説明

感光性ポリイミドおよびそれを含む感光性樹脂組成物

【課題】本発明は、一般式1又は2で表されるポリイミド又はその前駆体およびこれを含む感光性樹脂組成物に関する。上記ポリイミド又はその前駆体は、ポリアルキレンオキシドを含むジアミンから製造されることを特徴とする。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、光透過度及び解像力に優れ、光感度とイメージの形成能にも優れるだけでなく、シリコン膜又はシリコン酸化膜ないし金属膜のような基板に高い密着性を有する。特に、クラックなどの不良のない優れたフィルムを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月15日に韓国特許庁に提出された韓国特願第10-2009-0064604号、2009年8月7日に韓国特許庁に提出された韓国特願第10-2009-0073017号の優先権を請求し、本明細書において参照として統合する。
【0002】
本発明は、半導体素子表面の保護膜又は絶縁膜或いはOLEDの絶縁膜などに用いられる感光性ポリイミドおよびそれを含む感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミドは、主鎖にヘテロイミド環を有しているポリマーであって、テトラカルボン酸とジアミンとを縮重合させることにより製造される。
【0004】
ポリイミドは、光透過度に優れ、機械的性質、熱的特性および基質との接着力に非常に優れるので、商業的な面で重要性を有している。ポリイミドは、電気、電子、自動車、飛行機、半導体など様々な分野において金属やガラスなどを代替できるものとして広範囲に用いられている。
【0005】
特に、ポリイミドは、熱的特性と機械的性質に優れ、半導体素子表面の保護膜又は絶縁膜などとして用いられている。ポリイミドは、通常、溶解性が低いため、ポリイミド前駆体溶液を得、これをガラスなどの基板上にコーティングした後、熱処理によって硬化させる方法で製造されることが一般的である。市販のポリイミド製品は、ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドフィルム状態で供給され、半導体素子分野においては主にポリイミド前駆体溶液状態で供給される。
【0006】
感光性ポリイミド組成物は、光感度のみでなく、半導体などのようなデバイス製造工程に耐えられるように保護膜にクラックが起きてはならない。このためには、光透過度と解像力に優れ、最終のデバイスの製造工程でクラックが発生しないポリイミド前駆体を製造するための合成単量体の選択が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光透過度および光感度に優れた感光性ポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミドおよびその前駆体を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記ポリイミドおよびその前駆体をバインダー樹脂として含んで、基板に対する高い密着性およびクラックの発生がない優れた膜特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリイミド又はその前駆体の製造の際に、ポリアルキレンオキシドを含有するジアミンを合成単量体として使用して製造されたポリイミド又はその前駆体に感光性酸発生剤を添加することから、光透過度と光感度に優れた、クラックのないポリイミドパターンの形成が可能であり、基板との密着性に優れた感光性ポリイミド樹脂組成物を開発するに至った。
【0010】
具体的には、本発明は、下記一般式1又は2で表されるポリイミド又はその前駆体を提供する。
【化1】

【化2】

式1、2中、Xは4価の有機基、
Yは2価の有機基、
0≦p<1、0<q≦1、p+q=1、
nは2〜500の整数、
Rは水素又はC1〜C8のアルキル基、
Zは下記一般式3で表されるジアミン化合物から由来したものであり、
【化3】

式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン(alkylene)又はアリーレン(arylene)であり、lは0又は1、mは0又は1、Rは炭素数2〜8のアルキレン、nは1〜21の整数である。
上記一般式3においてnは例えば2〜15の整数である。
上記一般式1の置換基Xは、例えば下記一般式4で表される4価の有機基中から選ばれる1種以上である。
【化4】

上記一般式1の置換基Yは、例えば下記一般式5で表される2価の有機基中から選ばれる1種以上である。
【化5】

上記一般式1の置換基Yは、例えば下記一般式6で表されるジアミン化合物中の1種以上から由来する2価の有機基である。
【化6】

なお、本発明は、上記ポリイミド又はその前駆体100重量部に対し感光性酸発生剤(Photo Active Compound)1〜 50重量部を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
上記感光性酸発生剤は、例えば下記一般式7で表される化合物中から選ばれる1種以上である。
【化7】

式中、Dは下記一般式8で表される有機基中から選ばれる1種以上である。
【化8】

上記感光性樹脂組成物は、溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤および界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部含むことができる。
【0011】
上記感光性樹脂組成物は、望ましく、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトンケトン、γ-バレロラクトンケトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルチルエーテル(propyleneglycol dipropyltylether)、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を組成物100重量部に対し40〜97重量部含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリイミド又はその前駆体を含む感光性樹脂組成物は、特に、最終のデバイス製造工程においてクラックを発生させず、引張強度のようなフィルム特性が、既存のポリイミドをバインダー樹脂として用いる感光性樹脂組成物に比べて相当改善された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリイミド又はその前駆体、及びこれを含む感光性樹脂組成物に関するものである。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリアルキレンオキシドを含むジアミンを合成単量体として用いて製造されたポリイミド又はその前駆体、及び光によって酸を発生させることができる感光性酸発生剤からなり、必要に応じて接着力増進剤、界面活性剤を添加して製造される。
【0015】
本発明において基材樹脂として使用されるポリイミド又は前駆体は、下記の一般式1又は2で表される重合体である。
【化1】

【化2】

式1、2中、Xは4価の有機基、
Yは2価の有機基、
0≦p<1、0<q≦1、p+q=1、
nは2〜500の整数、
Rは水素又はC1〜C8のアルキル基、
Zは下記一般式3で表されるジアミン化合物から由来したものであり、
【化3】

式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン又はアリーレンであり、lは0又は1、mは0又は1、Rは炭素数2〜8のアルキレン、nは1〜21の整数である。
【0016】
上記一般式1又は2の繰り返し単位を有するポリイミド又はその前駆体は、有機溶媒下で酸成分のテトラカルボキシル二無水物とジアミンとを反応させて製造される。
【0017】
本発明では、ジアミン化合物としてポリアルキレンオキシド(-OR)を含有することを特徴とする。上記ポリアルキレンオキシドにおいて、Rは、例えば炭素数2〜8のアルキレン基である。このような置換基Zを含むポリイミド又はその前駆体は、感光性樹脂組成物のフィルム特性、特に、フィルムのクラックを防止する効果を有する。
【0018】
これは、本発明に係るジアミンとしてアルキレンオキシド構造を含ませてポリイミド高分子を製造する場合、上記の剛直で強固な(rigid)構造を有したポリイミド主鎖(main chain)の自由度を増加させることができる。上記ポリイミド鎖の自由度を増加させると、高分子鎖同士よくもつれる(entanglement)構造を有することによって、伸び率を向上させる役割をする。通常、ポリイミド高分子をPR組成物のバインダー樹脂として用いる場合、外部からの熱等によって衝撃が加えられる際、伸び率が小さすぎると高分子鎖が切れてフィルム特性が低下するという問題があるので、本発明では、アルキレンオキシド構造を含ませることにより、上記のような従来技術の問題点を解決することから、PR組成物から製造されたフィルムの特性を向上させる効果を有する。
【0019】
上記一般式1で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Xは、ポリイミド又はその前駆体製造に用いられるテトラカルボキシル二無水物から由来する4価の有機基であって、下記一般式4で表することができる。
【化4】

【0020】
本発明の一般式1で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Xは、例えば、上記一般式4で表される4価の有機基中の1つ又は2以上である。
【0021】
本発明では、ポリイミド又はその前駆体の製造の際、上記一般式4で表される4価の有機基が含まれたテトラカルボキシル二無水物を上記一般式2で表されるジアミンと縮合反応させる。
【0022】
なお、本発明では、ポリイミド又はその前駆体に感光性を付与するために、上記一般式2で表されるジアミンの他に、下記一般式5で表される2価の有機基を含むジアミンを合成単量体として用いてポリイミド又はその前駆体を製造する。
【化5】

上記一般式5で表される2価の有機基は、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を含んで本発明のポリイミド又はその前駆体にアルカリ溶解性を付与する。
【0023】
なお、本発明では、ポリイミド又はその前駆体の感光性を調節するために、下記一般式6で表されるジアミン化合物を合成単量体として用いることができる。
【化6】

本発明の一般式1で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Yは、例えば、上記一般式5、6で表される2価の有機基中の1つ又は2以上である。
【0024】
本発明でポリイミド又はその前駆体は、重量平均分子量が2,000〜50,000であるものを用いることができる。重量平均分子量が低すぎるとフィルム特性が悪くなるという問題があり、逆に、高すぎると現像液に対する溶解度が低下するという問題が発生する。
【0025】
本発明のポリイミド又はその前駆体は、テトラカルボキシル二無水物および上記一般式2で表されるジアミン化合物を有機溶媒下で反応させて製造する。
【0026】
本発明でポリイミド又はその前駆体の製造に用いられる有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトンケトン、γ-バレロラクトンケトン、m-クレゾールなどがある。
【0027】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、上記のように製造されたポリイミド又はその前駆体に感光性酸発生剤(PAC)を添加し、必要に応じて溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤又は界面活性剤を添加させて製造される。上記各添加剤は、ポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲内で用いることができる。
【0028】
本発明で使用可能な感光性酸発生剤は、下記一般式7で表される化合物中の1つ又は2以上を組み合わせて用いることができる。
【化7】

式中、Dは下記一般式8で表されるものの1つである。
【化8】

【0029】
上記感光性酸発生剤は、ポリイミド又はその前駆体100重量部に対し1〜50重量部を用いることが望ましい。
【0030】
また、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶媒としては、上記ポリイミド又はその前駆体を溶解させることができるものであれば特に限定されない。具体的な例として、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトンケトン、γ-バレロラクトンケトン、m-クレゾール、エチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物は、組成物100重量部に対し40〜97重量部の溶媒を含むことが望ましい。溶媒が40重量部未満であると、必要以上に高粘度となり、コーティングのとき、滑らかな表面を得ることができなく、所望の厚さへの実現に問題が生じ、液の製造のときに均一な混合を形成し難く、微細パターンの形成のための物性の実現が難しく、溶媒が97重量部を超えると、基板との密着力が低下し、均一なコーティング性および所望の膜厚を得難い。
【0032】
上記のような組成を有する本発明の感光性樹脂組成物は、ガラス基板などの基材上にスピンコーティング、スリットスピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティングなどの通常の方法により塗布し、露光および現像工程を経て形成させる。露光および現像工程も、通常の感光性樹脂組成物を利用した感光層の形成時に用いられる方法が採用され、特に限定されない。
【0033】
上記露光工程において、光照射手段から照射される光源としては、電磁波、紫外線から可視光、電子線、X-線、レーザ光などが挙げられる。また、光源の照射方法としては、高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ハロゲンランプ、コピー機用冷陰極管、LED、半導体レーなどの公知の手段を用いることができる。
【0034】
上記現像工程は、露光工程を経た感光性フィルムから露光された領域を現像液を利用して除去することによりパターンを形成する工程であって、ここに用いられる現像液としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水、4級アンモニウム塩のような塩基性水溶液が挙げられる。テトラメチルアンモニウム水溶液のようなアンモニア4級アンモニウム水溶液が特に望ましい。
【0035】
全体的な工程は、本発明の感光性樹脂組成物をガラスやシリコンウェハ基板にスピンコーティングし、約110〜145℃で1〜2分間前熱処理(prebake)を行ってフィルムを形成させる。上記フィルムをパターンの形成されたフォトマスクにより露光させた後、露光部位をアルカリ水溶液を用いて現像し、脱イオン水で洗浄する。その後、200〜350℃で約30分〜2時間後熱処理(postbake)を行ってパターンを得ることになる。
【0036】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体素子の層間絶縁膜、パッシベーション膜、バッファコート膜、多層プリント基板用絶縁膜、OLEDの絶縁膜のみでなく、液晶表示素子の薄膜トランジスタの保護膜などに用いるのに望ましい。
【0037】
(実施の形態)
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
[合成例1(3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライドの製造)]
3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.0g(0.1 モル)に無水メチルアルコール300mlを添加し、80℃の温度で5時間還流および撹はんして反応させた後、残留溶媒を高温減圧下で乾燥して3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジメチルエステル37.4g(収得率100%)を得た。得られた3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジメチルエステル37.4g(0.1モル)に、チオニルクロライド35.4g(0.3モル)を滴下し、触媒量のN,N-ジメチルホルムアミドを添加した後、90℃の温度で3時間反応させ、室温に冷却し、残留のチオニルクロライドを減圧下で除去した後、3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライド41.0g(収得率100%)を得た。
【0039】
[実施例1(ポリマーP-1の製造)]
上記合成例1で製造された3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライド24.6g(60mmole)を2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)8.50g(18mmole)、そしてピリジン10.65gが溶けているN-メチル-2-ピロリドン150mlに窒素雰囲気下0℃でゆっくり滴下し、ゆっくり室温に上昇させた後、5時間撹はんすることにより反応させた。その後、反応物を2Lの水にゆっくり滴下して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物は濾過して分離させ、水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸メチルエステル(P-1)37.8gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は31,000であった。
【0040】
[実施例2(ポリマーP-2の製造)]
実施例1で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)8.5g(18mmole)の代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン13.2g(36mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)5.7g(12mmole)および4-オキシジアニリン2.4g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリマー(P-2)を製造した。得られたポリマー(P-2)の重さ平均分子量は28,000であった。
【0041】
[実施例3(ポリマーP-3の製造)]
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン11.0g(30mmole)とポリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)(平均分子量、Mn=12,000、m=13.1)21.6g(18mmole)、そして3,3'-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリン3.5g(12mmole)をN-メチル-2-ピロリドン150mlに溶かした後、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物11.9g(60mmole)を0℃でゆっくり添加した後、室温で8時間撹はんして反応させた。反応物にピリジン7.3gとアセト無水物17.3gとを添加し、反応温度を65℃に昇温し、5時間さらに撹はんして反応させた。得られた反応物は、2Lの水にゆっくり滴下して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物は濾過して分離させ、水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリイミド(P-3)38.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は36,000であった。
【0042】
[実施例4(ポリマーP-4の製造)]
実施例3で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン11.0g(30mmole)とポリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)(平均分子量、Mn=12,000、m=13.1)21.6g(18mmole)、そして3,3'-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリン3.5gの代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)11.3g(24mmole)とを添加し、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物11.9(60mmole)の代わりに、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物10g(60mmole)、そして5-ノルボルネン無水物2.0g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリマー(P-4)を製造した。得られたポリマーの重さ分子量は25,000であった。
【0043】
[実施例5(ポリマーP-5の製造)]
上記合成例1で製造された3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライド24.6g(60mmole)を2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)、そしてピリジン10.65gが溶けているN-メチル-2-ピロリドン150mlに窒素雰囲気下0℃でゆっくり滴下し、ゆっくり室温に上昇させた後、5時間撹はんすることにより反応させた。その後、反応物を2Lの水にゆっくり滴下して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物は濾過して分離させ、水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸メチルエステル(P-5)32.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は28,000であった。
【0044】
[実施例6(ポリマーP-6の製造)]
実施例5で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)の代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン13.2g(36mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン1.8g(12mmole)および4-オキシジアニリン2.4g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリマーP-6を製造した。得られたポリマーP-6の重さ平均分子量は25,000であった。
【0045】
[実施例7(ポリマーP-7の製造)]
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン11.0g(30mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)、そして3,3'-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリン3.5g(12mmole)をN-メチル-2-ピロリドン150mlに溶かした後、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物11.9 g(60mmole)を0℃でゆっくり添加した後、室温で8時間撹はんして反応させた。反応物にピリジン7.3gと酢酸無水物17.3gを添加した後、反応温度を65℃に昇温し、5時間さらに撹はんして反応させた。得られた反応物は、2Lの水にゆっくり滴下して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物は濾過して分離させ、水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリイミド(P-7)24.8gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は24,000であった。
【0046】
[実施例8(ポリマーP-8の製造)]
実施例3で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン11.0g(30mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)、そして3,3'-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリン3.5gの代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とビス(2-(2-アミノエトキシ)エチル)エーテル4.6g(24mmole)を添加し、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物11.9g(60mmole)の代わりに、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物10g(60mmole)、そして5-ノルボルネン無水物2.0g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリマーP-8を製造した。得られたポリマーの重さ平均分子量は31,000であった。
【0047】
[比較例1(ポリマーR-5の製造)]
実施例1で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)8.50g(18mmole)の代わりに、全量2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン22.0g(60mmole)を使用することを除いては、同様の方法でポリアミド酸メチルエステル(R-5)29.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は29,500であった。
【0048】
[比較例2(ポリマーR-6の製造)]
実施例4で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とトリブタンジオール-ビス(4-アミノ安息香酸)11.3g(24mmole)の代わりに、全量2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン24.2g(66mmole)を使用することを除いては、同様の方法を用いてポリイミド(R-6)を製造した。得られたポリマーの重さ平均分子量は23,000であった。
【0049】
[比較例3(ポリマーR-7の製造)]
実施例5で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)の代わりに、全量2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン22.0g(60mmole)を使用することを除いては、同様の方法でポリアミド酸メチルエステル(R-7)29.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は29,500であった。
【0050】
[比較例4(ポリマーR-8の製造)]
実施例8で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)とビス(2-(2-アミノエトキシ)エチル)エーテル4.6g(24mmole)の代わりに、全量2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン22.0g(60mmole)を使用することを除いては、同様の方法を用いてポリイミド(R-8)を製造した。得られたポリマーの重さ平均分子量は23,000であった。
【0051】
感光性樹脂組成物の製造および特性評価
上記のように得られたポリイミド前駆体又はポリイミド3gと感光性酸発生剤として、4,4'-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[フェノール]ジアゾナフトキノンスルホネート(TPPA320)450mgをγ-ブチロラクトンケトン6.53gに加えた後、室温で1時間撹はんさせ、これを細孔1μmのフィルタで濾過して感光性樹脂組成物を製造した。
【0052】
1.感光性の評価
上記の製造された感光性樹脂組成物をスピンコーティング法を用いて4インチのシリコンウェハの上に塗布した後、120℃の温度で2分間乾燥することにより、10μm厚のフィルムを生成させた。微細パターンの形成されたマスクによりi-lineステッパー露光装置で200〜600mJ/cmのエネルギーで露光を行った。その後、露光されたシリコンウェハは、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水酸化水溶液に90秒間現像し、純水で洗浄し窒素下で乾燥してパターンの形成された高分子膜を得た。得られた高分子膜は、表面粗さや、コーティングの不良特性および5×5μmの微細四角形状のパターンの実現に必要なエネルギー(Eth)とパターンの形状を測定することにより、コーティング性および感光性を評価した。評価結果は次の表1に示す。
【0053】
2.高分子フィルムの特性評価
スピンコーティングにより感光性樹脂組成物をガラス基板に塗布した後、窒素気流下、320℃で1時間熱処理して厚さ10μmのポリイミドフィルムを形成した。生成された高分子フィルムは、顕微鏡および目視観測によりクラックのようなフィルムの不良有無を確認し、オートクレーブで125℃、2.3atmの条件下で30分間加圧蒸気処理(Pressure cooking treatment:PCT)工程を行い、上記フィルムをガラス板から剥離させた。剥離されたポリイミドフィルムを幅1cm、長さ8cmの試験片の大きさで切断し、伸び率のような高分フィルム特性を測定し、その結果を次の表1に示す。
【表1】

【0054】
本発明に係るポリイミド又はその前駆体を含む感光性樹脂組成物の場合、比較例に比べて感光性に優れ、同一の方法で形成された高分子フィルムにクラックの発生がなく、伸び率および引張強度の面においても向上した結果を示した。
【0055】
このような特性は、半導体やOLEDのようなデバイスの保護膜や絶縁膜などとして感光性ポリイミドが用いられる際、信頼性や耐性を担保するための非常に重要な特性であって、本発明に係る感光性ポリイミド組成物はこのような要求条件を満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1又は2で表されるポリイミド又はその前駆体。
【化1】

【化2】

式1、2中、Xは4価の有機基、
Yは2価の有機基、
0≦p<1、0<q≦1、p+q=1、
nは2〜500の整数、
Rは水素又はC1〜C8のアルキル基、
Zは下記一般式3で表されるジアミン化合物から由来するものであり、
【化3】

式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン(alkylene)又はアリーレン(arylene)であり、lは0又は1、mは0又は1、Rは炭素数2〜8のアルキレン、nは1〜21の整数である。
【請求項2】
上記一般式3においてnが2〜15の整数であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド又はその前駆体。
【請求項3】
上記一般式1の置換基Xは、下記一般式4で表される有機基中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド又はその前駆体。
【化4】

【請求項4】
上記一般式1の置換基Yは、下記一般式5で表される有機基中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド又はその前駆体。
【化5】

【請求項5】
上記一般式1の置換基Yは、下記一般式6で表されるジアミン化合物中の1種以上から由来する有機基であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド又はその前駆体。
【化6】

【請求項6】
請求項1に記載のポリイミド又はその前駆体100重量部に対し感光性酸発生剤1〜50重量部を含む感光性樹脂組成物。
【請求項7】
上記感光性酸発生剤は、下記一般式7で表される化合物中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【化7】

式中、Dは下記一般式8で表される有機基中から選ばれる1種以上である。
【化8】

【請求項8】
上記感光性樹脂組成物は、さらに溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤および界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部含むことを特徴とする請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトンケトン、γ-バレロラクトンケトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルチルエーテル(propyleneglycol dipropyltylether)、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を組成物100重量部に対し40〜97重量部含むことを特徴とする請求項8に記載の感光性樹脂組成物。

【公表番号】特表2012−516374(P2012−516374A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547829(P2011−547829)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004614
【国際公開番号】WO2011/008036
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(504111015)エルジー ケム. エルティーディ. (38)
【Fターム(参考)】