説明

慢性炎症性疾患治療剤

【課題】2型糖尿病にも有効な慢性炎症性疾患治療剤を提供する。
【解決手段】次式(I):


[式中、Ar及びArのいずれか一方は置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基を表し;RはH原子又はアルキル基を表し;RはH、アルキル基又は芳香族基、あるいは−CONH−を表し、Arの2位に結合し;R及びRは共同して次式:−C(R)(R)−C(R)(R)−で示される基を表してもよい。]で示される化合物又はその塩(但し、Arが2−ニトロフェニル基、Arが3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル基、RがH、RがHである化合物、及びArが2,4−ジニトロフェニル基、Arが3,4,5−トリメトキシフェニル基、RがH、Rが6−メトキシ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ベンゾ[b]フラン−3−イル基である化合物を除く。)を含有する慢性炎症性疾患治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性炎症性疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性炎症性疾患治療剤として、広く非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)が用いられている。
【0003】
炎症性サイトカインTNFαの過剰分泌が、インスリン抵抗性を惹起し2型糖尿病の成因として重要な役割を果たしていることが明らかにされ、2型糖尿病は慢性炎症性疾患であるとみなされているが、メトホルミンやインスリンといった糖尿病治療剤は、血糖値は下げるが炎症マーカーの値を下げることはできない。
【0004】
以前から、非ステロイド系抗炎症剤であるアスピリン(アセチルサリチル酸)が血糖降下作用を有することは知られているが、血糖降下に必要な用量を投与すると出血リスクが上昇するため、臨床適用は不可能と考えられている。
【0005】
非特許文献1には、サリチル酸の非アセチル化プロドラッグで、非ステロイド系抗炎症剤の1つであるサルサレートが血糖降下作用を有することが報告されている。
【0006】
一方、特許文献1には、カテコールヒドラゾン誘導体がホスホジエステラーゼIVを阻害することにより、抗炎症作用を示すことが記載されており、具体的化合物の一例として、(E)−3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンズアルデヒド 2−ニトロフェニルヒドラゾンが開示されている。
【0007】
特許文献2には、ベンゾ[b]フラン等の二環系複素環を含む化合物がチューブリン重合を阻害することにより、抗炎症作用を示すことが記載されており、具体的化合物の一例として、(E/Z)−6−メトキシ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)ベンゾ[b]フラン 2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−500479号公報(特に、請求項1、請求項3、段落0001〜0002、実施例8参照)
【特許文献2】特表2008−530030公報(特に、請求項19、請求項35、請求項38;第57頁の化合物番号56、実施例13(段落0188)参照)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Goldfine AB, et al., Ann Intern Med. 2010 Mar 16; 152(6): 346-357.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、2型糖尿病にも有効な慢性炎症性疾患治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の目的を達成すべく、多数のヒドラゾン骨格を有する化合物をスクリーニングした結果、ニトロ基で置換された芳香族基を有する特定の化合物が抗炎症作用を有し、かつ2型糖尿病にも有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)次式(I):
【化1】

[式中、Ar及びArのいずれか一方は置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基を表し;Ar及びArの他方は置換もしくは非置換の芳香族基を表し;Rは水素原子又はC1−6−アルキル基を表し;Rは水素原子、C1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換の芳香族基を表し、あるいはRは−CONH−を表し、Arの2位に結合し;R及びRは共同して次式:
−C(R)(R)−C(R)(R)−
(式中、R、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子、C1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換の芳香族基を表し、R及びR、又はR及びRは共同してオキソ基又は=N−N−R(式中、Rは置換もしくは非置換の芳香族基を表す。)を表してもよい。)
で示される基を表してもよい。]
で示される化合物又はその塩(但し、Arが2−ニトロフェニル基、Arが3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル基、Rが水素原子、Rが水素原子である化合物、及びArが2,4−ジニトロフェニル基、Arが3,4,5−トリメトキシフェニル基、Rが水素原子、Rが6−メトキシ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ベンゾ[b]フラン−3−イル基である化合物を除く。)を含有する慢性炎症性疾患治療剤。
【0013】
(2)前記式(I)で示される化合物が次式(II):
【化2】

(式中、Ar、Ar、R、R、R及びRは請求項1と同義である。)
で示される化合物である前記(1)に記載の慢性炎症性疾患治療剤。
【0014】
(3)Ar又はArで表される、置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基が4−ニトロフェニル基又は2,4−ジニトロフェニル基である前記(1)又は(2)に記載の慢性炎症性疾患治療剤。
【0015】
(4)慢性炎症性疾患が2型糖尿病である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の慢性炎症性疾患治療剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2型糖尿病にも有効な慢性炎症性疾患治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【図1B】図1Bは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【図1C】図1Cは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【図1D】図1Dは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【図1E】図1Eは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【図1F】図1Fは、低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、芳香族基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0019】
1−6−アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0020】
前記芳香族基は、C1−6−アルキル基、C2−6−アルケニル基、C2−6−アルキニル基、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−6−アルコキシ基、アラルキル基、ニトロ基、アミノ基、C1−6−アルキルアミノ基、ジC1−6−アルキルアミノ基等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0021】
本発明において、Arで表される芳香族基及びArで表される芳香族基の少なくとも一方は置換基として少なくともニトロ基を有する。
【0022】
前記C1−6−アルキル基は、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1−6−アルコキシ基、アミノ基、C1−6−アルキルアミノ基、ジC1−6−アルキルアミノ基等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
2−6−アルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
【0024】
2−6−アルキニル基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基が挙げられる。
【0025】
アシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等のC1−6−脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等の芳香族アシル基(アロイル基)が挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0027】
1−6−アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。
【0028】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0029】
前記式(I)で示される化合物の塩としては、薬学的に許容される塩が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。また、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する場合には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩として用いることもできる。
【0030】
前記式(I)で示される化合物のうち、Ar及びArのいずれか一方は置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基を表し;Ar及びArの他方は置換もしくは非置換の芳香族基を表し;Rは水素原子又はC1−6−アルキル基を表し;Rは水素原子、C1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換の芳香族基を表し、あるいはRは−CONH−を表し、Arの2位に結合した化合物は、例えば、ヒドラゾン化合物の一般的製法に従って、以下に示すように、酢酸、硫酸等の酸触媒の存在下において、ケトン化合物とヒドラジン化合物を脱水縮合させることにより製造することができる。
【0031】
Ar−CO−R + HN−N(Ar)(R) → 化合物(I)
【0032】
前記式(II)で示される化合物のうち、Rが水素原子である化合物は、例えば、ピラゾリン化合物の一般的製法に従って、以下に示すように、酢酸、硫酸等の酸触媒の存在下において、エノン化合物とヒドラジン化合物を縮合させることにより製造することができる(例えば、特開平3−52865号公報参照)。
【0033】
Ar−CO−CR=C(R)(R) + HN−NH−Ar → 化合物(II)
【0034】
前記のようにして得られる生成物を精製するには、通常用いられる手法、例えばシリカゲル等を担体として用いたカラムクロマトグラフィーやメタノール、エタノール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、水等を用いた再結晶法によればよい。カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0035】
前記式(I)で示される化合物及びその塩(以下「ヒドラゾン化合物(I)」という。)としては、種々の化合物が市販されており、これらの市販品をそのまま、又は必要に応じて精製して本発明の慢性炎症性疾患治療剤の有効成分として用いることができる。
【0036】
本発明の慢性炎症性疾患治療剤は、皮膚をはじめとする外皮及び上皮組織における弾性線維症、強皮症、慢性腹膜炎、後腹膜腔線維化症など、結合組織などの支持組織、筋肉における多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、軟組織線維症、慢性関節リウマチ、手掌線維腫、腱炎、腱鞘炎、アキレス腱炎、足菌腫など、骨髄、心臓などの血液組織、脈管系における骨髄線維症、脾機能亢進症、脈管炎、徐脈性不整脈、動脈硬化、閉塞性血栓性血管炎、結節性線維症、狭心症、拡張型うっ血性心筋症、心不全、拘束型心筋症、びまん性非閉塞性心筋症、閉塞性心筋症、肺性心、僧帽弁狭窄、大動脈弁狭窄、慢性心膜炎、心内膜線維症、心内膜心筋線維症など、肝臓などの消化器系では慢性膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、アルコール性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、ウィルソン病、肝硬変、ウイルス性肝炎、ゴーシェ病、糖原病、α抗トリプシン欠損、ヘモクロマトーシス、チロシン血症、果糖血症、ガラクトース血症、ゼルウェガー症候群、先天性肝線維症、門脈圧亢進症、肝肉芽腫症、バッド−キアリ症候群、原発性硬化性胆管炎、脂肪肝、非アルコール性肝炎、肝線維症、先天性肝線維症、アルコール性肝硬変、ウイルス性肝硬変、寄生虫性肝硬変、中毒性肝硬変、栄養障害性肝硬変、うっ血性肝硬変、肝硬化症、シャルコー肝硬変、トッド肝硬変、続発性胆汁性肝硬変、単葉性肝硬変、慢性非化膿性破壊性胆炎から移行した肝硬変、閉塞性肝硬変、胆細管性肝硬変、胆汁性肝硬変、萎縮性肝硬変、壊死後性肝硬変、肝炎後肝硬変、結節性肝硬変、混合型肝硬変、小結節性肝硬変、代償性肝硬変、非代償性肝硬変、大結節性肝硬変、中隔性肝硬変、突発性肝硬変、門脈周囲性肝硬変、門脈性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変など、肺などの呼吸系におけるコクシジオイデス症、ブラストミセス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、グッドパスチャー症候群、成人呼吸促迫症候群における肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、無気肺、肺炎、珪肺症、石綿肺症、過敏性肺炎、特発性肺線維症、リンパ球性間質性肺炎、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、嚢胞性線維症、膿胞性線維症、肺線維症、特発性肺線維症、線維化性肺胞隔炎、間質性線維症、びまん性肺線維症、慢性間質性肺炎、気管支拡張症、細気管支炎線維症、気管支周囲線維症、胸膜線維症など、腎臓などの泌尿器、生殖器系における男性性腺機能低下症、筋強直性ジストロフィー、ペイロニー病などによる線維症、慢性尿細管間質性腎炎、常染色体劣性嚢胞腎、骨髄腫腎、水腎症、急速進行性糸球体腎炎、腎毒性疾患、黄色肉芽腫性腎盂腎炎、鎌状赤血球腎症、腎性尿崩症、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患、慢性糸球体腎炎、IgA腎症、腎硬化症、巣状糸球体硬化症、膜性腎炎、膜増殖性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎アミロイドーシス、多発性嚢胞腎、後腹膜線維症、ループス腎炎など膠原病に伴う腎病変、糖尿病性腎症、慢性前立腺炎、住血吸虫症による膀胱炎、乳腺線維症、乳腺線維腺腫など、脊椎などの神経系における先天性斜頸、強直性脊椎炎、神経線維腫や脊髄損傷後の神経機能欠損等の脊髄疾患、パーキンソン病やアルツハイマー病等の脳神経疾患、眼球における後部水晶体線維化症、増殖性網膜症など、また、全身に病変の生じるサルコイドーシス、全身性エリテマトーデスによる線維症や全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎など、並びに2型糖尿病等の種々の慢性炎症性疾患の治療剤として有用である。
【0037】
本発明の慢性炎症性疾患治療剤は、他の慢性炎症性疾患治療剤、例えば非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド製剤、免疫抑制剤などと併用することができる。この場合には、必要に応じて、後述の投与量を適宜増減することができる。
【0038】
以下、ヒドラゾン化合物(I)の投与量及び製剤化について説明する。
ヒドラゾン化合物(I)はそのまま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物及びヒトに投与することができる。投与形態としては、特に限定がなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口剤、注射剤、坐剤、塗布剤、貼付剤等の非経口剤が挙げられる。
【0039】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。
【0040】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0041】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0042】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0043】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
【0044】
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0045】
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0046】
注射剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、注射剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。更に、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0047】
その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、貼付剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【0048】
本発明の製剤は、剤形、投与経路等により異なるが、1日1〜数回から1〜数回/週〜月の投与が可能である。
【0049】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人でヒドラゾン化合物(I)の重量として1〜200mgを、1日数回に分けての服用が適当である。
【0050】
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人でヒドラゾン化合物(I)の重量として1日1〜50mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
表1に示す低分子化合物のGalNAc4S-6ST(N-acetylgalactosamine 4-sulfate 6-O sulfotransferase)に対する結合活性を競合阻害試験によって調べた。以下に、試験方法をより詳しく述べる。ナミキ商事及び住商ファーマインターナショナル株式会社より購入した低分子化合物について、GalNAc4S-6ST リコンビナントタンパク質(R&D systems社製)、PAPS (Sigma社製)、[35S]PAPS(American Radiolabeled Chemicals 社製)及びPVT Copper His-Tag SP Assay beads (GE healthcare社製)を用いて、[35S]PAPSとの競合阻害試験を行った。反応は、22℃、18時間で行い、[35S]PAPSの結合量の減少に応じたSPシグナルの阻害率%を算出した。この阻害率%を化合物濃度に対してプロットし(図1)、50%阻害(IC50)に必要とされる濃度をグラフから計算した(表2)。
【0053】
その結果、2.20μMから120μMの結合阻害活性を持つ32個の低分子化合物(表1の化合物番号1〜32)が見出され、GalNAc4S-6ST とPAPSの結合を阻害する化合物シリーズが明らかにされた。
<SP: Scintillation Proximity の略>
【0054】
【表1】






【0055】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

[式中、Ar及びArのいずれか一方は置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基を表し;Ar及びArの他方は置換もしくは非置換の芳香族基を表し;Rは水素原子又はC1−6−アルキル基を表し;Rは水素原子、C1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換の芳香族基を表し、あるいはRは−CONH−を表し、Arの2位に結合し;R及びRは共同して次式:
−C(R)(R)−C(R)(R)−
(式中、R、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子、C1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換の芳香族基を表し、R及びR、又はR及びRは共同してオキソ基又は=N−N−R(式中、Rは置換もしくは非置換の芳香族基を表す。)を表してもよい。)
で示される基を表してもよい。]
で示される化合物又はその塩(但し、Arが2−ニトロフェニル基、Arが3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル基、Rが水素原子、Rが水素原子である化合物、及びArが2,4−ジニトロフェニル基、Arが3,4,5−トリメトキシフェニル基、Rが水素原子、Rが6−メトキシ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ベンゾ[b]フラン−3−イル基である化合物を除く。)を含有する慢性炎症性疾患治療剤。
【請求項2】
前記式(I)で示される化合物が次式(II):
【化2】

(式中、Ar、Ar、R、R、R及びRは請求項1と同義である。)
で示される化合物である請求項1記載の慢性炎症性疾患治療剤。
【請求項3】
Ar又はArで表される、置換基として少なくともニトロ基を有する芳香族基が4−ニトロフェニル基又は2,4−ジニトロフェニル基である請求項1又は2記載の慢性炎症性疾患治療剤。
【請求項4】
慢性炎症性疾患が2型糖尿病である請求項1〜3のいずれか1項に記載の慢性炎症性疾患治療剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【公開番号】特開2012−46453(P2012−46453A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190708(P2010−190708)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(505156709)株式会社ステリック再生医科学研究所 (16)
【Fターム(参考)】