感光体寿命予兆検知装置及びこれを備えた画像形成装置
【課題】感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉え、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる
【解決手段】感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層である最表面層を備えた複数層構造の感光体を有する画像形成装置において、電位センサの電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量(標準偏差等)を算出し、最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量(標準偏差変化速度等)を算出する算出処理を繰り返し行い、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したら、感光体の寿命が近い判断する。
【解決手段】感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層である最表面層を備えた複数層構造の感光体を有する画像形成装置において、電位センサの電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量(標準偏差等)を算出し、最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量(標準偏差変化速度等)を算出する算出処理を繰り返し行い、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したら、感光体の寿命が近い判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による画像形成装置の感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置では、光導電性物質等の感光体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させ可視像を形成する。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の記録材に転写された後、熱、圧力、溶剤気体等によって記録材に定着され、出力画像となる。このような画像形成装置では、一般に、作像を行うための一連の作像プロセスに関わる機器状態が、その使用状況によって徐々に変化する。そのため、一定の品質を持った画像を提供し続けるには、定期的に画像形成装置の機器状態をチェックし、そのチェック結果によっては部品交換や消耗品の補充を行うなどして、常に作像プロセスを正常に実行できるように維持メンテナンスを行う保守作業が必要となる。
【0003】
画像形成装置の保守作業は、主に、定期的に実施される定期メンテナンスと、画像形成装置で何らかの故障や異常が発生した時のように不定期で実施される不定期メンテナンスとに大別できる。定期メンテナンスは、画像形成装置が使用不能な状態に至らないようにすることが目的であるため、各部品の予寿命に十分余裕を持った状態で部品の交換等を行う。よって、交換された部品の予寿命分は無駄となり、1台の画像形成装置を使い切るまでに要する交換部品の数は多くなりがちである。また、メンテナンス回数が多くなると、メンテナンスに費やされる時間が増加し、画像形成装置1台あたりの生産性の低下にもつながる。
【0004】
近年、画像形成装置の状態をモニタリングし、その状態変化の情報を元に画像形成装置の故障発生を予測し、その予測結果に応じて不定期メンテナンスを実施するようなシステムが提案されている(特許文献1、2等)。このように画像形成装置の故障を事前に予測して不定期メンテナンスを定期メンテナンスに代えて行うことにより、定期メンテナンスで生じ得る部品予寿命の無駄や生産性の低下といった上述の不具合の軽減を図ることができる。よって、このようなシステムは、その社会的、経済的価値が多大であるばかりでなく、使用する資源の量を大幅に減量できるため、環境への影響をも大幅に軽減することができるという利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、画像形成装置の状態は、出力画像の種類、出力枚数、出力時間間隔、使用環境等、個々の画像形成装置の使用状況によって大きく異なってくる。よって、個々の画像形成装置の状態を精度よく判別する上では、各画像形成装置の状態をそれぞれの画像形成装置の内部情報に基づいて個別に把握することが重要となる。特に、画像品質に直接的に関わる感光体の寿命による故障は、ダウンタイムの発生を余儀なくされるため、感光体の寿命による故障の発生を高精度に予測し、その予測に基づいて不定期メンテナンスを行うことは、定期メンテナンスで生じ得る感光体予寿命の無駄や生産性の低下といった上述の不具合の軽減を図る上で効果的である。
【0006】
一般に、感光体表面にトナー成分などの付着物が少量でも付着してしまうと、露光による潜像形成過程で付着物が付着した感光体表面部分の帯電電荷を光減衰させることができなくなるので、すぐに異常画像が発生してしまうことが多い。そのため、通常、感光体表面上の付着物を除去する場合、感光体表面を付着物と共に極僅かずつ摩耗させてクリーニングする手法が一般的に採られている。このように、感光体は、経時使用により表面が徐々に摩耗していく。そして、感光層(特に電荷輸送層)が摩耗により薄くなると、静電容量が徐々に大きくなり、所定の帯電処理を行って帯電手段から同じ電荷量を供給しても、感光体表面電位が低下してしまう。その結果、最終的には、感光層の膜厚が一定値以下になって所望の帯電電位が得られなくなったとき、あるいは、感光層が感光体周方向で偏磨耗して膜厚偏差が生じ、これによる帯電電位ムラによる影響が画像に表れたときに、感光体は寿命に達する。
【0007】
感光体の寿命を延ばすためには、感光体の摩耗量はできるだけ少なくする方が望ましい。しかし、感光層それ自体の耐摩耗性を高めるために硬質化すると、感光層の静電特性や電荷輸送特性について初期から電荷トラップサイト等の不具合を生じることがある。そのため、近年では、感光層の摩耗を抑制するために、感光層の感光体表面側に保護層などの耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体が実用化されている。このような複数層構造の感光体は、一般に、感光体には製造誤差により多少の偏心が生じているので、感光層の膜厚が一定値以下になって所望の帯電電位が得られなくなるよりも、感光層の感光体周方向における膜厚偏差(以下、単に「膜厚偏差」という。)が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れることにより、寿命が到来することが多い。よって、感光層の膜厚偏差が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れる直前のタイミングすなわち感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定できるような手法が望まれる。なお、ここでいう「感光体の寿命が近い時点」とは、感光層の膜厚偏差が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れる時点よりも、少なくともメンテナンスの準備期間が確保できる程度の所定期間前の時点である。
【0008】
耐摩耗層が残っている感光体表面部分では、感光層の摩耗が進行していないので、その帯電電位は経時的にあまり変化しない。一方、耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した感光体表面部分では、感光層の摩耗が進行するので、その帯電電位が経時的に変化していく。そのため、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、表面側層が残っている表面部分との間で帯電電位ムラが生じ始める。耐摩耗層の平均摩耗度(画像形成時の条件で摩耗させたときの感光体単位走行距離[km]当たりの平均摩耗量[μm])は感光層の平均摩耗度よりも小さいので、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、それまでよりも急速に摩耗が進んでいく。その結果、その時点を境に、帯電電位ムラは急速に大きくなっていき、これにより感光体周方向における電位の不均一さ(これを表す指標値を「第1特徴量」という。)が徐々に大きくなっていく。したがって、この第1特徴量を検知することで、その感光層の膜厚偏差がどの程度大きくなっているかを把握することが可能である。よって、この第1特徴量を用いれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を捉え、感光体の寿命が近い時点を特定することが可能である。
【0009】
これを可能とする方法としては、例えば、電位検知手段により感光体周方向における複数箇所の電位を検知し、検知した当該複数箇所の電位から、この時点の感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出し、算出した第1特徴量が予め決められた基準値を越えたか又は下回ったかを判断し、基準値を越えたか又は下回ったことを予兆として捉えて感光体の寿命が近い時点を特定する方法が考えられる。なお、ここで用いる基準値は、例えば事前実験あるいは市場に出回っている同機種の画像形成装置から収集した情報などから決めることができる。
【0010】
ところが、上記方法によれば、第1特徴量は、その時点で電位検知手段により検知した感光体周方向における複数箇所の電位から算出されるものである。この電位検知手段による検知結果には検知誤差が含まれるので、当該複数箇所の摩耗状態が全く同じであったとしても同じ電位が検知されるとは限らない。その結果、仮に全く同じ摩耗状態の感光体であっても、算出される第1特徴量にはバラツキが生じる。よって、上記の手法により感光体の寿命が近い時点を特定する場合、感光体の寿命が近い時点の前後で変化する第1特徴量の変化量が、このバラツキよりも十分に大きいものでないと、感光体の寿命が近いことを示す予兆を精度よく捉えることができない。しかし、そのような大きな変化を示す第1特徴量を得ることは困難であることから、上記の手法では、実質的に、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことの予兆を精度良く捉えることができず、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができない。
【0011】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉え、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる感光体寿命予兆検知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置における該感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置において、所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を電位検知手段により検知し、その電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、該第1特徴量算出手段が算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶する第1特徴量記憶手段と、所定の算出タイミングが到来するたびに、該第1特徴量記憶手段に記憶されている最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する算出処理を繰り返し行う第2特徴量算出手段と、該第2特徴量算出手段が算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断する判断手段と、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと該判断手段が判断したとき、所定の出力情報を出力する出力手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の感光体寿命予兆検知装置において、上記第1特徴量は、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを含むことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段を有し、上記感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、請求項1又は2の感光体寿命予兆検知装置を有することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記耐摩耗層は、上記感光層の摩耗を保護するための保護層であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4の画像形成装置において、上記耐摩耗層は、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上述したように、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、その時点を境に、帯電電位ムラは急速に大きくなっていき、第1特徴量が徐々に大きくなっていく。よって、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示した場合、帯電電位ムラが大きくなっているので、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近い。よって、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示した時点を特定できれば、感光層の膜厚偏差による帯電電位ムラの影響が画像に表れる直前の適切なタイミング、すなわち、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。本発明では、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したときに所定の出力情報を出力するので、出力情報が出力されたタイミングから、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。
ここで、個々の第1特徴量には、上述したように、電位検知手段による検知誤差に起因したバラツキが含まれている。本発明において感光体の寿命が近いかどうかの判断に利用される第2特徴量は、第1特徴量の経時変化を表すものであるので、感光体の寿命が近い時点の前後で変化する第1特徴量の変化量が個々の特徴量に含まれるバラツキに対して十分に大きくなくても、第2特徴量を用いれば、バラツキによる経時変化と区別して、その第1特徴量の変化の時点を示す予兆を顕著化させることができる。したがって、本発明によれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができるので、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るプリンタの一例を示す概略構成図である。
【図2】同プリンタのシステムコントローラの主要部を示すブロック図である。
【図3】同プリンタの中間転写ベルト上のパターン画像と光学センサの構成例を示す要部斜視図である。
【図4】(a)は、中間転写ベルト表面を光学センサで検知するときの様子を説明する図である。(b)は、光学センサで中間転写ベルト上のトナー像を検知するときの様子を説明する図である。
【図5】光学センサの出力値とトナー付着量との関係を示す図である。
【図6】プロセス調整運転の制御フロー図である。
【図7】光学センサの出力値と発光素子(LED)の出力値との関係を示す図である。
【図8】中間転写ベルト上に形成されたパターン画像を示す図である。
【図9】プロセス調整方法について説明するための図である。
【図10】実施形態における感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例1において、各時点における感光体の表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図12】同表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
【図13】実施例2において、各時点における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図14】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【図15】実施例2の画像形成装置と同機種ではあるが、使用環境が異なる別の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図16】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【図17】実施例3において、各時点における感光体の表面電位尖度を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図18】同表面電位尖度の経時変化を示す表面電位尖度変化速度をプロットしたグラフである。
【図19】実施例3の画像形成装置における感光体の表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図20】同表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
【図21】実施例3の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図22】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンタを示す概略構成図である。
図2は、本プリンタのシステムコントローラ71の主要部を示すブロック図である。
本実施形態におけるプリンタ1は、本体筐体内に、給紙部10、中間転写ベルト21を備えた転写ユニット20、中間転写ベルト21に沿って配設されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のトナー像形成手段たる画像形成部30Y,30M,30C,30Bkを備えている。また、定着部40及び中間転写ベルト21上のトナー像のトナー付着量を検知するための付着量検知部50等を備えている。これらの他に、画像形成装置をコントロールするシステムコントローラ71、図示しないが、プリンタ1の各部を制御する制御部やモータ及びモータにより駆動される各部に駆動源を伝達する駆動機構部等を備えている。
【0017】
各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Bkについて説明する。なお、ここでは、Bk色の画像形成部30Bkについて説明するが、Y、M、Cの画像形成部30Y,30M,30Cも同様の構成をしている。
画像形成部30Bkは、感光体31Bkの周囲に、帯電部32Bk、露光部33Bk、現像部34Bk、一次転写部35Bk、クリーニング部36Bk等が配設されている。画像形成時には、通常運転信号がプリンタの上位制御装置より指示されると、感光体31Bkは、システムコントローラ71の制御下で図示しない駆動モータによって回転駆動される。また、図2に示すように、システムコントローラ71のCPUは感光体モータなどの駆動手段と帯電バイアスを始めとする各作像工程のバイアス出力を順次シーケンシャルに出力する。外部装置からのカラー画像信号は、システムコントローラ71の画像信号発生回路で色変換処理などの画像処理が施され、Bk色の画像信号が露光部33Bkへ出力される。露光部33Bkは、システムコントローラ71の露光駆動回路で、Bkの画像信号を光信号に変換し、この光信号に基づいて露光用レーザーダイオードが点滅しながら、感光体31Bkを走査して露光することで静電潜像を形成する。この感光体31Bk上の静電潜像は、現像部34Bkによって現像されてBkトナー像となり、転写部35Bkによって感光体31Bk上のBkトナー像が中間転写ベルト21上に転写される。感光体31Bkは、トナー像転写後にクリーニング部36Bkによって残留トナーがクリーニングされ、除電ランプ38Bkにより除電されて次の画像形成に備えられる。
【0018】
また、画像形成部30Bkは、感光体31Bkの表面に対向する所定の位置に、電位検知手段としての電位センサ37Bkを備えている。この電位センサ37Bkは、そのセンサ検知領域を通過する感光体表面の電位に応じた出力信号を出力するものである。これにより、センサ検知領域を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知することができる。
【0019】
同様にして、画像形成部30Y,30M,30Cは、感光体31Y,31M,31Cの周りに、帯電部、現像部、クリーニング部、除電ランプなどを備えている。そして、感光体31Y,31M,31CにY、M、Cトナー像を形成し、これらは中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。
【0020】
各色の画像形成部の下方には、転写手段たる転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、従動ローラ22,23、駆動ローラ24などを備えている。複数の色のトナー像を担持する像担持体である中間転写ベルト21は、駆動ローラ24、従動ローラ22,23等に張り渡されている。中間転写ベルト21は、トナーの固着を避けるために極めて平滑性の高い材料が用いられている。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミドなど光沢を有する表面をもったベルト材料を好適に用いることができる。駆動ローラ24が、図2に示すシステムコントローラ71の制御下で図示しないモータ等の駆動機構により回転駆動されることにより、中間転写ベルト21は、図1中反時計方向に回転駆動される。各色の感光体31Y,31M,31C,31Bk上に形成されたY、M、C、Bkトナー像は、各色の1次転写ニップで中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
【0021】
中間転写ベルト21における駆動ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ61がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップ6が形成されている。この2次転写バイアスローラ61には、図2に示すうように、システムコントローラ71の制御下で、バイアス電源回路によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ61と接地された2次転写ニップ裏側ローラ24との間に2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
【0022】
給紙部10は、給紙カセット11内の記録紙(転写紙)12を、例えば、図示しない給紙コロ11aと分離部材11bにより1枚ずつ分離して図示しないレジストローラ対に送り出す。レジストローラ対が、給紙カセット11から送られてきた記録紙12のタイミング調整を行って、記録紙12を所定のタイミングで2次転写ニップ6に向けて送り出す。2次転写ニップ6では、中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙12上に一括2次転写されて、記録紙12の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0023】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙12は、定着部40に搬送される。定着部40は、フルカラー画像が形成された記録紙12を定着ローラ41と加圧ローラ42で加熱・加圧することにより、各色のトナーを記録紙12に定着させ、排紙ローラ対により図示しない排紙トレイ上に排出する。
【0024】
付着量検知部50は、ブラック(Bk)の画像形成部30Bkの中間転写ベルト21の移動方向下流側に配設されており、図3に示すように、中間転写ベルト21の幅方向にそれぞれ一対配設された光学的検知手段たる光学センサ51,52を備えている。光学センサ51,52は、図4(a)、(b)に示すように発光ダイオードなどからなる発光素子151と、乱反射光を受光する第1受光素子152と、正反射光を受光する第2受光素子153とから構成されている。第1受光素子152及び第2受光素子153は、Siフォトトランジスタや、PD(フォトダイオード)などを用いる。各素子151,152,153は、プリント基板150上に実装されている。また、射出光路上に集光レンズ154が配置されており、発光素子151からの射出光は、集光レンズ154により屈折して、像担持体たる中間転写ベルト21の表面の照射目標に集光される。また、入射光路上にも、集光レンズ155,156が配置されている。中間転写ベルト21上の照射対象物であるトナーから反射した反射光を集光レンズ155,156で集光された光を受光素子152,153が受光する。プリント基板150は、システムコントローラ71に接続されている。発光素子151は、図2に示すシステムコントローラ71の光量調整回路によって調整された電圧が印加されている。また、システムコントローラ71は、第1、第2受光素子152,153からの出力信号をADコンバータでデジタル信号に変換処理する。
【0025】
光学センサ51,52は、近赤外光および/または赤外光が検出可能なものを用いている。近赤外光および/または赤外光は、トナー像のトナー付着量が同じであれば、トナーの着色剤の影響を受けず、受光素子の出力値がほぼ同じ値を示す。具体的には、ピーク発光波長が840nm程度の波長の光を照射する光学素子を用い、ピーク分光感度が840nm程度の受光素子を用いることが例示される。また、例えば、発光素子を可視光から赤外光の領域までの光を照射する発光素子とし、受光素子を近赤外光または赤外光を受光する受光素子としてもよい。また、受光素子を可視光から赤外光までの領域の光を受光する受光素子とし、発光素子を近赤外光または赤外光を照射する発光素子としてもよい。光学センサをこのような構成にしても、近赤外光または赤外光を検出する光学センサとすることができる。なお、黒色トナーの着色剤として、低価格のカーボンブラックを用いた場合、カーボンは赤外領域でも強い吸光を示すため、図5に示すように、Y、M、C色に比べて付着量検知感度が低くなる。
【0026】
画像形成装置においては、一般的に、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するために現像バイアス、帯電バイアス、露光量などを調整するプロセス調整運転が行われている。電子写真方式の画像形成装置は経時劣化や環境変動で画像濃度が変動してしまう弱点があるので、上記プロセス調整運転を実行して画像濃度が安定するように制御している。
【0027】
図6は、本実施形態におけるプロセス調整運転の制御フローを示すフローチャートである。
電源投入時あるいは所定枚数のプリント前後の時間を利用し、プロセス調整運転信号が上位制御装置よりシステムコントローラ71に指示され、プロセス調整運転がスタートする(図2参照)。プロセス調整運転がスタートすると、システムコントローラ71は、画像信号発生回路を画像ナシの状態とする(S201)。次に、システムコントローラ71のCPUは、図4(a)に示すように、中間転写ベルト21に光を照射して正反射光を第2受光素子153で受光する。そして、第2受光素子153の出力(受光信号)が予め決められた所定値になるように、光量調整回路で光学センサ51,52の発光素子151の発光強度Rを調整する(S202〜S204)。これは、図7に示すように、発光素子151の発光効率個体差、温度変動や経時変動により、第2受光素子153の出力値がばらつく。このため、第2受光素子153の出力値が、目標出力値となるように、発光素子151の発光強度Rを調整することで、精度良くトナー像濃度を計測することが可能となる。すなわち、S202〜S204は、光学センサ51,52で精度良くトナー像の付着量を計測するための光学センサ51,52の校正動作に相当する。
【0028】
このような光学センサ51,52の校正動作が終わったら、図8に示すような、パターン画像60を中間転写ベルト21上における各光学センサ51,52に対向する位置に自動形成する(S205)。パターン画像60は、濃度レベルの異なる5個程度のパッチ画像60Sからなり、Bk色のパターン画像60Bk、M色のパターン画像60M、C色のパターン画像60C(図示せず)、Y色のパターン画像60Y(図示せず)が順次中間転写ベルト21に形成される。このパッチ画像60Sは、露光条件をそれぞれ変えて形成される。このとき帯電、現像バイアス条件は予め決められた特定値で実行される。この中間転写ベルト上のパターン画像を図4(b)に示すように光学センサ51,52で光学的に計測する(S206)。
【0029】
次に、各色パターン画像の各パッチ画像60Sを検知して得られた乱反射光を受光する第1受光素子152の5点の受光信号を、先の図5に示すような付着量と受光素子の出力値との関係に基づき構築された付着量算出アルゴリズムを用いてトナー付着量(画像濃度)に変換処理する。これにより、各パッチ画像60Sのトナー付着量が検知される。この場合、近赤外および/または赤外光を用いた光学センサを用いているので、色によって第1受光素子152の出力値に差異がないため、付着量算出アルゴリズムを色毎に備える必要がなく、共通の付着量算出アルゴリズムを用いることができる。なお、黒色の着色剤として、カーボンブラックを用いた場合は、先の図5に示したように、Y、M、C色と、Bk色とで付着量に対する受光素子の出力値が異なるので、Y、M、C色用と、Bk用との2つの付着量算出アルゴリズムを用いる。
【0030】
色毎に各パッチ画像60Sのトナー付着量を検知したら、各パッチ画像のトナー付着量と各パッチ画像を作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図9に示すように、線形近似した現像ポテンシャル−トナー付着量直線を各色求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から傾きγ、切片x0を各色算出する(S207)。このように各色の傾きγ、切片x0を求めることで、先ほど述べた濃度変動要因(経時劣化・環境変動)によって直線の傾きγおよび切片x0が狙いの特性(図中点線)とずれていることが検出できる。傾きγのずれを補正するための露光光量補正パラメータPを傾きγから決定する。また、現像が開始される現像ポテンシャル(切片X0)のズレを補正するため補正パラメータQを切片x0から決定する(S208)。
【0031】
露光光量補正パラメータPを露光信号に掛け合わせることで傾きγが主に補正され、現像バイアスに補正パラメータQを掛け合わせることで切片x0が主に補正されることで、狙いとする画像濃度を安定して得ることが可能となる。なお、上述では、露光光量と現像バイアスを補正しているが、帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正しても良い。
【0032】
本実施形態で使用可能な感光体としては、感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体であれば、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。
【0033】
本実施形態で用いる感光体は、導電性支持体と、その導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層を有しており、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0034】
感光層としては、電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、又は電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、上記感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層上に最表面層を設けることもできる。また、上記感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0035】
上記導電性支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
ドラム状の支持体としては、直径20〜150mmが好ましく、24〜100mmがより好ましく、28〜70mmが更に好ましい。上記ドラム状の支持体の直径が20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
【0036】
上記感光体の下引き層は、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。
上記白色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。
上記樹脂としては、例えばポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0037】
上記感光層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記感光層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
上記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
上記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
上記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
上記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
上記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0041】
上記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
また、上記感光層中にはレベリング剤を添加しても構わない。レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。上記レベリング剤の使用量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、0〜1質量部が好ましい。
【0042】
上記感光体の最表面層(保護層)は、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。この最表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが好適である。また、上記最表面層に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、熱硬化性樹脂は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いため特に好ましい。上記表面層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、表面層に用いる高分子として電荷輸送能力を有するものを用いたりすることが好ましい。
【0043】
感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、最表面層を設ける場合には、最表面層は十分な厚みとすることが重要であり、0.1〜12μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜8μmが更に好ましい。上記厚みが0.1μm未満であると、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分からの感光層の磨耗の進行が早く、12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうことがある。
【0044】
上記最表面層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの高分子は熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、最表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0045】
上記最表面層は、電荷輸送能力を有していることが好ましく、最表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、最表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を最表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0046】
上記電荷輸送層能力を有する高分子としては、高分子中に電荷輸送能力を有する基として、下記構造式(1)で表される基を有するものが好適に挙げられる。
【化1】
ただし、上記構造式(1)中、Ar1は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar2、及びAr3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0047】
このような電荷輸送能力を有する基は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い高分子の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
このような電荷輸送能力を有するアクリル樹脂は、上記構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い表面層を形成することができる。また、単官能の上記構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性高分子となり、表面層の機械的強度は極めて高いものとなる。上記多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(1)の基を付加してもよいが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(1)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0048】
上記構造式(1)で表される基を有する単官能不飽和カルボン酸としては、下記構造式(2)、又は構造式(2)を例示することができる。
【化2】
【化3】
【0049】
上記構造式(2)及び構造式(3)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR7(ただし、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、CONR8R9(ただし、R8及びR9は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Ar1及びAr2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Ar3及びAr4は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。これらR1の置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0050】
上記Ar3及びAr4のアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が挙げられる。
上記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
上記非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
上記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
【0051】
上記多官能の不飽和カルボン酸の含有量は、上記最表面層全体の5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、最表面層の機械的強度が不十分であり、75質量%を超えると、最表面層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすくなることがある。
上記最表面層にアクリル樹脂を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、表面層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行う場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
【0052】
上記最表面層中には最表面層の機械的強度を高めるために金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子など含有することが好ましい。上記金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
【0053】
以下、本発明の特徴部分である感光体寿命予兆検知装置について、詳しく説明する。
本実施形態における感光体寿命予兆検知装置は、感光体31Y,31M,31C,31Bkの寿命が近いことを示す予兆を検知するもので、主に、システムコントローラ71により構成される。
本実施形態では、プロセス調整運転を行うタイミングなどの不定期なタイミングあるいは定期的なタイミングで、以下に説明する感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理を実行する。なお、以下の説明では、感光体31Bkの寿命予兆検知処理を例に挙げて説明するが、他の感光体31Y,31M,31Cについても同様である。
【0054】
図10は、本実施形態における感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理の流れを示すフローチャートである。
本寿命予兆検知処理では、まず、図示しないRAMに一時記憶されている過去の電位データをクリアする(S1)。そして、感光体31Bkの周方向について一周内で複数箇所の電位を電位センサ37Bkにより順次検知して現時点の電位データを新たに採取し、これらの電位データをRAMに一時記憶する(S2〜S4)。なお、採取する電位データの数(規定数)は適宜設定されるが、本実施形態では16個とする。
【0055】
このようにして規定数の電位データを採取したら、次に、これらの電位データから感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出し(S5)、その第1特徴量を、今回の第1特徴量の算出時点を特定するための時点情報とともにRAMに記憶する(S6)。この第1特徴量としては、例えば、これらの電位データの平均値、分散あるいは標準偏差、尖度などが挙げられる。
【0056】
プロセス調整運転を行うタイミングなどの不定期なタイミングあるいは定期的なタイミングで、以上の処理を繰り返し行って、それぞれの時点における第1特徴量を順次RAMに記憶していき、時系列解析に必要な数だけ確保できたら(S7)、RAMに記憶されている複数の第1特徴量とその時点情報とを少なくとも用いて時系列解析を行い、第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する(S8)。ここで算出される第2特徴量は、ある時点での感光体の状態を単に表すものではなく、その経時的な傾向をも含んだ特徴量となるため、各時点における個々の第1特徴量では捉えられない経時変化の大きさを定量的に捉えることができる。つまりは、感光体周方向における複数箇所の電位についての不均一さが変化すると、第2特徴量の値が変わる。本実施形態では、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断し(S9)、そのような大きな変化を示した場合は、これを感光体31Bkの寿命が近いことを示す予兆として捉える。そして、感光体31Bkの寿命が近いことを示す出力情報をユーザー等に知らせるための予兆報知を行う(S10)。
【0057】
本実施形態における寿命予兆検知処理によれば、感光体の偏心等により感光体周方向における偏摩耗によって感光層の膜厚偏差が生じ、これによる帯電電位ムラの影響が画像に表れることにより到来する感光体の寿命が近いことを示す予兆を、少なくとも個々の第1特徴量から検知する場合に比べて、高い精度で検知することができる。
【0058】
〔実施例1〕
次に、本実施形態における一実施例(以下、本実施例を「実施例1」という。)について説明する。
本実施例1では、感光体周方向における複数箇所の電位の平均値(以下、「表面電位平均値」という。)を第1特徴量として用い、かつ、その表面電位平均値変化速度を第2特徴量として用いる例である。
【0059】
図11は、各時点における表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図11に示した例で用いた感光体は、その最表面層が電荷輸送能力を有しているため、摩耗による最表面層の層厚変化に応じて感光体表面電位(帯電電位)も徐々に低下する。そのため、図11に示したグラフには、初期から、感光体の表面電位平均値が一定の割合で徐々に低下する傾向が示されている。そして、経時使用により100[k枚]付近に達すると、表面電位平均値の変化割合(図11のグラフの傾き)が僅かに変わっていることが読みとれる。これは、この時点で感光体表面の一部分の最表面層が摩耗により消失して感光層が露出し、感光層の摩耗が進行し始めたことを意味する。すなわち、感光体表面の一部で感光層の摩耗が進行することにより感光体周方向における電位の不均一さが変化すると、当該部分の帯電電位が急速に低下する結果、感光体の表面電位平均値も僅かながら変化する。したがって、この表面電位平均値も、感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量となり得る。しかし、表面電位平均値の変化割合が変わった時点(100[k枚]付近)の前後における表面電位平均値を比較すると、その違いは僅かである。そのため、ちょうどこれらの表面電位平均値の間に閾値を設定し、その閾値を下回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、電位センサ37Bkによる検知誤差等を考慮すると、判断誤差が大きく、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
【0060】
図12は、図11に示した感光体の表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
各表面電位平均値変化速度は、図11に示した例の表面電位平均値を用いて、それぞれの時点における表面電位平均値を含む直前10個分の表面電位平均値を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位平均値変化速度は、表面電位平均値の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として感光体の表面電位平均値を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0061】
図12に示すように、表面電位平均値変化速度は、図11に示したグラフで表面電位平均値の変化割合が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化することがわかる。したがって、その時点の前後における表面電位平均値変化速度の間に閾値(図12では例えば「−4」)を設定し、その閾値を下回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0062】
〔実施例2〕
次に、本実施形態における他の実施例(以下、本実施例を「実施例2」という。)について説明する。
上述したように、表面電位平均値も、感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量となり得るが、表面電位平均値では、感光体周方向における電位の不均一さの影響が小さいので、感光体周方向における電位の不均一さがより顕著に表れる別の指標値を第1特徴量として用いる方が、より高い精度で感光体寿命が近い時点を特定することが可能となる。
そこで、本実施例2では、第1特徴量として、感光体周方向における複数箇所の電位の標準偏差(以下、「表面電位標準偏差」という。)を用い、かつ、その表面電位標準偏差変化速度を第2特徴量として用いる。
【0063】
本実施例2における表面電位標準偏差σは、少なくとも感光体一周分にわたって複数箇所n(本実施例では16点)の表面電位を電位センサで検知し、これを下記の数1に示す式に従って、計算することにより得ることができる。
【数1】
なお、上記数1に示す式において、xiはi=1〜nまでの各電位データ、Xはx1〜xnの平均値である。
【0064】
標準偏差は、観測されるデータがガウス分布に従うとした場合のバラツキの大きさを表す値であり、その値が大きいほどバラツキが大きい。本実施例における表面電位標準偏差σは、感光体周方向における電位の不均一さの程度を示す指標値であり、感光体の回転中心が僅かにズレて偏心している場合などで、感光体の回転フレに伴う感光体周方向における偏摩耗によって生じる表面電位の不均一さ(バラツキ)の程度を示す。
【0065】
図13は、各時点における表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
このグラフは、図11に示した例で用いた感光体と同じ電位データを用い、各時点における表面電位標準偏差を求めて作成したものである。このグラフにおいて、表面電位標準偏差は、100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて僅かながら大きな値をとるように変化している。しかし、その違いは僅かであるため、これらの違いを区別するための閾値を設定し、その閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、判断誤差が大きく、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
【0066】
図14は、図13に示した表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
各表面電位標準偏差変化速度は、図13に示した例の表面電位標準偏差を用いて、それぞれの時点における表面電位標準偏差を含む直前10個分の表面電位標準偏差を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位標準偏差変化速度は、表面電位標準偏差の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として表面電位標準偏差を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0067】
図14に示すように、表面電位標準偏差変化速度は、図13に示したグラフで表面電位標準偏差が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化していることがわかる。したがって、その時点の表面電位標準偏差変化速度とその時点の前後における表面電位標準偏差変化速度との間に閾値(図14では例えば「0.03」)を設定し、その閾値を上回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0068】
ここで、表面電位標準偏差が閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法でも、精度は落ちるものの、感光体寿命が近い時点を特定することは可能である。しかし、仮に同機種の画像形成装置について、その感光体の表面電位標準偏差を算出する場合でも、使用環境の違い、電位センサの感度の違い、部品の製造誤差、組み付け誤差など、画像形成装置の個体差によって、その表面電位標準偏差の値は異なってくる。そのため、この方法では、同機種の画像形成装置について同じ閾値を用いると、ある画像形成装置では感光体寿命が近い時点を比較的精度よく特定することができても、別の画像形成装置では感光体寿命が近い時点を精度よく特定することができないという事態が発生する。
【0069】
図15は、図13に示した例と同機種ではあるが、使用環境が異なる別の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図16は、図15に示した表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
図13と図15とを比較すると、いずれも100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて大きな値をとるように変化している点では共通しているが、画像形成装置の個体差により、各図の表面電位標準偏差の平均的な値は、図13の画像形成装置よりも図15の画像形成装置の方が大きいものとなっている。これらの画像形成装置の間では、一方に適した閾値を設定すると、他方では感光体寿命が近い時点を特定できない。これらの画像形成装置は同機種ではあるが、共通の閾値を設けることができない。
これに対し、図14と図16とを比較すると、いずれも100[k枚]付近で、その値が大きく変化している点で共通している。また、いずれの場合も、閾値(基準値)を0.03程度に設定すれば、感光体寿命が近い時点を特定できる。したがって、本実施例2の方法であれば、画像形成装置の個体差によらず、共通の閾値(基準値)を設けることが可能である。
【0070】
〔実施例3〕
次に、本実施形態における更に他の実施例(以下、本実施例を「実施例3」という。)について説明する。
本実施例3では、第1特徴量として、感光体周方向における複数箇所の電位の尖度(以下、「表面電位尖度」という。)を用い、かつ、その表面電位尖度変化速度を第2特徴量として用いる。
【0071】
尖度b2は、下記の数2に示す式により定義される、高次のモーメントに属する基本統計量であり、分布の尖りの度合いや裾の重さ、外れ値の存在等を表す量である。観測値の分布をガウス分布に固定せずに、分布の広がり方や、分布から外れた観測値の存在を情報として取り扱うことにより、標準偏差では捉え難い特異な状態を検知することが可能となる。
【数2】
ここで、Sは分散を表し、S=σ2である。他の符号は、上記数1と同じである。
【0072】
尖度b2は、観測されたデータ群が持つ分布がガウス分布と比較して、狭いと小さな値をとり、広いまたは分布の端に外れ値があると大きな値を取るという性質を持つ。本実施例における表面電位尖度b2は、感光体周方向で局所的に小さなまたは大きな表面電位を持つ場合に、大きな値を示し、表面保護層のような摩耗速度が小さな表面が部分的に摩滅し、より摩耗速度が大きめの感光層が露出して摩耗し始めた場合などで、感光体の局所摩耗で生じる表面電位低下の発生等を示す。
【0073】
図17は、各時点における表面電位尖度を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図18は、図17に示した表面電位尖度の経時変化を示す表面電位尖度変化速度をプロットしたグラフである。
これらのグラフは、同機種ではあるが上述した実施例1及び2とは別の画像形成装置の電位データを用い、各時点における表面電位尖度及び表面電位尖度変化速度を求めて作成したものである。なお、各表面電位尖度変化速度は、図17に示した例の表面電位尖度を用いて、それぞれの時点における表面電位尖度を含む直前10個分の表面電位尖度を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位尖度変化速度は、表面電位尖度の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として表面電位尖度を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0074】
図17のグラフにおいて、表面電位尖度は、100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて大きな値をとるように変化している。しかし、それ以前の表面電位尖度の中には突発的に大きな値をとる箇所がある(例えば65[k枚]付近)。そのため、所定の閾値を設定し、その閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、誤判断がなされる可能性があり、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
これに対し、図18に示すように、表面電位尖度変化速度は、図17に示したグラフで表面電位尖度が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化していることがわかる。したがって、その時点の表面電位尖度変化速度とその時点の前後における表面電位尖度変化速度との間に閾値(図18では例えば「0.5」)を設定し、その閾値を上回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0075】
なお、図19〜図22に、本実施例3における画像形成装置における感光体の表面電位平均値、表面電位平均値変化速度、表面電位標準偏差、表面電位標準偏差変化速度を示す。
【0076】
各実施例1〜3では、第1特徴量として、それぞれ、表面電位平均値、表面電位標準偏差、表面電位尖度を用いる場合について説明したが、これらののうちの2以上を第1特徴量として用い、実施例1〜3を併用するようにしてもよい。画像形成装置の個体差により、感光体の摩耗の進行状況は様々であるので、実施例1〜3を併用することで、いろいろな摩耗進行状況に対応することが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、第1特徴量から第2特徴量を算出するために用いる時系列解析として、線形回帰を用いているが、非線形回帰を始めとする回帰分析から求めた、回帰直線、回帰曲線を時間窓で区切って用いる方法や、移動平均法、自己相関関数、ニューラルネット、サポートベクターマシン、ベイズモデル、カオスモデル等を用いたモデル化等を用いることもできる。
【0078】
以上、本実施形態における画像形成装置は、感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層である最表面層を備えた複数層構造の感光体31Y,31M,31C,31Bkを表面移動させて、感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、そのトナー像を最終的に記録材である記録紙12上に転写することによりその記録紙上に画像を形成するプリンタである。このプリンタは、所定の電位検知タイミング(例えばプロセス調整運転が行われるタイミング)が到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置(センサ検知領域)を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段としての電位センサ37Y,37M,37C,37Bkを有し、感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、以下の感光体寿命予兆検知装置を有している。すなわち、この感光体寿命予兆検知装置は、電位センサの電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量(表面電位平均値、表面電位標準偏差、表面電位尖度等)を算出し、算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶し、所定の算出タイミング(例えばプロセス調整運転が行われるタイミング)が到来するたびに、最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量(表面電位平均値変化速度、表面電位標準偏差変化速度、表面電位尖度変化速度等)を算出する算出処理を繰り返し行い、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断し、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと判断したときに、感光体の寿命が近いことを示す出力情報を出力する。これにより、上述したように、感光体の偏心等に起因した感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができ、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
特に、本実施形態では、第1特徴量として、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを用いるので、簡易な演算で、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。特に、複数種類の第1特徴量を併用すれば、より高い精度で、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。
また、本実施形態では、耐摩耗層が感光層の摩耗を保護するための保護層であるので、感光体寿命を維持したまま感光層自体を薄く形成することが可能となり、省資源化への貢献が可能となる。特に、本実施形態においては、耐摩耗層である保護層が、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されているので、その効果は高い。
【符号の説明】
【0079】
1 プリンタ
31Y,31M,31C,31Bk 感光体
37Y,37M,37C,37Bk 電位センサ
71 システムコントローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2001−175328号公報
【特許文献2】特開2007−328645号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による画像形成装置の感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置では、光導電性物質等の感光体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させ可視像を形成する。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の記録材に転写された後、熱、圧力、溶剤気体等によって記録材に定着され、出力画像となる。このような画像形成装置では、一般に、作像を行うための一連の作像プロセスに関わる機器状態が、その使用状況によって徐々に変化する。そのため、一定の品質を持った画像を提供し続けるには、定期的に画像形成装置の機器状態をチェックし、そのチェック結果によっては部品交換や消耗品の補充を行うなどして、常に作像プロセスを正常に実行できるように維持メンテナンスを行う保守作業が必要となる。
【0003】
画像形成装置の保守作業は、主に、定期的に実施される定期メンテナンスと、画像形成装置で何らかの故障や異常が発生した時のように不定期で実施される不定期メンテナンスとに大別できる。定期メンテナンスは、画像形成装置が使用不能な状態に至らないようにすることが目的であるため、各部品の予寿命に十分余裕を持った状態で部品の交換等を行う。よって、交換された部品の予寿命分は無駄となり、1台の画像形成装置を使い切るまでに要する交換部品の数は多くなりがちである。また、メンテナンス回数が多くなると、メンテナンスに費やされる時間が増加し、画像形成装置1台あたりの生産性の低下にもつながる。
【0004】
近年、画像形成装置の状態をモニタリングし、その状態変化の情報を元に画像形成装置の故障発生を予測し、その予測結果に応じて不定期メンテナンスを実施するようなシステムが提案されている(特許文献1、2等)。このように画像形成装置の故障を事前に予測して不定期メンテナンスを定期メンテナンスに代えて行うことにより、定期メンテナンスで生じ得る部品予寿命の無駄や生産性の低下といった上述の不具合の軽減を図ることができる。よって、このようなシステムは、その社会的、経済的価値が多大であるばかりでなく、使用する資源の量を大幅に減量できるため、環境への影響をも大幅に軽減することができるという利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、画像形成装置の状態は、出力画像の種類、出力枚数、出力時間間隔、使用環境等、個々の画像形成装置の使用状況によって大きく異なってくる。よって、個々の画像形成装置の状態を精度よく判別する上では、各画像形成装置の状態をそれぞれの画像形成装置の内部情報に基づいて個別に把握することが重要となる。特に、画像品質に直接的に関わる感光体の寿命による故障は、ダウンタイムの発生を余儀なくされるため、感光体の寿命による故障の発生を高精度に予測し、その予測に基づいて不定期メンテナンスを行うことは、定期メンテナンスで生じ得る感光体予寿命の無駄や生産性の低下といった上述の不具合の軽減を図る上で効果的である。
【0006】
一般に、感光体表面にトナー成分などの付着物が少量でも付着してしまうと、露光による潜像形成過程で付着物が付着した感光体表面部分の帯電電荷を光減衰させることができなくなるので、すぐに異常画像が発生してしまうことが多い。そのため、通常、感光体表面上の付着物を除去する場合、感光体表面を付着物と共に極僅かずつ摩耗させてクリーニングする手法が一般的に採られている。このように、感光体は、経時使用により表面が徐々に摩耗していく。そして、感光層(特に電荷輸送層)が摩耗により薄くなると、静電容量が徐々に大きくなり、所定の帯電処理を行って帯電手段から同じ電荷量を供給しても、感光体表面電位が低下してしまう。その結果、最終的には、感光層の膜厚が一定値以下になって所望の帯電電位が得られなくなったとき、あるいは、感光層が感光体周方向で偏磨耗して膜厚偏差が生じ、これによる帯電電位ムラによる影響が画像に表れたときに、感光体は寿命に達する。
【0007】
感光体の寿命を延ばすためには、感光体の摩耗量はできるだけ少なくする方が望ましい。しかし、感光層それ自体の耐摩耗性を高めるために硬質化すると、感光層の静電特性や電荷輸送特性について初期から電荷トラップサイト等の不具合を生じることがある。そのため、近年では、感光層の摩耗を抑制するために、感光層の感光体表面側に保護層などの耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体が実用化されている。このような複数層構造の感光体は、一般に、感光体には製造誤差により多少の偏心が生じているので、感光層の膜厚が一定値以下になって所望の帯電電位が得られなくなるよりも、感光層の感光体周方向における膜厚偏差(以下、単に「膜厚偏差」という。)が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れることにより、寿命が到来することが多い。よって、感光層の膜厚偏差が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れる直前のタイミングすなわち感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定できるような手法が望まれる。なお、ここでいう「感光体の寿命が近い時点」とは、感光層の膜厚偏差が大きくなって帯電電位ムラによる影響が画像に表れる時点よりも、少なくともメンテナンスの準備期間が確保できる程度の所定期間前の時点である。
【0008】
耐摩耗層が残っている感光体表面部分では、感光層の摩耗が進行していないので、その帯電電位は経時的にあまり変化しない。一方、耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した感光体表面部分では、感光層の摩耗が進行するので、その帯電電位が経時的に変化していく。そのため、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、表面側層が残っている表面部分との間で帯電電位ムラが生じ始める。耐摩耗層の平均摩耗度(画像形成時の条件で摩耗させたときの感光体単位走行距離[km]当たりの平均摩耗量[μm])は感光層の平均摩耗度よりも小さいので、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、それまでよりも急速に摩耗が進んでいく。その結果、その時点を境に、帯電電位ムラは急速に大きくなっていき、これにより感光体周方向における電位の不均一さ(これを表す指標値を「第1特徴量」という。)が徐々に大きくなっていく。したがって、この第1特徴量を検知することで、その感光層の膜厚偏差がどの程度大きくなっているかを把握することが可能である。よって、この第1特徴量を用いれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を捉え、感光体の寿命が近い時点を特定することが可能である。
【0009】
これを可能とする方法としては、例えば、電位検知手段により感光体周方向における複数箇所の電位を検知し、検知した当該複数箇所の電位から、この時点の感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出し、算出した第1特徴量が予め決められた基準値を越えたか又は下回ったかを判断し、基準値を越えたか又は下回ったことを予兆として捉えて感光体の寿命が近い時点を特定する方法が考えられる。なお、ここで用いる基準値は、例えば事前実験あるいは市場に出回っている同機種の画像形成装置から収集した情報などから決めることができる。
【0010】
ところが、上記方法によれば、第1特徴量は、その時点で電位検知手段により検知した感光体周方向における複数箇所の電位から算出されるものである。この電位検知手段による検知結果には検知誤差が含まれるので、当該複数箇所の摩耗状態が全く同じであったとしても同じ電位が検知されるとは限らない。その結果、仮に全く同じ摩耗状態の感光体であっても、算出される第1特徴量にはバラツキが生じる。よって、上記の手法により感光体の寿命が近い時点を特定する場合、感光体の寿命が近い時点の前後で変化する第1特徴量の変化量が、このバラツキよりも十分に大きいものでないと、感光体の寿命が近いことを示す予兆を精度よく捉えることができない。しかし、そのような大きな変化を示す第1特徴量を得ることは困難であることから、上記の手法では、実質的に、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことの予兆を精度良く捉えることができず、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができない。
【0011】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉え、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる感光体寿命予兆検知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置における該感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置において、所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を電位検知手段により検知し、その電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、該第1特徴量算出手段が算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶する第1特徴量記憶手段と、所定の算出タイミングが到来するたびに、該第1特徴量記憶手段に記憶されている最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する算出処理を繰り返し行う第2特徴量算出手段と、該第2特徴量算出手段が算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断する判断手段と、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと該判断手段が判断したとき、所定の出力情報を出力する出力手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の感光体寿命予兆検知装置において、上記第1特徴量は、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを含むことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段を有し、上記感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、請求項1又は2の感光体寿命予兆検知装置を有することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記耐摩耗層は、上記感光層の摩耗を保護するための保護層であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4の画像形成装置において、上記耐摩耗層は、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上述したように、感光体表面の一部分で耐摩耗層が摩耗により消滅して感光層が露出した状態になると、その時点を境に、帯電電位ムラは急速に大きくなっていき、第1特徴量が徐々に大きくなっていく。よって、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示した場合、帯電電位ムラが大きくなっているので、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近い。よって、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示した時点を特定できれば、感光層の膜厚偏差による帯電電位ムラの影響が画像に表れる直前の適切なタイミング、すなわち、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。本発明では、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したときに所定の出力情報を出力するので、出力情報が出力されたタイミングから、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。
ここで、個々の第1特徴量には、上述したように、電位検知手段による検知誤差に起因したバラツキが含まれている。本発明において感光体の寿命が近いかどうかの判断に利用される第2特徴量は、第1特徴量の経時変化を表すものであるので、感光体の寿命が近い時点の前後で変化する第1特徴量の変化量が個々の特徴量に含まれるバラツキに対して十分に大きくなくても、第2特徴量を用いれば、バラツキによる経時変化と区別して、その第1特徴量の変化の時点を示す予兆を顕著化させることができる。したがって、本発明によれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができるので、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るプリンタの一例を示す概略構成図である。
【図2】同プリンタのシステムコントローラの主要部を示すブロック図である。
【図3】同プリンタの中間転写ベルト上のパターン画像と光学センサの構成例を示す要部斜視図である。
【図4】(a)は、中間転写ベルト表面を光学センサで検知するときの様子を説明する図である。(b)は、光学センサで中間転写ベルト上のトナー像を検知するときの様子を説明する図である。
【図5】光学センサの出力値とトナー付着量との関係を示す図である。
【図6】プロセス調整運転の制御フロー図である。
【図7】光学センサの出力値と発光素子(LED)の出力値との関係を示す図である。
【図8】中間転写ベルト上に形成されたパターン画像を示す図である。
【図9】プロセス調整方法について説明するための図である。
【図10】実施形態における感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例1において、各時点における感光体の表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図12】同表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
【図13】実施例2において、各時点における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図14】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【図15】実施例2の画像形成装置と同機種ではあるが、使用環境が異なる別の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図16】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【図17】実施例3において、各時点における感光体の表面電位尖度を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図18】同表面電位尖度の経時変化を示す表面電位尖度変化速度をプロットしたグラフである。
【図19】実施例3の画像形成装置における感光体の表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図20】同表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
【図21】実施例3の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
【図22】同表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンタを示す概略構成図である。
図2は、本プリンタのシステムコントローラ71の主要部を示すブロック図である。
本実施形態におけるプリンタ1は、本体筐体内に、給紙部10、中間転写ベルト21を備えた転写ユニット20、中間転写ベルト21に沿って配設されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のトナー像形成手段たる画像形成部30Y,30M,30C,30Bkを備えている。また、定着部40及び中間転写ベルト21上のトナー像のトナー付着量を検知するための付着量検知部50等を備えている。これらの他に、画像形成装置をコントロールするシステムコントローラ71、図示しないが、プリンタ1の各部を制御する制御部やモータ及びモータにより駆動される各部に駆動源を伝達する駆動機構部等を備えている。
【0017】
各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Bkについて説明する。なお、ここでは、Bk色の画像形成部30Bkについて説明するが、Y、M、Cの画像形成部30Y,30M,30Cも同様の構成をしている。
画像形成部30Bkは、感光体31Bkの周囲に、帯電部32Bk、露光部33Bk、現像部34Bk、一次転写部35Bk、クリーニング部36Bk等が配設されている。画像形成時には、通常運転信号がプリンタの上位制御装置より指示されると、感光体31Bkは、システムコントローラ71の制御下で図示しない駆動モータによって回転駆動される。また、図2に示すように、システムコントローラ71のCPUは感光体モータなどの駆動手段と帯電バイアスを始めとする各作像工程のバイアス出力を順次シーケンシャルに出力する。外部装置からのカラー画像信号は、システムコントローラ71の画像信号発生回路で色変換処理などの画像処理が施され、Bk色の画像信号が露光部33Bkへ出力される。露光部33Bkは、システムコントローラ71の露光駆動回路で、Bkの画像信号を光信号に変換し、この光信号に基づいて露光用レーザーダイオードが点滅しながら、感光体31Bkを走査して露光することで静電潜像を形成する。この感光体31Bk上の静電潜像は、現像部34Bkによって現像されてBkトナー像となり、転写部35Bkによって感光体31Bk上のBkトナー像が中間転写ベルト21上に転写される。感光体31Bkは、トナー像転写後にクリーニング部36Bkによって残留トナーがクリーニングされ、除電ランプ38Bkにより除電されて次の画像形成に備えられる。
【0018】
また、画像形成部30Bkは、感光体31Bkの表面に対向する所定の位置に、電位検知手段としての電位センサ37Bkを備えている。この電位センサ37Bkは、そのセンサ検知領域を通過する感光体表面の電位に応じた出力信号を出力するものである。これにより、センサ検知領域を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知することができる。
【0019】
同様にして、画像形成部30Y,30M,30Cは、感光体31Y,31M,31Cの周りに、帯電部、現像部、クリーニング部、除電ランプなどを備えている。そして、感光体31Y,31M,31CにY、M、Cトナー像を形成し、これらは中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。
【0020】
各色の画像形成部の下方には、転写手段たる転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、従動ローラ22,23、駆動ローラ24などを備えている。複数の色のトナー像を担持する像担持体である中間転写ベルト21は、駆動ローラ24、従動ローラ22,23等に張り渡されている。中間転写ベルト21は、トナーの固着を避けるために極めて平滑性の高い材料が用いられている。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミドなど光沢を有する表面をもったベルト材料を好適に用いることができる。駆動ローラ24が、図2に示すシステムコントローラ71の制御下で図示しないモータ等の駆動機構により回転駆動されることにより、中間転写ベルト21は、図1中反時計方向に回転駆動される。各色の感光体31Y,31M,31C,31Bk上に形成されたY、M、C、Bkトナー像は、各色の1次転写ニップで中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
【0021】
中間転写ベルト21における駆動ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ61がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップ6が形成されている。この2次転写バイアスローラ61には、図2に示すうように、システムコントローラ71の制御下で、バイアス電源回路によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ61と接地された2次転写ニップ裏側ローラ24との間に2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
【0022】
給紙部10は、給紙カセット11内の記録紙(転写紙)12を、例えば、図示しない給紙コロ11aと分離部材11bにより1枚ずつ分離して図示しないレジストローラ対に送り出す。レジストローラ対が、給紙カセット11から送られてきた記録紙12のタイミング調整を行って、記録紙12を所定のタイミングで2次転写ニップ6に向けて送り出す。2次転写ニップ6では、中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙12上に一括2次転写されて、記録紙12の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0023】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙12は、定着部40に搬送される。定着部40は、フルカラー画像が形成された記録紙12を定着ローラ41と加圧ローラ42で加熱・加圧することにより、各色のトナーを記録紙12に定着させ、排紙ローラ対により図示しない排紙トレイ上に排出する。
【0024】
付着量検知部50は、ブラック(Bk)の画像形成部30Bkの中間転写ベルト21の移動方向下流側に配設されており、図3に示すように、中間転写ベルト21の幅方向にそれぞれ一対配設された光学的検知手段たる光学センサ51,52を備えている。光学センサ51,52は、図4(a)、(b)に示すように発光ダイオードなどからなる発光素子151と、乱反射光を受光する第1受光素子152と、正反射光を受光する第2受光素子153とから構成されている。第1受光素子152及び第2受光素子153は、Siフォトトランジスタや、PD(フォトダイオード)などを用いる。各素子151,152,153は、プリント基板150上に実装されている。また、射出光路上に集光レンズ154が配置されており、発光素子151からの射出光は、集光レンズ154により屈折して、像担持体たる中間転写ベルト21の表面の照射目標に集光される。また、入射光路上にも、集光レンズ155,156が配置されている。中間転写ベルト21上の照射対象物であるトナーから反射した反射光を集光レンズ155,156で集光された光を受光素子152,153が受光する。プリント基板150は、システムコントローラ71に接続されている。発光素子151は、図2に示すシステムコントローラ71の光量調整回路によって調整された電圧が印加されている。また、システムコントローラ71は、第1、第2受光素子152,153からの出力信号をADコンバータでデジタル信号に変換処理する。
【0025】
光学センサ51,52は、近赤外光および/または赤外光が検出可能なものを用いている。近赤外光および/または赤外光は、トナー像のトナー付着量が同じであれば、トナーの着色剤の影響を受けず、受光素子の出力値がほぼ同じ値を示す。具体的には、ピーク発光波長が840nm程度の波長の光を照射する光学素子を用い、ピーク分光感度が840nm程度の受光素子を用いることが例示される。また、例えば、発光素子を可視光から赤外光の領域までの光を照射する発光素子とし、受光素子を近赤外光または赤外光を受光する受光素子としてもよい。また、受光素子を可視光から赤外光までの領域の光を受光する受光素子とし、発光素子を近赤外光または赤外光を照射する発光素子としてもよい。光学センサをこのような構成にしても、近赤外光または赤外光を検出する光学センサとすることができる。なお、黒色トナーの着色剤として、低価格のカーボンブラックを用いた場合、カーボンは赤外領域でも強い吸光を示すため、図5に示すように、Y、M、C色に比べて付着量検知感度が低くなる。
【0026】
画像形成装置においては、一般的に、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するために現像バイアス、帯電バイアス、露光量などを調整するプロセス調整運転が行われている。電子写真方式の画像形成装置は経時劣化や環境変動で画像濃度が変動してしまう弱点があるので、上記プロセス調整運転を実行して画像濃度が安定するように制御している。
【0027】
図6は、本実施形態におけるプロセス調整運転の制御フローを示すフローチャートである。
電源投入時あるいは所定枚数のプリント前後の時間を利用し、プロセス調整運転信号が上位制御装置よりシステムコントローラ71に指示され、プロセス調整運転がスタートする(図2参照)。プロセス調整運転がスタートすると、システムコントローラ71は、画像信号発生回路を画像ナシの状態とする(S201)。次に、システムコントローラ71のCPUは、図4(a)に示すように、中間転写ベルト21に光を照射して正反射光を第2受光素子153で受光する。そして、第2受光素子153の出力(受光信号)が予め決められた所定値になるように、光量調整回路で光学センサ51,52の発光素子151の発光強度Rを調整する(S202〜S204)。これは、図7に示すように、発光素子151の発光効率個体差、温度変動や経時変動により、第2受光素子153の出力値がばらつく。このため、第2受光素子153の出力値が、目標出力値となるように、発光素子151の発光強度Rを調整することで、精度良くトナー像濃度を計測することが可能となる。すなわち、S202〜S204は、光学センサ51,52で精度良くトナー像の付着量を計測するための光学センサ51,52の校正動作に相当する。
【0028】
このような光学センサ51,52の校正動作が終わったら、図8に示すような、パターン画像60を中間転写ベルト21上における各光学センサ51,52に対向する位置に自動形成する(S205)。パターン画像60は、濃度レベルの異なる5個程度のパッチ画像60Sからなり、Bk色のパターン画像60Bk、M色のパターン画像60M、C色のパターン画像60C(図示せず)、Y色のパターン画像60Y(図示せず)が順次中間転写ベルト21に形成される。このパッチ画像60Sは、露光条件をそれぞれ変えて形成される。このとき帯電、現像バイアス条件は予め決められた特定値で実行される。この中間転写ベルト上のパターン画像を図4(b)に示すように光学センサ51,52で光学的に計測する(S206)。
【0029】
次に、各色パターン画像の各パッチ画像60Sを検知して得られた乱反射光を受光する第1受光素子152の5点の受光信号を、先の図5に示すような付着量と受光素子の出力値との関係に基づき構築された付着量算出アルゴリズムを用いてトナー付着量(画像濃度)に変換処理する。これにより、各パッチ画像60Sのトナー付着量が検知される。この場合、近赤外および/または赤外光を用いた光学センサを用いているので、色によって第1受光素子152の出力値に差異がないため、付着量算出アルゴリズムを色毎に備える必要がなく、共通の付着量算出アルゴリズムを用いることができる。なお、黒色の着色剤として、カーボンブラックを用いた場合は、先の図5に示したように、Y、M、C色と、Bk色とで付着量に対する受光素子の出力値が異なるので、Y、M、C色用と、Bk用との2つの付着量算出アルゴリズムを用いる。
【0030】
色毎に各パッチ画像60Sのトナー付着量を検知したら、各パッチ画像のトナー付着量と各パッチ画像を作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図9に示すように、線形近似した現像ポテンシャル−トナー付着量直線を各色求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から傾きγ、切片x0を各色算出する(S207)。このように各色の傾きγ、切片x0を求めることで、先ほど述べた濃度変動要因(経時劣化・環境変動)によって直線の傾きγおよび切片x0が狙いの特性(図中点線)とずれていることが検出できる。傾きγのずれを補正するための露光光量補正パラメータPを傾きγから決定する。また、現像が開始される現像ポテンシャル(切片X0)のズレを補正するため補正パラメータQを切片x0から決定する(S208)。
【0031】
露光光量補正パラメータPを露光信号に掛け合わせることで傾きγが主に補正され、現像バイアスに補正パラメータQを掛け合わせることで切片x0が主に補正されることで、狙いとする画像濃度を安定して得ることが可能となる。なお、上述では、露光光量と現像バイアスを補正しているが、帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正しても良い。
【0032】
本実施形態で使用可能な感光体としては、感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体であれば、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。
【0033】
本実施形態で用いる感光体は、導電性支持体と、その導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層を有しており、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0034】
感光層としては、電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、又は電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、上記感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層上に最表面層を設けることもできる。また、上記感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0035】
上記導電性支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
ドラム状の支持体としては、直径20〜150mmが好ましく、24〜100mmがより好ましく、28〜70mmが更に好ましい。上記ドラム状の支持体の直径が20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
【0036】
上記感光体の下引き層は、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。
上記白色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。
上記樹脂としては、例えばポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0037】
上記感光層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記感光層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
上記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
上記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
上記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
上記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
上記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0041】
上記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
また、上記感光層中にはレベリング剤を添加しても構わない。レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。上記レベリング剤の使用量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、0〜1質量部が好ましい。
【0042】
上記感光体の最表面層(保護層)は、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。この最表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが好適である。また、上記最表面層に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、熱硬化性樹脂は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いため特に好ましい。上記表面層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、表面層に用いる高分子として電荷輸送能力を有するものを用いたりすることが好ましい。
【0043】
感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、最表面層を設ける場合には、最表面層は十分な厚みとすることが重要であり、0.1〜12μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜8μmが更に好ましい。上記厚みが0.1μm未満であると、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分からの感光層の磨耗の進行が早く、12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうことがある。
【0044】
上記最表面層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの高分子は熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、最表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0045】
上記最表面層は、電荷輸送能力を有していることが好ましく、最表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、最表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を最表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0046】
上記電荷輸送層能力を有する高分子としては、高分子中に電荷輸送能力を有する基として、下記構造式(1)で表される基を有するものが好適に挙げられる。
【化1】
ただし、上記構造式(1)中、Ar1は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar2、及びAr3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0047】
このような電荷輸送能力を有する基は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い高分子の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
このような電荷輸送能力を有するアクリル樹脂は、上記構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い表面層を形成することができる。また、単官能の上記構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性高分子となり、表面層の機械的強度は極めて高いものとなる。上記多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(1)の基を付加してもよいが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(1)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0048】
上記構造式(1)で表される基を有する単官能不飽和カルボン酸としては、下記構造式(2)、又は構造式(2)を例示することができる。
【化2】
【化3】
【0049】
上記構造式(2)及び構造式(3)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR7(ただし、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、CONR8R9(ただし、R8及びR9は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Ar1及びAr2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Ar3及びAr4は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表す。
上記構造式(2)及び構造式(3)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。これらR1の置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0050】
上記Ar3及びAr4のアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が挙げられる。
上記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
上記非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
上記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
【0051】
上記多官能の不飽和カルボン酸の含有量は、上記最表面層全体の5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、最表面層の機械的強度が不十分であり、75質量%を超えると、最表面層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすくなることがある。
上記最表面層にアクリル樹脂を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、表面層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行う場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
【0052】
上記最表面層中には最表面層の機械的強度を高めるために金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子など含有することが好ましい。上記金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
【0053】
以下、本発明の特徴部分である感光体寿命予兆検知装置について、詳しく説明する。
本実施形態における感光体寿命予兆検知装置は、感光体31Y,31M,31C,31Bkの寿命が近いことを示す予兆を検知するもので、主に、システムコントローラ71により構成される。
本実施形態では、プロセス調整運転を行うタイミングなどの不定期なタイミングあるいは定期的なタイミングで、以下に説明する感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理を実行する。なお、以下の説明では、感光体31Bkの寿命予兆検知処理を例に挙げて説明するが、他の感光体31Y,31M,31Cについても同様である。
【0054】
図10は、本実施形態における感光体寿命予兆検知装置を用いた寿命予兆検知処理の流れを示すフローチャートである。
本寿命予兆検知処理では、まず、図示しないRAMに一時記憶されている過去の電位データをクリアする(S1)。そして、感光体31Bkの周方向について一周内で複数箇所の電位を電位センサ37Bkにより順次検知して現時点の電位データを新たに採取し、これらの電位データをRAMに一時記憶する(S2〜S4)。なお、採取する電位データの数(規定数)は適宜設定されるが、本実施形態では16個とする。
【0055】
このようにして規定数の電位データを採取したら、次に、これらの電位データから感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出し(S5)、その第1特徴量を、今回の第1特徴量の算出時点を特定するための時点情報とともにRAMに記憶する(S6)。この第1特徴量としては、例えば、これらの電位データの平均値、分散あるいは標準偏差、尖度などが挙げられる。
【0056】
プロセス調整運転を行うタイミングなどの不定期なタイミングあるいは定期的なタイミングで、以上の処理を繰り返し行って、それぞれの時点における第1特徴量を順次RAMに記憶していき、時系列解析に必要な数だけ確保できたら(S7)、RAMに記憶されている複数の第1特徴量とその時点情報とを少なくとも用いて時系列解析を行い、第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する(S8)。ここで算出される第2特徴量は、ある時点での感光体の状態を単に表すものではなく、その経時的な傾向をも含んだ特徴量となるため、各時点における個々の第1特徴量では捉えられない経時変化の大きさを定量的に捉えることができる。つまりは、感光体周方向における複数箇所の電位についての不均一さが変化すると、第2特徴量の値が変わる。本実施形態では、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断し(S9)、そのような大きな変化を示した場合は、これを感光体31Bkの寿命が近いことを示す予兆として捉える。そして、感光体31Bkの寿命が近いことを示す出力情報をユーザー等に知らせるための予兆報知を行う(S10)。
【0057】
本実施形態における寿命予兆検知処理によれば、感光体の偏心等により感光体周方向における偏摩耗によって感光層の膜厚偏差が生じ、これによる帯電電位ムラの影響が画像に表れることにより到来する感光体の寿命が近いことを示す予兆を、少なくとも個々の第1特徴量から検知する場合に比べて、高い精度で検知することができる。
【0058】
〔実施例1〕
次に、本実施形態における一実施例(以下、本実施例を「実施例1」という。)について説明する。
本実施例1では、感光体周方向における複数箇所の電位の平均値(以下、「表面電位平均値」という。)を第1特徴量として用い、かつ、その表面電位平均値変化速度を第2特徴量として用いる例である。
【0059】
図11は、各時点における表面電位平均値を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図11に示した例で用いた感光体は、その最表面層が電荷輸送能力を有しているため、摩耗による最表面層の層厚変化に応じて感光体表面電位(帯電電位)も徐々に低下する。そのため、図11に示したグラフには、初期から、感光体の表面電位平均値が一定の割合で徐々に低下する傾向が示されている。そして、経時使用により100[k枚]付近に達すると、表面電位平均値の変化割合(図11のグラフの傾き)が僅かに変わっていることが読みとれる。これは、この時点で感光体表面の一部分の最表面層が摩耗により消失して感光層が露出し、感光層の摩耗が進行し始めたことを意味する。すなわち、感光体表面の一部で感光層の摩耗が進行することにより感光体周方向における電位の不均一さが変化すると、当該部分の帯電電位が急速に低下する結果、感光体の表面電位平均値も僅かながら変化する。したがって、この表面電位平均値も、感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量となり得る。しかし、表面電位平均値の変化割合が変わった時点(100[k枚]付近)の前後における表面電位平均値を比較すると、その違いは僅かである。そのため、ちょうどこれらの表面電位平均値の間に閾値を設定し、その閾値を下回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、電位センサ37Bkによる検知誤差等を考慮すると、判断誤差が大きく、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
【0060】
図12は、図11に示した感光体の表面電位平均値の経時変化を示す表面電位平均値変化速度をプロットしたグラフである。
各表面電位平均値変化速度は、図11に示した例の表面電位平均値を用いて、それぞれの時点における表面電位平均値を含む直前10個分の表面電位平均値を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位平均値変化速度は、表面電位平均値の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として感光体の表面電位平均値を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0061】
図12に示すように、表面電位平均値変化速度は、図11に示したグラフで表面電位平均値の変化割合が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化することがわかる。したがって、その時点の前後における表面電位平均値変化速度の間に閾値(図12では例えば「−4」)を設定し、その閾値を下回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0062】
〔実施例2〕
次に、本実施形態における他の実施例(以下、本実施例を「実施例2」という。)について説明する。
上述したように、表面電位平均値も、感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量となり得るが、表面電位平均値では、感光体周方向における電位の不均一さの影響が小さいので、感光体周方向における電位の不均一さがより顕著に表れる別の指標値を第1特徴量として用いる方が、より高い精度で感光体寿命が近い時点を特定することが可能となる。
そこで、本実施例2では、第1特徴量として、感光体周方向における複数箇所の電位の標準偏差(以下、「表面電位標準偏差」という。)を用い、かつ、その表面電位標準偏差変化速度を第2特徴量として用いる。
【0063】
本実施例2における表面電位標準偏差σは、少なくとも感光体一周分にわたって複数箇所n(本実施例では16点)の表面電位を電位センサで検知し、これを下記の数1に示す式に従って、計算することにより得ることができる。
【数1】
なお、上記数1に示す式において、xiはi=1〜nまでの各電位データ、Xはx1〜xnの平均値である。
【0064】
標準偏差は、観測されるデータがガウス分布に従うとした場合のバラツキの大きさを表す値であり、その値が大きいほどバラツキが大きい。本実施例における表面電位標準偏差σは、感光体周方向における電位の不均一さの程度を示す指標値であり、感光体の回転中心が僅かにズレて偏心している場合などで、感光体の回転フレに伴う感光体周方向における偏摩耗によって生じる表面電位の不均一さ(バラツキ)の程度を示す。
【0065】
図13は、各時点における表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
このグラフは、図11に示した例で用いた感光体と同じ電位データを用い、各時点における表面電位標準偏差を求めて作成したものである。このグラフにおいて、表面電位標準偏差は、100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて僅かながら大きな値をとるように変化している。しかし、その違いは僅かであるため、これらの違いを区別するための閾値を設定し、その閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、判断誤差が大きく、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
【0066】
図14は、図13に示した表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
各表面電位標準偏差変化速度は、図13に示した例の表面電位標準偏差を用いて、それぞれの時点における表面電位標準偏差を含む直前10個分の表面電位標準偏差を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位標準偏差変化速度は、表面電位標準偏差の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として表面電位標準偏差を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0067】
図14に示すように、表面電位標準偏差変化速度は、図13に示したグラフで表面電位標準偏差が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化していることがわかる。したがって、その時点の表面電位標準偏差変化速度とその時点の前後における表面電位標準偏差変化速度との間に閾値(図14では例えば「0.03」)を設定し、その閾値を上回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0068】
ここで、表面電位標準偏差が閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法でも、精度は落ちるものの、感光体寿命が近い時点を特定することは可能である。しかし、仮に同機種の画像形成装置について、その感光体の表面電位標準偏差を算出する場合でも、使用環境の違い、電位センサの感度の違い、部品の製造誤差、組み付け誤差など、画像形成装置の個体差によって、その表面電位標準偏差の値は異なってくる。そのため、この方法では、同機種の画像形成装置について同じ閾値を用いると、ある画像形成装置では感光体寿命が近い時点を比較的精度よく特定することができても、別の画像形成装置では感光体寿命が近い時点を精度よく特定することができないという事態が発生する。
【0069】
図15は、図13に示した例と同機種ではあるが、使用環境が異なる別の画像形成装置における感光体の表面電位標準偏差を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図16は、図15に示した表面電位標準偏差の経時変化を示す表面電位標準偏差変化速度をプロットしたグラフである。
図13と図15とを比較すると、いずれも100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて大きな値をとるように変化している点では共通しているが、画像形成装置の個体差により、各図の表面電位標準偏差の平均的な値は、図13の画像形成装置よりも図15の画像形成装置の方が大きいものとなっている。これらの画像形成装置の間では、一方に適した閾値を設定すると、他方では感光体寿命が近い時点を特定できない。これらの画像形成装置は同機種ではあるが、共通の閾値を設けることができない。
これに対し、図14と図16とを比較すると、いずれも100[k枚]付近で、その値が大きく変化している点で共通している。また、いずれの場合も、閾値(基準値)を0.03程度に設定すれば、感光体寿命が近い時点を特定できる。したがって、本実施例2の方法であれば、画像形成装置の個体差によらず、共通の閾値(基準値)を設けることが可能である。
【0070】
〔実施例3〕
次に、本実施形態における更に他の実施例(以下、本実施例を「実施例3」という。)について説明する。
本実施例3では、第1特徴量として、感光体周方向における複数箇所の電位の尖度(以下、「表面電位尖度」という。)を用い、かつ、その表面電位尖度変化速度を第2特徴量として用いる。
【0071】
尖度b2は、下記の数2に示す式により定義される、高次のモーメントに属する基本統計量であり、分布の尖りの度合いや裾の重さ、外れ値の存在等を表す量である。観測値の分布をガウス分布に固定せずに、分布の広がり方や、分布から外れた観測値の存在を情報として取り扱うことにより、標準偏差では捉え難い特異な状態を検知することが可能となる。
【数2】
ここで、Sは分散を表し、S=σ2である。他の符号は、上記数1と同じである。
【0072】
尖度b2は、観測されたデータ群が持つ分布がガウス分布と比較して、狭いと小さな値をとり、広いまたは分布の端に外れ値があると大きな値を取るという性質を持つ。本実施例における表面電位尖度b2は、感光体周方向で局所的に小さなまたは大きな表面電位を持つ場合に、大きな値を示し、表面保護層のような摩耗速度が小さな表面が部分的に摩滅し、より摩耗速度が大きめの感光層が露出して摩耗し始めた場合などで、感光体の局所摩耗で生じる表面電位低下の発生等を示す。
【0073】
図17は、各時点における表面電位尖度を経時に沿ってプロットしたグラフである。
図18は、図17に示した表面電位尖度の経時変化を示す表面電位尖度変化速度をプロットしたグラフである。
これらのグラフは、同機種ではあるが上述した実施例1及び2とは別の画像形成装置の電位データを用い、各時点における表面電位尖度及び表面電位尖度変化速度を求めて作成したものである。なお、各表面電位尖度変化速度は、図17に示した例の表面電位尖度を用いて、それぞれの時点における表面電位尖度を含む直前10個分の表面電位尖度を直線回帰(時系列分析)したときの傾きである。各表面電位尖度変化速度は、表面電位尖度の経時変化を表すものであるため、第1特徴量として表面電位尖度を用いた場合、その第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量となり得る。
【0074】
図17のグラフにおいて、表面電位尖度は、100[k枚]付近を境に、それ以前に比べて大きな値をとるように変化している。しかし、それ以前の表面電位尖度の中には突発的に大きな値をとる箇所がある(例えば65[k枚]付近)。そのため、所定の閾値を設定し、その閾値を超えたときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断するような方法では、誤判断がなされる可能性があり、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することはできない。
これに対し、図18に示すように、表面電位尖度変化速度は、図17に示したグラフで表面電位尖度が僅かに変わった時点とほぼ同じ時点で、その値が大きく変化していることがわかる。したがって、その時点の表面電位尖度変化速度とその時点の前後における表面電位尖度変化速度との間に閾値(図18では例えば「0.5」)を設定し、その閾値を上回ったときにこれを予兆として捉えて感光体の寿命が近いと判断する場合、感光体寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
【0075】
なお、図19〜図22に、本実施例3における画像形成装置における感光体の表面電位平均値、表面電位平均値変化速度、表面電位標準偏差、表面電位標準偏差変化速度を示す。
【0076】
各実施例1〜3では、第1特徴量として、それぞれ、表面電位平均値、表面電位標準偏差、表面電位尖度を用いる場合について説明したが、これらののうちの2以上を第1特徴量として用い、実施例1〜3を併用するようにしてもよい。画像形成装置の個体差により、感光体の摩耗の進行状況は様々であるので、実施例1〜3を併用することで、いろいろな摩耗進行状況に対応することが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、第1特徴量から第2特徴量を算出するために用いる時系列解析として、線形回帰を用いているが、非線形回帰を始めとする回帰分析から求めた、回帰直線、回帰曲線を時間窓で区切って用いる方法や、移動平均法、自己相関関数、ニューラルネット、サポートベクターマシン、ベイズモデル、カオスモデル等を用いたモデル化等を用いることもできる。
【0078】
以上、本実施形態における画像形成装置は、感光層の感光体表面側に感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層である最表面層を備えた複数層構造の感光体31Y,31M,31C,31Bkを表面移動させて、感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、そのトナー像を最終的に記録材である記録紙12上に転写することによりその記録紙上に画像を形成するプリンタである。このプリンタは、所定の電位検知タイミング(例えばプロセス調整運転が行われるタイミング)が到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置(センサ検知領域)を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段としての電位センサ37Y,37M,37C,37Bkを有し、感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、以下の感光体寿命予兆検知装置を有している。すなわち、この感光体寿命予兆検知装置は、電位センサの電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量(表面電位平均値、表面電位標準偏差、表面電位尖度等)を算出し、算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶し、所定の算出タイミング(例えばプロセス調整運転が行われるタイミング)が到来するたびに、最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量(表面電位平均値変化速度、表面電位標準偏差変化速度、表面電位尖度変化速度等)を算出する算出処理を繰り返し行い、算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断し、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと判断したときに、感光体の寿命が近いことを示す出力情報を出力する。これにより、上述したように、感光体の偏心等に起因した感光層の膜厚偏差による感光体の寿命が近いことを示す予兆を高い精度で捉えることができ、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。
特に、本実施形態では、第1特徴量として、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを用いるので、簡易な演算で、感光体の寿命が近い時点を高い精度で特定することができる。特に、複数種類の第1特徴量を併用すれば、より高い精度で、感光体の寿命が近い時点を特定することができる。
また、本実施形態では、耐摩耗層が感光層の摩耗を保護するための保護層であるので、感光体寿命を維持したまま感光層自体を薄く形成することが可能となり、省資源化への貢献が可能となる。特に、本実施形態においては、耐摩耗層である保護層が、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されているので、その効果は高い。
【符号の説明】
【0079】
1 プリンタ
31Y,31M,31C,31Bk 感光体
37Y,37M,37C,37Bk 電位センサ
71 システムコントローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2001−175328号公報
【特許文献2】特開2007−328645号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置における該感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置において、
所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を電位検知手段により検知し、その電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、
該第1特徴量算出手段が算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶する第1特徴量記憶手段と、
所定の算出タイミングが到来するたびに、該第1特徴量記憶手段に記憶されている最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する算出処理を繰り返し行う第2特徴量算出手段と、
該第2特徴量算出手段が算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断する判断手段と、
第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと該判断手段が判断したとき、所定の出力情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする感光体寿命予兆検知装置。
【請求項2】
請求項1の感光体寿命予兆検知装置において、
上記第1特徴量は、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを含むことを特徴とする感光体寿命予兆検知装置。
【請求項3】
感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段を有し、
上記感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、請求項1又は2の感光体寿命予兆検知装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
上記耐摩耗層は、上記感光層の摩耗を保護するための保護層であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4の画像形成装置において、
上記耐摩耗層は、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置における該感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置において、
所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を電位検知手段により検知し、その電位検知結果に基づいて感光体周方向における電位の不均一さを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、
該第1特徴量算出手段が算出した各第1特徴量を、その算出に用いた電位検知結果を得た電位検知タイミングの時系列が特定できるように記憶する第1特徴量記憶手段と、
所定の算出タイミングが到来するたびに、該第1特徴量記憶手段に記憶されている最新の第1特徴量を含む複数の第1特徴量を用いて第1特徴量の経時変化を表す第2特徴量を算出する算出処理を繰り返し行う第2特徴量算出手段と、
該第2特徴量算出手段が算出した第2特徴量に基づき、第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したか否かを判断する判断手段と、
第1特徴量の経時変化が基準量以上の大きな変化を示したと該判断手段が判断したとき、所定の出力情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする感光体寿命予兆検知装置。
【請求項2】
請求項1の感光体寿命予兆検知装置において、
上記第1特徴量は、感光体表面上の上記複数箇所における電位の平均値、分散あるいは標準偏差、及び、尖度の少なくとも1つを含むことを特徴とする感光体寿命予兆検知装置。
【請求項3】
感光層の感光体表面側に該感光層の平均摩耗度よりも小さい平均摩耗度を有する耐摩耗層を備えた複数層構造の感光体を表面移動させて、該感光体の表面上に帯電したトナーによるトナー像を静電的に担持させ、該トナー像を最終的に記録材上に転写することにより該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
所定の電位検知タイミングが到来するたびに、所定の帯電処理により表面が帯電した状態の感光体を表面移動させることにより特定位置を通過する感光体表面上の複数箇所の電位を検知する電位検知動作を繰り返す電位検知手段を有し、
上記感光体の寿命が近いことを示す予兆を検知する感光体寿命予兆検知装置として、請求項1又は2の感光体寿命予兆検知装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
上記耐摩耗層は、上記感光層の摩耗を保護するための保護層であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4の画像形成装置において、
上記耐摩耗層は、その平均摩耗度が0.02μm/km以下となるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−217532(P2010−217532A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64484(P2009−64484)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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