説明

感光性接着剤組成物、及び、基板の接着方法

【課題】半導体デバイス等における基板同志を接着するための接着剤として用いた場合、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板(被接着部材)との間にボイドが生じることを十分に抑制することが可能な感光性接着剤組成物及び基板の接着方法を提供すること。
【解決手段】(A)特定の構造を有するポリアミック酸と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含む感光性接着剤組成物及び該接着剤を用いた基板の接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、及び、基板の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)と総称される、半導体の微細加工技術を駆使して作製された微小な部品から構成される電気機械システムが注目を集めている。
【0003】
これらMEMSを用いたシステムとしては、プロジェクタの光学素子の一種であるDMD(Digital Micromirror Device)や、インクジェットプリンタのヘッド部にある微小ノズル、ジャイロスコープ、圧力センサー、加速度センサー、流量センサーなどの各種センサーなどがある。
【0004】
これらの各種センサー用の中空パッケージ構造の作製時には、部材間を接着する工程があり、例えば、慣性センサー・加速度センサーの分野における圧電素子の保護ガラスのように、サンドブラストにて窪みを設けたガラスを陽極接合して封止を行っている。しかし、陽極接合時の電圧で素子が破壊される可能性があることや、サンドブラスト時に発生する異物が問題となることに加え、工程が長く処理枚数に制限があることから、近年、樹脂を用いた有機接着剤の開発が望まれている。
【0005】
樹脂を用いた接着として、SAWフィルターにおける弾性表面波励振部分の中空構造保護ガラスの接着には、金型打ち抜きされた非感光型の接着剤フィルムが用いられている。しかし、半導体デバイスの微細化に伴い、位置精度の向上が求められており、打ち抜きによるパターン形成には限界がある。また、同じく樹脂を用いた接着として、CCD/CMOSイメージセンサの分野における、イメージセンサチップとそれを保護するガラスとの接着には、印刷法によって塗布される液状のUV硬化型感光性樹脂組成物が広く用いられている。しかし、同じく印刷精度に限界があり、更なる高精細パターンの形成が要求されている。
【0006】
そこで、フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成が可能であり、且つ、高接着強度、気密封止性、現像性、低吸水率、低イオン不純物、高信頼性などの特性を満足する接着剤が求められている。また、近年の半導体デバイスの微細化に伴い、位置精度の向上及び微細加工性等の要求を満足できる感光性樹脂組成物の開発が求められている。
【0007】
なお、フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成が可能な従来の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントとして、例えば、下記特許文献1には、密着性、解像度に優れ、かつスカムの発生を抑えた感光性樹脂組成物及び感光性エレメントが開示されている。
【特許文献1】特開2002−351070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを、半導体デバイス等における基板同士を接着するための接着剤として用いた場合、必ずしも十分な接着強度が得られず、また、基板と接着剤との間にボイド(気泡)が発生しやすいといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板(被接着部材)との間にボイドが生じることを十分に抑制することが可能な感光性接着剤組成物及び基板の接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)ポリアミック酸と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含む感光性接着剤組成物を提供する。
【0011】
かかる感光性接着剤組成物は、被接着部材同士を接着するための感光性の接着剤として用いられ、ポリイミド前駆体である(A)ポリアミック酸を含む上記構成を有することにより、十分に高い接着強度が得られるとともに、接着剤と被接着部材との間にボイドが発生することを十分に抑制することができる。また、かかる感光性接着剤組成物は、特にシリコンやガラス等と高い接着力を得ることができる。また、ポリイミド前駆体である(A)ポリアミック酸を用いることで、感光性接着剤組成物は現像液に対する優れた溶解性を得ることができ、且つ、その硬化物は優れた耐熱性を得ることができる。更に、上記感光性接着剤組成物は解像度良く厚膜形成が可能であり、それにより、中空構造を形成する場合に従来の複雑な工程を削減することができる。
【0012】
また、本発明の感光性接着剤組成物は、更に(D)架橋剤を含むことが好ましい。(D)架橋剤を含むことにより、被接着部材同士の接着時の接着強度をより向上させることができる。
【0013】
更に、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)ポリアミック酸は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。
【化1】


[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化2】


[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】


[式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、pは1〜2の整数を示す。なお、pが2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化5】


[式(4)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q及びrは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化7】


[式(5)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化8】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びR10は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、s、t、u及びvは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、vが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化9】


[式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜4の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよい。]
【化10】


[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【0014】
かかる感光性接着剤組成物は、(A)ポリアミック酸として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことにより、被接着部材同士の接着時の接着強度をより向上させることができるとともに、接着剤と被接着部材との間のボイドの発生をより十分に抑制することができる。また、かかる感光性接着剤組成物は、(A)ポリアミック酸として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことにより、露光時の感度に優れ、十分な現像性を得ることができるとともに、厚膜で解像度よく像形成を行うことができる。
【0015】
本発明はまた、(A)ポリアミック酸、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤、を含む感光性接着剤組成物に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、光硬化後の上記感光性接着剤組成物を加熱して、上記(A)ポリアミック酸のイミド化率が60〜90%となるように仮硬化させる仮硬化工程と、仮硬化後の上記感光性接着剤組成物を介して配置された基板同士を接着させる接着工程と、を含む基板の接着方法を提供する。
【0016】
かかる基板の接着方法によれば、ポリイミド前駆体である(A)ポリアミック酸を含む上記構成を有する感光性接着剤組成物を用いるとともに、上記仮硬化工程として、(A)ポリアミック酸のイミド化率が60〜90%となるように仮硬化させる工程を含むことにより、基板同士の接着強度を十分に高めることができるとともに、接着剤と基板との間にボイドが発生することを十分に抑制することができる。また、かかる基板の接着方法は、特に基板としてシリコンやガラス等を用いた場合に高い接着力を得ることができる。また、ポリイミド前駆体である(A)ポリアミック酸を用いることで、感光性接着剤組成物は現像液に対する優れた溶解性を得ることができ、且つ、その硬化物は優れた耐熱性を得ることができる。更に、上記基板の接着方法によれば、フォトリソグラフィーにより解像度良く厚膜の感光性接着剤組成物の層を形成することが可能であり、それにより、中空構造を形成する場合に従来の複雑な工程を削減することができる。
【0017】
また、本発明の基板の接着方法では、上記接着工程において、仮硬化後の上記感光性接着剤組成物を介して配置された上記基板同士を熱圧着により接着させることが好ましい。熱圧着によって基板同士の接着を行うことにより、接着強度をより向上させることができ、且つ、接着剤と基板との間にボイドが発生することをより十分に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の基板の接着方法において、上記感光性接着剤組成物は、更に(D)架橋剤を含むことが好ましい。感光性接着剤組成物が(D)架橋剤を含むことにより、基板同士の接着強度をより向上させることができる。
【0019】
更に、本発明の基板の接着方法において、上記(A)ポリアミック酸は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。
【化11】


[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化12】


[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化13】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化14】


[式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、pは1〜2の整数を示す。なお、pが2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化15】


[式(4)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化16】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q及びrは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化17】


[式(5)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化18】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びR10は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、s、t、u及びvは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、vが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化19】


[式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜4の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよい。]
【化20】


[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【0020】
かかる基板の接着方法によれば、感光性接着剤組成物が(A)ポリアミック酸として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことにより、基板同士の接着強度をより向上させることができるとともに、接着剤と基板との間のボイドの発生をより十分に抑制することができる。また、かかる基板の接着方法おいては、感光性接着剤組成物が(A)ポリアミック酸として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことにより、感光性接着剤組成物の露光時の感度を向上させることができ、十分な現像性を得ることができるとともに、厚膜で解像度よく像形成を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板(被接着部材)との間にボイドが生じることを十分に抑制することが可能な感光性接着剤組成物及び基板の接着方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)ポリアミック酸(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0024】
本発明における(A)ポリアミック酸は、好ましくは、側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸である。
【0025】
また、本発明における(A)ポリアミック酸は、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。また、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物、実質的に上記一般式(1)で表される構造のみからなるものであってもよく、上記一般式(1)以外の構造を更に有するものであってもよい。なお、本発明の効果をより十分に得る観点から、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、実質的に上記一般式(1)で表される構造のみからなるものであることが好ましい。更に、(A)ポリアミック酸としては、上記一般式(1)で表される構造を有するポリアミック酸を単独で用いてもよく、他のポリアミック酸と併用してもよい。
【0026】
これらの(A)ポリアミック酸は、例えば、ジアミン成分と、1倍モル当量以上のテトラカルボン酸二無水物とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0027】
ジアミン成分としては例えば、n−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,6−ジアミノピリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(コグニスジャパン(株)製、商品名:Versamine551)等を挙げることができる。また、上記ジアミン成分の一部に、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルシロキサン系ジアミン(信越化学(株)製、商品名:LP−7100等)などの芳香環を含まない脂肪族系のジアミンを使用してもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0028】
上記ジアミン成分と併用できる芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4’−(4−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4’−(3−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0029】
また、テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、ペンタメチレンビストリメチテート二無水物、ヘキサメチレンビストリメチテート二無水物、ヘプタメチレンビストリメチテート二無水物、オクタメチレンビストリメチテート二無水物、ノナメチレンビストリメチテート二無水物、デカメチレンビストリメチテート二無水物、ドデカメチレンビストリメチテート二無水物等が好ましいものとして挙げられる。
【0030】
また、上記テトラカルボン酸二無水物成分の一部として、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を使用することもできる。また、上記テトラカルボン酸二無水物成分の一部に、例えば、シクロブテンテトラカルボン酸二無水物等の芳香環を含まない脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物を使用してもよい。また、ジアミン成分及び/又はテトラカルボン酸二無水物は、弾性率の観点から、炭素数5〜20のアルキレン基を有するものであることが好ましい。
【0031】
(A)ポリアミック酸は、上記ジアミン成分と上記テトラカルボン酸二無水物成分とから公知の方法によって合成される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを選択的に組み合わせ、有機極性溶媒中で重合反応させることにより合成される。
【0032】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させる際の溶媒としては、(A)ポリアミック酸に対して不活性である必要があり、例えば、含窒素系溶剤類(N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等)、脂環式ケトン類(シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等)などが挙げられる。これらの中でも、溶解性及び吸水性の観点から、ラクトン類、脂環式ケトン類、エーテル類が好ましく、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0033】
また、(A)側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸の接着性、現像性を向上させるために、(A)ポリアミック酸にアミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入することが好ましい。アミノベンズイミダゾール及びその誘導体としては、例えば、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノ−6−メチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−エチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ブチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ニトロ−ベンズイミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、2−アミノ−ベンズイミダゾールが好ましい。
【0034】
アミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入する際の導入量は、(A)ポリアミック酸100モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましく、2〜3モルであることが特に好ましい。アミノベンズイミダゾール又はその誘導体の導入量が0.1モル未満では接着性の向上効果が不十分となる傾向があり、10モルを超えると現像性及び保存安定性が低下する傾向がある。
【0035】
(A)成分であるポリアミック酸の重量平均分子量は、10000〜50000であることが好ましく、20000〜40000であることがより好ましい。重量平均分子量が10000未満では硬化膜が脆くなる傾向があり、50000を超えると現像性が低下する傾向がある。
【0036】
感光性接着剤組成物において、(A)ポリアミック酸の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が低下する傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、解像度が低下したり、低温でのイミド化率が低下して低温接着が困難となる傾向にある。
【0037】
(B)光重合性化合物は、分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物であるが、好ましくは、分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物である。かかる(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物は、例えば、ジヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させることで得ることができる。
【0038】
入手可能な分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、TMCH−5(商品名、日立化成工業株式会社製)、ヒタロイド9082(商品名、日立化成工業株式会社製)、UA−11(商品名、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミック酸との相溶性及び硬化膜の接着強度の観点から、分子内にウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とエチレン性不飽和基とを有する光重合性化合物であるTMCH−5(商品名、日立化成工業株式会社製)が好ましい。
【0039】
(B)成分として分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を用いることにより、(A)ポリアミック酸と(B)光重合性化合物との相溶性を向上させることや、硬化膜の弾性率及びガラス転移点を低下させることができる。また、硬化の際のポリアミック酸のイミド閉環を促進させ、イミド閉環温度を低下させることができる。更に、被接着部材同士の接着時により優れた接着強度を付与することができる。
【0040】
また、感光性接着剤組成物を熱硬化させてなる硬化膜の伸び、接着性及び耐熱性を向上できる観点から、(B)成分として、分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を用いることが好ましい。分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化21】


[式中、R21、R22及びR23は各々独立に、下記一般式(9)〜(12)で表される基を示す。但し、R21、R22及びR23のうちの少なくとも1つは、下記一般式(11)で表される基を示す。]
【0042】
【化22】


[式中、R24は、水素原子又はメチル基を示し、aは1〜14の整数を示す。]
【0043】
【化23】


[式中、bは1〜14の整数を示す。]
【0044】
【化24】


[式中、R25は水素原子又はメチル基を示し、cは1〜9の整数を示し、dは1〜14の整数を示す。]
【0045】
【化25】


[式中、R26は水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、e、f及びgは各々独立に1〜10の整数を示し、hは0〜10の整数を示す。]
【0046】
上記一般式(8)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21(商品名、新中村化学工業(株)社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(B)成分である分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物の重量平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、600〜3000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、硬化膜の良好な膜物性及び接着性を高水準で達成することができる傾向がある。
【0048】
感光性接着剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、35〜65質量部であることが更に好ましく、40〜60質量部であることが特に好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、解像度や硬化後の膜の伸びが低下したり、低温でのイミド化率が低下する傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が低下する傾向にある。
【0049】
また、本発明の感光性接着剤組成物は、本発明の特性を損なわない範囲であれば、(B)成分として、分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する重合性化合物以外の光重合性化合物を含有していてもよい。
【0050】
他の光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0051】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。
【0052】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0053】
このうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0054】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの1分子内のエチレンオキサイド基の数は4〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用される。
【0055】
本発明における(C)成分である光重合開始剤は、活性光により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
【0056】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0057】
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等が挙げられる。
【0058】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等が挙げられる。
【0059】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0060】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0061】
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等が挙げられる。
【0062】
(C)光重合開始剤は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(C)光重合開始剤としては、例えば、イルガキュア−369(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、イルガキュア−907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、イルガキュア−651(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0063】
上述した(C)光重合開始剤の中でも、特にイルガキュア−651(I−651)が、感度及び溶剤との相溶性を良好にできる観点から好ましい。上記(C)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
感光性接着剤組成物において、(C)光重合開始剤の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性接着剤組成物の感度が低下したり、相溶性が低下したりする傾向にある。
【0065】
また、本発明の感光性接着剤組成物には、更に(D)架橋剤を加えてもよい。(D)架橋剤としては、特に制限されないが、エポキシ化合物、ブロック化イソシアネート化合物などが挙げられる。エポキシ化合物として具体的には、YH−434L(商品名、東都化成株式会社製、アミン型エポキシ樹脂)が好ましい。また、ブロック化イソシアネート化合物として具体的には、BL−3175(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製、ブロック化イソシアネート)が好ましい。これらの架橋剤を添加すると、硬化後の感光性接着剤組成物の接着性をより向上させることができる。
【0066】
感光性接着剤組成物に(D)架橋剤を含有させる場合、その含有量は、(A)ポリアミック酸100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、30〜40質量部であることがより好ましい。(D)架橋剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、キュア後の硬化膜が脆くなったり、(A)ポリアミック酸と(D)架橋剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0067】
また、本発明の感光性接着剤組成物には、更に(E)増感剤を加えることができる。(E)増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などが挙げられる。(E)増感剤としては、感光性接着剤組成物の感度、及び、溶剤との相溶性等の観点から、クマリン類が好ましく、クマリン102(商品名、アクロス社製)が特に好ましい。(E)増感剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0068】
感光性接着剤組成物における(E)増感剤の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として0.1〜1質量%であることが好ましい。(E)増感色素の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性接着剤組成物の感度が低下したり、溶剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0069】
本発明の感光性接着剤組成物は、上述した(A)ポリアミック酸、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、必要に応じて用いられる(D)架橋剤、並びに、必要に応じて用いられる(E)増感剤を、溶媒とともに混合することにより得ることができる。
【0070】
このときに用いられる溶媒としては特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトンなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0071】
また、感光性接着剤組成物には、必要に応じて、感光性接着剤組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0072】
次に、本発明の基板の接着方法について説明する。本発明の基板の接着方法は、(A)ポリアミック酸、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤、を含む感光性接着剤組成物に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、光硬化後の上記感光性接着剤組成物を加熱して、上記(A)ポリアミック酸のイミド化率が60〜90%となるように仮硬化させる仮硬化工程と、仮硬化後の上記感光性接着剤組成物を介して配置された基板同士を接着させる接着工程と、を含む方法である。ここで、感光性接着剤組成物としては、上述した本発明の感光性接着剤組成物を用いることができる。以下、本発明の基板の接着方法についてより具体的に説明する。
【0073】
まず、上記感光性接着剤組成物を基板上に塗布する。基板としては、シリコン、アルミナセラミック、ガラス、ガラスセラミック、窒化アルミ、半導体を形成した基板などが用いられる。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬、ロールコーティングなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
また、塗布膜厚は、塗布手段、感光性接着剤組成物の固形分濃度及び粘度等によって異なるが、通常、乾燥後の被膜(感光性接着剤組成物層)の膜厚が1〜300μmになるように塗布される。乾燥後の被膜の膜厚が1〜300μmになるようにするためには、本発明の感光性接着剤組成物を溶剤で溶解させ、粘度を1〜50Pa・sに調節することが好ましく、20〜40Pa・sに調節することがより好ましい。また、感光性接着剤組成物の固形分濃度は、20〜70質量%にすることが好ましく、30〜60質量%にすることがより好ましい。得られる被膜の膜厚が1μm未満である場合、接着時に感光性接着剤組成物が十分に濡れ拡がらないため接着性が低下する傾向があり、300μmを超えると、解像度が低下する傾向がある。
【0075】
次に、感光性接着剤組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性接着剤組成物からなる感光性接着剤組成物層を得る。乾燥は、オーブン、ホットプレートなどを使用し、60〜120℃の範囲で1分〜1時間行うことが好ましい。
【0076】
次に、この感光性接着剤組成物層上に必要に応じて所望のパターンを有するマスクを置き、それを介して活性光線を照射して露光する。露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
【0077】
露光後に、現像液を用いて未露光部を除去することにより、パターンを形成することができる。ここで、現像液としては、N−メチルピロリドン、エタノールのような有機溶剤、または炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアルカリ水溶液などを使用することができる。これらの中でも、金属性イオン化合物が少ないことから、感光性接着剤組成物の現像には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。
【0078】
また、現像後、必要に応じて、水、又は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールでリンスする。
【0079】
なお、感光性接着剤組成物層のパターン形成を行わない場合には、現像を省略することができる。
【0080】
次に、光硬化後の感光性接着剤組成物層を予備加熱することにより、感光性接着剤組成物層を仮硬化させ、仮硬化膜を形成する。ここで、仮硬化は、(A)ポリアミック酸のイミド化率が60〜90%となるように行う必要がある。
【0081】
予備加熱は、例えば、段階的に昇温しながら1〜2時間実施する。予備加熱は、120〜250℃で行うことが好ましい。段階的に昇温して予備加熱を行う場合、例えば、120℃、150℃、180℃で各20分間熱処理した後、230℃で30分間以上熱処理を行う方法が挙げられる。
【0082】
本発明の基板の接着方法において、上記の予備加熱を行うことにより、最終的に基板同士を接着(本接着)した際に、基板と接着剤(感光性接着剤組成物層の硬化膜)との間にボイドが発生することを抑制することができる。なお、予備加熱による(A)ポリアミック酸のイミド化率が60%未満であると、最終的に基板同士を接着(本接着)した際に、本接着時の(A)ポリアミック酸のイミド閉環により発生した水分等によって膜中にボイドが生じ、イミド化率が90%を超えると、最終的に基板同士を接着(本接着)した際に、硬化膜が被着体に十分に濡れ拡がらず、接着強度が不十分となる。また、接着強度及びボイドの抑制をより十分に達成する観点から、仮硬化時の(A)ポリアミック酸のイミド化率は70〜90%であることがより好ましく、80〜90%であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明による感光性接着剤組成物の被膜(仮硬化膜)を基板上に有してなる微小部品は、その後、被接着部材となるガラス、シリコン、セラミック等の基板と、例えば熱圧着することで接着させる。
【0084】
熱圧着温度は、予備加熱後の感光性接着剤組成物層(仮硬化膜)のガラス転位温度に依存し、それ以下の温度では接着力が低くなるため、ガラス転移温度以上の温度に加熱することが好ましい。また、圧着時間としては、1分〜2時間とすることが好ましい。これにより、(A)ポリアミック酸をイミド化率がほぼ100%となるようにイミド化して仮硬化膜を本硬化させ、硬化膜を形成することで基板同士の接着を行う。
【0085】
半導体素子用材料は低温で接着硬化することが望ましく、また、感光性接着剤組成物中のアクリル系樹脂が高温で分解する可能性があることからも、低温で硬化することが望ましい。したがって、接着は150〜250℃で行うことが好ましく、例えば、230℃で30分間程度行うことが好ましい。
【0086】
なお、圧着時間が1分未満であると、仮硬化膜が十分に濡れ広がらなかったり、圧着中に(A)ポリアミック酸のイミド閉環が完全に進行しない場合が生じる傾向があり、また、2時間以上であると感光性接着剤組成物の劣化により、接着力が低下する傾向がある。
【0087】
以上説明した本発明の感光性接着剤組成物及び基板の接着方法は、任意の基板同士の接着時に、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板と接着剤(硬化膜)との間のボイドの発生を十分に抑制することができる。更に、上記本発明の感光性接着剤組成物及び基板の接着方法は、フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成が可能であり、且つ、高接着強度、気密封止性、現像性、低吸水率、低イオン不純物、高信頼性などの特性を満足する。かかる本発明の感光性接着剤組成物及び基板の接着方法は、各種センサ用の中空パッケージ構造作製の用途に有効であり、例えば、CCD/CMOSイメージセンサの分野において、イメージセンサチップとそれを保護するガラスとの接着に好適に使用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び参考例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の合成例において、ポリアミック酸の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。
【0089】
(合成例1)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)9.36g(0.038mol)、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)4.89g(0.012mol)、及び、γ−ブチロラクトン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)16.44g(0.053mol)、及び、γ−ブチロラクトン29.66gを15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、3時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は44質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は38000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.9であった。
【0090】
(合成例2)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)12.4g(0.05mol)、及び、N−メチルピロリドン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)8.22g(0.027mol)、デカメチレンビストリメリテート二無水物(DBTA)26.11g(0.027mol)、及び、N−メチルピロリドン47.77gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、3時間攪拌することで、ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は45質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は32000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.4であった。
【0091】
(感光性接着剤組成物1〜6の作製)
上記各合成例で合成した(A)側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸の溶液、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び、(D)架橋剤を、それぞれ下記表1に示した配合割合(質量部)で混合し、溶媒(γ−ブチロラクトン)を加えて、感光性接着剤組成物1〜6の溶液を得た。このとき、感光性接着剤組成物1〜6の溶液について、粘度が20Pa・s又は5Pa・sとなるように溶媒の量を調整し、それぞれ2種類の粘度の感光性接着剤組成物1〜6の溶液を得た。また、感光性接着剤組成物の溶液の粘度は、東機産業株式会社製のTOKI RE−80U(商品名)を用いて測定した。なお、表1中の数字は固形分の質量部を示している。また、表1中の各成分は、以下に示すものである。
【0092】
TMCH−5(商品名、ウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とを有する2官能アクリレート、重量平均分子量950、日立化成工業株式会社製)、
UA−21(商品名、ウレタン結合とイソシアヌル環骨格とを有する3官能メタクリレート、重量平均分子量3000、新中村化学工業株式会社製)、
FA−321A(商品名、ビスフェノールAジアクリレート、日立化成工業株式会社製)、
BL−3175(商品名、ブロック化イソシアネート、住化バイエルウレタン株式会社製)、
YH−434L(商品名、アミン型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)、
I−651(商品名、ベンジルジメチルケタール、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)。
【0093】
合成例1及び合成例2で調製したポリアミック酸、並びに、光重合性化合物として用いたTMCH−5及びUA−21の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した(標準ポリスチレンによる換算)。GPCの条件は以下の通りである。
【0094】
〔GPC条件〕
ポンプ:L6000 Pump(株式会社日立製作所製)、
検出器:L3300 RI Monitor(株式会社日立製作所製)、
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(商品名、日立化成工業株式会社製)、
溶離液:DMF/THF(質量比1/1)、
流量:1ml/min。
【0095】
【表1】

【0096】
(実施例1〜8及び参考例1〜2)
<感光性接着剤組成物層の形成>
上記配合の感光性接着剤組成物1〜6の溶液を、スピンコーターを用いてシリコン基板上に均一に塗布し、100℃のホットプレートで3分間乾燥した。感光性接着剤組成物の層の乾燥後の厚さは、粘度20Pa・sの感光性接着剤組成物を用いた場合は50μmであり、粘度5Pa・sの感光性接着剤組成物を用いた場合は5μmであった。なお、シリコン基板上に形成した乾燥後の感光性接着剤組成物1〜6からなる感光性接着剤組成物層は全て、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に完全に溶解することが確認された。
【0097】
<イミド化率の測定>
乾燥後の厚さ5μmの感光性接着剤組成物層に対し、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量400mJ/cmで露光を行い、光硬化させた(露光工程)。その後、下記表2に示した150〜250℃の各温度条件(予備加熱温度)にて光硬化後の感光性接着剤組成物層を40分間加熱硬化させた(仮硬化工程)。このとき、段階的に昇温するために、実施例3及び6については120℃及び150℃で各20分間加熱した後、表2中の予備加熱温度(180℃)で40分間加熱硬化させ、参考例1については120℃で20分間加熱した後、表2中の予備加熱温度(150℃)で40分間加熱硬化させ、それ以外の実施例及び参考例については120℃、150℃及び180℃で各20分間加熱した後、表2中の各予備加熱温度で40分間加熱硬化させた。得られた仮硬化膜について、DIGILAB社製の赤外線測定装置(EXCALIBUR SERIES)を用い、赤外吸収スペクトル(透過光)を4000cm−1〜500cm−1の範囲で測定し、イミド基の特性吸収の吸光度比からイミド化率を求めた。ここでは、溶剤乾燥後(仮硬化前)の膜の吸収スペクトルをイミド化率0%、120℃、150℃及び180℃で各20分間加熱した後、250℃にて40分間加熱処理した場合の吸収スペクトルを理論的にイミド化率100%(リファレンス)とし、下記式(a)にて仮硬化膜のイミド化率X(%)を算出した。その結果を表2に示す。
X(%)={(K/L−M/N)/(O/P−M/N)}×100 ・・・(a)
なお、式(a)中の記号は以下の通りである。
K:仮硬化膜の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度、
L:仮硬化膜の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度、
M:仮硬化前の感光性接着剤組成物層(イミド化率0%)の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度、
N:仮硬化前の感光性接着剤組成物層(イミド化率0%)の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度、
O:120℃、150℃及び180℃で各20分間加熱した後、250℃にて40分間加熱処理した硬化膜(イミド化率100%)の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度、
P:120℃、150℃及び180℃で各20分間加熱した後、250℃にて40分間加熱処理した硬化膜(イミド化率100%)の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度。
【0098】
<ガラス転移点の測定>
粘度20Pa・sの上記感光性接着剤組成物1〜6の溶液を、スピンコーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ピューレックス、帝人デュポンフィルム(株)製)上に塗布し、100℃のホットプレートで3分間乾燥した。感光性接着剤組成物の層の乾燥後の厚さは、20μmであった。乾燥後の感光性接着剤組成物層に対し、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量400mJ/cmで露光を行い、光硬化させた(露光工程)。その後、上述したように段階的に昇温し、下記表2に示した150〜250℃の各温度条件(予備加熱温度)にて光硬化後の感光性接着剤組成物層を40分間加熱硬化させた(仮硬化工程)。得られた仮硬化膜(厚さ20μm)をPETフィルムから剥離し、4mm×4mmの試験片を作製した。この試験片について、熱機械分析装置(商品名:TMA−120、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、昇温速度10℃/分、加重3gでTMA法により測定し、変曲点前後の2つの接線の交点の温度をガラス転移温度とした。その結果を表2に示す。
【0099】
<基板の接続構造の作製>
乾燥後の厚さ50μmの感光性接着剤組成物層に対し、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量400mJ/cmで露光を行い、光硬化させた(露光工程)。その後、上述したように段階的に昇温し、下記表2に示した150〜250℃の各温度条件(予備加熱温度)にて光硬化後の感光性接着剤組成物層を40分間加熱硬化させた(仮硬化工程)。次に、シリコン基板を仮硬化膜ごと3mm×3mmの大きさに裁断して試験片を得た。この試験片の仮硬化膜のある面を下にしてガラス基板上に載せ、垂直方向に2.1MPaの荷重をかけて230℃で30分間(但し、実施例8のみ250℃で30分間)圧着させた(接着工程)。これにより、シリコン基板とガラス基板とが感光性接着剤組成物層からなる硬化膜を介して接着された接続構造を作製した。
【0100】
<接着強度の測定>
上記で得られた接続構造に対し、260℃、20秒間の加熱を行った際の、感光性接着剤組成物からなる硬化膜とガラス基板との間の引き剥がし強度を測定した。なお、引き剥がし強さ(ピール強度)の測定は、ダイシェア試験機(Dage社製、商品名:BT−4000)を用いて行った。すなわち、図1に示すピール強度測定装置(ダイシェア試験機)50において、接続構造(ガラス基板62、感光性接着剤組成物からなる硬化膜64及びシリコン基板66をこの順に備える接続構造)を、加熱可能な固定部材(加熱部位52及び固定部位54を備える固定部材)で固定した後、シリコン基板66の端部にゲージ56の先端を引っ掛け、このゲージ56を後方(図中の矢印方向)に0.5mm/秒の条件で引っ張った。そして、ゲージ56を引っ張る強さを徐々に強くしていき、硬化膜64がガラス基板62から剥がれた時点における引っ張り強さを、接着強度(kgf/chip)とした。その結果を表2に示す。なお、この方法によれば、接着剤(硬化膜64)の面接着強度を測定することができる。この数値が高いほど、リフロークラックが発生しにくくなる。
【0101】
<ボイド発生の有無の評価>
上記接着強度の測定においてシリコン基板とガラス基板との接続構造を作製した時、ガラス基板側から硬化膜中の気泡の有無を観察し、以下の評価基準に基づいてボイドの発生の有無を評価した。その結果を表2に示す。
A:硬化膜とガラス基板との間に気泡の残存が見られない、
B:硬化膜とガラス基板との間に気泡が確認できる。
【0102】
【表2】

【0103】
以上のように、本発明の感光性接着剤組成物を用いた基板の接続方法によれば、フォトリソグラフィーにより所定の箇所にのみ感光性接着剤組成物層を形成することが可能であり、また、半導体素子と封止用部材との接着後(又は半導体素子同士の接着後)、高温でのピール強度(接着強度)に優れ、且つ、ボイドの発生も十分に抑制され、封止後の樹脂形状安定性にも優れることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】接着強度(ピール強度)の測定に用いたピール強度測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0105】
50…ピール強度測定装置、52…加熱部位、54…固定部位、56…ゲージ、60…接続構造、62…ガラス基板、64…硬化膜、66…シリコン基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミック酸と、
(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含む感光性接着剤組成物。
【請求項2】
更に(D)架橋剤を含む、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリアミック酸が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性接着剤組成物。
【化1】


[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化2】


[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】


[式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、pは1〜2の整数を示す。なお、pが2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化5】


[式(4)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q及びrは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化7】


[式(5)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化8】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びR10は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、s、t、u及びvは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、vが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化9】


[式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜4の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよい。]
【化10】


[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
(A)ポリアミック酸、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤、を含む感光性接着剤組成物に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、
光硬化後の前記感光性接着剤組成物を加熱して、前記(A)ポリアミック酸のイミド化率が60〜90%となるように仮硬化させる仮硬化工程と、
仮硬化後の前記感光性接着剤組成物を介して配置された基板同士を接着させる接着工程と、
を含む基板の接着方法。
【請求項5】
前記接着工程において、仮硬化後の前記感光性接着剤組成物を介して配置された前記基板同士を熱圧着により接着させる、請求項4に記載の基板の接着方法。
【請求項6】
前記感光性接着剤組成物が、更に(D)架橋剤を含む、請求項4又は5に記載の基板の接着方法。
【請求項7】
前記(A)ポリアミック酸が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の基板の接着方法。
【化11】


[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化12】


[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化13】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化14】


[式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、pは1〜2の整数を示す。なお、pが2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化15】


[式(4)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化16】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q及びrは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化17】


[式(5)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化18】


(Rは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びR10は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、s、t、u及びvは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、vが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化19】


[式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜4の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよい。]
【化20】


[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]

【図1】
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【公開番号】特開2008−239802(P2008−239802A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82378(P2007−82378)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】