説明

慢性リンパ性白血病の処置のためのニロチニブとナイトロジェンマスタードの組み合わせ剤

本発明は、(a) DNA傷害剤;および(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド(“ニロチニブ”)を含む組み合わせ剤;該組み合わせ剤と、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、特に慢性リンパ性白血病(CLL)を処置するための、同時に、別個にまたは連続して使用する医薬組成物;CLLを処置する医薬の製造における、該組み合わせ剤の使用;該組み合わせ剤を含む商業用包装物または製品;および、温血動物、特にヒトの処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a) DNA傷害剤および(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド(“ニロチニブ”)を含む組み合わせ剤;特に慢性リンパ性白血病(CLL)を処置するための、同時、個別または連続使用のための当該組み合わせ剤、および、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物;CLLを処置する医薬の製造のための、当該組み合わせ剤の使用;当該組み合わせを含む商業用包装物または製品;および温血動物、特にヒトを処置する方法に関する。
【0002】
好ましくは、DNA傷害剤は、ナイトロジェンマスタード・アナログである。さらに好ましくは、ナイトロジェンマスタード・アナログは、クロラムブシル、クロルナファジン、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン オキシド塩酸塩、ナベンビキン(navembichin)、フェネストリン(phenestrine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、シクロホスファミド、ウラムスチン(uramustine)、メルファランおよびベンダムスチンからなる群から選択される。
【0003】
好ましくは、DNA傷害剤は、ヌクレオチドアナログ、例えばプリンアナログまたはピリミジンアナログである。好ましくは、プリンアナログは、フルダラビンである。
【背景技術】
【0004】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、成人の白血病の最も頻発する型であり、全白血病の25%を占める(米国(US)において毎年約10,000の新規CLL症例)。米国において、95%のCLL症例が、B細胞表現型白血病である。約50%のCLL患者が診断時に無症候性である。病期は、進行度と相関している;0期では、生存期間中央値が>10年であり、一方、I〜II期では生存期間中央値が7年である。患者が症状を示すとき、通常処置が開始される。
【0005】
CLLの処置に用いられる薬物の2つの主要なグループがある:(1)アルキル化剤、例えばクロラムブシル(CLB)またはシクロホスファミド;および(2)プリンアナログ、例えばフルダラビン。通常、クロラムブシル(CLB)が、標準的な初期治療であるが、フルダラビンおよびシクロホスファミド(CTX)が、現在標準的な最先端治療となりつつある。これらの薬物は、60〜75%の患者において応答がある。近年の無作為化試験によりCLBと比較して、フルダラビンでは、応答率は上がるが、生存率に差異はないことが実証された。何れの薬物も、CLLにおける最先端治療として許容される。他の薬物も治療に利用可能である。最終的には、全ての患者が、薬物に耐性となる。この疾患を治癒できる治療はない(Kalil, N. and Cheson, B.D. The Oncologist 4:352-369, 1999)。PCT/IB 03/05454 は、メシル酸イマチニブ、すなわちGleevec(登録商標)の有効成分がB−CLLリンパ球をCLBに対して感受性とすることを開示している。CLBと組み合わせたイマチニブは、現在、CLLの処置においてフェーズI〜II臨床試験中であるが、驚くべき事に、ニロチニブが、CLLリンパ球をCLBに感受性にする際に、イマチニブより高い効果を有することが見出された。理論に束縛されないが、我々は、ニロチニブおよびイマチニブの双方が、同様の方法で、CLB誘発Rad51関連DNA修復を阻害するが、ニロチニブのみが、CLB誘発γH2AXを増大させることを見出した。カスパーゼ−3の活性化の分析により、ニロチニブと組み合わせてCLBで処置された細胞においては、JNK活性化によって媒介されるアポトーシス経路が増大したが、イマチニブとの組み合わせでは増大しなかったことが示された。さらに、ニロチニブによるc-abl阻害は、生存B−CLLリンパ球の維持に関連するNFκB経路の下方制御を引き起こす。
【0006】
図:B−CLL患者由来のリンパ球のCLB細胞毒性における、ニロチニブおよびイマチニブの相乗効果
CLB細胞毒性における1、5および10μMのニロチニブおよびイマチニブの相乗効果の評価を、MTTアッセイを用いて評価した。I値がI<1であることは、CLB+ニロチニブまたはイマチニブが、相乗的に作用することを示している。I値がI>1であるとき、薬物は、拮抗的に作用する。
* : p<0.001。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、同時に、別個に、または連続して使用するための、(a) DNA傷害剤、および(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個に、または連続して使用するための当該組み合わせ剤を提供する。好ましくは、当該DNA傷害剤は、ナイトロジェンマスタード・アナログである。
【0008】
本発明は、(a) クロラムブシル、クロルナファジン、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン オキシド塩酸塩、ナベンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、シクロホスファミド、ウラムスチン、ベンダムスチン、メルファランおよびウラシルマスタードからなる群から選択されるナイトロジェンマスタード・アナログ、および、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個にまたは連続して使用するための当該組み合わせ剤を提供する。
【0009】
好ましくは、本発明は、(a) クロラムブシル、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個にまたは連続して使用するための組み合わせ剤を提供する。
【0010】
本発明は、(a) シクロホスファミド、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個にまたは連続して使用するための当該組み合わせ剤を提供する。
【0011】
本発明は、(a) ベンダムスチン、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個にまたは連続して使用するための当該組み合わせ剤を提供する。
【0012】
本発明は、(a) フルダラビン、および、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する組み合わせ剤を提供する。本発明は、さらに、同時に、別個にまたは連続して使用するための当該組み合わせ剤を提供する。
【0013】
本発明は、CLB、クロルナファジン、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン オキシド塩酸塩、ナベンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミドまたはウラシルマスタードから選択されるナイトロジェンマスタード・アナログ、特にCLBおよびニロチニブを含む組み合わせ剤が、治療有効量のナイトロジェンマスタード・アナログ単独、特にCLB単独またはニロチニブ単独の何れかを投与することによって得られるものよりも大きい治療効果を生じ得ることを報告する。より具体的には、ニロチニブは、B−CLLリンパ球をCLBでの処置に感受性とする。
【0014】
本発明は、(a) ナイトロジェンマスタード・アナログ、および、(b) ニロチニブ(ここで、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する)、および、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、同時に、別個に、または連続して使用するための組み合わせ剤、例えば組み合わせ製剤(combined preparation)または固定化された薬学的組み合わせ剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語“組み合わせ製剤”は、本明細書で用いられるとき、特に、上で定義された組み合わせパートナー(a)および(b)が互いに独立して投与され得るか、あるいは区別された量の組み合わせパートナー(a)および(b)を含む異なる固定化された組み合わせ剤の使用によって、すなわち同時にまたは異なる時点で、投与され得るという意味で、“複数パーツのキット”を定義する。複数パーツのキットは、例えば、同時にまたは時間をずらして、すなわち異なる時点で、複数パーツのキットのいずれかのパーツと同じまたは異なる時間間隔で投与されてもよい。非常に好ましくは、時間間隔は、複数のパーツの組み合わされた使用で処置された疾患に対する効果が、組み合わせパートナー(a)および(b)の何れか一つのみの使用によって得られる効果より高いように選択される。組み合わせ製剤において投与される組み合わせパートナー(b)に対する組み合わせパートナー(a)の総量の割合は、例えば、処置されるべき患者の副集団の必要性に対処するためにまたは一人の患者の必要性に対処するために変更してもよく、この異なる必要性は患者の年齢、性別、体重などによるものであり得る。好ましくは、少なくとも1つの有益な効果があり、例えば組み合わせパートナー(a)および(b)の効果を相互に強化し、特に相乗作用があり、例えば1個以上のさらなる効果があり、さらなる有益な効果があり、副作用が低く、組み合わせパートナー(a)および(b)の一方または両方が有効投与量でない投与量における組み合わされた治療効果があり、非常に好ましくは、組み合わせパートナー(a)および(b)の強い相乗作用がある。
【0016】
用語“処置”は、組み合わせパートナーを、処置が必要な温血動物に、疾患を治癒する目的で、あるいは、疾患の進行を遅らせる目的で、投与することを含む。
【0017】
用語“進行を遅らせる”は、本明細書で用いられるとき、疾患の進行が、処置によって、少なくとも減速し、または、妨げられ、そして、患者が、処置されない患者より、または単剤治療で処置されている患者より、高い生存率を示すことを意味する。
【0018】
“ナイトロジェンマスタード・アナログ”は、当業者に一般的に理解される通り、非特異的にDNAをアルキル化する細胞傷害性化学療法剤を言う。好ましくは、用語“ナイトロジェンマスタード・アナログ”は、CLB、クロルナファジン、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン オキシド塩酸塩、ナベンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、シクロホスファミド、ウラムスチン、ベンダムスチンおよびメルファランを含み、これらに限定されない化合物群を言う。
【0019】
用語“クロラムブシル耐性慢性リンパ性白血病”は、本明細書で用いられるとき、特に、CLBがもはや有効でないか、その治療有効性の減少を示す慢性リンパ性白血病を定義する。
【0020】
CLBは、米国特許第3,046,301号に記載された工程に従って製造され得る。
4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドはまた、国際一般名“ニロチニブ”でも知られている。それはWO 04/005281に記載された通りに製造され、投与され得る。
ニロチニブは、WO 2007/015870に開示された一塩酸一水和物の形態で用いられ得る。
【0021】
引用された活性な薬物の構造は、現行の版の標準的大要“The Merck Index”、または、例えばPatents International (例えばIMS World Publications)などのデータベースから取得され得る。対応するその内容は、言及することによって本明細書に組み込まれる。当業者は、これらの記載に基づいて、十分に、製造することが可能であり、かつ、in vitro および in vivoの両方の標準的な試験モデルで、薬学的適応および薬学的性質を試験することが可能である。
【0022】
本発明で開示された組み合わせ剤、例えば、有効成分が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形である(a) ナイトロジェンマスタード・アナログ、好ましくはCLBまたはシクロホスファミド、あるいは、(a) フルダラビンと、(b) ニロチニブと、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組み合わせ剤は、以降、本発明の組み合わせ剤と記載する。
【0023】
本発明の組み合わせ剤は、CLLの処置に有益な効果を示す。本発明の一つの好ましい態様において、本発明の組み合わせ剤で処置される増殖性疾患は、CLBに耐性であるCLLである。
【0024】
驚くべきことに、本発明の組み合わせ剤はまた、ニロチニブまたはその薬学的に許容される塩の代わりにメシル酸イマチニブを用いた対応する組み合わせ剤よりも、CLL患者の耐容性が良い。
【0025】
本発明の組み合わせ剤が、本明細書で記載された有益な効果をもたらすことは、確立された試験モデルによって示され得る。当業者は、このような有益な効果を証明するための関連の試験モデルを十分に選択し得る。本発明の組み合わせの薬理学的活性は、例えば、臨床試験で、または、本質的に下で記載した試験手順で実証され得る。
【0026】
適当な臨床試験は、特に、後期CLLを有するCLL患者における、無作為化二重盲検式並行試験である。当該試験は、特に、互いに独立に複数の有効成分を用いた単剤治療の効果および本発明の組み合わせ剤を用いた治療の効果を比較するのに適当であり、特に本発明の組み合わせ剤の複数の有効成分の相乗作用を証明するのに適当である。当該試験における第1エンドポイントは、活動指数(performance status)、クォリティー・オブ・ライフ・スコア、または、疾患の無増悪期間であり得る。適当な試験設計において、患者は、例えば、2週間の処置サイクルで、1日当たり50から1000mgの範囲の用量のニロチニブおよび0.2から1mg/kg/日の範囲の用量のCLBを投与される。
【0027】
本発明の組み合わせ剤を含む、CLLに対して併用で治療有効量を含む医薬組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。この組成物において、組み合わせパートナー(a)および(b)は、一緒に投与されてもよく、一方の後に他方が投与されてもよく、あるいは、1個の組み合わされた単位投与形で、または、2個の別個の単位投与形で別個に投与されてもよい。単位投与形はまた、固定化された組み合わせであってもよい。
【0028】
本発明による医薬組成物は、それ自身既知の方法で製造されてもよく、また、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への、経腸投与、例えば経口投与または直腸投与、および非経腸投与に適当なものであり、少なくとも1種の薬理学的に活性な組み合わせパートナーのみを含むか、または、特に経腸または非経腸適用に適当な1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む。本発明の一つの態様において、1種以上の有効成分が経口で投与される。
【0029】
特に、本発明の組み合わせ剤の、治療有効量の各組み合わせパートナーは、同時にまたは連続して、何れかの順序で投与されてもよく、該複数の成分は、別個に投与されても、固定化された組み合わせとして投与されてもよい。例えば、本発明によるCLLの進行を遅らせる方法またはCLLを処置する方法は、同時にまたは何れかの順序で連続して、併用で治療有効量で、好ましくは相乗的有効量で、例えば本明細書に記載された量に対応する1日投与量で、(i) 遊離形または薬学的に許容される塩形の第1の組み合わせパートナーを投与すること、および、(ii) 遊離形または薬学的に許容される塩形の第2の組み合わせパートナーを投与することを含み得る。本発明の組み合わせ剤の個々の組み合わせパートナーは、治療の過程で、異なる時間で別個に投与されてもよく、分割されたまたは単一の組み合わせ剤の形態で一緒に投与されてもよい。さらに、用語“投与”はまた、in vivoで組み合わせパートナー自身に変換される、組み合わせパートナーのプロドラッグの使用を包含する。従って、本発明は、全ての同時または交互の処置のかかるレジメを包含すると理解されるべきであり、用語“投与すること”もこれに従って解釈されるべきである。
【0030】
本発明の組み合わせ剤で用いられる各組み合わせパートナーの有効投与量は、用いられる特定の化合物または医薬組成物、投与方法、処置されるCLLの病期、および処置される状態の重症度に依存して変化し得る。従って、本発明の組み合わせ剤の投与レジメは、投与経路および患者の腎臓および肝臓の機能を含む多様な要因に従って選択される。通常の技術を有する医師、臨床医、または獣医は、状態の進行を予防し、留め、または阻止するのに必要な1個の有効成分の有効量を、容易に決定し、処方し得る。有効成分の濃度を、毒性なしで効果が得られる範囲内に達成させるのに最適な精度は、標的部位への有効成分の利用可能性の動力学に基づいたレジメを必要とする。このことは、複数の有効成分の分布、平衡および排出に対する考察を含む。
【0031】
CLBは、0.1から1mg/kg/日の投与量範囲で、好ましくは0.2から0.8mg/kg/日の投与量範囲で投与され得る。最も好ましくは、CLBは、0.6mg/kg/日の投与量で投与される。
【0032】
種、年齢、個々の状態、投与方法および問題の臨床像に依存して、約50から1000mgの1日投与量のニロチニブを、約70kg体重の温血動物に投与する。
【0033】
本発明はまた、CLLに罹患しているヒト対象に、ニロチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与する方法に関する。
【0034】
本発明の組み合わせ剤で用いられる組み合わせパートナーが、単剤として販売されている形態で適用されるとき、その用量および投与方法は、本明細書で特記しない限り、本明細書で記載される有益な効果をもたらすために各々の市販薬の添附文書に提供された情報に従って行われ得る。
【0035】
本発明の組み合わせ剤は、組み合わせ製剤または医薬組成物であってもよい。
【0036】
さらに、本発明は、CLLの処置における、および、CLLを処置する医薬の製造における、本発明の組み合わせ剤の使用に関する。
【0037】
さらに、本発明は、CLLを処置する医薬の製造における、ニロチニブと組み合わせたCLBの使用に関する。
【0038】
さらに、本発明は、CLLの処置において、同時に、別個に、または連続して使用するための指示書と共に、有効成分として本発明の組み合わせ剤を含む商業用包装物を提供する。
【実施例】
【0039】
実施例I:ニロチニブがCLLリンパ球をCLBに感受性とする
A) 物質および方法
A−1) CLLリンパ球の単離および細胞培養
CLL患者の末梢血から、Ficoll Hypaque (Pharmacia, Uppsala, Sweden) での沈降遠心分離によって、以前に記載された通りに(Christodoulopolis G. et al., Cancer Research, 1999, 5:2178-84)、リンパ球を単離する。1×10細胞/mlを含むアリコートをTリンパ球分析にかける。混入Tリンパ球のパーセンテージを、CD3抗体による蛍光活性化細胞分類分析を用いて決定する。我々の母集団における混入Tリンパ球のパーセンテージ(平均%±SEとして表記)は、6.4±1.8である。
WSU細胞株は、CLL患者から誘導されたBリンパ球細胞株である (Mohammad R.M., et al., Leukemia, 1996, 10:130-7)。
【0040】
A−2) 平板効率および投与
リンパ球およびWSU CLLリンパ球を、96ウェル・プレートに、10% FBSを加えたRPMI中それぞれ1.5×10リンパ球/mlおよび1.25×10細胞/ml含む200μl懸濁液で播種する。直線的平板効率を有する用量応答のみを分析する。次いでリンパ球を、37℃で、種々の濃度のニロチニブ(0〜100μM)のみ、CLB(0〜100μM)のみ、または種々の濃度の両方の薬物の存在下でインキュベートする。
【0041】
A−3) 細胞傷害アッセイ
MTTアッセイを、先に記載された(Christodoulopolis G et al., Cancer Research, 1998, 58:1789-92)とおりのプレーティング後72時間で、20μlのRPMI培地中5mg/ml MTT(臭化 3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウム)の溶液を、それぞれのウェルに添加することによって行う。CLBのみ、ニロチニブのみ、またはニロチニブ存在下でのCLBのLD50を、コントロール値の50%の吸光度測定値まで減少させるのに必要な薬物の濃度として定義する。ビークル処置細胞(コントロール)に対する処置後の生存細胞のパーセンテージを、(OD処置細胞/OD非処置細胞)×100として計算する。式:a/A+b/B=Iによって、相乗作用を決定する。ここで、aは、コントロール値の50%となるのに必要な、濃度bのニロチニブを組み合わせたCLBの濃度であり;Aは、ニロチニブなしでLD50を生じるCLBの濃度であり;Bは、CLBの非存在下でLD50を生じるニロチニブの濃度である。式に従うと、I<1であるとき、相互作用は相乗的であり、I=1であるとき、相互作用は相加的であり、I>1であるとき、拮抗的相互作用である。
【0042】
A−4)統計学的分析
平均値間の差異を、両側t検定によって評価する。相関分析および線形回帰分析は、EXCEL Statistical Tool Packageを用いて行われる。
【0043】
結果
ニロチニブは、クロラムブシルに対するCLLリンパ球(16/19サンプル)の感受性化において、イマチニブよりも強い有効性を有した。
【0044】
実施例II
患者
モントリオールのJewish General HospitalでB−CLLと診断された21人の患者が、インフォームド・コンセント後、試験に参加した。患者は、臨床的に処置されていないか(n=13)、または種々の期間CLBで処置されている(n=8)かの何れかであった。
【0045】
細胞毒性アッセイ
Ficoll-Hypaque (Pharmacia)を用いて、末梢血からリンパ球を単離した。単離されたBリンパ球群において、Tリンパ球の混入は、2.30±2.07であった(%平均値±S.D.として表され、フローサイトメトリー分析によって決定された)。CLLリンパ球(3×10細胞/ml)を、10% FBSを添加したRPMI 1640でプレーティングし、種々の濃度(0〜100μM)のイマチニブ(Novartis)、ニロチニブ(Novartis)、クロラムブシルのみ(Sigma-Aldrich Co)、または示された組み合わせの存在下でインキュベートした。コントロールのサンプルを、最大容積のDMSOと共にインキュベートした。先に記載された(Christodoulopoulos et al, Cancer Res, 58: 1789-1792, 199835)とおりの処置の72時間後、MTTアッセイを行った。式:a/A+b/B=Iによって相乗作用を決定した。ここで、aは、濃度bのイマチニブまたはニロチニブを組み合わせたCLBのIC50(コントロールの50%をもたらす濃度)であり;Aは、イマチニブまたはニロチニブなしでのCLBのIC50であり;Bは、CLB非存在下でのイマチニブまたはニロチニブのIC50である。式に従うと、I<1であるとき、相互作用は相乗的であり、I=1であるとき、相互作用は相加的であり、I>1であるとき、拮抗的相互作用である。
【0046】
統計学的分析
ANOVAおよびt検定による統計学的分析は、SigmaStat software (Systat Software Inc., San Jose, CA, USA)により行った。
【0047】
結果
両方のc−abl阻害剤ともB−CLLリンパ球をクロラムブシルに感受性とする
合計21人のCLL患者がこの試験に参加した。13人の患者は、臨床的に処置されておらず(患者1から13)、8人は予めクロラムブシルでの治療を受けていた(処置患者14から21)。患者の年齢の中間値は72才であり(45才から90才の範囲)、WBC数の中央値は83.7×10細胞/L(32.87×10から256.27×10細胞/Lの範囲)であった。
【0048】
MTTアッセイを用いて、CLL患者由来のリンパ球における、CLBのみ、イマチニブのみ、ニロチニブのみまたはCLBと1、5または10μMのイマチニブもしくはニロチニブの組み合わせの細胞毒性を決定した。
【0049】
1、5または10μMで用いられるとき、ニロチニブは、試験された患者の84.6%、100%および90.5%で、それぞれ、CLLリンパ球をCLBに対して感受性にした(相乗作用+相加作用)。一方、イマチニブは、同じ濃度で、これらのサンプルの66.7%、68.4%および36.8%しか、CLBに対して感受性にしなかった。興味深いことに、B−CLLリンパ球のCLBへの感受性化は、5または10μMのニロチニブで、イマチニブより統計学的に強力である(図)。
【0050】
さらに、21人の患者のうち5人を、B−CLLリンパ球をCLBに対して感受性にする能力で選択した。MTTアッセイを用いて、我々は、これら5人の患者由来の悪性Bリンパ球における、CLB細胞毒性へのニロチニブおよびイマチニブの効果を評価した。I値が、I<1またはI>1であるとき、それぞれは、CLBおよびc−abl阻害剤が、相乗的にまたは拮抗的に作用することを示す。
【0051】
表:
【表1】

【0052】
結論:我々は、ここで、イマチニブよりも強力なc-abl阻害剤であるニロチニブは、B−CLLリンパ球において、より高いCLB細胞傷害剤の相乗作用効果を有することを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) DNA傷害剤、および、(b) 4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む、同時に、別個にまたは連続して使用するための組み合わせ剤であって、有効成分(a)および(b)が、それぞれの場合で、遊離形または薬学的に許容される塩形で存在する、組み合わせ剤。
【請求項2】
当該DNA傷害剤が、ナイトロジェンマスタード・アナログである、請求項1に記載された組み合わせ剤。
【請求項3】
当該ナイトロジェンマスタード・アナログが、クロラムブシル、クロルナファジン、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン オキシド塩酸塩、ナベンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、シクロホスファミド、ウラムスチン、メルファランおよびウラシルマスタードから選択される、請求項2に記載された組み合わせ剤。
【請求項4】
当該ナイトロジェンマスタード・アナログが、クロラムブシルである、請求項3に記載された組み合わせ剤。
【請求項5】
当該ナイトロジェンマスタード・アナログが、シクロホスファミドである、請求項3に記載された組み合わせ剤。
【請求項6】
当該ナイトロジェンマスタード・アナログが、ベンダムスチンである、請求項3に記載された組み合わせ剤。
【請求項7】
当該DNA傷害剤が、フルダラビンである、請求項1に記載された組み合わせ剤。
【請求項8】
化合物(b)が、その一塩酸塩一水和物の形態で用いられる、請求項1〜7の何れか1項に記載された組み合わせ剤。
【請求項9】
慢性リンパ性白血病の処置における、請求項1〜8の何れか1項に記載された組み合わせ剤の使用。
【請求項10】
慢性リンパ性白血病を処置する医薬の製造における、請求項1〜8の何れか1項に記載された組み合わせ剤の使用。
【請求項11】
該慢性リンパ性白血病が、クロラムブシルに耐性である、請求項8または10に記載された使用。
【請求項12】
慢性リンパ性白血病を有する温血動物を処置する方法であって、該動物に、請求項1〜8の何れか1項に記載された組み合わせ剤を、併用で治療有効量で投与することを含み、該化合物がまた、その薬学的に許容される塩の形態で存在していてもよい、方法。
【請求項13】
(a) クロラムブシルが、0.2から0.8mg/kg体重/日の投与量で投与される、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
請求項1〜8の何れか1項に記載された組み合わせ剤、および、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
慢性リンパ性白血病の処置において、同時に、別個にまたは連続して使用するための指示書と共に、請求項14に記載された医薬組成物を含む、商業用包装物。

【公表番号】特表2011−507880(P2011−507880A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539775(P2010−539775)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087336
【国際公開番号】WO2009/082662
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】