説明

感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性フィルム

【課題】サンドブラスト法を用い基板表面に凹凸パターンを形成する際、特に高圧条件下でのサンドブラスト加工時に耐サンドブラスト性に十分優れた感光性フィルム層を形成することのできる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含むバインダー成分、(B)重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに、(D)分子内にリン原子を有する可塑剤、を含有してなる感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、セラミック等の基板の表面に凹凸のパターンを形成する方法の1つとしてサンドブラスト法が用いられている。サンドブラスト法でガラス、セラミック等に凹凸のパターンを形成する際には、通常、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光性フィルム層を設け、フォトリソグラフィーによりマスクパターンを形成させた後、微細な砥粒を基板に吹き付けて非マスク部分を彫刻するという方法がとられている。
【0003】
近年、サンドブラスト法により、基板に従来よりも微細なパターンを形成することが求められている。このような状況の中、サンドブラスト法に用いる感光性樹脂組成物についても基板を微細加工可能とするための開発が進められている。例えば、特許文献1には、基板に高感度で微細なパターンを形成することを意図して、カルボキシ変性ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物とを組み合わせた感光性樹脂組成物を用い、基板に感光性フィルム層を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、耐サンドブラスト性等を向上させることを目的として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物等を組み合わせた感光性樹脂組成物を用い、基板に感光性フィルム層を形成する技術が開示されている。
【0004】
一方で、サンドブラストの際の砥粒の吹付圧力を高圧化することにより、基板表面に凹凸パターンを形成する際の加工時間の短縮化が可能となり、さらには、そのパターンの凸部に対する凹部の深さをより深くすることができる。
【特許文献1】特開平08−054734号公報
【特許文献2】特開平09−152713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特にそのような高圧条件下でサンドブラスト加工を施す際に、上記特許文献1及び2に記載のものを始めとする従来の感光性樹脂組成物から形成される感光性フィルム層を基板上に形成すると、その耐サンドブラスト性が十分ではないことを、本発明者らは見出した。特にプラズマディスプレイの基板(例えば背面基板)を作製する際にサンドブラスト法を用いる場合、プラズマディスプレイパネルの画素ピッチの狭幅化が進んでおり、しかも、プラズマディスプレイパネルの加工時間の短縮が求められているため、上記課題の解決が強く求められている。
【0006】
そこで本発明は、サンドブラスト法を用い基板表面に凹凸パターンを形成する際、特に高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に十分優れた感光性フィルム層を形成することのできる感光性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の感光性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含むバインダー成分、(B)重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに、(D)分子内にリン原子を有する可塑剤を含有してなることを特徴とする。ここで、「可塑剤」とは、フィルムに柔軟性を持たせる化合物をいう。
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)が耐サンドブラスト性に十分優れている感光性フィルムを形成可能な要因は詳細には明らかにされていないが、リン原子を有する可塑剤が組成物中の他の成分と複合的に作用するためと、本発明者らは考えている。ただし、要因はこれに限定されない。
【0009】
また、本発明の分子内にリン原子を有する可塑剤を含有する感光性樹脂組成物を用いて作製した感光性フィルムを基板上に積層した感光性フィルム層は、十分な基板との密着性及び解像度を維持しつつ、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性の向上が可能となる。
【0010】
したがって、上記構成による本発明の組成物を用いて、画像ピッチが狭幅化されたプラズマディスプレイパネルの基板上に感光性フィルム層を形成しても、その密着性は十分に優れたものとなる。さらに、その後にサンドブラスト加工を施すと、感光性フィルム層は高圧条件下であっても耐サンドブラスト性に優れているため、その剥離等が発生し難い。そして、得られた基板表面の凹凸パターンは十分な解像度を有する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記ポリマーが、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有することが好ましい。また、上記バインダー成分が、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル以外の、重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を更に含むことが好ましい。
【0012】
このような感光性樹脂組成物を用いると、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。したがって、上述と同様に、耐サンドブラスト性をより向上させることができる。
【0013】
上記感光性樹脂組成物においては、光重合性化合物が、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化1】

ここで式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、m及びnは下記式(A)で表される条件を満たす正の整数を示す。
15≦(m+n)≦40 (A)
【0014】
光重合性化合物がこのような構造を有すると、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。また、光重合性化合物がこのような構造を有すると、上記組成物から形成された感光性フィルム層は、基板と強固な密着性を示すこととなるため、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に、より優れるものとすることができる。
【0015】
上記感光性樹脂組成物においては、光重合性化合物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この光重合性化合物は、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。また、光重合性化合物がウレタン(メタ)アクリレートを有すると、上記組成物から形成された感光性フィルム層は、基板と強固な密着性を示すこととなるため、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に、より優れるものとすることができる。さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレートが酸価(カルボキシル基)を有すると、サンドブラストを行った際の現像性が向上するので好ましい。
【0016】
上記感光性樹脂組成物においては、可塑剤が下記一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化2】

ここで、式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはフェニレン基又は下記一般式(3)で表される2価の基を示す。
【化3】

ここで、式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
【0017】
このような構造を有する可塑剤を用いると、基板に形成した感光性フィルム層は基板との密着性を向上させることができ、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に一層優れるものとなる。
【0018】
本発明の感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とする。サンドブラスト法により基板表面に凹凸パターンを形成する際に、この感光性フィルムを用いた感光性フィルム層を基板上に形成すると、この層は特に高圧条件下でのサンドブラスト加工時の耐サンドブラスト性に優れており、しかも基板との密着性が十分に高いため、高い解像度を有する凹凸パターンであっても、精度よくかつ正確に形成することができる。さらに、本発明の感光性フィルムは容易に基板上に積層することができるため、作業性にも優れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サンドブラスト法を用い基板表面に凹凸パターンを形成する際、特に高圧条件下でのサンドブラスト加工時に耐サンドブラスト性に十分優れた感光性フィルム層を形成することのできる感光性樹脂組成物及び感光性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味する。
【0021】
本発明の好適な実施形態に係る感光性樹脂組成物(以下、必要に応じて単に「組成物」ともいう。)は、(A)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含むバインダー成分、(B)重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに、(D)分子内にリンを含む可塑剤、を含有してなる。以下、感光性樹脂組成物の成分について説明する。
【0022】
((A)成分)
(A)成分であるバインダー成分は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含有する。
【0023】
ここで上述した(メタ)アクリル酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルやアクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸フェニルエステル等が挙げられる。この(メタ)アクリル酸エステルの中でもアクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。なお、上記エステルのアルキル基は、当該アルキル基の水素原子が、水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等に置換されたものであってもよい。
【0024】
(A)成分のポリマーに含まれる構成単位は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルのモノマー単位であれば、1種類のモノマーを単独で有していてもよく、2種類以上のモノマーを複数有していてもよい。
【0025】
また、バインダー成分には、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含有させることが好ましい。このようなポリマーは、分子内にカルボキシル基及びエステル基が混在することとなり、このポリマーから得られる感光性フィルムは、基板と感光性フィルムとの密着性をさらに向上させることができる。さらには後述するアルカリ成分が低濃度であってもサンドブラストを行った際の現像性に優れるものとすることができる。
【0026】
バインダー成分には、モノマー単位として、前記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル以外の、重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を更に有することが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物にこの共重合体を含有させることによって、基板と感光性フィルムとの密着性をさらに向上させることができる。
【0027】
上記エチレン性不飽和基を有する化合物としては、ビニル基を有する化合物(以下、「ビニルモノマー」という。)が好ましく、その具体例としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。このビニルモノマーと、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとから、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを製造する過程において、当該ビニルモノマーを1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記バインダー成分に含まれるポリマーは、上述した(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又はビニルモノマー等を所望の配合量や組合せで合成することができる。なお、上記ポリマーは、(A)成分のバインダー成分に1種類が含まれていてもよく、互いに異なる2種類以上が含まれていてもよい。
【0029】
バインダー成分に含まれる上述のポリマーを合成するに際し、用いるモノマーの配合量は、(メタ)アクリル酸に対する(メタ)アクリル酸エステルの質量比((メタ)アクリル酸エステル/(メタ)アクリル酸)で(60/40)〜(95/5)であると好ましい。この質量比が60/40未満であると、サンドブラストを行った際の現像性が劣る傾向にあり、95/5を超えると、感光性エレメントの耐水性が劣る傾向にある。
【0030】
バインダー成分に含まれる上記ポリマーの重量平均分子量は、上記バインダー成分を含む組成物を用いて基板表面に感光性フィルム層を形成した場合の塗膜性及び塗膜強度、サンドブラストを行った際の現像性の観点から10000〜300000であることが好ましい。さらに、上記バインダー成分に含まれるすべてのポリマー、樹脂等の重量平均分子量も上記範囲であることがより好ましい。
【0031】
バインダー成分に含まれる上記ポリマーの配合量は、当該バインダー成分及び(B)成分の光重合性化合物の総量100質量部に対して、15質量部〜80質量部とすることが好ましく、20質量部〜60質量部とすることがより好ましい。この配合量が15質量部未満では光硬化物が脆くなり易く、感光性エレメントとして用いた場合に、塗膜性が劣る傾向にあり、80質量部を超えると光感度が不十分となる傾向にある。(A)成分のバインダーには、上述のポリマー以外に、通常の感光性樹脂組成物にバインダーとして用いられる他のポリマーが更に含有されていてもよい。
【0032】
((B)成分)
(B)成分である重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、単に「光重合性化合物」という。)は、例えばラジカル重合反応のように、光等のエネルギーが付与されることにより重合する。本実施形態においては、この光重合性化合物が少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和基を有するため、このエチレン性不飽和基にて重合が起こることとなる。
【0033】
光重合性化合物の配合量は、(A)成分のバインダー成分及び当該光重合性化合物の総量100質量部に対して、20質量部〜80質量部とすることが好ましく、30質量部〜60質量部とすることがより好ましい。この配合量が20質量部未満では光感度が不十分となる傾向にあり、80質量部を超えると光硬化物が脆くなる傾向にある。
【0034】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、光重合性化合物として、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。光重合性化合物がこのような構造で表される化合物を含むと、この光重合性化合物を含む組成物は、基板上に塗布等し光照射した場合に、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。また、光重合性化合物がこのような構造を有すると、上記組成物から形成された感光性フィルム層は、基板と強固な密着性を示すこととなるため、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に、より優れるものとすることができる。
【0035】
このような光重合性化合物としては、例えば、2,2’−ビス{4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2’−ビス{4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2’−ビス{4−(メタクリロキシテトラエトキシ)フェニル}プロパン等が挙げられる。これらの化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの市販品としては、NKエステルBPE−1300NH(新中村化学工業(株)製、商品名)等がある。
【0036】
上記一般式(1)においてm及びnは、下記式(A)で表される条件を満たす正の整数である。
15≦(m+n)≦40 (A)
【0037】
この(m+n)が15未満の場合は、可撓性、低アルカリ現像液による現像性が低下する傾向にあり、40を超える場合は、系の親水性が増し、現像時の密着性が低下する傾向にある。
【0038】
光重合性化合物が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、上記一般式(1)で表される化合物の配合量は、光重合性化合物100質量%に対して、3質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜70質量%であることがより好ましい。この配合量が3質量%未満では解像度が劣る傾向にあり、90質量%を超えると感光性フィルム層が柔らかくなり、フィルム端面からのしみ出しが起きる傾向にある。
【0039】
また、本実施形態の組成物に含まれる(B)光重合性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。光重合性化合物がこのような構造を有する化合物を含有すると、この光重合性化合物を含む組成物は、基板上に塗布等し光照射した場合に、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。また、光重合性化合物がこのような構造を有すると、上記組成物から形成された感光性フィルム層は、基板と強固な密着性を示すこととなるため、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性に、より優れるものとすることができる。
【0040】
このようなウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ジイソシアネート化合物と、ジオール化合物とを両末端に−NCO基(イソシアネート基)が残るように反応させ、次に生成した化合物とヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0041】
上記ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,5−ジメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ウンデカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリデカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
また、上記ジオール化合物としては、末端に水酸基を有するポリエステル類、ポリエーテル類、カルボキシル基を有するジオール化合物等が挙げられる。ポリエステル類としては、ラクトン類が開環重合したポリエステル類、ポリカーボネート類、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールと、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸との縮合反応で得られるポリエステル類等が挙げられる。ポリエーテル類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール等を挙げることができる。カルボキシル基を有するジオール化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸等が挙げられる。上記ポリエステル類、ポリエーテル類又はカルボキシル基を有するジオール化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
さらに、上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、エチレングリコールモノメチルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
光重合性化合物がウレタン(メタ)アクリレートを含む場合のウレタン(メタ)アクリレートの配合量は、光重合性化合物100質量%に対して、20質量%〜80質量%であることが好ましく、30質量%〜70質量%であることがより好ましい。この配合量が10質量%未満では耐サンドブラスト性が劣る傾向にあり、70質量%を超えると感光性フィルム層が柔らかくなり、フィルム端面からのしみ出しが起こる傾向にある。
【0045】
本実施形態の光重合性化合物は、上記一般式(1)に示す構造を有する化合物に加え、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。この場合、この光重合性化合物を含む組成物は、基板上に塗布等し光照射した場合に、基板と感光性フィルム層との密着性をより向上させることができる。また、光重合性化合物がこのような構造を有すると、上記組成物から形成された感光性フィルム層は、基板と強固な密着性を示すこととなるため、高圧条件下でのサンドブラスト加工時における耐サンドブラスト性、柔軟性及び低アルカリ現像性に、より優れるものとすることができる。
【0046】
また、本実施形態の組成物に含まれる(B)成分である光重合性化合物には、重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物であって、上述のものに代えて、あるいは上述のものに加えて、以下に示す他の化合物を含ませることも可能である。この他の化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリレート等)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル((メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等)等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
((C)成分)
(C)成分である光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等を用いることができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(C)成分である光重合開始剤の配合量は、(A)成分であるバインダー成分及び(B)成分である光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、0.2質量部〜10質量部であることがより好ましい。この配合量が0.1質量部未満では光感度が不十分となる傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
【0049】
((D)成分)
(D)成分である可塑剤は、分子内にリン原子を含む。この可塑剤は、本実施形態の組成物から感光性フィルム層を形成した場合に、当該感光性フィルム層に柔軟性を持たせることができる。これは、上述した(B)成分の光重合性化合物が光照射されることによって重合する際、光反応の影響を受け難くなるためと考えられる。
【0050】
このようなリン原子を含む可塑剤としては、特に限定されないが、芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステルなどのリン酸エステルが好ましく、芳香族リン酸エステルがより好ましく、上記一般式(2)、下記一般式(9)又は(10)で表されるものがさらに好ましい。これらの中でも、下記式(4)で表される1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、下記式(5)で表される1,3−ビス−(2’,6’−ジメチルフェニル)フォスホイルベンゼン、下記式(6)で表される1,3−ビス−(2’,6’−ジエチルフェニル)フォスホイルベンゼン、下記式(7)で表されるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、下記式(8)で表されるイソプロピリデンビス(フェニレン)テトラトリルビス(ホスファート)が特に好ましい。
【0051】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

[式(9)中、pは2以上の正の整数を示す。]
【化10】

[式(10)中、qは2以上の正の整数を示す。]
【0052】
可塑剤がこのような構造で表される化合物であると、基板に形成した感光性フィルム層は基板との密着性を向上させることができ、高圧条件下でのサンドブラスト加工時の耐サンドブラスト性により優れるものとすることができる。これらの化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの市販品としては、PX−200、CR−747(以上、大八化学(株)製、商品名)、FP600、PFR(以上、旭電化工業(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0053】
(D)成分である可塑剤の配合量は、バインダー成分及び(B)成分の光重合性化合物の総量100質量部に対して、10質量部〜50質量部であることが好ましく、15質量部〜30質量部であることがより好ましい。この配合量が10質量部未満では耐サンドブラスト性が不十分となる傾向にあり、50質量部を超えると感光性フィルム層が柔らかくなり、フィルム端面からのしみ出しが起きる傾向にある。
【0054】
(その他の成分)
また、本実施形態の組成物には、必要に応じて、添加剤を含有させることも可能である。この添加剤としては、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等が挙げられる。
【0055】
本実施形態の組成物に添加剤を含有させる場合、これら添加剤の含有量は、バインダー成分及び光重合性化合物の総量100質量部に対して各々0.01質量部〜20質量部程度であることが好ましい。なお、これらは1種類を単独で含有させてもよく、2種類以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0056】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、感光性フィルムとして用いることが好ましい。この感光性フィルムは、上述した感光性樹脂組成物をフィルム状に成形して製造される。また、この感光性フィルムは、作業性、取扱性の観点から、支持体フィルムに積層して感光性エレメントを形成すると好ましい。
【0057】
図1は、感光性エレメントの一実施形態を示す断面図である。本実施形態に係る感光性エレメントは、支持体フィルム20上に感光性フィルム10が積層され、感光性フィルム10の支持体フィルム20とは反対側の面に、後述する保護フィルム30が積層された形態を有している。
【0058】
この感光性フィルムは、基板上に積層されることにより、感光性フィルム層として機能する。サンドブラスト法により、基板表面に凹凸パターンを形成する際に、この感光性フィルム層を用いると、この層は特に高圧条件下でのサンドブラスト加工時の耐サンドブラスト性に優れており、しかも基板との密着性が十分に高いため、高い解像度を有する凹凸パターンであっても、精度よくかつ正確に形成することができる。さらに、本実施形態の感光性フィルムは容易に基板上に積層することができるため、作業性にも優れる。
【0059】
次に上記感光性フィルムの製造方法について説明する。感光性フィルムを製造するに際し、まず、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を溶剤に均一に溶解又は分散する。次いで、得られる溶液又は分散液を支持体フィルム層上に均一に塗布し、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去して乾燥皮膜(感光性フィルム層)を備える感光性エレメントを得ることができる。
【0060】
このとき用いられる上記溶剤としては、感光性樹脂組成物を溶解又は分散可能な溶剤であれば特に限定されず、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、N−メチル−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン、メチルアルコール、エチルアルコール等を用いることができる。これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、用いられる上記支持体フィルムとしては、重合体フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが挙げられ、この中でもポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0062】
更に上記支持体フィルムの厚みは、5μm〜25μmであることが好ましく、8μm〜20μmであることがより好ましく、10μm〜17μmであることが更に好ましい。この厚みが5μm未満では現像前の支持体を剥離する際に破れる傾向にあり、25μmを超えると解像度が低下する傾向にある。
【0063】
また、上記支持体フィルムのヘーズは0.001〜5.0であることが好ましく、0.001〜2.0であることがより好ましく、0.01〜1.8であることが更に好ましい。このヘーズが5.0を超えると、解像度が低下する傾向にある。上記ヘーズはJIS K 7105に準拠して測定したものであり、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業(株)製、商品名)等の市販の濁度計などで測定することが可能である。
【0064】
得られる感光性フィルムの厚みは、用途により適宜定めることができるが、上記製造方法において、乾燥した後の厚みが1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましい。この厚みが1μm未満では工業的に塗工困難な傾向にあり、100μmを超えると本実施形態の効果が小さくなり、接着力、解像度が低下する傾向にある。
【0065】
このようにして得られる本実施形態の感光性フィルムは、感光性フィルムの一の面に支持体フィルム層が積層された2層構造であるため、そのまま又は感光性フィルムの他の面に感光性フィルムを保護するための保護フィルムをさらに積層して、ロール状に巻きとって貯蔵される。この保護フィルムは、厚みが5μm〜30μmであることが好ましく、10μm〜28μmであることがより好ましく、15μm〜25μmであることが更に好ましい。この厚みが5μm未満ではラミネートの際、保護フィルムが破れる傾向があり、30μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0066】
これら支持体フィルム及び保護フィルムを積層する際には、後に感光性フィルム層から除去する必要があるため、これらの積層面は除去が不可能となるような表面処理が施されたもの以外であれば、特に制限されず必要に応じて用いることができる。更にこれらの支持体フィルム及び保護フィルムは必要に応じて帯電防止処理等が施されていてもよい。
【0067】
次に上記感光性フィルムを用いたレジストパターンの形成方法及び基板表面の凹凸パターンの形成方法について説明する。本実施形態の感光性フィルムを用いてレジストパターンを形成する方法としては、まず基板上に感光性フィルムを積層する。具体的には、例えば、感光性フィルムを加熱しながら支持フィルムが積層された面とは反対側の面を基板に向けて、基板に圧着することにより積層することができる。なお、上記保護フィルムを用いた感光性フィルムである場合には、保護フィルムを除去後に加熱しながら基板に圧着する。また、積層される基板表面の形状は、平坦であっても凹凸があってもよく、特に制限はない。
【0068】
上記加熱の際の温度は特に制限はないが、70℃〜130℃であることが好ましい。また、上記圧着の際の圧力は特に制限はないが、0.1MPa〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)であることが好ましい。加熱温度を70℃〜130℃とした場合、予め基板を予熱処理することなく処理することができる。積層する際の密着性をさらに向上させるために、基板に予熱処理を行ってもよい。
【0069】
基板上に上記方法と同様にして感光性フィルム層を積層し、積層された感光性フィルム層に、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する。露光後、感光性フィルム層上に支持体フィルムが存在している場合には、支持体を除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造することができる。
【0070】
この場合、上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、レーザー直接描画露光法も使用可能である。
【0071】
上記アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましい。なお、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。
【0072】
また、アルカリ性水溶液等で処理する際の温度は、感光性フィルム層の現像性に合わせて適宜調節される。更に上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等を適宜用いることができる。
【0073】
現像後は、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱又は0.2J/cm〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化してもよい。
【0074】
そして、形成したレジストパターンをマスクとし、基板の被マスク部をサンドブラストによって彫刻することにより、基板表面に凹凸パターンを形成する。このサンドブラスト工程のブラスト材(砥粒)としては、公知のものが用いられ、例えば粒径2μm〜100μm程度のSiO、SiO、Al、ZrO、等の微粒子が挙げられる。サンドブラスト時の圧力としては0.05MPa〜1MPa(0.5kgf/cm〜10kgf/cm)程度で処理することが好ましい。
【0075】
次にレジストパターンを剥離する際には、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。上記剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る感光性フィルムは、プラズマディスプレイの基板(例えば背面基板)、微細電子部品(MEMS;Micro Electro Mechanical Systems)等に使用するガラス、セラミック加工等に好適に用いることができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について述べてきたが、本発明は上記実施形態に制限されるものではない。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例中の「部」は特に断らない限り、「質量部」を意味する。
【0079】
(実施例1)
下記表1に示す成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調整した。
【表1】

【0080】
次いで、この感光性樹脂組成物の溶液を厚み16μmの支持体フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に均一に塗布し100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光性フィルムを得た。感光性フィルムの乾燥後の厚みは、38μmであった。感光性フィルムの支持体フィルム面とは反対側の面上には、さらに、厚み22μmのポリエチレンフィルムを保護フィルムとして貼り合わせ、実施例1に係る感光性エレメントを得た。この感光性エレメントに備えられる感光性フィルムの感光特性、レジスト形成後の耐サンドブラスト性について下記の方法により評価した。
【0081】
(評価方法)
(1)感光特性
リブ形成用ガラス基板(リブペースト(旭ガラス(株)製、商品名RPW−033E)が厚さ160μmでコーティングされたガラス基板)を80℃に加温し、その表面に上記感光性フィルムを保護フィルムを剥がしながら110℃のヒートロールを用い1m/分の速度でラミネートして試験片を得た。
【0082】
解像度、密着性は、高圧水銀灯ランプを有する露光機(オーク(株)製、商品名EXM−1201)を用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールと解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/400〜200/400(単位:μm)のパターンを有するフォトツールとを試験片のPETフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像(現像条件:30℃で0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、50秒間スプレー現像)後の残存ステップ段数が20となるエネルギー量で露光を行った。解像度、密着性は数字が小さいほど良好な値である。得られた結果を表2に示す。
【0083】
(2)耐サンドブラスト性
耐サンドブラスト性は、上記のようにラミネートして得られた試験片のPETフィルム上に、ライン幅/スペース幅=70/150(単位:μm)のストライプパターンネガを密着させ所定の露光量により露光を行い、次いで上記現像液により現像しパターンを形成した。これを不二製作所製「PNEUMABLASTER」(研磨剤SUS#1200、ノズル距離40mm、ブラスト圧0.1MPa、研磨剤噴射量400g/分)を用い、後述するトップ幅L1とボトム幅L2との比が1:1.5程度になるようサンドブラスト処理を行い、ストライプ状に凹凸が形成された基板を得た。図2に当該基板の模式的な部分断面図を示す。なお、図2に示すように凸部の断面は台形状の形態を有しており、かかる台形の上辺をトップ幅L1、下辺をボトム幅L2とした。そして、サンドブラスト処理後のレジストのダメージの評価を行い、以下のように評価した。得られた結果を表2に示す。
○:サンドブラスト後のレジストパターンにダメージが認められない。
×:サンドブラスト後にレジストに剥がれが生じ、リブにダメージが認められる。
【0084】
(実施例2)
表1に示す実施例1の(D)成分をビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(旭電化工業(株)製、商品名FP−600)に代える以外は実地例1と同様にして、実施例2に係る感光性エレメントを得た。この感光性エレメントに備えられる感光性フィルムについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
(実施例3)
表1に示す実施例1の(D)成分を1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)(旭電化工業(株)製、商品名PFR)に代える以外は実地例1と同様にして、実施例2に係る感光性エレメントを得た。この感光性エレメントに備えられる感光性フィルムについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
(比較例1)
表1に示す実施例1の(D)成分を用いない以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る感光性エレメントを得た。この感光性エレメントに備えられる感光性フィルムについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
(比較例2)
表1に示す実施例1の(D)成分をフタル酸ジエステル系の可塑剤(新日本理化(株)製、商品名DUP)に代え、その配合量を7部にした以外は実地例1と同様にして、実施例2に係る感光性エレメントを得た。この感光性エレメントに備えられる感光性フィルムについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【表2】

【0088】
表2に示すように、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いた実施例1〜3の感光性フィルムは、耐サンドブラスト性に優れ、密着性及び解像度が共に満足できる値となった。一方、本発明によらない比較例1及び2の感光性フィルムは、耐サンドブラスト性が劣ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明による感光性フィルムの一実施形態を示す模式的な断面図である。
【図2】図2は、実施例のサンドブラスト処理後の基板を示す模式的な部分断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10…感光性フィルム、20…支持体フィルム、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として有するポリマーを含むバインダー成分、(B)重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに、(D)分子内にリン原子を有する可塑剤、を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記バインダー成分が、モノマー単位として、前記(メタ)アクリル酸及び前記(メタ)アクリル酸エステル以外の重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物、を更に含むことを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合性化合物が、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、m及びnは下記式(A);
15≦(m+n)≦40 (A)
で表される条件を満たす正の整数を示す。]
【請求項4】
前記光重合性化合物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記可塑剤が下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

[式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはフェニレン基又は下記一般式(3)で表される2価の基を示す。
【化3】

式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とする感光性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−53484(P2006−53484A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236730(P2004−236730)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】