説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】本発明は、前記真空を破壊し前記のノズル及び周辺のクリーニング頻度を少なくし、稼働率の高いまたは均一な成膜ができる成膜装置及び成膜方法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、蒸発源の内部に有する蒸発材料を蒸発(昇華)させ、前記蒸発源の複数のノズルから噴出させて基板に蒸着する前記蒸発源を移動させる蒸発源移動手段を具備する真空蒸着チャンバを有する成膜装置において、前記真空蒸着チャンバは、前記ノズルまたはノズル付近に析出した析出蒸発材料を除去するクリーニング部を具備するノズルクリーニング手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に係わり、特に稼働率の高い成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスなどを製造する有力な方法として真空蒸着法がある。真空蒸着工程においては坩堝に入った蒸着材料を加熱し蒸発(昇華)させ、ノズルから噴出した蒸着材料を有機ELデバイスの表示基板などに蒸着させる。このような蒸着工程では、安定して蒸発(昇華)を得るために、例えば前記表示基板に蒸着しない待ち時間のときも常に連続して加熱蒸発(昇華)させる必要がある。しかしながら、長時間連続して加熱蒸発(昇華)させているとノズルまたはその周辺に蒸着材料が析出して安定した蒸着できず、最悪の場合には一部のノズルが閉塞されて均一な成膜ができない場合がある。
【0003】
そのために、一定時間蒸着した後真空を破壊し、ノズル及びその周辺をクリーニングし再度、真空を得て稼動させていた。従来は真空内でクリーニングすることを考慮していない。従来のノズルを有する蒸発源のとしては、下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−049275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一度真空を破壊すると再度所定の真空度を得るのに時間がかかる。例えば有機ELデバイスの製造コストを低減するためには稼働率を高める必要がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、前記真空を破壊し前記のノズル及び周辺のクリーニング頻度を少ないし、稼働率の高いまたは均一な蒸着ができる成膜装置及び成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、蒸発源の内部に有する蒸発材料を蒸発(昇華)させ、前記蒸発源の複数のノズルから噴出させて基板に蒸着する前記蒸発源を移動させる蒸発源移動手段を具備する真空蒸着チャンバを有する成膜装置において、前記真空蒸着チャンバは、前記ノズルまたはノズル付近に析出した析出蒸発材料を除去するクリーニング部を具備するノズルクリーニング手段を有することを第1の特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記真空蒸着チャンバは、前記蒸発源または前記クリーニング部のうち少なくとも一方を移動させる移動手段を有することを第2の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記移動手段は前記クリーニング部を前記ノズルへ移動させるクリーニング部移動手段であることを第3の特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記ノズルを前記クリーニング部に移動させる第2の蒸発源移動手段であることを第4の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第1乃至第4のいずれかの特徴に加え、前記クリーニング部は前記析出蒸発材料を除去する析出蒸発材料除去体を有することを特徴とすることを第5の特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、第5の特徴に加え、前記析出蒸発材料除去体は内部にヒータを有し、前記析出蒸発材料を蒸発(昇華)させて除去する加熱体であることを第6の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記加熱体は加熱ブロックであることを第7の特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記加熱体は、ブロックと、前記ブロックに一体または固定して設けられ、前記ノズルに挿入可能な前記ノズル内除去部とを有し、前記ノズルクリーニング手段は前記ノズル内除去部を前記ノズルに挿入するノズル挿入駆動部を有することを第8の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記加熱体は前記ノズルに挿入可能なノズル内除去部を有し、前記ノズルクリーニング手段は前記ノズル内除去部を前記ノズルに挿入するノズル挿入駆動部を有することを第9の特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、第8又は9の特徴に加え、前記クリーニング部移動手段は前記ノズル挿入駆動部を前記クリーニング部と一体になって移動する手段であり、前記ノズル挿入駆動部は内部が大気雰囲気中であるケースに内蔵されており、前記ケースは内部が中空の真空シールされたリンク機構の一端に接続されおり、前記リンク機構の他端は大気雰囲気に開放され、前記ノズル挿入駆動部は前記ケースに設けられた真空シール部を介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを第10の特徴とする。
【0013】
さらに、上記目的を達成するために、第6乃至第10のいずれかの特徴に加え、前記析出蒸発材料除去体は前記蒸発源の長手方向に分布するノズルの範囲とほぼ同じ長さを有し、前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源を前記ノズルに正対するように前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を移動させる正対移動手段を有することを第11の特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するために、第8または第9の特徴に加え、一端が大気に開放され他端に真空シール部を有する大気雰囲気空間の内部に前記ノズル挿入駆動部の少なくとも一部が設置され、前記ノズル挿入駆動部は前記真空シール部介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを第12の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第4の特徴に加え、前記真空蒸着チャンバは複数の前記基板に蒸着する蒸着箇所を複数有し、前記第2の蒸発源駆動手段は蒸発源を前記複数の蒸着箇所間を移動させる手段であることを第13の特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記クリーニング部は、前記析出蒸発材料除去体の周辺に設けられ、前記析出蒸発材料が再度蒸発(昇華)し、前記ノズルまたはノズル付近に再析出するのを防止する冷却捕集手段を有することを第14の特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、第5の特徴に加え、前記析出蒸発材料除去体は前記析出蒸発材料を機械的に除去する機械的手段を有することを第15の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第15の特徴に加え、前記機械的手段は平面または表面に凹凸またはブラシのうち少なくとも一方を有するブロックであることを第16の特徴とする。
【0016】
さらに、上記目的を達成するために、第15の特徴に加え、前記機械的手段は平面または表面に凹凸またはブラシのうち少なくとも一方を有する円筒体であることを第17の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第17の特徴に加え、前記クリーニング部移動手段は、前記円筒体を回転する回転駆動部を有することを第18の特徴とする。
【0017】
さらに、上記目的を達成するために、第15の特徴に加え、前記析出蒸発材料除去体は前記蒸発源の長手方向に分布するノズルの範囲とほぼ同じ長さを有し、前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源を前記ノズルに正対するように前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を移動させる正対移動手段と前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を振動させる振動手段有することを第19の特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するために、第18の特徴に加え、前記クリーニング部移動手段は前記回転駆動部を前記クリーニング部と一体になって移動する手段であり、前記回転駆動部は内部が大気雰囲気中であるケースに内蔵されており、前記ケースは内部が中空の真空シールされたリンク機構の一端に接続されおり、前記リンク機構の他端は大気雰囲気に開放され、前記回転駆動部は前記ケースに設けられた真空シール部を介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを第20の特徴とする。
【0019】
さらに、上記目的を達成するために、第10または20の特徴に加え、前記リンク機構はステンレスまたはアルミニウム、マグネシウム又はその合金、あるいはセラミックス又はセラミックスコンポジット材料製のリンクを有するリンク機構であることを第21の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記クリーニング部は、前記ノズルにレーザ照射するレーザ照射手段を有することを第22の特徴とする。
【0020】
さらに、上記目的を達成するために、真空蒸着チャンバ内であって蒸発源の内部に有する蒸発材料を加熱蒸発(昇華)させ前記蒸発源のノズルから噴出させて基板に蒸着する成膜方法において、前記基板に蒸着させる蒸着ステップと、前記ノズルまたはノズル付近に析出した前記析出蒸発材料を除去するクリーニング部を前記ノズル位置に移動させる移動ステップと、前記クリーニング部により前記析出蒸発材料を除去する除去ステップと、前記除去後、前記蒸着ステップを再開する再開ステップとを有することを第23の特徴とする。
【0021】
また、上記目的を達成するために、真空蒸着チャンバ内であって蒸発源の内部に有する蒸発材料を加熱蒸発(昇華)させ前記蒸発源のノズルから噴出させて基板に蒸着する成膜方法において、前記基板に蒸着させる蒸着ステップと、前記ノズルまたはノズル付近に析出した前記析出蒸発材料を除去するクリーニング部の位置に前記ノズルを移動させる移動ステップと、前記クリーニング部により前記析出蒸発材料を除去する除去ステップと、前記除去後、前記蒸着ステップを再開する再開ステップとを有することを第24の特徴とする。
【0022】
さらに、上記目的を達成するために、第23または24の特徴に加え、前記除去ステップは前記析出蒸発材料を加熱し、蒸発(昇華)させる加熱蒸発(昇華)ステップであることを第25の特徴とする。
最後に、上記目的を達成するために、第23または24の特徴に加え、前記析出蒸発材料を機械的に除去するステップであることを第26の特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従って、本発明の目的は、前記真空を破壊して作業する前記のノズル及び周辺のクリーニング頻度を少なくし、稼働率の高いまたは均一な蒸着ができる成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明の成膜装置の第1の実施形態として有機ELデバイス製造装置を例に示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】図1に示す真空蒸着チャンバの上面図を模式的に示した図である。
【図4】蒸発源70の断面図と、蒸発源とノズルクリーニング手段20との関係を示す図である。
【図5】図3におけるノズルクリーニング手段20と仕切り部11のA−A断面図である。
【図6】ノズルクリーニング手段から生じる材料蒸気を冷却して捕集する冷却捕集手段を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態である真空チャンバ1buの処理フローを示した図である。
【図8A】クリーニング部21の加熱ブッロクのみの第2の実施例を示す図である。
【図8B】クリーニング部21のヒータ有するノズル内除去部23のみの第2の実施例を示す図である。
【図9A】析出蒸発材料73Fを機械的に除去するクリーニング部21のノズル円筒体23Cである第4の実施例を示す図である。
【図9B】析出蒸発材料73Fを機械的に除去するクリーニング部21のノズル除去ブラシ23Dある第4の実施例を示す図である。
【図10】ノズル円筒体23Cまたはノズル除去ブラシ23Dを回転させる駆動部例を示した図である。
【図11】本発明の成膜装置の第2の実施形態を示す図で、基板を直立させて蒸着する真空蒸着チャンバを示す図である。
【図12】蒸発源がクリーニング領域に位置に来た時の図2を上方から見た図である。
【図13】図11に示すノズルクリーニング手段20とリンク機構50の拡大模式図である。
【図14】真空シールの一例を示し、接続部52における真空シールを示した図である。
【図15】本発明の第2の実施形態である構成に基づく処理フローを示す。
【図16】本発明の成膜装置の第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の成膜装置の実施形態として有機ELデバイス製造装置を例に図1及び図2を用いて説明する。有機ELデバイス製造装置は、単に蒸着材料である発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、基板上に形成された陽極の上に正孔注入層や正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、などの有機材料による薄膜を形成した上で金属などで陰極層を形成する。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0026】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ3、前記基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ3あるいは次工程(封止工程)との間の設置された5つの受渡室4a〜4e構成されている。
【0027】
ロードクラスタ3は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロード室31と前記ロード室31から基板6を受取り、旋回して受渡室4aに基板6を搬入する搬送ロボット5Rからなる。各ロード室31及び各受渡室4は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ3あるいは次のクラスタ等へ基板を受渡する。
【0028】
各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット5を有する搬送チャンバ2a〜2e、搬送ロボット5から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1bu等(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。搬送チャンバ2bと処理チャンバ1buの間にはゲート弁10が設けてある。
【0029】
真空で発光材料を蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。図2は、図1における搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。図2における搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図示せず)で、左右に旋回可能な2リンク構造のアーム57を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド58を有する。
【0030】
一方、真空蒸着チャンバ1buは、大別して発光層を形成する材料を蒸発または昇華させ基板6に成膜させる蒸着部7と、基板6とマスク81とのアライメントを行なうアライメント部8と、及び搬送ロボット5と基板の受渡しを行い、蒸着部7へ基板6を移動させる処理受渡部9からなる。アライメント部8と処理受渡部9は右側Rラインと左側Lラインの2系統設ける。
【0031】
処理受渡部9は、搬送ロボット5の櫛歯状ハンド58と干渉することなく基板6を受渡し可能とする櫛歯状ハンド91と、前記櫛歯状ハンド91上にあり基板6を固定して載置し、その基板6を旋回させて直立にし、アライメント部8に移動する基板旋回手段93を有する。前記固定する手段94としては、真空中であることを考慮して静電吸着や機械的クランプ等の手段を用いる。
【0032】
蒸発部7は、図2の引き出し図に示すように長手方向に複数の後述する坩堝を内蔵しており、それぞれの坩堝から一つのノズル70nを有している蒸発源70と、蒸発源70をレール上に沿って上下方向に移動させる上下駆動手段(第1の蒸発源移動手段)76、蒸発源と上下駆動手段とを一体に左右にレール上を移動させる左右駆動手段(第2の蒸発源移動手段)75を有している。上下及び左右駆動手段には蒸発源70の位置を検出する位置エンコーダ(図示せず)がある。問題は、ノズル70nまたはその周辺に蒸着材料((以下、析出蒸発材料73Fという)が析出して安定した蒸着できず、最悪の場合には例えば図2に示す3つのノズルうち真中のノズルが閉塞されて均一な成膜できないことである。なお、図2の引き出し図は蒸発源の長手方向の一部を示した図である。
【0033】
このような構成を有する真空蒸着チャンバ1buでの処理の基本的な考え方は、第1に一方のRラインで蒸着している間に、他方のLラインでは基板を搬入出し、略垂直に立て位置合せをし、蒸着する準備を完了させることであり、第2に蒸発源70を移動させてこの処理を交互に行なうことである。この結果、本実施形態では、蒸着する工程と、処理チャンバ1への基板搬入出工程等のその他工程とは所要時間が略同じであり、本実施形態ではそれぞれ約1分である。また蒸発源がライン間を移動する時間は5秒である。この場合、スループットは成膜処理時間に蒸発源の移動時間を加えた時間となる。従って、蒸発源の稼働率が向上し、蒸発源中の材料が無駄に蒸発している時間を減少させることができる。
【0034】
次に、本発明の特徴であるノズル付近のノズルクリーニング手段を有する成膜装置の第1の実施形態を図1乃至図10を用いて説明する。第1の実施形態は、蒸発源をノズルの位置に移動させて、ノズルまたはノズル付近に析出またした図2に示す析出蒸発材料73Fを除去するものである。特に、本実施形態では、特に図2で説明したように蒸発源70がR、Lライン間を交互に移動することを利用して行なうものである。
【0035】
まず、第1の実施例は、蒸発源70が交互に移動する際にノズル付近を輻射熱で加熱して除去するものである
図3は図1に示す真空蒸着チャンバ1buの上面図を模式的に示した図である。図3に示すように、ノズルクリーニング手段20は、クリーニング部21及びクリーニング部を前後に移動させるノズル挿入駆動部60から構成されている。また、ノズルクリーニング手段20は、RラインとLラインの間に設けた仕切り部11内に設けられ、後述する図4に示すように真空蒸着チャンバ1buの下部であり、床壁1hの上に設けられている。下部に設けた理由は、後述するようにノズルまたはノズル周辺の析出蒸発材料が機械的に除去された後に基板や蒸着マスクに再付着する可能性を少なくするためである。
【0036】
図4は蒸発源70の断面図と、蒸発源とノズルクリーニング手段20との関係を示す図である。
まず、ノズルクリーニング手段20の各部を説明する前に、図4を用いて蒸発源70を説明する。蒸発源70は、細長いケース70cの長手方向に複数の坩堝70rが配置され、それぞれの坩堝には蒸発材料73があり、その蒸発材料をヒータ70hで加熱し蒸発(昇華)させ、それぞれの坩堝に設けられたノズル70nから噴出する。なお、ノズルには上下にノズルガイド70kを設け、ノズルガイドにはリフレクタ(放射阻止体)70fが設けられている。ノズルガイドの両端は、後述する加熱ブロック22及びノズル内除去部23が移動可能なように開放されている。
【0037】
次に、ノズルクリーニング手段20のクリーニング部21を図4、図5を用いて説明する。
クリーニング部21は、析出蒸発材料除去体である加熱ブロック22(加熱体)と、加熱ブロックの先端に加熱ブロック22と一体形成または固定され、蒸発源70のノズルの寸法に応じてノズルに挿入可能な棒状又は針状のノズル内除去部23と、加熱ブロックに内蔵された円筒状のヒータ24と、加熱ブロック22とノズル内除去部23で蒸発(昇華)された析出蒸発材料73Fを再析出しないように冷却し、加熱ブロックとノズル周辺に設けた冷却捕集部25とを有する。この構造により、即ち、ノズルガイド70kやノズル口付近に析出した析出蒸発材料73Fが加熱ブロック22により、ノズル口付近やノズル内に析出した析出蒸発材料73Fがノズル内除去部23により加熱蒸発(昇華)され、クリーニングされる。
【0038】
上述した析出蒸発材料73Fのクリーニングは、坩堝70rからの蒸発(昇華)を停止し再開するのに多くの時間を要するので、一般的には加熱状態を維持して行なう。しかし、レシピ変更を行なう際には温度条件を変更しながら行なってもよい。
【0039】
ノズル内除去部23は蒸発源70のノズルのピッチに基づき設ける。ノズル内除去部23をノズルに挿入させるための位置決めは、左右駆動手段75の位置エンコーダ(図示せず)を用いて行なう。一般的には各部を高温に加熱するために、熱膨張により位置決めが難しくなる場合がある。そこで、クリーニング機構側にフローティング機構やならいによるはめあい位置決め機構を設けてもよい。例えば蒸発源側に穴、クリーニング機構側にピンをさし込むようにすれば1mm程度ずれても位置決め可能なならい機構を容易に得られる。このようにすれば、ノズル内除去部23は、一回の位置決めで複数のノズル部のクリーニングを行なえる。特に不規則に配置されているときは一つづつ、ノズルに対して位置決めしてクリーニングを行なっても良い。なお、26は加熱ブロック22の冷却捕集部25への熱流を遮断する断熱部である。
【0040】
一方、図5に示すノズル挿入駆動部60は、真空チャンバ内には可能な限り発熱や粉塵源を設けないことから、仕切り部11の内部11aに設けられ、内部11aは貫通部11bを介して大気に開放されている。ノズル挿入駆動部の役目は、冷却捕集部25に固定された連結棒60rによりクリーニング部21を前後に移動させて、ノズル内除去部23をノズルに出し入れするものである。そのために、ノズル挿入駆動部60は内部11aのベース11c上に設けられおり、モータ60mでボールネジ60bを回転させ、ガイドレール上60g上をナットを内蔵する摺動子60nを移動させて、摺動子に連結された連結棒60rを前後に移動させる。連結棒は真空シールするためにベローズ60v及び磁気流体シール60sを介してクリーニング部21を前後に移動させる。
なお、実施例においては、ノズル挿入駆動部60を仕切り部内部11aに設けたが、仕切り部とは別に真空チャンバ内に大気雰囲気部を設けてその中に設置してもよい。
【0041】
図7に上記に構成に基づく処理フローを示す。前述したように、クリーニングは蒸発(昇華)停止させずに行なう。通常の蒸着時において蒸発源70は、ノズルクリーニング手段20に不要な蒸着をさせないように、ノズルクリーニング手段20の上部を走査している。そのとき、加熱ブロックは加熱していない(Step1)。所定インターバル(例えば一定の時間間隔)でクリーニングが行なう時かを判断する(Step2)。クリーニングを行なうときは、蒸発源70の上下駆動手段76の位置エンコーダ出力に基づき蒸発源70をノズルクリーニング手段20の位置するレベルまで降下させる(Step3)。一方、加熱ブロック22を蒸発源70の蒸発(昇華)温度させる温度よりも高い温度に加熱する(Step4)。クリーニング21のノズル内除去部23と蒸発源70のノズル70nが一致するように左右駆動手段75のエンコーダ位置に基づき蒸発源を停止させる。この動作は、ノズル内除去部23が設けられている個数に基づき行なう(Step5)。クリーニング部21を前進させ、図4に示すように加熱ブロック22をノズルガイド70kの間に、ノズル内除去部23をノズル70nに挿入し、析出蒸発材料73Fを輻射熱で蒸発(昇華)させてクリーニングする(Step6)。一定時間経過したら蒸発(昇華)が完了したとみなし、クリーニング部21を後進させ元に戻し、Step8へ行く(Step7)。Step5からStep8を全てのノズル70nに対して行なう(Step8)。全て終了したら、蒸発源を基板への蒸着レベルの位置に戻し、蒸着を再開する(Step9)。一方、クリーニング部21では加熱ブロック22の加熱を停止する。
【0042】
以上のフローにおいては、蒸発源を蒸発(昇華)させながらクリーニングしたが、蒸発(昇華)を停止して、クリーニングを行なってもよい。その場合、図3に示すようにノズル挿入駆動部の横に撮像部65を設け、クリーニングの必要性の判断やクリーニングの効果の観察をしてもよい。
【0043】
上記第1の実施形態によれば、蒸発源70のノズル及びノズル付近の析出蒸発材料73Fを除去できるので、真空蒸着チャンバの真空を破壊することなく長期に運転することができる稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
また、蒸発源70の析出蒸発材料73Fを除去でき、一定以下の析出蒸発材料73Fに抑えることができるので、均一な成膜ができる高い有機ELデバイス製造装置、製造方法を提供できる。
【0044】
以下にクリーニング部21の他の実施例を図8乃至図10に示す。
図8は第1の実施例同様に加熱して蒸発(昇華)させる他のタイプの第2の実施例であり、図8Aは析出蒸発材料除去体として過熱ブロック22のみを設け、ノズル内除去部23を設けていない点が異なる。図8Bは逆に加熱ブロックを設けずヒータを内蔵したノズル内除去部23を設けたものである。ノズル内除去部の本数は、ノズルピッチが規則的であればそのピッチに基づいて決められ、不規則であれば1本となる。
【0045】
第1の実施例及び第2の実施例のうちノズル内除去部23を有するものは、ノズル内除去部23を挿入する度に、ノズルとの正確な位置合せが必要である。これを回避する第3の実施例として、クリーニング部21は、蒸発源70とほぼ同じ長さを有し、蒸発源が有するにノズルの数分、ノズルに正対した位置にノズル内除去部23を設ける。そして、クリーニング部21又は蒸発源70を移動させて、全体のノズル内除去部を一度に挿入し、クリーニング部する。第3の実施例ではノズルとの正確な位置合せを1回で済ませることができ、クリーニングの時間を短縮できる。さらに、後述する機械的に除去する場合は、クリーニング部21又は蒸発源70のどちらか一方を前記蒸発源の長手方向に振動させて、その振動で析出蒸発材料73Fを除去する。
【0046】
今までの実施例は析出蒸発材料73Fを加熱にして蒸発(昇華)で除去したが、図9に示す各実施例は、図4に示すノズルガイド70k、ノズル70nに析出した析出蒸発材料73Fを機械的に除去する第4の実施例である。
図9Aは析出蒸発材料除去体として加熱ブロック22の代わりに平面または表面に凸部27を設けたノズル除去ブロック23Bを示した図である。図9Bは析出蒸発材料除去体として連結棒62rの先端に平面または表面を有する円筒体22Cに凸部28を設けたノズル除去円筒体23Cを示した図である。図9Bにおいては、円筒体の代わりにブラシを設けたノズル除去ブラシ23Dとしてもよい。ノズル円筒体23Cまたはノズル除去ブラシ23Dは、回転させることによって除去効率を上げることができる。
【0047】
図10はその駆動部の例を示したもので、図3に示す仕切り部11の内部11aに第1の実施例のノズル挿入駆動部60に代わりに、ノズル除去円筒体23Cまたはノズル除去ブラシ24Dを回転させる回転駆動部62を設けたものである。回転駆動部62は、モータ62aとモータの回転をノズル回転体に伝える連結棒62r及び連結部をシールするシール部62bからなる。
【0048】
機械的に除去する第4の実施例は、図10に示すようにノズル除去ブロック23B、ノズル除去円筒ブロック23C、ノズル除去ブラシ23Dの下部に、冷却捕集部25の代わりに、析出蒸発材料73Fが蒸発源70に再析出しないよう削り採った析出蒸発材料73Fを回収する回収ボックス63を設ける。
【0049】
これら図8Aに示す第2の実施例及び第4の実施例は、ノズル内除去部のない実施例であり、ノズル挿入駆動部60が不要なので、クリーニング機構・動作が単純となる。即ち、ノズルによる位置合せが不要となるので、精度の高い位置合せが不要となり、蒸発源70を停止させることなく連続して除去し、蒸発源全体をクリーニングすることができる。
【0050】
ノズルクリーニング手段20の他の実施例として上記第1から第4の実施例では、クリーニング部として析出蒸発材料除去体を用いたが、本第5の実施例では、レーザをノズルに照射し加熱して析出蒸発材料72Fをクリーニングする。そのために、例えば、クリーニング部21は図3に示すノズル挿入駆動部60の位置にレーザ発振器を設け、左右駆動手段75のエンコーダ位置に基づきノズルに向かってレーザを照射する。
【0051】
次に、ノズルクリーニング手段20を有する成膜装置の第2の実施形態を図4、図11乃至図17を用いて説明する。第2の実施形態は、クリーニング部を蒸発源のノズルの位置に移動させて、ノズルまたはノズル付近に析出した析出蒸発材料73Fを再蒸発(再昇華)させて除去するものである。
【0052】
図11は、成膜装置の第2の実施形態を示す図で、図1に示す水平搬送されて来た基板を直立させて蒸着する真空蒸着チャンバ1buの側面図である。
真空チャンバ1buの外側上部に設けたアライメント機構8は、動作としては紙面奥行き(Y)方向と上下(Z)方向の2自由度を有する。紙面奥行き(Y)方向はアライメントベース83から吊り下げた紙面奥行き(Y)方向にアクチュエータ83Yで、上下(Z)方向はZ軸アクチュエータ83Zでロッド84をそれぞれ駆動する。アライメント機構8は、回転対偶による支持機構85でマスク81を支持し、チャンバ内ベースプレート88に設けられたリニアガイド87と共にマスクホルダ86をスムーズ回転摺動させるものである。アライメント機構8は、紙面奥側にもう1セット設けることで、マスクホルダ86のY方向及びZ方向の移動及び紙面に垂直な面における回転を制御し、アライメントを行う。
【0053】
一方、水平に搬送されてきた基板を直立させるのに、チャンバ内ベースプレート85上に回転アーム92を設け、その先端に直立ベース95を取り付ける。直立ベースは基板チャック96が取り付けられている。この例では、直立ベース95に気密容器97に収納されたアライメントカメラ98もチャンバ内ベースプレート85に取り付けている。
アームの回転は紙面手前若しくは奥側に設ける回転アクチュエータ(図示せず)で行なう。このアクチュエータの動力を軸99aに伝達させる。なお。99bは軸受である。
【0054】
基板6を直立させた後、アライメントカメラ98によりマスク81及び基板6に設けられたアライメントマーク(図示せず)を撮像し、アライメント機構8でマスク81を動かして、アライメントを行った後に、図2に示すように直線状にノズルが複数配列された蒸発源70(リニアソース)を揺動させて蒸着を施す。
蒸発源70を上下に駆動するための上下移動手段の1例である蒸発源移動手段72は他の内部ベースプレート79上に設置されている。また、真空装置では駆動源のモータ72mを冷却の都合から真空チャンバ1buの外部に設置する。モータ動力を真空チャンバ1bu内に伝達するのに磁性流体シール72sを介してボール螺子72bを回転させ、蒸発源70に固定されたナット72nにより蒸発源70をリニアガイド72g上を摺動させ、上下に移動させる。基板蒸着時において蒸発源は70は、マスク開口領域81aの範囲を上下している。磁性流体シール72sが真空チャンバ壁1hの変形で傾く場合モータ72mと磁性流体シール72sの間、及び磁性流体シール72sとボール螺子72nの間に、軸間の変位や角度誤差を吸収するカップリング72cを設けることで、スムーズな動力の伝達が可能になる。なお、保護カバー11は蒸着時にノズルクリーニング手段20等に不要に蒸着物が付着しないよう捕集するものである。
【0055】
次に、本実施形態のノズルクリーニング手段20を説明する。クリーニング部21及び蒸発源70は、基本的には第1の実施形態の第1の実施例と同じである。即ち、析出蒸発材料を輻射熱で加熱し蒸発(昇華)させて除去するものである。まず、蒸発源70のクリーニングが必要と判断した場合、蒸発源を前記蒸発源移動手段72によりマスク開口領域81aの下に設けたクリ−ニング領域に移動させる。図12は、蒸発源がクリーニング領域に位置に来た時の図11を上方から見た図であり、図13はそのときの図11に示すノズルクリーニング手段20とリンク機構50の拡大模式図であり、図4は既に説明したように、図13に示すBより先の蒸発源70の断面図と、その部分とノズルクリーニング手段20関係を示す図である。
【0056】
まず、図12、図13及び図4を用いてノズルクリーニング手段を説明する。図4は第1の実施形態で説明したクリーニング部21と蒸発源70を示す図である。図13に示すようにノズルクリーニング手段20は、真空チャンバ1buの下部に設けられている。下部に設けた理由は、機械的に除去された蒸着材料の析出物が基板やマスクに付着しないようにするためである。
【0057】
ノズルクリーニング手段20は、クリーニング部21とクリーニング部を蒸発源の水平(Y)方向に移動させる水平方向移動部(クリーニング部移動手段)40、蒸発源方向に前後に移動するノズル挿入駆動部60及びクリーニング部冷却部45から構成されている。
クリーニング部21と蒸発源70は第1の実施形態で説明した構成を有する。
【0058】
第1の実施形態同様、析出蒸発材料73Fのクリーニングは、温度を下げて坩堝70rからの蒸発(昇華)を停止し再開するのに多くの時間を要するので、温度下げずに行なう。
【0059】
図4に示すノズル内除去部23は蒸発源70のノズルのピッチに基づき設ける。ノズル内除去部23をノズルに挿入させるための位置決めは、左右駆動手段75の位置エンコーダ(図示せず)を用いて行なう。ノズル内除去部23は、ノズルが等間隔で配置されているときは複数設け、一回の位置決めで複数のノズル部をクリーニングする。逆に不規則で配置されている一つだけ設け、ノズル毎に位置決めしてクリーニングを行なう。なお、26は加熱ブロック22の冷却捕集部25への熱流を遮断する断熱部である。
【0060】
また、図12、図13に示す水平方向移動部40は、蒸発源移動手段72と同様な機構を有しており、リニアガイド42gやボール螺子42bは、壁1hに固定した第2内部ベースプレート43上に設置されている。また、真空装置では駆動源のモータ42mを冷却の都合から真空チャンバ1buの外部に設置する。モータ動力を真空チャンバ1bu内に伝達するのに磁性流体シール42sを介してボール螺子42bを回転させ、ノズル挿入駆動部60に固定されたナット42nによりノズル挿入駆動部60・クリーニング部21をリニアガイド42g上を摺動させる。その結果、蒸発源70の全範囲をクリーニングできる。なお、72cは軸間の変位や角度誤差を吸収し、スムーズな動力の伝達が可能にするカップリングである。
【0061】
また、図13に示すノズル挿入駆動部60は、真空チャンバ内、強いて言えば真空雰囲気内には可能な限り発熱や粉塵源を設けないことから、後述するリンク機構50を通して一端が大気側に開放されたノズル挿入駆動部ケース60kを有し、その内部に構成要素を設ける。ノズル挿入駆動部の役目は、冷却捕集部25に固定された連結棒60rによりクリーニング部21を前後に移動させて、ノズル内除去部23をノズルに出し入れするものである。そのために、ノズル挿入駆動部60は、ノズル挿入駆動部ケース60kの下部に設けられ、モータ60mでボールネジ60bを回転させ、ガイドレール上60g上をナットを内蔵する摺動子60nを移動させて、摺動子に連結された連結棒60rを前後に移動させる。連結棒は真空シールするためにベローズ60v及び磁気流体シール60sを介して設けられている。
【0062】
また、図13に示すリンク機構50は、内部が中空の3つのリンク51a、51b、51cにより構成され、各リンクあるいはノズル挿入駆動部ケース60kとの間には、図15に示すように真空シールされた中空の回転可能な接続部52a、52b、52cが設けられている。また、リンク51aは真空チャンバ1buの側壁1hに設けられた真空シール部54に固定されている。そこで、これら中空部にクリーニング部21のヒータ24やモータ60m等とこれらを制御する制御装置200との間の配線53を布設する。図14は接続部の真空シールの一例を示し、リンク51aとリンク51bとの接続部52aの真空シールの構成を示した図である。接続部52aには、リンク51bがリンク51aに対してクロスローラベアリング53Pにより回転し、パッキン(Oリング)53P及びガスケット(Oリング)53Gで真空シールされた中空の回転部55Kある。この機構により、接続部おいても、その中空部に配線53を通すことが可能である。また、各リンクはアウトガスの発生もなく錆に強く十分な強度を持つ金属、例えばステンス、マグネシウム又はその合金、あるいはセラミックス又はセラミックスコンポジット材料製で構成する。
この結果、真空内への流れるアウトガスをモータの発熱を抑えることができる。
【0063】
図15に上記に構成に基づく処理フローを示す。基本的に第1の実施形態で示した図7と同じであるが、以下のようになる。
前述したように、クリーニングは蒸発(昇華)停止させずに行なう。通常の蒸着時において蒸発源70は、ノズルクリーニング手段20が不要に蒸着しないように、マスク開口領域81aの範囲であるノズルクリーニング手段20上部を上下に走査している。そのとき、加熱ブロックは加熱していない(Step1)。所定インターバル(例えば一定の時間間隔)でクリーニングが行なう時かを判断する(Step2)。クリーニングを行なうときは、蒸発源移動手段72の位置エンコーダ出力に基づき蒸発源70をノズルクリーニング手段20が位置するレベルまで降下させる(Step3)。加熱ブロック22を蒸発源70の蒸発(昇華)温度させる温度よりも高い温度に加熱する(Step4)。クリーニング部21のノズル内除去部23と蒸発源70のノズル70nが一致するようにクリーニング部21を停止させる(Step5)。クリーニング部21を前進させ、図4に示すように加熱ブロック22をノズルガイド70kの間に、ノズル内除去部23をノズル70nに挿入し、析出蒸発材料73Fを輻射熱で蒸発(昇華)させてクリーニングする(Step6)。一定時間経過したら蒸発(昇華)が完了したみなし、クリーニング部21を後進させ元に戻し、Step8へ行く(Step7)。Step5からStep8を全てのノズル70nに対して行なう(Step8)。全て終了したら、蒸発源を基板への蒸着レベルの位置に戻し、蒸着を再開する(Step9)。
【0064】
以上のフローにおいては、蒸発源を蒸発(昇華)させながらクリーニングしたが、蒸発(昇華)を停止して、クリーニングを行なってもよい。その場合、図2に示すようにノズル挿入駆動部の横に撮像部65を設け、クリーニングの必要性の判断やクリーニングの効果の観察をしてもよい
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態同様に、蒸発源70のノズル及びノズル付近の析出蒸発材料73Fを除去できるので、真空蒸着チャンバの真空を破壊することなく長期に運転することができる稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
また、蒸発源70の析出蒸発材料73Fを除去でき、一定以下蒸の析出蒸発材料73Fに抑えることができるので、均一な蒸着ができる高い有機ELデバイス製造装置、製造方法を提供することである。
【0065】
また、ノズル挿入駆動部60をリンク機構により真空雰囲気ではなく大気側に設けることができるので、アウトガスを不要な発熱を抑えることでき、信頼性の高い高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0066】
本実施形態においても、第1の実施形態で示したノズルクリーニング手段20の他の実施例を適用することは可能である。但し、図9Aに示すノズル円筒体23Cまたはノズル除去ブラシ23Dは、回転させることによって除去効率を上げる場合は、図10に示す駆動部例において、図13に示すノズル挿入駆動部ケース60k内に第1の実施形態のノズル挿入駆動部60に代わりに、ノズル除去円筒体23Cまたはノズル除去ブラシ24Dを回転させる回転駆動部62を設ける必要がある。
【0067】
最後に、ノズルクリーニング手段20を有する成膜装置の第3の実施形態を図16を用いて説明する。第2の実施形態では、基板を立ててアライメントし蒸着した真空蒸着チャンバの実施形態を示したが、第3の実施形態は、水平には搬送されてきた一体の基板・マスクに蒸着する真空蒸着チャンバにノズルクリーニング手段を適用したものである。
【0068】
第3の実施形態のノズルクリーニング手段20は、基本的には第1、第2の実施形態と同じである。従って、第1、第2の実施形態の各実施例の適用も含めて、ノズルクリーニング手段20の各構成であるクリーニング部21、ノズル挿入駆動部60、水平方向移動部40及びリンク機構50は基本的に同じである。
【0069】
異なる点は、真空蒸着チャンバの構成の違いによるノズルクリーニング手段20の配置方向及び配置位置である。図11にでは垂直基板に横から蒸着するのでノズルクリーニング手段を横向きに水平に走査するのに対し、図16では水平基板に下から蒸着するのでノズルクリーニング手段を下向きに水平に走査させる。配置位置は、基板蒸着時は蒸着対象にならなく、且つ、クリーニングによる析出蒸発材料がその後の蒸着処理に影響を与えない位置である。従って、図11では真空蒸着チャンバの下側で片側壁側に配置するのに対し、蒸発源の上部片側壁側に設置することになる。第3の実施形態で図11に示すようなアライメントする機構8を設けても基本的には配置方向及び配置位置は基本的には同じである。
【0070】
本実施形態によれば、蒸着する基板の姿勢に関係なく、第1、第2の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0071】
さらに、上記説明では有機ELデバイスを例に説明したが、有機ELデバイスと同じ背景にある蒸着処理をする成膜装置および成膜方法にも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1:真空蒸着チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:真空搬送ロボット 3:ロードクラスタ
4:受渡室 5:搬送ロボット
6:基板 7:蒸着部
8:アライメント部 9:処理受渡部
10:ゲート弁 11:仕切り部
11a:仕切り部内部 20:ノズルクリーニング手段
21:クリーニング部 25:冷却捕集部
40:水平方向移動部(クリーニング部移動手段)
45:クリーニング部冷却部 50:リンク機構
60:ノズル挿入駆動部 65:撮像部
70:蒸発源 70n:ノズル
72:蒸発源移動手段 73:蒸発材料
73F:析出蒸発材料 100:有機ELデバイスの製造装置
200:制御装置 A〜D:クラスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発源の内部に有する蒸発材料を蒸発(昇華)させ、前記蒸発源の複数のノズルから噴出させて基板に蒸着する前記蒸発源を移動させる蒸発源移動手段を具備する真空蒸着チャンバを有する成膜装置において、
前記真空蒸着チャンバは、前記ノズルまたはノズル付近に析出した析出蒸発材料を除去するクリーニング部を具備するノズルクリーニング手段を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記真空蒸着チャンバは、前記蒸発源または前記クリーニング部のうち少なくとも一方を移動させる移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記移動手段は前記クリーニング部を前記ノズルへ移動させるクリーニング部移動手段であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記移動手段は前記ノズルを前記クリーニング部に移動させる第2の蒸発源移動手段であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記クリーニング部は前記析出蒸発材料を除去する析出蒸発材料除去体を有することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記析出蒸発材料除去体は内部にヒータを有し、前記析出蒸発材料を蒸発(昇華)させて除去する加熱体であることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記加熱体は加熱ブロックであることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記加熱体は、ブロックと、前記ブロックに一体または固定して設けられ、前記ノズルに挿入可能な前記ノズル内除去部とを有し、前記ノズルクリーニング手段は前記ノズル内除去部を前記ノズルに挿入するノズル挿入駆動部を有することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記加熱体は前記ノズルに挿入可能なノズル内除去部を有し、前記ノズルクリーニング手段は前記ノズル内除去部を前記ノズルに挿入するノズル挿入駆動部を有することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記クリーニング部移動手段は前記ノズル挿入駆動部を前記クリーニング部と一体になって移動する手段であり、前記ノズル挿入駆動部は内部が大気雰囲気中であるケースに内蔵されており、前記ケースは内部が中空の真空シールされたリンク機構の一端に接続されおり、前記リンク機構の他端は大気雰囲気に開放され、前記ノズル挿入駆動部は前記ケースに設けられた真空シール部を介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを特徴とする請求項8または9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記析出蒸発材料除去体は前記蒸発源の長手方向に分布するノズルの範囲とほぼ同じ長さを有し、前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源を前記ノズルに正対するように前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を移動させる正対移動手段を有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項12】
一端が大気に開放され他端に真空シール部を有する大気雰囲気空間の内部に前記ノズル挿入駆動部の少なくとも一部が設置され、前記ノズル挿入駆動部は前記真空シール部介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを特徴とする請求項8または9に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記真空蒸着チャンバは複数の前記基板に蒸着する蒸着箇所を複数有し、前記第2の蒸発源駆動手段は蒸発源を前記複数の蒸着箇所間を移動させる手段であることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記クリーニング部は、前記析出蒸発材料除去体の周辺に設けられ、前記析出蒸発材料が再度蒸発(昇華)し、前記ノズルまたはノズル付近に再析出するのを防止する冷却捕集手段を有することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記析出蒸発材料除去体は前記析出蒸発材料を機械的に除去する機械的手段を有することを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記機械的手段は平面または表面に凹凸またはブラシのうち少なくとも一方を有するブロックであることを特徴とする請求項15に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記機械的手段は平面または表面に凹凸またはブラシのうち少なくとも一方を有する円筒体であることを特徴とする請求項15に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記クリーニング部移動手段は、前記円筒体を回転する回転駆動部を有することを特徴とする請求項17に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記析出蒸発材料除去体は前記蒸発源の長手方向に分布するノズルの範囲とほぼ同じ長さを有し、前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源を前記ノズルに正対するように前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を移動させる正対移動手段と前記析出蒸発材料除去体と前記蒸発源のどちらか一方を振動させる振動手段とを有することを特徴とする請求項15に記載の成膜装置
【請求項20】
前記クリーニング部移動手段は前記回転駆動部を前記クリーニング部と一体になって移動する手段であり、前記回転駆動部は内部が大気雰囲気中であるケースに内蔵されており、前記ケースは内部が中空の真空シールされたリンク機構の一端に接続されおり、前記リンク機構の他端は大気雰囲気に開放され、前記回転駆動部は前記ケースに設けられた真空シール部を介して前記析出蒸発材料除去体を駆動することを特徴とする請求項18に記載の成膜装置。
【請求項21】
前記リンク機構はステンレスまたはアルミニウム、マグネシウム又はその合金、あるいはセラミックス又はセラミックスコンポジット材料製のリンクを有するリンク機構であることを特徴とする請求項10または20に記載の成膜装置。
【請求項22】
前記クリーニング部は、前記ノズルにレーザ照射するレーザ照射手段を有することを特徴する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項23】
真空蒸着チャンバ内であって蒸発源の内部に有する蒸発材料を加熱蒸発(昇華)させ前記蒸発源のノズルから噴出させて基板に蒸着する成膜方法において、
前記基板に蒸着させる蒸着ステップと、前記ノズルまたはノズル付近に析出した前記析出蒸発材料を除去するクリーニング部を前記ノズル位置に移動させる移動ステップと、前記クリーニング部により前記析出蒸発材料を除去する除去ステップと、前記除去後、前記蒸着ステップを再開する再開ステップとを有することを特徴とする成膜方法。
【請求項24】
真空蒸着チャンバ内であって蒸発源の内部に有する蒸発材料を加熱蒸発(昇華)させ前記蒸発源のノズルから噴出させて基板に蒸着する成膜方法において、
前記基板に蒸着させる蒸着ステップと、前記ノズルまたはノズル付近に析出した前記析出蒸発材料を除去するクリーニング部の位置に前記ノズルを移動させる移動ステップと、前記クリーニング部により前記析出蒸発材料を除去する除去ステップと、前記除去後、前記蒸着ステップを再開する再開ステップとを有することを特徴とする成膜方法。
【請求項25】
前記除去ステップは前記析出蒸発材料を加熱し、蒸発(昇華)させる加熱蒸発(昇華)ステップであることを特徴とする請求項23または25に記載の成膜方法。
【請求項26】
前記除去ステップは、前記析出蒸発材料を機械的に除去するステップであることを特徴とする請求項23または25に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−26625(P2011−26625A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170097(P2009−170097)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】