説明

感光性組成物及び感光性平版印刷版の製造方法

【課題】経時保存しても感度の安定した感光性塗布液を得る事であり、作業性、生産効率を向上した感光性組成物の製造方法を提供する事を課題とする。
【解決手段】重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物を製造する方法に於いて、トリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に該感光性組成物を分割して作製した後に保存し、塗布開始前に混合して塗布する感光性組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及び感光性平版印刷版の製造方法に関し、詳しくは、これらの塗布液の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より感光性組成物を感光性平版印刷版に適する画像形成層として用いる試みが行われてきた。例えば、親水性支持体としてアルミニウム板を使用したネガ型感光性平版印刷版の場合は、支持体上に感光性組成物を塗布及び乾燥を行い感光性平版印刷版を作製し、活性化光を照射露光し露光部を硬化させ、現像液により露光部を残し未露光部を溶解除去する事で親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、露光パターンに応じた形で、親油性表面を有する硬化した被膜を形成するものである。
【0003】
上記の感光性組成物としては、ジアゾ樹脂に高分子化合物を組み合わせたものが広く用いられており、米沢輝彦著、「PS版概論」(印刷学会出版部発行)や、永松元太郎、乾英夫著、「感光性高分子」(講談社発行)、山岡亜夫、松永元太郎著、「フォトポリマーテクノロジー」(日刊工業発行)等に詳しく述べられている。
【0004】
又、近年のコンピューターの進歩によりデジタル化された原稿データをレーザービームを用いてフィルムを介在させずに印刷版に直接画像露光を行うCTPシステムが各社から提案されている。使用されるレーザーとしては様々で、可視光領域、赤外領域に発光する高出力半導体レーザーやYAGレーザー等が光源として利用されるようになり、これら光源の出力に合わせた感光材料およびこれを利用した印刷版の開発が行われるようになってきた。例えば、特開平7−20629号公報、特開7−271029号公報等に挙げられている、赤外線吸収剤が光熱変換し露光部を局部的に高温にし、この際酸発生剤が発生する酸によりレゾール樹脂およびノボラック樹脂が架橋することで画像部を形成する感光性平版印刷版がある。又、「印刷雑誌」78巻、9頁、1995年等に解説がなされている、重合開始剤、光増感色素、重合性モノマーを含む光重合反応を利用した感光性平版印刷版等がある。
【0005】
上記の様な、種々のレーザー光による直描型の光重合系について共通する課題として、高感度化が挙げられる。即ち、記録速度を向上するためには必然的に感光体の高感度化が必要になる。この課題に対して、特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開平5−5988号公報、特開平5−197069号公報等に光重合開始剤系として、ホウ素素アニオン含有塩色素を含有する感光性組成物、特開平4−31863号公報、特開平6−43633号公報に光重合開始剤系として、s−トリアジン系化合物とを含有する感光性組成物に関する技術が開示されているが、感度が不十分であり、これら感光性組成物の塗布液(以降感光性塗布液と称す)の経時保存性が悪く、例えば塗布開始から塗布終了時での、感光性平版印刷版の感度が変化し安定的な製品の作製ができなかった。
【0006】
感光性塗布液の経時保存安定性について、光重合開始剤と顔料が共存しない様に分割し、保管した後混合し感光性塗布液とする技術が、特開平11−218905号公報(特許文献1)に記載されているが十分ではなく、特に、各種レーザー光に対応する為に増感色素が利用される感光性塗布液においては更なる改良が望まれていた。
【0007】
増感色素が用いられる感光性平版印刷版としては、側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体、光重合開始剤、増感色素を含有し、増感色素が吸収した光エネルギーを光重合開始剤より発生するラジカルによる重合性化合物の重合を利用する、特開2001−290271号公報(特許文献2)記載の技術や、レゾール樹脂及び光酸発生系が630〜1100nmの領域に吸収を有する増感色素、及び3個のハロゲン化アルキル基を有するs−トリアジン化合物を含有し、光の照射により発生した酸の作用によるレゾール樹脂の縮合、架橋反応を利用した特開平9−138500号公報(特許文献3)等の技術が開示されている。更に高感度化された感光性組成物は、反応性が高く感光性塗布液の経時安定性に欠け、安定な感度の製品を得ることが難しい事が多い。即ち高感度感光性組成物である感光性塗液を安定な性能で長時間経時しながら塗布する事は難しく、大半は作業性、生産効率等を犠牲にする事が多く問題であった。
【0008】
高感度化した感光性塗布液を塗布し平版印刷版を製造する方法として、感光性塗布液を経時させた後、塗布する製造方法が、特開2004−151408号公報(特許文献4)に開示されているが、感度の安定性については、満足できるものではなかった。
【0009】
又、別の問題点として、感光性塗布液を塗布、乾燥し感光性組成物を作製する場合、例えば、感光性塗布液を入れる容器(以降塗布液釜)より支持体上に塗布する塗布機までの送液配管中の感光性塗布液等の、実際に塗布に使用されない感光性塗布液が発生する。この感光性塗布液が次回の感光性組成物の作製時に使用できれば無駄にはならないが、前記した様に感光性塗布液、特に高感度化された感光性塗布液の性能が確保できる時間には限りがあるのが現状である。
【特許文献1】特開平11−218905号公報
【特許文献2】特開2001−290271号公報
【特許文献3】特開平9−138500号公報
【特許文献4】特開2004−151408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物の製造方法において、経時保存しても感度の安定した感光性塗布液を得る事であり、作業性、生産効率を向上した感光性組成物の製造方法を提供する事を課題とする。又別の課題として、塗布工程の為に実際に使用されない感光性塗布液が長期間保存可能な感光性平版印刷版の製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
1)重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物を製造する方法に於いて、トリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に、該感光性組成物の塗布液を分割して作製した後に、保存し塗布開始前にこれらを混合して塗布する感光性組成物の製造方法。
2)前記感光性組成物が、有機ホウ素塩を含有する事を特徴とする1)記載の感光性組成物の製造方法。
3)前記重合性ポリマーが、側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーである事を特徴とする1)又は2)記載の感光性組成物の製造方法。
4)前記感光性組成物の塗布液を分割して作製し保管した後、混合して塗布液を成し、塗布する時間からさかのぼって1週間以内に支持体上に塗布し乾燥する事を特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
5)前記感光性組成物の塗布液を分割して作製した後、6週間以内に混合し支持体上に塗布し乾燥する事を特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
6)前記感光性組成物の塗布液を分割して作製した後の混合を、塗布機に送液する配管の途中で行う事を特徴とする1)〜5)のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
7)前記感光性組成物が感光性平版印刷版である1)〜6)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物を製造する方法に於いて、経時保存しても感度の安定した感光性塗布液を得る事ができる。又実際に塗布に使用されない感光性塗布液を廃棄する事なく、生産効率が向上した感光性組成物の製造方法を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物は、高感度でレーザー光による直描型の光重合系に適した性能を有している。この感光性塗布液を用いた感光性平版印刷版を安定した感度で製造するには、感光性塗布液の経時可能な範囲での塗布時間に合わせた感光性塗布液量の作製を行い塗布する必要があった。
【0014】
本発明のトリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に感光性塗布液を分割する方法については、任意の方法が選択できる。好ましいトリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に感光性塗布液を分割する方法としては、増感色素とトリハロアルキル置換化合物を別々の2液以上の溶液にし混合する方法で、液体で混合する事により速やかに混合でき効率的である。具体的に、トリハロアルキル置換化合物と増感色素をそれぞれ別々に塗布溶剤に溶解し、又他の添加剤は任意に分割してをトリハロアルキル置換化合物溶液、増感色素溶液の双方に含有する事もできるし、ある添加剤はトリハロアルキル置換化合物溶液に、他の添加剤は増感色素液にという風に溶解する事もできる。又トリハロアルキル置換化合物溶液、増感色素溶液、その他の添加剤溶液の3液に分割する事も好ましい方法である。
【0015】
トリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しないようにする事によって、混合前の液の保存経時安定性は飛躍的に向上する。この事により、混合前の液は回収し、随時混合塗布し感光性平版印刷版を作製する事ができる。
【0016】
好ましいトリハロアルキル置換化合物と増感色素の混合方法である2液以上の液体を混合し塗布する方法については、種々の方法を用いることができる。具体例として、2液混合塗布方法について、図1、2を用いて説明するがこれに限ったものではない。
【0017】
図1は、2液系での感光性塗布液調整方法を示す概略図である。同図において、釜3には、少なくともトリハロアルキル置換化合物を含有する溶液が調整され、釜4には、少なくとも増感色素を含有する溶液が調整される。これら2液を送液ラインを通って混合釜兼塗布液釜6で混合し感光性塗布液を成し塗布機に送液し塗布される。この時、弁5には図示しない流量計が設けられており、所望の比率でそれぞれの液を混合する事ができる。
【0018】
図2は、図1における混合釜兼塗布液釜6の代わりにインラインミキサーによってインライン混合する感光性塗布液調整方法を示す概略図である。同図において、8がインラインミキサーを示す。2液以上の液体を混合する方法としてより好ましい方法である。インラインミキサーとしては、モータ等の駆動部がありポンプ作用も持ち合わせたインライン型ミキサーや駆動部を持たないスタティックミキサー等使用可能である。
【0019】
感光性塗布液をトリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しないように分割せずに作製し保存経時した場合、感光性成分特に増感色素が感光性塗布液中で安定に存在する事が困難になり所望の感度を示さなくなる。この事により感度の低下がおこり、一定の感度の製品を作製することができない。この現象は高感度の感光性組成物になればなるほど大きく高感度感光性組成物の場合、保存条件にもよるが常温で1週間以上保存で、一定の感度が得られない問題を生じる。本発明のトリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しないようにする事によって、混合前の液の経時保存安定性は飛躍的に向上し、常温で6週間経過した後混合し感光性組成物を作製しても一定の感度を示す。トリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しないように分割作製後、混合した後の感光性塗布液は、上記と同様に保存条件にもよるが常温で1週間以上保存で感度の変化が見られ、特に感光性組成物を感光性平版印刷版として使用する場合、1週間以内に塗布することが好ましい。従って本発明における塗布開始とは、塗布する時間からさかのぼって1週間である事を意味する。
【0020】
次に本発明に使用される感光性組成物について説明する。
【0021】
本発明のトリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0022】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
感光層中に於けるトリハロアルキル置換化合物の割合は、感光層トータル100質量部中に於ける割合として0.005質量部から50質量部の範囲で含まれることが好ましい。
【0026】
本発明の感光性平版印刷板の感光層は、増感色素を含有する。添加する増感色素としては、380nm〜1300nmの波長域において重合開始剤の分解を増感するものであり、種々のカチオン性色素、アニオン性色素および電荷を有しない中性の色素としてメロシアニン、クマリン、キサンテン、チオキサンテン、アゾ色素等が使用できる。これらの内で特に好ましい例は、カチオン色素としてのシアニン、カルボシアニン、へミシアニン、メチン、ポリメチン、トリアリールメタン、インドリン、アジン、チアジン、キサンテン、オキサジン、アクリジン、ローダミン、およびアザメチン色素から選ばれる色素である。これらのカチオン性色素との組み合わせに於いては特に高感度でかつ保存性に優れるために好ましく使用される。さらには近年380〜410nmの範囲に発振波長を有するバイオレット半導体レーザーを搭載した出力機(プレートセッター)が開発されている。この出力機に対応する高感度である感光系としては増感色素としてピリリウム系化合物やチオピリリウム系化合物を含む系が好ましい。本発明に関わる好ましい増感色素の例を以下に示す。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
750nm以上の近赤外から赤外光の波長領域の光に感光性を持たせる系に於いて増感色素として特に好ましい例を以下に示す。
【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
上記のような増感色素と重合開始剤との量的な比率に於いて好ましい範囲が存在する。増感色素1重量部に対してトリハロアルキル置換化合物は0.01重量部から100重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0037】
本発明に使用される重合性ポリマーとして、以下に記載の側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーのに属することが好ましい。側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーを使用する事が好ましい。側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0038】
上記のポリマー側鎖に重合性二重結合を導入する場合のモノマーとしては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、1−プロペニル−アクリレート、1−プロペニル−メタクリレート、β−フェニル−ビニル−メタクリレート、β−フェニル−ビニル−アクリレート、ビニルメタクリルアミド、ビニルアクリルアミド、α−クロロ−ビニル−メタクリレート、α−クロロ−ビニル−アクリレート、β−メトキシ−ビニル−メタクリレート、β−メトキシ−ビニル−アクリレート、ビニル−チオ−アクリレート、ビニル−チオ−メタクリレート等が挙げられる。
【0039】
本発明に用いられるポリマーとして特に好ましくは、重合性二重結合としてビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーである。ビニル基が置換したフェニル基は直接もしくは連結基を介して主鎖と結合したものであり、連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。また、前記フェニル基は置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記化11で表される基を側鎖に有するものである。
【0040】
【化11】

【0041】
式中、Z1は連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は置換可能な基または原子を表す。n1は0または1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0042】
上記一般式について更に詳細に説明する。Z1の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記化12で表される基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0043】
【化12】

【0044】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
化11で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
上記化11で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R1及びR2が水素原子でR3が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、Z1の連結基としては複素環を含むものが好ましく、k1は1または2であるものが好ましい。
【0050】
化11で示される基を有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーの例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【0055】
【化21】

【0056】
本発明のポリマーは、更に他のモノマーを共重合体成分として含んでもよい。他のモノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマー、が挙げられる。
【0057】
本発明に係わるポリマーの分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量として1000から100万の範囲にあることが好ましく、さらに5000から50万の範囲にあることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の有機ホウ素塩としては、化22で示される有機ホウ素アニオンを有する化合物を用いることである。
【0059】
【化22】

【0060】
化22において、R11,R12,R13およびR14は各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11,R12,R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0061】
上記の有機ホウ素塩としては、先に示した化22で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を以下に示す。
【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
感光層中に於ける有機ホウ素塩の割合については好ましい範囲が存在し、感光層トータル100質量部において該有機ホウ素塩は0.05質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0065】
本発明の感光性平版印刷版の感光層は、重合性モノマーを含有するのが好ましい。これを組み合わせることによって更に高感度が実現でき、また印刷性能に優れた平版印刷版を得ることができる。
【0066】
重合性モノマーとしては、重合性二重結合を有する重合性化合物が挙げられる。好ましい重合性モノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。
【0067】
或いは、上記の重合性化合物に代えてラジカル重合性を有するオリゴマーも好ましく使用され、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用されるが、これらもエチレン性不飽和化合物として同様に好ましく用いることができる。
【0068】
重合性モノマーとして、更に好ましい態様は、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上を有する重合性化合物が挙げられる。該化合物を使用した場合に於いて、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、高感度の感光性平版印刷版を作製する上で極めて好ましい。
【0069】
分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する重合性化合物は、代表的には下記一般式で表される。
【0070】
【化25】

【0071】
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
【0072】
更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R25)−、−C(O)−O−、−C(R26)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR25及びR26は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0073】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0074】
上記化25で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k2は2〜10の化合物が好ましい。以下に化25で表される化合物の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0075】
【化26】

【0076】
【化27】

【0077】
【化28】

【0078】
上記のような重合性モノマーが、感光性平版印刷版の感光層中に占める割合に関しては好ましい範囲が存在し、感光層トータル100質量部中において重合性モノマーは1質量部から60質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに5質量部から50質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0079】
本発明の感光性平版印刷版の感光層に着色剤を含有する事が好ましい。画像部の視認性を高めるる為に使用されるものであるが、更に好ましくは、セーフライト性向上の為に、可視光領域に吸収を有するものである。又、画質向上の為に、感光波長域の着色剤を含有する事も好ましい。これら着色剤の例としては、下記のような、無機顔料、有機顔料、色素などが挙げることができる。
【0080】
無機顔料としては、雲母状酸化鉄、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、二酸化チタン、被覆雲母、ストンチームクロメート、チタニウムイエロー、ジンククロロメート、モリブデン赤、酸化クロム、鉛酸カルシウム等が挙げられる。又、有機顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アンスロン顔料、キナクリドン顔料、アンスラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、インダスロン顔料、ピランスロン顔料等が挙げられる。又、色素としては、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素が挙げられる。
【0081】
上記顔料、色素は、単独で用いてもかまわないが、2種以上を併用して用いてもよい。
【0082】
感光性平版印刷版を構成する他の要素として重合禁止剤の添加も好ましく行う事ができる。例えば、キノン系、フェノール系等の化合物が好ましく使用され、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、カテコール、t−ブチルカテコール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の化合物が好ましく用いられる。これらの重合禁止剤と先に述べたエチレン性不飽和化合物との好ましい割合は、エチレン性不飽和化合物質量部に対して0.001から0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0083】
本発明に使用される支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。ここでの研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板とは、一般に平版印刷版に使用されるアルミニウム支持体が使用される。一般に平版印刷版に使用されるアルミニウム支持体とは、印刷時における湿し水に対する濡れ(保水性)を良くするため、また感光層との密着を良くするため、その表面を粗面化することが行われる。この粗面化処理(いわゆるグレイニング)には、ボールグレイニング、ワイヤグレイニング、ブラシグレイニング等の機械的粗面化処理、塩化物、フッ化物等で化学的にアルミニウムを溶解することにより行う化学的粗面化処理、及び電気化学的にアルミニウムを溶解することにより行う電解粗面化処理、及びこれらの方法を併用した粗面化方法が知られている。例えば特開昭48−28123号、特開昭53−123204号、特開昭54−146234号、特開昭55−25381、特開昭55−132294号、特開昭56−55291号、特開昭56−150593号、特開昭56−28893号、特開昭58−167196号、米国特許第2,344,510号、米国特許第3,861,917号、米国特許第4,301,229号などがある。アルミ板の表面形状についても、米国特許第2,344,510号は機械的粗面化と電解粗面化を行い重畳的に複合した砂目構造、米国特許第4,301,229号はピット径の累積度数分布と中心線平均粗さ、米国特許第3,861,917号は粗面の深さ、カナダ特許第955449号は粗面の山の高さと直径、西ドイツ特許第1,813,443号は粗面の高低差についてそれぞれ記載されている。このような粗面化処理を行った後、硫酸、リン酸、硝酸あるいはそれらの混合液などの電解液中で陽極酸化処理が施される。
【0084】
本発明の現像液としては、pH8以上であれば、任意のアルカリ水溶液を使用することができる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウムおよび第3リン酸アンモニウム等の無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルエタノールアイミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−アミノエチルプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびケイ酸リチウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩やケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
本発明に用いられる現像液にはその他の種々界面活性剤と併用することができ、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの併用する界面活性剤は、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0086】
本発明に用いられる現像液には、種々の現像安定化剤を用いる事ができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩及びジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオン性ポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸又はアルコールニ4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0087】
本発明に用いられる現像液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であり、含有物にもよるが、通常、濃縮液:水=1:0〜1:10程度に濃縮する事ができる。又、容器としてはアルカリ性であることから、炭酸ガスを透過しない、しかも安全上輸送中に破損することのない材料を用いることが好ましく、通常ハードボトル、キュービテナー等の樹脂製容器が好ましく用いられる。
【0088】
本発明の処理方法においては、露光後通常自動現像機で処理を行う。自動現像機は、一般に現像部と後処理部とからなり、印刷版を搬送する装置と、各処理液槽及びスプレー槽から成り、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで組み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像及び後処理するものである。又、最近は現像液が満たされた現像槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて現像処理する方法が開発されており、この様な現像方法も本発明に好適に適用できる。この様な自動現像液においては、現像処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0089】
この様な組成の現像液で現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明の印刷版の後処理はこれらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理がリンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水性水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。この様な自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することが出来る。また、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。この様な処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、印刷に用いられる。
【実施例1】
【0090】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の部は質量部を、%は質量%を示す。
【0091】
下記処方によるA液、B液、C液をそれぞれ作製した後、密閉容器に入れ、表1の様に混合し感光性塗布液を作製した。この感光性塗布液を厚みが0.29mmである砂目立て処理および陽極酸化処理を施したアルミニウム板上に乾燥膜厚が4μmになる様に塗設しサンプル1から9を作製した。
【0092】
<A液−1>
ポリマー 化17(P−3)10%ジオキソラン溶液
300質量部
有機ホウ素塩 化24(BC−5) 4質量部
エチレン性不飽和化合物
化26(C−5) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
増感色素 化9(S−33) 0.8質量部
着色剤
25%フタロシアニン顔料MEK分散物 15質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 35質量部
シクロヘキサノン 10質量部
<B液−1>
トリハロアルキル置換化合物
化1(T−4) 1質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 35質量部
シクロヘキサノン 10質量部
<A液−2>
ポリマー 化17(P−3)10%ジオキソラン溶液
300質量部
有機ホウ素塩 化24(BC−5) 4質量部
エチレン性不飽和化合物
化26(C−5) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
増感色素 化9(S−33) 0.8質量部
着色剤
25%フタロシアニン顔料MEK分散物 15質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.2質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 70質量部
シクロヘキサノン 20質量部
<B粉体−2>
トリハロアルキル置換化合物
化1(T−4) 1質量部
<A液−3>
ポリマー 化17(P−3)10%ジオキソラン溶液
300質量部
エチレン性不飽和化合物
化26(C−5) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
着色剤
25%フタロシアニン顔料MEK分散物 15質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 25質量部
シクロヘキサノン 20質量部
<B液−3>
トリハロアルキル置換化合物
化1(T−4) 1質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 20質量部
<C液−3>
有機ホウ素塩 化24(BC−5) 4質量部
増感色素 化9(S−33) 0.8質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 25質量部
<A液−4>
ポリマー 化17(P−3)10%ジオキソラン溶液
300質量部
有機ホウ素塩 化24(BC−5) 4質量部
エチレン性不飽和化合物
化26(C−5) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
着色剤
25%フタロシアニン顔料MEK分散物 15質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール 0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 35質量部
シクロヘキサノン 10質量部
<B液−4>
増感色素 化9(S−33) 0.8質量部
トリハロアルキル置換化合物
化1(T−4) 1質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール
0.1質量部
溶媒 1,3−ジオキソラン 35質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0093】
【表1】

【0094】
作製したサンプルを830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター、大日本スクリーン製造(株)製PT−R4000を使用して、ドラム回転速度1000rpm解像度2400dpi、レーザー照射エネルギー16mJ/cm2〜100mJ/cm2、の露光量で175線2%の網点画像の露光を行った。露光後に自動現像機として大日本スクリーン製造(株)製PS版用自動現像機P−1310Tを使用し、下記現像液を使用して現像処理28℃の液温で17秒間処理を行なった。
【0095】
<現像液>
35%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
(花王(株)製界面活性剤) 30g
KOH 25g
20%珪酸カリ水溶液(SiO2を20%含む) 50g
N−アミノエチルエタノールアミン 30g
水で 1L
【0096】
上記の様にして作製したサンプルについて、175線2%網点画像の再現できる露光量を、下記評価基準で評価し感度とし、表2に結果をまとめた。
【0097】
感度
○ :16mJ/cm2の露光量で完全に再現。
○△:17mJ/cm2以上〜32mJ/cm2未満の露光量で完全に再現。
△ :32mJ/cm2以上〜48mJ/cm2未満の露光量で完全に再現。
× :完全に再現するため48mJ/cm2以上必要。
【0098】
【表2】

【0099】
結果より、本発明のトリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に感光性塗布液を分割して作製したサンプル1から8は、比較例に対して経時保存後も有意さを持って高感度であることが判る。更に経時時間4週間までのサンプルについてはより好ましい結が得られた。この事より、混合前の段階で回収した液は、6週間の間随時混合、塗布し感光性組成物を作製する事が可能であることが判る。
【実施例2】
【0100】
実施例1同様のA液、B液、C液をそれぞれ作製した後、密閉容器に入れ、表3の様に混合し感光性塗布液を作製した。この感光性塗布液を厚みが0.29mmである砂目立て処理および陽極酸化処理を施したアルミニウム板上に乾燥膜厚が4μmになる様に塗設しサンプル10から19を作製した。
【0101】
【表3】

【0102】
作製したサンプルを830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター、大日本スクリーン製造(株)製PT−R4000を使用して、ドラム回転速度1000rpm解像度2400dpi、レーザー照射エネルギー100mJ/cm2の条件で印刷テストチャート画像の露光を行った。露光後に自動現像機として大日本スクリーン製造(株)製PS版用自動現像機P−1310Tを使用し、実施例1と同様の現像液を使用して現像処理30℃の液温で15秒間処理を行ない、続いて下記処方のガム液を塗布した。
【0103】
<ガム液>
リン酸1カリ 5g
アラビアガム 30g
デヒドロ酢酸 0.5g
EDTA2Na 1g
水で 1L
【0104】
上記のようにして作製した平版印刷版について、印刷試験を行った。印刷試験として、印刷機スプリント26((株)小森コーポレーション製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ化学工業(株)社製のGEOS−G藍H)及び給湿液(日研化学研究所(株)製のアストロマーク3)を使用して印刷した。耐刷性については印刷物を総合的に見て判断した。特に、175線2%の網点、20ミクロンの細線が再現されている事を可否の判断材料にし下記評価基準で評価した。又、現像安定性を評価するために、耐刷性に対する現像ラチチュードを見る為に、現像処理28℃の液温で15秒から1秒ずつ現像時間を変化さる事以外上記と同様にして平版印刷版を作製し、下記現像ラチチュード評価基準で評価した。これらの結果を表4にまとめた。
【0105】
耐刷性
○ :20万枚以上
○△:15万枚〜20万枚
× :15万枚未満
現像ラチチュード
○ :上記耐刷性評価基準○から○△の範囲である現像秒数が10秒以上ある。
○△:上記耐刷性評価基準○から○△の範囲である現像秒数が5〜10秒ある。
× :上記耐刷性評価基準○から○△の範囲である現像秒数が5秒未満しかない。
【0106】
【表4】

【0107】
上記結果より、本発明の感光性塗布液10から17は、耐刷性、現像ラチチュード共に良好な結果を示す事が判る。特にA、B、C液を混合した後、6日以内に塗布されたサンプルは、良好な耐刷性、現像ラチチュードを示す事が判る。
【0108】
以上の結果より、本発明によって、経時保存しても感度の安定した感光性塗布液を得る事がでる。又実際に塗布に使用されない感光性塗布液を廃棄する事となく、生産効率が向上した感光性組成物の製造方法であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の感光性塗布液の混合形態例で、2液系での感光性塗布液混合方法を示す概略模式図である。
【図2】本発明の感光性塗布液の混合形態例で、2液系での感光性塗布液混合方法を示し、図1における混合釜兼塗布液釜6の代わりにインラインミキサーによってインライン混合する感光性塗布液調整方法を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0110】
1:モータ
2:攪拌羽根
3:液A作製釜
4:液B作製釜
5:弁
6:2液混合釜兼塗布液釜
7:塗布機
8:インラインミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性ポリマー、トリハロアルキル置換化合物及び、380nmから1300nmの波長域において増感する増感色素を少なくとも含有する感光性組成物を製造する方法に於いて、トリハロアルキル置換化合物と増感色素が共存しない様に、該感光性組成物の塗布液を分割して作製した後に、保存し塗布開始前にこれらを混合して塗布する感光性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記感光性組成物が、有機ホウ素塩を含有する事を特徴とする請求項1記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記重合性ポリマーが、側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーである事を特徴とする請求項1又は2記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記感光性組成物の塗布液を分割して作製し保管した後、混合して塗布液を成し、塗布する時間からさかのぼって1週間以内に支持体上に塗布し乾燥する事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記感光性組成物の塗布液を分割して作製した後、6週間以内に混合し支持体上に塗布し乾燥する事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記感光性組成物の塗布液を分割して作製した後の混合を、塗布機に送液する配管の途中で行う事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記感光性組成物が感光性平版印刷版である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−267339(P2006−267339A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83247(P2005−83247)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】