説明

感放射線性樹脂組成物、表示素子のスペーサーおよび保護膜ならびにそれらの形成方法

【課題】スリット塗布における高速塗布が可能であり、低露光量であっても所望のパターン寸法を有し且つ強度に優れるパターン状薄膜が得られ、短い時間で現像可能である感放射線性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、 (A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤を含有する感放射線性樹脂組成物において、(B)重合性不飽和化合物として、(B−1)下記一般式(1)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物及び、(B−2)分子量100以上のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、表示素子のスペーサーおよび保護膜ならびにそれらの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等に使用される部材のうち、スペーサー、保護膜など多くはフォトリソグラフィーにより形成されている(例えばスペーサーにつき、特開2001−261761号公報参照)。近年、液晶表示パネルの普及および大型化が急速に進んでいるため、コスト削減および工程時間短縮の観点から、フォトリソグラフィー工程において、現像時間の短縮が特に望まれている。さらに、放射線の照射時間(以下、露光時間)の短縮と現像時間の短縮を同時に達成可能となる材料の開発が強く望まれている。
【0003】
現像時間の短縮を行うためには、通常、感放射線性樹脂組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂の酸価を高くすることが行われる。しかし、その場合、放射線の照射部分(以下、露光部)の現像性も高くなることから、パターンの線幅が小さくなり露光時間を長くする必要が生じ、現像時間の短縮と露光時間の短縮の両立を達成することは困難である。
【0004】
また、現像時間の短縮を行うために、感放射線性樹脂組成物に含有される共重合体の酸価を高くする以外に、親水性の高い低分子化合物を添加することがしばしば行われる(例えば特開2007−9164号公報参照)。しかし、この方法においても、露光部の現像性も高くなることから、現像時間の短縮と露光時間の短縮の両立を達成することは困難である。
【0005】
現像時間の短縮と露光時間の短縮という二つの要求を両立するためには、アルカリ可溶性樹脂の酸価を高くする、もしくは親水性の高い低分子化合物を添加することで未露光部分の現像時間の短縮を行い、さらに、露光部の反応性を向上させる必要がある。露光部の反応性を向上させる方法としては、重合性不飽和化合物、もしくは感放射線性重合開始剤の使用割合を増やすことが一般的である。しかし、従来から一般的に使用されていた重合性不飽和化合物は疎水性が高く、使用割合を増やすと現像時間が長くなる問題がある。
【0006】
また、感放射線性重合開始剤は一般的に固体であり、使用割合を増やすとレジスト中で感放射線性重合開始剤が析出する問題があり適用が困難である。さらに、感放射線性重合開始剤は一般的に高価であり、使用割合を増やすとコストが増加する問題がある。
【0007】
さらには、スペーサーや保護膜は液晶表示素子内に残存する「永久膜」であるため、これらから不純物が素子内に溶出しないことが要求される。しかしながら、従来知られている感放射線性樹脂組成物から形成された保護膜、スペーサーを具備する液晶表示素子は、溶出した不純物に起因すると推定される「焼き付き」が生ずることがあり、問題となっている。感放射線性重合開始剤は、この「焼き付き」を悪化させる一因と考えられているため、使用割合を増加させることは「焼き付き」の観点からも好ましくない。
【0008】
このように、近年の液晶表示素子のスペーサーや保護膜を形成するための感放射線性樹脂組成物には、高い放射線感度を有し、低露光量であっても強度に優れるパターン状薄膜を所望のパターン寸法で形成することができ、さらに、未露光領域を現像により取り除く際、短い時間で現像可能であることが要求されている。
【特許文献1】特開2001−261761号公報
【特許文献2】特開2007−9164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、塗膜に微小な凹凸からなるムラを発生させることなく、スリット塗布における高速塗布が可能であり、感放射線性樹脂組成物溶液の省液化を可能にする。
さらに高感度で表示素子のスペーサーや保護膜を形成しうる感放射線性樹脂組成物で、特に、表示素子のスペーサーとして、従来から要求されている現像性、ラビング耐性と、高回復率と柔軟性を併せ持つ圧縮性能を維持しつつ、特に高度の膜厚均一性を有する液晶表示素子のスペーサーならびにその形成方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、上記の感放射線性樹脂組成物を用いた表示素子のスペーサーまたは保護膜の形成方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、上記の感放射線性樹脂組成物から形成された表示素子のスペーサーまたは保護膜を提供することにある。。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(A)アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性不飽和化合物、および
(C)感放射線性重合開始剤
を含有する感放射線性樹脂組成物において、(B)重合性不飽和化合物として、
(B−1)下記一般式(1)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物及び、
(B−2)分子量100以上のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【0012】
【化1】


(式(1)中、Xは各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを表し、Yは各々独立に、−CHCHO−または、−CHCH(CH)O−を示す。また、a〜fは整数であり、かつ、aからfまでの合計は6〜24である。)
【0013】
本発明によれば、高い放射線感度と優れた現像性を両立した感放射線性樹脂組成物が得られる。また、当該感放射線性樹脂組成物を用いることによって、強度や耐久性(耐薬品性)等の諸特性が優れると共に、「焼き付き」の問題も起こさないスペーサーまたは保護膜を形成することが可能である。
【0014】
当該感放射線性樹脂組成物に包含される(B−1)及び(B−2)化合物の使用割合は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(B−1)成分の使用割合は、10〜150質量部であり、(B−2)成分の使用割合が、1〜70質量部である。このような割合で(B−1)及び(B−2)化合物を使用することによって、感放射線感度、現像性および圧縮特性等の諸特性がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0015】
当該感放射線性樹脂組成物に包含される(B)重合性不飽和化合物としては、(B−1)及び(B−2)成分とともに、(B−3)成分である2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種使用することによって、感放射線感度や現像性などの諸特性がより優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
また、(A)アルカリ可溶性樹脂において、エポキシ基を有する共重合体を使用することによって、得られる硬化膜の耐熱性、耐溶剤性などの諸特性が効果的に向上されうる。
【0016】
当該感放射線性樹脂組成物は、表示素子のスペーサーまたは保護膜を形成するために用いることができる。また、表示素子のスペーサーまたは保護膜を、
(1)上記感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程、
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程、及び
(4)現像後の被膜を加熱する工程の諸工程によって製造することができる。当該感放射線性樹脂組成物から形成されたスペーサーまたは保護膜は、寸法精度、強度、耐久性(耐薬品性)等の諸性能に優れるため、表示素子に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、高い放射線感度を有し、低露光量であっても現像工程においてパターンが剥離することがなく、強度に優れるパターン状薄膜を所望のパターン寸法で容易に形成することができ、また短い現像時間で現像可能である。従って、当該感放射線性樹脂組成物は、表示素子のスペーサーまたは保護膜を形成するために特に好適に使用することができる。
【0018】
当該感放射線性樹脂組成物から形成されたスペーサーまたは保護膜は、寸法精度、強度などの諸性能に優れ、表示素子に好適に使用することができる。また、当該スペーサーまたは保護膜は、液晶配向膜剥離液に対する耐久性(耐薬品性)にも優れているため、基板再生工程における製品歩留まりを向上することができる。さらには、当該スペーサーは、液晶配向膜のラビング工程においてパターンが剥離することがない。このようなスペーサーまたは保護膜を具備する液晶表示素子は、「焼き付き」の発生が抑制されたものであり、長期信頼性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<感放射線性樹脂組成物>
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0020】
(A)アルカリ可溶性樹脂
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(A)アルカリ可溶性樹脂としては(以下、(A)成分とも言う)、当該成分を含む感放射線性樹脂組成物の現像処理工程において用いられるアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであれば、特に限定されるものではない。このようなアルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、(a1)不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「(a1)化合物」という。)と、(a2)(a1)以外の不飽和化合物(以下、「(a2)化合物」という。)との共重合体が特に好ましい。
【0021】
(A)成分を製造するに際して用いられる(a1)化合物としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物等を挙げることができる。
上記モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を;上記ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等を;上記ジカルボン酸の無水物としては、上記したジカルボン酸の無水物等を、それぞれ挙げることができる。
これらののうち、共重合反応性、得られる共重合体の現像液に対する溶解性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸または無水マレイン酸が好ましい。
(A)成分の(a1)化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは7〜50質量%であり、特に好ましくは8〜40質量%である。(a1)化合物に由来する繰り返し単位の含有率が5〜60質量%であるとき、放射線感度、現像性および保存安定性等の諸特性がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0022】
(A)成分を製造するに際して用いられる(a2)化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、含酸素複素5員環または含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物およびその他の不飽和化合物を挙げることができる。
これらの具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えばアクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等を;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシペンチルエステル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルエステル等を;(メタ)アクリル酸のヒドロキシシクロアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチル−シクロヘキシルメチルエステル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシエチル−シクロヘキシルエチルエステル等を;
(メタ)アクリル酸アリールエステルとして、例えばアクリル酸フェニル等を;(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸ベンジル等を;不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとして、例えばマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル等を;含酸素複素5員環または含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル等を;
ビニル芳香族化合物として、例えばスチレン、α−メチルスチレン等を;
共役ジエン化合物として、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン等を;
その他の不飽和化合物として、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を、それぞれ挙げることができる。
【0023】
これらの(a2)化合物のうち、共重合反応性の点から、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、スチレン、p−メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、1,3−ブタジエン等が好ましい。
(a2)化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。化合物(a2−3)の繰り返し単位の含有率が10〜80質量%の時、共重合体の分子量の制御が容易となり、現像性、感放射線感度等がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0024】
(A)成分は、(a1)化合物、(a2)化合物を、溶媒中、ラジカル重合開始剤を使用して重合することにより実施することができる。(A)成分の重合は、例えば、(a1)化合物、(a2)化合物を、溶媒中、ラジカル重合開始剤を使用して重合することにより実施することができる。
【0025】
前記ラジカル重合開始剤としては、使用される重合性不飽和化合物の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤のうち、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が好ましい。
前記ラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
前記重合において、ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性不飽和化合物100質量%に対して、通常、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%である。
【0027】
前記重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤の具体例としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。 また、重合温度は、通常、0〜150℃、好ましくは50〜120℃であり、重合時間は、通常、10分〜20時間、好ましくは30分〜6時間である。
【0028】
(a1)化合物と(a2)化合物との共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、好ましくは2.0×103〜1.0×105、より好ましくは5.0×103〜5.0×104である。Mwを2.0×103以上とすることによって、感放射線樹脂組成物の十分な現像マージンを得ると共に、形成される塗膜の残膜率(パターン状薄膜が適正に残存する比率)の低下を防止し、さらには得られるスペーサーパターンの形状や耐熱性などを良好に保つことが可能となる。一方、Mwを1.0×105以下にすることによって、高度な放射線感度を保持し、良好なパターン形状を得ることができる。また、共重合体の分子量分布(以下、「Mw/Mn」という)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。Mw/Mnを5.0以下にすることによって、得られるスペーサーパターンの形状を良好に保つことができる。また、上記のような好ましい範囲のMw及びMw/Mnを有する共重合体を含む感放射線性樹脂組成物は、高度な現像性を有するため、現像工程において、現像残りを生じることなく容易に所定パターン形状を形成することができる。
【0029】
前記重合反応に用いられる溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素類、ケトン類、他のエステル類などを挙げることができる。
【0030】
また。(A)成分においては、(a1)化合物と(a2)化合物との共重合体に、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する不飽和化合物を反応させて、不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂とすることもできる。
【0031】
不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の製造は、上記(a1)化合物と(a2)化合物との共重合体に、エポキシ基を有する不飽和化合物を共重合体のカルボキシル基に反応させることで得られる。エポキシ基を有する不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
共重合体とエポキシ基を有する不飽和化合物との反応は、必要に応じて適当な触媒の存在下において、好ましくは重合禁止剤を含む共重合体の溶液に、エポキシ基を有する不飽和化合物を投入し、加温下で所定時間攪拌することによって実施することができる。上記触媒としては、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド等を、上記重合禁止剤としては、例えばp−メトキシフェノール等を、それぞれ挙げることができる。反応温度は。70℃〜100℃が好ましく、反応時間は、8〜12時間が好ましい。
【0032】
(A)成分の製造する際のエポキシ基を有する不飽和化合物の使用割合は、共重合体中の(a1)化合物に由来するカルボキシル基に対して、好ましくは10〜99モル%であり、さらに好ましくは5〜97モル%である。エポキシ基を有する不飽和化合物の使用割合が20〜99モル%のとき、共重合体との反応性、感放射線性樹脂組成物の耐熱性ならびに弾性特性がより向上することとなり、好ましい。
【0033】
(B)重合性不飽和化合物
本発明の感放射線性樹脂組成物は、(B)重合性不飽和化合物として、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物を含有する(以下、(B−1)成分とも言う。)。一般式(1)において、Xは各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを表し、Yは各々独立に、−CHCHO−または、−CHCH(CH)O−を示す。また、a〜fは整数であり、かつ、aからfまでの合計は6〜24である。感放射線性樹脂組成物における一般式(1)の化合物の使用割合は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部である。
【0034】
上記一般式(1)において、Xがアクリロイル基で、Yが−CHCHO−の化合物は、従来から公知の方法で製造することができる。例えば、ジペンタエリスリトールにエチレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基にアクリロイルクロライドやアクリル酸を反応させてアクリロイル基を導入する工程とから製造する方法や、アクリル酸にエチレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合してエチレンオキサイド変性アクリル酸を合成した後、ジペンタエリスリトールとエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)において、Xがメタアクリロイル基で、Yが−CHCH(CH)O−の化合物は、また、ジペンタエリスリトールにプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基にメタアクリロイルクロライドやメタアクリル酸を反応させてメタアクリロイル基を導入する工程とから製造する方法や、メタアクリル酸にプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合してプロピレンオキサイド変性メタアクリル酸を合成した後、ジペンタエリスリトールとエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0036】
このような(B−1)成分を使用することによって、感放射線性樹脂組成物溶液の粘度と固形分濃度を好適な範囲に調製することが可能となり、さらに感放射線性樹脂組成物から得られるスペーサーや保護膜の耐熱性等の諸物性を向上させることができる。
【0037】
(B−2)分子量100以上のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、(B−2)成分とも言う。)は、1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の(メタ)アクリレート基を有する分子量100以上の化合物である。そのため、メタクリル酸、アクリル酸は1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であるが、分子量100以下であるため、本発明の(B−2)成分には含まれない。分子量100以下の化合物は感放射線性組成物の保存安定性を低下させるため好ましくない。
(B−2)成分の具体例として、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マロン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マロン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グルタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アジピン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ピメリン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スベリン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アゼライン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、セバシン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テレフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、シュウ酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、マロン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、コハク酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、マロン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グルタル酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アジピン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、スベリン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アゼライン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、セバシン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、フタル酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソフタル酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、テレフタル酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、マレイン酸変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
3官能(メタ)アクリレート化合物としては、シュウ酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、マロン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、マロン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グルタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アジピン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、スベリン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アゼライン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、セバシン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テレフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、マレイン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0040】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、シュウ酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、マロン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、マロン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グルタル酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アジピン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、スベリン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アゼライン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、セバシン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イソフタル酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テレフタル酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、マレイン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0041】
これの市販品としては、アロニックス M−510、M-520、M−5300、M−5400(東亞合成(株)製)等を使用することができる。
【0042】
これのうち特に、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、コハク酸変性トリメチロールプロパンジアクリレート、フタル酸変性トリメチロールプロパンジアクリレート、マレイン酸変性トリメチロールプロパンジアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、マレイン酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、マレイン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
このような(B−2)化合物は、1種以上含有していればよく、(B−2)化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜70質量部である。このような(B−2)成分を使用することによって、感放射線性樹脂組成物から得られるスペーサーや保護膜の解像度や現像性、基板との密着性を向上させることができる。
【0044】
当該感放射線性樹脂組成物に包含される(B−1)及び(B−2)化合物の使用割合は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(B−1)成分の使用割合は、10〜150質量部であり、(B−2)成分の使用割合が、1〜70質量部である時が最もこの好ましく、このような使用割合で(B−1)及び(B−2)化合物を使用することによって、感放射線性樹脂組成物溶液の粘度と固形分濃度を好適な範囲に調製することが可能となり、特にスリットダイコーター塗布方式における塗布性能の向上に効果がある。
【0045】
また、本発明の(B)重合性不飽和化合物としては、(B−1)及び(B−2)成分とともに、(B−3)成分である2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種使用することができる(以下、(B−3)成分とも言う。)。
このような(B−3)成分の具体例としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート等を挙げることができる。
また、アルキレン直鎖および脂環構造を有し、2個以上のイソシアネート基を含む化合物と分子内に1個以上の水酸基を含有する3官能、4官能および5官能の(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート化合物も挙げられる。
これの市販品として、例えば、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、多官能ウレタンアクリレートの市販品として、KAYARAD DPHA−40H(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0046】
このような(B−3)化合物は、1種以上含有していればよく、(B−1)及び(B−2)化合物とともに使用することができる。(B−3)化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部であり、より好ましくは5〜150質量部である。このような(B−3)成分を使用することによって、感放射線性樹脂組成物の感度及び感放射線性樹脂組成物から得られるスペーサーや保護膜の表面硬度、耐熱性を向上させることができる。
【0047】
(C)感放射線性重合開始剤
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(C)感放射線性重合開始剤は、放射線に感応して(B)重合性不飽和化合物の重合を開始しうる活性種を生じる成分である。このような(C)感放射線性重合開始剤としては、オキシムエステル化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、ベンゾフェノン化合物などを挙げることができる。
【0048】
上記オキシムエステル化合物の具体例としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1.2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕などを挙げることができる。
【0049】
これらのうちで、好ましいオキシムエステル化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)またはエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕を挙げることができる。これらオキシムエステル化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
上記アセトフェノン化合物としては、例えばα−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物を挙げることができる。
【0051】
α−アミノケトン化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0052】
α−ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0053】
これらのアセトフェノン化合物のうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンまたは2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンが特に好ましい。
【0054】
上記ビイミダゾール化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどを挙げることができる。
【0055】
これらビイミダゾール化合物のうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールまたは2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、特に2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましい。
【0056】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(C)感放射線性重合開始剤としてビイミダゾール化合物を使用する場合、それを増感するためにジアルキルアミノ基を有する脂肪族または芳香族化合物(以下、「アミノ系増感剤」という。)を添加することができる。
【0057】
かかるアミノ系増感剤としては、例えば4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらのアミノ系増感剤のうち、特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。上記アミノ系増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
さらに、本発明の感放射線性樹脂組成物においてビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、水素ラジカル供与剤としてチオール化合物を添加することができる。ビイミダゾール化合物はアミノ系増感剤によって増感されて開裂し、イミダゾールラジカルを発生するが、そのままでは高い重合開始能が発現されず、得られる液晶表示素子のスペーサーが逆テーパ形状のような好ましくない形状となる場合がある。しかし、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とが共存する系に、チオール化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール化合物から水素ラジカルが供与される。その結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されるとともに、重合開始能の高い硫黄ラジカルを有する成分が発生し、それによりスペーサーの形状をより好ましい順テーパ状にすることができる。
【0059】
かかるチオール化合物としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾールなどの芳香族チオール化合物;3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチルなどの脂肪族モノチオール化合物;ペンタエリストールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリストールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)などの2官能以上の脂肪族チオール化合物を挙げることができる。これらのチオール化合物のうち、特に2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0060】
ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、アミノ系増感剤の添加量は、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。アミノ系増感剤の添加量が0.1〜50質量部の時、得られるスペーサーの形状が良好となる。
【0061】
また、ビイミダゾール化合物およびアミノ系増感剤とチオール化合物とを併用する場合、チオール化合物の添加量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。チオール化合物の添加量が0.1〜50質量部の時、スペーサーの形状、密着性が最も良好となる。
【0062】
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(C)感放射線性重合開始剤は、O−アシルオキシム化合物およびアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、オキシムエステル化合物およびアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種ならびにビイミダゾール化合物を含有することがより好ましい。
【0063】
(C)感放射線性重合開始剤におけるオキシムエステル化合物およびアセトフェノン化合物の割合としては、その合計量が(C)感放射線性重合開始剤の全量に対して好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。このような割合で(C)感放射線性重合開始剤を使用することにより、本発明の感放射線性樹脂組成物は、低露光量の場合でも高感度でより高い強度および密着性を有するスペーサーまたは保護膜を形成することができる。
【0064】
[添加剤]
本発明の感放射線性樹脂組成物には、所期の効果を損なわない範囲内で必要に応じて、上記成分に加えて、界面活性剤、接着助剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を配合することもできる。
【0065】
接着助剤は、得られるスペーサーまたは保護膜と基板との接着性をさらに向上させるために使用することができる。このような接着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基などの反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましい。接着助剤の具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0066】
これらの接着助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。接着助剤の使用量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。界面活性剤の使用量が0.1〜20質量部の時、スペーサーまたは保護膜に対する接着性が最も良好となる。
【0067】
界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の被膜形成性をより向上させるために使用することができる。このような界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他の界面活性剤を挙げることができる。
【0068】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフロロアルキル基および/またはフロロアルキレン基を有する化合物が好ましい。フッ素系界面活性剤の例としては、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(1,1,2,2−テトラフロロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(n−ヘキシル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、パーフロロ−n−ドデカンスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−デカン、1,1,2,2,3,3,9,9,10,10−デカフロロ−n−ドデカン、フロロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フロロアルキルリン酸ナトリウム、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、ジグリセリンテトラキス(フロロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フロロアルキルアンモニウムヨージド、フロロアルキルベタイン、他のフロロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフロロアルキルポリオキシエタノール、パーフロロアルキルアルコキシレート、カルボン酸フロロアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0069】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BM CHEMIE社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−170C、同−171、同−430、同−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同−113、同−131、同−141、同−145、同−382、サーフロンSC−101、同−102、同−103、同−104、同−105、同−106(以上、旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(以上、新秋田化成(株)製)、フタージェントFT−100、同−110、同−140A、同−150、同−250、同−251、同−300、同−310、同−400S、フタージェントFTX−218、同−251(以上、(株)ネオス製)などを挙げることができる。
【0070】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190、SH 8400 FLUID」(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(以上、GE東芝シリコーン(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0071】
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の使用量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.15〜3質量部である。界面活性剤の使用量が0.1〜5質量部の時、塗布膜ムラを低減することができる。
【0072】
ラジカル捕捉剤としては、例えばヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、アルキルホスフェート化合物、硫黄原子を含む化合物(ただし、アルキルホスフェート化合物を除く)等を使用することができる。
【0073】
これらの具体例としては、上記ヒンダードフェノール化合物として、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3”,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノ
ール、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸等を挙げることができる。
【0074】
これらの市販品として、例えばアデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(以上、(株)ADEKA製);sumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP−S、sumilizerBBM−S、sumilizerWX−R、sumilizerGA−80(以上、住友化学(株)製);IRGANOX L101、IRGANOX L115、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1098、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330、IRGANOX 1726、IRGANOX 1425WL、IRGANOX 1520L、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 3114、IRGANOX 565、IRGAMOD295(以上、チバジャパン(株)製)等を挙げることができる。
【0075】
上記ヒンダードアミン化合物としては、例えばテトラキス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等を挙げることができ、これらの市販品として、例えばアデカスタブLA−52、アデカスタブLA57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(以上、(株)ADEKA製);
sumilizer9A(住友化学(株)製);
CHIMASSORB 119FL、CHIMASSORB 2020FDL、CHIMASSORB 944FDL、TINUVIN 622LD、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 765、TINUVIN 770DF(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0076】
上記アルキルホスフェート化合物としては、例えばブチリデンビス{2−tert−ブチル−5−メチル−p−フェニレン}−P、P,P,P−テトラトリデシルビス(ホスフィン)、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等を挙げることができ、これらの市販品として、例えばアデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、(株)ADEKA製);IRGAFOS 168(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0077】
上記硫黄原子を含む化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジ(プロピオン酸−n−トリデカニル)スルフィド、チオジエチレン ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができるほか、チオエーテルを使用することができる。チオエーテルの市販品としては、例えばアデカスタブAO−412S、アデカスタブAO−503(以上、(株)ADEKA製);sumilizerTPL−R、sumilizerTPM、sumilizerTPS
、sumilizerTP−D、sumilizerMB(以上、住友化学(株)製);IRGANOX PS800FD、IRGANOX PS802FD、IRGANOX 1035(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);DLTP、DSTP、DMTP、DTTP(以上、(株)エーピーアイコーポレーション製)等を挙げることができる。
【0078】
このようなラジカル捕捉剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ラジカル捕捉剤は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、15質量部以下の割合で使用することができ、0.01〜15質量部の範囲、さらに1〜10質量部の範囲で使用することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の感放射線性を損なうことなく、ラジカル捕捉剤の効果を有効に発揮することができる。
【0079】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに上記の如き任意的に添加されるその他の成分を均一に混合することによって調製される。この感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で用いられる。例えば(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに任意的に添加されるその他の成分を、溶媒中において所定の割合で混合することにより、溶液状態の感放射線性樹脂組成物を調製することができる。
【0080】
本発明の感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに任意的に添加されるその他の成分の各成分を均一に溶解し、各成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、上述した(A)アルカリ可溶性樹脂を製造するために使用できる溶媒として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0081】
このような溶媒のうち、各成分の溶解性、各成分との反応性、被膜形成の容易性などの観点から、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、酢酸n−ブチル、シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアルコール、3−メトキシブタノール、シクロヘキサノンを特に好ましく使用することができる。これらの溶媒は、一種のみを単独で使用することができ、二種以上を混合して使用してもよい。
二種以上を混合して使用する場合、ジエチレングリコールジエチルエーテル/3−メトキシプロピオン酸メチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル/3−メトキシブチルアセテート、/3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル/酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ベンジルアルコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル/酢酸n−ブチル/3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸n−ブチル/3−メトキシプロピオン酸メチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸n−ブチル/3−メトキシプロピオン酸メチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/シクロヘキサノン/3−メトキシプロピオン酸メチル等の組み合わせが好ましい。
【0082】
さらに、上記溶媒とともに膜厚の面内均一性を高めるため、高沸点溶媒を併用することもできる。併用できる高沸点溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレンなどが挙げられる。これらのうち、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンまたはN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0083】
本発明の感放射性樹脂組成物の溶媒として、高沸点溶媒を併用する場合、その使用量は、全溶媒量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることができる。高沸点溶媒の使用量が50質量%以下の時、被膜の膜厚均一性、感度および残膜率が良好となる。
【0084】
本発明の感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、固形分濃度(組成物溶液中に占める溶媒以外の成分、すなわち上記の(A)成分、(B)成分および(C)成分ならびに任意的に添加されるその他の成分の合計量の割合)は、使用目的や所望の膜厚の値などに応じて任意の濃度(例えば5〜50質量%)に設定することができる。さらに好ましい固形分濃度は、基板上への被膜の形成法方により異なるが、これについては後述する。このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタなどを用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0085】
<スペーサーまたは保護膜の形成方法>
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いてスペーサーまたは保護膜を形成する方法について説明する。
【0086】
本発明のスペーサーまたは保護膜の形成方法は、少なくとも下記の工程(1)〜(4)を下記に記載の順で含むことを特徴とするものである。
(1)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程。
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程。
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程。
(4)現像後の被膜を加熱する工程。
【0087】
以下、これらの各工程について順次説明する。
【0088】
(1)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程
透明基板の片面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に感放射線性樹脂組成物の被膜を形成する。ここで用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができる。より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
【0089】
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを挙げることができる。
【0090】
塗布法により被膜を形成する場合、上記透明導電膜の上に感放射線性樹脂組成物の溶液を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより、被膜を形成することができる。塗布法に用いる組成物溶液の固形分濃度は、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。組成物溶液の塗布方法としては、特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法またはスリットダイ塗布法が好ましい。
【0091】
上記塗布法により形成された被膜は、好ましくは次いでプレベークされる。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは70〜120℃で1〜15分間程度である。被膜のプレベーク後の膜厚は、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1.0〜7.0μm程度である。
【0092】
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
次いで、形成された被膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、被膜の一部にのみ照射する際には、例えば所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する方法によることができる。
【0093】
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線などを挙げることができる。このうち波長が250〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0094】
放射線照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜5,000J/m、より好ましくは200〜3,000J/mである。
【0095】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、従来知られている組成物と比較して極めて放射線感度が高く、上記放射線照射量が700J/m以下、さらに600J/m以下であっても所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性および高い硬度のスペーサーまたは保護膜を得ることができる利点を有する。
【0096】
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程
次に、放射線照射後の被膜を現像することにより、不要な部分を除去して、所定のパターンを形成する。
【0097】
現像に使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩などのアルカリ性化合物の水溶液を使用することができる。上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒および/または界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0098】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法などのいずれでもよく、現像時間は、常温で10〜180秒間程度とすることが好ましい。現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって所望のパターンを得ることができる。
【0099】
(4)現像後の被膜を加熱する工程
次いで、得られたパターン状被膜を、ホットプレート、オーブンなどの適当な加熱装置により、所定温度、例えば100〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上では5〜30分間、オーブン中では30〜180分間、加熱(ポストベーク)することにより、所望のスペーサーまたは保護膜を得ることができる。
【0100】
以上のようにして、圧縮強度、液晶配向膜のラビング工程に対する耐性、基板との密着性などの諸性能に優れるスペーサーまたは保護膜を、所望のパターン寸法で得ることができる。
【0101】
<表示素子>
本発明の表示素子は、例えば液晶表示素子は、以下の方法(a)または(b)により作製することができる。
【0102】
(a)まず片面に透明導電膜(電極)を有する透明基板を一対(2枚)準備し、そのうちの一枚の基板の透明導電膜上に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて、上記した方法に従ってスペーサーもしくは保護膜またはその双方を形成する。続いてこれらの基板の透明導電膜およびスペーサーまたは保護膜上に液晶配向能を有する配向膜を形成する。これら基板を、その配向膜が形成された側の面を内側にして、それぞれの配向膜の液晶配向方向が直交または逆平行となるように一定の間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、基板の表面(配向膜)およびスペーサーにより区画されたセルギャップ内に液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの両外表面に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された配向膜の液晶配向方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0103】
(b)まず上記方法(a)と同様にして透明導電膜と、スペーサーもしくは保護膜またはその双方と、配向膜とを形成した一対の透明基板を準備する。その後一方の基板の端部に沿って、ディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤を塗布し、次いで液晶ディスペンサーを用いて微小液滴状に液晶を滴下し、真空下で両基板の貼り合わせを行う。そして、前述のシール剤部に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して両基板を封止する。最後に、液晶セルの両外表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0104】
上記の各方法において使用される液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶を挙げることができる。また、液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0105】
以下に製造例、合成例、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0106】
以下の合成例において、共重合体の重量平均分子量Mwの測定は下記の装置および条件のもと、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によった。
装置:GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803およびGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
【0107】
<(A)アルカリ可溶性樹脂(共重合体)の合成例>
合成例1
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル260質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸15質量部、スチレン5質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル35質量部およびメタクリル酸グリシジル40質量部を仕込み、窒素置換した。さらに、そこへ1,3−ブタジエン5質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A−1)を含有する溶液を得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度(共重合体溶液の全重量に占める共重合体重量の割合)は29.0%であり、共重合体(A−1)の重量平均分子量Mwは、8,500であった。
【0108】
合成例2
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部およびメチル−3−メトキシプロピオネート220質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸15質量部、スチレン5質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル15質量部、メタクリル酸グリシジル40質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート25質量部、およびペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)2質量部を仕込み、窒素置換した。さらに、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A−2)を含有する溶液を得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度(共重合体溶液の全重量に占める共重合体重量の割合)は29.2%であり、共重合体(A−2)の重量平均分子量Mwは、9,600であった。
【0109】
合成例3
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)4重量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル300重量部を仕込み、引き続きスチレン10重量部、メタクリル酸23重量部、メタクリル酸ベンジル32重量部、およびメタクリル酸メチル35重量部を仕込み、さらにα−メチルスチレンダイマー2.7重量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇し、この温度を4時間保持した後、100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体(A−3)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度(重合体溶液の全重量に占める重合体重量の割合)は24.9%であり、重量平均分子量Mwは、12500であった。ついで、得られた共重合体(A−3)を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1重量部、重合禁止剤として4−メトキシフェノール0.05重量部加え、空気雰囲気下90℃で30分間攪拌後、メタクリル酸グリシジル16重量部を入れて90℃のまま10時間反応させることにより、重合体(A−4)を得た。
得られた重合体溶液の固形分濃度は29.0%であり、重量平均分子量Mwは、14200であった。
重合体(A−4)をヘキサンに滴下することで再沈殿精製を行い、再沈殿した樹脂固形分について、H− NMR分析によりメタクリル酸グリシジルの反応率を算出した。6.1ppm付近および5.6ppm付近にメタクリル酸グリシジルのメタクリル基に由来するピークと共重合体のメタクリル酸ベンジルの繰り返し単位に由来する6.8−7.4ppm付近の芳香環のプロトンとの積分比の比較から、メタクリル酸グリシジルと共重合体(A−3)中のカルボキシル基との反応率を算出した。結果、反応させたメタクリル酸グリシジルの96モル%が共重合体(A−3)中のカルボキシル基と反応した。
【0110】
実施例1の感放射線性樹脂組成物を以下のように調整し、評価を以下のように実施した。表1及び表2に示した。
【0111】
(I)感放射線性樹脂組成物の調製
(A)アルカリ可溶性樹脂として上記合成例1で得た共重合体(A−3)の溶液を共重合体(A−3)に換算して100質量部(固形分)に相当する量、(B)重合性不飽和化合物の(B−1)成分として、(B−1−1)エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトール1モルにエチレンオキシド5モルを反応させてなる化合物1モルに、アクリル酸6モルをエステル化により反応させた化合物)120質量部、(B−2)成分として、(B−2−2)コハク酸変性ペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、(C)感放射線性重合開始剤として(C−1)エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製の「イルガキュアOXE02」)10質量部、(C−2)2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア379、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5質量部、(C−5)4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン2質量部、溶剤としてジエチレングリコールジエチルエーテル485質量部と3−メトキシプロピオン酸メチル140質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、界面活性としてシリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)0.2質量部を加え、固形分濃度が25.0質量%になるように溶解した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物を調製した。調製後の感放射線性樹脂組成物の粘度は、4.5(mPa・s)であった。
【0112】
実施例2〜8及び比較例1〜5についても、各成分の種類及び量を表1に記載の通りとした他は、実施例1と同様にして感放射線性組成物を調製した。
【0113】
(1)組成物溶液の粘度の測定
E型粘度計(東機産業(株)製 VISCONIC ELD.R)を用いて25℃で測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0114】
(2)組成物溶液中の固形分濃度の測定
組成物溶液0.3gをアルミ皿に精坪し、ジエチレングリコールジメチルエーテル約1gを加えたのち、175℃で60分間ホットプレート上にて乾燥させて、乾燥前後の重量から固形分濃度を求めた。
ここで、一回のスリット塗布に使用する液量は固形分濃度に比例するため、組成物の粘度を4.5mPa・sに合わせ時の固形分濃度が低い場合、使用液量は多くなる。したがって、組成物の粘度を4.5mPa・sに合わせ時の固形分濃度が23%以下の場合、一回のスリット塗布に使用する液量が多くなり、省液化が達成できないと判断できる。結果を表1及び表2に示す。
【0115】
(3)塗布性(縦筋ムラ、モヤムラ、ピン跡ムラ)の評価
550mm×650mmのクロム成膜ガラス上に、調製した組成物溶液を、スリットダイコーター(TR632105−CL、東京応化工業(株)製)を用いて塗布した。0.5Torrまで減圧乾燥した後、ホットプレート上で100℃にて2分間プレベークして塗膜を形成し、さらに2,000J/mの露光量で露光することにより、クロム成膜ガラスの上面からの膜厚が4μmの膜を形成した。
膜表面をナトリウムランプにて照らし、目視にて塗布膜面を確認した。縦筋ムラ(塗布方向、もしくはそれに交差する方向にできる一本または複数本の直線のムラ)、モヤムラ(雲状のムラ)、ピン跡ムラ(基板支持ピン上にできる点状のムラ)がはっきりと確認できた場合は×、僅かに確認できた場合は△、殆ど確認できなかった場合は○、筋ムラ、モヤムラ、ピン跡ムラを確認できなかった場合は◎と表記する。結果を表1及び表2に示す。
【0116】
(4)塗布性(ユニフォミティ)の評価
上述のようにして作製したクロム成膜ガラス上の塗膜の膜厚を、針接触式測定機(KLA Tencor社製 AS200)を用いて測定した。
ユニフォミティとして、9つの測定点における膜厚から計算した。9つの測定点とは基板の短軸方向をX、長軸方向をYとすると、(X[mm]、Y[mm])が、(275、20)、(275、30)、(275、60)、(275、100)、(275、325)、(275、550)、(275、590)、(275、620)、(275、630)である。
ユニフォミティの計算式としては、下記式で表される。下記式のFT(X、Y)maxは9つの測定点における膜厚中の最大値、FT(X、Y)minは9つの測定点における膜厚中の最小値、FT(X、Y)avg.は9つの測定点における膜厚中の平均値である。ユニフォミティが2%以下の場合は、膜厚均一性は良好と判断できる。結果を表1及び表2に示す。
(ユニフォミティの計算式)
ユニフォミティ(%)={FT(X、Y)max − FT(X、Y)min}×100/{2×FT(X、Y)avg.}
【0117】
(5)高速塗布性の評価
550mm×650mmの無アルカリガラス基板上にスリットコーターを用いて塗布し、塗布条件として、下地とノズルの距離(GAP)150μm、膜厚露光後2.5μmとなるように、ノズルから塗布液を吐出し、ノズルの移動速度を120mm/sec.〜220mm/sec.の範囲で変量し、液切れによる筋状のムラが発生しない最大速度を求めた。この時、200mm/sec.以上の速度でも筋状のムラが発生しない場合は、高速塗布に対応が可能であると判断できる。
結果を表1及び表2に示す。
【0118】
(6)現像性の評価
無アルカリガラス基板上に感放射線性樹脂組成物の溶液をそれぞれスピンナーにより塗布した後、80℃のホットプレート上で3分間プレベークすることにより、感放射線性樹脂組成物の被膜(膜厚4.0μm)を形成した。得られた被膜上に、直径8〜25μmの範囲の異なる大きさの丸状残しパターンをそれぞれ複数有するフォトマスクを設置した。このとき、被膜表面とフォトマスクとの間に所定の間隙(露光ギャップ)を設けた。次いで被膜に上記フォトマスクを介して高圧水銀ランプを用いて800J/mの露光量で放射線の照射を行った。続いて、濃度を0.05質量%とした水酸化カリウム水溶液を用いて、25℃にて10秒の現像時間でシャワー法により現像した後、純水洗浄を1分間行い、さらにオーブン中230℃にて20分間ポストベークすることにより、パターン状薄膜を形成した。このとき、形成された丸状パターン以外の部分に現像残渣が残っていないときを現像性が良好(○)、現像残渣が残っているときを現像性が不良(×)であるとした。結果を表1及び表2に示す。
【0119】
(7)感度の評価
95mm×95mmの無アルカリガラス基板上にスピンコート法を用いて、感放射線性樹脂組成物を塗布したのち、90℃のホットプレート上で3分間プレベークして、膜厚3.5μmの被膜を形成した。
次いで、得られた被膜に、開口部として直径12μmの円状パターンが形成されたフォトマスクを介して、365nmにおける強度が250W/mの紫外線で、露光時間を変量して露光した。その後、水酸化カリウム0.05%水溶液により、25℃で60秒間現像したのち、純水で1分間洗浄し、さらに230℃のオーブン中で30分間ポストベークすることにより、スペーサーを形成した。このとき、ポストベーク後の残膜率(ポストベーク後の膜厚×100/露光後膜厚)が90%以上になる最小の露光量を感度とした。この時の露光量が800J/m以下の感度が良好と言える。結果を表1及び表2に示す。
【0120】
(8)ラビング耐性の評価
露光量を「(6)感度の評価」で決定した感度に相当する露光量としたほかは、「(6)感度の評価」と同様にして基板上にスペーサーを形成した。得られた基板上に、液晶配向剤AL3046(商品名、JSR(株)製)を液晶配向膜塗布用印刷機により塗布したのち、180℃で1時間乾燥して、膜厚0.05μmの液晶配向剤の塗膜を形成した。
次いで、この塗膜に対して、ポリアミド製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/sec.の条件で、ラビング処理を行った。このとき、パターンの削れや剥がれの有無を確認した。結果を表1及び表2に示す。
【0121】
(9)圧縮性能の評価
上記「(6)感度の評価」と同様にして、残膜率が90%以上になる露光量で基板上に丸状残しパターンを形成した。このパターンを微小圧縮試験機(フィッシャースコープH100C(フィッシャーインストルメンツ製) )で50μm角状の平面圧子を用い、40mNの荷重により圧縮試験を行い、荷重に対する圧縮変位量の変化を測定した。この時、40mNの荷重時の変位量と40mNの荷重を取り除いた時の変位量から回復率(%)を算出した。この時、回復率が90%以上でさらに40mNの荷重時の変位が0.15μm以上の時、高い回復率と柔軟性を兼ね備えた圧縮性能を有するスペーサーと言える。結果を表1及び表2に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
表1及び表2中、成分(B)及び(C)についての略称はそれぞれ次の化合物を意味する。
(B)重合性不飽和化合物
(B−1)化合物
B−1−1:エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトール1モルにエチレンオキシド5モルを反応させてなる化合物1モルに、アクリル酸6モルをエステル化により反応させた化合物)
X:アクリロイル基、a+b+c+d+e+f=5
B−1−2:エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトール1モルにエチレンオキシド6モルを反応させてなる化合物1モルに、アクリル酸6モルをエステル化により反応させた化合物)
X:アクリロイル基、a+b+c+d+e+f=6
B−1−3:プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトール1モルにプロピレンオキサシド6モルを反応させてなる化合物1モルに、アクリル酸6モルをエステル化により反応させた化合物)
X:アクリロイル基、a+b+c+d+e+f=6
(B−2)化合物
B−2−1:ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成(株)製の「アロニックスM−5300」)
B−2−2:コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製の「アロニックスTO−756」)
B−2−3:コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
(B−3)化合物
B−3−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製の「KAYARAD DPHA」)
B−3−2:1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製の「ライトアクリレート1.9ND−A」)
(C)感放射線性重合開始剤
C−1:エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製の「イルガキュアOXE02」)
C−2:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製の「イルガキュア379」)
C−3:1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製の「イルガキュアOXE01」)
C−4:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール
C−5:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(アミノ系増感剤)
C−6:2−メルカプトベンゾチアゾール(チオール化合物)。
【0125】
表1及び表2に示された結果から、(B)重合性不飽和化合物として、(B−1)として一般式(1)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物及び、(B−2)分子量100以上のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物は、高い放射線感度を有し、強度に優れるパターン状薄膜を容易に形成することができると共に、スリット塗布における高速塗布が可能であり、低露光量であっても所望のパターン寸法を有し且つ強度に優れるパターン状薄膜が得られ、短い時間で現像可能であることが分かった。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたスペーサーまたは保護膜は、膜厚均一性、ラビング工程における剥離耐性、圧縮性能等の諸特性に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、スリット塗布における高速塗布が可能であり、高い放射線感度を有し、低露光量であっても現像工程においてパターンが剥離することがなく、強度に優れるパターン状薄膜を所望のパターン寸法で容易に形成することができ、また短い現像時間で現像可能であるから、液晶表示素子のスペーサーまたは保護膜を形成するために特に好適に使用することができる。当該感放射線性樹脂組成物から形成されたスペーサーまたは保護膜は、寸法精度、強度などの諸性能に優れ、液晶表示素子に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤を含有する感放射線性樹脂組成物において、(B)重合性不飽和化合物として、
(B−1)下記一般式(1)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物及び、
(B−2)分子量100以上のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Xは各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを表し、Yは各々独立に、−CHCHO−または、−CHCH(CH)O−を示す。また、a〜fは整数であり、かつ、aからfまでの合計は6〜24である。)
【請求項2】
(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(B−1)成分の使用割合は、10〜150質量部であり、(B−2)成分の使用割合が、1〜70質量部であることを特徴とする請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
(B−3)上記(B−1)及び(B−2)成分以外の2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ基を有する共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
表示素子のスペーサーまたは保護膜を形成するために用いられる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
(1)請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程、
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程、及び
(4)現像後の被膜を加熱する工程
を含む表示素子のスペーサーまたは保護膜を形成する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により形成された表示素子のスペーサーまたは保護膜。
【請求項8】
請求項7に記載のスペーサーまたは保護膜を具備する表示素子。

【公開番号】特開2011−180478(P2011−180478A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46206(P2010−46206)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】