説明

慢性骨髄性白血病を診断する方法

慢性骨髄性白血病(CML)を検出および診断する客観的な方法を本明細書において記載する。一つの態様において、本診断法は、CML細胞と正常細胞とを識別するCML関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む。本発明は、CMLの治療において有用な治療薬剤をスクリーニングする方法、CMLを治療する方法、およびCMLに対するワクチンを被験者に接種する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、慢性骨髄性白血病を診断する方法に関する。
【0002】
優先権に関する情報
本出願は、2002年9月30日に提出された米国特許仮出願第60/414,867号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
慢性骨髄性白血病(CML)は、フィラデルフィア(Ph)染色体転座を特徴とするクローン性の骨髄増殖性疾患である(1)。その結果生じるBCR-ABL融合遺伝子は、チロシンキナーゼ活性が構成的に活性化されている細胞質タンパク質をコードする。CMLは、異なる臨床病期を介して進行し;慢性期と呼ばれる最も初期の段階は、最終分化好中球の増加を特徴とする。急性期は加速期および急性転化期(blast crisis)と呼ばれ、過剰数の未分化の骨髄前駆細胞またはリンパ前駆細胞を伴う成熟停止を特徴とする(2)。現在の治療には、造血幹細胞移植(SCT)、およびインターフェロン-α(IFN-α)を含む化学療法が含まれる(3)。IFN-αは、全体的な生存を延長させるが、かなりの副作用を有する。SCTは、治癒効果のある唯一の治療であるが、実質有病率に関連し、適したドナーを有する患者に限定される。
【0004】
ABL選択的チロシンキナーゼ阻害剤STI571(イマニチブ;グリベック;ノバルティス(Novartis)、バーゼル、スイス)が開発されたことは、CMLの管理における著しい進歩である(4,5)。STI571は、しばしばこれらの臨床状況において顕著な血液学的および細胞遺伝学的応答を誘導する。しかし、CMLにおけるSTI571による最近の臨床試験では、進行期の多くの患者が良好に応答するものの、その後再発することが示された(6,7)。BCR-ABL遺伝子の発現の増強または変異によるSTI571に対する耐性がCML患者において認められている(8,9)。実際にSTI571による血液学的応答はそれほど頻繁には起こらず、急性転化期でのCML患者ではあまり持続しない。
【0005】
cDNAマイクロアレイ技術によって、正常および悪性細胞における包括的遺伝子発現プロファイルを得て、悪性細胞および対応する正常細胞における遺伝子発現を比較することが可能となった(Okabeら、Cancer Res. 61:2129〜37(2001);Kitaharaら、Cancer Res. 61:3544〜9(2001);Linら、Oncogene 21:4120〜8(2002);Hasegawaら、Cancer Res. 62:7012〜7(2002))。このアプローチにより、癌細胞の複雑な特性を明らかにすることが可能となり、これは発癌のメカニズムを理解するために役立つ。腫瘍において脱制御される遺伝子を同定することによって、個々の癌のより精密で正確な診断を得ることができ、新規治療標的を開発することができる(Bienz and Clevers、Cell 103:311〜20(2000))。ゲノム全体での観点から腫瘍の基礎となるメカニズムを明らかにするため、そして診断のための標的分子の発見および新規治療薬を開発するために、本発明者らは、遺伝子23040個のcDNAマイクロアレイを用いて腫瘍細胞の発現プロファイルを解析している(Okabeら、Cancer Res. 61:2129〜37(2001);Kitaharaら、Cancer Res. 61:3544〜9(2001);Linら、Oncogene 21:4120〜8(2002);Hasegawaら、Cancer Res. 62:7012〜7(2002))。
【0006】
発癌メカニズムを解明するように計画された研究によって、抗腫瘍薬剤の分子標的の同定が既に促進されている。例えば、Rasに関連する増殖-シグナル伝達経路を阻害するように当初開発されたファルネキシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)(この活性は翻訳後のファルネシル化に依存する)は、動物モデルにおいてRas依存的腫瘍を治療するために有効である(Heら、Cell 99:335〜45(1999))。抗癌剤と、原癌遺伝子受容体HER2/neuに拮抗するための抗HER-2モノクローナル抗体であるトラスツズマブとの組み合わせを用いるヒトに対する臨床試験が実施されており、乳癌患者の臨床応答および総生存率の改善が得られている(Linら、Cancer Res. 61:6345〜9(2001))。bcr-abl融合タンパク質を選択的に不活化するチロシンキナーゼ阻害剤STI-571は、bcr-ablチロシンキナーゼの構成的活性化が白血球の形質転換において重要な役割を果たしている慢性骨髄性白血病を治療するために開発されている。これらの種類の薬剤は、特定の遺伝子産物の発癌活性を抑制するように設計されている(Fujitaら、Cancer Res. 61:7722〜6(2001))。したがって、癌性細胞において一般的に上方制御されている遺伝子産物は、新規抗癌剤を開発するための潜在的な標的として役立つ可能性がある。
【0007】
CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)は、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識して、腫瘍細胞を溶解することが証明されている。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されて以来、免疫学的アプローチを用いて他にも多くのTAAが発見されている(Boon、Int. J. Cancer 54:177〜80(1993);Boonおよびvan der Bruggen、J. Exp. Med. 183:725〜9(1996);van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991);Brichardら、J. Exp. Med.178:489〜95(1993);Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994))。発見されたTAAのいくつかは、現在免疫治療の標的として臨床開発段階にある。これまで発見されたTAAには、MAGE(van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991))、gp100(Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994))、SART(Shichijoら、J. Exp. Med. 187:277〜88(1998)、およびNY-ESO-1(Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1914〜8(1997))が含まれる。一方、腫瘍細胞において特に過剰発現されることが示されている遺伝子産物は、細胞性免疫応答を誘導する標的として認識されることが示されている。そのような遺伝子産物には、p53(Umanoら、Brit. J. Cancer 84:1052〜7(2001))、HER2/neu(Tanakaら、Brit. J. Cancer 84:94〜9(2001))、CEA(Nukayaら、Int. J. Cancer 80:92〜7(1999))等が含まれる。
【0008】
TAAに関する基礎および臨床研究における著しい進歩にもかかわらず(Rosenbergら、Nature Med. 4:321〜7(1998);Mukherjiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:8078〜82(1995);Huら、Cancer Res. 56:2479〜83(1996))、結腸癌を含む腺癌の治療に利用できるのは、ごく限られた数の候補TAAに過ぎない。癌細胞において豊富に発現されると共にその発現が癌細胞に限定されるTAAは、免疫療法の標的として有望な候補薬剤となるであろう。さらに、強力で特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する新規TAAが同定されれば、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン法の臨床利用を促進すると期待される(Boonおよびvan der Bruggen、J. Exp. Med. 183:725〜9(1996);van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991);Brichardら、J. Exp. Med.178:489〜95(1993);Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994);Shichijoら、J. Exp. Med. 187:277〜88(1998);Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1914〜8(1997);Harris、J. Natl. Cancer Inst. 88:1442〜5(1996);Butterfieldら、Cancer Res. 59:3134〜42(1999);Vissersら、Cancer Res. 59:5554〜9(1999);van der Burgら、J. Immunol. 156:3308〜14(1996);Tanakaら、Cancer Res. 57:4465〜8(1997);Fujieら、Int. J. Cancer 80:169〜72(1999);Kikuchiら、Int. J. Cancer 81:459〜66(1999);Oisoら、Int. J. Cancer 81:387〜94(1999))。
【0009】
特定の健康なドナーからのペプチド刺激された末梢血単核球細胞(PBMC)は、ペプチドに応答して有意なIFN-γレベルを産生するが、51Cr-放出分析においてHLA-A24または-A0201拘束的に腫瘍細胞に対して細胞障害性を発揮することはまれであることは繰り返し報告されている(Kawanoら、Cancer Res. 60:3550〜8(2000);Nishizakaら、Cancer Res. 60:4830〜7(2000);Tamuraら、Jpn. J. Cancer Res. 92:762〜7(2001))。しかし、HLA-A24およびHLA-A0201はいずれも、白人のみならず、日本人における一般的なHLA対立遺伝子の一つである(Dateら、Tissue Antigens 47:93〜101(1996);Kondoら、J. Immunol. 155:4307〜12(1995);Kuboら、J. Immunol. 152:3913〜24(1994);Imanishiら、Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference、オックスフォード大学出版、オックスフォード、1065(1992);Williamsら、Tissue Antigen 49:129(1997))。このように、これらのHLAによって提示される癌の抗原性ペプチドは、日本人および白人における癌の治療において特に有用となる可能性がある。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は、通常、高濃度のペプチドの使用によって、高レベルの特異的なペプチド/MHC複合体を、CTLを効果的に活性化する抗原提示細胞(APCs)上に生成する結果であろうことは知られている(Alexander-Millerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:4102〜7(1996))。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、CMLに関連した遺伝子発現パターンの発見に基づく。CMLにおいて発現に差のある遺伝子は、本明細書において集合的に「CML核酸」または「CMLポリヌクレオチド」と呼ばれ、対応するコードされたポリペプチドは、「CMLポリペプチド」または「CMLタンパク質」と呼ばれる。
【0011】
したがって本発明は、末梢血試料または骨髄細胞試料のような、患者に由来する生物学的試料においてCML関連遺伝子の発現レベルを決定することによって、被験者におけるCMLに対する素因を診断または決定する方法を特徴とする。CML関連遺伝子とは、正常末梢血細胞と比較して、フィラデルフィア(Ph)染色体転座を含む細胞、またはCMLの臨床症状を示す個体から得られた細胞において発現レベルが異なることを特徴とする遺伝子を意味する。CML関連遺伝子は、CML 1〜296の一つまたは複数である。変化、例えば遺伝子の正常対照レベルと比較して遺伝子の発現レベルが増加または減少すれば、被験者がCMLを罹患しているか、または発症のリスクを有することを示している。
【0012】
正常な対照レベルとは、正常な健康個体またはCMLを罹患していないことがわかっている個体集団において検出された遺伝子発現レベルを意味する。対照レベルは、単一の参照集団または複数の発現パターンに由来する単一の発現パターンである。例えば、対照レベルは、既に試験された細胞からの発現パターンのデータベースでありうる。正常な個体は、CMLの臨床症状を有しない個体である。
【0013】
正常対照レベルと比較して被験試料においてCML 1〜190のレベルの増加が検出されれば、(試料を採取した)被験者がCMLを罹患しているか、または発症するリスクを有することを示している。対照的に、正常な対照レベルと比較して被験試料においてCML 191〜296レベルの減少が検出されれば、被験者がCMLを罹患しているか、または発症のリスクを有することを示している。
【0014】
または、試料におけるCML関連遺伝子パネルの発現を、同じ遺伝子パネルのCML対照レベルと比較する。CML対照レベルとは、CMLを罹患している集団において認められるCML関連遺伝子の発現プロファイルを意味する。
【0015】
遺伝子発現は、対照レベルと比較して10%、25%、50%増加または減少する。または、遺伝子発現は、対照レベルと比較して1、2、5倍またはそれ以上増加または減少する。発現は、例えばアレイ上で、CML関連遺伝子プローブと患者由来細胞試料の遺伝子転写物とのハイブリダイゼーションによって検出することによって決定される。
【0016】
患者由来細胞試料は、試験被験者、例えばCMLを罹患していることがわかっているかまたは疑われる患者からの任意の細胞である。例えば、試料は末梢血由来の単核細胞の混合物を含む。
【0017】
本発明はまた、CML 1〜296の二つまたはそれ以上の遺伝子発現レベルのCML参照発現プロファイルを提供する。または、本発明は、CML 1〜190またはCML 191〜296の二つまたはそれ以上の発現レベルのCML参照発現プロファイルを提供する。
【0018】
本発明はさらに、CML関連遺伝子を発現する被験細胞を被験薬剤に接触させる段階、およびCML関連遺伝子の発現レベルを決定する段階によって、CML関連遺伝子、例えばCML 1〜296の発現または活性を阻害または増強する薬剤を同定する方法を提供する。被験細胞は、CML患者の末梢血由来の単核細胞のような単核細胞である。遺伝子の正常な対照レベルと比較してレベルが減少すれば、被験薬剤がCML関連遺伝子の阻害剤であり、CMLの症状、例えばCML 1〜190を減少させることを示している。または、遺伝子の正常対照レベルまたは活性と比較してレベルまたは活性が増加すれば、その被験薬剤が、CML関連遺伝子の発現または機能の増強剤であり、CMLの症状を減少させる(例えばCML 191〜296を増加させる)ことを示している。
【0019】
本発明はまた、二つもしくはそれ以上のCML核酸配列に結合するか、または核酸配列にコードされる遺伝子産物に結合する検出試薬を有するキットを提供する。同様に、二つまたはそれ以上のCML核酸に結合する核酸のアレイも提供する。
【0020】
治療法には、被験者にアンチセンス組成物を投与することによって被験者におけるCMLを治療または予防する方法が含まれる。アンチセンス組成物は、特異的標的遺伝子の発現を減少させる。例えばアンチセンス組成物は、CML 1〜190からなる群より選択される配列と相補的であるヌクレオチドを含む。もう一つの方法には、短鎖干渉RNA(siRNA)組成物を被験者に投与する段階が含まれる。siRNA組成物は、CML 1〜190からなる群より選択される核酸の発現を減少させる。もう一つの方法において、被験者におけるCMLの治療または予防は、被験者にリボザイム組成物を投与することによって行われる。核酸特異的リボザイム組成物は、CML 1〜190からなる群より選択される核酸の発現を減少させる。他の治療法には、CML 191〜296の発現またはCML 191〜296にコードされるポリペプチドの活性を増加させる化合物を被験者に投与する方法が含まれる。さらに、CMLはCML 191〜296にコードされるタンパク質を投与することによって治療することができる。タンパク質は患者に直接投与してもよく、または、例えば対象の下方制御されたマーカー遺伝子を保持する発現ベクターもしくは宿主細胞を投与することによって患者に導入した後、インビボで発現させてもよい。対象遺伝子をインビボで発現させるための適切な機構は、当技術分野において既知である。
【0021】
本発明にはまた、ワクチンおよびワクチン接種法が含まれる。例えば、被験者におけるCMLを治療または予防する方法は、CML 1〜190からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドまたはそのようなポリペプチドの免疫学的活性断片を含むワクチンを被験者に投与することによって行われる。免疫学的活性断片は、完全長の天然に存在するタンパク質より長さが短く、免疫応答を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的活性断片は、長さが少なくとも8残基であって、T細胞またはB細胞のような免疫細胞を刺激する。免疫細胞の刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)の産生、または抗体の産生を検出することによって測定される。
【0022】
特に定義していなければ、本明細書において用いた科学技術用語は全て、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験において用いることができるが、適した方法および材料を下記に記載する。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は、一例に過ぎず、制限することを意図しない。
【0023】
本明細書に記載の方法の一つの長所は、最終分化した好中球の増殖のような明白な臨床症状を検出する前に疾患が同定されることである。本発明のその他の特徴および長所は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0024】
詳細な説明
本発明は、慢性骨髄性白血病(CML)患者の末梢血由来の単核球において、複数の核酸配列の発現パターンの変化を発見したことに一部基づいている。遺伝子発現の差は、包括的cDNAマイクロアレイシステムを用いて同定した。
【0025】
遺伝子23,040個を含むcDNAマイクロアレイを用いて、包括的遺伝子発現プロフィールを27例のCMLについて得た。遺伝子296個が、末梢血由来の単核球において発現に差のあることが判明した。結果は、特定の遺伝子がCMLにおいて低いまたは高いレベルで発現されることを示している。患者の血液、血清、または喀痰においてCML関連タンパク質を検出する可能性を有する候補分子マーカーについて選択を行い、CMLにおけるシグナル抑制手法を開発するための潜在的ないくつかの標的を発見した。
【0026】
本明細書において同定された発現差のある遺伝子は、CMLのマーカーとして、およびその発現がCMLの症状を治療または軽減するために改変される遺伝子標的として、診断目的のために用いられる。
【0027】
CML患者においてその発現レベルが変調している(すなわち、増加または減少している)遺伝子を、表3〜4に要約し、本明細書において集合的に「CML関連遺伝子」「CML核酸」、または「CMLポリヌクレオチド」と呼び、対応するコードされたポリペプチドを「CMLポリペプチド」または「CMLタンパク質」と呼ぶ。特に明記していなければ、「CML」は、本明細書に開示の任意の配列(例えば、CML 1〜296)を指すことを意味する。遺伝子は、以前に記載されており、データベースのアクセッション番号とともに示される。
【0028】
細胞試料における様々な遺伝子の発現を測定することによって、CMLが診断される。同様に、様々な薬剤に応答したこれらの遺伝子の発現を測定することによって、CMLを治療するための薬剤を同定することができる。
【0029】
本発明は、表3〜4に記載したCML配列の少なくとも一つから全てまでの発現を決定する(例えば、測定する)ことを含む。既知の配列に関するGenBank(登録商標)データベース登録項目に提供された配列情報を用いて、CML関連遺伝子を当業者に周知である技術を用いて検出および測定する。例えば、CML配列に対応する配列データベース登録項目内の配列を用いて、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション解析においてCML RNA配列を検出するためのプローブを構築する。プローブには、参照配列の少なくとも10、20、50、100、200ヌクレオチドが含まれる。もう一つの例として、配列を用いて、例えば、逆転写を利用したポリメラーゼ連鎖反応のような増幅に基づく検出法においてCML配列を特異的に増幅するためのプライマーを構築することができる。
【0030】
次に、被験細胞集団、例えば患者由来の細胞試料におけるCML配列の一つまたは複数の発現レベルを、参照集団における同じ配列の発現レベルと比較する。参照細胞集団には、比較されるパラメータが既知である一つまたは複数の細胞、すなわち、CML細胞または非CML細胞が含まれる。
【0031】
参照細胞集団と比較した被験細胞集団における遺伝子発現がCMLまたはそれに対する素因を示すか否かは、参照細胞集団の組成に依存する。例えば、参照細胞集団が非CML細胞からなる場合、被験細胞集団と参照細胞集団とにおける遺伝子発現パターンが類似であれば、被験細胞集団が非CMLであることを示している。逆に、参照細胞集団がCML細胞で構成されている場合、被験細胞集団と参照細胞集団のあいだの遺伝子発現プロファイルが類似であれば、被験細胞集団にCML細胞が含まれることを示している。
【0032】
被験細胞集団におけるCMLマーカー遺伝子の発現レベルは、発現レベルが、参照細胞集団における対応するCML配列の発現レベルから1.0、1.5、2.0、5.0、10.0倍またはそれ以上参照細胞集団と異なる場合、発現レベルが変化していると見なされる。
【0033】
被験細胞集団と参照細胞集団との遺伝子発現の差を、対照核酸、例えばハウスキーピング遺伝子に対して標準化する。例えば、対照核酸は、細胞のCML状態または非CML状態に応じて差がないことが知られている核酸である。被験核酸および参照核酸における対照核酸の発現レベルを用いて、比較される集団におけるシグナルレベルを標準化することができる。対照遺伝子には、β-アクチン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、またはリボソームタンパク質P1が含まれる。
【0034】
被験細胞集団を複数の参照細胞集団と比較する。複数の参照集団のそれぞれは、既知のパラメータが異なってもよい。このように、被験細胞集団を、例えばCML細胞を含むことがわかっている第一の参照細胞集団と共に、例えば非CML細胞(正常細胞)を含むことがわかっている第二の参照集団と比較してもよい。被験細胞は、CML細胞を含むことがわかっているか、または含むことが疑われる被験者からの組織タイプまたは細胞試料に含まれる。
【0035】
被験細胞は、生体組織または体液、例えば生物学的液体(血液または喀痰)から得る。例えば、被験細胞は組織から精製される。好ましくは、被験細胞集団は単核細胞を含む。
【0036】
参照細胞集団における細胞は、被験細胞と類似の組織タイプに由来する。選択的に、参照細胞集団は、細胞株、例えばCML細胞株(陽性対照)または正常な非CML細胞株(陰性対照)である。または、対照細胞集団は、分析されるパラメータまたは条件が既知である細胞に由来する分子情報のデータベースに由来する。
【0037】
被験対象は好ましくは哺乳類である。哺乳類は、例えばヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシでありうる。
【0038】
本明細書に開示される遺伝子の発現は、当技術分野において既知の任意の方法を用いてRNAレベルで決定される。例えば、これらの配列の一つまたは複数を特異的に認識するプローブを用いるノーザンハイブリダイゼーション解析を用いて、遺伝子発現を決定することができる。または、発現は、例えば発現に差のある配列に対して特異的なプライマーを用いて、逆転写を利用したPCR分析を用いて測定される。発現はまた、タンパク質レベルで、すなわち本明細書に記載の遺伝子産物にコードされるポリペプチドのレベルまたはその生物学的活性を測定することによって決定される。そのような方法は当技術分野で周知であり、例えば遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体を利用した免疫学的分析が含まれる。遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性も同様に周知である。
【0039】
CMLの診断
CMLは、被験細胞集団(すなわち患者に由来する生物学的試料)からの一つまたは複数のCML核酸配列の発現レベルを測定することによって診断される。好ましくは、被験細胞集団は、単核細胞、例えば末梢血から得た細胞を含む。他の生物学的試料は、タンパク質レベルを測定するために用いることができる。例えば、診断される被験者に由来する血液、または血清におけるタンパク質レベルは、免疫学的分析または生物学的分析によって測定することができる。
【0040】
一つまたは複数のCML関連遺伝子、例えばCML 1〜296の発現を、被験細胞または生物学的試料において決定して、正常対照レベルの発現と比較する。正常対照レベルは、CMLを罹患していないことがわかっている集団において典型的に認められるCML関連遺伝子の発現プロファイルである。CML関連遺伝子の患者由来組織試料における発現レベルが増加または減少すれば、被験者がCMLを罹患しているか、またはCML発症のリスクを有することを示している。例えば、正常対照レベルと比較して被験集団におけるCML 1〜190のレベルが増加すれば、被験者がCMLを罹患しているか、またはCML発症のリスクを有することを示している。逆に、正常対照レベルと比較して被験集団におけるCML 191〜296の発現が減少すれば、被験者がCMLを罹患しているか、または発症のリスクを有することを示している。
【0041】
一つまたは複数のCML関連遺伝子が、正常対照レベルと比較して被験集団において変化している場合、被験者がCMLを罹患しているか、またはCML発症のリスクを有することを示している。例えば、CML関連遺伝子のパネル(CML 1〜190、CML 191〜296、またはCML 1〜296)の少なくとも1%、5%、25%、50%、60%、80%、90%またはそれ以上が変化している。
【0042】
CML関連遺伝子の発現を阻害または増強する薬剤の同定
CML関連遺伝子の発現または活性を阻害する薬剤は、上方制御されたCML関連遺伝子を発現する被験細胞集団を被験薬剤に接触させ、CML関連遺伝子の発現レベルを決定することによって同定される。対照レベルと比較して(または被験薬剤の非存在下でのレベルと比較して)薬剤の存在下で発現が減少すれば、その薬剤が上方制御されたCML関連遺伝子の阻害剤であり、CMLを阻害するのに有用であることを示している。
【0043】
または、下方制御されたCML関連遺伝子の発現または活性を増強する薬剤は、CML関連遺伝子を発現する被験細胞集団を被験薬剤に接触させ、下方制御されたCML関連遺伝子の発現レベルまたは活性を決定することによって同定される。CML関連遺伝子の対照レベルまたは活性と比較して発現または活性が増加すれば、被験薬剤が下方制御されたCML関連遺伝子の発現または活性を増強することを示している。
【0044】
被験細胞集団は、CML関連遺伝子を発現する任意の細胞である。例えば、被験細胞集団は単核細胞を含み、そのような細胞は末梢血から単離される。または、被験細胞は、CML関連遺伝子をトランスフェクトした細胞、またはレポーター遺伝子を制御可能なように連結したCML関連遺伝子の調節配列(例えば、プロモーター配列)をトランスフェクトした細胞である。
【0045】
被験者におけるCML治療の有効性の評価
本明細書において同定された発現差のあるCML配列によって、CMLの治療経過をモニターすることもできる。この方法において、被験細胞集団は、CMLの治療を受けている被験者から提供される。望ましければ、被験細胞集団は、治療前、治療中、または治療後の様々な時点で被験者から得られる。次に、細胞集団における一つまたは複数のCML配列の発現を決定して、CML状態が既知である細胞を含む参照細胞集団と比較する。参照細胞は治療を受けていない。
【0046】
参照細胞集団がCML細胞を含まない場合、被験細胞集団と参照細胞集団におけるCML配列の発現が類似であれば、治療が有効であることを示している。しかし、被験集団と正常対照参照細胞集団におけるCML配列の発現に差があれば、あまり好ましくない臨床転帰または予後を示している。
【0047】
「有効」とは、治療によって、病理学的に上方制御された遺伝子の発現が減少するか、病理学的に下方制御された遺伝子の発現が増加するか、または被験者における白血病性幹細胞およびその分裂性の後代細胞(すなわち、顆粒球、赤血球、および巨核球の前駆体)が減少することを意味する。治療を予防的に適用する場合、「有効である」とは、臨床的なCMLの症状を遅らせるか、予防することを意味する。例えば、治療によって慢性期、急性期、または加速期の症状を阻害する。CMLの評価は、標準的な臨床プロトコールを用いて行われる。
【0048】
有効性は、CMLを診断または治療するための任意の既知の方法に関連して決定される。CMLは、症候性の異常、例えば、貧血、代謝亢進、疲れやすさ、虚弱、体重減少、および食欲不振を同定することによって診断される。CMLの他の特徴には、脾腫、血小板増加症、および顆粒球におけるアルカリホスファターゼのほぼ完全な欠如が含まれる。患者はまた、白血球数の顕著な増加を示し、循環中の細胞は主に好中球および後骨髄球であったが、好塩基球および好酸球も同様に顕著である可能性がある。さらにPh1(フィラデルフィア)染色体が、CML患者の約90%の多能性骨髄幹細胞(すなわち、顆粒球前駆体、赤血球前駆体、および巨核球前駆体)およびリンパ系細胞(すなわち、B細胞)の分裂子孫に存在する。
【0049】
特定の個体にとって適切なCML治療用の治療薬剤の選択
個体における遺伝的構成の差によって、個体が様々な薬剤を代謝する相対的能力に差が起こりうる。被験者において代謝されて抗CML薬剤として作用する薬剤は、被験者の細胞において、CML状態に特徴的な遺伝子発現パターンから非CML状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの変化を誘導することによって顕在化しうる。したがって、薬剤が被験者において適した抗CML薬剤であるか否かを決定するために、本明細書に開示される発現差のあるCML配列によって、選択された被験者からの被験細胞集団において、治療効果があるまたは予防効果があると推定されるCML阻害剤が適切かどうかを調べることができる。
【0050】
特定の被験者にとって適当であるCMLの阻害剤または増強剤を同定するために、被験者からの被験細胞集団を治療薬剤に曝露して、CML 1〜296配列の一つまたは複数の発現を決定する。
【0051】
被験細胞集団は、CML関連遺伝子を発現するCML細胞を含む。好ましくは、被験細胞は単核細胞である。例えば、被験細胞集団を候補薬剤の存在下でインキュベートし、被験試料の遺伝子発現パターンを測定して、一つまたは複数の参照プロファイル、例えばCML参照発現プロファイルまたは非CML参照発現プロファイルと比較する。
【0052】
CMLを含む参照細胞集団と比較して、被験細胞集団におけるCML 1〜190の配列の一つもしくは複数の発現が減少するか、またはCML 191〜296の配列の一つもしくは複数の発現が増加すれば、薬剤が治療効果があることを示している。
【0053】
被験薬剤はいかなる化合物または組成物であってよい。例えば、被験薬剤は造血性前駆体の増殖および分化を制御する薬剤である。
【0054】
治療薬剤を同定するためのスクリーニング分析
本明細書に開示される発現差のある配列はまた、CMLを治療するための候補治療薬剤を同定するためにも用いることができる。この方法は、候補治療薬剤をスクリーニングし、その薬剤がCML状態に特徴的なCML 1〜296の配列の発現プロファイルを非CML状態を示すパターンに変換させるか否かを決定することに基づく。
【0055】
この方法において、細胞を、被験薬剤または被験薬剤の組み合わせ(連続的または結果的に)に曝露して、細胞における一つまたは複数のCML 1〜296の配列の発現を測定する。被験集団におけるCML配列の発現プロファイルを、被験薬剤に曝露していない参照細胞集団におけるCML配列の発現レベルと比較する。
【0056】
過小発現された遺伝子の発現を刺激するために、または過剰発現された遺伝子の発現を抑制するために有効な薬剤は、臨床上の利益をもたらすと思われ、そのような化合物を、骨髄幹細胞量の増加、または白血病性幹細胞の成熟を予防する能力に関してさらに試験する。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、CMLの治療における潜在的な標的である候補薬剤をスクリーニングする方法を提供する。先に詳細に考察したように、マーカー遺伝子の発現レベルまたは活性を制御することによって、CMLの発症および進行を制御することができる。このように、CMLの治療における潜在的な標的である候補薬剤は、マーカー遺伝子の発現レベルおよび活性を指標として用いるスクリーニングによって同定することができる。本発明の状況において、そのようなスクリーニングは、例えば以下の段階を含んでよい:
a)CML 1〜296にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)ポリペプチドと被験化合物との結合活性を検出する段階;および
c)ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【0058】
または、本発明のスクリーニング法は、以下の段階を含んでもよい:
a)CML 1〜296からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる段階;および
b)CML 1〜190からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを減少させるか、またはCML 191〜296からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを上昇させる化合物を選択する段階。
マーカー遺伝子を発現する細胞には、例えばCMLから確立された細胞株が含まれ;そのような細胞は本発明の上記のスクリーニングに用いることができる。
【0059】
または、本発明のスクリーニング法は、以下の段階を含んでもよい:
a)CML 1〜296からなる群より選択される遺伝子にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
c)被験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較して、CML 1〜190にコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制するか、または被験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較して、CML 191〜296にコードされるポリペプチドの生物学的活性を増強する化合物を選択する段階。
【0060】
スクリーニングに必要なタンパク質は、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列を用いて、組み換え型タンパク質として得ることができる。マーカー遺伝子の情報に基づいて、当業者は、タンパク質の任意の生物学的活性を選択し、選択された生物学的活性に基づいて、スクリーニングおよび測定法を行うことができる。
【0061】
または、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含んでもよい:
a)CML 1〜296からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子の転写調節領域と、転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に候補化合物を接触させる段階;
b)該レポーター遺伝子の活性を測定する段階;および
c)該マーカー遺伝子がCML 1〜190からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合には、対照と比較して該レポーター遺伝子の発現レベルを減少させる化合物、または該マーカー遺伝子がCML 191〜296からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合には、対照と比較して該レポーター遺伝子の発現レベルを増強する化合物を選択する段階。
【0062】
適したレポーター遺伝子および宿主細胞は当技術分野で周知である。スクリーニングのために必要なレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写調節領域を用いて調製することができる。マーカー遺伝子の転写調節領域が当業者に既知である場合、レポーター構築物は、これまでの配列情報を用いて調製することができる。マーカー遺伝子の転写調節領域がまだ同定されていない場合、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づいて、転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントをゲノムライブラリから単離することができる。
【0063】
スクリーニングによって単離された化合物は、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害し、かつCMLの治療または予防に適用することができる候補薬物である。
【0064】
その上、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害する化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換されている化合物も同様に、本発明のスクリーニング法によって得ることができる化合物に含まれる。
【0065】
本発明の方法によって単離された化合物をヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーのような他の哺乳類のための薬剤として投与する場合、単離された化合物を直接投与してもよく、または既知の薬学的調製法を用いて投与剤形に調製してもよい。例えば、必要に応じて、薬物は、糖衣錠、カプセル剤、エリキシル剤およびマイクロカプセルとして経口摂取されるか、または水もしくは他の任意の薬学的に許容される液体との滅菌溶液もしくは懸濁液の注射剤形で非経口摂取されうる。例えば、化合物は、薬学的に許容される担体または媒体、具体的には滅菌水、生理食塩液、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、着香料、賦形剤、溶剤、保存剤、結合剤などと共に、一般的に許容される投薬実施に必要な単位投与剤形で混合することができる。これらの調製物における活性成分の量によって、指示範囲内の適した用量を得ることができる。
【0066】
錠剤およびカプセル剤に混合することができる添加剤の例は、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、およびアラビアゴムのような結合剤;結晶セルロースのような賦形剤;コーンスターチ、ゼラチンおよびアルギン酸のような膨張剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ショ糖、乳糖、またはサッカリンのような甘味料;ならびにペパーミント、アカモノ油、およびチェリーのような着香料である。単位投与剤形がカプセル剤である場合、油のような液体担体も同様に上記の成分にさらに含めることができる。注射用滅菌組成物は、注射用蒸留水のような溶剤を用いて通常の投薬実施に従って調製することができる。
【0067】
生理食塩液、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウムのような補助剤を含む他の等張液は、注射用水溶液として用いることができる。これらは、アルコール、特にエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール、ポリソルベート80(商標)およびHCO-50のような非イオン性界面活性剤のような適した溶解剤と共に用いることができる。
【0068】
ゴマ油または大豆油を油脂性液体として用いることができ、かつ安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールを溶解剤として共に用いてもよく、リン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝液;塩酸プロカインのような鎮痛剤;ベンジルアルコールおよびフェノールのような安定化剤、ならびに抗酸化剤と共に調製してもよい。調製された注射剤は適したアンプルに充填してもよい。
【0069】
当業者に周知の方法を用いて、本発明の薬学的組成物を患者に、例えば動脈内、静脈内、または経皮注射として投与してもよく、同様に鼻腔内、気管支内、筋肉内、または経口投与としても投与してもよい。投与の用量および方法は、患者の体重および年齢ならびに投与法に応じて変化する;しかし、当業者は、適した投与法を日常的に選択することができる。該化合物がDNAによってコードされうる場合、DNAを遺伝子治療のベクターに挿入して、治療を行うためにベクターを患者に投与することができる。投与の用量および方法は、患者の体重、年齢、および症状に応じて変化するが、当業者はそれらを適切に選択することができる。
【0070】
例えば、本発明のタンパク質に結合してその活性を調節する化合物の用量は、症状に依存するが、用量は、正常な成人(体重60 kg)に経口投与する場合、約0.1 mg〜約100 mg/日、好ましくは約1.0 mg〜約50 mg/日、より好ましくは約1.0 mg〜約20 mg/日である。
【0071】
正常な成人(体重60 kg)に注射剤形で非経口投与する場合、患者、標的臓器、症状および投与法によって多少の差があるが、約0.01 mg〜約30 mg/日、好ましくは約0.1〜約20 mg/日、およびより好ましくは約0.1〜約10 mg/日を静脈内注射することが都合がよい。同様に、他の動物の場合においても、体重60 kgに変換した量を投与することが可能である。
【0072】
CMLを有する被験者の予後の評価
被験細胞集団における一つまたは複数のCML配列の発現を、患者に由来する参照細胞集団における遺伝子の発現と、諸病期について比較することによって、CMLを有する被験者の予後を評価する方法も同様に提供される。被験細胞集団と参照細胞集団における一つもしくは複数のCML配列の遺伝子発現を比較することによって、または被験者に由来する被験細胞集団における経時的な遺伝子発現パターンを比較することによって、被験者の予後を評価することができる。
【0073】
正常対照と比較してCML 191〜296の配列の一つもしくは複数の発現の減少、または正常対照と比較してCML 1〜190の配列の一つもしくは複数の発現の増加は、予後があまり好ましくないことを示している。CML 191〜296の配列の一つまたは複数の発現が増加すれば、より好ましい予後を示し、CML 1〜190の配列の発現が減少すれば、被験者にとってより好ましい予後を示している。
【0074】
キット
本発明にはまた、CML検出試薬、例えばオリゴヌクレオチド配列のような一つまたは複数のCML核酸に特異的に結合するか、またはこれを同定する核酸であって、CML核酸の一部と相補的である核酸またはCML核酸にコードされるタンパク質に結合する抗体とが含まれる。試薬は、キットの形で共に包装される。試薬、例えば核酸または抗体(固相マトリクスに結合させるか、またはそれらをマトリクスに結合させるための試薬とは別に包装される)、対照試薬(陽性および/または陰性)、ならびに/または検出標識は異なる容器に包装される。分析を行うための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)がキットに含まれる。キットの分析フォーマットは、当技術分野で既知のノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAである。
【0075】
例えば、CML検出試薬は、少なくとも一つのCML検出部位を形成するために多孔性ストリップのような固相マトリクスに固定する。多孔性ストリップの測定または検出領域には、核酸を含む多数の部位が含まれてもよい。試験ストリップはまた、陰性および/または陽性対照のための部位を含んでもよい。または、対照部位は、試験ストリップとは異なるストリップに存在する。任意で、異なる検出部位は、異なる量の固定された核酸を含んでもよく、すなわち第一の検出部位はより多い量を含み、それに続く部位ではより少ない量を含んでもよい。被験試料を加えると、検出可能なシグナルを示す部位の数が、試料に存在するCMLの量の定量的指標を提供する。検出部位は、任意の適した検出可能な形状で構成されてもよく、典型的に試験ストリップの幅に及ぶバーまたはドットの形状である。
【0076】
または、キットは、一つまたは複数の核酸配列を含む核酸基質アレイを含む。アレイ上の核酸は、CML 1〜296によって示される一つまたは複数の核酸配列を特異的に同定する。CML 1〜296によって表される配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上の発現は、アレイ試験ストリップまたはチップへの結合レベルによって同定される。基質アレイは、例えば固相基質上、例えば米国特許第5,744,305号に記載される「チップ」上に存在しうる。
【0077】
アレイと複数性
本発明にはまた、一つまたは複数の核酸配列を含む核酸基質アレイも含まれる。アレイ上の核酸は、CML 1〜296によって示される一つまたは複数の核酸配列に特異的に対応する。CML 1〜296によって表される配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上の発現レベルは、アレイに結合する核酸を検出することによって同定される。
【0078】
本発明にはまた、単離された複数の核酸配列(すなわち、二つまたはそれ以上の核酸の混合物)が含まれる。核酸配列は、液相または固相に存在し、例えばニトロセルロースメンブレンのような固相支持体に固定される。複数には、CML 1〜296によって示される核酸配列の一つまたは複数が含まれる。様々な態様において、複数には、CML 1〜296によって表される配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上が含まれる。
【0079】
CMLを阻害する方法
本発明は、CML 1〜190の発現もしくは活性を減少させること、またはCML 191〜296の発現もしくは活性を増加させることによって、被験者におけるCMLの症状を治療または軽減する方法を提供する。治療化合物は、CMLを罹患しているか、または発症のリスクを有する(または感受性がある)被験者に対して予防または治療目的で投与される。そのような被験者は、標準的な臨床的方法を用いて、または例えばCML 1〜296の発現もしくは活性の異常なレベルを検出することによって同定される。治療薬剤には、細胞周期調節、細胞増殖、およびタンパク質キナーゼ活性の阻害剤が含まれる。好ましくは、キナーゼ活性の阻害剤はSTI571ではない。または、STI571はCML1〜296の阻害剤の一つまたは複数と共に投与される。
【0080】
治療法には、CML細胞が由来する同じ細胞型の正常細胞と比較して、CML細胞において発現が減少している遺伝子(「過小発現遺伝子」)の一つまたは複数の遺伝子産物の発現、機能、またはその両者を増加させることが含まれる。これらの方法において、被験者において過小発現されている遺伝子の一つまたは複数の量を増加させる化合物の有効量によって被験者を治療する。投与は全身または局所的となりうる。治療化合物には、過小発現遺伝子のポリペプチド産物、またはその生物学的活性断片、過小発現遺伝子をコードし、CML細胞における発現を許容する発現制御因子を有する核酸、例えばCML細胞に対して内因性のそのような遺伝子の発現レベルを増加させる(すなわち、1つまたは複数の過小発現遺伝子の発現を上方制御する)薬剤が含まれる。そのような化合物の投与は、被験者の造血細胞における異常に過小発現された遺伝子または複数の遺伝子の効果に対抗して、被験者の臨床状態を改善する。
【0081】
本方法にはまた、造血幹細胞を含む造血細胞においてその発現が異常に増加している遺伝子(「過剰発現遺伝子」)の一つまたは複数の遺伝子産物の発現、機能、またはその双方を減少させることが含まれる。発現は、当業者に既知のいくつかの任意の方法によって阻害される。例えば、1つまたは複数の過剰発現された遺伝子の発現を阻害またはこれに拮抗する核酸、例えば1つまたは複数の過剰発現された遺伝子の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNAを被験者に投与することによって発現は阻害される。
【0082】
先に述べたように、CML 1〜190のヌクレオチド配列に対応するアンチセンス核酸を用いて、CML 1〜190の発現レベルを減少させることができる。CMLにおいて上方制御されるCML 1〜190に対応するアンチセンス核酸は、CMLの治療において有用である。具体的には、本発明のアンチセンス核酸は、CML 1〜190またはそれに対応するmRNAに結合して、それによって遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつ/またはCML 1〜190にコードされるタンパク質の発現を阻害して、最終的にタンパク質の機能を阻害することによって作用してもよい。本明細書において用いられる「アンチセンス核酸」という用語は、アンチセンス核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、標的配列と完全に相補的であるヌクレオチドおよび一つまたは複数のヌクレオチドのミスマッチを有するヌクレオチドの双方を含む。例えば、本発明のアンチセンス核酸には、少なくとも15連続ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上、さらにより好ましくは95%またはそれ以上の相同性を有するポリヌクレオチドが含まれる。当技術分野で既知のアルゴリズムを用いて相同性を決定することができる。
【0083】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、タンパク質をコードするDNAまたはmRNAに結合し、転写または翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつタンパク質の発現を阻害し、それによってタンパク質の機能を阻害することによって、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質を産生する細胞に作用する。
【0084】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、誘導体に対して不活性な適した基剤と混合することによって、リニメントまたは湿布剤のような外用調製物に調製することができる。
【0085】
同様に、必要に応じて、誘導体は、賦形剤、等張剤、溶解剤、安定化剤、保存剤、鎮痛剤等を加えることによって、錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル、注射剤、溶液、点鼻液、および凍結乾燥剤に調製することができる。これらは以下の既知の方法によって調製することができる。
【0086】
アンチセンス核酸誘導体は、患部に直接適用することによって、または患部に達するように血管に注入することによって、患者に投与される。アンチセンス封入剤も、持続性および膜透過性を増加するために用いることができる。例としては、リポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチンまたはこれらの誘導体である。
【0087】
本発明のアンチセンス核酸誘導体の用量は、患者の病態に応じて適切に調節して、所望の量で用いることができる。例えば、0.1〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜50 mg/kgの用量範囲を投与することができる。
【0088】
本発明のアンチセンス核酸は、本発明のタンパク質の発現を阻害するので、本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害剤は、それらが本発明のタンパク質の生物学的活性を阻害できることから有用である。
【0089】
本発明のアンチセンス核酸には、修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、チオエート型オリゴヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ抵抗性を付与してもよい。
【0090】
同様に、マーカー遺伝子に対するsiRNAを用いて、マーカー遺伝子の発現レベルを減少させることができる。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を防止する二本鎖RNA分子を意味する。DNAがRNAを転写する鋳型となる技術を含む、siRNAを細胞に導入する標準的な方法が用いられる。本発明の状況において、siRNAは、CML 1〜190のような、上方制御されたマーカー遺伝子に対するセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、単一の転写物が、標的遺伝子からのセンス配列および相補的アンチセンス配列の双方を有するように、例えばヘアピンを有するように構築される。
【0091】
この方法は、例えば細胞の悪性形質転換の結果として上方制御された細胞内の発現を変化させるために用いられる。標的細胞におけるCML 1〜190の一つに対応する転写物に対するsiRNAの結合によって、細胞によるタンパク質産生の減少が起こる。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写物と同じ長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さが19〜25ヌクレオチドである。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドが長さが75、50、25ヌクレオチド未満である。
【0092】
siRNAのヌクレオチド配列は、アンビオン(Ambion)のウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手できるsiRNA設計コンピュータープログラムを用いて設計した。コンピュータープログラムは、以下のプロトコールに基づいてsiRNA合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
【0093】
siRNA標的部位の選択:
1.対象となる転写物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列を求めて下流にスキャンする。潜在的なsiRNA標的部位として、各AAおよび3'隣接ヌクレオチド19個の出現を記録する。Tuschlらは、5'および3'非翻訳領域(UTR)および開始コドン近傍(75塩基以内)の領域が、調節タンパク質結合部位により富んでいる可能性があることから、これらに対してsiRNAを設計しないことを推奨している。UTR-結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害しうる。
2.潜在的な標的部位をヒトゲノムデータベースと比較して、他のコード配列と有意な相同性を有する如何なる標的配列も検討から除外する。相同性検索は、NCBIサーバー、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/において認められうるBLASTを用いて行うことができる。
3.合成のために適格な標的配列を選択する。アンビオンでは、好ましくは、評価する遺伝子の長さに沿っていくつかの標的配列を選択することができる。
【0094】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害するので、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む発現阻害剤は、それらが本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害できるという点において有用である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む組成物は、CMLを治療するのに有用である。
【0095】
または、過剰発現された遺伝子の一つまたは複数の遺伝子産物の機能は、遺伝子産物に結合する化合物、さもなければ遺伝子産物の機能を阻害する化合物を投与することによって阻害される。例えば、化合物は、1つまたは複数の過剰発現された遺伝子産物に結合する抗体である。
【0096】
本発明は、抗体、特に上方制御されたマーカー遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体、または抗体の断片を用いることに言及する。本明細書において用いられるように、「抗体」という用語は、抗体を合成するために用いられる抗原(すなわち、上方制御されたマーカー遺伝子産物)またはそれに近縁の抗原のみと相互作用する(すなわち結合する)、特異的構造を有する免疫グロブリン分子を指す。さらに抗体は、それがマーカー遺伝子にコードされるタンパク質の一つまたは複数に結合する限り、抗体断片または修飾抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはHおよびL鎖からのFv断片が適当なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であってもよい(Huston, J.S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879〜5883(1988))。より詳しく述べると、抗体断片は、抗体をパパインまたはペプシンのような酵素によって処理することによって産生してもよい。または、抗体断片をコードする遺伝子を構築して、発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞において発現させてもよい(例えば、Co M.S.ら、J. Immunol. 152:2968〜2976(1994);Better M.およびHorwitz A.H.、Methods Enzymol. 178:476〜496(1989);Pluckthun A.およびSkerra A.、Methods Enzymol. 178:497〜515(1989);Lamoyi E.、Methods Enzymol. 121:652〜663(1986);Rousseaux J.ら、Methods Enzymol. 121:663〜669(1986);Bird R.E.およびWalker B.W.、Trends Biotechnol. 9:132〜137(1991)を参照されたい)。
【0097】
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)のような多様な分子に結合させることによって修飾してもよい。本発明は、そのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は、当技術分野で常套的である。
【0098】
または、抗体は、ヒト以外の抗体に由来する可変領域とヒト抗体に由来する定常領域とのキメラ抗体として、またはヒト以外の抗体に由来する相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域(FR)、および定常領域を含むヒト化抗体として得てもよい。そのような抗体は、既知の技術を用いて調製することができる。
【0099】
癌細胞において起こる特異的な分子変化に対する癌治療は、進行乳癌を治療するためのトラスツズマブ(ヘルセプチン)、慢性骨髄性白血病のためのイマチニブメチレート(グリーベック)、非小細胞肺癌(NSCLC)のためのゲフィチニブ(イレッサ)、ならびにB細胞リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫のためのリツキシマブ(抗CD20 mAb)のような抗癌剤の臨床開発および規制認可によって確認されている(Ciardiello F, Tortora G. A novel approach in the treatment of cancer: targeting the epidermal growth factor receptor. Clin Cancer Res. 2001 10月;7(10):2958〜70. Review.;Slamon DJ, Leyland-Jones B, Shak S, Fuchs H, Paton V, Bajamonde A, Fleming T, Eiermann W, Wolter J, Pegram M, Baselga J, Norton L. Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 3月15日;344(11):783〜92.;Rehwald U, Schulz H, Reiser M, Sieber M, Staak JO, Morschhauser F, Driessen C, Rudiger T, Muller-Hermelink K, Diehl V, Engert A. Treatment of relapsed CD20+ Hodgkin lymphoma with the monoclonal antibody rituximab is effective and well tolerated:results of a phase 2 trial of the German Hodgkin Lymphoma Study Group. Blood. 2003 1月15日;101(2):420〜424.;Fang G, Kim CN, Perkins CL, Ramadevi N, Winton E, Wittmann SおよびBhalla KN. (2000). Blood, 96, 2246〜2253.)。これらの薬剤は、形質転換した細胞のみを標的とすることから、臨床的に有効であり、従来の抗癌剤より許容性が良好である。したがって、そのような薬剤は、癌患者の生存および生活の質を改善するのみならず、分子標的癌治療の考え方が正当であることを証明している。さらに、標的特異的薬剤は、標準的な化学療法と併用して用いた場合に、その有効性を増強することができる(Gianni, L.(2002)、Oncology 63 補遺1、47〜56;Klejman A., Rushen L., Morrione A., Slupianek AおよびSkorski T.(2002)、Oncogene 21:5868〜5876)。したがって、将来の癌治療はおそらく、従来の薬剤を血管新生および浸潤性のような腫瘍細胞の異なる特徴をねらった標的特異的薬剤と併用することを含むであろう。
【0100】
これらの調節法は、エクスビボまたはインビトロで(例えば、細胞を薬剤と共に培養することによって)、またはインビボで(例えば被験者に薬剤を投与することによって)行われる。この方法は、発現差のある遺伝子の異常な発現または活性を相殺する治療として、タンパク質もしくはタンパク質の組み合わせ、または核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせを投与することを含む。
【0101】
遺伝子のレベルまたは生物学的活性の増加(疾患または障害を有しない被験者と比較して)を特徴とする疾患または障害は、1つまたは複数の過剰発現された遺伝子の活性に拮抗する(すなわち、減少または阻害する)治療物質によって治療してもよい。活性に拮抗する治療物質を治療または予防目的で投与する。
【0102】
利用してもよい治療物質には、例えば、(i)過剰発現または過小発現された配列または複数の配列のポリペプチド、またはその類似体、誘導体、断片、もしくは相同体、(ii)過剰発現または過小発現された配列または複数の配列に対する抗体、(iii)過剰発現または過小発現された配列または複数の配列をコードする核酸、(iv)アンチセンス核酸または「機能欠損」核酸(すなわち、一つまたは複数の過剰発現または過小発現配列のコード配列内への異種挿入による);(v)低分子干渉RNA(siRNA);または(vi)調節因子(すなわち、過剰/過小発現ポリペプチドとその結合パートナーとの相互作用を変化させる阻害剤、アゴニスト、およびアンタゴニスト)。機能欠損アンチセンス分子は、相同的組み換えによってポリペプチドの内因性の機能を「ノックアウト」するために利用される(例えば、Capecchi、Science 244:1288〜1292(1989)を参照されたい)。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を防止する二本鎖RNA分子を指す。siRNAを細胞に導入するためには、RNAを転写するための鋳型としてDNAが用いられる技法を含む標準的な技法が用いられる。siRNAは、CML 1〜190遺伝子の任意の一つのセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、単一の転写物(二本鎖RNA)が、標的遺伝子からのセンス配列と相補的アンチセンス配列の双方を有するように、例えばヘアピンとなるように構築される。
【0103】
レベルまたは生物学的活性の減少(疾患または障害を有しない被験者と比較して)を特徴とする疾患および障害は、活性を増加させる(すなわちアゴニストである)治療物質によって治療してもよい。活性を上方制御する治療物質は、治療または予防目的で投与してもよい。利用してもよい治療物質には、ポリペプチド(またはその類似体、誘導体、断片もしくは相同体)または生物学的利用能を増加させるアゴニストが含まれるがこれらに限定されない。
【0104】
レベルの増加または減少は、ペプチドおよび/またはRNAを定量することによって、患者の細胞試料を得て、これをRNAまたはペプチドレベル、発現されたペプチドの構造および/または活性(またはその発現が変化している遺伝子のmRNA)に関してインビトロで分析することによって、容易に検出することができる。当技術分野において周知である方法には、免疫学的分析(例えば、ウェスタンブロット解析、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学等)、および/またはmRNAの発現を検出するハイブリダイゼーション分析(例えば、ノーザン分析、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
予防目的の投与は、疾患もしくは障害が予防されるように、またはその進行が遅れるように、疾患の明白な臨床症状が発現する前に行われる。
【0106】
治療法には、発現差のある遺伝子の遺伝子産物の活性の一つまたは複数を調節する薬剤に細胞を接触させることが含まれる。タンパク質活性を調節する薬剤には、核酸またはタンパク質、これらのタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、または他の小分子の、天然に存在する同起源のリガンドが含まれる。例えば、薬剤は、一つまたは複数の異なるように過小発現された遺伝子の一つまたは複数のタンパク質活性を刺激する。
【0107】
本発明はまた、CML 1〜190からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドもしくはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法にも関する。ポリペプチドの投与は、被験者において抗腫瘍免疫を誘導する。抗腫瘍免疫を誘導するために、CML 1〜190からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する。ポリペプチドまたはその免疫学的活性断片はCMLに対するワクチンとして有用である。場合によっては、タンパク質またはその断片は、T細胞受容体(TCR)に結合した形で投与してもよく、またはマクロファージ、樹状細胞(DC)、もしくはB-細胞のような抗原提示細胞(APC)によって提示された形で投与してもよい。DCの強い抗原提示能のため、APCの中では、DCを用いることが最も好ましい。
【0108】
本発明において、CMLに対するワクチンとは、動物に接種すると抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。本発明によると、CML 1〜190にコードされるポリペプチドまたはその断片は、CML 1〜190を発現するCML細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導する可能性があるHLA-A24またはHLA-A*0201拘束性エピトープであることが示唆された。このように、本発明はまた、ポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法も含む。一般的に、抗腫瘍免疫には、以下のような免疫応答が含まれる:
−腫瘍に対する細胞障害性リンパ球の誘導、
−腫瘍を認識する抗体の誘導、および
−抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
【0109】
したがって、あるタンパク質が、動物への接種時にこれらの免疫応答のいずれか一つを誘導する場合、そのタンパク質は、抗腫瘍免疫誘導効果を有すると判定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、宿主におけるタンパク質に対する免疫系の反応をインビボまたはインビトロで観察することによって検出することができる。
【0110】
例えば、細胞障害性Tリンパ球の誘導を検出する方法は周知である。生体内に入る外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によってT細胞およびB細胞に提示される。APCによって提示された抗原に対して抗原特異的に応答するT細胞は、抗原による刺激によって細胞障害性T細胞(または細胞障害性Tリンパ球;CTL)に分化した後増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、あるペプチドによるCTL誘導は、APCによるT細胞へのペプチドの提示およびCTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞も同様に抗腫瘍免疫において重要であることから、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0111】
APCとして樹状細胞(DC)を用いてCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野で周知である。DCは、APCの中でも最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。この方法では、被験ポリペプチドをまずDCに接触させて、このDCをT細胞に接触させる。DCに接触させた後に、対象細胞に対して細胞障害作用を有するT細胞が検出されれば、被験ポリペプチドが細胞障害性T細胞の誘導活性を有することを示している。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。または、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(乳糖デヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法も同様に周知である。
【0112】
DCとは別に、末梢血単核球(PBMC)も同様にAPCとして用いてもよい。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強されうることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0113】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された被験ポリペプチドは、DC活性化効果およびその後のCTL誘導活性を有するポリペプチドである。したがって、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドに接触させることによって腫瘍に対するCTLの誘導能を獲得したAPCは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示により細胞障害性を獲得したCTLも同様に、腫瘍に対するワクチンとして用いることができる。APCおよびCTLによる抗腫瘍免疫を用いるそのような腫瘍の治療法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0114】
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導効率は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせて、それらをDCに接触させることによって増加することが知られている。したがって、DCをタンパク質断片によって刺激する場合、複数のタイプの断片の混合物を用いることが有利である。
【0115】
または、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、そのポリペプチドで免疫した実験動物において誘導される場合、そして腫瘍細胞の増殖がそれらの抗体によって抑制される場合、ポリペプチドは、抗腫瘍免疫の誘導能を有すると判定することができる。
【0116】
抗腫瘍免疫は本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導によって、CMLを治療および予防することができる。癌の治療または癌の発症の予防には、癌性細胞の増殖の阻害、癌の退縮、および癌の発生抑制のような段階のいずれかが含まれる。癌を有する個体の死亡率の低下、血液中の腫瘍マーカーの減少、癌に伴う検出可能な症状の軽減等も同様に、癌の治療または予防に含まれる。そのような治療および予防効果は好ましくは統計学的に有意である。例えば、細胞増殖疾患に対するワクチンの治療または予防効果を、ワクチン投与を行わない対照と比較する観察において、5%またはそれ未満は有意水準である。例えば、スチューデントのt-検定、マン-ホイットニーのU検定、またはANOVAを統計解析に用いてもよい。
【0117】
免疫学的活性を有する上記のタンパク質またはそのタンパク質をコードするベクターをアジュバントと併用してもよい。アジュバントは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(または連続して)投与した場合にタンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を指す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるがこれらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適当に組み合わせてもよい。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩液、リン酸緩衝液、培養液等である。さらに、ワクチンは必要に応じて、安定化剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を含んでもよい。ワクチンは、全身または局所投与される。ワクチン投与は、1回投与によって行ってもよく、または複数回投与によって追加刺激してもよい。
【0118】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いる場合、腫瘍を例えばエクスビボ法によって治療または予防することができる。より詳しく述べると、治療または予防を受ける被験者のPBMCを採取して、細胞をエクスビボでポリペプチドに接触させて、APCまたはCTLの誘導後、細胞を被験者に投与してもよい。APCはまた、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与前にクローニングすることができる。標的細胞を障害する高い活性を有する細胞をクローニングして増殖させることによって、細胞免疫療法をより効率よく行うことができる。さらに、このようにして単離されたAPCおよびCTLを用いて、細胞が由来する個体に対してのみならず、他の個体からの類似のタイプの腫瘍に対する細胞免疫療法のために用いてもよい。
【0119】
さらに、本発明のポリペプチドの薬学的有効量を含む、癌のような細胞増殖疾患を治療または予防するための薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、抗腫瘍免疫を惹起するために用いてもよい。
【0120】
CMLを阻害するための薬学的組成物
薬学的製剤には、経口、直腸内、鼻腔内、局所(口腔内および舌下を含む)、膣内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適した製剤、または吸入もしくは吹入による投与に適した製剤が含まれる。好ましくは、投与は静脈内である。製剤は任意で個別の用量単位に包装される。
【0121】
経口投与に適した薬学的製剤には、それぞれが活性成分の規定量を含むカプセル剤、カシェ剤、または錠剤が含まれる。製剤にはまた、粉剤、顆粒剤、または溶液、懸濁液、または乳液が含まれる。活性成分は、任意でボーラス舐剤またはペーストとして投与される。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、または湿潤剤のような通常の賦形剤を含んでもよい。錠剤は、任意で一つまたは複数の製剤成分との圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠は、粉剤または顆粒剤のような流動状の活性成分を、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、表面活性剤、または分散剤と混合して、適した装置において圧縮することによって調製してもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤によって湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械において成形することによって作製してもよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングしてもよい。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、乳液、シロップ剤、もしくはエリキシル剤の形であってもよく、または使用前に水もしくは他の適した溶剤によって構成するための乾燥製品として提供してもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性溶剤(食用油が含まれてもよい)、または保存剤のような通常の添加剤を含んでもよい。錠剤は任意で、活性成分の徐放または制御放出を提供するように調製してもよい。錠剤の包装は、毎月服用される錠剤1錠を含んでよい。薬剤の製剤および用量は、段階(慢性期、加速期、または急性転化期)に対して変化する。
【0122】
非経口投与用製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射剤、ならびに懸濁剤および濃化剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量または複数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルに入れてもよく、滅菌液体担体、例えば生理食塩液、注射用水を使用直前に加えるだけでよい凍結乾燥状態で保存してもよい。または、製剤は、連続注入用であってもよい。即時調合注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
【0123】
直腸投与用製剤には、カカオバターまたはポリエチレングリコールのような標準的な担体を含む坐剤が含まれる。口内への、例えば口腔内または舌下への局所投与用製剤には、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントのような着香基剤に活性成分を含むトローチ剤、ならびにゼラチンとグリセリンまたはショ糖とアカシアのような基剤に活性成分を含む香錠が含まれる。鼻腔内投与の場合、本発明の化合物を液体スプレー、もしくは分散性の粉末として、または点鼻剤の形態で用いてもよい。点鼻剤は、一つまたは複数の分散剤、溶解剤、または懸濁剤も含む水性または非水性基剤によって調製してもよい。
【0124】
吸入による投与の場合、吸入器、ネブライザー、加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達するための他の都合のよい手段によって化合物を送達することが都合がよい。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスのような適した噴射剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定してもよい。
【0125】
あるいは、吸入または吹入による投与の場合、化合物は、乾燥粉末組成物、例えば化合物と、乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤との粉末混合物の形状をとってもよい。粉末組成物は、単位投与剤形、例えば、粉末が吸入器または吹入器を利用して投与されうるカプセル剤、カートリッジ、ゼラチンまたはブリスターパックの形としてもよい。
【0126】
他の製剤には、治療薬剤を放出する埋め込み可能装置および接着パッチが含まれる。
【0127】
望ましければ、活性成分を持続的に放出するように適合された上記の製剤を用いてもよい。薬学的組成物はまた、抗菌剤、免疫抑制剤、または保存剤のような他の活性成分を含んでもよい。
【0128】
上記で特に言及した成分の他に、本発明の製剤には、当該製剤のタイプに関して当技術分野において通常の他の薬剤が含まれてもよいと理解すべきであり、例えば経口投与に適した製剤は着香料を含んでもよい。
【0129】
好ましい単位投与製剤は、下記に引用するように、活性成分またはその適当な分画の有効量を含む製剤である。
【0130】
上記の条件のそれぞれに関して、組成物、例えばポリペプチドおよび有機化合物は、約0.1〜約250 mg/kg/日の用量で経口または注射によって投与される。成人ヒトの用量範囲は一般的に、約5 mg〜約17.5 g/日、好ましくは約5 mg〜約10 g/日、および最も好ましくは約100 mg〜約3 g/日である。錠剤または個別の単位で提供される他の単位投与剤形は、便宜上、同一単位量を複数回投与した量で有効性を示すような単位量、例えば約5 mg〜約500 mg、通常約100 mg〜約500 mgを含みうる。
【0131】
用いられる用量は、被験者の年齢および性別、治療される正確な障害、およびその重症度を含む多数の要因によって左右されると考えられる。同様に、投与経路も、病態およびその重症度に依存して変化してもよい。
【0132】
本発明はさらに、添付の請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限しない以下の実施例において説明される。以下の実施例は、CML細胞において発現に差のある遺伝子の同定および特徴付けを説明する。
【0133】
実施例1:被験試料の調製
疾患状態、例えばCMLにおいて発現に差のある遺伝子を同定するために、疾患を有する細胞および正常細胞、例えば末梢血由来の単核細胞から得た試料を評価した。分析は以下のように実施した。
【0134】
患者および試料
末梢血試料は、STI571による治療前にCML患者27人から得た。次に、各患者を、STI571の第二相試験に登録した。CML細胞の特徴を調べるために、bcr/abl融合遺伝子を検出するFISH解析(13)によって、65%を超える細胞が治療前にPh染色体陽性であった試料27例からのmRNAを、cDNAマイクロアレイシステムによって解析した。27例中、2例は加速期であり、3例は急性転化期であった(表1)。健康なボランティア11人の末梢血由来の単核細胞混合物を対照として用いた。
【0135】
(表1)被験患者の臨床病理学的特徴

【0136】
RNA調製とT7ベースのRNA増幅
単核細胞は、フィコール(アマシャムバイオサイエンス(Amersham Biosciences)、バッキンガムシャー、イギリス)を用いて調製し、TRIzol(ライフテクノロジーズインク(Life Technologies, Inc.)、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて製造元の説明書に従って全RNAを抽出した。DNアーゼI(ニッポンジーン、東京、日本)による処理後、T7ベースのRNA増幅を行った(14)。開始材料として全RNA 2μgを用いた2ラウンドの増幅によって、増幅RNA(aRNA)40〜100 μgが得られた。健康なボランティアからの対照試料についても、T7ベースのRNA増幅を2ラウンド行い、十分量のaRNAを得た。この方法によって増幅されたRNAは、半定量的逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)実験によって確認したところ、当初のRNA源における比率を正確に反映しており、全RNAまたは増幅されたaRNAのいずれを鋳型として用いても、マイクロアレイからのデータは、RT-PCRの結果と一致した(14)。
【0137】
cDNAマイクロアレイの調製とハイブリダイゼーション
ゲノム全体に及ぶcDNAマイクロアレイを、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のUniGeneデータベース(ビルド#131)から選択したcDNA 23,040個から作製した。スライドガラス上にスポットするcDNAを得るために、以前に記載されているように各遺伝子に関してRT-PCRを行った(15)。PCR産物をMicroarray Spotter Generation III(アマシャムバイオサイエンス)を用いてタイプ7スライドガラス(アマシャムバイオサイエンス)上にスポットした。遺伝子4,608個を1枚のスライドガラス上に2個ずつスポットした。異なる5組のスライドガラス(全体で遺伝子23,040個)を調製して、そのそれぞれの上に同じハウスキーピング遺伝子52個と陰性対照遺伝子2個も同様にスポットした。標識、ハイブリダイゼーション、洗浄、スキャニング、およびシグナルの定量は、全工程を自動スライドプロセッサによって行ったことを除き(15)、以前に記載されている通りに実施した(14)。
【0138】
シグナルの定量とデータ解析
各ハイブリダイゼーションシグナルの強度を、Array Visionコンピュータープログラム(アマシャムバイオサイエンス)を用いて光度によって計算した。各スライドガラスは、ハウスキーピング遺伝子52個を含み、ハウスキーピング遺伝子のパネルのCy5/Cy3比の平均が1.0となるように、各遺伝子発現に関するCy5/Cy3比を調整した。分散分析を用いて、各マイクロアレイスライドガラスにカットオフ値を設定した。Cy3およびCy5シグナル強度の双方がカットオフ値より低い場合、その試料中の対応する遺伝子の発現レベルはなしと評価された。他の遺伝子に関して、Cy5/Cy3比は、各試料の生データを用いて計算した。
【0139】
実施例2:CML関連遺伝子の同定
各遺伝子の相対的発現比(Cy5/Cy3強度比)を四つのカテゴリーの一つに分類した:(1)非常に上方制御されている(情報が得られた症例のうち50%より多い症例において発現比が5.0より大きい);(2)非常に下方制御されている(情報が得られた症例のうち50%より多い症例において発現比が0.2より小さい);(3)低い発現(情報が得られた症例の50%より多い症例において発現比が0.2〜5.0);および(4)発現されない(またはわずかに発現されているが検出のカットオフレベルより低い)。これらのカテゴリーを用いて、発現比の変化が試料間で共通していると同時に特定のサブグループに対して特異的である遺伝子の組を検出した。CML細胞において一般的に上方制御または下方制御されている候補遺伝子を検出するために、遺伝子23,040個の全体的な発現パターンをスクリーニングして、5.0より大きいかまたは0.2未満の発現比がCML症例の慢性期の50%より多くに存在し、(1)、(2)、または(3)として分類された遺伝子を選択した。
【0140】
CML細胞において臨床的に関連する発現パターンを有する遺伝子の同定
CML細胞において遺伝子約23,000個の発現パターンをcDNAマイクロアレイを用いて調べた。Cy5およびCy3シグナルの双方がカットオフ値より下であった場合には、個々のデータを除外した。コンピューター解析により、CML細胞において一般的に高度に上方制御または下方制御された遺伝子が同定された;遺伝子190個は、情報が得られた症例の50%を超える症例において発現比が>5.0であることが判明し、遺伝子106個は、情報が得られた症例の50%を超える症例において発現比が<0.2であることを示した。
【0141】
遺伝子190個は、非常に上方制御されることが判明した。上方制御された遺伝子には、細胞周期の調節、増殖促進、および転写の活性化に関与するタンパク質、ならびにタンパク質キナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が含まれた。それらの多くは、他の癌において過剰発現されることが示された。例えば、急性白血病を引き起こし、造血細胞のみを形質転換する転写活性化因子であるMYB(16)は、慢性期のCML細胞の90%を超える細胞において高度に発現された。同じく内皮細胞におけるエンドセリン-1遺伝子発現を調節する転写活性化因子であるGATA結合タンパク質2(GATA2)は、急性骨髄性白血病(AML)の93%、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の70%、およびCMLの83%において活性化されていると報告された(18)。特に、遺伝子28個、例えばリボヌクレアーゼRNアーゼAファミリー3(RNASE3)、殺菌/透過性増加タンパク質(BP1)、デフェンシンα1、骨髄関連配列(DEFA1)、アミノレブリン酸、δ-シンターゼ1(ALAS1)、エラスターゼ2、好中球(ELA2)、カテプシンG(CTSG)、マトリクスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)、ハプトグロビン関連タンパク質(HPR)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(UPLA)、ハプトグロビン(HP)、H3ヒストンファミリー、メンバーJ(H3FJ)、およびヘモグロビン、ζ(HBZ)は、本研究において情報が得られる試料の全てにおいて過剰発現された(表3を参照されたい)。IV型コラーゲンを分解する酵素であるMMP-9は、遊走ならびに組織および血管の細胞外基質構造の分解に関連すると考えられる。MMP-9の発現は、CML患者の単核細胞において増強された(19)。その上、初代ヒトPh+細胞は、MMP-9を含む様々な血管新生因子を分泌すると報告された(20)。このように、MMP-9の過剰発現は、CMLの発病において重要な役割を有する可能性がある。さらに、ヘモグロビンファミリーメンバー、例えば、ζ(HBZ)、β(HBB)、γG(HBG2)、δ(HBD)、およびα2(HBA2)は、情報が得られた症例の80%を超える症例において過剰発現された。さらに、ハプトグロビン(HP)およびハプトグロビン関連タンパク質(HPR)も同様に、情報が得られた症例全てにおいて発現の増強を示した。最近の研究は、bcr/abl発現が、HL-60/BCR-Abl細胞またはCML細胞においてヘモグロビン(Hb)産生を誘導することを示した(21、22)。このことは、構成的に活性化されたチロシンキナーゼbcr-ablが、造血前駆細胞の生存および増殖を増強したことを示唆している。
【0142】
遺伝子106個が、CMLの慢性期において有意に下方制御されることが判明した(表4を参照されたい)。機能が既知である遺伝子には、情報が得られた症例の90%超において発現が抑制された、SH3-ドメインGRB2様2(SH3GL2)、PCAF関連因子65β(PAF65B)、ヘパラン硫酸6-O-スルホトランスフェラーゼ(HS6ST)、免疫グロブリン重鎖定常γ3(IGHG3)、熱ショック27 kDタンパク質2(HSPB2)、およびプロスタグランジンDシンターゼ遺伝子(PTGDS)が含まれた。DNA依存性タンパク質キナーゼ触媒性サブユニット相互作用タンパク質2(KIP2)のような多くの転写陰性調節因子も同様に含まれた。KIP2は、細胞増殖の負の調節因子であり、G1期で細胞増殖を停止させる。KIP2は、情報が得られたCML症例の約60%において下方制御された。したがって、その下方制御は、白血病細胞に持続的な増殖特性を付与する可能性がある。
【0143】
有意に下方制御された遺伝子のいくつかは、細胞型における差を反映し、免疫成分、例えば免疫グロブリンおよび補体成分2(C2)、ならびにCD7、CD3E、CD79A、CD3Z、CD6、CD4、およびCD79B抗原のようなリンパ球マーカー、インターフェロン調節因子4(IRF4)、およびインターロイキン7受容体(IR7R)をコードする遺伝子のようなリンパ球特異的遺伝子(表4を参照されたい)である。本試験において用いた慢性期のCML細胞に含まれる多数の細胞は、骨髄系統の芽球細胞に相当する。普遍的な対照(universal control)として用いられる末梢血の白血球は、骨髄およびリンパ球系統の双方の細胞を含んだが、リンパ球は試料中の細胞のほんの一部を占めるに過ぎなかった。これは、CML患者におけるリンパ球集団が健康な個体の血液と比較して減少したことを表す可能性がある。
【0144】
(表3)上方制御された遺伝子







アクセッション番号および遺伝子シンボルは、UniGeneデータベース(ビルド#131)から検索した。
【0145】
(表4)下方制御された遺伝子





アクセッション番号および遺伝子シンボルは、UniGeneデータベース(ビルド#131)から検索した。
【0146】
半定量的RT-PCRによる確認
マイクロアレイ解析によって示される発現差の信頼性を確認するために、情報が得られた試料の全てにおいて高度に上方制御された遺伝子11個(RNASE3、CTSG、MMP9、HP、HPR、H3FJ、HBZ、PLAU、KIAA1254、および二つのEST(アクセッション番号H23213およびH48537))について、半定量的RT-PCR実験を行った。それぞれの試料からのaRNAのアリコート3μgを、ランダムプライマー(ロシュ(Roche))およびSuperscript II(ライフテクノロジーズインク)を用いて一本鎖cDNAに逆転写した。各cDNA混合物は、標的DNAまたはβ-アクチン特異的反応用に調製された同じプライマーの組を用いるその後のPCR増幅のために希釈した。プライマー配列を表2に記載する。β-アクチンの発現を内部対照とした。PCR反応のサイクル数を、増幅の直線相に産物の強度がくるように最適化した。RT-PCRの結果は、被験症例の大多数においてマイクロアレイ解析の結果に非常に良く一致した(図1を参照されたい)。これらのデータは、CML細胞において一般的に上方制御された遺伝子を同定する本発明者らの手法の信頼性を証明した。
【0147】
(表2)半定量的RT-PCR実験のプライマー配列

【0148】
産業上の利用可能性
ゲノム全体にわたるcDNAマイクロアレイによって得られた、本明細書に記載されるCMLの遺伝子発現解析により、癌の予防および治療の標的となる特異的遺伝子が同定された。これらの発現差のある遺伝子サブセットの発現に基づいて、本発明は、CMLを同定または検出するための分子診断マーカーを提供する。
【0149】
本明細書に記載される方法はまた、CMLを予防、診断、および治療するためのさらなる分子標的の同定において有用である。本明細書において報告されたデータは、CMLの包括的な理解を増大させて、新規診断手法の開発を促進し、かつ治療薬および予防薬剤のための分子標的を同定する手がかりを提供する。そのような情報は、CMLの腫瘍発生に関するより深い理解に寄与し、CMLを診断、治療、および究極的には予防するための新規手法を開発するための指標を提供する。
【0150】
本明細書で引用した特許、特許出願、および刊行物は全て、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。さらに、本発明をその具体的な態様を参照して詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および改変を本発明に加えることができることは当業者に明らかであると考えられる。
【0151】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】増幅したRNAから調製したcDNAを用いて、半定量的RT-PCRによって調べた代表的な遺伝子11個およびβ-アクチンの発現を示すDNAアガロースゲルの写真である。第一のレーンは、正常な個体におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルを示す。残りの8個のレーンはそれぞれ、異なるCML患者における遺伝子の発現レベルを示す。機能が既知または推測されている遺伝子には、遺伝子シンボルを記載し、ESTにはアクセッション番号を記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来の生物学的試料においてCML関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、被験者におけるCMLを診断するか、またはCML発症の素因を診断する方法であって、該遺伝子の正常対照レベルと比較して該レベルが増加または減少すれば、該被験者がCMLを罹患しているか、またはCML発症のリスクを有することを示す方法。
【請求項2】
CML関連遺伝子がCML 1〜190からなる群より選択され、正常対照レベルと比較してレベルが増加すれば、被験者がCMLを罹患しているか、またはCML発症のリスクを有することを示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
増加が正常対照レベルより少なくとも10%大きい、請求項1記載の方法。
【請求項4】
CML関連遺伝子が、CML 191〜296からなる群より選択され、正常対照レベルと比較してレベルが減少すれば、被験者がCMLを罹患しているか、または発症のリスクを有することを示す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
減少が正常対照レベルより少なくとも10%低い、請求項4記載の方法。
【請求項6】
複数のCML関連遺伝子の発現レベルを決定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
発現レベルが、以下からなる群より選択されるいずれか一つの方法によって決定される、請求項1記載の方法:
(a)CML関連遺伝子のmRNAを検出する段階;
(b)CML関連遺伝子にコードされるタンパク質を検出する段階;および
(c)CML関連遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性を検出する段階。
【請求項8】
発現レベルが、CML関連遺伝子プローブと、患者由来の生物学的試料の遺伝子転写産物とのハイブリダイゼーションによって検出することで決定される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ハイブリダイゼーションの段階がDNAアレイ上で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料が単核細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料が骨髄細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
生物学的試料がリンパ系細胞を含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
CML 1〜296からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、CML参照発現プロファイル。
【請求項14】
CML 1〜190からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、CML参照発現プロファイル。
【請求項15】
CML 191〜296からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、CML参照発現プロファイル。
【請求項16】
以下の段階を含む、CMLを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)CML 1〜296にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)ポリペプチドと被験化合物との結合活性を検出する段階;および
c)ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【請求項17】
以下の段階を含む、CMLを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)CML 1〜296からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる段階;および
b)CML 1〜190からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを低下させるか、またはCML 191〜296からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを上昇させる化合物を選択する段階。
【請求項18】
以下の段階を含む、CMLを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)CML 1〜296からなる群より選択される遺伝子にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
c)被験化合物の非存在下において検出される生物学的活性と比較して、CML 1〜190にコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制するか、または被験化合物の非存在下において検出される生物学的活性と比較して、CML 191〜296にコードされるポリペプチドの生物学的活性を増強する化合物を選択する段階。
【請求項19】
被験細胞がCML患者の末梢血から得られる細胞を含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
以下の段階を含む、CMLを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)CML 1〜296からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子の転写調節領域と、転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に候補化合物を接触させる段階;
b)レポーター遺伝子の活性を測定する段階;および
c)対照と比較して、該マーカー遺伝子がCML 1〜190からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合には、該レポーター遺伝子の発現レベルを低下させる化合物、または該マーカー遺伝子がCML 191〜296からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合には、該レポーター遺伝子の発現レベルを増強する化合物を選択する段階。
【請求項21】
CML 1〜296からなる群より選択される二つもしくはそれ以上の核酸配列、またはそれにコードされるポリペプチドに結合する検出試薬を含むキット。
【請求項22】
CML 1〜296からなる群より選択される二つまたはそれ以上の核酸配列に結合する核酸を含むアレイ。
【請求項23】
CML 1〜190からなる群より選択されるコード配列と相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項24】
CML 1〜190からなる群より選択される核酸配列の発現を低下させるsiRNA組成物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項25】
CML 1〜190からなる群より選択されるいずれか一つの遺伝子にコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項26】
CML 1〜190からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドもしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被験者に投与することを含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項27】
CML 191〜296の発現または活性を増加させる化合物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項28】
請求項16〜20のいずれか一項記載の方法によって得られる化合物を投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項29】
CML 191〜296からなる群より選択されるポリヌクレオチドまたはそれにコードされるポリペプチドの薬学的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるCMLを治療または予防する方法。
【請求項30】
CML 1〜190からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチドまたは低分子干渉RNAの薬学的有効量を含む、CMLを治療または予防するための組成物。
【請求項31】
CML 1〜190からなる群より選択されるいずれか一つの遺伝子にコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量を含む、CMLを治療または予防するための組成物。
【請求項32】
活性成分として請求項16〜20のいずれか一項記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、CMLを治療または予防するための組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−500944(P2006−500944A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541212(P2004−541212)
【出願日】平成15年8月12日(2003.8.12)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010256
【国際公開番号】WO2004/031409
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(504445356)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】