説明

感光性樹脂組成物、及びそれを用いた永久マスクレジストとその製造方法

【課題】永久マスクレジスト(ソルダーレジスト)に要求される諸特性を満足しつつ、アルカリ現像性、難燃性に優れ、且つ、可とう性(耐折性)と部品実装時の反り、低反発性及び、タック性、作業性に優れた感光性樹脂組成物、及びそれを用いた永久マスクレジストとその製造方法を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、光重合開始剤、リン含有化合物、及び熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記重合性化合物が、下記一般式(I)(式中、Rはオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート基)で表される化合物を感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、及びそれを用いた永久マスクレジストとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造業界では従来、プリント配線板上にソルダーレジスト(永久マスクレジスト)を形成することが行われている。このソルダーレジストは、実装部品をプリント配線板に接合するためのはんだ付け工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している他、実装部品接合後のプリント配線板の使用時においては導体層の腐食を防止したり導体層間の電気絶縁性を保持したりする永久マスクとしての役割も有している。
【0003】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、プリント配線板の導体層上に熱硬化性樹脂をスクリーン印刷する方法が知られているが、このような方法ではレジストパターンの高解像度化に限界があるため、近年のプリント配線板の高密度化に対応させることが困難になってきている。
【0004】
そこで、レジストパターンの高解像度化を達成するために、フォトレジスト法が盛んに用いられるようになってきている。このフォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光層を形成し、この感光層を所定パターンの露光により硬化させ、未露光部分を現像により除去して所定パターンの硬化膜を形成するものである。
【0005】
上記フォトレジスト法に使用される感光性樹脂組成物は、ドライフィルムレジストのようなフィルムタイプと、ソルダーレジストインキのような液状タイプに大別されるが、フィルムタイプでは、熱圧着の際に気泡を生じやすい等の問題があるため、ソルダーレジストインキのような液状タイプが主流となっている。また、かかる方法に使用される感光性樹脂組成物は、作業環境保全、地球環境保全の点から、炭酸ナトリウム水溶液等の希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが主流になってきている。
【0006】
上記目的に使用される感光性樹脂組成物には、感度、現像性、解像性、耐はんだ性、耐HAST(Highly Accelerated Stress Test;超加速寿命試験)性等の特性が要求される。このような感光性樹脂組成物としては、例えば、下記特許文献記載の感光性熱硬化性樹脂組成物などが知られている(特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−109541号公報
【特許文献2】国際公開第06/109890号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、各種工業製品の火災に対する難燃化の規制が厳しくなっており、プリント配線板等に使用される材料も例外ではない。難燃化する方法としては、ハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、ホウ素系化合物、無機充填剤等を添加する方法が一般的に知られている。
【0009】
しかし、最近では、環境問題、人体に対する安全性問題への関心の高まりと共に、非公害性、低有毒性、安全性へと重点が移り、単に燃えにくいだけでなく、有害ガス及び発煙性物質の低減が要望されつつある。これを受けて、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を使用しない難燃基板が既に開発・実用化され始めている。
【0010】
また、近年の電子機器の小型化薄型化に伴い難燃技術とともに部品実装時の反り、反発力の低減の要求が多くなっている。
【0011】
また回路の微細化に伴い、熱プレス工程でレジスト開口部にレジスト成分が染み出す不具合現象(ブリード)が問題となるケースが増加している。しかしながら、現在市場に流通する難燃剤は、多量に添加すると感光性樹脂組成物の硬化膜の物性を低下させ、反発力の増加やクラックの発生、熱プレス工程でのブリードの増加、絶縁信頼性の低下を招く。このため、これらの特性低下がより少ない難燃剤を選択するとともに、難燃剤以外の樹脂組成においても、より少量の難燃剤添加によって難燃性を確保可能な設計が必要とされている。
【0012】
さらに、フォトレジスト法において基板上に形成された感光性樹脂組成物層の表面は、作業性の観点からタック性(張り付き性)が小さいものが望ましいが、従来の感光性樹脂組成物はタック性を充分に満足し得るものではなかった。
【0013】
そこで、上記事情に鑑み本発明は、永久マスクレジスト(ソルダーレジスト)に要求される諸特性を満足しつつ、アルカリ現像性、難燃性に優れ、且つ、可とう性(耐折性)と部品実装時の反り、低反発性及び、タック性、作業性に優れた感光性樹脂組成物、及びそれを用いた永久マスクレジストとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物と、特定の構造を有するイソシアヌル環を含有するモノマーを用いることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び
(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(B)成分が、下記一般式(I)で表される化合物を感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
【化1】

(一般式(I)中、Rは2価の有機基を示し、Rは下記一般式(II)で表される基を示す)
【0017】
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xはアルキレン基を示し、nは10〜25の整数を示す)
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、現像前の未露光部の表面ベタつきが少なく、希アルカリ水溶液による現像が可能で、該感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜の難燃性、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐HAST性を高い水準で満足させることができ、更に部品実装時の反り、反発を抑制でき、作業性が向上する。よって、本発明の感光性樹脂組成物によれば、充分な難燃性を有する硬化膜を高解像度で効率よく形成することが可能となる。
【0019】
また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を含まずに硬化膜の難燃性を充分高いものとすることができることから、例えば、プリント配線板の環境負荷や毒性を低減することが可能となる。特に、本発明の感光性樹脂組成物を非ハロゲン系或いは非アンチモン系の難燃基板に適用する場合、上記の効果が更に有効に奏される。
【0020】
また、本発明は、別の態様として、
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び
(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(B)成分が、下記一般式(III)で表される化合物及び下記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物を、感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物に関する。
【0021】
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xはアルキレン基を示し、nは10〜25の整数を示す)
【0022】
【化4】

(一般式(IV)中、Rは2価の有機基を示す)
【0023】
また、本発明は、上記(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物は、(a)ジグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、(b)ジイソシアネート化合物と、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物との反応物である感光性樹脂組成物に関する。
【0024】
また本発明は、上記(D)リン含有化合物が、下記一般式(V)で示されるホスフィン酸塩を含有する、感光性樹脂組成物に関する。これにより感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜が充分な難燃性を有することができる。
【0025】
【化5】

【0026】
(一般式(V)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。)
【0027】
さらに、本発明は、上記の感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける工程と、前記感光層に活性光線をパターン照射する工程と、前記感光層を現像して永久マスクレジストを形成させる工程と、を備える、永久マスクレジストの製造方法に関する。そして、上記の感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久マスクレジストに関する。
該感光性樹脂組成物の硬化膜をポリイミドなどのフレキシブル基材上に形成した基板は、難燃性を有することを特徴とし、更に実装時の低反り、低反発性を特徴とする。該感光性樹脂組成物は、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を含まずに硬化膜の難燃性を充分高いものとすることができることから、例えば、プリント配線板の環境負荷や毒性を低減することが可能となる。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、充分な難燃性を有する硬化膜を効率よく高解像度で形成でき、充分な可とう性を有することから、プリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板の永久マスク形成に用いられるものであることが好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物を感光性エレメントや永久マスクレジストとした場合、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光層を備えることにより、充分な難燃性を有する硬化膜を高解像度で効率よく形成することが可能となり、更に部品実装時の反り、反発を低減することが可能となる。
【0030】
また、本発明の永久マスクレジストや感光性エレメントによれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を用いることなく充分な難燃性を有することから、低環境負荷、低毒性、高解像度のプリント配線板の効率的な生産が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、特に現像までの工程において作業性に優れ、アルカリ現像性、難燃性、及び可とう性に優れた硬化膜を高解像度で効率よく形成でき、部品実装時の反り(低反り性)、反発性(低反発性)及び、タック性(低タック性)、作業性に優れた感光性樹脂組成物及び永久マスクレジスト提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0033】
[感光性樹脂組成物]
先ず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物と、
(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物と、
(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物、及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(B)成分が、上記一般式(I)で表される化合物を感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物である。
【0034】
以下、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
<(A)成分:エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物>
(A)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物である。
【0035】
(A)成分としては、例えば、(a)ジグリシジル化合物を代表とするポリグリシジル化合物及び(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、(b)ジイソシアネート化合物と、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させて得られるポリウレタン化合物を好適に用いることができる。
【0036】
上記ポリウレタン化合物は、(a)エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、(b)ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)及び、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる。まず、これらの原料成分について説明する。
【0037】
原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0038】
原料ジイソシアネートとしては、イソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。
【0039】
原料ジオールは、分子内に、水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基を有している化合物である。水酸基としては、イソシアネートとの反応性の高いアルコール性水酸基であることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が例示できる。
【0040】
また、原料ジオールとして上記以外のジオール化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどをさらに組み合わせて適用することも可能である。上記以外のジオール化合物を組み合わせることで、(A)成分の酸価や二重結合当量を容易に調節することが可能である。
【0041】
次に、上述した原料成分を用いてポリウレタン化合物を製造する工程の例について説明する。
【0042】
すなわち、ポリウレタン化合物の製造工程では、まず、原料エポキシアクリレート及び原料ジオールを、原料ジイソシアネートと反応させる。かかる反応においては、主に、原料アクリレートにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間、及び、原料ジオールにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、原料エポキシアクリレートに由来する構造単位と、原料ジオールに由来する構造単位とが、原料ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に又はブロック的に重合されたような中間体が生じる。
【0043】
次に、このような中間体と原料エポキシとを反応させて、ポリウレタン化合物を得る。この反応では、主に中間体におけるカルボキシル基を有するジオール化合物に由来するカルボキシル基と、原料エポキシの有するエポキシ基との間でいわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られるポリウレタン化合物は、例えば、上述した中間体から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートや原料エポキシに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備えるものとなる。
【0044】
上述したポリウレタン化合物の製造工程では、中間体を得る工程において、原料エポキシアクリレート、原料ジオール及び原料ジイソシアネート以外に、これらとは異なるジオール化合物を更に添加してもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を所望の範囲に調整できる。また、上述した各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0045】
上述のポリウレタン化合物としては、例えば、下記一般式(VI)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0046】
【化6】

【0047】
一般式(VI)中、R11は原料エポキシアクリレートの残基を示し、R12は原料イソシアネートの残基を示し、R13は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。具体的には、R11としては、例えば、ビス(4−オキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビスフェノールA型及びビスフェノールF型骨格、ノボラック骨格、フルオレン骨格が挙げられ、R12としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、テトラメチルキシリレン、ジフェニルメチレン、ヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、イソホロンが挙げられる。また、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、アミル基等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(VI)のような構造を有するポリウレタン化合物を感光性樹脂組成物に含有させることによって、アルカリ現像性、難燃性、可とう性(耐折曲げ性・低反り・低反発力)をより向上することができる。
【0049】
(A)成分のエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物の二重結合当量は、400〜2000g/molであることが好ましく、450〜1500g/molであることがより好ましく、450〜1200g/molであることがさらに好ましい。(A)成分の二重結合当量が400g/mol以上であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られ、2000g/mol以下であることで、絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られる。
【0050】
(A)成分の二重結合当量は、下記方法で測定したヨウ素価の値により求めることができる。
【0051】
<ヨウ素価の測定方法>
測定試料であるポリウレタン化合物を0.25〜0.35gの範囲で精秤してフラスコに入れ、30mLのクロロホルムを添加して完全に溶解する。該溶液に、Wijs試薬(三塩化ヨウ素7.9g及びヨウ素8.2gをそれぞれ200〜300mL氷酢酸に溶解後、両液を混合して1Lとする)をホールピペットで正確に20mL加え、次いで2.5質量%酢酸第二水銀氷酢酸溶液10mLを添加後、20分間暗所に放置して反応を完結させる。上記溶液に新しく調製した20質量%KI溶液を5mL添加し、1質量%澱粉溶液を指示薬として用い、0.1N−Na標準液で滴定する。同時に空試験も行って、以下の式によりヨウ素価Yを計算し、ヨウ素価より二重結合当量を算出できる。
【0052】
ヨウ素価Y=(A−B)×f×1.27/S
二重結合当量(g/mol)=100×254/Y
A:空試験に要した0.1N−Na標準液の量(mL)
B:本試験に要した0.1N−Na標準液の量(mL)
f:0.1N−Na標準液の力価
S:試料の質量(g)
【0053】
(A)成分の酸価は、25〜100mgKOH/gであることが好ましく、45〜90mgKOH/gであることがより好ましく、55〜80mgKOH/gであることがさらに好ましい。(A)成分の酸価が25mgKOH/g以上であることで、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られ易くなり、酸価が100mgKOH/g以下であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られ易くなる。
【0054】
(A)成分の酸価は、以下の方法により測定することができる。まず、(A)成分としての樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より下記により酸価を算出する(式中、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは(A)成分としての樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは(A)成分としての樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。)。
酸価(mgKOH/g)=10×Vf×56.1/(Wp×I)
【0055】
(A)成分の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物の成膜性、硬化膜の耐クラック性及び耐HAST性を向上する観点から、8000〜16000であることが好ましく、8500〜15500であることがより好ましく、9000〜15000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が8000より大きいことで、印刷・乾燥後の感光性樹脂組成物のベタつきが少なくなり、装置への樹脂組成物の付着による汚染や、異物の不着による感光層表面の汚染を発生しづらくすることができる。また、平均分子量が16000より小さいことで、樹脂組成物のスクリーン印刷時の版離れが良くなるとともに、希アルカリ水溶液による現像を可能にすることができる。
【0056】
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値により求めることができる。なお、GPCにおける測定の条件は以下のとおりである。
【0057】
カラム:Gelpack GL−R440+GL−R450+GL−R400M
流量:2.05mL/min
濃度:120mg/5mL
注入量:200μL
溶離液:THF
【0058】
(A)成分としては、市販のものを利用することができ、例えば、UXE-3044(商品名、日本化薬株式会社製)等が購入可能である。
【0059】
感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の難燃性及び可とう性を良好に発現する観点から、感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、5〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。(A)成分の含有量が5質量%未満では、難燃性が低下する傾向があり、90質量%を超えると、希アルカリ水溶液による現像性が低下する傾向にある。
【0060】
<(B)成分:エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分として、上記一般式(I)で表される化合物、又は、上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物とのウレタン化反応の反応生成物を必須成分として含有する。
【0061】
上記一般式(I)及び(IV)中、Rは2価の有機基を示す。
で表される2価の有機基としては、炭素原子を含みイソシアヌレート環とアミド基(又はイソシアナト基)とを連結可能であれば特に制限はない。例えば、炭素数1〜10のアルキレン基及び炭素数6〜10のアリーレン基を挙げることができる。なお、上記炭素数1〜10のアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また一般式(I)及び(IV)における3つのRは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0062】
上記炭素数1〜10のアルキレン基として具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチル−ヘキシレン基、ノニレン基及びデシレン基が挙げられる。炭素数6〜10のアリーレン基としてはフェニレン基等が挙げられる。
【0063】
本発明においてRは、可とう性に優れ、反りを抑える観点から、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3〜8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(I)における3つのRは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0065】
上記一般式(II)及び(III)中、Xはアルキレン基を示す。アルキレン基の炭素数としては特に制限はないが、可とう性に優れ、反りを抑え、反発力を低減する観点から、炭素数2〜7のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましい。
【0066】
Xにおけるアルキレン基として具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基等が挙げられる。また上記アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、一般式(II)における10個以上、25個以下のXは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0067】
さらに、nは10〜25の整数を表わすが、反発力を低減し、タックを抑える観点から、15〜25であることが好ましい。
【0068】
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば、下記一般式(III)で表される化合物と、下記一般式(IV)で表される化合物とのウレタン化反応によって製造することができる。該反応条件としては、通常のウレタン結合を生成する反応条件であれば特に制限はなく、また適宜触媒等を用いて反応を行なってもよい。
【0069】
【化7】

【0070】
、X及びnは、上記一般式(II)中のR、X及びnとそれぞれ同義であり、Rは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0071】
一般式(I)で表される化合物は、一般式(IV)で表される化合物の3つのイソシアナト基(イソシアネート基)に、3分子の一般式(III)で表される化合物がそれぞれ付加反応することで生成する化合物である。
【0072】
上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物には、一般式(I)で表される化合物に加えて、1分子の一般式(IV)で表される化合物に対して、1分子又は2分子の一般式(III)で表される化合物が付加反応して生成する化合物を含んでいてもよい。また、それ以外の反応生成物を含んでいても良い。
【0073】
上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物に含まれる一般式(I)で表される化合物の含有率は特に制限されない。
【0074】
上記感光性樹脂組成物には、(B)成分として、上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物として、Rが炭素数1〜10のアルキレン基で、Xが炭素数2〜4のアルキレン基で、nが10〜25である化合物を3質量%〜29質量%含むことが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物として、RのXが炭素数2〜4のアルキレン基であって、nが15〜25である化合物を3質量%〜20質量%含むことがより好ましい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記一般式(I)で表される化合物又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物の含有量は、感光性樹脂組成物中において3〜29質量%であるが、硬化膜の可とう性と感光層のべたつき等の観点から、感光性樹脂組成物中において3〜25質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分として、上記一般式(I)で表され、Rが炭素数1〜10のアルキレン基であって、Xが炭素数2〜3のアルキレン基であって、nが10〜25である化合物を3〜29質量%含むことが好ましく、
上記一般式(I)で表され、RのXが炭素数2〜3のアルキレン基であって、nが15〜25である化合物を3〜25質量%含むことがより好ましい。
【0077】
また、本発明における(B)成分は、必須成分である上記の一般式(I)で表される化合物以外のエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」ということがある)を含んでいてもよい。
【0078】
その他の重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のフタル酸エステル、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0079】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物として、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
これらのなかでも、耐薬品性の観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、および、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0081】
尚、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0082】
本発明においてその他の重合性化合物の含有率としては特に制限はないが、可とう性と感光層のべたつき等の観点から、上記(B)成分の総量100質量%中において5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが好ましい。(B)成分の含有量が5質量%より少ない場合は可とう性、反り、反発性が劣る傾向があり、40質量%より多い場合は難燃性が低下する傾向がある。
【0083】
<(C)成分>
本実施形態の(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N´−テトラアルキル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9´−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
本実施形態に係る(C)成分は、感度及び解像度を良好にする観点から、芳香族ケトンを含有することが好ましく、中でもα-アミノアルキルフェノン化合物を含むことが好ましい。α-アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1が挙げられる。
【0085】
上記(C)光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量%に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
【0086】
<(D)成分>
(D)成分である、リン含有化合物は下記一般式(V)で示されるホスフィン酸塩であると好ましい。
【0087】
【化8】

【0088】
(一般式(V)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。)
A、Bの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第三−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0089】
またホスフィン酸塩の80質量%以上は、感光性樹脂組成物及び、永久マスクレジストや感光性エレメントに用いた際の信頼性の見地から、ホスフィン酸塩の粒子の粒度が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であるとさらに好ましく、3μm以下であると特に好ましい。この粒子の粒度が10μmを超えると、感光性樹脂組成物の塗膜外観が悪くなる傾向があり、高解像度のプリント配線板の製造が困難になる傾向がある。
【0090】
(D)成分は、感光性樹脂組成物中のリン含有量が1.5〜5.0質量%の範囲になるように含有させることが好ましい。ホスフィン酸塩は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
ホスフィン酸塩は、市販品を用いることができ、例えば、EXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935、EXOLIT OP 940(いずれもクラリアントジャパン株式会社製、商品名)を用いることもできる。
【0092】
<(E)成分>
(E)成分である熱硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性の化合物などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型三級脂肪酸変性ポリオールエポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等のジグリシジルアミン類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用してもよい。
また(E)成分である熱硬化剤として、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0093】
(E)成分の含有量は、難燃性及び絶縁信頼性の観点から、感光性樹脂組成物中の含有量が、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
【0094】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤などを含有させることができる。これらの成分は、感光性樹脂組成物中の含有量として、各々0.01〜20質量%程度含有させることが好ましい。また、上記の成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0096】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた永久マスクレジストや感光性エレメントについて説明する。感光性エレメントは、支持体と、支持体上に設けられた感光性樹脂組成物からなる感光層と、感光層上に設けられた保護フィルムで構成される。
【0097】
感光層は、上述した本発明の感光性樹脂組成物からなる層である。感光層は、本発明の感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に均一に塗布して形成することが好ましい。
【0098】
また、感光層の厚さは、通常、配線パターンの厚さにより設定されるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚さで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましく、25〜50μmであることがさらに好ましい。この厚みが10μm未満では硬化膜が破れ易くなる、又は基板表面の凹凸への追従性が悪化する傾向があり、100μmを超えると光硬化物の可とう性が低下する傾向がある。
【0099】
感光性エレメントが備える支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる重合体フィルムなどが挙げられる。これらのなかでもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0100】
支持体の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満であると被覆性が低下する傾向があり、100μmを超えると解像度が低下する傾向がある。
【0101】
感光性エレメントとして使用する場合の保護フィルムは、厚みが1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましい。この厚みが1μm未満であるとラミネートの際、保護フィルムが破れやすくなる傾向にあり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向にある。
【0102】
こうして得られた感光性エレメントは、例えば、そのままの平板状の形態で、又は、円筒状などの巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。なお、感光性エレメントは、必ずしも上述した保護フィルムを有していなくてもよく、支持体と感光層との2層構造であってもよい。
【0103】
また、これら支持体及び保護フィルムは、後に感光層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されていないものが好ましい。かかる表面処理以外の処理としては、特に制限はなく、例えば、支持体、保護フィルムは必要に応じて帯電防止処理が施されていてもよい。
【0104】
感光性エレメントや本発明の感光性樹脂組成物からなる液状レジストは、回路形成用基板等の基板上に永久マスクレジスト(レジストパターン)を形成するために好適に用いられる。永久マスクレジストの製造方法は、上記の感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける工程と、上記感光層に活性光線をパターン照射する工程と、上記感光層を現像して永久マスクレジストを形成させる工程と、を備える。詳細には、レジストパターンは、例えば、感光性エレメントから保護フィルムを除去する除去工程と、回路形成用基板上に感光性エレメントを感光層が回路形成用基板と隣接するように積層する積層工程と、活性光線を感光層の所定部分に照射して、感光層に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光層を除去する現像工程とを備える方法によって、形成される。また、液状レジストでは、印刷、例えば、スクリーン印刷により感光層を設け、乾燥により溶剤を除去し感光層を形成し、この感光層に活性光線をパターン照射して、感光層を現像する。
【0105】
ここで、上記回路形成用基板は、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、及びステンレス等の鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。
【0106】
積層工程においては、例えば、感光層を、加熱しながら回路形成用基板に圧着する方法により積層する。積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等の見地から、減圧下で積層することが好ましい。積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、導電体層以外の面であってもよい。感光層の加熱温度は90〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.2〜1.0MPaとすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa(30mmHg)以下とすることがより好ましい。また、感光層を上記のように90〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0107】
露光工程においては、感光層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成せしめる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、支持体が透明の場合には、支持体を積層したまま活性光線を照射してもよい。支持体が不透明の場合には、これを除去した後に感光層に活性光線を照射する。
【0108】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
【0109】
露光後、感光層上に支持体が存在している場合には支持体を除去した後、アルカリ性水溶液を用いて光硬化部以外の感光層を除去することにより現像して、レジストパターンを形成させる(現像工程)。現像工程においては、感光性樹脂組成物に対応したアルカリ性水溶液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。現像液としてアルカリ性水溶液を使用すると、安全かつ安定であり、操作性が良好である。
【0110】
上記アルカリ水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム及びカリウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、並びにピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが挙げられる。このうち、炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0111】
また、上記アルカリ性水溶液のpHは、9〜11とすることが好ましい。また、現像温度は、感光層の現像性に合わせて調整すればよい。なお、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるために少量の有機溶剤等を添加することができる。
【0112】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、フィルム状の基材上に可とう性を有する樹脂層を形成するために用いられると好ましく、フィルム状の基材上に形成される永久マスクとして使用されるとより好ましい。
【0113】
例えば、FPCのカバーレイ(永久マスクレジスト)として用いる場合は、上記現像工程終了後、FPCのカバーレイとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は、その照射量を、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量に調整する。レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程加熱することが好ましい。紫外線照射と加熱とをともに施してもよい。この場合、紫外線照射と加熱を同時に行ってもよいし、いずれか一方を行った後、他方を行ってもよい。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0114】
このようにして所望の性能を有するカバーレイが形成されたフレキシブルプリント配線板は、LSI等の部品が実装(はんだ付け)された後、カメラ等機器へ装着される。
【0115】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0116】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜8、比較例1〜6)
表1、2に示す各成分をそこに示す固形分の配合比(質量基準)で混合し、三本ロール等の分散装置で分散処理を行い、感光性樹脂組成溶液を得た。
【0117】
なお表1、2中の各成分は下記の通りである。
(A-1)成分:ポリウレタン化合物UXE-3044(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量450g/mol、重量平均分子量10000)
(A-2)成分:ポリウレタン化合物UXE-3044(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量900g/mol、重量平均分子量9000)
(B-1)成分:エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのメタクリル酸エステル(BPE-500、新中村化学工業株式会社製)
(B-2)成分:上記一般式(I)で表される化合物であって、Rが−C12−であり、Rが一般式(II)においてn=10、X=エチレン基及びRがメチル基である化合物
(B-3)成分:一般式(I)で表される化合物であって、Rが−C12−であり、Rが一般式(II)中においてn=15、X=エチレン基及びRがメチル基である化合物
(B-4)成分:UA−21:トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社製)
(C-1)成分:I-907(チバスペシャリティーケミカルズ社製、2−メチル-1-(4-メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
(C-2)成分:DETX-S(日本化薬株式会社製、2,4−ジエチルチオキサントン)
(D-1)成分:ホスフィン酸塩(クラリアントジャパン株式会社製、商品名「EXOLIT OP 935」、リン含有量=23質量%)
(E-1)成分:YDPF-1000S(東都化成株式会社製、固形タイプエポキシ樹脂)
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
注)表1、2中の値は、各成分の固形分の配合比である。また、表中記号「−」は、該当する成分を含有していないことを示す。
【0121】
[評価基板の作製及び版離れ性の評価]
得られた感光性樹脂組成物溶液を銅貼積層板(新日鐵化学株式会社製、エスパネックスMBシリーズ)上にそれぞれ別々に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成した。印刷は、スクリーン印刷機(株式会社セリテック製、SS1520)を使用して、印刷速度(スキージ走行速度)200mm/秒にて、スクリーン版(メッシュ120、材質ポリエステル、印刷範囲110mm角)と銅貼積層板とのギャップ(クリアランス)1mmで行った。版離れ性の評価は、スキージ通過後1秒以内に版離れした場合は版離れ性を「○」とし、版離れに1秒以上要した場合を「×」として評価した。印刷後、熱風対流式乾燥機を用いて80℃で約20分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、20±2μmであった。得られた基板を評価基板とした。版離れ性の評価を表3、4に示した。
【0122】
[感光層のべたつき性評価]
上述の乾燥後の評価基板2枚の感光層形成面同士を合わせて重ね、そのまま平置きして1分間放置し、その後2枚の基板を分けた。このとき一方の感光層の一部がはく離し他方の基板に転写しなかったものを感光層のべたつき性なしとして「○」とし、他方に転写して感光層にキズがつくものを感光層のべたつき性ありとし「×」として評価し、その結果を表3、4に示した。
【0123】
[光感度の評価]
得られた上記評価基板上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製HMW−201GX型露光機を使用して、21段のステップが残るように露光した後、常温(23℃)で30分間放置した。次いで、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。光感度を評価する数値として、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量を用いた。この数値が低いほど、光感度が高いことを示す。結果を表3、4に示した。
【0124】
[解像度の評価]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、上述した露光機を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。ここで、解像度は、現像処理によって矩形のレジスト形状が得られたライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。結果を表3、4に示した。
【0125】
[評価用FPCの作製]
評価基板上に、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、カバーレイの信頼性評価用ネガとして配線パターンを有するフォトツールとを密着させ、上述した露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った後、光感度評価の場合と同様の現像液及び現像条件でスプレー現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、カバーレイを形成した評価用FPCを得た。
【0126】
[可撓性(耐折性)の評価]
上述のようにして得られた評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げを繰り返して行い、その際のカバーレイにおけるクラックが発生するまでの回数を顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、5回以上折り曲げてもカバーレイにクラックが認められないものは「A」とし、クラックが発生するまでの回数が2回以上で5回未満のものは「B」とし、クラックが発生するまでの回数が2回未満のものは「C」とした。結果を表3、4に示した。
【0127】
[難燃性の評価]
上述した評価用FPCについて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。結果を表3、4に示した。なお、表4中「NOT」とは、燃焼試験において難燃性評価用サンプルがVTM−0、VTM−1、VTM−2に該当せず全焼したことを示す。結果を表3、4に示した。
【0128】
[反りの評価]
上述のようにして得られた評価用FPCを、一定のサイズへカット(20mm×25mm)し、260℃のホットプレート上へ60秒放置した後の反りを評価した。反りが3mm未満のものは「A」とし、3〜10mmのものは「B」、円筒状になるものは「C」とした。結果を表3、4に示した。
【0129】
[反発性(スティフネス性)の評価]
同様にして得られたFPCを、ガーレー式スティフネステスターを用い反発性(スティフネス性)の評価を実施した。測定値が0.2以下のものは「A」とし、0.2を超え0.5以下のものは「B」、0.5を超え1.0以上になるものは「C」とした。数値が小さいほど低反発であることを示す。結果を表3、4に示した。
【0130】
[耐めっき性の評価]
上記評価用FPCに対し、無電解ニッケルめっき(上村工業株式会社製、商品名ニムデンNPR−4)を施し(15分間処理)、更に無電解金めっき(上村工業株式会社製、商品名ゴブライトTAM−54)を施した(10分間処理)。
【0131】
このようにしてめっきが施された評価用基板に対し、カバーレイ底部へのめっき液の染み込み、並びに、基板からのカバーレイの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイ底部への染み込みが認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」として評価した。また、ソルダーレジスト底部へ僅かに染み込みが認められるものの実用上全く問題ないものは実施例間での差を明らかにするために「B」とした。結果を表3、4に示した。
【0132】
「はんだ耐熱性の評価」
上記「耐めっき性」試験と同様にして得られたカバーレイを有する評価用基板を用い、以下のようにしてはんだ耐熱性の評価を行った。すなわち、評価用基板に対し、ロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を塗布した後、288℃のはんだ浴中に10秒間浸漬するはんだ処理を行った。
【0133】
このようにしてはんだめっきを施された評価用基板上のカバーレイのクラック発生状況、並びに、基板からのカバーレイの浮き程度及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察した。その結果を、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイのクラックの発生が認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「B」とし、それらのいずれもが認められるものは「C」として評価した。結果を表3、4に示した。
【0134】
「HAST耐性の評価」
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業株式会社製、商品名E−679)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極に加工した。これを、評価用配線板とした。
【0135】
この評価用配線板におけるくし型電極上に、上記「耐めっき性」試験と同様にしてレジストの硬化物からなるカバーレイを形成し、これを評価用基板とした。この評価用基板を、130℃、85%RH、6Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板におけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイにマイグレーションが発生しなかったものは「A」とし、マイグレーションが発生したものは「B」とし、大きくマイグレーションが発生したものは「C」として評価した。結果を表3、4に示した。マイグレーションとは、銅電極からソルダーレジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺のソルダーレジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

【0138】
(B)成分の一般式(I)で表される化合物を含有しない比較例1、2、そして感光性樹脂組成物中3質量%未満の含有量である比較例1では、可とう性、反り、反発力に劣る。反対に感光性樹脂組成物中29質量%を超えて含有する比較例4、5、6は、可とう性、反り、反発力は改良されるものの、耐金めっき性、耐はんだ性、耐HAST性、難燃性、感光層べたつき性が劣るようになる。
本発明の(B)成分として一般式(I)の化合物を感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する実施例1〜8では、(A)〜(E)成分の組合わせにより、版離れ、光感度、解像度、耐金めっき性、耐はんだ性、耐HAST性などの諸特性を満足しつつ、アルカリ現像性、難燃性に優れ、可とう性と低反り、低反発性及び、低タック性であり作業性にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び
(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分が、下記一般式(I)で表される化合物を感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは2価の有機基を示し、Rは下記一般式(II)で表される基を示す)
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xはアルキレン基を示し、nは10〜25の整数を示す)
【請求項2】
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び
(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分が、下記一般式(III)で表される化合物及び下記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物を、感光性樹脂組成物中3〜29質量%含有する、感光性樹脂組成物。
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xはアルキレン基を示し、nは10〜25の整数を示す)
【化4】

(一般式(IV)中、Rは2価の有機基を示す)
【請求項3】
前記(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物は、(a)ジグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、(b)ジイソシアネート化合物と、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物との反応物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)リン含有化合物が、下記一般式(V)で示されるホスフィン酸塩を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化5】

(一般式(V)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。)
【請求項5】
基板上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける工程と、
前記感光層に活性光線をパターン照射する工程と、
前記感光層を現像して永久マスクレジストを形成させる工程と、
を備える、永久マスクレジストの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久マスクレジスト。

【公開番号】特開2013−80050(P2013−80050A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219163(P2011−219163)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】