説明

感光性樹脂組成物、それを用いたレジストパターンの製造方法及びフレキシブル配線板の製造方法

【課題】 硬化した際のそり量が小さく、部品実装時の作業性が良好であり、耐折性、感光特性、耐電食性、耐PCT性に優れる感光性樹脂組成物、それを用いたレジストパターンの製造方法及びフレキシブル配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、光開始剤(B)、エポキシ樹脂(C)、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)を成分とする感光性樹脂組成物。
【化1】


(Rは、水素原子あるいは一般式(1a)示される置換基である)
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いたレジストパターンの製造方法及びフレキシブル配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソルダレジストはプリント基板の最外層に形成される、はんだ保護膜として使用されている。従来は熱硬化型のものをスクリーン印刷法で印刷してレジストパターンを形成する方法が主流であったが、プリント基板の配線の高密度化に伴い解像度の点で限界が生じてきたため、写真法でパターン形成する感光性ソルダレジストが主流となってきた。中でも炭酸ソーダ溶液等の弱アルカリ溶液で現像可能なアルカリ現像型のものは作業環境保全、地球環境保全の点で優れるため、現在の主流となっている。このようなアルカリ現像型の感光性ソルダレジストの代表例として、フェノールノボラック型、もしくはクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを主成分とする、特開平1−54390号公報に示される感光性樹脂組成物が広く知られている。
【0003】
感光性ソルダレジスト付きのプリント基板は、導体回路パターンの形成された絶縁基板上に感光性樹脂組成物層を形成し、電子部品と電気接続を行う導体箇所を遮蔽部を設けたフォトマスクを介して紫外線を照射して露光部分を光硬化させ、弱アルカリ溶液による現像で前記、遮蔽部(未露光部分)の感光性樹脂組成物を選択的に除去した後、所定の熱硬化処理を行って製造される。
【0004】
導体回路パターンの形成された絶縁基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、液状の感光性樹脂組成物をスクリーン印刷、ロールコート、カーテンコートする方法や予め、前記感光性樹脂組成物を耐熱性樹脂フィルム上に塗布してフィルム化し、ラミネートにより貼り合せる方法がある。プリント基板生産性の点では液状材料を基板に直接塗布する方式よりもフィルムをラミネートする方式の方が感光性樹脂層を両面同時に形成できる、ソルダレジスト層形成時の気泡、異物の混入がない、有機溶剤による作業場の汚染がないなどの点で有利であるが、用途に応じて厚みを塗り分ける、材料コストが安価である、塗膜物性に優れる等の理由で液状材料(液状ソルダレジスト)を用いているメーカが大多数を占める。
【特許文献1】特開平1−54390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感光性ソルダレジストについては、これまで写真法によるパターン形成とはんだ保護膜としての特性以外は重視されていなかったが、近年の電子機器の高機能化に伴い、上記以外の特性についても重視されるようになってきた。携帯電話に代表される小型情報端末機器は1990年代後半以降、軽量化、小型化、高機能化が急速に進み、狭い空間に高密度に電子部品を実装する技術が盛んに検討されてきた。その結果、半導体チップをフレキシブル配線板上に搭載するCOF実装が高密度実装に極めて有利であることがわかり、各電子部品メーカで採用、検討が相次いでいる。しかし、COF実装にはまだ課題が多い。その一つとしてフレキシブル配線板の最外層に形成される感光性ソルダレジストの特性が低いという課題がある。
【0006】
具体的には特開平1−54390号公報に代表される、現在主流のフェノールノボラック型、もしくはクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを主成分とする感光性ソルダレジストは熱硬化処理した際の基板のそり量が約5mmと大きいため、COF実装時の基板の位置合わせ精度に問題が生じやすいこと、耐折性が低いことが知られており、これらの特性の向上が求められてきた。これらの特性を満足することを目的として、従来は光硬化性成分であるフェノールノボラック型、もしくはクレゾールノボラック型エポキシアクリレートの配合比率を下げて、エポキシアクリレートの酸価を増やす手法が試みられてきたが、この手法ではそり特性、耐折性と感光特性、耐電食性、耐PCT性等の両立が困難であった。本発明の目的は硬化した際のそり量が小さく、部品実装時の作業性が良好であり、耐折性、感光特性、耐電食性、耐PCT性に優れる感光性樹脂組成物、それを用いたレジストパターンの製造方法及びフレキシブル配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、光開始剤(B)、エポキシ樹脂(C)、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)を成分とする感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】


(Rは、水素原子あるいは一般式(1a)示される置換基である)
【0009】
【化2】

【0010】
2.反応性エラストマ成分(b)が、分子両末端にカルボキシル基を有し、ブタジエン骨格を含有する平均分子量が500〜5000の低分子量ポリマー成分であることを特徴とする項1に記載の感光性樹脂組成物。
3.エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)が、ポリアルキレンオキサイドユニットおよびポリカーボネートユニットから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットを分子構造中に有するカルボキシル基末端ポリアミドイミド樹脂(e)とエポキシ樹脂(f)とを、エポキシ基/カルボキシル基のモル比を1より大きくして反応させて得られるエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
4.エポキシ基含有ポリアミドイミド(D)が酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)の固形分100重量部に対して、20〜50重量部であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の感光性樹脂組成物。
5.加熱硬化した際の、常温(25℃)での引張り弾性率が1500MPa以下、引張り伸び率が10〜30%であることを特徴とする項1〜4いずれかに記載の感光性樹脂組成物。
6.項1〜5いずれかに記載の感光性樹脂組成物をフィルム基板上に積層し、紫外線を画像上に照射して露光部分を光硬化させ、未露光部分を現像により選択除去することを特徴とするレジストパターンの製造方法。
7.項6に記載のレジストパターンの製造方法により、永久マスクを形成することを特徴とするフレキシブル配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
硬化した際のそり量が小さく、部品実装時の作業性が良好であり、耐折性、感光特性、耐電食性、耐PCT性に優れる感光性樹脂組成物、それを用いたレジストパターンの製造方法及びフレキシブル配線板の製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、前記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、光開始剤(B)、エポキシ樹脂(C)、ポリアミドイミド樹脂(D)を成分とする感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
本発明に用いられる酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)の原材料であるエポキシ樹脂(a)としては一般式(1)で示されるビスフェノールF型骨格とフェノールノボラック型骨格を含有するエポキシ樹脂を挙げることができる。その製造方法に制限はないが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂にエピクロルヒドリンを反応させる公知の方法で得ることができる。上記一般式(1)で示されるビスフェノールF型骨格とフェノールノボラック型骨格を含有するエポキシ樹脂としては日本化薬株式会社製のNERシリーズ、東都化成株式会社製のYDPFシリーズ等が挙げられる。
【0014】
反応性エラストマ成分(b)としては分子両末端にカルボキシル基を有し、ブタジエン骨格を含有する低分子量ポリマー成分が好ましく、具体的にはポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸、ポリブタジエンジカルボン酸等を挙げることができる。また、その平均分子量は500〜5000が好ましく、更には1000〜3000が好ましい。平均分子量が500未満では感光性樹脂組成物に十分な耐折性が付与できず、5000を超えると耐電食性、耐PCT性等の信頼性が低下する。反応性エラストマ成分としてはこの他に分子中にシリコンを含有するタイプの低分子ポリマー成分もあるが、COF実装においては部品実装工程時の熱履歴でシリコン成分が分解し、アウトガスによる封止材接着力が低下する可能性があるため、使用は好ましくない。上記のポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸としては宇部興産株式会社製のハイカーCTBNシリーズ、ポリブタジエンジカルボン酸としては日本曹達株式会社製のC−1000等があげられる。
【0015】
不飽和基モノカルボン酸(c)としてはアクリル酸、アクリル酸のニ量体、メタクリル酸、βーフルフリルアクリル酸、βースチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、αーシアノ桂皮酸等が挙げられる。また、水酸基含有アクリレートと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。半エステル化合物は水酸基含有アクリレート、不飽和基含有モノグリシジルエーテルと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これら不飽和基含有モノカルボン酸(c)は、単独、または二種類以上併用して用いることができる。
【0016】
不飽和基含有モノカルボン酸(c)の一例である上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレート、不飽和基含有モノグリシジルエーテルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。上記半エステル化合物の合成に用いられる飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるエポキシ樹脂(a)と反応性エラストマ成分(b)および不飽和基含有モノカルボン酸(c)との反応において、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して、反応性エラストマ成分(b)と不飽和基含有モノカルボン酸(c)の合計が0.8〜1.20当量となる比率で反応させることが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.10当量である。
【0018】
また、反応性エラストマ成分(b)が不飽和基含有モノカルボン酸(c)に対して、0.005〜0.1当量が好ましく、更には0.01〜0.05当量であることが好ましい。反応性エラストマ成分(b)が不飽和基含有モノカルボン酸(c)に対して、0.005等量未満では十分な可とう性が得られず、耐折性が低下する。一方、反応性エラストマ成分(b)が不飽和基含有モノカルボン酸(c)に対して0.1等量を超えると樹脂の光硬化性が低下し、感光特性、耐電食性、耐PCT性が低下する。
【0019】
エポキシ樹脂(a)と反応性エラストマ成分(b)不飽和基含有モノカルボン酸(c)は有機溶剤に溶かして反応させられ、有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。更に、反応を促進させるために触媒を用いるのが好ましい。用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。触媒の使用量は、エポキシ樹脂(a)と反応性エラストマ成分(b)および不飽和基含有モノカルボン酸(c)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部である。反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用するのが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられ、その使用量は、エポキシ樹脂(a)と反応性エラストマ成分(b)および不飽和基含有モノカルボン酸(c)の合計100重量部に対して、0.01〜1重量部である。また、その反応温度60〜150℃が好ましく、80〜120℃が更に好ましい。
【0020】
本発明において、光硬化性樹脂である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、上述のエポキシ樹脂(a)と反応性エラストマ成分(b)不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応せしめて得られる反応生成物(A’)に飽和もしくは不飽和基含有多塩基酸無水物(d)を反応させることで得られる。飽和もしくは不飽和基含有多塩基酸無水物(d)としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上の複数を組み合わせて使用することができる。
【0021】
反応生成物(A’)と飽和もしくは不飽和基含有多塩基酸無水物(d)との反応において、反応生成物(A’)中の水酸基1当量に対して、飽和もしくは不飽和基含有多塩基酸無水物(d)を0.1〜1.0当量反応させることで、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の酸価を調整できる。酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の酸価は30〜150mgKOH/gであることが好ましく、50〜120mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では光硬化性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性が低下し、150mgKOH/gを超えると硬化膜の電気特性が低下する傾向がある。反応生成物(A’)と飽和もしくは不飽和基含有多塩基酸無水物(d)との反応温度は、60〜120℃が好ましく、80〜100℃が更に好ましい。
【0022】
本発明に用いられる光重合開始剤(B)としてはプリント配線板製造用の汎用露光機より紫外線を照射した際にラジカルを発生するタイプのものを用いることができる。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジ誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上の複数を組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記、光重合開始剤(B)の配合量は、感光性樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、更には1〜10重量%が好ましい。配合量が0.5重量部未満では紫外線によるラジカル発生量が不足するため、感光性樹脂組成物の光硬化性が不十分となり、露光部の耐現像液性に問題が生じる。一方、配合量が20重量部を超えると、感光性樹脂層の低部に光が十分透過せず、アンダーカット等の不具合が発生する。
【0024】
本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)は感光性樹脂組成物に絶縁性、耐熱性を付与する目的で使用される。その種類に特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等の汎用公知のエポキシ樹脂を用いることができる。このようなエポキシ樹脂の例としてビスフェノールA型エポキシ樹脂としてはJER株式会社製のエピコート815、828、834、1001、1009、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては東都化成株式会社製のYDPFシリーズ、新日鉄化学株式会社製のYSLV−80XY、ノボラック型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業株式会社製のDEN−438、住友化学株式会社製のESCN−195、旭電化工業株式会社製のKRM−2650等を挙げることができる。
【0025】
その他、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(JER株式会社製:YX4000)、ジシクロ型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:エピクロンHP7200)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:エピクロン430、住友化学工業株式会社製:ELM100、120、434)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセ工業株式会社製:デナコールEX−721)、ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本化学工業株式会社製:エピクロンHP−4032、日本化薬株式会社製:NC−7000)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製:EBPS−300、大日本インキ化学工業株式会社製:EXA−4004)等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、その配合量は感光性樹脂組成物の固形分100重量部に対して1〜70重量部が好ましく、更には20〜50重量部が好ましい。1重量部未満では、レジスト塗膜の耐熱性、耐薬品性、絶縁信頼性が低下する傾向にあり、70重量部を超えると感光性樹脂組成物の光硬化性が低下し、耐現像液性が低下する上に耐折性が低下する傾向にある。
【0026】
本発明に用いられるエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)は有機ジイソシアネートあるいはジアミンから縮合反応により合成できる酸末端ポリアミドイミド樹脂(e)にエポキシ樹脂(f)を反応させ製造する。酸末端ポリアミドイミド(e)の合成に際しては、必要に応じてジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物等の多価カルボン酸成分を用いることもできる。
【0027】
酸末端ポリアミドイミド樹脂(e)の製造に使用される多価カルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ジフェニルスルホンテトラカルボキシリックジアンハイドライド等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂(e)の製造に使用される有機ジイソシアネートとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、P−フェニレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロへキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。これらのうちでは耐熱性の点から芳香族ジイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは単独で使用してもよいが、結晶性が高くなるので2種類以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0029】
上記ジイソシアネートの代わりにジアミンも使用できる。ジアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルファイド、ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。有機溶剤に対する可溶性を向上させるために2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、3,8−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン等のジアミンを用いることが好ましい。これらジアミン及びジイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。ただしジアミンとジイソシアネートは同時に用いると反応し、耐熱性の劣る尿素結合ができるので好ましくない。
【0030】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂(e)としては、ポリアルキレンオキサイドユニット及びポリカーボネートユニットから選ばれる少なくとも1種類のポリマーユニットを分子構造中に有するカルボキシル基末端ポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。ポリアミドイミド樹脂の分子構造中に導入されるポリアルキレンオキサイドユニット、ポリカーボネートユニットは、通常ポリアルキレングリコール又は、ポリカーボネートジオールの両末端カルボン酸物のようなジカルボン酸を多価カルボン酸成分として用い、ジイソシアネートと反応させポリアミドイミド骨格に導入する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールAあるいは水添ビスフェノールAとこれらポリアルキレングリコールとの反応物が挙げられ、これらアルキレンオキサイドユニットは一分子中に2種以上存在していてもよい。ポリカーボネートジオールとしては直鎖状脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられ、プラクセルCDシリーズ(ダイセル化学工業社製)ニッポラン980、981(日本ポリウレタン工業社製)などが挙げられる。ポリカーボネートジオールの化学構造については、例えば次式(2)で表されるものが挙げられる。
【0031】
【化3】


(式中、Rは2価アルコール残基を表し、nは1〜10の整数である。)
【0032】
特に、2価アルコール残基が、炭素数1〜100のもの、例えば、1,5−ペンタンジオール残基、メチルペンタンジオール残基、シクロヘキサノンジメタノール残基、1,6−ヘキサンジオール残基、1,9−ノナンジオール残基、2−メチル−1,8−オクタンジオール残基を有し、常温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。
【0033】
ポリアルキレングリコール、ポリカーボネートジオールを両末端カルボン酸にするには、前記した多価カルボン酸成分と同様の多価カルボン酸、好ましくはジカルボン酸をポリアルキレングリコール、ポリカーボネートジオールに反応させればよい。ポリアルキレンオキサイドユニット又はポリカーボネートユニットの含有量の合計は、接着性の点からポリアミドイミド樹脂(e)中に10重量%以上、耐熱性の点から70重量%以下の使用とすることが好ましい。
【0034】
カルボキシル基末端ポリアミドイミド樹脂(e)の製造において、多価カルボン酸成分はジイソシアネート成分とジアミン成分の合計に対してモル比で1以上、好ましくは1〜3、より好ましくは1.1〜1.3となるように配合し、反応させる。上記の反応はγ−ブチロラクトン等のラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、テトラメチレンスルホン等のスルホン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類などの溶媒を使用し50℃〜250℃で反応させる。反応収率、溶解性及び後工程での揮散性を考慮するとγ−ブチロラクトンを溶媒の主成分にするのがよい。
【0035】
酸末端ポリアミドイミド樹脂(e)と反応させるエポキシ樹脂(f)としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びその変性物、ビキシレニルジグリシジルエーテル、YDC1312(東都化成社製商品名)、テクモアVG3101(三井石油化学社製商品名)、TMH574(住友化学社製商品名)、エピコート1031S(油化シェル社製商品名)等の芳香族系エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物などが挙げられる。これらのうちでは、反応制御の点から2官能エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独又は2種類以上組み合わせて使用される。またこれらのエポキシ樹脂はカルボキシル基末端のポリアミドイミド樹脂とエポキシ基/カルボキシル基のモル比を1より大きくして反応させる。エポキシ基/カルボキシル基のモル比が1以下では末端エポキシの樹脂が得られない。このようにして得られる変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は500〜40,000であることが好ましい。500より小さくては分子量が低く接着性が低下し、40,000を超えると分子量が高すぎるために現像性が低下する。
【0036】
本発明において用いられるエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)中には水酸基が残っているが、感光特性等を考慮し、さらに、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、あるいはトリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートと1分子中に水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート類例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの等モル反応物を反応させてウレタン結合を介して不飽和結合を導入しても良い。
【0037】
エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)の配合量は、感光性樹脂組成物の固形分100重量部に対して5〜30重量部が好ましく、更には10〜25重量部が好ましい。配合量が5重量部未満では感光性樹脂組成物に十分な耐折性を付与することができない。一方、配合量が25重量部を超えると、現像性に問題が生じる。
【0038】
感光性樹脂組成物の現像性を向上させることを目的として上記、エポキシ基含有ポリアミドイミドの一部を、エポキシ基含有ポリアミドイミド(D)のエポキシ基に不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応せしめて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である、酸変性ポリアミドイミド(D’)で置きかえることもできる。上記、酸変性ポリアミドイミド(D’)の付加反応に用いられる不飽和モノカルボン酸成分(c)および飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)としては、エポキシ樹脂(a)から酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)を得る際に使用可能な各種の化合物を用いることができる。その配合量は感光性樹脂組成物の固形分100重量部に対して0〜60重量部が好ましく、更には0〜35重量部であることが好ましい。配合量が60重量部を超えると現像性に問題が生じる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物において、必要に応じて光感度、耐現像液性を向上させる目的で、光重合性モノマーを用いることができる。光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、あるいはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのポリエチレングリコールあるいはプロピレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のモノあるいは多官能(メタ)アクリレート類、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、ジアリルフタレート等の光重合性モノマーが使用できる。これらは単独もしくは2種以上の複数を組み合わせて使用できる。上記の光重合性モノマーの配合量は、感光性樹脂組成物100重量部に対して0.5〜30重量部が好ましい。配合量が0.5重量部未満では、露光感度が低いため、露光工程に多くの時間を費やすことが必要となり、基板の生産性が低下する傾向がある。一方、配合量が30重量部を超えると、可とう性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物において、必要に応じて塗膜の機械強度を向上させる目的で無機フィラーを用いることができる。無機フィラーとしては、例えば硫酸バリウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、ベントナイト、カオリン珪酸ジルコニウム等が使用できる。これらは単独もしくは2種以上の複数を組み合わせて使用できる。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ビスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知の着色剤、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、シランカップリング剤、密着性付与剤等、公知慣用の各種添加剤を用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−1)の製造例
(A−1)製造例
攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに一般式(1)で示されるエポキシ樹脂であるNER−7403(エポキシ等量291g/eq)(東都化成株式会社製:商品名)200重量部、ポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸CTBN1300×13(平均分子量:3000(カルボン酸1等量あたりの平均分子量:1500))、25重量部ブチルジグリコールアセテート110重量部を仕込み、窒素雰囲気下、100℃の条件で加熱攪拌して、混合物を溶解した。次に溶液を70℃まで冷却し、酸素雰囲気下に切り替えた後、アクリル酸45重量部、メチルハイドロキノン0.2重量部、トリフェニルホスフィン1.2重量部、ブチルジグリコールアセテート36重量部を仕込み、100℃に加熱し、酸価が2(KOHmg/g)以下になるまで反応させた。次に得られた溶液を70℃まで冷却し、無水コハク酸21重量部、テトラヒドロ無水フタル酸33重量部、ブチルジグリコールアセテート30重量部を仕込み、80℃で所定時間反応させ、酸価51(KOHmg/g)、固形分65重量%のポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸(CTBN)付加型酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−1)を得た。
【0043】
酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−2)の製造例
(A−2)製造例
A−1製造例中のポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸(CTBN1300×13)をポリブタジエンジカルボン酸(C−1000)(平均分子量:2000(カルボン酸1等量あたりの平均分子量:1000)で置き換えた以外は同一の方法で製造した。得られたポリブタエンジカルボン酸(C−1000)付加型酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−2)の酸価は53(KOHmg/g)、固形分は64重量%であった。
【0044】
エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D−1)の製造例
(D−1)製造例
攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに両末端をアミン変性したポリエチレングリコールであるPEG#1000ジアミン(平均分子量:1146)(日本油脂株式会社:商品名)173重量部、トリメリット酸57重量部を仕込み、窒素雰囲気下120℃の条件で加熱攪拌して、混合物を溶解した。次にトルエンを適量添加してフラスコ中の水分を除去した。水分を除去した後、窒素雰囲気下200℃の条件で脱トルエン反応を行ない、ポリイミド(i)を得た。次に溶液を室温(25℃)まで冷却し、(i)に4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)0.45重量部、トリレンジイソシアネート(TDI)(日本ポリウレタン工業株式会社製:商品名)1.26重量部、γ−ブチロラクトン28重量部を仕込み、200℃条件下で4時間保温し、ポリアミドイミドを得た。次に溶液を120℃まで冷却し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF−2001(エポキシ当量471g/eq)(東都化成株式会社製:商品名)6.4重量部、γ―ブチロラクトン9重量部を仕込み、6時間保温した。得られたエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂の酸価は1.1(KOHmg/g)、固形分は45重量%であった。
【0045】
エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D−2)の製造例
(D−2製造例)
攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに両末端をアミン変性したポリエチレングリコールであるPEG#1000ジアミン(平均分子量:1146)(日本油脂株式会社:商品名)173重量部、トリメリット酸57重量部を仕込み、窒素雰囲気下120℃の条件で加熱攪拌して、混合物を溶解した。次にトルエンを適量添加してフラスコ中の水分を除去した。水分を除去した後、窒素雰囲気下200℃の条件で脱トルエン反応を行ない、ポリイミド(i)を得た。
【0046】
攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコにポリカーボネートジオールであるプラクセルCD220(平均分子量:2000)(ダイセル化学工業株式会社:商品名)149重量部、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)7.5重量部、トリレンジイソシアネート(TDI)(日本ポリウレタン工業株式会社製:商品名)20.9重量部、γ−ブチロラクトン118重量部を仕込み、窒素雰囲気下150℃条件下で4時間保温し、ポリカーボネート(ii)を得た。
【0047】
次に攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコにポリイミド(i)52重量部、炭素数20の直鎖脂肪酸であるL−20、22重量部、γ−ブチロラクトン176重量部を仕込み、窒素雰囲気下100℃の条件で加熱攪拌して、混合物を溶解した。次に得られた溶液を70℃まで冷却し、ポリカーボネート(ii)276重量部、γ―ブチロラクトン176重量部を仕込み、窒素雰囲気下200℃条件下で3時間保温し、ポリアミドイミドを得た。
【0048】
次に溶液を120℃まで冷却し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF−2001(エポキシ当量471g/eq)(東都化成株式会社製:商品名)61重量部を仕込み、6時間保温した。得られたエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂の酸価は0.3(KOHmg/g)、固形分は46重量%であった。
【0049】
酸変性ポリアミドイミド樹脂(D’−1)の製造例
(D’−1製造例)
(D−1)製造例に基づいて作製したエポキシ基含有ポリアミドイミド(D−1)371重量部、メタクリル酸3.2重量部、メチルハイドロキノン0.02重量部、トリフェニルホスフィン0.2重量部を攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに仕込み、酸素雰囲気下120℃の条件下で4時間保温し、酸価が3〜5(KOHmg/g)の範囲になるまで反応させた。次に得られた溶液を70℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸43重量部を仕込み、80℃で所定時間反応させ、酸価47(KOHmg/g)、固形分46重量%の酸変性ポリアミドイミド樹脂(D’−1)を得た。
【0050】
酸変性ポリアミドイミド樹脂(D’−2)の製造例
(D’−2製造例)
(D−2)製造例に基づいて作製したエポキシ基含有ポリアミドイミド(D−2)382重量部、アクリル酸4.3重量部、メチルハイドロキノン0.05重量部、トリフェニルホスフィン0.3重量部を攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに仕込み、酸素雰囲気下120℃の条件下で4時間保温し、酸価が3〜5(KOHmg/g)の範囲になるまで反応させた。次に得られた溶液を70℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸39重量部を仕込み、80℃で所定時間反応させ、酸価41(KOHmg/g)、固形分43重量%の酸変性ポリアミドイミド樹脂(D’−2)を得た。
【0051】
(実施例1〜4)
以上のようにして得られた酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)、酸変性ポリアミドイミド樹脂(D’)を用い、下記表1、2に示す配合(組成)に従って、主剤1〜4(4種類)および硬化剤1〜2(2種類)の樹脂組成物を三本ロールミルを用いてそれぞれ別々に混練、作製した。得られた主剤と硬化剤は下記表3に示す実施例1〜4の組みあわせで、重量比70:30の比率で混合することにより、感光性樹脂組成物(レジストインク組成物)とした。
【0052】
(比較例1〜3)
以下に示す方法により製造したクレゾールノボラック型エポキシアクリレート(A−3)を使用した場合、ならびにエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D−1)の配合量を調整した場合について、実施例との比較を行なった。下記表1、2に示す配合(組成)に従って、主剤5、6(2種類)および硬化剤3、4(2種類)の樹脂組成物を三本ロールミルを用いてそれぞれ別々に混練、作製した。得られた主剤と硬化剤は下記表3に示す比較例1〜3の組みあわせで、重量比70:30の比率で混合することにより、感光性樹脂組成物(レジストインク組成物)とした。
【0053】
酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−3)の製造例
(A−3)製造例
攪拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるDEN−438(エポキシ等量200g/eq)(大日本インキ株式会社製:商品名)200重量部、ポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸CTBN1300×13(平均分子量:3000(カルボン酸1等量あたりの平均分子量:1500))、23重量部ブチルジグリコールアセテート148重量部を仕込み、窒素雰囲気下、100℃の条件で加熱攪拌して、混合物を溶解した。次に溶液を70℃まで冷却し、酸素雰囲気下に切り替えた後、アクリル酸52重量部、メチルハイドロキノン0.15重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を仕込み、100℃に加熱し、酸価が2(KOHmg/g)以下になるまで反応させた。次に得られた溶液を70℃まで冷却し、無水コハク酸15重量部、テトラヒドロ無水フタル酸24重量部、ブチルジグリコールアセテート29重量部を仕込み、80℃で所定時間反応させ、酸価54(KOHmg/g)、固形分65重量%のポリブタジエンアクリロニトリルジカルボン酸(CTBN)付加型酸変性ビニルエポキシ樹脂(A−3)を得た。
【0054】
【表1】


*1:チバガイギー株式会社製、*2:日本化薬株式会社製、*3:山陽色素株式会社製
【0055】
【表2】


*4:新日鉄化学株式会社製、*5:日本化薬株式会社製
【0056】
【表3】

【0057】
実施例1〜4、比較例1〜3の感光性樹脂組成物(レジストインク組成物)の特性は以下の項目で評価した。
(感光特性)
以下の方法で塗膜外観試験評価用のサンプルを作製して評価した。
1)厚さ25μmのポリイミドフィルム基板(エスパネックス:新日鐵化学株式会社製:商品名)上に感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が10〜15μmとなるように塗布、乾燥(80℃/15分)する。
2)レジストパターンを形成する箇所にΦ100μmの丸型の遮蔽部を設けたフォトマスクを介して、500〜1000mJ/cmの露光量で紫外線を照射する。
3)次に、30±5℃に保たれた所定のアルカリ現像液で1〜3分現像することにより、未露光部分を溶解除去してレジストパターン(Φ100μmビア)を形成する。
4)150℃で60分間熱硬化処理を行う。
【0058】
(耐折性)
L/S=50/50μmの導体回路を形成した厚さ25μmのポリイミドフィルム基板(エスパネックス:新日鐵化学株式会社製:商品名)上に感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が10〜15μmとなるように塗布、乾燥(80℃/15分)する。以下、感光特性と同様の露光、現像、熱硬化処理を実施してサンプルを作製した。耐折性の評価はJIS P 8115に準拠した135°対向折り曲げにより行ない、回路が断線するまでの曲げ回数を評価した。
【0059】
(反り特性)
厚さ25μm、大きさ50mm×50mmのポリイミドフィルム基板(エスパネックス:新日鐵化学株式会社製:商品名)上に感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が10〜15μmとなるように塗布、乾燥(80℃/15分)する。以下、感光特性と同様の露光、現像、熱硬化処理を実施してサンプルを作製した。反りの評価はn=5で行ない、その値はn=5の平均値で表した。
【0060】
(耐PCT性)
そり特性評価サンプルと同一のサンプルを用い、評価した。評価は121℃/100%の条件下で96時放置した後の、レジスト塗膜の外観を評価することにより行なった。塗膜に膨れ、剥離等の異常が認められないものを○、膨れ、剥離等の異常が認められるものを×とした。
【0061】
(耐電食性)
L/S=50/50μmのクシ型導体回路を形成した、厚さ25μmのポリイミドフィルム基板(エスパネックス:新日鐵化学株式会社製:商品名)上に感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が10〜15μmとなるように塗布、乾燥(80℃/15分)する。以下、感光特性と同様の露光、現像、熱硬化処理を実施してサンプルを作製した。評価は85℃/85%の条件下で100Vの電圧を1000時間印加し、回路間の絶縁抵抗値の変化を調べた。1000時間に達するまでに回路間の絶縁抵抗値が8乗オーダー以下となった場合は絶縁不良(耐電食性不十分:×)と判断した。
【0062】
(引張り弾性率、伸び率)
厚さ50μmのPETフィルム上に感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が40〜60μmとなるように塗布、乾燥(80℃/15分)する。以下、感光特性と同様の露光、現像、熱硬化処理を実施し、PETフィルムを剥離してフィルム硬化物(引張り伸び、弾性率評価サンプル)を得た。引張り伸び、弾性率はn=5で評価し、その値はn=5の平均値で表した。
以上の評価結果のまとめを表4に示した。
【0063】
【表4】

【0064】
従来の感光性ソルダレジスト用の感光性樹脂塑性物ではCOF実装用フレキシブル配線板で要求される、耐折性、そり特性を満足することが困難であったが、本発明によれば一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、光開始剤(B)、エポキシ樹脂(C)、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)を用いることで、表4に示したように、耐電食性、耐PCT性等の信頼性を損なうことなく耐折性、そり特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)、光開始剤(B)、エポキシ樹脂(C)、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)を成分とする感光性樹脂組成物。
【化1】


(Rは、水素原子あるいは一般式(1a)示される置換基である)
【化2】

【請求項2】
反応性エラストマ成分(b)が、分子両末端にカルボキシル基を有し、ブタジエン骨格を含有する平均分子量が500〜5000の低分子量ポリマー成分であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂(D)が、ポリアルキレンオキサイドユニットおよびポリカーボネートユニットから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットを分子構造中に有するカルボキシル基末端ポリアミドイミド樹脂(e)とエポキシ樹脂(f)とを、エポキシ基/カルボキシル基のモル比を1より大きくして反応させて得られるエポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ基含有ポリアミドイミド(D)が酸変性ビニルエポキシ樹脂(A)の固形分100重量部に対して、20〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
加熱硬化した際の、常温(25℃)での引張り弾性率が1500MPa以下、引張り伸び率が10〜30%であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の感光性樹脂組成物をフィルム基板上に積層し、紫外線を画像上に照射して露光部分を光硬化させ、未露光部分を現像により選択除去することを特徴とするレジストパターンの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレジストパターンの製造方法により、永久マスクを形成することを特徴とするフレキシブル配線板の製造方法。


【公開番号】特開2006−349814(P2006−349814A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173552(P2005−173552)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】