説明

慣性センサおよび慣性測定装置

【課題】製造プロセスが容易で小型化可能、かつ、高精度な慣性センサおよび慣性測定装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、基板上に固定されるアンカー部と、圧電膜をパターニングして形成された重錘と、圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁と、圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定される第2の梁とを備え、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる加速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサおよびこれを用いた慣性測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波共振子を用いた慣性センサおよび慣性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業,電気産業や機械産業などでは、加速度,角加速度,角速度等の慣性を正確に検出できる慣性センサの需要が高まっている。特に、二次元あるいは三次元の成分ごとに加速度、角加速度、角速度等の慣性を検出しうる小型のセンサが望まれている。
【0003】
このような需要に応えるため、シリコンなどの半導体基板にゲージ抵抗と重錘を形成し、重錘に加わる加速度に基づいて基板に生じる機械的な歪みを、ピエゾ抵抗効果を利用して電気信号に変換する加速度センサがある。しかし、ゲージ抵抗やピエゾ抵抗係数には温度依存性がある。このため、このような半導体基板を用いたセンサでは、使用する環境の温度に変動が生じると検出値が誤差を含むようになる。したがって、正確な測定を行うためには、温度補償を行う必要がある。特に、自動車などの分野で用いる場合、−40℃〜+120℃というかなり広い動作温度範囲について温度補償が必要になるため使用が困難になる。
【0004】
また、2枚の電極板間の静電容量の変化を利用したセンサが開示されている。このセンサでは、力、加速度、磁気などの作用により、2枚の電極板の間隔に変化を生じさせ、この間隔の変化を静電容量の変化として検出するものである。この方式は,製造コストが安価であるという利点はあるが、形成される静電容量が小さいため、信号処理がむずかしいという欠点がある。
【0005】
また,特許文献1には,可撓性を持った円盤状の基板に4組の圧電センサを貼り付け,各圧電センサの出力の和および差により加速度を検出するセンサが開示されている。しかしこの方法では,可撓基板の上に圧電センサを貼り付ける構造を持つため,製造上小型化が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願平5−26744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、製造プロセスが容易で小型化可能、かつ、高精度な慣性センサおよび慣性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の慣性センサは、基板と、前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、前記圧電膜をパターニングして形成された重錘と、前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定される第2の梁とを備え、前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる加速度を測定可能とすることを特徴とする。
【0009】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記櫛型電極が、前記圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極であることが望ましい。
【0010】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記第2の梁の他端が前記アンカー部および前記重錘のいずれにも固定されないことが望ましい。
【0011】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記第2の梁の他端が前記重錘に固定されることが望ましい。
【0012】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記重錘の側面側の周囲に空隙を介してストッパが設けられ、かつ、前記重錘の上部に空隙を介して蓋部が設けられることが望ましい。
【0013】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記圧電膜が、前記基板面に垂直に[0001]方位で配向した窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)であることが望ましい。
【0014】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第3の弾性表面波共振子を有し、一端が前記基板に固定され他端が前記重錘に固定される第3の梁とを備え、前記第1の弾性表面波共振子と前記第3の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる加速度を測定可能とすることが望ましい。
【0015】
第1の態様の慣性センサにおいて、前記梁が前記重錘に向かって細くなるテーパー形状を有することが望ましい。
【0016】
本発明の第2の態様の慣性センサは、基板と、前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成された重錘と、前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定され、前記アンカー部に対して前記第1の梁と反対側に設けられる第2の梁とを備え、前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角加速度を測定可能とすることを特徴とする。
【0017】
第2の態様の慣性センサにおいて、前記櫛型電極が、前記圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極であることが望ましい。
【0018】
本発明の第3の態様の慣性センサは、基板と、前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、前記圧電膜をパターニングして形成された重錘と、前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記アンカー部および前記重錘のいずれにも固定されない第2の梁とを備え、前記第1の梁の前記櫛型電極を挟んで前記圧電膜上面および下面に一対の励振用電極が設けられ、前記第1の梁を励振させ、前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角速度を測定可能とすることを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様の慣性測定装置は、上記第1から第3の態様の慣性センサと、前記慣性センサの前記弾性表面波共振子に接続される発振回路とを備え、加速度、角加速度または角速度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造プロセスが容易で小型化可能、かつ、高精度な慣性センサおよび慣性測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態の慣性センサの上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1の実施の形態の慣性センサの作用を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の一例を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の上面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】第1の実施の形態の慣性センサの製造方法を示す工程順模式断面図である。
【図8】第1の実施の形態の第1の変形例の慣性センサの上面図である。
【図9】第1の実施の形態の第2の変形例の慣性センサの上面図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】第1の実施の形態の第3の変形例の慣性センサの上面図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】第11の実施の形態の第4の変形例の慣性センサの上面図である。
【図14】第1の実施の形態の第5の変形例の慣性センサの上面図である。
【図15】第2の実施の形態の慣性センサの上面図である。
【図16】図15のA−A断面図である。
【図17】第3の実施の形態の慣性センサの動作原理を説明する模式図である。
【図18】第3の実施の形態の慣性センサの上面図である。
【図19】図18のA−A断面図である。
【図20】第3の実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において慣性センサとは、加速度、角加速度、角速度等の慣性を検出するための主たる検出機構部分を意味する。また、慣性測定装置とは、上記慣性センサに発振回路等の周辺回路を設けることによって、加速度、角加速度、角速度等の慣性を測定する装置を意味するものとする。
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の慣性センサは、基板と、基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、基板上に固定されるアンカー部と、圧電膜をパターニングして形成された重錘とを備えている。そして、この圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁を備えている。また、この圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の第1の梁の櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定される第2の梁とを備えている。そして、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる加速度を測定可能とする。
【0024】
また、本実施の形態の慣性センサは、第2の梁の他端がアンカー部および重錘のいずれにも固定されない。また、圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の第1および第2の梁の櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第3の弾性表面波共振子を有し、一端が基板に固定され他端が重錘に固定される第3の梁とを備え、第1の弾性表面波共振子と第3の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる加速度を測定可能とする。さらに、上記櫛型電極が、圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極である。すなわち、いわゆるIDT電極(Interdigital Transducer Electrode)である。
【0025】
本実施の形態の慣性センサは、言い換えれば、基板と、基板上に固定され、第1の圧電膜で形成されたアンカー部と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成された重錘と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第3の圧電膜で形成され、第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第4の圧電膜で形成され、第4の圧電膜上面の櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定される第2の梁とを備えている。そして、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる加速度を測定可能とする。さらに、第1の圧電膜、第2の圧電膜、第3の圧電膜、および第4の圧電膜がすべて連続している。ここで、2つの圧電膜が連続しているとは、それぞれの圧電膜の間に巨視的にも微視的にも物理的な境界が存在していないことを意味する。
【0026】
本実施の形態の慣性センサは、上記構成を有する2軸の加速度が測定可能な加速度センサである。この加速度センサは、異なる梁に設けられた2つの弾性表面波共振子(Surface Acoustic Wave Resonator:以下、SAW共振子ともいう)の共振周波数の差を検出することで加速度を測定する。この際、重錘と梁を同一の連続した圧電膜で形成する。また、2つのSAW共振子を構成する同一形状の櫛形電極を同一の圧電膜の上面に形成する。この構成により、慣性センサの製造プロセスが容易となり、小型化が可能となるとともに測定の高精度化が実現できる。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態の慣性センサの上面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0028】
慣性センサ100は、基板1と、基板1上の圧電膜7をパターニングして形成され基板1上に固定されるアンカー部2とを備えている。また、重錘4、第1の梁として検出梁5a、第2の梁として参照梁6、第3の梁として検出梁5bを備えている。アンカー部2、重錘4、検出梁5a、参照梁6、検出梁5bはすべて同一の圧電膜7をパターニングすることにより、略同一平面に形成されている。
【0029】
重錘4は圧電膜7および電極層8から形成されている。検出梁5a、5bは、基板1面内の一方向(ここではY方向と定義する)に延在し、一端がアンカー部2に固定支持され、他端が重錘4に固定支持されている。また、参照梁6は、基板1面内のY方向に延在し、一端がアンカー部2に固定支持され、他端は、アンカー部2および重錘4のいずれにも固定支持されない。
【0030】
検出梁5a、5b、参照梁6は、圧電膜7上面に形成された対向する一対の櫛型電極10a、10bからなるIDT電極10を有している。検出梁5a、5b、参照梁6それぞれの櫛型電極10a、10bからなるIDT電極10は、すべて同一形状である。このIDT電極10と圧電膜7とで、SAW共振子11a、11b、11cが構成されている。ここで、圧電膜7は基板1面と垂直の方向(ここではZ方向と定義する)に分極されている。
【0031】
SAW共振子の共振周波数fは,音速をv,隣接するIDT電極の間隔をwとすると[数1]式で表される。
【数1】

【0032】
図3は、本実施の形態の慣性センサの作用を説明する図である。慣性センサ100に基板1面内でY軸と垂直の方向(ここではX軸方向と定義する)の加速度が加わった場合を考える。
【0033】
X軸方向の加速度により、重錘4の重心12にX軸方向の力Axが働き、検出梁5aおよび5bはアンカー部2を中心としてX軸方向に屈曲する。この結果、図3に示すように、検出梁5aにはY軸方向の圧縮歪が、検出梁5bには引張り歪が生じる。
【0034】
検出梁5aおよび5bに歪が加わると,歪に応じてIDT電極10の対向する櫛歯の間隔wが変化し,SAW共振子の共振周波数fが変化することになる。すなわち、隣接する検出梁5aおよび5bに形成されたSAW共振子11aおよび11b間の共振周波数の変化を検出することで、X方向に加わった加速度の大きさを測定することができる。
【0035】
一方、慣性センサ100にY軸方向に加速度が加わった場合は、検出梁5aおよび5bにはほぼ均等にY軸方向の引張り応力が加わる。しかしながら、この引張り応力は非常に小さく、慣性センサ100はY軸方向の加速度に対してはほとんど感度を持たない。
【0036】
一方、慣性センサ100にZ軸方向に加速度が加わった場合は、重錘4の重心12にZ軸方向の力が働き、検出梁5aおよび5bはアンカー部2を中心としてZ方向に屈曲する。この結果、検出梁5aおよび5bの圧電膜7の上面側にはY軸方向の圧縮歪が生じる。
【0037】
弾性表面波(SAW)は圧電膜7が電極に接した表面近傍に局在しているので、Y軸方向の圧縮歪によりSAW共振子の共振周波数に変化が生じる。一方、参照梁6は重錘4に接続されていないので、加速度の影響を受けない。
【0038】
したがって、参照梁6に形成されたSAW共振子11cの共振周波数は変化しない。すなわち、検出梁5aあるいは5bに形成されたSAW共振子11a、11bと参照梁6に形成されたSAW共振子11c間の共振周波数の変化を測定することで、Z方向に加わった加速度の大きさを検出することができる。
【0039】
このように、慣性センサ100においては、X軸およびZ軸方向の加速度に関する感度を持つ、2軸加速度センサを実現することができる。
【0040】
図4は、本実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の一例を示すブロック図である。この慣性測定装置は加速度測定装置であり、SAW共振子11a、11b、11cの独立発振を利用したものである。この加速度測定装置は、慣性センサ100に発振回路および信号処理部を設け、慣性センサ100にかかる加速度を測定する。図4に示すように、信号処理部は、例えば、周波数弁別器15a、b、演算記憶部16で構成される。
【0041】
慣性センサ100の検出梁5aに形成されたSAW共振子11aが発振回路13aに接続され、検出梁5bに形成されたSAW共振子11bが発振回路13bに接続され、参照梁6に形成されたSAW共振子11cが発振回路13cに接続されている。
【0042】
発振回路13a〜cとしては,例えば公知のコルピッツ型発振回路などが使用でき、それぞれ独自の周波数で自励発振させる。
【0043】
検出梁5aに形成されたSAW共振子11aと、参照梁6に形成されたSAW共振子11cの共振周波数の差Δf1を第1の周波数弁別器15aで読み取り電圧に変換し、演算記憶回路16に出力する。検出梁5bに形成されたSAW共振子11bと、参照梁6に形成されたSAW共振子11cの共振周波数の差Δf2を第2の周波数弁別器15bで読み取り電圧に変換し、演算記憶回路16に出力する。周波数弁別器15a、15bとしては、問えばフォスター・シーレ回路ないしはレシオ検波回路などを使用することができる。
【0044】
図5は、本実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の上面図であり、図6は図5のA−A断面図である。慣性測定装置160は、慣性センサと同一の基板上に周辺回路を同時に作りこんだことを特徴とする。
【0045】
慣性測定装置160においては、Si基板1上に形成された周辺回路33と慣性センサ部とを有する。周辺回路33には図には示さないが、図4に示す発振回路13a〜c、周波数弁別器15a、15b、演算記憶回路16を含む。また慣性センサ部はアンカー部2、重錘4、検出梁5a、5b、参照梁6を含む。
【0046】
アンカー部2にはビアホール34が設けられており、SAW共振子11a〜cの櫛型電極10a、10bと周辺回路33の発振回路とを接続している。周辺回路33はすべてCMOS回路で形成されている。図6に示すように、Si基板1上にまず周辺回路を形成した後、その上に慣性センサ部が形成される。
【0047】
このように慣性センサ部と周辺回路を一体化してSi基板上に作成することにより、超小型の慣性測定装置を実現できる。また、慣性センサ部と周辺回路を接続する外部配線を除去できるため、寄生容量や寄生インダクタンスが発生せずに高精度の測定が可能になる。さらに外部からの侵入ノイズに強く、また発振回路から外へのノイズ量を著しく減少させることが可能になる。
【0048】
ここでX方向の加速度に対するゲージファクタをGx、Z方向の加速度に対するゲージファクタをGzとすると、X方向の加速度に対する出力VxおよびZ方向の加速度に対する出力Vzは、それぞれ[数2]式と[数3]式で表される。
【数2】

【数3】

【0049】
慣性センサ100を温度変化がある環境で使用すると、SAW共振子の部材である圧電膜7と電極層8が熱膨張を起こすとともに、弾性率も変化する。その結果、加速度以外の要因で周波数に変化が生じることになる。
【0050】
しかしながら、本実施の形態の慣性センサ100のように、SAW共振子11a〜cがお互いに同一材料、同一形状に形成されていれば、温度変化に伴う寸法や弾性率の変化も同一に現れる。そのため、周波数弁別器15a、15bで2個のSAW共振子の周波数変化を差動的に取り出すことにより、各SAW共振子が同一に受ける温度変化による出力信号の変化を相殺することができる。したがって、加速度Gに対してのみ感度を持つ高精度な慣性センサおよびこれを用いた慣性測定装置を得ることができる。
【0051】
図7は、本実施の形態の慣性センサの製造方法を示す工程順模式断面図である。慣性センサ100は既存のプロセスを使用して、図7に示すように容易に作製することができる。
【0052】
まず図7(a)に示すように、例えば、表面に酸化膜を形成したSi基板である基板1の表面に犠牲層32を形成する。犠牲層32としては、他の膜材料に対して選択エッチングが可能な、無機材料、金属材料、有機材料を使用することが可能であるが、ここでは非晶質シリコンを例に説明する。
【0053】
次に、同図(b)に示すように、犠牲層32の上に圧電膜7および電極層8を形成する。圧電膜7として例えば厚さ2μmのAlNを、電極層8として例えば厚さ200nmのAlを使用し、双方ともスパッタにより作製する。
【0054】
次に、同図(c)に示すように、公知のリソグラフィーおよびエッチング法を使用して圧電膜7上の電極層8のパターニングを行い、IDT電極10を形成した。
【0055】
次に、同図(d)に示すように、公知のリソグラフィーおよびエッチング法を使用して圧電膜7のパターニングを行い,検出梁5aおよび5b、参照梁6、アンカー部2(図示せず)、重錘4(図示せず)の形状を形成する。
【0056】
次に同図(e)に示すように、犠牲層32を、XeFをエッチングガスとして使用した選択エッチングにより除去する。
【0057】
このように、本実施の形態の慣性センサ100は、同一の圧電膜7をパターニングすることで、検出梁5aおよび5b、参照梁6、アンカー部2、重錘4を形成可能である。また、IDT電極10も、圧電膜7上面の電極層8の一層をパターニングするだけで形成可能である。したがって、プロセスが容易であるとともに小型化も容易である。また、同一形状のIDT電極を精度および再現性良く形成可能であるため、高精度な慣性センサが実現できる。
【0058】
なお、ここでは検出梁5aおよび5b、参照梁6の3つの梁を用いた2軸の加速度が測定可能な加速度センサおよび加速度測定装置について説明した。しかし、例えば、検出梁5aと検出梁5b、あるいは、検出梁5aと参照梁6の2つの梁のみで構成される1軸の加速度が測定可能な加速度センサおよび加速度測定装置であっても、本実施の形態と同様、製造プロセスの容易化、小型化、高精度化といった効果が得られる。
【0059】
なお、SAW共振子が形成される圧電膜として、常温に近い温度で成膜が可能であり、比較的高い圧電定数を持ち、比較的高い品質係数(Q値)を持つ圧電膜が望ましく、基板面に垂直に[0001]方位で配向した窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)が最適であるが、必ずしも両者には限らなくてもよい。
【0060】
また、ここではアンカー部、重錘、複数の梁の圧電膜がすべて連続している場合を例に説明した。製造プロセスを容易にするためには、このような構成が望ましい。しかし、それぞれの要素を構成する圧電膜に物理的な境界が存在しても、小型化、高精度化といった効果は得られる。
【0061】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
本発明の第1の実施の形態の第1の変形例の慣性センサは、梁が重錘に向かって細くなるテーパー形状を有することを特徴とする。第1の実施の形態においては、2個の検出梁5a、5bのX軸方向の幅を一定にしている。Z方向の加速度が重錘4に加わった場合、検出梁5a、5bに生じる歪は,検出梁5a、5bに加わる曲げモーメントに比例する。曲げモーメントは重錘4の重心12に加わる加速度による力Azと、重心12と検出梁5a、5bの各部分の間の距離の積に比例する。
【0062】
したがって検出梁5a、5bに生じる歪は,長さ方向(Y軸方向)の分布を持つことになる。これは、SAW共振子11a、11bの共振周波数が長さ方向の分布を持つことと同義である。共振周波数に分布があると、全体のSAW共振子11a、11bの共振のQ値が低下し、加速度の測定精度が低下するという問題が生じる。X方向の加速度が加わった場合も基本的に同様の問題が生じる。この問題は,検出梁5a、5bの幅を重心12からの距離に応じて変化させ、全体としてテーパー状にすることで解決される。
【0063】
図8は本発明の第1の実施の形態の第1の変形例の上面図である。本変形例の慣性センサ110では、検出梁5a、5bの幅について、アンカー部2に接している部分の検出梁5a、5bの幅を大きくし、重錘4に接している部分における幅を小さくする。それとともに、2個の検出梁5a、5bの距離を、アンカー部2に接している部分を広くし、重錘4に接している部分において狭くしている。このような形状の変形を検出梁5a、5bに加えることにより、長さ方向の歪分布をほぼ解消し、SAW共振子11a、11bの共振のQ値を上昇することができる。したがって、より精度の高い加速度の測定が実現可能となる。
【0064】
なお、図8では、参照梁6についても検出梁5a、5bと同一の形状にしている。SAW共振子のおかれる環境を均質化しより高精度な検出、測定を実現する観点からは、このように参照梁6についても検出梁5a、5bと同様のテーパー形状にすることが好ましい。しかしながら、必ずしも同一の形状でなくとも本変形例の効果は実現される。
【0065】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
本発明の第1の実施の形態の第2の変形例の慣性センサは、SAW共振子の電極が、圧電膜下面の平板電極と圧電膜上面の櫛型電極で構成されることを特徴とする。第1の実施の形態においては,SAW共振子11a〜cの電極として、圧電膜7上面の電極層8で形成した第1の櫛形電極10aと第2の櫛形電極10bを用いたIDT電極10を用いた。この場合、単一の電極層8のみで電極を形成できるという利点があるが、検出梁5a、5bの幅が狭い場合には2個の電極を同一面上に形成するのが難しくなる。
【0066】
図9は、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例の慣性センサの上面図である。図10は、図9のA−A断面図である。
【0067】
第1の実施の形態の第2の変形例においては、SAW共振子11a〜cの電極が第1および第2の電極層17および18を使用して形成される。また,圧電膜としても第1および第2の圧電膜19、20を使用して形成される。第1の電極層17は,検出梁5a、5bおよび参照梁6の第1の圧電膜19の上面に全面に形成する。第2の電極層18は第2の圧電膜20の上面にあり、櫛形電極10aがこの第2の電極層18をパターニングして形成される。
【0068】
本変形例においては,櫛型電極10aが1本あれば済むので,検出梁5a、5bの幅が狭い場合にも適用することが可能である。なお、重錘4についても,第1および第2の圧電膜19、20、および第1および第2の電極層17、18から構成することができる。
【0069】
(第1の実施の形態の第3の変形例)
本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の慣性センサは、重錘の側面側の周囲に空隙を介してストッパが設け、かつ、重錘の上部に空隙を介して蓋部を設けることを特徴とする。すなわち、本変形例の慣性センサ130は,第1の実施の形態の慣性センサ100の周囲に衝撃印加時に破壊を防ぐストッパを加えて封止した慣性センサである。
【0070】
図11は、本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の慣性センサの上面図である。図12は、図11のA−A断面図である。
【0071】
本変形例においては、重錘4の周囲に空隙24を介して、重錘4と同じ圧電膜7および電極層8からなるストッパ23が形成されている。さらに接着層21を介して蓋部22を形成されており、この蓋部22により封止を行う。
【0072】
空隙24は、重錘4にX軸方向の最大計測加速度が加わったときに生じる変位の2〜3倍に設定することが望ましい。X軸方向に最大計測加速度が加わっても重錘4はストッパ23に接触せずに測定を行うことが可能であり、かつ最大計測加速度の数倍以上の衝撃荷重が加わった場合は、重錘4がストッパ23に接触するため、検出梁5a、5bに過度の応力が加わらず、衝撃破壊を防止することが可能である。また、ストッパ23は、重錘4や検出梁5a、5bと同一の材料で同一の工程で作成することができるため、製造時の追加工程は必要がない。
【0073】
ストッパ23の上部に接着層21を介して蓋部22を接着し、全体を封止する。このとき、重錘4と基板1との間、および重錘4と蓋部22の間には空隙25が形成される。空隙25は、重錘4にZ軸方向の最大計測加速度が加わったときに生じる変位の2〜3倍に設定することが望ましい。Z軸方向に最大計測加速度が加わっても重錘4は基板1や蓋部22に接触せずに測定を行うことが可能であり、かつ最大計測加速度の数倍以上の衝撃荷重が加わった場合は、重錘4が基板1や蓋部22に接触するため、検出梁5a、5bに過度の応力が加わらず、衝撃破壊を防止することが可能である。
【0074】
接着層21としては、エポキシ系やポリイミド系の既知のレジストなどを使用することができる。プリベーク後に蓋部22を密着してベーキングすることにより接着することができる。
【0075】
蓋部22の材料としては、各種基板材料や金属板等を使用することができる。温度サイクルによる破壊を防止するという観点からは、基板1と同じ材料か,熱膨張率の近い材料が望ましい。
【0076】
(第1の実施の形態の第4の変形例)
本発明の第1の実施の形態の第4の変形例の慣性センサは、SAW共振子の前後に反射器を有することを特徴とする。すなわち、第1の実施の形態の慣性センサ100のSAW共振子11a〜cを挟んで前後に反射器26を形成した慣性センサである。
【0077】
図13は、本発明の第1の実施の形態の第4の変形例の慣性センサの上面図である。本変形例の慣性センサ140においては、検出梁5a、5bおよび参照梁6に形成されたSAW共振子11a〜cの前後にそれぞれ反射器26が形成されている。反射器26は圧電膜7の表面に電極層8を使用してグレーティングを形成することにより作製できる。
【0078】
SAW共振子11a〜cに励起された定在波は、Y軸の正および負方向に伝播していくが、この際、定在波は前後に形成された反射器26により反射されてSAW共振子に戻る。したがって反射器26によりSAWの閉じ込め特性が格段に向上する。よって、共振のQ値が増大し、周波数の測定精度が向上することになる。なお、反射器26はSAW共振子11a〜cと類似の構造をしており、SAW共振子11a〜cと同一の圧電膜7および電極層8を使用して同時に形成することができる。
【0079】
(第1の実施の形態の第5の変形例)
本発明の第1の実施の形態の第5の変形例の慣性センサは、慣性センサを2個基板面内に直交して並べることにより、3軸の加速度を測定することを特徴とする慣性センサである。
【0080】
図14は、本発明の第1の実施の形態の第5の変形例の慣性センサの上面図である。本変形例の慣性センサ150においては、Y軸方向に延在し、X軸およびZ軸方向の加速度を検出することが可能な第1の慣性センサ部150aと、X軸方向に延在し、Y軸およびZ軸方向の加速度を検出することが可能な第2の慣性センサ部150bを有する。この構成により、慣性センサ150は、3軸の加速度を測定可能となっている。
【0081】
第1の慣性センサ部150aは、第1の実施の形態の慣性センサ100と同等の構成を備えている。第2の慣性センサ部150bは、慣性センサ100とほぼ同等の構成を備えているが、参照梁6を省略している。これは第1の慣性センサ部150aの参照梁6を、第2の慣性センサ部150bの参照梁としても使用できるためである。
【0082】
第1の慣性センサ部150aの第1の検出梁5aに形成されたSAW共振子11aと参照梁6に形成されたとSAW共振子11cの共振周波数の差をΔf11とし、第2の検出梁5bに形成されたSAW共振子11bと参照梁6に形成されたSAW共振子11cの共振周波数の差をΔf12とする。また、第2の慣性センサ部150bの第1の検出梁5aに形成されたSAW共振子11aと参照梁6に形成されたとSAW共振子11cの共振周波数の差をΔf21とし、第2の検出梁5bに形成されたSAW共振子11bと参照梁6に形成されたSAW共振子11cの共振周波数の差をΔf22とする。そうすると、X、YおよびZ方向の加速度に対する出力Vx,VyおよびVzは,それぞれ以下の[数4]〜[数6]式で表される。
【数4】

【数5】

【数6】

【0083】
このように、2軸の慣性センサを2組使用することにより、容易に3軸の加速度の測定が可能な慣性センサを構成することが可能である。
【0084】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の慣性センサは、基板と、基板上方の圧電膜をパターニングして形成された重錘と、重錘の内部の切り欠き部に圧電膜をパターニングして形成され、基板上に固定されるアンカー部とを備えている。そして、重錘の内部の切り欠き部に圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁を備えている。また、重錘の内部の切り欠き部に圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の上記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定され、アンカー部に対して第1の梁と反対側に設けられる第2の梁とを備えている。そして、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる角加速度を測定可能とする。
【0085】
本実施の形態の慣性センサは、言い換えれば、基板と、基板上方の第1の圧電膜で形成された重錘と、重錘の内部の切り欠き部に、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成され、基板上に固定されるアンカー部と、重錘の内部の切り欠き部に、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第3の圧電膜で形成され、第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁と、重錘の内部の切り欠き部に、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第4の圧電膜で形成され、第4の圧電膜上面の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定され、アンカー部に対して第1の梁と反対側に設けられる第2の梁とを備えている。そして、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる角加速度を測定可能とする。さらに、第1の圧電膜、第2の圧電膜、第3の圧電膜、および第4の圧電膜がすべて連続している。ここで、2つの圧電膜が連続しているとは、それぞれの圧電膜の間に巨視的にも微視的にも物理的な境界が存在していないことを意味する。
【0086】
本実施の形態の慣性センサは、2軸の角加速度の測定が可能な慣性センサである。図15は、本発明の第2の実施の形態の慣性センサの上面図である。図16は、図15のA−A断面図である。
【0087】
この慣性センサ200は、図15および図16に示すように、基板1と基板1上方の圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7と電極層8との積層構造を有する重錘4を備えている。そして、重錘4の内部の切り欠き部に圧電膜7をパターニングして形成され、基板1上に固定されるアンカー部2を備えている。ここで、圧電膜7は基板面と垂直の方向(ここではZ方向と定義する)に分極されている。
【0088】
また、重錘4の内部の切り欠き部に圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の櫛型電極10a、10bを構成要素とするIDT電極10を含む第1の弾性表面波共振子11aを有し、一端がアンカー部2に固定され他端が重錘4に固定される第1の検出梁5aを備えている。第1の検出梁5aは、アンカー部2からX軸の正の方向に延在する。
【0089】
また、重錘4の内部の切り欠き部に圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の櫛型電極10a、10bと同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子11bを有し、一端がアンカー部2に固定され他端が重錘4に固定され、アンカー部2に対して第1の検出梁5aと反対側に設けられる第2の検出梁5bとを備えている。すなわち、第2の検出梁5bは、アンカー部2からX軸の負の方向に延在する。
【0090】
さらに、重錘4の内部の切り欠き部に圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の櫛型電極10a、10bを含む第3の弾性表面波共振子11cを有し、一端がアンカー部2に固定され他端が重錘4に固定される第3の検出梁5cを備えている。第3の検出梁5cは、アンカー部2からY軸の正の方向に延在する。
【0091】
また、重錘4の内部の切り欠き部に圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の櫛型電極10a、10bと同一形状の櫛型電極を含む第4の弾性表面波共振子11dを有し、一端がアンカー部2に固定され他端が重錘4に固定され、アンカー部2に対して第3の検出梁5cと反対側に設けられる第4の検出梁5dとを備えている。すなわち、第4の検出梁5dは、アンカー部2からY軸の負の方向に延在する。
【0092】
ここで,慣性センサ200に基板1面内でX軸回りの角加速度が加わった場合を考える。X軸回りの角加速度により、重錘4にX軸回りの回転力αxが働く。そして、検出梁5cおよび5dはアンカー部2を中心としてZ軸の正負の方向に屈曲する。この結果、検出梁5cの上面側にはY軸方向の圧縮歪が、検出梁5dには引張り歪が生じる。
【0093】
検出梁5cおよび5dの上面側に歪が加わると、歪に応じてIDT電極10の対向する櫛歯の間隔wが変化し、SAW共振子の共振周波数fが変化することになる。すなわち、Y軸に沿って配置された検出梁5cに形成されたSAW共振子11cと検出梁5dに形成されたSAW共振子11dと間の共振周波数の変化Δfcdを検出することで、X軸回りに加わった角加速度の大きさを測定することができる。
【0094】
一方、慣性センサ200にY軸回りの角加速度が加わった場合は、重錘4にY軸回りの回転力αyが働き、検出梁5aおよび5bはアンカー部2を中心としてZ軸の正負の方向に屈曲する。この結果、検出梁5aの上面側にはX軸方向の圧縮歪が、検出梁5bには引張り歪が生じる。
【0095】
検出梁5aおよび5bの上面側に歪が加わると、歪に応じてIDT電極の対向する櫛歯の間隔wが変化し、SAW共振周波数の変化が生じる。すなわち、検出梁5aに形成されたSAW共振子11aと検出梁5bに形成されたSAW共振子11b間の共振周波数の変化Δfabを測定することで、Y軸回りに加わった角加速度の大きさを検出することができる。
【0096】
ここでX軸回りおよびY軸回りの角加速度に対するゲージファクタをGαとすると、X軸回りおよびY軸回りの角加速度に対する出力VαxおよびVαyは、それぞれ以下の[数7]式と[数8]式で表される。
【数7】

【数8】

【0097】
このように、慣性センサ200によれば、X軸およびY軸回りの角加速度に関する感度を持ち、製造プロセスの容易化、小型化、高精度化可能な2軸角加速度センサを実現することができる。
【0098】
なお、ここではアンカー部、重錘、複数の梁の圧電膜がすべて連続している場合を例に説明した。製造プロセスを容易にするためには、このような構成が望ましい。しかし、それぞれの要素を構成する圧電膜に物理的な境界が存在しても、小型化、高精度化といった効果は得られる。
【0099】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の慣性センサは、基板と、基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、基板上に固定されるアンカー部と、圧電膜をパターニングして形成された重錘を備えている。そして、圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁を備えている。また、圧電膜をパターニングして形成され、圧電膜上面の上記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端がアンカー部および重錘のいずれにも固定されない第2の梁とを備えている。そして、第1の梁の櫛型電極を挟んで圧電膜上面および下面に一対の励振用電極が設けられ、第1の梁を励振させ、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる角速度を測定可能とする。
【0100】
本実施の形態の慣性センサは、言い換えれば、基板と、基板上に固定され、第1の圧電膜で形成されたアンカー部と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成された重錘と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上での第3の圧電膜で形成され、第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端が重錘に固定される第1の梁と、第1の圧電膜と同一材料であり第1の圧電膜と略同一平面上での第4の圧電膜で形成され、第4の圧電膜上面の櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端がアンカー部に固定され他端がアンカー部および重錘のいずれにも固定されない第2の梁とを備えている。そして、第1の梁の櫛型電極を挟んで第3の圧電膜上面および下面に一対の励振用電極が設けられている。そして、第1の梁を励振させ、第1の弾性表面波共振子と第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで重錘に加わる角速度を測定可能とする。さらに、第1の圧電膜、第2の圧電膜、第3の圧電膜、および第4の圧電膜がすべて連続している。ここで、2つの圧電膜が連続しているとは、それぞれの圧電膜の間に巨視的にも微視的にも物理的な境界が存在していないことを意味する。
【0101】
第1の実施の形態では加速度を測定する慣性センサ、第2の実施の形態では角加速度を検出する慣性センサを説明した。本実施の形態においては角速度を測定する慣性センサについて説明する。
【0102】
本実施の形態の慣性センサを詳細に説明する前に、角速度センサの動作原理を説明する。図17は、本発明の第3の実施の形態の慣性センサの動作原理を説明する模式図である。
本実施の形態の慣性センサは、コリオリ力を利用して角速度を測定する。
【0103】
図17に示したように、XYZ3次元座標系の原点位置に振動子81が置かれているものとする。この振動子81のY軸を中心とする角速度ωyを測定するには、この振動子81にZ軸方向の振動Uzを与えたときに、X軸方向に発生するコリオリ力Fcxを検出すればよい。このときに発生するコリオリ力Fcxは,
【数9】

で表される。ここで、mは振動子81の質量、vzは振動子81の振動についての瞬時の速度、ωyは振動子81の瞬時の角速度である。
【0104】
図18は、本発明の第3の実施の形態の慣性センサの上面図である。図19は、図18のA−A断面図である。
【0105】
慣性センサ300は、図18および図19に示すように、基板1と、基板1上方の圧電膜7をパターニングして形成され、基板1上に固定されるアンカー部2と、圧電膜7をパターニングして形成された重錘4を備えている。ここで、圧電膜7は基板面と垂直の方向(ここではZ方向と定義する)に分極されている。
【0106】
そして、圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の櫛型電極10a、10bを構成要素とするIDT電極10を含む第1の弾性表面波共振子11aを有し、一端がアンカー部2に固定され他端が重錘4に固定される振動梁310を備えている。振動梁310は、基板面内のY方向に延在する。
【0107】
また、圧電膜7をパターニングして形成され、圧電膜7上面の上記櫛型電極10a、10bと同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子11cを有し、一端がアンカー部2に固定され他端がアンカー部2および重錘4のいずれにも固定されない参照梁6と備えている。参照梁6も、基板面内のY方向に延在する。
【0108】
振動梁310および重錘4は、圧電膜7,圧電膜7の下面に形成された第1の電極層303、および圧電膜7の上面に形成された第2の電極層304から構成される。
【0109】
そして、振動梁310の櫛型電極10a、10bを挟んで圧電膜7上面および下面に一対の励振用電極が設けられている。すなわち、振動梁310のアンカー部2に隣接した部分の両側面には、振動梁310をX軸方向に共振させるための、第1の電極層303からなる下部電極302aおよび302b、さらに第2の電極層304からなる上部電極301aおよび302bが形成されている。この励振用電極により振動梁310を励振させ、第1の弾性表面波共振子11aと第2の弾性表面波共振子11cの共振周波数の差を検出することで重錘に加わる角速度を測定可能とする。
【0110】
図20は、本実施の形態の慣性センサを用いた慣性測定装置の一例を示すブロック図である。この慣性測定装置は角速度測定装置である。低周波発振回路305により、振動梁310の上部電極301a、301bと下部電極302a、302bの間に交番電圧が印加される。このとき、301aと302a間の印加電圧と、301b,302b間の印加電圧は逆相関係とする。すなわち、301aと302a間に正電圧が印加されたときにY軸方向に伸長し、301bと302b間に負電圧が印加されたときにY軸方向に収縮するため、振動梁310はX軸正方向に屈曲する。交番電圧の印加によって、振動梁310はX軸方向に励振され、重錘4はX軸方向に共振振動を行う。低周波発振回路305として、コルピッツ発振回路等を使用することができる。
【0111】
重錘4がX軸方向に共振振動をしているときに、Y軸周りの角速度が生じると、Z軸方向にコリオリ力が発生し、重錘4はZ軸方向に共振を生じる。このときに振動梁310に生じる歪を、振動梁310の上面に形成されたSAW共振子11aと、参照梁6の上面に形成されたSAW共振子11cの共振周波数の差として検出する。このために、発振回路13、周波数弁別器15、演算記憶回路16が第1の実施の形態と同様に設置されている。発振回路13aと13bの周波数差は周波数弁別器15により電圧に変換される。演算記憶回路16においては、周波数弁別器の信号を平滑化やフィルタリングしたり、発振回路16の信号を参照して位相検波をおこなったりすることができる。
【0112】
このように、慣性センサ300によれば、製造プロセスの容易化、小型化、高精度化可能な角速度センサを実現することができる。
【0113】
本実施の形態のような圧電共振を使用した角速度センサの最も大きな短所は、加振するX軸方向の振幅に対して、コリオリ力により励起されるZ軸方向の振幅が3桁ほど小さく、近接した加振系と検出系の電極間でクロストークが生じると、高感度な角速度の検出が困難になる点である。しかしながら、本実施の形態では、加振系が振幅変調であるのに対し、検出系のSAW共振子からの信号は周波数変調であり、原理的に電気的なクロストークを生じないという利点がある。
【0114】
なお、ここではアンカー部、重錘、複数の梁の圧電膜がすべて連続している場合を例に説明した。製造プロセスを容易にするためには、このような構成が望ましい。しかし、それぞれの要素を構成する圧電膜に物理的な境界が存在しても、小型化、高精度化といった効果は得られる。
【0115】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、慣性センサ、慣性測定装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる慣性センサ、慣性測定装置等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0116】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての慣性センサ、慣性測定装置が、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0117】
1 基板
2 アンカー部
4 重錘
5a〜d 検出梁
6 参照梁
7 圧電膜
8 電極層
10 IDT電極
10a、b 櫛型電極
11a〜d SAW共振子
12 重心
13a〜c 発振回路
15 周波数弁別器
15a 第1の周波数弁別器
15b 第2の周波数弁別器
16 演算記憶回路
17 第1の電極層
18 第2の電極層
19 第1の圧電膜
20 第2の圧電膜
21 接着層
22 蓋部
23 ストッパ
24 空隙
26 反射器
32 犠牲層
33 周辺回路
34 ビアホール
100 慣性センサ
110 慣性センサ
120 慣性センサ
130 慣性センサ
140 慣性センサ
150 慣性センサ
150a 第1の慣性センサ部
150b 第2の慣性センサ部
160 慣性測定装置
200 慣性センサ
300 慣性センサ
301a、b 上部電極
302a、b 下部電極
303 第1の電極層
304 第2の電極層
305 低周波発振回路
306 タイミング部
310 振動梁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、
前記圧電膜をパターニングして形成された重錘と、
前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定される第2の梁とを備え、
前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる加速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項2】
前記櫛型電極が、前記圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極であることを特徴とする請求項1記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記第2の梁の他端が前記アンカー部および前記重錘のいずれにも固定されないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の慣性センサ。
【請求項4】
前記第2の梁の他端が前記重錘に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の慣性センサ。
【請求項5】
前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第3の弾性表面波共振子を有し、一端が前記基板に固定され他端が前記重錘に固定される第3の梁とを備え、
前記第1の弾性表面波共振子と前記第3の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる加速度を測定可能とすることを特徴とする請求項3記載の慣性センサ。
【請求項6】
前記梁が前記重錘に向かって細くなるテーパー形状を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項7】
前記重錘の側面側の周囲に空隙を介してストッパが設けられ、かつ、前記重錘の上部に空隙を介して蓋部が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項8】
前記圧電膜が、前記基板面に垂直に[0001]方位で配向した窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)であることを特徴とする請求項1ないし請求項7いずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項9】
基板と、
前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成された重錘と、
前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、
前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記重錘の内部の切り欠き部に前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定され、前記アンカー部に対して前記第1の梁と反対側に設けられる第2の梁とを備え、
前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角加速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項10】
前記櫛型電極が、前記圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極であることを特徴とする請求項9記載の慣性センサ。
【請求項11】
基板と、
前記基板上方の圧電膜をパターニングして形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、
前記圧電膜をパターニングして形成された重錘と、
前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記圧電膜をパターニングして形成され、前記圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記アンカー部および前記重錘のいずれにも固定されない第2の梁とを備え、
前記第1の梁の前記櫛型電極を挟んで前記圧電膜上面および下面に一対の励振用電極が設けられ、前記第1の梁を励振させ、前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項12】
前記櫛型電極が、前記圧電膜上面に形成された対向する一対の櫛型電極であることを特徴とする請求項11記載の慣性センサ。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に固定され、第1の圧電膜で形成されたアンカー部と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成された重錘と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第3の圧電膜で形成され、前記第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第4の圧電膜で形成され、前記第4の圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定される第2の梁とを備え、
前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる加速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項14】
基板と、
前記基板上方の第1の圧電膜で形成された重錘と、
前記重錘の内部の切り欠き部に、前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成され、前記基板上に固定されるアンカー部と、
前記重錘の内部の切り欠き部に、前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第3の圧電膜で形成され、前記第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記重錘の内部の切り欠き部に、前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第4の圧電膜で形成され、前記第4の圧電膜上面の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定され、前記アンカー部に対して前記第1の梁と反対側に設けられる第2の梁とを備え、
前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角加速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項15】
基板と、
前記基板上に固定され、第1の圧電膜で形成されたアンカー部と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上の第2の圧電膜で形成された重錘と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上での第3の圧電膜で形成され、前記第3の圧電膜上面の櫛型電極を含む第1の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記重錘に固定される第1の梁と、
前記第1の圧電膜と同一材料であり前記第1の圧電膜と略同一平面上での第4の圧電膜で形成され、前記第4の圧電膜上面の前記櫛型電極と同一形状の櫛型電極を含む第2の弾性表面波共振子を有し、一端が前記アンカー部に固定され他端が前記アンカー部および前記重錘のいずれにも固定されない第2の梁とを備え、
前記第1の梁の前記櫛型電極を挟んで前記第3の圧電膜上面および下面に一対の励振用電極が設けられ、前記第1の梁を励振させ、前記第1の弾性表面波共振子と前記第2の弾性表面波共振子の共振周波数の差を検出することで前記重錘に加わる角速度を測定可能とすることを特徴とする慣性センサ。
【請求項16】
前記第1の圧電膜、第2の圧電膜、第3の圧電膜、および第4の圧電膜がすべて連続していることを特徴とする請求項13ないし請求項15いずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16いずれか一項に記載の慣性センサと、
前記慣性センサの前記弾性表面波共振子に接続される発振回路とを備え、
加速度、角加速度または角速度を測定することを特徴とする慣性測定装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−190774(P2010−190774A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36404(P2009−36404)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】