説明

感温アクチュエータ

【課題】 サーモエレメントの感温部に対するPTCヒータからの受熱を所要の状態で適切かつ確実に行えるように構成する。
【解決手段】 PTCヒータ20を発熱させ、ワックス式サーモエレメントの感温部13を温めてピストン14を強制的に作動させるが感知する感温アクチュエータ10において、サーモエレメントの感温部とPTCヒータとの間に、接触部材40を介在させて設ける。これにより、サーモエレメントの感温部へのPTCヒータからの受熱量のばらつきを抑え、サーモエレメントの安定した出力(リフト量)を得ることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じてピストンを進退動作させるサーモエレメントとその感温部を選択的に加熱するためのPTCヒータとを備えてなる感温アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の感温アクチュエータは、たとえば汎用エンジンに適用される気化器の弁用電子制御装置等の被駆動部材において、気化器の吸気路を開閉するチョーク弁やスロットル弁等の弁を開閉制御するための感温アクチュエータとして用いられる。
【0003】
従来この種の感温アクチュエータとしては、感温部にサーモワックスを封入してなるサーモエレメントを備え、該サーモワックスの温度変化に伴う膨張、収縮に応じて軸線方向に進退動作されるピストンと、前記感温部を任意の通電により加熱するPTCヒータを設けてなる構造とされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この種の感温アクチュエータにおいて、PTCヒータによりサーモワックスの温度変化に伴う体積変化を制御可能に構成し、これによりピストンを所要のリフト量だけ動作させたり、任意のタイミングで必要なだけ通電して動作させたり、電力供給を止めた場合でも、自律して作動させたりすることにより、適宜の被駆動部材を動作させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−8158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した構成による感温アクチュエータでは、サーモエレメントの感温部(ケース)とPTCヒータとの接触が点接触になる虞れがあった。このような点接触は、たとえば組立ての工程で傾いて組み立てられてしまう場合や、接触面が平らでなく、凹凸がある場合、さらには成形上生じるPTCヒータの変形(ソリ等)、加工によるうねり等により平坦度が大きくなる場合に生じるものであった。
【0007】
さらに、上述したサーモエレメントの感温部においては、製造時に組み付け方やワックス封入量などの微妙な差で生じる製品毎の個体差を防ぐために、サーモエレメントのケース底面部分をへこませ変形させる調整という工程が一般に行われているが、これによる調整痕には調整度合いによってさまざまなものが生じるものであった。そして、このような調整痕による変形、加工の平面度、うねり、形状などによっても、上述したサーモエレメントの感温部とPTCヒータとの接触が点接触になる虞れがあるものであった。
【0008】
上述したような点接触状態が生じると、通電が充分に行われず、PTCヒータが発熱能力を最大限に発揮できない場合や、PTCヒータからの熱伝達がスムーズに行われず、安定したPTCヒータの出力が得られない場合、また個々の個体にばらつきが発生する等の不具合があり、このような問題を解決し得る何らかの対策を講じることが求められている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、サーモエレメントの感温部に対してPTCヒータへの通電やPTCヒータからの熱伝達を所要の状態で適切かつ安価で確実に行えるように構成した感温アクチュエータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る感温アクチュエータは、感温部に熱膨張体を封入したサーモエレメントとその感温部を選択的に加熱するPTCヒータとを備えてなる感温アクチュエータにおいて、前記サーモエレメントの感温部とPTCヒータとの間に介在するように接触部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項2記載の発明)に係る感温アクチュエータは、請求項1記載の感温アクチュエータにおいて、前記接触部材を、前記サーモエレメントに当接する側の一部に当接部を持たない形状で形成したことを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項3記載の発明)に係る感温アクチュエータは、請求項1または請求項2記載の感温アクチュエータにおいて、感温アクチュエータの被取り付け部に、該感温アクチュエータの少なくとも中心軸を挟んで両方向から固定保持し得る形状で形成された一対をなす通電用端子を設け、これらの通電用端子により、該感温アクチュエータの軸線方向の二箇所が係合保持されることにより、該感温アクチュエータを被取り付け部側に保持固定するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る感温アクチュエータによれば、サーモエレメントとPTCヒータとの間に接触部材を介在させるように構成したので、充分な接触面積を確保し、製品毎における熱伝達、ヒータ出力(通電量)のバラツキをなくし、安定させることができる。
【0014】
すなわち、従来構造では、サーモエレメントとPTCヒータの接触が点接触で、通電が充分に行われず、通電量が小さいために、発熱量も小さくなり、PTCヒータが発熱能力を最大限に発揮できない場合や、PTCヒータの熱伝達がスムーズに
行われず、安定したPTCヒータの出力が得られない場合があったが、本発明において、接触部材はサーモエレメントとPTCヒータとの通電、熱伝達のための接触面積を充分に確保する。かつサーモエレメントとPTCヒータ間で発生した熱量を保温、蓄熱する機能も果たすため、効率よくサーモエレメントケースへの熱伝達が行える。
【0015】
また、本発明による接触部材は、PTCヒータが発した熱量を受熱することから、効率よくPTCヒータが発熱し続けられるため、サーモエレメントが作動し始めるまでの時間は接触部材がない場合に比べ長くなるが、一度接触部材の温度が上昇し接触部材が一定の熱量を保持すると、サーモエレメントが受熱する熱量も大きくなるため、早くリフトし応答性が良くなり、さらにPTCヒータの出力が安定し、所要の状態でサーモエレメントを作動させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、接触部材を、前記サーモエレメントに当接する側の一部に当接部を持たない形状(たとえばリング状を呈する形状)に形成したので、サーモエレメントケースの底面と接触部材との接触面積及び接触部材とPTCヒータとの接触面積を一定にし、サーモエレメントに伝わる熱量及びPTCヒータの発熱量を、サーモエレメントの感温部に製造時に付加される調整痕の大きさに関係なく、一定とすることができるため、製品毎の前記リフト量にバラツキがなくなる。
【0017】
特に、本発明によれば、リング状接触部材の穴を、サーモエレメントの感温部のケース底部の調整痕よりも大きく、かつ該調整痕に重ならない空隙を設けているから、サーモエレメントのケース底部の調整痕の大きさにかかわらず、サーモエレメントのケース底面と接触部材との接触面積および接触部材とPTCヒータとの接触面積を一定にし、サーモエレメントに伝わる熱量およびPTCヒータの発熱量を調整痕の大きさに関係なく一定とすることができるため、サーモエレメントが受熱する熱量も大きくなるため、早くリフトし、応答性が良くなり、また製品毎の前記リフト量にバラツキがなくなる。
さらに、本発明によれば、製造工程においても、前記リフト量のバラツキを抑えるために、PTCヒータ出力の調整等を行う必要がなくなる等といった効果もある。
【0018】
すなわち、従来構造のように、サーモエレメントとPTCヒータを直に当接させる方法では、前記調整痕の大きさの違いにより、サーモエレメントとPTCヒータの接触面積にバラツキが出るため、発熱量または伝熱量にも影響し、リフト量にもバラツキが生じていたが、仮にリング状のPTCヒータを製造しようとした場合、その加工が難しいため高価となるが、リング状等の接触部材を設けることで安価に製造することが可能となる。なお、接触部材の形状は、前記調整痕と同等か、あるいはそれよりも大きく、かつ調整痕に重ならない空壁を設ければよく、丸型、角型など、種々選択することができる。
【0019】
また、本発明によれば、感温アクチュエータを取り付け固定するための被取り付け部に、感温アクチュエータの本体部分を係合保持させる機能と端子機能とを有する通電用端子を設けているから、感温アクチュエータの被取り付け部側への固定、組み付けが容易で、また組み付け部品やねじが不要で、ねじ止め等の作業も不要となる。
【0020】
特に、従来構造によれば、サーモエレメントとPTCヒータを保持するためにアクチュエータのケースにサーモエレメントとPTCヒータを入れ、蓋をし、ねじ止め接合することで、サーモエレメントとPTCヒータとの組立体を形成し、その組立体を別途ねじ止め接合により固定し、配置していたが、本発明によれば、筐体の固定部に通電用端子を設け、サーモエレメントを取り付ける構造をとるため、レイアウトの自由度も向上する。
【0021】
さらに、本発明によれば、感温アクチュエータを駆動源とする機器の筐体等といった被取り付け部側への組付け時において、固定具となる通電用端子へのはめ込みのみで充分な固定ができるため、従来のようなビス、ねじ、ボルトやねじ止め部などの固定手段の必要もなく、組付けの作業が容易になり、またアクチュエータの本体部分に端子金具を圧入して固定する必要も無いため、コストや部品点数も抑えられるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る感温アクチュエータの一実施形態を示す全体の概略断面図である。
【図2】本発明に係る感温アクチュエータの外観を示す概略斜視図である。
【図3】感温アクチュエータにおいて本発明を特徴づける接触部材有りと無しとの場合の作動特性を説明するためのグラフである。
【図4】(a),(b)は本発明を特徴づける接触部材の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明に係る感温アクチュエータの別の実施形態を示し、感温アクチュエータの被取り付け部への取り付け状態を説明するための概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2は本発明に係る感温アクチュエータの一実施形態を示すものである。
これらの図において、全体を符号10で示す感温アクチュエータは、ほぼ円筒状を呈するケース11内にワックス12等の熱膨張体を封入することにより構成される感温部13と、この感温部13でのワックス12の膨張、収縮に伴って軸線方向に進退自在に動作するピストン14とこれを摺動自在に保持するようにケース11の先端に固定されたガイド筒15からなる駆動部16とを備え、これによりサーモエレメントが構成されている。
【0024】
ここで、図中18は感温部13におけるワックス12とピストン14との間に設けたダイヤフラムで、このダイヤフラム18がワックス12の膨張、収縮により可動し、その動きが封入媒体や補助ピストンを介してピストン14の伝達され、該ピストン14が軸線方向に進退動作するようになっている。なお、該ピストン14には、感温アクチュエータ10の弾性保持機能をもつばね36を介して、キャップ状筒体35により、ピストン14のワックス12の収縮時の動きが得られるように構成されている。
【0025】
さらに、前記ケース11の下端部には、前記サーモエレメントの感温部13となるケース11の底部側(ここでは、ケース11内に形成した仕切り壁17の下側)にPTCヒータ20を設置することにより、ヒータ保持部21が形成されている。
【0026】
ここで、図中22はケース11の下端部にはめ込み配置されたターミナルベース、23はその内部に保持されたターミナル、24はターミナル23の内方端とPTCヒータ20との間に介在させたリードを兼ねる導電ばねである。
【0027】
この導電ばね24は、PTCヒータ20を付勢するとともに、振動を吸収してくれるため、この振動によりPTCヒータ20が破壊されるのを防ぐという機能をも備えている。さらに、この導電ばね24でPTCヒータ20を付勢しているため、たとえばPTCヒータ20等が組立ての工程で傾いて組み立てられてしまう場合や、PTCヒータ20等の接触面が平らでなく、凹凸がある場合、さらには成形上生じるPTCヒータ20の変形(ソリ等)、調整痕によるケース11の仕切り壁17等の変形、加工によるうねり等により平坦度が大きくなる場合などであっても、サーモエレメントの感温部13を仕切る仕切り壁17側に対してのPTCヒータ20の良好な接触面積を得ることができるようになっている。
【0028】
また、前記ケース11の外側、さらにターミナル23の下端には、対をなす電極端子金具31,32が予め嵌装され、該金具31,32から引き出されたリード線33,34が、図示しない制御用コントローラなどに接続されることにより、前記PTCヒータ20への選択的な通電が行われ、感温アクチュエータ10としてのピストン14の進退動作を得られるように構成されている。
【0029】
なお、図1中、符号35は感温アクチュエータ10のガイド筒15に被せられたキャップ状筒体である。36はばねで、このばね36は、上述した通り、感温アクチュエータ10を主機器側の取り付け部に弾性保持する機能と、ワックス12の収縮時に、リフトしたピストン14を押し戻す機能とを備えているものである。
【0030】
また、上述した感温アクチュエータ10では、ケース11等は熱伝導性のよい金属材で形成され、ワックス等の熱膨張体12は、温度変化で体積変化する材料で形成され、その他の各部も、従来から周知の構造を有しているものであり、その詳細はここでは省略する。
【0031】
本発明によれば、上述した構成による感温アクチュエータ10において、サーモエレメントの感温部13とPTCヒータ20との間に介在するように接触部材40を設けたところに特徴を有している。
【0032】
ここで、接触部材40としては、熱伝導性に優れた銅系材料等を用いるとよい。尤も、これに限定されないことは勿論であり、要は、接触部材40としては、適正な体積をもった適宜の形状、材質のものでもよい。
また、この接触部材40は、PTCヒータ20をケース11を介して端子金具31、リード33に接続する役割も果たしている。
【0033】
このような構成による接触部材40によれば、サーモエレメント感温部13とPTCヒータ20との通電、熱伝達のために接触面積を充分に確保し、熱伝達性能を所要の状態にし、これによりサーモエレメントの感温部13を所要の状態に加熱制御することができるものである。
【0034】
また、このような接触部材40によれば、サーモエレメント感温部13とPTCヒータ20との間で発生した熱量を保温、蓄熱する機能を備え、これにより効率よくサーモエレメント感温部13のケース11への熱伝達を行うことができるものである。
【0035】
さらに、このような接触部材40によれば、PTCヒータ20が発した熱量を受熱することから、PTCヒータ20が受熱された分、効率よく発熱し続けられるため、PTCヒータの出力を安定させることができるものである。
【0036】
そして、上述した接触部材40を用いると、PTCヒータ20からの熱は、接触部材40に伝わり、この接触部材40を介してサーモエレメント感温部13に熱伝達されることになる。
【0037】
ここで、PCTヒータ20はその周りの部材、例えばエレメントケース11などに熱伝達しないと、PTCヒータ自体に熱がこもり、温度が上昇し内部抵抗が増し、発熱能力が低下するため、効率よく発熱しつづけることができないが、PTCヒータ20の発熱を随時受熱する接触部材40が、サーモエレメント感温部13との間に存在していることにより、効率よくPTCヒータ20を発熱し続けることができるものである。したがって、PTCヒータ20は、安定して出力し続けられることになる。
【0038】
以上の構成による感温アクチュエータ10によれば、サーモエレメント感温部13とPTCヒータ20との間に接触部材40を介在させるように構成しているから、充分な接触面積を確保し、製品毎における熱伝達、ヒータ出力(発熱量)のバラツキをなくし、安定させることができる。
【0039】
換言すれば、従来構造では、サーモエレメント(感温部13)とPTCヒータ20の接触が点接触で、通電が充分に行われず、PTCヒータが発熱能力を最大限に発揮できない場合や、PTCヒータの熱伝達がスムーズに行われず、安定したPTCヒータの出力が得られない場合があったが、本発明において、接触部材40はサーモエレメント感温部13とPTCヒータ20との通電、熱伝達のための接触面積を充分に確保し、かつサーモエレメント感温部13とPTCヒータ20間で発生した熱量を保温、蓄熱する機能も果たすため、効率よくサーモエレメントケース11への熱伝達が行える。
【0040】
また、上述した接触部材40は、PTCヒータ20が発した熱量を受熱することから、効率よくPTCヒータ20が発熱し続けられるため、通電初期においてサーモエレメント作動時間は接触部材がない場合に比べ長くなるが、通電を停止した後でも一定時間、感温部13へ熱伝達することが可能となり、その分、通電量を抑えることができ、省エネルギー化も達成できる。また、一度接触部材40の温度が上昇し接触部材が一定の熱量を保持するとPTCヒータ10の出力が安定し、所要の状態で継続的にサーモエレメントを作動させることができる。
【0041】
上述した本発明に係る感温アクチュエータ10の作動特性のグラフを図3に示している。
すなわち、この図3中、実線で示す本発明(接触部材40有り)の場合は、同図中破線で示す従来例(接触部材無し)の場合に比べて、作動時の立ち上がり特性が優れている。たとえば、リフト量が通電開始後の4.5mmに達するまでの立ち上がりまでの時間は、1/2になる。また、本発明の場合には、リフト量も10%アップすることも確認されている。
【0042】
そして、このような図3のグラフから明らかな通り、接触部材40を用いると、感温アクチュエータ10としての性能向上を図ることができる。また、このような性能向上は、接触部材40による保温効果、並びに蓄熱効果によって得られるものであり、その実用上での効果は明らかである。換言すれば、この効果は、接触部材40により、熱の移動がスムーズに行われ、PTCヒータ20が安定して高出力を維持できたことによる。
【0043】
図4(a),(b)は本発明に係る感温アクチュエータ10の別の実施形態を示す。
すなわち、これらの図においては、接触部材40として、サーモエレメントに当接する側の一部、特にサーモエレメントに当接する側の中央部に当接部を持たない形状、たとえば空間(またはくぼみ)を有するリング状を呈するように形成した場合である。
【0044】
これを詳述すると、感温アクチュエータ10において、サーモエレメントの感温部13には、製造時に、組み付け方やワックス12の封入量などの微妙な差で感温時のサーモエレメントのリフト量に製品毎に個体差(バラツキ)が生じることはよく知られているところである。このため、従来から、この種のバラツキを抑えるために製造工程では必須の工程として、組立後にサーモエレメントのケース11の底面部分をへこまし、サーモエレメントケース11内のワックス12の封入室を強制的に押し込むことにより、強制的にピストン14の突出長さ寸法を調整し、これによりサーモエレメントによるリフト量を基準値に調整することが一般に行われている。
【0045】
そのため、サーモエレメントケース11の底面(仕切り壁17)には、調整による調整痕43ができ、調整の度合いによって大小さまざまな調整痕43が生じることとなる。
【0046】
そして、本発明によれば、接触部材を、リング状を呈するように形成することで、上述した調整痕43の存在の有無にかかわず、サーモエレメントケース11の底面(仕切り壁17)と接触部材40との接触面積および接触部材40とPTCヒータ20との接触面積を一定にし、サーモエレメントに伝わる熱量及びPTCヒータ20の通電量を調整痕の大きさに関係なく一定とすることができるようにしている。これにより、この感温アクチュエータ10では、製品毎の前記リフト量にバラツキがなくなる。
【0047】
特に、このようなリング状の接触部材40の穴を、サーモエレメントの感温部13のケース底部(仕切り壁)の調整痕43よりも大きく、かつ該調整痕43に重ならない空隙を設けると、サーモエレメントのケース11底部の調整痕43の大きさにかかわらず、サーモエレメントのケース11底面と接触部材43との接触面積および接触部材とPTCヒータ20との接触面積を一定にし、サーモエレメントに伝わる熱量およびPTCヒータ20の通電量を調整痕43の大きさに関係なく一定とすることができるため、製品毎の前記リフト量にバラツキをなくせる。
【0048】
図5は本発明のさらに別の実施形態を示す。
すなわち、上述した実施形態では、感温アクチュエータ10として、図2等に示されるように、そのケース11の外側にリード33,34付きの電極端子金具31,32を嵌合させて設け、これを主機器等の被取り付け部の所定箇所に組み付け固定するように構成しているが、これに代えて、図4に示すように、上記電極端子金具31,32を省略したものを被取り付け部50側に設けた通電用端子51,52を利用して係合保持させて組み付け固定できるように構成している。
【0049】
これを詳述すると、この実施形態では、感温アクチュエータ10を取り付け固定するための被取り付け部50に、感温アクチュエータ10の本体部分(図5に示すようなもの)を係合保持させる機能と電極端子機能とを有する通電用端子51,52を設けているから、感温アクチュエータ10の被取り付け部50側への固定、組み付けが容易で、またレイアウトの自由度も向上する。
【0050】
ここで、通電用端子51は、たとえば感温アクチュエータ10の中心軸を挟んで、両方向から付勢することにより、該感温アクチュエータ10を固定保持し得る一対のばね製保持片からなり、また通電用端子52は感温アクチュエータ10のヒータ保持部21側の端部に露呈するターミナル23に弾性的に当接するばね製係止片であり、これらの通電用端子51,52により、該感温アクチュエータ10が嵌合保持されるようになっている。
【0051】
なお、この図5では、通電用端子51を構成する一対のばね製保持片で、感温アクチュエータ10の中径部(図5中、符号Aで示す部分)を両側から挟んで固定保持するように構成している。このように通電用端子51で中径部Aを固定保持すると、この感温アクチュエータ10は、通電用端子51が大径部(図5中、符号Bで示す部分)に係止され、通電用端子52との間で係合保持され、軸線方向(ピストン14の進退方向)への移動を規制されて固定保持されることになる。
【0052】
勿論、これに限定されず、通電用端子51を構成するばね製係止片により、感温アクチュエータ10の大径部B、小径部(図5中、符号Cで示すガイド筒15の部分)のいずれを挟んで固定保持するように構成してもよい。たとえば通電用端子51により感温アクチュエータ10の小径部Cを挟んで固定保持する際には、この小径部Cとなるガイド筒15の外側に嵌装して配置される戻しばね機構であるキャップ状筒体35やばね36の軸線方向の長さを短くし、通電用端子51による挟み込み部を確保すればよい。
【0053】
そして、従来構造によれば、サーモエレメントの感温部13とPTCヒータ20を保持するためにアクチュエータのケース11にサーモエレメントとPTCヒータ20を入れ、蓋をし、ねじ止め接合することで、サーモエレメントとPTCヒータ20との組立体を形成し、その組立体を別途ねじ止め接合により固定し、配置していたが、このような問題点を一掃することができるものである。
【0054】
すなわち、上述した構成によれば、感温アクチュエータを駆動源とする機器の筐体等といった被取り付け部50側への組付け時において、固定具となる通電用端子51,52へのはめ込みのみで充分な固定ができるため、従来のようなビス、ねじ、ボルトやねじ止め部などの固定手段の必要もなく、組付けの作業が容易になり、またアクチュエータの本体部分に端子金具を圧入して固定する必要も無いため、コストや部品点数を抑えることができる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、感温アクチュエータ10を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【0056】
たとえば、上述した感温アクチュエータ10は、特開2006−57497号公報等に示されるように、主として汎用エンジンに適用される気化器の弁用電子制御装置等の被駆動部材において、気化器の吸気路を開閉するチョーク弁やスロットル弁等の弁を開閉制御するための電動アクチュエータとしての電動モータの代わりに用いることで、その効果を発揮し得るものである。
【0057】
特に、上述したように各種の電気機器等における駆動源として電動モータ等の代わりに、サーモエレメントを利用した感温アクチュエータ10を用いると、小型かつコンパクト化を図れるとともに、バッテリ等の省エネルギ化を発揮させることができるという利点がある。
【0058】
勿論、本発明によれば、上述した適用機器に限らず、各種の分野において、通電により所要のリフト量を出力する電動アクチュエータ10であれば適用して効果を発揮し得るものである。
【符号の説明】
【0059】
10 感温アクチュエータ
11 ケース
12 ワックス(熱膨張体)
13 感温部
14 ピストン
15 ガイド筒
16 駆動部
17 仕切り壁(ケース底部)
20 PTCヒータ
21 ヒータ保持部
23 ターミナル
24 導電ばね
31,32 端子金具
33,34 リード線
40 接触部材
50 被取り付け部
51,52 通電用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部に熱膨張体を封入したサーモエレメントとその感温部を選択的に加熱するPTCヒータを備えてなる感温アクチュエータにおいて、
前記サーモエレメントの感温部とPTCヒータとの間に介在するように接触部材を設けたことを特徴とする感温アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の感温アクチュエータにおいて、
前記接触部材を、前記サーモエレメントに当接する側の一部に当接部を持たない形状で形成したことを特徴とする感温アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の感温アクチュエータにおいて、
感温アクチュエータの被取り付け部に、該感温アクチュエータの少なくとも中心軸を挟んで両方向から固定保持し得る形状で形成された一対をなす通電用端子を設け、
これらの通電用端子により、該感温アクチュエータの軸線方向の二箇所が係合保持されることにより、該感温アクチュエータを被取り付け部側に保持固定するように構成されていることを特徴とする感温アクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−276107(P2010−276107A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129133(P2009−129133)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000228741)日本サーモスタット株式会社 (52)
【Fターム(参考)】