説明

成形平板歪矯正装置及びその歪矯正方法

【課題】成形した合成樹脂平板の平面度を0.5以下に小さくできること。
【解決手段】射出成形型70によって薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品1の射出成形を行い、歪矯正型40で射出成形型70で成形した平板状の製品1を射出成形型70から取り出して、平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用して矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40に位置決め装填し、前記射出成形型70で成形した平板状の製品1の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加えて、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形した1000mm2以上の面積の合成樹脂平板の平面度を小さくできる成形平板歪矯正装置及び成形平板歪矯正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の成形平板歪矯正装置として、合成樹脂平板を燃料電池用セパレータとする特許文献1が公知である。この技術は、カーボンと熱硬化性樹脂とを混練した材料を、射出成形可動型及び射出成形固定型で所定形状に圧縮成形するとともに、硬化温度に加熱して成形する燃料電池用セパレータの製造方法において、前記硬化温度に加熱後型から取り出したセパレータを放熱させる際に、放熱性の良い側の面に対応する前記射出成形可動型及び射出成形固定型のいずれか一方の加熱温度を、他方の加熱温度より高く設定する技術を開示している。
【0003】
また、特許文献2では、 底壁が変形した上方開放型の熱可塑性合成樹脂容器の底壁を矯正するための合成樹脂容器の矯正装置を開示している。即ち、加熱セクションと、それと並んで配置される冷却セクションと、両セクションの下方に配置される駆動手段とを備え、前記加熱セクションは、所定の高温域に設定可能で、かつ、反転状態の前記合成樹脂容器の底壁内面を載置し得る可動熱盤と、所定の高温域に設定可能で、かつ前記可動熱盤の上方に対向して固定された固定熱盤と有し、前記冷却セクションは、反転状態の前記合成樹脂容器の底壁内面を載置し得る冷却用可動プレートと、所定の低温域に設定可能で、かつ前記冷却用可動プレートの上方に対向して固定された冷却手段とを有し、前記駆動手段は、前記可動熱盤及び冷却用可動プレートを昇降自在に支持する昇降機構と、その昇降機構を作動し、前記可動熱盤及び冷却用可動プレートを昇降させて、それらに載置された前記合成樹脂容器の底壁外面を前記固定熱盤及び冷却手段に対し接離させる単一の流体圧シリンダとを有するものである。
【0004】
そして、特許文献3では、射出成形機で合成樹脂製成形物を成形した後に、射出成形機から取り出した合成樹脂製成形物を矯正治具で矯正しながら冷却する合成樹脂製成形物の成形方法を開示している。
【特許文献1】特開2005−174710
【特許文献2】特開平08−336908号公報
【特許文献3】特開平11−129288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術については、型から取り出したセパレータを放熱させる際に、放熱性の良い側の面に対応する射出成形可動型及び射出成形固定型のいずれか一方の加熱温度を、他方の加熱温度より高く設定するものであるが、合成樹脂平板のように両側の表面積が均一の場合には、この技術思想を採用することができない。
また、上記特許文献2の技術については、可動熱盤を上昇させ、それに載置された合成樹脂容器の底壁を内外両面から可動熱盤及び固定熱盤で挟んで挟圧状態のもとに加熱し、冷却用可動プレートを上昇させて、それに載置された容器の底壁を内外両面から可動プレート及び冷却手段で挟んで挟圧状態のもとに冷却するものであり、容器底壁の変形を除去して矯正するものであるが、再成形を行うものであり、成形した合成樹脂平板の平面度を小さくする加工には使用できない。
そして、上記特許文献3の技術については、射出成形機で合成樹脂製成形物を成形した後、射出成形機から取り出した合成樹脂製成形物を矯正治具で矯正しながら冷却するものであるが、発明者らの確認実験によれば、成形した合成樹脂平板の平面度を小さくしようとしても、燃料電池用セパレータのように薄肉で大きい平板状の製品においては、平面度を0.5以下にすることが困難であった。
更に、発明者らは、最も一般的に考えられる矯正の手法として、高温状態で一定荷重を加えて2時間のアニールを行う方法も確認実験を行ったが、平面度を0.5以下に低下させる程度の効果は得られなかった。
【0006】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、成形した合成樹脂平板の平面度を0.5以下に小さくできる成形平板歪矯正装置及びその歪矯正方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1にかかる成形平板歪矯正装置は、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品、例えば、燃料電池用セパレータのような平板状製品の射出成形を行う射出成形型と、前記射出成形型で成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出して装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加えて、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行う歪矯正型を具備するものである。
ここで、上記射出成形型は、3mm程度以下の薄肉で、かつ、1000mm2程度以上の面積の平板状の燃料電池用セパレータ等の板材の射出成形を行う金型であればよい。勿論、平板とは、燃料電池用セパレータ等の板材のように平板と見做される程度の表面の凹凸模様、シボ模様、桟形状を含み、通常外表面を基準とするが、本発明を実施する場合には、内部を基準とすることもできる。
また、上記平板状の製品の位置決め装填は、歪の基準位置を特定するものであるから、外周またはコーナ穴を利用し、特定の位置が2次元的に決定できるものであればよい。
そして、上記成形歪に対応して部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きに加える荷重とは、歪の大小に応じて該当部位に加える加重とするものであるから、部分的にみれば全体的となるが、歪の大きな部分に対してそれに応じた荷重を加えればよい。
更に、上記歪矯正型は、射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行うものであり、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって歪矯正を行う時間を設定するものであり、通常、作業効率からして、射出成形時間内に設定される。
【0008】
請求項2にかかる成形平板歪矯正装置の前記歪矯正型は、前記射出成形型の下に位置させたものである。ここで、前記歪矯正型と前記射出成形型の上下関係は、平板状の製品の流れに対するエネルギ消費を考慮したものであり、当該位置関係以外の実施を否定するものではない。
【0009】
請求項3の成形平板歪矯正装置は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うものである。
【0010】
請求項4にかかる成形平板歪矯正方法は、射出成形可動型及び射出成形固定型からなる射出成形型によって、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品の射出成形を行う射出成形工程と、前記射出成形工程によって射出成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出して位置決め装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加えて、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形した温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって、前記射出成形工程に要する時間内で平板歪の矯正を行う歪矯正工程を具備するものである。
ここで、上記射出成形を行う射出成形可動型及び射出成形固定型からなる射出成形型は、3mm程度以下の薄肉で、かつ、100cm2程度以上の面積の平板状の燃料電池用セパレータ等の板材の射出成形を行う金型であればよい。勿論、平板とは、燃料電池用セパレータ等の板材のように平板と見做される程度の表面の凹凸模様、シボ模様、桟形状を含み、通常外表面を基準とするが、本発明を実施する場合には、内部を基準とすることもできる。
また、上記平板状の製品の位置決め装填は、歪の基準位置を特定するものであるから、外周またはコーナ穴を利用し、特定の位置が2次元的に決定できるものであればよい。
そして、上記成形歪に対応して部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きに加える加圧とは、歪の大小に応じて該当部位に加える加重とするものであるから、部分的にみれば全体的となるが、歪の大きな部分に対してそれに応じた加圧を加えればよい。
更に、上記歪矯正型は、射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行うものであり、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって歪矯正を行う時間を設定するものであり、作業効率からして、射出成形時間内に設定される。
【0011】
請求項5にかかる成形平板歪矯正方法の前記歪矯正工程は、前記射出成形工程の下方位置で行うものである。ここで、前記歪矯正型と前記射出成形型の上下関係は、平板状の製品の流れに対するエネルギ消費を考慮したものであり、当該位置関係以外の実施を否定するものではない。
【0012】
請求項6にかかる成形平板歪矯正方法は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の成形平板歪矯正装置は、射出成形型によって、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品の射出成形を行い、歪矯正型で前記射出成形型で成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出して、歪矯正型に位置決め装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加えて、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行うものである。
一般に、矯正を必要とする平板状の製品は、成形歪によって、反り変形し、大きく見ると捩れを伴うが、それは射出成形機及び金型によって決定される。同一金型、同一射出成形機を使用すると、殆ど同様の成形歪が現れる。その成形歪に対して、その歪方向と反対方向の歪を付与するように、成形歪に応じて部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加え、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、かつ、矯正加圧する圧力及び冷却速度を所定の条件として、平板歪の矯正を行い、成形歪が変化しない特定の温度で矯正製品の取り出しを行うものである。故に、平面度を0.3以下にすることができる。
【0014】
請求項2の成形平板歪矯正装置の前記歪矯正型は、前記射出成形型の下に位置させたものであるから、請求項1の効果に加えて、前記射出成形型を開くことにより、前記射出成形型で成形した平板状の製品は重力の作用によって下方に移動するから、射出成形の直後に歪矯正を行うことができる。しかも、その搬送エネルギを最小とすることができる。
【0015】
請求項3の成形平板歪矯正装置は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うものであるから、請求項2の効果に加えて、射出成形のタイミングで射出成形と歪矯正を行うことができ、射出成形と歪矯正の専用の成形機を用意する必要がなく、射出成形のタイミングで矯正を行った平板状の製品を成形できる。
【0016】
請求項4の成形平板歪矯正方法は、射出成形工程で、射出成形可動型及び射出成形固定型からなる射出成形型によって、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品の射出成形を行い、また、前記射出成形工程によって射出成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出し、歪矯正工程で前記平板状の製品の位置決め装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加えて、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形した温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって、前記射出成形工程に要する時間内で平板歪の矯正を行うものである。
一般に、矯正を必要とする平板状の製品は、成形歪によって、反り変形し、大きく見ると捩れを伴うが、それは射出成形機及び金型によって決定される。同一金型、同一射出成形機を使用すると、殆ど同様の成形歪が現れる。その成形歪に対して、その歪方向と反対方向の歪を付与するように、成形歪に応じて部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加え、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、かつ、矯正加圧する圧力及び冷却速度を所定の条件として、平板歪の矯正を行い、成形歪が変化しない特定の温度で矯正製品の取り出しを行うものである。故に、平面度を0.3以下にすることができる。
【0017】
請求項5の成形平板歪矯正方法の前記歪矯正工程は、前記射出成形工程の下方位置で行うものであるから、請求項4の効果に加えて、前記射出成形型を開くことにより、前記射出成形型で成形した平板状の製品は重力の作用によって下方に移動するから、射出成形の直後に歪矯正を行うことができる。しかも、その搬送エネルギを最小とすることができる。
【0018】
請求項6の成形平板歪矯正方法は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うものであるから、請求項3または請求項4の効果に加えて、射出成形のタイミングで射出成形と歪矯正を行うことができ、射出成形と歪矯正の専用の成形機を用意する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形型で成形した平板状の製品の斜視図、図2は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形及び歪矯正の説明図の平面図(a)、側面図(b)である。図3は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形及び歪矯正の位置を示す説明図で、(a)は射出成形の後に歪矯正を下部位置で行う説明図、(b)は射出成形の後に歪矯正を横位置で行う説明図である。図4は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による歪矯正型による歪矯正の処理前の説明図、図5は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による押圧側突起及び受側突起の設定の説明図で、図4の切断線A−Aによる断面図に相当する。図6は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による歪矯正型の処理後の説明図である。
【0020】
図1において、平板状の製品1は、薄肉で100×200mm2程度以上の面積を有する燃料電池用セパレータで、図2に示す射出成形可動型52及び射出成形固定型62からなる射出成形型70によって形成されたものである。
平板状の製品1には、その4隅の角に位置決めを行うコーナ穴2a,2b,2c,2dが形成されている。この4隅の角のコーナ穴2a,2b,2c,2dは、省略し、平板状の製品1の直角を挟む2辺以上を金型装填基準の位置決めとすることもできる。即ち、平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用する位置決め装填は、歪の基準位置を特定するものであるから、本発明を実施するには、特定の位置を2次元的に特定できる手段であればよい。
【0021】
図2において、射出成形機可動部50及び射出成形機固定部60は、公知の射出成形機の可動部分及び固定部分である。射出成形機可動部50と射出成形機固定部60には、金型取付板51、金型取付板61が各々取り付けられ、そこには、射出成形可動型52と射出成形固定型62が取り付けられている。射出成形可動型52と射出成形固定型62からなる射出成形型70は、薄肉で100×200mm2程度以上の面積を有する燃料電池用セパレータ等の平板状の製品1を成形するものである。
【0022】
射出成形機可動部50と射出成形機固定部60には、各々アーム53とアーム63が配設されていて、各アーム53とアーム63には、ホルダ15またはホルダ25を介して矯正可動型10の金型基板11または矯正固定型20の金型基板21が取り付けられている。したがって、射出成形機可動部50と同時に、矯正可動型10の金型基板11が動作することになる。
なお、金型装填基準線30は、平板状の製品1の4隅の角にコーナ穴2a,2b,2c,2dまたは平板状の製品1の直角を挟む2辺以上を金型装填基準として、位置合わせするものであり、必ずしも、下部位置で基準位置を定める必要はない。
【0023】
本実施の形態の成形平板歪矯正装置においては、図3(a)に示すように、射出成形機可動部50と射出成形機固定部60の上部で射出成形工程によって、平板状の製品1を形成し、その下部において、矯正可動型10の金型基板11が動作する矯正工程の処理を行うものである。矯正可動型10の金型基板11と矯正固定型20の金型基板21には、冷却配管13または冷却配管23が配設されていて、矯正可動型10と矯正固定型20の温度制御を行うようになっている。
射出成形工程によって得た平板状の製品1は、射出成形可動型52と射出成形固定型62を型開きすることによって落下し、金型装填基準線30の図示しないガイドによって、位置決めされると、そこで、矯正可動型10と矯正固定型20によって矯正工程の処理を行うものである。
【0024】
図3(a)では、射出成形工程によって得た平板状の製品1を、射出成形可動型52と射出成形固定型62を型開きすることによって落下させる工程で説明したが、本発明を実施する場合には、射出成形機可動部50と射出成形機固定部60の射出成形工程によって得た平板状の製品1を、油圧シリンダ、エアシリンダ等によって横方向に移動させ、隣接する矯正可動型10の金型基板11が動作する矯正工程を行う図3(b)の処理を行うこともできる。何れにせよ、射出成形工程によって得た平板状の製品1は、殆どが同一歪形態を有しているので、平板状の製品1の位置決めを正確に行えば、射出成形工程と歪矯正工程の位置関係を問われるものではない。
【0025】
図4における矯正可動型10は、金型基板11に複数の矯正突起12(12a,・・・12i)が配設されている。この矯正突起12aの位置は、図4の切断線A−Aで切断された図5の概念図に示すように、平板状の製品1の均一平面を前提とする図5の仮想基準線X−Xに対して、上方に変位している平板状の製品1の上面の変位量haを測定し、その測定した上方に変位している変位量haをN倍し、矯正可動型10の金型基板11からの矯正突起12aの高さH12aは、
矯正突起12aの高さH12a=矯正可動型距離hus+変位量ha・N
とする。なお、変位量haのN倍とは、通常、Nとして0.5〜1.3までの値が使用され、このNは平板状の製品1の矯正するときの温度、冷却速度に依存する値である。
なお、矯正可動型基準面は金型基板11の表面であり、理想的平面の平板状の製品1との間に矯正可動型距離husを有している。また、矯正固定型基準面は金型基板21の表面であり、理想的平面の平板状の製品1との間に矯正固定型距離hdsを有している。矯正突起12(12a,・・・12i)は、金型基板11の表面から突出している。そして、矯正突起22(22a,・・・22i)は、金型基板21の表面から突出している。これらは、金型基板11または金型基板21に矯正突起12(12a,・・・12i)または矯正突起22(22a,・・・22i)を螺合してもよい。
【0026】
図4における矯正固定型20は、金型基板21に複数の矯正突起22(22a,・・・22i)が配設されている。矯正突起22aは、平板状の製品1の均一平面を前提とする図5の仮想基準線X−Xに対して、平板状の製品1が上方に変位していることから、その平板状の製品1の肉厚を無視すると、
矯正突起22aの高さH22a=矯正固定型距離hds−矯正突起12aの高さH12a
の高さに設定される。現実には、平板状の製品1の肉厚が減算される。これを矯正固定型20の金型基板21から矯正突起22aの高さH22aとされる。当然ながら、この矯正突起22aの高さH22aは、仮想基準線X−Xの位置よりも低くなる。
【0027】
図5における矯正可動型10の矯正突起12bの位置は、図5の仮想基準線X−Xに対して、下方に変位している。ここで平板状の製品1の下面の変位量hbを測定し、矯正可動型10の金型基板11からの矯正突起12bの高さH12bを、矯正可動型距離hus−変位量hb・Nとする。即ち、
矯正突起12bの高さH12b=矯正可動型距離hus−変位量hb・N
となる。
【0028】
また、図4における矯正固定型20の矯正突起22bは、図4の切断線A−Aで切断された図5に示すように、平板状の製品1の仮想基準線X−Xに対して、下方に変位している平板状の製品1の変位量−hbから矯正突起22bの高さH22bを求めると、
矯正突起22bの高さH22b=矯正固定型距離hds+矯正突起12bの高さH12b
となる。現実には、平板状の製品1の肉厚が減算される。
【0029】
同様に、矯正突起12c,・・・,12iの位置についても、平板状の製品1の仮想基準線X−Xに対して、平板状の製品1の上面の変位量hc,・・・,hiをN倍し、矯正可動型10の金型基板11から矯正可動型距離husに加算し、矯正突起12c,・・・,12iの高さH12c,・・・,H12iとし、また、その矯正突起12c,・・・,12iの変位量hc,・・・,hiをN倍したものを矯正固定型距離hdsから減算したものが、矯正突起22c,・・・,22iの高さH22c,・・・,H22iとなる。現実には、平板状の製品1の肉厚が減算される。
【0030】
このように構成された矯正可動型10の矯正突起12(12a,・・・12i)と矯正固定型20の矯正突起22(22a,・・・22i)との間で、射出成形型によって形成された平板状の製品1を、その4隅に設けたコーナ穴2a,2b,2c,2dまたはその2辺以上を使用して位置決めを行う。この状態では、平板状の製品1は射出成形温度よりも低い温度にある。
この状態で矯正可動型10と矯正固定型20とを相対移動させると、平板状の製品1の歪の大きい位置は、矯正突起12a,・・・,12iまたは矯正突起22a,・・・,22iで加圧される。このとき、平板状の製品1の歪は、射出成形温度よりも低い温度にあるから、矯正突起12a,・・・,12iまたは矯正突起22a,・・・,22iで加圧される部分のみの変形とならず、平板状の製品1の温度が低い分だけ広範囲に変形する。そして、冷却することにより、その形状を固定化される。
【0031】
このとき、矯正可動型10の矯正突起12a,・・・,12iと矯正固定型20の矯正突起22a,・・・,22iは、互いに上に凸歪を有するものは、上方からその凸歪に基づく変量を平板状の製品1の平板面を超えて下方に押圧し、また、互いに下に凸歪を有するものは、下方からその凸歪に基づく変量を平板状の製品1の理想とする平板面を超えて上方に押圧し、矯正するものであり、平板状の製品1の理想とする平板面を超えて、矯正を行う際に、平板状の製品1の歪が戻ることのない状態に内在する歪を除去して矯正することができる。
【0032】
本実施の形態の形態における矯正可動型10の矯正突起12a,・・・,12iと、矯正固定型20の矯正突起22a,・・・,22iは、互いに上に凸または下に凸の部分的面積で成形歪の方向とは逆方向の向きに加圧するものであるが、本発明を実施する場合には、平板状の製品1を面で押圧してもよい。
即ち、平板状の製品1の表裏面に蒸着またはスパッタリングによって金属膜を形成し、その金属膜を利用して矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40を型彫放電加工機で形成し、平板状の製品1の表面で形成した型を裏面の矯正を行う矯正固定型20とし、逆に、平板状の製品1の裏面で形成した型を表面の矯正に使用する矯正可動型10とすることができる。この場合には、論理的には、精度の高い、矯正を行うことができるが、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正を行うことから、それほどの顕著な成果を上げることはできなかった。
【0033】
本実施の形態の形態における射出成形型70で成形した平板状の製品1を射出成形型70から取り出して、平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用して位置決めして、矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40に装填し、射出成形型70で成形した平板状の製品1の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に成形歪の方向とは逆方向の向きに加圧し、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で歪矯正するものであるから、部分的な歪が入る可能性をなくし、矯正可動型10の矯正突起12a,・・・,12iと、矯正固定型20の矯正突起22a,・・・,22iの端部の面積よりも広い範囲の矯正を行うことができる。
また、矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40による矯正加圧する圧力、冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正が変化するから、平板状の製品1の厚み、面積、表面積によって、それらを最適な矯正を行う条件に設定することができる。
【0034】
このように、本実施の形態の成形平板歪矯正装置は、薄肉で1000mm2以上の面積の燃料電池用セパレータ等のような平板状の製品1の射出成形を行う射出成形可動型52及び射出成形固定型62からなる射出成形型70と、射出成形型70で成形した平板状の製品1を射出成形型70から取り出して、平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用して位置決めして、装填し、射出成形型70で成形した平板状の製品1の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に成形歪の方向とは逆方向の向きに加圧し、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、また、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行う矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40を具備するものである。
【0035】
したがって、射出成形型70によって、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品1の射出成形を行い、歪矯正型40で射出成形型70で成形した平板状の製品1を射出成形型70から取り出して、平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用して矯正可動型10及び矯正固定型20からなる歪矯正型40に位置決め装填し、射出成形型70で成形した平板状の製品1の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きに加圧して、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行うものである。
【0036】
一般に、矯正を必要とする平板状の製品1は、成形歪によって、反り変形し、大きく見ると捩れを伴うが、それは射出成形機及び金型によって決定される。同一金型、同一射出成形機を使用すると、殆ど同様の成形歪が現れる。その成形歪に対して、その歪方向と反対方向の歪を付与するように、成形歪に応じて部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの荷重を加え、前記射出成形型で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、かつ、矯正加圧する圧力及び冷却速度を所定の条件として、平板歪の矯正を行い、成形歪が変化しない特定の温度で矯正製品の取り出しを行うものである。故に、発明者らの実験によれば、成形した1000mm2以上の面積から50000mm2以下の面積の合成樹脂平板の平面度を0.3以下にすることができた。また、板厚についても、3mm程度以下の薄肉で、効果が確認された。
【0037】
更に、歪矯正型40は、射出成形型70の下方に位置させたものであるから、射出成形型70を開くことにより、射出成形型70で成形した平板状の製品1は重力の作用によって下方に移動するから、射出成形の直後に歪矯正を行うことができる。しかも、その搬送エネルギを最小とすることができる。
【0038】
また、本実施の形態の成形平板歪矯正装置の動作は、成形平板歪矯正方法として捉えることができる。
即ち、射出成形工程で射出成形可動型52及び射出成形固定型62からなる射出成形型70によって、燃料電池用セパレータ等のような薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品1の射出成形を行い、また、前記射出成形工程によって射出成形した平板状の製品1を射出成形型70から取り出し、歪矯正工程で平板状の製品1の外周またはコーナ穴2a,2b,2c,2dを利用して位置決め装填し、射出成形型70で成形した平板状の製品1の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの加圧力を加えて、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形した温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって、射出成形工程に要する時間内で平板歪の矯正を行うものであるから、その構成を成形平板歪矯正方法の発明とすることができる。
【0039】
この成形平板歪矯正方法によれば、一般に、矯正を必要とする平板状の製品1は、成形歪によって、反り変形し、大きく見ると捩れを伴うが、それは射出成形機及び金型によって決定される。同一金型、同一射出成形機を使用すると、殆ど同様の成形歪が現れる。その成形歪に対して、その歪方向と反対方向の歪を付与するように、成形歪に応じて部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの押圧力を加え、射出成形型70で成形した平板状の製品1を成形する温度よりも低い製品温度で、かつ、矯正加圧する圧力及び冷却速度を所定の条件として、平板歪の矯正を行い、成形歪が変化しない特定の温度で矯正製品の取り出しを行うものである。故に、平面度を0.3以下にすることができる。
【0040】
更に、前記歪矯正工程としては、前記射出成形工程の下方位置で行うものにおいては、射出成形型70を開くことにより、射出成形型70で成形した平板状の製品1は重力の作用によって下方に移動するから、射出成形の直後に歪矯正を行うことができ、しかも、その搬送エネルギを最小とすることができる。
【0041】
本実施の形態の成形平板歪矯正装置及び成形平板歪矯正方法は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型70と歪矯正型40を取り付けて同一ストロークで行うものであるから、射出成形のタイミングで射出成形と歪矯正を行うことができ、射出成形と歪矯正の専用の成形機を用意する必要がない。また、連続処理を行うときには、2工程が存在するという違和感が感じられない。特に、歪矯正によるコスト高が生じないように、同一成形機で矯正できるような構造とし、成形機から出てきた状態で矯正が終了されるようにしたものである。具体的には、射出成形機内で射出成形を実施し、次に矯正工程を実施する。射出成形工程から矯正工程へは、専用の搬送装置を使って製品を移動させ、矯正工程を実施時は、次の射出成形がされる。
【0042】
本実施の形態の成形平板歪矯正装置及び成形平板歪矯正方法は、薄肉で大きい平板状の製品1として燃料電池用セパレータの事例で説明したが、燃料電池用セパレータとして成り立たせる材料は、導電性を必要としないため、通常の熱可塑性樹脂のPPS等が使用できる。また、燃料電池セパレータのような薄肉成形品で、製品機能上平面度がO.5以下で、かつ、リブが無数に配置され、変形を防止する目的で製品形状を設定できないよう形状であっても、矯正変形したい箇所について、矯正変形方向とは逆方向へ加圧力をかける構造とし、射出成形後製品温度が高い状態で矯正治具ヘセットし、矯正しながら冷却させるものであるから、歪矯正型40に装填するときの製品温度、歪矯正型40の温度管理、製品取り出し時の温度等を制御し、矯正条件のバラツキが製品変形量のバラツキに影響しないようにしている。
【0043】
なお、本実施の形態の成形平板歪矯正装置及び成形平板歪矯正方法は、射出成形と歪矯正を1対1に対応させているが、本発明を実施する場合には、歪矯正を複数回繰り返してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形型で成形した平板状の製品の斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形及び歪矯正の説明図の平面図(a)、側面図(b)である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による射出成形及び歪矯正の位置を示す説明図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による歪矯正型による歪矯正の処理前の説明図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による押圧側突起及び受側突起の設定の説明図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1の成形平板歪矯正装置による歪矯正型の処理後の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 平板状の製品
2a,2b,2c,2d コーナ穴
10 矯正可動型
11,21 金型基板
12(12a,・・・,12i) 矯正突起
20 矯正固定型
22(22a,・・・,22i) 矯正突起
40 歪矯正型
52 射出成形可動型
62 射出成形固定型
70 射出成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品の射出成形を行う射出成形可動型及び射出成形固定型からなる射出成形型と、
前記射出成形型で成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出して位置決め装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きに加圧し、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形する温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって平板歪の矯正を行う歪矯正型と
を具備することを特徴とする成形平板歪矯正装置。
【請求項2】
前記歪矯正型は、前記射出成形型の下に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の成形平板歪矯正装置。
【請求項3】
前記成形平板歪矯正装置は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形平板歪矯正装置。
【請求項4】
射出成形可動型及び射出成形固定型からなる射出成形型によって、薄肉で1000mm2以上の面積の平板状の製品の射出成形を行う射出成形工程と、
前記射出成形工程によって射出成形した平板状の製品を前記射出成形型から取り出して位置決め装填し、前記射出成形型で成形した平板状の製品の成形歪に対応して、部分的面積または全面積に前記成形歪の方向とは逆方向の向きの加圧により、前記射出成形型で成形した平板状の製品を成形した温度よりも低い製品温度で、矯正加圧する圧力及び冷却速度、矯正製品の取り出し温度によって、前記射出成形工程に要する時間内で平板歪の矯正を行う歪矯正工程と
を具備することを特徴とする成形平板歪矯正方法。
【請求項5】
前記歪矯正工程は、前記射出成形工程の下方位置で行うことを特徴とする請求項4に記載の成形平板歪矯正方法。
【請求項6】
前記成形平板歪矯正方法は、射出成形と歪矯正を同一成形機に射出成形型と歪矯正型を取り付けて同一ストロークで行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の成形平板歪矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−290313(P2007−290313A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123372(P2006−123372)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】