説明

成形用金型及び半導体ウェーハ用ダイシングフレーム

【課題】 成形材料を使用した射出成形により高強度等のフレームを製造する際、成形材料の合流部における強度低下を抑制することのできる成形用金型及び半導体ウェーハ用ダイシングフレームを提供する。
【解決手段】 ゲート7から溶融して供給された成形材料の充填により中空のフレーム21を形成するキャビティ8と、キャビティ8における複数の成形材料合流部9にそれぞれ連通して設けられる複数の成形材料貯留部10とを備え、パターン描画された半導体ウェーハを隙間をおいて収容包囲する半導体ウェーハ用ダイシングフレームのフレーム21を射出成形する。成形材料貯留部10に成形材料が流入することにより、成形材料合流部9で繊維状のフィラーが混合されて強度を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハのダイシング作業やエキスパンド作業等に使用される半導体ウェーハのダイシング用フレームの強度等を向上させることのできる成形用金型及び半導体ウェーハ用ダイシングフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における半導体ウェーハのダイシング用フレームは、図6ないし図8に示すように、半導体ウェーハWを収容するフレーム21Aを備え、このフレーム21Aに、半導体ウェーハWを保持するダイシングフィルム31が貼着されることにより構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
フレーム21Aは、例えばSUS等を使用して中空に形成され、表面の一部に、半導体ウェーハWやその加工工程に関する情報管理用のバーコード12が貼着されており、25枚一組で図示しない半導体ウェーハ用の収納容器に整列収納される。また、ダイシングフィルム31は、例えば50〜200μmの厚さでフィルム化された軟質塩化ビニル樹脂を備え、この柔軟な軟質塩化ビニル樹脂の表面に、アクリル系の粘着剤が10〜50μmの厚さに塗布されており、フレーム21Aの裏面に剥離可能に貼着されてその中空部を閉塞する。
【0004】
このような構成の半導体ウェーハのダイシング用フレームは、ダイシングフィルム31上に粘着保持した半導体ウェーハWがダイヤモンドブレード40により複数のダイ(チップ)Dにダイシング(図6参照)され、エキスパンド装置41上に上方から圧接されてダイシングフィルム31が径方向に延伸される(図7、図8参照)とともに、複数のダイDが相互に接触しないようその間隔が拡大される。
【0005】
そして、半導体ウェーハWからダイDが個々にピックアップして移送され、パッケージの組立や基板の実装等の作業が行なわれた後、フレーム21Aから破損・変形したダイシングフィルム31が剥離され、フレーム21Aがリサイクルに供される。
【0006】
ところで、従来のフレーム21Aは、殆どSUS製であるが、半導体ウェーハWのサイズが近年6インチから8インチ、12インチ(口径300mm)に大口径化されてきている関係上、軽量化を目的とした樹脂タイプの製造・開発が検討されている。この製造・開発に際しては、大口径の半導体ウェーハWを支持するため、強い曲げ弾性率、曲げ強度、衝撃強度を向上させ、可能な限り薄肉化を図りたいという要望がある。
【0007】
そこで、樹脂製のフレーム21Aの製造・開発においては、樹脂に繊維状のガラスフィラーを添加して成形材料を調製し、この成形材料を使用した射出成形により高強度のフレーム21Aを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003‐227195号公報
【特許文献2】米国特許第6,218,727号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、成形材料を使用した射出成形によりフレーム21Aを製造する場合には、成形用金型のゲートから溶融状態で分流した各成形材料の先端部が温度の低下した状態となり、キャビティの合流部で冷えた成形材料同士が界面を形成して固まり、ウェルドライン13が生じるので、このウェルドライン13の生じた部分の強度が低下するおそれが少なくない(図9参照)。
【0009】
係るおそれを解消する手段としては、成形用金型に複数のゲートを設けるという方法が考えられるが、そうすると、合流部における成形材料の冷却が抑制され、界面の形成が緩和されるものの、複数の合流部を設けなければならず、強度低下部分が増大してしまうという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、成形材料を使用した射出成形により高強度等のフレームを製造する際、成形材料の合流部における強度低下を抑制することのできる成形用金型及び半導体ウェーハ用ダイシングフレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、樹脂に繊維状のフィラーを配合した成形材料により半導体ウェーハを収容するフレームを射出成形するものであって、
ゲートから供給された成形材料により中空のフレームを形成するキャビティと、このキャビティの複数の成形材料合流部にそれぞれ連通して設けられる成形材料貯留部とを含んでなることを特徴としている。
【0012】
また、キャビティの成形材料合流部と成形材料貯留部とを連通する連通部を備え、この連通部を、フレームの厚さ以下でかつ10mm以下の幅を有する形状に形成し、成形材料貯留部の容積値を、連通部の断面積に成形材料合流部におけるフレームの幅を乗算した値よりも大きくすることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2記載の成形用金型により成形されるフレームと、このフレームの被貼着面に貼り付けられ、収容された半導体ウェーハを粘着保持する可撓性のダイシング層とを含んでなることを特徴としている。
なお、フレームの成形材料合流部とその他の部分の曲げ破断強度の比を、0.7:1〜1.1:1の範囲とすることが好ましい。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2記載の成形用金型により成形されたフレームを含んでなることを特徴としても良い。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハは、口径300mmタイプが主ではあるが、特に限定されるものではなく、口径200mmタイプや口径450mmタイプ等でも良い。この半導体ウェーハには、SiウェーハやGaPウェーハの種類があるが、いずれでも良い。フレームの成形材料としては、ポリフェニレンスルフィドに、カーボンファイバー、及び炭酸カルシウムが混練された材料等でも良いし、ナイロン系の樹脂にカーボンファイバー、グラスファイバー、セラミック系ウィスカーが混練された材料等でも良い。
【0015】
成形材料合流部は、成形材料の流路の断面形状からシミュレーションにより設けることができるし、成形材料貯留部を省略した成形用金型でフレームを仮成形した後に設けることもできる。成形材料貯留部は、キャビティの内周部、外周部、内周部及び外周部のいずれにも形成することができる。さらに、可撓性のダイシング層は、半導体ウェーハを粘着保持する透明、不透明、半透明のフィルムやシート等からなるが、ポリオレフィン系フィルムの使用が好ましい。
【0016】
本発明によれば、成形時に成形用金型に成形材料が射出されると、この成形材料は、金型のゲートからキャビティに充填され、このキャビティにおける複数の成形材料合流部と複数の成形材料貯留部とにそれぞれ流入し、成形材料合流部で混合されてフレームの強度を増大させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形材料を使用した射出成形により高強度等のフレームを製造する際、成形材料の合流部における強度低下を抑制することができるという効果がある。また、フレームを射出成形により製造するので、生産性、寸法安定性、材料歩留まりを向上させることができる。
また、成形材料を、樹脂に繊維状のフィラーを配合して調製するので、フレームの曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度を向上させ、しかも、フレームの薄肉化を図ることができる。
【0018】
また、キャビティの成形材料合流部と成形材料貯留部とを連通する連通部を、フレームの厚さ以下でかつ10mm以下の幅を有する形状に形成すれば、フレームの成形に対する悪影響を排除することができる。さらに、成形材料貯留部の容積値を、連通部の断面積に成形材料合流部におけるフレームの幅を乗算した値よりも大きくすれば、成形材料による界面の形成を抑制することが可能になる。
【0019】
さらに、請求項1又は2記載の成形用金型により半導体ウェーハ用ダイシングフレームのフレームを成形すれば、金型の成形材料貯留部に成形材料が流入することにより、成形材料の合流部で繊維状のフィラーが混合されて強度を増大させるので、成形材料の合流部における強度低下の少ないフレームを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における成形用金型1は、図1ないし図5に示すように、ゲート7から溶融して供給された成形材料の充填により中空のフレーム21を形成するキャビティ8と、このキャビティ8における複数の成形材料合流部9にそれぞれ連通して設けられる複数の成形材料貯留部10とを備え、パターン描画された12インチの薄い半導体ウェーハWを隙間をおいて収容包囲する半導体ウェーハ用ダイシングフレーム20のフレーム21を射出成形するようにしている。
【0021】
成形用金型1は、図示しない射出ユニットから溶融した成形材料が充填される固定型2と、フレーム21の大部分を形成する可動型3とを備え、固定型2に可動型3がパーティングライン4を介して接離可能に対向する。この成形用金型1には、射出ユニットのノズルと直接接触するスプル5、このスプル5から流入した成形材料をキャビティ8に分岐させて導く複数のランナ6、及びキャビティ8の内周部に配設されてその入口として機能する複数のゲート7が配設される。
【0022】
成形材料は、樹脂に、繊維状のフィラーや不定形のフィラーが配合されることにより調製される。例えば流動性、寸法安定性、低磨耗性、精密成形に優れるポリフェニレンスルフィド(PPS)やナイロン系の樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂に、強度や剛性を確保するカーボンファイバー、炭酸カルシウム、及び補強効果や耐薬品性に優れるホウ酸アルミニウムウィスカーが混合混練されることにより調製される。この成形材料は、歪みに伴う変形を抑制防止するため、樹脂20〜80容量%、繊維状のフィラー及び不定形のフィラー80〜20容量%の範囲で配合され、これら繊維状のフィラーと不定形のフィラーとが9:1〜5:5の範囲で配合されることが好ましい。
【0023】
キャビティ8は、図1ないし図3に示すように、成形用金型1に中空に形成され、複数の成形材料合流部9が周方向に間隔をおいて形成されており、各成形材料合流部9の外側には、成形材料の流入する空間である成形材料貯留部10が細い連通部11を介して連設されるとともに、この複数の成形材料貯留部10が成形材料合流部9に対応する箇所にそれぞれ位置する。
【0024】
各成形材料貯留部10は、界面を完全に解消する観点から、容積値が連通部11の断面積に成形材料合流部9におけるフレーム21の幅を乗算した値よりも大きくなるよう形成される。
但し、容積値が大き過ぎると、成形材料の消費量が増大するので、上記容積値の1.5倍以下程度の容積値が好ましい。
【0025】
キャビティ8の成形材料合流部9と成形材料貯留部10とを連通する連通部11は、厚さ0.2mm以上、フレーム21の厚さ以下で面方向2mm以上、幅10mm以下の所定の形状、例えば四角形、多角形、円形、長円形等に形成される。これは、0.2mm以上とすれば、高剛性の成形材料を用いた成形が可能になるからである。
【0026】
また、フレーム21の厚さ以下とすれば、フレーム21の成形に悪影響を及ぼすおそれがないからである。また、面方向で2mm以上とすれば、射出条件のばらつきに伴い成形材料合流部9が位置ずれしても、合流界面を解消することができるからである。さらに、幅10mm以下とすれば、フレーム21の形状に関する悪影響を抑制することができるという理由に基づく。
【0027】
半導体ウェーハ用ダイシングフレーム20は、図4や図5に示すように、上記した成形用金型1により射出成形されたフレーム21と、このフレーム21の被貼着面である裏面に貼着されて収容包囲された半導体ウェーハWを着脱自在に粘着保持する可撓性のダイシング層30とを備えて構成される。
【0028】
フレーム21は、図4や図5に示すように、12インチの半導体ウェーハWよりも大きい厚さ2〜3mmの略リング形に射出成形され、内周面が傾斜形成あるいは断面略く字形に形成されており、外周面の前後左右がそれぞれ直線的に切り欠かれるとともに、外周面の前部には、位置決め用の一対のノッチ22が左右に並べて切り欠かれる。
【0029】
フレーム21の裏面の中空部周縁はダイシング層30用の被貼着領域とされ、このリング形の被貼着領域がランダムな凸凹に粗されてその複数の凸部が略スパイクを呈しており、各凸部がダイシング層30の表面周縁部に食い込むよう機能する。被貼着領域における径方向の向きの表面粗さはRa(JIS B0601−2001)0.1〜0.8μm、好ましくは0.3〜0.4μmの範囲とされるが、これは、0.1μm未満の場合には、凸部のスパイク効果に乏しく、逆に0.8μmを超える場合には、ダイシング層30が追従しなくなるからである。
【0030】
フレーム21の表面後部には、左右横方向に伸びる収納穴23が一体的に凹み成形され、この収納穴23内に、RFIDシステム24のRFタグ25が装着される。RFIDシステム24は、図4に示すように、電波により内部メモリがアクセスされ、フレーム21と共に移動するRFタグ25と、このRFタグ25との間で電波や電力を送受信するアンテナユニット26と、RFタグ25との交信を制御するリーダ/ライタ27と、このリーダ/ライタ27を制御するコンピュータ28とを備えて構成される。
【0031】
アンテナユニット26とリーダ/ライタ27とは、別々に構成されるが、必要に応じて一体化される。また、リーダ/ライタ27の制御に特に支障を来たさなければ、コンピュータ28の代わりに各種のコントローラが使用される。
【0032】
このようなフレーム21は、工業規格ASTM D790における曲げ弾性率が25〜50GPa、好ましくは25〜40GPaの範囲内とされ、かつASTM D790における曲げ強度が150〜600MPa、好ましくは150〜400MPaの範囲内とされる。これは、フレーム21の曲げ弾性率や曲げ強度が上記範囲から外れた場合には、フレーム21の強度が低下したり、フレーム21が容易に破損してしまうからである。
【0033】
フレーム21の成形材料合流部9とその他の通常部分の曲げ破断強度の比は、ダイシング層30を貼着した際の歪みや落下に伴う破損を防止する観点から0.7:1〜1.1:1の範囲とされる。
【0034】
ダイシング層30は、例えば粘着剤がダイDに付着するのを規制するエチレン酢酸ビニル(EVA)等からなるポリオレフィン系フィルムと、このポリオレフィン系フィルムの表面に塗布されて半導体ウェーハWを粘着する粘着剤とを備えた薄い平面円板形に形成され、フレーム21の被貼着領域に接着されてその中空部を閉塞するとともに、使用後にフレーム21から剥離され、フレーム21がリサイクルに供される。粘着剤は、UV光の照射により粘着性を喪失するUV系が好ましいが、アクリル系の再剥離タイプ等を特に排除するものではない。
【0035】
上記構成によれば、成形用金型1のキャビティ8に、各成形材料合流部9の外側に位置する成形材料貯留部10を連通部11を介して配設しているので、例え複数の成形材料合流部9を設けてもフレーム21に強度低下部分が増大するのを抑制防止することができる。
【0036】
すなわち、成形材料に繊維状のフィラーを配合すれば、高剛性のフレーム21を得ることができるが、成形時に繊維状のフィラーが成形材料合流部9で界面と平行方向に配向するので、成形材料合流部9の曲げ破断強度が他の部分と比較して著しく低下することとなる。具体的には、成形材料合流部9の曲げ破断強度は,他の部分と比較して1/2以下程度にまで低下する。
【0037】
しかしながら、成形材料合流部9の外側に、成形材料を混合させる成形材料貯留部10を対応させて区画形成すれば、成形材料貯留部10に成形材料が流入することにより、成形材料合流部9で繊維状のフィラーが混合されて強度を増大させるので、成形材料合流部9における曲げ破断強度の低下をきわめて有効に抑制防止することができる。
【0038】
また、金属の代わりにポリフェニレンスルフィド等の成形材料を使用してフレーム21を射出成形するので、突出した凸部の形成がきわめて容易になる他、生産性、寸法安定性、材料歩留まり、軽量化、薄肉化を図ることができ、これを通じて作業性や利便性を著しく向上させることができる。
【0039】
また、フレーム21の材料変更と共に、曲げ弾性率を25〜50GPaの範囲内とし、かつ曲げ強度を150〜600MPaの範囲内とすれば、例え成形材料に樹脂を使用しても、フレーム21の強度低下を招くことが全くなく、しかも、フレーム21を3mm以下と薄くして既存の機器や装置をそのまま利用することができる。
【0040】
また、UV系の粘着剤を備えた伸び率の小さいポリオレフィン系フィルムからなるダイシング層30を使用しても、ダイシング層30の周縁部に複数の凸部が突き刺さって十分なスパイク効果や粘着効果を発揮する。したがって、エキスパンド装置41上にダイシング用フレーム21が上方から大きな力で強く圧接されても、凸部のスパイク作用により、フレーム21からダイシング層30がずれたり、外れてしまうおそれをきわめて有効に排除することが可能になる。
【0041】
また、エキスパンド作業が終了し、ダイシング用フレーム21に対する圧接が解除されると、ダイシング層30の周縁部に対する凸部の接触領域が減少してスパイク効果や粘着効果を低減するので、粘着剤を残すことなくフレーム21からダイシング層30を剥離することが可能になる。また、EVA系のダイシング層30を使用するので、軟質塩化ビニル樹脂と異なり、フレーム21やダイDに粘着剤が付着するのを抑制したり、生産性や品質を著しく向上させることができ、しかも、その後の実装作業等の不具合をきわめて有効に抑制防止することが可能になる。
【0042】
また、フレーム21を金属製ではなく樹脂製とするので、RFIDシステム24のRFタグ25を使用しても、RFタグ25の通信特性にフレーム21が悪影響を及ぼすことがなく、無線通信に誤作動等の支障を来たすおそれをきわめて有効に排除することができる。また、フレーム21に、RFIDシステム24のRFタグ25を一体的に装着するので、情報システム24の簡素化を図ることができ、しかも、情報の問い合わせが不要なので、レスポンスが非常に早くなるとともに、情報を分散処理できるので、システム24の拡張や変更に柔軟に対応することができる。
【0043】
さらに、汚れやすい印刷物であるバーコード(最大情報量 数10ケタ)12と異なり、情報の遠隔読み取りや電力伝送が期待できる他、情報量の増大(最大情報量 数1000ケタ)、情報の書き換えの容易化、耐汚染性の向上が大いに期待できる。さらにまた、フレーム21が金属製の場合には、フレーム21にRFタグ25用の収納穴23を後から時間をかけて切削加工せざるを得ないが、フレーム21が樹脂製の場合には、フレーム21の成形時に収納穴23を簡単に一体形成することができるので、生産性の著しい向上が大いに期待できる。
【0044】
なお、上記実施形態ではフレーム21の表面後部に収納穴23を凹み成形したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、フレーム21の側部の少なくとも一部分に、収納穴23を成形しても良い。また、フレーム21の表裏面のいずれかに収納穴23を凹み成形することなく、RFタグ25を直接取り付けても良い。また、RFIDシステム24には、交信距離の短い電磁結合方式、電磁誘導方式、交信距離の長い電波方式等があるが、いずれでも良い。さらに、RFタグ25には、ラベル形、円筒形、カード形、箱形等があるが、いずれでも良い。
【実施例】
【0045】
以下、本発明に係る成形用金型及び半導体ウェーハ用ダイシングフレームの実施例を比較例と共に説明する。
先ず、キャビティの内周部に4個のゲートを備えた成形用金型を製作し、この成形用金型に表1に示す成形材料を射出して厚さ2.5mmのフレームを成形し、成形材料合流部の位置をフレームの外観から確認した。成形用金型は、フレームの外径寸法がSEMI規格G74−0699に準拠するよう製作した。このようにして製造したフレームを比較例1〜4とした。
【0046】
次いで、成形用金型の成形材料合流部に相当する箇所の外周部4箇所に、容量0.4cm3の成形材料貯留部を連通部を介しそれぞれ連設し、この成形用金型に表1に示す成形材料を射出してフレームを成形し、実施例5〜8のフレームを製造した。連通部は、厚さ方向1.8mm、幅方向7mmの長方形に形成した。
なお、連通部の断面積×フレームの幅は、計測したところ0.45cm3だった。
【0047】
さらに、成形材料合流部に相当する箇所の外周部4箇所に、容量0.5cm3の成形材料貯留部を連通部を介しそれぞれ再加工し、この成形用金型に表1に示す成形材料を射出してフレームを成形し、実施例1〜4のフレームを製造した。
【0048】
製造した実施例1〜8のフレームと比較例1〜4のフレームに関し、曲げ破断強度、強度比、落下試験、反りの有無等を確認して表2にまとめた。
落下試験は、1mの高さからフレームを落下させる試験と、1.5mの高さからフレームを落下させる試験とを行い、いずれの試験でもフレームが損傷しなかった場合には「◎」、高さ1.5mの試験ではフレームが損傷したが、高さ1mの試験では損傷しなかった場合には「○」、いずれの試験でもフレームが損傷した場合には「×」として表2にまとめた。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
実施例1の場合には、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分共に良好な強度を示し、落下試験でも破損せず、フレームに反りも確認しなかった。
実施例2の場合には、基本的には実施例1と同様に良好な結果を得たが、成形材料に不定形フィラーを配合しなかったので、フレームに僅かな反りが生じた。
【0052】
実施例3の場合には、成形材料に繊維状のフィラーを配合しなかったので、実施例1、2に比べて強度が低下したが、実用上フレームに問題ないのを確認した。
実施例4の場合には、成形材料の樹脂の剛性が実施例1、2に比べ若干劣るので、フレームに若干の反りが生じたが、実用上フレームに問題ないのを確認した。
【0053】
実施例5の場合、成形材料貯留部の容積が実施例1に比べ小さいので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が大きくなり、フレームに許容範囲の反りが若干生じた。
実施例6の場合、成形材料貯留部の容積が実施例2に比べ小さいので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が大きくなり、許容範囲の反りがフレームに若干生じた。
【0054】
実施例7の場合、成形材料貯留部の容積が実施例3に比べ小さいので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が大きくなり、許容範囲の反りがフレームに若干生じた。
実施例8の場合、成形材料貯留部の容積が実施例4に比べ小さいので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が大きくなり、許容範囲の反りがフレームに若干生じた。
【0055】
比較例1の場合には、成形材料貯留部を省略した関係上、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が実施例1に比べて非常に大きくなり、落下試験でフレームが破損した。また、許容範囲の上限いっぱいに反りがフレームに発生した。
比較例2の場合には、成形材料貯留部を省略した関係上、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が実施例2に比べて非常に大きくなり、落下試験でフレームが破損した。また、許容範囲を超えて反りがフレームに発生した。
【0056】
さらに、比較例3の場合には、成形材料貯留部を省略したので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が実施例3に比べて非常に大きくなり、落下試験でフレームが破損した。また、許容範囲を大きく超えて反りが発生した。
さらにまた、比較例4の場合には、成形材料貯留部を省略したので、フレームの成形材料合流部とその他の通常部分の強度差が実施例4に比べて非常に大きくなり、落下試験でフレームが破損した。また、許容範囲を大きく超えて反りが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る成形用金型の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る半導体ウェーハのダイシング用フレームの実施形態を示す全体斜視説明図である。
【図5】本発明に係る半導体ウェーハのダイシング用フレームの実施形態を示す平面説明図である。
【図6】従来における半導体ウェーハのダイシング用フレームのダイシング作業時の状態を示す斜視説明図である。
【図7】従来における半導体ウェーハのダイシング用フレームをエキスパンド装置にセットする状態を示す説明図である。
【図8】従来における半導体ウェーハのダイシング用フレームをエキスパンド装置にセットして圧接した状態を示す説明図である。
【図9】成形材料を使用した射出成形によりフレームを製造する場合の問題点を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 成形用金型
2 固定型
3 可動型
4 パーティングライン
5 スプル
6 ランナ
7 ゲート
8 キャビティ
9 成形材料合流部
10 成形材料貯留部
11 連通部
13 ウェルドライン
20 半導体ウェーハ用ダイシングフレーム
21 フレーム
30 ダイシング層
D ダイ
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂に繊維状のフィラーを配合した成形材料により半導体ウェーハを収容するフレームを射出成形する成形用金型であって、
ゲートから供給された成形材料により中空のフレームを形成するキャビティと、このキャビティの複数の成形材料合流部にそれぞれ連通して設けられる成形材料貯留部とを含んでなることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
キャビティの成形材料合流部と成形材料貯留部とを連通する連通部を備え、この連通部を、フレームの厚さ以下でかつ10mm以下の幅を有する形状に形成し、成形材料貯留部の容積値を、連通部の断面積に成形材料合流部におけるフレームの幅を乗算した値よりも大きくした請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成形用金型により成形されるフレームと、このフレームの被貼着面に貼り付けられ、収容された半導体ウェーハを粘着保持する可撓性のダイシング層とを含んでなることを特徴とする半導体ウェーハ用ダイシングフレーム。
【請求項4】
フレームの成形材料合流部とその他の部分の曲げ破断強度の比を、0.7:1〜1.1:1の範囲とした請求項3記載の半導体ウェーハ用ダイシングフレーム。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−62333(P2007−62333A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255140(P2005−255140)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】