説明

感光性樹脂版の現像方法及びそれから得られる感光性樹脂印刷版

【課題】 中間調の網点深度を満足しつつ、高現像速度及び高画像再現性も満足する優れた現像方法を提供するものであり、特に高生産性を要求される印刷分野においてこれまでには得られていない優れた現像方法を提供することを課題とする。
【解決手段】感光性樹脂層を有する画像露光した感光性樹脂印刷版を水又は水系現像液を用いて未露光部を除去する現像方法であって、該現像方法が(A)工程後に(B)工程を組み合わせた現像工程を含むことを特徴とする感光性樹脂版の現像方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い現像速度においても感光性樹脂版の画像再現性に優れた現像方法に関するものである。本発明は、フレキソ印刷用水現像性感光性樹脂版又は凸版印刷用水現像性感光性樹脂版に適した感光性樹脂版の現像方法であり、特にフレキソ印刷用水現像性感光性樹脂版に最適な現像方法である。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂版は優れた画像再現性を有することから、感光性樹脂平版、感光性樹脂凸版印刷版や感光性樹脂フレキソ印刷版などに広く用いられている。
最近、感光性樹脂印刷版は、高速印刷で大量に印刷する分野においては、ゴム弾性を有する感光性樹脂印刷版を使用することが増加しつつあり、操作性、生産性及び経済性の面において優れているということから、特にフレキソ印刷には好適なものとして用いられている。
【0003】
前記感光性樹脂板の製造においては、感光性樹脂版に対して印刷パターンを露光した後に未露光部分の樹脂材料を除去する、いわゆる現像工程が必須であり、次の(イ)及び(ロ)が代表的な手段として挙げられる。
(イ)露光済みの感光性樹脂版に現像液を一定圧力で噴射し、未露光部分を除去して露光部を凸部として残す現像方法。
(ロ)露光済みの感光性樹脂版に現像液を噴射するか、又は現像液に浸漬し、その後に平面状ブラシを用いて未露光部分を除去して露光部を凸として残す現像方法。
【0004】
(イ)の方法は特許文献1に開示されている現像方法であり、現像液を循環使用することにより廃液処分コストを低減する感光性樹脂版の現像方法である。この方法では現像速度が遅いことから感光性樹脂版に用いる感光性樹脂の現像液に対する親和性を大きくする必要があり、そのために露光部も膨潤しやすくなり、画層再現性が低下するという問題があった。さらに印刷版として用いた場合にも水性インク対して膨潤し易くなり、印刷性の低下を引き起こすという問題があった。
一方、(ロ)の方法はブラシ径を太くすることやブラシ密度を上げることで現像速度を速くできるために、感光性樹脂の現像液に対する溶解性を大きくすることなく現像時間を短縮することが可能であるが、再現すべき微細な画像がブラシによって削られて再現性が低下するとういう問題があった。
又、(イ)と(ロ)を併用した現像方法が特許文献3に開示されている。特許文献3は現像液を感光性樹脂表面に対して高圧で噴射させると共に回転ブラシにて現像を行う現像方法であり、現像液を循環使用することにより廃液処分コストを低減することを可能にしている。
しかしながら、フレキソ印刷用水現像性感光性樹脂版及び凸版印刷用水現像性感光性樹脂版において、従来技術である(イ)、(ロ)及び(イ)と(ロ)の併用する方法を用いて現像方法では短い現像時間で微細な画像再現性を再現することは難しかった。
特に、単位時間当たりの印刷版製造枚数が問題となる高い生産性を要求される分野(缶印刷、新聞印刷等)においては、高画像再現性と高現像速度の両者を満足することが必須である。さらに、新聞印刷用感光性樹脂版の場合には、感光樹脂層は極めて薄い厚み (印刷版の全厚みが0.5mm以下)ではあるが、厚みの薄さ以上に短い現像時間が要求される。それに対して新聞印刷用感光性樹脂版を(ロ)で現像する場合には、太いブラシの使用、ブラシ密度アップや感光性樹脂層へのブラシのタッチ圧を上げることによって現像速度を満足できるが、しかし、その高いブラシのタッチ圧のために1〜5%のハイライト網点の再現性が著しく低下する問題があった。
さらに、発明者らは写真物の印刷が主となる新聞用印刷版においては印刷版の中間調網点の深度を深くすることが写真物の印刷に重要であることを見出したが、従来の現像方法では中間調の網点深度を満足しつつ、高画像再現性と高現像速度を満足することは出来なかった。
特に上記の課題は、水分散型現像性の感光性樹脂版の場合に顕著であり、中間調の網点深度を満足しつつ、高現像速度及び高画像再現性も満足する現像方法が待たれていた。
【特許文献1】特開2003−3450035号
【特許文献2】特開平10−123719号
【特許文献3】特開2002−311599号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、得られる印刷版の中間調の網点深度を満足しつつ、高現像速度及び高画像再現性も満足する優れた現像方法を提供するものであり、特に高生産性を要求される印刷分野においてこれまでには得られていない優れた現像方法を提供することを課題とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の現像方法を用いることにより、感光性樹脂自身に特別に親水性を付与させることなく、高生産性の大量製版が可能である。そして、本発明によって得られた印刷版は画像再現性に優れ、又、一枚の印刷版の中での画像再現性と現像速度のバラつきが小さい優れた印刷版を製版できる現像方法を提供することが可能となるので産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明は感光性樹脂版の現像方法について、感光性樹脂に特別に親水性を付与させることなく、優れた画像再現性で短時間に大量製版を可能とするものである。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するものであるが、さらに発明者らはハイライトからシャドーを有する写真物の印刷性能に対して30〜70%の中間調の網点深度(印刷版表面から支持体方向への凹部の深さ)を深くすることが重要であることを見出し、その解決に取り組んだ。その結果、中間調の網点の深度を深くする現像方法としてスプレー現像が優れた特性を有し、且つ最終工程に組み込むことで本発明に至った。
すなわち、本発明は、(1)感光性樹脂層を有する画像露光した感光性樹脂版を水又は水系現像液を用いて未露光部を除去する現像方法であって、該現像方法が(A)工程後に(B)工程を組み合わせた現像工程を含むことを特徴とする感光性樹脂版の現像方法、(A)スプレー現像以外の方法で感光性樹脂層全体を支持体まで現像する工程、(B)スプレー現像方法を用いて感光性樹脂表面に残存する中間調網点の感光性樹脂を現像除去する工程、(2)スプレー現像以外の方法がブラシ現像又は/及び熱現像であって、スプレー現像が全体の現像時間に対して25〜50%の範囲であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の感光性樹脂版の現像方法、(3)感光性樹脂印刷版全厚みが1000μ厚み以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの感光性樹脂版の現像方法、(4)現像装置が連続搬送方式又はバッチ方式であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの感光性樹脂版の現像方法、(5)感光性樹脂版が水現像性感光性フレキソ印刷版又は水現像性感光性樹脂凸版用印刷版であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの感光性樹脂版の現像方法、(6)感光性樹脂印刷版が水現像性新聞印刷用感光性フレキソ印刷版であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの感光性樹脂版の現像方法、(7)(1)〜(6)のいずれかの感光性樹脂版の現像方法から得られることを特徴とする感光性樹脂印刷版である。
【0009】
本発明の現像方法は、スプレー現像以外の方法で感光性樹脂層全体を支持体まで現像した後に、スプレー現像方法を用いて感光性樹脂表面に残存する未現像の感光性樹脂を現像除去する方法である。
本発明は最初の工程〔(A)工程〕のスプレー現像以外の現像方法によって短時間で支持体まで現像し、最終工程〔(B)工程〕のスプレー現像方法によって30〜70%の中間調の網点深度を深くすることを可能とするものである。
特に、本発明における最初の現像工程〔(A)工程〕の目的は、感光性樹脂層を支持体までの全体の現像する時間を短くすると共に中間調の網点部分の感光性樹脂を現像液で膨潤することでスプレー現像による効率良く中間調の網点深度を深くすることが可能とするものである。したがって、スプレー現像を最初の工程〔(A)工程〕に導入した場合には、感光性樹脂を現像液で膨潤する時間がなくなり、短時間に中間調の網点深度を深くすることは不可能となる。
【0010】
本発明に用いるスプレー現像方法について説明する。スプレー現像方法については、公知の現像方法を用いることが可能であり、特開2001−230188等に開示されている。スプレーノズル形状やノズル間隔は最適な方法を選択すれば良い。現像液は30℃以上であり、好ましくは40℃以上80℃以下である。現像液温度が30℃未満では現像速度が遅くなり、中間調の網点深度を深くすることは難しい。又、現像液温度が80℃を超えると現像液で膨潤するために画像再現性が低下するために好ましくない。
一方、本発明に用いるスプレー圧力は0.5MPa以上30MPa以下の圧力が好ましく、さらに好ましくは、1MPa以上10MPa以下である。スプレー圧力が1MPa未満では現像速度が遅くなり、中間調の網点深度を深くすることは難しい。又スプレー圧力が30MPaを超えると画像がスプレー圧力で削り取られるために画像再現性が低下するために好ましくない。
【0011】
本発明に用いるスプレー現像方法以外の現像方法とは、ブラシ現像方法又は熱現像方法である。
本発明に用いる平面型ブラシ現像方法は公知の現像方法を使用できる。具体的な現像方法としては、平面状ブラシと樹脂版とを互いに交差する方向に往復移動する現像方法や円形に移動させて現像するブラシ現像方法(特開平6−837072)や円形に移動させて現像するブラシ現像方法(特開平10−123719)などがある。
ブラシ現像方法に用いるブラシとしては直径が50μm以上300μm以下であり、好ましいブラシ直径は100μm以上300μm以下である。ブラシ直径が300μmより大きくなると、微細な画像を削り、網点再現性、細線再現性、独立点再現性が劣るだけでなく、細部の凹部深度も均一ではない。一方でブラシ直径が50μm未満の直径の場合にはブラシ圧が弱いために目的の時間内に現像を終了することが出来ない。
又、本発明に用いるブラシは、現像速度と画像再現性を両立するために段階的にブラシ直径を小さくすることが好ましく、具体的には連続搬送方式を用いてブラシ直径を太いブラシから細いブラシへ段階的にブラシ直径を細くして現像する方法である。段階的に細くする方法としては、ブラシ全体を分割できるような構造とし、例えば、ブラシ直径300μ、ブラシ直径200μ、ブラシ直径100μを並列に並べることで可能となる。
ブラシの材質としては、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのナイロン系ブラシ、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系ブラシが挙げられるが、その中でも6,6−ナイロン及びポリエチレンテレフタレートが未使用の曲げ硬さに対する現像液浸漬時の曲げ硬さの低下率の面からブラシとして最適である。
又、ブラシ密度については現像時間の面より6000本/cm2〜24000本/cm2にすることが好ましい。
【0012】
本発明に用いる熱現像方法について説明する。
本発明に用いる熱現像方法としては公知の現像方法を使用できる。公知の技術としては特開平5−19469号が基本技術として開示され、特開2006−85157号では安定した現像性を実現するために感光性樹脂表面を現像媒体に接触させる手段を導入している。しかし、本発明では熱現像方法を未露光の感光性樹脂全体を除去することが目的であり、現像媒体との接触させる必要性はない。
本発明において、熱現像方法を導入する場合にはスプレー現像までに水によって膨潤させる工程を入れる必要があり、熱現像方法の後にブラシ現像又は膨潤させるための工程を入れることが望ましい。
【0013】
本発明の(A)工程後に(B)工程を組み合わせた現像工程としては、(A)工程の後に(B)工程を連続して含む連続搬送方式(複数の現像方法を連続して処理する現像装置)の現像工程又は(A)工程の装置でバッチ処理(一つの現像方法を単独処理する現像装置)した後に(B)工程の装置でバッチ処理する方法が考えられるが、生産性と画像再現性の面より(A)工程の後に(B)工程を連続して含む連続搬送方式の現像工程が好ましい。
連続搬送方式以外に複数の現像方法を組合せる方法としては、回転ドラムに感光性樹脂を巻きつけるロータリーブラシ方式がある。この方式は回転ドラムに巻きつけた感光性樹脂に対して、ロール状ブラシを接触させて現像した後に配置したスプレーノズルから現像液を噴射することが可能であり、現像装置をコンパクトにすることができる。
【0014】
次に、本発明に用いる現像液について説明する。
本発明に用いる水又は水系現像液とは、水単独または水を50%以上含む現像液である。水以外に含有する現像液成分としては、アルコール、界面活性剤、必要に応じてPH調整剤、洗浄促進剤などである。アルコールとしては、チルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールやイソプロピルアルコールなどである。又、界面活性剤としてノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤であり、ノニオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック附加物等がある。アニオン性界面活性剤の具体的な例としては、平均炭素数8〜16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルフォン酸塩、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が4〜10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、平均炭素数10〜22の飽和または不飽和脂肪酸塩等である。
【0015】
本発明に用いる現像液の温度は、40〜80℃であり、画像再現性の面より40〜60℃好ましい。現像液の温度が40℃未満では現像速度が遅く、80℃を超えると画像再現性が低下するので好ましくない。
【0016】
次に、本発明に用いる感光性樹脂板について説明する
本発明に用いる感光性樹脂印刷版としては水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版又は水現像性凸版用感光性樹脂版である。水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版としては、特に水分散型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版の場合に最適である。水分散型現像性とは、水に分散する感光性樹脂組成物のことであり、主成分である高分子化合物として水に分散する高分子化合物を用いれば良く、たとえばシート状に成形した高分子化合物を水または温水に浸漬し、ブラシ等の摩擦で高分子化合物が膨潤分散するものをいう。
水分散型現像性の感光性樹脂板の具体的な例としては、非架橋の疎水性ポリマーを主成分とする相の周囲に親水性ポリマーを主成分とする相が存在する粒子を含む感光性樹脂組成物を用いたフレキソ印刷用感光性樹脂版版(特開平3−72353号)や少なくとも2種類以上の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体(特開2005−31186号)などが挙げられるが、水分散ラテックスから得られる疎水性重合体を含む水分散型現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版に対して最適である。
つまり、水分散型現像性の場合には、スプレー現像では現像速度が非常に遅いために高い生産性を満足することは不可能であったが、本発明の現像方法によって高い生産性が得られ、且つ高画像再現性が可能となった。
【0017】
次に、本発明に用いる水現像性凸版用感光性樹脂版について説明する。
本発明に用いる水現像性凸版用感光性樹脂版としては、可溶性合成高分子化合物としては公知の可溶性合成高分子化合物を主成分とする感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂版を使用できる。例えばポリエーテルアミド(特開昭55−79437号公等)、ポリエーテルエステルアミド(特開昭58−113537号公報)、三級窒素含有ポリアミド(特開昭50−76055公報)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(特開昭53−36555公報)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(特開昭58−140737号公報)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(特開平4−97154号公報等)などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いる感光性樹脂版として適している全厚みとしては250〜1000μであり、さらに好ましい全厚みとしては250〜800μである。特に好ましい全厚みとしては250〜600μであり、極薄物の感光性樹脂版でその効果が最大限に発揮される。
【0019】
本発明に用いる現像方法は、水分散型の感光性樹脂板であって、全厚みが250〜600μであるフレキソ印刷用感光性樹脂版に最適である。特に新聞印刷の極薄版で水分散型の水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版に対して最適である。
新聞印刷のような印刷分野の場合は通常厚みの感光性樹脂印刷版の5倍〜10倍の、700m/分以上の速度で印刷される。そのため、中間調の網点などで十分な凹部深度が再現できない場合、インクが詰まる原因となり、その結果印刷不良を引き起こす。また、大量生産の面から2分以内に現像を完了しなければならないという過酷な現像速度である。さらに平面ブラシ現像機方法では中間調の網点深度のバラツキが大きいという欠点がある。
【0020】
本発明の現像方法は、現像工程の後に連続して、水切り、乾燥及び後露光の装置と組合せても良い。その場合には、連続搬送方式を用いることが好ましい。
【0021】
本発明に使用する支持体としては、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが使用されるが、好ましい支持体としては100〜200μのスチール及び100〜250μのポリエチレンテレフタレートである。
【0022】
本発明に使用する感光性樹脂版は、支持体と感光性樹脂層とを強固に接着するために支持体上に接着層を設けることが好ましい。接着層としては、ポリエステルとイソシアネート化合物からなるポリウレタン系が好ましく、さらに光重合性化合物を含む接着層がより好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
ブラシ現像速度の測定:
250μのポリエチレンテレフタレート(支持体)上に1000μmの厚みを有する感光性樹脂層が配置したA−3サイズの感光性樹脂版を用いて直径が200μの6−6ナイロン製ブラシを用いて1分間現像した後に水切りと70℃乾燥を行い、現像した印刷版の全厚みを10点測定し、現像前の厚みと現像によって減少した厚みとの差を計算してその平均値を求めた。得られた厚みの平均値は一分間当たりに減少した厚みであり、一分間当りの現像速度を表す。 200μスリット深度:
スリット深度は投影機(Nikon PROFILE PROJECTOR V-12B)を用いて行い、スリット部の断面の深さ方向(支持体方向)の深度を読み取った。
中間調網点(50%)印刷性評価:

テストチャートの85線、50%網点を再現した印刷版を用いてフレキソ印刷機又はシール用凸版印刷機で用いて5000部印刷し、得られた印刷物を10倍のルーペを用いて目視判定で評価した。
○:網点に汚れが発生することなく、色が均一な印刷物
×:網点に汚れが発生し、色にムラが発生した印刷物
【0025】
感光性樹脂組成物A〜Cの調製
感光性樹脂組成物A(水分散型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂組成物):
ブタジエンラテックス(Nipol LX111NF 不揮発分55% 日本ゼオン(株)製)22重量部、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503 不揮発分43% 日本ゼオン(株)製)5重量部、成分である親水性重合体(PFT−3 不揮発分25% 共栄社化学(株)製)6重量部、オリゴブタジエンアクリレート(ABU−2S 共栄社化学(株)製)10重量部、光重合開始剤0.45重量部、架橋剤としてラウリルメタクリレート3重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート0.9重量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.03重量部、その他の添加剤としてカルボン酸系共重合体0.04重量部をトルエン15重量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練し、その後トルエンと水を減圧除去することにより、感光性樹脂組成物Aを得た。この組成物から得られた感光性樹脂版のブラシ現像速度は420μ/分であった。また、この感光性樹脂版に用いた感光性樹脂は、紫外線露光した後の硬さがショアA硬度は60°で水性インキに耐えるものであり、水溶解型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版に使用できるものであった。
【0026】
感光性樹脂組成物B(水溶解型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂組成物): 数平均分子量600のポリオキシエチレンの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω一ジアミノポリオキシエチレンとアジピン酸との当モル塩を55部、ε一カブロラクタム25重量部、およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩20重量部を、通常の条件で、溶融重合して相対粘度(ポリマーを抱水クロラール100mlに溶解し、25℃で測定、以下同じ)が、2.50のポリアミドを得た。このようにして得られたポリアミド20重量部と、熱安定剤としてハイドロキノン0.03部、カブロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタアクリレート40重量部、エチレンオキサイド変性フタル酸アタリレート(共栄社化学社製 HOA−MPE)40部、ベンジルメチルケタール1.5重量部をメチルアルコール50部に70℃で30分間加熱溶解した。
次に徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃になるまで濃縮し、感光性樹脂組成物Bを得た。
この組成物Bから得られた印刷原版のブラシ現像速度は730μ/分であった。また、この印刷原版に用いた感光性樹脂は、紫外線露光した後の硬さがショアA硬度は80°で水性インキに耐えるものであり、水溶解型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版に使用できるものであった。
【0027】
感光性樹脂組成物C(水溶解型水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物):
ε−カプロラクタム52.5重量部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40.0重量部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート7.5部と水100重量部を反応器に加え、充分な窒素置換を行った後に、密閉して徐々に加熱し、内圧が10kg/cm2 に達した時点から反応器内の水を徐々に留出させて約1時間で常圧に戻し、その後0.5時間常圧で反応させた。最高重合温度は210℃で、融点140℃、比粘度1.83の透明淡黄色のポリアミドを得た。
次にポリアミドを55.0重量部、N−メチルトルエンスルホン酸アミドを7.7重量部、1,4−ナフトキノンを0.02重量部、メタノール50.0重量部と水10部を攪拌機付き加熱溶解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのアクリル酸付加物を30.1重量部、メタクリル酸を3.1重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.1重量部とベンジルジメチルケタール1.0重量部を混合して30分間溶解した。次に徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃になるまで濃縮し、感光性樹脂組成物Bを得た。この組成物Bから得られた印刷現版のブラシ現像速度は810μ/分であった。この印刷原版に用いた感光性樹脂は、紫外線露光した後の硬さがショアD硬度は52°、油性インキに耐えるものであり、水溶解型水現像性凸版印刷用感光性樹脂版に使用できるものであった。
【0028】
実施例1
感光性樹脂組成物Aを支持体としてウレタン系接着層を20μコートしたスチール板(厚み:170μm)と、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着防止層としてポリビニルアルコールをコーテイングした保護フィルムで挟み、支持体フィルム上に設けた接着層と保護フィルム上に設けた粘着防止層が感光性樹脂組成物と接触するようにヒートプレス機で100℃、200kg/cm2の圧力で1分間加圧することにより、全厚みが500μmの感光性樹脂原版を作製した。得られた原版のカバーフィルムを剥離し、網点85線1%〜100%、独立点直径10〜500μm、最小凸文字3ポイント、最小抜き文字3ポイント、白抜きスリット100〜300μm、ステップガイドを含む検査ネガを用いて、400nmにおける照度16W/m2(OLEC SPECTRAMATCH LAMP L1282)を用いて、10カウントの表露光をおこないネガフィルムを除した。その後、ブラシ直径200μm、ブラシ長20mmの6−6ナイロン製ブラシを植え込んだ幅30cmの平板を3枚並べたブラシ現像方式で未露光部を支持体まで洗い出し、その後にスプレー圧力5Mpaのノズルを8cm間隔で2列並べたスプレー現像方法を有する搬送方式の現像装置で現像した。現像液としては、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ4重量%を水道水に溶解した50℃の現像液で現像した。その後に水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
実施例1と同様に感光性樹脂版を作製して露光を行った。その後、表1の通りに直径270μ、200μ、130μのブラシを実施例1と同様に植え込んだ平板を順番に配置し、実施例1と同様に搬送方式で現像し、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ4重量%を含有する40℃の中性水で1分間現像し、次いで、スプレー型現像機及びノニオン性界面活性剤を1%含有する60℃の中性水でそれぞれ1分間現像した。現像した後に水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
実施例1と同様にして作成した露光済み版を用いて、現像を行った。現像は実施例2のブラシ現像とスプレー現像の時間比率を変更したもので、実施例2ではスプレー現像が50%であったものを25%に変更した。現像した後に水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0031】
実施例4〜5
実施例2において、感光性樹脂組成物Aを感光性樹脂組成物B及びCに変更して感光性樹脂版を作成し、実施例1と同様に露光処理した。次に、実施例1と同様の現像条件で現像処理を行い、水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0032】
実施例6〜8
実施例6では実施例2の現像を搬送方式からバッチ方式に変更して、現像処理を行った。又、実施例7〜8では実施例2の現像のスプレー圧力を変更して、現像処理を行った。
次に実施例6〜8で現像した版の水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例9及び10では感光性樹脂層の厚みを変更して、実施例2と同様に現像処理を行った。又、実施例7〜8では実施例2の現像のスプレー圧力を変更して、現像処理を行った。又、実施例11では支持体を厚み250μのポリエチレンテレフタレートに変更し、現像処理を行った。
次に、実施例9〜11で現像した版の水切りを行い、60℃で10分間乾燥した。次いで、低圧水銀ランプを用いて5分間後露光、さらにデタック処理を5分間行い、印刷版を得た。その時の現像条件及び評価結果を表1に示す。
【0034】
比較例1〜5
比較例1は実施例1と同様に感光性樹脂版を作製して露光を行い、現像方法として実施例2の現像をブラシ現像単独とした場合である。比較例2では現像方法として実施例2の現像方法をスプレー現像単独とした場合である。比較例3では実施例2の現像においてスプレー現像の比率を下げ、又、比較例4ではスプレー現像の比率を上げたものである。
一方、比較例5は感光性樹脂層の厚みを1010μとした場合であり、現像方法は実施例2の現像条件の組合せで行い、感光性樹脂層厚みに合わせて現像時間を最適化した。
評価結果を表2に示す。
【0035】
比較例6
比較例6は実施例1と同様に感光性樹脂版を作製して露光を行い、現像方法として実施例2と同じ現像方法を行った。まず、(B)のスプレー現像工程を5Mpaで60秒、その後に直径270μ、200μ、130μのブラシを組み合わせたブラシ現像を60秒行った。評価結果を表2に示す。
【0036】
比較例1及び比較例6に示したブラシ現像又はスプレー現像単独の現像方法と比較して、実施例1〜10に示した通りにブラシ現像とスプレー現像とを組み合わせた実施例1〜10では優れた現像速度と画像再現性を満足していることが分かる。特に感光性樹脂版として水分散型水現像性感光性樹脂を用い、ブラシ現像としてブラシ直径を太いブラシから細いブラシへ段階的に変更することで高現像速度及び高画像再現性を達成することができる。
又、実施例2、実施例8及び実施例9の評価結果より、感光性樹脂層の厚みとしては特に120μ〜310μの極薄物の場合に適していることが分かる。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の現像方法を用いることにより、感光性樹脂自身に特別に親水性を付与させることなく、高生産性の大量製版が可能である。そして、本発明によって得られた印刷版は画像再現性と現像速度に優れた印刷版を製版できる現像方法を提供することが可能となるので産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂層を有する画像露光した感光性樹脂版を水又は水系現像液を用いて未露光部を除去する現像方法であって、該現像方法が(A)工程後に(B)工程を組み合わせた現像工程を含むことを特徴とする感光性樹脂版の現像方法。
(A)スプレー現像以外の方法で感光性樹脂層全体を支持体まで現像する工程
(B)スプレー現像方法を用いて中間調網点の感光性樹脂表面に残存する感光性樹脂を現像除去する工程
【請求項2】
スプレー現像以外の方法がブラシ現像又は/及び熱現像であって、スプレー現像が全体の現像時間に対して25〜50%の範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂版の現像方法。
【請求項3】
感光性樹脂版全厚みが1000μ厚み以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂版の現像方法。
【請求項4】
感光性樹脂版が水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版又は水現像性凸版用感光性樹脂版であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂版の現像方法。
【請求項5】
感光性樹脂版が水分散型水現像性フレキソ印刷用感光性樹脂版であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂版の現像方法。
【請求項6】
感光性樹脂が新聞印刷用フレキソ印刷用感光性樹脂版であることを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂版の現像方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂版から得られることを特徴とする感光性樹脂印刷版。

【公開番号】特開2010−117623(P2010−117623A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291760(P2008−291760)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】