説明

感覚成分を有する局所NSAID組成物

局所的に投与可能なNSAID、感覚剤、および任意選択により自己温熱系を含み、これを必要としている患者に投与したとき、皮膚吸収の速度および程度の著しい改善を提供し、さらに迅速で完全な疼痛軽減の感覚を付与する局所医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
種々の非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が、疼痛または炎症の治療用に承認されている。例えば、処方市場の場合、FDAによって承認されたNSAIDには、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、セレコキシブ、スリンダク、オキサプロジン、サルサラート、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、メロキシカム、ケトプロフェン、およびナブメトンが含まれる。非処方市場の場合、米国で承認されたNSAIDには、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、アスピリン、およびケトプロフェンが含まれる。前述のものはすべて、経口投与形態で入手可能である。
【0002】
局所NSAID投与形態は、関節炎および軟組織外傷の治療に多くの利点を有する。具体的には、局所NSAID投与形態は、所望の治療部位に高濃度の薬物を送達できる。米国では現在、ナトリウム塩形態として(即ち、VOLTAREN Gel、1%)、ジクロフェナクのみが、膝および手の関節など、局所治療を施すことのできる関節の変形性関節症の疼痛を軽減するための局所投与用に承認されている。欧州および他の多くの国では、VOLTAREN Emugel(登録商標)としてジクロフェナクジエチルアミン塩1.16%、および他の局所投与形態のNSAIDが入手可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(発明の要旨)
驚いたことに、NSAIDを含む局所鎮痛組成物に1種以上の感覚剤(sensate agent)および/または自己温熱系を添加することにより、哺乳動物、特にヒトの皮膚による薬物の吸収速度および程度が劇的に改善され、さらに、このような組成物がこれを必要としている患者の皮膚に局所的に適用されたとき、迅速で完全な疼痛軽減の感覚が付与されることがわかった。
【0004】
従って、本発明は、炎症および疼痛を治療するために投与される局所鎮痛組成物、ならびにこれを必要としている患者に前記組成物を局所的に投与する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
好ましい態様において、組成物は、局所的に投与可能なビヒクルに局所的に活性なNSAID、少なくとも1種の感覚剤、および任意選択により組成物の投与部位に熱を伝達することのできる「自己温熱系」を含む。
【0006】
好ましい態様において、感覚剤は、哺乳動物、例えばヒトの皮膚に適用されたとき、温熱効果を有するという点で「温熱」感覚剤である。
【0007】
本発明の一実施形態において、組成物は、(1)ジクロフェナクまたは局所的に投与可能なこの塩(例えば、ナトリウムまたはジエチルアミン)などの局所的に活性なNSAID、および(2)バニロイドファミリーのメンバーである少なくとも1種の温熱感覚剤を含む。
【0008】
例えば、組成物は、ジクロフェナクまたはこの塩(例えば、ナトリウムまたはDEA)などの局所的に活性なNSAID、およびバニリルブチルエーテル(VBE)である少なくとも1種の温熱感覚剤を含む局所鎮痛組成物からなることができる。
【0009】
または、組成物は、ジクロフェナクまたはこの塩(例えば、ナトリウムまたはDEA)などの局所的に活性なNSAID、およびカプサイシンである少なくとも1種の温熱感覚剤を含む局所鎮痛組成物からなることができる。
【0010】
組成物は、化学的「自己温熱系」をさらに含むことができる。「自己温熱系」とは、これらが適用される表面、即ち皮膚に熱を生じ、伝達することのできる化学的実体、または化学的実体の組み合わせを意味する。一態様において、「自己温熱系」は、空気または皮膚の湿分などの触媒の存在下、熱を生じる化学的実体を含む。別の態様において、自己温熱系は、組み合わせられたとき、発熱反応を起こすことのできる化学的実体の組み合わせ、例えば酸化剤および還元剤(「酸化還元対」)を含むことができる。
【0011】
本発明による医薬組成物は、温血動物において疼痛状態、炎症、および/またはリウマチ性疾患を治療するための、治療有効量のNSAIDを含む。組成物は、変形性関節症もしくは関節リウマチに起因する疼痛、または筋肉痛、関節痛、および背部痛を治療するために投与することができる。組成物は、無傷表皮に毎日、例えば2もしくは3回、または4回適用できる。組成物は、罹患領域への局所適用による手または膝の関節痛の治療に特に有用である。さらに、組成物は、急性筋肉骨格損傷に関連するものなど、限局性疼痛および炎症の軽減に用いることができる。
【0012】
「局所的に活性なNSAID」とは、皮膚科学的に許容され(即ち、皮膚許容性)、適切なビヒクル中で投与されたとき、経皮的に浸透し、具体的には表皮の皮膚障壁を越えて、炎症または損傷部位で局所的に利用可能となることができるNSAIDを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な記述)
驚いたことに、NSAIDを含む局所鎮痛組成物に1種以上の感覚剤および/または自己温熱系を添加することにより、哺乳動物、特にヒトの皮膚による活性剤の吸収速度および程度が劇的に改善され、さらに、このような組成物がこれを必要としている患者の皮膚に局所的に適用されたとき、迅速で完全な疼痛軽減の感覚が付与されることがわかった。
【0014】
NSAIDは、例えば、アリールアルカン酸、例えばジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、またはトルメチン;2−アリールプロピオン酸、例えばイブプロフェン、アルミノプロフェン、カルプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、またはチアプロフェン酸;N−アリールアントラニル酸、例えばメフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、およびトルフェナム酸などであることができる。用語NSAIDは、セレコキシブ、エノール酸群、例えばピロキシカムおよびメロキシカム、アセチルサリチル酸(即ち、アスピリン)、およびサルサレートなどのCOX−2阻害剤も含むものとする。
【0015】
用語「NSAID」には、前述のものの医薬的に許容される塩、酸、またはエステル、ならびに前述のもののラセミ化合物、エナンチオマー、ならびに結晶および溶媒和物形態も含まれる。
【0016】
NSAIDと有効量の1種以上の他の局所的に活性な医薬成分、特に鎮痛剤、麻酔剤、およびかゆみ止め活性剤との組み合わせも本発明の範囲内であることが企図される。このような活性剤の例には、アミンおよび「カイン」型局所麻酔剤、例えばベンゾカイン、ブタンベン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、塩酸ジメチソキン、塩酸ジクロニン、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プラモキシン、テトラカイン、および塩酸テトラカイン;アルコールおよびケトン、例えばベンジルアルコール、ショウノウ、ショウノウメタクレゾール、ネズノミタール、メントール、フェノール、フェノラートナトリウム、およびレゾルシノール;抗ヒスタミン薬、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸トリペレナミン、ヒドロコルチゾン、および酢酸ヒドロコルチゾン;ならびに反対刺激活性成分、例えばイソチオシアン酸アリル、1から2.5%のアンモニアを含有するように希釈された強アンモニア溶液、メチルサリチラート、テレビン油、メントール、塩酸ヒスタミン、メチルニコチナート、およびカプサイシンなど、0.025から0.25パーセントが含まれる。
【0017】
種々のNSAID、ならびに麻酔およびかゆみ止め活性剤の適切な局所有効量は、当分野でよく知られている。例えば、ジクロフェナクナトリウムは、1日4回まで20から40mgの投与量で関節の変形性関節症の疼痛を軽減する局所投与のために、米国で承認されている。製剤化された製品、Voltaren(登録商標)Gelは、1日の最大適用量32gという条件で、1日4回、4gの量で下肢に適用する(ただし、下肢のいずれか1つの罹患関節には1日16g以下が適用される。)、および1日4回、2gの量で上肢に適用する(ただし、上肢のいずれか1つの罹患関節には1日8g以下が投与される。)ために承認されている。ケトプロフェンは、1日2回まで、罹患領域に投与量100から300mgを局所投与することによって、急性筋肉骨格損傷に関連する限局性疼痛および炎症を軽減するために、米国外で承認されている。局所NSAID、ならびに前述の鎮痛剤、麻酔剤、およびかゆみ止め剤の他の投与レジメンも当分野で知られている。
【0018】
感覚剤は、好ましくは「温熱」感覚剤として機能する。生理的温熱剤には、「バニロイド」、即ちバニリル官能基から誘導されるものとして分類される化合物が含まれ、これにはバニリルアルコールアルキルエーテル誘導体および変異体、例えばバニリルアルコールn−ブチルエーテル、バニリルアルコールn−プロピルエーテル、バニリルアルコールイソプロピルエーテル、バニリルアルコールイソブチルエーテル、バニリルアルコールn−アミノエーテル、バニリルアルコールイソアミルエーテル、バニリルアルコールn−ヘキシルエーテル、バニリルアルコールメチルエーテル、バニリルアルコールエチルエーテル、ジンゲロール、ショウガオール、パラドール、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0019】
好ましい実施形態において、温熱感覚剤は、式Iで表される化合物および医薬的に許容されるこれらの塩から選択され、
【0020】
【化1】

式中、Aは非置換分岐もしくは直鎖C−Cアルキル基であり、Bは水素であるか、または非置換分岐もしくは直鎖C−Cアルキル基である。
【0021】
式Iにおいてもっとも好ましくは、AはCアルキルである。より好ましい実施形態において、AはCアルキルであり、BはC−Cアルキルである。もっとも好ましくは、温熱感覚物質は、バニリルブチルエーテル(AはCアルキルであり、Bは直鎖非置換Cアルキルである。)およびバニリルエチルエーテル(AはCアルキルであり、Bは直鎖非置換Cアルキルである。)から選択される。
【0022】
別の実施形態において、温熱感覚物質は、式IIで表される化合物および医薬的に許容されるこれらの塩から選択され、
【0023】
【化2】

式中、Cは、酸素原子で中断されていてもよい、非置換分岐または直鎖C−Cアルキル基である。
【0024】
このように、Cは、酸素原子で中断されていてもよい、非置換直鎖C−Cアルキルであることができ、この例は、バニリン−1,2−ヘキシレングリコールアセタール(Cは非置換直鎖Cアルキル基である。)およびバニリン−1−ブトキシグリセロールアセタール(Cは2位で酸素により中断された、非置換直鎖Cアルキルである。)である。温熱剤は、参照により組み込まれるJapanese patent application No.JP2005−197205に開示のものから選択することもできる。
【0025】
従って、適切な作用剤には、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル、バニリルブチルエーテルアセタート、4−(1−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、および類似体(参照により組み込まれる米国特許第5545424号および米国特許第5753609号)、ノナノイルバニリルアミド、ノナン酸バニリルエーテル、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル誘導体、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ならびに参照により組み込まれる米国特許第6780443号に開示の温熱剤が含まれる。
【0026】
疼痛感覚をマスキングする他の温熱感覚剤には、トウガラシ(赤トウガラシ粉末、チンキ、油、オレオレジン、および抽出物)、ショウキョウ抽出物、オレオレジン、および油、サンショウ(Zanthoxylum piperitum)抽出物、サンショオールI、サンショオールII、サンショアミド、黒コショウ抽出物、カビシン、ピぺリン、ならびにスピラントールが含まれる。
【0027】
さらに他の温熱感覚剤の例には、エタノール、イソプロピルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、クロロホルム、オイゲノール、桂皮油、桂皮アルデヒド、およびこのホスファート誘導体が含まれる。
【0028】
好ましい温熱感覚剤であるバニリルブチルエーテル(VBE)は、Takasago,Inc.から商品名Hotact(登録商標)で市販され入手可能であり、典型的に香気を増強するために化粧品に用いられる(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、Monograph ID 12426、The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association(CTFA)出版参照)。
【0029】
バニロイドファミリーの別のメンバーであるカプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドも好ましい(CTFA Monograph ID 7655参照)。カプサイシンはある濃度では、ヒトを含む哺乳動物の刺激物であり、カプサイシンが接触すると組織中に灼熱感を生じる。カプサイシンおよび幾つかの関連化合物は、カプサイシノイドと称され、チリペッパーに由来する。純粋なカプサイシンは疎水性、無色、無臭の結晶性からロウ様化合物である。カプサイシンが感覚剤として用いられるとき、この濃度は0.025重量%未満であるべきである。
【0030】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、ジクロフェナクまたは局所的に投与可能なこの塩(例えば、ナトリウムまたはジエチルアミン)などの局所的に活性なNSAID、およびカプサイシンである少なくとも1種の温熱感覚剤の組み合わせを含む。
【0031】
このような組成物において、カプサイシンは一般に、約0.001重量%から約0.025重量%、好ましくは約0.005から約0.02重量%の濃度で存在する。カプサイシンを活性医薬作用剤として含むことが望ましい場合、0.025%以上(例えば、0.025重量%から約0.25重量%)のカプサイシン濃度も用いることができる。このような高い濃度では、カプサイシンは、外用鎮痛剤ならびに感覚温熱剤として機能する。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、ジクロフェナクまたは局所的に投与可能なこの塩(例えば、ナトリウムまたはジエチルアミン)などの局所的に活性なNSAID、およびVBEである少なくとも1種の温熱感覚剤を含む局所鎮痛組成物を含む。
【0033】
VBEは一般に、約0.01重量%から約5重量%、好ましくは0.1重量%から約3重量%の濃度で含まれる。
【0034】
本発明の組成物の任意選択の追加成分には、組成物を紫外線放射から保護することのできる1種以上の作用剤が含まれる。
【0035】
このような作用剤には、皮膚に適用されたとき、非毒性および非刺激性である無機および有機サンスクリーン剤が含まれる。
【0036】
適切なサンスクリーン剤の非限定的な例には、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−12、メトキシシンナマート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、ホモサラート、メチルアントラニラート、オクトクリレン、オクチルジメチルPABA、オクチルメトキシシンナマート、オクチルサリチラート、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、トリエタノールアミンサリチラート、3−(4−メチルベンジリデン)−dl−ショウノウ(メチルベンジリデン)−ボルナン−2−オン)、赤色ワセリン、4−メチルベンジリデン−ショウノウ(4−MBC)、ベンゾトリアゾール、フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、メチレンビス−ベンゾトリゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾアート、およびこれらの混合物が含まれる。
【0037】
有用な無機サンスクリーン剤(または日焼け止め剤)には、これに限定されるものではないが、酸化亜鉛、酸化鉄、シリカ、例えばヒュームドシリカ、および二酸化チタンが含まれる。本発明による組成物に混入される無機サンスクリーン剤の総量は、好ましくは組成物の0.1から3重量%である。
【0038】
好ましいサンスクリーン剤は、アボベンゾン、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、オクチルメトキシシンナマート、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾアート、酸化亜鉛、二酸化チタン、およびこれらの混合物である。
【0039】
具体的には、VBEなどのバニロイドは、UV光に暴露されたとき、ピンク色を帯びやすく、二酸化チタンは、バニロイドを変色に対して安定化するのに有効であることが見出されている。超微細二酸化チタンは、退色に対してバニロイドを安定化するのに特に適していることが見出されており、2つの形態、即ち水分散性二酸化チタンおよび油分散性二酸化チタンのいずれかであることができる。
【0040】
本発明の組成物の他の任意選択の追加成分には、追加の感覚物質、特にTRPメラスタチン8(TRPM8)または冷およびメントール受容体1(CMR1)チャネルに関連する生理的冷却過程を介して作用するものが含まれる。このような追加の感覚物質には、メントールならびにメントール誘導体が含まれる。
【0041】
一般に、冷却感覚剤の例には、式IIIで表される化合物および医薬的に許容されるこれらの塩が含まれ、
【0042】
【化3】

式中、Dは、直鎖または分岐非置換C−Cアルキルまたはアルケニル基であり、Eは、直鎖または分岐、ヒドロキシ置換または非置換C−Cアルキル基である。
【0043】
好ましい実施形態において、冷却感覚物質は、式IVおよび医薬的に許容されるこの塩で表される。
【0044】
【化4】

この化合物(3−(1)−メントキシプロパン−1,2−ジオール)は、Takasago Int’l Corp.、Tokyo、Japanから名称Coolact(登録商標)10およびCoolact(登録商標)P(−)−イソプレゴールで市販され入手可能であり、参照により組み込まれる米国特許第4459425号に開示されている。
【0045】
メントール誘導体の例には、メントールカルボキサミド誘導体、シクロヘキサンカルボキサミド、ジメチルメンチルスクシンイミド、乳酸メンチル(Symrise GmbH&Co.、Holzminden、Germanyから商品名Frescolat(登録商標)MLで入手可能)、メントングリセリンアセタール(Symrise GmbH&Co.、Holzminden、Germanyから商品名Frescolat(登録商標)MGAで入手可能)、ネオイソメントール、ネオメントール、イソメントール、PMD38p−メンタン−3,8−ジオール、(2R)−3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、(2RS)−3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール;N−エチル−5−メチル−2−(1−メチルエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(WS−3)、エチレングリコールp−メンタン−3−カルボキシラート(WS−4)、エチル3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセタート(WS−5)、N−(4−メトキシフェニル)−p−メンタン−3−カルボキサミド(WS−12)、N−t−ブチル−p−メンタン−カルボキサミド(WS−14)、2−イソプロピル−N−2,3−トリメチルブチルアミド(WS−23)、1−グリセリルp−メンタン−3−カルボキシラート(WS−30)(すべてMillennium Chemicals、Hunt Valley、Md.、USAから市販され入手可能)が含まれる。
【0046】
本発明の組成物に含まれることのできる他の冷却感覚物質には、これに限定されるものではないが、メントール、メントン、ショウノウ、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−1−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−1−メントキシエタン−1−オール、3−1−メントキシプロパン−1−オール、4−1−メントキシブタン−1−オール、1−(2−ヒドロキシ−4−エチルシクロヘキシル)−エタノン、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、2−(2−1−メンチルオキシエチル)エタノール、グリオキシル酸メンチル、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、メチル2−ピロリドン−5−カルボキシラート、コハク酸モノメンチル、コハク酸モノメンチルのアルカリ金属塩、およびコハク酸モノメンチルのアルカリ土類金属塩、グルタル酸モノメンチル、グルタル酸モノメンチルのアルカリ金属塩、グルタル酸モノメンチルのアルカリ土類金属塩、N−[[5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル]カルボニル]グリシン、p−メンタン−3−カルボン酸グリセロールエステル、メントールプロピレングリコールカルボナート、メントールエチレングリコールカルボナート、および6−イソプロピル−3,9−ジメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−オンが含まれる。
【0047】
他の冷却感覚物質は、参照により組み込まれる米国特許第7030273号および米国特許第6780443号に開示されている。
【0048】
上に記載した第2感覚物質の量は、一般に組成物の約2%以下、例えば約0.5から2重量%、例えば0.1から1.5重量%であるべきである。
【0049】
本発明の一態様において、第1「温熱」感覚物質と第2感覚物質の比は、望ましくは重量で約2:1から約1:2であることが見出された。
【0050】
具体的には、驚いたことに、本発明の組成物中のVBEの付加物として、低レベル(例えば組成物の0.2から2重量%)のメントール誘導体は、単独のVBEに伴う皮膚刺激を低減する有益な効果を有することが見出された。
【0051】
他の任意選択の成分には、一般に約0.5%から2%のレベルの、アラントインなどの皮膚保護剤が含まれる。
【0052】
さらなる態様において、本発明は、医薬的に許容され、局所的に投与可能なビヒクルに、局所的に活性なNSAID、少なくとも1種の感覚剤、さらに自己温熱系を含む局所鎮痛組成物を含む。
【0053】
一実施形態において、自己温熱系は、触媒の存在下、熱を生じる1種以上の化学作用剤を含む。例えば、自己温熱系は、組成物が皮膚の湿分と接触したとき、熱を生じるゼオライトを含むことができる。
【0054】
別の実施形態において、自己温熱系は、互いに物理的に接触させたとき、発熱反応を起こす酸化剤および還元剤を含む。
【0055】
本発明の組成物は、懸濁液、ゲル、軟膏、エマルション、またはエマルションゲルなど、哺乳動物への局所投与に適した任意の送達ビヒクルを含むことができる。
【0056】
好ましい態様において、自己温熱系は、組成物の局所投与時または局所投与直前を除いて、相互接触が妨げられている少なくとも1種の酸化剤および少なくとも1種の還元剤を含む。前記酸化剤および還元剤(「酸化還元対」)を互いに接触させたとき、結果として生じる発熱反応は、組成物の温度の即時上昇と持続的上昇の両方をもたらす。「温度の持続的上昇」とは、室温で混合した後、少なくとも約30秒、好ましくは少なくとも約1分程度持続する、室温を少なくとも約20℃超える上昇を意味する。
【0057】
例えば、本発明の組成物は、少なくとも2つの別個の相:酸化剤を含む少なくとも1つの第1相および還元剤を含む少なくとも1つの第2相を含むように製造し、包装することができる。2つの相は、これを必要としている患者に組成物が局所投与されるまで、接触が妨げられているべきである。
【0058】
2つ以上の相は、これらの相が包装の一部である物理的障壁で隔てられるように製造することができ、物理的障壁は、投与直前または投与時に、使用者の行為によって破られることができ、それぞれの相の少なくとも一部が混合されるように適合されている。
【0059】
さらに別の実施形態において、2つ以上の不連続な相は、本発明の単一組成物中に存在し、さらに激しい混合または振盪などによって、投与されると相間の接触が達成される手段が提供される。
【0060】
例えば、懸濁液組成物は、還元剤を含む相に不溶性である物質に酸化剤をカプセル化することによって(または逆も同様)形成することができ、患者の皮膚上で懸濁液組成物を激しくこすることによって、カプセルは粉砕され、酸化還元対が接触し、発熱がもたらされる。
【0061】
酸化還元対が本発明の組成物の「自己温熱」成分として含まれる場合、通常、還元剤を含む組成物の相は、水の一部を除く残りのすべての成分も含有することが望ましい。しかしながら、酸化剤を含有する相も、水の一部に加えて、酸化剤に不活性である残りの成分のいずれかを含むことができる。例えば、エマルションゲル調剤の場合、第1相は、還元剤、ならびにNSAID活性剤、および組成物の他の成分を含むことができ、不連続の第2相は、場合により増粘剤、および酸化に耐性であることのできる他の任意の賦形剤と共に、水中に酸化剤を含むことができる。
【0062】
適切な酸化剤には、これに限定されるものではないが、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過炭酸塩、および過酸化物のアルカリ金属塩、例えば過ホウ酸ナトリウム一水和物、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルバミド、および過酸化水素が含まれる。過酸化水素の無水形態は、医薬品等級のポリ(ビニルピロリドン)および過酸化水素の複合体として、International Specialty Products(Wayne、N.J.)から入手可能である。他の適切な過酸化物には、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、第4版、J.I.KroschwitzおよびM.Howe−Grant(編)、18巻、202 210頁(John Wiley&Sons、1996)に要約されているものが含まれる。他の酸化剤は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、Wenninger等編、1653頁(The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association、第7版、1997)(以下「INCI Handbook」)に列挙されている。
【0063】
適切な還元剤には、これに限定されるものではないが、チオ尿素、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、ホウ水素化物、および次亜リン酸塩の塩(ナトリウム塩など)、アスコルビン酸ならびにこの塩、エステル、および誘導体(例えば、アスコルビルパルミタートおよびアスコルビルポリペプチド)、トコフェロールならびにこの塩、エステル、および誘導体(例えば、酢酸トコフェロール)が含まれる。他の還元剤は、INCI Handbookの1655から56頁に記載されている。
【0064】
酸化剤および還元剤の量は、基質のサイズ、用いられる酸化剤および還元剤、ならびに発熱反応の所望の最高温度および持続期間に応じて多様となる。一実施形態において、酸化剤および還元剤の総量は、独立して、処置される領域の平方インチ当たり約0.005gから約0.5gである。一実施形態において、酸化剤および還元剤の総量は、独立して、組成物の約0.01から約30重量%、例えば約0.1%から約20%(例えば、約1%から約10%)などである。
【0065】
存在する酸化剤および還元剤の濃度は、一部にはどれだけの熱が所望であるかによって決まり、一部には反応によって生じる副生成物の性質およびこれらの影響によって決まる。一般に、還元剤の総量は、存在するすべての酸化剤との化学量論的反応に必要とされる量と少なくとも同程度であることが望ましい。
【0066】
一実施形態において、組成物または物品中の酸化剤と還元剤の当量比は、約1:20から約20:1、例えば約1:10から約10:1の範囲である。酸化剤または還元剤の「当量」とは、酸化還元反応において1モルの電子を放出または受容するこのような物質の質量を意味する。例えば、過酸化水素は、モル当たり2電子を放出し、それゆえこの酸化当量はこのモル質量の半分である。亜硫酸ナトリウムは、2電子を受容することによって酸化され、それゆえこの還元当量はこのモル質量の半分である。用語「当量比」は、当量(例えば、組成物または物品中の酸化剤と還元剤)の比を指し、従って本発明の実施において望ましいいずれか一方の過剰を概略する目的で多電子酸化剤および還元剤の価数を考慮に入れる。
【0067】
基質の皮膚接触面の目標温度範囲は、約30℃から約80℃(例えば、約35℃から50℃)である。一般に、適用持続期間が短い場合(例えば、10分未満)、操作温度は上記温度範囲の上限であることができる。しかしながら、適用持続期間がより長い場合、組成物または物品への長期皮膚暴露の間の熱性組織損傷を回避するために、より低い操作温度(例えば、42℃未満)が好ましい。
【0068】
一実施形態において、還元剤および/または酸化剤は、水溶性ポリマーと接触している。ポリマーは、還元剤および/または酸化剤と混合されているか、またはこの表面を被覆していることができる。水溶性ポリマーの存在は、作用剤の早発活性化を防ぎ、および/または作用剤が使用者の皮膚または眼に直接接触するのを妨げる一助となることができる。このような水溶性ポリマー材料の非限定的な例には、種々のポリエチレングリコール(「PEG」)、例えばUnion Carbide(Union Carbide、Midland、Mich.)のPEG−32(Carbowax1450)およびPEG−765(Carbowax3350)、ポリエチレンオキシド、例えばAmerchol(Edison、N.J.)のPEG−2M(Polyox WSRN−10)およびPEG−5M(Polyox WSRN−80)、ポリビニルアルコール、例えばPVAXX樹脂C20およびW−20(Mitsui Plastics、White Plains、N.Y.USA)、セルロースエーテル、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびビニルピロリドンのコポリマー、例えばビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、例えばPLASDONE S−630(ISP、Wayne、N.J.USA)、およびこれらの混合物が含まれる。
【0069】
水溶性ポリマーと還元剤および/または酸化剤の重量比は、用いられるポリマーおよび作用剤の種類、ならびに発熱反応の所望の開始速度および/または持続期間によって決まることになる。例えば、水溶性ポリマーと還元剤および/または酸化剤の重量比は、約1:1から約100:1、特に約2:1から約50:1であることができる。
【0070】
本発明の一実施形態は、硫酸塩を形成する亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、またはメタ重亜硫酸塩と過酸化物との反応による、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、またはこれらの混合物のインサイチュ形成を利用する。この実施形態は、適切には局所適用直前に混合される2相系を利用する。系の第1相は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、またはこれらの混合物の局所的に許容される無機カチオン塩を含有する。第2相は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、またはこれらの混合物を変換するのに必要とされる化学量論的量を少なくとも0.5%超える量の局所的に許容される過酸化物を含有する。2相の反応は、用いられる濃度に応じて、迅速に約3℃から約30℃の温度上昇をもたらす。
【0071】
米国特許第4839081号に記載のとおり、初期の迅速な温度上昇、その後の持続的放熱を生じるために、亜硫酸ナトリウムと組み合わせてアスコルビン酸を用いることができる。アスコルビン酸の代わりに、またはアスコルビン酸と組み合わせて用い得ることが当分野で教示される追加の有機還元剤には、1,5−ジエチル−2−チオバルビツール酸、2,2’−チオジエタノールなどが含まれる。これらの酸化は、モリブデン酸アンモニウムまたはタングステン酸ナトリウムなどの既知の触媒によって触媒することができる。
【0072】
一実施形態において、自己温熱系がゼオライトを含む場合、発熱反応を開始するために、本発明の組成物は水で湿潤される。水は、局所適用前(例えば、使用前、約5分未満、好ましくは約1分未満など、使用直前に局所投与部位を水道水で湿潤する。)、適用時(例えば、組成物を皮膚上の水に適用するか、組成物の別の相から水を提供する。)、または適用後(例えば、皮膚の汗が組成物に吸収される。)に添加することができる。適切なゼオライトの例は、Molsive GMP−4A活性化粉末(UOP LLC)である。
【0073】
本発明の組成物は、用いられる容器の型に応じて、別個の2つのステップで、または同時に適用することができる。2種の反応成分は、物理的に分離されたパッケージから、またはチャンバを有する一体型のパッケージから分配することができる。パッケージの例には、これに限定されるものではないが、小袋(pouch)内部の小袋、または缶内部の2重の袋(dual bladder)などが含まれる。いずれの型のパッケージの成分も皮膚に同時に、または実質的に同時に適用することができ、そこで成分は混合され、反応する。本明細書で用いられる用語「実質的に同時」は、最初に適用された成分が安定である時間を超えない、互いに近接した時間内でのそれぞれの成分の適用を指す。従って、2種の反応成分を適用する2つのステップが存在することができ、第1ステップでは、一方の成分が皮膚に適用され、第2ステップでは、第1成分の安定時間未満の時間内に他方の成分が第1成分の上に適用される。従って、これらの成分は、第2成分が第1成分の上に適用されたとき混合されるように、実質的に同時に適用される。
【0074】
本発明の組成物の調製において、NSAID、感覚剤、および任意選択成分の自己温熱系が、局所使用に安全である適切なビヒクルと共に製剤化され、例えば溶液、懸濁液、ゲル、軟膏、エマルション、またはエマルションゲルが形成される。
【0075】
組成物は、無水ゲルなど、無水であることができる。このような組成物は、医薬的に活性な成分、感覚剤、水でない少なくとも1種の溶媒、および増粘剤、ならびに他の任意選択成分を含むことができる。
【0076】
または、組成物は、水性ゲルを含むことができる。このような組成物は、医薬的に活性な成分、感覚剤、水である少なくとも1種の溶媒、増粘剤、および他の任意選択成分を含むことができる。
【0077】
さらなる実施形態は、乳化剤、およびエモリエント剤または油を添加する上記水性ゲル成分を含む、エマルションゲル系を含む。
【0078】
例えば、ジクロフェナクを含む局所組成物は、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどの溶媒に溶解することによって、調製することができる。この組成物はさらに水を含むことができ、または無水であることができる。
【0079】
合成ポリマー(例えば、カルボマー)、または多糖類(例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース)などの増粘剤を溶媒に添加することができる。
【0080】
参照により本明細書に組み込まれる、Asche等、米国特許第4917886号は、無傷表皮上に局所使用するための、少なくとも1つの酸性基を有する非ステロイド性抗炎症化合物を活性成分として含有するほぼ中性の医薬組成物を開示しており、この組成物はこの内部にゲルの性質と油/水エマルションの性質を兼ね備える。
【0081】
このような組成物は、pH約5から約7.5を有し、2から4個まで(4を含む。)の炭素原子を有する水溶性揮発性低級アルカノール約5から約50重量%、共溶媒約1から約20重量%、水約20から約80重量%、任意選択により自己乳化脂質または脂質混合物約3から約15重量%、脂質相が自己乳化性でない場合、任意選択により乳化剤約0.5から約5重量%、ゲル構造形成剤約0.5から約3重量%、活性成分として非ステロイド性抗炎症活性化合物(好ましくは、このような化合物は少なくとも1つの酸性基を有する。)約0.1から約10重量%、および所望であれば、非必須成分を含有する。
【0082】
本発明による組成物に用いられるアルコール成分には、特に好ましくは2または3個の炭素原子を有する低級アルカノール、例えばエタノール、または特にイソプロパノール、およびこれらの混合物も含まれる。本発明による製剤における好ましいアルコールの割合は、少なくとも5重量%、特に約10から約30重量%である。
【0083】
共溶媒の機能は、溶液中に皮膚に残された活性成分を維持することである。加えて、共溶媒は、水−アルコール相と混和性でなければならない。この目的に適しているのは、例えば、多価アルコール、例えばグリセリン、エチレングリコール、またはプロピレングリコール、特に鎖長約200から約6000、好ましくは約300から約1500単位を有する、ポリ低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。好ましくは、約5から約10重量%が共溶媒である。
【0084】
新規な製剤に用いることのできる脂肪相成分(脂質またはエモリエント剤を含む。)は、非乳化特性を有するもの、および自己乳化特性を有するものに分けることができる。脂質は、植物または動物性、さらに部分的または完全に合成のものであることができる。従って、例えばエステル結合を持たない脂質、例えば炭化水素、脂肪アルコール、ステロール、脂肪酸、およびこれらの塩、ならびにエステル結合を有する脂質、例えばグリセリド、ロウ、およびホスファチドが脂肪相成分として考慮される。エモリエント特性を有する炭化水素には、例えば液体、半固体、または固体物質および混合物、例えばパラフィン、ワセリン、固形パラフィン、および微結晶ロウが含まれる。脂肪アルコールは、例えば、1または2個のヒドロキシ官能基、および炭素原子数約6から34を有し、飽和または不飽和であることができる。偶数の炭素原子を有するもの、特に12から18個の炭素原子を有するものが好ましい。第1級線状飽和脂肪アルコールは、例えば、デカノール(カプリルアルコール)、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサノール(アラキジルアルコール)、ドコサノール(ベヘニルアルコール)である。2−アルキル−脂肪アルコールには、例えば、2−ヘキシル−デカノールまたは2−オクチル−ドデカノールが含まれる。挙げることのできるα−アルカンジオールの例は、例えば、1,12−オクタデカンジオールまたは9c−オクタデカン−1−オールである。
【0085】
ステロールは、例えば、3β−ヒドロキシ基および17β位に脂肪族側鎖を有する天然ステロイドであり、例えば、親炭化水素コレスタン、エルゴスタン、およびスチグマスタン、例えばコレステロールおよびラノリンなどから誘導される。
【0086】
脂肪酸は、飽和または不飽和であり、例えば6から24個の炭素原子を有することができ、10から18個の炭素原子および偶数の炭素原子が好ましい。飽和脂肪酸の例は、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)である。ステアリン酸が特に好ましい。モノ不飽和脂肪酸は、例えば、9−ドデセン酸(ラウロレイン酸)、9−テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9−オクタデセン酸(オレイン酸)、6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、9−エイコサン酸(ガドレイン酸)、13−ドコセン酸(エルカ酸)であり、ポリ不飽和脂肪酸としては、例えば、9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸)および9,12,15−オクタデカトリエン酸(リノレン酸)が適している。このような脂肪酸の塩として、例えば、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、アンモニウム塩またはアミン塩、例えば1、2、または3置換アミン、例えば対応する低級アルキルアミンまたは低級アルカノールアミン、例えば対応する1、2、または3エチルアミンまたはエタノールアミンが考慮される。
【0087】
グリセリドは、グリセリンの脂肪酸エステルを意味することが意図され、種々の脂肪酸成分、例えば上に挙げたものがグリセリド内に生じることが可能である。不飽和脂肪酸の含量が高い場合、対応するグリセリドは液体(油)である。グリセリドおよび油は、例えば、ピーナツ油(落花生油)、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油であり、油は水素添加されていることもでき、例えば水素添加ピーナツ油、水素添加綿実油、例えばSterotex(登録商標)、水素添加ヒマシ油、例えばCutina(登録商標)HRである。半合成および完全合成グリセリドとして、例えば、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、例えばMiglyol(登録商標)812もしくはSyndermin(登録商標)GTC、またはパルミチン酸およびステアリン酸のモノ、ジ、もしくはトリエステル、例えばPrecirol(登録商標)が考慮される。
【0088】
所望のエモリエント特性を得るために、脂肪相成分は、皮膚上でのエモリエント特性を改善する1種以上のシリコーン化合物または油を含むこともできる。例えば、このようなシリコーン化合物は、シロキサン結合から形成された線状(または直鎖)ポリマーであることができ、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、およびメチル水素シリコーン流体が含まれる。一実施形態において、ジメチルシリコーン流体は、末端がトリメチルシロキシ単位でブロックされた完全メチル化線状シロキサンポリマー、即ちポリジメチルシロキサンを含み、この例はDow Corning Q7−9120 Silicone Fluidであり、これは平均動粘度20から12500センチストークを有するポリジメチルシロキサンを含む。他のジメチコンには、例えば、Abil 350(Degussa Care Specialties)およびDM Fluid(Shin Etsu)が含まれる。
【0089】
他の有用なケイ素化合物には、ジメチコンコポリオール、例えばジメチコンコポリオールおよびこの誘導体、例えばアセタート、アジパート、アーモンダート(almondate)、アミン、ブチルエーテル、ラウラート、およびステアラート、ならびにジメチコンシリラート、ジメチコンプロピルエチレンジアミンベヘナート、ジメチコノール、オクタメチルトリシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、およびアルキルメチルシリコーンポリグリコールが含まれる。
【0090】
さらに他のケイ素流体には、環状ジメチコン、またはシクロメチコン、またはシクロペンタシロキサンが含まれる。適切な環状ジメチコンには、Dow Corning ST−Cyclomethicone5−NF、SF−1204(Momentive)、ならびにKF9937およびKF9945(Shin Etsu)が含まれる。
【0091】
本発明の組成物はまた、約0.1%から約5%、好ましくは約0.5%から約2%の高分子量シリコーン材料を含有することができる。この材料は、非極性であるべきであり、分子量少なくとも約5000を有するべきである。このような材料の例は、当分野でよく知られており、例えば、ポリエーテルシロキサンポリマー、架橋シリコーンゲルまたはエラストマー、およびシリコーンガムまたは樹脂が含まれる。
【0092】
具体的には、VBEが感覚剤として用いられる場合、より有効な温熱は、炭化水素油を実質的に含まない組成物によって達成される。例えば、感覚剤としてVBEを含む組成物に適切なビヒクルは、ケイ素エマルションであり、即ち1種以上のケイ素流体がエマルションの油成分を含む。
【0093】
ロウも同様に脂肪酸エステルとして定義されるが、グリセリンの代わりに、アルコール成分として、ステリン系アルコール、および例えば1から12個まで(12を含む。)の炭素原子を有する低級アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、またはデカノール、さらに例えば16から36個の炭素原子を有するより高級な偶数の脂肪族アルコール、特に上に挙げたものが適している。固形および半合成ロウは、例えば、蜜ロウ、カルナウバロウ、パルミチン酸セチル、例えばCutina(登録商標)、羊毛ロウ、およびラノリンであり、液体ロウは、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸デシルエステル、例えばCetiol(登録商標)V、オレイン酸エチル、特に12から18個の炭素原子を有する飽和脂肪アルコールのカプリル酸/カプリン酸エステル、例えばCetiol(登録商標)LCである。
【0094】
ホスファチドとして、特にホスホグリセリド、好ましくは飽和および不飽和脂肪酸によるsn−グリセリン−3−リン酸のエステル化によって生成され、リン酸残基はコリン(レシチンとも称される。)によってエステル化されるホスファチジルコリンが考慮される。例えば、タマゴレシチンまたはダイズレシチンが用いられる。
【0095】
例えば、脂肪アルコールが、例えば低級アルカノールまたは低級アルコキシ−低級アルカノール、例えばエタノール、プロパノール、エトキシエタノール、メトキシもしくはエトキシプロパノールによってエーテル化されている場合、脂肪アルコールは、自己乳化性、例えばエトキシ化脂肪アルコール、例えばポリヒドロキシエチレンセチルステアリルエーテル、例えばCetomacrogol 1000(登録商標)であることができる。
【0096】
本発明による組成物の脂肪成分は、好ましくは約5から約10重量%であり、上記化合物の混合物も含むことができる。
【0097】
本発明による医薬調剤のさらなる成分は、この界面活性の特性が同一分子内の空間的に分離された親油性および親水性中心によって決定される乳化剤である。好ましくは、酸性親水性基を有するアニオン活性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0098】
対応するアニオン性乳化剤は、特にカルボン酸塩、例えば易溶性または難溶性脂肪酸塩、フッ素化脂肪酸塩、アルコキシカルボン酸塩、スルホンアミドカルボン酸塩、脂肪酸ラクタートの塩、アルキルマロン酸もしくはアルキルコハク酸塩、スルホン酸塩、例えば易溶性または難溶性アルキルスルホン酸塩、スルホン化脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸エステルスルホン酸塩、過フッ素化アルキルスルホン酸塩、易溶性または難溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、および硫酸塩、例えば硫酸化第1級または第2級脂肪アルコール、石けん、エステル、アミド、アルカノールアミド、モノまたはポリグリセリド、ポリグリコールエーテル、例えば脂肪アルコールおよびアルキルフェノールのものである。多数の適切なアニオン性乳化剤のなかで、可溶性石けん、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、およびステアリン酸トリエタノールアンモニウム、脂肪アルコール硫酸塩のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、またはセチルステアリル硫酸ナトリウム、ならびにスルホコハク酸塩、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを挙げることができる。
【0099】
非イオン性乳化剤は、例えば、一価もしくは多価アルコール、例えば低級アルカノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど、オリゴヒドロキシ化合物、例えばソルビトール、ペンタトリトール、もしくはサッカロースなど、またはポリヒドロキシ化合物、例えばポリエチレングリコール、もしくはポリプロピレングリコールなどとの脂肪酸エステルである。特に適しているのは、グリセリン脂肪酸部分エステル、グリセリンモノステアラート、ソルビタンの脂肪酸部分エステル、例えばソルビタンモノラウラート、ステアラート、もしくはセスキオレアートなど、ポリヒドロキシエチレンソルビタンの脂肪酸部分エステル、特に約5から約20のオキシエチレン単位を有するもの、例えばポリエチレングリコール(20)−ソルビタンモノステアラートもしくはモノオレアートなどである。他の同様に好ましい非イオン性乳化剤は、例えば、アルコール、例えば脂肪アルコール、例えば上記の種類のアルコールのポリエチレンおよびポリプロピレングリコールエーテル、特に約2から23のエチレングリコールまたはエチレンオキシド単位を有するもの、ならびに脂肪酸エステル、同様にエーテル化されたものならびにグリセリンおよびソルビタン型のもの、または脂肪アミン、例えば脂肪アルコールから誘導された対応する脂肪アミンのポリエーテルである。挙げることのできるこのような非イオン性乳化剤の例は、ポリヒドロキシエチレン脂肪アルコールエーテル、特に約12から約30モル当量のオキシエチレンを有するもの、例えばポリヒドロキシエチレンセチルステアリルエーテル、例えばCetomacrogol 1000、ポリヒドロキシエチレン(4)−ラウリルエーテル、ポリヒドロキシエチレン(23)−ラウリルエーテルなど、ポリヒドロキシエチレン脂肪酸エステル、例えばポリヒドロキシエチレンステアラート、特に8から1000個のオキシエチレン基を有するもの、例えばMyrj 59、ならびにポリヒドロキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、例えばTagat Sである。同様に適しているのは、親水性ポリヒドロキシエチレン基および疎水性ポリヒドロキシプロピレン基を有するエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドブロックコポリマー、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリマー、特に分子量約1000から約11000を有するもの、例えばPluronic(登録商標)F68である。好ましい医薬製剤は、約1から約2重量パーセントの乳化剤を含有する。
【0100】
このマトリクスに製剤に必要な水が貯蔵されているゲル構造形成剤または増粘剤として、無機および有機高分子が用いられる。ゲル形成特性を有する高分子量無機成分のベースは、主として水含有ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸アルミニウムマグネシウム、例えばVeegum(登録商標)、またはコロイド状シリカ、例えばAerosil(登録商標)である。高分子量有機物質として、例えば、天然、半合成、または合成高分子が用いられる。天然および半合成ポリマーは、例えば、多種多様な炭水化物単位を有する多糖類、例えばセルロース、デンプン、トラガカント、寒天、アルギン酸およびこの塩、例えばアルギン酸ナトリウム、ならびにこれらの誘導体、例えば低級アルキルセルロース、例えばメチルまたはエチルセルロース、カルボキシまたはヒドロキシ低級アルキルセルロース、例えばカルボキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシプロピルメチル、およびエチルヒドロキシエチルセルロースから誘導される。天然および半合成ポリマーには、例えば、ゼラチンおよびアラビアゴムが含まれる。合成ゲル形成高分子の単位は、例えば、ビニルアルコール、ビニルピロリジン、アクリル酸またはメタクリル酸であり、このようなポリマーの例として、ポリビニルアルコール誘導体、特に分子量約28000から約40000を有するもの、例えばPolyviol(登録商標)またはMoviol(登録商標)、ポリビニルピロリジン、特に分子量約10000から約100万を有するもの、例えばKollidon(登録商標)またはPlasdone(登録商標)、ポリアクリラートおよびポリメタクリラート、特に分子量約80000から約100万を有するもの、またはこれらの塩、例えばRohagit(登録商標)S、Eudispert(登録商標)、またはカルボマー(例えば、Carbopol(登録商標))を挙げることができる。ゲル構造形成剤またはこれらの混合物を用いるとき、好ましい重量パーセント範囲は、約0.5から約3重量パーセントである。
【0101】
活性成分の好ましいカテゴリーとして、特に無傷皮膚に適用され、皮膚層に入り、皮膚層に浸透し、主として真皮および浅在筋膜(subcutis)、場合によりこの下にある皮下組織、ならびに筋肉領域の脈管系の循環に入る、全身治療用のものが考慮される。
【0102】
用語「NSAID」は、全身治療用の少なくとも1つの酸性基を有する非ステロイド性の抗炎症的に活性な化合物を含むものとして理解され、例えば、サリチル酸およびこの誘導体、例えばアセチルサリチル酸(アスピリン)、サルサラート、ジフルニサル、フルフェナム酸またはトルフェナム酸、ケトアルカンカルボン酸およびこの誘導体、例えばフェンブフェン、アリールおよびヘテロアリールアルキルカルボン酸、例えばフェニルアルカンカルボン酸およびこの誘導体、例えばジクロフェナク、ケトプロフェン、ピルプロフェン、フルオプロフェン(fluoprofen)、フルルビプロフェン、イブプロフェン、スプロフェン、ミプロフェン(miprofen)、ならびにピロール低級アルカンカルボン酸およびこの誘導体、例えばゾメピラク、トルメチン、またはクロピラク、二環式または三環式アリールおよびヘテロアリール基を有する低級アルカンカルボン酸、例えばナプロキセン、スリンダク、インドメタシン、カルプロフェン、またはプラノプロフェン、さらにピラゾール化合物、例えばピラゾールアルカンカルボン酸、例えばロナゾラクまたはピラゾラク、またはこれらの塩である。特に好ましい代表例は、例えば、ジクロフェナクおよびピルプロフェン、ならびにこれらの塩である。
【0103】
NSAID活性成分の好ましい割合は、例えば、約1から約5重量%である。カルボキシル基などの酸性基を有する活性成分の塩は、主として塩基から得られる。対応する塩は、例えば、金属塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、もしくはカルシウム塩、アルミニウム塩、または遷移金属塩、例えば亜鉛もしくは銅塩、または対応するアンモニアもしくは有機アミンとの塩である。考慮される有機アミンは、例えば以下のものである。アルキルアミン、例えばモノ、ジ、またはトリ低級アルキルアミン、アルキレンジアミン、例えば低級アルキレンジアミン、フェニルで置換されたアルキルアミン、例えばモノまたはジフェニル低級アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、例えばモノ、ジ、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、オリゴヒドロキシ低級アルキルアミン、またはヒドロキシ低級アルキルジ低級アルキルアミン、アミノ糖、例えばアミノ基が少なくとも1つの低級アルキル基で置換されていてよいもの、シクロアルキルアミン、例えばモノまたはジシクロ低級アルキルアミン、塩基性アミノ酸、環状アミン、例えば2から6個の炭素原子を有し、炭素鎖がさらにアザ、N−低級アルキルアザ、オキサ、および/またはチアで中断されていることができる低級アルキレンアミンまたは低級アルケニレンアミンである。モノ、ジ、またはトリ低級アルキルアミンは、例えば、エチルアミンまたはtert−ブチルアミン、ジエチルアミンまたはジイソプロピルアミン、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンであり、低級アルキレンジアミンは、例えばエチレンジアミンである。フェニル低級アルキルアミンとして、例えば、ベンジルアミン、または1−もしくは2−フェニルエチルアミンが考慮される。モノ、ジ、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミンは、例えば、モノ、ジ、トリエタノールアミンまたはジイソプロパノールアミンであり、オリゴヒドロキシ低級アルキルアミンは、例えば、トリス−(ヒドロキシメチル)−メチルアミンであり、ヒドロキシ低級アルキルジ低級アルキルアミンは、例えば、N,N−ジメチルアミノまたはN,N−ジエチルアミノ−エタノールである。アミノ糖は、例えば、アルコール性ヒドロキシ基がアミノ基で置き換えられている単糖類から誘導され、例えばD−グルコサミン、D−ガラクトサミン、またはマルモサミン(marmosamine)である。N−低級アルキル化アミノ糖の例として、N−メチル−D−グルコサミンを挙げることができる。モノまたはジシクロ低級アルキルアミンは、例えば、シクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンである。塩基性アミノ酸は、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リシン、またはオルニチンである。低級アルキレンアミンおよび低級アルケニレンアミンは、例えば、アジリン、ピロリジン、ピペリジン、またはピロリンであり、炭素鎖がアザ、N−低級アルキルアザ、オキサ、および/またはチアで中断されている低級アルキレンアミンおよび低級アルケニレンアミンとして適しているのは、例えば、イミダゾリン、3−メチルイミダゾリン、ピペラジン、4−メチルもしくは4−エチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリンである。
【0104】
本発明によるベース物質の非必須成分として、所望であれば、化学安定剤、保湿剤、必要であれば酸性基、即ちプロトンを産出する基を中和するための塩基、被膜形成剤、香料、または吸収剤を用いることができる。
【0105】
化学安定剤として、例えば、活性成分および添加剤の酸化分解を防ぐ抗酸化剤が考慮される。この目的に適しているのは、例えば、亜硫酸アルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウムもしくはカリウム、亜硫酸水素ナトリウムもしくはカリウム、亜ジチオン酸アルカリ金属塩、例えば亜ジチオン酸ナトリウムもしくはカリウム、またはアスコルビン酸、ならびにシステイン、シスチン、およびハロゲン化水素、例えば塩酸塩である。好ましい安定剤は、約0.1重量%の量の亜硫酸ナトリウムである。または、組成物は、本質的に安定剤を含まなくてもよい。脂肪、油、およびエマルションの抗酸化剤として適切なのは、例えば、アスコルビルパルミタート、トコフェロール(ビタミンE)、フェノール、例えば没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、またはブチルヒドロキシトルエンである。重金属アニオン、主にCu2+イオンに対する保護は、錯体形成剤、例えばクエン酸、特にエチレンジアミン四酢酸およびこの塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば対応する二ナトリウムまたはカルシウム化合物の添加によって達成される。
【0106】
適切な保湿剤によって満たされるべき条件は水に対する高い親和性であり、湿分範囲は狭く、高粘度で、良好な耐性である必要がある。加えて、これらの物質は腐食性を有するべきではない。とりわけ、少なくとも2つのヒドロキシ官能基を有する多価アルコール、例えばブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、グルコース、エチレングリコール、またはプロピレングリコールが考慮される。
【0107】
酸性基、即ちプロトンを産出する基を中和する塩基として、例えば、上記の活性成分の塩を生じるものが適している。特に好ましい塩基は、記載した有機アミンである。活性成分に加えて、特に酸性基を有するゲル構造形成剤も中和される。塩基の添加は、特にpH値を調節する働きをする。従って、塩基の添加は必須であり得る。
【0108】
吸収剤の例には、微細粉末のシリカ、タルク、デンプン、ならびに合成ポリマー、例えばナイロンなど、およびこれらの修飾または被覆型が含まれる。本発明の組成物の好ましい吸収剤は、シクロデキストリンである。
【0109】
当業者に理解されるとおり、本発明の組成物を調製するための方法は、最終生成物が無水ゲルもしくは溶液、水性ゲル、またはエマルションゲルであるかどうかに応じて、多少変化する。
【0110】
無水ゲルを調製する場合、この方法は一般に、(1)活性医薬作用剤の非水性溶媒または溶媒系溶液を調製するステップ、(2)必要に応じて被膜形成剤などの他の高分子成分と共に、ゲル構造形成剤を適切な溶媒に溶解することによってゲルを調製するステップ、(3)(1)の溶液と(2)のゲルを合わせるステップ、および(4)感覚剤、香料などの他の成分を添加するステップを含む。必要に応じて、自己温熱系をこの段階で添加する。水性ゲルを調製する場合、この方法は一般に、用いられる溶媒の少なくとも1つが水であること、およびゲル構造形成剤が、例えばカルボキシ基などのプロトンを産出する基を有する場合、所望であればこれらの基を中和してもよいことを除いて、前述した方法と同じである。
【0111】
本発明によるエマルションゲルを調製する場合、この方法は、上記のとおりゲルを調製するステップ、必要に応じて加熱しながら、脂質および/またはエモリエント剤を合わせることによって脂肪相を形成するステップ、脂肪相をゲルに添加するステップ、ならびに約40℃以下に冷却した後、感覚成分および任意の香料または他の任意選択成分を添加するステップを含む。場合により、自己加熱剤もこの段階で添加する。脂肪相とゲルを合わせた後の任意選択ステップは、ゲル構造形成剤および活性成分がプロトンを産出する基を含有する場合、これらを中和するステップである。
【0112】
別の手順では、ゲル構造形成剤を水の一部で膨潤させ、活性成分溶液を入れて攪拌し、所望であれば中和し、次いで乳化剤を水相に添加する。その後、脂肪相、および所望であれば非必須成分を添加する。
【0113】
本発明の幾つかの組成物は、以下のとおりである。
【0114】
1種以上の非水性溶媒5から95重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤1から4重量%、感覚剤0.5から3重量%、および増粘剤0.1から3重量%を含む医薬組成物。
【0115】
1種以上の非水性溶媒15から80重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤1から4重量%、感覚剤0.5から3重量%、被膜形成剤0.5から3重量%、ゲル形成剤0.5から3重量%、pHを実質的に中和するのに十分な量のアンモニア溶液、任意選択の香料、および残部の水を含む医薬組成物。
【0116】
1種以上の非水性溶媒5から75重量%、エモリエント剤2から30重量%、乳化剤1から10重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤1から4重量%、感覚剤0.5から3重量%、ゲル形成剤および/または増粘剤0.5から3重量%、pHを中和するのに十分な量のアンモニア溶液、香料0.1から2重量%、および残部の水を含む医薬組成物。
【0117】
1種以上の非水性溶媒15から80重量%、エモリエント剤2から20重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤1から4重量%、感覚剤0.5から3重量%、ゲル形成剤0.5から3重量%、pHを中和するのに十分な量のアンモニア溶液、任意選択の香料、および残部の水を含む医薬組成物。
【0118】
1種以上の非水性溶媒5から60重量%、エモリエント剤3から25重量%、乳化剤1から10重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤を含む第1医薬作用剤1から4重量%、鎮痛剤、麻酔剤、およびかゆみ止め活性剤から選択された第2医薬作用剤1から4重量%、少なくとも1種の感覚剤0.01から3重量%、ゲル形成剤0.5から3重量%、pHを中和するのに十分な量のアンモニア溶液、任意選択の香料、および残部の水を含む医薬組成物。
【0119】
自己温熱系を含む医薬組成物であって、前記組成物は2相を含み、
第1相は、1種以上の非水性溶媒5から40重量%、エモリエント剤1から15重量%、乳化剤1から10重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤2から8重量%、少なくとも1種の感覚剤0.1から2重量%、増粘剤0.1から3重量%、任意選択の香料、および残部の水を含み、
第2相は、非水性溶媒70から90重量%、エモリエント剤0.5から10重量%、乳化剤0.5から10重量%、自己温熱剤1から10重量%、および増粘剤0.1から3重量%を含む医薬組成物。
【0120】
自己温熱系を含む医薬組成物であって、前記組成物は2相を含み、
第1相は、非水性溶媒1から40重量%、エモリエント剤1から15重量%、乳化剤1から10重量%、被膜形成剤0.1から3重量%、還元剤1から10重量%、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤2から8重量%、感覚剤0.1から2重量%、増粘剤0.1から6重量%、任意選択の香料、および残部の水を含み、
第2相は、非水性溶媒1から65重量%、酸化剤1から10重量%、増粘剤0.5から5重量%、吸収剤0.5から10重量%、および水を含む医薬組成物。
【0121】
以下の実施例は、上に記載した本発明を例示するものであるが、どのような形でも本発明の範囲を限定するものではない。温度は摂氏温度で示す。別段の指示のないかぎり、この方法は室温(約22℃)で行う。
【実施例1】
【0122】
本発明の組成物を以下のとおり調製する。
【0123】
【表1】

ジクロフェナクDEAをプロピレングリコールおよびPEG−20の溶液に溶解する。ヒドロキシプロピルセルロースをイソプロピルアルコールおよびグリセリンに分散する。2つの溶液を混合しながら合わせ、均一なゲルを形成する。バニリルブチルエーテルをゲルに混合する。
【実施例2】
【0124】
水性ゲルまたは溶液の形態の組成物を以下のとおり調製する。
【0125】
【表2】

ジクロフェナクナトリウムを、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、PEG−8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。アンモニア溶液をカルボマーとセルロースのブレンドに添加して、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクDEAの溶液をカルボマーとセルロースのブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。バニリルブチルエーテルおよび香料を1種ずつゲルに添加し、均一に混合する。
【実施例3】
【0126】
エマルションゲル組成物を以下のとおり調製する。
【0127】
【表3】

ジクロフェナクナトリウムを、プロピレングリコール、PEG−8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーおよびキサンタンガムを、イソプロピルアルコール、ジメチルイソソルビド、および残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。アンモニア溶液をカルボマーブレンドに添加して、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクナトリウムの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ−カプリラート/カプラート、ジメチコン、ワセリン、およびポリオキシル20セトステアリルエーテルからなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。ナイアシンアミドを水の一部に溶解し、生成物に添加する。香料、バニリルブチルエーテル、およびビサボロールを一緒に混合し、添加して、生成物を形成する。
【実施例4】
【0128】
シリコーン流体を含むエマルションゲルを含む本発明による組成物は以下のとおりである。
【0129】
【表4】

ジクロフェナクDEAを、プロピレングリコール、PEG−8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。アンモニア溶液をカルボマーブレンドに添加して、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクDEAの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。ジメチコン流体およびPEG−12ジメチコンを一緒に混合し、ゲルに添加する。バニリルブチルエーテルおよび香料を1種ずつゲルに添加し、均一に混合する。
【実施例5】
【0130】
エマルションゲルを含む本発明による組成物を以下のとおり調製する。
【0131】
【表5】

ジクロフェナクナトリウムおよびリドカインを、プロピレングリコール、PEG−8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。アンモニア溶液をカルボマーブレンドに添加して、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクナトリウムの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ−カプリラート/カプラート、鉱油、セテアリルアルコール、およびポリソルベート60からなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。香料、バニリルブチルエーテル、カプサイシン、およびイソプロピルアルコールの一部を一緒に混合し、添加して、生成物を形成する。
【実施例6】
【0132】
2相系(ゼオライトの水和による自己温熱)
相A
【0133】
【表6】

ジクロフェナクDEAをプロピレングリコールおよび水の一部の溶液に溶解する。キサンタンガムをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散し、水和させて均一なゲルを形成する。ジクロフェナクDEAの溶液をキサンタンガムのゲルに添加し、均一に混合する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ−カプリラート/カプラート、セテアリルアルコール、およびポリソルベート60からなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。香料およびバニリルブチルエーテルを1種ずつ生成物に添加する。
【0134】
相B
【0135】
【表7】

ヒドロキシプロピルセルロースを、プロピレングリコール、PEG−8、およびグリセリンの溶液に溶解して、ゲルマトリクスを形成する。ゼオライトをゲルマトリクスに分散する。鉱油およびポリソルベート20を一緒に混合し、生成物に添加する。
【0136】
相Aおよび相Bは、両方の相が皮膚に局所適用されるまで、相互接触させない。2相が混合されると、自己温熱効果が生じるが、これは相Aの水と皮膚の湿分による相Bのゼオライトの水和によるものである。
【実施例7】
【0137】
2相系(酸化還元反応による自己温熱)
相A
【0138】
【表8】

ジクロフェナクナトリウムをプロピレングリコールおよび水の一部の溶液に溶解する。キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリビニルアルコールをイソプロピルアルコールおよび水の一部に分散して、均一なゲルを形成する。ジクロフェナクナトリウムの溶液をキサンタンガムのゲルに添加し、均一に混合する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ−カプリラート/カプラート、ワセリン、およびポリオキシル20セトステアリルエーテルからなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。メタ重亜硫酸ナトリウムを残りの水に溶解し、生成物に添加する。香料およびバニリルブチルエーテルを1種ずつ生成物に添加する。
【0139】
相B
【0140】
【表9】

ポリアクリル酸ナトリウムを、PEG−8、グリセリン、および水の溶液に溶解して、ゲルマトリクスを形成する。過酸化水素およびシクロデキストリンを一緒に混合し、ゲルマトリクスに添加する。タルク粉末をゲルマトリクスに分散する。
【0141】
相Aおよび相Bは、皮膚に局所適用されるまで、相互接触させない。2相が混合されると、自己温熱効果が生じるが、これは相Aのメタ重亜硫酸ナトリウムと相Bの過酸化水素との酸化還元反応によるものである。
【実施例8】
【0142】
ヒト皮膚透過試験
Voltaren emulgelベース中のジクロフェナクナトリウム1%(「VEG1%Na」)のインビトロ皮膚透過を(1)ベース+1%Hotact(登録商標)VBE(「VEG1%Na+1%VBE」)、および(2)ベース+0.1%カプサイシン(「VEG1%Na+0.1%カプサイシン」)と比較する。組成物を20mg/cmの単回用量で投与するが、これは5mg/cmを4回適用する日用量に相当する。
【0143】
試験は、ヒト皮膚を用い、ガラス製静置拡散フランツ型セル、面積約1.75cmにおいて、35℃で行う。死体腹部の全層ヒト皮膚サンプルは、使用のため解凍し、0.5mmに切り採るまで、−80℃で凍結させておく。皮膚サンプルを、真皮側を下にして水平にフランツ型セルに載せる。それぞれの拡散セルに含有されるPBS pH7.4(リン酸緩衝生理食塩水、7.58g/L Na2HPO4、1.62g/L NaH2PO4、および4.4g/L NaCl)のレセプタ相(約8ml)を、磁気攪拌を用いて混合する。
【0144】
トリチウム水の透過を最初に評価して、皮膚の完全性を確認する。予平衡期間の後、トリチウム水(2.7μCi/ml)400μlを表面に適用する。30分後、放射性標識水を綿棒で皮膚から取り除く。次いで、皮膚を透過するトリチウム水の量(%)を測定するために、レセプタ相から2ml採る。
【0145】
試験組成物20mg/cmを、類似のトリチウム水透過を有する皮膚サンプルに適用する。レセプタ相のサンプルを、0、2、4、8、24時間の間隔で回収する。各回収後、取り除いたレセプタ容量(1ml)を、新たしいレセプタ溶液で補充する。皮膚を透過するジクロフェナクの量を、集めた画分のHPLC分析によって求める。製剤当たり、合計で12の種々の測定を行う。
【0146】
表1では、1%VBEを含むVEG1%Naからのジクロフェナク透過率(μg/cm)が、24時間の実験時間内で、VEG1%Naより約1.4倍高いことが示されている。VEG1%Naと0.1%カプサイシンを含むVEG1%Naとの相違も認められる。すべての生成物からのジクロフェナクは4から8時間で定常状態フラックス(μg/cm/時)に達する。
【0147】
【表10】

【実施例9】
【0148】
さらに以下を含む実施例2の組成を含む組成物を調製する。
【0149】
二酸化チタン 0.1から3重量%(日焼け止め)
アラントイン 0.1から1重量%(抗刺激)
【実施例10】
【0150】
本発明のエマルションゲル組成物を以下のとおり調製する。
【0151】
【表11】

ジクロフェナクDEAを、プロピレングリコールおよび水の一部の溶液に溶解する。カルボマーおよびキサンタンガムをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。DEAをカルボマーブレンドに添加し、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクDEAの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。二酸化チタンをココ−カプリラート/カプラートとブレンドし、このブレンドをゲルに添加する。ポリオキシル20セトステアリルエーテルを約75℃で加熱し、完全に溶融した後、攪拌および混合しながらゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。香料およびバニリルブチルエーテルを1種ずつ生成物に添加する。
【実施例11】
【0152】
シリコーンを含むエマルションゲルを含む本発明による組成物を以下のとおり調製する。
【0153】
【表12】

ジクロフェナクDEAを、プロピレングリコール、PEG−8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。トリエチルアミンをカルボマーブレンドに添加し、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクDEAの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサン、およびPEG−12ジメチコンを二酸化チタンと混合してブレンドを形成し、これをゲルに添加する。バニリルブチルエーテル、香料、および残りの成分を1種ずつゲルに添加し、均一に混合する。
【実施例12】
【0154】
2相系(酸化還元反応による自己温熱)
相A
【0155】
【表13】

ジクロフェナクジエチルアミンをプロピレングリコールおよび水の一部の溶液に溶解する。キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、およびポリビニルピロリドンをイソプロピルアルコールおよび水の一部に分散して、均一なゲルを形成する。ジクロフェナクDEAの溶液をキサンタンガムのゲルに添加し、均一に混合する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、PEG−12ジメチコンおよびポリオキシル20セトステアリルエーテルからなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。亜硫酸ナトリウムを残りの水に溶解し、生成物に添加する。クエン酸溶液を添加して、pHを調節する。香料およびバニリルブチルエーテルを1種ずつ生成物に添加する。
【0156】
相B
【0157】
【表14】

水、プロピレングリコール、および過酸化水素を混合して、溶液を形成する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ−カプリラート/カプラート、PEG−100ステアラート、セチルアルコール、およびステアリン酸からなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相を溶液に混入する。トリエチルアミンを添加して、pHを調節する。
【0158】
相Aおよび相Bは、皮膚に局所適用されるまで、相互接触させない。2相が混合されると、自己温熱効果が生じるが、これは相Aの亜硫酸ナトリウムと相Bの過酸化水素との酸化還元反応によるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的に投与可能なビヒクルに、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤、および少なくとも1種の感覚剤、および任意選択により自己温熱系を含む、これを必要としている患者において疼痛または炎症を軽減するための局所医薬組成物。
【請求項2】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の感覚剤が、生理的温熱剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の感覚剤が、バニロイドを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
バニロイドが、バニリルアルコールn−ブチルエーテル、バニリルアルコールn−プロピルエーテル、バニリルアルコールイソプロピルエーテル、バニリルアルコールイソブチルエーテル、バニリルアルコールn−アミノエーテル、バニリルアルコールイソアミルエーテル、バニリルアルコールn−ヘキシルエーテル、バニリルアルコールメチルエーテル、バニリルアルコールエチルエーテル、ジンゲロール、ショウガオール、パラドール、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、およびこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
生理的温熱剤が、バニリルブチルエーテルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
生理的温熱剤が、カプサイシンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
TRPメラスタチン8(TRPM8)または冷およびメントール受容体1(CMR1)チャネルに関連する生理的冷却過程を介して作用する、1種以上の追加感覚剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の追加感覚剤が、メントールおよびメントール誘導体、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1種以上の追加感覚剤が、N−エチル−5−メチル−2−(1−メチルエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド、2−イソプロピル−N−2,3−トリメチル−ブチルアミド、およびこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物を紫外線放射から保護することのできる作用剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
作用剤が二酸化チタンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含み、生理的温熱剤が、バニロイドまたはこの混合物を含み、ならびに任意選択の自己温熱系が、還元剤および酸化剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
還元剤が、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、もしくはメタ重亜硫酸塩、またはこれらの塩を含み、ならびに酸化剤が、過酸化物を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が投与されるまで、還元剤および酸化剤は相互接触が妨げられており、組成物が投与されると結果として生じる発熱反応が、組成物の温度の即時上昇および持続的上昇をもたらす、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含み、ならびに少なくとも1種の生理的温熱剤が、バニリルブチルエーテルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
TRPメラスタチン8(TRPM8)または冷およびメントール受容体1(CMR1)チャネルに関連する生理的冷却過程を介して作用する、1種以上の追加感覚剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
1種以上の追加感覚剤が、メントールおよびメントール誘導体、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
1種以上の追加感覚剤が、組成物の約0.2から2重量%を占める、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
1種以上の追加感覚剤が、N−エチル−5−メチル−2−(1−メチルエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド、2−イソプロピル−N−2,3−トリメチル−ブチルアミド、およびこれらの混合物から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
組成物を紫外線放射から保護することのできる作用剤をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
作用剤が二酸化チタンである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
局所的に投与可能なビヒクルが、エマルションゲルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
(a)約5から約50重量%の、2から4個まで(4を含む。)の炭素原子を有する水溶性揮発性低級アルカノール、
(b)共溶媒として約1から約20重量%の、鎖長約200から約6000単位を有する多価アルコールまたはポリ低級アルキレングリコール、
(c)約20から約80重量%の水、
(d)約3から約15重量%の、液体、半固体、または固体炭化水素;1または2個のヒドロキシ官能基、および約6から34個の炭素原子を有する脂肪アルコール;脂肪酸が6から24個の炭素原子を有する、グリセリンの脂肪酸エスエル;脂肪酸が6から34個の炭素原子を有する、1から12個まで(12を含む。)の炭素原子を有する低級アルコールの脂肪酸エステル、または16から36個の炭素原子を有するより高級な偶数の脂肪族アルコールの脂肪酸エステル;または低級アルカノールもしくは低級アルコキシ−低級アルカノールによってエーテル化された約6から34個の炭素原子の脂肪アルコール;脂質として;またはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチル水素シリコーン、末端がトリメチルシロキシ単位でブロックされた完全メチル化線状シロキサンポリマー、ポリジメチルシロキサン、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールおよびこのアセタート、アジパート、アーモンダート、アミン、ブチルエーテル、ラウラート、およびステアラート誘導体、ジメチコンシリラート、ジメチコンプロピルエチレンジアミンベヘナート、ジメチコノール、オクタメチルトリシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、アルキルメチルシリコーンポリグリコール、およびシクロメチコンから選択されたケイ素化合物;またはこれらの混合物、
(e)乳化剤として、および脂質相が自己乳化性でない場合に存在する、約0.5から約5重量%の、易溶性または難溶性脂肪酸塩;フッ素化脂肪酸塩、アルコキシカルボン酸塩、スルホンアミドカルボン酸塩、脂肪酸ラクタートの塩、またはアルキルマロン酸もしくはアルキルコハク酸塩;難溶性アルキルスルホン酸塩;スルホン化脂肪酸アルキルエステル;脂肪酸スルホン酸塩;脂肪酸エステルスルホン酸塩;過フッ素化アルキルスルホン酸塩;易溶性または難溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩;硫酸化第1級または第2級脂肪アルコール;脂肪アルコールまたはアルキルフェノールの石けん、硫酸化エステル、アミド、アルカノールアミド、モノまたはポリグリセリド、またはポリグリコールエーテル;一価または多価アルコールの脂肪酸エステル;オリゴヒドロキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル;脂肪アルコール、脂肪酸エステル、または脂肪アルコールから誘導された脂肪アミンの約2から23のエチレングリコールまたはエチレンオキシド単位を有するポリエチレンまたはポリプロピレングリコールエーテル;脂肪酸がそれぞれ6から34個の炭素原子を有し、脂肪アルコールが約6から34個の炭素原子を有し、分子量約1000から約11000を有する、親水性ポリヒドロキシエチレン基または疎水性ポリヒドロキシプロピレン基を有するエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドブロックコポリマー;の存在下または不在下、ならびに
(f)約0.5から約3重量%の、ゲル構造形成剤として、この単位がビニルアルコール、ビニルピロリジン、アクリル酸もしくはメタクリル酸、またはこれらの塩である、合成ゲル形成高分子、および
を含む局所的に投与可能なビヒクルに、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤、および少なくとも1種の感覚剤、および任意選択により自己温熱系を含む、これを必要としている患者において疼痛または炎症を軽減するための局所医薬組成物。
【請求項27】
成分(a)が、イソプロピルアルコールを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
成分(b)が、ポリエチレングリコールを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
成分(d)が、12から18個まで(18を含む。)の炭素原子を有する飽和脂肪アルコールのカプリル酸/カプリン酸エステル;またはジメチコン、ジメチコンコポリオール、シクロメチコン、およびこれらの混合物から選択されたシリコーン化合物を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
成分(e)が、脂肪アルコールのポリエチレンエーテルを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
成分(f)が、ポリアクリル酸またはこの塩を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項32】
成分(a)が、イソプロピルアルコールを含み、
成分(b)が、ポリエチレングリコールを含み、
成分(d)が、12から18個まで(18を含む。)の炭素原子を有する飽和脂肪アルコールのカプリル酸/カプリン酸エステル;またはジメチコン、ジメチコンコポリオール、シクロメチコン、およびこれらの混合物から選択されたシリコーン化合物を含み、
成分(e)が、脂肪アルコールのポリエチレンエーテルを含み、ならびに
成分(f)が、ポリアクリル酸またはこの塩を含む、
請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも1種の感覚剤が、生理的温熱剤である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩であり、ならびに少なくとも1種の感覚剤が、バニロイドである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩であり、ならびに少なくとも1種の感覚剤が、バニリルブチルエーテルである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
有効量の請求項1に記載の組成物を温血動物に局所投与することを含む、疼痛状態、炎症、および/またはリウマチ性疾患を治療するための方法。
【請求項37】
有効量の請求項15に記載の組成物を温血動物に局所投与することを含む、関節痛を治療するための方法。
【請求項38】
有効量の請求項26に記載の組成物を温血動物に局所投与することを含む、疼痛状態、炎症、および/またはリウマチ性疾患を治療するための方法。
【請求項39】
有効量の請求項35に記載の組成物を温血動物に局所投与することを含む、関節痛を治療するための方法。

【公表番号】特表2012−505909(P2012−505909A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532238(P2011−532238)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/060768
【国際公開番号】WO2010/045415
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】