成形体の成形方法、成形体、及び微細構造体の製造方法
【課題】1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体を容易に成形する。
【解決手段】第1のフォトレジスト層31に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、露光後の第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成し、第2のフォトレジスト層32に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する現像工程とを含み、第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して第1のフォトレジスト層31に成形される第1の成形部31bと、第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して第2のフォトレジスト層32に成形される第2の成形部32bとが組み合わされた成形体20を成形する。
【解決手段】第1のフォトレジスト層31に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、露光後の第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成し、第2のフォトレジスト層32に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する現像工程とを含み、第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して第1のフォトレジスト層31に成形される第1の成形部31bと、第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して第2のフォトレジスト層32に成形される第2の成形部32bとが組み合わされた成形体20を成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形する方法と、その方法により成形された成形体と、その成形体を用いた微細構造体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の基材上にフォトレジスト層を形成し、マスクを用いてこのフォトレジスト層を露光して現像することで、マスクの開口形状に対応した形状の成形体を基材上に成形し、更に、これらの基材及び成形体をエッチングすることで、回路等を製造する方法が知られている。近年、このような方法で種々の形状の微細構造体を形成することが検討されている。
【0003】
基材上のフォトレジスト層に成形体を成形して微細構造体を製造する場合、エッチング時のフォトレジスト層と基材との選択比を1より大きく設定することにより、フォトレジスト層の厚さより大きい高低差を有する微細構造体を製造することが可能である(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−158022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高低差のより大きい微細構造体を製造する場合、基材上に形成できるフォトレジスト層の厚さには限度があって厚肉に形成することが容易でなく、仮にフォトレジスト層を過剰に厚肉に形成したとしても、そのような厚肉のフォトレジスト層を露光することが困難である。そのため、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体をフォトレジスト層に形成することは行われていない。
【0005】
しかも、選択比を過剰に大きく設定してエッチングすることにより高低差の大きい微細構造体を形成すると、フォトレジスト層の成形体の誤差が選択比に応じて大きくなるため、大きな誤差を有する形状で微細構造体が製造されることになる。そのため、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きな微細構造体を製造することは容易でなかった。
【0006】
そこで、この発明は、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体を容易に成形することが可能な成形体の成形方法を提供することを課題とし、そのような成形方法により得られた過剰に高低差が大きい成形体を提供することを他の課題とする。また、1層のフォトレジスト層の厚さにに比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に製造する方法を提供することを更に他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するこの発明の成形体の成形方法は、フォトレジスト層にマスクを用いて露光して現像することで、前記マスクの開口形状に対応した形状を呈する成形体を前記フォトレジスト層に成形する方法において、第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、露光後の前記第1のフォトレジスト層上に第2のフォトレジスト層を形成し、該第2のフォトレジスト層に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、露光後の前記第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像する現像工程とを含み、前記第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第1のフォトレジスト層に成形される第1の成形部と、前記第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第2のフォトレジスト層に成形される第2の成形部とが組み合わされた前記成形体を成形することを特徴とする。
【0008】
この発明の成形体は、上記成形方法により成形されたことを特徴とする。
【0009】
この発明の微細構造体の製造方法は、基材上に形成されたフォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形し、前記成形体及び前記基材をエッチングすることで、前記成形体に対応する形状を呈する微細構造体を製造する方法であり、前記成形体を請求項1乃至7の何れか一つに記載の成形方法により成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の成形体の成形方法によれば、第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光した後、現像することなく、第2のフォトレジスト層を形成すると共に第2のマスクを用いて露光し、その後、第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像することで、各マスクの開口形状に対応して露光された各フォトレジスト層の第1の成形部と第2の成形部とが組み合わされた成形体を成形するので、各フォトレジスト層より高低差の大きい成形体を成形することが可能である。しかも、各フォトレジスト層毎に露光するため、成形体の高低差が過剰に大きくても確実に露光することができる。
【0011】
また、各フォトレジスト層を露光する毎に現像しないため、第2のフォトレジスト層を平坦な第1のフォトレジスト層の表面に形成することができ、第2のフォトレジスト層の形成や露光を精度良く行うことが可能であると共に、複数のフォトレジスト層の可溶部位を一度に現像することができる。
【0012】
そのため、各フォトレジストの厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体を容易に成形することが可能である。
【0013】
この発明の成形体によれば、上記のような成形体の成形方法により成形されているので、一度に形成可能なフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差が大きい成形体を提供することが可能である。
【0014】
この発明の微細構造体の製造方法によれば、上記のような成形体の成形方法により基材上に成形された成形体を用いて、成形体及び基材をエッチングするので、エッチング時の選択率を過剰に大きく設定することなく、一度に形成可能なフォトレジスト層に比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。各発明の実施の形態では、理解容易のために、特定形状を有する成形体及び微細構造体の例について説明するが、この発明では成形体及び微細構造体の形状は以下の形態に何ら限定されない。
[発明の実施の形態1]
【0016】
図1乃至図4は、この実施の形態1を示す。この実施の形態1で製造する微細構造体11は、図1に示すように、平面視で長方形形状を呈する基材10の一方の表面に、長手方向に連続した溝部12を有する。この溝部12は、底面12aと、底面12aに対して垂直に設けられた一対の側面12bとからなり、溝部12の両側には一対の上面12cが設けられている。溝部12は、例えば微細な流路等に使用されるものであってもよい。
【0017】
この実施の形態1により微細構造体11を製造するには、図2に示すように、基材10上に、微細構造体11の目標形状に対応した形状を呈する成形体20をフォトレジストにより成形し、成形体20及び基材10をエッチングすることで製造する。ここでは、後述するエッチング時の選択比を1としているので、成形体20は目標形状の側面12b及び上面12cの形状と一致した形状となっている。
【0018】
成形体20を成形する基材10は、微細構造体11を構成するための平板形状を呈する材料である。基材10は、ガラス、セラミックス、結晶体、樹脂など、微細構造体11に要求される性質を満足する特性を有してエッチング可能な材料からなる。
【0019】
この基材10上に成形体20を成形するには、図3に示すように複数の工程により行う。
まず、図3(a)に示すように、基材10の一方の表面に第1のフォトレジスト層31を形成する。
【0020】
第1のフォトレジスト層は、ネガ型フォトレジスト、ポジ型フォトレジストの何れからなるものでもよい。この実施の形態1ではポジ型のフォトレジストを用いている。第1のフォトレジスト層31を形成するには、例えばスピンコート法などで塗布し、乾燥させることで形成できる。次の露光工程において、精度良く露光し易くする目的で、第1のフォトレジスト層31の表面は十分に平坦な平面に形成するのがよい。
【0021】
第1のフォトレジスト層31の厚さは、乾燥させることなく一度に塗布可能な厚さの範囲で適宜選択できる。過剰に厚く形成する必要はないが、第1のフォトレジスト層31が薄いと、その分、他のフォトレジスト層32の厚さや積層数を多くしなければならないため、第1のフォトレジスト層31の厚さは表面を均一に平坦に形成できる範囲でなるべく厚くするのがよい。
【0022】
次いで、図3(b)に示すように、第1の露光工程として、第1のマスク40を用いて第1のフォトレジスト層31を露光する。
【0023】
第1のマスク40は、バイナリーマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12と同一形状の開口部43を有している。第1のマスク40は、基材10の図示しない位置に設けられたアライメントマークと第1のマスク40の図示しない位置に設けられたアライメントマークとを精密に位置合わせした状態で配置される。
【0024】
そして、露光光を照射して露光する。露光光の強度や露光時間等は、第1のフォトレジスト層31の厚さや材料に応じて適宜設定されている。露光光が開口部43を通して第1のフォトレジスト層31に照射されることで、第1のフォトレジスト層31が開口部43に一致した形状で露光される。この露光により、第1のフォトレジスト層31には平面視において溝部12と同一形状の可溶部位31aが形成される。この可溶部位31aは後述する現像工程において現像液により完全に溶解除去可能な程度まで露光されている。
【0025】
次いで、図3(c)に示すように、露光後の第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成する。
【0026】
第2のフォトレジスト層32は、第1のフォトレジスト層31と同一のフォトレジストにより形成するのが好ましい。第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト32を積層することで一体化させ易いからである。
【0027】
第2のフォトレジスト層32を露光後のフォトレジスト層31の表面に形成するには、第1のフォトレジスト層31を基材10の表面に形成する場合と同様にして行うことができ、例えばフォトレジストをスピンコート法等により塗布して乾燥させればよい。この第2のフォトレジスト層32の表面も出来るだけ平坦な平面となるように形成するのが好適である。露光工程において精度よく露光し易くできるからである。
【0028】
このとき、第1のフォトレジスト層31が現像されていないため、可溶部位31aは第1のフォトレジスト31層内に存在しており、第1のフォトレジスト層31の表面全面が平坦な状態で維持されている。そのため、第2のフォトレジスト層32を容易に平坦に形成可能である。第1フォトレジスト層31の表面に凹凸が存在すると、第2のフォトレジスト層32を平坦に形成し難くなる上に、露光工程で焦点を精度よく合わせることが困難になり、第2のフォトレジスト層32の露光精度が低下する。ところが、このように第1フォトレジスト層31の表面が平坦に維持されていれば、第2のフォトレジスト層32を平坦に形成でき、露光精度を向上することが可能である。
【0029】
なお、第2のフォトレジスト層32の厚さも、乾燥させることなく一度に塗布可能な厚さの範囲で適宜選択すればよく、全フォトレジスト層の積層数を少なくし易いという理由で、表面を均一に平坦に形成できる範囲でなるべく厚くするのがよい。
【0030】
次いで、図3(d)に示すように、第2の露光工程として、第2のマスク50を用いて第2のフォトレジスト層32を露光する。
【0031】
第2のマスク50は、バイナリーマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12と同一形状の開口部53を有している。この第2のマスク50の開口部53は第1のマスク40の開口部43と同一形状となっている。ここでは、第1のマスク40と同一のマスクを使用することができる。第2のマスク50は、基材10の図示しない位置に設けられたアライメントマークと第2のマスク50の図示しない位置に設けられたアライメントマークとを精密に位置合わせした状態で配置される。このとき、第1のフォトレジスト層31と第2のマスク50とが精度よく位置合わせされる。
【0032】
この状態で露光光を照射して露光する。露光光の強度や時間等は、第1のフォトレジスト層31の厚さや材料に応じて適宜設定されている。露光光が開口部53を通して第2のフォトレジスト層32に照射されることで、第2のフォトレジスト層32が開口部53に一致した形状で露光される。この露光により、第2のフォトレジスト層32には平面視において溝部12と同一形状の可溶部位32aが形成される。この第2のフォトレジスト層32の可溶部位32aは、第1のフォトレジスト層31の露光部31aと平面視において同一位置に重なる位置となる。この可溶部位32aは後述する現像工程において現像液により完全に溶解除去可能な程度まで露光されている。
【0033】
なお、第2のマスク50で露光する際、第1のマスク40により露光された可溶部位31aが再び露光光が照射されて露光されることになる。しかし、この可溶部位31aは、溶解除去する部位であるため、更に露光されても不都合は生じない。
【0034】
これにより、全てのフォトレジスト層31、32の露光が完了した後、図3(e)に示すように、現像工程として、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する。
【0035】
この現像工程では、各フォトレジスト層31、32に形成されている全ての可溶部位31a、32aを同時に現像液により現像して、完全に溶解除去する。現像液は、第1及び第2のフォトレジスト層31、32の材料等に応じて適宜選択可能である。
【0036】
このようにして現像が完了すると、第1のフォトレジスト層31には、第1のマスク40の開口43の形状に対応した形状で第1の成形部31bが成形されると共に、第2のマスク50の開口53の形状に対応した形状で第2の成形部32bが成形され、これらが一体に組み合わされた状態で成形部20が成形される。ここでは、第1のフォトレジスト層31の第1の成形部31bと第2のフォトレジスト層32の第2の成形部32bとが、互いに重なる位置に配置された状態で一体化している。この第1の成形部31bの溝部12の側面12bに対応する側面31cと、第2の成形部32bの溝部12の側面12bに対応する側面32cとは何れも基材10の表面に対して、略垂直に形成される。これは、第1及び第2のフォトレジスト層31、32の厚さが適度であるため、各フォトレジスト層31、32内での露光光の散乱が少ないからである。
【0037】
この実施の形態では、次いで、全ての成形部31b、32bが成形されている現像後の基材10を加熱雰囲気中に配置して、表面形状の平滑化処理を行ってもよい。第1及び第2のマスク40、50の微細な位置ズレや、第1のフォトレジスト31と第2のフォトレジスト32との間の界面での溶解量の微細な差等に起因して、第1の成形部31bと第2の成形部32bとの間の界面等で、微細な段差が生じた場合、この平滑化処理により、側面31cと側面32cとを滑らかに連続させることができる。
【0038】
この平滑化処理の温度は、第1のフォトレジスト層31及び第2のフォトレジスト層32の材料に応じて適宜設定することができる。この温度は、第1フォトレジスト層31及び第2フォトレジスト層32の軟化温度以上であって、流動しない範囲出来るだけ軟化させることができる温度とするのが好適である。
【0039】
これにより、フォトレジストからなる成形体20の成形が終了する。この成形体20は、図2に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈しており、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面32cとが連続して基材10に対して略垂直な平面となっている。
【0040】
その後、このようにして基材10の表面に成形体20を成形した後、成形体20及び基材10をエッチングすることで、図1に示すように、成形体20に対応した形状を有し、溝部12を備えた微細構造体11を製造する。
【0041】
エッチングでは、第1及び第2のフォトレジスト層31、32と基材10とを、所定の選択比でエッチングすることにより、基材10の表面に成形体20に対応した形状を形成する。このエッチングの方法は、各フォトレジスト層31、32と基材10とを所定の選択比でエッチングできる限り特に限定されるものではなく、例えば、第1及び第2のフォトレジスト層31、32に対応したエッチングガスを用いたドライエッチングをで行ってもよい。
【0042】
なお、エッチング時の選択比は1以上としても、1未満としてもよい。1より大きければ、成形体20より更に高低差の大きな微細構造体11を製造することが可能となり、フォトレジスト層31、32の積層数を抑えることができる。但し、選択比が1より過剰に大きい場合には、成形体20の形状の誤差が拡大されることになるため、適度な選択比とするのが好適である。一方、選択比を1未満とすれば、成形体20より高低差が小さい微細構造体11が製造されることになるが、成形体20の誤差を縮小することができるため、微細構造体11の精度を向上することが可能である。これらは、微細構造体11に要求される精度等に応じて適宜設定するのが好ましい。
【0043】
以上のような成形体20の成形方法によれば、第1のフォトレジスト層31に第1のマスク40を用いて露光した後、現像することなく、第2のフォトレジスト層32を形成すると共に第2のマスク50を用いて露光し、その後、第1及び第2のフォトレジスト層32を合せて現像することで、各マスク40、50の開口43、53の形状に対応して露光された各フォトレジスト層31、32の第1の成形部31bと第2の成形部32bとが組み合わされた成形体20を成形するので、各フォトレジスト層31、32より厚い成形体20を成形することが可能である。しかも、各フォトレジスト層31、32毎に露光するため、成形体20の高低差が過剰に大きくても確実に露光することができる。
【0044】
また、各フォトレジスト層31、32を露光する毎に現像しないため、第2のフォトレジスト層32を平坦な第1のフォトレジスト層31の表面に形成することができ、第2のフォトレジスト層32の形成や露光を精度良く形成することが可能であると共に、複数のフォトレジスト層31、32の可溶部位31b、32bを一度に現像することができる。
【0045】
そのため、基材10上に各フォトレジスト層31、32の厚さに比べて、過剰に高低差の大きい成形体20を容易に精度よく成形することが可能である。
【0046】
また、この成形体20の成形方法では、第1及び第2のマスク40、50がバイナリーマスクからなり、第1及び第2の成形部31b、32bが平面視で同一形状を呈すると共に平面視で同一位置に配置されているので、第1の成形部31bと第2の成形部32bとが、基材に対して鉛直方向に一致して重なった形状の成形体20が得られる。その際、各フォトレジスト層31、32毎に露光しているため、露光時に各フォトレジスト層31、32内での露光光の散乱に起因する露光量の誤差が生じ難く、現像後に各成形部31b、32bの側面を基材10に対して鉛直方向に形成し易い。そのため、エッチングにより基材10に対して略鉛直方向の深い凹み形状や突出形状を精度良く形成し易い。
【0047】
更に、現像後に全成形部31b、32bを加熱雰囲気中に配置すれば、成形体20の基材10と直交方向の側面において、隣接するフォトレジスト層31、32間で段差が形成され難い。
【0048】
また、このように成形された成形体20によれば、一度に形成可能なフォトレジスト層31、32の厚さに比べて大幅に高低差が大きくて高精度の成形体20を提供することが可能である。
【0049】
そして、このような微細構造体11の製造方法によれば、上記のような成形体20の成形方法により基材10上に成形された成形体20を用いて、成形体20及び基材10をエッチングするので、エッチング時の選択率を過剰に大きく設定することなく、一度に形成可能なフォトレジスト層に比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に精度良く製造することが可能である。
【0050】
なお、上記発明の実施の形態1は、この発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、上記では、第1のフォトレジスト層31と第2のフォトレジスト層32とをポジ型フォトレジストにより形成した例について説明したが、それぞれネガ型フォトレジストを用いて形成することも可能である。その場合、上記発明の実施の形態1と同様にして成形体20を成形すると、図4に示す第1の変形例のように、基材10の中央部に突出した形状で成形体20を形成することができる。
【0052】
また、上記では、第1のマスク40の開口部43と第2のマスク50の開口部53とが同一形状の例について説明したが、それぞれ異なる形状を呈するものであってもよい。例えば、第1のマスク40の開口部43より第2のマスク部50の開口部53が小さい他は、上記発明の実施の形態1と同様にして成形体20を形成すると、図5に示す第2の変形例のように、成形体20の壁面27は、第1のフォトレジスト層31より第2のフォトレジスト層32の縁部が突出するような段差状に形成される。
【0053】
更に、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いる他は、第2の変形例と同様にして成形体20を成形すると、図6に示す第3の変形例のように、成形体20の壁面27は、第1のフォトレジスト層31の縁部より第2のフォトレジスト層32が凹んだような段差状に形成される。
【0054】
また、上記では、第1のフォトレジスト層31と第2のフォトレジスト層32との2層を積層した例について説明したが、何ら限定されるものではなく、3層以上のフォトレジスト層を積層することも可能である。例えば、図7に示す第4の変形例のように、各フォトレジスト層31〜34を形成する度に、適宜な開口を有するマスクを用いて露光し、現像することなく、次のフォトレジスト層32〜35を積層することを繰り返し、第1のフォトレジスト層31から第5のフォトレジスト層35を積層して実施の形態1と同様にして成形体20を形成することも可能である。この場合、各フォトレジスト層31〜35の縁部が多段の段差部29となっており、段差部29の一部に同一形状部29aが形成されている。
【0055】
更に、図8に示す第5の変形例のように、第1のフォトレジスト層31から第5のフォトレジスト層35を積層して現像することで、逆の勾配の多段の段差部29を形成してもよい。
【0056】
そして、このようにフォトレジスト層を3層以上積層する場合、現像時に各フォトレジスト層の可溶部位を確実に溶解除去できる限り、積層数は限定されず、適宜、選択することができる。
【0057】
更に、上記第1の実施の形態では、微細構造体を製造するために用いる成形体20について説明したが、成形体20の用途は特に限定されるものではなく、成形体20をそのまま、或いは硬化させて、各種部材として使用することも可能である。
[発明の実施の形態2]
【0058】
図9及び図10は、この発明の実施の形態2を示す。
【0059】
この発明の実施の形態2では、図1に示す微細構造体11の溝部12の側面12bが底面12cに対して傾斜している場合の成形体20を成形する例について説明する。
【0060】
成形する成形体20は、図9に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈し、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面32cとが連続して基材10に対して傾斜した平面となる他は、発明の実施の形態1と同様である。
【0061】
このような成形体20を成形するには、発明の実施の形態1と同様にして行うことが可能であり、まず、図10(a)に示すように、基材10の一方の表面に第1のフォトレジスト層31を形成する。
【0062】
この発明の実施の形態2では、第1のフォトレジスト層31は、ネガ型のフォトレジストを用いて、例えば、スピンコート法等により塗布して乾燥させることで、表面が出来るだけ平坦な平面となるように形成する。
【0063】
次いで、図10(b)に示すように、第1の露光工程として、第1のフォトレジスト層31に第1のマスク60を用いて露光する。
【0064】
第1のマスク60は、グレースケールマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12の反転形状の開口部63を有している。開口部63には、第1のフォトレジスト層31の側面31cを形成する部位に濃度勾配部65が設けられている。濃度勾配部65は、側面31cの目標形状の傾斜に応じて、露光光の透過率が調整された領域であり、第1のマスク60を面方向に分けた多数のピクセル毎に開口率が調整されることで濃度勾配が形成されている。
【0065】
この露光により、第1のフォトレジスト層31に可溶部位31aが形成される。第1のフォトレジスト層31では、可溶部位31aを除く部分は、現像工程において現像液により十分に溶解除去不能な程度まで露光され、可溶部位31aの濃度勾配部65に対応する部位は濃度勾配に対応して露光される。
【0066】
次いで、図10(c)に示すように、第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成する。
【0067】
第2のフォトレジスト層32は、第1のフォトレジスト層31が現像されていない状態で、第1のフォトレジスト層31と同一のフォトレジストを用いて同様に形成することができる。
【0068】
次いで、図10(d)に示すように、第2の露光工程として、第2のマスク70を用いて第2のフォトレジスト層32を露光する。
【0069】
第2のマスク70は、第1のマスクとは異なるグレースケールマスクからなる。第2のマスク70では、開口部73以外の遮蔽部77が第1のマスク60の開口部63以外の遮蔽部67より大きく形成されている。
【0070】
第2のマスク70の開口部73には、第2のフォトレジスト層32の側面32cを形成する部位に、開口率の調整により濃度勾配部75が設けられている。濃度勾配部75の濃度勾配は第1のマスク60の濃度勾配部65の濃度勾配と同一に形成されている。ここでは、図示しないアライメントマークにより第1のマスク60を基材10に精密に位置合わせしたときに配置される濃度勾配部65の位置と、第2のマスク70を基材10に精密に位置合わせしたときに配置される濃度勾配部75の位置とが、隣接するように形成されている。
【0071】
このような第2のマスク70を用いて露光すると、露光光が開口部73を通して第2のフォトレジスト層32に照射されることで、第2のフォトレジスト層32が開口部73に一致した形状で露光される。その際、第1のフォトレジスト層31において第1のマスク60の濃度勾配部65により露光された部位と、第2のフォトレジスト層32において第2のマスク70の濃度勾配部75により露光される部位とが、平面視において隣接する。
【0072】
なお、第2のマスク70による露光時には、第1のマスク60により露光された露光部位に再び露光光が照射されるが、この部位は溶解しない部位であるため、更に露光されてもよい。
【0073】
全てのフォトレジスト層31、32の露光が完了した後、図10(e)に示すように、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する。
【0074】
現像では、第1のフォトレジスト層31により、傾斜した側面31cを有する第1の成形部31bが成形され、第2のフォトレジスト層31により、傾斜した側面32cを有する第2の成形部32bが成形され、両者が互いに重なる位置に配置されて一体化した状態で成形部20が成形される。このとき、第1の成形部31bの側面31cと第2の成形部32の側面32cとが同一勾配で連続するように、平面視において隣接して配置されている。
【0075】
この実施の形態では、次いで、全ての成形部31b、32bが成形されている現像後の基材10を、全成形部31b、32bを溶解ガス雰囲気中に配置して、表面形状の平滑化処理を行ってもよい。第1及び第2のマスク60、70の微細な位置ズレや、第1のフォトレジスト31と第2のフォトレジスト32との間の界面での溶解量の微細な差等に起因して、第1の成形部31bの側面31cと第2の成形部32bの側面32bとの間の界面等で微細な段差が生じた場合、この平滑化処理により、側面31cと側面32cとを滑らかに連続させることができる。
【0076】
この平滑化処理では、第1及び第2のフォトレジスト層31、32を溶解可能なガス、例えば東京応化工業株式会社製PMシンナー等の溶解ガス雰囲気中に、全ての成形部31b、32bを配置し、必要に応じて加温して、所定時間配置することで処理を行うことができる。
【0077】
これにより、基材10の表面にフォトレジストからなる成形体20が成形される。この成形体20は、図9に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈しており、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面、32cとが連続して基材10に対して傾斜した平面となっている。
【0078】
そして、このようにして成形された成形体20を用い、成形体20に対応した形状を有して溝部12を備えた微細構造体11を製造するには、発明の実施の形態1と同様にすればよい。
【0079】
以上のようにして成形体20を成形したり、微細構造体11を製造しても、発明の実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0080】
特に、この発明の実施の形態2では、第1及び第2のマスク60、70がグレースケールマスクからなり、第1及び第2の成形部31b、32bがそれぞれ傾斜した側面31c、32cを含むと共に、各側面31c、32c同士が連続する位置に配置されているので、各フォトレジスト層31、32に比べて深い溝部12が傾斜面を有していても、成形体20や微細構造体11を精度良く形成することが可能である。
【0081】
また、ここでは、成形体20の傾斜面を複数のフォトレジスト層31、32毎に露光して形成しているので、一定勾配の傾斜面を形成することが容易である。通常、過剰に厚いフォトレジスト層に傾斜面を形成する場合、一定の濃度勾配を有するグレースケールマスクを用いて露光すると、露光光の散乱等に起因して、深い位置ほど傾斜のズレが大きくなり易い。ところが、この実施の形態のように複数のフォトレジスト層31、32毎に露光すれば、そのようなことが生じ難く、精度よく傾斜面を露光して成形し易い。
【0082】
なお、この発明の実施の形態2でも、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0083】
例えば、上記では、溝部12に対応するように第1の成形部31b及び第2の成形部32bにより凹形状を形成したが、第1及び第2のマスク60、70の開口部63、73と遮蔽部67、77を反転させると共に、各濃度勾配部65、75の濃度勾配を反転させ、更に、第2のマスク70により第1のフォトレジスト層31を露光すると共に第1のマスク60により第2のフォトレジスト層32を露光する他は、上記発明の実施の形態2と同様にし、露光光を調整しつつ成形体20を成形すれば、図11に示す第1の変形例のように、基材10の中央部に突出した形状で成形体20を形成することができる。
【0084】
また、この発明の実施の形態2でも、2層のフォトレジスト層を積層した例について説明したが、何ら限定するものではなく、3層以上のフォトレジスト層を積層することも可能であり、各フォトレジスト層を積層する毎に露光することを繰り返すことで、より高低差の大きい成形体を形成することが可能である。
【0085】
更に、上記では、各成形部31b、32bの側面31c、32cが一定勾配の傾斜した平面である例について説明したが、側面31c、32cが、それぞれ異なる傾斜の平面から形成されていてもよく、また、それぞれが曲面や屈曲面で形成されていてもよい。
[発明の実施の形態3]
【0086】
図12及び図13は、この発明の実施の形態3を示す。
【0087】
この発明の実施の形態3は、微細構造体として、図12に示すようなレンズアレイ25を製造する例である。
【0088】
このレンズアレイ25は、基材10の表面に凸形の所定の曲面形状を有するレンズ部15が1個或いは複数個設けられたものである。ここでは、基材10は光を透過可能な光学基材からなる。
【0089】
このようなレンズアレイ25であっても、図13に示すような成形体20を成形して発明の実施の形態2と同様に製造することが可能である。この成形体20では、第1の成形体31bと第2の成形体32bとに、それぞれ異なる形状の曲面31e、32eが形成されており、曲面31eと曲面32eが連続して形成される表面が、レンズ部15の表面形状に精度良く対応している。
【0090】
この成形体20を成形する際には、第1及び第2のフォトレジスト層31、32を構成するフォトレジストがポジ型であるかネガ型であるかによって、第1及び第2のマスク60、70の開口部63、73や濃度勾配部65、75を、レンズアレイ25の目標形状に対応するように設けるが、その際、第1のマスク60の濃度勾配部65の濃度勾配を目標形状よりも小さくし、第2の露光工程で、第2のマスク70の開口部73により露光されることで、所望の露光量となるように構成してもよい。
【0091】
そして、このような成形体20を基材10上に成形した後、エッチングすれば、成形体20の形状に対応したレンズアレイ25を製造することができる。
【0092】
このような成形体20を成形したりレンズアレイ25を製造する場合であっても、発明の実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
特に、この発明の実施の形態3によれば、成形体20の曲面からなる表面形状の高低差を、各フォトレジスト層31、32の厚さに比べて大きく形成することが容易であるため、レンズアレイ25のレンズ部15として、所謂SAGで示される高低差がフォトレジスト層31、32に比べて大きいレンズを製造することが容易である。
【0094】
なお、この発明の実施の形態3でも、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0095】
例えば、上記では、凸形のレンズ部を形成するための成形体20を成形した例について説明したが、図14に示すように、凹形状のレンズを形成するための成形体であっても、第1及び第2のマスクの形状を反転させたり、用いるフォトレジストの種類を逆にしたり、露光量を調整するなどにより成形することが可能であり、この成形体20を用いて、凹形状のレンズを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】この発明の実施の形態1の微細構造体を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1の成形体を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の成形体の成形工程を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1の第1の変形例の成形体を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の第2の変形例の成形体を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1の第3の変形例の成形体を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1の第4の変形例の成形体を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態1の第5の変形例の成形体を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2の成形体を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態2の成形体の成形工程を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態2の変形例の成形体を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3の微細構造体を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3の成形体を示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3の変形例の成形体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
10 基材
11 微細構造体
12 溝部
20 成形体
31 第1のフォトレジスト層
32 第2のフォトレジスト層
31a、32a 可溶部位
40、60 第1のマスク
50、70 第2のマスク
43、53、63、73 開口
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形する方法と、その方法により成形された成形体と、その成形体を用いた微細構造体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の基材上にフォトレジスト層を形成し、マスクを用いてこのフォトレジスト層を露光して現像することで、マスクの開口形状に対応した形状の成形体を基材上に成形し、更に、これらの基材及び成形体をエッチングすることで、回路等を製造する方法が知られている。近年、このような方法で種々の形状の微細構造体を形成することが検討されている。
【0003】
基材上のフォトレジスト層に成形体を成形して微細構造体を製造する場合、エッチング時のフォトレジスト層と基材との選択比を1より大きく設定することにより、フォトレジスト層の厚さより大きい高低差を有する微細構造体を製造することが可能である(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−158022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高低差のより大きい微細構造体を製造する場合、基材上に形成できるフォトレジスト層の厚さには限度があって厚肉に形成することが容易でなく、仮にフォトレジスト層を過剰に厚肉に形成したとしても、そのような厚肉のフォトレジスト層を露光することが困難である。そのため、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体をフォトレジスト層に形成することは行われていない。
【0005】
しかも、選択比を過剰に大きく設定してエッチングすることにより高低差の大きい微細構造体を形成すると、フォトレジスト層の成形体の誤差が選択比に応じて大きくなるため、大きな誤差を有する形状で微細構造体が製造されることになる。そのため、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きな微細構造体を製造することは容易でなかった。
【0006】
そこで、この発明は、1層のフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体を容易に成形することが可能な成形体の成形方法を提供することを課題とし、そのような成形方法により得られた過剰に高低差が大きい成形体を提供することを他の課題とする。また、1層のフォトレジスト層の厚さにに比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に製造する方法を提供することを更に他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するこの発明の成形体の成形方法は、フォトレジスト層にマスクを用いて露光して現像することで、前記マスクの開口形状に対応した形状を呈する成形体を前記フォトレジスト層に成形する方法において、第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、露光後の前記第1のフォトレジスト層上に第2のフォトレジスト層を形成し、該第2のフォトレジスト層に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、露光後の前記第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像する現像工程とを含み、前記第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第1のフォトレジスト層に成形される第1の成形部と、前記第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第2のフォトレジスト層に成形される第2の成形部とが組み合わされた前記成形体を成形することを特徴とする。
【0008】
この発明の成形体は、上記成形方法により成形されたことを特徴とする。
【0009】
この発明の微細構造体の製造方法は、基材上に形成されたフォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形し、前記成形体及び前記基材をエッチングすることで、前記成形体に対応する形状を呈する微細構造体を製造する方法であり、前記成形体を請求項1乃至7の何れか一つに記載の成形方法により成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の成形体の成形方法によれば、第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光した後、現像することなく、第2のフォトレジスト層を形成すると共に第2のマスクを用いて露光し、その後、第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像することで、各マスクの開口形状に対応して露光された各フォトレジスト層の第1の成形部と第2の成形部とが組み合わされた成形体を成形するので、各フォトレジスト層より高低差の大きい成形体を成形することが可能である。しかも、各フォトレジスト層毎に露光するため、成形体の高低差が過剰に大きくても確実に露光することができる。
【0011】
また、各フォトレジスト層を露光する毎に現像しないため、第2のフォトレジスト層を平坦な第1のフォトレジスト層の表面に形成することができ、第2のフォトレジスト層の形成や露光を精度良く行うことが可能であると共に、複数のフォトレジスト層の可溶部位を一度に現像することができる。
【0012】
そのため、各フォトレジストの厚さに比べて過剰に高低差の大きい成形体を容易に成形することが可能である。
【0013】
この発明の成形体によれば、上記のような成形体の成形方法により成形されているので、一度に形成可能なフォトレジスト層の厚さに比べて過剰に高低差が大きい成形体を提供することが可能である。
【0014】
この発明の微細構造体の製造方法によれば、上記のような成形体の成形方法により基材上に成形された成形体を用いて、成形体及び基材をエッチングするので、エッチング時の選択率を過剰に大きく設定することなく、一度に形成可能なフォトレジスト層に比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。各発明の実施の形態では、理解容易のために、特定形状を有する成形体及び微細構造体の例について説明するが、この発明では成形体及び微細構造体の形状は以下の形態に何ら限定されない。
[発明の実施の形態1]
【0016】
図1乃至図4は、この実施の形態1を示す。この実施の形態1で製造する微細構造体11は、図1に示すように、平面視で長方形形状を呈する基材10の一方の表面に、長手方向に連続した溝部12を有する。この溝部12は、底面12aと、底面12aに対して垂直に設けられた一対の側面12bとからなり、溝部12の両側には一対の上面12cが設けられている。溝部12は、例えば微細な流路等に使用されるものであってもよい。
【0017】
この実施の形態1により微細構造体11を製造するには、図2に示すように、基材10上に、微細構造体11の目標形状に対応した形状を呈する成形体20をフォトレジストにより成形し、成形体20及び基材10をエッチングすることで製造する。ここでは、後述するエッチング時の選択比を1としているので、成形体20は目標形状の側面12b及び上面12cの形状と一致した形状となっている。
【0018】
成形体20を成形する基材10は、微細構造体11を構成するための平板形状を呈する材料である。基材10は、ガラス、セラミックス、結晶体、樹脂など、微細構造体11に要求される性質を満足する特性を有してエッチング可能な材料からなる。
【0019】
この基材10上に成形体20を成形するには、図3に示すように複数の工程により行う。
まず、図3(a)に示すように、基材10の一方の表面に第1のフォトレジスト層31を形成する。
【0020】
第1のフォトレジスト層は、ネガ型フォトレジスト、ポジ型フォトレジストの何れからなるものでもよい。この実施の形態1ではポジ型のフォトレジストを用いている。第1のフォトレジスト層31を形成するには、例えばスピンコート法などで塗布し、乾燥させることで形成できる。次の露光工程において、精度良く露光し易くする目的で、第1のフォトレジスト層31の表面は十分に平坦な平面に形成するのがよい。
【0021】
第1のフォトレジスト層31の厚さは、乾燥させることなく一度に塗布可能な厚さの範囲で適宜選択できる。過剰に厚く形成する必要はないが、第1のフォトレジスト層31が薄いと、その分、他のフォトレジスト層32の厚さや積層数を多くしなければならないため、第1のフォトレジスト層31の厚さは表面を均一に平坦に形成できる範囲でなるべく厚くするのがよい。
【0022】
次いで、図3(b)に示すように、第1の露光工程として、第1のマスク40を用いて第1のフォトレジスト層31を露光する。
【0023】
第1のマスク40は、バイナリーマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12と同一形状の開口部43を有している。第1のマスク40は、基材10の図示しない位置に設けられたアライメントマークと第1のマスク40の図示しない位置に設けられたアライメントマークとを精密に位置合わせした状態で配置される。
【0024】
そして、露光光を照射して露光する。露光光の強度や露光時間等は、第1のフォトレジスト層31の厚さや材料に応じて適宜設定されている。露光光が開口部43を通して第1のフォトレジスト層31に照射されることで、第1のフォトレジスト層31が開口部43に一致した形状で露光される。この露光により、第1のフォトレジスト層31には平面視において溝部12と同一形状の可溶部位31aが形成される。この可溶部位31aは後述する現像工程において現像液により完全に溶解除去可能な程度まで露光されている。
【0025】
次いで、図3(c)に示すように、露光後の第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成する。
【0026】
第2のフォトレジスト層32は、第1のフォトレジスト層31と同一のフォトレジストにより形成するのが好ましい。第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト32を積層することで一体化させ易いからである。
【0027】
第2のフォトレジスト層32を露光後のフォトレジスト層31の表面に形成するには、第1のフォトレジスト層31を基材10の表面に形成する場合と同様にして行うことができ、例えばフォトレジストをスピンコート法等により塗布して乾燥させればよい。この第2のフォトレジスト層32の表面も出来るだけ平坦な平面となるように形成するのが好適である。露光工程において精度よく露光し易くできるからである。
【0028】
このとき、第1のフォトレジスト層31が現像されていないため、可溶部位31aは第1のフォトレジスト31層内に存在しており、第1のフォトレジスト層31の表面全面が平坦な状態で維持されている。そのため、第2のフォトレジスト層32を容易に平坦に形成可能である。第1フォトレジスト層31の表面に凹凸が存在すると、第2のフォトレジスト層32を平坦に形成し難くなる上に、露光工程で焦点を精度よく合わせることが困難になり、第2のフォトレジスト層32の露光精度が低下する。ところが、このように第1フォトレジスト層31の表面が平坦に維持されていれば、第2のフォトレジスト層32を平坦に形成でき、露光精度を向上することが可能である。
【0029】
なお、第2のフォトレジスト層32の厚さも、乾燥させることなく一度に塗布可能な厚さの範囲で適宜選択すればよく、全フォトレジスト層の積層数を少なくし易いという理由で、表面を均一に平坦に形成できる範囲でなるべく厚くするのがよい。
【0030】
次いで、図3(d)に示すように、第2の露光工程として、第2のマスク50を用いて第2のフォトレジスト層32を露光する。
【0031】
第2のマスク50は、バイナリーマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12と同一形状の開口部53を有している。この第2のマスク50の開口部53は第1のマスク40の開口部43と同一形状となっている。ここでは、第1のマスク40と同一のマスクを使用することができる。第2のマスク50は、基材10の図示しない位置に設けられたアライメントマークと第2のマスク50の図示しない位置に設けられたアライメントマークとを精密に位置合わせした状態で配置される。このとき、第1のフォトレジスト層31と第2のマスク50とが精度よく位置合わせされる。
【0032】
この状態で露光光を照射して露光する。露光光の強度や時間等は、第1のフォトレジスト層31の厚さや材料に応じて適宜設定されている。露光光が開口部53を通して第2のフォトレジスト層32に照射されることで、第2のフォトレジスト層32が開口部53に一致した形状で露光される。この露光により、第2のフォトレジスト層32には平面視において溝部12と同一形状の可溶部位32aが形成される。この第2のフォトレジスト層32の可溶部位32aは、第1のフォトレジスト層31の露光部31aと平面視において同一位置に重なる位置となる。この可溶部位32aは後述する現像工程において現像液により完全に溶解除去可能な程度まで露光されている。
【0033】
なお、第2のマスク50で露光する際、第1のマスク40により露光された可溶部位31aが再び露光光が照射されて露光されることになる。しかし、この可溶部位31aは、溶解除去する部位であるため、更に露光されても不都合は生じない。
【0034】
これにより、全てのフォトレジスト層31、32の露光が完了した後、図3(e)に示すように、現像工程として、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する。
【0035】
この現像工程では、各フォトレジスト層31、32に形成されている全ての可溶部位31a、32aを同時に現像液により現像して、完全に溶解除去する。現像液は、第1及び第2のフォトレジスト層31、32の材料等に応じて適宜選択可能である。
【0036】
このようにして現像が完了すると、第1のフォトレジスト層31には、第1のマスク40の開口43の形状に対応した形状で第1の成形部31bが成形されると共に、第2のマスク50の開口53の形状に対応した形状で第2の成形部32bが成形され、これらが一体に組み合わされた状態で成形部20が成形される。ここでは、第1のフォトレジスト層31の第1の成形部31bと第2のフォトレジスト層32の第2の成形部32bとが、互いに重なる位置に配置された状態で一体化している。この第1の成形部31bの溝部12の側面12bに対応する側面31cと、第2の成形部32bの溝部12の側面12bに対応する側面32cとは何れも基材10の表面に対して、略垂直に形成される。これは、第1及び第2のフォトレジスト層31、32の厚さが適度であるため、各フォトレジスト層31、32内での露光光の散乱が少ないからである。
【0037】
この実施の形態では、次いで、全ての成形部31b、32bが成形されている現像後の基材10を加熱雰囲気中に配置して、表面形状の平滑化処理を行ってもよい。第1及び第2のマスク40、50の微細な位置ズレや、第1のフォトレジスト31と第2のフォトレジスト32との間の界面での溶解量の微細な差等に起因して、第1の成形部31bと第2の成形部32bとの間の界面等で、微細な段差が生じた場合、この平滑化処理により、側面31cと側面32cとを滑らかに連続させることができる。
【0038】
この平滑化処理の温度は、第1のフォトレジスト層31及び第2のフォトレジスト層32の材料に応じて適宜設定することができる。この温度は、第1フォトレジスト層31及び第2フォトレジスト層32の軟化温度以上であって、流動しない範囲出来るだけ軟化させることができる温度とするのが好適である。
【0039】
これにより、フォトレジストからなる成形体20の成形が終了する。この成形体20は、図2に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈しており、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面32cとが連続して基材10に対して略垂直な平面となっている。
【0040】
その後、このようにして基材10の表面に成形体20を成形した後、成形体20及び基材10をエッチングすることで、図1に示すように、成形体20に対応した形状を有し、溝部12を備えた微細構造体11を製造する。
【0041】
エッチングでは、第1及び第2のフォトレジスト層31、32と基材10とを、所定の選択比でエッチングすることにより、基材10の表面に成形体20に対応した形状を形成する。このエッチングの方法は、各フォトレジスト層31、32と基材10とを所定の選択比でエッチングできる限り特に限定されるものではなく、例えば、第1及び第2のフォトレジスト層31、32に対応したエッチングガスを用いたドライエッチングをで行ってもよい。
【0042】
なお、エッチング時の選択比は1以上としても、1未満としてもよい。1より大きければ、成形体20より更に高低差の大きな微細構造体11を製造することが可能となり、フォトレジスト層31、32の積層数を抑えることができる。但し、選択比が1より過剰に大きい場合には、成形体20の形状の誤差が拡大されることになるため、適度な選択比とするのが好適である。一方、選択比を1未満とすれば、成形体20より高低差が小さい微細構造体11が製造されることになるが、成形体20の誤差を縮小することができるため、微細構造体11の精度を向上することが可能である。これらは、微細構造体11に要求される精度等に応じて適宜設定するのが好ましい。
【0043】
以上のような成形体20の成形方法によれば、第1のフォトレジスト層31に第1のマスク40を用いて露光した後、現像することなく、第2のフォトレジスト層32を形成すると共に第2のマスク50を用いて露光し、その後、第1及び第2のフォトレジスト層32を合せて現像することで、各マスク40、50の開口43、53の形状に対応して露光された各フォトレジスト層31、32の第1の成形部31bと第2の成形部32bとが組み合わされた成形体20を成形するので、各フォトレジスト層31、32より厚い成形体20を成形することが可能である。しかも、各フォトレジスト層31、32毎に露光するため、成形体20の高低差が過剰に大きくても確実に露光することができる。
【0044】
また、各フォトレジスト層31、32を露光する毎に現像しないため、第2のフォトレジスト層32を平坦な第1のフォトレジスト層31の表面に形成することができ、第2のフォトレジスト層32の形成や露光を精度良く形成することが可能であると共に、複数のフォトレジスト層31、32の可溶部位31b、32bを一度に現像することができる。
【0045】
そのため、基材10上に各フォトレジスト層31、32の厚さに比べて、過剰に高低差の大きい成形体20を容易に精度よく成形することが可能である。
【0046】
また、この成形体20の成形方法では、第1及び第2のマスク40、50がバイナリーマスクからなり、第1及び第2の成形部31b、32bが平面視で同一形状を呈すると共に平面視で同一位置に配置されているので、第1の成形部31bと第2の成形部32bとが、基材に対して鉛直方向に一致して重なった形状の成形体20が得られる。その際、各フォトレジスト層31、32毎に露光しているため、露光時に各フォトレジスト層31、32内での露光光の散乱に起因する露光量の誤差が生じ難く、現像後に各成形部31b、32bの側面を基材10に対して鉛直方向に形成し易い。そのため、エッチングにより基材10に対して略鉛直方向の深い凹み形状や突出形状を精度良く形成し易い。
【0047】
更に、現像後に全成形部31b、32bを加熱雰囲気中に配置すれば、成形体20の基材10と直交方向の側面において、隣接するフォトレジスト層31、32間で段差が形成され難い。
【0048】
また、このように成形された成形体20によれば、一度に形成可能なフォトレジスト層31、32の厚さに比べて大幅に高低差が大きくて高精度の成形体20を提供することが可能である。
【0049】
そして、このような微細構造体11の製造方法によれば、上記のような成形体20の成形方法により基材10上に成形された成形体20を用いて、成形体20及び基材10をエッチングするので、エッチング時の選択率を過剰に大きく設定することなく、一度に形成可能なフォトレジスト層に比べて過剰に高低差の大きい微細構造体を容易に精度良く製造することが可能である。
【0050】
なお、上記発明の実施の形態1は、この発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、上記では、第1のフォトレジスト層31と第2のフォトレジスト層32とをポジ型フォトレジストにより形成した例について説明したが、それぞれネガ型フォトレジストを用いて形成することも可能である。その場合、上記発明の実施の形態1と同様にして成形体20を成形すると、図4に示す第1の変形例のように、基材10の中央部に突出した形状で成形体20を形成することができる。
【0052】
また、上記では、第1のマスク40の開口部43と第2のマスク50の開口部53とが同一形状の例について説明したが、それぞれ異なる形状を呈するものであってもよい。例えば、第1のマスク40の開口部43より第2のマスク部50の開口部53が小さい他は、上記発明の実施の形態1と同様にして成形体20を形成すると、図5に示す第2の変形例のように、成形体20の壁面27は、第1のフォトレジスト層31より第2のフォトレジスト層32の縁部が突出するような段差状に形成される。
【0053】
更に、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いる他は、第2の変形例と同様にして成形体20を成形すると、図6に示す第3の変形例のように、成形体20の壁面27は、第1のフォトレジスト層31の縁部より第2のフォトレジスト層32が凹んだような段差状に形成される。
【0054】
また、上記では、第1のフォトレジスト層31と第2のフォトレジスト層32との2層を積層した例について説明したが、何ら限定されるものではなく、3層以上のフォトレジスト層を積層することも可能である。例えば、図7に示す第4の変形例のように、各フォトレジスト層31〜34を形成する度に、適宜な開口を有するマスクを用いて露光し、現像することなく、次のフォトレジスト層32〜35を積層することを繰り返し、第1のフォトレジスト層31から第5のフォトレジスト層35を積層して実施の形態1と同様にして成形体20を形成することも可能である。この場合、各フォトレジスト層31〜35の縁部が多段の段差部29となっており、段差部29の一部に同一形状部29aが形成されている。
【0055】
更に、図8に示す第5の変形例のように、第1のフォトレジスト層31から第5のフォトレジスト層35を積層して現像することで、逆の勾配の多段の段差部29を形成してもよい。
【0056】
そして、このようにフォトレジスト層を3層以上積層する場合、現像時に各フォトレジスト層の可溶部位を確実に溶解除去できる限り、積層数は限定されず、適宜、選択することができる。
【0057】
更に、上記第1の実施の形態では、微細構造体を製造するために用いる成形体20について説明したが、成形体20の用途は特に限定されるものではなく、成形体20をそのまま、或いは硬化させて、各種部材として使用することも可能である。
[発明の実施の形態2]
【0058】
図9及び図10は、この発明の実施の形態2を示す。
【0059】
この発明の実施の形態2では、図1に示す微細構造体11の溝部12の側面12bが底面12cに対して傾斜している場合の成形体20を成形する例について説明する。
【0060】
成形する成形体20は、図9に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈し、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面32cとが連続して基材10に対して傾斜した平面となる他は、発明の実施の形態1と同様である。
【0061】
このような成形体20を成形するには、発明の実施の形態1と同様にして行うことが可能であり、まず、図10(a)に示すように、基材10の一方の表面に第1のフォトレジスト層31を形成する。
【0062】
この発明の実施の形態2では、第1のフォトレジスト層31は、ネガ型のフォトレジストを用いて、例えば、スピンコート法等により塗布して乾燥させることで、表面が出来るだけ平坦な平面となるように形成する。
【0063】
次いで、図10(b)に示すように、第1の露光工程として、第1のフォトレジスト層31に第1のマスク60を用いて露光する。
【0064】
第1のマスク60は、グレースケールマスクからなり、平面視形状が目標形状に対応しており、溝部12の反転形状の開口部63を有している。開口部63には、第1のフォトレジスト層31の側面31cを形成する部位に濃度勾配部65が設けられている。濃度勾配部65は、側面31cの目標形状の傾斜に応じて、露光光の透過率が調整された領域であり、第1のマスク60を面方向に分けた多数のピクセル毎に開口率が調整されることで濃度勾配が形成されている。
【0065】
この露光により、第1のフォトレジスト層31に可溶部位31aが形成される。第1のフォトレジスト層31では、可溶部位31aを除く部分は、現像工程において現像液により十分に溶解除去不能な程度まで露光され、可溶部位31aの濃度勾配部65に対応する部位は濃度勾配に対応して露光される。
【0066】
次いで、図10(c)に示すように、第1のフォトレジスト層31上に第2のフォトレジスト層32を形成する。
【0067】
第2のフォトレジスト層32は、第1のフォトレジスト層31が現像されていない状態で、第1のフォトレジスト層31と同一のフォトレジストを用いて同様に形成することができる。
【0068】
次いで、図10(d)に示すように、第2の露光工程として、第2のマスク70を用いて第2のフォトレジスト層32を露光する。
【0069】
第2のマスク70は、第1のマスクとは異なるグレースケールマスクからなる。第2のマスク70では、開口部73以外の遮蔽部77が第1のマスク60の開口部63以外の遮蔽部67より大きく形成されている。
【0070】
第2のマスク70の開口部73には、第2のフォトレジスト層32の側面32cを形成する部位に、開口率の調整により濃度勾配部75が設けられている。濃度勾配部75の濃度勾配は第1のマスク60の濃度勾配部65の濃度勾配と同一に形成されている。ここでは、図示しないアライメントマークにより第1のマスク60を基材10に精密に位置合わせしたときに配置される濃度勾配部65の位置と、第2のマスク70を基材10に精密に位置合わせしたときに配置される濃度勾配部75の位置とが、隣接するように形成されている。
【0071】
このような第2のマスク70を用いて露光すると、露光光が開口部73を通して第2のフォトレジスト層32に照射されることで、第2のフォトレジスト層32が開口部73に一致した形状で露光される。その際、第1のフォトレジスト層31において第1のマスク60の濃度勾配部65により露光された部位と、第2のフォトレジスト層32において第2のマスク70の濃度勾配部75により露光される部位とが、平面視において隣接する。
【0072】
なお、第2のマスク70による露光時には、第1のマスク60により露光された露光部位に再び露光光が照射されるが、この部位は溶解しない部位であるため、更に露光されてもよい。
【0073】
全てのフォトレジスト層31、32の露光が完了した後、図10(e)に示すように、露光後の第1及び第2のフォトレジスト層31、32を合せて現像する。
【0074】
現像では、第1のフォトレジスト層31により、傾斜した側面31cを有する第1の成形部31bが成形され、第2のフォトレジスト層31により、傾斜した側面32cを有する第2の成形部32bが成形され、両者が互いに重なる位置に配置されて一体化した状態で成形部20が成形される。このとき、第1の成形部31bの側面31cと第2の成形部32の側面32cとが同一勾配で連続するように、平面視において隣接して配置されている。
【0075】
この実施の形態では、次いで、全ての成形部31b、32bが成形されている現像後の基材10を、全成形部31b、32bを溶解ガス雰囲気中に配置して、表面形状の平滑化処理を行ってもよい。第1及び第2のマスク60、70の微細な位置ズレや、第1のフォトレジスト31と第2のフォトレジスト32との間の界面での溶解量の微細な差等に起因して、第1の成形部31bの側面31cと第2の成形部32bの側面32bとの間の界面等で微細な段差が生じた場合、この平滑化処理により、側面31cと側面32cとを滑らかに連続させることができる。
【0076】
この平滑化処理では、第1及び第2のフォトレジスト層31、32を溶解可能なガス、例えば東京応化工業株式会社製PMシンナー等の溶解ガス雰囲気中に、全ての成形部31b、32bを配置し、必要に応じて加温して、所定時間配置することで処理を行うことができる。
【0077】
これにより、基材10の表面にフォトレジストからなる成形体20が成形される。この成形体20は、図9に示すように、微細構造体11の目標形状に応じた形状を呈しており、第1のフォトレジスト層31の側面31cと第2のフォトレジスト層32の側面、32cとが連続して基材10に対して傾斜した平面となっている。
【0078】
そして、このようにして成形された成形体20を用い、成形体20に対応した形状を有して溝部12を備えた微細構造体11を製造するには、発明の実施の形態1と同様にすればよい。
【0079】
以上のようにして成形体20を成形したり、微細構造体11を製造しても、発明の実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0080】
特に、この発明の実施の形態2では、第1及び第2のマスク60、70がグレースケールマスクからなり、第1及び第2の成形部31b、32bがそれぞれ傾斜した側面31c、32cを含むと共に、各側面31c、32c同士が連続する位置に配置されているので、各フォトレジスト層31、32に比べて深い溝部12が傾斜面を有していても、成形体20や微細構造体11を精度良く形成することが可能である。
【0081】
また、ここでは、成形体20の傾斜面を複数のフォトレジスト層31、32毎に露光して形成しているので、一定勾配の傾斜面を形成することが容易である。通常、過剰に厚いフォトレジスト層に傾斜面を形成する場合、一定の濃度勾配を有するグレースケールマスクを用いて露光すると、露光光の散乱等に起因して、深い位置ほど傾斜のズレが大きくなり易い。ところが、この実施の形態のように複数のフォトレジスト層31、32毎に露光すれば、そのようなことが生じ難く、精度よく傾斜面を露光して成形し易い。
【0082】
なお、この発明の実施の形態2でも、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0083】
例えば、上記では、溝部12に対応するように第1の成形部31b及び第2の成形部32bにより凹形状を形成したが、第1及び第2のマスク60、70の開口部63、73と遮蔽部67、77を反転させると共に、各濃度勾配部65、75の濃度勾配を反転させ、更に、第2のマスク70により第1のフォトレジスト層31を露光すると共に第1のマスク60により第2のフォトレジスト層32を露光する他は、上記発明の実施の形態2と同様にし、露光光を調整しつつ成形体20を成形すれば、図11に示す第1の変形例のように、基材10の中央部に突出した形状で成形体20を形成することができる。
【0084】
また、この発明の実施の形態2でも、2層のフォトレジスト層を積層した例について説明したが、何ら限定するものではなく、3層以上のフォトレジスト層を積層することも可能であり、各フォトレジスト層を積層する毎に露光することを繰り返すことで、より高低差の大きい成形体を形成することが可能である。
【0085】
更に、上記では、各成形部31b、32bの側面31c、32cが一定勾配の傾斜した平面である例について説明したが、側面31c、32cが、それぞれ異なる傾斜の平面から形成されていてもよく、また、それぞれが曲面や屈曲面で形成されていてもよい。
[発明の実施の形態3]
【0086】
図12及び図13は、この発明の実施の形態3を示す。
【0087】
この発明の実施の形態3は、微細構造体として、図12に示すようなレンズアレイ25を製造する例である。
【0088】
このレンズアレイ25は、基材10の表面に凸形の所定の曲面形状を有するレンズ部15が1個或いは複数個設けられたものである。ここでは、基材10は光を透過可能な光学基材からなる。
【0089】
このようなレンズアレイ25であっても、図13に示すような成形体20を成形して発明の実施の形態2と同様に製造することが可能である。この成形体20では、第1の成形体31bと第2の成形体32bとに、それぞれ異なる形状の曲面31e、32eが形成されており、曲面31eと曲面32eが連続して形成される表面が、レンズ部15の表面形状に精度良く対応している。
【0090】
この成形体20を成形する際には、第1及び第2のフォトレジスト層31、32を構成するフォトレジストがポジ型であるかネガ型であるかによって、第1及び第2のマスク60、70の開口部63、73や濃度勾配部65、75を、レンズアレイ25の目標形状に対応するように設けるが、その際、第1のマスク60の濃度勾配部65の濃度勾配を目標形状よりも小さくし、第2の露光工程で、第2のマスク70の開口部73により露光されることで、所望の露光量となるように構成してもよい。
【0091】
そして、このような成形体20を基材10上に成形した後、エッチングすれば、成形体20の形状に対応したレンズアレイ25を製造することができる。
【0092】
このような成形体20を成形したりレンズアレイ25を製造する場合であっても、発明の実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
特に、この発明の実施の形態3によれば、成形体20の曲面からなる表面形状の高低差を、各フォトレジスト層31、32の厚さに比べて大きく形成することが容易であるため、レンズアレイ25のレンズ部15として、所謂SAGで示される高低差がフォトレジスト層31、32に比べて大きいレンズを製造することが容易である。
【0094】
なお、この発明の実施の形態3でも、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0095】
例えば、上記では、凸形のレンズ部を形成するための成形体20を成形した例について説明したが、図14に示すように、凹形状のレンズを形成するための成形体であっても、第1及び第2のマスクの形状を反転させたり、用いるフォトレジストの種類を逆にしたり、露光量を調整するなどにより成形することが可能であり、この成形体20を用いて、凹形状のレンズを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】この発明の実施の形態1の微細構造体を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1の成形体を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の成形体の成形工程を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1の第1の変形例の成形体を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の第2の変形例の成形体を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1の第3の変形例の成形体を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1の第4の変形例の成形体を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態1の第5の変形例の成形体を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2の成形体を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態2の成形体の成形工程を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態2の変形例の成形体を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3の微細構造体を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3の成形体を示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3の変形例の成形体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
10 基材
11 微細構造体
12 溝部
20 成形体
31 第1のフォトレジスト層
32 第2のフォトレジスト層
31a、32a 可溶部位
40、60 第1のマスク
50、70 第2のマスク
43、53、63、73 開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト層にマスクを用いて露光して現像することで、前記マスクの開口形状に対応した形状を呈する成形体を前記フォトレジスト層に成形する方法において、
第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、
露光後の前記第1のフォトレジスト層上に第2のフォトレジスト層を形成し、該第2のフォトレジスト層に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、
露光後の前記第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像する現像工程とを含み、
前記第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第1のフォトレジスト層に成形される第1の成形部と、前記第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第2のフォトレジスト層に成形される第2の成形部とが組み合わされた前記成形体を成形することを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のマスクは、バイナリーマスクからなることを特徴とする請求項1に記載の成形体の成形方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の成形部は、平面視で同一形状を呈すると共に平面視で同一位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の成形体の成形方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のマスクは、グレースケールマスクからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の成形体の成形方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の成形部は、それぞれ傾斜面を含むと共に、前記各傾斜面同士が連続する位置に配置されることを特徴とする請求項4に記載の成形体の成形方法。
【請求項6】
前記現像後に、前記全成形部を加熱雰囲気中に配置することを特徴とする請求項3又は5に記載の成形体の成形方法。
【請求項7】
前記現像後に、前記全成形部を溶解ガス雰囲気中に配置することを特徴とする請求項3又は5に記載の成形体の成形方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つの成形方法により成形されたことを特徴とする成形体。
【請求項9】
基材上に形成されたフォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形し、前記成形体及び前記基材をエッチングすることで、前記成形体に対応する形状を呈する微細構造体を製造する方法であり、
前記成形体を請求項1乃至7の何れか一つに記載の成形方法により成形することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項1】
フォトレジスト層にマスクを用いて露光して現像することで、前記マスクの開口形状に対応した形状を呈する成形体を前記フォトレジスト層に成形する方法において、
第1のフォトレジスト層に第1のマスクを用いて露光する第1の露光工程と、
露光後の前記第1のフォトレジスト層上に第2のフォトレジスト層を形成し、該第2のフォトレジスト層に第2のマスクを用いて露光する第2の露光工程と、
露光後の前記第1及び第2のフォトレジスト層を合せて現像する現像工程とを含み、
前記第1のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第1のフォトレジスト層に成形される第1の成形部と、前記第2のマスクの開口形状に対応した形状を呈して前記第2のフォトレジスト層に成形される第2の成形部とが組み合わされた前記成形体を成形することを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のマスクは、バイナリーマスクからなることを特徴とする請求項1に記載の成形体の成形方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の成形部は、平面視で同一形状を呈すると共に平面視で同一位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の成形体の成形方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のマスクは、グレースケールマスクからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の成形体の成形方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の成形部は、それぞれ傾斜面を含むと共に、前記各傾斜面同士が連続する位置に配置されることを特徴とする請求項4に記載の成形体の成形方法。
【請求項6】
前記現像後に、前記全成形部を加熱雰囲気中に配置することを特徴とする請求項3又は5に記載の成形体の成形方法。
【請求項7】
前記現像後に、前記全成形部を溶解ガス雰囲気中に配置することを特徴とする請求項3又は5に記載の成形体の成形方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つの成形方法により成形されたことを特徴とする成形体。
【請求項9】
基材上に形成されたフォトレジスト層を露光及び現像して成形体を成形し、前記成形体及び前記基材をエッチングすることで、前記成形体に対応する形状を呈する微細構造体を製造する方法であり、
前記成形体を請求項1乃至7の何れか一つに記載の成形方法により成形することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−2757(P2010−2757A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162331(P2008−162331)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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