説明

成形方法

【課題】成形型ユニットを用い、液状の混合材料から製品を成形する方法であって、成形品中に気泡が存在することも成形品の表面が局部的に欠損することも容易に防止できるものを提供する。
【解決手段】材料で充填されためす型102を、それにおす型104が組み付けられた状態で攪拌機40内に配置し、その攪拌機により、めす型およびおす型を、真空圧下において、公転軸まわりに公転させつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させ、それにより、材料を攪拌しつつ脱泡する。その際、前記公転および前記自転のうちの少なくとも一方の速度を時間的に変化させ、それにより、めす型におす型が密着しない型開き状態と、回転中にめす型とおす型とのうちの少なくとも一方に発生する慣性力または遠心力によってめす型におす型が密着する型締まり状態とをそれらの順に実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型を有する成形型ユニットを用い、液状の混合材料から、合成樹脂製の製品を成形する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高精密な製品(例えば、機械部品、電気部品、電子部品など)を成形という方法によって製作することが必要である場合がある。その成形に用いる材料は、複数の液状の材料の混合物、すなわち、混合材料である場合があり、それら材料は、高粘性を示す液状の材料を含む場合がある。
【0003】
しかし、特に、成形のために用いる材料が、高粘性を示す液状の混合材料である場合には、特別の配慮なしで複数の材料を混合して攪拌すると、その過程において、それら材料に細かい気泡が混入してしまう可能性がある。
【0004】
さらに、高粘性を示す液状の材料を成形型に注入する際、その注入中の材料が空気を巻き込んで成形型に注入され、その空気が材料中に気泡として残存してしまう可能性もある。また、高粘性を示す液状の材料が成形型の内表面(例えば、微細な隙間部や、アンダカット部など)に完全に含浸していない状態(材料が成形型の内表面全体に行き届かない状態)で成形が行われてしまう可能性もある。
【0005】
成形型への注入に先立ち、混合材料を脱泡することが可能であるが、その混合材料が、それを構成する複数の材料うちの少なくとも一つでも高粘性を示す場合には、特別の配慮なしで混合材料を脱泡しても、その混合材料中に気泡が残存してしまう可能性がある。
【0006】
いずれにしても、成形型内の材料中に空気が気泡として残存してしまう場合や、材料が成形型の内表面に完全に含浸しない場合には、成形品に欠陥が発生してしまう。例えば、成形品中に気泡(ボイド)が存在したり、成形品の表面が局部的に欠損してしまうのである。
【0007】
したがって、従来から、混合材料の攪拌を効果的に脱泡しつつ行いたいという要望があった。この要望を満たすために、混合材料を攪拌機内の容器に収容し、その攪拌機により、前記容器を、真空圧下に、公転させつつ自転させる技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−104404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
たしかに、特許文献1に記載の方法で混合材料の攪拌を行えば、混合材料を成形型に注入する前の段階において、その混合材料が効果的に脱泡され、その結果、その混合材料中に気泡が存在せずに済む。
【0010】
しかし、その混合材料を、攪拌脱泡後に、成形型に注入する際、その材料が空気を巻き込んで成形型に注入され、その空気が材料中に気泡として残存してしまう可能性や、材料が成形型の内表面全体に完全に含浸していない状態で成形が行われてしまう可能性は依然として残る。
【0011】
そのため、従来の方法では、成形品中に気泡が存在したり、成形品の表面が局部的に欠損してしまう可能性を十分に軽減することができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型を有する成形型ユニットを用い、液状の混合材料から、合成樹脂製の製品を成形する方法であって、成形品中に気泡が存在してしまうことも、成形品の表面が局部的に欠損してしまうこともないように製品を成形することが容易であるものを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型を有する成形型ユニットを用い、液状の混合材料から、合成樹脂製の製品を成形する方法であって、前記めす型内の空間を前記材料で充填する充填工程と、前記めす型に前記おす型を、それらめす型およびおす型の回転中にそれらめす型およびおす型のうちの少なくとも一方に発生する慣性力と遠心力とのうちの少なくとも一方によってそれらめす型とおす型とが互いに相対的に接近して最終的に前記めす型に前記おす型が密着することが可能であるように、組み付ける組付け工程と、前記めす型を、そのめす型に前記おす型が組み付けられた状態で、かつ、前記めす型内の空間が前記材料で充填されている状態で、攪拌機内に配置し、その攪拌機により、前記めす型および前記おす型を、真空圧下において、公転軸まわりに公転させつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させ、それにより、前記めす型に前記おす型が密着することによってそれらめす型とおす型との間に形成された前記キャビティ内において前記材料を攪拌しつつ脱泡する攪拌脱泡工程と、前記成形型ユニット内の前記材料を硬化させる硬化工程とを含み、前記攪拌脱泡工程は、前記公転および前記自転のうちの少なくとも一方の速度を時間的に変化させ、それにより、前記めす型に前記おす型が密着しない型開き状態と、前記慣性力と遠心力とのうちの少なくとも一方によって前記めす型に前記おす型が密着する型締まり状態とをそれらの順に実現する成形方法が提供される。
【0014】
この成形方法によれば、攪拌機を用いて成形型ユニットに自転と公転との複合運動を与える一連の期間中に、おす型が密着されていないめす型内において材料が、高い流動性を示す状態で攪拌脱泡される期間と、めす型におす型が密着されている状態で材料が攪拌脱泡される期間とが共存する。先行する期間においては、材料の攪拌脱泡と並行して、その材料のめす型への含浸が行われ、後続する期間においては、材料の攪拌脱泡と並行して、その材料のめす型およびおす型双方への含浸が行われる。
【0015】
よって、この成形方法によれば、材料の攪拌脱泡および含浸のための攪拌機の運転を2回に分けて行わずに済み、その結果、成形作業の効率が向上する。
【0016】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0017】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0018】
(1) 所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型を有する成形型ユニットを用い、液状の混合材料から、合成樹脂製の製品を成形する方法合成樹脂製の製品を成形する方法であって、
前記キャビティを前記材料で充填する充填工程と、
前記成形型ユニットのうちの少なくともめす型を、前記キャビティが前記材料で充填されている状態で、攪拌機内に配置し、その攪拌機により、前記少なくともめす型を、真空圧下において、公転軸まわりに公転させつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させ、それにより、前記キャビティ内において前記材料を攪拌しつつ脱泡する攪拌脱泡工程と、
前記成形型ユニット内の前記材料を硬化させる硬化工程と
を含む成形方法。
【0019】
この成形方法によれば、キャビティが材料で充填されている状態で、成形型ユニットのうちの少なくともめす型が、真空圧下において、公転軸まわりに公転させられつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させられる。それにより、成形型ユニットのキャビティ内において材料が攪拌されつつ脱泡される。
【0020】
さらに、この成形方法によれば、キャビティが材料で充填されている状態で、少なくともめす型が、攪拌機により、自転と公転との複合運動(遊星運動)を与えられるため、材料が少なくともめす型の全表面に含浸することが促進される。
【0021】
よって、この成形方法によれば、成形品中に気泡が存在してしまうことも、成形品の表面が局部的に欠損してしまうこともないように製品を成形することが容易となる。
【0022】
(2) 前記硬化工程は、
前記成形型ユニット全体を加熱することにより、前記キャビティ内の材料を硬化させる工程を含む(1)項に記載の成形方法。
【0023】
(3) 前記充填工程は、前記めす型に前記おす型が密着されていない状態において、前記めす型を前記材料で充填するために実施され、
前記攪拌脱泡工程は、
前記充填工程によって前記材料で充填されためす型を、そのめす型に前記おす型が装着されていない状態で前記攪拌機内に配置し、その攪拌機により、前記めす型全体を、真空圧下において、前記公転軸まわりに公転させつつ、前記自転軸まわりに自転させ、それにより、前記めす型内において前記材料を攪拌しつつ脱泡する予備攪拌脱泡工程と、
その予備攪拌脱泡工程の終了後、前記めす型に前記おす型を装着し、それにより、前記成形型ユニットを組み立てる組立工程と、
その組み立てられた成形型ユニット全体を、前記攪拌機により、公転させつつ自転させ、それにより、前記成形型ユニットの前記キャビティ内において前記材料を再度、攪拌しつつ脱泡する本攪拌脱泡工程と
を含む(1)または(2)項に記載の成形方法。
【0024】
この成形方法によれば、攪拌機により、成形型ユニットにおいてめす型におす型が密着されている状態で材料が攪拌脱泡されるのに先立ち、それと同じかまたは別の攪拌機により、めす型内において材料が攪拌脱泡される。一方、めす型におす型が密着されていない状態の方が、めす型におす型が密着されている状態より、材料が流動し得る空間が広いため、収容される材料の流動性が高い。その結果、めす型内において攪拌脱泡を行う方が、攪拌脱泡を高効率で行うことが可能となる。
【0025】
よって、この成形方法によれば、予備攪拌脱泡工程が存在しない場合より、材料の攪拌脱泡を効率よく行うことが容易となる。
【0026】
ところで、めす型は、成形品の表面を形成するものであるため、材料のめす型への含浸が不十分であると、成形品の表面に欠陥が発生してしまう可能性がある。
【0027】
これに対し、本項に係る成形方法によれば、本攪拌脱泡工程に加えて、それに先行する予備攪拌脱泡工程においても、材料がめす型内において攪拌される結果、材料がめす型の全表面に良好に含浸することが促進される。その結果、材料のめす型への含浸が不十分であることが原因で、成形品の表面性状に欠陥が発生してしまう可能性が軽減される。
【0028】
(4) 前記攪拌脱泡工程は、
前記充填工程によって前記材料で充填されためす型に前記おす型を、それらめす型とおす型とが互いに接近可能であるが、互いに離隔するように装着し、それにより、前記成形型ユニットを組み立てる組立工程と、
その組み立てられた成形型ユニットを前記攪拌機内に配置する配置工程と、
前記攪拌機の作動開始時から、型締まり阻止期間の間、前記公転によって発生する遠心力によって前記めす型と前記おす型とが互いに接近して前記めす型に前記おす型が密着することを阻止する阻止工程と、
前記型締まり阻止期間の間、前記めす型に前記おす型が密着していない状態において、前記攪拌機により、前記めす型内において前記材料を攪拌脱泡する先行攪拌脱泡工程と、
前記攪拌機の作動中、前記型締まり阻止期間に後続する型締まり許可期間の間、前記公転によって発生する遠心力によって前記めす型と前記おす型とが互いに接近して前記めす型に前記おす型が密着することを許可する許可工程と、
前記型締まり許可期間の間、前記めす型に前記おす型が密着している状態において、前記攪拌機により、前記成形型ユニットの前記キャビティ内において前記材料を攪拌脱泡する後続攪拌脱泡工程と
を含む(1)または(2)項に記載の成形方法。
【0029】
この成形方法によれば、攪拌機を用いて成形型ユニットに自転と公転との複合運動を与える一連の期間中に、おす型が密着されていないめす型内において材料が、高い流動性を示す状態で攪拌脱泡される期間と、めす型におす型が密着されている状態で材料が攪拌脱泡される期間とが共存する。先行する期間においては、材料の攪拌脱泡と並行して、その材料のめす型への含浸が行われ、後続する期間においては、材料の攪拌脱泡と並行して、その材料のめす型およびおす型双方への含浸行われる。
【0030】
よって、この成形方法によれば、材料の攪拌脱泡および含浸のための攪拌機の運転を2回に分けて行わずに済み、その結果、成形作業の効率が向上する。
【0031】
(5) 前記阻止工程と前記許可工程とを実行するために、前記めす型と前記おす型とは、共通の軸線の方向において相対的に移動可能、かつ、前記軸線まわりに相対的に回転可能に支持されており、
前記阻止工程と前記許可工程とを実行するために、前記成形型ユニットは、
前記おす型と一体的に運動する第1部材と、
前記めす型と一体的に運動する第2部材と
を含み、
それら第1部材と第2部材とは、互いに相対的に回転可能かつ軸方向移動可能であるとともに、両者間の軸方向における相対接近限度位置が、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する位置と許可する位置とに、両者間の回転方向相対位置に応じて変化し、
それら第1部材と第2部材との間における回転方向相対位置は、前記自転の加速度または減速度に応じて前記おす型に自転方向に作用する慣性力によって変化し、
それら第1部材と第2部材との間における軸方向相対位置は、前記公転の速度に応じて前記おす型に作用する軸方向遠心力によって変化する(4)項に記載の成形方法。
【0032】
(6) 前記阻止工程と前記許可工程とを実行するために、前記めす型と前記おす型とは、共通の軸線の方向において相対的に移動可能、かつ、前記軸線まわりに相対的に回転可能に支持されており、
前記阻止工程と前記許可工程とを実行するために、前記成形型ユニットは、
前記おす型と一体的に運動する第1部材と、
前記めす型と一体的に運動する第2部材と
を含み、
それら第1部材と第2部材とは、互いに相対的に回転可能かつ軸方向移動可能であるとともに、両者間の軸方向における接近限度位置が、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する位置と許可する位置とに、両者間の回転方向相対位置に応じて変化し、
当該成形型ユニットは、さらに、
前記めす型に対して軸方向移動可能かつ軸線まわりに回転可能な可動部材と、
前記公転の速度に応じて前記可動部材に作用する第1軸方向遠心力とは逆向きであって前記めす型から遠ざかる向きの弾性力を前記可動部材に付与する弾性部材と、
前記可動部材と一体的に運動する係合部であって、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方に選択的に係合するものと
を含み、
前記可動部材と前記めす型との間における軸方向相対位置は、前記第1軸方向遠心力と前記弾性力とが合成された軸方向合力によって変化し、
それら可動部材とめす型との間における回転方向相対位置は、前記軸方向合力が、前記第2部材と前記可動部材との少なくとも一方に形成された第1斜面によって分解されて発生させられる回転力によって変化し、
前記第1部材と前記第2部材との間における回転方向相対位置は、前記公転の速度に応じて前記第1部材および前記おす型に作用する第2軸方向遠心力が、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に形成された第2斜面によって分解されて発生させられる回転力によって変化し、
それら第1部材と第2部材との間における軸方向相対位置は、前記係合部の係合と、前記第2軸方向遠心力とによって変化する(4)項に記載の成形方法。
【0033】
(7) 成形型ユニットであって、
所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型であって、共通の軸線の方向において相対的に移動可能、かつ、前記軸線まわりに相対的に回転可能に支持されているものと、
前記おす型と一体的に運動する第1部材と、
前記めす型と一体的に運動する第2部材と
を含み、
それら第1部材と第2部材とは、互いに相対的に回転可能かつ軸方向移動可能であるとともに、両者間の軸方向における相対接近限度位置が、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する位置と許可する位置とに、両者間の回転方向相対位置に応じて変化し、
それら第1部材と第2部材との間における回転方向相対位置は、前記自転の加速度または減速度に応じて前記おす型に自転方向に作用する慣性力によって変化し、
それら第1部材と第2部材との間における軸方向相対位置は、前記公転の速度に応じて前記おす型に作用する軸方向遠心力によって変化し、
それにより、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する状態と許容する状態とに切り換えられる成形型ユニット。
【0034】
(8) 成形型ユニットであって、
所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型であって、共通の軸線の方向において相対的に移動可能、かつ、前記軸線まわりに相対的に回転可能に支持されているものと、
前記おす型と一体的に運動する第1部材と、
前記めす型と一体的に運動する第2部材と
を含み、
それら第1部材と第2部材とは、互いに相対的に回転可能かつ軸方向移動可能であるとともに、両者間の軸方向における接近限度位置が、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する位置と許可する位置とに、両者間の回転方向相対位置に応じて変化し、
当該成形型ユニットは、さらに、
前記めす型に対して軸方向移動可能かつ軸線まわりに回転可能な可動部材と、
前記公転の速度に応じて前記可動部材に作用する第1軸方向遠心力とは逆向きであって前記めす型から遠ざかる向きの弾性力を前記可動部材に付与する弾性部材と、
前記可動部材と一体的に運動する係合部であって、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方に選択的に係合するものと
を含み、
前記可動部材と前記めす型との間における軸方向相対位置は、前記第1軸方向遠心力と前記弾性力とが合成された軸方向合力によって変化し、
それら可動部材とめす型との間における回転方向相対位置は、前記軸方向合力が、前記第2部材と前記可動部材との少なくとも一方に形成された第1斜面によって分解されて発生させられる回転力によって変化し、
前記第1部材と前記第2部材との間における回転方向相対位置は、前記公転の速度に応じて前記第1部材および前記おす型に作用する第2軸方向遠心力が、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に形成された第2斜面によって分解されて発生させられる回転力によって変化し、
それら第1部材と第2部材との間における軸方向相対位置は、前記係合部の係合と、前記第2軸方向遠心力とによって変化し、
それにより、前記おす型が前記めす型に密着することを阻止する状態と許容する状態とに切り換えられる成形型ユニット。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に従うキャップ成形方法によって成形されるべきキャップを、それの用途と共に示す斜視図である。
【図2】図2は、前記キャップ成形方法の詳細を示すとともに、そのキャップ成形方法に後続して行われる他の方法の存在を示す工程図である。
【図3】図3(a)は、図2に示すキャップ成形方法の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図3(b)は、そのキャップ成形方法の別の一部を時系列的に説明するための斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す容器および押出具を示す断面図である。
【図5】図5は、図3に示す攪拌機を示す断面図である。
【図6】図6(a)は、図3に示す成形型ユニットを型開き状態で示す斜視図であり、図6(b)は、その成形型ユニットを型閉まり状態で示す斜視図である。
【図7】図7は、図3に示す成形型ユニットを示す部分断面図である。
【図8】図8(a)は、図2に示すキャップ成形方法の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図8(b)は、そのキャップ成形方法の別の一部を時系列的に説明するための斜視図である。
【図9】図9は、図2に示すシーラント充填方法とキャップ装着方法とをそれぞれ、詳細に示す工程図である。
【図10】図10(a)は、図9に示すシーラント充填方法の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図10(b)は、そのシーラント充填方法の別の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図10(c)は、そのシーラント充填方法のさらに別の一部を時系列的に説明するための斜視図である。
【図11】図11(a)は、図9に示すシーラント充填方法の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図11(b)は、そのシーラント充填方法の別の一部を時系列的に説明するための斜視図である。
【図12】図12(a)は、図9に示すキャップ装着方法の一部を時系列的に説明するための斜視図であり、図12(b)は、そのキャップ装着方法の別の一部を時系列的に説明するための斜視図である。
【図13】図13は、図3に示す攪拌機における速度制御を概念的に説明するためのグラフである。
【図14】図14は、本発明の第2実施形態に従うキャップ成形方法の一部であって前記第1実施形態とは異なるものを時系列的に説明するための斜視図である。
【図15】図15(a)は、本発明の第3実施形態に従うキャップ成形方法を実施するために使用される成形型ユニットを分解状態で示す断面図であり、図15(b)は、その成形型ユニットを組立状態で示す断面図である。
【図16】図16は、図15に示す成形型ユニットに与えられる自転と公転との複合運動を説明するための側面図である。
【図17】図17は、図15に示す成形型ユニットにおけるめす型とおす型との間における相対運動の原理を説明するための平面図、断面図および部分拡大図である。
【図18】図18は、図15に示す成形型ユニットにおけるめす型とおす型との間における相対運動の原理を説明するための別の平面図、断面図および部分拡大図である。
【図19】図19は、図15に示す成形型ユニットにおけるめす型とおす型との間における相対運動の原理を説明するためのさらに別の平面図、断面図および部分拡大図である。
【図20】図20(a)は、図17ないし図19に示すめす型とおす型との間における一連の相対運動を実現するために攪拌機によって前記成形型ユニットに与えられる速度の時刻暦の一例を説明するためのグラフであり、図20(b)は、その速度の時刻暦の別の例を説明するためのグラフである。
【図21】図21は、前記第3実施形態に従うキャップ成形方法のうちの攪拌脱泡工程を示す工程図である。
【図22】図22(a)は、本発明の第4実施形態に従うキャップ成形方法を実施するために使用される成形型ユニットのうちのガイドカップおよび可動部材を示す平面図であり、図22(b)は、それらガイドカップおよび可動部材を示す側面断面図であり、図22(c)は、前記成形型ユニットにおける第2ガイド溝を示す正面図である。
【図23】図23は、図22に示す成形型ユニットにおいてガイドピンが位置Aに位置する状態における第1ガイド溝と係合部とを示す部分拡大正面図である。
【図24】図24は、図22に示す成形型ユニットにおいてガイドピンが位置Bに位置する状態における第1ガイド溝と係合部とを示す部分拡大正面図である。
【図25】図25は、図22に示す成形型ユニットにおいてガイドピンが位置Cに位置する状態における第1ガイド溝と係合部とを示す部分拡大正面図である。
【図26】図26は、図22に示す成形型ユニットにおいてガイドピンが位置Dに位置する状態における第1ガイド溝と係合部とを示す部分拡大正面図である。
【図27】図27(a)は、図22に示す成形型ユニットの公転速度が時間と共に変化するパターンの一例を示すグラフであり、図27(b)は、そのパターンの別の例を示すグラフである。
【図28】図28は、図22に示す成形型ユニットの公転速度が時間と共に変化するパターンのさらに別の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
図1には、本発明の第1実施形態に従うキャップ成形方法によって成形される成形品としてのキャップ10が斜視図で示されている。
【0038】
そのキャップ10は、合成樹脂製であるとともに、概して中空半球状を成すシェル部12を有している。そのシェル部12は、各々、概して半球状を成す外面および内面を有しており、その結果、このシェル部12の内部に、概して半球状を成す凹部(中空部)14が形成されている。
【0039】
このキャップ10は、被締結部材に締結される締結具を外側から少なくとも部分的に被覆し、それにより、その締結具のうちの少なくとも一部が露出することを防止するという用途のために、その締結具に装着される。
【0040】
図1に示す例においては、前記被締結部材は、合成樹脂製のパネル部材20であり、また、前記締結具は、そのパネル部材20に締結されるボルト(または、スクリュー、ナット、リベット)22である。図1に示す例においては、キャップ10が、ボルト22のうち、パネル部材20から外側に露出している部分を外側から被覆するために、ボルト22に装着される。
【0041】
さらに、キャップ10は、ボルト22との装着状態において、そのボルト22との間において実質的に気密にシールされる。そのシールのために、装着に先立ち、キャップ10内にシーラントが充填され、そのシーラントにより、キャップ10とボルト22とが互いに密着させられる。その密着により、キャップ10と、ボルト22のうちそのキャップ10によって被覆される部分との間に異物(気体や液体、固体)が侵入することが防止される。そのシーラントの接着性および/または密着性により、キャップ10がボルト22から予定外に離脱することも防止される。
【0042】
シーラントは、合成樹脂製であり、本実施形態においては、キャップ10と同じ材料である。その理由は後に詳述するが、シーラントとキャップ10とに共通に使用される材料は、高粘度材料であり、また、一定温度(例えば、50℃)以上に加熱されると硬化し、一旦硬化すると、温度が低下しても性状が復元しない熱硬化性を有する。また、この材料は、硬化していない状態で、一定温度(例えば、−20℃)以下に冷凍されると、この材料における化学反応の進行(硬化)が停止する。その後、この材料を加熱して解凍すると、この材料における化学反応の進行(硬化)が再開されるという性質を有する。
【0043】
本実施形態においては、シーラントとキャップ10とに共通に使用される材料は、2液混合タイプであり、A液(硬化剤)およびB液(主剤)という2液を混合させることによって提供される。A液の一例は、米国PRC-DeSoto International社のPR-1776 B-2, Part A(促進剤であり、二酸化マンガン分散である。)であり、これに組み合わされるB液の一例は、米国PRC-DeSoto International社のPR-1776 B-2, Part B(ベース成分であり、充填変性ポリスルフィド樹脂である。)である。
【0044】
図2には、本実施形態に従うキャップ成形方法が工程図で示されている。この方法は、キャップ10の製造場所において実施される。この方法は、後に詳述するが、この方法によって成形されたキャップ10については、まず、シーラント充填方法が、キャップ10の出荷前(作業者がキャップ10をボルト22に装着するという作業が行われるべき作業現場への搬送前)に実施され、それにより、キャップ10の凹部14に前記シーラントが充填される。
【0045】
続いて、前記作業現場において、キャップ装着方法が実施され、それにより、キャップ10が、そのキャップ10に前記シーラントが充填された状態で、作業者により、作業現場において、ボルト22に装着される。
【0046】
ここで、図2を参照することにより、本実施形態に従うキャップ成形方法を詳細に説明する。
【0047】
図2に示すように、この方法が、キャップ10の製造場所において実施されると、まず、ステップS1において、図3(a)に示すように、前述の2液であるA液とB液とが、所定比(例えば、1:10)の割合で、容器30内に投入される。その容器30内においては、それら2液が混合させられ、その結果、その混合物が、本実施形態におけるキャップ10の成形材料の一例であるとともに、前記シーラントを構成する材料の一例である。
【0048】
図4には、その容器30が縦断面図で示されている。容器30は、軸方向に延びる中空のケース32と、そのケース32内に同軸的に形成された有底円筒状のチャンバ34とを有している。そのチャンバ34の底部は、概して半球状を成す凹部を有している。半球状を成す凹部を底部が有することにより、チャンバ34内において材料が、底部が平面である場合よりスムーズに流れ、その結果、材料の攪拌効率が向上する。
【0049】
チャンバ34の底部には、そのチャンバ34内に投入された材料(A液とB液との混合物)を、攪拌脱泡の終了後に、排出するための排出通路36が形成されており、その排出通路36は、着脱可能なプラグ(図示しない)によって選択的に閉塞される。容器30内への材料の投入は、排出通路36がプラグによって閉塞されている状態で行われる。
【0050】
図2に示すように、次に、ステップS2において、図3(a)に示すように、材料を収容している容器30に遊星運動(自転および公転の複合運動)が与えられ、それにより、前記材料が攪拌(混練)されつつ脱泡される。本実施形態においては、容器30の自転軸が公転軸に対して傾斜させられている。
【0051】
ステップS2による攪拌脱泡を行うために、攪拌機40が使用される。この攪拌機40は、真空圧のもとに遠心力を材料に作用させることにより、その材料を攪拌しつつ脱泡する。この攪拌脱泡は、後続するステップにおいても同様に、所定温度(例えば、約20ないし約30℃)および所定湿度(例えば、50%RH)で行われる。このステップS2においては、容器30内の圧力が、比較的低い(大気圧により近い)真空圧(例えば、40kPa)とされる。
【0052】
図5には、攪拌機40の一例が部分断面側面図で示されている。
【0053】
攪拌機40は、有底中空状(例えば、中空円筒状)のハウジング42と、そのハウジング42の開口端に着脱可能に装着される蓋(図示しない)であって、その開口端を実質的に気密に閉塞するものとを有している。ハウジング42内には、そのハウジング42に弾性的に懸架されたベースフレーム44が防振可能な状態で配置されている。
【0054】
そのベースフレーム44には、モータ50が装着されている。そのモータ50に中空円筒状の回転フレーム54が連結されている。その回転フレーム54は、公転軸線まわりに、モータ50によって回転させられる。
【0055】
回転フレーム54には、前記公転軸線に対して偏心した位置において、かつ、その公転軸線に対して傾斜する姿勢(例えば、45度)で、自転軸線が設定されている。この自転軸線は、回転フレーム54と一体的に回転する。
【0056】
回転フレーム54には、前記自転軸線と同軸に、かつ、その自転軸線まわりに回転可能に容器ホルダ56が装着されている。その容器ホルダ56は、前述の容器30または後述の成形型ユニットを保持するために使用される。この容器ホルダ56は、自転軸線まわりに、モータ50によって回転させられる。
【0057】
本実施形態においては、回転フレーム54にはモータ50が直結されているのに対し、容器ホルダ56にはモータ50が力伝達系(例えば、ベルト駆動系、チェーン駆動系、ギヤ駆動系)60を介して間接的に連結されている。
【0058】
図5に示す例においては、力伝達系60は、モータ50によって回転させられる第1回転軸62と、その第1回転軸62に同軸に固定された第1プーリ(プーリは回転体の一例である)64と、第2回転軸66とを備えている。その第2回転軸66は、ベースフレーム44に、第1回転軸62に対して平行に偏心した位置において、回転可能に取り付けられている。
【0059】
力伝達系60は、さらに、第2回転軸66に同軸に固定された第2プーリ68および第3プーリ70と、回転体74とを備えている。その回転体74は、第1回転軸62と同軸に、その第1回転軸62に対してベアリング72を介して相対回転可能に装着されている。第1プーリ64と第2プーリ68とに第1ベルト(ベルトはエンドレス伝動体の一例である)76が巻き掛けられている。回転体74には、第4プーリ80と第5プーリ82とが一体的に形成されている。第3プーリ70と第4プーリ80とに第2ベルト84が巻き掛けられている。
【0060】
力伝達系60は、さらに、公転軸線に対して平行に偏心した位置に配置された第3回転軸86を備えている。この第3回転軸86は、回転フレーム54と一体的に公転する一方で、回転フレーム54に対してベアリング87を介して相対的に自転する。力伝達系60は、さらに、その第3回転軸86に同軸に固定された第6プーリ88および第7プーリ89と、第5プーリ82と第6プーリ88とに巻き掛けられた第3ベルト90とを備えている。
【0061】
力伝達系60は、さらに、容器ホルダ56と同軸にかつ一体的に回転する第8プーリ91と、その第8プーリ91と第7プーリ89とに巻き掛けられた第4ベルト92と、その第4ベルト92における一対(平面視で)の直線部を屈曲させるためにそれら一対の直線部を案内する一対(平面視で)のガイドプーリ93とを備えている。
【0062】
本実施形態においては、容器ホルダ56の公転と自転とが、それらに共通のモータ50によって実現され、かつ、容器ホルダ56の公転と自転とは、運動的に相互に依存している。しかも、本実施形態においては、容器ホルダ56の公転速度と自転速度との比率が固定されている。
【0063】
これに対し、攪拌機40の一変形例においては、容器ホルダ56の公転と自転とがそれらに共通のモータ50によって実現されながらも、クラッチやCVTを用いることにより、公転速度と自転速度との比率が可変とされる。別の変形例においては、容器ホルダ56の公転と自転とがそれぞれ、互いに異なるモータによって実現され、それにより、容器ホルダ56の公転速度と自転速度とがそれぞれ、相互に依存することなく、互いに独立して設定可能とされる。
【0064】
図5に示すように、攪拌機40は、さらに、ブレーキ94と操作パネル95とコントローラ96とを備えている。
【0065】
ブレーキ94は、容器ホルダ56の自転速度と公転速度とのうちの少なくとも自転速度を急な勾配で減速させるために設けられている。ブレーキ94は、本実施形態においては、容器ホルダ56と共に回転または直線移動する可動部品(例えば、回転フレーム54)に摩擦によって強制的に外力を作用させる方式を採用するが、これに限定されない。
【0066】
このブレーキ94の一例においては、図5に示すように、回転フレーム54の外周面に装着された環状のバンド94aと、ハウジング42のうち、バンド94aに対向する少なくとも1か所(図5に示す例においては、一直径方向において互いに対向する2か所)に固定された可動パッド94bとを備えている。
【0067】
このブレーキ94は、さらに、その可動パッド94bを、バンド94aから半径方向に退避した図示の退避位置と、バンド94aに接触してそのバンド94aとの間に摩擦力を発生させる作用位置とに変位させる変位機構94cを備えている。変位機構94cは、手動式としたり、自動式とすることが可能である。変位機構94cが自動式である場合には、コントローラ96に接続され、そのコントローラ96により、変位機構94c内のアクチュエータ(図示しない)が電気的に制御される。
【0068】
本実施形態においては、ブレーキ94によって回転フレーム54が減速させられると、それに伴ってモータ50が減速させられる。そのモータ50の減速に伴い、容器ホルダ56が減速させられる。したがって、ブレーキ94により、容器ホルダ56の自転方向の減速と公転方向の減速とが一緒に行われることになる。
【0069】
操作パネル95は、ユーザにより、攪拌機40の起動・停止および自転・公転速度制御パターンの設定のために操作される。
【0070】
コントローラ96は、その操作パネル95とモータ50とに電気的に接続されている。コントローラ96は、コンピュータ97を主体として構成されており、そのコンピュータ97は、よく知られているように、プロセッサ97aとストレージ97bとを有している。
【0071】
コントローラ96は、ユーザの起動指令に応答し、ストレージ97bに予め記憶されているプログラム(図示しない)をプロセッサ97aに実行させることを開始する。それにより、モータ50が、ユーザによって設定された自転・公転速度制御パターン(例えば、図13にグラフで表すパターン)が実現されるように、制御される。
【0072】
具体的には、コントローラ96は、ユーザの設定に従い、モータ50を、可変電圧・可変周波数制御を行うインバータ(図示しない)により変速駆動する。そのインバータ制御においては、モータ50が加速モード(例えば、急加速モード、緩加速モードなどを含む)、定速モードおよび減速モードのうち選択されたもので制御され、それにより、容器ホルダ56の自転速度と公転速度とがそれぞれ、所望の加速勾配および所望の減速勾配を有することになる。
【0073】
図13に示す例においては、容器ホルダ56の自転速度と公転速度とが、大きさは互いに異なるが速度変化パターンは互いに共通するように、時間と共に変化させられるが、互いに異なる速度変化パターンに従ってそれぞれ時間と共に変化するようにしてもよい。
【0074】
図3(a)に示すように、前記材料を収容している容器30は、攪拌機40の容器ホルダ56内に収容され、その後、攪拌機40が作動させられる。その作動中、攪拌機40のハウジング42内は真空圧下に置かれる。攪拌機40には、真空ポンプ(図示しない)が接続されており、ハウジング42内の空気がその真空ポンプによって吸引される。容器ホルダ56内の空間とハウジング42内の空間とは互いに連通しているため、前記真空ポンプによって容器ホルダ56内の空気も吸引される。
【0075】
前記材料は、攪拌機40による遊星運動に起因した遠心力により、攪拌される。さらに、材料内に混入した気泡は、攪拌機40による遊星運動に起因した遠心力と、真空雰囲気に起因した負圧との共同作用により、材料から排出され、その結果、その材料が脱泡される。
【0076】
その材料の攪拌脱泡が終了すると、図3(a)に示すように、容器30が攪拌機40から取り出される。
【0077】
次に、図2に示すように、ステップS3において、前記材料のシリンジ98(材料を少量ずつに分配する小型容器)への投入が行われる。このステップS3においては、具体的には、図3(b)に示すように、容器30からは、材料が1回使用分だけずつ排出され、その排出された1回使用分の材料は、シリンジ98に投入される。同じ容器30に収容された材料の全部は、最終的に、複数本のシリンジ98に分配される。
【0078】
シリンジ98は、図3(b)に示すように、中空筒状を成しており、小径の開口部を有する先端部(例えば、テーパ状を成す)と、大径の開口部を有する基端部とを有している。先端部は、小径端部であるのに対し、基端部は、大径端部である。このシリンジ98は、そのシリンジ98内に材料が収容された後、通常、その材料が、シリンジ98の先端部から、例えば積極的に加圧されるかまたは重力により、排出されるように使用される。
【0079】
本実施形態においては、図3(b)に示すように、容器30から材料を排出するために、その容器30のチャンバ34内に押出具98aが押し込まれる。その押出具98aは、容器30のチャンバ34の内面形状を補完する外面形状(例えば、概して半球状を成す凸部を有する形状)を有している。押出具98aがチャンバ34内を排出通路36に接近するにつれて、その排出通路36から材料が押し出される。
【0080】
本実施形態においては、材料を容器30からシリンジ98に移し変える際、容器30が、図3(b)に示すように、チャンバ34が上を向く一方、排出通路36が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、押出具98aがチャンバ34内を下降させられる。その結果、チャンバ34から材料が下向きに押し出される。
【0081】
さらに、本実施形態においては、材料を容器30からシリンジ98に移し変える際、シリンジ98が、基端部が上を向く一方、先端部が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、容器30から下向きに押し出された材料が、シリンジ98の基端部から注入される。
【0082】
材料は、その後、シリンジ98の内部の空気を押し退けてその空気をシリンジ98の先端部の開口部(基端部の開口部より小径であるために、空気の排出を阻害し易い)から排出しつつ、シリンジ98内を下降する。その結果、材料は、シリンジ98内に、それの先端部から基端部に向かって材料の最上表面が上昇するように、徐々に収容される。
【0083】
本実施形態においては、ステップS3が大気圧下に実施されるが、真空圧下に実施すれば、シリンジ98への投入中に、材料への気泡の混入をより確実に防止することが可能となる。
【0084】
続いて、図2に示すように、ステップS4において、成形型ユニット100のキャビティ110への、材料の投入が行われる。
【0085】
図6には、その成形型ユニット100の一例が斜視図で示されている。成形型ユニット100は、相対的に接近および離間が可能なめす型102とおす型104とを有している。本実施形態においては、めす型102が、キャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)を有する固定型として機能する一方、おす型104が、そのキャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)内に挿入される凸部を有する可動型として機能する。めす型102は、キャップ10の外面に所望形状を与える一方、おす型104は、キャップ10の内面に所望形状を与える。
【0086】
めす型102もおす型104も、素材は合成樹脂であり、その合成樹脂は、例えば、自己潤滑性を有する合成樹脂であり、そのような合成樹脂は、例えば、PTFE(テフロン(登録商標))である。
【0087】
それらめす型102とおす型104とは、それらに共通の中心線を有しており、その中心線に沿って、おす型104がめす型102に対して直線移動可能となっている。本実施形態においては、その直線運動を可能にするために、めす型102に、互いに平行な複数本の金属製のガイドロッド112が離脱可能に固定されている。これに対応して、おす型104には、それらガイドロッド112が摺動可能に嵌合する複数個の貫通穴が形成されている。
【0088】
図6(a)は、おす型104がめす型102から退避していて、めす型102のキャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)内への材料の投入が可能である状態(型開き状態)を示し、一方、図6(b)は、おす型104がめす型102に密着し、それらおす型104およびめす型102の間に形成される空間が、キャップ10の形状を定義する状態(型閉まり状態)を示している。
【0089】
図7は、成形型ユニット100を、型閉まり状態で示す側面図である。成形型ユニット100は、めす型102を、それの底部において固定する中空円筒状のケース114を備えている。そのケース114は、攪拌機40の容器ホルダ56に無駄な隙間なく嵌合し、攪拌機40の作動中、容器ホルダ56内にがたなく収容される形状を有している。
【0090】
図2に示すステップS4においては、図8(a)に示すように、シリンジ98から材料が押し出され、それにより、めす型102のキャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)内に材料が投入される。
【0091】
このステップS4においては、さらに、図8(a)に示すように、めす型102(ガイドロッド112が取り外された状態)がケース114と共に、攪拌機40の容器ホルダ56内に収容される。この状態で、攪拌機40が、めす型102が真空圧下にある状態で作動させられる。それにより、めす型102のキャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)内に投入された材料が攪拌脱泡される。この際、キャビティ110(ここでは、正確には、めす型102内の空間)に充填された材料の表面の平坦化(表面均し)も行われる。その後、図8(a)に示すように、めす型102が攪拌機40から取り出される。
【0092】
このステップS4においては、容器ホルダ56内の圧力が、前述のステップS2の場合より高い真空圧(例えば、20kPa)とされる。
【0093】
ところで、材料の真空圧が高いほど、その材料の脱泡効果が高い。また、材料の量が多いほど、その材料の流動性が高く、よって、遠心力による攪拌中、摩擦によって材料が発熱し易い。一方、材料の温度が高いほど、その材料が発泡し易い。また、発泡し易い環境においては、真空圧が高いほど、その発泡が促進されてしまう。
【0094】
これに対し、ステップS2において攪拌脱泡の対象である容器30内の材料は、ステップS4において攪拌脱泡の対象であるめす型102内の材料より、多量であるため、発熱し易く、よって、発泡し易い。
【0095】
そこで、本実施形態においては、ステップS2による攪拌脱泡が、ステップS4による攪拌脱泡より低い真空圧のもとに実施されるようになっている。同様の理由により、ステップS5による攪拌脱泡が、ステップS2による攪拌脱泡より高い真空圧のもとに実施され、また、ステップS5による攪拌脱泡が、ステップS4による攪拌脱泡と同じ高さの真空圧のもとに実施されるようになっている。
【0096】
続いて、図2に示すステップS5において、キャップ10が成形型ユニット100を用いて、回転成形によって製造される。
【0097】
具体的には、図8(b)に示すように、攪拌脱泡された材料で充填されためす型102にガイドロッド112とおす型104とが装着され、さらに、それらにケース114が装着される。それにより、成形型ユニット100が組み立てられる。その後、その成形型ユニット100全体が、型開き状態で、攪拌機40の容器ホルダ56内に収容される。その後、攪拌機40が起動される。
【0098】
攪拌機40の起動当初においては、おす型104がめす型102に密着しておらず、そのめす型102内における材料の流動性がおす型104によって実質的に阻害されない。この期間(おす型104がめす型102に密着しない期間)において、材料が効率よく攪拌脱泡される。この攪拌脱泡も、比較的高い真空圧(前述のように、例えば、20kPa)のもとに行われる。
【0099】
遊星運動によっておす型104に作用する遠心力は、攪拌機40の自転速度および/または公転速度が目標値まで上昇する期間においては、その上昇につれて増加し、それに伴い、おす型104がガイドロッド112に沿ってめす型102に接近するための推進力も増加する。
【0100】
やがて、その推進力が、おす型104がガイドロッド112との間の摩擦抵抗に打ち勝つに至ると、おす型104がガイドロッド112に沿って、めす型102に接近する向きに移動する。やがて、おす型104がめす型102に密着する。その密着後も攪拌機40が作動し続けられ、それにより、型閉まり状態においても、成形型ユニット100内の材料が攪拌脱泡される。この攪拌脱泡も、比較的高い真空圧(前述のように、例えば、20kPa)のもとに行われる。
【0101】
本実施形態においては、キャビティ110内における材料の流動性を、成形開始当初においてできる限り向上させ、それにより、攪拌脱泡の効果を極大化するために、成形開始当初においては、おす型104がめす型102に密着することが阻止される。一定時間の経過後にはじめて、おす型104がめす型102に密着することが許可される。
【0102】
成形型ユニット100による回転成形が終了すると、成形型ユニット100全体が攪拌機40から取り出される。このとき、成形型ユニット100は、図8(b)に示すように、型閉まり状態にある。
【0103】
その後、図2に示すステップS6において、成形型ユニット100のクランプが行われる。具体的には、めす型102とおす型104とが、クランプ治具(図示しない)を用いて、強固に締め付けられる。後続する加熱硬化工程において、めす型102とおす型104とが予定外に互いに分離してしまうことを確実に防止するためである。
【0104】
続いて、図2に示すステップS7において、加熱硬化が行われる。具体的には、成形型ユニット100全体が高温室(例えば、約40ないし約60℃)に入れられ、それにより、成形型ユニット100のキャビティ110内の材料が加熱硬化させられる。
【0105】
その後、図2に示すステップS8において、完成品としてのキャップ10を成形型ユニット100から取り出すべく、おす型104がめす型102から退避させられる。型ばらしが行われるのである。
【0106】
続いて、図2に示すステップS9において、キャップ10に対し、ばり取りなど、仕上げ加工が行われる。以上で、キャップ10の製造が完了する。
【0107】
なお付言するに、本実施形態においては、図8(a)に示すように、ステップS4において、材料で充填されためす型102が攪拌機40によって遊星運動させられ、それにより、めす型102内の材料が攪拌脱泡され、その後、ステップS5において、材料で充填された成形型ユニット100が攪拌機40によって遊星運動させられ、それにより、成形型ユニット100内の材料が攪拌脱泡されるというように、攪拌機40を用いた攪拌脱泡が、2回行われる。
【0108】
これに対し、ステップS5の実施を省略した態様、すなわち、ステップS4の実施が終了すると、直ちにステップS6およびS7が実施される態様で本発明を実施することが可能である。めす型102内の同じ材料に対し、ステップS4による攪拌脱泡のみ実施すれば、十分な攪拌脱泡効果が実現される場合があるからである。
【0109】
その後、図2に示すように、前記シーラント充填方法が実施される。
【0110】
図9に示すように、このシーラント充填方法が実施されると、まず、ステップS11において、図10(a)に示すように、完成品としてのキャップ10が、めす型102のキャビティ110に装填され、それにより、上方からのシーラントの充填に備え、キャップ10が、凹部14の開口部が上向き姿勢で保持される。
【0111】
キャップ10を保持するために、めす型102を使用することは不可欠ではなく、他の専用治具を用いてもよいが、めす型102を使用する場合には、キャップ10を保持するための専用治具をあえて製作せずに済む。
【0112】
その後、図10(a)に示すように、姿勢を保持されているキャップ10の凹部14に液状のシーラント118が充填される。シーラント118は、シリンジ98から押し出された材料であり、これが、凹部14に充填される。本実施形態においては、前述のように、キャップ10を構成する材料と、そのキャップ10の凹部14に充填されるシーラント118とが、同じ組成を有するようになっている。
【0113】
次に、図9に示すステップS12において、シーラント118の攪拌脱泡が、攪拌機40を用いて行われる。具体的には、図10(b)に示すように、シーラント118で充填されためす型102が攪拌機40の容器ホルダ56内に収容され、この状態で、攪拌機40が、容器ホルダ56が真空である状態(例えば、ステップS4およびS5と同じ真空圧)で、作動させられる。それにより、キャップ10の凹部14内に充填されたシーラント118が攪拌脱泡される。この際、凹部14内に充填されたシーラント118の表面の平坦化(表面均し)も行われる。その後、図10(b)に示すように、めす型102が攪拌機40から取り出される。
【0114】
続いて、図9に示すステップS13において、シーラント118が、キャップ10と共に冷凍される。具体的には、図10(c)に示すように、キャップ10を保持しているめす型102がケース112と共に、かつ、キャップ10がシーラント118で充填された状態で、フリーザ120内に投入される。フリーザ120の内部温度は、例えば、約−50ないし約−70℃である。また、冷凍時間は、例えば、1時間である。シーラント118が凍結(固化、凝固)すると、めす型102がフリーザ120から取り出される。
【0115】
その後、図9に示すステップS14において、複数個の製品キット124が製作される。具体的には、図11(a)に示すように、凍結したシーラント118で充填されたキャップ10がめす型102から取り出され、そのようにして取り出された複数個のキャップ10であって凍結したシーラント118で充填されたものが、パレット122上の複数個の凹部に挿入される。これにより、複数個のキャップ10が1つのパレット122上に整列され、それにより、1つの製品キット124が完成する。
【0116】
続いて、図9に示すステップS15において、製品キット124が全体として保冷される。具体的には、図11(b)に示すように、製品キット124が、キャップ10の製造場所に位置する低温室(図示しないが、例えば、約−50ないし約−70℃の恒温室。保冷箱を含む)に投入され、それにより、保管中に、キャップ10内のシーラント118が予定外に解凍してしまうことを防止する。
【0117】
その後、図9に示すステップS16において、シーラント118で充填されたキャップ10が保冷状態で、作業現場に向けて出荷される。以上で、このシーラント充填方法が終了する。
【0118】
その結果、最終完成品としてのキャップ10の製造が終了する。そのキャップ10は、中間完成品としてのキャップ10そのものと、そのキャップ10を充填する、冷凍されたシーラント118との組合せである。
【0119】
すなわち、この時点では、最終完成品としてのキャップ10が、硬化が既に完了しているためにその後に解凍しても流動性を復元できない材料で形成されている固形の外側層(シェル部12)と、その外側層の内側に位置し、未だ硬化が完了していないためにその後に解凍すれば流動性を復元できる材料(シーラント118)で形成されている固形の内側層との二層構造として構成されるのである。
【0120】
以上のようにして前記シーラント充填方法が終了すると、その後、図9に示すように、前記キャップ装着方法が、前記製造場所においてではなく、前記作業現場において開始される。
【0121】
具体的には、まず、ステップS21において、製品キット124が、作業現場に入荷される。次に、ステップS22において、その入荷された製品キット124が、フリーザ(図示しない)内において保冷される。
【0122】
続いて、ステップS23において、その製品キット124を用いてこれからキャップ装着作業を開始することが必要となると、その製品キット124が前記フリーザから取り出され、その後、図12(a)に示すように、解凍場所(図示しないが、例えば、解凍室)において解凍される。その解凍は、例えば、常温で行ったり、ヒータ(例えば、乾燥機能を有する温風ヒータ)によって直接的に加熱したり、湯煎によって間接的に加熱することが可能である。
【0123】
キャップ10が解凍されると、シェル部12は固形のままで液化しないが、シーラント118は液化して再び流動性を示すに至る。
【0124】
その後、ステップS24において(または、ステップS23における解凍と並行して)、製品キット124がドライヤ(図示しない)によって乾燥させられ、それにより、解凍によってキャップ10の表面に発生した結露が除去される。そのドライヤは、例えば、常温の空気または温風を吹き付けることにより、キャップ10の表面に付着した水分を吹き飛ばすものとすることが可能である。
【0125】
続いて、ステップS25において、必要な製品キット124が解凍場所または乾燥場所から取り出され、その取り出された製品キット124は、図12(a)に示すように、例えば、台車126を用いて作業現場に搬送される。その後、ステップS26において、図12(b)に示すように、作業者が、これから使用しようとする、シーラント118で充填されたキャップ10をパレット122から取り出し、そのキャップ10をボルト22のうちパネル部材20から露出している部分に装着する。
【0126】
この際、キャップ10は固形であるのに対し、そのキャップ10内のシーラント118は流動性を示しており、それにより、キャップ10がボルト22に装着される、シーラント118は、キャップ10とボルト22との間のすきまを漏れなく埋めるように比較的自由に変形する。その結果、キャップ10とボルト22との間のシールが達成される。以上で、このキャップ装着方法が終了する。
【0127】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、図2に示すステップS4のうちの前半部であって、材料をシリンジ98から押し出してその材料でめす型102を充填するための部分が、前記(1)項における「充填工程」の一例を構成し、また、同図に示すステップS4のうちの後半部であって、材料で充填されためす型102を攪拌機40によって自転・公転させるための部分と、同図に示すステップS5とが互いに共同して、同項における「攪拌脱泡工程」の一例を構成し、また、同図に示すステップS7が、同項における「硬化工程」の一例を構成している。
【0128】
さらに、本実施形態においては、図2に示すステップS4のうちの後半部であって、材料で充填されためす型102を攪拌機40によって自転・公転させるための部分が、前記(3)項における「予備攪拌脱泡工程」の一例を構成し、また、同図に示すステップS5のうちの前半部であって、成形型ユニット100を組み立てるための部分が、同項における「組立工程」の一例を構成し、また、同図に示すステップS5のうちの後半部であって、組み立てられた成形型ユニット100を攪拌機40によって自転・公転させるための部分が、同項における「本攪拌脱泡工程」の一例を構成している。
【0129】
次に、本発明の第2実施形態に従うキャップ成形方法を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、図2に示すステップS3の内容のみが異なり、他のステップについては共通であるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については重複した説明を省略する。
【0130】
第1実施形態においては、図3(b)に示すように、材料を容器30からシリンジ98に移し変える際、容器30が、チャンバ34が上を向く一方、排出通路36が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、押出具98aがチャンバ34内を下降させられる。その結果、チャンバ34から材料が下向きに押し出される。
【0131】
さらに、第1実施形態においては、材料を容器30からシリンジ98に移し変える際、シリンジ98が、基端部が上を向く一方、先端部が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、容器30から下向きに押し出された材料が、シリンジ98の基端部から注入される。
【0132】
これに対し、本実施形態においては、図14に示すように、材料を容器30からシリンジ98に移し変える際、まず、容器30が、第1実施形態と同様に、チャンバ34が上を向く一方、排出通路36が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、押出具98aによってチャンバ34の開口部が閉塞される。それにより、容器30を逆さまにしても、その容器30から材料が、重力により、チャンバ34の開口部から漏れてしまうことがないようにされる。
【0133】
その後、容器30が、最初の姿勢から反転させられ、その結果、容器30は、排出通路36が上を向く一方、チャンバ34が下を向く姿勢で空間内に保持される。続いて、シリンジ98が、基端部が上を向く一方、先端部が下を向く姿勢を有し、かつ、その先端部と排出通路36の出口とが互いに一致するように空間内に保持される。
【0134】
この状態で、押出具98aがチャンバ34内を上昇させられる。その結果、チャンバ34から材料が上向きに押し出される。容器30から上向きに押し出された材料は、シリンジ98の基端部ではなく、先端部から注入される。
【0135】
材料は、その後、シリンジ98の内部の空気を押し退けてその空気をシリンジ98の基端部の開口部(先端部の開口部より大径であるために、空気の排出を阻害し難い)から排出しつつ、シリンジ98内を上昇する。その結果、材料は、シリンジ98内に、それの先端部から基端部に向かって材料の最上表面が上昇するように、徐々に収容される。
【0136】
このように、本実施形態においては、材料がシリンジ98に注入される際、そのシリンジ98の先端部から注入されるため、基端部から注入される場合より、シリンジ98内の空気を圧縮せずに済む。その結果、材料がシリンジ98に注入される際、そのシリンジ98内において材料に空気が混入してしまう可能性が、材料をシリンジ98の基端部から注入する場合より軽減される。
【0137】
次に、本発明の第3実施形態に従うキャップ成形方法を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、成形方法の要部と、成形型ユニットの構造と、攪拌機の速度制御とが異なり、他の要素については共通であるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については重複した説明を省略する。
【0138】
第1実施形態においては、図2および図8に示すように、成形型ユニット100の組立前に、ステップS4において、材料で充填されためす型102のみが攪拌機40によって自転・公転させられ、その後、ステップS5において、成形型ユニット100が組み立てられ、その組み立てられた成形型ユニット100が攪拌機40によって自転・公転される。
【0139】
これに対し、本実施形態においては、ステップS4の実施が省略され、その代わり、ステップS5が、それの前半において、型締まり阻止期間を有するとともに、後半において、型締まり許可期間を有する。すなわち、本実施形態においては、攪拌脱泡工程が、後に図21を参照して詳述するが、型締まり阻止期間と型締まり許可期間とを有するように実施されるのである。
【0140】
型締まり阻止期間においては、組み立てられた成形型ユニットにおいておす型がめす型に密着することを阻止しつつ、そのめす型内において材料が攪拌脱泡される。これに対し、型締まり許可期間においては、おす型がめす型に密着することを許可し、その密着後、互いに密着しているおす型とめす型とによって形成される狭いキャビティ内において材料が攪拌脱泡される。
【0141】
図15には、上述の攪拌脱泡工程を実施するために用いられる成形型ユニット140が、いずれも正面図である分解図と組立図とでそれぞれ示されている。
【0142】
成形型ユニット140は、図6および図7に示す成形型ユニット100と同様に、いずれも円筒の外周面を有するめす型142およびおす型144を備えている。それらめす型142とおす型144とによってキャビティ146が定義される。めす型142もおす型144も、自己潤滑性に優れたエンジニアリングプラスチックの一例であるPOM(ポリアセタール)を主要な素材として構成されているが、それらめす型142とおす型144とのそれぞれのうち、相手方部材と接触する部分は、PTFE(テフロン(登録商標))によって構成されている。
【0143】
成形型ユニット140は、さらに、ガイドカップ150(第1の筒状部材)と、スペーサ152と、型固定カップ154(前記第1の筒状部材より大径の第2の筒状部材)とを備えている。
【0144】
ガイドカップ150は、有底円筒状を成していて、円筒部156と、その円筒部156の一端部を閉塞する底部158とを有している。このガイドカップ150には、それの底部158に接触するように、めす型142が嵌合されるとともに、そのめす型142は、ガイドカップ150の内周面に、着脱可能、かつ、装着状態においては軸方向にも周方向にも相対移動不能に固定される。このガイドカップ150を構成する素材の一例は、POMである。
【0145】
スペーサ152も、有底円筒状を成しており、それの内周面にガイドカップ150がスライド可能に嵌合されるとともに、着脱可能、かつ、装着状態においては軸方向にも周方向にも相対移動不能に固定されている。
【0146】
型固定カップ154も、有底円筒状を成しており、それの内周面にスペーサ152がスライド可能に嵌合されるとともに、着脱可能、かつ、装着状態においては軸方向にも周方向にも移動不能に固定されている。
【0147】
この型固定カップ154は、容器ホルダ56内にがたなく嵌合されるとともに、その容器ホルダ56の内周面に、着脱可能、かつ、装着状態においては軸方向にも周方向にも相対移動不能に容器ホルダ56に固定される。
【0148】
ガイドカップ150の内周面には、めす型142に加えて、おす型144も嵌合される。めす型142はガイドカップ150に固定され、それにより、めす型142は常に、ガイドカップ150と一体的に自転・公転を行う。これに対し、おす型144は、ガイドカップ150に対して軸方向にも周方向にも移動可能に嵌合される。それにより、おす型144は、ガイドカップ150の内周面に案内されつつ、めす型142に対して相対的に、軸方向における接近・離隔が可能とされる。ただし、めす型142に対するおす型144の相対運動が、後述の、互いに嵌合されたガイドピンとガイド長穴との組合せによって規制される。
【0149】
図16に示すように、成形型ユニット140は、公転軸まわりに公転させられつつ、その公転軸から偏心した位置においてその公転軸に対して傾斜した自転軸まわりに自転させられる。
【0150】
図15および図17に示すように、おす型144には、半径方向に延びる複数本のガイドピン160が装着されている。図15および図17に示す例においては、2本のガイドピン160が一直径方向に一列に並んでいる。
【0151】
図15に示すように、ガイドカップ150の円筒部156には、それの上端部から延びる複数本のガイド長穴(または、ガイド溝)162が形成されている。各ガイドピン160は、各ガイド長穴162に、それの長さ方向に沿って相対移動可能に係合されている。各ガイド長穴162の幅寸法は、各ガイドピン160の直径寸法より大きいように設定されている。
【0152】
図15および図17に示すように、各ガイド長穴162は、円筒部156の上端部から軸方向に(下方に)延びる第1部分170と、その第1部分170の終端から周方向に延びる第2部分172と、その第2部分172の終端から斜め下方に延びる第3部分174と、その第3部分174の終端から軸方向に(下方に)延びる第4部分176とを有している。
【0153】
前述のように、おす型144は、ガイドカップ150に対し、軸方向にも周方向にも相対移動可能であるが、おす型144の移動軌跡が、ガイドピン160とガイド長穴162との共同作用により、定義される。また、それらおす型144とガイドカップ150との間の相対変位(相対回転および相対移動を含む)は、おす型144とめす型142との間の相対変位を生起する。
【0154】
それらおす型144とガイドカップ150との間の相対変位は、概略的に説明すれば、おす型144の自転方向における慣性力(向きと大きさとのうち主に向き)と、おす型144に作用する遠心力の軸方向成分(大きさ)とに基づいて行われる。
【0155】
撹拌機40の停止中にあっては、おす型144に作用する重力により、ガイドピン160は、図17に示すように、第1部分170の終端(下端位置)に位置する初期状態にある。
【0156】
図20(a)には、攪拌機40によって成形型ユニット140に与えられる速度(自転速度と公転速度とのうちの少なくとも自転速度)の時刻暦の一例がグラフで表されている。
【0157】
図20(a)に示す例においては、成形型ユニット140の自転速度(回転数)と公転速度(回転数)とが、大きさは互いに異なるが速度変化パターンは互いに共通するようになっている。また、成形型ユニット140の自転方向は、攪拌機40の作動中、一定であり、図17に示すように、ガイドカップ150のうちの円筒部156に形成された各ガイド長穴162において、第1部分170から第4部分176に向かう向きに一致する。
【0158】
さらに、図20(a)に示す例においては、一連の速度制御が、第1急加速期間A、第2定速期間B、第3急減速期間C、第4緩加速期間D、第5急加速期間E、第6定速期間Fおよび第7緩減速期間Gを有する。
【0159】
第1急加速期間Aにおいては、モータ50が前記急加速モードで駆動され、それにより、めす型142が自転方向において加速される。それに伴い、図17に示すように、おす型144には、第1部分170の終端(下端位置)から第2部分172が延び出す向きとは逆向き(めす型142の自転方向とは逆向き)に慣性力が作用する。その結果、ガイドピン160が、図17に示す初期位置において、第1部分170の側壁に押し付けられる。
【0160】
第2定速期間Bにおいては、モータ50が前記定速モードで駆動され、それにより、めす型142もおす型144も、定速で自転および公転をさせられる。このとき、ガイドピン160は、図17に示す初期位置に保持される。この時点では、おす型144は未だめす型142に密着していないから、めす型142内の材料は、高粘性を示すにもかかわらず、高い流動性のもとに、効率よく撹拌脱泡される。この第2定速期間Bにおいては、材料がめす型142に完全に含浸することも促進される。
【0161】
第3急減速期間Cにおいては、モータ50への電力供給が断たれた状態でブレーキ94が作動させられ、それにより、めす型142が自転方向において減速される。それに伴い、図18に示すように、おす型144には、第1部分170の終端(下端位置)から第2部分172が延び出す向きと同じ向き(めす型142の自転方向と同じ向き)に慣性力が作用する。その結果、ガイドピン160が、図17に示す初期位置から、図18に示すように、第2部分172の終端(右端位置)に向かって移動し、それにより、おす型144がめす型142に対して相対的に周方向に回転する。
【0162】
同じ向きの慣性力が継続的におす型144に作用すると、ガイドピン160は、図18に示す第2部分172の終端(右端位置)から第3部分174に移行し、その第3部分174に沿って移動する。その第3部分174は、おす型144の周方向に対して傾斜している。そのため、おす型144が軸方向に移動してめす型142に徐々に接近する。ガイドピン160は、やがて、第3部分174の終端(右端位置)に到達する。
【0163】
本実施形態においては、第3部分174が、おす型144の周方向に対して、下向きに傾斜している。したがって、この第3部分174が傾斜していない場合より、ガイドピン160が重力に逆らってこの第3部分174を予定外に逆行してしまう可能性が軽減される。
【0164】
第4緩加速期間Dにおいては、ガイドピン160が第4部分176に位置している状態で、モータ50が前記緩加速モードで駆動され、それにより、おす型144が公転方向に加速される。その結果、おす型144に軸方向遠心力が発生するとともに、その遠心力が時間と共に増加する。その遠心力は、おす型144をめす型142に接近させる向き(下向き)におす型144に作用する。それにより、図19に示すように、ガイドピン160が、第4部分176に沿って下降して、めす型142に接近する。
【0165】
この第4緩加速期間Dにおいては、おす型144に作用する軸方向遠心力が、モータ50が前記急加速モードで駆動される場合より緩やかな勾配で増加する。したがって、おす型144がめす型142に接近する速度が低速化される。よって、おす型144が空気を巻き込んだ状態でめす型142内の材料に突入してしまうことが防止される。
【0166】
図19に示すように、軸方向遠心力が継続的におす型144に作用すると、最終的に、おす型144の前向き面に設置されたストッパ180が、めす型142の後向き面に設置された受け面182に当接し、それにより、おす型144が、めす型142に対する接近限度に到達する。それにより、おす型144がめす型142に密着する。
【0167】
第5急加速期間Eにおいては、モータ50が前記急加速モードで駆動され、それにより、成形型ユニット140が自転方向にも公転方向にも急速に(先行する第4緩加速期間Eにおけるより大きい勾配で)加速させられる。
【0168】
第6定速期間Fにおいては、モータ50が定速モードで駆動され、それにより、めす型142およびおす型144が一体的に、定速で自転および公転をさせられる。その結果、めす型142とおす型144とによって形成される狭いキャビティ146内の材料が撹拌されつつ、真空圧下において、脱泡される。この第6定速期間Fにおいては、材料がめす型142およびおす型144に完全に含浸することも促進される。
【0169】
第7緩減速期間Gにおいては、モータ50が前記減速モードで駆動され、それにより、おす型144およびめす型142が一体的に、自転方向にも公転方向にも、減速させられる。この第7緩減速期間Gにおいては、ブレーキ94の作動はないため、第3急減速期間Cにおける速度勾配より緩やかな速度勾配が実現される。やがて、おす型144およびめす型142は停止する。
【0170】
ここで、図21を参照することにより、本実施形態における攪拌脱泡工程を詳細に説明する。
【0171】
この攪拌脱泡工程においては、まず、ステップS31において、図8(b)において最も左側に示すように、材料で充填されためす型142におす型144を、それらめす型142とおす型144とが互いに接近可能であるが、互いに離隔するように装着し、それにより、成形型ユニット140を組み立てる組立工程が実施される。
【0172】
次に、ステップS32において、図8(b)において中央に示すように、その組み立てられた成形型ユニット140を攪拌機40内に配置する配置工程が実施される。
【0173】
続いて、ステップS33において、攪拌機40の作動開始時から、型締まり阻止期間の間、成形型ユニット140を、公転によって発生する遠心力によっておす型144がめす型142に接近しておす型144がめす型142に密着することを阻止する阻止工程が実施される。本実施形態においては、型締まり阻止期間が、図20(a)に示すように、第1急加速期間Aと、第2定速期間Bと、第3急減速期間Cとを含むように構成される。
【0174】
そのステップS33と並行して、ステップS34において、型締まり阻止期間中、めす型142におす型144が密着していない状態において、攪拌機40により、めす型142内において材料を攪拌脱泡する先行攪拌脱泡工程が実施される。
【0175】
続いて、ステップS35において、攪拌機40の作動中、型締まり阻止期間に後続する型締まり許可期間において、おす型144に作用する遠心力によっておす型144がめす型142に接近しておす型144がめす型142に密着することを許可する許可工程が実施される。本実施形態においては、型締まり許可期間が、図20(a)に示すように、第4緩加速期間Dと、第5急加速期間Eと、第6定速期間Fと、第7緩減速期間Gとを含むように構成される。
【0176】
そのステップS35と並行して、ステップS36において、型締まり許可期間の間、めす型142におす型144が密着している状態において、攪拌機40により、成形型ユニット140のキャビティ146内において材料を攪拌脱泡する後続攪拌脱泡工程が実施される。
【0177】
第1実施形態においては、図8(a)および(b)に示すように、キャビティ110が材料で充填されている成形型ユニット100全体に自転および公転を攪拌機40によって与えて材料を攪拌脱泡する工程(すなわち、図2におけるステップS5)に先立ち、材料で充填されているめす型102のみに自転および公転を攪拌機40によって与えて材料を攪拌脱泡する工程(すなわち、図2におけるステップS4)が行われる。めす型102内における材料の攪拌脱泡が、攪拌機40を用いて、2回に分けて行われるのである。
【0178】
これは、ステップS5による攪拌脱泡は、狭いキャビティ110内において材料が拘束されて流動性が低い状態で行われるため、ステップS5に先行し、ステップS4が、めす型102内において材料が拘束されずに流動性が高い状態で、材料を攪拌脱泡するために実行される。
【0179】
これに対し、本実施形態においては、ステップS4が省略される一方、ステップS5が、めす型142におす型144が装着されていない状態での先行攪拌脱泡と、めす型142におす型144が装着されている状態での後続攪拌脱泡とが、攪拌機40の連続運転中に、実施される。
【0180】
したがって、本実施形態によれば、めす型142内における材料の攪拌脱泡を攪拌機40の運転を止めずに行うことが可能となり、よって、攪拌脱泡の作業効率が向上し、キャップ10の成形に必要な時間が短縮し、キャップ10の生産効率が向上する。
【0181】
図20(b)には、図20(a)に示す例(以下、「第1例」という。)における速度の時刻暦に対する一変形例がグラフで表されている。
【0182】
図20(b)に示す例(以下、「第2例」という。)における速度の時刻暦は、第1例における速度の時刻暦に対し、基本的な速度変化パターンに関して共通する。
【0183】
具体的には、この第2例においては、第1急加速期間Aの間は、モータ50が前記急加速モードで駆動され、また、第2定速期間Bおよび第6定速期間Fの間は、それぞれ、モータ50が前記定速モードで駆動され、また、第7緩減速期間Gの間は、モータ50が前記減速モードで駆動される。
【0184】
ただし、この第2例においては、第1例における第3急減速期間Cに相当する期間として、ブレーキ94を作動させることなく、モータ50を減速モードで駆動する減速期間C1と、ブレーキ94を作動させる減速期間C2との組合せが採用されている。
【0185】
この第2例においては、第1例とは異なり、まず、減速期間C1の間、モータ50の電流制御により、ブレーキ94に依存することなく、自転速度および公転速度が十分に0に近くなるまで減速され、その後、減速期間C2の間、ブレーキ94が作動させられ、それにより、おす型144の自転方向に慣性力が付与される。この第2例によれば、ブレーキ94の作動が開始されるときの回転フレーム54の速度が第1例におけるより低速であるため、ブレーキ94およびモータ50の負荷が軽減される。
【0186】
また、この第2例においては、第1例における第4緩加速期間Dおよび第5急加速期間Eの組合せに相当する期間として、3つの定速期間D1,D2およびD3と、3つの急加速期間E1,E2およびE3とが交互に並んだものが採用されている。定速期間D1,D2およびD3の間は、それぞれ、モータ50が前記定速モードで駆動され、また、急加速期間E1,E2およびE3の間は、それぞれ、モータ50が前記急加速モードで駆動される。
【0187】
この第2例においては、定速モードと急加速モードとが交互に選択されることにより、急加速モードが連続的に選択される場合より小さな遠心力をおす型144に発生させることができる。したがって、おす型144に作用する遠心力によっておす型144がめす型142に接近しようとする際、図19に示すように、ガイドピン160は、第4部分176に沿って下降するが、その下降速度が、低速化される。よって、この第2例においても、第1例と同様に、おす型144が空気を巻き込んだ状態でめす型142内の材料に突入してしまうことが防止される。
【0188】
なお付言するに、本実施形態においては、ガイドピン160を、おす型144がめす型142に接近することを阻止するロック位置から、その接近を許可するアンロック位置に移動させるために必要な慣性力がブレーキ94の作動によって発生させられる。これに対し、必要な慣性力をモータ50の電流制御によって実現することが可能である場合には、ブレーキ94を使用することは不要である。
【0189】
次に、本発明の第4実施形態に従うキャップ成形方法を説明する。ただし、本実施形態は、第3実施形態に対し、成形型ユニットの構造と、攪拌機の速度制御とが異なり、他の要素については共通であるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については重複した説明を省略する。
【0190】
第3実施形態においては、前述のように、成形型ユニット140が、おす型144と一体的に運動するガイドピン160(前記(5)項における「第1部材」の一例)と、めす型142と一体的に運動するガイド長穴162(前記(5)項における「第2部材」の一例)を含んている。ガイドピン160は、自転に起因しておす型144に自転方向に作用する、少なくとも向きが時間と共に変化する慣性力と、公転に起因しておす型144に作用する、大きさが時間と共に変化する軸方向遠心力との組合せにより、所定経路を有するガイド長穴162に沿って相対的に移動する。それにより、おす型144がめす型142に密着することを阻止する状態と許容する状態とに切り換えられる。
【0191】
このように、第3実施形態においては、ガイドピン160とガイド長穴162との間における相対運動が、別の可動部材を介在させることなく行われ、その結果、部品点数の削減を容易に行い得る。
【0192】
これに対し、本実施形態においては、ガイドピン160とガイド溝との間における相対運動が、その安定性および設計容易性を向上させるべく、別の可動部材を介在させて行われる。また、本実施形態においては、攪拌機40の速度制御が、ブレーキ94を使用することなく、モータ50の電流制御によって行われる。
【0193】
図22(a)には、本実施形態に従うキャップ成形方法を実施するための成形型ユニット200が平面図で示されている。ただし、この成形型ユニット200は、第3実施形態に従う成形型ユニット140であって図17に示すものと基本的な構成が共通しているため、重複した説明を省略する。成形型ユニット140は、図17に示すように、ガイドカップ150およびスペーサ152を有するが、本実施形態に従う成形型ユニット200は、それらに代えて、ガイドカップ210および可動部材212を有する。
【0194】
図22(a)には、成形型ユニット200のうち、ガイドカップ210と可動部材212との組立体のみが平面図で示され、図22(b)には、その組立体が側面断面図で示されている。
【0195】
図22(b)に示すように、ガイドカップ210は、概して円形板状を成す底部222を有しており、その底部222から下フランジ224が半径方向外向きに張り出している。ガイドカップ210は、さらに、円筒部226を有しており、その円筒部226は、底部222に同軸的に、かつ、その底部222から垂直に延び出している。円筒部226には、空気流通穴としての貫通穴227が形成されている。底部222には、空気流通穴としての貫通穴228が形成されている。下フランジ224の外周縁には、互いに周方向に離れた複数個所にそれぞれ、下フランジ224を厚さ方向に貫通する切欠き230が空気流通穴として形成されている。このガイドカップ210を構成する素材の一例は、POMである。
【0196】
図17に示すのと同様にして、めす型142の外周面が円筒部226の内周面に嵌合される。めす型142は、底部222に当接した状態でガイドカップ210に固定される。一方、下フランジ224の外周面は、図17に示す型固定カップ154の内周面に嵌合される。ガイドカップ210は、型固定カップ154の底部に当接した状態で固定される。
【0197】
図17に示すのと同様にして、おす型144の外周面が円筒部226の内周面に、軸方向に相対移動可能かつ軸線まわりに相対回転可能に嵌合される。もっとも、おす型144の、ガイドカップ210(ひいては、そのガイドカップ210に固定されためす型142)に対する相対運動は、おす型144のガイドピン160(図17参照)と、円筒部226に形成された第1ガイド溝232との共同により、規制される。図22(b)に示すように、第1ガイド溝232は、全体的に、円筒部226の上端面から底部222に向かって軸方向に延びている。第1ガイド溝232は、円筒部226の上端面において開口している。
【0198】
図24に拡大して示すように、第1ガイド溝232の底面は、第1部分240と、第2部分242と、第3部分244と、第4部分246とを有している。第1部分240および第4部分246は、いずれも、下に凸の円弧状を成していて、ガイドピン160の外周面を部分的に補完する形状を有している。
【0199】
特に、第1部分240は、おす型144がめす型144に密着することを阻止するために重要であり、これに対し、第4部分246は、おす型144がめす型142に密着することを許可するために重要である。したがって、第4部分246の方が、第1部分240より、めす型142に接近している位置にある。
【0200】
第2部分242は、第1部分240と第3部分244の上端部とを斜めにつなぐ直線部であり、ガイドピン160が接触する斜面(前述の「第2斜面」の一例)を有し、この斜面は、攪拌機40による公転中におす型144に作用する軸方向遠心力(下向きの力)を分解して、その軸方向遠心力を、おす型144に作用する回転力に変換する。この第2部分242は、第1部分240から円筒部226の周方向に延びる仮想直線に対し、第4部分246に接近する向きに傾斜している。第3部分244は、第4部分246から、めす型142から遠ざかる向きに垂直に延びる直線部である。
【0201】
図22(b)に示すように、可動部材212は、円筒部250を有しており、その円筒部250の底部から上フランジ252が半径方向外向きに張り出している。その上フランジ252の外周縁には、互いに周方向に離れた複数個所にそれぞれ、上フランジ252を厚さ方向に貫通する切欠き254が空気流通穴として形成されている。上フランジ252の外周面は、図17に示す型固定カップ154の内周面に、軸方向に相対移動可能かつ軸線まわりに相対回転可能に嵌合される。
【0202】
上フランジ252は、下フランジ224に対して上方に位置している。それら上フランジ252および下フランジ224は、互いに共同して、図17に示すスペーサ152と共通する機能を果たす。
【0203】
図22(b)に示すように、可動部材212の円筒部250の内周面に、ガイドカップ210の円筒部226の外周面が、軸方向に相対移動可能かつ軸線まわりに相対回転可能に嵌合される。ガイドカップ210は、可動部材212に対し、相対的には、静止部材として作用する。この可動部材212を構成する素材の一例は、POMである。
【0204】
もっとも、可動部材212の、ガイドカップ210に対する相対運動は、図22(c)に示すように、ガイドカップ210の円筒部226に、それを厚さ方向に貫通するように形成された第2ガイド溝(本実施形態においては、直径方向において互いに対向するように2個存在する)260と、可動部材212の円筒部250に、半径方向に延びる姿勢で固定されたガイドピン262(本実施形態においては、直径方向において互いに対向するように2本存在する)との共同により、規制される。
【0205】
図22(c)に示すように、第2ガイド溝260は、全体的に、概してV字状を成している。図22(c)は、第2ガイド溝260を、ガイドカップ210の半径方向において、外側から見た場合の図である。これに対し、図22(b)は、ガイドカップ210の円筒部226に形成された第1ガイド溝232を、ガイドカップ210の半径方向において、内側から見た場合の図である。また、図23ないし26には、それら第1ガイド溝232および第2ガイド溝260を、いずれも、ガイドカップ210の半径方向において、内側から見た場合の図である。
【0206】
図23に示すように、第2ガイド溝260には、ガイドピン262が摺動可能に嵌合されており、ガイドピン262(可動部材212)は、第2ガイド溝260(ガイドカップ210)に対して相対的に移動することが可能である。また、第2ガイド溝260は、閉じた溝形状を有しているため、第2ガイド溝260およびガイドピン262は、互いに共同して、可動部材212の、ガイドカップ210に対する相対運動の限度位置を、軸方向に関してのみならず、周方向に関しても規制している。
【0207】
図23に拡大して示すように、第2ガイド溝260は、上端部から斜め下向きに延びる直線部である第1部分270と、その第1部分270の下端部から垂直に延びる第2部分272と、その第2部分272の上端部から斜め上向きに延びる直線部である第3部分274とを有している。
【0208】
第1部分270は、第2ガイド溝260の全体形状が近似するVという文字のうちの2本の腕部のうちの一方に相当する一方、第3部分274は、他方の腕部に相当する。第2部分272は、第1部分270と第3部分274とを互いにつないでいる。第1ないし第3部分270,272および274は、ガイドカップ210の一回転方向に沿って順に並んでいる。第3部分274の上端部の高さは、第1部材270の上端部より高い。
【0209】
第1部分270は、可動部材212に作用する下向き力(公転によって可動部材212に作用する軸方向遠心力からスプリング280の弾性力を差し引いた大きさ)を分解して、それの一部を、可動部材212の回転力に変換する斜面(第1部分270の下面であり、前述の「第1斜面」の一例)を有する。第3部分274は、可動部材212に作用する上向き力(スプリング280の弾性力から前記軸方向遠心力を差し引いた大きさ)を分解して、それの一部を、可動部材212の回転力に変換する斜面(第3部分274の上面であり、前述の「第1斜面」の別の例)を有する。第1部分270によって生成される回転力と、第3部分274によって生成される回転力とは、互いに同じ向きを有する。
【0210】
図23は、ガイドピン262が、位置A、すなわち、第1部分270の上端部の位置にあることを示しており、また、図24は、ガイドピン262が、位置B(可動部材212の下端位置)、すなわち、第1部分270の下端部の位置にあることを示しており、また、図25は、ガイドピン262が、位置C、すなわち、第2部分272の上端部の位置にあることを示しており、また、図26は、ガイドピン262が、位置D、すなわち、第3部分274の上端部の位置にあることを示している。図22(b)は、ガイドピン262が、位置D(可動部材212の上端位置)にあることを示している。
【0211】
図22(b)に示すように、ガイドカップ210と可動部材212との間に弾性部材の一例であるコイル状のスプリング280が配置されている。本実施形態においては、スプリング280が、円筒部226を同軸的に包囲するように配置されている。さらに、このスプリング280は、それの下端部において、下フランジ224の上面に支持される一方、スプリング280の上端部が上フランジ252の下面に、リテーナ282を介して支持されている。このスプリング280は、ガイドカップ210に対して可動部材212を、ガイドカップ210から軸方向に離れる向きに常時付勢している。ただし、可動部材212の、ガイドカップ210に対する接近・離間限度は、ガイドピン262の、第2ガイド溝260内における回転方向相対位置によって異なり、よって、可動部材212の、ガイドカップ210に対する回転方向相対位置によって異なる。
【0212】
図22(b)に示すように、可動部材212の円筒部226には、係合部290が形成されている。この係合部290は、可動部材212と一体的に運動し、図23に示すように、ガイドピン160にとっては、みかけ上、第1ガイド溝232の底面形状を変化させ、それにより、ガイドピン160の位置を制御する。
【0213】
ガイドピン262の初期位置は、図23に示す位置Aである。この状態から、攪拌機40によって成形型ユニット200が自転・公転させられる。その結果、可動部材212に作用する軸方向遠心力が、0から増加して、図22(b)に示すスプリング280の予荷重に打ち勝つに至ると、可動部材212が、第2ガイド溝260の第1部分270の斜面の効果により、一方向に回転しつつ下降する。その結果、ガイドピン262は、位置Aから位置Bに移動する。図22(b)には、スプリング280の最伸張状態(ガイドピン262の位置D)が実線で示される一方、最圧縮状態(ガイドピン262の位置B)が破線で示されている。
【0214】
その後、成形型ユニット200の公転速度が増加(または定速)から減少に転ずると、可動部材212の軸方向遠心力が減少する結果、可動部材212が、スプリング280の弾性力によって上昇し、その結果、ガイドピン262が位置Bから位置Cに移動する。続いて、ガイドピン262は、第2ガイド溝260の第3部分274の斜面の効果により、前記一方向と同じ方向に回転しつつ上昇する。それにより、ガイドピン262が、位置Cから位置Dまで移動する。
【0215】
図23に示すように、係合部290は、概して円筒部226の周方向に平行に延びる第1部分300と、円筒部226の周方向に対して傾斜する向きに延びる第2部分302と、切欠き(凹部)を構成する第3部分304とを有している。
【0216】
図23に示すように、ガイドピン262の位置Aにおいては、係合部290の第1部分300が、第1ガイド溝232の第1部分240の形状をみかけ上、おす型144がめす型142に密着することがより確実に阻止されるように変化させる。具体的には、第1部分300は、ガイドピン160(おす型144)を持ち上げる。
【0217】
さらに、ガイドピン262の位置Aにおいては、係合部290の第3部分304が、第1ガイド溝232の第4部分246の形状をみかけ上、おす型144がめす型142に密着することがより確実に阻止されるように変化させる。具体的には、第3部分304は、第1ガイド溝232の第3部分244の溝幅をみかけ上、狭め、それにより、ガイドピン160が第3部分244内に進入して第4部分246に接近しておす型144がめす型142に密着することを阻止する。
【0218】
図24に示すように、ガイドピン262の位置Bにおいては、位置Aのときより、係合部290が、下降するとともに、第1ガイド溝232の第1部分240に接近する向きに、回転する。このとき、係合部290の第1部分300が、ガイドピン160が第1ガイド溝232の第1部分240に接触することを許可するとともに、第3部分304が、ガイドピン160が第1ガイド溝232の第3部分244に沿って下降することを許可する。なぜなら、第3部分304が、第1ガイド溝232の第3部分244の溝の位置から回転方向に退避し、それにより、ガイドピン160が第3部分244内に進入して第4部分246に接近しておす型144がめす型142に密着することが許可されるからである。
【0219】
この段階では、ガイドピン160が、第1ガイド溝232のうち、第1部分240と第2部分242との間の凸部を乗り越えて、おす型142がめす型142に密着する可能性があるが、ガイドピン160が前記凸部を乗り越えることができず、その結果、おす型142がめす型142に密着しない可能性もある。
【0220】
図25に示すように、ガイドピン262の位置Cにおいては、位置Bのときより、係合部290が上昇し、その結果、係合部290のうち、第1部分300と第2部分302との間の凸部がガイドピン160を押し上げて、そのガイドピン160が、第1ガイド溝232のうちの前記凸部を乗り越えることを助ける。この段階では、おす型142がめす型142に密着する可能性があるが、おす型142がめす型142に密着しない可能性もある。
【0221】
図26に示すように、ガイドピン262の位置Dにおいては、位置Cのときより、係合部290が、上昇するとともに、第1ガイド溝232の第1部分240に接近する向きに、回転する。ガイドピン262が位置Cから位置Dまで移動する過程において、ガイドピン160に対して第1部分300および第2部分302が退避するため、ガイドピン160は、第3部分304内の空間に位置する。その結果、ガイドピン262が位置Dに到達するまでには、ガイドピン160が、第2部分242の斜面を通過して、第3部分244に沿って下降する。この段階では、おす型144は、前記軸方向遠心力によって移動して、めす型142に密着する。
【0222】
図27(a)には、ブレーキ94を用いない攪拌機40の制御により、成形型ユニット200の公転速度が時間と共に変化するパターンの一例がグラフで表されている。
【0223】
図27(a)に示すように、時刻t0からt1までの期間、公転速度が0から増加し、それにより、可動部材212の軸方向遠心力が0から増加する。この期間中に、公転速度がしきい値V0に到達してそれを超えるが、その到達前まで、ガイドピン262が、図23に示す位置Aに保持される。公転速度がしきい値V0を超えると、可動部材212の軸方向遠心力がスプリング280の弾性力に打ち勝つに至り、その結果、ガイドピン262が、図23に示す位置Aから、図24に示す位置Bまで移動する。
【0224】
その後、時刻t1からt2までの期間、公転速度が減少し、それにより、可動部材212の軸方向遠心力も減少する。この期間中、スプリング280の弾性力が可動部材212の軸方向遠心力に打ち勝つに至ると、ガイドピン262は、図24に示す位置Bから、図25に示す位置Cまで移動し、その後、その位置Cから、図26に示す位置Dまで移動する。この位置Dの直前まで、おす型144がめす型142に密着することが阻止されているが、この位置Dの直前で、おす型144がめす型142に密着することが許可される。
【0225】
続いて、時刻t2からt3までの期間、公転速度が増加する。その後、時刻t3からt4までの期間、公転速度が維持される。続いて、時刻t4からt5までの期間、公転速度が0まで減少する。以上で、公転速度に対する一回の制御サイクルが終了する。
【0226】
図27(b)には、ブレーキ94を用いない攪拌機40の制御により、成形型ユニット200の公転速度が時間と共に変化するパターンの別の例がグラフで表されている。
【0227】
図27(b)に示すように、時刻t0からt1までの期間、公転速度が0から増加する。この期間中、公転速度はしきい値V0を超えない。その結果、ガイドピン262が位置Aに保持される。その後、時刻t1からt2までの期間、公転速度が維持される。続いて、時刻t2からt3までの期間、公転速度が再び、増加する。この期間中、公転速度がしきい値V0を超えると、可動部材212の軸方向遠心力がスプリング280の弾性力に打ち勝つに至り、その結果、ガイドピン262が、位置Aから位置Bまで移動する。
【0228】
その後、時刻t3からt4までの期間、公転速度が減少する。この期間中、スプリング280の弾性力が可動部材212の軸方向遠心力に打ち勝つに至ると、ガイドピン262は、位置Bから位置Cまで移動し、その後、その位置Cから位置Dまで移動する。この位置Dの直前まで、おす型144がめす型142に密着することが阻止されているが、この位置Dの直前で、おす型144がめす型142に密着することが許可される。
【0229】
続いて、時刻t4からt5までの期間、公転速度が維持される。その後、時刻t5からt6までの期間、公転速度が0まで減少する。以上で、公転速度に対する一回の制御サイクルが終了する。
【0230】
図28には、ブレーキ94を用いない攪拌機40の制御により、成形型ユニット200の公転速度が時間と共に変化するパターンのさらに別の例がグラフで表されている。この例においては、しきい値V0が、前述の2つの例より0に近い速度に設定されている。
【0231】
図28に示すように、時刻t0からt1までの期間、公転速度が0から増加する。この期間中、公転速度がしきい値V0を超えると、可動部材212の軸方向遠心力がスプリング280の弾性力に打ち勝つに至り、その結果、ガイドピン262が、位置Aから位置Bまで移動する。その後、時刻t1からt2までの期間、公転速度が維持される。
【0232】
続いて、時刻t2からt3までの期間、公転速度が減少する。この期間中、スプリング280の弾性力が可動部材212の軸方向遠心力に打ち勝つに至ると、ガイドピン262は、位置Bから位置Cまで移動し、その後、その位置Cから位置Dまで移動する。この位置Dの直前まで、おす型144がめす型142に密着することが阻止されているが、この位置Dの直前で、おす型144がめす型142に密着することが許可される。この例においては、前述の2つの例より低い公転速度、すなわち、それら2つの例より小さい軸方向遠心力により、おす型144がめす型142に、それら2つの例より低速で密着するため、おす型144が空気を巻き込んだ状態でめす型142内の材料に突入することが抑制される。
【0233】
その後、時刻t3からt4までの期間、モータ50が前記加速モードと前記定速モードとが交互に繰り返されて実行され、それにより、公転速度が、加速モードの連続的実行時より緩やかな勾配で増加する。その結果、おす型144に作用する軸方向遠心力も緩やかな勾配で増加し、このことによっても、材料内への空気の混入が抑制される。
【0234】
続いて、時刻t4からt5までの期間、公転速度が維持される。その後、時刻t5からt6までの期間、公転速度が0まで減少する。以上で、公転速度に対する一回の制御サイクルが終了する。
【0235】
なお付言するに、本実施形態においては、第2ガイド溝260において、位置Bと位置Cと位置Dとが、同一直線上に並んでいないが、同一直線上に並ぶようにしてもよい。なぜなら、ガイドピン262の位置Aから位置Bまでの移動で、第3部分304が、第1ガイド溝232の第3部分244の溝の位置から回転方向に退避し、それにより、ガイドピン160が第3部分244内に進入して第4部分246に接近しておす型144がめす型142に密着することが許可されるからである。
【0236】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状を有するキャビティを形成するために互いに密着する状態と互いに密着しない状態とに選択的に切り換わるめす型およびおす型を有する成形型ユニットを用い、液状の混合材料から、合成樹脂製の製品を成形する方法であって、
前記めす型内の空間を前記材料で充填する充填工程と、
前記めす型に前記おす型を、それらめす型およびおす型の回転中にそれらめす型およびおす型のうちの少なくとも一方に発生する慣性力と遠心力とのうちの少なくとも一方によってそれらめす型とおす型とが互いに相対的に接近して最終的に前記めす型に前記おす型が密着することが可能であるように、組み付ける組付け工程と、
前記めす型を、そのめす型に前記おす型が組み付けられた状態で、かつ、前記めす型内の空間が前記材料で充填されている状態で、攪拌機内に配置し、その攪拌機により、前記めす型および前記おす型を、真空圧下において、公転軸まわりに公転させつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させ、それにより、前記めす型に前記おす型が密着することによってそれらめす型とおす型との間に形成された前記キャビティ内において前記材料を攪拌しつつ脱泡する攪拌脱泡工程と、
前記成形型ユニット内の前記材料を硬化させる硬化工程と
を含み、
前記攪拌脱泡工程は、前記公転および前記自転のうちの少なくとも一方の速度を時間的に変化させ、それにより、前記めす型に前記おす型が密着しない型開き状態と、前記慣性力と遠心力とのうちの少なくとも一方によって前記めす型に前記おす型が密着する型締まり状態とをそれらの順に実現する成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−40882(P2012−40882A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255763(P2011−255763)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2010−178582(P2010−178582)の分割
【原出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(591200715)加賀産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】