の計算結果とは大きく異なる結果であり、正常な画像が得られることが期待(=予測)される結果となった。潜像計測結果(図12)からは、正常な画像は得られないと判断されたが、画像形成装置で画像出力したところ、問題はなかった(図16−1、図16−2参照)。
画像形成装置の露光から現像までの時間0.11sを使用した計算結果(図14)から期待された結果(=予測)に一致した。
潜像計測とモデル式による数値計算を組み合わせることで、画像出力結果を精度よく予測できることが分かる。
【実施例3】
【0105】
imagio Neo C385(リコー製、タンデム型カラー画像形成装置)の感光体ユニットを市場から回収し、感光体を取り出して清掃し、目視検査により感光体にキズのない感光体を80本用意した。
これら80本の感光体について、実施例1に記載の本発明による微小領域潜像電位測定を実施した。潜像書込みから2sの測定の結果と計算を組み合わせて0.11s後の△Vを算出したところ、40本が400Vから380Vの範囲であり(A群)、異常画像の出現はないと予測された。(△V=[未露光部電位(帯電電位)−露光部電位]で、潜像形成直後(時刻0)では△V=800−400=400(V)狙いでパターンを書き込んでいる。)残り40本(B群)は300V〜200Vの範囲にあり、画像ボケの出現が予測された。
40本(A群)の感光体を感光体ユニットに組み込み、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、全ての感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
さらに画像形成を2500枚繰り返したところ、5つの感光体ユニットで、画像濃度が薄く、文字のエッジ部分でややボケが認められた。別の5つの感光体ユニットの画像で、画像濃度がやや薄目であるものの許容範囲であった。残りの30の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
40本(B群)の感光体から10本を無作為に取り出し、感光体ユニットに組み込み、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、画像形成した画像は、すべての感光体で画像濃度が薄く(許容範囲のものもあり)、かつ文字のエッジ部分にボケがみられ、本発明の評価方法の予測と一致した。
【実施例4】
【0106】
imagio Neo C385(リコー製、タンデム型カラー画像形成装置)の感光体ユニットを市場から回収し、感光体を取り出して清掃し、目視検査により感光体にキズのない感光体を80本用意した。
これらの感光体の静電特性を評価した。測定は感光体ドラムを高速回転させた状態で行なった。
静電特性評価装置の構成は図18に、測定のシーケンスを図19に、得られるデータの代表例を図20に示した。
得られる特性値の説明は表1に示す。
表中の静電特性劣化の判定基準は感光体の種類により異なり、ここでは実施例で使用した感光体についてのものである。
【0107】
【表1】

【0108】
静電特性を合格した40本について、本発明による微小領域潜像電位測定を実施した。
潜像書込みから2sの測定の結果と計算を組み合わせて0.11s後の△Vを算出したところ、32本が400Vから380Vの範囲であり(A群)、異常画像の出現はないと予測された。(△V=[未露光部電位(帯電電位)−露光部電位]で、潜像形成直後(時刻0)では△V=800−400=400(V)狙いでパターンを書き込んでいる。)
残り8本(B群)は300V〜200Vの範囲にあり、画像ボケの出現が予測された。
これら感光体40本を感光体ユニットに組み込み、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、32本(A群)の全ての感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
さらに画像形成を2500枚繰り返したところ、5つの感光体ユニットの画像で、画像濃度がやや薄目であるものの許容範囲であった。残りの27の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
8本(B群)の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、文字のエッジ部分がボケ、予測した結果と一致した。
静電特性を合格した感光体40本を感光体ユニットに組み込こみ、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、全ての感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
さらに画像形成を2500枚繰り返したところ、5つの感光体ユニットの画像で、画像濃度がやや薄目であるものの許容範囲であった。残りの35の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
【実施例5】
【0109】
実施例3と同様に、imagio Neo C385(リコー製、タンデム型カラー画像形成装置)の感光体ユニットを市場から回収し、感光体を取り出して清掃し、目視検査により感光体にキズのない感光体を80本用意した。
先述した静電疲労を5分間行なった。静電疲労の条件は表面電位−800V、疲労試験中の感光体放電電流は−35μAになるように、疲労用除電ランプの光量を調節して行なった(図21参照)。
疲労試験後、静電特性を評価し、合格した20本について、本発明による微小領域潜像電位測定を実施した。潜像書込みから2sの測定の結果と計算を組み合わせて0.11s後の△Vを算出したところ、18本が400Vから350Vの範囲であり(A群)、異常画像の出現はないと予測された。
一方、残り2本は300V〜200Vの範囲にあり、画像ボケの出現が予測された。
感光体18本(A群)を感光体ユニットに組み込み、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。
さらに画像形成を2500枚繰り返したが、18本の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、高画質であった。一方、同様に2本(B群)を感光体ユニットに組み込み、画像形成したところ、文字のエッジ部分にボケがみられ、予測と一致した。
【0110】
<比較例>
imagio Neo C385(リコー製、タンデム型カラー画像形成装置)の感光体ユニットを市場から回収し、感光体を取り出して清掃し、目視検査により感光体にキズのない感光体を80本用意した。
これらの感光体を感光体ユニットに組み込み、imagio Neo C385にて画像形成を行なったところ、19の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、画像濃度が薄く、うち、5つのユニットでは文字のエッジ部分がボケた許容範囲外のものであり、61の感光体ユニットで画像形成した画像は高画質であった。
さらに画像形成を2500枚繰り返したが、25の感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、許容範囲外のものであり、6つの感光体ユニットを用いて画像形成した画像は、許容範囲内ではあるが、画像濃度がやや薄かった。49の感光体ユニットで画像形成した画像は高画質であった。
【0111】
実施例、比較例で分かるように、回収された感光体には画像出しの結果、劣化しているものと、していないものがあり、また、回収の過程で暗中に置かれていると、一次的に劣化から回復しているものがあり、これは画像形成を繰り返すことで、劣化状態に戻るが、画像形成を繰り返さないと劣化の判断を誤ることも分かった。回収された感光体がリサイクル使用が可能であるかどうか、画像出しをせずに選別ができる点で、本発明の微小領域電位計測手段がきわめて有効であること、さらに、回収された感光体に対して、静電特性の測定で選別を予め行なうこと、そして好ましくは静電疲労を実施してから静電特性の測定を行ない選別すると、微小領域の電位計測による異常画像出現予測の精度が向上、作業効率の向上が見込めることが分かった。
【符号の説明】
【0112】
D1 レーザ光源ユニット
D2 光学系(減光フィルター
D3 光学系先端のスリット
D4 計測用メイン帯電器
D5 表面電位計プローブ
D6 表面電位計本体
D7 信号処理器
D8 信号処理器
D9 計測用除電ランプ
D10 静電疲労用帯電器
D11 静電疲労用除電ランプ
D12 計測用高圧電源
D13 静電疲労用高圧電源
D14 感光体帯電電流のI−V変換
D15 インターフェース
D16 システムのコントローラ(PC)
D17 感光体ドラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開平5−119093号公報
【特許文献2】特開平5−149988号公報
【特許文献3】特開平11−184188号公報
【特許文献4】特開平11−184189号公報
【特許文献5】特開2006−84434号公報
【特許文献6】特開2006−10430号公報
【特許文献7】特開2005−166542号公報
【特許文献8】特開2004−251800号公報
【特許文献9】特開2006−38666号公報
【特許文献10】特許第3245887号(請求項1、請求項4、段落[0022])
【特許文献11】特開2005−346014号公報
【特許文献12】特願2007−184847号明細書
【非特許文献】
【0114】
【非特許文献1】W.Hillen 「A selenium-based detector system for digital slot-radiograph」 SPIE Vol.914 Medical ImagingII, P253,1988
【非特許文献2】Enrique Garcia 「CCD Arrays for Readout of Electrophotographic Latent Images」 IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES 38, NO.5, P1077, 1991
【非特許文献3】竹嶋,会沢「1DOT 潜像電位の検討」Japan Hardcopy 2001 論文集 p281
【非特許文献4】J. A Rowlands 他 「X-ray imaging using amorphous selenium:A photoinduded discharge readout method for digital mammography」 Med.phys 18(3), 1991
【非特許文献5】D.S.Weiss, 他 「Analysis of Electrostatic Latent Image Blurring Caused by Photoreceptor Surface Treatments」J of IS&T 40,No.4,1996

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体表面に感光体移動方向に1mm幅以内のサイズで形成した静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、該手段にて測定された電位データを保存し、少なくとも感光体表面抵抗および潜像形成からの経過時間をパラメータとする潜像電位のモデル式の計算を実行し、計算結果と該測定データを照合して感光体表面抵抗値を決定するプログラムを組み込んだ計算手段とから構成された装置において、該決定した表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間から、該時間における潜像電位を計算し、感光体の画像品質を画像出しせずに予測することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記潜像の形を測定する手段が、大気中にて1本/mm以上の解像性を評価できる手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像品質を予測する装置。
【請求項3】
前記潜像の形を測定する手段が、感光体の光減衰機能を利用した測定方法であることを特徴とする請求項1に記載の画像のくずれを予測する装置。
【請求項4】
前記潜像の形を測定する手段が、感光体の周辺に帯電器、潜像パターン形成のための第1の露光装置、電位検出のための第2の露光装置、除電器が配置され、第2の露光装置の位置には感光体とのギャップを一定に維持する機構をもつ透明電極が配置され、該透明電極の背後には第2の露光装置であるレーザ光源が配置され、該光源のビームは感光体移動方向(=副走査方向)のサイズが第1の露光装置で形成された潜像の幅(感光体移動方向)未満であるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
市場から回収した感光体を再利用するリサイクルシステムにおいて、回収した感光体表面に感光体移動方向に1mm幅以内のサイズで形成した静電潜像に対し、該静電潜像の形を電位として測定する手段と、該手段にて測定された電位データを保存し、少なくとも感光体表面抵抗および潜像形成からの経過時間をパラメータとする潜像電位のモデル式の計算を実行し、計算結果と該測定データを照合して感光体表面抵抗値を決定するプログラムを組み込んだ計算手段とから構成された装置において、該決定した表面抵抗値と該感光体が搭載される画像形成装置の露光から現像までの時間から、該時間における潜像電位を計算し、感光体の画像品質を画像出しせずに予測し、画像品質が良好と予測された感光体を再利用する感光体リサイクルシステム。
【請求項6】
前記潜像の形を測定する手段が、大気中にて1本/mm以上の解像性を評価できる手段であることを特徴とする請求項5に記載の感光体リサイクルシステム。
【請求項7】
前記潜像の形を測定する手段が、感光体の光減衰機能を利用した測定方法であることを特徴とする請求項5又は6に記載の感光体リサイクルシステム。
【請求項8】
前記潜像の形を測定する手段が、感光体の周辺に帯電器、潜像パターン形成のための第1の露光装置、電位検出のための第2の露光装置、除電器が配置され、第2の露光装置の位置には感光体とのギャップを一定に維持する機構をもつ透明電極が配置され、該透明電極の背後には第2の露光装置であるレーザ光源が配置され、該光源のビームは感光体移動方向(=副走査方向)のサイズが第1の露光装置で形成された潜像の幅(感光体移動方向)未満であるように構成されたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の感光体リサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−164764(P2010−164764A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6736(P2009−6736)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】