説明

扉閉鎖構造とそれを用いた密閉容器

【課題】 扉側の第一爪が容器本体側の第二爪へ接触することなくスライドし、第二爪への第一爪への押付け時にラッチ機構が破損しない扉閉鎖構造の提供。
【解決手段】 容器本体2の開口部4に扉3が回動可能に設けられ、扉3に設けた第一爪15を、容器本体2に設けた第二爪19間の溝20に通した後、第二爪19と対面する位置までスライドさせ、第二爪19へ押し付けて閉鎖する扉閉鎖構造である。扉のスイング閉位置で、容器本体2に扉3を係止するラッチ機構21を備える。ラッチ機構21は、容器本体2に設けられる受け具22と、扉3に設けられ受け具22に係止可能なラッチ本体23とを備える。第一爪15と第二爪19とが対面する位置において、ラッチ本体23と対応する位置には受け具22が設けられない。第一爪15が第二爪19と一部で重なるまで、ストッパー31により受け具22からのラッチ本体23の係止解除が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器本体の開口部への扉の閉鎖構造と、この扉閉鎖構造を用いた密閉容器に関するものである。特に、蒸煮機、蒸し庫、蒸煮冷却機、オートクレーブなどに用いられる圧力容器とその扉閉鎖構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば蒸煮機は、密閉容器内へ蒸気が供給され、密閉容器内が高圧とされるので、この圧力に耐える扉閉鎖構造が要求される。そのため、下記特許文献1に開示されるように、いわゆるクラッチ式ロック機構が採用されることがある。図5および図6は、従来のクラッチ式ロック機構を示す図であり、図5は概略横断面図、図6は正面視概略説明図である。
【0003】
クラッチ式ロック機構は、扉Aと容器本体Bとにそれぞれ爪部C,Dを凹凸形成し、図5および図6実線で示すように、扉Aに設けた第一爪Cを容器本体Bに設けた第二爪D間の溝に通した後、図6において二点鎖線で示すように、第一爪Cが第二爪Dと対面する位置まで扉Aをスライドさせ、その後、容器本体Bの開口部に沿って設けられるパッキンEにて、第一爪Cを第二爪Dへ押し付けて、容器本体Bの開口部を扉Aで密閉する構造である。
【0004】
このようなクラッチ式ロック機構の扉Aでは、閉鎖位置まで扉Aを回動させた状態で、その状態を維持するように容器本体Bと扉Aとがラッチ機構により係止され、その係止状態を保ちつつ扉Aのスライドがなされる。従来のラッチ機構は、図5に示すように、容器本体Bの戸先側に略L字形状の板材からなる受け具Fを固定する一方、扉Aの戸先側の内面(容器本体B側の面)に、前記受け具Fを収容可能な開口Gを設け、この開口G内に前記受け具Fと係止する丸棒状のラッチ本体Hを設けている。このラッチ本体Hは、扉Aの外面に設けたレバーハンドルIの回転操作により進退可能とされ、前記受け具Fとの係止およびその解除が可能とされている。
【特許文献1】特開平11−342963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、扉Aがスライド中であっても、第一爪Cと第二爪Dとが重なる前であれば、レバーハンドルIを操作してラッチ本体Hと受け具Fとの係止を解除可能であった。そのため、誤ってレバーハンドルIを操作してしまうと、扉Aが開いた状態でスライドしてしまい、第一爪Cと第二爪Dとがかみ込むことがあり、また扉スライド用のモータが停止せずに暴走するおそれがあった。
【0006】
また、従来の構成では、容器本体Bの受け具Fに扉Aのラッチ本体Hが係止した状態を維持したまま、扉Aのスライドと、第一爪Cの第二爪Dへの押付けがなされていた。つまり、前記丸棒状のラッチ本体Hは、前記受け具Fに沿ってスライドした後、その係止片Jへ向けて移動することになる。ここで、扉Aの第一爪Cは、容器本体Bの開口端面Kと第二爪Dとの隙間に配置されてスライドするが、そのスライドを円滑に行うために、前記開口端面Kと第二爪Dとの隙間は、第一爪Cの厚さよりも余裕を持たせた寸法に設定されている。そして、スライド後にパッキンEの押出しにより、第一爪Cを第二爪Dへ押し付けることで、前記隙間が解消される構成とされている。従って、前記隙間の具合によっては、パッキンEの押出し時に、第一爪Cを第二爪Dへ押し付ける前に、受け具Fの係止片Jにラッチ本体Hが当接してしまうおそれがあり、扉Aの閉鎖に不具合を生じさせるおそれがあった。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、扉のスライドと、第一爪の第二爪への押付けを、適正で確実に行うことができる扉閉鎖構造とそれを用いた密閉容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、容器本体の開口部に扉が開閉可能に設けられ、前記扉に設けた第一爪を、前記容器本体に設けた第二爪間の溝に通した後、前記第二爪と対面する位置までスライドさせた状態で、前記第二爪へ押し付けて閉鎖する扉閉鎖部の構造であって、前記第二爪間の溝に前記第一爪を通して前記扉を閉めた際、前記容器本体に前記扉を係止するラッチ機構を備え、このラッチ機構は、前記容器本体に設けられる受け具と、前記扉に設けられ前記受け具に係止可能なラッチ本体とを備え、前記スライドにより前記第一爪と前記第二爪とが対面する位置において、前記受け具は前記ラッチ本体と係止不能な形状に形成されていることを特徴とする扉閉鎖構造である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、扉スライド後の第一爪と第二爪とが対面した状態では、受け具はラッチ本体と係止不能とされている。従って、第一爪を第二爪へ押し付ける際に、ラッチ本体が受け具へ接触することが防止される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ラッチ本体は、前記扉に設けられた操作部の操作により、前記受け具と係脱可能に構成され、前記第二爪間の溝の所定位置に前記第一爪が通された状態では、前記受け具への前記ラッチ本体の係止と、前記操作部の操作によるその係止の解除が可能とされ、前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置から前記第二爪と重なる位置まで、前記操作部を操作しても前記受け具からの前記ラッチ本体の係止が解除不能とされたことを特徴とする請求項1に記載の扉閉鎖構造である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、扉のスライド開始時に、第一爪と第二爪とが少なくとも一部で重なる状態となるまで、受け具からのラッチ本体の係止が解除不能とされる。従って、操作部を操作しても扉が開くことはない。しかも、その後は、第一爪と第二爪とが重なることで、扉が開くことはない。このようにして、扉の第一爪は、容器本体の開口端面と第二爪との間の適正位置でスライドすることになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記扉は、前記容器本体の一側端部まわりに回動可能に設けられており、前記扉の左右両端部に、略矩形板状の前記第一爪が上下に等間隔に複数形成されており、前記容器本体の開口部の左右両端部に、略矩形板状の前記第二爪が上下に等間隔に複数形成されており、前記第二爪間の溝の前記所定位置と対応した高さ位置に前記第一爪が配置されると共に、前記受け具と対応した高さ位置に前記ラッチ本体が配置されて、前記扉は回動可能とされており、前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置から前記第二爪と一部で重なる位置まで、前記ラッチ本体の係止を解除不能にするストッパーが前記受け具に設けられており、前記第一爪と前記第二爪とが対面する位置まで前記扉がスライドした状態では、前記ラッチ本体と対応する高さ位置には前記ストッパー付きの前記受け具が設けられていないことを特徴とする請求項2に記載の扉閉鎖構造である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、扉のスライド開始時に、第一爪と第二爪とが少なくとも一部で重なる状態となるまで、ストッパーにラッチ本体が係止されることで、操作部を操作しても扉の開放が防止される。しかも、その後は、第一爪と第二爪とが重なることで、扉が開くことはない。このようにして、扉の第一爪は、容器本体の開口端面と第二爪との間の適正位置でスライドすることになる。また、扉スライド後の第一爪と第二爪とが対面した状態では、ラッチ本体と対応する高さ位置にはストッパー付きの受け具が設けられていない。従って、第一爪を第二爪へ押し付ける際に、ラッチ本体が受け具やストッパーへ接触することが防止される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記ストッパーは、前記容器本体側の内面が、下方へ行くに従って外側へ傾斜して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の扉閉鎖構造である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、閉鎖状態の扉を開けるために、扉を上方へスライドさせる際、ストッパーの前記内面へのラッチ本体の案内が円滑になされる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記受け具または前記ストッパーと前記ラッチ本体との係止の有無を検知するセンサを更に備え、前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置からずれても、前記第二爪間の溝と対応した高さ位置に配置されている間は、前記ストッパーにより前記容器本体への前記扉の係止が解除不能とされていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の扉閉鎖構造である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記センサにより、扉のスイング閉位置の確認が容易になされる。また、第二爪間の溝に第一爪が配置されている間は、前記所定位置からずれても、ストッパーにより扉の開放が防止される。従って、扉の第一爪は、容器本体の開口端面と第二爪との間の適正位置でスライドすることになる。
【0018】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記扉閉鎖構造により扉が容器本体に設けられてなり、前記第一爪の前記第二爪への押付けは、前記容器本体の開口部に沿って連続的に設けられたパッキンを介してなされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の扉閉鎖構造を用いた密閉容器である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の扉閉鎖構造による作用効果を奏する密閉容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の扉閉鎖構造とそれを用いた扉によれば、扉の第一爪の容器本体の第二爪への押付けを、適正で確実に行うことができる。また、扉のスライドも、適正な位置で確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の扉閉鎖構造は、容器本体の開口部を扉で閉じるための構造で、容器本体と扉との間に適用される。また、本発明の密閉容器は、前記扉閉鎖構造により扉が開閉可能に設けられた容器である。この密閉容器の用途は特に問わないが、蒸煮機、蒸し庫、蒸煮冷却機、オートクレーブなどのように、内部が加圧される圧力容器として好適に用いられる。蒸煮冷却機または蒸煮機とする場合、容器本体に二つの開口部を対面して設け、各開口部を扉で開閉可能とし、その一方または双方の扉閉鎖構造として本発明を適用できる。この場合、隔壁で区切られた複数の異なる室(温度または機能の異なる室)に面してそれぞれ前記開口部を配置し、各開口部を開閉する扉をそれぞれ有し、両扉を同時に開かないように制御するタイプのものにも適用可能である。
【0022】
前記容器本体は、一端面に開口して中空部を有し、その開口部に前記扉が開閉可能に設けられる。容器本体の開口部が扉で閉じられた際には、前記中空部が密閉される。容器本体の開口部への扉の閉鎖には、本発明の扉閉鎖構造が用いられるが、この扉閉鎖構造は、いわゆるクラッチ式ロック機構である。
【0023】
扉は、ヒンジにより容器本体に対し回動可能に設けられる。これにより、扉は、容器本体の開口部を覆うスイング閉位置と、容器本体の開口部から離隔したスイング開位置との間で回動可能とされる。さらに、扉は、前記スイング閉位置において、扉面に沿ってスライドすることで往復動する。典型的には、扉は略矩形板状とされ、略矩形箱状の容器本体の開口部に沿ってスライド可能に設けられるが、略円形板状の扉が、有底円筒状の容器本体の開口部において回転するようスライド可能に設けてもよい。扉は通常、その回動動作は手動で行われるが、スライド動作はシリンダ機構などの適宜の駆動装置を用いて自動または半自動で行われる。
【0024】
扉には、第一爪が所定間隔で複数設けられる。この第一爪は、典型的には同じ形状および大きさの略矩形板状とされ、さらにそのスライド方向両端部を傾斜面とした略台形状とするのがよい。このような第一爪が所定間隔で複数設けられることで、扉には、略矩形状の第一凸部(第一爪)と略矩形状の第一凹溝とが交互に複数設けられる。
【0025】
一方、容器本体には、第二爪が所定間隔で複数設けられる。この第二爪は、典型的には同じ形状および大きさの略矩形板状とされ、さらにそのスライド方向両端部を傾斜面とした略台形状とするのがよい。このような第二爪が所定間隔で複数設けられることで、容器本体には、略矩形状の第二凸部(第二爪)と略矩形状の第二凹溝とが交互に複数設けられる。
【0026】
扉をスイング開位置からスイング閉位置まで回動させる際、容器本体の第二爪間の第二凹溝に、扉の第一爪が通される。逆にいうと、この際、扉の第一爪間の第一凹溝には、容器本体の第二爪が通される。これにより、容器本体の開口端面と第二爪との間に、扉の第一爪が配置される。このようなスイング閉位置における容器本体への扉の保持を確実になすために、容器本体と扉との間には、ラッチ機構が設けられる。
【0027】
ラッチ機構は、スイング閉位置において、容器本体に扉を係止するものである。このラッチ機構は、容器本体に設けられる受け具と、扉に設けられ前記受け具に係止可能なラッチ本体とを備える。受け具からのラッチ本体の係止解除は、扉に設けられたレバーハンドルやノブなどの各種操作部の操作によりなされる。一方、受け具へのラッチ本体の係止も、これら操作部の操作により行ってもよいが、扉をスイング閉位置まで回動させることで、前記係止が自動でなされる構成とするのがよい。
【0028】
容器本体の開口部を扉で閉じて密閉するには、扉をスイング閉位置まで閉めた状態で、扉の第一爪が容器本体の第二爪と対面する位置まで、扉をスライドさせる。さらに、容器本体の開口部の外側に沿って設けたパッキンを扉側へ押し出して、第一爪を第二爪へ押し付ければよい。この際、前記パッキンは、扉の内面(容器本体側の面)に連続的に接触される。
【0029】
本実施形態の前記受け具は、前記スライドにより第一爪と第二爪とが対面する位置においては、ラッチ本体と係止不能な形状に形成されている。そのため、前記パッキンの押し出しにより、第一爪が第二爪へ押し付けられる際に、ラッチ本体が受け具へ接触するのが防止され、ラッチ機構の破損などが防止される。
【0030】
一方、第二爪間の第二凹溝の所定位置(典型的には中央位置)に第一爪が配置された状態では、受け具へのラッチ本体の係止と、前記操作部の操作によるその係止の解除が可能とされる。つまり、その状態では、受け具とラッチ本体とが対応して配置され、扉の回動が可能とされる。
【0031】
そして、この状態から、第一爪が第二爪間の第二凹溝の前記所定位置から、第二爪と少なくとも一部で重なる位置までは、前記操作部を操作しても受け具からのラッチ本体の係止を解除不能とする。そのために、受け具には、扉のスライド閉方向の端部に、ストッパーが設けられている。このストッパーにラッチ本体が係止されることで、第二爪間の第二凹溝に第一爪が配置されている間は、扉の開放が防止される。
【0032】
一方、扉のスライドに伴って、第一爪と第二爪とが重なってきた位置では、ストッパーによらずとも扉の開放が防止されるので、ラッチ本体と対応する位置には、前記ストッパー付きの受け具は省略可能である。そして、上述したように、第一爪と第二爪とが対面する位置においては、本実施形態ではストッパー付きの受け具は設けられていない。
【0033】
ストッパーの内面(容器本体側の面)は、スライド閉方向へ行くに従って外側へ傾斜して形成するのがよい。これにより、容器の密閉状態から扉を開けるために、扉をスライド開方向へ移動させる際に、ストッパーへのラッチ本体の接触による損傷を確実に防止できる。
【0034】
ところで、ストッパー付き受け具とラッチ本体との係止の有無を検知する近接センサを設けるのが好ましい。このセンサは、磁性を利用した誘導形近接スイッチの他、光電センサやリミットスイッチなどでもよい。このセンサは、扉やラッチ本体の側に設けてもよいし、容器本体や受け具の側に設けてもよいし、その双方に設けてもよい。このセンサにより、扉のスイング閉位置の確認が容易になされる。また、第一爪が第二爪間の第二凹溝に配置されているか否かを確認することができる。
【0035】
但し、センサは、受け具自体とラッチ本体との係止の有無を検知する構成とし、このセンサによる検知範囲外で、且つ第二爪間の第二凹溝と対応して第一爪が配置されている間は、ストッパーにより容器本体への扉の係止を解除不能にしてもよい。この場合、扉のスイング閉位置の確認が可能であると共に、センサによる検知範囲外になっても、第二爪間の第二凹溝に第一爪が配置されている間は、ストッパーにより扉の開放が防止される。また、センサは、扉側に設けて、扉のスライド中に連続的に受け具の動きを検知するように構成することができる。この場合、受け具を検知している間は第一爪と第二爪とが重なっていて扉が閉鎖状態にあるように構成されている。
【実施例】
【0036】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の扉閉鎖構造が適用された密閉容器の一実施例を示す概略説明図であり、正面側から見た状態を示し、一部を断面にして示している。また、図2から図4は、本実施例の密閉容器の扉閉鎖構造を示すために、戸先側を拡大して示す概略斜視図であり、図2は扉のスイング閉状態を示し、図3は扉のスライド中の状態を示し、図4は扉のスライド完了状態を示している。
【0037】
図1および図2に示すように、密閉容器1は、容器本体2と扉3とを備える。本実施例の容器本体2は、略矩形の金属製ボックス状に構成されており、正面へ開口部4を向けて略矩形状の中空部が形成されている。前記開口部4を開閉可能に、容器本体2には扉3が設けられる。本実施例の扉3は、金属製で、略矩形板状に形成されている。
【0038】
扉3は、容器本体2の一側端部に、ヒンジ5を介して回動可能に設けられる。図示例では、容器本体2の右側端部に枢軸6が上下方向へ沿って配置され、この枢軸6まわりに回動可能に支持部材7を設け、この支持部材7に扉3が保持される。この際、扉3は、支持部材7ひいては容器本体2に対し上下方向へスライド可能に設けられる。
【0039】
本実施例では、前記支持部材7に上下方向へ沿ってガイド棒8が設けられる一方、このガイド棒8に沿って摺動するスライド材9が扉3に固定される。そして、ガイド棒8に沿ってスライド材9および扉3を上下動させるために、扉3と支持部材7との間には、シリンダ機構10が設けられる。このシリンダ機構10は、シリンダ本体11からロッド12が進退可能に構成され、ロッド12が上下方向に進退するように、シリンダ本体11を下側にして設けられる。その際、シリンダ本体11は、支持部材7にピン結合13により連結される。また、扉3にロッド受け材14を固定し、このロッド受け材14の下部にロッド12の先端部が当接される。
【0040】
従って、シリンダ本体11からロッド12を突出させて、シリンダ機構10を伸長させると、ロッド12の先端部はロッド受け材14ひいては扉3を押し上げることになる。一方、シリンダ本体11へロッド12を退入させて、シリンダ機構10を短縮させると、ロッド12の退入に応じて扉3はその自重により支持部材7に対して下方へ移動することになる。
【0041】
このようにして、扉3は、ヒンジ5まわりの回動と、シリンダ機構10を介した上下方向のスライドが可能とされる。ヒンジ5まわりの回動について述べると、扉3は、容器本体2の開口部4を覆うスイング閉位置と、容器本体2の開口部4から離隔したスイング開位置との間で、ヒンジ5にて回動可能とされる。また、上下方向のスライドについて述べると、扉3は、前記スイング閉位置において、シリンダ機構10により上下動可能とされる。
【0042】
ところで、前記シリンダ機構10は、たとえば送りネジ機構を用いて構成される。すなわち、モータなどの駆動源(不図示)により雌ネジ部材(不図示)を回転させることにより、この雌ネジ部材に進退可能に螺合された雄ネジ部材(不図示)をその軸線方向へ往復動させ、この雄ネジ部材に連結してあるロッド12を進退させる。但し、シリンダ機構10としては、油圧シリンダ機構や空気圧シリンダ機構などを用いることもできる。
【0043】
扉3には、スイング閉位置において容器本体2の開口部4の左右方向外側位置に、上下方向に複数の第一爪15,15…が設けられる。この第一爪15は、扉3の左右両側部に、左右対称形状に設けられる。各第一爪15は、同じ形状および大きさの略台形状とされる。つまり、扉3の左右両側面から左右方向外側へ突出するよう設けられる略矩形状の板材は、その上下両端面が、左右方向外側へ行くに従って互いに近接するよう傾斜して形成される。このような第一爪15が上下に所定間隔で複数設けられることで、扉3の左右両側面には、略矩形状の第一凸部(第一爪)15と略矩形状の第一凹溝16とが交互に複数設けられる。
【0044】
一方、容器本体2の開口部4の外側には、その開口部4よりも左右および上下に拡幅して、扉3を受け入れ可能な扉収容部17が、正面側へ開口して形成されている。この扉収容部17の奥側の端面は、扉3をスイング閉位置まで閉めた際の戸当り面18として機能する。また、扉収容部17の左右両側部には、それぞれ上下方向に複数の第二爪19,19…が設けられる。この第二爪19は、容器本体2の左右両側部に、左右対称形状に設けられる。各第二爪19は、同じ形状および大きさの略台形状とされる。つまり、扉収容部17の左右両側面から左右方向内側へ突出するよう設けられる略矩形状の板材は、その上下両端面が、左右方向内側へ行くに従って互いに近接するよう傾斜して形成される。このような第二爪19が上下に所定間隔で複数設けられることで、容器本体2の左右両側面には、略矩形状の第二凸部(第二爪)19と略矩形状の第二凹溝20とが交互に複数設けられる。
【0045】
扉3をスイング開位置からスイング閉位置まで回動させる際、容器本体2の第二爪19間の第二凹溝20に、扉3の第一爪15が通される。またこの際、扉3の第一爪15間の第一凹溝16には、容器本体2の第二爪19が通される。扉3は、その内面が扉収容部17の前記戸当り面18に当接することで、スイング閉位置における位置決めが容易になされる。扉3がスイング閉位置にある場合には、容器本体2の開口端面(戸当り面)18と第二爪19との間に、扉3の第一爪15が配置される。さらに、このようなスイング閉位置における容器本体2への扉3の保持を確実になすために、容器本体2と扉3との間には、ラッチ機構21が設けられる。
【0046】
ラッチ機構21は、スイング閉位置において、容器本体2に扉3を係止するものである。このラッチ機構21は、容器本体2に設けられる受け具22と、扉3に設けられ前記受け具22に係脱可能なラッチ本体23とを備え、受け具22からのラッチ本体23の係止解除は、扉3に設けられた操作部24の操作によりなされる。本実施例のラッチ機構21は、いわゆるフリーザハンドルと呼ばれる構成であり、扉3に、前記ラッチ本体23および前記操作部としてのハンドル24を有するラッチ錠25が設けられる一方、容器本体2には受け具22が設けられる。
【0047】
具体的には、ラッチ錠25は、扉3の戸先側外面で、扉3の上下方向中央部に設けられる。ラッチ錠25の戸先側には、戸先側へ突出してラッチ本体23が、扉3の幅方向(左右方向)へ進退可能に設けられる。このラッチ本体23は、所定長さだけ戸先側へ押し出されるよう常時付勢されており、この付勢力に対抗して戸尻側へ押し込み可能とされている。このようなラッチ本体23の先端部には、ローラ26が回転可能に設けられる。このローラ26は、ラッチ本体23の先端部において、上下方向へ沿って配置された中心軸まわりに回転可能に保持される。さらに、ラッチ錠25の外面には、ハンドル24が水平面内で一端部まわりに揺動可能に設けられており、このハンドル24を手前へ引くことで、前記ラッチ本体23を後退させることができる。
【0048】
一方、受け具22は、容器本体2の扉収容部17の左側面に設けられる。本実施例の受け具22は、扉収容部17の左側面に重ね合わされて固定される板状の取付片27を備え、この取付片27の手前側の端部には、横断面略三角形状の係止部28が、右側へ突出して設けられる。この係止部28は、扉収容部17の外方へ向けて傾斜面29を有する。この傾斜面29は、右側へ行くに従って扉収容部17の奥側へ傾斜して形成される。また、係止部28の内面(戸当り面18と対面する面)30は、前記傾斜面29を乗り越えたローラ26を係止するために、本実施例では左右方向へ延出して形成されている。
【0049】
これにより、扉3を閉める際には、ローラ26が傾斜面29に沿って回転しつつ移動することで、ラッチ本体23を自動的に後退させることができ、ハンドル24の操作なしに扉3を閉めることができる。しかも、一旦、ローラ26が係止部28を乗り越えると、ラッチ本体23が突出して係止部28の内面(戸当り面18と対面する面)30に当接され、ラッチ本体23と受け具22とが係止される。そして、その係止状態は、ハンドル24を操作しない限り解除不能とされる。
【0050】
さらに、受け具22の下部には、ストッパー31が設けられる。本実施例のストッパー31は、受け具22と一体的に設けられた略矩形のブロック状であり、受け具22の係止部28よりもさらに突出して設けられる。ストッパー31の突出長さLは、ストッパー31と前記戸当り面18との間にラッチ本体23が配置された状態で、ハンドル24を操作してラッチ本体23を後退させても、ストッパー31からのラッチ本体23の係止が解除不能な長さとされている。また、ストッパー31の内面(戸当り面18と対面する面)32は、下方へ行くに従って外側へ若干傾斜して形成されている。また、この内面32の上端部は、前記係止部28と対応した位置に配置される。
【0051】
ところで、容器本体2の戸当り面18には、容器本体2の開口部4を取り巻くように連続的にパッキン33が設けられている。このパッキン33は、前記開口部4を取り巻くように形成されたパッキン溝34(図4)内に収容されている。容器本体2の開口部4に扉3を密閉する際には、コンプレッサからの圧縮空気を利用してパッキン溝34を加圧することで、パッキン33を扉3側へ突出させて、扉3の内面に密着させればよい。逆に、容器本体2と扉3との密閉を解除する際には、真空ポンプやアスピレータなどの吸引力を利用して、パッキン33をパッキン溝34内に戻して収容すればよい。
【0052】
次に、本実施例の扉3の開閉動作について説明する。初期状態において、扉3は、ヒンジ5の枢軸6まわりに回動して開口部4から離れており、スイング開位置にあるものとする。また、シリンダ機構10は、ロッド12を突出させており、このロッド12の先端はロッド受け材14に当接して、扉3を所定高さに保持しているとする。この初期状態では、扉3のラッチ本体23は、容器本体2の受け具22と同一高さ位置に配置されている。そして、この状態では、容器本体2の第二凹溝20の所定位置(上下方向中央部)に、扉3の第一爪15が配置されている。また、ローラ26の下端は、ストッパー31の上端(係止部28の下端)と一致するか、それより僅かに(たとえば5mm程度)上方へ配置される。
【0053】
この初期状態から、扉3を枢軸6まわりに、スイング閉位置まで回動させる。この際、容器本体2の第二爪19,19間の第二凹溝20に、扉3の第一爪15が通されると共に、扉3の第一爪15,15間の第一凹溝16に、容器本体2の第二爪19が通される。また、ラッチ本体23は、そのローラ26が受け具22の係止部28の傾斜面29に沿って移動した後、その係止部28の内面30に係止される。その状態では、容器本体2の戸当り面18と第二爪19との間に、扉3の第一爪15が配置される。
【0054】
その後、シリンダ機構10を作動させ、シリンダ本体11へロッド12を退入させる。このロッド12の退入につれて扉3が設定高さまで下降し、図2から図3さらに図4の状態へと順次移行し、第一爪15が第二爪19と対面する高さ位置に配置される。この状態で、パッキン33をパッキン溝34から突出させて、パッキン33を扉3の内面に密着しつつ、扉3を外方へ移動させる。これにより、第二爪19に第一爪15を押し付けつつ、容器本体2の開口部4を扉3で気密状態に閉じることができる。
【0055】
ところで、第一爪15が第二爪19,19間の第二凹溝20の所定位置(本実施例では上述のとおり第二凹溝20の上下方向中央部であるが、上下方向へたとえば5mm程度の多少の範囲をもった所定位置でもよい)から、第二爪19と少なくとも一部で重なる位置までは、ハンドル24を操作してもストッパー31により受け具22からのラッチ本体23の係止解除が阻止される。そのため、第二爪19,19間の第二凹溝20に第一爪15が配置されている間は、扉3の開放が阻止されると共に、第一爪15は第二爪19と当たることなく下降できる。そして、扉3のスライドに伴って、第一爪15と第二爪19とが重なってきた位置では、ストッパー31によらずとも扉3の開放が防止される。さらに、第一爪15と第二爪19とが対面した状態では、ラッチ本体23と対応する位置には、ストッパー31および受け具22は配置されていない。従って、第二爪19への第一爪15の押付け時に、受け具22やストッパー31にラッチ本体23が接触することはない。
【0056】
このようにして容器本体2の開口部4を扉3で密閉した状態で、密閉容器1の目的に応じて、蒸煮処理や蒸気殺菌処理などがなされた後、パッキン33をパッキン溝34内へ収容して気密状態を解除し、前述と逆の要領で扉3を開放する。すなわち、シリンダ機構10の作動によりロッド12を上昇させ、扉3を設定高さまで上昇させる。この際、ストッパー31の内面32を傾斜させているので、ストッパー31や係止部28へのラッチ本体23の引っ掛かりを防止できる。そして、扉3の上昇により、第二爪19,19間の第二凹溝20と対応する高さに第一爪15を配置した状態で、ハンドル24を操作して受け具22からのラッチ本体23の係止を解除し、枢軸6まわりに扉3を開ければよい。
【0057】
ところで、密閉容器1には、ストッパー31付きの受け具22とラッチ本体23との係止の有無を検知するセンサ35が設けられる。本実施例のセンサ35は、磁性を利用した誘導形近接スイッチとされており、ストッパー31付き受け具22の側に設けており、ラッチ本体23(ローラ26)の有無を検知する。この検知は、第二爪19,19間の第二凹溝20に第一爪15が配置されている限りなされる。
【0058】
ここで、前記誘導形近接スイッチの動作原理は、発振回路に接続された検出コイルより出る高周波磁界中に金属物体が近接すると、金属中に電磁誘導現象による誘導電流が流れ、金属内に熱損失が発生し、この熱損失の発生により前記発振回路の発振が減衰または停止するので、この減衰または停止の検出を利用するものである。
【0059】
本発明の扉閉鎖構造とそれを用いた扉は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、ラッチ機構21にフリーザハンドルを用いたが、各種ドアにおけるドアノブやハンドルおよびラッチ構造を適用可能である。また、前記センサ35としては、光電センサやリミットスイッチなどを用いてもよいし、また扉3またはラッチ錠25の側へ設けてもよい。さらに、発光素子と受光素子とを、ラッチ錠25と受け具22とに分けて設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の扉閉鎖構造が適用された密閉容器の一実施例を示す概略説明図であり、正面側から見た状態を示し、一部を断面にして示している。
【図2】図1の扉閉鎖構造の戸先側を拡大して示す概略斜視図であり、扉のスイング閉状態を示している。
【図3】図1の扉閉鎖構造の戸先側を拡大して示す概略斜視図であり、扉のスライド中の状態を示している。
【図4】図1の扉閉鎖構造の戸先側を拡大して示す概略斜視図であり、扉のスライド完了状態を示している。
【図5】従来のクラッチ式ロック機構の扉閉鎖構造を示す概略横断面図である。
【図6】図5の従来の扉閉鎖構造の正面視概略説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 密閉容器
2 容器本体
3 扉
4 開口部
5 ヒンジ
10 シリンダ機構
15 第一爪(第一凸部)
16 第一凹溝
17 扉収容部
18 開口端面(戸当り面)
19 第二爪(第二凸部)
20 第二凹溝
21 ラッチ機構
22 受け具
23 ラッチ本体
24 操作部(ハンドル)
31 ストッパー
32 ストッパー内面
33 パッキン
35 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部に扉が開閉可能に設けられ、前記扉に設けた第一爪を、前記容器本体に設けた第二爪間の溝に通した後、前記第二爪と対面する位置までスライドさせた状態で、前記第二爪へ押し付けて閉鎖する扉閉鎖部の構造であって、
前記第二爪間の溝に前記第一爪を通して前記扉を閉めた際、前記容器本体に前記扉を係止するラッチ機構を備え、
このラッチ機構は、前記容器本体に設けられる受け具と、前記扉に設けられ前記受け具に係止可能なラッチ本体とを備え、
前記スライドにより前記第一爪と前記第二爪とが対面する位置において、前記受け具は前記ラッチ本体と係止不能な形状に形成されている
ことを特徴とする扉閉鎖構造。
【請求項2】
前記ラッチ本体は、前記扉に設けられた操作部の操作により、前記受け具と係脱可能に構成され、
前記第二爪間の溝の所定位置に前記第一爪が通された状態では、前記受け具への前記ラッチ本体の係止と、前記操作部の操作によるその係止の解除が可能とされ、
前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置から前記第二爪と重なる位置まで、前記操作部を操作しても前記受け具からの前記ラッチ本体の係止が解除不能とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の扉閉鎖構造。
【請求項3】
前記扉は、前記容器本体の一側端部まわりに回動可能に設けられており、
前記扉の左右両端部に、略矩形板状の前記第一爪が上下に等間隔に複数形成されており、
前記容器本体の開口部の左右両端部に、略矩形板状の前記第二爪が上下に等間隔に複数形成されており、
前記第二爪間の溝の前記所定位置と対応した高さ位置に前記第一爪が配置されると共に、前記受け具と対応した高さ位置に前記ラッチ本体が配置されて、前記扉は回動可能とされており、
前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置から前記第二爪と一部で重なる位置まで、前記ラッチ本体の係止を解除不能にするストッパーが前記受け具に設けられており、
前記第一爪と前記第二爪とが対面する位置まで前記扉がスライドした状態では、前記ラッチ本体と対応する高さ位置には前記ストッパー付きの前記受け具が設けられていない
ことを特徴とする請求項2に記載の扉閉鎖構造。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記容器本体側の内面が、下方へ行くに従って外側へ傾斜して形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の扉閉鎖構造。
【請求項5】
前記受け具または前記ストッパーと前記ラッチ本体との係止の有無を検知するセンサを更に備え、
前記第一爪が前記第二爪間の溝の前記所定位置からずれても、前記第二爪間の溝と対応した高さ位置に配置されている間は、前記ストッパーにより前記容器本体への前記扉の係止が解除不能とされている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の扉閉鎖構造。
【請求項6】
前記扉閉鎖構造により扉が容器本体に設けられてなり、
前記第一爪の前記第二爪への押付けは、前記容器本体の開口部に沿って連続的に設けられたパッキンを介してなされる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の扉閉鎖構造を用いた密閉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−40501(P2007−40501A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227879(P2005−227879)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】