説明

成形食品用焼成機

【課題】下型生地供給口を上型生地供給口から型合せ装置側に大きく離間させた焼成ラインによって、澱粉量を多くした液状生地を焼成するような場合でも、焼成時間や温度を簡単に適応させることができ品質よく製造することができる成形食品用焼成機を提供する。
【解決手段】加熱部34を有する焼成ライン3に、上型11と下型12とを開き姿勢で複数列設される焼型2に、上型生地供給口と下型生地供給口とからそれぞれ上型11と下型12に生地を充填し、焼型2を搬送しながら加熱する中途で型合せ装置31により、上型11と下型12とを上下方向に重ね合わせて生地を焼成する焼成機1であって、前記上型11に生地を供給する上型生地供給口を焼成ライン3の搬送上流側に設置すると共に、下型12に生地を供給する下型生地供給口を、上記上型生地供給口の下流側である型合せ装置31側に離間させて設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鯛焼き等のように流動性のある生地を上下の型に流し込んで焼成・成形を行う成形食品を焼成する成形食品用焼成機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生地を焼成することにより鯛焼き等の菓子を製造する際に、小麦粉や米粉の他に主として馬鈴薯澱粉或いは加工澱粉等の澱粉に、油脂類等を含む原料と水を混合することにより液状生地となし、この液状生地を焼型に充填して焼成する製造方法は既に公知である(例えば特許文献1。)。
また一般に、鯛焼き等の焼類菓子類(以下単に成形食品と言う)を量産製造するとき、上型と下型とを開閉可能に重ね合わせる焼型を用い、焼型に生地及び餡等の中味材を自動的に供給して焼成作業を行なう焼成機も知られている。
【0003】
上記のような焼成機は、加熱部を有する焼成ラインに上型と下型を開き姿勢にした状態で焼型を複数列設し、生地充填部の上型生地供給口と下型生地供給口とから上型と下型に生地を充填し、開き姿勢のまま焼型を搬送しながら加熱する中途で、焼成ラインの中途に設置した型合せ装置により上型と下型を重ね合わせて焼成することができる。また焼成機は上型の収容部に充填した生地内に餡等の中味材を供給する中味材充填部の中味材供給口を上型生地供給口の近傍に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−321182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の焼成機は、もっぱら小麦粉を主体として澱粉や砂糖及び膨張剤等を配合した生地を焼成するものであり、上型生地供給口から生地を上型収容部に供給し、この収容部に充填される生地内に中味材供給口から餡を供給すると共に、下型生地供給口から生地を下型収容部に供給して、上型と下型とを型合せ装置に至るまで比較的短時間にやや高温で加熱し、両者の生地表面に適当な焦げ面を生成させながら焼成することにより焼き菓子類を製造するものである。
【0006】
然しながら、上記のような焼成機によって特許文献1で示されるような液状生地を焼成したい場合に、液状生地は上型と下型に略同時に充填され、且つその後に短い焼成ラインによって短時間で高温加熱が行なわれるため、液状生地は短時間の高温加熱による焼ムラや焦げの点在発生を伴う欠点がある。また上型の収容部中央における生地の固化が不十分になり易く、生地が餡を十分に保持しないまま型合せ装置による上型の反転回動がなされるため、型合せ時に生地のはみ出しや餡を崩し易い等の問題がある。
本発明は、液状生地を焼成して鯛焼き製品のような菓子類を製造する場合に、焦げのない柔らかな表皮を形成し且つもちもちとした食感を有する餅様の製品を品質よく製造することができる焼成機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明による焼成機は、第1に、加熱部34を有する焼成ライン3に、上型11と下型12とを開き姿勢で複数列設される焼型2に、上型生地供給口47と下型生地供給口47aとからそれぞれ上型11と下型12に生地を充填し、焼型2を搬送しながら加熱する中途で型合せ装置31により、上型11と下型12とを上下方向に重ね合わせて生地を焼成する焼成機1において、前記上型11に生地を供給する上型生地供給口47を焼成ライン3の搬送上流側に設置すると共に、下型12に生地を供給する下型生地供給口47aを、上記上型生地供給口47の下流側である型合せ装置31側に離間させて設置したことを特徴としている。
【0008】
第2に、上型生地供給口47と下型生地供給口47aの間で、上型11に生地とは別に中味材を供給する中味材供給口57を、下型生地供給口47aから離間させ且つ上型生地供給口47に近接させて設置したことを特徴としている。
【0009】
第3に、上型生地供給口47と下型生地供給口47aとを、上型11の生地収容部9と下型12の生地収容部9aとにそれぞれ複数個設けると共に、該複数の上型生地供給口47と下型生地供給口47aの少なくとも1個を他方の生地収容部に互いに付け替え交換可能に構成したことを特徴としている。
【0010】
第4に、下型生地供給口47aの生地供給位置を焼成ライン3上の上流側又は下流側に変更可能に設けたことを特徴としている。
【0011】
第5に、中味材を収容する上型11の収容部9の深さを、下型12の収容部9aの深さより深く形成したことを特徴としている。
【0012】
第6に、上型生地供給口47の上流側近傍に焼型2に向けてエアーを噴射する清掃部39を設けたことを特徴としている。
【0013】
第7に、生地を、澱粉と小麦粉を約7対2.5とし卵白フリーズドライ粉,調味料,膨張乳化剤等を配合してなる液状生地としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記構成からなる焼成機は次のような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、搬送始端部側に設置される上型に生地を供給する生地充填部の上型生地供給口に対し、下型に生地を供給する下型生地供給口を型合せ装置側に離間させて設置することにより、上型に充填した生地を型合せ装置に搬送するまでに十分な時間をかけて焼成すると共に、下型に充填した生地を型合せ装置に搬送するまで焼成し、型合せ装置による型合せ位置において、固化が促進された状態の表焼生地を半生状態の裏焼生地に対し互いの型崩れ等を防止しつつ両生地をスムーズに接合することができる。また型合せしたのち下型側を加熱することができるので、下型の生地と上型の生地の固化と両生地の均質な焼成を同時に完了させることができる。
また澱粉量を多くした液状生地を焼成する場合に、上型の生地と下型の生地の状態に対し、下型生地供給口を上型生地供給口から型合せ装置側に大きく離間させた位置に設置した長い焼成ラインによって、焼成時間や温度を簡単に適応させることができると共に、餅様の製品でも焦げを防止し品質よく製造することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、餡等の中味材を供給する味充填部の中味材供給口を、上型生地供給口と下型生地供給口の間で上型生地供給口に近接させて設置することにより、上型の生地と同じように型合せ装置に至る間に長い時間をかけて中味材を焦げを防止しながら十分に焼成することができる。また型合せ装置により上型を下型に合致させるとき、下向きになる餡を生地に保持した状態で、下型の半焼き状の生地内にスムーズに入り込ませ、型合せ時に餡の形状を崩す等の変形を防止した製品を製造することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、それぞれ複数口とした上型生地供給口と下型生地供給口との少なくとも1個を、他方側の生地収容部に着脱交換可能に設けることにより、上型生地供給口と下型生地供給口とを必要とする数だけ相互に付け替えできるので、各生地を焼型の各収容部に能率よく供給充填することができる。また異なる色の素材の生地を同一の収容部に対し供給して異なる模様の製品を簡単に製造することもできる。
【0017】
請求項4の発明によれば、下型生地供給口の生地供給位置を変更可能に設けることにより、形状及び大きさが異なる焼型の収容部に対応し生地を適正に充填することができる。
また下型生地供給口の生地供給位置を焼成ライン方向に調整することにより、下型生地の焼成加減を簡単に調節変更することができるので、多様な生地を利用した製品の製造を簡単に行なうことができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、上型の収容部の深さを下型の収容部の深さより深く形成することにより、上型内に生地と中味材を供給することができると共に、上型内の生地と下型内の生地との厚さを略等しくすることができる。また上型を型合せ装置に至るまでに上型生地供給口と下型生地供給口との間で加熱できるため、上型生地の固化を促進させて型合せ位置における下型との焼成具合を一致させ易くすることができ、上型生地と下型生地との接合を適正に行うことができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、澱粉と小麦粉を約7対2.5とし、卵白フリーズドライ粉調味料膨張乳化剤等を配合した液状生地を、下型生地供給口を上型生地供給口から型合せ装置側に大きく離間させて設置した長い焼成ラインによって、緩やかに時間をかけ過熱を防止して焼成するため、焦げを生じさせることなく餅様の製品を品質よく簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用された焼成機の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】上型生地供給口及び下型生地供給口等の設置構造を示す斜視図である。
【図5】焼成ラインのライン作業を模式的に直線で示す平面図である。
【図6】焼型の平面図である。
【図7】図6の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3において符号1は鯛焼きや饅頭,ケーキ等の菓子類その他焼成・成形品を焼成する成形食品用焼成機を示す。この焼成機1は複数の焼型2を循環搬送する焼成ライン3を備えた焼成機本体部4に、製品生地を焼型2に充填する生地充填部として、搬送方向上手側から第1生地充填部6と第2生地充填部7とを設置し、且つ両者の間に餡や惣菜加工具材等を中味材として供給充填する中味材充填部8を設置している。
【0022】
上記焼型2は図6,図7で示すように、生地を収容して魚(鯛)形状の菓子製品の半身づつを形成する収容部9と収容部9aとを有する上型11と下型12を蝶番部13で連結してなり、該蝶番部13の軸は加熱孔を有して方形状フレームをなす焼型ベース14の中央部に取付けている。図示例の焼型2は上型11に2つの収容部9,9を形成しており、且つ下型12に該収容部9,9と対をなす対称形状の収容部9a,9aを形成している。
そして、上型11側の収容部9の深さは下型12側の収容部9aよりも深く形成し、収容部9内に生地と中味材とを共に収容するようにしている。これにより上型11内の生地と下型12内の生地の厚さが略等しくなるようにしている。また上型11と下型12の外側辺には焼型開閉用の突片16,17を突設している。
【0023】
上記焼型2は複数個(図5では31個にしている)のものを、蝶番部13の軸方向を搬送方向に沿わせ、且つ上型11側を前記第1生地充填部6,中味材充填部8,第2生地充填部7側に位置させた状態で、焼成機本体部4の上部側に構成される焼成ライン3上に着脱可能に隣接させて載置している。
これにより焼成ライン3の搬送経路中において焼型2は型開き姿勢で、上型11の収容部9,9に生地が供給されたのち中味材としての餡が供給され、次いで下型12の収容部9a,9aに生地が供給される。こののち所定の焼成時間を経て上型11が蝶番部13の軸を支点に回動され下型12に重ね合わされ型閉じをすることにより、両者の各収容部9,9aは合致し鯛焼き製品を焼成加工することができ、焼成完了後に下型12を開動して鯛焼き製品の取り出しを行うことができる。
【0024】
焼成機本体部4は図1で示すように、焼成ライン3を平面視長方形状の本体フレーム19の上面部に水平状に設置しており、図示例の焼成ライン3は直線状の往路21と復路22とを略等しい長さで平行とし、両者の両端部に往路21から復路22に焼型2を搬送する型継送往路23と、復路22から往路21に焼型2を搬送する型継送復路24とを形成している。
上記往路21と復路22は在来のものと同様な構造により、焼型2の両側を支持して搬送方向に案内する支持ガイド3aと、焼型2の上型11と下型12を所定焼成範囲毎に適性に加熱することが可能な加熱部を備えている。
【0025】
また型継送往路23は、往路21の終端で一個分の焼型2を前送りする縦送り装置26と、復路22の始端で一個分の焼型2を左送りする横送り装置27を設けている。また型継送復路24には復路22の終端で一個分の焼型2を後送りする縦送り装置28と、往路21の始端で一個分の焼型2を右送りする横送り装置29を設けている。
【0026】
これにより図1で示すように、往路21に相隣接して載置される各焼型2は、型継送復路24の横送り装置29が作動する毎に1ピッチ横送りされ、往路21の終端に至った焼型2は前送り装置26によって復路22の始端部に継送される。
次いで、復路22において上記焼型2が横送り装置27の作動により1ピッチ横送りされると、復路22に列設された各焼型2を1ピッチ横送りし型継送復路24に至る焼型2を縦送り装置28が後送りし往路21の始端部に送り、各焼型2を所定の作動タイミングを以って順次循環搬送することができる。
【0027】
そして、焼成ライン3の復路22側には図1に点線で示すように、上型11を反転させ下型12に重ね合わせて閉じる型合せ装置31と、閉じた上型11を開動し元の状態に開く型開き装置32とを所定の間隔を有し設けている。この型合せ装置31と型開き装置32は、復路22の下方に設置されて進退往復動する各作動部材33(図7)が、焼型2が所定位置に搬送されてきたとき、該焼型2に突設される前記突片16と突片17とを下方から上方に向けて各別に押動することにより、上型11を回動させて閉じると共に、閉じられた焼型2を開くことができる。
【0028】
また焼成ライン3は一連の循環搬送経路中に例えば図1に太点線で示すように、加熱部34を焼成ライン3の所定位置に分割し配置することにより、下型12と上型11を各所定位置毎に設定される加熱温度によって、エネルギーを無駄にすることなく効率よく加熱する。即ち、実施形態の分割焼成ラインは、第1生地充填部6と第2生地充填部7との間、第2生地充填部7と型合せ装置31との間、型合せ装置31と型開き装置32との間、及び型開き装置32の下流側にそれぞれ配置している。
【0029】
また焼成ライン3の加熱部34を燃焼ガス加熱方式とする場合には、図7で示すようにガス管36を移動する焼型2の下方に近接させ、上型11と下型12を同時に加熱したり、いずれか一方の側のみを加熱することができる。また加熱箇所及び加熱範囲並びに加熱温度の調節をすることができる。上記各加熱部34にガスを供給するガス供給部37は、焼成機本体部4の右側スペースに纏めて設けている。尚、型合せ装置31と型開き装置32の間では、下型12の搬送経路下部にのみガス管36を配置している。
【0030】
また焼成ライン3には復路22の終端側の所定範囲において、開かれた状態の焼型2から製品の取り出し作業を行なう取出し作業部38が設けられている。また往路21は搬送始端側の所定範囲において、製品が取り出されて空になった焼型2の掃除をする清掃部39を設けている。この清掃部39は、エアーを噴出する複数のエアーノズル41を第1生地充填部6の近傍に設けており、位置決め調整可能なノズル先端を焼型2に近接させた状態で支持している。これによりエアーを第1生地充填部6側から焼型2に吹き付けて、ゴミ類を往路21の外側に向けて排出する。
【0031】
また上記清掃部39は、焼成機本体部4の中央フレーム4aに仕切り壁42を立設し、往路21と復路22とを区画している。
上記のように構成される清掃部39は、焼型2に残留した製品の屑片や外部から飛散侵入した塵埃等のゴミ類を、生地充填作業の直前において吹き飛ばして除去するので、コンタミ防止した衛生的な製品製造をすることができ、且つ焼型2の清掃作業を省力化することができる等の特徴がある。
【0032】
次に図1,図3,図4を参照し、第1生地充填部6と第2生地充填部7と中味材充填部8等の構成及び使用態様について説明する。この実施形態では第1生地充填部6を上型11に生地を充填する上型生地充填部とし、第2生地充填部7を下型12に生地を充填する下型生地充填部となしている。そして、それぞれの生地タンク43,43aの下部に、公知の構成によって充填装置46,46aをそれぞれ着脱可能に備え、タンク内の生地を供給管44から焼型2に向け所定量供給し各収容部9,9aに充填するようにしている。
【0033】
上記各充填装置46,46aは、それぞれ充填装置本体に4本の供給管44の基部を着脱可能に接続しており、該供給管44の先端部に金属製のパイプからなる供給管口を設けている。即ち、充填装置46は上型生地を供給する4個の上型生地供給口47を備え、充填装置46aは下型生地を供給する4個の下型生地供給口47aを備えている。
そして、各上型生地供給口47と各下型生地供給口47aは、上型生地と下型生地との各生地供給位置に設置される供給口設置部48,48aとに、それぞれ着脱自在に取り付け支持している。
【0034】
図4で示すように上記供給口設置部48,48aは、先端に上型生地供給口47と下型生地供給口47aを着脱可能に取付ける二股状の差込み部49を有する取付部材51を、焼成機本体部4に支持部材52を介して高さ及び向きを変更可能に構成している。これにより各供給管口は、形状や大きさの異なる焼型2を使用する場合でも、その収容部9,9aに対し生地供給位置を精度よく簡単に位置決めすることができる。また各上型生地供給口47と下型生地供給口47aとは、取付け互換性を有しているため簡単且つ廉価な取付け構造にすることができる。
【0035】
図示例において上型生地充填部6の供給口設置部48は、焼成機本体部4の外側フレーム4bに、下型生地充填部7の供給口設置部48aは、焼成機本体部4の中央フレーム4aに設置しており、且つ各供給口設置部48,48aは支持部材52の取付け位置をフレーム方向に沿って移動調節可能に設けている。
これにより上型生地充填部6は、各2本づつの上型生地供給口47を上型11の左右に形成される収容部9,9の上部に近接させて臨ませることができ、所定量の生地を各収容部9,9内の適性位置で均質且つ速やかに供給して充填することができる。
【0036】
また同様に下型生地充填部7は、供給口設置部48aを介し各2本づつの下型生地供給口47aを、それぞれ下型12の左右に形成される収容部9a,9aの適性位置に臨ませて、生地を均質且つ速やかに充填することができる。
また上型生地充填部6と下型生地充填部7がそれぞれ備える上型生地供給口47と下型生地供給口47aは、各供給口設置部48,48aに対し取付け互換性を有しているので、上型生地充填部6と下型生地充填部7は、それぞれの供給口設置部48と供給口設置部48aに対して、必要とする数の上型生地供給口47と下型生地供給口47aとを相互に付け替えたクロス状態で生地を供給することができる。
【0037】
即ち、上型生地充填部6と下型生地充填部7とに異なる種類の生地を収容して、収容部9,9aに複数種の生地を充填した製品を作りたい場合に、上型生地供給口47と下型生地供給口47aとを必要とする数だけ相互に付け替えることにより、各生地を収容部9,9aに同時に供給し能率よく充填することができる。この場合には生地タンク43,43aに、生地を種別毎に分けて収容する。
【0038】
次に図1,図3を参照し中味材充填部(餡充填部)8について説明する。この中味材充填部8は中味材タンク53の下部に、焼成ライン3によって所定位置に搬送された焼型2に、タンク内の中味材(餡)を所定量づつ供給する中味材充填装置56を着脱可能に備えている。中味材充填装置56は、餡を収容部9,9の製品形状に適応した形状及び大きさに形成しながら各別に供給する中味材供給口57を左右に併設している。この左右の中味材供給口57は餡を適宜な形状及び形態で供給する別型式の供給口と交換することができる。
【0039】
尚、実施形態のような鯛焼き製品を後述するように製造する場合には、25ミリ程度の方形状断面サイズで所定長さに形成される棒状の餡を、収容部9,9内に予め充填された生地の中央部に上方から供給することが望ましい。
また上記焼成ライン3の焼型搬送及び生地や餡の充填並びに型の開閉等を行う各作業部の連携作動は、焼成機本体部4に設置される操作盤59の操作により、制御装置を介して自動及び手動操作可能に行うことができる。
【0040】
そして、実施形態における焼成機1は、焼成ライン3の搬送始端部側に設置する上型生地供給口47に対し、下型生地供給口47aを該上型生地供給口47から型合せ装置31側に大きく離間させて設置し、上型11に充填した生地を型合せ装置31に搬送するまで時間をかけて一次表焼成すると共に、下型12に充填した生地を型合せ装置31に搬送するまで一次裏焼成をするようにしている。
また上型生地供給口47と下型生地供給口47aの間で、上型11に中味材を供給する中味材充填部8の中味材供給口57を、下型生地供給口47aから離間させ且つ上型生地供給口47に近接させて設置している。
【0041】
これにより型合せ装置31による型合せ位置において、上型11内の生地は一次表焼成により固化が促進された状態になり、また餡等の中味材を当該生地中に充填する場合には、上型生地供給口47に近接した位置で供給される中味材の焼成及び生地の保持を十分にすることができるため、型合せ装置31において上型11を反転させる場合に、生地及び中味材の型崩れや脱型を生じさせないので、下型12に対し上型11を反転させて行なう型合わせを、反転速度を向上させ且つスムーズに能率よく行なうことを可能にする。
【0042】
下型12は生地を、上型生地供給口47から焼成ライン3の搬送方向下流側に離間させ、型合せ装置31に近接させて設けた下型生地供給口47aから供給し前記一次裏焼成を行なうので、収容部9aの中央部に半生状の生地がプールされた状態の生焼部分を保持した焼き状態(生焼状態)にすることができる。これにより収容部9a内の生地は反転型合わせされる収容部9内の固化が促進された生地とよく馴染むことができ、両者の生地接合を促進し製品の一体化を高品質に行うことができる。
【0043】
また上記型合せ時に収容部9側の中味材は、収容部9aの中央部に形成される半生状の生焼生地内に大きな抵抗を伴うことなく突入するので、中味材の型崩れや気泡の発生を抑制することができると共に、半生生地との密着性を高めた接合が促進されて食感をよくすることができる。
焼成機1は型合せ装置31により型合せしたのちは下型12側から加熱するので、下型生地の固化と上型生地の固化とを同時的に完了させることができ、両生地の接合面の融合焼成と生地の均質な焼成を自動的に品質よく行うことができる。尚、焼成は生地が液状生地を用いる場合は、液状生地が餅様の食感等の物性を達成するまで、且つその表皮が焦げずにあまり硬くならないような温度と時間等の条件を設定して焼くことが望ましい。
【0044】
次に、上記焼成機1の製品製造作業について図5を参照し説明する。尚、同図は焼成ライン3の全体を直線ラインとして模式的に表している。また焼成機1で焼成加工する製品は、もちもち感を有する餅用の鯛焼き製品を生産する実施形態を示し、このための生地は例えば澱粉と小麦粉を7対2.5程度としその他に卵白フリーズドライ粉,調味料,膨張乳化剤等を混煉りし液状生地に生成している。また餡は一般的な鯛焼き用餡及びその他必要により選択される例えば惣菜用餡等を用いることができる。
【0045】
先ず焼成機1は往路21と復路22のライン全長に所定数の焼型2が隣接状態で載置され、加熱部34がONされた加熱状態において運転スタートされる。これにより上型生地充填部6が、生地をそれぞれ2つの上型生地供給口47から上型11の収容部9,9内に同時に供給充填する。次いで生地充填終了に伴い各送り装置29,26,27,28が所定の間歇作動をすることにより、各焼型2は1ピッチづつ搬送移動し上型生地が充填され中味材充填部8に至った収容部9,9に、中味材充填部8による餡の供給充填が行なわれる。
こののち当該焼型2は下型生地充填部7の供給口設置部48に至ると、生地を2つづつの下型生地供給口47aから下型12の収容部9a,9a内にそれぞれ供給充填される。
【0046】
このような往路21における作業において、上型11と下型12は下型生地充填部7に至る間の加熱部34により加熱され、上型11に充填された生地は収容部9と接触する面側から徐々に内部に向けて固化する。また下型12はこの間必要により余熱されながら下型生地充填部7に至り生地が充填される。こののち焼型2は加熱部34による加熱が継続されて型継送往路23に至り、縦送り装置26によって復路22に送られ横送り装置27により1ピッチづつ搬送されながら以下のような焼成が行われる。
尚、上記焼型2に後続する各焼型2は、1ピッチ送りに伴い順次前記したと同様に生地及び餡の充填作業と以下の焼成作業が自動的に行なわれる。
【0047】
復路22では搬送初期の数ピッチ分に相当する複数の焼型2の上型11と下型12を同時加熱し、両者内の生地が所定の状態に焼成された時点で、型合せ装置31により上型11を反転させて下型12に型合わせする。次いで焼型2は型合わせされた下型12の裏焼焼成を略6ピッチ分の焼型2に行なったのち、型開き装置32によって上型11を戻し反転させて下型12の片面焼成と上型11の予備加熱を数ピッチ分行なう。
【0048】
そして、焼型2は取出し作業部38に至ると、下型12から製品を脱型して取り出され空になった焼型2の掃除や油ひき等の再焼成準備作業が行なわれる。次いで焼型2は縦送り装置28及び横送り装置29の作動により、往路21の始端部に継送搬送されて一連の製品製造サイクルを完了することができる。また往路21に継送された焼型2は清掃部39によるエアー清掃を受け、再び生地及び餡の充填作業と焼成作業が繰り返される。
【0049】
即ち、実施形態の焼成機1は図5に示すように、焼成ライン3の搬送始端部側に設置された上型生地供給口47に対し下型12に生地を供給する下型生地供給口47aを型合せ装置31側に、8ピッチ分に相当する8個程度の焼型2を列設可能な距離を有して離間させた状態で、上型11と下型12との生地充填位置を異ならせている。これにより第1加熱ラインとして形成される上型生地供給口47と下型生地供給口47aの間において、複数(8個程度)の焼型2を緩やかに時間をかけて加熱することが可能となり、また第2加熱ラインとして形成される下型12と型合せ装置31との間において、焼型2を複数(図示例では8個程度)列設可能な距離を有してさらに時間をかけて緩やかに加熱することができる。
【0050】
従って、餅様の鯛焼き製品加工用の液状生地を焼成するような場合に、上型11内の液状生地は第1加熱ラインにおいて緩やかに加熱するので、型に接する製品表面の初期過熱を抑制しつつ内部を温める。また下型12は下型生地供給口47aに至る間に所定温度に余熱し充填される液状生地の焼き始めを良好にする。
そして、第2加熱ラインでは型合せ装置31に至る間に、上型11内の生地を収容部9の内面と接触する表皮を焦がすことなく内部を略固まらせた状態で、餡を生地内にしっかりと保持した一次表焼成を行うことができる。
【0051】
また下型12内の液状生地は表皮に焦げを生じることなく内部に向けて徐々に固まるように焼成され、型合せ装置31に至る位置では、収容部9a中央で餡が突入し接合する位置において液状生地は半生状にプールされる状態に一次裏焼成することができる。
これにより型合せ位置において、型合せ装置31の作動により上型11が蝶番部13を支点に上向き回動から下向きに回動し下型12に合致するとき、下向きになる餡は生地面から5ミリ程度突出した状態で、下型12の前記半生状の液状生地内に大きな突入抵抗を伴うことなくスムーズに入り込むことができる。従って、型合せ時に液状生地を周囲に飛び散らすことなく且つ餡の形状を崩す等の変形を防止し、上型11と下型12による製品形成を綺麗にして品質を高めることができる。
【0052】
こののち第3加熱ラインとして形成される、型合せ装置31と型開き装置32乃至はその下流側の間において、複数(図示例では6個程度)の焼型2は下型12側が時間をかけて緩やかに加熱されるため、下型12を介し前記中央の半生液状生地部や突出した餡部並びに生地全体の仕上げ焼成を均質に行なうことができる。
次いで焼成ライン3の終端側に至り型開き装置32によって上型11が開動すると、焼成された製品は下型12に残り、作業者は浅い収容部9aから製品を簡単に取り出すことができる。以上のようにして製造される製品は、焦げのない柔らかな表皮で餅様の物性を有し、真っ白な外観ともちもちとした食感をもつヘルシー嗜好に勝れた新規的な鯛焼き製品にすることができる。従って、手焼による餅様鯛焼き製品のものと同等又は以上の勝れた品質の製品を能率よく量産することができる等の特徴がある。
【0053】
次に本発明に関わる焼成機1による製品加工の別態様例として、鯛焼き製品の頭部を赤等の色で着色すると共に、頭部以下(胴部と言う)の部分を液状生地のままの白色にする場合について説明する。この場合には上型生地充填部6の生地タンク43に前記実施形態のものと同様な白色の液状生地を入れ、且つ下型生地充填部7の生地タンク43aに液状生地を適宜な着色手段により赤色にした着色液状生地を収容することが望ましい。
そして、複数口(実施形態では4個)にした上型生地供給口47・・と下型生地供給口47a・・は、互換性を有して任意に入れ替え可能に設けているため、次のように使用することが望ましい。
【0054】
即ち、上型生地充填部6の供給口設置部48は、胴部に液状生地を充填する2個の上型生地供給口47をそのまま残し、他の2個の上型生地供給口47を下型生地供給口47aの供給口設置部48aに付け替えて、収容部9a,9aの胴部に対し液状生地を充填する。
また下型生地充填部7の供給口設置部48aは、収容部9a,9aの頭部に対し液状生地を充填する2個の下型生地供給口47aをそのまま残し、他の2個の下型生地供給口47aを上型生地供給口47の供給口設置部48に付け替えて、収容部9,9の頭部に対し液状生地を充填する。
【0055】
これにより上型11の収容部9,9と下型12の収容部9a,9aには、頭部に着色液状生地が胴部に白色液状生地がそれぞれ所定の割合で供給されるため、製品は頭部全体を赤色となし且つ胴部を白色にした複数色によって一体的に形成される。
従って、在来の鯛焼きとは異なる紅白模様の珍しい意匠を簡単に創出すると共に、縁起のよい慶事用の贈り物としても好適化することが可能となり多くの人に喜ばれる鯛焼き製品を提供することができる。
また上型生地供給口47と下型生地供給口47aとは、それぞれ複数口となし筒口部を互いに入れ替えて設ける構成にしたことにより、部品の共用化が図れると共にその取付け作業も簡単に行うことができる。
【0056】
尚、図示例では上型生地充填部6と下型生地充填部7との2台の装置により、1種の生地を収容部9,9aに供給するようにしたが、1台の生地充填部によっても同様に供給することができる。この場合には1台の生地充填部は生地を収容した生地タンク43の充填装置46に対し、必要数の上型生地供給口47と下型生地供給口47aとを設ける構成にすることができる。
また焼成ライン3における焼型2の搬送手段は図示例の方式に限定することなく、例えば本体フレーム19に張設される無端コンベア(チェン)に対し、複数の焼型2を列設した構成にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 焼成機
2 焼型
3 焼成ライン
6 上型生地充填部(第1生地充填部)
7 下型生地充填部(第2生地充填部)
8 中味材充填部
9,9a 収容部
11 上型
12 下型
13 蝶番部
19 本体フレーム
21 往路
22 復路
31 型合せ装置
32 型開き装置
34 加熱部
39 清掃部
47 上型生地供給口
47a 下型生地供給口
48,48a 供給口設置部
51,51a 取付部材
57 中味材供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部(34)を有する焼成ライン(3)に、上型(11)と下型(12)とを開き姿勢で複数列設される焼型(2)に、上型生地供給口(47)と下型生地供給口(47a)とからそれぞれ上型(11)と下型(12)に生地を充填し、焼型(2)を搬送しながら加熱する中途で型合せ装置(31)により、上型(11)と下型(12)とを上下方向に重ね合わせて生地を焼成する焼成機(1)において、前記上型(11)に生地を供給する上型生地供給口(47)を焼成ライン(3)の搬送上流側に設置すると共に、下型(12)に生地を供給する下型生地供給口(47a)を、上記上型生地供給口(47)の下流側である型合せ装置(31)側に離間させて設置した成形食品用焼成機。
【請求項2】
上型生地供給口(47)と下型生地供給口(47a)の間で、上型(11)に生地とは別に中味材を供給する中味材供給口(57)を、下型生地供給口(47a)から離間させ且つ上型生地供給口(47)に近接させて設置した請求項1の成形食品用焼成機。
【請求項3】
上型生地供給口(47)と下型生地供給口(47a)とを、上型(11)の生地収容部(9)と下型(12)の生地収容部(9a)とにそれぞれ複数個設けると共に、該複数の上型生地供給口(47)と下型生地供給口(47a)の少なくとも1個を他方の生地収容部に互いに付け替え交換可能に構成した請求項1又は2の成形食品用焼成機。
【請求項4】
下型生地供給口(47a)の生地供給位置を焼成ライン(3)上の上流側又は下流側に変更可能に設けた請求項1又は2又は3の成形食品用焼成機。
【請求項5】
中味材を収容する上型(11)の収容部(9)の深さを、下型(12)の収容部(9a)の深さより深く形成した請求項1又は2又は3又は4の成形食品用焼成機。
【請求項6】
上型生地供給口(47)の上流側近傍に焼型(2)に向けてエアーを噴射する清掃部(39)を設けた請求項1又は2又は3又は4又は5の成形食品用焼成機。
【請求項7】
生地を、澱粉と小麦粉を約7対2.5とし卵白フリーズドライ粉,調味料,膨張乳化剤等を配合してなる液状生地とした請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の成形食品用焼成機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−279287(P2010−279287A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134711(P2009−134711)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(509076557)有限会社はら屋 (1)
【Fターム(参考)】