説明

感圧式接着剤組成物

【課題】初期接着性(タック)、基材との密着性、耐熱性、耐湿熱性および透明性に優れた接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物、および該感圧式接着剤組成物を用いてなる積層体を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応により得られる、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)に環状エステル化合物(b)が開環付加し、さらに水酸基に付加し得る化合物(c)が付加してなる側鎖を有する付加型ポリエステル樹脂(A)と、前記付加型ポリエステル樹脂(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含有することを特徴とする感圧式接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体との接着性、耐熱性、耐湿熱性および透明性に優れた感圧式接着剤組成物に関するものであり、特に光学部材の積層に好適な感圧式接着剤組成物およびそれを用いてなる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする。
LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。
また、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。
さらにFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0003】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるものであるから、感圧式接着剤は、まず透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている。
ところで、前記した種々のフィルムのうち偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系やシクロオレフィン系の保護フィルムで挟んだ3層構造を呈する。各層を構成する材料の特性故に、そもそも熱や湿度によって、偏光フィルムは伸縮による顕著な寸法変化を生ずる。
【0004】
また近年では、光学部材の接着処理おいて、光を有効利用するという観点から、光学部材と被着体との間における屈折率差に基づく界面反射の抑制が求められ、光学部材の屈折率と被着体の屈折率との中間の屈折率を有する感圧式接着剤層(以下、「接着剤層」という。)の使用が有利であることが知られている。ちなみに界面での屈折率差が大きいと全反射を生じる入射角が小さくなり、光の有効利用度を低下させる。
【0005】
しかしながら従来のアクリル系樹脂を用いた接着剤層の屈折率は、1.46前後であるのに対して、光学部材を形成する材料の屈折率は、例えばガラスで1.52前後、メタクリル系樹脂で1.51前後、ポリカーボネート系樹脂で1.54前後、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で1.60前後であるため、両者の屈折率の差が大きく、また例えばガラスからなる光学部材とメタクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはPET樹脂からなる光学部材とを接着する際に、前記した中間の屈折率を得ることもできない。
【0006】
従って、偏光フィルムを液晶セル用のガラス部材に貼着するためのアクリル系感圧式接着剤は、偏光フィルム自体の寸法変化を抑えることや、接着剤層の屈折率をより高めることが求められる。
このために、感圧式接着剤層自体を硬くしたり、接着強さを大きくしたりすることによって、比較的小さい寸法の変化、あるいは比較的短期間の寸法の変化を抑制することはできる。また芳香環含有の単量体を使用したり、芳香族化合物や硫黄原子を含む化合物、あるいは無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である。
【0007】
しかし、近年の液晶パネルの大画面化に伴い、偏光フィルムのサイズも大型化し、偏光フィルムの熱変形量が増大するようになった。従来の感圧式接着剤を使用した場合、接着剤層に残る貼着時の応力の緩和が十分ではないので、偏光フィルムのひずみに接着剤層が十分には追随できず、その結果、大型液晶パネルを高温に曝したり、高湿度に曝したりすると、偏光フィルムの変色や透明性の低下を引き起こしたり、偏光フィルムが大型液晶セルのガラス基板から剥がれたり、偏光フィルムに応力集中が生じ、大型液晶パネルに光漏れが生じたり、あるいは揮発性ガスを発生するという問題もある。
【0008】
また、液晶パネルを長期にわたって使用する間にも偏光フィルムは寸法変化し、その応力が接着剤層に蓄積されることとなる。応力が接着剤層に蓄積され続けると、偏光フィルムと液晶セル用ガラス部材間の接着力の分布が不均一となる。そして、長期間の使用中に特に偏光フィルムの周縁部に応力が集中し、その結果液晶素子の周縁部が中央より明るかったり、あるいは暗くなったりするなどの液晶素子表面に色むら・白ヌケが発生する。
【0009】
また、液晶セル用のガラス面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後、検品工程において、積層工程でのエアーや粉塵の巻き込み等のあるものについては、ガラスセル面から偏光フィルム等を剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直すことが行われる。
しかし、貼着後一般に積層体は、接着性促進のために高温下で一定時間保管し、その後検査されるので、その間に剥離強度が高くなり過ぎ、偏光フィルム等を剥ぎ取り難いばかりでなく、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不十分である。
【0010】
上記したように、液晶セル用のガラス部材に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤には、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等が求められる。そして、位相差フィルムや各種ディスプレイのカバーフィルムを積層するための感圧式接着剤にも同様の性能が求められる。
【0011】
これら種々の要求に対して、従来、様々な感圧式接着剤が提案されてきた。
例えば、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを主成分とするアクリル系樹脂からなる感圧式接着剤であって、該感圧式接着剤が重量平均分子量10万以下の樹脂成分を15重量%以下含有し、かつ重量平均分子量100万以上のポリマー成分を10重量%以上含有するアクリル系樹脂からなる感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
更に、重量平均分子量が100万以上である高分子量(メタ)アクリル系共重合体100重量部と、重量平均分子量が3万以下の低分子量(メタ)アクリル系共重合体20〜200重量部と、多官能性化合物0.005〜5重量部からなる偏光板用感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
更に、反応性官能基を含有する重量平均分子量100万〜250万の高分子量アクリル系樹脂とガラス転移温度(Tg)が0℃〜−80℃の重量平均分子量3万〜10万の低分子量アクリル系樹脂と、それらと架橋構造が形成可能な官能基を有する多官能性化合物とからなる偏光フィルム用感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
更に、芳香環含有単量体を少なくとも共重合成分とし、その芳香環含有単量体成分の共重合割合が全モノマー成分の40〜90重量%であるアクリル系共重合体を少なくとも成分とする、屈折率を制御した感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
更に、アクリル系感圧式接着剤40〜90重量%にタッキファイヤー樹脂10〜60重量%を含有させて屈折率を制御した感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献5参照)。
前記の、アクリル系樹脂を感圧式接着剤として用いることにより、接着層の発泡や偏光板の液晶セルからの浮き剥がれは抑制できるが、偏光板の寸法変化による応力を吸収・緩和することができず、偏光板の周縁部に応力が集中するため、液晶表示装置の周縁部と中央部の明るさが異なり、液晶表示装置表面に色むら・白ぬけが発生する問題があった。更に接着剤層の屈折率を調整するためには、このアクリル系樹脂に芳香族成分を多量に共重合したり、含有させたりする必要があるため、透明性が低下したり、初期接着(タック)の低下のために微少の浮きが発生したり、剥がれやすくなったり、また、高温下や高湿度下で一定時間保管した場合には着色したりして、接着物性と屈折率とのバランスがうまく維持できず、液晶表示装置における画像コントラストおよび視認性を低下させる問題もあった。
【0016】
感圧式接着剤には、アクリル系樹脂と架橋剤とを含有するアクリル系感圧式接着剤の他に、アクリル系樹脂にポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を併用してなるものもある。
例えば、ガラス転移温度(Tg)が−60〜−5℃の粘弾性樹脂とガラス転移温度(Tg)が−5℃以下のポリウレタン系樹脂等の弾性樹脂とを混合してなる感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0017】
また、アクリル系樹脂100重量部と、アミノ基含有ポリウレタン系樹脂を10〜50重量部含有する感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0018】
更に、アクリル系樹脂と、水酸基含有ポリウレタン系樹脂とを含有する感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献8参照)。
【0019】
更に、アクリル系樹脂と、ポリカプロラクトン等のポリエステル系樹脂とを含有する感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献9参照)。
【0020】
様々な樹脂を混合してなる感圧式接着剤は、各樹脂の短所を相互に補いあい、被着体との接着性を高めたり、屈折率を上げたり、様々な性能を向上したりできると一般には考えられる。しかし、アクリル系樹脂と、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂とは相溶性が悪く、アクリル系樹脂に対し、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を少量混合する程度であれば透明性をさほど損なうことはないが、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を多く混合しようとすると、感圧式接着剤自体が白化したり、分離したりする。偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着するための感圧式接着剤には、極めて高度な透明性が要求される。そして、上記のような、相溶性の悪い感圧式接着剤を用いて偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着しようとしても、接着剤層に相分離や揺らぎが発生してしまうという問題点があった。
【0021】
一方、ダイマー酸と、30mol%以上の側鎖にアルキル基を有するグリコール成分との共重合ポリエステル樹脂からなり、ガラス転移温度(Tg)が−60〜0℃の範囲である感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献10参照)。
【0022】
また、ポリカーボネートジオールを必須としたジオール成分と、炭素数が2〜20の脂肪族または脂環族の炭化水素基を分子骨格とするジカルボン酸を必須としたジカルボン酸成分とから合成される、重量平均分子量1万以上のポリエステルを含んでなる感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献11参照)。
【0023】
また、ポリラクトン構造を主鎖に有する、重量平均分子量1万以上の生物分解性ポリエステルを含有することを特徴とする感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献12参照)。
【0024】
また、側鎖にメチル基を有するグリコールとカルボン酸とのエステルをポリイソシアネートで連結した単位が繰り返されてなり、かつTgが−40℃以下の脂肪族ポリエステルからなる感圧式接着剤が知られている(例えば、特許文献13参照)。
【0025】
これらのポリエステル系樹脂を使用した感圧式接着剤は、アクリル系樹脂の短所、特に耐熱性あるいは耐湿熱性を向上したりできると一般には考えられる。しかし、初期接着性(タック)が低すぎたり、凝集力が無かったりして感圧式接着剤としての機能を維持できない。また、これらは相溶性が不十分であり、このため、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムに適用した場合、粘着剤層に相分離や揺らぎ、はみ出しが発生してしまうとともに、これらを起点として、発泡やズレ等の現象を引き起こすだけでなく、貼着後、剥離強度が高くなり過ぎ、偏光フィルム等を剥ぎ取り難いばかりでなく、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不十分であるため、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムを貼着するための感圧式接着剤には適さない。
【0026】
また、線状ポリエステル樹脂の側鎖にラクトン類が開環付加重合した構造を有する変性ポリエステル樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献14参照)。
【0027】
また、ジグリシジル化合物とジカルボン酸化合物との重付加反応により生成する化合物の2級水酸基にラクトンを開環付加することを特徴とする、水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法が知られている(例えば、特許文献15参照)。
【0028】
また、ポリマー中のグリシジル基に対して、カルボン酸化合物を反応させて生じる水酸基に、ラクトン系単量体を開環付加重合させることを特徴とするラクトングラフト共重合体の製造方法が知られている(例えば、特許文献16参照)。
【0029】
また、分子中に少なくとも2個以上のグリシジル基を有するグリシジル化合物と多塩基性カルボン酸との反応物と、更に多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られるポリカルボン酸樹脂を含む樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献17参照)。
【0030】
また、エポキシ樹脂と不飽和基含有カルボン酸またはその無水物との反応物を、さらに多塩基性カルボン酸またはその無水物(c)と反応させて得られる不飽和基含有樹脂が知られている(例えば、特許文献18参照)。
【0031】
これらのポリエステル系樹脂は、広範囲の被着体に対して優れた接着性を有し、かつ耐薬品性等の耐久性を有することから、塗料用のバインダー樹脂やホットメルト型接着剤としてさまざまな分野で用いられている。しかし、一般的に樹脂の溶融温度、溶融粘度が高かったり、低沸点溶剤に溶解困難であったり、架橋剤を配合した場合にはポットライフが短かったりするため、塗装時や接着時の作業性がかなり劣る。また、初期接着性(タック)等が乏しいため、溶融あるいは溶剤に溶解したポリエステル系樹脂を被着体に塗布し冷却すると被着体に対する濡れが乏しく、接着が不可能になるなどの問題点がある。更に、貼着後、剥離強度が高くなり過ぎ、再剥離性が不十分であるため、感圧式接着剤には適さない。
【特許文献1】特開平01−066283号公報
【特許文献2】特開平10−279907号公報
【特許文献3】特開2002−121521号公報
【特許文献4】特開2003−013029号公報
【特許文献5】特開2002−014225号公報
【特許文献6】特開2003−073646号公報
【特許文献7】特開2004−002827号公報
【特許文献8】特開2004−083648号公報
【特許文献9】特開2002−053835号公報
【特許文献10】特開平04−328186号公報
【特許文献11】特開平09−263749号公報
【特許文献12】特開平11−158452号公報
【特許文献13】特開平11−021340号公報
【特許文献14】特開平06−025395号公報
【特許文献15】特開平08−165337号公報
【特許文献16】特開平09−077855号公報
【特許文献17】特開2003−107694号公報
【特許文献18】特開2005−352472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の課題は、初期接着性(タック)、基材との密着性、耐熱性、耐湿熱性および透明性に優れた接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物、および該感圧式接着剤組成物を用いてなる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。
即ち、第1の発明は、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応により得られる、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)に環状エステル化合物(b)が開環付加し、さらに水酸基に付加し得る化合物(c)が付加してなる側鎖を有する付加型ポリエステル樹脂(A)と、前記付加型ポリエステル樹脂(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含有することを特徴とする感圧式接着剤組成物に関する。
【0034】
また、第2の発明は、多塩基酸(a−1)が、下記一般式(1)であることを特徴とする第1の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0035】
【化1】

【0036】
〔式(1)中、A1〜A4は、それらの内の2つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の3つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OH、他の1つが−C(=O)−Xa−Ra(但し、Xaは、−O−、若しくは−N(Ra2)−であり、Raは、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基、Ra2は、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基である)のいずれかの組合せであって、X1は下記式(2)〜(5)のいずれかで示される四価の基である。〕
【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
〔式(4)中、R2は、炭素−炭素間の単結合、あるいは−CH2−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)OCH2CH2OC(=O)−、−C(=O)OCH(OC(=O)CH3)CH2OC(=O)−、−SO2−、−C(CF32−、または下記式(4−1)若しくは式(4−2)で示される二価の基である。〕
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
〔式(5)で示される構造が有する炭素数は4〜20であって、
式(5)中、R3は、炭素−炭素間の単結合、−O−、または炭素数1〜8の炭化水素基であり、
4、R5、R6、R9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基であるか、または、R4とR6とおよび/またはR5とR9とで直接結合して不飽和二重結合を形成してもよく、
7、R8はそれぞれ独立に水素原子、若しくは炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、またはR7とR8とで直接結合または炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とまたはR3とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を複数形成しても良い。〕
【0045】
また、第3の発明は、一価の重合体部位(P)が、ポリエーテル、ポリエステル、およびビニル共重合体からなる群から選択されることを特徴とする第2の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0046】
また、第4の発明は、一価の重合体部位(P)が、下記式(6)で示される一価のポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体部位(Pe)であることを特徴とする第2または第3の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0047】
【化8】

【0048】
〔式(6)中、Y1は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、窒素原子数0〜3からなる1価の末端基、
2は、−O−、−S−、−N(Rb)−(ただし、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
3は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH2−、−N(Rc)C(=O)−、または−N(Rc)C(=O)CH2−(ただし、Rcは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
1は、−R11O−で示される繰り返し単位であり、
2は、−C(=O)R12O−で示される繰り返し単位であり、
3は、−C(=O)R13C(=O)−OR14O−で示される繰り返し単位であり、
11は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
12は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
13は炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
14は、−CH(R15)−CH(R16)−の構造で示され、
15とR16は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部の炭素原子数が1〜20であるアルキルオキシメチル基、アルケニル部の炭素原子数が2〜20であるアルケニルオキシメチル基、アリール部の炭素原子数が6〜20であり、かつ、ハロゲン原子で置換されていても良いアリールオキシメチル基、N−メチレン−フタルイミド基のいずれかであって、
17は、上記R11、R12または−C(=O)R13C(=O)−OR14−であり、
m1は0〜100の整数、m2は0〜60の整数、m3は0〜30の整数、ただしm1+m2+m3は1以上100以下であり、
式(6)中の繰り返し単位G1〜G3の順序はどのようなものでも良く、また、ランダム型又はブロック型のどちらでも構わない。〕
【0049】
また、第5の発明は、Y1が炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする第4の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0050】
また、第6の発明は、Y1がエチレン性不飽和二重結合を有することを特徴とする第4の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0051】
また、第7の発明は、m2が3〜15の整数であることを特徴とする第4ないし第6いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0052】
また、第8の発明は、一価の重合体部位(P)が、下記式(7)で示される一価のビニル共重合体(Pv)であることを特徴とする第2または第3の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0053】
【化9】

【0054】
〔式(7)中Y2は、ビニル重合体の重合停止基であり、
21およびR22は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、
23およびR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、又は−C(=O)−X6−R25(但し、X6は、−O−若しくは−N(R26)−であり、R25、R26は水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記アルキル基は、置換基として芳香族基を有していてもよい)であり、
4は、−O−R27−または−S−R27−であり、R27は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
5は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH2−、−N(Rd)C(=O)−、または−N(Rd)C(=O)CH2−(ただし、Rdは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
nは2〜50の整数である。〕
【0055】
また、第9の発明は、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の環状エーテル基が、グリシジル基及び/又はオキセタニル基であることを特徴とする第1ないし第8いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0056】
また、第10の発明は、環状エステル化合物(b)が、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)であることを特徴とする第1ないし第9いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0057】
また、第11の発明は、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)が、ラクトン類であることを特徴とする第10の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0058】
また、第12の発明は、水酸基に付加し得る化合物(c)が、シリル化剤類、単官能イソシアネート化合物類、もしくは酸無水物類のいずれかであることを特徴とする第1ないし第11いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0059】
また、第13の発明は、付加型ポリエステル樹脂(A)が、反応触媒として第4級アンモニウム塩を用いて得られるものであることを特徴とする第1ないし第12いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0060】
また、第14の発明は、付加型ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gであることを特徴とする第1ないし第13いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0061】
また、第15の発明は、反応性化合物(B)がポリイソシアネート化合物であることを特徴とする第14の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0062】
また、第16の発明は、付加型ポリエステル樹脂(A)の酸価が、0.1〜50mgKOH/gであることを特徴とする第1ないし第13いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0063】
また、第17の発明は、反応性化合物(B)がエポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、もしくは金属キレート化合物のいずれかであることを特徴とする第16の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0064】
また、第18の発明は、付加型ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が−80〜10℃であることを特徴とする第1ないし第17いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0065】
また、第19の発明は、付加型ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が2,000〜1,000,000であることを特徴とする第1ないし第18いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0066】
さらに、第20の発明は、第1ないし第19いずれかの発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関する。
【0067】
さらにまた、第21の発明は、液晶セル用ガラス部材、第1ないし第19いずれかの発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0068】
本発明により、初期接着性(タック)、基材との密着性、耐熱性、耐湿熱性、屈折率制御性および透明性に優れた接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物を提供できるようになった。
本発明の感圧式接着剤組成物を用いることにより、特に耐熱性や耐湿熱性を必要とされる光学部材用途においては、従来よりも過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、偏光板の伸縮等により生じる応力集中を緩和して液晶素子に色むら・白ぬけを発生させないだけでなく、必要に応じて、その屈折率を調整可能な光学部材を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明に用いられる、水酸基を有する直鎖状ポリエステル樹脂(a)は、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)とを重付加反応させることにより得ることができる。
【0070】
本発明に好ましく用いられる、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)としては、下記式(1)で表され、カルボキシル基を2個又は3個有する特定の構造を有しているものを挙げることができる。
【0071】
【化10】

【0072】
ここで、式(1)中、A1〜A4は、それらの内の2つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の3つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OH、他の1つが−C(=O)−Xa−Ra(但し、Xaは、−O−、若しくは−N(Ra2)−であり、Raは、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基、Ra2は、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基である)のいずれかの組合せであって、X1は下記式(2)〜(5)のいずれかで示される四価の基であることを特徴としている。
【0073】
【化11】

【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
〔式(4)中、R2は、炭素−炭素間の単結合、あるいは−CH2−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)OCH2CH2OC(=O)−、−C(=O)OCH(OC(=O)CH3)CH2OC(=O)−、−SO2−、−C(CF32−、または下記式(4−1)若しくは式(4−2)で示される二価の基である。〕
【0077】
【化14】

【0078】
【化15】

【0079】
【化16】

【0080】
〔式(5)で示される構造が有する炭素数は4〜20であって、
式(5)中、R3は、炭素−炭素間の単結合、−O−、または炭素数1〜8の炭化水素基であり、
4、R5、R6、R9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基であるか、または、R4とR6とおよび/またはR5とR9とで直接結合して不飽和二重結合を形成してもよく、
7、R8はそれぞれ独立に水素原子、若しくは炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、またはR7とR8とで直接結合または炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とまたはR3とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を複数形成しても良い。〕
式(5)で示される部位の好ましい構造としては以下に挙げられる。
【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
【化22】

【0087】
【化23】

【0088】
【化24】

【0089】
【化25】

【0090】
〔式(16)は、式(5)において、R3が三価の炭化水素基〔>CH−CH2−〕であり、R8が二価の炭化水素基〔−CH=C(CH3)−〕である場合である。〕
【0091】
【化26】

【0092】
〔式(17)は、式(5)において、R3とR7とR8とで四価の炭化水素基〔>CH−CH2−CH2−CH<〕を形成して多環状基X1を形成した場合である。〕
【0093】
【化27】

【0094】
〔式(18)は、式(5)において、R3とR7とR8とで四価の炭化水素基〔>CH−CH=CH−CH<〕を形成して多環状基X1を形成した場合である。〕
【0095】
【化28】

【0096】
【化29】

【0097】
〔式(20)は、式(5)において、R3とR7とR8とで四価の炭化水素基〔(−CH2−)2CH−CH(−CH2−)2〕を形成して多環状基X1を形成した場合である。〕
【0098】
上記式(1)中で、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から、X1が芳香環を含むことが好ましく、上記式(2)ないし式(4)のいずれかで示されるものがより好ましい。さらに好ましくは式(2)の場合、あるいは、式(4)でR2が−C(=O)−、−C(=O)OCH2CH2OC(=O)−、−SO2−、若しくは下記式(4−1)のいずれかの場合である。
【0099】
【化30】

【0100】
さらに、A1〜A4は、それらの内の2つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CHC(=O)OHの組合せであることが好ましい。最も好ましくは、A1〜A4は、それらの内の2つが分子量200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OHの組合せである場合である。
【0101】
また、前記式(1)において、A1〜A4中の1つまたは2つである一価の重合体部位(P)は、数平均分子量が200〜5000であり、この部位が初期接着性(タック)発現部分となり、表面基材への密着性を向上させる。更に好ましくは数平均分子量が500〜4000の場合であり、最も好ましくは800〜3500である。ここで、重合体部位(P)に分子量分布が存在する場合、重合体部位(P)の数平均分子量(Mn)が200未満の場合、初期接着性(タック)が低減し、接着特性バランス(特に、タックと凝集力の両立)を維持することが困難となるため好ましくない。また5000を超える場合、重合体部位(P)の絶対量が増えてしまい、耐熱性や耐湿熱性が低下したり、感圧式接着剤の粘度が高くなったりするため好ましくない。
【0102】
ここで、重合体部位(P)はポリエーテル、ポリエステル、およびビニル共重合体からなる群から選択されることが好ましい。これらは、数平均分子量(Mn)を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、溶剤への親和性も良好である。さらに好ましくは、重合体部位(P)は水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、およびチオール基を実質的に含まないものである。
【0103】
これら一価の重合体部位(P)の好ましい1つの構造として、下記式(6)で示される一価のポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体部位(Pe)が示される。
【0104】
【化31】

【0105】
〔式(6)中、
1は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、窒素原子数0〜3からなる1価の末端基、
2は、−O−、−S−、−N(Rb)−(ただし、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
3は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH2−、−N(Rc)C(=O)−、または−N(Rc)C(=O)CH2−(ただし、Rcは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
1は、−R11O−で示される繰り返し単位であり、
2は、−C(=O)R12O−で示される繰り返し単位であり、
3は、−C(=O)R13C(=O)−OR14O−で示される繰り返し単位であり、
11は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
12は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
13は炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
14は、−CH(R15)−CH(R16)−の構造で示され、
15とR16は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部の炭素原子数が1〜20であるアルキルオキシメチル基、アルケニル部の炭素原子数が2〜20であるアルケニルオキシメチル基、アリール部の炭素原子数が6〜20であり、かつ、ハロゲン原子で置換されていても良いアリールオキシメチル基、N−メチレン−フタルイミド基のいずれかであって、
17は、上記R11、R12または−C(=O)R13C(=O)−OR14−であり、
m1は0〜100の整数、m2は0〜60の整数、m3は0〜30の整数、ただしm1+m2+m3は1以上100以下であり、
式(6)中の繰り返し単位G1〜G3の順序はどのようなものでも良く、また、ランダム型又はブロック型のどちらでも構わない。〕
【0106】
上記式(6)の中で、Y1が炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが、初期接着性(タック)発現、感圧式接着剤の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0107】
また別の形態として、上記式(6)の中でY1がエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。この場合、本発明の感圧式接着剤組成物に活性エネルギー線硬化性を付与することができる。
【0108】
また、上記式(6)の中で、m2が3〜15の整数であることが、感圧式接着剤の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0109】
または、一価の重合体部位(P)の好ましい別の1つの構造として、下記式(7)で示される一価のビニル共重合体部位(Pv)が示される。
【0110】
【化32】

【0111】
〔式(7)中Y2は、ビニル重合体の重合停止基であり、
21およびR22は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、
23およびR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、又は−C(=O)−X6−R25(但し、X6は、−O−若しくは−N(R26)−であり、R25、R26は水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記アルキル基は、置換基として芳香族基を有していてもよい)であり、
4は、−O−R27−または−S−R27−であり、R27は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
5は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH−、−N(Rd)C(=O)−、または−N(Rd)C(=O)CH2−(ただし、Rdは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
nは2〜50の整数である。〕
【0112】
式(7)で示される重合体部位(Pv)の( )nで囲まれた繰り返し単位の部分は、複数の種類があっても良い。式(7)で示される重合体部位(Pv)の好ましい形態は、R21およびR22が、いずれか一方が水素原子、他の一方がメチル基であり、R23およびR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が−C(=O)−O−(CH23CH3および/または−C(=O)−O−CH2−Ar(Arは芳香族基)であり、X4が−S−CH2CH2−であり、X5が−OC(=O)−または−NHC(=O)−の場合である。
【0113】
式(1)で示される化合物を得るにあたっては、どのような製造方法を用いて合成しても構わないが、片末端に水酸基を有する重合体(POH)を製造するか、もしくは片末端に1級アミノ基を有する重合体(PNH2)を製造する第一の工程と、該重合体(POH)もしくは重合体(PNH2)とテトラカルボン酸二無水物とを反応させる第二の工程とを含む製造方法で製造することが好ましい。ここで、片末端に水酸基を有する重合体(POH)もしくは片末端に1級アミノ基を有する重合体(PNH2)からそれぞれ水酸基の水素原子、または1級アミノ基の水素原子を1つ取り除いた部位が、本発明における前記式(1)で示される化合物において、A1〜A4中の1つまたは2つである一価の重合体部位(P)を構成し、テトラカルボン酸二無水物は、前記式(1)におけるX1を構成する。
【0114】
まず、片末端に水酸基を有する重合体(POH)を製造する第一の工程について説明する。本発明において、重合体(POH)は、モノアルコール、1級または2級のモノアミン、およびモノチオールの群から選択される化合物を開始剤としてアルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、およびエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合してなる片末端に水酸基を有するポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体(PeOH)であるか、または、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用し、エチレン性不飽和単量体を重合してなる片末端に水酸基を有するビニル共重合体(PvOH)であることがより好ましい。
【0115】
本発明のポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体(PeOH)は、公知の方法で製造することができ、モノアルコール、1級または2級のモノアミン、およびモノチオールの群から選択される化合物を開始剤としてアルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、およびエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合することで容易に得ることができる。
モノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール、
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、パラクミルフェノキシエチルアルコールなどの芳香環含有モノアルコール、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0116】
さらに、本発明のモノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用しても良い。この場合、活性エネルギー線硬化性能を付与することができる。
本発明で言うエチレン性不飽和二重結合の例としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(なお、「(メタ)アクリロイル基」と表記する場合には、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を示すものとする。以下同じ。)が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これらは、単独でも良いし、複数でも良く、また異なる種類のエチレン性不飽和二重結合を併用しても良い。
【0117】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールは、エチレン性不飽和二重結合の数により、1個、2個、および3個以上のものに分けられる。エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(なお、「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、アクリレート及び/又はメタクリレートを示すものとする。以下同じ。)、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
このうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、それぞれ、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物として得られるので、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法や水酸基価の測定によりモノアルコール体の比率を決定する必要がある。
上記のうちエチレン性不飽和二重結合の数が2個以上のものを使用すると活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの硬化性に優れる樹脂組成物となり好ましい。
【0118】
1級または2級のモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、3−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、4−メチル−2−ペンチルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−ノニルアミン、イソノニルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ミリスチルアミン、セチルアミン、1−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、2−オクチルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族1級モノアミン、
3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−イソブチロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミンなどのアルコキシアルキル1級モノアミン、
ベンジルアミンなどの芳香族1級モノアミン、
またはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−1−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−(4−メチル−2−ペンチル)アミン、ジ−1−ヘプチルアミン、ジ−1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−1−ノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−1−デシルアミン、ジ−1−ドデシルアミン、ジー1−ミリスチルアミン、ジセチルアミン、ジー1−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジ−(2−オクチルデシル)アミン、ジ−(2−オクチルドデシル)アミン、ジ−(2−ヘキシルデシル)アミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ピペラジン、アルキル置換ピペラジンなどの脂肪族2級モノアミンが挙げられる。
【0119】
モノチオールとしては、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール、オレイルチオールなどの脂肪族モノチオール、
チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、
メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシルなどのメルカプトプロピオン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0120】
本発明で用いるモノアルコール、1級または2級のモノアミン、およびモノチオールの群から選択される化合物は、上記例示に限定されることなく、水酸基、1級または2級のアミノ基、またはチオール基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。このうち好ましくはモノアルコールが用いられ、さらには脂肪族モノアルコールを用いる場合が好ましい。
ここで、モノアルコール、1級または2級のモノアミン、およびモノチオールの群から選択される化合物のそれぞれ水酸基、1級または2級のアミノ基、またはチオール基以外の部分が、式(6)中のY1を構成する。
【0121】
上記例示したモノアルコール、1級または2級のモノアミン、およびモノチオールの群から選択される化合物を開始剤としてアルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、およびエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合して、「片末端に水酸基を有するポリエーテル及び/又はポリエステルからなる重合体(PeOH)」を製造することができる。ただし、ジカルボン酸無水物とエポキシドとは必ず同時に用いられ、交互に重合させられる。
【0122】
ここで、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、およびエポキシドの群から選択される環状化合物の反応順序は、どのようなものでもよく、例えば、一段階目として上記開始剤の存在下にアルキレンオキサイドを重合した後、二段階目にラクトンを重合し、さらに三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合することもできる。この例では、二段階目にラクトンを重合するときの開始剤は、一段階目に重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体となる。また、三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合するときの開始剤は、二段階目までに重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体とラクトン重合体のブロック共重合体となる。本発明では、以降に説明する重合体(PeOH)を製造する場合の開始剤としてこのような片末端に水酸基を有する重合体も含む。また、同様に後述する重合体(PeNH2)、重合体(PvOH)、および重合体(PvNH2)も開始剤となりうる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。開始剤1モルに対するアルキレンオキサイドの重合モル数は、0.1〜100が好ましい。
【0123】
アルキレンオキサイドの重合は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で、かつ加圧状態で行なうことができる。モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを重合した市販品としては、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、日本油脂社製ブレンマーシリーズなどがあり本発明の重合体(PeOH)として使用することができる。具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、10APB−500Bなどがある。該市販品を用いて第一の工程を省略しても良い。
【0124】
ここで、アルキレンオキサイドのアルキレン基が式(6)中のR11を構成する。
【0125】
本発明で用いられるラクトン、あるいはラクチドとしては、後述のヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)に含まれる、環状単量体としてのラクトン類、あるいは環状二量体としての、乳酸によるラクチド、グリコール酸によるグリコリド等が挙げられ、これらのうちδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、アルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。
本発明で用いられるラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。2種類以上を組み合わせて用いることで結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0126】
ラクトンおよび/またはラクチドの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器に、開始剤、ラクトンおよび/またはラクチド、および重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。また、モノアルコールにエチレン性不飽和二重結合を有するものを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
【0127】
開始剤1モルに対するラクトンおよび/またはラクチドの重合モル数は、1〜60モルの範囲が好ましく、さらには2〜20モルが好ましく、最も好ましくは3〜15モルである。
【0128】
重合触媒としては、後述するような公知のものを制限なく使用することができ、使用量は、開始剤、ラクトンおよび/またはラクチドの量を基準として、 0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトンおよび/またはラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
【0129】
ラクトンおよび/またはラクチドの重合温度は100℃から220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、210℃を超えるとラクトンおよび/またはラクチドの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
【0130】
ここで、ラクトン、ラクチドのエステル基以外の部分が式(6)中のR12を構成する。
【0131】
ジカルボン酸無水物としては、後述したようなコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、およびクロレンデック酸無水物などが挙げられる。
【0132】
エポキシドとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジブロモフェニルグリシジルエーテル、3−メチル−ジブロモフェニルグリシジルエーテル(ブロモの置換位置は任意)、アリルグリシジルエーテル、エトキシフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルフタルイミド、およびスチレンオキシドなどが挙げられる。
【0133】
本発明のジカルボン酸無水物とエポキシドとは開始剤に対して同時に使用され交互に反応する。このとき、開始剤の水酸基、一級または二級アミノ基、またはチオール基に対してまずジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応しカルボキシル基を生じ、次いでこのカルボキシル基にエポキシドのエポキシ基が反応して水酸基を生じる。更に、この水酸基にジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応するというように、以下、順次上記と同様の反応を進行させることができる。
開始剤1モルに対するジカルボン酸無水物およびエポキシドの重合モル数はそれぞれ0.1〜30モルが好ましく、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの反応比率は、ジカルボン酸無水物のモル数を[D]、エポキシドのモル数を[E]としたとき、0.8≦[D]/[E]≦1.0が好ましい。0.8未満であるとエポキシドが残りやすいため好ましくなく、1.0を超えると所望の片末端に水酸基を有するポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体(PeOH)が得られず、片末端にカルボキシル基を有する重合体ができ好ましくない。
【0134】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとの交互重合は、50℃から180℃、好ましくは、60℃〜150℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満や180℃を超える場合には、反応速度がきわめて遅い。
【0135】
ここで、ジカルボン酸無水物のジカルボン酸無水物基以外の部分が式(6)中のR13を構成し、エポキシドの環状エーテルを形成する酸素原子以外の部分が式(6)中のR14を構成する。
【0136】
本発明のポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体(PeOH)を製造するときにエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコール、ジカルボン酸無水物及びエポキシドを使用する場合は、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン等が好ましく、これらを単独もしくは併用で、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコール、ジカルボン酸無水物及びエポキシドの量を基準として0.01%〜6%、好ましくは、0.05%〜1.0%の範囲で用いる。
【0137】
次に、片末端に水酸基を有するビニル共重合体(PvOH)の製造方法について説明する。ビニル共重合体(PvOH)は、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用し、エチレン性不飽和単量体を重合することで得ることができる。
【0138】
分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物としては、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプト−3−ブタノールなどがあげられる。
【0139】
水酸基とチオール基とを有する化合物を、目的とする分子量にあわせてエチレン性不飽和単量体及び重合開始剤と混合して加熱することでビニル共重合体(PvOH)を得ることができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の水酸基とチオール基とを有する化合物を用い、塊状重合または溶液重合を行う。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
【0140】
チオール基はエチレン性不飽和単量体を重合するためのラジカル発生基となるため、該重合には必ずしも別の重合開始剤は必要ではないが、使用することもできる。該重合開始剤を使用する場合はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。重合開始剤としては、アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等があげられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0141】
なお、本発明においては、連鎖移動剤及び重合開始剤に由来する、ビニル重合体の末端に位置する部位のことを「重合停止基」とも表記する。
【0142】
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、
(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類があげられる。
また、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類があげられる。
【0143】
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などから1種または2種以上を選択することができる。
【0144】
続いて、片末端に1級アミノ基を有する重合体(PNH2)を製造する第一の工程について説明する。本発明において、重合体(PNH2)は、モノアルコールを開始剤としてアルキレンオキサイドを開環重合してなる片末端に水酸基を有するポリエーテルの水酸基を還元アミノ化して得られる、片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)であるか、または、分子内に1級アミノ基とチオール基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用し、エチレン性不飽和単量体を重合してなる片末端に1級アミノ基を有するビニル共重合体(PvNH2)であることが好ましい。
【0145】
片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)の製造について説明する。
片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)の前駆体の、片末端に水酸基を有するポリエーテルは、前記重合体(PeOH)の製造方法のところで説明したものであり、この条件や原料についても説明済みである。この片末端に水酸基を有するポリエーテルを用い、アンモニア、水素および触媒の存在下に圧力5〜30MPa、170〜250℃の高温条件で、0.15〜2時間反応することで得られる。水酸基を還元アミノ化することで、片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)が得られる。還元アミノ化する触媒としては、ラネーニッケル/アルミニウム触媒が好ましい。
片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)は、三井化学ファイン社またはハンツマンコーポレーションより、ジェファーミン、またはサーフォナミンの商品名で市販されており本発明の片末端にアミノ基を有するポリエーテル(PeNH2)として使用し第一の工程を省略することができる。具体的に例示すると、ジェファーミンXTJ−475、XTJ−436、XTJ−505、XTJ−506、XTJ−507、M−2070、サーフォナミンB−60、L−100、B−200、L−207、L−300、B−30、B−100などがある。
【0146】
次に、片末端に1級アミノ基を有するビニル共重合体(PvNH2)の製造について説明する。
片末端に1級アミノ基を有するビニル共重合体(PvNH2)は1級アミノ基とチオール基とを有する化合物を連鎖移動剤として、目的とする分子量にあわせてエチレン性不飽和単量体及び重合開始剤と混合して加熱することで得ることができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の1級アミノ基とチオール基とを有する化合物を用い、塊状重合または溶液重合を行う。使用可能なエチレン性不飽和単量体、重合開始剤および溶剤の種類、使用量、また重合条件は前記片末端に水酸基を有するビニル共重合体(PvOH)で説明したものと同じである。
【0147】
分子内に1級アミノ基とチオール基とを有する化合物としては、例えば、2−アミノエタンチオール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−チアゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンゾイミダゾールなどがあげられる。このうち、好ましくは2−アミノエタンチオールを使用する場合である。
【0148】
本発明では、場合によって、式(1)におけるA1〜A4中の1つ以内の範囲で、重合体(POH)または重合体(PNH2)以外のモノアルコール由来または1級若しくは2級のモノアミンの構造を導入することができる。重合体(POH)以外のモノアルコールとしては、前記したモノアルコールのうち水酸基とアルキル基とからなり、かつ、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるものが好ましい。重合体(PNH2)以外の1級若しくは2級のモノアミンとしては、前記した1級または2級のモノアミンのうち1級若しくは2級のアミノ基とアルキル基とからなり、かつ、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるものが好ましい。
【0149】
本発明の重合体(POH)または重合体(PNH2)を製造する第一の工程では、無溶剤であってもよいが、場合によっては重合溶媒として溶剤を使用することができる。使用可能な溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。使用した溶剤は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0150】
次に、片末端に水酸基を有する重合体(POH)または重合体(PNH2)とテトラカルボン酸二無水物とを反応させる第二の工程について説明する。
本発明に用いる、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)は、第一の工程で得られた片末端に水酸基を有する重合体(POH)の水酸基、または、片末端に1級アミノ基を有する重合体(PNH2)の1級アミノ基と、テトラカルボン酸二無水物の無水物基とを反応させる(第二の工程)ことにより得ることが好ましい。
【0151】
テトラカルボン酸二無水物としては、後述の、水酸基に付加し得る化合物(c)に含まれる酸無水物類が挙げられ、カルボン酸無水物基を二つ有する化合物であればどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
本発明に好ましく使用されるものは、感圧式接着剤の初期接着性(タック)付与、及び低粘度化の観点から芳香族テトラカルボン酸二無水物である。さらには、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0152】
第二の工程での反応比率は、重合体(POH)の水酸基または重合体(PNH2)の1級アミノ基のモル数を〈H〉、テトラカルボン酸二無水物のカルボン酸無水物基のモル数を〈N〉としたとき、0.5<〈H〉/〈N〉<1.2が好ましく、さらに好ましくは0.7<〈H〉/〈N〉<1.1、最も好ましくは〈H〉/〈N〉=1の場合である。〈H〉/〈N〉<1の条件で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解して使用してもよい。
【0153】
第二の工程には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、後述の、すなわち多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との反応において使用され得る触媒が使用できる。また、第二の工程は無溶剤で行っても良いし、適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0154】
第二の工程の反応温度は、重合体(POH)を使用する場合は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃未満では反応速度が遅く、180℃を超えると、反応し開環した酸無水物が、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
また、重合体(PNH2)を使用する場合は0〜150℃、好ましくは、10℃〜100℃の範囲で行う。0℃未満では反応が進まない場合があり、150℃を超えるとイミド化する場合があり、本発明の範疇と異なる構造となる。
【0155】
ここで、テトラカルボン酸二無水物の2つの酸無水物基を除いた部分が、式(1)のX1を構成する。
【0156】
本発明において、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)は、特に限定されるものではなく、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0157】
本発明に用いられる、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)を得るにあたっては、多塩基酸(a−1)として、式(1)で示される化合物の他、公知の二塩基酸(a−1)′を使用することができる。
【0158】
本発明に用いられる公知の二塩基酸(a−1)′としては、公知のジカルボン酸類や、これらジカルボン酸類と公知のポリオール類やポリアミン類とを反応させた末端二官能のカルボン酸を含有した高分子量ポリエステルジカルボン酸類や高分子量ポリアミドジカルボン酸類を挙げることができる。
【0159】
公知のジカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、ダイマー酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその無水物等;
【0160】
例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4´−ジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びその無水物等;
【0161】
例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
高分子量ポリエステルジカルボン酸類としては、上記ジカルボン酸類と公知のポリオール類とを縮合反応させて得られる、末端にカルボキシル基が2個結合した高分子量ジカルボン酸であり、ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類、
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等の芳香族ジオール類、
さらには、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。これらのポリオール類は、そのエステル誘導体であってもよい。またこれらのポリオール類は、2種以上の組合わせであってもよい。
【0162】
また、その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルジカルボン酸等も高分子量ジカルボン酸に含まれる。
【0163】
高分子量ポリアミドジカルボン酸類としては、上記ジカルボン酸類と公知のポリアミン類とを縮合反応させて得られる、末端にカルボキシル基が2個結合した高分子量ジカルボン酸であり、ポリアミン類としては、1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであれば特に制限なく使用することができる。
例えば、脂肪族系ポリアミンとしては、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール(プロピレン骨格のジアミン、例えば、サンテクノケミカル社製「ジェファーミンD230」、「ジェファーミンD400」等、プロピレン骨格のトリアミン、例えば、「ジェファーミンT403」等)、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、H2N(CH2CH2O)2(CH22NH2 〔サンテクノケミカル社製「ジェファーミンEDR148」(エチレングリコール骨格のジアミン)〕等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(デュポン・ジャパン社製「MPMD」)、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン(三和化学社製「X2000」)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製「1,3BAC」)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン(三井化学社製「NBDA」)等を挙げることができる。
【0164】
またこれらのポリアミンとケトンとの反応生成物であるケチミンもポリアミン類に含まれ、重合安定性や反応性の調整の観点から、アセトフェノンまたはプロピオフェノンと1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとノルボルナン骨格のジメチレンアミン(NBDA)とから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとメタキシリレンジアミンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンと、エチレングリコール骨格またはプロピレン骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400等またはプロピレン骨格のトリアミンであるジェファーミンT403等とから得られるもの等が挙げられる。
【0165】
本発明において、これら二塩基酸(a−1)′は、特に限定されるものではなく、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0166】
本発明に用いられる公知の分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)としては、公知のグリシジル基及び/又はオキセタニル基を含有する化合物を好ましく使用することができる。
【0167】
本発明に用いられる、公知のグリシジル基を含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアミン、ブタジエンジオキサイド、ダイマー酸のジグリシジルエステル等の脂肪族ジグリシジル化合物;
【0168】
例えば、2,6−ジグリシジルフェニルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−(β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスアリールフルオレンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジル化合物;
【0169】
例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジオキサイド、3,4−グリシジルシクロヘキシルメチル−3,4−グリシジルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−グリシジル−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−グリシジル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロジエンオ−ルエポキシドグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル等の脂環族ジグリシジル化合物;
【0170】
例えば、その他、ビスフェノールA系高分子量グリシジル樹脂、ビスフェノールF系高分子量グリシジル樹脂、あるいは上記ジグリシジル化合物を反応させたフェノキシ樹脂等の高分子量ジグリシジル化合物等が挙げられる。
【0171】
本発明に用いられる、公知のオキセタニル基を有する化合物としては、例えば、カーボネートビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、キシリレンビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、ジ{1−エチル−(3−オキセタニル)}メチルエーテル等が挙げられる。
【0172】
本発明に用いられる、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0173】
本発明で用いられる環状エステル化合物(b)とは、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)とを重付加反応させた際に発生する2級水酸基の活性水素を環状エステル化合物(b)で置換することにより、重合安定性の制御が可能となるだけでなく、ポリエステル樹脂(a)の側鎖にエステル結合が導入されることにより、接着特性バランス(特に、タックと凝集力の両立)を維持することが可能となる。
【0174】
本発明に用いられる環状エステル化合物(b)としては、公知のヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)を好ましく使用することができる。
【0175】
本発明に用いられる、公知のヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)としては、特に制限はなく、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式のヒドロキシカルボン酸の分子内あるいは分子間縮合物が使用できる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、δ−ヒドロキシカプロン酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸、カプリル酸、ラウリン酸、リシノール酸、α−ヒドロキシドトリアコンタン酸、α−ヒドロキシテトラトリアコンタン酸、α−ヒドロキシヘキサトリアコンタン酸、α−ヒドロキシオクタトリアコンタン酸、α−ヒドロキシテトラアコンタン酸、ヒドロキシピパリン酸、ヒドロキシプロピオン酸、6−ヒドロキシペンタン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシミスチリン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラエイコサン酸、α−ヒドロキシヘキサエイコサン酸、α−ヒドロキシオクタエイコサン酸、α−ヒドロキシトリアコンタン酸、β−ヒドロキシミリスチン酸、ジメチロ−ルプロピオン酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等が挙げられる。
【0176】
脂環式、芳香族および複素環式ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、サリチル酸、2−オキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−フェニル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸、4’−ヒドロキシ−4−カルボキシビフェニル、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0177】
ヒドロキシカルボン酸は、有機化合物の1分子内にカルボン酸と水酸基とを有するものであれば使用でき、必ずしも上記例示したもののみに限定されるものではない。
【0178】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)とは、上記ヒドロキシカルボン酸において、ヒドロキシカルボン酸中の水酸基とカルボン酸との分子内あるいは分子間縮合反応によって得られるものである。すなわち、ヒドロキシカルボン酸の分子内あるいは分子間縮合反応により生成するヒドロキシカルボン酸の環状単量体、二量体または三量体以上の多量体を包含するものである。
【0179】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)のうち環状単量体としては、ラクトン類が使用でき、特に制限はないが、例えば、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−オクタノラクトン、ε−カプロラクトングリコリド、ピバロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクトノリド、11−ウンデカノリド、12−ドデカノリド、15−ペンタデカノリド、16−ヘキサドデカノリド、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−α−プロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、ε−カプラロラクトン付加アクリル酸、ε−カプラロラクトン付加メタクリル酸、その他のアルキル置換されたε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0180】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)のうち環状二量体としては、乳酸によるラクチド、グリコール酸によるグリコリド等が挙げられる。
【0181】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)は、環の大きさに限定は無いが、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応により生成するポリエステル樹脂(a)に含有される水酸基と効率よく開環付加反応するためには、環内の炭素数が6〜18の範囲である環状単量体のラクトン類が好ましく、ε−カプロラクトンがより好ましい。
【0182】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)は、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)に、1分子の態様で開環付加しても良いし、環状エステル(b−1)の複数の分子が開環重合してなる重合体の態様として、ポリエステル樹脂(a)に付加してもよい。
【0183】
本発明で用いられる、水酸基に付加し得る化合物(c)とは、ポリエステル樹脂(a)に環状エステル化合物(b)が開環付加した際に生成する水酸基の活性水素を、水酸基に付加し得る化合物(c)で置換し、後述の反応性化合物(B)と反応し得る官能基としての水酸基量を制御するために使用するものである。またこれらの水酸基に付加し得る化合物(c)で置換することにより、耐熱性及び耐湿熱性の向上に繋がるため、より好ましい。
【0184】
本発明で用いられる、水酸基に付加し得る化合物(c)としては、例えば、シリル化剤類、単官能イソシアネート化合物類、もしくは酸無水物類のいずれかであることが好ましく、単官能、あるいは架橋作用のない複数の官能基を保有するものがより好ましい。
【0185】
本発明で用いられるシリル化剤類としては、例えば、ヒドロシラン類、アルコキシシラン類、クロロシラン類、シラノール類、シリルアミン類、あるいはこれらの環状化合物のいずれかであるシリル化剤が挙げられる。ヒドロシラン類としては、例えば、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリヘキシルシラン、ジエチルメチルシラン、ブチルジメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、トリフェニルシラン、メチルフェニルビニルシラン、ペンタメチルジシロキサン、アリルジメチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,3,5,7,9−オクタフェニルシクロテトラシロキサン等の単官能のSi−H基を保有するヒドロシラン類が挙げられる。
【0186】
アルコキシシラン類としては、例えば、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、アリルオキシトリメチルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、1−メチルプロポキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、イソブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、ヘキシルオキシトリメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラヒドロフルフリロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、シクロヘキシルオキシトリメチルシラン、1−シクロヘキセニルオキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシフェニルシラン、ベンジルオキシトリメチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、2−エチルヘキシルオキシトリメチルシラン、オクチルオキシトリメチルシラン、ドデシルオキシトリメチルシラン等の単官能のアルコキシ基を保有するアルコキシシラン類が挙げられる。
【0187】
クロロシラン類としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、ジメチルオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジフェニルビニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、トリベンジルクロロシラン等の単官能のクロロシリル基を保有するクロロシラン類が挙げられる。
【0188】
シラノール類としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール等の単官能のシラノール基を保有するシラノール類が挙げられる。
【0189】
シリルアミン類としては、例えば、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、アニリノトリメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリドン、1−トリメチルシリルイミダゾール、1−トリメチルシリル−1,2,4−トリアゾール等の単官能のシリルアミノ基を保有するシリルアミン類;
【0190】
例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)−N−フェニルウレア等の2官能のシリルアミノ基を保有するシリルアミン類;
【0191】
例えば、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン等の3官能以上の環状シリルアミノ基を保有するシリルアミン類等が挙げられる。
【0192】
本発明で用いられる単官能イソシアネート化合物類としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ステアロイルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、2−クロロエチルイソシアネート、2,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3−クロロ−4−メチルフェニルイソシアネート、トリクロロアセチルイソシアネート、クロロスルホニルイソシアネート、(R)−(+)−α−メチルベンジルイソシアネート、(S)−(−)−α−メチルベンジルイソシアネート、(R)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルイソシアネート、(R)−(+)−1−フェニルエチルイソシアネート、(S)−(−)−1−フェニルエチルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0193】
本発明で用いられる酸無水物類としては、例えば、多塩基酸の環状無水物であることが好ましく、二塩基酸の無水物環を一つ保有していることがより好ましい。
【0194】
本発明で用いられる、二塩基酸の無水物環を一つ保有している環状無水物としては、例えば、無水コハク酸、メチル無水コハク酸物、2,2−ジメチル無水コハク酸、ブチル無水コハク酸、イソブチル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、フェニル無水コハク酸、無水グルタル酸、3−アリル無水グルタル酸、2,4−ジメチル無水グルタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ブチル無水グルタル酸、ヘキシル無水グルタル酸、無水マレイン酸、2−メチル無水マレイン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸、ブチル無水マレイン酸、ペンチル無水マレイン酸、ヘキシル無水マレイン酸、オクチル無水マレイン酸、デシル無水マレイン酸、ドデシル無水マレイン酸、2,3−ジクロロ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3−ジフェニル無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、4−メチル無水フタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸、無水ヘッド酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、ビフェニルジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,5−イソベンゾフランジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0195】
二塩基酸の無水物環を二つ以上保有している環状無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,3,5,6−テトラカルボキシシクロヘキサン二無水物、2,3,5,6−テトラカルボキシノルボルナン二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、 無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水メチルナジック酸、アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0196】
本発明で用いられる、水酸基に付加し得る化合物(c)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0197】
本発明で用いられる付加型ポリエステル樹脂(A)は、上述したように、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応により生成した、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)に環状エステル化合物(b)が開環付加し、さらに水酸基に付加し得る化合物(c)が付加してなるものであり、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応は公知慣用の方法を用いれば良い。その際、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)のカルボキシル基に対する、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の環状エーテル基の数の比は0.5〜2.0の範囲内、望ましくは0.8〜1.2の範囲内が良い。カルボキシル基に対する環状エーテル基の数の比が0.5よりも小さいか、あるいは2.0よりも大きいと、得られるポリエステル樹脂の分子量を高くすることが困難であり、目的とする樹脂が得られにくい。
【0198】
一方、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の環状エーテル基に対する環状エステル化合物(b)のモル比は0.8〜40.0の範囲内、望ましくは2.0〜20.0の範囲内が良い。化合物(a−2)の環状エーテル基に対する環状エステル化合物(b)のモル比が0.8よりも小さいか、あるいは40.0よりも大きいと、得られるポリエステル樹脂の接着特性バランス(特に、タックと凝集力との両立)を維持することが困難であり、目的とする樹脂が得られにくい。
【0199】
本発明における側鎖を有する付加型ポリエステル樹脂(A)の水酸基価、あるいは酸価は、上述の水酸基に付加し得る化合物(c)により、0.1〜50mgKOH/gの範囲に制御されていることが好ましく、0.5〜30mgKOH/gの範囲がより好ましい。水酸基価及び酸価がどちらも0.1mgKOH/gよりも低い場合は、後述の反応性化合物(B)との反応性が劣り、凝集力が不足になるため、偏光フィルム等を剥ぎ取り難いばかりでなく、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不十分となる。また、水酸基価及び酸価がどちらも50mgKOH/gよりも高くなると、ポットライフが短くなり、塗加工時や接着加工時の作業性を著しく低下させるため好ましくない。
【0200】
更に、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)は、一括で配合しても良いし、エーテル基を2個有する化合物(a−2)中に多塩基酸(a−1)を滴下しても良いし、多塩基酸(a−1)中に分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)を滴下しても良い。
これらの方法による場合、多塩基酸(a−1)と分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との反応が完結した後、環状エステル化合物(b)の付加反応をおこなう。
【0201】
あるいは、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)に加え、環状エステル化合物(b)を一括で配合しても良いし、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との反応途中で、環状エステル化合物(b)を滴下しても良い。
これらの方法によった場合、多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)とからなる低分子量の樹脂に環状エステル化合物(b)が開環付加してなる低分子量の樹脂同士が、さらに重付加反応して高分子量化する。
【0202】
また、多塩基酸(a−1)と分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応の際、無触媒でも反応は進行するが、触媒を適宜使用すると反応をより円滑に進行させることができるため、好ましい。用いる触媒としては、アンモニア、アミン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、アルカリ金属水酸化物類、アルカリ土類金属水酸化物類、ルイス酸類、錫,鉛,チタン,鉄,亜鉛,ジルコニウム,コバルト等を含有した有機金属化合物類、金属ハロゲン化物類等が挙げられる。
【0203】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、アニリン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルオキサゾリン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等を挙げることができる。
【0204】
4級アンモニウム塩類としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムフルオライドトリヒドレート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラメチルアンモニウムヒドロゲンフタレート、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドペンタヒドレート、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムニトレート、テトラメチルアンモニウムパークロレート、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムトリブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムフルオライドトリヒドレート、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムパークロレート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホネート、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムパークロレート、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、テトラ−n−プロピルアンモニウムパールテネート(VII)、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムトリブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンサルフェート、テトラブチルアンモニウムニトレート、テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムシアノトリヒドロボレート、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスタンネート、テトラブチルアンモニウムフルオライドトリヒドレート、テトラブチルアンモニウムテトラチオフェネート(IV)、テトラブチルアンモニウムフルオライドヒドレイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムジヒドロゲントリフルオライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリブチルアンモニウムビス(2,3−ジメルカプト−2−ブテンジニロリレート−S,S’)ニコレート、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムパークロレート、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラオクタデシルアンモニウムブロマイド等を挙げることができる。
【0205】
4級ホスホニウム塩類としては、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラブチルホスホニウムビス(1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)、テトラブチルホスホニウムビス(4−メチル−1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)、テトラブチルホスホニウムビス(4,5−メルカプト−1,3−ジチオール−2−チオネート−S4、S5)ニコレート(III)等を挙げることができる。
【0206】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物類;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物類を挙げることができる。
【0207】
有機錫化合物類としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等を挙げることができる。
【0208】
有機ジルコニウム化合物類としては、例えば、酢酸ジルコニウム、安息香酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム等を挙げることができる。
【0209】
有機チタン化合物類としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラエチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等を挙げることができる。
【0210】
有機鉛化合物類としては、例えば、酢酸鉛、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などを挙げることができる。
【0211】
有機鉄化合物類としては、例えば、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどを挙げることができる。
【0212】
有機コバルト化合物類としては、例えば、酢酸コバルト、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト等を挙げることができる。
【0213】
有機亜鉛化合物類としては、例えば、酢酸亜鉛、蓚酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0214】
金属ハロゲン化物類としては、例えば、塩化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等を挙げることができる。
【0215】
さらには、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化チタン等のルイス酸類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。触媒は一種のみを用いても、又は二種以上を併用しても良い。
触媒の使用量としては、反応成分100重量部に対して10重量部以下の量で用いる。10重量部を超える量を用いると、生成物が着色したり、次の環状エステル化合物(b)の開環付加反応の際に負触媒として働くという不都合を生じる。
【0216】
重付加反応は20〜220℃、好ましくは50〜200℃の範囲の反応温度で行なう。反応時間は通常1〜60時間程度とすることができる。溶剤は用いても用いなくても良い。ここで用いる溶剤としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤などであり、これらは単独使用でも2種以上の使用でも良い。ただし、水酸基を含有する溶剤は用いることができない。水酸基を含有する溶剤を用いると次の環状エステル化合物(b)との反応における反応率が大きく低下する。
【0217】
前記した重付加反応により生成したポリエステル樹脂(a)の水酸基と環状エステル化合物(b)との開環付加反応は公知の方法を用いれば良い。すなわち、反応温度は20〜220℃、好ましくは60〜180℃が良い。反応時間は通常1〜30時間程度とすることができる。また、触媒を用いても用いなくてもよいが、好ましくは用いた方がよい。触媒としては、上述した、多塩基酸(a−1)と分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との反応に用いる触媒が同様に使用できる。
【0218】
また本発明において、直鎖状ポリエステル樹脂(a)や、これに環状エステル化合物(b)が開環付加反応し、さらに水酸基に付加し得る化合物(c)が付加反応してなる付加型ポリエステル樹脂(A)を得るにあたっては、2級水酸基への開環付加反応性や加熱時、あるいは加湿熱時における着色黄変の抑制の点で、触媒として第4級アンモニウム塩類がより好ましく用いられる。
【0219】
本発明における付加型ポリエステル樹脂(A)は、バランスの良い接着特性(特に、タックと凝集力との両立)を発揮し得るように、ガラス転移温度(Tg)が−80〜10℃である共重合体を形成し得るように、多塩基酸(a−1)、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)、環状エステル化合物(b)および水酸基に付加し得る化合物(c)の各成分を選択することが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が−60〜−10℃である共重合体を形成し得るように各成分を選択することがより好ましい。
付加型ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−80℃未満の場合、該ポリエステル樹脂を用いて得られる接着剤層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じやすくなる。一方、ガラス転移温度が10℃を超えると、接着剤層の十分な接着力を得ることができない可能性があるため、好ましくない。
【0220】
本発明における付加型ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜1,000,000の範囲にあることが接着性の点で好ましく、8,000〜500,000の範囲にあることがより好ましい。Mwが2,000未満であると付加型ポリエステル樹脂の凝集力を発現できずに、耐熱性や耐湿熱性が低下する。一方、Mwが1,000,000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、樹脂積層体を作製することが困難となり、好ましくない。
【0221】
本発明の感圧式接着剤組成物においては、前記の付加型ポリエステル樹脂(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)を含有することが重要である。
本発明に用いられる反応性化合物(B)とは、前記した付加型ポリエステル樹脂(A)中の水酸基、あるいはカルボン酸と反応しうる官能基を分子内に有する化合物であり、このような化合物としてはポリイソシアネート化合物、多官能シラン化合物、N−メチロール基含有化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及び金属キレート化合物などが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、付加型ポリエステル樹脂(A)中の水酸基、あるいはカルボン酸と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特に前記の付加型ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が0.1〜50mgKOH/gである場合にはポリイソシアネート化合物が、また、酸価が0.1〜50mgKOH/gである場合には、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、もしくは金属キレート化合物が好ましく用いられる。これらは、架橋反応後の樹脂組成物の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0222】
例えば、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0223】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0224】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0225】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0226】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0227】
また上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体や、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。
さらには、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。
また、ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0228】
これらポリイソシアネート化合物の内、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性、耐熱性あるいは耐湿熱性の点から、特に好ましい。
【0229】
反応性化合物(B)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0230】
反応性化合物(B)としてのエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0231】
反応性化合物(B)としてのアジリジン化合物の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N′−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N′−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0232】
反応性化合物(B)としてのカルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0233】
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、または、これらの混合物を使用することができる。
【0234】
カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
【0235】
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては日清紡績株式会社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01,03,05,07,09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0236】
反応性化合物(B)としてのオキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物が好ましく用いられ、具体的には、2′−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系単量体とこれらのビニル系単量体と共重合しうる他の単量体との共重合体でもよい。
【0237】
反応性化合物(B)としての金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した化合物が挙げられる。
【0238】
これらの反応性化合物(B)としては、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0239】
本発明の感圧式接着剤組成物は、付加型ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。反応性化合物(B)の使用量が、20重量部を越えると得られる感圧式接着剤組成物の接着性が低下傾向となり、樹脂層の凝集力が低く、繰り返し使用時での安定性や耐久性に劣り、好ましくない。また0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にあるため、好ましくない。
付加型ポリエステル樹脂(A)中の水酸基、あるいはカルボン酸と反応性化合物(B)中の官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
【0240】
本発明の感圧式接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、各種樹脂、カップリング剤、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤および老化防止剤等を配合しても良い。
本発明の感圧式接着剤組成物を使用して、接着層とシート状基材とからなる積層製品(以下、「接着シート」という。)を得ることができる。
例えば、種々のシート状基材に本発明の感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって接着シートを得ることができる。
感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、粘度を調整することもできるし、感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加すると付加型ポリエステル樹脂(A)と反応性化合物(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0241】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。また、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。さらに表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0242】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0243】
常法にしたがって適当な方法で上記シート状基材に感圧式接着剤組成物を塗工した後、感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に接着剤層を形成することができる。
接着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0244】
本発明の感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。
乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては接着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0245】
本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の種々の光学特性を持つ、いわゆるシート(前述の通りフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の感圧式接着剤組成物から形成される接着剤層が積層された状態のものである。接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
本発明の積層体は、
(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を接着剤層の表面に積層したり、
(イ)シート状の光学部材に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0246】
このようにして得た積層体から接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、例えば、接着剤層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、「シート状の光学部材/感圧式接着剤層/液晶セル用ガラス部材」という構成の液晶セル部材を得ることができる。
【0247】
本発明の感圧式接着剤は、ポリエステル樹脂で構成されているため、基材への密着性を向上させており、耐可塑剤性や低温接着性に優れ、発泡体の様な基材に対する密着性が必要とされる用途にも、好適に使用される。特に主鎖骨格に芳香環を含有することができるため、該感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率は、1.45以上を維持することが可能である。光学部材用フィルムやガラス等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.50〜1.58程度のものであり、感圧式接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.45未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。そのため、例えば、該感圧式接着剤組成物から得られる接着剤層が光学フィルムの一種であるフィルム導光板上に設けられた場合、浅い角度で全反射が起こり、光の有効的な利用性が低下する場合がある。また、光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するために、本発明の感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49〜1.60の範囲で制御できることも重要である。特に1.50〜1.55の範囲で制御が可能である。
【実施例】
【0248】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0249】
[カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)の合成]
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノールを62.6部、ε−カプロラクトンを287.4部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシドを0.1部、それぞれ仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認し第一の工程を終了した。この生成物の数平均分子量(Mn)は1300、重量平均分子量(Mw)は1650であった。
上記生成物にピロメリット酸二無水物36.6部を追加し100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物基がハーフエステル化していることを確認し第二の工程を終了した。得られた多塩基酸(a−1)は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量2430、重量平均分子量3590、酸価50mgKOH/gであった。
ここで、「ロウ状固体」とは、常温では不透明の固体であるが、加熱により透明な液体に変化するものを意味し、この合成例1で得られた多塩基酸(a−1)は約50℃で透明な液状になるものであった。
【0250】
(合成例2)
実施例1と同様の反応容器に、片末端メトキシ化ポリエチレングリコール(数平均分子量:960、水酸基価:58.4mgKOH/g)を350.0部、ピロメリット酸二無水物を39.7部加えて100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物基がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。得られた多塩基酸(a−1)は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量(Mn)2040、重量平均分子量(Mw)3060、酸価54mgKOH/gであった。
【0251】
(合成例3)
実施例1と同様の反応容器に、1−ドデシルアミンを62.3部、ε−カプロラクトンを287.7部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシドを0.1部、それぞれ仕込み、窒素ガスで置換した後、実施例1と同様にして反応し、第一の工程を終了した。この生成物の数平均分子量(Mn)は1350、重量平均分子量(Mw)は1880であった。
上記生成物にピロメリット酸二無水物55部を追加し100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物基がハーフエステル化していることを確認し第二の工程を終了した。得られた多塩基酸(a−1)は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量2430、重量平均分子量3590、酸価55mgKOH/gであった。
【0252】
(合成例4)
実施例1と同様の反応容器に、グリセリンジメタクリレートを72.1部、ε−カプロラクトンを277.9部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシドを0.1部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノンを0.1部それぞれ仕込み、窒素ガスで置換した後、実施例1と同様にして反応し、第一の工程を終了した。この生成物の数平均分子量(Mn)は1400、重量平均分子量は1960であった。
上記生成物にエチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル(新日本理化株式会社製:商品名リカシッドTMEG−100)66.6部を追加し100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物基がハーフエステル化していることを確認し第二の工程を終了した。得られた多塩基酸(a−1)は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量(Mn)2529、重量平均分子量(Mw)3720、酸価45mgKOH/gであった。
【0253】
[付加型ポリエステル樹脂(A)の3段階合成]
(合成例5)
<第1段階:ポリエステル樹脂(a)の合成>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、二塩基酸(a−1)′,多塩基酸(a−1),分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2),触媒および有機溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0254】
[重合槽]
アジピン酸 (a−1)′ 44部
合成例1で作製した多塩基酸(a−1) 449部
酢酸エチル 43部
トルエン 43部
[滴下装置]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(a−2) 195部
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 1.2部
酢酸エチル 43部
トルエン 43部
【0255】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温した。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら8時間おきに触媒をそれぞれ1.2部づつ2回加えて、24時間熟成した後、酢酸エチルを287部加えて室温まで冷却し、反応を終了した。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.5重量%、粘度30,000mPa・sであり、樹脂の酸価0.5mgKOH/g、水酸基価92mgKOH/g、ガラス転移温度30℃、重量平均分子量100,000であった。
【0256】
<第2段階:環状エステル化合物(b)の開環付加反応>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、第1段階で作製したポリエステル樹脂(a)溶液,環状エステル化合物(b)、触媒および有機溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0257】
[重合槽]
第1段階で得られたポリエステル樹脂(a)溶液 200部
酢酸エチル 10部
[滴下装置]
ε−カプロラクトン(b) 20部
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 0.8部
酢酸エチル 10部
【0258】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温した。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら12時間熟成した後、酢酸エチルを13部加えて室温まで冷却し、反応を終了し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)を作製した。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.2重量%、粘度15,000mPa・sであり、樹脂の酸価0.05mgKOH/g、水酸基価68mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量180,000であった。
【0259】
<第3段階:水酸基に付加し得る化合物(c)の付加反応>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、第2段階で作製した環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液,単官能イソシアネート化合物(c),触媒および有機溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0260】
[重合槽]
第2段階で得られた環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液
200部
[滴下装置]
フェニルイソシアネート(c) 10部
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 0.5部
酢酸エチル 10部
【0261】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中、100℃に昇温した。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら8時間熟成した後、酢酸エチルを6部加えて室温まで冷却し、付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.2重量%、粘度8,000mPa・sであり、樹脂の酸価0.05mgKOH/g、水酸基価5mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量185,000であった。
【0262】
(合成例6)
合成例5において、第2段階で使用した環状エステル化合物(b)を使用せずに、合成例5の第1段階の反応工程で得られたポリエステル樹脂(a)の溶液(不揮発分60.5重量%)200部を、第3段階の反応工程において使用したこと以外は合成例5と同様にして反応し、酢酸エチル6部を加えて調整し、淡黄色透明で不揮発分60.1重量%、粘度21,000mPa・sのポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.1mgKOH/g、水酸基価18.5mgKOH/g、ガラス転移温度35℃、重量平均分子量70,000であった。
【0263】
(合成例7)
合成例5において用いた水酸基に付加し得る化合物(c)の代わりに、シリル化剤として ジエチルメチルシラン(c):9部を、第3段階の反応工程において使用したこと以外は合成例5と同様にして反応し、淡黄色透明で不揮発分60.0重量%、粘度7,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.5mgKOH/g、水酸基価3mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量190,000であった。
【0264】
(合成例8)
合成例5において用いた水酸基に付加し得る化合物(c)の代わりに、酸無水物として 無水フタル酸(c):9部を、第3段階の反応工程において使用したこと以外は合成例5と同様にして反応し、淡黄色透明で不揮発分60.1重量%、粘度8,500mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価93mgKOH/g、水酸基価3.2mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量195,000であった。
【0265】
(合成例9)
合成例5において用いた、水酸基に付加し得る化合物(c)の代わりに、酸無水物として 無水フタル酸(c):1部を、第3段階の反応工程において使用したこと以外は合成例5と同様にして反応し、酢酸エチル2部を加えて調整し、淡黄色透明で不揮発分59.8重量%、粘度7,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価12mgKOH/g、水酸基価35.2mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量180,000であった。
【0266】
[付加型ポリエステル樹脂(A)の2段階合成]
(合成例10)
<第1段階:環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)の合成>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、二塩基酸(a−1)′,多塩基酸(a−1),分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2),環状エステル化合物(b)、触媒および有機溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0267】
[重合槽]
アジピン酸(a−1)′ 64部
合成例1で作製した多塩基酸(a−1) 656部
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(a−2) 280部
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 1部
酢酸エチル 75部
トルエン 75部
[滴下装置]
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 1部
ε−カプロラクトン(b) 337部
酢酸エチル 75部
トルエン 75部
【0268】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温し、8時間反応させた。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。
滴下終了後、さらに攪拌しながら8時間後にテトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート2部を添加し、更に8時間熟成した後、酢酸エチルを580部加えて室温まで冷却し、反応を終了し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)を作製した。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.2重量%、粘度18,000mPa・sであり、樹脂の酸価0.02mgKOH/g、水酸基価61mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量200,000であった。
【0269】
<第2段階:水酸基に付加し得る化合物(c)の付加反応>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、第1段階で作製した環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液(不揮発分60.2%)、単官能イソシアネート化合物(c)、触媒および有機溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0270】
[重合槽]
第1段階で得られた環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液
200部
[滴下装置]
フェニルイソシアネート(c) 10部
テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒) 0.5部
酢酸エチル 10部
【0271】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温した。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら6時間熟成した後、酢酸エチルを5部加えて室温まで冷却し、付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.5重量%、粘度9,000mPa・sであり、樹脂の酸価0.02mgKOH/g、水酸基価8.2mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量210,000であった。
【0272】
(合成例11)
合成例10において、二塩基酸(a−1)′を使用せずに、多塩基酸(a−1)として、合成例1で作製した多塩基酸854部、(a−2)としてビスフェノールAジグリシジルエーテル146部、(b)としてε−カプロラクトン175部にそれぞれ変更したこと以外は合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチルを480部加えて室温まで冷却し、反応を終了し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)を作製した。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.1重量%)200部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、酢酸エチルで調整し、淡黄色透明で不揮発分60.3重量%、粘度30,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.02mgKOH/g、水酸基価7.5mgKOH/g、ガラス転移温度−35℃、重量平均分子量320,000であった。
【0273】
(合成例12)
合成例10において用いた多塩基酸(a−1)の代わりに合成例2で得られた多塩基酸607部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル558部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.2重量%)200部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、酢酸エチル5部を加えて調整し、淡黄色透明で不揮発分60.2重量%、粘度14,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.05mgKOH/g、水酸基価12mgKOH/g、ガラス転移温度−25℃、重量平均分子量250,000であった。
【0274】
(合成例13)
合成例10において用いた多塩基酸(a−1)の代わりに合成例3で得られた多塩基酸603部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル556部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.0重量%)200部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、酢酸エチル5部を加えて調整し、淡黄色透明で不揮発分60.5重量%、粘度12,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.05mgKOH/g、水酸基価8.2mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃、重量平均分子量130,000であった。
【0275】
(合成例14)
合成例10において用いた多塩基酸(a−1)の代わりに合成例4で得られた多塩基酸610部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル560部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.1重量%)200部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、淡黄色透明で不揮発分59.8重量%、粘度10,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.05mgKOH/g、水酸基価10.5mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃、重量平均分子量120,000であった。
【0276】
(合成例15)
合成例10において用いた分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の代わりに、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン123部、及びビスフェノールFジグリシジルエーテル130部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル530部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.0重量%)210部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、淡黄色透明で不揮発分60.1重量%、粘度11,500mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価1.5mgKOH/g、水酸基価10mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃、重量平均分子量103,000であった。
【0277】
(合成例16)
合成例10において用いた分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の代わりに、ビスアリールフルオレンジグリシジルエーテル450部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル700部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)の溶液(不揮発分60.2重量%)315部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、淡黄色透明で不揮発分59.5重量%、粘度8,500mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価1.2mgKOH/g、水酸基価11.6mgKOH/g、ガラス転移温度−20℃、重量平均分子量95,000であった。
【0278】
(合成例17)
合成例10において用いた多塩基酸(a−1)、二塩基酸(a−1)′、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)、環状エステル化合物(b)、及び触媒を、(a−1)として合成例1で作製した多塩基酸590部、(a−1)′としてコハク酸124部、(a−2)としてネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル286部、(b)としてε−カプロラクトン606部、触媒として同量のテトラブチルアンモニウムニトレートにそれぞれ変更したこと以外は合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル770部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂の溶液(不揮発分60.1重量%)200部を用い、さらに滴下装置に仕込む内容物を、水酸基に付加し得る化合物(c)として無水コハク酸53部、テトラブチルアンモニウムニトレート0.5部、及び酢酸エチル50部に変更したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応をおこない、酢酸エチル65部を加えて室温まで冷却し、淡黄色透明で不揮発分59.5重量%、粘度15,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価10.5mgKOH/g、水酸基価75.8mgKOH/g、ガラス転移温度−45℃、重量平均分子量250,000であった。
【0279】
(合成例18)
合成例10において用いた環状エステル化合物(b)の代わりに、δ−バレロラクトン296部を用いて合成例10と同様にして反応を開始した。8時間の熟成反応の後、酢酸エチル590部を加えて室温まで冷却し、環状エステル化合物の付加したポリエステル樹脂(a´)溶液を得た。
次いで、得られた樹脂(a´)溶液(不揮発分59.5重量%)180部を使用したこと以外は合成例10の第2段階と同様にして反応し、酢酸エチルで調整し、淡黄色透明で不揮発分60.1重量%、粘度9,000mPa・sの付加型ポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価1.5mgKOH/g、水酸基価12.4mgKOH/g、ガラス転移温度−20℃、重量平均分子量110,000であった。
【0280】
(合成例19)
<第1段階:ポリエステル樹脂の合成>
アジピン酸(a−1)′64部、合成例1で作製した多塩基酸(a−1)656部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(a−2)280部、テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート(触媒)1部、酢酸エチル75部、及びトルエン75部を重合槽に仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温して攪拌しながら16時間反応した。次いで、テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート2部を添加し、更に8時間熟成した後、酢酸エチルを366部加えて室温まで冷却し、ポリエステル樹脂の溶液を得た。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.1重量%、粘度10,000mPa・sであり、樹脂の酸価1.5mgKOH/g、水酸基価72.1mgKOH/g、ガラス転移温度40℃、重量平均分子量50,000であった。
【0281】
<第2段階:水酸基に付加し得る化合物(c)の付加反応>
重合槽に第1段階で作製したポリエステル樹脂溶液(不揮発分60.1%)200部、滴下装置に(c)としてフェニルイソシアネート10部、触媒としてテトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート0.5部、および有機溶剤として酢酸エチル10部をそれぞれ仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、100℃に昇温した。次いで、滴下装置より上記混合物を1時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら6時間熟成した後、酢酸エチルを5部加えて室温まで冷却し、ポリエステル樹脂の溶液を得た。
この反応溶液は淡黄色透明で不揮発分60.0重量%、粘度8,000mPa・sであり、樹脂の酸価1.1mgKOH/g、水酸基価6.3mgKOH/g、ガラス転移温度45℃、重量平均分子量60,000であった。
【0282】
(合成例20)
合成例11において、(a−1)、(a−2)及び(b)の8時間の熟成反応の後、酢酸エチル783部を加えて冷却し、淡黄色透明で不揮発分60.0重量%、粘度25,000mPa・sのポリエステル樹脂の溶液を得た。樹脂の酸価0.6mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃、重量平均分子量210,000であった。
【0283】
合成例1〜4より得られた、カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)につき、態様、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び酸価(AV)を、また、合成例5〜20より得られた各樹脂溶液につき、溶液の外観、不揮発分、粘度、樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、酸価(AV)及び水酸基価(OHV)を以下の方法に従って求め、結果を表1及び表2に示した。
【0284】
《態様》
目視にて、態様を評価した。
【0285】
《溶液外観》
各樹脂溶液の外観を目視にて評価した。
【0286】
《不揮発分(TS)の測定》
各樹脂溶液約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分濃度(固形分)とした(単位:%)。
【0287】
《溶液粘度(Vis)の測定》
各樹脂溶液を25℃中でB型粘度計(東京計器社製)にて、12rpm、1分間回転の条件で測定した(単位:mPa・s)。
【0288】
《数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定》
Mn及びMwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。
GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0289】
《ガラス転移温度(Tg)の測定》
ロボットDSC(示差走査熱量計)「RDC220」(セイコーインスツルメンツ社製)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して測定した。
アルミニウムパンに試料約10mgを秤量してDSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパンとした。)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷処理した。その後10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)を算出した(単位:℃)。
【0290】
《酸価(AV)の測定》
共栓三角フラスコ中に試料(不揮発分が100%の多塩基酸、もしくは不揮発分が約60%のポリエステル溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
酸価は次式により求めた。ポリエステル樹脂の酸価は、樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0291】
《水酸基価(OHV)の測定》
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステル樹脂の溶液:約60%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0292】
【表1】

【0293】
【表2】

【0294】
(実施例1)
合成例5の第3段階までで得られた付加型ポリエステル樹脂の溶液100重量部に対して、トルエン50部を加え、更に反応性化合物(B)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、接着剤層を形成した。
乾燥後、接着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ多層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/接着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」なる構成の積層体を得た。
次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、接着剤層の反応を進行させ、接着加工した偏光板(積層体)を得た。
【0295】
(比較例1)
合成例5の第3段階までで得られた樹脂溶液の代わりに、合成例5の第1段階で得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製しようとしたが、感圧式接着剤組成物の粘度上昇が急激に進行したため、塗工することができなかった。
【0296】
(比較例2)
合成例5の第3段階までで得られた樹脂溶液の代わりに、合成例5の第2段階までで得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製しようとしたが、感圧式接着剤組成物の粘度上昇が急激に進行したため、塗工することができなかった。
【0297】
(比較例3)
合成例5で得られた樹脂溶液の代わりに、合成例6で得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製しようとしたが、塗工することはできたものの、接着剤層がタック(初期接着性)を示さず、接着加工した偏光板を作製することができなかった。
【0298】
(実施例2〜4)
合成例5の第3段階までで得られた樹脂溶液の代わりに、合成例7〜9で得られた樹脂溶液をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。(合成例9で得られた樹脂を実施例2で、合成例7で得られた樹脂を実施例3で、合成例8で得られた樹脂を実施例4でそれぞれ用いた。)
【0299】
(実施例5)
実施例2で使用した反応性化合物(B)であるTDI/TMPの代わりに、HBAP(2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート])0.25重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを用いて実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。
【0300】
(実施例6)
合成例10の第2段階までで得られた付加型ポリエステル樹脂の溶液100重量部に対して、トルエン50部を加え、更に反応性化合物(B)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを用いて実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。
【0301】
(比較例4)
合成例10の第2段階までで得られた樹脂溶液の代わりに、合成例10の第1段階で得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、接着加工した偏光板を作製しようとしたが、感圧式接着剤組成物の粘度上昇が急激に進行したため、塗工することができなかった。
【0302】
(比較例5)
合成例10で得られた樹脂溶液の代わりに、合成例19で得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、接着加工した偏光板を作製しようとしたが、塗工することはできたものの、接着剤層がタック(初期接着性)を示さず、接着加工した偏光板を作製することができなかった。
【0303】
(実施例7〜13)
合成例10の第2段階までで得られた樹脂溶液の代わりに、合成例11〜16で得られた樹脂溶液をそれぞれ用いた(実施例7:合成例12を使用、実施例8:合成例13を使用、実施例9:合成例14を使用、実施例10:合成例15を使用、実施例11:合成例16を使用、実施例12:合成例11を使用、実施例13:合成例18を使用)こと以外は実施例6と同様にして、接着加工した偏光板を作製した
【0304】
(比較例6)
合成例11で得られた樹脂溶液の代わりに、合成例20で得られた樹脂溶液を用いたこと以外は実施例12と同様にして、接着加工をしようとしたが、感圧式接着剤組成物の粘度上昇が急激に進行したため、塗工することができなかった。
【0305】
(実施例14、15)
合成例17、18で得られた付加型ポリエステル樹脂の溶液それぞれ100重量部に対して、トルエン50部を加え、更に反応性化合物(B)として、HBAP(2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート])0.25重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを用いて実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。
【0306】
(実施例16、17)
合成例17、18で得られた付加型ポリエステル樹脂の溶液それぞれ100重量部に対して、トルエン50部を加え、更に反応性化合物(B)として、TGMXDA(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン)0.25重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを用いて実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。
【0307】
(実施例18、19)
合成例17、18で得られた付加型ポリエステル樹脂の溶液それぞれ100重量部に対して、トルエン50部を加え、更に反応性化合物(B)として、カルボジイミド化合物である「カルボジライトV−05」(日清紡績株式会社製)0.25重量部を加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。これを用いて実施例1と同様にして、接着加工した偏光板を作製した。
【0308】
実施例および比較例で得られた感圧式接着剤組成物のポットライフ及び塗加工性について以下の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0309】
《ポットライフの評価方法》
各実施例および比較例で得られた感圧式接着剤組成物について、25℃で1時間おきに10時間までB型粘度計(東京計器社製)にて、12rpm、1分間回転の条件で粘度を測定し、可使時間(ポットライフ)を3段階で評価した。
○:「全く問題がない。8時間までの粘度上昇率が2倍未満。」
△:「若干粘度上昇が認められ、5時間までの粘度上昇率が2倍未満。」
×:「急激な粘度上昇が認められ、5時間未満でゲル化。実用上問題あり。」
【0310】
《塗加工性の評価方法》
各実施例、比較例で得られた感圧式接着剤組成物を、剥離処理されたポリエステルフィルムにコンマコーターにて速度2m/minで、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗工し、100℃オーブンにて乾燥させ、厚さ50μmのポリエステルフィルムを貼り合わせて積層させ、感圧式接着シートを作製した。その塗工面の状態について目視にて観察し、3段階で評価した。
○:「全く問題がない。」
△:「塗工面の端部に若干のハジキや発泡が認められるが、実用上問題無し。」
×:「塗工面にハジキ、発泡やスジ引きが認められ、実用上問題あり。」
【0311】
【表3】

【0312】
実施例および比較例で得られた接着加工した偏光板(積層体)について、塗膜の屈折率、耐熱性、耐湿熱性、光学特性および再剥離性を以下の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0313】
《塗膜の屈折率の評価方法》
実施例および比較例で得られた感圧式接着剤組成物を剥離フィルム上に塗工し、120℃のオーブンにて乾燥して、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後、ポリエステルフィルム貼り合わせて積層させ、感圧式接着シートを作製した。
その後、アッベ屈折率計「DR−M2」[ATAGO社製]にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、接着シート上の接着剤層の屈折率を測定した。
【0314】
《光学特性の評価方法》
各実施例、比較例で得られた感圧式接着剤組成物を、剥離処理されたポリエステルフィルムに塗工して乾燥させ、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後に、更に剥離処理されたポリエステルフィルムを貼り合わせた。この剥離処理されたポリエステルフィルムに挟持された感圧式接着剤層を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させた後、両方の剥離処理ポリエステルフィルムを取り除き、感圧式接着剤層単体の外観を目視判定するとともに、HAZEを「NDH−300A」[日本電色工業(株)社製]で測定した。
○:「実用上全く問題がない。HAZE:1未満。」
△:「曇り等は認められない、かつHAZE:1以上3未満。」
×:「若干曇りが認められる、またはHAZE:3以上。実用上問題がある。」
【0315】
《耐熱性、耐湿熱性の評価方法》
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。
耐熱性の評価として、上記積層物を120℃で1000時間放置した後の浮きハガレ、および積層物に光を透過させたときの光漏れ(白抜け)を目視で観察した。
また、耐湿熱性の評価として、上記積層物を80℃、相対湿度90%で1000時間放置した後の浮きハガレ、および積層物に光を透過させたときの光漏れ(白抜け)を目視で観察した。
耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:「浮きハガレ・白ぬけが全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きハガレ・白ぬけが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に浮きハガレ・白ぬけがあり、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【0316】
《再剥離性(リワーク性)の評価方法》
接着加工した偏光板(積層体)を25mm×150mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板にラミネータを用いて貼り付け、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させた。この試験片を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。
○:「曇りがなく、実用上全く問題がない」、
△:「若干曇りが認められるが、実用上問題ない」、
×:「全面的に接着剤層の転着が認められ、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【表4】

【0317】
以上のように、本発明の感圧式接着剤組成物は、塗加工性、耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性、屈折率の制御性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例1、2,4及び比較例6では、感圧式接着剤のポットライフが短く、塗工できないことが分かる。また、比較例3,5では、塗工することはできたものの、接着剤加工をすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル樹脂特有の凝集力を維持しつつ、主鎖骨格に芳香環や脂環を導入したポリマーを形成することができるため、アクリル系樹脂では得られなかった接着物性を発現させることができる。その例として、本発明の様な光学積層体での耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等が挙げられる。特に、光学積層体の用途では、光学特性である、光漏れのないことが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、屈折率の制御等、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の感圧式接着剤組成物は、上述のようにこれまでは困難であった特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
また、本発明の感圧式接着剤組成物は、光学部材用途として好適であるほか、一般ラベル・シールのほか、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、タッキファイヤ、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を2つ以上有する多塩基酸(a−1)と、分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)との重付加反応により得られる、水酸基を有するポリエステル樹脂(a)に環状エステル化合物(b)が開環付加し、さらに水酸基に付加し得る化合物(c)が付加してなる側鎖を有する付加型ポリエステル樹脂(A)と、前記付加型ポリエステル樹脂(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含有することを特徴とする感圧式接着剤組成物。
【請求項2】
多塩基酸(a−1)が、下記式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の感圧式接着剤組成物。
【化1】

〔式(1)中、A1〜A4は、それらの内の2つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の3つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OHの組合せであるか、または、それらの内の1つが数平均分子量(Mn)200〜5000の一価の重合体部位(P)、他の2つが−C(=O)OH若しくは−CH2C(=O)OH、他の1つが−C(=O)−Xa−Ra(但し、Xaは、−O−、若しくは−N(Ra2)−であり、Raは、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基、Ra2は、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される基である)のいずれかの組合せであって、X1は下記式(2)〜(5)のいずれかで示される四価の基である。〕
【化2】

【化3】

【化4】

〔式(4)中、R2は、炭素−炭素間の単結合、あるいは−CH2−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)OCH2CH2OC(=O)−、−C(=O)OCH(OC(=O)CH3)CH2OC(=O)−、−SO2−、−C(CF32−、または下記式(4−1)若しくは式(4−2)で示される二価の基である。〕
【化5】

【化6】

【化7】

〔式(5)で示される構造が有する炭素数は4〜20であって、
式(5)中、R3は、炭素−炭素間の単結合、−O−、または炭素数1〜8の炭化水素基であり、
4、R5、R6、R9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基であるか、または、R4とR6とおよび/またはR5とR9とで直接結合して不飽和二重結合を形成してもよく、
7、R8はそれぞれ独立に水素原子、若しくは炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、またはR7とR8とで直接結合または炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とまたはR3とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を形成してもよく、あるいはR3とR7とR8とで炭素数1〜8の炭化水素基による結合をして環を複数形成しても良い。〕
【請求項3】
一価の重合体部位(P)が、ポリエーテル、ポリエステル、およびビニル共重合体からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項4】
一価の重合体部位(P)が、下記式(6)で示される一価のポリエーテルおよび/またはポリエステルからなる重合体部位(Pe)であることを特徴とする請求項2または3に記載の感圧式接着剤組成物。
【化8】

〔式(6)中、Y1は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、窒素原子数0〜3からなる1価の末端基、
2は、−O−、−S−、−N(Rb)−(ただし、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
3は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH−、−N(Rc)C(=O)−、または−N(Rc)C(=O)CH−(ただし、Rcは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
1は、−R11O−で示される繰り返し単位であり、
2は、−C(=O)R12O−で示される繰り返し単位であり、
3は、−C(=O)R13C(=O)−OR14O−で示される繰り返し単位であり、
11は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
12は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
13は炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
14は、−CH(R15)−CH(R16)−の構造で示され、
15とR16は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部の炭素原子数が1〜20であるアルキルオキシメチル基、アルケニル部の炭素原子数が2〜20であるアルケニルオキシメチル基、アリール部の炭素原子数が6〜20であり、かつ、ハロゲン原子で置換されていても良いアリールオキシメチル基、N−メチレン−フタルイミド基のいずれかであって、
17は、上記R11、R12または−C(=O)R13C(=O)−OR14−であり、
m1は0〜100の整数、m2は0〜60の整数、m3は0〜30の整数、ただしm1+m2+m3は1以上100以下であり、
式(6)中の繰り返し単位G1〜G3の順序はどのようなものでも良く、また、ランダム型又はブロック型のどちらでも構わない。〕
【請求項5】
1が炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする請求項4記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項6】
1がエチレン性不飽和二重結合を有することを特徴とする請求項4記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項7】
m2が3〜15の整数であることを特徴とする請求項4ないし6いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項8】
一価の重合体部位(P)が、下記式(7)で示される一価のビニル共重合体(Pv)であることを特徴とする請求項2または3に記載の感圧式接着剤組成物。
【化9】

〔式(7)中Y2は、ビニル重合体の重合停止基であり、
21およびR22は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、
23およびR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、又は−C(=O)−X6−R25(但し、X6は、−O−若しくは−N(R26)−であり、R25、R26は水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記アルキル基は、置換基として芳香族基を有していてもよい)であり、
4は、−O−R27−または−S−R27−であり、R27は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
5は、−OC(=O)−、−OC(=O)CH−、−N(Rd)C(=O)−、または−N(Rd)C(=O)CH−(ただし、Rdは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
nは2〜50の整数である。〕
【請求項9】
分子内に環状エーテル基を2個有する化合物(a−2)の環状エーテル基が、グリシジル基及び/又はオキセタニル基であることを特徴とする請求項1ないし8いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項10】
環状エステル化合物(b)が、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)であることを特徴とする請求項1ないし9いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項11】
ヒドロキシカルボン酸の環状エステル(b−1)が、ラクトン類であることを特徴とする請求項10記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項12】
水酸基に付加し得る化合物(c)が、シリル化剤類、単官能イソシアネート化合物類、もしくは酸無水物類のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし11いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項13】
付加型ポリエステル樹脂(A)が、反応触媒として第4級アンモニウム塩を用いて得られるものであることを特徴とする請求項1ないし12いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項14】
付加型ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1ないし13いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項15】
反応性化合物(B)がポリイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項14記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項16】
付加型ポリエステル樹脂(A)の酸価が、0.1〜50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1ないし13いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項17】
反応性化合物(B)がエポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、もしくは金属キレート化合物のいずれかであることを特徴とする請求項16記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項18】
付加型ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が−80〜10℃であることを特徴とする請求項1ないし17いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項19】
付加型ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が2,000〜1,000,000であることを特徴とする請求項1ないし18いずれかに記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項20】
請求項1ないし19いずれかに記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体。
【請求項21】
液晶セル用ガラス部材、請求項1ないし19いずれかに記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2008−143995(P2008−143995A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331367(P2006−331367)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】