説明

成形プレス用耐熱クッション材

【課題】成形プレス用耐熱クッション材として優れた機能、特に昇温速度の調整とクッション性の良いクッション材を提供する。
【解決手段】基体10Bとフェルト材1A、1Bを積層させてなる成形プレス用耐熱クッション材であって、セラミック繊維を含むフェルト材を1層以上有することを特徴とする、成形プレス用耐熱クッション材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形プレス用耐熱クッション材(以下、単にクッション材と記す場合がある。)に係り、優れた昇温速度と高いクッション性を有する耐熱性クッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱盤間にて挟持し、この熱盤による熱プレスにより製造される積層製品がある。
この積層製品の一例は次の通りである。なお、積層製品は以下の例に限らず、更に多様な製品を含むものである。
(1)プリント配線板の基板となる積層板
クラフト紙とフェノール樹脂からなる紙フェノール積層板、ガラス繊維の織布とエポキシ樹脂からなるガラスエポキシ積層板などがある。
(2)プリント配線板
基板の片面に導体パターンを形成した片面プリント配線板、基板の両面に導体パターンを形成した両面プリント配線板、基板の外面だけでなく内部にも導体パターンを形成した多層プリント配線板などがある。
(3)フラットパネルディスプレイ
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネセンスなどがある。
(4)半導体パッケージ
チップとほぼ同サイズのチップサイズパッケージ(Chip Size Package,CSP)などがある。
【0003】
これらの各種製品の製造工程にそれぞれ共通することは、上記熱盤と製品との間に、熱盤からの熱を製品全面に均一に伝えるとともに、クッション性を有するクッション材を介することにある。
【0004】
このクッション材の具体的使用例を、図1に示す両面プリント配線板の製造装置に基づき説明する。
図1において、40は熱盤、Cはクッション材、50は鏡面板、60は銅箔、70はプリプレグである。なお、最終的には、プリプレグ70と銅箔60とにより両面プリント配線板が構成される。
図1において、プリプレグ70は、ガラスクロスにエポキシ樹脂が含浸され半キュアー状態とされている板材を、複数枚重ねることにより構成される。
【0005】
そして、熱盤40,40により熱と圧力を加え、成形するのであるが、この時の成形条件は、エポキシ樹脂原料の配合などにより異なる。このため、成形工程で使用されるクッション材の熱移動量(昇温速度:℃/min)が製造条件に合致していないと、熱盤40側の製品と、熱盤40,40間の中央に位置する製品とで物性差が生ずる虞があった。さらに、一つの製品中においても、中央部と周辺部とで物性差が発生する虞があった。
【0006】
これは、熱プレスによりプリプレグ70中の樹脂の粘度が一旦下がり液状に戻った後、徐々に硬化が進むという製造工程において、当該工程中にプレス圧を昇圧するタイミングがずれるためである。
【0007】
すなわち、樹脂を移動させプリプレグ同士の接着、プリプレグと銅箔の接着および樹脂中に含まれている空気の除去・細分吸収をさせるための、温度と圧力による成形プレスのタイミングが許容範囲を越えるからである。
例えば、樹脂粘度が低くなり過ぎた時にプリプレグに圧力が掛かると、樹脂が必要以上に流れて、積層板の中央部板厚が厚く、周辺部厚が薄くなるという問題が発生する。よって、最終的に製造された製品の厚みがそれぞれ異なるといった事態が発生する。
一方、樹脂粘度が高くなり過ぎた時にプリプレグに圧力が掛かると、樹脂が十分に流れず、樹脂中に含まれている空気が消えないため、製品の絶縁性等に問題を生ずる。
従って、クッション材には、優れた昇温速度を有することが要求されていた。
【0008】
従来より、成形プレス用クッション材としてはクラフト紙等が多く使用されていた。しかし、近年においては、製造すべき製品の大型化や精密化が進んでいるため、さらに優れた特性を有するクッション材が要望されている。
このようなクッション材として、無機繊維と耐熱性芳香族系重合体のパルプ状物を含むもの(特許文献1)、および芳香族系ポリアミド繊維を含むもの(特許文献2)がある。しかし、いずれもクッション量とクッションの持続性を図ることが困難であり、寿命が短いものであった。
【0009】
例えば、このようなクッション材として、図2に示すものがある。図2において、クッション材C4は、基体11Bと、基体11Bの表裏にメタ系芳香族ポリアミド繊維がニードルパンチされたフェルト材11Aが2層、積層されているものからなる。
また、基体11Bは、耐熱性繊維からなる経糸11B1と緯糸11B2とによる織布が使用されている。
【0010】
このクッション材C4は、メタ系芳香族ポリアミド繊維のフェルト材が積層されて構成されているため、昇温速度の調整を行うことが容易であった。
しかしその反面、メタ系芳香族ポリアミド繊維はクッション性の維持を図ることが困難であり、寿命が短いものであった。
この際、クッション性の維持を図るために、繊維の目付を大きくすることが考えられる。しかし、目付を大きくした場合には、熱伝導速度が遅くなるため昇温速度の調整が困難になるとともに、重量が重くなり使用中の使い勝手が悪化するところがあった。
【0011】
一方、上記クッション材C4の欠点を解消すべく、図3に係るクッション材C5が開発された。
すなわち、図3のクッション材C5は、基体21Bと、基体21Bの表裏にポリパラフェニレンテレフタラミドなどを主体とするパラ系芳香族ポリアミド繊維がニードルパンチされたステープルファイバーのフェルト材21Aが1層ずつ積層されたものからなる。
また、基体21Bは、耐熱性繊維からなる経糸21B1と緯糸21B2とによる織布が使用されている。
【0012】
このクッション材C5は、パラ系芳香族ポリアミド繊維のフェルト材が積層されて構成されているため、クッション性の維持は良好であった。
しかし、熱伝導率が速すぎるため、クッション材の昇温速度を調整することが困難であった。昇温速度を調整するためには、目付を増加させる必要があり、従って重量が増し重くなるので、クッション材の使い勝手が悪くなるところがあった。
【0013】
【特許文献1】特開昭59−192795号公報
【特許文献2】特開昭62−156100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した欠点に鑑み、成形プレス用耐熱クッション材として優れた機能、特に昇温速度の調整とクッション性の良い成形プレス用耐熱クッション材を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題を解決し、クッション性を有し、かつ熱盤と製品との間に熱を全面にかつ均一に伝える、成形プレス用クッション材として、基体とフェルト材を積層させてなる成形プレス用耐熱クッション材であって、セラミック繊維を含むフェルト材を1層以上有することを特徴とする、成形プレス用耐熱クッション材である。
【0016】
ここで、セラミック繊維を含むフェルト材とは、高耐熱性繊維のセラミック繊維と、他の耐熱性繊維とを混綿したものについて、セラミック繊維を少なくとも50重量%以上含む概念である。耐熱性繊維としては、メタ系芳香族ポリアミド、パラ系芳香族ポリアミド、または他の有機耐熱・耐炎火繊維の何れか1種又は複数種を含むものが使用できる。
【0017】
また、本発明は前記セラミック繊維を含むフェルト材には、更に接合繊維を含むことによって、セラミック繊維を固定し安定化してセラミック繊維の細化(粉化)を防ぐことができる。
【0018】
更にまた、前記クッション材の表面に表層材が配置されていることを特徴とする成形プレス用耐熱クッション材が好ましい。前記表層材は接合手段、例えば樹脂やプリプレグ、または接合繊維によるものなど、いずれかの接合手段によって、前記クッション材に接合させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、優れたクッション性と昇温速度の調整の良い成形プレス用耐熱クッション材を提供することができるとともに、セラミック繊維の欠点である細化(粉化)を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の基本構成は、成形プレス用クッション材として、基体とフェルト材を積層させてなる成形プレス用耐熱クッション材であって、高耐熱性繊維のセラミック繊維を含むフェルト材を1層以上有することを特徴とする成形プレス用耐熱クッション材であり、好ましくは前記セラミック繊維を含むフェルト材は、更に接合繊維を含むものである。
【0021】
高耐熱性繊維のセラミック繊維としては、アルミナ・シリカ系のものが好適に使用できる。また、他の耐熱性繊維としてはパラ系芳香族ポリアミド繊維又はメタ系芳香族ポリアミド繊維が好適に使用できる。または、これらの繊維を混綿したものを使用しても良い。本発明では、耐熱繊維の含有量は、好ましくはセラミック繊維重量に対して0%〜49%、更に好ましくは5%〜30%の範囲で使用すると良い。
【0022】
本発明では前記セラミック繊維を含むフェルト材は、クッション材として、昇温速度の調整が容易であるとともに、クッション性の持続性に優れた製品を提供することが可能となる。本発明では、熱伝導性を調整してセラミック繊維を含むフェルト材の昇温速度を高めるために、前記フェルト材の坪量が好ましくは50g/m〜1000g/m、更に好ましくは100g/m〜500g/mの範囲で構成すると、昇温速度をより調整することができる。
【0023】
ここで、セラミック繊維は耐熱性が非常に優れるが熱伝導性が小さいので、セラミック繊維を多く含むフェルト材は昇温速度が悪くなるため、他の耐熱性繊維を含ませ、クッション材の厚み方向の熱伝導性を調整して昇温速度を高めることができる。または、昇温速度の調整の容易な耐熱繊維のフェルト材と、セラミック繊維を含むフェルト材とを、多層に構成することで、いっそう昇温速度の調整がし易くなる。
【0024】
また、前記セラミック繊維を含むフェルト材には、更に接合繊維を含むことによって、セラミック繊維を固定し安定化してセラミック繊維の細化(粉化)を防ぐことができるが、接合繊維としては、未延伸コーネックス繊維や全芳香族ポリエステル繊維(ベクトラン;商品名)が使用できる。接合繊維として例えば未延伸コーネックス繊維を選択し、前記セラミック繊維を含むフェルト材に接合繊維を混合した後に熱処理すれば、接合繊維は溶融し流動してセラミック繊維を被覆し、またセラミック繊維間を接合するから、クッション材の使用中にセラミック繊維が細化することがない。本発明では、接合繊維の含有量は、好ましくはセラミック繊維重量に対して1%〜30%、更に好ましくは5%〜20%の範囲で使用すると良い。
【0025】
そして、前記クッション材の表面に表層材が配置されているクッション材では、積層製品(被成形体)を加熱プレス成形する際に、該積層製品の凹凸面への当接性が良くなる。つまり積層製品に対し均等に押圧力を伝えることができる。
【0026】
表層材としてはカバーレイフィルムや金属箔、または熱盤に対して離形性を有する耐熱性樹脂が好ましい。カバーレイフィルムとしては、プレス成形用フィルムであるポリアミド樹脂やポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂が使用できる。
また、ポリメタフェニレンイソフタルアミドを主体とした繊維からなるノーメックス(商品名/デュポン製)ペーパー等を採用することができる。
また、金属箔としては、アルミ合金箔やステンレス箔などが使用できる。
更に、耐熱性樹脂としては、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を適宜利用することができる。
【0027】
そして、前記表層材をクッション材に接合(配置)するための接合手段には、樹脂またはプリプレグ、或いは接合繊維を使用することが出来る。樹脂としてはエポキシ樹脂やポリイミド樹脂、フッ素フィルム等の熱溶着性樹脂などが使用できる。
また、プリプレグとしては、ガラスエポキシのプリプレグシート等が使用できる。
更に、接合繊維としては、未延伸コーネックス繊維や全芳香族ポリエステル繊維(ベクトラン;商品名)が使用できる。
【0028】
ここで、本発明に係る実施の態様を、図4から図6に基づき説明する。
図4において、10は第1のクッション材であり、基体10Bと、基体10Bの熱盤側に第1のフェルト材1Aと、その反対側に第2のフェルト材1Bとが、基体10Bの表側と裏側とにニードルパンチングにより接続されて構成されている。
第1のフェルト材1Aと、第2のフェルト材1Bとは、セラミック繊維を含むフェルト材である。このように第1のフェルト材1Aと第2のフェルト材1Bとを構成すれば、熱盤における熱劣化や熱ムラを緩和し、クッション材の昇温速度を調整することができる。
【0029】
図5において、20は第2のクッション材であり、基体10Bと、基体10Bの熱盤側に第1のフェルト材1Aと、その反対側に第2のフェルト材1Bとが、基体10Bの表側と裏側とにニードルパンチングにより接続されて構成されている。更に、第1のフェルト材1Aの表面に第3のフェルト材1Cと、第2のフェルト材1Bの表面に第4のフェルト材1Dとがニードルパンチングにより接続されて構成されている。
なお、第3のフェルト材1Cと、第4のフェルト材1Dとは、セラミック繊維を含むフェルト材であり、第1のフェルト材1Aと第2のフェルト材1Bはセラミック繊維を含まない、昇温速度の調整の容易な耐熱繊維のフェルト材である。
このような第2のクッション材を構成すると、熱伝導性が良くクッション性の高い耐熱繊維、例えばパラ系芳香族ポリアミド繊維のフェルト材の外面に、高耐熱性で熱伝導性の小さいセラミック繊維を含むフェルト材を配置すれば、熱盤における熱劣化や熱ムラを緩和することができ、クッション材全体として耐熱性が向上し、かつ昇温速度の調整とクッション性をバランスよく設定することができる。
【0030】
図4において、セラミック繊維を含むフェルト材1Aとフェルト材1Bには、更に接合繊維を含むことができる。また、図5において、セラミック繊維を含むフェルト材1Cとフェルト材1Dには、更に接合繊維を含むことができる。
そして、このように接合繊維を含むフェルト材を形成した後に、クッション材全体を熱処理して、接合繊維を溶融し流動化して、セラミック繊維を被覆し、またセラミック繊維間を接合することができる。
【0031】
一方、図6において、30は第3のクッション材であり、第2のクッション材20の表側と裏側に表層材1Eが接続された構成になっている。そして、第3のフェルト材1C並びに第4のフェルト材1Dと表層材1Eとは、接合手段Pにより接続されている。そして、第3のクッション材30においても、第1のフェルト材1Aと第2のフェルト材1Bには、熱伝導性が良くクッション性の高い耐熱性繊維を配置して、昇温速度の調整の容易なフェルト材を構成し、第3のフェルト材1Cと第4のフェルト材1Dには、高耐熱性で熱伝導性の小さいセラミック繊維を含むフェルト材を配置すれば、熱盤における熱劣化や熱ムラを緩和することができる。そして、第3のフェルト材1C並びに第4のフェルト材1Dを形成した後に、その外面に接合手段P、例えばガラスエポキシのプリプレグシートを介して表層材1Eを配置してから、全体を熱処理すると、プリプレグシートは溶融し流動しつつ硬化するから、第3のフェルト材1C並びに第4のフェルト材1Dと表層材1Eとを強固に接合することができる。
【0032】
また、基体10Bは、耐熱繊維からなる経糸10B1と緯糸10B2とを織製してなる織布にて構成されている。具体的には、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維のほか、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ステンレス繊維などを適宜採用することが可能である。
また、基体10Bは上記のように経糸と緯糸を織製した織布が強度上望ましいが、この織布のみならず、経糸と緯糸を単に重ね合わせた構成など、適宜採用することができる。
【0033】
また、基体10Bの素材につき、本発明の例では耐熱性繊維と説明したが、この耐熱性繊維としては、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維は勿論、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ステンレス繊維などを適宜採用することも可能である。また、基体10Bの構成としては、経糸と緯糸を織製した織布が強度上望ましいが、この織布のみならず、経糸と緯糸を単に重ね合わせた構成など、適宜採用することができる。この際、場合によっては、基体10Bを有さない構成も構成することも可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の成形プレス用耐熱クッション材について、実施例を用いてさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
まず、実施例および比較例において、次の構成は全て共通のものを使用した。
(1)クッション材に配置される基体:
・メタ系芳香族ポリアミドのスパン糸を織製した織布を使用した。なお具体的な繊維としては、コーネックス(商品名/帝人製)を使用した。
(2)フェルト材を構成する繊維:
・セラミック繊維には、アルミナ・シリカ系繊維(株式会社ITM社製商品名バルクファイバーFXL)の50mm長の繊維を使用した。
・耐熱性繊維には、メタ系芳香族ポリアミド繊維(コーネックス:商品名/帝人製)の50mmカット長の繊維と、パラ系芳香族ポリアミド繊維(ケブラー:商品名/デュポン製)の50mmカット長の繊維とを、等量混合したものを使用した。
・接合繊維には、未延伸コーネックス(自然延伸によるメタ系芳香族ポリアミド繊維:帝人社の提供)の50mmカット長の繊維と、全芳香族ポリエステル繊維(ベクトラン;商品名)の50mmカット長の繊維とを、等量混合したものを使用した。
・接合手段には、ガラスエポキシのプリプレグシートを使用した。
・表層材には、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)シートを使用した。
【0035】
(実施例1)
織布の表裏にセラミック繊維を含む繊維をカーディングウエッブとして積層し、ニードルパンチングして第1のフェルト材1Aと第2のフェルト材1Bを形成して、実施例1に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材1Aと第2のフェルト材1Bとは同じ繊維の配合内容であり、これらの繊維の内容は表1に記載した。
【0036】
(実施例2)
織布の表裏に耐熱性繊維をカーディングウエッブとして積層し、ニードルパンチングして第1のフェルト材1Aと第2のフェルト材1Bを形成した。そして更にその表裏に、セラミック繊維を含む繊維をカーディングウエッブとして積層し、ニードルパンチングして第3のフェルト材1Cと第4のフェルト材1Dを形成して、実施例2に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材1Aと第2のフェルト材1Bとは同じ繊維の配合内容であり、第3のフェルト材1Cと第4のフェルト材1Dとは同じ繊維の配合内容であり、これらの繊維の内容は表2に記載した。
【0037】
(実施例3)
実施例1で作製したクッション材の表面に、さらにガラスエポキシのプリプレグシートを介してETFEフィルムを接合して、実施例3に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材の構成は表3に記載した。
【0038】
(実施例4)
実施例2で製作したクッション材の表面に、さらにガラスエポキシのプリプレグシートを介してETFEフィルムを接合して、実施例4に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材の構成は表4に記載した。
【0039】
(比較例1)
織布の表裏に耐熱性繊維をカーディングウエッブとして積層し、ニードルパンチングして第1のフェルト材の層1Aと第2のフェルト材の層1Bを形成して、比較例1に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材の構成は表5に記載した。
【0040】
(比較例2)
比較例1で作製したクッション材の表面に、更にその表裏に耐熱性繊維をカーディングウエッブとして積層し、ニードルパンチングして第3のフェルト材の層1Cと第4のフェルト材の層1Dを形成して、比較例2に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材の構成は表5に記載した。
【0041】
(比較例3)
比較例2で製作したクッション材の表面に、さらにガラスエポキシのプリプレグシートを介してETFEフィルムを接合して、比較例3に係るクッション材を作製した。なお、フェルト材の構成は表5に記載した
【0042】
実施例および比較例で作製したクッション材のサンプルの諸物性を各表に示す。
【0043】
これらの実施例と比較例で作製したサンプルを、図1に示すものと同様の構造を有する試験機を用いて、クッション材の性能を測定した。なお、クッション材は、温度190℃、加圧40kg/cmを60分保持し、その後水冷15分、加圧開放15分を1サイクルとし、これを300サイクル繰り返しプレス後に次の測定を実施した。
・昇温速度(℃/min)の測定:90℃から140℃になるまでの時間を測定し、昇温速度(℃/min)を得た。評価としては、昇温速度が1.8℃/minを超えて、2.2℃/min以下を「◎」、1.5℃/minを超えて、1.8℃/min以下、ならびに2.2℃/minを超えて、2.5℃/min以下を「○」、それ以外を「×」とした。
・クッション変位量(μm)の測定:180℃の加熱下において、0.2kgにてプレスした場合と、50kgにてプレスした場合のクッション材の厚みを測定した。そして、50kg時から0.2kg時の差を求め、クッション変位量(μm)とした。評価としては、クッション量が500μm以上を「◎」、400μm以上、500μm未満を「○」、400μm未満を「×」とした。
【0044】
上記の試験機を用いたクッション材の性能の結果を、表に示す。このことから、本発明に係る実施例においては、クッション材として非常に優れたバランスを有することが確認された。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
本発明によれば、昇温速度の調整が容易であるとともに、クッション性の維持に優れたクッション材を、客先に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】積層板の成形プレスの例を示す
【図2】従来の成形プレス用クッション材を示す
【図3】従来の成形プレス用クッション材を示す
【図4】本発明の成形プレス用クッション材の態様の例を示す
【図5】本発明の成形プレス用クッション材の別の態様の例を示す
【図6】本発明の成形プレス用クッション材の別の態様の例を示す
【符号の説明】
【0052】
10 第1のクッション材
1A 第1のフェルト材
1B 第2のフェルト材
1C 第3のフェルト材
1D 第4のフェルト材
1E 表層材
10B 基体
10B1 経糸
10B2 緯糸
20 第2のクッション材
30 第3のクッション材
P 接合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体とフェルト材を積層させてなる成形プレス用耐熱クッション材であって、セラミック繊維を含むフェルト材を1層以上有することを特徴とする、成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項2】
前記フェルト材が、更に接合繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項3】
前記クッション材の表面に表層材が配置されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の成形プレス用耐熱クッション材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−137384(P2010−137384A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313861(P2008−313861)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】