説明

成形体およびその製造方法

【課題】入射光を特定の位置に回折させることができ、特定のスポット状回折パターンを得ることができる成形体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の成形体の製造方法は、光重合性樹脂組成物による成形体の製造方法であって、光重合性樹脂組成物を成形型に充填する工程と、前記成形型に充填された光重合性樹脂組成物に、インテグレーターレンズ34を含む光学系を経由した平行光を照射して前記光重合性樹脂組成物を重合硬化させ、光重合性樹脂組成物からなるマトリックスと、該マトリックス内に所定パターンで配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とからなる相分離構造を有する成形体を形成する工程と、を備え、前記インテグレーターレンズが、複数個のレンズ部が正方格子状に配置されることによって構成され、前記柱状構造体が、マトリックス中で正方格子状に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体およびその製造方法に関し、詳細には、回折等の光制御機能を有する光学フィルム等の成形体およびその製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、例えば、デジタルカメラのモアレ防止用フィルタである光学ローパスフィルタなどに使用することができる成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は、選択できる材料の種類が豊富で、製品に多様な機能を付与できることから、近年では、光学部品の材料として使用する試みが盛んになされている。高分子材料を用いた光学部品の中でも、一次元あるいは二次元の微細構造が内部に形成された高分子フィルムは、光制御板や光回折板としての利用することができる。
【0003】
特に、薄板状のマトリックス中に、マトリックスと屈折率が異なり方向の配向された多数の柱状構造体が配置されているフィルムは、柱状構造体の軸に平行な光を入射させると、その構造体の配置に応じて入射光を回折させるので、入射光を回折させる光回折板として利用できる。
【0004】
このような光制御機能を有するフィルムおよびその製造方法として、平行光によって光重合性樹脂組成物を重合硬化させ、内部に屈折率の異なる多数の棒状硬化領域(柱状構造体)が形成された成形体を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−265915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている製造方法によって製造された成形体では、内部に形成された柱状構造体の配置が規則的ではないため、柱状構造体の軸船方向から光を入射した場合、その透過パターンはスポット状の回折パターンとはならず、柱状構造体を散乱源とした光拡散パターンとなる。
このため、この成形体には、異方性拡散媒体などとしては利用可能であるが、入射光を特定の位置に回折させることが必要な光学ローパスフィルタなどとして使用することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、入射光を特定の位置に回折させることができ、特定のスポット状回折パターンを得ることができる成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
光重合性樹脂組成物による成形体の製造方法であって、
光重合性樹脂組成物を成形型に充填する工程と、
前記成形型に充填された光重合性樹脂組成物に、インテグレーターレンズを含む光学系を経由した平行光を照射して前記光重合性樹脂組成物を重合硬化させ、光重合性樹脂組成物からなるマトリックスと、該マトリックス内に所定の配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とからなる相分離構造を有する成形体を形成する工程と、を備え、
前記インテグレーターレンズが、複数個のレンズ部が正方格子状に配置されることによって構成され、
前記柱状構造体が、マトリックス中で正方格子状に配置されている、
ことを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
【0009】
このような構成によれば、正方格子状の回折スポットを付与することができる成形体を提供することができる。
【0010】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記光重合性樹脂組成物が、アクリル樹脂からなる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
光重合性樹脂組成物にインテグレーターレンズを含む光学系を経由した平行光を照射することによって製造され、光重合性樹脂組成物からなるマトリックスと該マトリックス内に所定パターンで配列され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とからなる相分離構造を有し、
前記インテグレーターレンズが、複数個のレンズ部が正方格子状に配置されることによって構成され、
前記柱状構造体が、マトリックス中で正方格子状に配置されている、
ことを特徴とする成形体が提供される。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記光重合性樹脂組成物が、アクリル樹脂からなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入射光を特定の位置に回折させることができ、特定のスポット状回折パターンを得ることができる成形体及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態の成形体およびその製造方法について説明する。まず、本発明の好ましい実施形態の成形体の構造について説明する。
【0015】
図1は、本発明の好ましい実施形態の成形体の一部分を破断した模式的な斜視図である。図1に模式的に示すように、成形体1は、厚さが略一定の薄板状(フィルム状)であり、基質であるマトリックス2と、このマトリックス2中に配置された多数の柱状構造体4とを備えた相分離構造を有している。
【0016】
これらの柱状構造体4は、各柱状構造体4は、略同一形状を有し、その軸線Aがマトリックス2中で成形体1の厚さ方向に延びるように配向され且つ正方格子状に規則的に配列されている。
マトリックス2と柱状構造体4とは、いずれも光透過性を有するが、屈折率が異なっている。マトリックス2と柱状構造体4との間の屈折率差は、これに限られるものではないが0.0001以上あれば良く、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上である。
【0017】
成形体1は、一般に、厚さが一定のフィルム形状であるが、用途に応じて他の形状、例えば、幅方向に沿って厚さが変化しているフィルム形状であってもよい。
【0018】
本実施形態では、各柱状構造体4は、配向方向(軸線方向)Aが、成形体1の厚さ方向Bと略同一となるように配置されているが、配向方向Aが成形体1の厚さ方向Bに対して所定角度をなすように配置されていてもよい。また、柱状構造体4は、円柱形状であるが、これに限定されず、断面が楕円、矩形等の柱状形状であってもよい。
【0019】
次に、本実施形態の成形体1の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態の成形体1を製造する際に、原料となる光重合性樹脂組成物が充填される成形型(セル)10の平面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った成形型10の断面図である。
【0020】
成形型10は、上方に向かって開口した薄い箱形形状の本体部12を備えている。本体部12の内部には、光重合性樹脂組成物が充填される空間部14が形成されている。空間部14は、製造される成形体1の形状に対応した形状を有し、本実施形態では、厚さが一定の薄膜状又は薄板状の空間となっている。
【0021】
成形型10は、空間部14に光重合性樹脂組成物16が充填された後、本体部12の開口端を覆うカバー18を備えている。本実施形態では、成形型10の厚さ方向からの平行照射光で、カバー18越しに空間部14の充填された光重合性樹脂組成物16に照射し、光重合性樹脂組成物16を光重合させ成形体を製造する構成であるので、カバー18は、照射光の波長に対して光学的な吸収のない光透過性のものが用いられる。
【0022】
例えば、パイレックス(登録商標)ガラスや石英ガラス、フッ素化(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアリレート、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィン樹脂等の透明プラスチック材料等がカバー18の材料として使用される。
【0023】
本実施形態においては、光重合性樹脂組成物が空気に接して光重合が阻害されないよう、光重合性樹脂組成物16を空間部14内に液密にして封入することが好ましい。
【0024】
なお、空間部14は、成形する成形体1の形状に応じて種々の形状とされる。例えば、フィルム形状の成形体を得る場合には、二枚のガラス板の間に空隙を設け、その空隙内に光重合性樹脂組成物を保持するようにしてもよい。
また、二枚の透明プラスチックフィルムの間に空隙を設け、その空隙内に光重合性樹脂組成物を保持するようにしてもよい。この場合には、二枚の長尺の透明プラスチックフィルムを、ロールから巻き出して間に空隙を維持しながら搬送し、この空隙に光重合性樹脂組成物を充填し、その後、光照射を行うことで、連続的に成形体1を製造することも可能である。
【0025】
図4は、本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法を実施する際の配置を概略的に示す図面である。
図4に示されているように、本実施形態では、成形型10の空間部14内に封入された光重合性樹脂組成物16に、照射光源20の平行な照射光22を照射して、光重合性樹脂組成物16を重合硬化させて成形体1を得る。
【0026】
照射光源20は、図5に示すように照射エリア24を複数の領域に分割して(本実施形態では、9領域)、各領域の点26a〜26iの光強度を測定し、次式で与えられる照度分布の値が、2.0%以下であるものを用いるが、照度分布の値が、1.0%以下であるものがより好ましい。
照度分布=(最大値−最小値)/(最大値+最小値)×100・・・(式)
【0027】
次に、照明光源20の構成を説明する。図6は、本実施形態で使用される照射光源20の光学系の構成を模式的に示す図面である。
照明光源20は、照射光は発生させるランプ28と、ランプ28の背面側に配置されランプ28からの光を集光する楕円集光鏡30と、ランプ28および楕円集光鏡30からの光束Lを反射する平面鏡32を備えている。
【0028】
本実施形態では、ランプ28として、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用される。使用する波長としては、光硬化性樹脂を硬化可能な波長を含んでいることが必要であり、用いる開始剤の吸収波長に応じて選ばれるが、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプなどの水銀を用いたランプでは、水銀の輝線である紫外域の313nm(j線)、365nm(i線)や可視域の405nm(h線)、436nm(g線)も光開始剤を適当に選択すれば使用できる。それ以外のランプの場合も光開始剤の吸収波長に応じた波長域の光が用いられる。
また、本発明においては、該柱状構造体の規則的な配列を得る為には照射光の波長幅が狭いほうが良く、従って、半値全幅で100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
【0029】
照明光源20は、平面鏡32からの光がシャッタを経て入射するインテグレーターレンズ34を備えている。
【0030】
インテグレーターレンズ34の下流側には、シャッタ36、フィルタ38、さらに凹面鏡40が配置されている。本実施形態では、フィルタ34を透過した光束Lを凹面鏡40で平行光とし、成形型10の空間部14内に封入された光重合性樹脂組成物16に向けて照射するように構成されている。なお、凹面鏡40に代えて、コリメーターレンズによって、フィルタ34を透過した光束を平行光にする構成でもよい。
【0031】
図7は、インテグレーターレンズ34の平面図であり、図8は、インテグレーターレンズ34の側面図である。インテグレーターレンズ(フライアイレンズ)34は、複数のレンズ部34aが所定配列で二次元的に配置された構造を有するものであり、本実施形態のインテグレーターレンズ34は、図7に示されているように、単レンズである凸レンズから構成されたレンズ部34aが正方格子状に配列されることによって構成されている。しかしながら、凸レンズに代えて、凹レンズ、シリンドリカルレンズ、屈折率分布レンズなどを用いてもよい。
【0032】
インテグレーターレンズ34に入射した光束は、進行方向に対して垂直な断面内での光強度分布が一定にされる。
【0033】
インテグレーターレンズと凹面鏡を用いた時の平行光の平行度はコリメーション半角であたえられる。この値が小さいほど、平行度は高くなる。本実施形態において、好ましくはコリメーション半角が10°以下であるのが好ましく、より好ましくは5°以下である。
【0034】
このような構成を有する照射光源20からの平行光が、図4に示されているように、成形型10の空間部14内に封入された光重合性樹脂組成物16に照射され、光重合性樹脂組成物16が重合硬化させられ成形体1となる。
【0035】
上述した凸レンズが正方格子状に配列されたインテグレーターレンズ34を含む光学系を備えた照射光源20からの平行光で、成形型10の空間部14内に封入された光重合性樹脂組成物16を光重合させ成形体1を製造すると、成形体1内に、周囲のマトリックス2と屈折率が異なり平行光の入射方向に延びて配向され多数の柱状構造体4が形成される。各柱状構造体4は、光の入射方向と直交する平面内(即ち、薄板或いはフィルム状の成形体1の表面内)で正方格子状に配列される。
【0036】
このような構造の成形体1に、柱状構造体4の軸と平行な光を入射させると、柱状構造体4の配置に応じた正方格子状の回折スポットが得られる。
【0037】
光重合性樹脂組成物に平行光を照射すると、光重合性樹脂組成物が光重合した結果物である成形体1内に、基質であるマトリックス内にマトリックスと屈折率が異なる多数の柱状構造体が形成される原理は必ずしも明らかになっていないが、空間不均一に光重合性樹脂組成物の重合反応が進行し屈折率の異なる微小構造(柱状構造体)が形成されるものと考えられる。
このとき、単レンズが正方格子状に配列したインテグレーターレンズを備えた照射光源からの平行光で、光重合性樹脂組成物を重合させることによって、この微小構造(柱状構造体)が規則的に配列させられる。
ここで、単レンズとは凸レンズ、凹レンズ、シリンドリカルレンズ、屈折率分布レンズなどインテグレーターを構成する最小単位のレンズを意味する。
【0038】
以下に、光重合性樹脂組成物16に用いることができる材料について説明する。
【0039】
(多官能モノマー)
光重合性樹脂組成物16には、多官能モノマーが含まれることが好ましい。このような多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリルモノマーや、ビニル基、アリル基等を含有するものが、特に好ましい。
【0040】
多官能モノマーの具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能のエポキシ(メタ)アクリレート、多官能のウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0041】
中でも、分子内に3個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマーは、重合度差による架橋密度の粗密がより大きくなりやすく、上述の柱状構造体が形成されやすくなる。
【0042】
特に好ましい3個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがある。
【0043】
重合性組成物として2種以上の多官能モノマーあるいはそのオリゴマーを使用する場合には、それぞれの単独重合体としたときに互いに屈折率が異なるものを使用することが好ましく、その屈折率差が大きいものを組み合わせることがより好ましい。
【0044】
回折などの光制御機能を高効率で得られるようにする為には屈折率差を大きくとることが必要であり、その屈折率差が0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。また、重合過程でモノマーが拡散することにより屈折率差が大きくなるので、拡散定数の差が大きい組み合わせが好ましい。
【0045】
なお、3種以上の多官能モノマーあるいはオリゴマーを使用する場合は、それぞれの単独重合体の少なくともいずれか2つの屈折率差が上記範囲内となるようにすればよい。また、単独重合体の屈折率差が最も大きい2つのモノマーあるいはオリゴマーは、高効率な回折、偏向、拡散などの機能を得る為に、重量比で10:90〜90:10の割合で用いることが好ましい。
【0046】
(単官能モノマー)
また、光重合性樹脂組成物16として、上記のような多官能モノマーあるいはオリゴマーとともに、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能モノマーあるいはオリゴマーを使用してもよい。このような単官能モノマーあるいはオリゴマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリルモノマーや、ビニル基、アリル基等を含有するものが、特に好ましい。
【0047】
単官能モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、フェニル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ブロモベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;スチレン、p−クロロスチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ビニルナフタレン等のビニル化合物;エチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート等のアリル化合物等が挙げられる。
【0048】
これら単官能モノマーあるいはオリゴマーは、成形体1に柔軟性を付与するために用いられ、その使用量は、多官能モノマーあるいはオリゴマーとの合計量のうち10〜99質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0049】
(ポリマー、低分子化合物)
さらに、光重合性樹脂組成物16には、前記多官能モノマーあるいはオリゴマーと重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物を含む均一溶解混合物を用いることもできる。
重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナイロン等のポリマー類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランのような低分子化合物、有機ハロゲン化合物、有機ケイ素化合物、可塑剤、安定剤のような添加剤等が挙げられる。
【0050】
これら重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物は、成形体1を製造する際に光重合性樹脂組成物16の粘度を調節し取り扱い性を良くする為に用いられ、その使用量は多官能モノマーあるいはオリゴマーとの合計量のうち1〜99質量%の範囲とすることが好ましく、取り扱い性も良くしつつ規則的な配列を持った柱状構造体を形成させる為には1〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0051】
(開始剤)
光重合性樹脂組成物16に使用する光重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を行う通常の光重合で用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ジベンゾスベロン等が挙げられる。
【0052】
これら光重合開始剤の使用量は、その他の光重合性樹脂組成物の重量に対して0.001〜10質量%の範囲とするのが好ましく、成形体1の透明性を落とさないようにする為には、0.01〜5質量%とするのがより好ましい。
【0053】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例】
【0054】
本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
フェノキシエチルアクリレート30質量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート70質量部からなる混合物に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.6質量部を溶解させ光重合性樹脂組成物を得た。得られた光重合性樹脂組成物を、20mmφ、厚さ0.2mmのガラスセル中にフィルム状に封入した。次いで、表面に対して垂直方向から、光強度分布が略一定であり、レンズが正方格子状に配列されたインテグレーターレンズを用いた平行光照射装置からのコリメーション半角が0.9°である紫外平行光を2500mJ/cm2照射し光重合性樹脂組成物を重合硬化しプラスチックフィルムを得た。
【0055】
得られたプラスチックフィルムの光学顕微鏡像を図9に示す。直径2ミクロンの柱状構造体が、配向方向に対して垂直な断面内で正方格子状にピッチ6ミクロンで配列した物であった。また、プラスチックフィルムの面に対して垂直に波長633nmのレーザ光を照射して回折パターンの評価を行ったところ、図10に示すようにポリマー内部の規則的相分離構造を反映した正方状の回折点が観察された。
【0056】
[比較例1]
実施例1と同じ組成の光重合性樹脂組成物を、20mmφ、厚さ0.2mmのガラスセル中にフィルム状に封入した。次いで、表面に対して垂直方向から、光強度分布が略一定であり、インテグレーターレンズを用いずに平行光化した紫外光を2500mJ/cm2照射して光重合性樹脂組成物を重合硬化しプラスチックフィルムを得た。
【0057】
得られたプラスチックフィルムの光学顕微鏡像を図11に示す。得られた柱状構造体の直径はおよそ1ミクロンで、成形体内部の柱状構造体の配列に規則性はなく、ランダムであった。また、プラスチックフィルムの面に対して垂直に波長633nmのレーザ光を照射して回折パターンの評価を行ったところ、図12に示すように、明確な回折スポットは観察されなった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好ましい実施形態の成形体の一部分を破断した模式的な斜視図である。
【図2】本発明の本実施形態の成形体を製造する際に、原料となる光重合性樹脂組成物が充填される成形型(セル)の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法を実施する際の配置を概略的に示す図面である。
【図5】本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法で使用される照射光源の光強度の分布を示す図面である。
【図6】本発明の好ましい実施形態で使用される照射光源の構成を模式的に示す図面である。
【図7】本発明の好ましい実施形態で使用される照射光源が備えるインテグレーターレンズの平面図である。
【図8】図7に示すインテグレーターレンズの側面図である。
【図9】本発明の実施例のプラスチックフィルム(成形体)の光学顕微鏡像である。
【図10】図9の成形体による回折像である。
【図11】比較例のプラスチックフィルム(成形体)の光学顕微鏡像である。
【図12】図11の成形体による回折像である。
【符号の説明】
【0059】
1:成形体
2:マトリックス
4:柱状構造体
10:成形型(セル)
12:本体部
14:空間部
16:光重合性樹脂組成物
18:カバー
20:照射光源
28:ランプ
34:インテグレーターレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性樹脂組成物による成形体の製造方法であって、
光重合性樹脂組成物を成形型に充填する工程と、
前記成形型に充填された光重合性樹脂組成物に、インテグレーターレンズを含む光学系を経由した平行光を照射して前記光重合性樹脂組成物を重合硬化させ、光重合性樹脂組成物からなるマトリックスと、該マトリックス内に所定パターンで配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とからなる相分離構造を有する成形体を形成する工程と、を備え、
前記インテグレーターレンズが、複数個のレンズ部が正方格子状に配置されることによって構成され、
前記柱状構造体が、マトリックス中で正方格子状に配置されている、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
前記光重合性樹脂組成物が、アクリル樹脂からなる、
請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
光重合性樹脂組成物にインテグレーターレンズを含む光学系を経由した平行光を照射することによって製造され、光重合性樹脂組成物からなるマトリックスと該マトリックス内に所定パターンで配列され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とからなる相分離構造を有し、
前記インテグレーターレンズが、複数個のレンズ部が正方格子状に配置されることによって構成され、
前記柱状構造体が、マトリックス中で正方格子状に配置されている、
ことを特徴とする成形体。
【請求項4】
前記光重合性樹脂組成物が、アクリル樹脂からなる、
請求項3に記載の成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−194864(P2008−194864A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29976(P2007−29976)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】