説明

慢性および/または炎症性疾患治療のためのアロイジア/バーベナ/リッピア・トリフィラ/シトリオドラの抽出物の使用

本発明は、癌、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾病、乾癬、および、病因が反応性酸素種に起因する神経系疾患といった慢性疾患の化学予防および治療、並びに様々な起源による血管新生を抑制するための基質保護剤としての、アロイジア・トリフィラの抽出物、その画分、その凍結乾燥物、或いは、前記抽出物の一以上の有効成分、またはアロイジア・トリフィラ抽出物の使用に関する。更に、本発明は、アロイジア・トリフィラから調製した抽出物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、癌、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾病(例えば、クローン病)、乾癬、および、病因が反応性酸素種に起因する神経系疾患(例えば、アルツハイマー)といった慢性疾患の化学予防および治療、並びに様々な起源による血管新生を抑制するための基質保護剤としての、アロイジア・トリフィラ(Aloysia triphylla (L′Her.) O. Kuntze/Britt.)(別名リッピア・シトリオドラ(Lippia citriodora)H.B.K.、リッピア・トリフィラ(Lippia triphylla(L′Her.) O.Kuntze))の抽出物、その画分、その凍結乾燥物のそれぞれ、或いは、前記抽出物の一以上の有効成分、または、、例えば、フラボノイド類または抗酸化性(例えば、トロロクス等価物)に調整されたアロイジア・トリフィラ抽出物の使用に関する。更に、本発明は、アロイジア・トリフィラから調製した抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
アロイジア・トリフィラには、学術上、下記のようないくつかの別称がある:アロイジア・トリフィラ(L′Herit.)Britt./リッピア・シトリオドラH.B.K/バーベナ・トリフィラ(Verbena triphylla L′Herit.)、レモンバーベナ、ハーブ・ルイーザ(Herb Louisa)等。
【0003】
アロイジア・トリフィラ(レモンバーベナ)の抽出物に関する薬理学的研究は、近年行われていない。知られている研究は、通常、エッセンシャルオイルを研究したものである。バーベナ(Verbenae)とも称される小さな潅木の葉は、このエッセンシャルオイルを多量に含んでおり、その香りは、観賞植物としての広範囲に渡る普及を促進している。
【0004】
その薬剤または抽出物はそれぞれ、一方では消化不良、他方では緊張および睡眠障害の対症療法として、フランスでは昔から認可当局により認可されている。
【0005】
現在まで、アロイジア・トリフィラは、食品産業において、ハーブティーの形態で使用されている。化粧品産業においては、その植物から得られたエッセンシャルオイルを香料として使用している。水性またはエタノール性・水性(親水性)抽出物の使用は知られていない。
【0006】
驚いたことに、アロイジア・トリフィラの抽出物、特にその凍結乾燥物は、先行技術文献に記載されておらず、且つ、既にある薬の適用や周知の成分によって示唆されてもいない、予期せぬ新規薬理効果を有することが分かった。
【発明の開示】
【0007】
よって、本発明は、アロイジア・トリフィラの新規且つ広範に有用な抽出物を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的は、独立クレームの主題により達成されている。好ましい実施の形態は、従属クレームに記載されている。
【0009】
驚いたことに、本発明者等は、親水性の溶剤をベースにしてアロイジア・トリフィラから得られた新規抽出物が、これまで、その植物全体またはその一部により提供されるとは考えられていなかった幅広い各種治療用途を有することを見出した。
【0010】
よって、本発明は、病原性血管新生の抑制のため、並びに、特に、腫瘍疾病、慢性関節リウマチ、そして、例えば、アルツハイマー、乾癬、網膜症及び歯周病等のような他の慢性疾患の治療および予防のための基質保護剤としての、それぞれ、アロイジア・トリフィラの抽出物、好ましくはその乾燥抽出物、マザーチンキ、流体抽出物又はその画分又はその凍結乾燥物、或いは、前記抽出物の一以上の有効成分の使用に関する。しかしながら、上記治療用途は単なる例を挙げたものであり、今後の治療用途は、血管新生の抑制が関与する他の分野でも考えられる。
【0011】
本発明に係るアロイジア・トリフィラの抽出物の重要な特徴は、抽出物が、一以上の親水性溶媒により、植物性出発物質から得られ、本質的に完全な水溶性であることである。
【0012】
とりわけ、その抽出物は、優れた抗炎症作用を示すことから、例えば、薬、化粧品等の様々な分野において利用することができる。
【0013】
上述のごとく、その抽出物は、例えば、乾燥抽出物、マザーチンキ、流体抽出物、特定抽出物、あるいはその凍結乾燥物として既に知られている多くの形態をとることができる。ここで使用されている「抽出物」とは、画分、すなわち、例えば、個別の親水性溶媒で更に処理することにより得られた抽出物の有効物質含有サブグループも含む。
【0014】
有効成分の含有量が多いアロイジア・トリフィラの特定抽出物の調製は、例えば、水/アルコールベースの溶媒を用いて抽出した後、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル等の有機溶媒により分離し、次に、例えば、シリカゲルまたはRP18物質上でクロマトグラフ精製を行なうことにより行われる。
【0015】
図1に、アロイジア・トリフィラからの完全な水溶性の特定抽出物の調製を示す。調製方法は、実施例においても説明する。
【0016】
流体抽出物および特定抽出物(抗酸化オリゴ糖が最低含有量になるように調整した完全な水溶性の抽出物)、並びにその調製は、先行技術において周知となっている。当業者であれば、有用な組成物を得るために、いつでも調製条件を変更することができるであろう。関連のプロトコルは、具体的には、ドイツ薬局方(DAB)2004又はヨーロッパ薬局方(EAB)4、第7版、追補版に見られる。更なる関連技術情報は、製薬技術のテキストブック、例えば、「Pharmazeutische Technologie」(ルドルフ・ヴォイクト(Rudolf Voigt)、第9完全改訂版)、または、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(マック出版社(Mack Publishing Co.)、イーストン、ペンシルバニア、第18版)等に記載されている。
【0017】
ここに記載されているアロイジア抽出物およびその画分は、アロイジア・トリフィラの地上植物部位から、それぞれ、水抽出または水・エタノール抽出により得られた抽出物であり、その後、それらは本質的に完全に水に溶解することが可能である。これらの調製物は、不揮発性親水性抗酸化オリゴ糖を特定量含有することを特徴とする。この点で、これまで市場で用いられてきた、水蒸気蒸留により得られ、揮発性親油性エッセンシャルオイルを含む他のアロイジア抽出物と実質的に異なる。
【0018】
ここに使用されている「抗酸化オリゴ糖」は、例えば、二糖、三糖〜九糖であり、例えば、コーヒー酸、3,4−ジヒドロフェニルエタノール、ルテオリン(luteoline)等の抗酸化基に置換されたオリゴ糖を意味する。ここで注目すべきは、総合的な研究により、本発明者等が、これらの抗酸化基のみでは、全抽出物の作用を示さないことを見出したことである。その作用は、最適な作用を発現する本発明にかかる抽出物中に存在する抗酸化オリゴ糖の混合物により得られる。
【0019】
使用した具体的なエタノール・水混合液、抽出温度、抽出期間、および抽出剤の量は、植物性出発物質のバッチ間で異なり、抗酸化オリゴ糖に含まれる量、および不要干渉物質(例えば、葉緑素、カロチノイド、およびその他、特に親油性の成分等)の含有量によって決まる。よって、本発明に係る抽出物を得る方法は、使用する植物性出発物質のタイプによって適切に応用しなければならないが、これは、当然ながら、植物薬剤学の分野における当業者にとっては何ら問題とはならないであろう。
【0020】
調製方法において考慮すべき二つの重要な条件は以下の点である。
a)抽出方法において、90度を超える温度は、有効物質の加水分解を引き起こし、よって抽出物の作用を低下または完全に排除してしまうことさえあるため、使用してはならない。
b)得られた抽出物は、本質的に残留物なく水に溶解しなければならない。
【0021】
個々のケースで、抽出物が、期待される(最適な)作用を有するかどうか疑問が生じた場合、アロイジア抽出物は、HET−CAM分析(後述)によりその作用を調べることができ、また、任意に適合させることができる(生物学的検定法)。
【0022】
本発明は、具体的には、下記態様および実施の形態に関する。
【0023】
第一の態様によれば、本発明は、アロイジア・トリフィラの抽出物またはその画分に関するものであり、前記抽出物は、一以上の親水性溶媒により得られ、本質的に、完全に水に溶解できる。本発明において、前記抽出物は、残留物なく水に溶解するのが最も好ましいが、選択した抽出方法により、場合によっては完全に溶解できない場合もあり得る。これらの抽出物も、本発明の範囲内にあるものとする。
【0024】
抽出に使用される親水性溶媒は、水および/またはエタノールが好ましい。前記溶媒は、100容量%〜30容量%の範囲で水を含み、残りは通常エタノールである。
【0025】
好ましい実施の形態によれば、前記抽出物は、乾燥抽出物、流体抽出物、または特定抽出物である。
【0026】
本発明はまた、図1に示した調製方法により調製することのできる抽出物に関する。
【0027】
本発明に係る抽出物はまた、水(例えば、Aqua ad Injectabilia)中での保存と後の再構成をできるだけ効率的に行なうために、凍結乾燥させた形態であってもよい。
【0028】
第二の態様によれば、本発明は、上記記載のアロイジア・トリフィラの抽出物またはその画分を含む食品、栄養補給食品、または化粧品に関する。実施例4に、食品分野における前記抽出物の応用例をいくつか示す。
【0029】
第三の態様によれば、本発明は、上記記載のアロイジア・トリフィラの抽出物またはその画分、および一以上の補助薬/薬剤キャリアを含む薬剤組成物に関する。
【0030】
この薬剤組成物は、好ましくは、注射、全身および/または局所投与による投与を目的とするものである。
【0031】
第四の態様によれば、本発明は、例えば、癌、慢性関節リウマチ、慢性腸疾病(例えば、クローン病)、乾癬、および、病因が反応性酸素種に起因する神経系疾患(例えば、アルツハイマー)のような慢性疾患の化学予防および治療、並びに病原性血管新生を抑制するための、アロイジア・トリフィラの抽出物,その画分、その凍結乾燥物のそれぞれ、或いは、一以上の有効成分、またはフラボノイド類または抗酸化性(例えば、トロロクス等価物)に調整されたアロイジア・トリフィラ抽出物の使用に関する。
【0032】
上述のように、本発明に係る抽出物は、全植物薬("Herba")から、すなわち、全地上植物部位(茎、葉、花)から得られる。よって、エッセンシャルオイルは、有効物質の大部分を占めることはないが、本発明にかかる組成物に含まれ得る。
【0033】
更に、本発明は、例えば、関節における軟骨や、細胞外基質(基質保護剤)の劣化を予防するための、アロイジア・トリフィラの抽出物、その画分、その凍結乾燥物、或いは、一以上の有効成分、またはフラボノイド類または抗酸化性(例えば、トロロクス等価物)に調整されたアロイジア・トリフィラ抽出物のそれぞれの使用に関する。
【0034】
アロイジア・トリフィラは、炎症性疾患、腫瘍疾病、慢性関節リウマチ、並びに、例えば、アルツハイマー、乾癬、網膜症及び歯周病といった他の慢性疾患を治療および予防するため、血管新生の抑制に使用されるのが好ましい。
【0035】
本発明によれば、前記抽出物は、流体抽出物であるのが好ましい。上述のように、流体抽出物の投与量は、乾燥物質換算で、一日に20mg〜2gである。
【0036】
本発明にかかる抽出物等は、植物、特に薬剤、栄養補給食品、機能性食品、新規食品、化粧品成分(例えば、日焼け止めクリーム、老化防止クリームおよび軟膏、アフターシェーブ、ヘアケア組成物等)として、また抗酸化性を有する食品に利用される。すなわち、本発明は、既に知られており、尚且つ、広く使用されているエッセンシャルオイルの使用に関するものではない。
【0037】
更に、本発明は、上記記載の如く、アロイジア・トリフィラの抽出物、又は、その画分から調製された凍結乾燥物、並びに、アロイジア・トリフィラの抽出物、又は、その画分を含む植物、栄養補給食品、または化粧品に関する。
【0038】
最後に、本発明は、本発明に係る抽出物の調製方法に関する。
【0039】
本発明によれば、流体抽出物の乾燥物質から成る液体製剤、コーティングタブレット、硬質ゼラチンカプセルは、経口投与形態、局所使用形態、または注入物質として使用されるのが好ましい。
【0040】
主用途は、人体用であるが、獣医分野における使用も可能である。
【0041】
アロイジア抽出物は、DPPHテストにおいて示されるように、強力な抗酸化性を有する。しかしながら、驚いたことに、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸)の分解を引き起こす、例えば、ビタミンCのような酸化促進性を持たない。前記抽出物は、自由第一鉄イオンおよび過酸化水素に起因するグリコサミノグリカンの分解を抑制した(図2参照)。
【0042】
アロイジア抽出物のこの新規作用により、多くの慢性疾患の発症における基本的特徴である、細胞外基質の分解、または、例えば、軟骨の劣化をそれぞれ遅らせるか又は抑制することができる。細胞外基質の成分であるグリコサミノグリカンの分解は、血管新生の誘導において非常に重要である。細胞外基質(基質保護剤)の分解を抑制する有効物質または抽出物は、現在に至るまで知られていない。
【0043】
生体外実験から想定される上記アロイジア抽出物の薬理効果は、温められた鶏卵の絨毛尿膜(HET‐CAM)を用いて、様々な起源の病的血管新生を抑制することにより、生体内で立証されている(図4参照)。更に、絨毛尿膜では、活性酸素種(ROS)により生じる炎症が抑制される(図5参照)。生理的血管新生は、アロイジア抽出物により抑制されることはない(図3参照)。
【0044】
無損傷の細胞外基質は、健全な組織にとって不可欠である。成分の分解により、例えば、軟骨の劣化や病原性血管新生の誘導が生じる。
【0045】
血管新生は、女性の月経後、又は創傷治癒においての、胚発育における生理的分化組織プロセスである。この分化は、基底層が局所的に破壊されている毛細血管により開始され、内皮細胞が移動、増殖し、増殖部隣接部位と管およびループを形成する。基底層は、新たに生成された血管に形成される。このプロセスは、拮抗性介在物質により制御される。血管新生促進因子には、酸性線維芽細胞成長因子(FGF-1)、塩基性線維芽細胞成長因子(FGF-2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン1a(IL 1a)等がある。内因性阻害剤は、これらの促進因子に拮抗し、健常者における血管新生を抑制する。
【0046】
血管新生は、いくつかの疾病における発症に関与する。これら疾病には、上記全ての腫瘍疾病が含まれる。固形腫瘍の増殖および転移はいずれも、腫瘍組織における血管新生によって左右される。血管新生が発症に関与する疾病の他のいくつかの例は既に上述している。
【0047】
人体における使用が許可された血管新生抑制剤はまだ入手不可能であるため、効果的且つ副作用の少ない血管新生抑制剤が今日もなお治療上必要とされている。様々な血管新生抑制剤、例えば、スラミンが既に臨床的には研究されているが、その治療上の有効性は、毒作用のため疑問視されている。
【0048】
鶏の胎児のCAMでの、アロイジア・トリフィラ流体抽出物の凍結乾燥物の薬理学的検査では、驚いたことに病原性血管新生に対する強力な抑制作用が得られた。抽出物による膜炎症または毒作用は認められていない。また、アロイジア・トリフィラの使用における副作用は今日まで報告されていない。
【0049】
病原性滑液において、増殖には新血管新生が伴うため、慢性関節リウマチを治療するための新しい治療方針において、血管新生抑制剤が求められている。内皮細胞の増殖抑制は、重要な治療上の目的と考えられ得る。というのも、それにより、病理学的‐免疫学的プロセスの削減も期待されるからである。
【0050】
以下、本発明を、図および実施例により説明する。しかしながら、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の範囲はむしろクレームにより示される。
【実施例】
【0051】
実施例1:アロイジア・トリフィラからの完全な水溶性の特定抽出物の調製(図1参照)
【0052】
最低限の量の抗酸化オリゴ糖を含むアロイジア・トリフィラの乾燥切断植物物質(それぞれ、花、葉、または茎のみを含む、または含まない地上成分)を、水または水/エタノール混合液(例えば、水/エタノール=50:50(容量比))を用いて、40℃で8時間かけて抽出する。乾燥植物物質の抽出剤に対する割合は、変化させることができ、1:4〜1:100部である。具体的なエタノール‐水混合液、抽出温度、抽出期間、及び使用する抽出剤の量は、バッチ間で異なり、抗酸化オリゴ糖の含有量と、不要な妨害物質(例えば、葉緑素、カロチノイド、及び他の、特に親油性の、成分等)の含有量とによって決まる。
【0053】
抽出の厳密な条件は、上述のように抽出物中に最低限含まれているはずである抗酸化オリゴ糖に関する分析を利用した予備試験において、個々のケースで決められる。
【0054】
抽出後、流動遠心分離機(「ミルク遠心分離機」)で遠心分離を行い、不溶性成分を分離する。分離した不溶性成分(搾り粕)は、廃棄する。上澄み(または、オーバーフロー)は、4℃まで、少なくとも40℃まで冷却する。最高1ヶ月の保存期間の後、沈殿している親油性成分(特に、葉緑素)を濾過により除去する。
【0055】
その後、濾液を、元の量の約1/10〜1/4まで真空中50〜90℃で濃縮する。濃縮溶液は、再び4℃まで、少なくとも40℃まで冷却する。この最終清澄化後、濾過により、最高1ヶ月の保存期間の後、沈殿または凝集懸濁物質を除去する。
【0056】
次に、最終生成物内に所望濃度の抗酸化オリゴ糖を得るため、濾液に不活性物質、例えば、マルトデクストリンまたはアエロジルを加える。最終乾燥工程は、40〜90℃の温度で、乾燥コンベヤーベルト上、又は真空濃縮器内で行う。その後、乾燥物質を、ミルで所望の粒径に粉砕する。その粉末を真空下で包装する。飲料の調製に適した最終生成物を水に残らず溶解する(特に、分離する有色粒子(黒い「点」)はない)。最終生成物は、最低限の抗酸化オリゴ糖約10%を含み、食品規制および薬局方による、微生物学的純度の最低基準を満たす。また、法律により規制されている、重金属、除草剤、および殺虫剤の上限以下にとどまる。
【0057】
実施例2:HET−CAMテストにおけるアロイジア・トリフィラ抽出物の抗炎症効能
【0058】
これを目的として、(ラウリル硫酸5mg/mlを含む)アガロース溶液1ml中(上記実施例1において得られた組成物の)凍結乾燥物50mgの溶液10μlをテストペレットとしてCAMに塗布した。炎症に起因する血管新生は、対照実験と比較して、テストペレットの領域において少ないか、または、実に完全に抑制された。この実験方法は、血管新生抑制の生体内試験のための一般に認知されているモデルであり、上記凍結乾燥物の全く予期しない新規薬理効果を立証している。この点においては、図4も参照されたい。
【0059】
HET−CAMテストは、治療に応用できる可能性のある病原性血管新生の抑制に関して物質を検査するための多くのモデル試験の内の一つである。HET−CAMテストの利点は、生体外での方法に比べて、臨床的関連についてより明確な予測を可能にする生体内実験に属することである。この生体内テストには、複雑なシステムの血管新生が、メディエータおよびその全細胞機能と共に含まれ、血管新生に対する抑制作用に関する比較的確実な予測を可能にする。このテストは、血管新生抑制作用を有する物質の検出用検査手段として評価されている(Svahn, C.M., M. Weber, C. Mattsson, K. Neiger, M. Palm Carbohydr. Polym. 18, 9-16 (1992); Hahnenberger R., A.M. Jakobsen, A. Ansari, T. Wehler, C.M. Svahn, U. Lindahl, Glycobiology 3, 567-573 (1993); and Galliardi, A., H. Hadd, D.C. Collins, Cancer Research 52, 5073-5075 (1992))。
【0060】
実施例3:HET−CAMテストで得られた結果の動物実験での確認
【0061】
HET−CAM分析の結果を、慢性炎症の動物モデルで、更に確認することができる。抽出物の作用は、デキストラン硫酸誘発性急性結腸炎のマウスモデルにおいて検査した。
【0062】
これを目的として、合計10匹のマウスにおいて、デキストラン硫酸により急性結腸炎を誘発させた。この腸炎により、マウスの体重は減少した。最終的パラメータは、マウスの体重、腸の長さ、および炎症を引き起こす既知のインターロイキンの減少の測定である。
【0063】
水溶性アロイジア抽出物600μgを毎日(10日間)投与した後、10日間処理した5匹のマウスの最終体重は、対照グループ(5匹のマウス)と比較して、著しく増加した(p=0.05)。その処理結果を表1に示す。記載されている値は、最大の変動範囲と共に平均値である。
【0064】
【表1】

【0065】
インターフェロン(IFN)およびインターロイキン10(IL-10)の値は、リンパ結節から得られたMLN細胞における刺激作用後著しく低下した。
【0066】
マウス実験のこれらの結果は、本発明に係る組成物が、慢性炎症、特に、腸管の慢性炎症において良好に使用できることを確証している。
【0067】
実施例4:本発明に係る抽出物を含有する食品の調製
【0068】
開始生成物:抗酸化オリゴ糖の含有量を約10%に最適化した、アロイジア・トリフィラからのアルコール抽出物の水溶性画分(上記実施例1と同様にして得られた)。
【0069】
表2は、各乳製品における抽出物の混合比を示す。表に記載している結果が得られた。
【0070】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明に係る抽出物の調製を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明に係る水溶性アロイジア抽出物による、活性酸素種(ROS)に起因するグリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸A)分解の抑制を示す。対照的に、抗酸化ビタミンCは、生理条件下(pH値7.2、37℃)グリコサミノグリカンの分解を促進する。
【図3】図3は、ビタミンCと比較した、本発明に係る水溶性アロイジア抽出物の、生理的血管新生に対する影響を示す。
【図4】図4は、ビタミンCと比較して、本発明に係るアロイジアからの水溶性抽出物による、慢性炎症に起因する病的血管新生の抑制を示す。
【図5】図5は、活性酸素種(ROS)により生じる絨毛尿膜における炎症の抑制を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロイジア・トリフィラの抽出物であって、一以上の親水性溶媒によって得られ、本質的に完全な水溶性である抽出物。
【請求項2】
抽出に使用する前記親水性溶媒が、水および/またはエタノールである請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記溶媒が、100容量%〜30容量%の範囲で水を含む請求項1または2に記載の抽出物。
【請求項4】
前記抽出物が、流体抽出物または特定抽出物である前記クレームの一以上に記載の抽出物。
【請求項5】
図1に係る調製方法により調製され得る抽出物。
【請求項6】
凍結乾燥形態で存在する前記クレームの一以上に記載の抽出物。
【請求項7】
請求項1〜6の一以上に記載のアロイジア・トリフィラの抽出物を含む食品、栄養補給食品、または化粧品。
【請求項8】
請求項1〜6の一以上に記載のアロイジア・トリフィラの抽出物、および一以上の補助薬/薬剤キャリアを含む薬剤組成物。
【請求項9】
注射、全身および/または局所投与により投与されるようにデザインされたクレーム8に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
慢性疾患、好ましくは、癌、慢性関節リウマチ、慢性腸疾病、乾癬、および神経系疾患の化学予防および治療のための、請求項1〜6の一以上に記載の抽出物の使用。
【請求項11】
軟骨や細胞外基質の劣化予防を目的とする化学予防および治療のための、請求項1〜6の一以上に記載の抽出物の使用。
【請求項12】
腫瘍疾病、慢性関節リウマチ、並びに、好ましくは、アルツハイマー病、乾癬、網膜症及び歯周病のような他の慢性疾患の治療および予防のための、請求項1〜6の一以上に記載の抽出物の使用。
【請求項13】
前記流体抽出物の投与量が、乾燥物質換算で、一日に20mg〜2gである、請求項10〜12の一以上に記載の抽出物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−514705(P2007−514705A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544381(P2006−544381)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014499
【国際公開番号】WO2005/058338
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506203796)アノキシマー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】